説明

反射防止フィルムの製造方法、反射防止フィルム

【課題】 長時間の連続製造でも生産工程を止めず、安定した多層の反射防止層の形成が可能な塗布方式による反射防止フィルムの製造方法及び反射防止フィルムの提供。
【解決手段】 フィルム基材上に直接又は他の層を介して、少なくとも1層の反射防止層層を形成した後、前記反射防止層の膜厚を測定手段により計測し、予め用意した基準値と対比、演算し、結果を塗布膜厚制御系にフィードバックし、前記反射防止層の塗布条件を制御しながら製造する反射防止フィルムの製造方法において、前記反射防止層用塗布液の塗布・乾燥開始時の膜厚は予め校正がなされた前記測定手段により測定し、以降、前記反射防止層用塗布液の塗布継続中に工程を止めることなく、前記測定手段の校正(補正)を行い、校正した前記測定手段により前記反射防止層の膜厚測定を行い、前記反射防止層用塗布液の塗布・乾燥を連続的に行うことを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムの製造方法及び反射防止フィルムに関し、更に詳しくは、太陽陽電池、液晶画像表示装置、各種ディスプレイ装置、有機ELディスプレイ、CRT、PDP等に有用な反射防止フィルムの製造方法及びこの製造方法により製造された反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型軽量ノートパソコンの開発が進み、それに伴って、液晶表示装置等の表示装置で用いられる偏光板の保護フィルムもますます薄膜化、高性能化への要求が強くなってきている。又、視認性向上のために反射防止層を設けたり、又、写り込みを防いだり、ギラツキの少ない表示性能を得るために表面を凹凸にして反射光を散乱させる防眩層を付与した、コンピュータ、ワープロ等の液晶画像表示装置(液晶ディスプレイ等)が多く使用されるようになってきた。反射防止技術として、反射防止層(光学干渉層ともいう)としてフィルム基体上に積層する層の屈折率と光学膜厚を適度な値にすることによって、積層体と空気界面における光の反射を減少させることが有効であるということが知られている。
【0003】
一般的にフィルム基体上に設けられた多層の反射防止層は高屈折率層と低屈折率層とを有する2層以上の層より構成されており、高屈折率層の材料としてTiO2、ZrO2、Ta25等、又低屈折率層の材料としてSiO2、MgF2等が含有されている。これらの多層の反射防止層は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法等の真空を用いた乾式製膜法、塗布方式によって製作されていることが知られている。
【0004】
しかし、このような乾式製膜法は、処理基材の面積が大きくなると、製膜装置が非常に大型化するため、装置が非常に高額になる他、真空にするにも、又は排気するにも莫大な時間が費やされ、生産性が上げられないというデメリットが大きい。一方、塗布方式は生産性が高い点で有用であるが、反射防止層の膜厚の均一性を保つことがやや難しい等の問題が挙げられる。
【0005】
従来、塗布方式による多層の反射防止層の形成は、1層形成する毎に、分光反射率を測定して膜厚を算出し、目標膜厚となるよう条件を設定し直している。又、各層毎に測定を行うため、時間がとられるばかりでなく、同一条件としたつもりでも目標膜厚よりずれてしまうことが起こる。反射防止層の膜厚は各々の層が数10〜数100nmという薄膜であり、特に、塗布による反射防止層形成においては、目標膜厚に対しウェット膜厚が1μm変化しただけで分光反射率が異なってしまうばかりでなく、数nm変化すれば反射率がずれ、表面より反射される反射スペクトルが異なることにより、着色したり、色合いが変化してしまう。又、条件出しにより出来上がりのフィルムの収率も悪化してしまう。例えば、反射が大きくなるとテレビやパソコンのモニター、カーナビ等使用時、周囲の光源や明るいものが画面上に写り、表示内容が見にくくなる。着色したり、色合いが違ってくると、見にくくなるばかりでなく、黒表示部では色が付いて視認されるため、テレビ画面では画像イメージを著しく落とすこととなる。
【0006】
これらの対策として、例えば、フィルム基材上に形成された2層以上の屈折率が異なる隣り合う反射防止層に対する可視光波長領域において設定した少なくとも2点の波長の反射率をオンラインの反射率測定器により計測し、予め用意した設定波長の標準の反射率と対比、演算し、その結果を各塗布膜厚制御系にフィードバックし、各反射防止層の各塗布条件を制御することを特徴とする反射防止フィルムの製造方法が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の反射防止フィルムの製造方法の場合はかなりの効果はあるが次の問題点を有している。オンラインの反射率測定器により計測では、長時間の連続測定に置いては、繰り返し測定によるディテクター素子の発熱、光源の光量経時変動等により初期に設定した反射率測定器のベースラインがずれて来る危険があるため、次の対策を必要とする。1)定期的に工程を一時止め、基準反射板を使用しリファレンス測定をし、補正をする。2)予め経時による変化を予測出来る様な検量線データを作成し、測定値に補正演算をする必要がある。1)の場合、工程を止めることによる稼働率の低下が生じ生産性が低下する。2)の場合、機差、周辺環境、使用状況等により検量線データは少なからず異なるため何段階もの補正が必要になり、最終的な信頼性に難があった。
【0008】
これらの状況より、長時間の連続製造でも生産工程を止めることなく、安定した多層の反射防止層の形成が可能な塗布方式による反射防止フィルムの製造方法及び反射防止フィルムの開発が望まれている。
【特許文献1】特開2003−329807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は、長時間の連続製造でも生産工程を止めることなく、安定した多層の反射防止層の形成が可能な塗布方式による反射防止フィルムの製造方法及び反射防止フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0011】
(請求項1)
連続して移送するフィルム基材上に直接又は他の層を介して、少なくとも1層の反射防止層用塗布液を塗布・乾燥し反射防止層を形成した後、前記反射防止層の膜厚を測定手段により計測し、予め用意した基準値と対比、演算し、その結果を塗布膜厚制御系にフィードバックし、前記反射防止層の塗布条件を制御しながら製造する反射防止フィルムの製造方法において、
前記反射防止層用塗布液の塗布・乾燥開始時の前記反射防止層の膜厚は予め校正がなされた前記測定手段により測定し、
以降、前記反射防止層用塗布液の塗布継続中に工程を止めることなく、前記測定手段の校正(補正)を行い、
校正した前記測定手段により前記反射防止層の膜厚測定を行い、
前記反射防止層用塗布液の塗布・乾燥を連続的に行うことを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
【0012】
(請求項2)
前記測定手段が反射率分光方式測定装置であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【0013】
(請求項3)
前記測定手段がフィルム基材の幅方向に測定箇所に応じて配設されていることを特徴とする請求項1又は2記載の反射防止フィルムの製造方法。
【0014】
(請求項4)
前記測定手段の校正は、塗布継続中にフィルム基材の繋ぎ目を検出した直後に行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【0015】
(請求項5)
前記測定手段の校正は、塗布継続中に5〜180分の間に少なくとも1回行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【0016】
(請求項6)
前記測定手段の校正は、塗布継続中にフィルム基材の繋ぎ目を検出した直後に行い、且つ5〜180分の間に少なくとも1回行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【0017】
(請求項7)
前記測定手段の校正は、ベースライン用基準板と少なくとも1枚の反射防止層用基準板を固定し、該測定手段を駆動させてベースラインの設定を行うことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【0018】
(請求項8)
前記測定手段の校正は、該測定手段を固定し、ベースライン用基準板と少なくとも1枚の反射防止層用基準板を移動させてベースラインの設定を行うことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【0019】
(請求項9)
前記測定手段の校正は、ミラーを介してベースライン用基準板と少なくとも1枚の反射防止層用基準板に光を照射し、該ベースライン用基準板と該反射防止層用基準板から反射する光を該ミラーを介して読みとり、ベースラインの設定を行うことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【0020】
(請求項10)
前記膜厚測定は反射防止層の幅方向で少なくとも3箇所行うことを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【0021】
(請求項11)
前記測定手段が反射防止層の幅手方向に移動する架台上に設置されていることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【0022】
(請求項12)
請求項1〜11の何れか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする反射防止フィルム。
【発明の効果】
【0023】
長時間の連続製造でも生産工程を止めることなく、安定した多層の反射防止層の形成が可能な塗布方式による反射防止フィルムの製造方法及び反射防止フィルムを提供することが出来、生産効率の向上と高性能の反射防止フィルムの製造が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の形態を図1〜図6を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
図1は反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。図1の(a)は、フィルム基体上に、低屈折率層を有する反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。図1の(b)は、フィルム基体上に、高屈折率層、低屈折率層の順序の層構成を有する反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。図1の(c)は、フィルム基体上に、ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層の順序の層構成を有する反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。図1の(d)は、フィルム基体上に、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順序の層構成を有する反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。図1の(e)は、フィルム基体上に、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順序の層構成を有する反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。
【0026】
本発明に係わる反射防止フィルムは、透明支持体上に少なくとも1層の高屈折率層を有し、更にその上に低屈折率層を有するが、必要に応じ、高屈折率層の下層に平滑なハードコート層を設けることが出来る。以下に図1の(a)〜(d)に付き説明する。
【0027】
図1の(a)に示される反射防止フィルムに付いて説明する。図中、1aは反射防止フィルムを示す。反射防止フィルム1aは、フィルム基体である透明フィルム基体101と、透明フィルム基体101上に、透明フィルム基体101の屈折率より小さい屈折率を有する低屈折率層102とを有している。
【0028】
図1の(b)に示される反射防止フィルムに付いて説明する。図中、1bは反射防止フィルムを示す。反射防止フィルム1bは、フィルム基体である透明フィルム基体101と、透明フィルム基体101上に順番に高屈折率層103と、透明フィルム基体101の屈折率より小さい屈折率を有する低屈折率層102とを有している。
【0029】
図1の(c)に示される反射防止フィルムに付いて説明する。図中、1cは反射防止フィルムを示す。反射防止フィルム1cは、フィルム基体である透明フィルム基体101と、透明フィルム基体101上に順番にハードコート層104と、高屈折率層103と、透明フィルム基体101の屈折率より小さい屈折率を有する低屈折率層102とを有している。
【0030】
図1の(d)に示される反射防止フィルムに付いて説明する。図中、1dは反射防止フィルムを示す。反射防止フィルム1dは、フィルム基体である透明フィルム基体101と、透明フィルム基体101上に順番にハードコート層104と、高屈折率層103の屈折率より小さい屈折率で、透明フィルム基体101の屈折率より大きい屈折率の中屈折率層105と、高屈折率層103と、透明フィルム基体101の屈折率より小さい屈折率を有する低屈折率層102とを有している。
【0031】
図1の(e)に示される反射防止フィルムに付いて説明する。図中、1eは反射防止フィルムを示す。反射防止フィルム1eは、フィルム基体である透明フィルム基体101と、透明フィルム基体101上に順番に高屈折率層103の屈折率より小さい屈折率で、透明フィルム基体101の屈折率より大きい屈折率の中屈折率層105と、高屈折率層103と、透明フィルム基体101の屈折率より小さい屈折率を有する低屈折率層102とを有している。
【0032】
本図に示す、これらのハードコート層104、中屈折率層105、高屈折率層103、低屈折率層102は特開2001−343505号公報に記載されている特性を有していることが好ましい。
【0033】
本発明においては図1(a)〜(d)に示される様に、中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層の順に基材フィルムの上に積層するのが好ましいが、それぞれの同じ屈折率の層が2層以上積層されていてもよく、全重層数は、6〜9層を積層してもよい。例えば中屈折率層が2層以上あってもよく、屈折率の異なる層を上記の順にこだわることなく積層してもよい。
【0034】
本発明に係る反射防止層の各層は、それぞれの屈折率を与える物質を含有するか、又は層形成後それぞれの屈折率となる物質を含有する塗布液を基材フィルムの上に塗布・乾燥して得られるものである。
【0035】
