説明

基板処理方法および基板処理装置

【課題】基板にダメージを与えることなく、イオン注入時にマスクとして用いられたレジストを良好に剥離(除去)することができる基板処理方法および基板処理装置を提供すること。
【解決手段】スピンチャック11に保持されたウエハWの表面にレジスト剥離液としてのSPMを供給するためのSPMノズル12と、スピンチャック11に保持されたウエハWの表面に有機溶剤と窒素ガスとを混合して得られる混合流体を供給するための二流体ノズル13とが備えられている。二流体ノズル13からウエハWの表面に混合流体が供給されることにより、レジストの表面の硬化層が破壊された後、SPMノズル12からウエハWの表面に高温のSPMが供給されて、ウエハWの表面からレジストが剥離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディプレイ用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などに代表される各種基板の表面からレジストを除去するために適用される基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程には、たとえば、半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)の表面にリン、砒素、硼素などの不純物(イオン)を局所的に注入する工程が含まれる。この工程では、不所望な部分に対するイオン注入を防止するため、ウエハの表面に感光性樹脂からなるレジストがパターン形成されて、イオン注入を所望しない部分がレジストによってマスクされる。ウエハの表面上にパターン形成されたレジストは、イオン注入の後は不要になるから、イオン注入後には、そのウエハの表面上の不要となったレジストを剥離して除去するためのレジスト除去処理が行われる。
【0003】
レジスト除去処理は、たとえば、アッシング装置でレジスト膜をアッシング(灰化)して除去した後、ウエハを洗浄装置に搬入して、ウエハの表面からアッシング後のレジスト残渣(ポリマ)を除去することによって達成できる。アッシング装置では、たとえば、ウエハを収容した処理室内が酸素ガス雰囲気にされて、その酸素ガス雰囲気中にマイクロ波が放射される。これにより、処理室内に酸素ガスのプラズマ(酸素プラズマ)が発生し、この酸素プラズマがウエハの表面に照射されることによって、ウエハの表面のレジスト膜が分解されて除去される。一方、洗浄装置では、たとえば、ウエハの表面にAPM(ammonia−hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水)などの薬液が供給されて、ウエハの表面に対して薬液による洗浄処理(レジスト残渣除去処理)が施されることにより、ウエハの表面に付着しているレジスト残渣が除去される。
【0004】
ところが、プラズマによるアッシングは、ウエハの表面のレジスト膜で覆われていない部分(たとえば、露呈した酸化膜)がダメージを受けてしまうという問題を有している。
そのため、プラズマによるアッシングおよびAPMなどの薬液を用いた洗浄処理に代えて、ウエハの表面に硫酸と過酸化水素水との混合液であるSPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水)を供給して、このSPMに含まれるペルオキソ一硫酸(HSO)の強酸化力により、ウエハの表面に形成されているレジストを剥離して除去することが提案されている。
【特許文献1】特開2005−109167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、イオン注入(とくに、高ドーズのイオン注入)が行われたウエハでは、レジストの表面が変質(硬化)しているため、レジストを良好に除去できなかったり、レジストを除去するのに時間がかかったりする。
そこで、この発明の目的は、基板にダメージを与えることなく、イオン注入時にマスクとして用いられたレジストを良好に剥離(除去)することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、有機溶剤と気体とを混合して得られる混合流体を基板(W)の表面に供給する混合流体供給工程(S2)と、この混合流体供給工程後に、基板の表面に、その基板の表面からレジストを剥離するためのレジスト剥離液を供給するレジスト剥離液供給工程(S3)とを含むことを特徴とする、基板処理方法である。
