説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板の厚みにかかわらず、その少なくとも一方表面の周縁領域および周端面を良好に洗浄することができる、基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【解決手段】ブラシ16は、略円板状の胴部27と、先端側に向けて拡がる略円錐台状の第1周端面当接部28と、先端側に向けて拡がる略円錐台状の第2周端面当接部72とを備えている。胴部27の先端側の端面における第1周端面当接部28の周囲の円環帯状の部分が、基板の一方表面の周縁領域に当接する第1洗浄面29Aとなっている。第1周端面当接部28の側面が、基板の周端面に当接する第2洗浄面29Bとなっている。第1周端面当接部28の大径側端面における第2周端面当接部72の周囲の円環帯状の部分が、基板の一方表面の周縁領域に当接する第3洗浄面74Aとなっている。第2周端面当接部72の側面が、基板の周端面に当接する第4洗浄面74Bとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を洗浄処理するための基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、半導体ウエハの周縁部の汚染が、半導体ウエハの処理品質に対して無視できない影響を与える場合がある。具体的には、いわゆるバッチ処理工程では、複数枚の半導体ウエハが鉛直姿勢で処理液中に浸漬されるため、半導体ウエハの周縁部に汚染物質が付着していると、その汚染物質が、処理液中に拡散し、半導体ウエハの表面のデバイス形成領域に再付着するおそれがある。
【0003】
そのため、最近では、半導体ウエハなどの基板の周縁部の洗浄に対する要求が高まっている。
基板の周縁部の洗浄に関する先行技術として、たとえば、特許文献1〜3で提案されている構成を挙げることができる。
特許文献1では、円筒状のブラシを設けて、基板を回転させつつ、その基板の周端面にブラシの外周面を当接させることにより、基板の周端面の汚染を除去する構成が提案されている。
【0004】
特許文献2では、特許文献1で提案されている構成と同様な構成において、基板の周端面の形状にかかわらず、基板の周端面の汚染をより良好に除去することができるように、基板の周端面に円筒状のブラシを押し付けて、ブラシの外周面に基板の周端面を食い込ませたり、ブラシの外周面に基板の周端面の形状に応じた溝を形成して、その溝に基板の周端面を嵌合させたりすることが提案されている。
【0005】
また、特許文献3では、円筒状のブラシの外周面に基板の周縁部を嵌合可能な溝を形成し、この溝に基板の周縁部を嵌合させた状態で、基板を回転させるとともに、ブラシをその中心軸線まわりに回転させることにより、基板の表面および裏面の各周縁領域(基板の表面および裏面における各周端縁から所定幅の環状領域)および周端面を洗浄する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−197592号公報
【特許文献2】特開2003−151943号公報
【特許文献3】米国特許第6550091号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1,2で提案されている構成では、基板の周端面の汚染を除去することができても、基板の表面および裏面の各周縁領域にブラシが接触しないため、それらの各周縁領域の汚染を除去することはできない。
【0008】
一方、特許文献3で提案されている構成では、一定の厚みを有する基板であれば、その表面および裏面の各周縁領域を洗浄することができるが、それ以外の厚みを有する基板は、その表面および裏面の各周縁領域を良好に洗浄することができない。すなわち、基板の厚みが一定の厚みよりも大きいと、基板の周縁部をブラシの溝に嵌めることができず、また、基板の厚みが一定の厚みよりも小さいと、基板の表面および裏面の各周縁領域に対するブラシの押し付け力が弱くなり、各周縁領域を良好に洗浄することができない。
【0009】
そこで、この発明の目的は、基板の厚みにかかわらず、その少なくとも一方表面の周縁領域および周端面を良好に洗浄することができる、基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を保持する基板保持機構(3)と、弾性変形可能な材料を用いて形成され、平坦な第1洗浄面(29A)と、前記第1洗浄面に対向する側に向けて拡がり、前記第1洗浄面に垂直な軸を中心軸とする略円錐台状に形成された第1周端面当接部(28)と、前記第1周端面当接部の大径側端面における中央部分に接続され、前記第1周端面当接部の大径側端面に対向する側に向けて拡がる略円錐台状に形成された第2周端面当接部(72;73)とを備えており、前記第1周端面当接部の小径側の周端縁から前記第1周端面当接部の中心軸と直交する方向に拡がる略円環帯状の部分を前記第1洗浄面とし、前記第1洗浄面に対向する側に向けて拡がる前記第1周端面当接部の側面を第2洗浄面(29B)とし、前記第1周端面当接部の大径側端面における前記中央部分の周囲の略円環帯状の部分を第3洗浄面(74A;75A)とし、前記第2周端面当接部の側面を第4洗浄面(74B;75B)として有するブラシ(71)と、前記基板保持機構に保持された基板に対して前記ブラシを移動させるブラシ移動機構(17,18)と、このブラシ移動機構を制御することにより、前記第1洗浄面および前記第2洗浄面が、それぞれ、前記基板保持機構に保持された基板の一方表面の周縁領域(14A)および周端面(15)に押し付けられ、前記第3洗浄面および前記第4洗浄面が、それぞれ、前記基板保持機構に保持された基板の一方表面の周縁領域および周端面に押し付けられるように、前記基板保持機構に保持された基板の前記一方表面の周縁領域および前記周端面に対して、前記第1洗浄面および前記第2洗浄面と、前記第3洗浄面および前記第4洗浄面とを選択的に押し付けるための制御部(41)とを含むことを特徴とする、基板処理装置(1)である。
【0011】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、ブラシを移動させるブラシ移動機構が制御されて、ブラシの第1洗浄面が基板の一方表面の周縁領域に押し付けられるとともに、ブラシの第2洗浄面が基板の周端面に押し付けられる。もしくは、ブラシ移動機構が制御されて、ブラシの第3洗浄面が基板の一方表面の周縁領域に押し付けられるとともに、ブラシの第4洗浄面が基板の周端面に押し付けられる。これにより、基板の一方表面の周縁領域および周端面を同時に洗浄することができる。
