説明

地図表示装置

【課題】
探索推奨ルートを走行している自車両が走行しない車線上には自車位置マークを表示しない道路地図を表示する地図表示装置を提供する。
【解決手段】
マップマッチングを行い、自車位置マーク41の表示位置をセンターライン46上の位置32に移動する。次に、自車位置マークの表示位置42をセンターライン46からずらして、センターラインに最も近い車線47に表示位置43を修正する。そして、移動した車線47では自車両は探索推奨ルートを進行することが可能であるか判定する。可能である場合は、自車位置マークの表示位置43に自車位置マークを表示する。可能でない場合は、隣の車線48に自車位置マークの表示位置を修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物が立体的に表示された道路地図上で、複数の車線が表示された道路に自車位置マークを表示する地図表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、次のようなナビゲーション装置が知られている。このナビゲーション装置は、自車位置の後方上空から道路を見下ろした鳥瞰道路地図として建物などの構造物を立体的に表示するとともに、車両が走行している道路も幅広く表示する(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−226368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のナビゲーション装置では、道路が片側複数車線の場合、車両がどこの車線を走行しているかわからないため、自車位置マークをセンターライン上に表示したり、次の交差点を直進するのに右折専用車線に表示したりし、自車位置マークが不自然に表示されるという問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(1)請求項1の発明の地図表示装置は、自車位置を検出する検出手段と、検出手段で検出された自車位置から目的地までの推奨経路を探索する経路探索手段と、推奨経路が複数の車線を有する場合、次の誘導地点における進行方向に適したいずれかの車線を判別する車線判別手段と、検出手段で検出される自車位置と判別された車線とに基づいて、次の誘導地点における進行方向に適した車線上に自車位置マークを重ね合わせる重ね合わせ手段と、重ね合わせ手段で道路上に自車位置マークを重ね合わせた地図を表示するモニタとを備えることを特徴とする。
(2)請求項2の発明は、請求項1に記載の地図表示装置において、モニタには、道路とその道路沿いのビルを立体的に表示することを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、請求項1または2に記載の地図表示装置において、車線判別手段は、複数の車線のうち、専用車線もしくは優先車線は推奨経路に適した車線と判別しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、探索推奨ルート上を進行する上で車両が走行する可能性が低い車線には自車位置マークを表示しないようにしたので、自車位置マークをより適切な車線上に表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施形態によるナビゲーション装置の構成を図1に示す。図1のナビゲーション装置1は、地図上にビルなどの建造物などを立体的に表示するとともに、自車位置前方の走行中の道路を画面横幅方向に幅広く表示する。そして、走行中の道路が片側複数車線の場合には、自車が走行している可能性の高い車線に自車位置マークを表示したものである。このナビゲーション装置1は、制御回路11、ROM12、RAM13、現在地検出装置14、画像メモリ15、表示モニタ16、入力装置17、ディスクドライブ18およびVICS情報受信部110を有している。
【0007】
ディスクドライブ18には、地図データが記録されたDVD−ROM19が装填される。地図データは、地図表示用データ、経路探索用データなどを含む。地図表示用データは、広域から詳細まで複数の縮尺の地図データを有し、乗員の要求にしたがって、表示地図の縮尺を変更することができる。また、地図表示用データは、地図上にビルなどの建造物を立体的に表示するための建造物データを有している。建造物データは、3次元形状データを備え、3次元を構成するポリゴン数、建造物の種別などを表現する属性、1つのポリゴンを形成するための頂点座標列で構成するポリゴンデータなどが含まれる。建造物は、建造物データに格納されている複数のポリゴンを組み合わせることによって、3次元形状として表示される。
【0008】
さらに、地図表示用データは道路の車線に関する車線情報を有している。車線情報について、図2および図3を参照して説明する。図2は地図表示データに含まれている車線情報を示した図であり、図3は、図2の車線情報に対応する道路を示した図である。図3(a)には、図3(b)に示すリンクIDが20〜23であるリンクに対応した道路が表示されている。リンクID20,21のリンクに対応する道路は片側3車線の道路であり、リンクID22,23に対応する道路は片側1車線の道路である。
【0009】
