説明

基板処理装置

【課題】コストを低減させ、生産性を向上させるプラズマを用いる基板処理装置を提供する。
【解決手段】処理室12と、処理室12内に設けられた第1のプラズマ生成室33と、第1のプラズマ生成室33内に反応性ガスを供給する第1反応性ガス供給手段301と、プラズマを生成し、第1の反応性ガスを励起して第1の反応性ガスの活性種を生成する一対の第1放電用電極27と、第1のプラズマ生成室の側壁に設けられた第1の反応性ガスの活性種を噴出する第1ガス噴出口35と、処理室12内に設けられた第2のプラズマ生成室33Bと、第2のプラズマ生成室33B内に反応性ガスを供給する第2反応性ガス供給手段302と、プラズマを生成し、第2の反応性ガスを励起して第2の反応性ガスの活性種を生成する一対の第2放電用電極27Bと、第2のプラズマ生成室の側壁に設けられた第2の反応性ガスの活性種を噴出する第2ガス噴出口35Bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に係り、特にプラズマを用いて基板を処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体装置製造の一工程としてプラズマを用いた基板処理工程が行われる場合がある。係る基板処理工程を実施するには、基板を処理する処理室と、前記処理室内に設けられたプラズマ生成室と、前記プラズマ生成室内に反応性ガスを供給するガス供給手段と、前記プラズマ生成室内でプラズマを生成し、前記反応性ガスを励起して活性種を生成する放電用電極と、前記プラズマ生成室の側壁に設けられ、前記基板に向けて前記反応性ガスの活性種を噴出するガス噴出口とを有する基板処理装置が用いられている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−280378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の基板処理装置は、処理室内にプラズマ生成室と放電用電極とを1式ずつしか備えていない。そのため、例えばプラズマの生成条件やガス種等が異なる複数種の基板処理を同一の基板に対して連続して行おうとすると、基板処理の種類に応じて複数の基板処理装置が必要となってしまう。このため、基板処理のコストが増大してしまう恐れが生じる。また、2つ以上の基板処理装置を用いる場合、基板処理工程の合間に基板の搬送工程が新たに必要となったり、処理室内の圧力調整工程や温度調整工程が新たに必要となったりする等、基板処理の生産性が低下してしまう恐れが生じる。
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、プラズマを用いる基板処理のコストを低減させ、基板処理の生産性を向上させることが可能な基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、基板を処理する処理室と、前記処理室内に設けられた第1のプラズマ生成室と、前記第1のプラズマ生成室内に第1の反応性ガスを供給する第1反応性ガス供給手段と、前記第1のプラズマ生成室内でプラズマを生成し、前記第1の反応性ガスを励起して前記第1の反応性ガスの活性種を生成する一対の第1放電用電極と、前記第1のプラズマ生成室の側壁に設けられ、前記基板に向けて前記第1の反応性ガスの活性種を噴出する第1ガス噴出口と、前記処理室内に設けられた第2のプラズマ生成室と、前記第2のプラズマ生成室内に第2の反応性ガスを供給する第2反応性ガス供給手段と、前記第2のプラズマ生成室内でプラズマを生成し、前記第2の反応性ガスを励起して前記第2の反応性ガスの活性種を生成する一対の第2放電用電極と、前記第2のプラズマ生成室の側壁に設けられ、前記基板に向けて前記第2の反応性ガスの活性種を噴出する第2ガス噴出口と、を有する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る基板処理装置によれば、プラズマを用いる基板処理のコストを低減させ、
基板処理の生産性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態にて好適に用いられる基板処理装置の処理炉の平面断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う縦断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う縦断面図である。
【図4】図1の処理炉に接続されるガス供給系の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施形態>
以下に本発明の第1の実施形態について説明する。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
図1ないし図4は、本実施形態にて好適に用いられる基板処理装置の処理炉10を示す説明図である。
【0011】
(処理室)
図1ないし図4に示されているように、本発明に係る基板処理装置の処理炉10は、バッチ式縦形ホットウォール型として構成されている。処理炉10は、反応管11を備えている。反応管11は上端が閉塞し、下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管11は、例えば石英(SiO)等の耐熱性材料により構成されている。反応管11は、中心線が垂直になるように縦に配されて固定的に支持されている。反応管11の下端開口は、基板としてのウエハ1を搬入搬出するための炉口13を形成している。
【0012】
反応管11内には、ウエハ1を処理する処理室12が形成されている。この処理室12は、基板保持具としての後述するボート2を収容可能に構成されている。ボート2は、上下で一対の端板3,4と、両端板3,4間に架設されて垂直に配設された複数本(本実施形態では3本)の保持部材5とを備えて構成されている。端板3,4及び保持部材5は、例えば石英や炭化珪素(SiC)等の耐熱性材料により構成されている。各保持部材5には、多数条の保持溝6が長手方向に等間隔に配されて互いに対向して開口するように没設されている。そして、ウエハ1の外周縁辺が各保持部材5の多数条の保持溝6間にそれぞれ挿入されることにより、ボート2は、複数枚のウエハ1を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で垂直方向に多段に整列させて保持するようになっている。
