説明

固体熱膨張材料

固体熱膨張材料が提供される。該材料は、液体エポキシ樹脂および半固体エポキシ樹脂を実質的に含まない固体エポキシ樹脂を含む。該材料は、耐衝撃改良剤、硬化剤および加熱活性化発泡剤も含む。該耐衝撃改良剤は、一実施形態においてゴムを含み、別の実施形態においてはゴムを実質的に含まない。加熱活性化後に、該材料は膨張し、基材に接着することができる。硬化、膨張した補強材料も提供され、同様に基材の補強方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み込んだ、2005年7月1日出願の米国特許仮出願第60/696,183号の出願日の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
熱膨張材料は、自動車産業およびいくつかの他の産業において長く使用されてきた。熱膨張材料は、防音(バッフリング(baffling))目的および構造補強目的に使用される。例えば、特定の膨張材料を、支持体上に成形してピラーなどの自動車のキャビティ内に取り付けることができる。次いで、この膨張材料を、活性化温度に加熱することができる。この材料は活性化されたとき、膨張する。膨張すると、この材料は、自動車のキャビティの少なくとも一部に接着して、有効にキャビティをふさぐ。膨張に続いて、この材料を硬化させる。硬化した材料は、防音またはバッフリング効果を有する。
【0003】
さらに、一例として、特定の膨張材料は、自動車の表面を含めた表面への構造補強を提供することができる。例えば、膨張材料(単独でまたは支持体と一緒に)を、フレームレール(frame rail)などの自動車構造におけるプラスチック表面または金属表面などの基材の上に、基材に隣接して、または基材の近くに配置することができる。この材料を、次いで、活性化温度に加熱する。材料は活性化されると膨張する。膨張すると、この材料は、基材の少なくとも一部に接着する。膨張に続いて、この材料を硬化させる。硬化した材料は、基材への構造補強を提供する。すなわち基材は、硬化した材料が存在するので、容易には曲げされたり、ひねられたり、縮んだりしない。
【0004】
ミシガン州、マジソンハイツのシーカコーポレーションは、それらの両方を、参照によりそれらの全体を本明細書に組み込んだ、米国特許第5,266,133号および5,373,027号に記載されているSIKABAFFLE(登録商標)の熱膨張材料を販売している。シーカコーポレーションは、SIKAREINFORCER(登録商標)の熱膨張補強材料も販売している。シーカコーポレーションにより所有された、一連のこれらの熱膨張補強材料は、参照によりその全体を本明細書に組み込んだ、米国特許第6,387,470号に記載されている。
【特許文献1】米国特許仮出願第60/696,183号
【特許文献2】米国特許第5,266,133号
【特許文献3】米国特許第5,373,027号
【特許文献4】米国特許第6,387,470号
【特許文献5】国際公開WO 2004/055092号
【特許文献6】米国特許第6,649,243号
【非特許文献1】’Epoxy Resins’ in Second Edition of the Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Volume 6, pp. 322−382 (1986)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
補強目的に使用される熱膨張材料には特定の望ましい特徴がある。未硬化状態の熱膨張材料は、既存の製造装置を用いて加工するのに容易な粘稠度であること、および扱いやすさのために実質的に不粘着性の表面を有することが好ましい。未硬化の膨張材料にとって、高湿度、高温環境への曝露に起因し得る早期硬化および/または他の劣化を避けることが好ましい。
【0006】
熱膨張材料は、その硬化した状態において、約−40℃から約80℃までの温度範囲にわたってその機械的性質を実質的に維持しなければならない。機械的性質は、その温度範囲における最高点で大きさχであり、その温度範囲における最下点で約0.8χである場合に、実質的に維持される。硬化した材料は、少なくとも約90℃以上のガラス転移温度を有さなければならない。硬化した材料の他の望ましいガラス転移温度は、少なくとも約95℃、少なくとも約100℃、および少なくとも約105℃である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