本発明に係る反射防止層の各層の屈折率の範囲は、各構成方法によって異なるが、一例として本図の(b)に示される構成の場合の好ましい屈折率、膜厚の範囲を以下に示す。中屈折率層では1.55以上、1.75未満が好ましく、更に好ましくは、1.60〜1.73であり、高屈折率層では1.75〜1.95が好ましく、より好ましくは、1.85〜1.95であり、又、低屈折率層では1.30〜1.50が好ましく、より好ましくは1.44〜1.47である。
【0036】
各屈折率層の膜厚は、中屈折率層では78±5nm、高屈折率層では66±5nm、又低屈折率層では95±5nmが好ましい。尚、屈折率は大塚電子(株)製FE−3000で測定した値を示す。
【0037】
本発明に係る反射防止フィルムの、波長450nm〜650nmにおける反射率が1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.00〜0.3%である。尚、反射率は大塚電子(株)製FE−3000で測定した値を示す。
【0038】
本発明は、図1(a)〜(d)に示される反射防止層(中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層)を、塗布を中断することなくフィルム基体上に積層(高屈折率層/低屈折率層、中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層)し、安定化した膜厚を有する反射防止フィルムの製造方法と個の製造方法により製造された反射防止フィルムに関するものである。
【0039】
図2は反射防止フィルムの製造方法の一例を示す模式図である。
【0040】
図中、2は反射防止フィルム製造装置を示す。反射防止フィルム製造装置2は、フィルム基体繰り出し部3と、塗布液供給部4と、塗布部5と、乾燥部6と、制御部7と、巻き取り部8と、フィルム基体の繋ぎ目検出機9とを有している。301は巻き芯に巻かれたロール状フィルム基体を示し、302は繰り出されたフィルム基体を示す。
【0041】
塗布部5は、第1塗布部501と、第2塗布部502と、第3塗布部503とを有している。第1塗布部501、第2塗布部502、第3塗布部503は、繰り出されたフィルム基体302上に塗布する塗布液の数に対応して配設されている。本図に示される塗布部5は、図1の(e)に示す層構成(中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の3層)を形成する3種類の塗布液を塗布するため、第1塗布部501〜第3塗布部503の3つの塗布部から構成されている。第1塗布部501は、バックアップロール501bに支持されたフィルム基体301上に中屈折率層形成用塗布液を塗布するコータ501aを有している。第2塗布部502は、バックアップロール502bに支持された中屈折率層形成が形成されたフィルム基体303の中屈折率層上に高屈折率層形成用塗布液を塗布するコータ502aを有している。第3塗布部503は、バックアップロール503bに支持された、中屈折率層と高屈折率層とが形成されたフィルム基体304の高屈折率層上に低屈折率層形成用塗布液を塗布するコータ503aを有している。
【0042】
第1塗布部501〜第3塗布部503に用いられるコータ501a〜503aは、塗布液の精密な供給量の規制が可能、塗布液の循環使用がなく塗布液物性の変化がなく安定に膜厚を保ち易いこと等から流量規制型であるスライド型コータ、エクストルージョン型コータ、カーテン型コータ等が本発明に係る塗布方法として特に好ましい。
【0043】
305はフィルム基体302上に、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順番で形成された反射防止フィルムを示し、306は巻き芯に巻かれたロール状反射防止フィルムを示す。
【0044】
塗布液供給部4は、フィルム基体302上に塗布する塗布液の数に対応して配設されている調製釜401〜403を有している。401は中屈折率層形成用塗布液を調製する調製釜を示し、402高中屈折率層形成用塗布液を調製する調製釜を示し、403は低屈折率層形成用塗布液を調製する調製釜を示す。調製釜401で調製された中屈折率層形成用塗布液は送液管401aを通り送液ポンプ401bによりコータ501aに塗布量に合わせ供給される様になっている。調製釜402で調製された高屈折率層形成用塗布液は送液管402aを通り送液ポンプ402bによりコータ502aに塗布量に合わせ供給される様になっている。調製釜403で調製された低屈折率層形成用塗布液は送液管403aを通り送液ポンプ403bによりコータ503aに塗布量に合わせ供給される様になっている。401cは送液ポンプ401bの電力供給部を示し、402cは送液ポンプ402bの電力供給部を示し、403cは送液ポンプ403bの電力供給部を示す。使用する送液ポンプは、例えばサーボモータを使用したポンプ、インバーターモータを使用したポンプが挙げられるが、オンタイムでの周波数(流量)可変なインバーターモータを使用したポンプが好ましい。
【0045】
乾燥部6は、第1乾燥部601と、第2乾燥部602と、第3乾燥部603とを有している。第1乾燥部601〜第3乾燥部603は、フィルム基体301上に塗布する塗布液の数に対応して配設されている。本図に示される乾燥部6は、図1の(d)に示す層構成(中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の3層)を形成するために塗布された3種類の塗布液をそれぞれ乾燥するため、第1乾燥部601〜第3乾燥部603の3つの乾燥部から構成されている。601aは第1系列乾燥装置601a1と第2系列乾燥装置601a2との2系列を有する中屈折率層形成用の乾燥装置を示す。602aは第1系列乾燥装置602a1と第2系列乾燥装置602a2との2系列を有する高屈折率層形成用の乾燥装置を示す。603aは第1系列乾燥装置603a1と第2系列乾燥装置603a2との2系列を有する低屈折率層形成用の乾燥装置を示す。各乾燥装置601a〜603aの系列数は使用する塗布液の種類、膜厚、塗布速度、温度、風量等から適宜選定することが可能である。
【0046】
601bは繰り出されたフィルム基体302上に塗布された中屈折率層形成用塗布液が第1系列乾燥装置601a1を通過し、第2系列乾燥装置601a2に入る際、塗布面が接触しないでターンさせる非接触型のエアーロールを示す。602bはフィルム基体301上に形成された中屈折率層上に塗布された高屈折率層形成用塗布液が第1系列乾燥装置602a1を通過し、第2系列乾燥装置602a2に入る際、塗布面が接触しないでターンさせる非接触型のエアーロールを示す。603bは中屈折率層上に形成された高屈折率層上に塗布された高屈折率層形成用塗布液が第1系列乾燥装置603a1を通過し、第2系列乾燥装置603a2に入る際、塗布面が接触しないでターンさせる非接触型のエアーロールを示す。
【0047】
601cは乾燥装置601aの第2系列乾燥装置601a2の最後に設けられた紫外線照射装置示し、602cは乾燥装置602aの第2系列乾燥装置602a2の最後に設けられた紫外線照射装置示し、603cは乾燥装置603aの第2系列乾燥装置603a2の最後に設けられた紫外線照射装置示し、これらの各紫外線照射装置の設置は塗布液の種類により適宜選択することが可能となっている。
【0048】
601dは乾燥装置601aの第2系列乾燥装置601a2の最後に設けられた冷却装置示し、602dは乾燥装置602aの第2系列乾燥装置602a2の最後に設けられた冷却装置示し、603dは乾燥装置603aの第2系列乾燥装置603a2の最後に設けられた冷却装置示し、これらの冷却装置は次工程の塗布、巻き取りを行うために設置することが好ましい。
【0049】
制御部7は、第1制御部701と、第2制御部702と、第3制御部703とを有している。第1制御部701は測定手段701aと制御部701bとを有している。第2制御部702は測定手段702aと制御部702bとを有している。第3制御部703は測定手段703aと制御部703bとを有している。制御部7に関しては、図3で説明する。
【0050】
各測定手段701a、702a、703aは、乾燥終了後に形成された反射防止層(中屈折率層、高屈折率層、低中屈折率層)を測定可能な位置に配設し、反射防止層(中屈折率層、高屈折率層、低中屈折率層)の幅方向で少なくとも3箇所に配設することが好ましい。各測定手段による各反射防止層(中屈折率層、高屈折率層、低中屈折率層)の反射率の測定は、校正がされた各測定手段により少なくとも0.5〜5秒間隔で中屈折率層用塗布液の塗布開始から、低中屈折率層用塗布液が塗布され、乾燥終了までを連続的に測定することが好ましい。測定手段の校正及び測定手段の校正方法に関しては図4〜図6で説明する。
【0051】
図3は図1に示される反射防止フィルム製造工程を構成している塗布部と制御部との関係を示す概略ブロック図である。
【0052】
本図を使用し、各塗布部と制御部との関係を説明する。第1塗布部でフィルム基体上に塗布され形成された中屈折率層は、中屈折率層の幅方向の少なくとも3箇所に配設された測定手段701aにより反射率が測定される。測定された中屈折率層の少なくとも3箇所の反射率に関する情報は制御部701bのCPUに入力される。CPUに入力された情報はメモリーに予め入力されている基準値と対比、演算処理を行い、電流供給部401cの電圧調整を行うことにより送液ポンプ401bのモータの回転数を制御し、塗布液の供給量を調整することが可能となっている。
【0053】
第2塗布部で中屈折率層上に塗布され形成された高屈折率層は、高屈折率層の幅方向の少なくとも3箇所に配設された測定手段702aにより反射率が測定される。測定された反射率に関する情報は制御部702bのCPUに入力される。CPUに入力された情報はメモリーに予め入力されている基準値と対比、演算処理を行い、電圧供給部402cの電圧調整を行うことにより、送液ポンプ402bのモータの回転数を制御し、塗布液の供給量を調整することが可能となっている。
【0054】
第3塗布部で高屈折率層上に塗布され形成された低屈折率層は、低屈折率層の幅方向の少なくとも3箇所に配設された測定手段703aにより反射率が測定される。測定された反射率に関する情報は制御部703bのCPUに入力される。CPUに入力された情報はメモリーに予め入力されている基準値と対比、演算処理を行い、電流供給部403cの電流調整を行うことにより、送液ポンプ403bのモータの回転数を制御し、塗布液の供給量を調整することが可能となっている。
【0055】
図4は図2に示す測定手段で、校正時に測定手段が回動し、固定している基準板を測定する方式の模式図である。本図は、図2に示される各測定手段は全て同じ方式であるため、第1制御部701(図2を参照)に配設された測定手段701a(図2を参照)を代表して説明する。
【0056】
図中、303aはフィルム基体302上に形成された中屈折率層を示す。測定手段701aは、投光部と受光部とを有するセンサー部701a1と、光源701a2と、ディテクター701a3と、センサー部701a1を回転駆動するためのモータ701a4と、校正用の基準板701a5、701a6とを有している。
【0057】
θはセンサー部701a1から中屈折率層303aへの光の照射角度を示す。照射角度θは90±5度が好ましい。±5度を越えた場合は、センサー部からの照射された光が中屈折率層に当たり、反射した光の光量が±5度に比べて著しく落ち、正確な測定が出来なくなってしまう場合がある。
【0058】
光源701a2には、一般的には可視領域でタングステンハロゲンランプ、短波長側で紫外線ランプが使用される。特に精度よい測定を求められる場合には併用することが好ましい。タングステンハロゲンランプだけであると測定時の反射率値が380〜430nmの範囲でバラツキが発生し、精度よい測定が出来ない場合がある。センサー部701a1の収束レンズ面から中屈折率層303aの表面までの距離の決め方は図5で説明する。
【0059】
基準板701a5は直角に当てた光が直角に戻るほどの平滑性を有し、径時で大きな表面状態の変化がなければ材質に制限はないが、一般的にはガラス、金属などの板状の物の組成比率を変化させる、又は表面加工方法(蒸着、塗布等)により特性を制御し各種ニーズに対応している。そして、より測定精度を高めるためには測定する被測定物の反射率が近い反射率を有していることがより好ましい。
【0060】
本図では、中屈折率層303aを測定するため、中屈折率層の反射率に近い反射率7〜12%を有するサファイア板が好ましい。第2制御部702(図2を参照)に配設された測定手段702a(図2を参照)の場合には、基準板701a5に相当する基準板には、高屈折率層の反射率が近い反射率25〜40%を有するシリコーン板等が好ましい。第3制御部703(図2を参照)に配設された測定手段703a(図2を参照)の場合には、基準板701a5に相当する基準板には、低屈折率層の反射率に近い反射率2〜5%を有するBK7板が好ましい。基準板701a5は、ベースライン用の基準板であるため反射率が0%となるようにミラーに角度を付けて設置する。第2制御部702(図2を参照)に配設された測定手段702a(図2を参照)及び第3制御部703(図2を参照)に配設された測定手段703a(図2を参照)も基準板701a5に相当する基準板を有している。
【0061】
センサー部701a1による基準板701a5、基準板701a6の測定は、モータ701a4によりセンサー部701a1を基準板701a5、基準板701a6の設置位置まで回転駆動すること行う様になっている。基準板701a5と基準板701a6とを測定することでディテクター701a3により測定手段701aのベースラインの設定(校正)が行われる様になっている。尚、中屈折率層303aの幅方向の少なくとも3箇所を測定するために、本図に示される測定手段701aが測定箇所に応じて3台固定して配設されており、これらの3台のベースラインの設定(校正)は、本図と全く同じ方法で行われる様になっている。
【0062】
第2制御部702(図2を参照)に配設された、高屈折率層の幅方向の少なくとも3箇所を測定するために、高屈折率層の幅方向に配設された3台の測定手段702a(図2を参照)及び第3制御部703(図2を参照)に配設された、低屈折率層の幅方向の少なくとも3箇所を測定するために、低屈折率層の幅方向に配設された3台の測定手段703a(図2を参照)も第1制御部702(図2を参照)の測定手段701aと同じ方法でベースラインの設定(校正)が行われる様になっている。
【0063】
図5は図4に示すセンサー部の光学系の概略図である。
【0064】
図中、701a′1はプローブを示し、701a′2は収束レンズを示す。f1は収束レンズ701a′2の直径を示し、L1は収束レンズの中心面からフィルム基体302上に形成された中屈折率層303a迄の距離を示し、L2はプローブの先端から収束レンズの中心迄の距離を示す。センサー部701a1の収束レンズの中心面から中屈折率層303aの表面までの距離L1はセンサー部701a1に使用するレンズの径により決まるため規定することは出来ないが、式1)で示される関係式を有しているため計算で求めることが可能となっている。