【0013】
反応管11の下端部には、反応管11の下端開口を気密に閉塞可能な保持体としてのベース15と、炉口蓋体としてのシールキャップ17とが設けられている。ベース15は、円盤状に形成されている。ベース15は、例えばステンレス等の金属により構成されている。ベース15の上面には、反応管11の下端に当接するシール部材としてのシールリング18が設けられている。また、ベース15の下面には、シールキャップ17の上端に当接するシール部材としてのシールリング18が設けられている。ベース15の下にはシールキャップ17が設けられている。シールキャップ17は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ17は、図示しないボートエレベータのアームに連結されており、垂直方向に昇降自在に構成されている。シールキャップ17は、ボート2を処理室12内に搬入した際に、ベース15、シールリング18を介して反応管11の下端を気密に閉塞するように構成されている。図示しないボートエレベータは、後述するコントローラ240に電気的に接続されている。
【0014】
(回転手段)
シールキャップ17の下側中心付近には、ボート2を回転させる回転機構19が設置さ
れている。回転機構19の回転軸19aは、シールキャップ17とベース15とを貫通して、円筒形状の断熱筒7を下方から支持している。また、断熱筒7は、上述のボート2を下方から支持している。回転機構19を作動させることで、処理室12内にてウエハ1を回転させることが可能になっている。また、断熱筒7は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料により構成されている。断熱筒7は、ヒータ14からの熱を反応管11の下端側に伝達し難くする断熱部材として機能する。回転機構19は、後述するコントローラ240に電気的に接続されている。
【0015】
(加熱手段)
反応管11の外部には、処理室12を全体にわたって均一に加熱する加熱手段としてのヒータ14が、反応管11の周囲を包囲するように同心円に設備されている。ヒータ14は、処理炉10の機枠(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられた状態になっている。なお、図示しないが処理炉10の機枠には、温度検出器としての温度センサが設置されている。ヒータ14の温度は、温度センサの温度情報に基づき制御されるようになっている。ヒータ14及び温度センサは、後述するコントローラ240に電気的に接続されている。
【0016】
(排気系)
反応管11の下側側壁には、ガス排気管16が接続されている。ガス排気管16には、上流側から順に、圧力センサ、APC(Auto Pressure Controller)バルブとして構成された圧力制御装置、真空ポンプとして構成された排気装置(いずれも図示せず)が設けられている。排気装置により処理室12内を排気しつつ、圧力センサにより検出した圧力情報により圧力制御装置の弁開度を調整することにより、処理室12内を所定の圧力に調整可能なように構成されている。圧力センサ、圧力制御装置、及び排気装置は、後述するコントローラ240に電気的に接続されている。
【0017】
(第1のプラズマ生成室、第1放電用電極)
反応管11内(処理室12内)における反応管11内壁面とウエハ1外周との間の空間には、円弧状の第1のプラズマ生成室33が設けられている。第1のプラズマ生成室33は、例えば樋形状の隔壁34と反応管11の内壁面とにより処理室12から区画されて構成されている。隔壁34には、複数の第1ガス噴出口35が垂直方向に配列するように形成されている。これら第1ガス噴出口35の個数は、処理されるウエハ1の枚数に対応している。各第1ガス噴出口35の高さ位置は、ボート2に保持された上下で隣り合うウエハ1,1間の空間に対向するようにそれぞれ設定されている。
【0018】
第1のプラズマ生成室33内には、一対の保護管25,25が設けられている。各保護管25は、反応管11の内壁面に沿うように垂直に設けられている。各保護管25は、下端部が屈曲して反応管11の側面を貫通し外部に突出されている。各保護管25は、誘電体により構成されている。保護管25は、上端が閉塞し下端が開放された細長い円形のパイプ形状に形成されている。各保護管25の中空部内は、処理室12の外部(大気)に連通している。
【0019】
保護管25内には、それぞれ第1放電用電極27が下方から挿入されている。第1放電用電極27は、導電材料により構成されている。第1放電用電極27は、細長い棒状に形成されている。なお、第1放電用電極27の下端部(被保持部)は、放電防止可能な絶縁手段(図示しない)を介して保護管25内に保持されている。なお、ヒータ14の加熱による第1放電用電極27の酸化を防止するように、保護管25内に不活性ガスをパージする機構を設けてもよい。なお、一対の保護管25,25は、上述の形態に限らず、上端部が屈曲して反応管11の上部側面を貫通し外部に突出されていてもよい。そして、第1放電用電極27は、保護管25内にそれぞれ上方から挿入されていてもよい。
【0020】
一対の第1放電用電極27,27には、高周波電源31の出力側(二次側)が、インピーダンスを調整する整合器32を介して電気的に接続されている。高周波電源31及び整合器32は、後述するコントローラ240に電気的に接続されている。
【0021】
なお、第1のプラズマ生成室33内には、後述する第1反応性ガス供給手段により、第1の反応性ガスとしてのNHガスと励起用ガスとしてのArガスとが供給されるように構成されている。第1のプラズマ生成室33内にArガスを供給した状態で、高周波電源31から一対の第1放電用電極27,27に高周波電力を供給することにより、第1のプラズマ生成室33内にプラズマを生成し、Arを活性化させることが可能なように構成されている。そして、この状態で、第1のプラズマ生成室33内にNHガスを供給し、活性化したAr(Arラジカル)とNHとを衝突させることで、NHを間接的に活性化させることが可能なように構成されている。活性化したNHガス(NHラジカル)は、第1ガス噴出口35を介して処理室12内に流れ、ウエハ1表面に供給されるように構成されている。
【0022】
(第2のプラズマ生成室、第2放電用電極)
