外観検査装置
【課題】太陽電ウエハの3次元形状を正確かつ高速に算出する。
【解決手段】第1及び第2形状算出部24,34は、撮像部20により所定のフレームレートで連続的に撮像された複数枚の光切断線画像の画像データを基に、ウエハ50の表面の3次元形状データを算出する。ここで、第1形状算出部24は、カメラ21〜23が現フレームの光切断線画像を撮像する期間に、1つ前のフレームに探索処理を行うと同時に、2つ前のフレームの光切断線画像に重心算出処理を行う。
【解決手段】第1及び第2形状算出部24,34は、撮像部20により所定のフレームレートで連続的に撮像された複数枚の光切断線画像の画像データを基に、ウエハ50の表面の3次元形状データを算出する。ここで、第1形状算出部24は、カメラ21〜23が現フレームの光切断線画像を撮像する期間に、1つ前のフレームに探索処理を行うと同時に、2つ前のフレームの光切断線画像に重心算出処理を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池ウエハの外観を検査する外観検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーとして太陽光発電が注目されており、太陽電池の市場規模が急激に拡大しつつある。太陽電池の原材料となる太陽電池ウエハは、シリコンインゴットをワイヤーソーでスライスすることで得られるが、スライスする際にソーマークと呼ばれる筋状の溝が形成されることが知られている。なお、ソーマークは、太陽電池ウエハの表面において、長手方向がおおよそ一定の方向を向くように多数形成される。
【0003】
そして、溝の深いソーマークが多数存在し、表面が粗い太陽電池ウエハは、不良品となってしまい商品として出荷することはできない。そこで、太陽電池ウエハの表面の粗さを検査し、太陽電池ウエハが不良品であるか否かの外観検査が必要となる。
【0004】
従来、太陽電池ウエハの外観検査は人による目視検査が行われてきたが、近年の太陽電池の市場規模の拡大や太陽電池ウエハの検査時における人為的なウエハ破損の低減など様々な理由から、外観検査を専用の検査装置により行わせる試みが検討されている。
【0005】
このような、検査装置として例えばレーザ変位計を使い、ウエハ表面の1ライン分の断面形状を測定するものが知られている。
【0006】
また、特許文献1には、多結晶半導体ウエハの両面を撮像し、撮像された各面の画像の画像データを、2つの面が対向する位置で画素毎に比較し、比較結果が予め定める汚れ条件を満たすとき、2つの面のうちいずれか1つの面に汚れがあると判定する技術が開示されている。
【0007】
特許文献2には、薄型パネルに用いられるガラス基板に含まれる線状の欠陥を検査することを目的として、検査対象となる被写体の画像データを短冊状に分割し、分割画像ごとに濃淡が投影された1次元データである第1のデータを算出し、この第1のデータに基づいて、分割画像ごとに線状欠陥候補が含まれる欠陥候補範囲を特定し、特定した欠陥候補範囲の画像に対応する画像データを用いて、欠陥候補範囲が強調された第2のデータを算出し、この第2のデータを積算することにより得られるデータに基づいて、線状の欠陥を特定する技術が開示されている。
【0008】
特許文献3には、LCDパネルの筋状欠陥を検出することを目的として、検査対象となる着目画素を選択し、着目画素を中心として所定サイズの領域を選択し、選択した領域内において、予め設定された閾値以上の輝度値の画素を、輝度値が大きい順に所定数抽出し、抽出した各画素と着目画素を通る角度基準線との距離の積算最小値を求め、求めた積算最小値に基づく投票値を、画像に対応する投票空間において、着目画素に対応する部分に投票し、投票結果を基に、筋状欠陥を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−67102号公報
【特許文献2】特開2008−134196号公報
【特許文献3】特開2005−345290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のレーザ変位計を用いる手法では、ウエハ上の1ライン分の断面形状しか測定されておらず、測定した1ラインでは凹凸が目立たないが、別の部分で凹凸が目立つというウエハもあり、この場合、不良品のウエハが出荷される可能性が高くなる。
【0011】
また、特許文献1では、撮像された多結晶半導体ウエハの各面の画像の画像データを比較することで汚れの有無が判定されているが、多結晶半導体ウエハの表面の3次元形状データを求めるようなことは行われていない。
【0012】
また、特許文献2では、検査対象となる被写体を撮像することで得られた画像データから線状の欠陥が特定されているが、この技術も特許文献1と同様、被写体の表面の3次元形状データを求めるようなことは行われていない。
【0013】
また、特許文献3では、LCDパネルを撮像し、得られた画像データに対して画像処理を行うことで、筋状欠陥が検出されているが、この技術も特許文献1,2と同様、被写体の表面の3次元形状データを求めることは行われていない。
【0014】
よって、特許文献1〜3の技術では、太陽電池ウエハに形成されたソーマークの3次元形状を測定することはできない。
【0015】
本発明の目的は、太陽電ウエハの3次元形状を正確、かつ、高速に判定することができる外観検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)本発明の一局面による外観検査装置は、太陽電池ウエハの外観を検査する外観検査装置であって、前記太陽電池ウエハに形成されたソーマークの長手方向に沿って、前記太陽電池ウエハを一定速度で搬送させる搬送部と、前記搬送部により搬送される太陽電池ウエハに対し、搬送方向と交差する方向に光切断線を照射する照射部と、前記照射部により照射された光切断線を含む光切断線画像を一定周期で連続的に撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された複数枚の光切断線画像の画像データを基に、前記太陽電池ウエハの3次元形状データを算出する形状算出手段とを備え、前記形状算出手段は、前記撮像手段による前記光切断線画像の連続撮像処理と並列して、前記光太陽電池ウエハの3次元形状データの算出処理を実行する。
【0017】
この構成によれば、搬送部により一定速度で搬送される太陽電池ウエハは、搬送方向と交差する方向に光切断線が照射されることでソーマークと交差するように光切断線が照射されると共に、撮像手段によって一定周期で連続的に光切断線画像として撮像される。そのため、撮像手段は、前回の光切断線画像の撮像時に照射された光切断線のすぐ隣の位置に光切断線が照射されたタイミングで次の光切断線画像を撮像することができる。そのため、太陽電池ウエハの3次元形状データを高精度で算出することができる。
【0018】
また、撮像手段による光切断線画像の連続撮像処理と形状算出手段による太陽電池ウエハの3次元形状データの算出処理とが並列して実行されるため、太陽電池ウエハの3次元形状を高速に得ることができる。
【0019】
(2)前記形状算出手段は、前記撮像手段による現フレームの光切断線画像の撮像期間において、前記現フレームよりも前に撮像されたフレームに対して、前記光切断線の照射位置に対応する前記太陽電池ウエハの高さデータを算出するための処理を実行することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、撮像手段による現フレームの光切断線画像の撮像処理と、現フレームよりも前に撮像されたフレームに対して、光切断線の照射位置に対応する1列分の太陽電池ウエハの高さデータを算出するための処理とが同時に行われる。そのため、太陽電池ウエハの3次元形状を高速に得ることができる。
【0021】
(3)前記形状算出手段は、前記撮像手段により撮像された各光切断線画像において、前記搬送方向と平行に複数のラインを設定し、各ラインの最大輝度画素を探索する探索処理と、前記探索処理により探索された各ラインの最大輝度画素を基に、各ラインの最大輝度の重心座標をサブピクセル単位で算出する重心算出処理とを実行する第1形状算出部を備え、前記第1形状算出部は、前記撮像手段による現フレームの光切断線画像の撮像期間において、前記現フレームより1つ前のフレームの光切断線画像に対する前記探索処理を実行すると同時に、前記現フレームより2つ前のフレームの光切断線画像に対する前記重心算出処理を実行することが好ましい。
【0022】
この構成によれば、撮像手段による現フレームの光切断線画像の撮像期間において、探索処理と重心算出処理とが同時に実行されており、1枚の光切断線画像が撮像される毎に、各ラインの最大輝度の重心位置を得ることができる。つまり、各ラインの最大輝度の重心位置がパイプライン的に得られている。
【0023】
そのため、各ラインの最大輝度の重心位置を太陽電池ウエハの撮像中にリアルタイムで得ることが可能となり、太陽電池ウエハの3次元形状を高速に得ることができる。
【0024】
(4)前記形状算出手段は、前記第1形状算出部により算出された各ラインの重心座標と、前記撮像手段及び照射部の仰角とを基に、前記光切断線の照射位置に対応する1列分の前記太陽電池ウエハの高さデータを算出する処理を繰り返し実行することで前記太陽電池ウエハの3次元形状データを算出する第2形状算出部を備えることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、重心算出処理により算出された各ラインの重心座標と、撮像手段及び照射手段の仰角とを基に、1枚の光切断線画像の照射位置に対応する1列分の太陽電池ウエハの高さデータが算出され、この処理を各光切断線画像に対して行うことで、太陽電池ウエハの3次元形状データが算出されている。そのため、太陽電池ウエハの全面の3次元形状を高精度に求めることができる。
【0026】
(5)前記撮像手段は、前記太陽電池ウエハを上方から撮像し、前記照射部は、前記太陽電池ウエハを斜め方向から照射することが好ましい。
【0027】
この構成によれば、照射部は太陽電池ウエハの幅方向の全域を斜め方向から照射し、撮像手段は太陽電池ウエハの幅方向の全域を上方から撮像しているため、高さデータの分解能を高めると同時に、太陽電池ウエハの全面の3次元形状データを取得することができる。また、撮像手段は太陽電池ウエハを上方から撮像しているため、撮像手段の設置を容易にすることができる。
【0028】
(6)前記撮像手段は、前記太陽電池ウエハを複数の部分領域に分けて撮像するべく複数存在し、前記第2形状算出手段は、各部分領域の3次元形状データを個別に算出し、部分領域のうち隣接する部分領域と重複する領域については、一方の部分領域の3次元形状データと他方の部分領域の3次元形状データとを重ね合わせることで、前記太陽電池ウエハ全面の3次元形状データを算出することが好ましい。
【0029】
この構成によれば、太陽電池ウエハは、複数の撮像手段によって複数の部分領域に分けて撮像され、各部分領域の3次元形状データが個別に算出されている。そして、部分領域のうち隣接する部分と重複する領域については、一方の部分領域の3次元形状データと、他方の部分領域の3次元形状データとが重ね合わされることで太陽電池ウエハ全面の3次元形状データが得られている。そのため、1台の撮像手段によって太陽電池ウエハを撮像する場合に比べて、高分解能の光切断線画像を得ることができる。その結果、高分解能の3次元形状データを算出することができる。
【0030】
(7)前記形状算出手段は、各部分領域の3次元形状データを最小二乗法を用いて平面補正し、前記重複する領域については、一方の部分領域の平面補正後の3次元形状データと他方の部分領域の平面補正後の3次元形状データとを重み付け加算することが好ましい。
【0031】
この構成によれば、各部分領域の3次元形状データが最小二乗法を用いて平面補正されている。よって、各撮像手段における受光面の凹凸に起因する3次元形状データの誤差が低減されるように各部分領域の3次元形状データを求めることができる。
【0032】
また、部分領域のうち、隣接する部分領域と重複する領域については、一方の部分領域の平面補正後の3次元形状データと他方の部分領域の平面補正後の3次元形状データとが重み付け加算されているため、部分領域同士をなだらかに繋げて太陽電池ウエハ全面の3次元形状データを算出することができる。
【0033】
(8)前記形状算出手段により算出された3次元形状データから前記太陽電池ウエハの粗さ示す評価値を算出する評価値算出手段と、前記評価値に基づいて前記太陽電池ウエハの良否を判定する判定手段とを更に備えることが好ましい。
【0034】
この構成によれば、高分解能の太陽電池ウエハの全面の3次元形状データから太陽電池ウエハの粗さを示す評価値が算出され、この評価値を用いて太陽電池ウエハの良否が判定されているため、太陽電池ウエハが不良品であるか否かを正確に判定することができる。
【0035】
(9)前記評価値算出手段は、前記3次元形状データから低周波成分を除去する処理を実行し、除去後の3次元形状データから前記評価値を算出することが好ましい。
【0036】
この構成によれば、太陽電池ウエハの粗さを評価するうえで不要となる低周波成分が3次元形状データから除去されているため、太陽電池ウエハの粗さが正確に反映された評価値を得ることができ、太陽電池ウエハが不良品であるか否かを正確に判定することができる。
【0037】
(10)前記評価値算出手段は、各列の3次元形状データに対してガウシアンフィルタを用いて低周波成分を抽出し、抽出した各列の低周波成分を元の各列の3次元形状データから差し引くことで、低周波成分を除去することが好ましい。
【0038】
この構成によれば、3次元形状データからガウシアンフィルタを用いて低周波成分が抽出され、抽出された低周波成分を元の3次元形状データから差し引く処理が1列単位で行われ、3次元形状データから低周波成分が除去されているため、低周波成分を精度良く除去することができる。
【0039】
(11)前記判定手段は、前記評価値が閾値より大きければ不良品、閾値よりも小さければ良品と判定することが好ましい。
【0040】