固体熱膨張材料が、熱膨張補強材料にとって望ましい特徴の1つまたは複数を満たすために提供される。固体熱膨張材料のいくつかの実施形態が本明細書に記載される。記載される実施形態は、添付の特許請求の範囲を制限することを目的としていない。固体熱膨張材料は、固体エポキシ樹脂(液体エポキシ樹脂および半固体エポキシ樹脂を実質的に含んでいない)、耐衝撃改良剤および硬化剤を含む。未硬化の膨張材料は、少なくとも約0℃から約40℃までの範囲にわたる温度において、実質的に不粘着性である外面を有し、50℃に近づく温度で実質的に不粘着性に留まることができる。というのは、材料の外面に移行してこのような粘着性を生じるのに十分な、液体エポキシ樹脂または半固体エポキシ樹脂が実質的に存在しないからである。驚くべきことに、未硬化の固体熱膨張材料はもろくない。したがって、未硬化材料は、液体エポキシ樹脂および半固体エポキシ樹脂の不在下または実質的な不在下においてさえも、通常の製造設備を用いて加工するのが驚くほど容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
固体熱膨張材料の一実施形態は、天然または合成ゴムを実質的に含まない耐衝撃改良剤を含む。本実施形態においては、耐衝撃改良剤は、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応して膨張材料の全体の安定性を増す官能基を含む、1つまたは複数の熱可塑性化学物質を含む。本実施形態の固体熱膨張材料は、予想外に安定しており、エポキシ樹脂と1つまたは複数の熱可塑性耐衝撃改良剤との間の相分離を少ししかまたはまったく示さない。この耐衝撃改良剤は、ゴム、液体エポキシ樹脂、または半固体エポキシ樹脂の不在または実質的な不在を考慮すると、固体熱膨張材料に驚くほどの加工性をもたらす。耐衝撃改良剤中のゴムの不在または実質的な不在は、付加的な利益を提供する。すなわち、本実施形態の硬化した材料のガラス転移温度は、少なくとも約100℃であり、少なくとも約105℃または少なくとも約110℃でありうる。
【0009】
固体熱膨張材料の一実施形態は、天然または合成ゴムを含む耐衝撃改良剤を含む。本実施形態は、膨張材料の全体の安定性を増す官能基を含む、1つまたは複数の熱可塑性化合物をさらに含むことができる。本実施形態のゴムは、硬化した材料のガラス転移温度が少なくとも約90℃になるようにして、また少なくとも約95℃になることがあり、固体材料にさらなる加工性を提供する。
【0010】
固体熱膨張材料の一実施形態は、アラミド繊維を含む水分放出制御システムを含む。高温/高湿度環境での輸送および貯蔵において、未硬化の熱膨張材料中への水の全ての吸収を完全に防ぐまたは避けることは難しい。本実施形態は、加熱/膨張の間に未硬化の材料から水がいかに放出されるかを調節することによって吸水を避ける作用力を補完する。未硬化の膨張材料中の過剰の水の存在は、膨張の間に膨張材料に損傷を引き起こし得るので望ましくない。これは、膨張の間の加熱が、発泡材料を通過する蒸気の激しい破裂を引き起こし、これが、硬化した材料中の不規則な、不均一な気泡構造をもたらすからである。驚くべきことに、アラミド繊維は、膨張の間の蒸気の放出を調節する、メッシュのような物理的な網を形成することが見出された。この調節は、蒸気の激しい破裂を減少させるか最小化する。アラミド繊維は、熱膨張材料においてチキソトロープ剤として開示されたが、それらは、この新規の使用については開示されていない。
【0011】
図1〜5は、本明細書に記載された固体熱膨張材料の多くの可能な用途の1つを示している。図1〜5は、請求の範囲に記載されている発明を、自動車産業に、または自動車産業内の任意の特定の用途に限定することを目的としていない。図1において、自動車2が示され、固体熱膨張材料で補強し得る多くの(全てではないが)部品を識別している。自動車2で潜在的に補強し得る構造には、それだけには限らないが、A−ピラー4、ロッカー6、チャイルドシート補強材10、レール12、クロスメンバー14、燃料タンクシーラー16、カウル18、バンパー20、B−ピラー22、およびドア/リフトゲート24が含まれる。図2および3は、ロッカー6の切断図を示している。図2においては、固体熱膨張材料8が、その未硬化状態で、ロッカー6に配置されている。図3においては、材料8が硬化している。図3は、硬化した材料がキャビティを部分的に満たしているところを示しているが、硬化した材料がキャビティをふさぐまたは実質的にふさぎうることも予想される。
【0012】
図4においては、支持体26(金属またはプラスチックであってよい)は、その上に(射出成形または任意の他の技術によって)配置した未硬化の材料8を有する。支持体26および材料8は一緒に、自動車部品28を形成している。部品28は、自動車のキャビティに挿入することができ、次いで、活性化温度に加熱すると、材料8が自動車のキャビティ中の基材に接着するように、材料8は膨張および硬化して補強をもたらす。図5においては、代わりの支持体30(金属またはプラスチックであってよい)は、その上に配置(射出成形または任意の他の技術で)した未硬化の材料8を有する。支持体30および材料8は一緒に、自動車部品32を形成している。部品32を、自動車のキャビティに挿入することができ、次いで活性化温度に加熱すると、材料8が自動車のキャビティにおける基材に接着するように、材料8は膨張し硬化して補強をもたらす。