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この方法によれば、有機溶剤と気体とを混合して生成される混合流体は、大きなエネルギー(流体が基板の表面に衝突するときの物理的な作用および有機溶剤の化学的な作用)を有するので、この混合流体が基板の表面に供給されることにより、レジストの表面に硬化層が形成されていても、その硬化層を破壊することができる。そのため、混合流体が基板の表面に供給された後に、その基板の表面にレジスト剥離液が供給されると、レジストの表面の硬化層がすでに破壊されているので、基板の表面に供給されるレジスト剥離液は、その硬化層の破壊された部分からレジストの内部に浸透することができる。よって、処理対象の基板が、硬化層を含むレジストを灰化させて除去するためのアッシング処理を受けていなくても、その基板の表面に形成されている硬化層を有するレジストを、レジスト剥離液によって良好に除去することができる。また、アッシングが不要であるから、アッシングによるダメージの問題を回避することができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、基板を回転させる基板回転工程と、前記基板回転工程と並行して、基板の表面に液体を供給する液体供給工程とをさらに含み、前記液体供給工程は、前記混合流体供給工程と並行して行われることを特徴とする、請求項1記載の基板処理方法である。
この方法によれば、回転している基板の表面に液体が供給されることによって、基板の表面が液体で覆われ、その液体は基板の回転による遠心力を受けて基板の外側に向けて流れているので、混合流体によりレジストの硬化層が破壊されたときに、その破壊された硬化層の破片は基板の表面を外側に向けて流れる液体とともに基板の表面から除去され、破壊された硬化層の破片が基板の表面に再付着することを防止することができる。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記レジスト剥離液は、硫酸と過酸化水素水との混合液を含むことを特徴とする、請求項1または2記載の基板処理方法である。
この方法によれば、硫酸と過酸化水素水との混合液、つまりSPMを基板の表面に供給することにより、SPMに含まれるペルオキソ一硫酸の強酸化力によって、基板の表面に形成されているレジストを良好に剥離することができる。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記混合流体供給工程は、気体と有機溶剤の液体とから生成される液滴の噴流を供給する工程であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理方法である。
また、請求項5記載の発明は、前記混合流体供給工程は、気体と有機溶剤のベーパとを混合して得られる混合流体を供給する工程であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理方法である。
【0011】
このように、混合流体は、気体と有機溶剤の液体とからなる液滴の噴流であってもよいし、気体と有機溶剤のベーパとからなるベーパ状の流体であってもよい。気体と有機溶剤の液体とからなる液滴の噴流は、気体と有機溶剤のベーパとからなるベーパ状の流体よりも大きな物理エネルギーを有するので、レジストの表面の硬化層をより良好に破壊することができる。一方、気体と有機溶剤のベーパとからなるベーパ状の流体は、気体と有機溶剤の液体とからなる液滴の噴流よりも基板の表面に衝突するときの物理的な作用が小さいため、基板の表面に形成されたパターンの倒壊を抑制することができる。また、気体と有機溶剤のベーパとからなるベーパ状の流体は、基板の周囲を排気することにより、基板の周囲からすみやかに排除することができる。
【0012】
なお、有機溶剤および/または気体は、有機溶剤の引火点よりも低い温度まで加熱されてもよい。この場合、混合流体が有するエネルギーを一層増大させることができ、レジストの表面の硬化層をより良好に破壊することができる。
請求項6記載の発明は、基板(W)を保持する基板保持手段(11)と、有機溶剤と気体とを混合して混合流体を生成し、その混合流体を前記基板保持手段に保持されている基板の表面に供給するための混合流体供給手段(13)と、前記基板保持手段に保持されている基板の表面に、その基板の表面からレジストを剥離するためのレジスト剥離液を供給するためのレジスト剥離液供給手段(12)と、前記混合流体供給手段および前記レジスト剥離液供給手段を制御して、前記混合流体供給手段による混合流体の供給後に、前記レジスト剥離液供給手段によるレジスト剥離液の供給を行わせるための制御手段(45)とを含むことを特徴とする、基板処理装置である。
