説明

回路接続用接着剤組成物、この接着剤組成物用いた回路部材の接続構造及び回路部材の接続方法

【課題】 COG実装やCOF実装に対して低抵抗の電気接続特性と隣接電極間の高い絶縁性が両立でき、かつ液晶表示用ガラスパネルへ液晶駆動用ICを実装した後のパネル反りが十分に防止でき、さらに回路部材に対して回路接続部材を転写させる工程において転写不良を十分に防止することのできる接着剤組成物、この接着剤組成物を用いた回路部材の接続構造及び回路部材の接続方法を提供する。
【解決手段】 回路部材に対してセパレータ側から所定の条件で圧着することで導電性接着層を粘着させ、かつセパレータを除去することで接着剤組成物を転写させる工程における回路部材と導電性接着層間の引っ張り剥離試験による密着力が、試験温度23℃、剥離角度90°及び剥離速度50mm/minで20〜200N/mである回路接続用接着剤組成物、この接着剤組成物を用いた回路部材の接続構造及び回路部材の接続方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路接続用接着剤組成物、詳しくは、回路接続用異方導電性接着剤組成物(以下、単に接着剤組成物という)、この接着剤組成物を用いた回路部材の接続構造及び回路部材の接続方法に関し、特に、CHIP−ON−GLASS実装(以下COG実装という)又はCHIP−ON−FLEX(以下COF実装という)における回路部材の接続構造及び回路部材の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示用ガラスパネルへの液晶駆動用ICの実装は、液晶駆動用ICを直接ガラスパネル上に回路接続部材で接合するCOG実装方法や、液晶駆動用ICを、金属配線を有するフレキシブルテープに接合しガラスパネルと回路接続部材で接合するCOF実装方法が用いられる。これらの微細回路が形成された回路部材同士の接続は、従来のハンダやゴムコネクタでは対応が困難であることから、異方導電性を有する接着剤組成物が使用されている。
【0003】
これに対して、近年の液晶表示の高精細化に伴い、回路部材に形成される回路電極の高密度化が進展している。このため、回路電極のさらなる微細化、すなわち多電極化や狭ピッチ化などの高精細化が進む傾向にあり、高精細液晶モジュールにおける高い接続信頼性が要求されている。
【0004】
しかしながら、従来の回路接続部材では、部材中の導電粒子が隣接電極間に流出し、ショートを発生させるといった問題があった。
また、ショートを避けるために部材中の導電粒子数を減らした場合には、バンプ/パネル間に捕捉される回路接続部材中の導電粒子数が減少し、その結果、回路間の接続抵抗が上昇し接続不良を起こすといった問題があった。
【0005】
そこで、これらの問題を解決するため、回路接続部材の少なくとも片面に絶縁性の接着層を形成することで、COG実装及びCOF実装における接合品質の低下を防ぐ方法(例えば、特許文献1参照)や、表面の一部が絶縁性微粒子で被覆された導電粒子によって、隣接電極間の十分な長期絶縁信頼性を確保する方法(例えば、特許文献2参照)が考案されている。
【0006】
しかしながら、前記の方法では、バンプ面積が小さい、例えば3000μm未満であるときに安定した接続抵抗値を得るために粒子の充填量を増やす場合には、回路接続部材の接着剤成分に対して導電粒子が体積的に占有する割合が多くなり、その結果導電粒子を含有する導電性接着層の表層の粘着力が低下して、回路部材同士を接続する工程の一つである、一方の回路部材に対して導電性接着層を粘着させ、セパレータを除去することで回路接続部材を転写させる工程において転写不良が発生するという点で未だ改良の余地があった。
【0007】
さらに、導電性接着層の粘着性を向上させるために、接着剤成分中のエポキシ樹脂の割合を増やす場合は、液晶表示用ガラスパネルへの液晶駆動用ICの実装時に、加熱加圧後の回路接続部材の硬化物の貯蔵弾性率が高くることにより生じ得るパネル反りによる表示品位の低下を防止するという点で、未だ改良の余地が残されていた。
【0008】
【特許文献1】特開平08−279371号公報
【特許文献2】特開2005−197089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、COG実装やCOF実装に対して低抵抗の電気接続特性と隣接電極間の高い絶縁性が両立でき、かつ液晶表示用ガラスパネルへ液晶駆動用ICを実装した後のパネル反りが十分に防止でき、さらに回路部材に対して回路接続部材を転写させる工程において転写不良を十分に防止することのできる接着剤組成物、この接着剤組成物を用いた回路部材の接続構造及び回路部材の接続方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明になる接着剤組成物は、相対峙する接続端子間に介在され、相対向する回路電極を加圧し、加圧方向の電極間を電気的に接続する接着剤組成物であって、導電粒子を含有する導電性接着層と絶縁性接着層が積層されており、かつセパレータが絶縁性接着層と密着した構成である。
【0011】
すなわち、本発明は、導電粒子を含有する導電性接着層と絶縁性接着層が積層されており、かつセパレータ(支持材)が絶縁性接着層と密着した構成となっている接着剤組成物において、回路部材に対してセパレータ側から所定の条件で圧着することで導電性接着層を粘着させ、かつセパレータを除去することで接着剤組成物を転写させる工程における回路部材と導電性接着層間の引っ張り剥離試験による密着力が、試験温度23℃、剥離角度90°及び剥離速度50mm/minで20〜200N/mである接着剤組成物に関する。