【0013】
図1〜5は、固体熱膨張材料8を自動車または他の構造における基材を補強するのに使用し得る、多くの考えられた方法の1つの方法だけを示しているにすぎない。別の実施形態においては、材料8を成形または他の何らかの方法で支持体に配置することができる。次いで、この支持体を、レール6内に挿入および場合によっては固定し、次いで硬化することができる。さらに、材料8を、支持体上か否かを問わず、自動車2における任意の基材を補強するのに使用することができる。
【0014】
固体エポキシ樹脂
「エポキシ樹脂」は、複数のエポキシ基を含む、広い範囲の化学物質を意味する。エポキシ樹脂は、当分野で周知であり、Second Edition of the Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Volume 6, pp. 322−382 (1986)の「エポキシ樹脂(Epoxy Resins)」と題した章に記載されている。
【0015】
「固体」という用語は、その通常の意味で使用されている。「固体」エポキシ樹脂は、およそ室温(約20℃から約27℃まで)、およびおよそ標準圧において、固体で不粘着性である。本明細書で使用される固体エポキシ樹脂は、液体エポキシ樹脂および半固体エポキシ樹脂(それらの用語は、それらの通常の意味で使用されている)を実質的に含んでいない。液体エポキシ樹脂は、およそ室温およびおよそ標準圧において液体であり、半固体エポキシ樹脂は、固体および液体の両方の物理的特性、特におよそ室温およびおよそ標準圧において粘着性ならびにブロック(block)する傾向を有する。これに関連して「実質的に含まない」は、固体熱膨張材料の0重量%のエポキシ樹脂含有量からおよそ1.5重量%のエポキシ樹脂含有量までを意味する。機能に関しては、液体および半固体エポキシ樹脂の存在は、その未硬化の形態の固体膨張材料の外面への液体および半固体エポキシ樹脂の移行が、その表面に人が触って認識できる粘着性を持たせるのに不十分であるくらいにわずかであるべきである。
【0016】
固体熱膨張材料とともに使用できる固体エポキシ樹脂には、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテルのビスフェノールAとの高度化によって、またはタフィープロセス(taffy process)によって作製された固体ビスフェノールA樹脂が含まれ、非限定的に、EPON 1001、1004および1007(Resolution Performance Productsから市販)、ARALDITE GT7004、GT7071、GT7014、GT7255、GT7097およびGT9654(Huntsman Advanced Materialsから市販)、ならびにDER 661、DER 663、およびDER 664(The Dow Chemical Co.から市販)などのタイプ1からタイプ9樹脂が例示される。さらなる固体エポキシ樹脂には、ノボラックベースのエポキシ樹脂が含まれ、非限定的に、EPON Resin 1031および164 1007(Resolution Performance Productsから市販)、ARALDITE EPN 1180、ECN 1280、ECN 1285およびECN 9699(Huntsman Advanced Materialsから市販)、ならびにDEN 438および439(The Dow Chemical Co.から市販)が例示される。さらなる固体エポキシ樹脂には、トリス(ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル(The Dow Chemical Co.よりTACTIX 742として市販)、グリオキサルフェノールノボラックテトラグリシジルエーテル(ARALDITE XB 4399−3として市販)、トリグリシジルイソシアヌレート(HuntsmanよりPT810として市販)などの結晶エポキシ樹脂、およびトリメリット酸トリグリシジルエステル(HuntsmanよりPT910として市販)を含むテレフタル酸ジグリシジルエステルなどの多官能エポキシ樹脂が含まれる。
【0017】
適切な固体エポキシ樹脂は、約65℃から約160℃まで(より好ましくは、約70℃から約120℃)の範囲にメトラー軟化点を有してよい。適切な固体エポキシ樹脂は、1分子当たり平均約2個のエポキシ基を有することができる。適切な固体エポキシ樹脂は、約350から約2000まで(より好ましくは、約375から約1000)の範囲のエポキシド当量を示すことができる。これらの要件に合致する多数のエポキシ樹脂が、当業者に周知の商業的ソースから市販されており、かつ/または2つ以上の市販のエポキシ樹脂のブレンドによって作ることができる。