車線情報は、図2(a)に示すように、リンクID、始点ノード、終点ノードなどのリンク情報とともに地図表示用データに格納されている。車線情報は、順方向の車線の数および車線ID、逆方向の車線の数および車線IDを有している。ここで、順方向とは、自車両が走行する方向であり、逆方向とは、対向車線を他車両が走行する方向である。また、車線IDとは、道路の車線を特定する記号であり、「リンクID」−(ハイフン)「車線番号」で表す。車線番号は、リンクの順方向から先に、センターライン側から道路の端へ向かって順番に付されるものである。次にリンクの逆方向でセンターライン側から道路の端に向かって付される。リンクID20に対応する道路は片側3車線の道路なので、図3の道路の車線情報には、図2(a)に示すように、順方向の車線数は3、車線IDは20−1,20−2,20−3、逆方向の車線数は3、車線IDは20−4,20−5,20−6というデータが格納される。
【0010】
図2(b)に示すように、各車線IDには、道路の中心から車線の中心までの距離、その車線から進行することのできるリンクのリンクIDが格納されている。ここで、道路の中心とは、センターラインや中央分離帯である。また、車線が、路線バスや二輪車などの専用車線、または優先車線である場合は、付加情報としてその情報が格納される。たとえば、リンクID20に対応する道路で順方向の一番道路の端側にある車線31の場合は次のような情報が格納される。車線31の車線IDは20−3とされ、この車線IDには、車線31は道路の中心から9mの位置にあるので、図2(b)に示すように道路の中心からの距離が9m、車線31からリンクID21に対応する道路とリンクID23に対応する道路とへ進行が可能であるので、進行可能なリンク数が2、進行可能なリンクのリンクIDが21,23というデータが格納される。
【0011】
制御回路11は、マイクロプロセッサ及びその周辺回路からなり、RAM13を作業エリアとしてROM12に格納された制御プログラムを実行して各種の制御を行う。この制御回路11がDVD−ROM19に記憶された地図データに基づいて所定の経路探索処理を行うと、その処理結果が探索推奨ルートとして表示モニタ16に表示される。また、制御回路11は、DVD−ROM19に記憶された建造物データより建造物を立体的の表示するための画像処理を行う。制御回路11は、建造物データに格納されている複数のポリゴンを組み合わせることによって建造物の3次元形状が形成した後、この3次元形状を所定の位置から見たときに見える形状を計算し、その計算結果より建造物の立体画像データを生成する。
【0012】
現在地検出装置14は車両の現在地を検出する装置であり、たとえば、車両の進行方位を検出する振動ジャイロ14a、車速を検出する車速センサ14b、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号を検出するGPSセンサ14cなどからなる。ナビゲーション装置1は、この現在地検出装置14により検出された車両の現在地に基づいて、地図の表示範囲や経路探索開始点などを決定するとともに、地図上にその現在地を自車位置マークで表示する。自車位置マークはV字形状や三角形などで表示される。
【0013】
画像メモリ15は、表示モニタ16に表示するための画像データを格納する。この画像データは道路地図描画用データや各種の図形データからなり、それらはディスクドライブ18によって読み込まれるDVD−ROM19に記憶された地図データに基づいて、制御回路11において、適宜生成される。ナビゲーション装置1は、このようにして生成された画像データを用いることによって、表示モニタ16に複数の車線が設定された道路が表示された道路地図を表示することができる。とくに、道路地図を鳥瞰図表示で表示することによって道路地図を立体的に表示することができ、また、制御回路11で生成された立体画像データを用いることによって建造物を立体的に表示することができ、鳥瞰図表示で道路地図を表示し、建造物を立体的に表示することによって立体地図を表示することができる。
【0014】
表示モニタ16は、地図データなどの各種情報に基づいて、自車位置付近の道路地図などの各種情報を画面表示としてナビゲーション装置1の乗員に提供する。また、表示モニタ16には、平面地図のほかに立体地図も表示される。入力装置17は、乗員が目的地の設定などを行うための各種入力スイッチを有し、これは操作パネルやリモコンなどによって実現される。乗員は、表示モニタ16に表示される画面指示に従って入力装置17を操作することにより、地名や地図上の位置を指定して目的地を設定し、その目的地までの経路探索をナビゲーション装置1に開始させることができる。
【0015】
VICS情報受信部110は、図示しないVICS情報センターから供給される渋滞情報などのVICS情報を受信し、制御回路11に出力する。このVICS情報は主に高速道路上に設置されている電波ビーコンや主に一般道路上に設置されている光ビーコン、またはFM多重放送によって送信される。また、車両が片側複数車線を有する道路を走行している場合、VICS情報受信部110より光ビーコンを受信して、車両が位置する車線を検出することができる。
【0016】