接着剤組成物が前記のような密着力を有していると、セパレータを除去する際に、接着剤組成物が回路部材から剥離することなくセパレータの剥離除去が可能で、良好な転写性を確保できる。
【0012】
また、本発明は、前記接着剤組成物を転写させる工程における、セパレータと絶縁性接着層間の引っ張り剥離試験による密着力が、試験温度23℃、剥離角度90°及び剥離速度50mm/minで4〜40N/mであり、かつ回路部材と導電性接着層間の密着力よりも小さいものである上記の接着剤組成物に関する。
このような構成にすることにより、セパレータを剥離除去する工程で、セパレータ側に接着剤組成物が残ることなく、また転写工程以外で接着剤組成物がセパレータから剥離、脱落することなく、本発明の目的を達成することができる。
【0013】
また、本発明は、前記導電粒子を含有する導電性接着層が、分子量1000以下のビスフェノールF型液状エポキシ樹脂を必須成分として含有したものである上記の接着剤組成物に関する。
これによれば、接着剤成分中のエポキシ樹脂の割合を変えることなく、導電性接着層の粘着性を向上させることが可能で、より高度に本発明の目的を達成することができる。
【0014】
また、本発明は、相対峙する接続端子間を電気的に接続するために用いられる、上記に記載の接着剤組成物において、前記接着剤組成物の硬化物の40℃における周波数10Hzの貯蔵弾性率E’が、0.5〜2.5GPaである上記の接着剤組成物に関する。
上記のような貯蔵弾性率E’とすることにより、接続端子を接続した後の接着剤組成物の硬化物中の成分の凝集力が向上し、且つ内部応力が低減する。そのため、実装品の表示品位、接着力及び導通特性の向上といった有利な効果が得られる。
【0015】
また、本発明は、前記絶縁性接着層及び/又は前記導電性接着層が、フィルム形成材、エポキシ樹脂及び潜在性硬化剤を含む上記の接着剤組成物に関する。
これによれば、本発明による上述の効果をより確実に奏することができる。
【0016】
また、本発明は、第一の接続端子を有する第一の回路部材及び第二の接続端子を有する第二の回路部材を、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に上記の接着剤組成物を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させる回路部材の接続構造に関する。
【0017】
接着剤組成物は、上記接続工程の前工程における、一方の回路部材に対してセパレータ側から所定の条件で圧着することで導電性接着層を粘着させ、セパレータを除去することで接着剤組成物を転写させる際の、回路部材と導電性接着層間の引っ張り剥離試験による密着力が、試験温度23℃、剥離角度90°及び剥離速度50mm/minで、20〜200N/mである接続構造を提供するもので、このような回路部材の接続構造によれば、本発明になる接着剤組成物を用いているために、良好な電気的接続及び長期接続信頼性を確保できる。
【0018】
また、本発明は、前記第一及び第二の回路部材のうち少なくとも一方が、ICチップである上記の回路端子の接続構造に関する。
また、本発明は、前記第一及び第二の接続端子のうち少なくとも一方の表面が、金、銀、錫、白金族の金属、アルミニウム、チタン、モリブデン、クロム、インジュウム−錫酸化物(ITO)及びインジュウム−亜鉛酸化物(IZO)からなる群より選ばれる少なくとも一種で構成される上記の回路部材の接続構造に関する。
【0019】
また、本発明は、前記第一及び第二の回路部材のうち少なくとも一方の表面が、窒化シリコン、シリコーン化合物及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種でコーティングもしくは付着処理されている、上記の回路部材の接続構造に関する。
【0020】
さらに、本発明は、第一の接続端子を有する第一の回路部材及び第二の接続端子を有する第二の回路部材を、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置した後、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に上記に記載の接着剤組成物を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させることを特徴とする回路部材の接続方法に関する。
【0021】
接着剤組成物は、上記接続工程の前工程における、一方の回路部材に対してセパレータ側から所定の条件で圧着することで導電性接着層を粘着させ、セパレータを除去することで上記の接着剤組成物を転写させる際の、回路部材と導電性接着層間の引っ張り剥離試験による密着力が、試験温度23℃、剥離角度90°及び剥離速度50mm/minで、20〜200N/mである接続方法を提供するもので、このような回路部材の接続方法によれば、本発明になる接着剤組成物を用いているために、良好な電気的接続及び長期接続信頼性を確保できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、COG実装やCOF実装に対して、微小電極において低抵抗の電気接続が得られ、かつ液晶表示用ガラスパネルへの液晶駆動用ICを実装した後のパネル反り発生が十分に防止され、さらに実装工程における作業性向上、作業時間の短縮や不良発生の低減が可能な接着剤組成物、この接着剤組成物を用いた回路部材の接続構造及び回路部材の接続方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の最良の形態に制限するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0024】