【0018】
固体エポキシ樹脂または固体エポキシ樹脂の組合せは、固体熱膨張材料中に、重量%で、約40%から約80%まで(より好ましくは、約50%から80%までまたは約60%から約75%まで)、存在することができ、ここで、100%は固体熱膨張材料の重量である。
【0019】
耐衝撃改良剤または強化剤
「強化剤」としても知られる「耐衝撃改良剤」は、配合の耐衝撃性を改良するために配合に添加される任意の材料を意味する。多くの市販の耐衝撃改良剤が、当分野で周知であり、固体熱膨張材料における使用に適している。
【0020】
一実施形態においては、耐衝撃改良剤は、1つまたは複数の熱可塑性化学物質を含み、その耐衝撃改良剤は、天然または合成ゴムを実質的に含んでいない。ゴムを実質的に含んでいない耐衝撃改良剤が、固体熱膨張材料に十分な加工性を付与し得ることは驚くべきである。これに関連して「実質的に含んでいない」は、ゴムの0重量%から約1.5重量%を意味する。固体エポキシ樹脂上のエポキシ基と反応することが可能な官能基を有する熱可塑性化学物質は、固体熱膨張材料との使用に適している。特に、限定されない例として、グリシジルメタクリレートを含むエチレンブチルアクリレート(GMAを含むEBA)を、エポキシ官能性を提供するのに(固体エポキシ樹脂のエポキシ基と反応するのに)使用することができる。無水マレイン酸を含むエチレンビニルアセテート(MAHを含むEVA)を、固体エポキシ樹脂のエポキシ基と反応するのに使用することができる。本実施形態の固体熱膨張材料は、予想外に、安定であり、エポキシ樹脂と1つまたは複数の熱可塑性耐衝撃改良剤との間の相分離をわずかにしかまたはまったく示さない。この耐衝撃改良剤は、ゴム、液体エポキシ樹脂、または半固体エポキシ樹脂の不在または実質的な不在を考慮すると、固体熱膨張材料に驚くほどの加工性をもたらす。実施例10〜14においては、ゴムを実質的に含まない、これらの熱可塑性耐衝撃改良剤は、それぞれ102℃、112℃、108℃、108℃および109℃のガラス転移温度を有する固体熱膨張材料をもたらした。
【0021】
別の実施形態においては、耐衝撃改良剤はゴムを含む。そのゴムは、天然または合成であってよい。本実施形態においては、耐衝撃改良剤は、固体エポキシ樹脂のエポキシ基と反応するために官能化された、1つまたは複数の熱可塑性化学物質も含むことができる。本実施形態のための例示的な耐衝撃改良剤は、非限定的に、(その全体を参照により本明細書に組み込んだ)国際公開WO 2004/055092号に開示されたゴムを含み、固体グラフト化ゴム、エポキシ−ポリウレタンハイブリッド、1,000から10,000ダルトンの間の範囲の分子量を有する(イソシアネート末端ポリエーテルポリオールなどの)イソシアネートプレポリマー、無水マレイン酸で変性したエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、水素化ポリブタジエンを含むスチレンブタジエンブロックコポリマー(SEBS);酸官能性エチレンビニルアセテートターポリマー(EVA)、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(CSBR)、(NoveonよりのHYCAR CTBNなどの)カルボキシル化ニトリルゴム;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化天然ゴム、エポキシ化大豆油;DuPontより市販のHYTRELなどの熱可塑性エラストマーまたはポリ−p−フェニレンエーテル;ビスフェノールAなどの固体ヒドロキシル含有物質;および末端カルボン酸官能基を有するポリエステルが含まれる。本実施形態での使用に適した他の耐衝撃改良剤には、非限定的に、メタクリレートブタジエンスチレン(MBS)耐衝撃改良剤およびアクリレートスチレンアクリル酸(ASA)耐衝撃改良剤のようなトリブロックコポリマーを含むコアシェル耐衝撃改良剤が含まれる。市販のMBSコアシェル耐衝撃改良剤には、PARALOID BTA−753(Rohm & Haasより市販)およびKANA ACE B−564(Kanekaより市販)およびSBM(Arkemaより市販のSBM AF−X22のような)が含まれる。市販のASAコアシェル耐衝撃改良剤には、General ElectricよりのGELOY 1020が含まれる。適切な例には、WackerよりGENIOPERL M23Aとして市販のポリシロキサンで変性したアクリレートのコアシェル耐衝撃改良剤が含まれる。
【0022】
実施例1〜5においては、ゴム含有耐衝撃改良剤の使用は、それぞれ95℃、99℃、100℃、101℃および101℃のガラス転移温度を有する固体熱膨張材料をもたらした。
【0023】