【0065】
式1) L2=L1×(f1/L1−f1)
図6は図2に示す測定手段で、校正時に測定手段が移動し、回動可能に設置された基準板を測定する方式の模式図である。本図は、図2に示される各測定手段は全て同じ方式であるため、第1制御部701(図2を参照)に配設された測定手段701a(図2を参照)を代表して説明する。
【0066】
図中、701a11〜701a13は中屈折率層303aの幅方向の少なくとも3箇所を測定するために、中屈折率層303aを有するフィルム基体303の搬送方向に配設された3台の測定手段701aの各センサー部を示す。701b1はセンサー部701a11を取り付ける台座を示し、水平移動用のステージ701c1に沿って移動(図中の矢印方向)が可能となっている。701b2はセンサー部701a12を取り付ける台座を示し、水平移動用のステージ701c2に沿って移動(図中の矢印方向)が可能となっている。701b3はセンサー部701a13を取り付ける台座を示し、水平移動用のステージ701c3に沿って移動(図中の矢印方向)が可能となっている。
【0067】
各ステージ701c1〜701c3は、中屈折率層303aを有するフィルム基体303の幅方向に平行に配設されている。701dは校正用の各基準板を取り付け回転可能となっている基準板取り付け板を示す。701d1は図4に示す基準板701a5に相当する基準板を示し、701d2は図4に示す基準板701a6に相当する基準板を示す。各センサー部701a11〜701a13は、図4で示した方法と全く同じ方法でベースラインの設定(校正)が行われる様になっている。但し、各センサー部701a11〜701a13の校正をする場合は同時期に行うことが好ましい。
【0068】
第2制御部702(図2を参照)に配設された、高屈折率層の幅方向の少なくとも3箇所を測定するために、高屈折率層を有する基体の搬送方向に配設された3台の測定手段702a(図2を参照)及び第3制御部703(図2を参照)に配設された、低屈折率層の幅方向の少なくとも3箇所を測定するために、低屈折率層を有する基体の搬送方向に配設された3台の測定手段703a(図2を参照)も本図で示される測定手段701aと同じ方法でベースラインの設定(校正)が行われる様になっている。尚、第2制御部702(図2を参照)及び第3制御部703(図2を参照)に使用される本図に示される方式の測定手段の校正に使用する基準板は図4で示した基準板と同じものが使用可能である。
【0069】
本図で示される方式の測定手段の校正は、校正する時期に3台の測定手段が順番にステージに沿って移動し、校正が終了した段階で順番にステージに沿って移動し再び測定位置に戻る様になっている。
【0070】
台座の移動方法は特に限定なく、例えば、台座に組み込まれたモータによる回転ロールによる方法、台座を駆動ベルトに取り付ける方法等が挙げられる。
【0071】
図7は図2に示す測定手段で、校正時に固定された測定手段が、基準板をミラーを介して測定する方式の模式図である。本図は、図2に示される各測定手段は全て同じ方式であるため、第1制御部701(図2を参照)に配設された測定手段701a(図2を参照)を代表して説明する。
【0072】
図中、701eはミラーを示す。他の符号は図4、図6と同義である。本図で示される方式は、センサー部701a1を固定し、校正時にミラー701eが待機位置(不図示)より移動し、センサー部701a1の光軸を、図6に示す校正用の各基準板を取り付け、回転可能となっている基準板取り付け板701dの各基準板の表面と直角になるように屈折させる位置に設置される。又、基準板取り付け板701dも校正時に待機位置(不図示)より移動し、ミラー701eから反射してくる光の光軸と基準板取り付け板701dの各基準板の表面と直角になるような位置に設置される。センサー部701a1の校正は図4に示す方法と同じ方法で行うことが可能である。尚、中屈折率層303aの幅方向の少なくとも3箇所を測定するために、中屈折率層303aの幅方向に配設された他の2台の測定手段も本図と全く同じ方法でベースラインの設定(校正)が行われる様になっている。
【0073】
第2制御部702(図2を参照)に配設された測定手段702a(図2を参照)及び、第3制御部703(図2を参照)に配設された測定手段703a(図2を参照)の校正も全く同じ方法で行うことが可能となっている。
【0074】
本発明に係わる測定手段は、各反射防止層(中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層)の反射率を測定し、反射率から各反射防止層の厚さを演算処理する方法であり、使用する測定手段としては、例えば、反射分光膜厚計等が挙げられる。又、反射率から各反射防止層の厚さを演算処理する方法以外にも、測定した反射率から任意の波長の反射率、光学物性(視感反射率など)を測定し,その値を用いて条件に対してフェードバックすることも可能である。
【0075】
図4〜図7に示される第1制御部〜第3制御部の各測定手段による各反射防止層(中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層)の反射率の測定は、各測定手段の校正を行っている間を除き、0.5〜5秒に少なくとも1回行うことが好ましく、第1制御部〜第3制御部の各測定手段の校正は、工程を止めることなく、次のタイミングで行うことが好ましい。
1)フィルム基材302(図2を参照)の繋ぎ目を繋ぎ目検出機9(図2を参照)により検出した直後に行う。
2)5〜20分の間に少なくとも1回行う。
3)フィルム基材302(図2を参照)の繋ぎ目を繋ぎ目検出機9(図2を参照)により検出した直後と、5〜20分の間に少なくとも1回行う。
【0076】
上記タイミングで各測定手段の校正を行うことにより次の効果が得られる。
1)常に校正された測定機により反射防止層の測定が行われ、測定情報に基づき塗布液の供給量の調整が行われるため安定した膜厚の反射防止層を有する反射防止フィルムの製造が可能になった。
2)工程を止めることなく校正を行うことにより稼働率の低下の一因を防止することが可能となり、生産性の向上が可能となった。
3)予め経時による変化を予測出来る様な検量線データを作成し測定値に補正演算をする煩雑な作業がなくなり、信頼性が高い校正が可能となり工程管理が容易になった。
【0077】
本発明に係る反射防止層を形成する組成物について説明する。本発明に係る反射防止層は、基材フィルム/高屈折率層/低屈折率層又は基材フィルム/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層で構成されている。そして、中屈折率層の屈折率を決める主な物質は、酸化チタンと樹脂や酸化珪素の混合物であり、高屈折率層の屈折率を決める主な物質は酸化チタンであり、低屈折率層の屈折率を決める主な物質は酸化珪素又は酸化珪素とフッ素化合物の混合物である。
【0078】
酸化チタン又は酸化珪素を形成する前駆体は主として、有機チタン化合物あるいは有機珪素化合物のモノマー、オリゴマー又はそれらの加水分解物である。又、有機金属化合物を使用せずに、酸化チタン、酸化珪素、酸化チタンと酸化珪素の混合物又は酸化珪素とフッ素化合物を微粒子状として用いてもよい。以下に、本発明に有用な有機金属化合物について説明する。尚、有機金属化合物に一部ハロゲン化金属化合物を含めることがあることを断っておく。
【0079】
本発明に係わる高屈折率層用又は中屈折率層用の前駆体としての有機チタン化合物は下記式(I)又は(II)で表される。
【0080】
(I) Ti(R63
(II) Ti(R74
式中、R6はOR9又はXであり、及びR7はR8、OR9、OR10又はXであり、R8及びOR9のR9は炭素原子数1〜8の脂肪族炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜4の脂肪族炭化水素基、OR10はβ−ケトン錯体基、β−ケト酸錯体基、β−ケト酸エステル錯体基、又はケト酸錯体で、又Xはハロゲンである。OR9又はXは上記式の(I)又は(II)のTiに少なくとも3個が結合していることが必須である。上記式(I)又は(II)の有機チタン化合物は、塗布組成物として塗布液中には、モノマー、オリゴマー、又はそれらの加水分解物として存在している。この加水分解物は−Ti−O−Ti−のように反応して架橋構造をしていると考えられ、これにより硬化した層が形成される。
【0081】
本発明に係わる有用な有機チタン化合物のモノマー、オリゴマーとしては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、メチルトリメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、エチルトリプロポキシチタン、メチルトリプロポキシチタン、エチルトリブトキシチタン、トリエトキシチタンアセトアセトナート、ジプロポキシチタンジアセトアセトナート、クロロトリプロポキシチタン、クロロトリエトキシチタン、トリメトキシチタン、トリエトキシチタン、トリプロポキシチタン、ジエトキシチタンアセトアセトナート等及びこれらのオリゴマーの2〜10量体を挙げることが出来、これらに限定されない。尚、プロポキシ基についてはn−又はi−、又ブトキシ基については、n−、i−、s−又はtの何れであってもよく、上記において、これらについては省略してある。本発明において、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン及びこれらの2〜10量体を好ましく用いることが出来る。中でもテトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、及びこれらの2〜10量体が特に好ましい。又、有機チタンを2種以上組合せて用いてもよい。
【0082】
本発明に用いられる有機チタン化合物のモノマー、オリゴマー又はそれらの加水分解物は、高屈折率層塗布液又は中屈折率層塗布液に含まれる固形分中の50.0質量%〜98.0質量%を占めていることが好ましい。固形分比率は50質量%〜90質量%がより好ましく、55質量%〜90質量%が更に好ましい。この他、塗布組成物には有機チタン化合物のポリマー(予め有機チタン化合物の加水分解を行って架橋したもの)を添加することも好ましい。
【0083】
又、有機チタン化合物は、高屈折率層塗布液又は中屈折率層塗布液中において上記モノマー、オリゴマー又はこれらの部分又は完全加水分解物として含まれているが、これらの有機チタン化合物は、徐々に自己縮合し架橋して網状結合が形成される。その反応を促進するために触媒や硬化剤を使用してもよく、これらの触媒や硬化剤には金属キレート化合物、有機カルボン酸塩等の有機金属化合物や、アミノ基を有する有機珪素化合物、光による酸発生剤(光酸発生剤)等を挙げることが出来、これらのうち特に好ましいものはアルミキレート化合物と光酸発生剤である。アルミキレート化合物の例としては、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等であり、光酸発生剤の例としては、ベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、その他のホスホニウム塩やトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェートの塩等を挙げることが出来る。
【0084】
本発明に係わる有用な低屈折率層用及び中屈折率層用の酸化珪素の前駆体としての有機珪素化合物は、下記式(III)で表される。
【0085】
(III) Si(R114
式中、R11はR12、OR13、OR14又はXであり、R12及びOR13のR13は炭素原子数1〜8の炭素原子数の脂肪族炭化水素基、好ましくは1〜4の脂肪族炭化水素基、OR14はβ−ケトン錯体基、β−ケト酸錯体基、又はそのエステル錯体基で、又Xはハロゲンである。Xはハロゲン原子を表す。上記式(III)の有機珪素化合物は、塗布組成物として塗布液中には、モノマー、オリゴマー、又はそれらの加水分解物として存在している。この加水分解物は−Si−O−Si−のように反応して架橋構造をしていると考えられており、これにより硬化した層が形成される。
【0086】
テトラメトキシ珪素、テトラエトキシ珪素、テトラプロポキシ珪素、テトラブトキシ珪素、メチルトリメトキシ珪素、エチルトリエトキシ珪素、エチルトリプロポキシ珪素、メチルトリプロポキシ珪素、エチルトリブトキシ珪素、トリエトキシ珪素アセトアセトナート、ジプロポキシ珪素アセトアセトナート、クロロトリプロポキシ珪素、クロロトリエトキシ珪素等及びこれらのオリゴマーの2〜10量体を挙げることが出来、これらに限定されない。尚、プロポキシ基についてはn−又はi−、又ブトキシ基については、n−、i−又はs−の何れであってもよく、上記において、これらについては省略してある。これらを加水分解することによりオリゴマーが得られる。加水分解反応は、公知の方法により行うことが出来、例えば、上記テトラアルコキシシランに所定量の水を加えて、酸触媒の存在下に、副生するアルコールを留去しながら、通常、室温〜100℃で反応させる。この反応によりアルコキシシランは加水分解し、続いて縮合反応が起こり、ヒドロキシル基を2個以上有する液状のオリゴマー(通常、平均重合度は2〜8、好ましくは3〜6)を加水分解物として得ることが出来る。加水分解の程度は、使用する水の量により適宜調節することが出来るが、本発明においては40〜90%、好ましくは60〜80%である。ここで、加水分解の程度は、加水分解可能な基、即ちテトラアルコキシシランにおいては、アルコキシ基を全て加水分解するために必要な理論水量、即ちエトキシ基の数(mol)の1/2の水を添加した時を加水分解率100%とし、
加水分解率(mol%)=(実際の添加水mol/加水分解理論水mol%)×100として求められる。
【0087】
こうして得られたオリゴマーにはモノマーが通常2〜10質量%程度含まれている。本発明においてはモノマー状態で用いてもオリゴマー状態で用いても、又はモノマーとオリゴマーを混合して用いても差し支えないが、モノマーが含まれていると貯蔵安定性に欠け、保存中に増粘し、膜形成が困難となることがあるので、モノマー含有量が全体の有機珪素化合物の1質量%以下、好ましくは0.3質量%以下になるように、このモノマーをフラッシュ蒸溜や真空蒸溜等で除去するのが好ましい。
【0088】
本発明には、上記の如くテトラアルコキシシランに触媒や水を添加して得られる部分加水分解物が用いられるが、部分加水分解物より完全加水分解物を用いるのが好ましい。加水分解物に溶媒を配合し、次いで下記硬化触媒と水を添加する等の方法により硬化した加水分解物が得られる。このような溶媒としては、メタノール、エタノール、(n、i−)プロパノール、(n、i、s−)ブタノール、オクタノール等を1種又は2種以上併用して使用するのが好ましい。溶媒量は部分加水分解物100質量部に対して50〜400質量部、好ましくは100〜250質量部である。
【0089】