反応管11内(処理室12内)における反応管11内壁面とウエハ1外周との間の空間には、円弧状の第2のプラズマ生成室33Bが設けられている。第2のプラズマ生成室33Bは、第1のプラズマ生成室33と同様に、例えば樋形状の隔壁34と反応管11の内壁面とにより処理室12から区画されて構成されている。隔壁34Bには、複数の第2ガス噴出口35Bが垂直方向に配列するように形成されている。これら第2ガス噴出口35Bの個数は、処理されるウエハ1の枚数に対応している。各第2ガス噴出口35Bの高さ位置は、ボート2に保持された上下で隣り合うウエハ1,1間の空間に対向するようにそれぞれ設定されている。
【0023】
第2のプラズマ生成室33B内には、第1のプラズマ生成室33内と同様に、一対の保護管25B,25Bが設けられている。各保護管25Bは、反応管11の内壁面に沿うように垂直に設けられている。各保護管25Bは、下端部が屈曲して反応管11の側面を貫通し外部に突出されている。各保護管25Bは、誘電体により構成されている。保護管25Bは、上端が閉塞し下端が開放された細長い円形のパイプ形状に形成されている。各保護管25Bの中空部内は、処理室12の外部(大気)に連通している。
【0024】
保護管25B内には、保護管25内と同様に、それぞれ第2放電用電極27Bが下方から挿入されている。第2放電用電極27Bは、導電材料により構成されている。第2放電用電極27Bは、細長い棒状に形成されている。なお、第2放電用電極27Bの下端部(被保持部)は、放電防止可能な絶縁手段(図示しない)を介して保護管25B内に保持されている。なお、ヒータ14の加熱による第2放電用電極27Bの酸化を防止するように、保護管25B内に不活性ガスをパージする機構を設けてもよい。なお、第1のプラズマ生成室33と同様に、第2のプラズマ生成室33B内の一対の保護管25B,25Bは、上端部が屈曲して反応管11の上部側面を貫通し外部に突出されていてもよい。そして、第1放電用電極27は、保護管25内にそれぞれ上方から挿入されていてもよい。
【0025】
一対の第2放電用電極27B,27Bには、高周波電源31の出力側(二次側)が、インピーダンスを調整する整合器32Bを介して電気的に接続されている。高周波電源31B及び整合器32Bは、後述するコントローラ240に電気的に接続されている。
【0026】
なお、第2のプラズマ生成室33B内には、後述する第2反応性ガス供給手段により、第2の反応性ガスとしてのOガスが供給されるように構成されている。第2のプラズマ生成室33B内にOガスを供給した状態で、高周波電源31Bから一対の第2放電用電
極27B,27Bに高周波電力を供給することにより、第2のプラズマ生成室33B内にプラズマを生成し、Oガスを活性化させることが可能なように構成されている。活性化したOガス(Oラジカル)は、第2ガス噴出口35Bを介して処理室12内に流れ、ウエハ1表面に供給されるように構成されている。
【0027】
(バッファ室)
また、反応管11内(処理室12内)における反応管11内壁面とウエハ1外周との間の空間には、円弧状のバッファ室33Cが設けられている。バッファ室33Cは、例えば樋形状の隔壁34Cと反応管11の内壁面とにより処理室12から区画されて形成されている。隔壁34Cには、複数の第3ガス噴出口35Cが上下のウエハ1,1間に対向するように配列して形成されている。これら第3ガス噴出口35Cの個数は、処理されるウエハ1の枚数に対応している。各第3ガス噴出口35Cの高さ位置は、ボート2に保持された上下で隣り合うウエハ1間の空間に対向するようにそれぞれ設定されている。
【0028】
なお、バッファ室33C内には、後述する原料ガス供給手段により、原料ガスとしてのジクロロシラン(SiHCl以下、DCS)ガスが供給されるように構成されている。バッファ室33Cは、DCSガスをバッファリンクして濃度が均一になるよう分散させるガス分散空間として機能する。バッファ室33C内に供給されたDCSガスは、第3ガス噴出口35Cを介して処理室12内に流れ、ウエハ1表面に供給されるように構成されている。
【0029】
(ガス供給手段)
反応管11の側壁下部には、第1のプラズマ生成室33内に第1の反応性ガスとしてのNHガスを供給する第1反応性ガス供給管301が接続されている。第1反応性ガス供給管301には、上流側から順に、NHガスの供給源であるガスボンベ301a、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ301b、及び開閉弁であるバルブ301cが設けられている。ガスボンベ301aから供給されるNHガスは、マスフローコントローラ301bにより所定の流量に調整され、バルブ301cの開動作により第1反応性ガス供給管301内を流通し、第1のプラズマ生成室33内に供給されるようになっている。
【0030】
また、反応管11の側壁下部には、第2のプラズマ生成室33B内に第2の反応性ガスとしてのOガスを供給する第2反応性ガス供給管302が接続されている。第2反応性ガス供給管302には、上流側から順に、Oガスの供給源であるガスボンベ302a、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ302b、及び開閉弁であるバルブ302cが設けられている。ガスボンベ302aから供給されるOガスは、マスフローコントローラ302bにより所定の流量に調整され、バルブ302cの開動作により第2反応性ガス供給管302内を流通し、第2のプラズマ生成室33B内に供給されるようになっている。
【0031】
また、反応管11の側壁下部には、バッファ室33C内に原料ガスとしてのDCSガスを供給する原料ガス供給管304が接続されている。原料ガス供給管304には、上流側から順に、DCSガスの供給源であるガスボンベ304a、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ304b、開閉弁であるバルブ304c、及び開閉弁であるバルブ304dが設けられている。なお、バルブ304cとバルブ304dとの間には、ガス溜り部304eが構成されている。ガスボンベ304aから供給されるDCSガスは、マスフローコントローラ304bにより所定の流量に調整され、バルブ304cの開動作により原料ガス供給管304内を流通し、バッファ室33C内に供給されるようになっている。なお、バルブ304dを閉めた状態でバルブ304cを開けて所定時間保持し、ガス溜り部304e内のDCSガスの圧力が所定圧力に到達したらバルブ304cを閉