耐衝撃改良剤または耐衝撃改良剤の組合せは、固体熱膨張材料中に、重量%で、およそ約20%未満から(より好ましくは、約5%から約15%まで)存在することができ、ここで、100%は固体熱膨張材料の重量である。
【0024】
加熱活性化発泡剤
当業者により「発泡剤」と呼ばれることもある「加熱活性化発泡剤」は、所定量の熱の適用によって、その母材(host)を所定の量だけ膨張させる物理作用剤または化学作用剤である。
【0025】
任意の周知の加熱活性化物理的発泡剤を、固体熱膨張材料に使用することができる。適切な物理的加熱活性化発泡剤には、非限定的に、Akzo Nobelにより製造されているEXPANCEL微小球製品種目のものが含まれる。EXPANCEL微小球は、イソブタンまたはイソペンタンのような低分子量炭化水素をカプセル化する、小さい、球形のプラスチック粒子である。特定の炭化水素の沸点に加熱された場合、その微小球は体積で40倍を超えて膨張することができる。EXPANCELは、多数のさまざまな銘柄および形態で市販されている。
【0026】
任意の周知の化学加熱活性化発泡剤を、固体熱膨張材料に使用することができる。適切な化学加熱活性化発泡剤には、アゾジカルボンアミドおよびその変性化合物、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、および5−フェニルテトラゾールが含まれる。
【0027】
加熱活性化は、外からの熱の適用、または発熱反応における熱の放出に起因する内部活性化のいずれかによって生じうる。一実施形態においては、膨張が活性化される温度は、少なくとも約180℃、より好ましくは少なくとも約150℃である。
【0028】
加熱活性化発泡剤または発泡剤の組合せは、固体熱膨張材料中に、重量%で、約0.1%から約5%まで(より好ましくは、約0.5%から約3%)存在することができ、ここで、100%は固体熱膨張材料の重量である。加熱活性化発泡剤または加熱活性化発泡剤の組合せは、その最初の活性化前の未硬化状態(参照目的で100%である)から、約20%から約300%だけ(より好ましくは、約50%から約200%だけ)膨張を生じる。
【0029】
他の成分
熱膨張材料の実施形態は、少なくとも1種の「フィラー」を含むことができる。適切なフィラーには、繊維フィラー、球状フィラー、板状フィラー、およびナノ粒子フィラーが含まれてよい。繊維フィラーは、ガラス繊維またはウォラストナイト繊維などの無機であってよく、あるいは別の方法では、天然または有機であってよい。天然または有機繊維には、非限定的に、炭素繊維、アラミドKEVLAR繊維、セルロース系繊維、ジュート、麻、および同様のものが含まれる。球状フィラーは、有機または無機であってよい。非限定的に、有機球状フィラーは、ポリマー球であってよく、無機球状フィラーは、ガラスマイクロバルーン、セラミック微小球、ヒュームドシリカ(有機的に変性したまたは未変性の)、熱分解法シリカ(有機的に変性したまたは未変性の)、および同様のものであってよい。板状フィラーは、黒鉛、タルク、雲母、および当業者に周知の他の物質などの無機であってよい。ナノ粒子フィラーは、非限定的に、イライトまたは(Southern Clayより市販のCLOISITE 30BまたはCLOISITE 93Aなどの)有機的に変性したモンモリロナイトナノクレイのようなフィロケイ酸塩、ナノシリカ(好ましくは反応性基を有する)、およびカーボンナノチューブ、ハイブリッド有機−無機コポリマー(hybrid organic−inorganic copolymer)、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)を含むことができる。
【0030】
例えば、炭酸カルシウム(被覆および/または沈降炭酸カルシウムを含む)、セラミック繊維、酸化カルシウム、アルミナ、クレイ、砂、金属(例えば、アルミニウム粉)、ガラスまたはセラミックマクロスフェア、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および炭素(これらの全ては、中実または中空、膨張したまたは膨張可能であってよい)、ならびに同様のものを含めた、熱硬化可能な樹脂技術において周知の他の適切なフィラーを使用することができる。
【0031】
フィラーは、円錐形または板状であってよい。小板のサイズは、長さ1から10mm、および幅5から10ミクロンの範囲にわたることができる。一実施形態においては、フィラーは、様々な形状およびサイズを有する繊維の混合物を含む。このような混合物は、改善された充てん密度を有し、これが、約−40℃から約−5℃の範囲にわたる温度などの低温における改善された耐衝撃性をもたらす。鉱物フィラーを、例えばシランで表面処理して有機マトリックスへの接着性を改善することができる。エポキシシランまたはアミノシランは、表面処理に適している。
【0032】
