説明

基板処理装置

【課題】貯留槽内の処理液の温度を槽内で一様にし、また、基板上に形成された膜の厚みが不均一であったり基板上の部位によって膜質の違いがあったりしても、基板面内における処理速度の不均一を緩和することでき、基板の主面全体における処理品質の均一性を向上させることができる装置を提供する。
【解決手段】処理液20を貯留する貯留槽10と、貯留槽の上部開口面を閉塞する覆蓋部28と、貯留槽に貯留された処理液中で基板Wを搬送する搬送ローラ26と、貯留槽の底部に設けられた供給口22と、覆蓋部に設けられた補助供給口30と、供給口および補助供給口に処理液を供給する処理液供給管24、32とを備えて、ディップ処理を行う装置を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置(LCD)用、プラズマディスプレイ(PDP)用、有機発光ダイオード(OLED)用、電界放出ディスプレイ(FED)用、真空蛍光ディスプレイ(VFD)用等のガラス基板、磁気/光ディスク用のガラス/セラミック基板、半導体ウエハ、電子デバイス基板等の各種の基板に対して、基板をエッチング液等の処理液中に浸漬させた状態で搬送しつつエッチング処理等の処理を行う基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばLCD、PDP等のデバイスの製造プロセスにおいて、ガラス基板に対して湿式処理、例えばウェットエッチング処理を施す方法の1つとして、基板をエッチング液中に浸漬させた状態で搬送しつつ処理を行うディップ処理(浸漬処理)がある。このディップ処理を行う基板処理装置は、図5に概略側面断面図を示すように、基板の搬入口2および搬出口3を有し内部に処理液4を貯留する貯留槽1を備えている。貯留槽1の基板搬入口2および搬出口3には、その各開口部をそれぞれ開放および閉塞するシャッタ5、6が設けられている。貯留槽1の内部には、互いに平行に基板Wの搬送方向に沿って複数の搬送ローラ7を配列して構成されたローラコンベアが設置されており、複数の搬送ローラ7をそれぞれ正転および逆転させることにより、貯留槽1内において基板Wがその主面に沿った方向、図示例では水平方向へ往復移動(揺動)させられる。貯留槽1の底部には、処理液の供給口8が設けられており、その供給口8に、後記の処理液タンクに流路接続された処理液供給管9が連通接続されている。また、図示していないが、貯留槽1の底部には、貯留槽1内の処理液4の液面高さを調整する排液弁が介挿され処理液タンクに流路接続された排液用配管が連通接続されている。そして、貯留槽1内の処理液4は、排液用配管を通って処理液タンク内に回収され、ポンプにより処理液タンク内から前記の処理液供給管9を介し供給口8を通って処理液が貯留槽1内へ供給されて、処理液が循環させられている。
【0003】
上記した構成を有する基板処理装置では、搬入口2を開放して基板Wを貯留槽1内へ搬入し、搬入口2をシャッタ5によって閉塞した後(このとき、搬出口3はシャッタ6によって閉塞されている)、ポンプにより処理液供給管8を通って貯留槽1内へ処理液を供給して、貯留槽1内の処理液4の液面を、図5に示したように基板Wの上面より高くなる液位まで上昇させる。この状態で、ローラコンベアによって基板Wを揺動させながら、基板Wに対してエッチング処理等の処理を施す。基板Wの処理が終了すると、搬出口3を開放し(このとき、搬入口2はシャッタ5によって閉塞されたままである)、基板Wを貯留槽1内から搬出する。このようなディップ処理では、基板Wの全面に処理液が均一に接して処理が行われることとなる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−305449号公報(第4−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の基板処理装置では、所定温度に調整された処理液をポンプアップして貯留槽1内へ供給し、貯留槽1内に処理液4を所定の液面高さとなるように貯留していた。ところが、処理液の供給口8は、貯留槽1の底部の1個所に設けられているだけであった。このため、貯留槽1内における供給口8の付近とそれ以外の場所とで処理液4の温度に差を生じやすい。この結果、基板Wの主面内において温度の低い場所の処理液と接する部位では、エッチングレートが低下し、処理の均一性が低下する、といった問題点がある。
【0005】
また、貯留槽1内の処理液4の温度を槽内で一様にして、基板Wの主面全体を均一な温度で処理することができたとしても、処理すべき基板の種類によっては次のような問題を生じる。すなわち、基板の主面全体を均一な温度で処理、例えばエッチング処理すると、主面上に均一に成膜された基板に対しては均一な処理を行うことができるので、望ましい。ところが、基板上に形成された膜の厚みが不均一である場合、特に基板の主面上に積層膜が形成されている場合には、基板の主面全体を均一な温度でエッチング処理すると、基板の中央部におけるエッチング速度と基板の周縁部におけるエッチング速度とに差を生じることとなる。また、基板上の部位によって膜質の違い、例えば金属の密度、硬さ、表面状態(酸化膜が部分的に形成されている等)の違いがある場合にも、基板の主面全体を均一な温度でエッチング処理すると、基板の部位によってエッチング速度が違ってくる、といった問題点がある。