本発明は、導電粒子を含有する導電性接着層と絶縁性接着層が積層されており、かつセパレータが絶縁性接着層と密着した構成となっている回路接続用接着剤組成物において、回路部材に対してセパレータ側から所定の条件で圧着することで導電性接着層を粘着させ、セパレータを除去することで接着剤組成物を転写させる工程における、回路部材と導電性接着層間の引っ張り剥離試験による密着力が、試験温度23℃、剥離角度90°及び剥離速度50mm/minで、20〜200N/mである接着剤組成物を提供することを特徴とするものである。
【0025】
本発明になる接着剤組成物によれば、COG実装やCOF実装に対して、微小電極において低抵抗の電気接続が得られ、かつ液晶表示用ガラスパネルへの液晶駆動用ICを実装した後のパネル反り発生が十分に防止され、さらに実装工程における作業性向上、作業時間の短縮や不良発生の低減が可能である。
【0026】
同様の観点から密着力の値は、20〜200N/mの範囲とされ、50〜150N/mであることが好ましい。密着力の値が上記数値範囲内にあることで、この値が20N/m未満である場合と比較して、回路接続部材の転写工程において、セパレータを除去した際に回路接続部材が回路部材から剥離、脱落することが無くなり、本発明による目的を達成できる。
【0027】
また、密着力の値が上記数値範囲内にあることで、この値が200N/mを超える場合と比較して、必要に応じて接着剤組成物の剥離による物理的な除去が容易で、且つセパレータ付きの状態で巻き取って形状を維持する際の背面転着を防止でき、本発明による目的を達成できる。
【0028】
すなわち、20N/m未満では、セパレータを除去する際に接着剤組成物が回路部材から剥離して転写不良が発生するため好ましくない。一方、200N/mを超えると、例えば、転写以降の工程における不具合で、同じ回路部材を再利用するために転写されている接着剤組成物を除去する必要がある場合に、接着剤組成物の剥離による物理的な除去が難しいため好ましくなく、さらにセパレータ付き接着剤組成物を巻き取った状態で製品としての形状を保つ場合は、導電性接着層が背面のセパレータに転着することで、転写工程以外で接着剤組成物がセパレータから、剥離、脱落する場合が有るため好ましくない。
【0029】
前記回路接続用接着剤組成物における、セパレータと絶縁性接着層間の剥離試験による密着力は、試験温度23℃、剥離角度90°及び剥離速度50mm/minで、4〜40N/mであり、かつ回路部材と導電性接着層間の密着力よりも小さいことが好ましい。
また、前記回路接続用接着剤組成物における、導電性接着層には分子量1000以下のビスフェノールF型液状エポキシ樹脂を含有することが好ましい。
【0030】
本発明に用いられる導電粒子としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、はんだ等の金属粒子やカーボンなどがあり、十分なポットライフを得るためには、表層はNi、Cu等の遷移金属類ではなくAu、Ag、白金属等の貴金属類が好ましく、Auがより好ましい。
また、Niなどの遷移金属類の表面をAuなどの貴金属類で被覆したものでもよい。
【0031】
また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等に前記した導通層を被覆などの方法により形成し、最外層を貴金属類とした場合や熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧により変形性を有するので接続時に電極との接触面積が増加し、信頼性が向上するので好ましい。
【0032】
非導電性物質の表面に貴金属類を被覆したものにおける被覆層の厚みは良好な抵抗を得るために、100オングストローム以上であることが好ましい。
また、Niなどの遷移金属の表面に貴金属類の層を設ける場合では、貴金属類層の欠損や導電粒子の混合分散時に生じる貴金属類層の欠損などにより生じる酸化還元作用で遊離ラジカルが発生し保存性低下を引き起こすおそれがある。そのため、被覆層の厚みが300オングストローム以上であることが好ましい。
【0033】
なお、被覆層の厚みが1μm以上になると、上述の効果が飽和してくることから、被覆層の厚みは1μm未満であることが望ましいが、これは被覆層の厚みを制限するものではない。上記導電粒子は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0034】
このような導電粒子は、接着剤樹脂成分100体積部に対して0.1〜30体積部の範囲で用途により使い分ける。過剰な導電性粒子による隣接回路の短絡等を防止するためには0.1〜10体積部とするのがより好ましい。
【0035】
絶縁性接着層及び導電性接着層は、フィルム形成材、エポキシ樹脂及び潜在性硬化剤を含有することが好ましい。これによれば、本発明による上述の効果をより確実に奏することができる。
【0036】
本発明に用いられるフィルム形成材とは、液状物を固形化し、構成組成物をフィルム形状とした場合に、そのフィルムの取扱いが容易で、容易に裂けたり、割れたり、べたついたりしない機械特性などを付与するものであり、通常の状態でフィルムとしての取扱いができるものである。
【0037】
その具体例としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、キシレン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。この中でも接着性、相溶性、耐熱性、機械強度に優れることからフェノキシ樹脂が、特に好ましい。