【0013】
この構成によれば、請求項1記載の発明を実施することができ、請求項1に関連して述べた効果と同様な効果を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を図解的に示す図である。この基板処理装置は、たとえば、基板の一例である半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)の表面に不純物を注入するイオン注入処理後に、そのウエハWの表面から不要になったレジストを剥離して除去するための処理を行う枚葉式の装置であり、ウエハWをほぼ水平に保持して回転するスピンチャック11と、このスピンチャック11に保持されたウエハWの表面(上面)にレジスト剥離液としてのSPMを供給するためのSPMノズル12と、スピンチャック11に保持されたウエハWの表面に有機溶剤の液体と窒素ガスとの混合流体を供給するための二流体ノズル13と、スピンチャック11に保持されたウエハWの表面に純水(DIW:deionized water)の連続流を供給するための純水ノズル30とを備えている。
【0015】
スピンチャック11は、チャック回転駆動機構14によって回転される回転軸15の上端に固定されていて、ほぼ円板形状のスピンベース16と、このスピンベース16の周縁部の複数箇所にほぼ等角度間隔で設けられ、基板Wをほぼ水平な姿勢で挟持するための複数個の挟持部材17とを備えている。スピンチャック11は、複数個の挟持部材17によってウエハWを挟持した状態で、チャック回転駆動機構14によって回転軸15を回転させることにより、そのウエハWを、ほぼ水平な姿勢を保った状態で、スピンベース16とともに回転軸15の中心軸線まわりに回転させることができる。
【0016】
なお、スピンチャック11としては、このような構成のものに限らず、たとえば、ウエハWの裏面(非デバイス面)を真空吸着することにより、ウエハWを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式のバキュームチャックが採用されてもよい。
SPMノズル12は、たとえば、SPMを連続流の状態で吐出するストレートノズルからなる。SPMノズル12には、SPM供給管18が接続されており、このSPM供給管18から、ウエハWの表面のレジストを良好に剥離可能な約80℃以上の高温のSPMが供給されるようになっている。SPM供給管18の途中部には、SPMノズル12へのSPMの供給を制御するためのSPMバルブ19が介装されている。
【0017】
また、SPMノズル12は、ウエハWの表面におけるSPMの供給位置を変更できるスキャンノズルとしての基本形態を有している。具体的には、スピンチャック11の側方には、第1の回動軸20が鉛直方向にほぼ沿って配置されており、SPMノズル12は、その第1の回動軸20の上端部からほぼ水平に延びた第1のアーム21の先端部に取り付けられている。第1の回動軸20には、この第1の回動軸20を中心軸線まわりに所定の角度範囲内で回動させるSPMノズル駆動機構22が結合されている。SPMノズル駆動機構22から第1の回動軸20に駆動力を入力して、第1の回動軸20を所定の角度範囲内で回動させることにより、スピンチャック11に保持されたウエハWの上方で第1のアーム21を揺動させることができ、これに伴って、スピンチャック11に保持されたウエハWの表面上で、SPMノズル12からのSPMの供給位置をスキャン(移動)させることができる。
【0018】
二流体ノズル13には、有機溶剤供給源からの加圧された有機溶剤の液体が供給される有機溶剤供給管23と、窒素ガス供給源からの加圧された窒素ガスが供給される窒素ガス供給管24とが接続されている。有機溶剤供給管23の途中部には、有機溶剤バルブ25が介装されている。一方、窒素ガス供給管24の途中部には、窒素ガスバルブ26が介装されている。有機溶剤バルブ25および窒素ガスバルブ26が開かれると、有機溶剤供給管23および窒素ガス供給管24をそれぞれ有機溶剤の液体および窒素ガスが流通し、それらが二流体ノズル13に供給される。そして、二流体ノズル13で有機溶剤の液体と窒素ガスとが混合されて、有機溶剤が微細な液滴となり、この液滴が噴流となって、二流体ノズル13からスピンチャック11に保持されたウエハWの表面に供給される。