フィラーまたはフィラーの組合せは、固体熱膨張材中に、重量%で、約5%から約45%(より好ましくは、約10%から約30%、さらにより好ましくは約15%から約25%まで)存在することができ、ここで、100%は、固体熱膨張材量の重量である。
【0033】
熱膨張材料の実施形態は、「キュラティブ(curative)」として表されることもある、少なくとも1つの「硬化剤」または「ハードナー」を含むことができる。硬化剤は、熱膨張材料の硬化の助けとなる化学組成物を表すのに本明細書で使用される。当業者は、このような化学物質を、活性剤、触媒または促進剤と呼ぶこともある。特定のキュラティブは、触媒作用により硬化を促進するが、他は、固体エポキシ樹脂の反応に直接的に関与し、開環反応、イオン重合、および/または樹脂の架橋によって形成される熱硬化性高分子ネットワークに組み込まれる。当業者に周知の多くの市販のハードナーは、上記に参照されたthe Encyclopedia of Polymer and Engineeringの章に記載されている。
【0034】
適切な硬化剤またはハードナーは、およそ室温では固体であり、約140℃まで潜在的(どのような架橋反応をも促進しない)なままである。このようなハードナーを「潜在的」であると呼ぶことができる。2種以上のハードナーを使用することができる。
【0035】
適切な硬化剤またはハードナーには、ジシアンジアミド;非限定的に、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、およびそれらの混合物を含めた芳香族ジアミン;イミダゾール;多官能固体無水物/酸;ならびにレゾルシノール、ヒドロキノンおよびN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アニリンなどの単環式フェノール、またはp,p’−ビス(2−ヒドロキシエチルアミノ)ジフェニルメタンなどの多環式フェノールを含めたフェノールが含まれる。
【0036】
他の適切な硬化剤またはハードナーには、アミノ化合物、アミン塩、および第四級アンモニウム化合物、アミン−エポキシ付加物、三ハロゲン化ホウ素アミン付加物、尿素、ならびにグアニジンが含まれる。適切な三ハロゲン化ホウ素付加物には、モノエタノールアミン、ジエチルアミン、ジオクチルメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ベンジルアミン、ベンジルジメチルアミン、および同様のものなどのアミンの三塩化ホウ素付加物が含まれる。三塩化ホウ素アミン付加物キュラティブは、CVC Specialty Chemicals, Incより市販されている。
【0037】
硬化剤または硬化剤の組合せは、固体熱膨張材料中に、重量%で、約0.1%から約5%まで(より好ましくは、約0.2%から約2%)存在することができ、ここで、100%は、固体熱膨張材料の重量である。
【0038】
熱膨張材料の実施形態は、熱膨張材料の硬化速度を速めることができるか、または硬化温度を下げることができる、少なくとも1つの「促進剤」を含むことができる。当業者は、上記のとおり「ハードナー」および「キュラティブ」の用語を交換可能に用いることもある。適切な促進剤には、非限定的に、置換された尿素、フェノール、ならびにイミダゾールおよびイミダゾール塩が含まれる。例示的な尿素には、フェニルジメチルウレア、4−クロロフェニルジメチルウレア、2,4−トルエンビス(ジメチルウレア)、4,4’−メチレンビス(フェニルジメチルウレア)、脂環式ビスウレア、および同様のものが含まれる。例示的なイミダゾールには、2−メチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、および同様のものが含まれる。
【0039】
OMICURE UシリーズおよびOMICURE Bシリーズなどの、促進剤がCVC Specialty Chemicalsより市販されている。他のものが、IMICUREシリーズ、CUREZOLシリーズおよびAMICURE URシリーズを含めてAir Productsより、Dyhard URシリーズおよびDyhard MIシリーズとしてDegussaより市販されている。同様にAdekaより市販されているのが、Adeka 4338Sである。適切なイミダゾール塩は、Degussaより市販のVestagon B55である。
【0040】
促進剤または促進剤の組合せは、固体熱膨張材料中に、重量%で、約0.01%から約5%まで(より好ましくは、約0.1%から約2%)存在することができ、ここで、100%は、固体熱膨張材料の重量である。
【0041】
熱膨張材料の実施形態は、製品にチキソ性をもたらす添加剤である、少なくとも1つの「チキソトロープ剤」を含むことができる。「チキソ性」は、撹拌により軟化し、静止するとその元の状態に戻る特定の物質の性質を意味する。チキソトロープ剤は、熱膨張後の最終組成物の温度における垂れを防止し減少する助けとなる。