【0038】
フェノキシ樹脂は、2官能フェノール類とエパハロヒドリンを高分子量まで反応させるか又は2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール類を重付加させることにより得られる樹脂である。具体的には、2官能フェノール類1モルとエピハロヒドリン0.985〜1.015とをアルカリ金属水酸化物の存在下において非反応性溶媒中で40〜120℃の温度で反応させることにより得ることができる。
【0039】
また、樹脂の機械的特性や熱的特性の点からは、特に、2官能性エポキシ樹脂と2官能性フェノール類の配合当量比を、エポキシ基/フェノール水酸基=1/0.9〜1/1.1とし、アルカリ金属化合物、有機リン系化合物、環状アミン系化合物等の触媒の存在下で沸点が120℃以上のアミド系、エーテル系、ケトン系、ラクトン系、アルコール系等の有機溶剤中で、反応固形分が50重量部以下で50〜200℃に加熱して重付加反応させて得たものが好ましい。
【0040】
上記2官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルジグリシジルエーテル、メチル置換ビフェニルジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0041】
2官能フェノール類は、2個のフェノール性水酸基を有するものである。2官能フェノール類としては、例えば、ハイドロキノン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、メチル置換ビスフェノールフルオレン、ジヒドロキシビフェニル、メチル置換ジヒドロキシビフェニル等のビスフェノール類等が挙げられる。
【0042】
フェノキシ樹脂は、ラジカル重合性の官能基や、その他の反応性化合物により変性(例えば、エポキシ変性)されていてもよい。なお、フェノキシ樹脂は、単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0043】
本発明に用いられるエポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンとビスフェノールA、F、AD等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂やナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物等を単独に又は2種以上を混合して用いることが可能である。
【0044】
これらのエポキシ樹脂は、不純物イオン(Na、Cl等)、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることがエレクトロンマイグレーション防止のために好ましい。
【0045】
本発明に用いられる潜在性硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化させることができるものであればよく、このような潜在性硬化剤としては、アニオン重合性の触媒型硬化剤、カチオン重合性の触媒型硬化剤、重付加型の硬化剤等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上の混合物として使用できる。これらのうち、速硬化性において優れ、化学当量的な考慮が不要である点からは、アニオン又はカチオン重合性の触媒型硬化剤が好ましい。
【0046】
アニオン又はカチオン重合性の触媒型硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ジアミノマレオニトリル、メラミン及びその誘導体、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等が挙げられ、これらの変成物も使用することができる。重付加型の硬化剤としては、ポリアミン類、ポリメルカプタン、ポリフェノール、酸無水物等が挙げられる。
【0047】
アニオン重合型の触媒型硬化剤として第3級アミン類やイミダゾール類を配合した場合、エポキシ樹脂は、160℃〜200℃程度の中温で数10秒〜数時間程度の加熱により硬化する。このため、可使時間(ポットライフ)が比較的長くなるので好ましい。
【0048】
カチオン重合型の触媒型硬化剤としては、例えば、エネルギー線照射によりエポキシ樹脂を硬化させる感光性オニウム塩(芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩等が主として用いられる)が好ましい。
【0049】
また、エネルギー線照射以外に加熱によって活性化しエポキシ樹脂を硬化させるものとして、脂肪族スルホニウム塩などがある。この種の硬化剤は、速硬化性という特徴を有することから好ましい。
【0050】
これらの潜在性硬化剤を、ポリウレタン系又はポリエステル系等の高分子物質や、ニッケル、銅等の金属薄膜及びケイ酸カルシウムなどの無機物で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長できるため好ましい。
【0051】
本発明になる接着剤組成物には、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル又はアクリロニトリルのうち少なくとも一つをモノマー成分とした重合体又は共重合体を使用することができ、グリシジルエーテル基を含有するグリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートを含む共重合体系アクリルゴムを併用した場合、応力緩和に優れるので好ましい。これらアクリルゴムの分子量(サイズ排除クロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量)は接着剤の凝集力を高める点から20万以上が好ましい。