この構成によれば、評価値を閾値と比較することで、良品か不良品かの判定が行われているため、良品判定処理を速やかに行うことができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、太陽電池ウエハの全面の三次元形状を正確、かつ、高速に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態による外観検査装置の全体構成図を示している。
【図2】図1に示す外観検査装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態による外観検査装置のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図4】探索処理の詳細を示すフローチャートである。
【図5】重心算出処理の詳細を示すフローチャートである。
【図6】図4のフローチャートの処理を時系列で示したタイミングチャートである。
【図7】探索処理と重心算出処理との処理の流れを概念的に示した図である。
【図8】光切断線画像の一例を示した図である。
【図9】iラインにおける最大輝度画素を中心としたときの輝度値の分布を示したグラフである。
【図10】高さデータを算出する処理の説明図である。
【図11】光源とカメラとの設置状態を模式的に示した図である。
【図12】形状算出部により算出された断面形状データを示したグラフである。
【図13】形状算出部により算出されたウエハのある部分領域における3次元形状データを擬似的又は模式的に示した図である。
【図14】全面3次元形状データ生成処理を示すフローチャートである。
【図15】重み付け加算する処理を説明する図である。
【図16】評価処理を示すフローチャートである。
【図17】低周波成分が除去された断面形状データを示している。
【図18】低周波成分が除去された3次元形状データを擬似的又は模式的に示した図である。
【図19】光源及びカメラを1台とした場合の外観検査装置の全体構成図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の一実施の形態における外観検査装置について説明する。図1は、本発明の実施の形態による外観検査装置の全体構成図を示している。図1に示すように、本外観検査装置は、照射部10、撮像部20、制御部30、及び搬送部40を備えている。図1において、Y方向は搬送部40による太陽電池ウエハ50の搬送方向を示している。また、X方向はY方向と直交し、かつ水平面と平行な方向を示している。Z方向は、X方向とY方向とのそれぞれに直交する高さ方向を示している。以下、太陽電池ウエハ50をウエハ50と記述する。
【0044】
照射部10は、例えば3つの光源11〜13により構成されている。光源11は、例えばカメラ21が光切断線画像を撮像する部分領域内に向けて、扇状に拡がるように光を照射する。また、光源12は、例えばカメラ22が光切断線画像を撮像する部分領域内に向けて、扇状に拡がるように光を照射する。また、光源13は、例えばカメラ23が光切断線画像を撮像する部分領域内に向けて、扇状に拡がるように光を照射する。
【0045】
そして、光源11〜13のそれぞれが照射する光と、搬送部40により搬送されるウエハ50との交線が、光切断線CL1,CL2,CL3となる。本実施の形態では、光切断線CL1,CL3は、例えばY方向の座標が所定の位置Y1に位置し、長手方向がX方向とほぼ平行になるようにされている。また、光切断線CL2は、例えばY方向の座標が位置Y1より上流側の位置Y2に位置し、長手方向がX方向とほぼ平行になるように設定されている。つまり、光切断線CL1,CL2,CL3によってウエハ50の幅方向(X方向)の全域に光切断線が照射されるため、ウエハ50の全面の3次元形状データを得ることができる。
【0046】
このような光切断線CL1〜CL3の設定は、光源11〜13の設置位置や射出する光の方向を調節することで容易に実現することができる。なお、光切断線CL1,CL2,CL3を特に区別しない場合は、光切断線CLと記述する。
【0047】
光源11〜13は、それぞれ、円筒状の筐体を備え、筐体の内部には、例えば半導体レーザと、光学系とが設けられている。光学系は、半導体レーザの射出側に設けられ、半導体レーザから射出されるレーザ光を扇状に広げて射出させる。
【0048】
また、光源11〜13は、それぞれ、ウエハ50を斜め方向から照射するように、ほぼL字状の支持部材15を介して台14の下面に取り付けられている。
【0049】
撮像部20は、例えば3つのカメラ21〜23により構成されている。カメラ21〜23は、X方向に向けて例えばこの順で配置され、ウエハ50を上側から撮像するように配置されている。ここで、カメラ21〜23は、それぞれ、受光面がz方向の同一位置になるように台25の下面に取り付けられている。カメラ21〜23のx方向、及びy方向の画角は同じであり、受光面のz方向の位置も同じであるため、それぞれの撮像領域である部分領域の縦及び横の幅は同一となる。また、カメラ21〜23が、それぞれ、撮像する光切断線を含む画像を光切断線画像と記述する。また、カメラ21〜23の受光面は矩形状であり、受光面の一方の辺はY方向と平行であり、他方の辺はX方向と平行である。
【0050】
ここで、カメラ21〜23は、所定のフレームレート(例えば250fps)で、画像を撮像することができるCMOSカメラにより構成され、撮像した光切断線画像のアナログの画像データをデジタルの画像データに変換し、所定のフレームレートで制御部30に出力する。なお、カメラ21〜23の撮像タイミングは、例えば同一タイミングとなるように制御部30により同期制御が図られているものとする。
【0051】
なお、本実施の形態においては、第1形状算出部24以外のカメラ21〜23が撮像手段の一例に相当している。
【0052】
制御部30は、例えば通常のコンピュータにより構成され、光源11〜13及びカメラ21〜23のそれぞれとケーブルを介して接続され、本外観検査装置の全体制御を司る。
【0053】
搬送部40は、例えばウエハ50を搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトをX方向に向けて駆動させるモータとを備えている。ここで、搬送ベルトとしては、例えば2個のローラによって張架された無端ベルトが採用されている。2個ローラのうち一方のローラは駆動ローラであり、他方のローラは従動ローラである。そして、モータは駆動ローラを回動させることで、搬送ベルトを図1に示す時計回りの方向に回転させ、ウエハ50をY方向に一定の搬送速度で搬送させる。
【0054】
ここで、搬送速度としては、光切断線CLのY方向の幅をαとすると、カメラ21〜23の周期が1/250=0.004sであり、α/0.004に設定すると、ウエハ50を隙間無く走査することができるため、例えばα/0.004に設定すればよい。なお、ウエハ50は、ソーマークの方向が搬送方向となるように搬送部40に載置されるものとする。したがって、ウエハ50は、ソーマークの方向に沿って搬送され、ソーマークの方向とほぼ直交する方向に光切断線が照射されることになる。
【0055】
図2は、図1に示す外観検査装置の電気的な構成を示すブロック図である。カメラ21〜23は、それぞれ、第1形状算出部24(形状算出手段の一例)を備えている。また、制御部30は、搬送制御部31、照射制御部32、撮像制御部33、第2形状算出部34(形状算出手段の一例)、評価値算出部35、及び判定部36を備えている。なお、搬送制御部31〜判定部36は、例えばCPUがコンピュータを制御部30として機能させるための制御プログラムを実行することで実現される。
【0056】
搬送制御部31は、例えば、操作部60によりオペレータから検査開始の指示が受け付けられると、搬送部40を構成するモータに駆動信号を出力し、搬送部40にウエハ50を一定の搬送速度で搬送させる。
【0057】
照射制御部32は、例えば、操作部60によりオペレータから検査開始の指示が受け付けられると、照射部10を構成する光源11〜13を点灯させる。
【0058】
撮像制御部33は、操作部60によりオペレータから検査開始の指示が受け付けられると、撮像部20に撮像開始のコマンドを出力し、撮像部20に光切断線画像の撮像を開始させる。
【0059】
ここで、第1形状算出部24及び第2形状算出部34により形状算出手段が構成される。形状算出手段は、撮像部20による光切断線画像の連続撮像処理と並列して、ウエハ50の3次元形状データの算出処理を実行する。詳細には、形状算出手段は、撮像20による現フレームの光切断線画像の撮像期間において、現フレームよりも前に撮像されたフレームに対して、光切断線の照射位置に対応する1列分のウエハ50の高さデータを算出するための処理を実行する。
【0060】
第1形状算出部24は、カメラ21〜23により撮像された各光切断線画像において、搬送方向と平行に複数のラインを設定し、各ラインの最大輝度画素を探索する探索処理と、探索処理により探索された各ラインの最大輝度画素を基に、各ラインの最大輝度の重心座標をサブピクセル単位で算出する重心算出処理とを実行する。
【0061】
ここで、第1形状算出部24は、カメラ21〜23による現フレームの光切断線画像の撮像期間において、現フレームより1つ前のフレームの光切断線画像に対する探索処理を実行すると同時に、現フレームより2つ前のフレームの光切断線画像に対する重心算出処理を実行する。
【0062】
また、第1形状算出部24は、カメラ21〜23に対応する各部分領域における探索処理と重心算出処理とを個別に実行する。
【0063】
第2形状算出部34は、第1形状算出部24により算出された各ラインの重心座標と、カメラ21〜23及び光源11〜13の仰角とを基に、光切断線の照射位置に対応する1列分の前記太陽電池ウエハの高さデータを算出する処理を繰り返し実行することでウエハ50の全面の3次元形状データを算出する。
【0064】
また、第2形状算出部34は、カメラ21〜23に対応する各部分領域の3次元形状データを個別に算出し、部分領域のうち隣接する部分領域と重複する領域については、一方の部分領域の3次元形状データと他方の部分領域の3次元形状データとを重ね合わせることで、ウエハ50全面の3次元形状データを算出する。
【0065】
ここで、第2形状算出部34は、各部分領域の3次元形状データを、最小二乗法を用いて平面補正し、部分領域のうち隣接する部分領域と重複する領域については、一方の部分領域の平面補正後の3次元形状データと他方の部分領域の平面補正後の3次元形状データとを重み付け加算することで、ウエハ50全面の3次元形状データを算出する。
【0066】
評価値算出部35は、第2形状算出部34により算出された3次元形状データからウエハ50の粗さ示す評価値を算出する。ここで、評価値算出部35は、形状算出部34により算出された3次元形状データから低周波成分を除去する処理を実行し、除去後の3次元形状データから評価値を算出する。
【0067】
具体的には、評価値算出部35は、各列の3次元形状データに対してガウシアンフィルタを用いて低周波成分を抽出し、抽出した各列の低周波成分を元の各列の3次元形状データから差し引くことで、低周波成分を除去する。
【0068】
判定部36は、評価値算出部35により算出された評価値に基づいてウエハ50の良否を判定する。ここで、判定部36は、評価値が所定の閾値より大きければウエハ50は不良品、閾値よりも小さければウエハ50は良品と判定する。
【0069】
操作部60は、例えばキーボート、及びマウスにより構成され、オペレータから入力される種々の指令を受け付ける。表示部70は、例えば、液晶パネルから構成され、種々の操作画像や、第2形状算出部34が算出した3次元形状データや、判定部36の判定結果を示す画像等を表示する。
【0070】
次に、本外観検査装置の処理の詳細について、フローチャートを用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態による外観検査装置のメインルーチンを示すフローチャートである。なお、以下の処理は、カメラ21〜23のそれぞれにおいて撮像された光切断線画像の画像データに対して個別に実行される。また、図3において、カメラ21〜23は、それぞれX枚のフレームの光切断線画像を撮像するものとする。まず、搬送制御部31により搬送部40が駆動され、ウエハ50の搬送が開始される(ステップS1)。
【0071】
次に、カメラ21〜23は、ウエハ50を撮像し、1フレーム目の光切断線画像の画像データを取得する(ステップS2(1))。
【0072】
図8は、光切断線画像の一例を示した図である。なお、図8に示す光切断線画像は、X方向(垂直方向)の画素数がM個、Y方向(搬送方向)の画素数N個、つまり、M行×N列の画像データであるものとする。また、各画素の画素値は、例えば0〜255の256階調で表される。以下、画素値のことを輝度値と記述する。
【0073】
図8に示すようにX方向に沿って線状の光切断線CLが現れていることが分かる。図3に戻り、ステップS2(2)において、カメラ21〜23は、ウエハ50を撮像し、2フレーム目の光切断線画像の画像データを取得する。これと同時に、第1形状算出部24は、1フレーム目の光切断線画像の画像データに対して探索処理を実行する。
【0074】
ステップS2(3)において、カメラ21〜23は、ウエハ50を撮像し、3フレーム目の光切断線画像の画像データを取得する。これと同時に、第1形状算出部24は、2フレーム目の光切断線画像の画像データに対して、探索処理を実行し、光切断線画像の各ラインの最大輝度画素を探索する。これと同時に、第1形状算出部24は、1フレーム目の光切断線画像に対して、重心算出処理を実行し、各ラインの最大輝度の重心座標をサブピクセル単位で算出する。
【0075】
ステップS2(3)が終了した時点で、1フレーム目に現れた光切断線に対応する1列目の重心座標が得られる。
【0076】
以後、ステップS2(4)〜S2(X)まで、ステップS2(3)と同様の処理が繰り返し実行される。ステップS2(X)が終了した時点で、1列目〜X−2列目の重心座標が得られる。
【0077】
ステップS2(X+1)においては、カメラ21〜23による撮像が終了されているため、探索処理及び重心処理のみが実行され、X−1列目の重心座標が得られる。