【0012】
しかも、基板の厚みに応じた位置にブラシを移動させて、基板の一方表面の周縁領域に対するブラシの押し付け量(基板の一方表面の周縁領域にブラシの第1洗浄面を押し付けたときのブラシの弾性変形量)を一定にすることができる。よって、基板の厚みにかかわらず、基板の一方表面の周縁領域に対するブラシの押し付け力を確保することができ、基板の一方表面の周縁領域を良好に洗浄することができる。
【0013】
そのうえ、第1洗浄面が平坦面であるので、その第1洗浄面と基板の一方表面の周縁領域との接触部分の全域で、基板の一方表面の周縁領域に対するブラシの押し付け力を同じにすることができる。したがって、基板の一方表面の周縁領域を一様に洗浄することができる。
また、前記基板の一方表面の周縁領域よりも内方の領域(中央領域)に第1洗浄面が接触することがないため、ブラシで洗浄すべき周縁領域と洗浄する必要のない中央領域とを明確に区別して処理することができ、基板の一方表面の周縁領域における洗浄幅の精度を高くすることができる。特に、基板の一方表面の前記中央領域がデバイス領域である場合には基板の一方表面の周縁領域における洗浄幅の精度を要求されるが、本発明によれば、前記洗浄幅を最大限確保しつつ、ブラシによるデバイスの損傷を回避することができる。
【0014】
また、第2洗浄面は、第1洗浄面に対向する側に向けて拡がる形状に形成されているので、基板の周端面に押し付けられると、弾性変形し、基板の一方表面と反対側の他方表面の周縁領域(14B)に回り込んで接触する。そのため、基板の一方表面の周縁領域および周端面を洗浄することができるとともに、基板の他方表面の周縁領域をも洗浄することができる。すなわち、基板の周縁部(一方表面及び他方表面の周縁領域および周端面)のすべてを同時に洗浄することができ、基板の周縁部の洗浄処理を効率的に行なうことができる。
【0015】
また、基板の洗浄によって第1洗浄面および第2洗浄面が摩耗したり、第1洗浄面および第2洗浄面に過剰に汚染物質が蓄積されたりしたときは、第3洗浄面および第4洗浄面を用いることにより、引き続き、基板の一方表面および他方表面の周縁領域および周端面を良好に洗浄することができる。
【0016】
なお、基板の一方表面の前記中央領域がデバイス領域であり、基板の他方表面にはデバイスが形成されていない場合には、上述したように基板の一方表面の周縁領域についてはその洗浄幅は高い精度が要求され、基板の他方表面の周縁領域についてはその洗浄幅の精度は一方表面側ほど要求されない。したがって、このような場合には特に、基板の一方表面の周縁領域を第1洗浄面で精度良く洗浄し、基板の他方表面の周縁領域を第2洗浄面で洗浄することが有効となる。
【0017】
請求項2記載の発明は、前記第1洗浄面の幅と前記第3洗浄面の幅とが異なることを特徴とする、請求項1に記載の基板処理装置である。
【0018】
この構成によれば、第1洗浄面の幅と第3洗浄面の幅とが異なるので、第1洗浄面と第3洗浄面とを使い分けることにより、基板の一方表面の周縁領域における洗浄幅を容易に変更することができる。
請求項3記載の発明は、前記第4洗浄面に溝(82)が形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の基板処理装置である。
【0019】
この構成によれば、ブラシの第4洗浄面に溝が形成されているので、ブラシによって基板の他方表面の周縁領域及び周端面に比較的強固に付着している汚染物質を掻き取ることができるとともに、この基板から掻き取られた汚染物質を、溝を通して、第4洗浄面と基板との間から排除することができる。そのため、基板の一層良好な洗浄を達成することができる。
【0020】
請求項4記載の発明は、前記第2洗浄面に溝(82)が形成されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理装置である。
この構成によれば、ブラシの第2洗浄面に溝が形成されているので、ブラシによって基板の他方表面の周縁領域及び周端面に比較的強固に付着している汚染物質を掻き取ることができるとともに、この基板から掻き取られた汚染物質を、溝を通して、第2洗浄面と基板との間から排除することができる。そのため、基板の一層良好な洗浄を達成することができる。
【0021】
請求項5記載の発明は、前記ブラシを前記第1洗浄面に垂直な垂線方向に延びる軸線を中心に回転させるブラシ回転機構(21)をさらに含むことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置である。
この構成によれば、ブラシの洗浄面が基板の一方表面および他方表面の周縁領域および周端面に押し付けられた状態で、ブラシ回転機構によりブラシを回転させることによって、基板の一方表面および他方表面の周縁領域および周端面をスクラブすることができる。そのため、基板の一方表面および他方表面の周縁領域および周端面を一層良好に洗浄することができる。
【0022】
請求項6記載の発明は、前記基板保持機構に保持された基板と前記ブラシとを、前記ブラシが当該基板の周方向に移動するように相対移動させるブラシ相対移動機構(3,9)をさらに含むことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の基板処理装置である。
この構成によれば、ブラシと基板との相対移動により、基板の一方表面および他方表面の周縁領域および周端面を効率的に洗浄することができる。
【0023】
請求項7記載の発明は、前記基板保持機構に保持された基板の少なくとも前記一方表面の周縁領域よりも内方の領域に処理液を供給する処理液供給機構(4,5,10,11,12)をさらに含むことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置である。
この構成によれば、処理液により、基板の一方表面の周縁領域よりも内方の領域の汚染を洗い流すことができる。また特に、前記基板の一方表面の周縁領域よりも内方の領域がデバイス形成領域であって、処理液として純水や機能水などのデバイス形成領域に影響を与えない処理液を用いた場合には、処理液が保護液としても作用し、ブラシによって基板の周縁部から除去された汚染物質が前記デバイス形成領域内に侵入してこのデバイス形成面が再汚染されることを防止することができる。