【0019】
なお、二流体ノズル13に供給される有機溶剤としては、たとえば、IPA(イソプロピルアルコール)、NMP(Nメチル−2−ピロリドン)、アセトン、シクロヘキサノンまたはシクロヘキサンなどを例示することができる。
また、スピンチャック11の側方には、第2の回動軸27が鉛直方向にほぼ沿って配置されており、二流体ノズル13は、その第2の回動軸27の上端部からほぼ水平に延びた第2のアーム28の先端部に取り付けられている。第2の回動軸27には、この第2の回動軸27を中心軸線まわりに所定の角度範囲内で回動させる二流体ノズル駆動機構29が結合されている。二流体ノズル駆動機構29から第2の回動軸27に駆動力を入力して、第2の回動軸27を所定の角度範囲内で回動させることにより、スピンチャック11に保持されたウエハWの上方で第2のアーム28を揺動させることができ、これに伴って、スピンチャック11に保持されたウエハWの表面上で、二流体ノズル13からの液滴の噴流の供給位置をスキャン(移動)させることができる。
【0020】
純水ノズル30には、純水バルブ31を介して純水が供給されるようになっている。
図2は、二流体ノズル13の構成を示す図解的な断面図である。二流体ノズル13は、たとえば、いわゆる外部混合型二流体ノズルの構成を有している。
すなわち、二流体ノズル13は、ケーシング32を備え、このケーシング32の先端に、有機溶剤を外部空間33に向けて吐出するための有機溶剤吐出口34と、この有機溶剤吐出口34を取り囲む環状に形成され、窒素ガスを外部空間33に向けて吐出するための窒素ガス吐出口35とを有している。
【0021】
より具体的に説明すると、ケーシング32は、内側流通管36と、内側流通管36の周囲を取り囲み、その内側流通管36を内挿状態で同軸に保持する外側保持体37とによって構成されている。
内側流通管36は、その内部に有機溶剤流路38を有している。この有機溶剤流路38の先端(下端)が、有機溶剤吐出口34として開口し、その反対側の上端は、有機溶剤を導入するための有機溶剤導入ポート39を形成している。また、内側流通管36は、先端部(下端部)40およびその反対側の上端部41がそれぞれ外方に張り出した鍔形状に形成されており、これらの鍔形状の先端部40および上端部41が外側保持体37の内面に当接して、先端部40および上端部41の間において、内側流通管36の外面と外側保持体37の内面との間に空間42が形成されている。そして、内側流通管36の先端部40には、空間42と外部空間33とを連通させる窒素ガス流路43が形成され、この窒素ガス流路43の先端が窒素ガス吐出口35として開口している。窒素ガス流路43は、先端側ほど内側流通管36の中心軸線に近づくように傾斜する断面形状を有している。
【0022】
外側保持体37は、その側面に窒素ガス導入ポート44を有している。この窒素ガス導入ポート44は、内側流通管36の外面と外側保持体37の内面との間に形成された空間42に連通している。
有機溶剤導入ポート39に有機溶剤供給管23が接続され、窒素ガス導入ポート44に窒素ガス供給管24が接続される。そして、有機溶剤供給管23から有機溶剤流路38に有機溶剤が供給されるとともに、窒素ガス供給管24から空間42に窒素ガスが供給されると、有機溶剤吐出口34から外部空間33に有機溶剤が吐出されるとともに、窒素ガス吐出口35から外部空間33に窒素ガスが吐出される。すると、外部空間33において、有機溶剤と窒素ガスとが衝突して混合され、有機溶剤が微細な液滴となり、その液滴の噴流が形成される。
【0023】
なお、二流体ノズル13は、外部混合型二流体ノズルの構成に限らず、いわゆる内部混合型二流体ノズルの構成を有していてもよい。
図3は、この基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。この基板処理装置はさらに、マイクロコンピュータを含む構成の制御装置45を備えている。
制御装置45には、チャック回転駆動機構14、SPMノズル駆動機構22、二流体ノズル駆動機構29、SPMバルブ19、有機溶剤バルブ25、窒素ガスバルブ26および純水バルブ31が制御対象として接続されている。制御装置45は、予め定められたプログラムに従って、チャック回転駆動機構14、SPMノズル駆動機構22および二流体ノズル駆動機構29の動作を制御し、また、SPMバルブ19、有機溶剤バルブ25、窒素ガスバルブ26および純水バルブ31の開閉を制御する。