【0042】
適切なチキソトロープ剤には、非変性のまたは疎水性に変性したヒュームドシリカおよび沈降シリカが含まれる。他の適切なチキソトロープ剤には、ベントナイト、ラポナイト、モンモリロナイト、および同様のものなどの有機的に変性したフィロケイ酸塩クレイが含まれる。被覆沈降炭酸カルシウムおよびポリアミドワックスなどの当業者に周知の他のチキソトロープ剤は、有機または無機を問わず、固体熱膨張材料での使用に適している。同様に適切なのは、非限定的に、ブチルアミンをMDIと反応させることによって作製し、非移行性反応性液体ゴムにおける分散液として使用することができる尿素誘導体である。小板フィラーおよび繊維フィラーなどの、上記のフィラーとされた材料には、チキソトロピー効果を有するものもある。
【0043】
チキソトロープ剤またはチキソトロープ剤の組合せは、固体熱膨張材料中に、重量%で、約0.5%から約10%まで(より好ましくは、約1%から約6%、さらにより好ましくは、約2%から約5%まで)存在することができ、ここで、100%は、固体熱膨張材料の重量である。
【0044】
固体熱膨張材料の実施形態は、それだけには限らないが、接着促進剤、着色剤、安定剤、可塑剤、湿潤剤、酸化防止剤を含めた他の添加剤も含むことができ、これらのそれぞれは、市販されており当分野で周知である。
【0045】
他の添加剤は、重量%で、約0.01%から約10%まで(より好ましくは、約0.1%から約5%、さらにより好ましくは、約0.2%から約3%)存在することができ、ここで、100%は、固体熱膨張材料の重量である。
【0046】
固体熱膨張材料の加工
固体熱膨張材料は、その全体を参照により本明細書に組み込んだ、米国特許第6,649,243号に記載されたように、標準の製造設備を用いてペレットに混ぜ合わせまたは形成し、次いで、支持体に射出成形することができる。射出成形の代わりの方法は、当分野で周知であり、固体熱膨張材料での使用に検討される。射出成形(または未硬化材料の加工に選択される任意の他の方法)は、膨張材料の硬化活性化温度を下回る温度でおこなう。膨張材料を、押し出し、パフォーム(perform)、非限定的に、ジョイント、フレーム、またはピラーを含む支持体との加熱成形、および支持体なしの加熱成形を含めた、当業者に周知の任意の方法を用いて、加工、形づくりまたは成形することができる。
【0047】
図1〜3に例示されたように、このような固体熱膨張材料(支持体上か否かを問わず)は、自動車のキャビティに置いて活性化することができる。活性化は、この材料を膨張させ自動車のキャビティの基材に接着させる。膨張後、硬化した材料は、基材に構造的な補強を提供する。
【0048】
本発明を、その範囲に制限を課すと何ら解釈されるべきではない、下記の実施例によりさらに説明する。反対に、本明細書の記載を読んだ後に、本発明の精神および/または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、当業者が思いつくことができる、さまざまな他の実施形態、変更形態、およびその同等物にたよることができることを明確に理解されたい。
【0049】
産業上の利用性
次の実施例を、ブレンダーで成分を混合し、次いでペレタイザーを有する二軸スクリュー押出機でこれをコンパウンドすることによって調製した。機械的試験用の試験片を、射出成形によって調製した。特に指定のない限り、ガラス転移温度は、DSCによって測定された。成分のすべての百分率は、重量%である。
【0050】
【表1】

【0051】
実施例1および2の機械的性質が、下記の表2に記載されている。
【0052】
【表2】

【0053】
発泡剤を含まない同一の配合の測定に基づく近似値。
【0054】
【表3】

【0055】
実施例3〜5の機械的性質が、下記の表4に記載されている。
【0056】
【表4】

【0057】
発泡剤を含まない同一の配合の測定に基づく近似値。
【0058】
【表5】

【0059】
実施例6の機械的性質が、下記の表6に記載されている。
【0060】
【表6】

【0061】
発泡剤を含まない同一の配合の測定に基づく近似値。
【0062】
【表7】

【0063】
実施例8および9の機械的性質が、下記の表8に記載されている。
【0064】
【表8】

【0065】
発泡剤を含まない同一の配合の測定に基づく近似値。
【0066】
【表9】

【0067】
実施例10〜14の機械的性質が、下記の表10に記載されている。
【0068】
【表10】

【0069】
DMAにより測定。
【0070】