硬化触媒としては、酸、アルカリ、有機金属、金属アルコキシド等を挙げることが出来るが、本発明においては酸、特にスルホニル基又はカルボキシル基を有する有機酸が好ましく用いられる。例えば、酢酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メチルスルホン酸等が用いられる。又、有機酸は水溶性の酸であることが好ましく、例えば、クエン酸、酒石酸、レブリン酸、ギ酸、プロピオン酸、リンゴ酸、コハク酸、メチルコハク酸、フマル酸、オキサロ酢酸、ピルビン酸、2−オキソグルタル酸、グリコール酸、D−グリセリン酸、D−グルコン酸、マロン酸、マレイン酸、シュウ酸、イソクエン酸、乳酸等が好ましく用いられる。又、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、アトロバ酸等も適宜用いることが出来る。更に、これらの有機酸のうち、1分子内に水酸基とカルボキシル基を有する化合物であれば一層好ましく、例えば、クエン酸又は酒石酸等のようなヒドロキシジカルボン酸は好ましく用いられる。有機酸を用いることにより、硫酸、塩酸、硝酸、次亜塩素酸、ホウ酸等の無機酸の使用した場合の生産時の配管腐蝕や安全性への懸念が解消出来るばかりでなく、加水分解時のゲル化を起こすこともなく、安定した加水分解物を得ることが出来る。有機酸の添加量は、部分加水分解物100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部がよい。又、水の添加量については部分加水分解物が理論上100mol%加水分解し得る量以上であればよく、100〜300mol%相当量、好ましくは100〜200mol%相当量を添加するのがよい。このようにして得られた低屈折率層用又は中屈折率層用の塗布組成物は極めて安定となる。
【0090】
本発明では更に、加水分解した有機珪素化合物を熟成をすることにより、加水分解の促進、縮合、そして架橋の形成へと進み酸化珪素が形成され、このようにして皮膜となった低屈折率層又は中屈折率層の特性が優れたものとなる。熟成は、オリゴマー液を放置すればよく、放置する時間は上述の架橋が所望の膜特性を得るのに充分な程度進行する時間である。具体的には、用いる触媒の種類にもよるが、塩酸では室温で1時間以上、マレイン酸では数時間以上、8時間〜1週間程度で充分であり、通常3日前後である。熟成温度は熟成速度に影響を与え、極寒地では20℃付近まで加熱する手段をとった方がよいこともある。一般に高温では熟成が早く進むが、100℃以上に加熱するとゲル化が起こるので、せいぜい50〜60℃までの加熱が適切である。又、本発明で用いるオリゴマーについては、上記の他に、例えばエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基等の官能基を有する有機珪素化合物のモノマー、オリゴマーあるいはポリマーにより変性したものであってもよく上記オリゴマーと併用してもよい。低屈折率層又は中屈折率層に形成される酸化珪素はほとんどがSiOx(ここで、xは2以下である)のようになっており、限りなくSiO2であることが好ましい。
【0091】
〈バインダー〉
本発明に係わる各屈折率層を形成する塗布液には塗布性や塗布後の安定性等からバインダーを含有することが好ましいが、有機金属化合物との相溶性もあって特定の有機金属化合物においてはバインダーを使用しない場合もある。従って、塗布液組成中のバインダーの固形分比率は20質量%以下が好ましい。
【0092】
特に、有機チタン化合物を含む中屈折率層又は高屈折率層には、バインダーとしてアルコール溶解性アクリル樹脂との相溶性の点から好ましく用いられる。これによって、膜厚ムラや凝集物のない中屈折率層又は高屈折率層を得ることが出来る。低屈折率層においては、特にバインダーを使用しなくともよいが、使用する場合には、上記アルコール可溶性のバインダーを使用することが好ましい。又、各屈折率層の屈折率を目標とする値にするために、バインダーを全く使用しない方がよかったり、又目標の屈折率に調節するために、バインダーの含有量を加減することもある。
【0093】
有用なアルコール可溶性のバインダーとしては、アルキル(メタ)アクリレート重合体又はアルキル(メタ)アクリレート共重合体が好ましく、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s−ブチルメタクリレート等の単独重合体又は共重合体が好ましく用いられるが、共重合成分としてはこれらに限定されるものではない。これらのアルコール可溶性アルキル(メタ)アクリレート単独重合体又は共重合体の市販品としては、ダイヤナール(以下、ダイヤナールを略す)BR−50、BR−51、BR−52、BR−60、BR−64、BR−65、BR−70、BR−73、BR−75、BR−76、BR−77、BR−79、BR−80、BR−82、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−89、BR−90、BR−93、BR−95、BR−96、BR−100、BR−101、BR−102、BR−105、BR−107、BR−108、BR−112、BR−113、BR−115、BR−116、BR−117、BR−118(以上、三菱レーヨン(株)製)等が使用出来る。これらのモノマー成分も中屈折率又は高屈折率層用バインダーとして好ましく添加することが出来る。バインダーの添加比率を変更することによって屈折率を調整することが出来る。
【0094】
又、上記の他に、以下のバインダーも使用出来る。係るバインダーとしては、重合可能なビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソプロペニル基、エポキシ基、オキセタン環等の重合性基を2つ以上有し、活性エネルギー線照射により架橋構造又は網目構造を形成するアクリル又はメタクリル系活性エネルギー線反応性化合物、エポキシ系活性エネルギー線反応性化合物又はオキセタン系活性エネルギー線反応性化合物が好ましい。これらの化合物はモノマー、オリゴマー、ポリマーを含む。重合速度、反応性の点から、これらの活性基のうちアクリロイル基、メタクリロイル基又はエポキシ基が好ましく、多官能モノマー又はオリゴマーがより好ましい。又、アルコール溶解性アクリル樹脂も好ましく用いられる。
【0095】
アクリル又はメタクリル系活性エネルギー線反応性化合物としては、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂等を挙げることが出来る。
【0096】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、又はプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば特開昭59−151110号)。
【0097】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステル末端の水酸基やカルボキシル基に2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸のようなのモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151112号)。
【0098】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂は、エポキシ樹脂の末端の水酸基にアクリル酸、アクリル酸クロライド、グリシジルアクリレートのようなモノマーを反応させて得られる。
【0099】
紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂としては、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。
【0100】
紫外線硬化性樹脂について多くの市販品があり、例えば、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(以上、旭電化工業株式会社製);コーエイハード(以下、コーエイハードを略す)A−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(以上、広栄化学工業株式会社製);セイカビーム(以下、セイカビーを略す)PHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(以上、大日精化工業株式会社製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(以上、ダイセル・ユーシービー株式会社);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(以上、大日本インキ化学工業株式会社製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料株式会社製);サンラッドH−601(三洋化成工業株式会社製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子株式会社製);RCC−15C(グレース・ジャパン株式会社製);アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(以上、東亞合成株式会社製)等を挙げることが出来る。
【0101】
本発明に係る反射防止層の各層には、屈折率の調整あるいは膜質の改善のために、更に官能性シラン化合物を添加することが好ましい。この官能性シラン化合物を屈折率層に含有させることにより、各層の接着性を強め効果があり、又該層に活性エネルギー線を照射することによって、金属アルコキシド及びその加水分解物の加水分解、更に縮合反応が促進し、金属酸化物を生成させるのに効果的である。特に金属有機アルコキシドがチタンアルコキシド化合物の場合に縮合反応の促進が加速される。屈折率層中にバインダーがない場合には、該層の硬化作用があり、安定した屈折率層を得ることが出来る。
【0102】
有用な官能性シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、4,4,4,3,3−ペンタフルオロブチルトリメトキシシラン、3−(パーフルオロエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(パーフルオロプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(2,2,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロペントキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2,2,3,3,4,4−ブトキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジ−3,3−テトラフルオロプロピルジメトキシシラン、ジ(3−(パーフルオロプロポキシ)プロピル)ジメトキシシラン、ジ(3−(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−ドデカフルオロヘプトキシ)プロピル)ジメトキシシラン、ジ−3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチルジメトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリベンジルオキシシラン、メチルトリフェネチルオキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、αーグリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルエチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3、3、3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルエチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン等を挙げることが出来る。何れもこれらの化合物を含有する層に活性エネルギー線を照射することによって、金属アルコキシド化合物の加水分解物の縮合が促進され、架橋構造が出来、層を強化することが出来る共に接着性も強固にすることが出来る。この効果はチタンアルコキシドにおいて、最も効果的である。これらの化合物を2種以上組合せて使用してもよい。更にこれら以外にもシランカップリンク剤を添加することも出来る。
【0103】
本発明の反射防止フィルムの製造方法に使用する活性エネルギー線は、紫外線、電子線、γ線等で、化合物を活性させるエネルギー源であれば制限なく使用出来るが、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。上述の官能性シラン化合物に照射する紫外線の光源、又は紫外線反応性化合物を光重合させる紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用出来る。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。又、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプ又はシンクロトロン放射光等も用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10,000mJ/cm2が好ましく、更に好ましくは、100〜2,000mJ/cm2であり、特に好ましくは、120〜2,000mJ/cm2である。
【0104】
紫外線を用いる場合、多層の反射防止層を1層ずつ照射してもよいし、積層後照射してもよいが、生産性の点からは多層を積層後に紫外線を照射することが好ましい。
【0105】
又、電子線も同様に使用出来る。電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線を挙げることが出来る。
【0106】