【0052】
本発明になる接着剤組成物には、さらに、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、難燃化剤、色素、チキソトロピック剤、カップリング剤及びフェノール樹脂やメラミン樹脂、イソシアネート類等を含有することもできる。
【0053】
充填剤を含有した場合、接続信頼性などの向上が得られるので好ましい。充填剤の最大径が導電粒子の粒径未満であれば使用でき、5〜60体積部(接着剤樹脂成分100体積部に対して)の範囲が好ましい。60体積部を超えると信頼性向上の効果が飽和することがあり、5体積部未満では添加の効果が少ない。
【0054】
カップリング剤としては、ケチミン、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基含有物が、接着性の向上の点から好ましい。具体的には、アミノ基を有するシランカップリング剤として、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0055】
ケチミンを有するシランカップリング剤としては、上記のアミノ基を有するシランカップリング剤に、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物を反応させて得られたものが挙げられる。
【0056】
上述の接着剤組成物の硬化物は、40℃、周波数10Hzの貯蔵弾性率E’が0.5〜2.5GPaであることが好ましく、1.0〜2.0GPaであることがより好ましい。このようにすれば、貯蔵弾性率が上記範囲外である場合と比較して、接続端子を接続した後の接着剤組成物の硬化物中の成分の凝集力が向上し、かつ内部応力が低減する。そのため、この接着剤組成物を用いた実装品の表示品位、接着力及び導通特性の向上といった有利な効果が得られる。
【0057】
貯蔵弾性率が、0.5GPa未満の場合は、上述の範囲である場合と比較して、接着剤組成物の硬化物中の成分の凝集力が低く、回路部材を接続するときの接続部分の電気抵抗が上昇する傾向がある。また貯蔵弾性率が、2.5GPa超える場合は、上述の範囲である場合と比較して、接着剤組成物の硬化物中の成分の凝集力が高すぎるため、実装品のパネル反り防止効果が低下する傾向がある。
【0058】
上述の回路部材と導電性接着層間の密着力の数値範囲を満足する本発明の接着剤組成物は、例えば、導電性接着層に分子量1000以下のビスフェノールF型液状エポキシ樹脂を適用すること又はDSC測定(昇温速度10℃/min)で導出されるガラス転移温度(Tg)が、80℃以下の低Tgフェノキシ樹脂を適用するなどによって得ることができる。
【0059】
本発明になる接着剤組成物は、ICチップとチップ搭載基板との接着や電気回路相互の接着用のフィルム状接着剤として使用することもできる。すなわち、第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に本発明の接着剤組成物(接着フィルム)を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させることができる。
【0060】
このような回路部材としては、半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品、プリント基板等の基板が用いられる。
これらの回路部材には、接続端子が通常は多数(場合によっては単数でもよい)設けられており、前記回路部材の少なくとも1組をそれらの回路部材に設けられた接続端子の少なくとも一部を対向配置し、対向配置した接続端子間に本発明の接着剤を介在させ、加熱加圧することで対向配置した接続端子同士を電気的に接続して回路板とする。
【0061】
回路部材の少なくとも1組を加熱加圧することにより、対向配置した接続端子同士は、直接接触することにより又は接着剤組成物中の導電性粒子を介して電気的に接続することができる。
【0062】
本発明になる接着剤組成物は、COG実装やCOF実装における、フレキシブルテープやガラス基板とICチップとの接着用のフィルム状接着剤として使用することもできる。すなわち、第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に本発明の接着剤組成物(接着フィルム)を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させることができる。
【0063】
本発明になる回路端子の接続方法は、本発明の回路接続用異方導電性接着剤組成物を、接続端子の表面が、金、銀、錫、白金族の金属、インジュウム−錫酸化物(ITO)、インジュウム−亜鉛酸化物(IZO)から選ばれる少なくとも一種から構成される接続端子(電極回路)に形成した後、もう一方の接続端子(回路電極)を位置合わせし加熱加圧して接続することができる。このとき、一方の回路部材側から光を照射してもよい。
【0064】