【0024】
請求項8記載の発明は、弾性変形可能な材料を用いて形成され、平坦な第1洗浄面(29A)と、前記第1洗浄面に対向する側に向けて拡がり、前記第1洗浄面に垂直な軸を中心軸とする略円錐台状に形成された第1周端面当接部(28)と、前記第1周端面当接部の大径側端面における中央部分に接続され、前記第1周端面当接部の大径側端面に対向する側に向けて拡がる略円錐台状に形成された第2周端面当接部(72;73)とを備えており、前記第1周端面当接部の小径側の周端縁から前記第1周端面当接部の中心軸と直交する方向に拡がる略円環帯状の部分を前記第1洗浄面とし、前記第1洗浄面に対向する側に向けて拡がる前記第1周端面当接部の側面を第2洗浄面(29B)とし、前記第1周端面当接部の大径側端面における前記中央部分の周囲の略円環帯状の部分を第3洗浄面(74A;75A)とし、前記第2周端面当接部の側面を第4洗浄面(74B;75B)として有するブラシ(71)によって基板を処理する基板処理方法であって、基板保持機構(3)によって基板(W)を保持する基板保持工程と、前記ブラシを移動させることにより、前記第1洗浄面および前記第2洗浄面が、それぞれ、前記基板保持機構に保持された基板の一方表面の周縁領域(14A)および周端面(15)に押し付けられ、前記第3洗浄面および前記第4洗浄面が、それぞれ、前記基板保持機構に保持された基板の一方表面の周縁領域および周端面に押し付けられるように、前記基板保持機構に保持された基板の前記一方表面の周縁領域および前記周端面に対して、前記第1洗浄面および前記第2洗浄面と、前記第3洗浄面および前記第4洗浄面とを選択的に押し付けるブラシ押し付け工程(S5)とを含むことを特徴とする、基板処理方法である。
【0025】
この方法によれば、ブラシ押し付け工程において、ブラシの第1洗浄面が基板の一方表面の周縁領域に押し付けられるとともに、ブラシの第2洗浄面が基板の周端面に押し付けられる。もしくは、ブラシ押し付け工程において、ブラシの第3洗浄面が基板の一方表面の周縁領域に押し付けられるとともに、ブラシの第4洗浄面が基板の周端面に押し付けられる。これにより、基板の一方表面の周縁領域および周端面を同時に洗浄することができる。
しかも、基板の厚みに応じた位置にブラシを移動させて、基板の一方表面の周縁領域に対するブラシの押し付け量(基板の一方表面の周縁領域にブラシの第1洗浄面を押し付けたときのブラシの弾性変形量)を一定にすることができる。よって、基板の厚みにかかわらず、基板の一方表面の周縁領域に対するブラシの押し付け力を確保することができ、基板の一方表面の周縁領域を良好に洗浄することができる。
【0026】
そのうえ、第1洗浄面が平坦面であるので、その第1洗浄面と基板の一方表面の周縁領域との接触部分の全域で、基板の一方表面の周縁領域に対するブラシの押し付け力を同じにすることができる。したがって、基板の一方表面の周縁領域を一様に洗浄することができる。
また、前記基板の一方表面の周縁領域よりも内方の領域(中央領域)に第1洗浄面が接触することがないため、ブラシで洗浄すべき周縁領域と洗浄する必要のない中央領域とを明確に区別して処理することができる。特に、基板の一方表面の前記中央領域がデバイス領域である場合には、ブラシによるデバイスの損傷を回避することができる。
【0027】
また、第2洗浄面は、第1洗浄面に対向する側に向けて拡がる形状に形成されているので、基板の周端面に押し付けられると、弾性変形し、基板の一方表面と反対側の他方表面の周縁領域に回り込んで接触する。そのため、基板の一方表面の周縁領域および周端面を洗浄することができるとともに、基板の他方表面の周縁領域をも洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1に示す基板処理装置の内部の図解的な側面図である。
【図3】ホルダ取付部、ブラシおよびブラシホルダの構成を示す断面図である。
【図4】図1に示す基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図5】図1に示す基板処理装置におけるウエハの処理を説明するための工程図である。
【図6】ウエハの処理中におけるブラシの状態を示す側面図である。
【図7】ブラシの他の構成(第2周端面当接部および第3周端面当接部をさらに備える構成)を示す側面図である。
【図8】ブラシのさらに他の構成(洗浄面に溝が形成された構成)を示す側面図である。
【図9】種々の形状のブラシによる洗浄効果を確認するための試験の結果を示すグラフである。
【図10】ウエハの表面の周縁からの距離とパーティクル除去率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す平面図である。また、図2は、図1に示す基板処理装置の内部の図解的な側面図である。
【0030】
この基板処理装置1は、基板の一例としての半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW]という。)を1枚ずつ処理する枚葉型の装置である。基板処理装置1は、隔壁で区画された処理室2内に、ウエハWをほぼ水平に保持して回転させるためのスピンチャック3と、ウエハWの表面(デバイスが形成される側の面:本実施形態においては上面)に処理液を供給するための表面ノズル4と、ウエハWの裏面(本実施形態においては下面)に処理液を供給するための裏面ノズル5と、ウエハWの周縁部を洗浄するためのブラシ機構6とを備えている。
【0031】
スピンチャック3は、真空吸着式チャックであって、ほぼ鉛直な方向に延びたスピン軸7と、このスピン軸7の上端に取り付けられて、ウエハWをほぼ水平な姿勢でその裏面(下面)を吸着して保持する吸着ベース8と、スピン軸7と同軸に結合された回転軸を有するスピンモータ9とを備えている。これにより、ウエハWの裏面が吸着ベース8に吸着保持された状態で、スピンモータ9が駆動されると、ウエハWがスピン軸7の中心軸線まわりに回転する。
【0032】
表面ノズル4および裏面ノズル5には、それぞれ処理液供給管10,11が接続されている。これらの処理液供給管10,11には、処理液バルブ12を介して、図示しない処理液供給源からの処理液が供給されるようになっている。表面ノズル4は、処理液供給管10を通して供給される処理液を、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面の中央に向けて吐出する。また、裏面ノズル5は、処理液供給管11を通して供給される処理液を、スピンチャック3に保持されたウエハWの裏面の周端縁と吸着ベース8との間に向けて吐出する。