本発明に係る各屈折率層を塗布する際の塗布液に使用する溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、酢酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、水等を挙げることが出来る。特に、金属アルコキシドと相溶性のあるアルコール類、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール又はブタノールは好ましく用いられる。又、101kPa(1気圧)における沸点が120〜180℃で、且つ20℃における蒸気圧が2.3kPa以下の溶媒を塗布液中に少なくとも1種用いることで、硬化速度を適度に遅らせ、塗布後の白濁を防ぐことが出来、塗布ムラの解消や、塗布液のポットライフ向上等も出来るので好ましく、これらうち分子内にエーテル結合を有する溶媒、特にグリコールエーテル類が好ましい。グリコールエーテル類としては、プロピレングリコールモノ(炭素原子数1〜4の)アルキルエーテル、又はプロピレングリコール(炭素原子数1〜4)アルキルエーテルエステルであり、具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ(n−)プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートである。下記にこれらの好ましいグリコールエーテル類の101kPaにおける沸点(℃)と20℃における蒸気圧(kPa)の例を示すが、これらに限定されない。尚、下記の表示は、溶剤名と、括弧内は、1気圧における沸点及び20℃における蒸気圧kPaを示す。具体的に、プロピレングリコールモノメチルエーテル(121、0.106)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(132.8、0.53以上)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(171.1、0.13)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(162、0.40)、エチレングリコールモノメチルエーテル(124.4、0.78)、エチレングリコールメチルエーテルアセテート(145、0.27)、エチレングリコールモノブチルエーテル(171.2、0.09)、エチレングリコールモノエチルエーテル(135.6、0.51)エチレングリコールエチルエーテルアセテート(156.3、0.16)、エチレングリコールジエチルエーテル(121、1.25)である。これらの溶媒は、塗布液中に全有機溶媒の1〜90質量%含有することが好ましい。
【0107】
本発明に係る反射防止フィルムの最外層には耐傷性を与えるために、滑り剤を含有させ滑り性を付与することが好ましい。滑り剤としては、シリコーンオイルやワックス状物質が好ましく用いられる。ワックス状物質としては、例えば、下記式(IV)で表される化合物が好ましい。
【0108】
(IV) R1COR2
式中、R1は炭素原子数が12以上のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、更に、炭素原子数が16以上のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。R2は−OM1基(M1はNa、K等のアルカリ金属又はアンモニウム基を表す)、−OH基、−NH2基、又は−OR3基(R3は炭素原子数が12以上のアルキル基又はアルケニル基を表す)を表し、R2としては−OH基、−NH2基又は−OR3基が好ましい。具体的には、ベヘン酸、ステアリン酸アミド、ペンタコ酸等の高級脂肪酸又はその誘導体、天然物としてこれらの成分を多く含んでいるカルナバワックス、蜜蝋、モンタンワックスも好ましく使用出来る。又、米国特許第4,275,146号明細書に開示されているような高級脂肪酸アミド、特公昭58−33541号公報、英国特許第927,446号明細書又は特開昭55−126238号及び同58−90633号公報に開示されているような高級脂肪酸エステル(炭素原子数が10〜24の脂肪酸と炭素原子数が10〜24のアルコールのエステル)、そして米国特許第3,933,516号明細書に開示されているような高級脂肪酸金属塩、特開昭51−37217号公報に開示されているような炭素原子数10までのジカルボン酸と脂肪族又は環式脂肪族ジオールからなるポリエステル化合物、特開平7−13292号公報に開示されているジカルボン酸とジオールからのオリゴポリエステル等も使用することが出来る。シリコーンオイル的なものとしては、特公昭53−292号公報に開示されているようなポリオルガノシロキサンが好ましく用いられる。低屈折率層に使用される滑り剤の層中の含有量は、0.01〜10mg/m2が好ましい。又、必要に応じて中屈折率層や高屈折率層に添加してもよい。
【0109】
本発明に係わる反射防止層に、界面活性剤あるいは界面活性剤のような働きのあるものを添加してもよい。界面活性剤のような働きのあるものとは、柔軟剤や分散剤等を添加してもよく、これによって耐擦り傷性が向上する。中でもアニオン系又は非イオン系の界面活性剤が好ましく、例えば、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム塩、多価アルコール脂肪酸エステルの非イオン界面活性剤(乳化物)等を好ましく挙げることが出来る。これらの市販品としては、例えば、リポオイルNT−6、NT12、NT−33、TC−1、TC−68、TC−78、CW−6、TCF−208、TCF−608、NKオイルCS−11、AW−9、AW−10、AW−20、ポリソフターN−606、塗料用添加剤PC−700(日華化学株式会社製)等を挙げることが出来る。又、塗布液には界面活性剤のような働きをするものとして、レベリング剤やシリコーンオイル等の低表面張力物質を添加することが好ましい。例えば、東レダウコーング社製や信越化学社製のSH−3749、BY−16−869、KF−101等、特開2003−121620の表2に記載されているシリコーンオイルを好ましく用いることが出来る。
【0110】
上記界面活性剤等は反射防止層のうち、低屈折率層に添加するのが効果的であり好ましい。添加量は、塗布液に含まれる固形分当たり0.01〜3質量%程度が好ましく、より好ましくは0.03〜1質量%である。
【0111】
本発明に係わる反射防止フィルムを重ね合わせた時の他の面とのくっつきをなくすために、低屈折率層に酸化珪素微粒子を含有させることが好ましい。酸化珪素微粒子の粒径は0.1μm以下のものが好ましい。例えば、アエロジル200V(日本アエロジル(株)製)等を添加することが出来る。特に表面がアルキル基で修飾された酸化珪素微粒子が好ましく用いられ、例えば、アエロジルR972やR972V(日本アエロジル(株)製)として市販されている表面がメチル基で修飾された酸化珪素微粒子を好ましく添加することが出来る。この他、特開2001−002799に記載されている表面がアルキル基で置換された酸化珪素微粒子も好ましく用いることが出来、これらは、前述のアルコキシ珪素オリゴマーの加水分解後にアルキルシランカップリング剤により処理することによって、表面がアルキル基で置換された酸化珪素微粒子を容易に得ることが出来る。この酸化珪素微粒子については、後述のセルロースエステルフィルムのところでも記述するので、詳細は後に譲る。酸化珪素微粒子の添加量は、低屈折率層中の固形分比率で0.1〜40質量%の範囲が好ましい。
【0112】
本発明に係わる反射防止フィルムに使用するフィルム基材は、特に限定はないが、例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム,ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム又はアクリルフィルム等を挙げることが出来る。中でも、セルローストリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)が好ましく、本発明においては、特にセルロースエステルフィルムとして、セルローストリアセテートフィルム(例えば、コニカタック、製品名KC8UX2MW、KC4UX2MW(コニカ(株)製))、又はセルロースアセテートプロピオネートフィルムが、製造上、コスト面、透明性、等方性、接着性等の観点から好ましく用いられる。フィルム基材の光学特性としては、膜厚方向のリターデーションRtが0〜300nm、面内方向のリターデーションR0が0〜1000nmのフィルム基材が好ましく用いられる。
【0113】
以下、特に好ましいフィルム基材としてセルロースエステルフィルムについて述べる。セルロースエステルフィルムとしては、セルロースアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルムが好ましく、中でもセルロースアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルムが好ましい。
【0114】
セルロースエステルフィルムの原料として、セルロースエステルのアシル基の置換度が、アセチル基の置換度をX、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、XとYが下記の範囲にあるセルロースエステルが好ましい。
【0115】
2.3≦X+Y≦2.98
1.4≦X≦2.98
セルロースエステルフィルムの原料のセルロースエステルとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることが出来る。又それらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。これらのセルロースエステルは、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いてセルロース原料と反応させて得ることが出来る。
【0116】
アシル化剤が酸クロライド(CH3COCl、C25COCl、C37COCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には、特開平10−45804号に記載の方法等を参考にして合成することが出来る。又、本発明に用いられるセルロースエステルは各置換度に合わせて上記アシル化剤量を混合して反応させたものであり、セルロースエステルはこれらアシル化剤がセルロース分子の水酸基に反応する。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度(モル%)という。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している(実際には2.6〜2.98)。尚、セルロースエステルのセルロースアセテートブチレートを形成するブチリル基としては、直鎖状でも分岐していてもよい。
【0117】
プロピオネート基を置換基として含むセルロースアセテートプロピオネートは耐水性に優れ、液晶画像表示装置用のフィルムとして有用である。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することが出来る。
【0118】
セルロースエステルの数平均分子量は、70,000〜250,000が、成型した場合の機械的強度が強く、且つ、適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、80,000〜150,000である。
【0119】
上記セルロースエステル溶液を溶解し調製する有機溶媒としては、溶解性が良好であることと、且つ、適度な沸点であることが好ましく、例えば、メチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることが出来るが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。
【0120】
又、後述の溶液流延製膜方法による製膜工程に示すように、無限移行する無端の金属支持体上に形成されたウェブ(ドープを流延した後の膜)から溶媒を乾燥させる時に、ウェブ中の発泡を防止する観点から、用いられる有機溶媒の沸点としては、30〜80℃が好ましく、例えば、上記記載の良溶媒の沸点は、メチレンクロライド(沸点40.4℃)、酢酸メチル(沸点56.32℃)、アセトン(沸点56.3℃)、酢酸エチル(沸点76.82℃)等である。
【0121】
上記記載の良溶媒の中でも溶解性に優れるメチレンクロライド及び酢酸メチルが好ましく用いられ、特にメチレンクロライドが全有機溶媒に対して50質量%以上含まれていることが好ましい。
【0122】
又、ドープ中には、上記有機溶媒の他に、0.1〜30質量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。特に好ましくは5〜30質量%で前記アルコールを含有させることが好ましい。これらは上記記載のドープを金属支持体に流延後、溶媒の蒸発が始まると、ドープ中のアルコールの比率が多くなり、ウェブがゲル化し、ウェブが丈夫になり、金属支持体からウェブを剥離することを容易になる。ゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロースエステルの溶解を促進する役割もある。
【0123】
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール等を挙げることが出来る。
【0124】
これらの溶媒のうち、ドープの安定性がよく、沸点も比較的低く、乾燥性もよく、且つ毒性がないこと等からエタノールが好ましい。好ましくは、メチレンクロライド70〜95質量%に対してエタノール5〜30質量%を含む溶媒を用いることが好ましい。メチレンクロライドの代わりに酢酸メチルを用いることも出来る。
【0125】
セルロースエステルフィルムには、下記のような可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤あるいは微粒子が含有されているのが好ましい。何れもドープ調製過程で添加混合される。
【0126】
可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等を好ましく用いることが出来る。リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、ジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤としては、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤としては、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤としては、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤としては、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることが出来る。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
【0127】
ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることが出来る。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等を用いることが出来る。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール等を用いることが出来る。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0128】
又、特願2000−338883記載のエポキシ系化合物、ロジン系化合物、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ケトン樹脂、トルエンスルホンアミド樹脂等の化合物もセルロースエステルの可塑剤として好ましく用いることが出来る。