【0078】
ステップS2(X+2)においては、探索処理も終了されているため、重心算出処理のみが実行され、X列目の重心座標が得られる。
【0079】
以上のパイプライン処理より、カメラ21〜23が1フレームの光切断線画像を撮像する期間が経過する度に、1列分の重心座標が得られる。
【0080】
図4は、探索処理の詳細を示すフローチャートである。まず、第1形状算出部24は、カメラ21〜23が現在撮像している現フレームの1つ前のフレームの光切断線画像を処理対象の光切断線画像として設定する(ステップS211)。
【0081】
次に、第1形状算出部24は、光切断線画像上に設定する各ラインのライン番号を示すための変数iに0を代入し、iを初期化する(ステップS212)。この場合、図8に示すように、光切断線画像上に、Y方向に沿って1本のラインが設定されていることが分かる。なお、i=0が図8に示す光切断線画像の第1行目を表し、i=1が図8に示す光切断線画像の第2行目を表すというように、1本のラインは光切断線画像の1行に対応し、変数iは、光切断線画像の各行と対応付けられている。
【0082】
次に、第1形状算出部24は、iライン目において、輝度が最大となる画素である輝度最大画素を探索する(ステップS213)。この場合、第1形状算出部24は、図8に示すiライン目において、例えば左端の画素から右端の画素を順次に注目画素として設定していくことで輝度最大画素を探索していく。具体的には、まず、左端の画素を注目画素として設定し、その輝度値及び座標を図略のバッファに格納する。ここで、座標としては、左端の画素から何番目の画素であるかを示す整数値を採用することができる。
【0083】
次に、右隣の画素を注目画素として設定し、注目画素の輝度値の方がバッファに格納した輝度値以上の場合は、バッファを注目画素の輝度値及び座標で更新する。一方、注目画素の輝度値の方がバッファに格納した輝度値未満の場合は、バッファに格納した輝度値及び座標を更新しない。このような処理を繰り返し行い、最終的にバッファに格納されている座標を最大輝度画素の座標Xpとして決定し、iライン目の最大輝度画素が探索される。
【0084】
なお、求められたiライン目の最大輝度画素の座標Xpは変数iと対応付けられて図略のバッファに格納される。
【0085】
次に、第1形状算出部24は、全ラインについて、最大輝度画素の座標Xpを求める処理が終了した場合(ステップS214でYES)、処理をリターンさせ、全ラインについて、最大輝度画素の座標Xpを求める処理が終了していない場合(ステップS214でNO)、iを1インクリメントさせ(ステップS215)、処理をステップS213に戻す。
【0086】
つまり、第1形状算出部24は、ステップS213〜S215の処理を繰り返すことで、図8に示す光切断線画像の全ラインの最大輝度画素の座標Xpを求めるのである。
【0087】
図5は、重心算出処理の詳細を示すフローチャートである。まず、第1形状算出部24は、カメラ21〜23が現在撮像している現フレームの2つ前のフレームの光切断線画像を処理対象の光切断線画像として設定する(ステップS221)。
【0088】
次に、第1形状算出部24は、探索処理と同様にして変数iに0を代入し、iを初期化する(ステップS222)。次に、第1形状算出部24は、iライン目において探索した最大輝度画素を中心として、左右にn個の周辺画素を抽出し、最大輝度画素と2n個の周辺画素とを用いて、iライン目の最大輝度の重心座標Xsubを求める(ステップS223)。
【0089】
図9は、iライン目における最大輝度画素を中心としたときの輝度値の分布を示したグラフである。図9では、座標Xpが最大輝度画素の座標であり、右に8個、左に8個の合計17個の画素の輝度値の分布が示されている。
【0090】
そして、第1形状算出部24は、例えば下記の式を用いて、最大輝度の重心座標を求める。
【0091】
【数1】
【0092】
但し、Xsubは最大輝度の重心座標を示し、Xjはiライン目における第j番目の画素の座標を示し、KjはXjの輝度値を示し、Xpは最大輝度画素の座標を示し、Kpは最大輝度画素の輝度値を示し、nは周辺画素を特定するためのインデックスである。
【0093】
これにより、iライン目において、最大輝度の重心座標Xsubが1画素以下の小数点つき値、つまりサブピクセル単位で求まることになる。なお、第1形状算出部24は、最大輝度の重心座標Xsubを小数点の何桁目までを求めるかを予め定めておき、最大輝度の重心座標Xsubがその桁数を超えると、四捨五入、切り捨て、又は切り上げる等の処理を行えばよい。
【0094】
図9の例では、実線で示すグラフのピークのXの値が最大位輝度の重心座標Xsubとなる。なお、図9の例では、周辺画素の個数をn=8としたが、これは一例であり、1以上であれば計算量が膨大とならない範囲で適宜、別の値を採用してもよい。
【0095】
図5に戻り、第1形状算出部24は、全ラインについて、最大輝度の重心座標Xsubを求める処理が終了した場合(ステップS224でYES)、処理をリターンさせ、全ラインについて、重心座標Xsubを求める処理が終了していない場合(ステップS224でNO)、iを1インクリメントさせ(ステップS225)、処理をステップS223に戻す。
【0096】
つまり、第1形状算出部24は、ステップS223〜S225の処理を繰り返すことで、図8に示す光切断線画像の全ラインの最大輝度の重心座標Xsubを求めるのである。
【0097】
なお、全ラインの最大輝度の重心座標Xsubは、光切断線画像のフレーム番号と、変数iと対応付けられて図略のバッファに格納される。
【0098】
図6は、図3のフローチャートの処理を時系列で示したタイミングチャートである。図6に示す期間T1〜T(X+1)は、それぞれ、カメラ21〜33が1フレームの光切断線画像を撮像するために要する時間、すなわち、フレーム周期を表している。
【0099】
期間T1においては、図3に示すステップS2(1)が実行され、1フレーム目の光切断線画像が撮像されている。期間T2においては、図3に示すステップS2(2)が実行され、2枚目のフレームの光切断線画像の撮像と、1フレーム目の光切断線画像の探索処理とが同時に行われている。
【0100】
期間T3においては、図3に示すステップS2(3)が実行され、3フレーム目の光切断線画像の撮像と、2フレーム目の光切断線画像の探索処理と、1フレーム目の光切断線画像の重心算出処理とが同時に行われている。
【0101】
以後、期間T(X)まで、現フレームの光切断線画像の撮像と、1つ前のフレームの光切断線画像の探索処理と、2つ前のフレームの光切断線画像の重心算出処理とが同時に行われ、1期間が経過する毎に、1列分の最大輝度の重心座標Xsubが算出される。
【0102】
図7は、探索処理と重心算出処理との処理の流れを概念的に示した図である。図7に示す縦軸は時間軸を示し、カメラ21〜23のフレーム周期毎に目盛りが刻まれている。なお、上述したように、カメラ21〜23のフレームレートは250fpsであるため、フレーム周期は4msecとなる。なお、図7では、1フレームの光切断線画像に設定されるライン数はi=0〜479の480本とされている。
【0103】
期間T(n)において、ウエハ50が撮像され、nフレーム目の光切断線画像が取得されている。次に、期間T(n+1)において、左側に向けて停止することなく一定速度で搬送されているウエハ50が撮像され、n+1フレーム目の光切断線画像が取得されている。次に、期間T(n+2)において、左側に向けて停止することなく一定速度で搬送されているウエハ50が撮像され、n+2フレーム目の光切断線画像が取得されている。
【0104】
そして、期間T(n)において、n−1フレーム目の光切断線画像に対し、i=0〜479本のラインが設定され、各ラインの最大輝度画素が探索されると同時に、n−2フレーム目の光切断線画像に対し、i=0〜279本のラインが設定され、各ラインの最大輝度の重心座標Xsubが算出されている。
【0105】
また、期間T(n+1)、T(n+2)においても、期間T(n)と同様の処理が実行される。よって、期間T(n)が経過する毎に、i=0〜479の最大輝度の重心座標Xsubが得られる。
【0106】
図3に戻り、ステップS3において、第2形状算出部34は、第1形状算出部24により算出された1フレームの光切断線画像について算出された1列分の最大輝度の重心座標Xsubのそれぞれを下記の式に代入し、高さデータを算出し、算出した高さデータを変数iの順番で配列することで、断面形状データを算出する。
【0107】
h(μm)=R・Xsub・cosθ/sin(θ+φ)
但し、hは高さデータを示し、Rは視野分解能を示し、θは光源11〜13の仰角を示し、φはカメラの仰角を示す。
【0108】
図10は、高さデータを算出する処理の説明図である。図11は、光源11〜13とカメラ21〜23との設置状態を模式的に示した図である。図10に示す四角形は光切断線画像を示し、四角形内に示す太線は全ラインの最大輝度の重心座標Xsubにより描かれる光切断線CL’を示している。
【0109】
図11に示すように、光源11〜13のそれぞれの仰角はZ方向を基準としてθに設定され、カメラ21〜23のそれぞれの仰角はZ方向を基準としてφに設定されている。そして、光源11〜13から照射された光がカメラ21〜23に入射する位置は、ウエハ50の高さに応じて図10に示すY方向に前後することになる。よって、最大輝度の重心座標Xsubを上記の式に代入することで、ウエハ50の各位置における高さデータを求めることができる。
【0110】
なお、図10において、光切断線画像の縦方向の長さをML(μm)、横方向の長さをNL(μm)とし、縦方向のピクセル数をM、横方向のピクセル数をNとすると、視野分解能Rは、R=NL/Nとなる。
【0111】
そして、第2形状算出部34は、光切断線CL’上の各Xsubについて求めたM個の高さデータhを1列に配列する。これにより、ウエハ50の断面形状データが得られる。
【0112】
なお、図11において、θ+φは90度となることが好ましい。また、θは例えば45度〜82度、好ましくは60度〜82度である。また、φは例えば45度〜8度、好ましくは、30度〜8度である。これにより、光源11〜13はウエハ50を斜め方向から照射し、カメラ21〜23はウエハ50を上方から撮像することが可能となり、高分解能の高さデータを得ることが可能となる。
【0113】
図12は、第2形状算出部34により算出された断面形状データを示したグラフであり、縦軸は高さをμm単位で示し、横軸は光切断線方向、つまり、図10に示す縦方向をmm単位で示している。図12に示すように、ウエハ50の断面形状データの微妙な凹凸が正確に算出されていることが分かる。
【0114】
図3に戻り、ステップS4において、第2形状算出部34は、求めた断面形状データをフレーム番号順に配列することで、部分領域の全面の3次元形状データを算出する。
【0115】
図3の例では光切断線画像のフレーム数はX枚であるため、断面形状データがX列で配列された部分領域の3次元形状データが得られる。また、カメラの台数は3台であるため、3つの部分領域に対する3次元形状データが得られる。
【0116】
図13は、第2形状算出部34により算出されたウエハ50のある部分領域における3次元形状データを擬似的又は模式的に示した図である。図13に示すように、図12に示す断面形状データを配列していくことで、ウエハ50の部分領域の3次元形状が再現されている。また、図13に示すように、Y方向に沿って複数の溝が現れており、ソーマークがリアルに再現されていることが分かる。
【0117】
次に、図3に戻り、第2形状算出部34は、部分領域毎に得られた3次元形状データを繋げ、ウエハ50全面の3次元形状データを求める全面3次元形状データ生成処理を実行する(ステップS5)。図14は、全面3次元形状データ生成処理を示すフローチャートである。
【0118】
まず、第2形状算出部34は、カメラ21〜23を示す変数kに1を代入し、kを初期化する(ステップS31)。本実施の形態では、カメラは3台なので、kはk=1〜3のいずれかの整数値をとり、k=1〜3はそれぞれカメラ21〜23に対応している。
【0119】
次に、第2形状算出部34は、k台目、k+1台目のカメラの部分領域に対応する3次元形状データを取得する(ステップS32)。次に、第2形状算出部34は、各部分領域に対応する3次元形状データを最小二乗法を用いて個別に平面補正する(ステップS33)。
【0120】
具体的には、第2形状算出部34は、部分領域の平面の式をz=ax+by+cとおき、下記のEを最小とするようなa、b、cを求め、得られたa、b、cを上記平面の式に代入することで部分領域の平面の式を求める。
【0121】
E=Σ(z−(ax+by+c))2
∂E/∂a=0、∂E/∂b=0、∂E/∂c=0
但し、x、y、zは、図1に示すX,Y,Z方向に対応している。
【0122】
そして、第2形状算出部34は、k台目のカメラの部分領域の3次元形状データを(x’、y’、z’)で表すと、z’−zにより、部分領域の3次元形状データを平面補正する。
【0123】
なお、z’−zのzはz=ax’+by’+cにより得られる値である。
【0124】
これにより、カメラにおける受光面の凹凸に起因する3次元形状データの誤差がなくなるように部分領域の3次元形状データを求めることができる。
【0125】
次に、第2形状算出部34は、k台目のカメラの部分領域とk+1台目のカメラの部分領域とが重なっている領域について、両部分領域の3次元データを重み付け加算することで補正する(ステップS34)。
【0126】
図15は、重み付け加算する処理を説明する図である。図15示すように、k台目のカメラの部分領域DkはX座標の範囲がp〜rであり、k+1台目のカメラの部分領域Dk+1はX座標の範囲がq〜sであり、p<q<r<sの関係を有している。そのため、部分領域Dkと部分領域Dk+1とはxがq≦x≦rの範囲において重なっている。なお、p〜sの値は、図1に示すように、カメラ21〜23の仰角及び画角等から予め求めることができ、その値を採用すればよい。
【0127】
