説明

導電性ペースト及びこれを用いた多層基板

【課題】ホール充填用に適した粘度を有し、ポットライフの長い導電性ペーストであって、これを用いて多層基板を形成した際に、耐湿性、ヒートサイクル性、熱衝撃性が高く、良好な導電性が長期間維持される導電性ペースト、及びこれを用いた長期信頼性に優れた多層基板を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ当量が200〜600の範囲内であり、かつ加水分解性塩素濃度が200ppm未満であるエポキシ樹脂20重量部以上とこのエポキシ樹脂以外の樹脂80重量部未満とからなり、全加水分解性塩素濃度が1000ppm未満である樹脂成分100重量部に対し、(B)融点180℃以下の低融点金属少なくとも1種と融点800℃以上の高融点金属少なくとも1種とを含む、2種以上の金属からなる金属粉200〜1800重量部、(C)硬化剤3〜20重量部、及び(D)フラックス3〜15重量部を含有してなるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ペースト及びこれを用いた多層基板に関するものであり、主に基板のホール充填に用いられる導電性ペースト、及びこの導電性ペーストを用いた多層基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含む絶縁基板の表面に導体配線層を形成した、いわゆるプリント基板が回路基板や半導体素子を搭載したパッケージ等に適用されている。配線の多層化に伴い、異なる層間の導体配線層をバイアホール導体によって電気的に接続することが行われているが、このバイアホール導体は多層配線基板の絶縁基板の所定の箇所にドリルやレーザ等でバイアホールを開けた後、バイアホール内壁にメッキ等を施すのが一般的であった。ところが、上記のような方法では化学的なメッキ処理を施すのに用いられる薬品が高価であり、処理時間も長いなど生産性と経済性に難があり、また、廃液処理等の環境的な側面でも難がある。また、内壁にメッキを施したバイアホール導体は、多層構造における任意の層間に形成することが難しく、導体配線層の密度を向上できないという問題がある。
【0003】
このような問題に対して、銀、銅、その他の金属粉末と熱硬化性樹脂や活性剤とを混合した導電性ペーストを用い、バイアホール内に充填、積層して、導体配線層を多層化する方法が、例えば特開平7−176846号公報にて開示されている。
【0004】
しかしながら、特開平7−176846号公報にあるような導電性ペーストをバイアホール内に充填して多層化する方法では、安定した接続信頼性を得るために電極ランド面積を十分に確保し、ペーストと電極の接触面積を大きくする必要がある。その理由として、この種のペーストは金属粉同士及び金属粉と基板電極との接触のみにより導電性を発現させているためであり、基板としての接続信頼性を満足させるためには必然的にバイアホールの穴径や基板電極ランド径に制約が生じてしまう。ところが、軽薄短小化を目的とした高密基板では穴径が0.12φ以下、ランド径が0.2φ以下であることが要望されており、このような設計にはペースト含有金属と基板電極との接触のみでは対応できないという問題点がある。
【0005】
また、金属粉同士が互いに接触し、導電性を発現するペーストでは、多層基板用途で高信頼性を得るためには、ペースト充填後、プレス工程が必要であり、プレス圧のバラツキ、若しくは基材の選択により導電性が大きくばらついてしまうという不具合もあった。
【0006】
基板のホール充填等に用いられる導電性ペーストとしては、上記のように金属粉同士が互いに接触することで導電性が得られるタイプのもの以外に、導電性金属粉が高融点導電性金属粉に低融点金属粉をブレンドしたものか、もしくは低融点金属粉のみからなり、加熱により金属粉同士が繋がり(メタライズ化)、導電性を発現するタイプ(以下、これを「メタライズタイプ」という場合がある)のものがある。
【0007】
メタライズタイプのペーストでは、金属粉同士のみならず金属粉と基板電極との間でもメタライズ化が生じるため、上記したプレス工程なしでも良好な導電性及び高い信頼性が得られる。しかし、このタイプのペーストにはフラックスの添加が必要であり、フラックスがエポキシ樹脂の硬化促進剤として働き、ポットライフを短くさせるため、問題点が生じ易い。
【0008】
これを解決するために、樹脂成分としてアクリレート樹脂とエポキシ樹脂を併用し、かつ硬化剤としてフェノール系硬化剤を使用することが開示されている(国際公開第2003/105160号パンフレット)。このペーストにおいては、アクリレート樹脂は添加されたフェノール系硬化剤が重合禁止剤として働くために、常温ではほとんど硬化しない。しかしながら、このペーストはマザーボード用途については高い信頼性を得ることが可能であるが、パッケージ用途を想定した場合には、長期信頼性、特に耐湿性が十分とは言えなかった。その原因は、エポキシ樹脂にブレンドするアクリレート樹脂が分子骨格にエステル結合をもつため、湿度の影響を受けやすいことにあると思われる。