【0024】
図4は、ウエハWの処理について説明するための図である。イオン注入処理後のウエハWは、図示しない搬送ロボットによって搬入されてきて、レジストが形成されている表面を上方に向けた状態でスピンチャック11に保持される(ステップS1)。なお、処理対象のウエハWは、レジストをアッシング(灰化)するための処理を受けておらず、そのレジストの表面には、イオン注入によって変質した硬化層が形成されている。
【0025】
まず、チャック回転駆動機構14が制御されて、スピンチャック11に保持されたウエハWが所定の回転速度(たとえば、100rpm)で回転される。そして、純水バルブ31が開かれて、その回転しているウエハWの表面に、純水ノズル30から純水が連続流の状態で供給される。また、二流体ノズル駆動機構29が制御されて、二流体ノズル13がスピンチャック11の側方に設定された待機位置からスピンチャック11に保持されたウエハWの上方に移動される。その後、有機溶剤バルブ25および窒素ガスバルブ26が開かれて、二流体ノズル13から有機溶剤の液体と窒素ガスとが混合されて生成された液滴の噴流が吐出される。この一方で、二流体ノズル駆動機構29が制御されて、第2のアーム28が所定の角度範囲内で揺動される。これによって、二流体ノズル13からの液滴の噴流が導かれるウエハWの表面上の供給位置が、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動し、ウエハWの表面の全域に液滴の噴流がむらなく供給される(ステップS2)。液滴の噴流がウエハWの表面に衝突するときの衝撃および有機溶剤の化学的な作用によって、レジストの表面に形成されている硬化層が破壊される。この液滴の噴流がウエハWの表面に供給されている間、純水ノズル30からウエハWへの純水の連続流の供給が続けられる。
【0026】
噴流供給位置の往復スキャンが所定回数行われると、有機溶剤バルブ25、窒素ガスバルブ26および純水バルブ31が閉じられて、二流体ノズル13からの液滴の噴流の供給および純水ノズル30からの純水の連続流の供給が停止される。そして、二流体ノズル13が、ウエハWの上方からスピンチャック11の側方の待機位置に戻される。
次に、SPMノズル駆動機構22が制御されて、SPMノズル12が、スピンチャック11の側方に設定された待機位置からスピンチャック11に保持されたウエハWの上方に移動される。そして、SPMバルブ19が開かれて、SPMノズル12から回転中のウエハWの表面に高温のSPMが供給される。この一方で、SPMノズル駆動機構22が制御されて、第1のアーム21が所定の角度範囲内で揺動される。これによって、SPMノズル12からのSPMが導かれるウエハWの表面上の供給位置が、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動し、ウエハWの表面の全域にSPMがむらなく供給される(ステップS3)。
【0027】
レジストの表面の硬化層は、液滴の噴流の供給によって破壊されているので、ウエハWの表面に供給される高温のSPMは、その硬化層の破壊された部分からレジストの内部に浸透することができる。よって、処理対象のウエハWが、硬化層を含むレジストを灰化させて除去するためのアッシング処理を受けていなくても、そのウエハWの表面に形成されている不要なレジストを、SPMの酸化力によって良好に除去することができる。
【0028】
SPM供給位置の往復スキャンが所定回数行われると、SPMバルブ19が閉じられ、ウエハWへのSPMの供給が停止されて、SPMノズル12がスピンチャック11の側方の退避位置に戻される。
その後は、純水バルブ31が再び開かれて、ウエハWの表面に純水ノズル30から純水が供給されることにより、ウエハWの表面に付着しているSPMが純水によって洗い流される(ステップS4)。
【0029】
純水の供給が一定時間にわたって続けられると、純水バルブ31が閉じられて、純水の供給が停止され、つづいて、ウエハWを高回転速度(たとえば、3000rpm)で回転させて、ウエハWに付着している純水を遠心力で振り切って乾燥させる処理(スピンドライ処理)が行われる(ステップS5)。
この処理が完了すると、チャック回転駆動機構14が制御されて、スピンチャック11によるウエハWの回転が止められた後、図示しない搬送ロボットによって処理済みのウエハWが搬出されていく(ステップS6)。