めてバルブ304dを開けるようにすることで、バッファ室33c内(処理室12内)にDCSガスをパルス的に供給(フラッシュ供給)することが可能なようになっている。なお、処理室12内の容積に対するガス溜り部304e内の容積の比率は、例えば1/1000以上3/1000以下とすることが好ましく、処理室12内の容積が100リットルである場合には、ガス溜り部304e内の容積を100〜300ccとすることが好ましい。また、ガス溜り部304eから処理室12に至るまでの原料ガスの経路のコンダクタンスは、例えば1.5×10−3/s以上になるような構成とすることが好ましい。
【0032】
第1反応性ガス供給管301のバルブ301cの下流側、第2反応性ガス供給管302のバルブ302cの下流側、及び第1反応性ガス供給管301のバルブ301dの下流側には、励起用ガス、パージガス、或いはキャリアガスとしての例えばArガスを供給するArガス供給管303の下流端が、それぞれバルブ303c、バルブ303d、バルブ303eを介して接続されている。つまり、Arガス供給管303は下流側で3本に分岐している。Arガス供給管303の分岐箇所よりも上流側には、上流側から順に、Arガスの供給源であるガスボンベ303a、流量制御器(流量制御手段)であるマスフローコントローラ303bが設けられている。ガスボンベ303aから供給されるArガスは、マスフローコントローラ303bにより所定の流量に調整され、バルブ303cの開動作により第1反応性ガス供給管301内を流通し、第1のプラズマ生成室33内に供給されるようになっており、また、バルブ303dの開動作により第2反応性ガス供給管302内を流通し、第2のプラズマ生成室33B内に供給されるようになっており、また、バルブ303eの開動作により原料ガス供給管304内を流通し、バッファ室33C内に供給されるようになっている。
【0033】
主に、第1反応性ガス供給管301、ガスボンベ301a、マスフローコントローラ301b、バルブ301c、Arガス供給管303、ガスボンベ303a、マスフローコントローラ303b、バルブ303cにより、第1反応性ガス供給手段が構成される。また、主に、第2反応性ガス供給管302、ガスボンベ302a、マスフローコントローラ302b、バルブ302c、Arガス供給管303、ガスボンベ303a、マスフローコントローラ303b、バルブ303dにより、第2反応性ガス供給手段が構成される。また、主に、原料ガス供給管304、ガスボンベ304a、マスフローコントローラ304b、バルブ304c、バルブ304d、Arガス供給管303、ガスボンベ303a、マスフローコントローラ303b、バルブ303eにより、原料ガス供給手段が構成される。また、Arガス供給管303、ガスボンベ303a、マスフローコントローラ303b、バルブ303c,303d,303eにより、励起用ガス供給手段が構成される。
【0034】
なお、マスフローコントローラ301b〜304b、バルブ301c〜304c及び304dは、それぞれ後述するコントローラ240に電気的に接続されている。
【0035】
(制御部)
制御部としてのコントローラ240は、上述したように回転機構19、ボートエレベータ(図示せず)、ヒータ14、温度センサ(図示せず)、圧力センサ(図示せず)、圧力制御装置(図示せず)、排気装置(図示せず)、高周波電源31、31B、整合器32、32B、マスフローコントローラ301b〜304b、バルブ301c〜304c及び304dにそれぞれ電気的に接続され、基板処理装置全体を主制御している。
【0036】
具体的には、コントローラ240は、回転機構19の回転軸19aを所定のタイミングで回転させるようにしている。コントローラ240は、ボートエレベータを所定のタイミングで昇降させるようにしている。また、コントローラ240は、圧力センサにより検出された圧力情報に基づいて圧力制御装置の弁開度を調整し、処理室12内が所定のタイミングで所定の圧力となるようにしている。また、コントローラ240は、温度センサによ
り検出された温度情報に基づきヒータ14への通電具合を調整し、処理室12内が所定のタイミングにて所定の温度分布となるようにし、結果として処理室12内のウエハ1に対して所定の温度となるようにしている。また、コントローラ240は、高周波電源31、31B及び整合器32、32Bを制御することにより、第1のプラズマ生成室33内及び第2のプラズマ生成室33B内にて所定のタイミングにてプラズマを生成可能にしている。また、コントローラ240は、マスフローコントローラ301b〜304bを流量制御しつつ、それぞれバルブ304b〜304c、304dの開閉制御することにより、第1のプラズマ生成室33内、第2のプラズマ生成室33B内、バッファ室33C内に所定のタイミングにて所定の流量のガス供給を開始し、或いは停止するようにしている。
【0037】
なお、本実施形態に係るコントローラ240は、第1のプラズマ生成室33内に第1ガス供給系から第1の反応性ガスを供給して第1のプラズマ生成室33内で第1放電用電極27によりプラズマを生成させ、第1の反応性ガスを直接励起又は間接励起して生成した第1の反応性ガスの活性種によってウエハを処理する第1基板処理工程と、第2のプラズマ生成室33B内に第2ガス供給系から第2の反応性ガスを供給して第2のプラズマ生成室33B内で第2放電用電極27Bによりプラズマを生成させ、第2の反応性ガスを直接励起又は間接励起して生成した第2の反応性ガスの活性種によってウエハ1を処理する第2基板処理工程と、を連続して実施するように構成されている。
【0038】
(2)基板処理工程
次に、上記構成に係る処理炉10を用いて、半導体装置の製造工程の一工程として、ウエハ1表面を窒化処理して窒化シリコン膜(SiN)を形成する窒化工程と、SiN膜が形成されたウエハ1に対して酸化処理することにより窒化酸化シリコン膜(SiON)を形成する酸化工程と、を連続して実施する例えばMOS型電界効果トランジスタのゲート絶縁膜を形成する基板処理工程について説明する。尚、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ240により制御される。
【0039】
(搬入工程(S1))
先ず、ボート2に複数枚のウエハ1を装填(ウエハチャージ)する。次に、コントローラ240の制御に基づいてボートエレベータを駆動し、ボート2を上昇させる。これにより、図1〜図3に示されているように、複数枚のウエハ1を保持したボート2が処理室12内に搬入(ボートローディング)される。このとき、シールキャップ17は、ベース15、シールリング18を介して反応管11の下端を閉塞する。これにより、処理室12は気密に封止される。