【0009】
また、別の解決方法としてエチレングリコール変性エポキシ樹脂を用いたメタライズタイプのペーストも開示されている(特開2006−12734号公報)。このペーストにおいてはアクリレート樹脂を用いずに、耐湿性、ポットライフ安定性を有することが特徴となっている。しかしながら、これらのペーストを高さ方向の線膨張係数が大きくなる多層基板(例えばFR4の6層板以上の多層基板)に適用するとヒートサイクル性や熱衝撃性が弱くなるという問題点がある。
【特許文献1】特開平7−176846号公報
【特許文献2】国際公開第2003/105160号パンフレット
【特許文献3】特開2006−12734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、ホール充填用に適した粘度を有し、ポットライフの長い導電性ペーストであって、これを用いて多層基板を形成した際に、耐湿性、ヒートサイクル性、熱衝撃性が高く、良好な導電性が長期間維持される導電性ペーストを提供することを目的とする。特に、6層以上の多層基板に適用した場合でもヒートサイクル性や熱衝撃性において問題を生じないことを課題とする。そしてこれを用いた長期信頼性に優れた多層基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の導電性ペーストは、上記の課題を解決するために、(A)エポキシ当量が200〜600の範囲内であり、かつ加水分解性塩素濃度が200ppm未満であるエポキシ樹脂20重量部以上とこのエポキシ樹脂以外の樹脂80重量部未満とからなり、全体の加水分解性塩素濃度が1000ppm未満である樹脂成分100重量部に対し、(B)融点180℃以下の低融点金属少なくとも1種と融点800℃以上の高融点金属少なくとも1種とを含む、2種以上の金属からなる金属粉200〜1800重量部、(C)硬化剤3〜20重量部、及び(D)フラックス3〜15重量部を含有してなるものとする。
【0012】
上記において、(B)成分の低融点金属としては、インジウム単独、又は錫、鉛、ビスマス及びインジウムからなる群から選択された1種又は2種以上の合金であり、高融点金属としては、銀、銅、銀コート銅粉からなる群から選択された1種又は2種以上の金属粉が好適に用いられる。
【0013】
特に低融点金属がスズ(Sn)とビスマス(Bi)の合金であり、その合金比率がSn:Bi=80:20〜42:58の範囲内であることが好ましい。
【0014】
本発明の多層基板は、複数の導電層と絶縁層とが交互に積層されてなる多層基板であって、前記導電層間の導通が絶縁層の厚み方向に設けられた貫通もしくは有底のバイアホールに充填された導電性ペーストによって得られる多層基板において、このホールに上記本発明の導電性ペーストが充填され、加熱されたことにより、導電性ペースト中に含有される金属粉が溶融して相互に一体化し、合金化したものとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記のように所定のエポキシ当量と加水分解性塩素濃度を有するエポキシ樹脂を所定量含み、全体の加水分解性塩素濃度も1000ppm未満である樹脂成分を用い、かつ金属粉、硬化剤、フラックスを所定量用いることにより、ホール充填用に適した粘度を有し、ポットライフの長い導電性ペーストが得られる。これを用いて得られる多層基板は、FR4の6層板以上のような多層基板であっても、耐湿性、ヒートサイクル性、熱衝撃性が高く、良好な導電性が長期間維持されるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の導電性ペーストにおける(A)樹脂成分は、エポキシ当量が200〜600の範囲内であり、かつ加水分解性塩素濃度が200ppm未満であるエポキシ樹脂20重量部以上とこのエポキシ樹脂以外の樹脂80重量部未満とからなり、全体の加水分解性塩素濃度が1000ppm未満である。
【0017】
上記エポキシ樹脂のエポキシ当量が200未満であるとエポキシ樹脂の硬化速度が早くなりすぎ、低融点金属が高融点金属と十分に合金化する前に樹脂が硬化するという不具合が生じるようになる。また、エポキシ当量が600を越えると、例えば160〜180℃で60分間程度という通常用いられる硬化条件では樹脂が硬化せず、より高い温度で硬化させることが必要となる。このエポキシ当量は300〜500の範囲内であることがより好ましい。
【0018】
また、上記エポキシ樹脂の加水分解性塩素濃度が200ppm以上である場合、又は全体の加水分解性塩素濃度が1000ppm以上である場合も、合金化前に樹脂が硬化し、高率での合金化が困難となり、かつ硬化後の劣化が大きくなる。すなわち、ペーストが含有している樹脂の加水分解性塩素量が高すぎると、ペーストが高温にさらされた場合、内在する加水分解性塩素が架橋したポリマー鎖を徐々に劣化させ、樹脂の硬化密度を低下させることから、ペーストとしての接着性と凝集性の両方を低下させる。この現象はペーストに応力が加わった場合は更に顕著に現れることになる。エポキシ樹脂の加水分解性塩素濃度は50ppm以下であることがより好ましく、全体の加水分解性塩素濃度は800ppm以下であることがより好ましい。