本発明においては、フレキシブルテープがポリイミド樹脂等の有機絶縁物質、ガラス基板の表面が窒化シリコン、シリコーン化合物、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも一種でコーティング又は付着した回路部材に対して特に良好な接着強度が得られる電気・電子用の接着剤組成物の提供が可能となる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに制限するものではない。なお、下記の実施例において、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂は、インケムコーポレーション社製、商品名「PKHC」、ビスフェノールA・F型共重合型フェノキシ樹脂は、東都化成株式会社製、商品名「ZX−1356−2」、低Tgフェノキシ樹脂は、インケムコーポレーション社製、商品名「PKHM−301」及び芳香族スルホニウム塩は、三新化学株式会社製、商品名「サンエイドSI−60L」をそれぞれ用いた。
【0066】
(実施例1)
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂50gを、質量比50:50のトルエン(沸点110.6℃、SP値8.90)と酢酸エチル(沸点77.1℃、SP値9.10)との混合溶剤に溶解して、固形分40質量%の第一の溶液とし、一方ビスフェノールA・F共重合型フェノキシ樹脂50gを、質量比50:50のトルエンと酢酸エチルとの混合溶剤に溶解して、固形分45質量%の第二の溶液を得た。
【0067】
上述の第一及び第二の溶液を混合し、その混合液にさらにビスフェノールA型液状エポキシ樹脂を配合した。これらはビスフェノールA型フェノキシ樹脂:ビスフェノールA・F共重合型フェノキシ樹脂:ビスフェノールA型液状エポキシが固形分質量比で30:30:40となるように配合し、接着剤組成物含有液を作製した。得られた接着剤組成物含有液に潜在性硬化剤として芳香族スルホニウム塩を2.4g添加して回路接続材料含有液を調製した。
【0068】
そして、この回路接続材料含有液を、片面を表面処理した厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗工装置を用いて塗布した後、70℃で5分の熱風乾燥により、PETフィルム上に厚みが10μmのフィルム状回路接続材料(絶縁性接着層)を得た。
【0069】
また、上述の第一及び第二の溶液を混合し、その混合液にさらにビスフェノールA型液状エポキシ樹脂及びビスフェノールF型液状エポキシ樹脂を配合した。これらはビスフェノールA型フェノキシ樹脂:ビスフェノールA・F共重合型フェノキシ樹脂:ビスフェノールA型液状エポキシ:ビスフェノールF型液状エポキシが固形分質量比で30:30:20:20となるように配合し、接着剤組成物含有液を作製した。得られた接着剤組成物含有液に導電性粒子を10体積%配合分散させ、潜在性硬化剤として芳香族スルホニウム塩を2.4g添加して回路接続材料含有液を調製した。
【0070】
そして、この回路接続材料含有液を、片面を表面処理した厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗工装置を用いて塗布した後、70℃5分の熱風乾燥により、PETフィルム上に厚みが10μmのフィルム状回路接続材料(導電性接着層)を得た。
形成した絶縁性接着層と導電性接着層とをラミネータを用いて貼り合わせ、PETフィルムで挟まれた接着フィルムを得た。
【0071】
(実施例2)
導電性接着層の形成を下記のように代えた以外は、実施例1と同様にしてPETフィルム付き接着フィルムを得た。
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂50gを、質量比50:50のトルエンと酢酸エチルとの混合溶剤に溶解して、固形分40質量%の第一の溶液とし、一方ビスフェノールA・F共重合型フェノキシ樹脂50gを、質量比50:50のトルエンと酢酸エチルとの混合溶剤に溶解して、固形分45質量%の第二の溶液を得た。
【0072】
上述の第一及び第二の溶液を混合し、その混合液にさらにビスフェノールF型液状エポキシ樹脂を配合した。これらはビスフェノールA型フェノキシ樹脂:ビスフェノールA・F共重合型フェノキシ樹脂:ビスフェノールF型液状エポキシが固形分質量比で30:30:40となるように配合し、接着剤組成物含有液を作製した。
【0073】
得られた接着剤組成物含有液に導電性粒子を10体積%配合分散させ、潜在性硬化剤として芳香族スルホニウム塩を2.4g添加して回路接続材料含有液を調製した。そして、この回路接続材料含有液を、片面を表面処理した厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗工装置を用いて塗布した後、70℃で5分の熱風乾燥により、PETフィルム上に厚みが10μmのフィルム状回路接続材料(導電性接着層)を得た。
【0074】
(実施例3)
導電性接着層の形成を下記のように代えた以外は、実施例1と同様にしてPETフィルム付き接着フィルムを得た。
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂50gを、質量比50:50のトルエンと酢酸エチルとの混合溶剤に溶解して、固形分40質量%の第一の溶液とし、一方ビスフェノールA・F共重合型フェノキシ樹脂50gを、質量比50:50のトルエンと酢酸エチルとの混合溶剤に溶解して、固形分45質量%の第二の溶液を得た。
【0075】
上述の第一及び第二の溶液を混合し、その混合液にさらにビスフェノールF型液状エポキシ樹脂を配合した。これらはビスフェノールA型フェノキシ樹脂:ビスフェノールA・F共重合型フェノキシ樹脂:ビスフェノールF型液状エポキシが固形分質量比で25:25:50となるように配合し、接着剤組成物含有液を作製した。
【0076】