【0040】
また、ボート2の搬入時において、処理室12内にはパージガスとしてArガスを流すようにしている。具体的には、マスフローコントローラ303bにより流量調整しつつ、バルブ303cを開とし、処理室12内にArガスを導入する。これにより、ボート2の搬送時における処理室12内へのパーティクル侵入抑制等の効果が得られる。
【0041】
(圧力調整工程及び昇温工程(S2))
処理室12内へのボート2の搬入が完了したら、処理室12内が所定の圧力(例えば10〜100Pa)となるよう処理室12内の雰囲気を排気する。具体的には、排気装置により排気しつつ、圧力センサにより検出された圧力情報に基づいて圧力制御装置の弁開度をフィードバック制御し、処理室12内を所定の圧力とする。また、処理室12内が所定温度となるようヒータ14によって加熱する。具体的には、温度センサにより検出された温度情報に基づいてヒータ14への通電具合を制御して、処理室12内を所定の温度(例えば300〜600℃)とする。そして、回転機構19を作動させ、処理室12内に搬入されたウエハ1の回転を開始する。なお、ウエハ1の回転は、後述する窒化工程(S3)及び酸化工程(S4)が終了するまで継続する。
【0042】
(窒化工程(S3))
窒化工程(S3)では、CVD(Chemical Vapor Deposition)法の一種であるALD(Atomic Layer Deposition)法により、DCSガス及びNHガスを用いてウエハ1の表面に窒化珪素(SiN)膜を形成する。ALD法は、所定の成膜条件(温度、時間等)下で2種類以上の処理ガスを1種類ずつ交互にウエハ上に供給し、処理ガスのウエハ1上での表面反応を利用して1原子層未満〜数原子層単位で薄膜を形成する手法である。このALD法における膜厚制御は、処理ガス供給のサイクル数を制御することで行うことができる。例えば、成膜速度が1Å/サイクルとすると、20Åの膜を成膜する場合には、20サイクルの処理を行うようにすればよい。
【0043】
窒化工程(S3)では、まず、第1のプラズマ生成室33内において第1の反応性ガスであるNHガスを間接励起して生成した活性種(NHラジカル)を処理室12内に供給し、ウエハ1の表面部分に表面反応(化学吸着)させる(第1の反応性ガス供給工程(S31))。その後、DCSガスをバッファ室33Cから処理室12内に供給し、ウエハ1の表面に化学吸着したNHと表面反応(化学吸着)させて1原子層未満〜数原子層のSiN膜を生成する(原料ガス供給工程(S32))。そして、第1の反応性ガス供給工程(S31)と原料ガス供給工程(S32)とを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで、所望の膜厚のSiN膜を形成する。以下、窒化工程(S3)を具体的に説明する。
【0044】
(第1の反応性ガス供給工程(S31))
先ず、励起用ガスとしてArガスを第1のプラズマ生成室33内に供給する。具体的には、マスフローコントローラ303bにより流量調整しつつ、バルブ303cを開とし、第1のプラズマ生成室33内にArガスを供給する。そして、高周波電源31から一対の第1放電用電極27,27に高周波電力を供給することにより、第1のプラズマ生成室33内にArガスプラズマを生成し、Arを活性化させる。
【0045】
次に、第1の反応性ガスとしてNHガスを第1のプラズマ生成室33内に供給する。具体的には、マスフローコントローラ301bにより流量が例えば1〜10slmの範囲内になるよう調整しつつ、バルブ301cを開とし、第1のプラズマ生成室33内にNHガスを供給する。第1のプラズマ生成室33内に供給されたNHガスは、活性化したAr(Arラジカル)と衝突して、間接的に活性化させられる。活性化したNH(NHラジカル)は、第1ガス噴出口35からウエハ1に向けてArラジカルと共に噴出されて処理室12内に供給される。
【0046】
処理室12内に供給されたNHラジカルは、ウエハ1表面に接触して表面反応し、ウエハ1表面にはNHが化学吸着する。ウエハ1表面への吸着に寄与しなかったNHガス及びArガスは、処理室12内を流下してガス排気管16から排気される。このように、Arガスは、NHを間接的に活性化させる励起用ガスとして機能すると共に、処理室12内へのNHラジカルの供給を促進させるキャリアガスとしても機能する。
【0047】
所定時間(例えば2〜120秒)が経過したら、高周波電源31から一対の第1放電用電極27,27への高周波電力の供給を停止する。また、バルブ301cを閉とし、第1のプラズマ生成室33内へのNHガスの供給を停止する。そして、処理室12内が例えば20Pa以下になるように排気する。なお、バルブ301cを閉とした後、バルブ303cを開のままとし、処理室12内にパージガスとしてのArガスを供給することで、処理室12内に残留しているNHガスを効率よく排気させることができる。
【0048】
(原料ガス供給工程(S32))
第1の反応性ガス供給工程(S31)の実施と並行して、原料ガス供給管304のガス溜り部304e内にDCSガスを充填しておく。具体的には、先ず、バルブ304dを閉めた状態でバルブ304cを開け、マスフローコントローラ304bにより所定の流量に調整しつつ、ガス溜り部304e内への原料ガスとしてのDCSガスの供給を開始する。そして、所定時間(例えば2〜4秒)経過してガス溜り部304e内の圧力が所定の圧力(例えば20000Pa)に到達したら、バルブ304cを閉め、ガス溜り部304e内に高圧のDCSガスを閉じ込めておく。
【0049】
処理室12内が所定の圧力(例えば20Pa)に到達し、ガス溜り部304e内が所定の圧力(例えば20000Pa)に到達したら、圧力制御装置(図示せず)の弁を閉じて処理室12内の排気を一時的に停止する。そして、バルブ304cを閉めたままバルブ304dを開とし、ガス溜り部304e内に充填されていた高圧のDCSガスを、バッファ室33C内(すなわち処理室12内)にパルス的に供給(フラッシュ供給)する。このとき、圧力制御装置(図示せず)の弁が閉じられているため、処理室12内の圧力は例えば931Pa(7Torr)にまで急激に上昇する。処理室12内に供給されたDCSガスは、ウエハ1の表面に接触し、ウエハ1の表面部分に化学吸着したNHと表面反応し、ウエハ1表面に1原子層未満〜数原子層のSiN膜が生成される。SiN膜の生成に寄与しなかったNHガスは、処理室12内を流下してガス排気管16から排気される。