【0006】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、貯留槽内の処理液の温度を槽内で一様にすることが可能であり、また、基板上に形成された膜の厚みが不均一であったり基板上の部位によって膜質の違いがあったりしても、基板面内における処理速度の不均一を緩和することが可能であって、基板の主面全体における処理品質の均一性を向上させることができる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、基板を処理液中に浸漬させた状態で搬送しつつ基板を処理する基板処理装置において、処理液を貯留する貯留槽と、この貯留槽の上部開口面を閉塞する覆蓋部と、前記貯留槽に貯留された処理液中で、基板をその主面に沿った方向へ搬送する基板搬送手段と、前記貯留槽の底部に設けられた処理液の供給口と、前記覆蓋部または前記貯留槽の側壁部に設けられた処理液の補助供給口と、前記供給口および前記補助供給口にそれぞれ処理液を供給する処理液供給手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の基板処理装置において、補助供給口を、貯留槽内で処理されるべき基板の主面内における処理速度の遅い部位に対応させて配置したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の基板処理装置において、処理液供給手段から補助供給口へ供給される処理液の流量を、貯留槽内で処理されるべき基板の主面内の当該部位における処理速度に対応させて調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明の基板処理装置においては、貯留槽の上部開口面が覆蓋部によって閉塞されているので、貯留槽内の処理液の液面付近における温度低下が抑えられる。そして、貯留槽底部の供給口の他に、覆蓋部または貯留槽の側壁部に設けられた補助供給口を通しても、処理液供給手段から貯留槽内へ処理液が供給されるので、貯留槽内における供給口付近とそれ以外の場所とでの処理液の温度差を無くすことが可能となる。また、処理すべき基板の成膜状態等に応じて、例えば、基板上の他の部位に比べてエッチング速度が小さくなる部位へエッチング液を供給することができるように覆蓋部に補助供給口を設けることにより、基板の各部位におけるエッチング速度の差を少なくすることができる。
したがって、請求項1に係る発明の基板処理装置を使用すると、貯留槽内の処理液の温度を槽内で一様にすることが可能であり、また、基板上に形成された膜の厚みが不均一であったり基板上の部位によって膜質の違いがあったりしても、基板面内における処理速度の不均一を緩和することが可能であるので、基板の主面全体における処理品質の均一性を向上させることができる。
【0011】
請求項2に係る発明の基板処理装置では、処理液供給手段から補助供給口を通して貯留槽内の、基板の主面内における処理速度の遅い部位の付近へ処理液が供給されるので、基板の各部位におけるエッチング速度の差を少なくすることができる。したがって、基板の主面全体における処理品質の均一性を向上させることができる。
【0012】
請求項3に係る発明の基板処理装置では、処理液供給手段から補助供給口を通して貯留槽内の、基板の主面内における処理速度の遅い部位の付近へ、当該部位における処理速度に対応した流量の処理液が供給されるので、基板の各部位におけるエッチング速度の差をより少なくすることができる。したがって、基板の主面全体における処理品質の均一性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の最良の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1および図2は、この発明の実施形態の1例を示し、図1は、基板処理装置の貯留槽の概略構成を示す側面断面図であり、図2は、図1に示した貯留槽の外観を模式的に示す斜視図である。
【0014】
この基板処理装置は、図5に示した従来の装置と同様に、それぞれ開閉シャッタ16、18が設けられた基板の搬入口12および搬出口14を有し、処理液、例えばエッチング液20を貯留する貯留槽10を備えている。貯留槽10の底部には、エッチング液の供給口22が設けられており、その供給口22に処理液供給管24が連通接続されている。また、図示していないが、貯留槽10の底部に、貯留槽10内のエッチング液20の液面高さを調整する排液弁が介挿され処理液タンクに流路接続された排液用配管が連通接続されている。そして、貯留槽10内のエッチング液20は、排液用配管を通って処理液タンク内に回収され、ポンプにより処理液タンク内から処理液供給管24を介し供給口22を通ってエッチング液が貯留槽10内へ供給され、エッチング液が循環させられている。また、貯留槽10の内部には、互いに平行に基板Wの搬送方向に沿って複数の搬送ローラ26を配列して構成されたローラコンベアが設置されており、このローラコンベアにより、貯留槽10に貯留されたエッチング液20中で基板Wがその主面に沿った方向、図示例では水平方向へ往復移動(揺動)させられる。
【0015】
この基板処理装置では、貯留槽10の上部開口面が覆蓋部28によって閉塞されている。覆蓋部28は、図示例のように貯留槽10と一体的に形成して、貯留槽10と覆蓋部28の全体形状を箱形としてもよいし、覆蓋部を貯留槽とは別体とし、貯留槽の上部に覆蓋部を取着するようにしてもよい。そして、覆蓋部28の複数個所、図示例では覆蓋部28の中央部と周辺部の4個所の合計で5個所にエッチング液の補助供給口30が設けられている。各補助供給口30にはそれぞれ、貯留槽10底部の供給口22に接続された処理液供給管24と同様に処理液タンク(図示せず)に流路接続された処理液供給管32が連通接続されている。
【0016】