得られた接着剤組成物含有液に導電性粒子を10体積%配合分散させ、潜在性硬化剤として芳香族スルホニウム塩を2.4g添加して回路接続材料含有液を調製した。そして、この回路接続材料含有液を、片面を表面処理した厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗工装置を用いて塗布した後、70℃で5分の熱風乾燥により、PETフィルム上に厚みが10μmのフィルム状回路接続材料(導電性接着層)を得た。
【0077】
(実施例4)
導電性接着層の形成を下記のように代えた以外は、実施例1と同様にしてPETフィルム付き接着フィルムを得た。
低Tgフェノキシ樹脂50gを、質量比50:50のトルエンと酢酸エチルとの混合溶剤に溶解して、固形分40質量%の第一の溶液とし、一方ビスフェノールA・F共重合型フェノキシ樹脂50gを、質量比50:50のトルエンと酢酸エチルとの混合溶剤に溶解して、固形分45質量%の第二の溶液を得た。
【0078】
上述の第一及び第二の溶液を混合し、その混合液にさらにビスフェノールA型液状エポキシ樹脂及びビスフェノールF型液状エポキシ樹脂を配合した。これらは低Tgフェノキシ樹脂:ビスフェノールA・F共重合型フェノキシ樹脂:ビスフェノールA型液状エポキシ:ビスフェノールF型液状エポキシが固形分質量比で30:30:20:20となるように配合し、接着剤組成物含有液を作製した。
【0079】
得られた接着剤組成物含有液に導電性粒子を10体積%配合分散させ、潜在性硬化剤として芳香族スルホニウム塩を2.4g添加して回路接続材料含有液を調製した。そして、この回路接続材料含有液を、片面を表面処理した厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗工装置を用いて塗布した後、70℃5分の熱風乾燥により、PETフィルム上に厚みが10μmのフィルム状回路接続材料(導電性接着層)を得た。
【0080】
(比較例1)
導電性接着層の形成を下記のように代えた以外は、実施例1と同様にしてPETフィルム付き接着フィルムを得た。
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂50gを、質量比50:50のトルエンと酢酸エチルとの混合溶剤に溶解して、固形分40質量%の第一の溶液とし、一方ビスフェノールA・F共重合型フェノキシ樹脂50gを、質量比50:50のトルエンと酢酸エチルとの混合溶剤に溶解して、固形分45質量%の第二の溶液を得た。
【0081】
上述の第一及び第二の溶液を混合し、その混合液にさらにビスフェノールF型液状エポキシ樹脂を配合した。これらはビスフェノールA型フェノキシ樹脂:ビスフェノールA・F共重合型フェノキシ樹脂:ビスフェノールA型液状エポキシが固形分質量比で30:30:40となるように配合し、接着剤組成物含有液を作製した。
【0082】
得られた接着剤組成物含有液に導電性粒子を10体積%配合分散させ、潜在性硬化剤として芳香族スルホニウム塩を2.4g添加して回路接続材料含有液を調製した。そして、この回路接続材料含有液を、片面を表面処理した厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗工装置を用いて塗布した後、70℃5分の熱風乾燥により、PETフィルム上に厚みが10μmのフィルム状回路接続材料(導電性接着層)を得た。
【0083】
(比較例2)
導電性接着層の形成を下記のように代えた以外は、実施例1と同様にしてPETフィルム付き接着フィルムを得た。
低Tgフェノキシ樹脂50gを、質量比50:50のトルエンと酢酸エチルとの混合溶剤に溶解して、固形分40質量%の第一の溶液とし、一方ビスフェノールA・F共重合型フェノキシ樹脂50gを、質量比50:50のトルエンと酢酸エチルとの混合溶剤に溶解して、固形分45質量%の第二の溶液を得た。
【0084】
上述の第一及び第二の溶液を混合し、その混合液にさらにビスフェノールF型液状エポキシ樹脂を配合した。これらは低Tgフェノキシ樹脂:ビスフェノールA・F共重合型フェノキシ樹脂:ビスフェノールF型液状エポキシが固形分質量比で30:20:50となるように配合し、接着剤組成物含有液を作製した。
【0085】
得られた接着剤組成物含有液に導電性粒子を10体積%配合分散させ、潜在性硬化剤として芳香族スルホニウム塩を2.4g添加して回路接続材料含有液を調製した。そして、この回路接続材料含有液を、片面を表面処理した厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗工装置を用いて塗布した後、70℃5分の熱風乾燥により、PETフィルム上に厚みが10μmのフィルム状回路接続材料(導電性接着層)を得た。
【0086】
(接着フィルムの回路部材への転写)
実施例1〜4及び比較例1、2の接着フィルムを用いて、接着フィルムの回路部材への転写を実施した。詳細には、まず接着フィルムを所定のサイズ(2.5mm×30mm)に裁断し、導電性接着層側のPETフィルムを剥離除去して導電性接着層の表面を露出した。
【0087】
次に、厚み0.5mmのガラス上にITO膜を蒸着により形成してITO基板(表面抵抗<20Ω□)を用いて、ITO膜の表面に上記接着フィルムの導電性接着層の表面を向かい合わせて接触させながら、70℃、1MPa、2秒間の条件でそれらの積層方向にセパレータ側から加熱加圧して、ITO基板に接着フィルムを仮固定した。
【0088】
その後、接着フィルムからもう一方のPETフィルムを剥離除去し、接着フィルムが転写した回路部材を作製した。
上記の転写工程を各実施例、比較例に対して10回実施し、転写が成功した回数を記録した。その結果を表1に示す。