【0050】
所定時間(例えば2〜4秒)が経過したら、バルブ304dを閉とし、バッファ室33C内(すなわち処理室12内)へのDCSガスの供給を停止する。なお、バルブ304dを閉とした後、バルブ303eを開とし、処理室12内にパージガスとしてArガスを供給することで、処理室12内に残留しているDCSガスや反応生成物を効率よく排気させることができる。
【0051】
その後、第1の反応性ガス供給工程(S31)と原料ガス供給工程(S32)とを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで、所望の膜厚のSiN膜を形成する。
【0052】
(酸化工程(S4))
窒化工程(S3)により所望の膜厚のSiN膜を成膜した後は、プラズマによって活性化された酸素ガスの活性種(Oラジカル)をウエハ1上に供給することでSiN膜を酸化させ、窒化酸化シリコン(SiON)膜を形成する酸化工程(S4)を実施する。
【0053】
なお、本実施形態では、処理室12内に第1のプラズマ生成室33とは別途独立して設けられた第2のプラズマ生成室33B内にてOラジカルを生成するように構成されている。すなわち、本実施形態では、窒化工程(S3)と酸化工程(S4)とは同一の処理炉10を用いて連続して行われ、その間にウエハ1が処理室12の外部へ搬出されることはないように構成されている。以下、酸化工程(S4)を具体的に説明する。
【0054】
先ず、第2の反応性ガスとしてOガスを第2のプラズマ生成室33B内に供給する。具体的には、マスフローコントローラ302bにより流量調整しつつ、バルブ302cを開とし、第2のプラズマ生成室33B内にOガスを供給する。そして、高周波電源31Bから一対の第2放電用電極27B,27Bに高周波電力を供給することにより、第2のプラズマ生成室33B内にOガスプラズマを生成し、Oを直接的に活性化させる。活性化したO(Oラジカル)は、第2ガス噴出口35Bからウエハ1に向けてArガスと共に噴出されて処理室12内に供給される。なお、マスフローコントローラ303bにより流量調整しつつ、バルブ303dを開とし、第2のプラズマ生成室33B内(すなわち処理室12内)にキャリアガスとしてのArガスを供給することで、処理室12内へのOラジカルの供給を促進させることができる。
【0055】
処理室12内に供給されたOラジカルは、ウエハ1の表面に形成されたSiN膜に接触して、ウエハ1上にSiON膜が形成される。その後、処理室12内に導入されたOガスやArガスは、処理室12内を流下しガス排気管16から排気される。
【0056】
所定時間が経過したら、バルブ302cを閉とし、第2のプラズマ生成室33B内へのOガスの供給を停止する。なお、バルブ302cを閉とした後、バルブ303cを開のままとし、処理室12内にパージガスとしてArガスを供給することで、処理室12内に残留しているOガスを効率よく排気させることができる。
【0057】
(大気圧復帰工程及び降温工程(S5))
酸化工程(S4)が完了したら、ボート2の回転を停止させてウエハ1の回転を停止する。そして、処理室12内の圧力を大気圧に復帰させつつ、ウエハ1を降温させる。具体的には、バルブ303cを開のままとして処理室12内にArガスを供給しつつ、圧力センサにより検出された圧力情報に基づいて排気装置のバルブの開度をフィードバック制御し、処理室12内の圧力を大気圧に昇圧する。そして、ヒータ14への通電量を制御して、ウエハ1の温度を降温させる。
【0058】
(搬出工程(S6))
その後、上述の搬入工程を逆の手順により基板処理されたウエハ1を処理室12内から搬出し、本実施形態に係る基板処理工程を終了する。
【0059】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0060】
(a)本実施形態によれば、処理室12内に第1のプラズマ生成室33及び第2のプラズマ生成室33Bを設けている。このため、窒化工程(S3)と酸化工程(S4)とを同一の処理炉10を用いて連続して行うことが出来る。また、窒化工程(S3)と酸化工程(S4)との間にウエハ1を処理室12外部へ搬出する必要がない。すなわち、ウエハを入れ換えることなく、1台の基板処理装置により複数種類の基板処理を実施することが可能となる。これにより、基板処理のコストを低減させ、基板処理の生産性を向上させることが可能となる。
【0061】
(b)本実施形態に係る窒化工程(S3)によれば、プラズマにより活性化させたNHガス(NHラジカル)を用いて窒化処理を行う。また、本実施形態に係る酸化工程(S4)によれば、プラズマにより活性化させたOガス(Oラジカル)を用いて酸化処理を行う。このように、プラズマにより活性化させた活性種を用いて窒化処理や酸化処理等の基板処理を行うことで、ウエハ1の処理温度を低温化(例えば300〜600℃)させることが可能となる。
【0062】
(c)本実施形態に係る窒化工程(S3)によれば、第1の反応性ガス供給工程(S31)と原料ガス供給工程(S32)とを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで、所望の膜厚のSiN膜を形成する。すなわち、プラズマにより活性化させたNHガス(NHラジカル)とDCSガスとが同時に供給されることがなく、これらのガスは互いに混合することなく処理室12内に供給される。その結果、処理室12内における気相反応の発生が抑制され、処理室12内におけるパーティクルの発生を抑制できる。
【0063】
(d)本実施形態に係る第1の反応性ガス供給工程(S31)によれば、活性化したNH(NHラジカル)をArラジカルと共に処理室12内に供給している。これにより、NHラジカルを長寿命化させ、ウエハ1へのNHラジカルの供給量を増大させ、窒化
処理の速度を速めることが出来る。
【0064】
(e)本実施形態に係る原料ガス供給工程(S32)によれば、ガス溜り部304e内に充填されていた高圧のDCSガスを、バッファ室33C内(すなわち処理室12内)にパルス的に供給(フラッシュ供給)する。そして、このとき圧力制御装置(図示せず)の弁を閉じているため、処理室12内の圧力は例えば931Pa(7Torr)にまで急激に上昇させる。これにより、ウエハ1表面へのDCS供給を短時間でより確実に行うことができる。
【0065】
<第2の実施形態>