【0033】
なお、処理液としては、純水が用いられる。また、純水に限らず、炭酸水、イオン水、オゾン水、還元水(水素水)または磁気水などの機能水を用いてもよいし、アンモニア水またはアンモニア水と過酸化水素水との混合液などの薬液を用いることもできる。
【0034】
ブラシ機構6は、スピンチャック3によるウエハWの保持位置よりも上方で略水平に延びる揺動アーム13と、この揺動アーム13の先端に保持され、ウエハWの表面の周縁領域14A(たとえば、ウエハWの周端縁から幅1〜4mmの環状領域)、ウエハWの裏面の周縁領域14B(たとえば、ウエハWの周端縁から幅1〜2mmの環状領域)、ならびに周端面15を洗浄するためのブラシ16と、揺動アーム13をウエハWの回転範囲外に設定した鉛直軸線まわりに水平方向に沿って揺動させる揺動駆動機構17と、揺動アーム13を昇降させる昇降駆動機構18とを備えている。
なお、ウエハWの周縁部とは、ウエハWの少なくとも表面および裏面の周縁領域14A,14Bおよび周端面15を含む部分をいう。
【0035】
揺動アーム13の基端部には、鉛直方向に延びるアーム支持軸19の上端部が結合されている。このアーム支持軸19に、揺動駆動機構17の駆動力が入力されるようになっている。揺動駆動機構17の駆動力をアーム支持軸19に入力して、アーム支持軸19を往復回転させることにより、揺動アーム13をアーム支持軸19を支点に揺動させることができる。また、アーム支持軸19に、昇降駆動機構18が結合されており、昇降駆動機構18がアーム支持軸19を上下動させることにより、このアーム支持軸19と一体的に揺動アーム13を上下動させることができる。
【0036】
揺動アーム13の先端部(遊端部)には、ブラシ回転軸20が回転可能に保持されている。このブラシ回転軸20は、鉛直方向に延び、揺動アーム13の先端部の下面を貫通している。ブラシ回転軸20には、揺動アーム13の内部において、ブラシ回転軸20を回転させるためのブラシ自転機構21が結合されている。一方、ブラシ回転軸20の下端部には、ホルダ取付部22が固定されており、このホルダ取付部22に、ブラシホルダ23を介して、ブラシ16が取り付けられている。
図3は、ホルダ取付部22、ブラシ16およびブラシホルダ23の構成を示す断面図である。
【0037】
ホルダ取付部22は、ブラシ回転軸20が中心に挿通されて、ブラシ回転軸20に固定された円板状の上面部24と、この上面部24の周縁から下方に向けて延びる円筒状の側面部25とを一体的に備えている。側面部25の内周面には、ブラシホルダ23の後述するねじ部36に形成されているねじと螺合可能なねじが切られている。
【0038】
ブラシ16は、たとえば、PVA(ポリビニルアルコール)やウレタンなどの弾性変形可能な材料で形成されたスポンジ材(多孔質部材)からなり、略円板状の基部26と、この基部26の先端側の端面上に設けられ、基部26よりも小径の略円板状(扁平な円柱状)の胴部27と、この胴部27の先端側の端面に接続され、先端側に向けて拡がる(下方ほど径が大きくなる)略円錐台状の第1周端面当接部28とを一体的に備えている。基部26、胴部27および第1周端面当接部28は、各中心軸線が一致しており、ブラシ16は、その中心軸線まわりに回転対称な形状を有している。
【0039】
そして、このブラシ16では、胴部27の先端側の端面における第1周端面当接部28の周囲の円環帯状の部分が、ウエハWの表面の周縁領域14Aに当接する第1洗浄面29Aとなっている。また、第1周端面当接部28の側面は、上端縁が第1洗浄面29Aに連続し、鉛直方向に対して45度の傾斜角度を有して、下方ほどブラシ16の中心軸線から離れるように傾斜しており、ウエハWの周端面15に当接する第2洗浄面29Bとなっている。
ブラシホルダ23は、略円柱状の樹脂ブロック30と、この樹脂ブロック30にブラシ16を固定するための固定部材31とを備えている。
【0040】
樹脂ブロック30の一方端部の周面には、その全周にわたって、断面略矩形状の嵌合溝32が形成されている。また、樹脂ブロック30の一方端部には、嵌合溝32に対して径方向内側に微小な間隔を隔てた位置に、断面略U字状の切込溝33が周方向にわたって形成されている。これにより、嵌合溝32と切込溝33との間の部分は、樹脂の撓み性による弾性が付与された弾性片34となっている。この弾性片34の外周面には、複数の半球状の係合突起35が形成されている。一方、樹脂ブロック30の他方側の端面には、扁平な円柱状のねじ部36が一体的に形成されている。このねじ部36の周面には、ホルダ取付部22に形成されたねじと螺合可能なねじが切られている。
【0041】
固定部材31は、略円形の外形を有する円板部37と、この円板部37の周縁から一方側に延びる略円筒状の円筒部38とを一体的に備えている。円板部37の中央部には、ブラシ16の胴部27を挿通可能な挿通孔39が形成されている。円筒部38の内径は、ブラシ16の基部26の外径にほぼ一致し、また、弾性片34に外力が作用していない状態で、その弾性片34の外径よりも若干小さく形成されている。さらに、円筒部38の内周面には、各係合突起35と係合可能な複数の係合凹部40が形成されている。
【0042】
ブラシ16をホルダ取付部22に取り付ける際には、ブラシ16を、固定部材31に対して、胴部27が挿通孔39に挿通され、基部26が円筒部38内に収容されるように装着する。その後、固定部材31の円筒部38を樹脂ブロック30の嵌合溝32に嵌めて、各係合突起35と各係合凹部40とを係合させる。これにより、ブラシ16がブラシホルダ23に保持される。そして、ブラシホルダ23のねじ部36をホルダ取付部22に螺着することにより、ブラシ16のホルダ取付部22への取付けが達成される。
図4は、基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【0043】
基板処理装置1は、マイクロコンピュータを含む制御部41を備えている。この制御部41には、使用者によって処理レシピ(ウエハWの処理のための各種条件)を入力するためのレシピ入力キー42が接続されている。さらに、制御部41には、スピンモータ9、処理液バルブ12、揺動駆動機構17、昇降駆動機構18およびブラシ自転機構21などが制御対象として接続されている。