【0030】
以上のように、この実施形態によれば、有機溶剤の液体と窒素ガスとが混合されて生成される液滴の噴流は、大きなエネルギー(液滴の噴流がウエハWの表面に衝突したときの物理的な作用および有機溶剤の化学的な作用)を有するので、この液滴の噴流がウエハWの表面に供給されることにより、ウエハWの表面上のレジストの表面に硬化層が形成されていても、その硬化層を破壊することができる。そのため、有機溶剤の液体と窒素ガスとの混合により生成された液滴の噴流がウエハWの表面に供給された後に、そのウエハWの表面にSPMが供給されると、レジストの表面の硬化層がすでに破壊されているので、ウエハWの表面に供給されるSPMは、その硬化層の破壊された部分からレジストの内部に浸透することができる。よって、ウエハWが硬化層を除去するためのアッシング処理を受けていなくても、そのウエハWの表面に形成されている硬化層を有するレジストを、SPMによって良好に除去することができる。また、アッシングが不要であるから、アッシングによるダメージの問題を回避することができる。
【0031】
また、液滴の噴流がウエハWの表面に供給されている間、その回転しているウエハWの表面に純水の連続流が供給されることにより、ウエハWの表面は純水で覆われ、純水はウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの外側に向けて流れている。そのため、液滴の噴流によりレジストの硬化層が破壊されたときに、その破壊された硬化層の破片はウエハWの表面を外側に向けて流れる純水とともにウエハWの表面から除去され、破壊された硬化層の破片がウエハWの表面に再付着することを防止することができる。
【0032】
なお、この実施形態では、二流体ノズル13に有機溶剤の液体が供給される場合を例にとったが、有機溶剤は液体の状態に限らず、ベーパの状態で二流体ノズル13に供給されてもよい。有機溶剤のベーパが二流体ノズル13に供給される場合、二流体ノズル13で有機溶剤のベーパと窒素ガスとの混合流体が生成される。この混合流体はベーパ状であるため、有機溶剤の液体と窒素ガスとからなる液滴の噴流よりもウエハWの表面に衝突するときの物理的な作用が小さいため、ウエハWの表面に形成されたパターンの倒壊を抑制することができる。また、有機溶剤のベーパと窒素ガスとからなるベーパ状の混合流体は、ウエハWの周囲(スピンチャック11の周囲)が排気されていれば、二流体ノズル13からウエハWの表面に供給された混合流体をウエハWの周囲からすみやかに排除することができる。一方、気体と有機溶剤の液体とからなる液滴の噴流は、気体と有機溶剤のベーパとからなるベーパ状の混合流体よりも大きな物理エネルギーを有するので、レジストの表面の硬化層をより良好に破壊することができる。
【0033】
また、有機溶剤供給管23および/または窒素ガス供給管24の途中部にヒータが介装されて、二流体ノズル13に供給される有機溶剤および/または窒素ガスが有機溶剤の引火点よりも低い温度まで加熱されてもよい。この場合、混合流体が有するエネルギーを一層増大させることができ、レジストの表面の硬化層をより良好に破壊することができる。
また、二流体ノズル13には、窒素ガスに限らず、ヘリウムやアルゴン、窒素ガスと水素ガスとの混合ガス、二酸化炭素ガスなどが供給されてもよい。
【0034】
図5は、レジスト剥離試験の結果を示すグラフである。
試料1〜4を用意し、各試料1〜4からレジストを剥離(除去)する試験A1〜A4,B1〜B4を行った。
試料1:ウエハWの表面にKrF(フッ化クリプトン)エキシマレーザ用レジストのパターンを形成し、これをマスクとして、ウエハWの表面にAs(ヒ素)をドーズ量1E13atoms/cmでイオン注入したもの。
【0035】
試料2:ウエハWの表面にI線用レジストのパターンを形成し、これをマスクとして、ウエハWの表面にAsをドーズ量1E14atoms/cmでイオン注入したもの。
試料3:ウエハWの表面にI線用レジストのパターンを形成し、これをマスクとして、ウエハWの表面にAsをドーズ量1E15atoms/cmでイオン注入したもの。
試料4:ウエハWの表面にKrFエキシマレーザ用レジストのパターンを形成し、これをマスクとして、ウエハWの表面にAsをドーズ量1E16atoms/cmでイオン注入したもの。
【0036】
なお、試験A1〜E1では、温度80℃の硫酸(濃度96wt%)と温度25℃の純水とを体積比2:1で混合して得られるSPMを用いた。