【0129】
上記化合物のうち市販品として、荒川化学工業(株)からKE−604及びKE−610(酸価237及び170)、KE−100及びKE−356(アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸及びパラストリン酸3者の混合物のエステル化物、酸価は8及び0)が市販されている。又、播磨化成(株)からは、G−7及びハートールR−X(アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸及びパラストリン酸3者の混合物、酸価167及び168)が市販されている。
【0130】
その他、可塑剤として、エポキシ樹脂(例えば、アラルダイドEPN1179、アラルダイドAER260(旭チバ(株)製))、ケトン樹脂(例えば、ハイラック110、はハイラック110H(日立化成(株)製))、パラトルエンスルホンアミド樹脂(例えばトップラー(フジアミドケミカル(株)製))も好ましく用いることが出来る。これらの可塑剤は2種以上併用してもよいし、上記他の可塑剤と組合せてもよい。セルロースエステルに対する可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、1〜20質量%が好ましく、特に好ましくは、3〜13質量%である。
【0131】
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。好ましく用いられる紫外線吸収剤は、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(チヌビン171)、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(チヌビン109)、この他チヌビン326等を挙げることが出来、何れも好ましく用いることが出来る。尚、上記チヌビンはチバ・スペッシャリティー・ケミカルズ社製である。
【0132】
又、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることが出来何れも好ましく用いることが出来る。
【0133】
本発明に係る基材フィルムに好ましく用いられる紫外線吸収剤としては、透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
【0134】
又、特開2001−187825に記載されている分配係数が9.2以上の紫外線吸収剤は、フィルム基材の面品質を向上させ、塗布性にも優れている。特に分配係数が10.1以上の紫外線吸収剤を用いることが好ましい。紫外線吸収剤の使用量は化合物の種類、使用条件などにより一様ではないが、通常はセルロースエステルフィルム1m2当たり、0.2〜2.0gが好ましく、0.4〜1.5gが更に好ましく、0.6〜1.0gが特に好ましい。
【0135】
セルロースエステルフィルムには滑り性を付与するために微粒子を添加することが出来る。微粒子としては、無機化合物の微粒子又は有機化合物の微粒子を挙げることが出来る。無機化合物としては、珪素を含む化合物、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、珪素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースエステル積層フィルムの濁度を低減出来るので、酸化珪素が特に好ましく用いられる。酸化珪素微粒子としては、前記の例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(アエロジルは日本アエロジル(株)製微粒子の商標である)等の市販品が使用出来る。酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811等の市販品が使用出来る。有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。
【0136】
上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用出来る。
【0137】
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムに添加される微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。これらの微粒子は0.1〜5μmの粒径の2次粒子を形成してセルロースエステルフィルムに含まれることが好ましく、好ましい平均粒径は0.1〜2μmであり、更に好ましくは0.2〜0.6μmである。これにより、フィルム表面に高さ0.1〜1.0μm程度の凹凸を形成し、これによってフィルム表面に適切な滑り性を与えることが出来る。
【0138】
本発明に用いられる微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって、1次平均粒子径とした。微粒子の見掛比重としては、70g/L以上が好ましく、更に好ましくは、90〜200g/Lであり、特に好ましくは、100〜200g/Lである。見掛比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズが高くならずしかも凝集物が出来にくいため好ましく、又、本発明のように固形分濃度の高いドープを調製する際には、特に好ましく用いられる。1次粒子の平均径が20nm以下、見掛比重が70g/L以上の酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることが出来る。又例えばアエロジル200V、アエロジルR972Vの商品名で市販されており、それらを使用することが出来る。
【0139】
上記記載の見掛比重は酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーにとり、この時の重さを測定し、下記式で算出したものである。
【0140】
見掛比重(g/L)=酸化珪素質量(g)÷酸化珪素の容積(L)
微粒子の分散液を調製する方法としては、例えば以下に示すような3種類を挙げることが出来る。
【0141】
(調製方法A)
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて撹拌する。
【0142】
(調製方法B)
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶剤に少量のセルローストリアセテートを加え、撹拌溶解する。これに前記微粒子分散液を加えて撹拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をオンラインミキサーでドープ液と充分混合する。
【0143】
(調製方法C)
溶剤に少量のセルローストリアセテートを加え、撹拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をオンラインミキサーでドープ液と充分混合する。
【0144】
調製方法Aは酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、上記記載の調製方法Bは酸化珪素微粒子の分散性と、酸化珪素微粒子が再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
【0145】
(分散方法)
酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散する時の酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズが小さく、凝集物もなく好ましい。
【0146】
使用する溶剤は、低級アルコール類が好ましく、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等を挙げることが出来る。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0147】
セルロースエステルに対する酸化珪素微粒子の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、酸化珪素微粒子は0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部が更に好ましく、0.08〜0.12質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数が小さく、添加量の少ない方がヘイズが低く、凝集物も少ない点が優れている。
【0148】
上記分散機としては、通常の分散機を使用し得る。一般に分散機は大きく分けて、メディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。酸化珪素微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。
【0149】
メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどを挙げることが出来る。メディアレス分散機としては、超音波型、遠心型、高圧型等があるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.807MPa以上であることが好ましく、更に好ましくは19.613MPa以上である。又その際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
【0150】
上記のような高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製の超高圧ホモジナイザのマイクロフルイダイザ(商品名)あるいはナノマイザ社製のナノマイザ(商品名)があり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)社製UHN−01等を挙げることが出来る。
【0151】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることが出来る。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。又例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
【0152】
本発明に係わるフィルム基材として使用するセルロースエステルフィルムの溶液流延製膜法に付き説明する。溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの作製は、ドープ調製工程、ドープ流延工程、溶媒蒸発工程、剥離工程、乾燥及び延伸工程を経て行われる。
【0153】
1)ドープ調製工程:セルロースエステル(フレーク状の)に対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で該セルロースエステルや添加剤を攪拌しながら溶解し、ドープを形成する工程である。溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、冷却溶解法で行う方法、高圧で行う方法等種々の溶解方法がある。溶解後ドープを濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。セルロースエステル溶液と、上述の添加剤をセルロースエステル溶液に同時に溶解させてドープとしてもよいし、又別々に調製した添加剤液をセルロースエステル溶液と混合して、ドープを形成してもよい。セルロースエステル溶液と添加剤溶液を混合するには、特に制限はないが、本発明においては、オンラインミキサーにより混合する方法が好ましく、例えば東レエンジニアリング(株)製のHi−Mixer(静止型管内混合器)を用いることによって均一なドープを得ることが出来、好ましい。
【0154】
2)ドープ流延工程:ドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、無限に移送する無端の金属ベルト、例えばステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイからドープを流延する工程である。金属支持体の表面は鏡面となっている。その他の流延する方法は流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコータによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調整出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。
【0155】
3)溶媒蒸発工程:ウェブを金属支持体上で加熱し金属支持体からウェブが剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/又は金属支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率がよく好ましい。又それらを組合せる方法も好ましい。裏面液体伝熱の場合は、ドープ使用有機溶媒の主溶媒又は最も低い沸点を有する有機溶媒の沸点以下で加熱するのが好ましい。
【0156】
4)剥離工程:金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に金属支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
【0157】
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量が出来るだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることが出来る)としてゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。それは、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、金属支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。金属支持体上でゲル化させ剥離時の膜の強度を上げておくことによって、剥離を早め製膜速度を上げることが出来るのである。金属支持体上でのウェブの乾燥が条件の強弱、金属支持体の長さ等により5〜150質量%の範囲で剥離することが出来るが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼ね合いで剥離残留溶媒量を決められる。従って、本発明においては、該金属支持体上の剥離位置における温度を10〜40℃、好ましくは15〜30℃とし、且つ該剥離位置におけるウェブの残留溶媒量を10〜120質量%とすることが好ましい。剥離残留溶媒量は下記の式で表すことが出来る。
【0158】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMのものを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0159】