【0044】
図5は、基板処理装置1におけるウエハWの処理を説明するための工程図である。また、図6は、ウエハWの処理中におけるブラシ16の状態を示す側面図である。
【0045】
ウエハWの処理に先立ち、使用者によって、レシピ入力キー42が操作されて、ウエハWのウエハWに対するブラシ16の鉛直方向(ウエハWの表面に対して垂直な方向)および水平方向(ウエハWの表面に対して平行な方向)の押し付け量が設定されている(ステップS1)。鉛直方向および水平方向の押し付け量とは、ウエハWの周縁部にブラシ16を押し付けたときのブラシ16の鉛直方向および水平方向の弾性変形量をいう。より具体的には、鉛直方向の押し付け量とは、ブラシ16の第1洗浄面29AがウエハWの表面の周縁領域14Aに接した状態から、ブラシ16を弾性変形させながら鉛直方向に変位させて、第1洗浄面29Aが周縁領域14Aに押し付けられた状態となるまでの変位量をいう。また、水平方向の押し付け量とは、ブラシ16の第2洗浄面29BがウエハWの周端面15に接した状態から、ブラシ16を弾性変形させながら水平方向に変位させて、第2洗浄面29Bが周端面15に押し付けられた状態となるまでの変位量をいう。
【0046】
処理室2内にウエハWが搬入され(ステップS2)、そのウエハWがスピンチャック3に保持されると、制御部41によりスピンモータ9が制御されて、スピンチャック3によるウエハWの回転が開始される(ステップS3)。ウエハWは、たとえば、100rpmの回転速度で回転される。次いで、制御部41により処理液バルブ12が開かれて、表面ノズル4および裏面ノズル5からそれぞれウエハWの表面および裏面への処理液の供給が開始される(ステップS4)。
【0047】
また、制御部41によりブラシ自転機構21が制御されて、ブラシ16が、たとえば、100〜200rpmの回転速度で、ウエハWの回転方向と同方向に回転される。その後、制御部41により揺動駆動機構17および昇降駆動機構18が制御されて、ブラシ16の第1洗浄面29AがウエハWの表面の周縁領域14Aに押し付けられるとともに、第2洗浄面29Bが周端面15およびウエハWの裏面の周縁領域14Bに押し付けられる(ステップS5)。具体的には、揺動駆動機構17および昇降駆動機構18が制御されて、ブラシ16が、第1洗浄面29AがウエハWの表面の周縁領域14Aに接し、第2洗浄面29BがウエハWの周端面15に当接する位置に移動される。その後、昇降駆動機構18が制御されて、ブラシ16がレシピ入力キー42から設定された鉛直方向の押し付け量だけ下降され、ブラシ16の第1洗浄面29AがウエハWの表面の周縁領域14に押し付けられる。また、これに前後して、揺動駆動機構17が制御されて、ブラシ16がレシピ入力キー42から設定された水平方向の押し付け量だけウエハWに向けて移動され、ブラシ16の第2洗浄面29BがウエハWの周端面15に押し付けられる。第2洗浄面29Bは、下方ほどブラシ16の中心軸線から離れるように傾斜しているので、ウエハWの周端面15に押し付けられると、弾性変形し、ウエハWの裏面の周縁領域14Bに回り込んで接触する。これにより、ウエハWの表面の周縁領域14Aおよび周端面15を洗浄することができるとともに、ウエハWの裏面の周縁領域14Bをも洗浄することができる。
【0048】
また、こうしてウエハWの表面の周縁領域14A、周端面15および裏面の周縁領域14Bが洗浄されている間、ウエハWの表面に供給される処理液により、ウエハWの表面の周縁領域14Aよりも内方の中央領域(デバイス形成領域)に付着した汚染を洗い流すことができる。また、処理液としての純水は、ブラシ16によって周縁領域14Aおよび周端面15から除去された汚染物質がウエハWの表面の中央領域(デバイス形成領域)に侵入することを防止する保護液としての役割も担っている。なお、保護液として処理液を用いる場合は、純水の他、炭酸水、イオン水、還元水(水素水)または磁気水などの機能水など、ウエハW表面のデバイス形成領域に影響を与えない処理液が選択されるのが好ましい。
【0049】
ブラシ16による洗浄の開始から所定時間が経過すると、制御部41により揺動駆動機構17および昇降駆動機構18が制御されて、ブラシ16が処理開始前のホームポジションに退避される(ステップS6)。また、ブラシ16がホームポジションに戻される間に、ブラシ自転機構21の駆動が停止されて、ブラシ16の回転が停止される。さらに、制御部41により処理液バルブ12が閉じられて、表面ノズル4および裏面ノズル5からの処理液の供給が停止される(ステップS7)。
【0050】
その後は、制御部41によりスピンモータ9が制御されて、ウエハWが高速(たとえば、3000rpm)で回転される(ステップS8)。これにより、ウエハWに付着している処理液を振り切って、ウエハWを乾燥させることができる。
【0051】
ウエハWの高速回転が所定時間にわたって続けられると、スピンモータ9が停止されて、スピンチャック3によるウエハWの回転が停止される(ステップS9)。そして、ウエハWが静止した後、その処理済みのウエハWが処理室2から搬出されていく(ステップS10)。
【0052】
なお、ウエハWの裏面は、スピンチャック3の吸着ベース8との接触部分の汚染(吸着跡)を除去するため、この基板処理装置1における処理後に、別の基板処理装置(処理チャンバ)で洗浄される。
【0053】
以上のように、ブラシ16の第1洗浄面29AをウエハWの表面の周縁領域14Aに押し付けるとともに、ブラシ16の第2洗浄面29BをウエハWの周端面15に押し付けることにより、ウエハWの表面の周縁領域14および周端面15を同時に洗浄することができる。
【0054】
しかも、ブラシ16がレシピ入力キー42から設定された押し付け量でウエハWの表面の周縁領域14Aに押し付けられるので、ウエハWの厚みにかかわらず、ウエハWの表面の周縁領域14Aに対するブラシ16の押し付け力を確保することができ、ウエハWの表面の周縁領域14Aを良好に洗浄することができる。
【0055】
そのうえ、第1洗浄面29Aが平坦面であるので、その第1洗浄面29AとウエハWの表面の周縁領域14Aとの接触部分の全域で、ウエハWの表面の周縁領域14Aに対するブラシ16の押し付け力を同じにすることができる。したがって、ウエハWの表面の周縁領域14Aを一様に洗浄することができる。
【0056】