この基板処理装置において、基板Wのエッチング処理は、上記した従来の装置と同様に行われる。この装置では、貯留槽10の上部開口面が覆蓋部28によって閉塞されているので、貯留槽10内のエッチング液20の液面付近における温度低下が抑えられる。このため、エッチングレートの低下が防止される。また、所定温度に調整されたエッチング液が、貯留槽10底部の供給口22を通して貯留槽10内へ供給されるとともに、覆蓋部32の5個所に設けられた各補助供給口30を通しても貯留槽10内へ供給されるので、貯留槽10内における底部の供給口22付近とそれ以外の場所とでのエッチング液の温度差が無くなり、貯留槽10内のエッチング液20の温度が槽内で一様になる。この結果、基板Wの主面内におけるエッチング処理の均一性が向上することとなる。
【0017】
また、基板W上に形成された積層膜の厚みや膜質が基板W上の部位によって相違することにより、基板Wの中央部と周縁部とでエッチング速度に差を生じる場合に、例えば、基板Wの中央部におけるエッチング速度が基板Wの周縁部におけるエッチング速度に比べて小さくなるような場合には、図3に示すように、覆蓋部34に設けられ処理液供給管36が連通接続される補助供給口(図示せず)を、覆蓋部34の中央部の1個所だけに形成するとよい。そして、所定温度に調整されたエッチング液を、貯留槽10底部の供給口22を通して貯留槽10内へ供給するとともに、覆蓋部34の中央部に設けられた補助供給口を通して貯留槽10内へ供給するようにする。また、逆に、基板Wの周縁部におけるエッチング速度が基板Wの中央部におけるエッチング速度に比べて小さくなるような場合には、図4に示すように、覆蓋部38に設けられ処理液供給管40が連通接続される補助供給口(図示せず)を、覆蓋部38の周辺部の4個所に形成するとよい。そして、所定温度に調整されたエッチング液を、貯留槽10底部の供給口22を通して貯留槽10内へ供給するとともに、覆蓋部32の周辺部に設けられた4個所の補助供給口を通して貯留槽10内へ供給するようにする。以上のような構成とすることにより、基板Wの中央部と周縁部とでのエッチング速度の差が緩和され、基板Wの主面内におけるエッチング処理の均一性が向上することとなる。
【0018】
なお、補助供給口30を通って貯留槽10内へ供給されるエッチング液の流量を調整することにより、基板Wの各部位におけるエッチング速度の差が無くなるように制御するようにしてもよい。また、上記した実施形態では、覆蓋部28、34、38の中央部および/または周辺部に補助供給口30を設けるようにしているが、基板Wの各部位におけるエッチング速度の差が無くなるように補助供給口の形設個所や形設個数を適宜設定するようにしてもよい。また、上記実施形態では、覆蓋部28、38の周辺部に補助供給口30を設けるようにしたが、貯留槽10の側壁部に補助供給口を設けるようにしてもよい。
【0019】
また、上記した実施形態では、貯留槽内にエッチング液を貯留して基板をエッチング処理する基板処理装置について説明したが、この発明は、エッチング処理以外の処理、例えば現像処理をディップ式で行う基板処理装置についても同様に適用し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施形態の1例を示し、基板処理装置の貯留槽の概略構成を示す側面断面図である。
【図2】図1に示した貯留槽の外観を模式的に示す斜視図である。
【図3】この発明の別の実施形態を示し、貯留槽の外観を模式的に示す斜視図である。
【図4】この発明のさらに別の実施形態を示し、貯留槽の外観を模式的に示す斜視図である。
【図5】ディップ処理を行う従来の基板処理装置の構成例を示す概略側面断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 貯留槽
12 基板の搬入口
14 基板の搬出口
16、18 開閉シャッタ
20 エッチング液
22 エッチング液の供給口
24、32、36、40 処理液供給管
26 搬送ローラ
28、34、38 覆蓋部
30 補助供給口
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理液中に浸漬させた状態で搬送しつつ基板を処理する基板処理装置において、
処理液を貯留する貯留槽と、
この貯留槽の上部開口面を閉塞する覆蓋部と、
前記貯留槽に貯留された処理液中で、基板をその主面に沿った方向へ搬送する基板搬送手段と、
前記貯留槽の底部に設けられた処理液の供給口と、
前記覆蓋部または前記貯留槽の側壁部に設けられた処理液の補助供給口と、
前記供給口および前記補助供給口にそれぞれ処理液を供給する処理液供給手段と、
を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記補助供給口が、前記貯留槽内で処理されるべき基板の主面内における処理速度の遅い部位に対応させて配置されたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置において、
前記処理液供給手段から前記補助供給口への処理液の供給流量が、前記貯留槽内で処理されるべき基板の主面内の当該部位における処理速度に対応させて調整されることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−114176(P2010−114176A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283964(P2008−283964)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】