目的地が乗員により設定されると、ナビゲーション装置1は、GPSセンサ14cにより検出された現在地を出発地として目的地までの経路演算を所定のアルゴリズムに基づいて行う。このようにして求められたルート(以下、探索推奨ルートという)は、表示形態、たとえば表示色などを変えることによって、ほかの道路とは区別して画面表示される。これにより、乗員は地図上の探索推奨ルートを画面上で認識することができる。また、ナビゲーション装置1は、探索推奨ルートに従って車両が走行できるように、誘導交差点などの地点において、乗員に対して画面や音声などによる進行方向指示を行い、車両を誘導する。
【0017】
ディスクドライブ18は、装填されたDVD−ROM19から、表示モニタ16に地図を表示させるための地図データを読み出す。なお、DVD−ROM以外の他の記録メディア、たとえばCD−ROMやハードディスクなどより地図データを読み出してもよい。
【0018】
次に、本発明の実施形態のナビゲーション装置1の表示モニタ16における自車位置マークの表示を図4を参照して説明する。
表示モニタ16には、自車位置マーク41を表示した道路地図が表示される。道路地図には、自車両が走行している複数車線の道路とともに立体的にビルなどの建造物が表示される。以下の説明では、乗員が経路探索を行って探索推奨ルート49が設定され、経路誘導が開始されており、自車両は次の交差点45を直進するものとする。自車両が走行している道路は、センターライン46を挟んで片側2車線47,48を有し、車線47は、次の交差点45を右折するための右折専用車線である。また、自車位置マーク41はマップマッチングする前のものであり、道路から外れて表示されている。
【0019】
このように道路から外れ、建造物に重なっている自車位置マーク41を適正な車線上に表示する手順について説明する。まず、マップマッチングを行い、自車位置マークの表示位置データをセンターライン46上の位置42の表示位置データに修正する。次に自車位置マークの表示位置データをセンターライン46に一番近い車線47の中心位置43の表示位置データに修正する。車線47は交差点45を右折するための右折専用車線である。このため、交差点45を直進して進む場合は、自車両は車線48を走行し、車線47を走行している可能性は低い。そこで、自車位置マークの表示位置データを隣の車線48の中心位置44の表示位置データに修正する。表示位置データの修正は、車線情報に格納されている車線48の道路の中心からの距離に基づいて行う。道路の中心からの距離と自車位置マークの表示されている部分の縮尺がわかれば、車線48の中心位置を算出することができる。車線48は交差点45を直進して進むことができる。つまり、車線48は探索推奨ルートに適した車線である。したがって、自車両が車線48を走行している可能性は非常に高いので、自車位置マーク44を車線48上に重ね合わせて表示する。
【0020】
次に、本発明の実施形態によるナビゲーション装置1における自車位置マークの表示処理を図5のフローチャートを参照して説明する。図5の処理は、経路探索の後、経路誘導が開始されたときにスタートするプログラムを制御回路11で実行して行われる。
【0021】
ステップS501では、現在地検出装置14により自車位置を検出する。ステップS502では、DVD−ROM19に記憶されている地図データより自車位置に対応するリンクを抽出する。ステップS503では、自車位置に自車位置マークを表示する。ステップS504では、マップマッチングを行い、自車位置マークの表示位置データをセンターライン上に修正する。このステップでは、自車位置マークの表示位置データを修正するだけで、修正した自車位置マークの表示は行わない。このセンターライン上の表示位置を、自車位置マークを表示するための基準位置とする。ステップS505では、自車位置に対応するリンクの車線情報をDVD−ROM19に記憶されている地図データから抽出する。
【0022】
ステップS506では、自車位置マークの表示位置データを基準位置からセンターラインに最も近い車線の中心位置に修正する。この修正する位置は、車線情報の道路の中心からの距離の情報と基準位置とに基づいて算出する。ステップS507では、自車位置マークの表示位置データの位置する車線は自車両が探索推奨ルートに沿って進行する場合に適した車線であるか判定する。適した車線であるか否かは、車線情報に格納されている進行可能なリンクが探索推奨ルート上のリンクに対応するものであるか否かによって判断できる。探索推奨ルートを進行するのに適した車線である場合は、ステップS507が肯定判定され、ステップS508へ進む。適さない車線である場合は、ステップS507が否定判定され、ステップS509へ進む。
【0023】
ステップS508では、自車位置マークの表示位置データが位置する車線が専用車線かまたは優先車線であるか判定を行う。これは、車線情報の付加情報より判断する。その車線が専用車線又は優先車線である場合は、探索推奨ルートを進行することが可能であっても一般車両である自車両はその車線を走行することはできない。したがって、その車線が専用車線又は優先車線である場合は、ステップS508が肯定判定され、ステップS509へ進む。自車位置マークの表示位置データの位置する車線が専用車線でも優先車線でもない場合は、ステップS508が否定判定され、ステップS510へ進む。ステップS509では、自車位置マークの表示位置データを隣の車線の中心に修正する。そして、ステップS507へ戻る。ステップS510では、自車位置マークの表示位置データに対応する位置に自車位置マークを表示する。つまり、自車位置マークを車線上に重ね合わせて表示する。