また、ウエハWの表面の周縁領域14Aよりも内方の領域(中央領域)に第1洗浄面29Aが接触することがないため、ブラシ16で洗浄すべき周縁領域14Aと洗浄する必要のない中央領域とを明確に区別して処理することができる。そのため、ウエハWの表面の周縁領域14Aにおける洗浄幅の精度の向上を図ることができ、その洗浄幅を最大限確保しつつ、ブラシ16によるデバイスの損傷を回避することができる。
【0057】
また、第2洗浄面29Bは、下方ほどブラシ16の中心軸線から離れるように傾斜しているので、ウエハWの周端面15に押し付けられると、弾性変形し、ウエハWの裏面の周縁領域14Bに回り込んで接触する。そのため、ウエハWの表面の周縁領域14Aおよび周端面15を洗浄することができるとともに、ウエハWの裏面の周縁領域14Bをも洗浄することができる。すなわち、ウエハWの周縁部(一方表面及び他方表面の周縁領域14A,14Bおよび周端面15)のすべてを同時に洗浄することができ、ウエハWの周縁部の洗浄処理を効率的に行なうことができる。
【0058】
なお、ウエハWの表面の中央領域にはデバイスが形成され、ウエハWの裏面にはデバイスが形成されていないため、ウエハWの表面の周縁領域14Aについては、その洗浄幅に高い精度が要求され、ウエハWの裏面の周縁領域14Bについては、その洗浄幅の精度はウエハWの表面側ほど高く要求されない。したがって、このような場合には特に、本実施形態のように、ウエハWの表面の周縁領域14Aを第1洗浄面29Aで精度良く洗浄し、ウエハWの裏面の周縁領域14Bを第2洗浄面で29B洗浄することが有効である。
【0059】
さらに、ブラシ16がウエハWに押し付けられている間、スピンチャック3によりウエハWが回転されて、ブラシ16とウエハWの周縁部とが相対的に移動するので、ウエハWの周縁部を効率的に洗浄することができる。
【0060】
また、ブラシ16がウエハWに押し付けられている間、ブラシ16がウエハWと同方向に回転される。これにより、ウエハWの周縁部をスクラブすることができ、ウエハWの周縁部を一層良好に洗浄することができる。なお、ブラシ16の回転方向は、ウエハWの回転方向と逆方向であってもよいが、ウエハWの回転方向と同方向の場合、ウエハWとブラシ16とを互いに擦り合わせることができるので、より高品質な洗浄を達成することができる。
【0061】
図7は、ブラシの他の構成を示す側面図である。図7において、図3に示す各部に相当する部分には、それら各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号を付した部分についての詳細な説明を省略する。
【0062】
この図7に示すブラシ71は、略円錐台状の第1周端面当接部28の先端側に、それぞれ略円錐台状に形成された第2周端面当接部72および第3周端面当接部73を一体的に備えている。第2周端面当接部72は、その中心軸線を第1周端面当接部28の中心軸線に一致させて、小径側の端面が第1周端面当接部28の先端側の端面(大径側の端面)における中央部分に接続されている。また、第3周端面当接部3は、その中心軸線を第2周端面当接部72の中心軸線に一致させて、小径側の端面が第2周端面当接部72の先端側の端面(大径側の端面)の中央部分に接続されている。
【0063】
そして、このブラシ71では、第1周端面当接部28の先端側の端面における第2周端面当接部72の周囲の円環帯状の部分が、ウエハWの表面の周縁領域14Aに当接する第3洗浄面74Aとなっている。この第3洗浄面74Aは、その内径から外径までの距離(以下単に、洗浄面の幅という)が第1洗浄面29Aの幅よりも狭くなっている。また、第2周端面当接部72の側面は、上端縁が第3洗浄面74Aに連続し、鉛直方向に対して45度の傾斜角度を有して、下方ほど中心軸線から離れるように傾斜しており、ウエハWの周端面15に当接する第4洗浄面74Bとなっている。
【0064】
さらに、第2周端面当接部72の先端側の端面における第3周端面当接部73の周囲の円環帯状の部分が、ウエハWの表面の周縁領域14Aに当接する第5洗浄面75Aとなっている。この第5洗浄面75Aは、その幅が第3洗浄面74Aの幅よりも狭くなっている。また、第3周端面当接部73の側面は、上端縁が第5洗浄面75Aに連続し、鉛直方向に対して45度の傾斜角度を有して、下方ほど中心軸線から離れるように傾斜しており、ウエハWの周端面15に当接する第6洗浄面75Bとなっている。なお、たとえば、第1洗浄面29Aの幅は4mm、第3洗浄面74Aの幅は3mm、第5洗浄面75Aの幅は2mmとなっている。
【0065】
このブラシ71が採用された場合、ウエハWの処理に先立ち、使用者によって、レシピ入力キー42からウエハWの表面の周縁領域14Aの洗浄幅が設定される。そして、ウエハWの処理時には、制御部41(図4参照)により、レシピ入力キー42から設定された洗浄幅に応じて、第1洗浄面29A、第3洗浄面74Aまたは第5洗浄面75Aが選択され、その選択された第1洗浄面29A、第3洗浄面74Aまたは第5洗浄面75AがウエハWの表面の周縁領域14Aに押し付けられる。このように、第1洗浄面29A、第3洗浄面74Aおよび第5洗浄面75Aの幅が互いに異なるので、これらの第1洗浄面29A、第3洗浄面74Aおよび第5洗浄面75Aを使い分けることにより、ウエハWの表面の周縁領域14Aにおける洗浄幅を容易に変更することができる。
【0066】
なお、第1洗浄面29A、第3洗浄面74Aおよび第5洗浄面75Aの幅が同じであってもよく、この場合、ウエハWの洗浄によって第1洗浄面29Aおよび第2洗浄面29Bが摩耗したり、ウエハWの洗浄が妨げられるくらい過剰に第1洗浄面29Aおよび第2洗浄面29Bの一部に汚染物質が蓄積されたりしたときは、第3洗浄面74Aおよび第4洗浄面74B、あるいは第5洗浄面75Aおよび第6洗浄面75Bを用いるといったように、ウエハWの洗浄に使用する洗浄面を変更することにより、引き続き、ウエハWの周縁部を良好に洗浄することができる。
【0067】
図8は、ブラシのさらに他の構成を示す側面図である。図8において、図3に示す各部に相当する部分には、それら各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号を付した部分についての詳細な説明を省略する。
【0068】
図8に示すブラシ81の第2洗浄面29Bには、複数本の溝82が形成されている。各溝82は、少なくともその一端(上端)が第2洗浄面29Bに至る位置まで、第2洗浄面29Bの母線方向に沿って直線状に延びている。
【0069】