そこで、第2形状算出部34は、重なっている領域については、下記の式を用いて、部分領域Dkと部分領域Dk+1との平面補正後の3次元形状データを重み付け加算する。
【0128】
fnew(x,y)=((fk(x,y)・(r−x)+fk+1(x,y)・(x−q))/(r−q) (q≦x≦r)
但し、fnew(x,y)は、重み付け加算された高さデータを示し、fk(x,y)は部分領域Dkの平面補正後の高さデータを示し、fk+1(x,y)は部分領域Dk+1の平面補正後の高さデータを示している。
【0129】
つまり、xがqに近づくにつれて、部分領域Dk+1よりも部分領域Dkの高さデータの成分が増大するように重み付け加算され、xがrに近づくにつれて、部分領域Dkよりも部分領域Dk+1の高さデータの成分が増大するように、重み付け加算される。
【0130】
次に、第2形状算出部34は、全てのカメラの部分領域の3次元形状データについての処理が終了した場合(ステップS35でYES)、処理をリターンし、全てのカメラの部分領域の3次元形状データについての処理が終了していない場合(ステップS35でNO)、処理をステップS36に進める。
【0131】
ステップS36において、第2形状算出部34は、部分領域Dkと部分領域Dk+1との3次元形状データとを繋げる(ステップS36)。この場合、第2形状算出部34は、部分領域Dkのうち、部分領域Dk+1と重なっていない領域(p≦x<q)については、下記の式に示すように部分領域Dkの平面補正後の3次元形状データをそのまま採用し、部分領域Dk+1のうち、部分領域Dkと重なっていない領域(r<x≦s)については、下記の式に示すように、部分領域Dk+1の平面補正後の3次元形状データをそのまま採用し、部分領域Dkと部分領域Dk+1とが重なっている領域(q≦x≦r)については、上記の重み付け加算した3次元形状データを採用する。
【0132】
fnew(x,y)=fk(x,y) (p≦x<q)
fnew(x,y)=fk+1(x,y) (r<x≦s)
次に、第2形状算出部34は、kを1インクリメントさせ(ステップS37)、処理をステップS32に戻す。以上により、ウエハ50全面の3次元形状データが得られる。
【0133】
図3に戻り、ステップS6において、評価値算出部35及び判定部36は、評価処理を実行する。図16は、評価処理を示すフローチャートである。まず、評価値算出部35は、ウエハ50全面の3次元形状データを取得する(ステップS41)。次に、評価値算出部35は、3次元形状データの列を指定するための変数yに0を代入し、yを初期化する(ステップS42)。
【0134】
次に、評価値算出部35は、y列目の断面形状データから低周波成分を除去する(ステップS43)。ここで、評価値算出部35は、まず、y列目の断面形状データを構成する各高さデータに対してガウシアンフィルタをかけ、低周波成分を抽出する。
【0135】
具体的には、評価値算出部35は、下記の式を用いて、低周波成分を抽出する。
【0136】
w(x)=∫−∞∞p(x’)・s(x−x’)dx’
但し、w(x)はy列目の断面形状データの低周波成分を示し、p(x)はy列目の断面形状データを示している。
【0137】
また、s(x)は下記の式で表される正規分布である。
【0138】
s(x)=(1/α・λc)・exp(−π(x/α・λc)2)
但し、α=√(ln2/π)=0.4679である。
【0139】
つまり、評価値算出部35は、y列目の断面形状データにおいて、1番目の高さデータから最終番目の高さデータまでを順次に注目高さデータとして設定し、各注目高さデータを中心として断面形状データp(x)にs(x)を乗じて積分することで、各注目高さデータの低周波成分を求める。
【0140】
そして、評価値算出部35は、各注目高さデータの低周波成分w(x)が得られると、r(x)=p(x)−w(x)により、断面形状データp(x)から低周波成分w(x)を除去する。これにより、断面形状データp(x)の高周波成分r(x)が得られる。
【0141】
図17は、低周波成分が除去された断面形状データを示している。図17に示すように、図12で現れていた大きなうねりが平坦化され、ある高さレベルを基準に断面形状データが変化していることが分かる。
【0142】
次に、評価値算出部35は、ウエハ50の全面の3次元形状データに対して低周波成分を除去する処理が終了した場合(ステップS44でYES)、処理をステップS46に進め、ウエハ50の全面の3次元形状データに対して低周波成分を除去する処理が終了していない場合(ステップS44でNO)、処理をステップS45に進める。
【0143】
ステップS45において、評価値算出部35は、yを1インクリメントして、処理をステップS43に戻す。つまり、ステップS43〜S45の処理が繰り返されることで、1列の3次元形状データから低周波成分が除去される処理が繰り返され、最終的にウエハ50の全面の3次元形状データから低周波成分が除去される。
【0144】
図18は、低周波成分が除去された3次元形状データを擬似的又は模式的に示した図である。図18に示すように、図13で現れていた大きなうねりが平坦化され、X−Y平面と平行な、ある高さレベルを基準に3次元形状データが変化していることが分かる。
【0145】
ステップS46において、評価値算出部35は、低周波成分が除去された高さデータの絶対値の総和を求め、その総和を全高さデータの個数で割ることで、ウエハ50の粗さを示す評価値を算出する。
【0146】
次に、判定部36は、評価値が閾値より大きい場合(ステップS47でYES)、ウエハ50は不良品であると判定し(ステップS48)、評価値が閾値以下の場合(ステップS47でNO)、ウエハ50は良品であると判定する(ステップS49)。以上により、本外観検査装置の処理が終了される。なお、閾値としては、ウエハ50が不良品であることを示す予め定められた値を採用すればよい。
【0147】
このように、本外観検査装置によれば、搬送部40により一定速度で搬送されるウエハ50は、搬送方向と交差する方向に光切断線が照射されることでソーマークと交差するように光切断線が照射されると共に、撮像部20によって一定周期で連続的に光切断線画像として撮像される。そのため、撮像部20は、前回の光切断線画像の撮像時に照射された光切断線のすぐ隣の位置に光切断線が照射されたタイミングで次の光切断線画像を撮像することができる。
【0148】
これにより、各光切断線画像から光切断法によって光切断線の照射位置におけるウエハ50の断面形状データが得られ、この断面形状データを配列することでウエハ50の全面の3次元形状データを得ることができる。
【0149】
また、ウエハ50は、複数のカメラ21〜23によって複数の部分領域に分けて撮像され、各部分領域の3次元形状データが個別に算出されている。そして、部分領域のうち隣接する部分と重複する領域については、一方の部分領域の3次元形状データと、他方の部分領域の3次元形状データとが重ね合わされることでウエハ50全面の3次元形状データが得られている。そのため、1台のカメラによってウエハ50を撮像する場合に比べて、高分解能の光切断線画像を得ることができる。その結果、高分解能の3次元形状データを算出することができる。
【0150】
そして、このようにして得られた高分解能のウエハ50の全面の3次元形状データからウエハ50の粗さを示す評価値が算出され、この評価値を用いてウエハ50の良否が判定されているため、ウエハ50が不良品であるか否かを正確に判定することができる。
【0151】
なお、上記実施の形態では、光源を3台設けたが本発明はこれに限定されず、光源を1台としてもよい。また、照射部10を1つの光源と複数の射出部により構成し、光源からの光を射出部から射出させるようにしてもよい。この場合、照射部10から照射される光切断線は、ウエハ50の幅方向の全域に照射されている必要がある。また、カメラの台数を3台としたが、本発明はこれに限定されず、2台又は4台以上の複数のカメラにより構成してもよい。また、各カメラと光源又は照射部と1対1に対応付け、各カメラと各光源又は照射部の配置関係を全て一定にすることにより、各カメラにより撮像される光切断線画像の分解能を全て同一にすることができる。
【0152】
図19は、光源及びカメラを1台とした場合の外観検査装置の全体構成図を示している。この態様は例えば、サイズの小さなウエハ50を検査対象とする場合に適している。また、この態様によれば、部分領域は存在しなくなるため、部分領域のうち隣接する部分領域と重なる領域において行われていた上記の重み付け加算する処理が不要となり、処理の簡便化を図ることができる。
【0153】
なお、上記説明では、第1形状算出部24と第2形状算出部34とを別に設けたが、同一構成としてもよい。この場合、各カメラ21〜23に設けてもよいし、制御部30に設けてもよい。また、上記説明では、撮像処理と探索処理と重心算出処理とを3段のパイプライン処理で並列処理させたが、この並列処理に1列分の断面形状データを求める処理を含めてもよい。この場合、撮像処理と探索処理と重心算出処理と1列分の断面形状データを求める処理とを4段のパイプライン処理で実現すればよい。
【符号の説明】
【0154】
10 照射部
20 撮像部
21〜23 カメラ
24 第1形状算出部(形状算出手段)
30 制御部
31 搬送制御部
32 照射制御部
33 撮像制御部
34 第2形状算出部(形状算出手段)
35 評価値算出部(評価値算出手段)
36 判定部(判定手段)
40 搬送部
50 ウエハ
CL,CL1,CL2,CL3 光切断線
Dk,Dk+1 部分領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池ウエハの外観を検査する外観検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーとして太陽光発電が注目されており、太陽電池の市場規模が急激に拡大しつつある。太陽電池の原材料となる太陽電池ウエハは、シリコンインゴットをワイヤーソーでスライスすることで得られるが、スライスする際にソーマークと呼ばれる筋状の溝が形成されることが知られている。なお、ソーマークは、太陽電池ウエハの表面において、長手方向がおおよそ一定の方向を向くように多数形成される。
【0003】
そして、溝の深いソーマークが多数存在し、表面が粗い太陽電池ウエハは、不良品となってしまい商品として出荷することはできない。そこで、太陽電池ウエハの表面の粗さを検査し、太陽電池ウエハが不良品であるか否かの外観検査が必要となる。
【0004】
従来、太陽電池ウエハの外観検査は人による目視検査が行われてきたが、近年の太陽電池の市場規模の拡大や太陽電池ウエハの検査時における人為的なウエハ破損の低減など様々な理由から、外観検査を専用の検査装置により行わせる試みが検討されている。
【0005】
このような、検査装置として例えばレーザ変位計を使い、ウエハ表面の1ライン分の断面形状を測定するものが知られている。
【0006】
また、特許文献1には、多結晶半導体ウエハの両面を撮像し、撮像された各面の画像の画像データを、2つの面が対向する位置で画素毎に比較し、比較結果が予め定める汚れ条件を満たすとき、2つの面のうちいずれか1つの面に汚れがあると判定する技術が開示されている。
【0007】
特許文献2には、薄型パネルに用いられるガラス基板に含まれる線状の欠陥を検査することを目的として、検査対象となる被写体の画像データを短冊状に分割し、分割画像ごとに濃淡が投影された1次元データである第1のデータを算出し、この第1のデータに基づいて、分割画像ごとに線状欠陥候補が含まれる欠陥候補範囲を特定し、特定した欠陥候補範囲の画像に対応する画像データを用いて、欠陥候補範囲が強調された第2のデータを算出し、この第2のデータを積算することにより得られるデータに基づいて、線状の欠陥を特定する技術が開示されている。
【0008】
特許文献3には、LCDパネルの筋状欠陥を検出することを目的として、検査対象となる着目画素を選択し、着目画素を中心として所定サイズの領域を選択し、選択した領域内において、予め設定された閾値以上の輝度値の画素を、輝度値が大きい順に所定数抽出し、抽出した各画素と着目画素を通る角度基準線との距離の積算最小値を求め、求めた積算最小値に基づく投票値を、画像に対応する投票空間において、着目画素に対応する部分に投票し、投票結果を基に、筋状欠陥を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−67102号公報
【特許文献2】特開2008−134196号公報
【特許文献3】特開2005−345290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のレーザ変位計を用いる手法では、ウエハ上の1ライン分の断面形状しか測定されておらず、測定した1ラインでは凹凸が目立たないが、別の部分で凹凸が目立つというウエハもあり、この場合、不良品のウエハが出荷される可能性が高くなる。
【0011】
また、特許文献1では、撮像された多結晶半導体ウエハの各面の画像の画像データを比較することで汚れの有無が判定されているが、多結晶半導体ウエハの表面の3次元形状データを求めるようなことは行われていない。
【0012】
また、特許文献2では、検査対象となる被写体を撮像することで得られた画像データから線状の欠陥が特定されているが、この技術も特許文献1と同様、被写体の表面の3次元形状データを求めるようなことは行われていない。
【0013】
また、特許文献3では、LCDパネルを撮像し、得られた画像データに対して画像処理を行うことで、筋状欠陥が検出されているが、この技術も特許文献1,2と同様、被写体の表面の3次元形状データを求めることは行われていない。
【0014】
よって、特許文献1〜3の技術では、太陽電池ウエハに形成されたソーマークの3次元形状を測定することはできない。
【0015】