上述の実施形態においては、第1のプラズマ生成室33内及び第2のプラズマ生成室33B内にそれぞれ異なる反応性ガスを供給し、それぞれ異なる条件でプラズマを生成し、異なる基板処理(窒化工程(S3)と酸化工程(S4))を順次実行することとしていた。しかしながら本発明は係る形態に限定されない。例えば、第1のプラズマ生成室33及び第2のプラズマ生成室33Bに同一種の反応性ガスを供給し、同一の条件で同時にプラズマを生成することで、所定の基板処理(例えば窒化工程(S3)或いは酸化工程(S4)のいずれか一方)を行うようにしてもよい。すなわち、第1の反応性ガスと第2の反応性ガスとは同一種のガスであってもよい。
【0066】
例えば、第1のプラズマ生成室33及び第2のプラズマ生成室33Bの両方を用いて窒化工程(S3)を行う場合には、第1反応性ガス供給管301の下流端の2本に分岐させ、それぞれを第1のプラズマ生成室33及び第2のプラズマ生成室33Bにそれぞれ接続するようにする。
【0067】
そして、第1の反応性ガス供給工程(S31)において、マスフローコントローラ303bにより流量調整しつつ、バルブ303cを開とし、第1のプラズマ生成室33内及び第2のプラズマ生成室33BにArガスを供給する。そして、高周波電源31から一対の第1放電用電極27,27に高周波電力を供給すると共に、高周波電源31Bから一対の第2放電用電極27B,27Bに高周波電力を供給することにより、第1のプラズマ生成室33内及び第2のプラズマ生成室33B内にArガスプラズマを同時に生成し、Arを活性化させる。
【0068】
次に、マスフローコントローラ301bにより所定の流量になるよう調整しつつ、バルブ301cを開とし、第1のプラズマ生成室33内及び第2のプラズマ生成室33BにNHガスを同時に供給する。第1のプラズマ生成室33内及び第2のプラズマ生成室33B内に供給されたNHガスは、活性化したAr(Arラジカル)と衝突して、間接的に活性化させられる。活性化したNH(NHラジカル)は、第1ガス噴出口35及び第2ガス噴出口35Bからウエハ1に向けてArラジカルと共に噴出されて処理室12内に供給される。処理室12内に供給されたNHラジカルは、ウエハ1表面に接触して表面反応し、ウエハ1表面にはNHが化学吸着する。
【0069】
所定時間が経過したら、高周波電源31から一対の第1放電用電極27,27への高周波電力の供給を停止すると共に、高周波電源31Bから一対の第2放電用電極27B,27Bへの高周波電力の供給を停止する。また、バルブ301cを閉とし、第1のプラズマ生成室33内及び第2のプラズマ生成室33B内へのNHガスの供給を停止する。そして、処理室12内が例えば20Pa以下になるように排気する。なお、バルブ301cを閉とした後、バルブ303cを開のままとし、処理室12内にパージガスとしてのArガスを供給することで、処理室12内に残留しているNHガスを効率よく排気させることができる。
【0070】
その後、第1の反応性ガス供給工程(S31)と上述の原料ガス供給工程(S32)とを1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで、所望の膜厚のSiN膜を形成する。
【0071】
本実施形態によれば、処理室12内へのNHラジカルの供給は、第1ガス噴出口35及び第2ガス噴出口35Bの2つを用いて同時に行われる。そのため、1つのガス噴出口を用いて行われる場合と比較して、ウエハ1の面内に渡ってより均一に行われることになる。すなわち、処理室12へのガス噴出口の数が2倍となり、1つのガス噴出口から処理室12内に噴出されるNHラジカルの供給量が少なくなると共に、平面方向で2方向から反応性ガスの活性種が噴出されるので、より精度の高い成膜均一性を得ることができる。そして、ウエハ1表面へのNHの化学吸着をウエハ1の面内に渡ってより均一に行うことができ、SiN膜の膜厚分布や膜質を面内に渡りより均一化させることができる。
【0072】
なお、第1のプラズマ生成室33及び第2のプラズマ生成室33Bを用いて酸化工程(S4)を行う場合にも、上述の効果を得ることが可能である。係る場合、第2反応性ガス供給管301Bの下流端の2本に分岐させ、それぞれを第1のプラズマ生成室33及び第2のプラズマ生成室33Bにそれぞれ接続するようにする。
【0073】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0074】
例えば、本発明は、本実施形態にかかる縦型の処理炉を備えた基板処理装置に限らず、枚葉式、Hot Wall型、Cold Wall型の処理炉を有する基板処理装置にも好適に適用できる。また、第1反応性ガスとしてNHガスを、励起用ガスとしてArガスを、原料ガスとしてDCSガスを用いて窒化処理を行う場合や、第1反応性ガスとしてOガスを用いて酸化処理を行う場合に限らず、他のガス種を用いて異なる基板処理を用いる場合にもおいても好適に適用可能である。
【0075】
また例えば、第1プラズマ生成室33内及び第2のプラズマ生成室33B内の反応性ガス供給管は、一対の第1放電用電極27及び第2放電用電極27Bからそれぞれ離れた位置に設けられていても良い。また、排気管16は、第1ガス噴出口35と第2ガス噴出口35Bとの間に設けられていればよい。複数のガス噴出口が設けられている場合には、それらのうちの少なくとも2つのガス噴出口と排気管16との距離がそれぞれ略等距離になるようにすれば、ウエハ1の面内に渡り基板処理をより均一に行うことができ、膜厚分布や膜質をウエハ1の面内に渡りより均一化させることができる。
【0076】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0077】
本発明の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に設けられた第1のプラズマ生成室と、
前記第1のプラズマ生成室内に第1の反応性ガスを供給する第1反応性ガス供給手段と、
前記第1のプラズマ生成室内でプラズマを生成し、前記第1の反応性ガスを励起して前記第1の反応性ガスの活性種を生成する一対の第1放電用電極と、
前記第1のプラズマ生成室の側壁に設けられ、前記基板に向けて前記第1の反応性ガスの活性種を噴出する第1ガス噴出口と、
前記処理室内に設けられた第2のプラズマ生成室と、
前記第2のプラズマ生成室内に第2の反応性ガスを供給する第2反応性ガス供給手段と、
前記第2のプラズマ生成室内でプラズマを生成し、前記第2の反応性ガスを励起して前記第2の反応性ガスの活性種を生成する一対の第2放電用電極と、