5)乾燥及び延伸工程:剥離後、一般には、ウェブを上下に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置及び/又はクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置を用いてウェブを乾燥する。乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。全体を通して、通常乾燥温度は40〜250℃の範囲で行われる。使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて乾燥条件を適宜選べばよい。
【0160】
本発明において、ウェブをテンター乾燥機を用いて少なくとも幅手方向に延伸するのが好ましく、特に剥離後の残留溶媒量が3〜40質量%の時に幅手方向に1.01倍〜2.5倍に延伸することが好ましい。より好ましくは幅手方向と長手方向に2軸延伸することであり、各々1.01倍〜2.5倍に延伸することが望ましい。更に、巻き取る前に、ナーリング加工をすることによって、反射防止フィルムをロール状で保管中に巻き形状の劣化を避けることが出来る。本発明では、長尺フィルムの幅方向の両端に凹凸を付与して端部を嵩高くするいわゆるナーリング加工を施することが好ましい。ここで、ナーリング高さとは、下記のように定義される。
【0161】
ナーリング高さ(a:μm)のフィルム膜厚(d:μm)に対する比率X(%)=(a/d)×100
本発明においては、X=1〜25%の範囲であることが好ましく、5〜20%が更に好ましく、10〜15%が特に好ましい。
【0162】
本発明に係わる反射防止フィルムは、前述の反射防止層を塗設する前に、反射防止層を塗設する側の反対側にバックコート層を、又反射防止層側にクリアハードコート層や防眩層を予め塗設することが好ましい。
【0163】
バックコート層は、反射防止フィルムの滑り易さ、巻き状態での表面裏面のブロッキング防止、カールコントロールあるいは静電気防止等の機能を付与するために塗設されている。滑り易さやブロッキング防止には、予め前述のようにフィルム中に微粒子を添加する方法や微粒子を含有する塗布液を塗設してバックコート層を設ける方法がある。バックコート層には、バインダー用樹脂と微粒子を含んでいることが好ましく、微粒子としては、有機化合物でも無機化合物でもよく、例えば酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子を挙げることが出来、又有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコーン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、あるいはポリ弗化エチレン系樹脂粉末、架橋高分子微粒子等を挙げることが出来、これらを紫外線硬化性組成物に加えることが出来る。これらの微粒子粉末の平均粒径は、0.005〜1μmが好ましく、特に0.01〜0.1μmのものが好ましい。紫外線硬化性樹脂と微粒子粉末との割合は、樹脂100質量部に対して、微粒子粉末を0.1〜10質量部となるように配合することが望ましい。このようにして形成された紫外線硬化性被覆層の表面粗さは、目的や種類に応じて異なるが、中心線平均表面粗さRa(前出)として、Raが後述のクリアハードコート層なら1〜50nm、後述の防眩層なら0.1〜1μm程度が好ましい。
【0164】
中でも酸化珪素がフィルムのヘイズを高くすることなく使用出来るので好ましい。その含有量は基材フィルム素材に対して0.04〜0.3質量%が好ましい。酸化珪素のような微粒子に有機物で表面処理したものが、ヘイズを低下することが出来るため好ましい。表面処理で好ましい金属有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類(特にメチル基を有するアルコキシシラン類)、シラザン、シロキサン等を挙げることが出来る。微粒子の平均粒径は大きい方がマット効果が大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れるため、好ましい微粒子の1次粒子の平均粒径は5〜50nmで、より好ましくは7〜16nmである。酸化珪素の微粒子としては前述と同様に、アエロジル(株)製のアエロジル200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,OX50、TT600等を挙げることが出来、好ましくはアエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することが出来る。この場合、平均粒径や材質の異なる微粒子、例えばAEROSIL(アエロジル)200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用出来る。
【0165】
バックコート層塗布組成物に使用するバインダー樹脂としては、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル/ビニルアルコール共重合体、部分加水分解した塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体又は共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート樹脂等のセルロースエステル系樹脂、マレイン酸及び/又はアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン共重合体、メチルメタクリレート/ブタジエン/スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン/ブタジエン樹脂、ブタジエン/アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。アクリル樹脂としては、アクリペットMD、VH、MF、V(以上、三菱レーヨン(株)製)、ハイパールM−4003、M−4005、M−4006、M−4202、M−5000、M−5001、M−4501(以上、根上工業(株)製)、前述のダイヤナールBR−102等(三菱レーヨン(株)製)等を挙げることが出来る。特に好ましくはジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートのようなセルロースエステル樹脂が用いられる。
【0166】
上記のようなバインダー樹脂及び微粒子の混合組成物としてのバックコート層塗布組成物に使用する有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルム等がある。溶解させない溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール等を挙げることが出来る。
【0167】
バックコート層にアンチカール機能を付与するには、基材フィルムの素材を溶解又は膨潤させるような有機溶媒を含有するバックコート層塗布組成物を基材フィルムに塗設することによって行われる。
【0168】
本発明に係わる反射防止フィルムには、反射防止層を塗設する前に予めハードコート層又は防眩層を塗設してもよい。又、反射防止層形成後にその上に防汚層を塗設してもよい。クリアハードコート層や防眩層は、不飽和エチレン性モノマーを1種以上含む成分を重合させて形成した層で、活性エネルギー線硬化性の組成物又は熱硬化性の組成物を用いるのが好ましく、特に活性エネルギー線硬化性組成物を用いるのが好ましい。ここで、活性エネルギー線硬化組成物とは、不飽和エチレン性モノマーを主として含有する組成物、又は不飽和エチレン性基を有する比較的分子量の大きい化合物(通常、樹脂と称する)を含有する組成物で、紫外線や電子線のような活性エネルギー線照射により架橋反応などにより硬化層を形成する組成物をいう。活性エネルギー線硬化性組成物としては、紫外線硬化性組成物や電子線硬化性組成物などが代表的なものとして挙げることが出来、紫外線や電子線以外の活性エネルギー線照射によって硬化する組成物でもよい。活性エネルギー線硬化組成物としては前述の反射防止層のところで記述したものと同様であるので省略する。
【0169】
これらのうち、紫外線硬化性組成物には、光重合開始剤あるいは増感剤を含有し、紫外線により硬化させることが出来る。光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。又、エポキシアクリレート系の光重合開始剤を使用する際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。近紫外線領域から可視光線領域にかけて光源に対しては、それらの領域に吸収極大を有する増感剤を組成物に含有させることによって使用を可能にすることが出来る。
【0170】
紫外線硬化性組成物塗布液に使用する有機溶媒としては、例えば、シクロヘキサン等の炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソアミルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル等のグリコールエーテル類等を挙げることが出来、適宜選択し、あるいはこれらを混合して使用出来るが、上記のプロピレングリコールモノアルキルエーテル又はプロピレングリコールモノアルキルエーテルエステルを5質量%以上含有させることが好ましく、これらを5〜80質量%含有する混合有機溶媒を用いることがより好ましい。
【0171】
紫外線硬化性組成物塗布液を塗布し、乾燥した後、もしくは生乾きの状態で、紫外線光源を上記のエネルギー値程度に照射し硬化反応を行わせる。この時の照射時間は、基材の移送速度、塗布液の組成、塗布厚さ等によって異なるが、概して0.5秒〜5分程度で照射及び硬化が完結することが好ましく、3秒〜2分がより好ましい。
【0172】
クリアハードコート層や防眩層、又はバックコート層を基材フィルムに塗布する方法としては、グラビアコータ、スピナーコータ、ワイヤーバーコータ、ロールコータ、リバースコータ、押出しコータ、エアードクターコータ等公知の方法を用いることが出来る。塗布の際の液膜厚(ウェット膜厚ともいう)で1〜100μm程度で、0.1〜30μmが好ましく、より好ましくは、0.5〜15μmである。
【0173】
以下に、本発明の効果を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0174】
実施例1
以下に示す方法により反射防止フィルムを作製した。
【0175】
〔セルロースエステルフィルムの作製〕
下記のように各種添加液、セルロースエステル溶液を調製し混合し、ドープを調製して、溶液流延製膜方法によりセルロースエステルフィルムを作製した。
【0176】
《酸化珪素分散液Aの調製》
アエロジルR972V 1kg
エタノール 9kg
以上をディゾルバで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリン型高圧分散装置を用いて分散を行い、酸化珪素分散液Aを調製した。
【0177】
《添加液Aの調製》
セルローストリアセテート(アセチル基の置換度2.88) 6kg
メチレンクロライド 140kg
以上を加圧型密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、濾過した。これに10kgの上記酸化珪素分散液Aを撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した後、濾過し、添加液Aを調製した。
【0178】
《セルロースエステル溶液Aの調製》
メチレンクロライド 440kg
エタノール 35kg
セルローストリアセテート(アセチル基の置換度2.88) 100kg
トリフェニルホスフェート 9kg
エチルフタリルエチルグリコレート 2kg
チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.3kg
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.5kg
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.5kg
上記の溶剤を密閉容器に投入し、攪拌しながら残りの素材を投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、セルロースエステル溶液Aを得た。流延する温度まで下げて一晩静置し、脱泡操作を施した後、溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。
【0179】
《ドープAの調製》
このセルロースエステル溶液Aと添加液Aの3kgを混合し、オンラインミキサー(東レ(株)製静止型管内混合機Hi−Mixer、SWJ)で10分間混合し、濾過し、ドープAを調製した。
【0180】
ドープAを濾過した後、精密定量ポンプで流延ダイに35℃のドープAを送り、溶液流延製膜装置の無限移行する無端のステンレススティールベルトの上に均一に流延した。尚、ステンレススティールベルトの温度を35℃とした。ステンレススティールベルトの裏側から39℃の温水で加熱してウェブを乾燥し、更にその後、ステンレススティールベルトの裏面から40℃の熱風を多数のスリットから吹かせて加熱し、更にステンレススティールベルトを15℃に冷却しウェブをステンレススティールベルトから剥離した。ステンレススティールベルトの上のウェブ側には45〜55℃の温風を当てた。剥離時には15℃の風に変えた。ウェブの残留溶媒量は80質量%であった。ステンレススティールベルトから剥離した後、80℃に維持された乾燥ゾーンで1分間乾燥させた後、残留溶媒量3〜10質量%になった時点でウェブの両端を把持し、延伸テンターを用いて、100℃で加熱しながら幅方向に1.15倍に延伸し、両端の把持を解放して、多数のロールで搬送させながら125℃の乾燥ゾーンで乾燥を終了させ、フィルム両端に幅10mm、高さ10μmのナーリング加工を施して、膜厚80μmのセルロースエステルフィルムを作製した。フィルム幅は1300mm、巻き取り長は500m毎にアルミニウム蒸着テープによる繋ぎを入れ3000mとした。
【0181】
〔バックコート層を有するセルロースエステルフィルムの作製〕
上記で作製したセルロースエステルフィルムのA面(ステンレススティールベルトでのウェブ乾燥中のウェブの空気側の面)に、下記で調製したバックコート層塗布組成物Aをウェット膜厚14μmとなるように押出しコータで塗布し、85℃にて乾燥し巻き取り、バックコート層を有するセルロースエステルフィルムを作製した。
【0182】
〈バックコート層塗布組成物Aの調製〉
アセトン 30質量部
酢酸エチル 45質量部
イソプロピルアルコール 10質量部
ジアセチルセルロース 0.6質量部
アエロジル200Vの2%アセトン分散液 0.2質量部
〔クリアハードコート層を有するセルロースエステルフィルムの作製〕