本発明の目的は、太陽電ウエハの3次元形状を正確、かつ、高速に判定することができる外観検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)本発明の一局面による外観検査装置は、太陽電池ウエハの外観を検査する外観検査装置であって、前記太陽電池ウエハに形成されたソーマークの長手方向に沿って、前記太陽電池ウエハを一定速度で搬送させる搬送部と、前記搬送部により搬送される太陽電池ウエハに対し、搬送方向と交差する方向に光切断線を照射する照射部と、前記照射部により照射された光切断線を含む光切断線画像を一定周期で連続的に撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された複数枚の光切断線画像の画像データを基に、前記太陽電池ウエハの3次元形状データを算出する形状算出手段とを備え、前記形状算出手段は、前記撮像手段による前記光切断線画像の連続撮像処理と並列して、前記光太陽電池ウエハの3次元形状データの算出処理を実行する。
【0017】
この構成によれば、搬送部により一定速度で搬送される太陽電池ウエハは、搬送方向と交差する方向に光切断線が照射されることでソーマークと交差するように光切断線が照射されると共に、撮像手段によって一定周期で連続的に光切断線画像として撮像される。そのため、撮像手段は、前回の光切断線画像の撮像時に照射された光切断線のすぐ隣の位置に光切断線が照射されたタイミングで次の光切断線画像を撮像することができる。そのため、太陽電池ウエハの3次元形状データを高精度で算出することができる。
【0018】
また、撮像手段による光切断線画像の連続撮像処理と形状算出手段による太陽電池ウエハの3次元形状データの算出処理とが並列して実行されるため、太陽電池ウエハの3次元形状を高速に得ることができる。
【0019】
(2)前記形状算出手段は、前記撮像手段による現フレームの光切断線画像の撮像期間において、前記現フレームよりも前に撮像されたフレームに対して、前記光切断線の照射位置に対応する前記太陽電池ウエハの高さデータを算出するための処理を実行することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、撮像手段による現フレームの光切断線画像の撮像処理と、現フレームよりも前に撮像されたフレームに対して、光切断線の照射位置に対応する1列分の太陽電池ウエハの高さデータを算出するための処理とが同時に行われる。そのため、太陽電池ウエハの3次元形状を高速に得ることができる。
【0021】
(3)前記形状算出手段は、前記撮像手段により撮像された各光切断線画像において、前記搬送方向と平行に複数のラインを設定し、各ラインの最大輝度画素を探索する探索処理と、前記探索処理により探索された各ラインの最大輝度画素を基に、各ラインの最大輝度の重心座標をサブピクセル単位で算出する重心算出処理とを実行する第1形状算出部を備え、前記第1形状算出部は、前記撮像手段による現フレームの光切断線画像の撮像期間において、前記現フレームより1つ前のフレームの光切断線画像に対する前記探索処理を実行すると同時に、前記現フレームより2つ前のフレームの光切断線画像に対する前記重心算出処理を実行することが好ましい。
【0022】
この構成によれば、撮像手段による現フレームの光切断線画像の撮像期間において、探索処理と重心算出処理とが同時に実行されており、1枚の光切断線画像が撮像される毎に、各ラインの最大輝度の重心位置を得ることができる。つまり、各ラインの最大輝度の重心位置がパイプライン的に得られている。
【0023】
そのため、各ラインの最大輝度の重心位置を太陽電池ウエハの撮像中にリアルタイムで得ることが可能となり、太陽電池ウエハの3次元形状を高速に得ることができる。
【0024】
(4)前記形状算出手段は、前記第1形状算出部により算出された各ラインの重心座標と、前記撮像手段及び照射部の仰角とを基に、前記光切断線の照射位置に対応する1列分の前記太陽電池ウエハの高さデータを算出する処理を繰り返し実行することで前記太陽電池ウエハの3次元形状データを算出する第2形状算出部を備えることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、重心算出処理により算出された各ラインの重心座標と、撮像手段及び照射手段の仰角とを基に、1枚の光切断線画像の照射位置に対応する1列分の太陽電池ウエハの高さデータが算出され、この処理を各光切断線画像に対して行うことで、太陽電池ウエハの3次元形状データが算出されている。そのため、太陽電池ウエハの全面の3次元形状を高精度に求めることができる。
【0026】
(5)前記撮像手段は、前記太陽電池ウエハを上方から撮像し、前記照射部は、前記太陽電池ウエハを斜め方向から照射することが好ましい。
【0027】
この構成によれば、照射部は太陽電池ウエハの幅方向の全域を斜め方向から照射し、撮像手段は太陽電池ウエハの幅方向の全域を上方から撮像しているため、高さデータの分解能を高めると同時に、太陽電池ウエハの全面の3次元形状データを取得することができる。また、撮像手段は太陽電池ウエハを上方から撮像しているため、撮像手段の設置を容易にすることができる。
【0028】
(6)前記撮像手段は、前記太陽電池ウエハを複数の部分領域に分けて撮像するべく複数存在し、前記第2形状算出手段は、各部分領域の3次元形状データを個別に算出し、部分領域のうち隣接する部分領域と重複する領域については、一方の部分領域の3次元形状データと他方の部分領域の3次元形状データとを重ね合わせることで、前記太陽電池ウエハ全面の3次元形状データを算出することが好ましい。
【0029】
この構成によれば、太陽電池ウエハは、複数の撮像手段によって複数の部分領域に分けて撮像され、各部分領域の3次元形状データが個別に算出されている。そして、部分領域のうち隣接する部分と重複する領域については、一方の部分領域の3次元形状データと、他方の部分領域の3次元形状データとが重ね合わされることで太陽電池ウエハ全面の3次元形状データが得られている。そのため、1台の撮像手段によって太陽電池ウエハを撮像する場合に比べて、高分解能の光切断線画像を得ることができる。その結果、高分解能の3次元形状データを算出することができる。
【0030】
(7)前記形状算出手段は、各部分領域の3次元形状データを最小二乗法を用いて平面補正し、前記重複する領域については、一方の部分領域の平面補正後の3次元形状データと他方の部分領域の平面補正後の3次元形状データとを重み付け加算することが好ましい。
【0031】
この構成によれば、各部分領域の3次元形状データが最小二乗法を用いて平面補正されている。よって、各撮像手段における受光面の凹凸に起因する3次元形状データの誤差が低減されるように各部分領域の3次元形状データを求めることができる。
【0032】
また、部分領域のうち、隣接する部分領域と重複する領域については、一方の部分領域の平面補正後の3次元形状データと他方の部分領域の平面補正後の3次元形状データとが重み付け加算されているため、部分領域同士をなだらかに繋げて太陽電池ウエハ全面の3次元形状データを算出することができる。
【0033】
(8)前記形状算出手段により算出された3次元形状データから前記太陽電池ウエハの粗さ示す評価値を算出する評価値算出手段と、前記評価値に基づいて前記太陽電池ウエハの良否を判定する判定手段とを更に備えることが好ましい。
【0034】
この構成によれば、高分解能の太陽電池ウエハの全面の3次元形状データから太陽電池ウエハの粗さを示す評価値が算出され、この評価値を用いて太陽電池ウエハの良否が判定されているため、太陽電池ウエハが不良品であるか否かを正確に判定することができる。
【0035】
(9)前記評価値算出手段は、前記3次元形状データから低周波成分を除去する処理を実行し、除去後の3次元形状データから前記評価値を算出することが好ましい。
【0036】
この構成によれば、太陽電池ウエハの粗さを評価するうえで不要となる低周波成分が3次元形状データから除去されているため、太陽電池ウエハの粗さが正確に反映された評価値を得ることができ、太陽電池ウエハが不良品であるか否かを正確に判定することができる。
【0037】
(10)前記評価値算出手段は、各列の3次元形状データに対してガウシアンフィルタを用いて低周波成分を抽出し、抽出した各列の低周波成分を元の各列の3次元形状データから差し引くことで、低周波成分を除去することが好ましい。
【0038】
この構成によれば、3次元形状データからガウシアンフィルタを用いて低周波成分が抽出され、抽出された低周波成分を元の3次元形状データから差し引く処理が1列単位で行われ、3次元形状データから低周波成分が除去されているため、低周波成分を精度良く除去することができる。
【0039】
(11)前記判定手段は、前記評価値が閾値より大きければ不良品、閾値よりも小さければ良品と判定することが好ましい。
【0040】
この構成によれば、評価値を閾値と比較することで、良品か不良品かの判定が行われているため、良品判定処理を速やかに行うことができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、太陽電池ウエハの全面の三次元形状を正確、かつ、高速に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態による外観検査装置の全体構成図を示している。
【図2】図1に示す外観検査装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態による外観検査装置のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図4】探索処理の詳細を示すフローチャートである。
【図5】重心算出処理の詳細を示すフローチャートである。
【図6】図4のフローチャートの処理を時系列で示したタイミングチャートである。
【図7】探索処理と重心算出処理との処理の流れを概念的に示した図である。
【図8】光切断線画像の一例を示した図である。
【図9】iラインにおける最大輝度画素を中心としたときの輝度値の分布を示したグラフである。
【図10】高さデータを算出する処理の説明図である。
【図11】光源とカメラとの設置状態を模式的に示した図である。
【図12】形状算出部により算出された断面形状データを示したグラフである。
【図13】形状算出部により算出されたウエハのある部分領域における3次元形状データを擬似的又は模式的に示した図である。
【図14】全面3次元形状データ生成処理を示すフローチャートである。
【図15】重み付け加算する処理を説明する図である。
【図16】評価処理を示すフローチャートである。
【図17】低周波成分が除去された断面形状データを示している。
【図18】低周波成分が除去された3次元形状データを擬似的又は模式的に示した図である。
【図19】光源及びカメラを1台とした場合の外観検査装置の全体構成図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の一実施の形態における外観検査装置について説明する。図1は、本発明の実施の形態による外観検査装置の全体構成図を示している。図1に示すように、本外観検査装置は、照射部10、撮像部20、制御部30、及び搬送部40を備えている。図1において、Y方向は搬送部40による太陽電池ウエハ50の搬送方向を示している。また、X方向はY方向と直交し、かつ水平面と平行な方向を示している。Z方向は、X方向とY方向とのそれぞれに直交する高さ方向を示している。以下、太陽電池ウエハ50をウエハ50と記述する。
【0044】
照射部10は、例えば3つの光源11〜13により構成されている。光源11は、例えばカメラ21が光切断線画像を撮像する部分領域内に向けて、扇状に拡がるように光を照射する。また、光源12は、例えばカメラ22が光切断線画像を撮像する部分領域内に向けて、扇状に拡がるように光を照射する。また、光源13は、例えばカメラ23が光切断線画像を撮像する部分領域内に向けて、扇状に拡がるように光を照射する。
【0045】
そして、光源11〜13のそれぞれが照射する光と、搬送部40により搬送されるウエハ50との交線が、光切断線CL1,CL2,CL3となる。本実施の形態では、光切断線CL1,CL3は、例えばY方向の座標が所定の位置Y1に位置し、長手方向がX方向とほぼ平行になるようにされている。また、光切断線CL2は、例えばY方向の座標が位置Y1より上流側の位置Y2に位置し、長手方向がX方向とほぼ平行になるように設定されている。つまり、光切断線CL1,CL2,CL3によってウエハ50の幅方向(X方向)の全域に光切断線が照射されるため、ウエハ50の全面の3次元形状データを得ることができる。
【0046】
このような光切断線CL1〜CL3の設定は、光源11〜13の設置位置や射出する光の方向を調節することで容易に実現することができる。なお、光切断線CL1,CL2,CL3を特に区別しない場合は、光切断線CLと記述する。
【0047】
光源11〜13は、それぞれ、円筒状の筐体を備え、筐体の内部には、例えば半導体レーザと、光学系とが設けられている。光学系は、半導体レーザの射出側に設けられ、半導体レーザから射出されるレーザ光を扇状に広げて射出させる。
【0048】
また、光源11〜13は、それぞれ、ウエハ50を斜め方向から照射するように、ほぼL字状の支持部材15を介して台14の下面に取り付けられている。
【0049】
撮像部20は、例えば3つのカメラ21〜23により構成されている。カメラ21〜23は、X方向に向けて例えばこの順で配置され、ウエハ50を上側から撮像するように配置されている。ここで、カメラ21〜23は、それぞれ、受光面がz方向の同一位置になるように台25の下面に取り付けられている。カメラ21〜23のx方向、及びy方向の画角は同じであり、受光面のz方向の位置も同じであるため、それぞれの撮像領域である部分領域の縦及び横の幅は同一となる。また、カメラ21〜23が、それぞれ、撮像する光切断線を含む画像を光切断線画像と記述する。また、カメラ21〜23の受光面は矩形状であり、受光面の一方の辺はY方向と平行であり、他方の辺はX方向と平行である。
【0050】
ここで、カメラ21〜23は、所定のフレームレート(例えば250fps)で、画像を撮像することができるCMOSカメラにより構成され、撮像した光切断線画像のアナログの画像データをデジタルの画像データに変換し、所定のフレームレートで制御部30に出力する。なお、カメラ21〜23の撮像タイミングは、例えば同一タイミングとなるように制御部30により同期制御が図られているものとする。