当業者は、本発明は、その範囲を逸脱することなく、多くの変更形態および変形形態が可能であることを理解するであろう。したがって、上記の詳細な説明および実施例は、例示のためだけを目的としており、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を、どのような形でも制限することを目的としていない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】自動車ボディの透視図である。
【図2】レールに配置された未硬化の膨張材料を示す、自動車ボディからのレールの切断図である。
【図3】レールに配置された硬化した材料を示す、レールの切断図である。
【図4】固体熱可塑性膨張材料をその上に配置した支持体の透視図である。
【図5】固体熱可塑性膨張材料をその上に配置した支持体の透視図である。
【符号の説明】
【0072】
2 自動車
4 ピラー
6 ロッカー
8 固体熱膨張材料
10 チャイルドシート補強材
12 レール
14 クロスメンバー
16 燃料タンクシーラー
18 カウル
20 バンパー
22 ピラー
24 ドア/リフトゲート
26 支持体
28 自動車部品
30 支持体
32 自動車部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)液体エポキシ樹脂および(ii)半固体エポキシ樹脂を実質的に含まない固体エポキシ樹脂、
(b)耐衝撃改良剤、
(c)硬化剤、ならびに
(d)加熱活性化発泡剤を含み、
前記加熱活性化発泡剤によって前記材料が加熱活性化後に基材に接着可能である、熱膨張材料。
【請求項2】
前記固体エポキシ樹脂が、材料100%に対して、材料の約40重量%から約80重量%を構成する、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記耐衝撃改良剤が、材料100%に対して、材料の約5重量%から約20重量%を構成する、請求項1に記載の材料。
【請求項4】
前記耐衝撃改良剤がゴムを含む、請求項1に記載の材料。
【請求項5】
前記耐衝撃改良剤がゴムを実質的に含まない、請求項1に記載の材料。
【請求項6】
前記耐衝撃改良剤が熱可塑性材料を含む、請求項5に記載の材料。
【請求項7】
前記硬化剤がジシアンジアミドまたはその誘導体である、請求項5に記載の材料。
【請求項8】
水分放出調節システムをさらに含む、請求項1に記載の材料。
【請求項9】
前記システムがアラミド繊維をさらに含む、請求項8に記載の材料。
【請求項10】
材料100%に対して、約0.01重量%から約5重量%までのアラミド繊維をさらに含む、請求項1に記載の材料。
【請求項11】
前記基材が金属を含む、請求項1に記載の材料。
【請求項12】
硬化、膨張した補強材料であって、
(a)液体エポキシ樹脂および半固体エポキシ樹脂を実質的に含まない固体エポキシ樹脂、ならびに
(b)耐衝撃改良剤
を含む補強材料。
【請求項13】
少なくとも約95℃のガラス転移温度を有する、請求項12に記載の補強材料。
【請求項14】
少なくとも約100℃のガラス転移温度を有する、請求項12に記載の補強材料。
【請求項15】
前記耐衝撃改良剤がゴムを実質的に含まない、請求項12に記載の補強材料。
【請求項16】
前記硬化した材料を、自動車の基材に接着する、請求項12に記載の補強材料。
【請求項17】
構造体内の基材の補強方法であって、
(a)未硬化の補強材料を、キャビティの少なくとも第1の部分に適用する段階であって、前記未硬化の補強材料が、
(i)液体エポキシ樹脂および半固体エポキシ樹脂を実質的に含まない固体エポキシ樹脂、
(ii)耐衝撃改良剤、
(iii)硬化剤、および
(iv)加熱活性化発泡剤を含み、
前記加熱活性化発泡剤によって、材料が加熱活性化後に前記基材に接着し得る段階、および
(b)前記構造を少なくとも約150℃に加熱することによって、補強材料を膨張させ、基材の少なくとも第2の部分に接着させる段階、
を含む方法。
【請求項18】
前記基材が自動車内にある、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記基材が自動車のフレームレールの少なくとも一部を構成する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記基材が自動車のピラーの少なくとも一部を構成する、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−545039(P2008−545039A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519122(P2008−519122)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/IB2006/052218
【国際公開番号】WO2007/004184
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】