【0024】
以上の実施の形態によるナビゲーション装置1は次のような作用効果を奏する。
(1)探索推奨ルート上を進行する上で車両が走行する可能性が低い車線には自車位置マークを表示しないようにしたので、自車位置マークをより適切な車線上に表示することができる。
(2)自車位置マークは、自車両が探索推奨ルートを進行する蓋然性の高い車線に表示されるので、自車位置マークが表示される車線を走行することによって、車線の多い道路でも車線を間違えずに、探索推奨ルートを進行することができる。たとえば、次の交差点で右折しなくてはならないのに直進または左折専用の車線を走行してしまい、探索推奨ルートに沿って走行できなくなるということがない。
(3)自車位置マークは、バス専用車線などの専用車線などには表示されないので、自車位置マークが表示される車線を走行することによって、一般車両は通行できない車線を誤って走行することがない。
(4)道路の中央分離線を自車位置マークの表示位置データ修正の基準位置にし、その基準位置と車線情報に格納されている車線の道路の中心からの距離とに基づいて自車位置マークを車線上に表示するので、車線上に的確に自車位置マークを表示することができる。
(5)自車両の走行している車線を検出する検出手段、たとえば、カメラや光ビーコンの受信機などを設けなくても自車両の走行している車線に自車位置マークを表示することができる。
【0025】
以上の実施の形態を次のように変形することができる。
経路探索を行わずに複数車線を有する道路上を走行している場合は、光ビーコンなど自車両が走行している車線を特定する情報に基づいて、自車位置マークを車線上に表示する。
【0026】
特許請求の範囲の要素と実施の形態との対応関係を説明する。
本発明の検出手段は現在地検出装置14に対応し、経路探索手段は制御回路11に対応する。車線判別手段は制御回路11およびDVD−ROM19に対応し、重ね合わせ手段は制御回路11に対応する。地図表示装置はナビゲーション装置1に対応する。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する上で、上記の実施形態の構成要素と本発明の対応関係になんら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】地図表示用データに含まれている車線情報を説明するための図である。
【図3】車線情報にデータとして格納されている道路を説明するための図である。
【図4】複数車線を有する道路の自車位置マークの表示を説明するための図である。
【図5】自車位置マークの表示処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0028】
1 ナビゲーション装置
11 制御回路
12 ROM
13 RAM
14 現在地検出装置
15 画像メモリ
16 表示モニタ
17 入力装置
18 ディスクドライブ
19 DVD−ROM
110 VICS情報受信部
41、44 自車位置マーク
42,43 自車位置マークの表示位置
45 交差点
46 センターライン
47,48 車線
49 探索推奨ルート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車位置を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出された自車位置から目的地までの推奨経路を探索する経路探索手段と、
前記推奨経路が複数の車線を有する場合、次の誘導地点における進行方向に適したいずれかの車線を判別する車線判別手段と、
前記検出手段で検出される自車位置と前記判別された車線とに基づいて、次の誘導地点における進行方向に適した車線上に自車位置マークを重ね合わせる重ね合わせ手段と、
前記重ね合わせ手段で道路上に自車位置マークを重ね合わせた地図を表示するモニタとを備えることを特徴とする地図表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地図表示装置において、
前記モニタには、前記道路とその道路沿いのビルを立体的に表示することを特徴とする地図表示装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の地図表示装置において、
前記車線判別手段は、前記複数の車線のうち、専用車線もしくは優先車線は前記推奨経路に適した車線と判別しないことを特徴とする地図表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−266928(P2006−266928A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86708(P2005−86708)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】