このように、ブラシ81の第2洗浄面29Bに溝82が形成されているので、ブラシ81によってウエハWの裏面の周縁領域14Bおよび周端面15に比較的強固に付着している汚染物質を掻き取ることができる。さらには、ブラシ81によってウエハWから掻き取られた汚染物質を、溝を通して、第2洗浄面29BとウエハWとの間から排除することができる。そのため、ブラシ81が用いられることによって、ウエハWの一層良好な洗浄を達成することができる。
【0070】
なお、溝82は、第2洗浄面29Bの母線方向に沿った直線状に限らず、たとえば、第2洗浄面29Bの周方向に沿った円環状に形成されてもよい。また、溝82は、1本だけ形成されてもよい。溝82が1本だけ形成される場合、その溝82は、スパイラル状に形成されてもよい。
<洗浄効果確認試験>
図9は、種々の形状のブラシによる洗浄効果を確認するための試験の結果を示すグラフである。
【0071】
本願発明者らは、PVAを用いて、4種類の形状のブラシA,B,C,Dを作成し、これらのブラシA〜Dを、大日本スクリーン製造株式会社製のブラシスクラバ(商品名「SS−3000」)に選択的に装着して、このブラシスクラバで、各ブラシA〜DによるウエハWの周縁部の洗浄を行った。この洗浄の前後で、ウエハWの表面の周縁領域14A、裏面の周縁領域14Bおよび周端面15に付着しているパーティクル数を、株式会社レイテックス製のエッジ検査機(商品名「RXW−800」)を用いて計数した。洗浄前の計数結果(Pre)が、図9にハッチング模様の棒グラフで示されており、洗浄後の計数結果(Post)が、図9に煉瓦模様の棒グラフで示されている。また、洗浄前後の計数結果から算出したパーティクル除去率(PRE)が、図9に折れ線グラフで示されている。なお、パーティクル除去率(PRE)=(Pre−Post)÷Pre×100(%)の数式により導き出される。
【0072】
ブラシAは、ウエハWの側方に配置され、ウエハWの表面に直交する軸に平行な中心軸を有する円柱状のブラシであり、ブラシAを用いた洗浄では、ブラシAの側面をウエハWの周端面15に押し付けた。この洗浄によるパーティクル除去率は、20%程度であった。
【0073】
ブラシBは、下面がウエハWの表面の周縁領域13に対向し、ウエハWの表面とほぼ平行に配置された円板状のブラシであり、ブラシBを用いた洗浄では、ブラシBの下面をウエハWの表面の周縁領域14Aに対して上方から押し付けた。しかしながら、パーティクルは、ほとんど除去されず、この洗浄によるパーティクル除去率は、ほぼ0%であった。
【0074】
ブラシCは、前述の実施形態に係るブラシ16と同じ形状を有するブラシであり、このブラシCを用いた洗浄では、前述の実施形態と同様にして、ウエハWの表面の周縁領域14A、裏面の周縁領域14Bおよび周端面15を洗浄した。この洗浄によるパーティクル除去率は、80%程度であった。
【0075】
ブラシDは、ウエハWの側方に配置され、ウエハWを嵌合可能な溝を周面に有する円筒状のブラシであり(特許文献3参照)、ブラシDを用いた洗浄では、ブラシDの溝にウエハWの周縁部を嵌合させた。この洗浄によるパーティクル除去率は、10%程度であった。
【0076】
この結果から、前述の実施形態に係るブラシ16は、従来の提案に係るブラシA,B,Dと比較して、ウエハWの表面の周縁領域14A、裏面の周縁領域14Bおよび周端面15を洗浄する性能が高いことが理解される。
図10は、ウエハWの表面の周縁からの距離とパーティクル除去率との関係を示すグラフである。
【0077】
また、本願発明者らは、Si(シリコン)パーティクルが付着したウエハWを用意し、このウエハWの周縁部をブラシ16で洗浄した後、そのウエハWの表面の周縁領域14Aのパーティクル数を、ケーエルエー・テンコール株式会社製の欠陥/異物検査装置(商品名「サーフスキャンSP1」)を用いて計数した。そして、その計数結果から、ウエハWの表面の周縁領域14A上の各位置でのパーティクル除去率を求め、ウエハWの周縁から各位置までの距離とパーティクル除去率との関係を求めた。その結果が、図10に折れ線グラフで示されている。なお、本実験では、ウエハWの表面の周縁における洗浄幅を2mmで設定した。
【0078】
図10に示されるように、ブラシ16を用いた洗浄では、ウエハWの周縁から2mmの位置を境に、ウエハWの表面におけるパーティクル除去率が急峻に変化する。
【0079】
この結果から、ブラシ16を用いた洗浄では、ウエハWの表面において、ブラシ16で洗浄される領域と洗浄されない領域とを明確に区別することができ、洗浄幅の精度の向上を達成できることが理解される。
【0080】
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の各ブラシ16,71,81の構成を適当に組み合わせて実施されてもよい。たとえば、ブラシ71の第2洗浄面29B、第4洗浄面74Bおよび第6洗浄面75Bに、ブラシ81の第2洗浄面29Bに形成されている溝82と同様な溝が形成されてもよい。
【0081】
また、ブラシ16,81の第1洗浄面29Aおよびブラシ71の第1洗浄面29A、第3洗浄面74Aおよび第5洗浄面75Aに、径方向に延びる直線状の溝または周方向に延びる円環状の溝などが形成されてもよい。
【0082】
また、第2洗浄面29Bは、鉛直方向に対して45度の傾斜角度を有しているとしたが、第2洗浄面29Bの鉛直方向に対する傾斜角度は、5〜85度の範囲内で設定されるとよく、ウエハWの裏面の周縁領域14Bにおける洗浄幅を確保しつつ、ブラシ16,71,81の押し付けによるウエハWの変形を防止するためには、30〜60度の範囲内で設定されることが好ましい。ブラシ71の第4洗浄面74Bおよび第6洗浄面75Bについても、第2洗浄面29Bと同様に、鉛直方向に対する傾斜角度は、5〜85度の範囲内で設定されるとよく、30〜60度の範囲内で設定されることが好ましい。
【0083】
また、第2洗浄面29B、第4洗浄面74Bおよび第6洗浄面75Bは、回転半径方向の外方に向けて膨出する湾曲状または回転半径方向の内方に向けて窪む湾曲状をなしていてもよい。
【0084】
また、前述の実施形態では、ブラシ16,71,81がウエハWに当接している間、ブラシ16を回転させるとしたが、ブラシ16,71,81を回転させずに静止させてもよい。
【0085】