<試験A1>
試料1のウエハWの表面に対して、SPMノズル12からSPMを流量0.9l/minで供給し、SPMの供給開始からレジストが剥離されるまでの時間(resist strip time)を計測した。その時間は、150秒間であった。
<試験B1>
試料1のウエハWの表面に対して、二流体ノズル13から有機溶剤(アセトン)と窒素ガスとが混合されて生成される液滴の噴流を40秒間にわたって供給した後、SPMノズル12からSPMを供給し、液滴の噴流の供給開始からレジストが剥離されるまでの時間(resist strip time)を計測した。なお、二流体ノズル13には、有機溶剤を流量100ml/minで供給するとともに、窒素ガスを流量80l/minで供給した。液滴の噴流の供給開始からレジストが剥離されるまでの時間は、120秒間であり、試験A1で計測された時間より30秒間短縮された。
<試験A2>
試料2のウエハWの表面に対して、SPMノズル12からSPMを流量0.9l/minで供給し、SPMの供給開始からレジストが剥離されるまでの時間(resist strip time)を計測した。その時間は、180秒間であった。
<試験B2>
試料2のウエハWの表面に対して、二流体ノズル13から有機溶剤(アセトン)と窒素ガスとが混合されて生成される液滴の噴流を40秒間にわたって供給した後、SPMノズル12からSPMを供給し、液滴の噴流の供給開始からレジストが剥離されるまでの時間(resist strip time)を計測した。なお、二流体ノズル13には、有機溶剤を流量100ml/minで供給するとともに、窒素ガスを流量80l/minで供給した。液滴の噴流の供給開始からレジストが剥離されるまでの時間は、130秒間であり、試験A2で計測された時間より50秒間短縮された。
<試験A3>
試料3のウエハWの表面に対して、SPMノズル12からSPMを流量0.9l/minで供給し、SPMの供給開始からレジストが剥離されるまでの時間(resist strip time)を計測した。その時間は、300秒間であった。
<試験B3>
試料3のウエハWの表面に対して、二流体ノズル13から有機溶剤(アセトン)と窒素ガスとが混合されて生成される液滴の噴流を40秒間にわたって供給した後、SPMノズル12からSPMを供給し、液滴の噴流の供給開始からレジストが剥離されるまでの時間(resist strip time)を計測した。なお、二流体ノズル13には、有機溶剤を流量100ml/minで供給するとともに、窒素ガスを流量80l/minで供給した。液滴の噴流の供給開始からレジストが剥離されるまでの時間は、200秒間であり、試験A3で計測された時間より100秒間短縮された。
<試験A4>
試料4のウエハWの表面に対して、SPMノズル12からSPMを流量0.9l/minで供給し、SPMの供給開始からレジストが剥離されるまでの時間(resist strip time)を計測した。その時間は、330秒間であった。
<試験B4>
試料4のウエハWの表面に対して、二流体ノズル13から有機溶剤(アセトン)と窒素ガスとが混合されて生成される液滴の噴流を40秒間にわたって供給した後、SPMノズル12からSPMを供給し、液滴の噴流の供給開始からレジストが剥離されるまでの時間(resist strip time)を計測した。なお、二流体ノズル13には、有機溶剤を流量100ml/minで供給するとともに、窒素ガスを流量80l/minで供給した。液滴の噴流の供給開始からレジストが剥離されるまでの時間は、220秒間であり、試験A4で計測された時間より110秒間短縮された。
【0037】
図5には、各試験A1〜A4で計測された時間が、折れ線グラフ(Chemical only)で示されている。また、各試験B1〜B4で計測された時間が、折れ線グラフ(Spray Cleaning+Chemical)で示されている。そして、試験A1で計測された時間と試験B1で計測された時間との差、試験A2で計測された時間と試験B2で計測された時間との差、試験A3で計測された時間と試験B3で計測された時間との差、および試験A4で計測された時間と試験B4で計測された時間との差が、棒グラフで示されている。
【0038】
図5に示す結果から、Asのドーズ量が多いほど、レジストを剥離するのに要する時間が長くかかることが理解される。また、SPMの供給前に有機溶剤の液滴の噴流をウエハWの表面に供給することにより、SPMのみをウエハWの表面に供給し続ける場合(Chemical only)と比較して、レジストを剥離するのに要する時間が短縮されることが理解される。