上記で作製したバックコート層を有するセルロースエステルフィルムのB面(ステンレススティールベルト上で乾燥中のウェブのベルト側の面)上にワイヤーバーコータを用いて下記のクリアハードコート層組成物Aを液膜厚が13μmとなるように押出しコータで塗布し、次いで80℃に設定された乾燥部で乾燥した後、120mJ/cm2で紫外線照射し、乾燥膜厚で3μmの中心線平均表面粗さ(Ra)13nmのクリアハードコート層を有するセルロースエステルフィルムを作製し、巻き取った。
【0183】
〈クリアハードコート層組成物A〉
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分
20質量部
ジメトキシベンゾフェノン 4質量部
酢酸エチル 45質量部
メチルエチルケトン 45質量部
イソプロピルアルコール 60質量部。
【0184】
〔反射防止フィルムの作製〕
(反射防止フィルム製造装置の準備)
図2に示す反射防止フィルム製造装置を使用した。
【0185】
(測定手段の準備)
測定手段として、光源としてハロゲンランプを使用し、レンズ径25.4mmの投光部と受光部とを有するセンサー、ディテクターを有する反射率分光スペクトル測定型(大塚電子(株)製CPD7000型)を使用し、各反射防止層との光軸の交わる角度を90°になる様にし、反射防止層の幅方向に3箇所、反射防止フィルム製造装置のフレームに配設した。
【0186】
(塗布開始前の測定手段の校正)
図2に示す反射防止フィルム製造装置の第1塗布部〜第3塗布部に設けられた各制御部の測定手段の校正を塗布開始前に図4に示す方式でベースラインの校正を行った。中屈折率層測定用の測定手段の校正は、中屈折率層の反射率に近い基準板として、反射率12%のサファイア板を使用し、ベースライン用の基準板としては反射率が0%になるように設置したミラーに照射し、校正を行った。
【0187】
高屈折率層測定用の測定手段の校正は、高屈折率層の反射率に近い基準板として、反射率35%のシリコーン蒸着板を使用し、ベースライン用として投光の反射が0になるように設置したミラーに照射し、校正を行った。
【0188】
低屈折率層測定用の測定手段の校正は、低屈折率層の反射率に近い基準板として、反射率4%のBK7を使用し、ベースライン用として投光の反射が0になるように設置したミラーに照射し、校正を行った。
【0189】
(塗布中の測定手段の校正)
図2に示す反射防止フィルム製造装置の第1塗布部〜第3塗布部に設けられた各制御部の測定手段の校正を塗布が行われている途中で表1に示す様に校正条件で図4に示す方式でベースラインの校正を行った。尚、校正に使用した基準板は塗布前の測定手段の校正に使用したものと同じものを使用した。
【0190】
【表1】

【0191】
(各反射防止層の塗布)
準備した反射防止フィルム製造装置を使用し、作製したバックコート層及びクリアハードコート層を有するセルロースエステルフィルムのクリアハードコート層の上に、クリアハードコート層の上に形成される中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の反射率を、表1に示す校正条件で校正した測定手段を使用し測定した結果を、各制御部の制御手段にフィードバックし、以下に示す塗布条件で中屈折率層用塗布液、高屈折率層用塗布液、低屈折率層用塗布液の供給量を制御しながら塗布し、クリアハードコート層の上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層をこの順に有する反射防止フィルムを作製し試料No.101〜105とした。
【0192】
〈中屈折率層〉
上記で得られたクリアハードコート層を有するセルロースエステルフィルムのクリアハードコート層の上に、第1塗布部で押出コータにより、乾燥膜厚が100nmになるように下記中屈折率層組成物を塗布し、第1乾燥部で80℃で乾燥させた後、更に120℃で乾燥し、乾燥終了後冷却部で冷却して、高圧水銀ランプ(80W)の紫外線照射装置を用いて、紫外線を175mJ/cm2で照射し、中屈折率層を形成した。中屈折率層を有するセルロースエステルフィルムを中屈折率層側から準備した測定手段で反射率を測定し、各測定値を制御手段に入力し、予め入力してある設定値との差を演算して、その結果に従ってを中屈折率層用塗布液の押出しコータへの供給量を送液ポンプの回転数を制御することで供給量を制御して塗布量を修正し塗布をた。尚、測定手段による中屈折率層の測定は1秒に1回行った。塗布速度は20m/分で行った。
【0193】
《中屈折率層組成物》
イソプロピルアルコール 510質量部
水 2質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 227質量部
メチルエチルケトン 84質量部
テトラ(n)ブトキシチタン 39質量部
KBM503(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学(株)製) 6質量部
ダイヤナールBR102(アクリル樹脂、三菱レーヨン(株)製)5%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液 31質量部
KF−96−1000CS(シリコーンオイル、信越化学工業(株)製)
10%メチルエチルケトン溶液 1.5質量部。
【0194】
〈高屈折率層〉
続いて、セルロースエステルフィルム上に形成された中屈折率層の上に、第2塗布部で押出コータにより、乾燥膜厚が60nmになるように下記高屈折率層組成物を塗布し、第2乾燥部で80℃で乾燥させた後、更に120℃で乾燥し、乾燥終了後冷却して、高圧水銀ランプ(80W)の紫外線照射装置を用いて、紫外線を175mJ/cm2で照射し、高屈折率層を形成した。中屈折率層/高屈折率層を有するセルロースエステルフィルムを高屈折率層側から準備した測定手段で反射率を測定し、各測定値を制御手段に入力し、予め入力してある設定値との差を演算して、その結果に従ってを高屈折率層用塗布液の押出しコータへの供給量を送液ポンプの回転数を制御することで供給量を制御して塗布量を修正し塗布をた。尚、測定手段による高屈折率層の測定は1秒に1回行った。塗布速度は20m/分で行った。
【0195】
《高屈折率層組成物》
イソプロピルアルコール 445質量部
水 1.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 223質量部
メチルエチルケトン 73質量部
テトラ(n)ブトキシチタン 545質量部
KBM503 0.8質量部
KF−96−1,000CS10%メチルエチルケトン溶液
1.4質量部。
〈低屈折率層〉
更に続いて、中屈折率層/高屈折率層積層を有するセルロースエステルフィルムの高屈折率層の上に、第3塗布部で押出コータにより、乾燥膜厚が120nmになるように下記低屈折率層組成物を塗布し、第3乾燥部で80℃で乾燥させた後、更に120℃で乾燥し、乾燥終了後冷却して、高圧水銀ランプ(80W)の紫外線照射装置を用いて、紫外線を175mJ/cm2で照射し、低屈折率層を形成した。中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層を有するセルロースエステルフィルムの低屈折率層側から準備した測定手段で反射率を測定し、各測定値を制御手段に入力し、予め入力してある設定値との差を演算して、その結果に従ってを高屈折率層用塗布液の押出しコータへの供給量を送液ポンプの回転数を制御することで供給量を制御して塗布量を修正し塗布をた。尚、測定手段による高屈折率層の測定は1秒に1回行った。塗布速度は20m/分で行った。
【0196】
《低屈折率層組成物》
プロピレングリコールモノメチルエーテル 303質量部
イソプロピルアルコール 305質量部
テトラエトキシシラン加水分解物A 139質量部
KBM503 1.6質量部
FZ−2207(日本ユニカー社製)10%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液 1.3質量部。
【0197】
《テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製》
テトラエトキシシラン580gとエタノール1144gを混合し、これにクエン酸水溶液(クエン酸1水和物5.4gを水272gに溶解したもの)を添加した後に、室温(25℃)にて1時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。
【0198】
(評価)
得られた各試料No.101〜105に付き、膜厚安定性を評価した結果を表2に示す。膜厚安定性は、次の方法で測定し、以下に示す評価ランクに従って評価した。
【0199】
膜厚安定性
塗布開始から10m毎に膜厚測定を実施し、500m毎にばらつき幅(R)と、偏差(D)を算出した。膜厚測定は、大塚電子(株)製 RE3000型を使用した。
【0200】
評価ランク
◎:ばらつき幅(R)が1nm未満、偏差(D)が0.2nm以下
○:ばらつき幅(R)が1nm以上〜2nm未満、偏差(D)が0.2nm以上〜0.5nm未満
△:ばらつき幅(R)が2nm以上〜5nm未満、偏差(D)が0.5nm以上〜1.0nm未満
×:ばらつき幅(R)が5nm以上〜10nm未満、偏差(D)が1.0nm以上〜3.0nm未満
【0201】
【表2】

【0202】
試料No.105は500〜1000m迄の膜厚が安定していたが、1000m以降は膜厚が不安定となり製品化は難しいレベルとなった。試料No.101〜104は何れも塗布開始から塗布終了まで膜厚が安定することが確認され、本発明の有効性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。
【図2】反射防止フィルムの製造方法の一例を示す模式図である。
【図3】図1に示される反射防止フィルム製造工程を構成している塗布部と制御部との関係を示す概略ブロック図である。
【図4】図2に示す測定手段で、校正時に測定手段が回動し、固定している基準板を測定する方式の模式図である。
【図5】図4に示すセンサー部の光学系の概略図である。
【図6】図2に示す測定手段で、校正時に測定手段が移動し、回動可能に設置された基準板を測定する方式の模式図である。
【図7】図2に示す測定手段で、校正時に固定された測定手段が、基準板をミラーを介して測定する方式の模式図である。
【符号の説明】
【0204】
1a〜1d 反射防止フィルム
101 透明フィルム基体
102 高屈折率層
103 低屈折率層
104 ハードコート層
105 中屈折率層
2 反射防止フィルム製造装置
3 フィルム基体繰り出し部
4 塗布液供給部
5 塗布部
501 第1塗布部
502 第2塗布部
503 第3塗布部
501a、502a、503a コータ
6 乾燥部
601 第1乾燥部
602 第2乾燥部
603 第3乾燥部
7 制御部
701 第1制御部
701a、702a、703a 測定手段
701a1、701a11〜701a13 センサー部
701a2 光源
701a3 ディテクター
701a5、701a6、701d1、701d2 基準板
701d 基準板取り付け板
701b、702b、703b 制御部
701e ミラー
702 第2制御部
703 第3制御部
8 巻き取り部
9 繋ぎ目検出機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して移送するフィルム基材上に直接又は他の層を介して、少なくとも1層の反射防止層用塗布液を塗布・乾燥し反射防止層を形成した後、前記反射防止層の膜厚を測定手段により計測し、予め用意した基準値と対比、演算し、その結果を塗布膜厚制御系にフィードバックし、前記反射防止層の塗布条件を制御しながら製造する反射防止フィルムの製造方法において、
前記反射防止層用塗布液の塗布・乾燥開始時の前記反射防止層の膜厚は予め校正がなされた前記測定手段により測定し、
以降、前記反射防止層用塗布液の塗布継続中に工程を止めることなく、前記測定手段の校正(補正)を行い、
校正した前記測定手段により前記反射防止層の膜厚測定を行い、
前記反射防止層用塗布液の塗布・乾燥を連続的に行うことを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記測定手段が反射率分光方式測定装置であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記測定手段がフィルム基材の幅方向に測定箇所に応じて配設されていることを特徴とする請求項1又は2記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記測定手段の校正は、塗布継続中にフィルム基材の繋ぎ目を検出した直後に行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記測定手段の校正は、塗布継続中に5〜180分の間に少なくとも1回行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記測定手段の校正は、塗布継続中にフィルム基材の繋ぎ目を検出した直後に行い、且つ5〜180分の間に少なくとも1回行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記測定手段の校正は、ベースライン用基準板と少なくとも1枚の反射防止層用基準板を固定し、該測定手段を駆動させてベースラインの設定を行うことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記測定手段の校正は、該測定手段を固定し、ベースライン用基準板と少なくとも1枚の反射防止層用基準板を移動させてベースラインの設定を行うことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記測定手段の校正は、ミラーを介してベースライン用基準板と少なくとも1枚の反射防止層用基準板に光を照射し、該ベースライン用基準板と該反射防止層用基準板から反射する光を該ミラーを介して読みとり、ベースラインの設定を行うことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記膜厚測定は反射防止層の幅方向で少なくとも3箇所行うことを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記測定手段が反射防止層の幅手方向に移動する架台上に設置されていることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法で製造されたことを特徴とする反射防止フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−258880(P2006−258880A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72699(P2005−72699)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】