さらにまた、ウエハWを回転させることにより、ブラシ16,71,81とウエハWの周縁部とが相対移動させる構成を例にとったが、たとえば、角形基板を処理対象とする場合には、基板を静止させておき、ブラシを基板の周縁部に沿って移動させる構成としてもよい。むろん、基板およびブラシの両方を移動させることによって、ブラシを基板の周縁部に沿って相対移動させてもよい。
【0086】
また、スピンチャック3に保持されたウエハWの表面(上面)の中央領域を洗浄するための表面洗浄ブラシ、超音波が付与された処理液をウエハWに供給する超音波洗浄ノズル、および気体と液体とが混合されて生成された液滴をウエハWに供給する二流体ノズルのうちの少なくともいずれか1つが追加して設けられてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 基板処理装置
3 スピンチャック
4 表面ノズル
5 裏面ノズル
9 スピンモータ
10 処理液供給管
11 処理液供給管
12 処理液バルブ
14A ウエハの表面の周縁領域
14B ウエハの裏面の周縁領域
15 周端面
16 ブラシ
17 揺動駆動機構
18 昇降駆動機構
21 ブラシ自転機構
28 第1周端面当接部
29A 第1洗浄面
29B 第2洗浄面
41 制御部
71 ブラシ
72 第2周端面当接部
73 第3周端面当接部
74A 第3洗浄面
74B 第4洗浄面
75A 第5洗浄面
75B 第6洗浄面
81 ブラシ
82 溝
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持機構と、
弾性変形可能な材料を用いて形成され、平坦な第1洗浄面と、前記第1洗浄面に対向する側に向けて拡がり、前記第1洗浄面に垂直な軸を中心軸とする略円錐台状に形成された第1周端面当接部と、前記第1周端面当接部の大径側端面における中央部分に接続され、前記第1周端面当接部の大径側端面に対向する側に向けて拡がる略円錐台状に形成された第2周端面当接部とを備えており、前記第1周端面当接部の小径側の周端縁から前記第1周端面当接部の中心軸と直交する方向に拡がる略円環帯状の部分を前記第1洗浄面とし、前記第1洗浄面に対向する側に向けて拡がる前記第1周端面当接部の側面を第2洗浄面とし、前記第1周端面当接部の大径側端面における前記中央部分の周囲の略円環帯状の部分を第3洗浄面とし、前記第2周端面当接部の側面を第4洗浄面として有するブラシと、
前記基板保持機構に保持された基板に対して前記ブラシを移動させるブラシ移動機構と、
このブラシ移動機構を制御することにより、前記第1洗浄面および前記第2洗浄面が、それぞれ、前記基板保持機構に保持された基板の一方表面の周縁領域および周端面に押し付けられ、前記第3洗浄面および前記第4洗浄面が、それぞれ、前記基板保持機構に保持された基板の一方表面の周縁領域および周端面に押し付けられるように、前記基板保持機構に保持された基板の前記一方表面の周縁領域および前記周端面に対して、前記第1洗浄面および前記第2洗浄面と、前記第3洗浄面および前記第4洗浄面とを選択的に押し付けるための制御部とを含むことを特徴とする、基板処理装置。
【請求項2】
前記第1洗浄面の幅と前記第3洗浄面の幅とが異なることを特徴とする、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第4洗浄面に溝が形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第2洗浄面に溝が形成されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記ブラシを前記第1洗浄面に垂直な垂線方向に延びる軸線を中心に回転させるブラシ回転機構をさらに含むことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記基板保持機構に保持された基板と前記ブラシとを、前記ブラシが当該基板の周方向に移動するように相対移動させるブラシ相対移動機構をさらに含むことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板保持機構に保持された基板の少なくとも前記一方表面の周縁領域よりも内方の領域に処理液を供給する処理液供給機構をさらに含むことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項8】
弾性変形可能な材料を用いて形成され、平坦な第1洗浄面と、前記第1洗浄面に対向する側に向けて拡がり、前記第1洗浄面に垂直な軸を中心軸とする略円錐台状に形成された第1周端面当接部と、前記第1周端面当接部の大径側端面における中央部分に接続され、前記第1周端面当接部の大径側端面に対向する側に向けて拡がる略円錐台状に形成された第2周端面当接部とを備えており、前記第1周端面当接部の小径側の周端縁から前記第1周端面当接部の中心軸と直交する方向に拡がる略円環帯状の部分を前記第1洗浄面とし、前記第1洗浄面に対向する側に向けて拡がる前記第1周端面当接部の側面を第2洗浄面とし、前記第1周端面当接部の大径側端面における前記中央部分の周囲の略円環帯状の部分を第3洗浄面とし、前記第2周端面当接部の側面を第4洗浄面として有するブラシによって基板を処理する基板処理方法であって、
基板保持機構によって基板を保持する基板保持工程と、
前記ブラシを移動させることにより、前記第1洗浄面および前記第2洗浄面が、それぞれ、前記基板保持機構に保持された基板の一方表面の周縁領域および周端面に押し付けられ、前記第3洗浄面および前記第4洗浄面が、それぞれ、前記基板保持機構に保持された基板の一方表面の周縁領域および周端面に押し付けられるように、前記基板保持機構に保持された基板の前記一方表面の周縁領域および前記周端面に対して、前記第1洗浄面および前記第2洗浄面と、前記第3洗浄面および前記第4洗浄面とを選択的に押し付けるブラシ押し付け工程とを含むことを特徴とする、基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−211246(P2011−211246A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165456(P2011−165456)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【分割の表示】特願2006−95551(P2006−95551)の分割
【原出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】