【0051】
なお、本実施の形態においては、第1形状算出部24以外のカメラ21〜23が撮像手段の一例に相当している。
【0052】
制御部30は、例えば通常のコンピュータにより構成され、光源11〜13及びカメラ21〜23のそれぞれとケーブルを介して接続され、本外観検査装置の全体制御を司る。
【0053】
搬送部40は、例えばウエハ50を搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトをX方向に向けて駆動させるモータとを備えている。ここで、搬送ベルトとしては、例えば2個のローラによって張架された無端ベルトが採用されている。2個ローラのうち一方のローラは駆動ローラであり、他方のローラは従動ローラである。そして、モータは駆動ローラを回動させることで、搬送ベルトを図1に示す時計回りの方向に回転させ、ウエハ50をY方向に一定の搬送速度で搬送させる。
【0054】
ここで、搬送速度としては、光切断線CLのY方向の幅をαとすると、カメラ21〜23の周期が1/250=0.004sであり、α/0.004に設定すると、ウエハ50を隙間無く走査することができるため、例えばα/0.004に設定すればよい。なお、ウエハ50は、ソーマークの方向が搬送方向となるように搬送部40に載置されるものとする。したがって、ウエハ50は、ソーマークの方向に沿って搬送され、ソーマークの方向とほぼ直交する方向に光切断線が照射されることになる。
【0055】
図2は、図1に示す外観検査装置の電気的な構成を示すブロック図である。カメラ21〜23は、それぞれ、第1形状算出部24(形状算出手段の一例)を備えている。また、制御部30は、搬送制御部31、照射制御部32、撮像制御部33、第2形状算出部34(形状算出手段の一例)、評価値算出部35、及び判定部36を備えている。なお、搬送制御部31〜判定部36は、例えばCPUがコンピュータを制御部30として機能させるための制御プログラムを実行することで実現される。
【0056】
搬送制御部31は、例えば、操作部60によりオペレータから検査開始の指示が受け付けられると、搬送部40を構成するモータに駆動信号を出力し、搬送部40にウエハ50を一定の搬送速度で搬送させる。
【0057】
照射制御部32は、例えば、操作部60によりオペレータから検査開始の指示が受け付けられると、照射部10を構成する光源11〜13を点灯させる。
【0058】
撮像制御部33は、操作部60によりオペレータから検査開始の指示が受け付けられると、撮像部20に撮像開始のコマンドを出力し、撮像部20に光切断線画像の撮像を開始させる。
【0059】
ここで、第1形状算出部24及び第2形状算出部34により形状算出手段が構成される。形状算出手段は、撮像部20による光切断線画像の連続撮像処理と並列して、ウエハ50の3次元形状データの算出処理を実行する。詳細には、形状算出手段は、撮像20による現フレームの光切断線画像の撮像期間において、現フレームよりも前に撮像されたフレームに対して、光切断線の照射位置に対応する1列分のウエハ50の高さデータを算出するための処理を実行する。
【0060】
第1形状算出部24は、カメラ21〜23により撮像された各光切断線画像において、搬送方向と平行に複数のラインを設定し、各ラインの最大輝度画素を探索する探索処理と、探索処理により探索された各ラインの最大輝度画素を基に、各ラインの最大輝度の重心座標をサブピクセル単位で算出する重心算出処理とを実行する。
【0061】
ここで、第1形状算出部24は、カメラ21〜23による現フレームの光切断線画像の撮像期間において、現フレームより1つ前のフレームの光切断線画像に対する探索処理を実行すると同時に、現フレームより2つ前のフレームの光切断線画像に対する重心算出処理を実行する。
【0062】
また、第1形状算出部24は、カメラ21〜23に対応する各部分領域における探索処理と重心算出処理とを個別に実行する。
【0063】
第2形状算出部34は、第1形状算出部24により算出された各ラインの重心座標と、カメラ21〜23及び光源11〜13の仰角とを基に、光切断線の照射位置に対応する1列分の前記太陽電池ウエハの高さデータを算出する処理を繰り返し実行することでウエハ50の全面の3次元形状データを算出する。
【0064】
また、第2形状算出部34は、カメラ21〜23に対応する各部分領域の3次元形状データを個別に算出し、部分領域のうち隣接する部分領域と重複する領域については、一方の部分領域の3次元形状データと他方の部分領域の3次元形状データとを重ね合わせることで、ウエハ50全面の3次元形状データを算出する。
【0065】
ここで、第2形状算出部34は、各部分領域の3次元形状データを、最小二乗法を用いて平面補正し、部分領域のうち隣接する部分領域と重複する領域については、一方の部分領域の平面補正後の3次元形状データと他方の部分領域の平面補正後の3次元形状データとを重み付け加算することで、ウエハ50全面の3次元形状データを算出する。
【0066】
評価値算出部35は、第2形状算出部34により算出された3次元形状データからウエハ50の粗さ示す評価値を算出する。ここで、評価値算出部35は、形状算出部34により算出された3次元形状データから低周波成分を除去する処理を実行し、除去後の3次元形状データから評価値を算出する。
【0067】
具体的には、評価値算出部35は、各列の3次元形状データに対してガウシアンフィルタを用いて低周波成分を抽出し、抽出した各列の低周波成分を元の各列の3次元形状データから差し引くことで、低周波成分を除去する。
【0068】
判定部36は、評価値算出部35により算出された評価値に基づいてウエハ50の良否を判定する。ここで、判定部36は、評価値が所定の閾値より大きければウエハ50は不良品、閾値よりも小さければウエハ50は良品と判定する。
【0069】
操作部60は、例えばキーボート、及びマウスにより構成され、オペレータから入力される種々の指令を受け付ける。表示部70は、例えば、液晶パネルから構成され、種々の操作画像や、第2形状算出部34が算出した3次元形状データや、判定部36の判定結果を示す画像等を表示する。
【0070】
次に、本外観検査装置の処理の詳細について、フローチャートを用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態による外観検査装置のメインルーチンを示すフローチャートである。なお、以下の処理は、カメラ21〜23のそれぞれにおいて撮像された光切断線画像の画像データに対して個別に実行される。また、図3において、カメラ21〜23は、それぞれX枚のフレームの光切断線画像を撮像するものとする。まず、搬送制御部31により搬送部40が駆動され、ウエハ50の搬送が開始される(ステップS1)。
【0071】
次に、カメラ21〜23は、ウエハ50を撮像し、1フレーム目の光切断線画像の画像データを取得する(ステップS2(1))。
【0072】
図8は、光切断線画像の一例を示した図である。なお、図8に示す光切断線画像は、X方向(垂直方向)の画素数がM個、Y方向(搬送方向)の画素数N個、つまり、M行×N列の画像データであるものとする。また、各画素の画素値は、例えば0〜255の256階調で表される。以下、画素値のことを輝度値と記述する。
【0073】
図8に示すようにX方向に沿って線状の光切断線CLが現れていることが分かる。図3に戻り、ステップS2(2)において、カメラ21〜23は、ウエハ50を撮像し、2フレーム目の光切断線画像の画像データを取得する。これと同時に、第1形状算出部24は、1フレーム目の光切断線画像の画像データに対して探索処理を実行する。
【0074】
ステップS2(3)において、カメラ21〜23は、ウエハ50を撮像し、3フレーム目の光切断線画像の画像データを取得する。これと同時に、第1形状算出部24は、2フレーム目の光切断線画像の画像データに対して、探索処理を実行し、光切断線画像の各ラインの最大輝度画素を探索する。これと同時に、第1形状算出部24は、1フレーム目の光切断線画像に対して、重心算出処理を実行し、各ラインの最大輝度の重心座標をサブピクセル単位で算出する。
【0075】
ステップS2(3)が終了した時点で、1フレーム目に現れた光切断線に対応する1列目の重心座標が得られる。
【0076】
以後、ステップS2(4)〜S2(X)まで、ステップS2(3)と同様の処理が繰り返し実行される。ステップS2(X)が終了した時点で、1列目〜X−2列目の重心座標が得られる。
【0077】
ステップS2(X+1)においては、カメラ21〜23による撮像が終了されているため、探索処理及び重心処理のみが実行され、X−1列目の重心座標が得られる。
【0078】
ステップS2(X+2)においては、探索処理も終了されているため、重心算出処理のみが実行され、X列目の重心座標が得られる。
【0079】
以上のパイプライン処理より、カメラ21〜23が1フレームの光切断線画像を撮像する期間が経過する度に、1列分の重心座標が得られる。
【0080】
図4は、探索処理の詳細を示すフローチャートである。まず、第1形状算出部24は、カメラ21〜23が現在撮像している現フレームの1つ前のフレームの光切断線画像を処理対象の光切断線画像として設定する(ステップS211)。
【0081】
次に、第1形状算出部24は、光切断線画像上に設定する各ラインのライン番号を示すための変数iに0を代入し、iを初期化する(ステップS212)。この場合、図8に示すように、光切断線画像上に、Y方向に沿って1本のラインが設定されていることが分かる。なお、i=0が図8に示す光切断線画像の第1行目を表し、i=1が図8に示す光切断線画像の第2行目を表すというように、1本のラインは光切断線画像の1行に対応し、変数iは、光切断線画像の各行と対応付けられている。
【0082】
次に、第1形状算出部24は、iライン目において、輝度が最大となる画素である輝度最大画素を探索する(ステップS213)。この場合、第1形状算出部24は、図8に示すiライン目において、例えば左端の画素から右端の画素を順次に注目画素として設定していくことで輝度最大画素を探索していく。具体的には、まず、左端の画素を注目画素として設定し、その輝度値及び座標を図略のバッファに格納する。ここで、座標としては、左端の画素から何番目の画素であるかを示す整数値を採用することができる。
【0083】
次に、右隣の画素を注目画素として設定し、注目画素の輝度値の方がバッファに格納した輝度値以上の場合は、バッファを注目画素の輝度値及び座標で更新する。一方、注目画素の輝度値の方がバッファに格納した輝度値未満の場合は、バッファに格納した輝度値及び座標を更新しない。このような処理を繰り返し行い、最終的にバッファに格納されている座標を最大輝度画素の座標Xpとして決定し、iライン目の最大輝度画素が探索される。
【0084】
なお、求められたiライン目の最大輝度画素の座標Xpは変数iと対応付けられて図略のバッファに格納される。
【0085】
次に、第1形状算出部24は、全ラインについて、最大輝度画素の座標Xpを求める処理が終了した場合(ステップS214でYES)、処理をリターンさせ、全ラインについて、最大輝度画素の座標Xpを求める処理が終了していない場合(ステップS214でNO)、iを1インクリメントさせ(ステップS215)、処理をステップS213に戻す。
【0086】
つまり、第1形状算出部24は、ステップS213〜S215の処理を繰り返すことで、図8に示す光切断線画像の全ラインの最大輝度画素の座標Xpを求めるのである。
【0087】
図5は、重心算出処理の詳細を示すフローチャートである。まず、第1形状算出部24は、カメラ21〜23が現在撮像している現フレームの2つ前のフレームの光切断線画像を処理対象の光切断線画像として設定する(ステップS221)。
【0088】
次に、第1形状算出部24は、探索処理と同様にして変数iに0を代入し、iを初期化する(ステップS222)。次に、第1形状算出部24は、iライン目において探索した最大輝度画素を中心として、左右にn個の周辺画素を抽出し、最大輝度画素と2n個の周辺画素とを用いて、iライン目の最大輝度の重心座標Xsubを求める(ステップS223)。
【0089】
図9は、iライン目における最大輝度画素を中心としたときの輝度値の分布を示したグラフである。図9では、座標Xpが最大輝度画素の座標であり、右に8個、左に8個の合計17個の画素の輝度値の分布が示されている。
【0090】
そして、第1形状算出部24は、例えば下記の式を用いて、最大輝度の重心座標を求める。
【0091】
【数1】
【0092】
但し、Xsubは最大輝度の重心座標を示し、Xjはiライン目における第j番目の画素の座標を示し、KjはXjの輝度値を示し、Xpは最大輝度画素の座標を示し、Kpは最大輝度画素の輝度値を示し、nは周辺画素を特定するためのインデックスである。
【0093】
これにより、iライン目において、最大輝度の重心座標Xsubが1画素以下の小数点つき値、つまりサブピクセル単位で求まることになる。なお、第1形状算出部24は、最大輝度の重心座標Xsubを小数点の何桁目までを求めるかを予め定めておき、最大輝度の重心座標Xsubがその桁数を超えると、四捨五入、切り捨て、又は切り上げる等の処理を行えばよい。
【0094】
図9の例では、実線で示すグラフのピークのXの値が最大位輝度の重心座標Xsubとなる。なお、図9の例では、周辺画素の個数をn=8としたが、これは一例であり、1以上であれば計算量が膨大とならない範囲で適宜、別の値を採用してもよい。
【0095】
図5に戻り、第1形状算出部24は、全ラインについて、最大輝度の重心座標Xsubを求める処理が終了した場合(ステップS224でYES)、処理をリターンさせ、全ラインについて、重心座標Xsubを求める処理が終了していない場合(ステップS224でNO)、iを1インクリメントさせ(ステップS225)、処理をステップS223に戻す。
【0096】
つまり、第1形状算出部24は、ステップS223〜S225の処理を繰り返すことで、図8に示す光切断線画像の全ラインの最大輝度の重心座標Xsubを求めるのである。
【0097】