【0039】
以上、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、上述した形態以外の形態で実施することもできる。たとえば、上述の実施形態では、ウエハWの表面に対して二流体ノズル13から液滴の噴流が供給される間、そのウエハWの表面に純水ノズル30から純水が供給されるとしたが、純水ノズル30からの純水の供給は、二流体ノズル13からの液滴の噴流の供給を開始する前から行われていてもよい。また、二流体ノズル13から液滴の噴流が供給される間にウエハWの表面に供給される液体は、純水に限らず、SPMや硫酸などの薬液であってもよいが、液滴の噴流を生成するために用いられる液体と同種の液体であることが好ましい。
【0040】
さらにまた、基板の一例としてウエハWを取り上げたが、処理の対象となる基板は、ウエハWに限らず、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、FED用ガラス基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板またはフォトマスク用基板であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を図解的に示す図である。
【図2】図1に示す二流体ノズルの図解的な断面図である。
【図3】図1に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す基板処理装置における処理について説明するための図である。
【図5】レジスト剥離試験の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0042】
11 スピンチャック
12 SPMノズル
13 二流体ノズル
45 制御装置
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤と気体とを混合して得られる混合流体を基板の表面に供給する混合流体供給工程と、
この混合流体供給工程後に、基板の表面に、その基板の表面からレジストを剥離するためのレジスト剥離液を供給するレジスト剥離液供給工程とを含むことを特徴とする、基板処理方法。
【請求項2】
基板を回転させる基板回転工程と、
前記基板回転工程と並行して、基板の表面に液体を供給する液体供給工程とをさらに含み、
前記液体供給工程は、前記混合流体供給工程と並行して行われることを特徴とする、請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記レジスト剥離液は、硫酸と過酸化水素水との混合液を含むことを特徴とする、請求項1または2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記混合流体供給工程は、気体と有機溶剤の液体とを混合して得られる液滴の噴流を供給する工程であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記混合流体供給工程は、気体と有機溶剤のベーパとを混合して得られる混合流体を供給する工程であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項6】
基板を保持する基板保持手段と、
有機溶剤と気体とを混合して混合流体を生成し、その混合流体を前記基板保持手段に保持されている基板の表面に供給するための混合流体供給手段と、
前記基板保持手段に保持されている基板の表面に、その基板の表面からレジストを剥離するためのレジスト剥離液を供給するためのレジスト剥離液供給手段と、
前記混合流体供給手段および前記レジスト剥離液供給手段を制御して、前記混合流体供給手段による混合流体の供給後に、前記レジスト剥離液供給手段によるレジスト剥離液の供給を行わせるための制御手段とを含むことを特徴とする、基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−180497(P2007−180497A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275092(P2006−275092)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】