【0089】
(回路部材と導電性接着層間の密着力測定)
上述の回路部材を用いて、回路部材と導電性接着層間の密着力測定を実施した。詳細には、まず回路部材上の接着フィルムの表面に、引っ張り試験時の伸び防止を目的として所定のサイズ(2.0mm×25mm)の粘着テープを接着フィルムからはみ出さないように貼付け、接着フィルムを粘着テープと一緒に引っ張り試験機を用いて、試験温度23℃、剥離角度90°、剥離速度50mm/minで測定し、測定値はN/m換算した。その結果を表1に示す。
【0090】
(セパレータと絶縁接着層間の密着力測定)
上述の回路部材における、PETフィルムを剥離除去する前の接着フィルムが転写した回路部材を用いて、セパレータと絶縁接着層間の密着力測定を実施した。引っ張り試験機を用いて、試験温度23℃、剥離角度90°、剥離速度50mm/minでセパレータを接着フィルムから剥離することで測定し、測定値はN/m換算した。その結果を表1に示す。
【0091】
(背面転着現象の評価)
実施例1〜4及び比較例1、2の接着フィルムを用いて、背面転着現象の評価を実施した。詳細には、各接着フィルムを導電性接着層側のPETフィルムを剥離除去した後、所定のサイズ(1.5mm×100m)に裁断して巻き取り、リール品の形状とした。
【0092】
次に、そのリール品を、30℃、70%RHの環境試験槽に1日放置し、放置後のリールからセパレータ付き接着フィルムを0.1m/sの速度で引き出して背面転着による接着フィルムのセパレータから剥離、脱落の有無を確認した。その結果を表1に示す。
【0093】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電粒子を含有する導電性接着層と絶縁性接着層が積層されており、かつセパレータ(支持材)が絶縁性接着層と密着した構成となっている回路接続用接着剤組成物において、回路部材に対してセパレータ側から所定の条件で圧着することで導電性接着層を粘着させ、かつセパレータを除去することで接着剤組成物を転写させる工程における回路部材と導電性接着層間の引っ張り剥離試験による密着力が、試験温度23℃、剥離角度90°及び剥離速度50mm/minで20〜200N/mである回路接続用接着剤組成物。
【請求項2】
前記接着剤組成物を転写させる工程における、セパレータと絶縁性接着層間の引っ張り剥離試験による密着力が、試験温度23℃、剥離角度90°及び剥離速度50mm/minで4〜40N/mであり、かつ回路部材と導電性接着層間の密着力よりも小さいものである請求項1記載の回路接続用接着剤組成物。
【請求項3】
前記導電粒子を含有する導電性接着層が、分子量1000以下のビスフェノールF型液状エポキシ樹脂を必須成分として含有したものである請求項1又は2記載の回路接続用接着剤組成物。
【請求項4】
相対峙する接続端子間を電気的に接続するために用いられる、請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物において、前記接着剤組成物の硬化物の40℃における周波数10Hzの貯蔵弾性率E’が、0.5〜2.5GPaである請求項1〜3のいずれかに記載の回路接続用接着剤組成物。
【請求項5】
前記絶縁性接着層及び/又は前記導電性接着層が、フィルム形成材、エポキシ樹脂及び潜在性硬化剤を含む請求項1〜4のいずれかに記載の回路接続用接着剤組成物。
【請求項6】
第一の接続端子を有する第一の回路部材及び第二の接続端子を有する第二の回路部材を、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に請求項1〜5のいずれかに記載の回路接続用接着剤組成物を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させる回路部材の接続構造。
【請求項7】
前記第一及び第二の回路部材のうち少なくとも一方が、ICチップである請求項6記載の回路部材の接続構造。
【請求項8】
前記第一及び第二の接続端子のうち少なくとも一方の表面が、金、銀、錫、白金族の金属、アルミニウム、チタン、モリブデン、クロム、インジュウム−錫酸化物(ITO)及びインジュウム−亜鉛酸化物(IZO)からなる群より選ばれる少なくとも一種で構成される請求項6又は7記載の回路部材の接続構造。
【請求項9】
前記第一及び第二の回路部材のうち少なくとも一方の表面が、窒化シリコン、シリコーン化合物及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種でコーティングもしくは付着処理されている、請求項6〜8のいずれかに記載の回路部材の接続構造。
【請求項10】
第一の接続端子を有する第一の回路部材及び第二の接続端子を有する第二の回路部材を、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置した後、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に請求項1〜5のいずれかに記載の回路接続用接着剤組成物を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させることを特徴とする回路部材の接続方法。

【公開番号】特開2009−161684(P2009−161684A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2127(P2008−2127)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】