なお、全ラインの最大輝度の重心座標Xsubは、光切断線画像のフレーム番号と、変数iと対応付けられて図略のバッファに格納される。
【0098】
図6は、図3のフローチャートの処理を時系列で示したタイミングチャートである。図6に示す期間T1〜T(X+1)は、それぞれ、カメラ21〜33が1フレームの光切断線画像を撮像するために要する時間、すなわち、フレーム周期を表している。
【0099】
期間T1においては、図3に示すステップS2(1)が実行され、1フレーム目の光切断線画像が撮像されている。期間T2においては、図3に示すステップS2(2)が実行され、2枚目のフレームの光切断線画像の撮像と、1フレーム目の光切断線画像の探索処理とが同時に行われている。
【0100】
期間T3においては、図3に示すステップS2(3)が実行され、3フレーム目の光切断線画像の撮像と、2フレーム目の光切断線画像の探索処理と、1フレーム目の光切断線画像の重心算出処理とが同時に行われている。
【0101】
以後、期間T(X)まで、現フレームの光切断線画像の撮像と、1つ前のフレームの光切断線画像の探索処理と、2つ前のフレームの光切断線画像の重心算出処理とが同時に行われ、1期間が経過する毎に、1列分の最大輝度の重心座標Xsubが算出される。
【0102】
図7は、探索処理と重心算出処理との処理の流れを概念的に示した図である。図7に示す縦軸は時間軸を示し、カメラ21〜23のフレーム周期毎に目盛りが刻まれている。なお、上述したように、カメラ21〜23のフレームレートは250fpsであるため、フレーム周期は4msecとなる。なお、図7では、1フレームの光切断線画像に設定されるライン数はi=0〜479の480本とされている。
【0103】
期間T(n)において、ウエハ50が撮像され、nフレーム目の光切断線画像が取得されている。次に、期間T(n+1)において、左側に向けて停止することなく一定速度で搬送されているウエハ50が撮像され、n+1フレーム目の光切断線画像が取得されている。次に、期間T(n+2)において、左側に向けて停止することなく一定速度で搬送されているウエハ50が撮像され、n+2フレーム目の光切断線画像が取得されている。
【0104】
そして、期間T(n)において、n−1フレーム目の光切断線画像に対し、i=0〜479本のラインが設定され、各ラインの最大輝度画素が探索されると同時に、n−2フレーム目の光切断線画像に対し、i=0〜279本のラインが設定され、各ラインの最大輝度の重心座標Xsubが算出されている。
【0105】
また、期間T(n+1)、T(n+2)においても、期間T(n)と同様の処理が実行される。よって、期間T(n)が経過する毎に、i=0〜479の最大輝度の重心座標Xsubが得られる。
【0106】
図3に戻り、ステップS3において、第2形状算出部34は、第1形状算出部24により算出された1フレームの光切断線画像について算出された1列分の最大輝度の重心座標Xsubのそれぞれを下記の式に代入し、高さデータを算出し、算出した高さデータを変数iの順番で配列することで、断面形状データを算出する。
【0107】
h(μm)=R・Xsub・cosθ/sin(θ+φ)
但し、hは高さデータを示し、Rは視野分解能を示し、θは光源11〜13の仰角を示し、φはカメラの仰角を示す。
【0108】
図10は、高さデータを算出する処理の説明図である。図11は、光源11〜13とカメラ21〜23との設置状態を模式的に示した図である。図10に示す四角形は光切断線画像を示し、四角形内に示す太線は全ラインの最大輝度の重心座標Xsubにより描かれる光切断線CL’を示している。
【0109】
図11に示すように、光源11〜13のそれぞれの仰角はZ方向を基準としてθに設定され、カメラ21〜23のそれぞれの仰角はZ方向を基準としてφに設定されている。そして、光源11〜13から照射された光がカメラ21〜23に入射する位置は、ウエハ50の高さに応じて図10に示すY方向に前後することになる。よって、最大輝度の重心座標Xsubを上記の式に代入することで、ウエハ50の各位置における高さデータを求めることができる。
【0110】
なお、図10において、光切断線画像の縦方向の長さをML(μm)、横方向の長さをNL(μm)とし、縦方向のピクセル数をM、横方向のピクセル数をNとすると、視野分解能Rは、R=NL/Nとなる。
【0111】
そして、第2形状算出部34は、光切断線CL’上の各Xsubについて求めたM個の高さデータhを1列に配列する。これにより、ウエハ50の断面形状データが得られる。
【0112】
なお、図11において、θ+φは90度となることが好ましい。また、θは例えば45度〜82度、好ましくは60度〜82度である。また、φは例えば45度〜8度、好ましくは、30度〜8度である。これにより、光源11〜13はウエハ50を斜め方向から照射し、カメラ21〜23はウエハ50を上方から撮像することが可能となり、高分解能の高さデータを得ることが可能となる。
【0113】
図12は、第2形状算出部34により算出された断面形状データを示したグラフであり、縦軸は高さをμm単位で示し、横軸は光切断線方向、つまり、図10に示す縦方向をmm単位で示している。図12に示すように、ウエハ50の断面形状データの微妙な凹凸が正確に算出されていることが分かる。
【0114】
図3に戻り、ステップS4において、第2形状算出部34は、求めた断面形状データをフレーム番号順に配列することで、部分領域の全面の3次元形状データを算出する。
【0115】
図3の例では光切断線画像のフレーム数はX枚であるため、断面形状データがX列で配列された部分領域の3次元形状データが得られる。また、カメラの台数は3台であるため、3つの部分領域に対する3次元形状データが得られる。
【0116】
図13は、第2形状算出部34により算出されたウエハ50のある部分領域における3次元形状データを擬似的又は模式的に示した図である。図13に示すように、図12に示す断面形状データを配列していくことで、ウエハ50の部分領域の3次元形状が再現されている。また、図13に示すように、Y方向に沿って複数の溝が現れており、ソーマークがリアルに再現されていることが分かる。
【0117】
次に、図3に戻り、第2形状算出部34は、部分領域毎に得られた3次元形状データを繋げ、ウエハ50全面の3次元形状データを求める全面3次元形状データ生成処理を実行する(ステップS5)。図14は、全面3次元形状データ生成処理を示すフローチャートである。
【0118】
まず、第2形状算出部34は、カメラ21〜23を示す変数kに1を代入し、kを初期化する(ステップS31)。本実施の形態では、カメラは3台なので、kはk=1〜3のいずれかの整数値をとり、k=1〜3はそれぞれカメラ21〜23に対応している。
【0119】
次に、第2形状算出部34は、k台目、k+1台目のカメラの部分領域に対応する3次元形状データを取得する(ステップS32)。次に、第2形状算出部34は、各部分領域に対応する3次元形状データを最小二乗法を用いて個別に平面補正する(ステップS33)。
【0120】
具体的には、第2形状算出部34は、部分領域の平面の式をz=ax+by+cとおき、下記のEを最小とするようなa、b、cを求め、得られたa、b、cを上記平面の式に代入することで部分領域の平面の式を求める。
【0121】
E=Σ(z−(ax+by+c))2
∂E/∂a=0、∂E/∂b=0、∂E/∂c=0
但し、x、y、zは、図1に示すX,Y,Z方向に対応している。
【0122】
そして、第2形状算出部34は、k台目のカメラの部分領域の3次元形状データを(x’、y’、z’)で表すと、z’−zにより、部分領域の3次元形状データを平面補正する。
【0123】
なお、z’−zのzはz=ax’+by’+cにより得られる値である。
【0124】
これにより、カメラにおける受光面の凹凸に起因する3次元形状データの誤差がなくなるように部分領域の3次元形状データを求めることができる。
【0125】
次に、第2形状算出部34は、k台目のカメラの部分領域とk+1台目のカメラの部分領域とが重なっている領域について、両部分領域の3次元データを重み付け加算することで補正する(ステップS34)。
【0126】
図15は、重み付け加算する処理を説明する図である。図15示すように、k台目のカメラの部分領域DkはX座標の範囲がp〜rであり、k+1台目のカメラの部分領域Dk+1はX座標の範囲がq〜sであり、p<q<r<sの関係を有している。そのため、部分領域Dkと部分領域Dk+1とはxがq≦x≦rの範囲において重なっている。なお、p〜sの値は、図1に示すように、カメラ21〜23の仰角及び画角等から予め求めることができ、その値を採用すればよい。
【0127】
そこで、第2形状算出部34は、重なっている領域については、下記の式を用いて、部分領域Dkと部分領域Dk+1との平面補正後の3次元形状データを重み付け加算する。
【0128】
fnew(x,y)=((fk(x,y)・(r−x)+fk+1(x,y)・(x−q))/(r−q) (q≦x≦r)
但し、fnew(x,y)は、重み付け加算された高さデータを示し、fk(x,y)は部分領域Dkの平面補正後の高さデータを示し、fk+1(x,y)は部分領域Dk+1の平面補正後の高さデータを示している。
【0129】
つまり、xがqに近づくにつれて、部分領域Dk+1よりも部分領域Dkの高さデータの成分が増大するように重み付け加算され、xがrに近づくにつれて、部分領域Dkよりも部分領域Dk+1の高さデータの成分が増大するように、重み付け加算される。
【0130】
次に、第2形状算出部34は、全てのカメラの部分領域の3次元形状データについての処理が終了した場合(ステップS35でYES)、処理をリターンし、全てのカメラの部分領域の3次元形状データについての処理が終了していない場合(ステップS35でNO)、処理をステップS36に進める。
【0131】
ステップS36において、第2形状算出部34は、部分領域Dkと部分領域Dk+1との3次元形状データとを繋げる(ステップS36)。この場合、第2形状算出部34は、部分領域Dkのうち、部分領域Dk+1と重なっていない領域(p≦x<q)については、下記の式に示すように部分領域Dkの平面補正後の3次元形状データをそのまま採用し、部分領域Dk+1のうち、部分領域Dkと重なっていない領域(r<x≦s)については、下記の式に示すように、部分領域Dk+1の平面補正後の3次元形状データをそのまま採用し、部分領域Dkと部分領域Dk+1とが重なっている領域(q≦x≦r)については、上記の重み付け加算した3次元形状データを採用する。
【0132】
fnew(x,y)=fk(x,y) (p≦x<q)
fnew(x,y)=fk+1(x,y) (r<x≦s)
次に、第2形状算出部34は、kを1インクリメントさせ(ステップS37)、処理をステップS32に戻す。以上により、ウエハ50全面の3次元形状データが得られる。
【0133】
図3に戻り、ステップS6において、評価値算出部35及び判定部36は、評価処理を実行する。図16は、評価処理を示すフローチャートである。まず、評価値算出部35は、ウエハ50全面の3次元形状データを取得する(ステップS41)。次に、評価値算出部35は、3次元形状データの列を指定するための変数yに0を代入し、yを初期化する(ステップS42)。
【0134】
次に、評価値算出部35は、y列目の断面形状データから低周波成分を除去する(ステップS43)。ここで、評価値算出部35は、まず、y列目の断面形状データを構成する各高さデータに対してガウシアンフィルタをかけ、低周波成分を抽出する。
【0135】
具体的には、評価値算出部35は、下記の式を用いて、低周波成分を抽出する。
【0136】
w(x)=∫−∞∞p(x’)・s(x−x’)dx’
但し、w(x)はy列目の断面形状データの低周波成分を示し、p(x)はy列目の断面形状データを示している。
【0137】
また、s(x)は下記の式で表される正規分布である。
【0138】
s(x)=(1/α・λc)・exp(−π(x/α・λc)2)
但し、α=√(ln2/π)=0.4679である。
【0139】
つまり、評価値算出部35は、y列目の断面形状データにおいて、1番目の高さデータから最終番目の高さデータまでを順次に注目高さデータとして設定し、各注目高さデータを中心として断面形状データp(x)にs(x)を乗じて積分することで、各注目高さデータの低周波成分を求める。
【0140】
そして、評価値算出部35は、各注目高さデータの低周波成分w(x)が得られると、r(x)=p(x)−w(x)により、断面形状データp(x)から低周波成分w(x)を除去する。これにより、断面形状データp(x)の高周波成分r(x)が得られる。
【0141】
図17は、低周波成分が除去された断面形状データを示している。図17に示すように、図12で現れていた大きなうねりが平坦化され、ある高さレベルを基準に断面形状データが変化していることが分かる。
【0142】
次に、評価値算出部35は、ウエハ50の全面の3次元形状データに対して低周波成分を除去する処理が終了した場合(ステップS44でYES)、処理をステップS46に進め、ウエハ50の全面の3次元形状データに対して低周波成分を除去する処理が終了していない場合(ステップS44でNO)、処理をステップS45に進める。
【0143】
ステップS45において、評価値算出部35は、yを1インクリメントして、処理をステップS43に戻す。つまり、ステップS43〜S45の処理が繰り返されることで、1列の3次元形状データから低周波成分が除去される処理が繰り返され、最終的にウエハ50の全面の3次元形状データから低周波成分が除去される。
【0144】
図18は、低周波成分が除去された3次元形状データを擬似的又は模式的に示した図である。図18に示すように、図13で現れていた大きなうねりが平坦化され、X−Y平面と平行な、ある高さレベルを基準に3次元形状データが変化していることが分かる。
【0145】
ステップS46において、評価値算出部35は、低周波成分が除去された高さデータの絶対値の総和を求め、その総和を全高さデータの個数で割ることで、ウエハ50の粗さを示す評価値を算出する。
【0146】