前記第2のプラズマ生成室の側壁に設けられ、前記基板に向けて前記第2の反応性ガスの活性種を噴出する第2ガス噴出口と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0078】
好ましくは、前記第1反応性ガス供給手段及び前記第2反応性ガス供給手段によるガス供給動作、前記第1放電用電極及び前記第2放電用電極への電力供給動作を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記第1のプラズマ生成室内に前記第1反応性ガス供給手段から前記第1の反応性ガスを供給して前記第1のプラズマ生成室内で前記第1放電用電極によりプラズマを生成させ、前記第1の反応性ガスを励起して生成した前記第1の反応性ガスの活性種によって前記基板を処理した後、
前記第2のプラズマ生成室内に前記第2反応性ガス供給手段から前記第2の反応性ガスを供給して前記第2のプラズマ生成室内で前記第2放電用電極によりプラズマを生成させ、前記第2の反応性ガスを励起して生成した前記第2の反応性ガスの活性種によって前記基板を処理する。
【0079】
好ましくは、前記第1の反応性ガスを間接励起する励起用ガスを前記第1のプラズマ生成室内に供給するか、前記第2の反応性ガスを間接励起する励起用ガスを前記第2のプラズマ生成室内に供給する励起用ガス供給手段を有する。
【0080】
好ましくは、前記処理室内に原料ガスを供給する原料ガス供給手段を有する。
【0081】
好ましくは、前記第1放電用電極及び前記第2放電用電極は、保護管により被覆されている。
【0082】
好ましくは、前記処理室内に基板を加熱する加熱手段を有する。
【0083】
好ましくは、前記処理室内に基板を回転させる回転手段を有する。
【0084】
本発明の他の態様によれば、
基板を処理室内に搬入する搬入工程と、
第1のプラズマ生成室内に第1反応性ガス供給手段から第1の反応性ガスを供給して前記第1のプラズマ生成室内で一対の第1放電用電極によりプラズマを生成し、前記第1の反応性ガスを励起して生成した前記第1の反応性ガスの活性種によって前記基板を処理する第1基板処理工程と、
第2のプラズマ生成室内に第2反応性ガス供給手段から第2の反応性ガスを供給して前記第2のプラズマ生成室内で一対の第2放電用電極によりプラズマを生成し、前記第2の反応性ガスを励起して生成した前記第2の反応性ガスの活性種によって前記基板を処理する第2基板処理工程と、
処理後の前記基板を前記処理室内から搬出する搬出工程と、
を有する基板処理方法が提供される。
【0085】
本発明の他の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記基板を加熱する加熱手段と、
前記基板を回転させる回転手段と、
前記処理室内に設けられた複数のプラズマ生成室と、
前記複数のプラズマ生成室内にそれぞれ反応性ガスを供給する複数のガス供給手段と、
前記プラズマ生成室内でプラズマを生成し、前記反応性ガスを励起して前記反応性ガスの活性種を生成する一対の放電用電極と、
前記複数のプラズマ生成室の側壁にそれぞれ設けられ、前記基板に向けて前記反応性ガスの活性種を噴出するガス噴出口と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0086】
好ましくは、前記複数のガス供給手段によるそれぞれのガス供給動作、前記一対の放電用電極への電力供給動作、加熱手段及び回転手段を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記加熱手段により前記処理室内を所定温度に加熱しつつ、前記回転手段により前記基板を回転させ、前記複数のプラズマ生成室内に前記複数のガス供給手段からそれぞれ反応性ガスを供給して前記一対の放電用電極によりプラズマを生成させ、前記反応性ガスを励起して生成した活性種によって前記基板を同時に処理する。
【0087】
本発明の他の態様によれば、
基板を処理室内に搬入する搬入工程と、
加熱手段により前記処理室内を所定温度に加熱しつつ、前記回転手段により前記基板を回転させ、前記複数のプラズマ生成室内に前記複数のガス供給手段からそれぞれ反応性ガスを供給して前記一対の放電用電極によりプラズマを生成させ、前記反応性ガスを励起して生成した活性種によって前記基板を同時に処理する基板処理工程と、
処理後の前記基板を前記処理室内から搬出する搬出工程と、
を有する基板処理方法が提供される。
【符号の説明】
【0088】
1 ウエハ(基板)
10 処理炉
12 処理室
19 回転機構
27 第1放電用電極
27B 第2放電用電極
33 第1のプラズマ生成室
33B 第2のプラズマ生成室
35 第1ガス噴出口
35B 第2ガス噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に設けられた第1のプラズマ生成室と、
前記第1のプラズマ生成室内に第1の反応性ガスを供給する第1反応性ガス供給手段と、
前記第1のプラズマ生成室内でプラズマを生成し、前記第1の反応性ガスを励起して前記第1の反応性ガスの活性種を生成する一対の第1放電用電極と、
前記第1のプラズマ生成室の側壁に設けられ、前記基板に向けて前記第1の反応性ガスの活性種を噴出する第1ガス噴出口と、
前記処理室内に設けられた第2のプラズマ生成室と、
前記第2のプラズマ生成室内に第2の反応性ガスを供給する第2反応性ガス供給手段と、
前記第2のプラズマ生成室内でプラズマを生成し、前記第2の反応性ガスを励起して前記第2の反応性ガスの活性種を生成する一対の第2放電用電極と、
前記第2のプラズマ生成室の側壁に設けられ、前記基板に向けて前記第2の反応性ガスの活性種を噴出する第2ガス噴出口と、を有する
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記第1の反応性ガスと前記第2の反応性ガスとは同一種のガスである
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−9699(P2011−9699A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64651(P2010−64651)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】