次に、判定部36は、評価値が閾値より大きい場合(ステップS47でYES)、ウエハ50は不良品であると判定し(ステップS48)、評価値が閾値以下の場合(ステップS47でNO)、ウエハ50は良品であると判定する(ステップS49)。以上により、本外観検査装置の処理が終了される。なお、閾値としては、ウエハ50が不良品であることを示す予め定められた値を採用すればよい。
【0147】
このように、本外観検査装置によれば、搬送部40により一定速度で搬送されるウエハ50は、搬送方向と交差する方向に光切断線が照射されることでソーマークと交差するように光切断線が照射されると共に、撮像部20によって一定周期で連続的に光切断線画像として撮像される。そのため、撮像部20は、前回の光切断線画像の撮像時に照射された光切断線のすぐ隣の位置に光切断線が照射されたタイミングで次の光切断線画像を撮像することができる。
【0148】
これにより、各光切断線画像から光切断法によって光切断線の照射位置におけるウエハ50の断面形状データが得られ、この断面形状データを配列することでウエハ50の全面の3次元形状データを得ることができる。
【0149】
また、ウエハ50は、複数のカメラ21〜23によって複数の部分領域に分けて撮像され、各部分領域の3次元形状データが個別に算出されている。そして、部分領域のうち隣接する部分と重複する領域については、一方の部分領域の3次元形状データと、他方の部分領域の3次元形状データとが重ね合わされることでウエハ50全面の3次元形状データが得られている。そのため、1台のカメラによってウエハ50を撮像する場合に比べて、高分解能の光切断線画像を得ることができる。その結果、高分解能の3次元形状データを算出することができる。
【0150】
そして、このようにして得られた高分解能のウエハ50の全面の3次元形状データからウエハ50の粗さを示す評価値が算出され、この評価値を用いてウエハ50の良否が判定されているため、ウエハ50が不良品であるか否かを正確に判定することができる。
【0151】
なお、上記実施の形態では、光源を3台設けたが本発明はこれに限定されず、光源を1台としてもよい。また、照射部10を1つの光源と複数の射出部により構成し、光源からの光を射出部から射出させるようにしてもよい。この場合、照射部10から照射される光切断線は、ウエハ50の幅方向の全域に照射されている必要がある。また、カメラの台数を3台としたが、本発明はこれに限定されず、2台又は4台以上の複数のカメラにより構成してもよい。また、各カメラと光源又は照射部と1対1に対応付け、各カメラと各光源又は照射部の配置関係を全て一定にすることにより、各カメラにより撮像される光切断線画像の分解能を全て同一にすることができる。
【0152】
図19は、光源及びカメラを1台とした場合の外観検査装置の全体構成図を示している。この態様は例えば、サイズの小さなウエハ50を検査対象とする場合に適している。また、この態様によれば、部分領域は存在しなくなるため、部分領域のうち隣接する部分領域と重なる領域において行われていた上記の重み付け加算する処理が不要となり、処理の簡便化を図ることができる。
【0153】
なお、上記説明では、第1形状算出部24と第2形状算出部34とを別に設けたが、同一構成としてもよい。この場合、各カメラ21〜23に設けてもよいし、制御部30に設けてもよい。また、上記説明では、撮像処理と探索処理と重心算出処理とを3段のパイプライン処理で並列処理させたが、この並列処理に1列分の断面形状データを求める処理を含めてもよい。この場合、撮像処理と探索処理と重心算出処理と1列分の断面形状データを求める処理とを4段のパイプライン処理で実現すればよい。
【符号の説明】
【0154】
10 照射部
20 撮像部
21〜23 カメラ
24 第1形状算出部(形状算出手段)
30 制御部
31 搬送制御部
32 照射制御部
33 撮像制御部
34 第2形状算出部(形状算出手段)
35 評価値算出部(評価値算出手段)
36 判定部(判定手段)
40 搬送部
50 ウエハ
CL,CL1,CL2,CL3 光切断線
Dk,Dk+1 部分領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池ウエハの外観を検査する外観検査装置であって、
前記太陽電池ウエハに形成されたソーマークの長手方向に沿って、前記太陽電池ウエハを一定速度で搬送させる搬送部と、
前記搬送部により搬送される太陽電池ウエハに対し、搬送方向と交差する方向に光切断線を照射する照射部と、
前記照射部により照射された光切断線を含む光切断線画像を一定周期で連続的に撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された複数枚の光切断線画像の画像データを基に、前記太陽電池ウエハの3次元形状データを算出する形状算出手段とを備え、
前記形状算出手段は、前記撮像手段による前記光切断線画像の連続撮像処理と並列して、前記光太陽電池ウエハの3次元形状データの算出処理を実行する外観検査装置。
【請求項2】
前記形状算出手段は、前記撮像手段による現フレームの光切断線画像の撮像期間において、前記現フレームよりも前に撮像されたフレームに対して、前記光切断線の照射位置に対応する前記太陽電池ウエハの高さデータを算出するための処理を実行する請求項1記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記形状算出手段は、前記撮像手段により撮像された各光切断線画像において、前記搬送方向と平行に複数のラインを設定し、各ラインの最大輝度画素を探索する探索処理と、前記探索処理により探索された各ラインの最大輝度画素を基に、各ラインの最大輝度の重心座標をサブピクセル単位で算出する重心算出処理とを実行する第1形状算出部を備え、
前記第1形状算出部は、前記撮像手段による現フレームの光切断線画像の撮像期間において、前記現フレームより1つ前のフレームの光切断線画像に対する前記探索処理を実行すると同時に、前記現フレームより2つ前のフレームの光切断線画像に対する前記重心算出処理を実行する請求項1又は2記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記形状算出手段は、前記第1形状算出部により算出された各ラインの重心座標と、前記撮像手段及び照射部の仰角とを基に、前記光切断線の照射位置に対応する1列分の前記太陽電池ウエハの高さデータを算出する処理を繰り返し実行することで前記太陽電池ウエハの3次元形状データを算出する第2形状算出部を備える請求項3記載の外観検査装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、前記太陽電池ウエハを上方から撮像し、
前記照射部は、前記太陽電池ウエハを斜め方向から照射する請求項1〜4のいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項6】
前記撮像手段は、前記太陽電池ウエハを複数の部分領域に分けて撮像するべく複数存在し、
前記形状算出手段は、各部分領域の3次元形状データを個別に算出し、部分領域のうち隣接する部分領域と重複する領域については、一方の部分領域の3次元形状データと他方の部分領域の3次元形状データとを重ね合わせることで、前記太陽電池ウエハの3次元形状データを算出する請求項1〜5のいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項7】
前記形状算出手段は、各部分領域の3次元形状データを最小二乗法を用いて平面補正し、前記重複する領域については、一方の部分領域の平面補正後の3次元形状データと他方の部分領域の平面補正後の3次元形状データとを重み付け加算する請求項6記載の外観検査装置。
【請求項8】
前記形状算出手段により算出された3次元形状データから前記太陽電池ウエハの粗さ示す評価値を算出する評価値算出手段と、
前記評価値に基づいて前記太陽電池ウエハの良否を判定する判定手段とを更に備える請求項1〜7のいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項9】
前記評価値算出手段は、前記3次元形状データから低周波成分を除去する処理を実行し、除去後の3次元形状データから前記評価値を算出する請求項8記載の外観検査装置。
【請求項10】
前記評価値算出手段は、各列の3次元形状データに対してガウシアンフィルタを用いて低周波成分を抽出し、抽出した各列の低周波成分を元の各列の3次元形状データから差し引くことで、低周波成分を除去する請求項9記載の外観検査装置。
【請求項11】
前記判定手段は、前記評価値が閾値より大きければ不良品、閾値よりも小さければ良品と判定する請求項8〜10のいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項1】
太陽電池ウエハの外観を検査する外観検査装置であって、
前記太陽電池ウエハに形成されたソーマークの長手方向に沿って、前記太陽電池ウエハを一定速度で搬送させる搬送部と、
前記搬送部により搬送される太陽電池ウエハに対し、搬送方向と交差する方向に光切断線を照射する照射部と、
前記照射部により照射された光切断線を含む光切断線画像を一定周期で連続的に撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された複数枚の光切断線画像の画像データを基に、前記太陽電池ウエハの3次元形状データを算出する形状算出手段とを備え、
前記形状算出手段は、前記撮像手段による前記光切断線画像の連続撮像処理と並列して、前記光太陽電池ウエハの3次元形状データの算出処理を実行する外観検査装置。
【請求項2】
前記形状算出手段は、前記撮像手段による現フレームの光切断線画像の撮像期間において、前記現フレームよりも前に撮像されたフレームに対して、前記光切断線の照射位置に対応する前記太陽電池ウエハの高さデータを算出するための処理を実行する請求項1記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記形状算出手段は、前記撮像手段により撮像された各光切断線画像において、前記搬送方向と平行に複数のラインを設定し、各ラインの最大輝度画素を探索する探索処理と、前記探索処理により探索された各ラインの最大輝度画素を基に、各ラインの最大輝度の重心座標をサブピクセル単位で算出する重心算出処理とを実行する第1形状算出部を備え、
前記第1形状算出部は、前記撮像手段による現フレームの光切断線画像の撮像期間において、前記現フレームより1つ前のフレームの光切断線画像に対する前記探索処理を実行すると同時に、前記現フレームより2つ前のフレームの光切断線画像に対する前記重心算出処理を実行する請求項1又は2記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記形状算出手段は、前記第1形状算出部により算出された各ラインの重心座標と、前記撮像手段及び照射部の仰角とを基に、前記光切断線の照射位置に対応する1列分の前記太陽電池ウエハの高さデータを算出する処理を繰り返し実行することで前記太陽電池ウエハの3次元形状データを算出する第2形状算出部を備える請求項3記載の外観検査装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、前記太陽電池ウエハを上方から撮像し、
前記照射部は、前記太陽電池ウエハを斜め方向から照射する請求項1〜4のいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項6】
前記撮像手段は、前記太陽電池ウエハを複数の部分領域に分けて撮像するべく複数存在し、
前記形状算出手段は、各部分領域の3次元形状データを個別に算出し、部分領域のうち隣接する部分領域と重複する領域については、一方の部分領域の3次元形状データと他方の部分領域の3次元形状データとを重ね合わせることで、前記太陽電池ウエハの3次元形状データを算出する請求項1〜5のいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項7】
前記形状算出手段は、各部分領域の3次元形状データを最小二乗法を用いて平面補正し、前記重複する領域については、一方の部分領域の平面補正後の3次元形状データと他方の部分領域の平面補正後の3次元形状データとを重み付け加算する請求項6記載の外観検査装置。
【請求項8】
前記形状算出手段により算出された3次元形状データから前記太陽電池ウエハの粗さ示す評価値を算出する評価値算出手段と、
前記評価値に基づいて前記太陽電池ウエハの良否を判定する判定手段とを更に備える請求項1〜7のいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項9】
前記評価値算出手段は、前記3次元形状データから低周波成分を除去する処理を実行し、除去後の3次元形状データから前記評価値を算出する請求項8記載の外観検査装置。
【請求項10】
前記評価値算出手段は、各列の3次元形状データに対してガウシアンフィルタを用いて低周波成分を抽出し、抽出した各列の低周波成分を元の各列の3次元形状データから差し引くことで、低周波成分を除去する請求項9記載の外観検査装置。
【請求項11】
前記判定手段は、前記評価値が閾値より大きければ不良品、閾値よりも小さければ良品と判定する請求項8〜10のいずれかに記載の外観検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図13】
【図18】
【図2】
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【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図17】
【図19】
【図13】
【図18】
【公開番号】特開2011−163852(P2011−163852A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25288(P2010−25288)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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