【0019】
さらに上記エポキシ樹脂の含有量が(A)樹脂成分中20重量%未満である場合も上記と同様の理由で本発明の目的とする導電性ペーストは得られ難い。当該エポキシ樹脂の含有量は30重量%以上であることがより好ましい。
【0020】
本発明で用いるエポキシ樹脂は、上記エポキシ当量及び加水分解性塩素濃度の要件を満たすものであればよく、構造等は特に限定されないが、具体例としては、エチレングリコール変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0021】
市販されているエポキシ樹脂の中にも上記エポキシ当量及び加水分解性塩素濃度の要件を満たすものがあり、適宜利用可能であるが、加水分解性塩素濃度がこれより高濃度のエポキシ樹脂の場合は蒸留等の精製処理を行うことにより所望の塩素濃度とすることができる。ただし、加水分解性塩素を完全に除去するのは実質的に不可能であり、濃度0の場合は含まない。
【0022】
上記エポキシ当量と加水分解性塩素濃度の要件を満たすエポキシ樹脂以外の樹脂成分の好ましい例としては、上記要件を満たさないエポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられ、これらを1種又は2種以上、樹脂成分中80重量%未満の割合で併用することができる。
【0023】
次に、(B)金属粉は、融点が180℃以下の低融点金属1種以上と融点が800℃以上の高融点金属1種以上とを含む2種以上の金属が何らかの形で含まれており、加熱によりメタライズ化が起こるものとする。上記2種以上の金属の存在形態は限定されないが、例えば、ある種の金属粉を他の種類の金属からなる金属粉と混合したもの、又はある種の金属粉を他の種類の金属でコートしたもの、あるいはこれらを混合したものが挙げられる。
【0024】
低融点金属及び高融点金属としては、単一の金属からなるもののほか、2種以上の金属の合金を使用することもできる。低融点金属の好ましい例としては、インジウム(融点:156℃)単独、又はスズ(融点:231℃)、鉛(融点:327℃)、ビスマス(融点:271℃)、及びインジウムのうちの1種又はこれらのうちの2種以上を合金にして融点180℃以下にしたものが挙げられる。また、高融点金属の好ましい例としては、銀(融点:961℃)、銅(融点:1083℃)、銀コート銅粉のうちの1種又は2種以上が挙げられる。
【0025】
金属粉は、その形状には制限がないが、樹枝状、球状、リン片状等の従来から用いられているものが使用できる。また、粒径も制限されないが、通常は平均粒径で1〜50μm程度である。
【0026】
前記低融点金属としてはスズが含まれていることが好ましく、中でもスズ(Sn)とビスマス(Bi)の合金が好ましく、その合金比率がSn:Bi=80:20〜42:58であることが特に好ましい。
【0027】
上記金属粉の配合量は、(A)樹脂成分100部に対して200〜1800部であり、より好ましくは1000〜1600部である。200部未満であると金属充填量が低すぎるため安定した導電性を得ることができない。また、1800部を超えると粘度が高くなり、印刷性が低下する。また、上記した低融点金属と高融点金属の配合比(重量比、以下同様)は、8:2〜2:8の範囲内であるのが好ましい。
【0028】
次に、(C)硬化剤は、所望の特性が得られるように適宜選択され、使用可能な例としてはイミダゾール系硬化剤、フェノールノボラック系硬化剤、ナフトール系硬化剤が挙げられるが、これらに分類されないものにも使用可能なものがある。硬化剤は2種以上を併用することもできる。
【0029】
イミダゾール系硬化剤とはイミダゾール及びその誘導体のうち硬化剤として使用可能なものであり、誘導体の例としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト等が挙げられる。
【0030】
フェノールノボラック系硬化剤とは、フェノールノボラック及びその誘導体のうち硬化剤として使用可能なものであり、ナフトール系硬化剤とは、ナフトール及びその誘導体のうち硬化剤として使用可能なものである。
【0031】
硬化剤の使用量は、樹脂100部に対して3〜20部が好ましい。硬化剤の量が3部より少ないと硬化不良となり、その結果、良好な導電性、物性が得られない。一方、20部を超えると、ポットライフが短くなったり、過剰の硬化剤により導電性や物性が阻害されるという問題が生じる可能性がある。
【0032】
さらに、(D)成分であるフラックスは、上記金属粉のメタライズ化を促進するものであり、例としては、塩化亜鉛、乳酸、クエン酸、オレイン酸、ステアリン酸、グルタミン酸、安息香酸、シュウ酸、グルタミン酸塩酸塩、アニリン塩酸塩、臭化セチルピリジン、尿素、ヒドロキシエチルラウリルアミン、ポリエチレングリコールラウリルアミン、オレイルプロピレンジアミン、トリエタノールアミン、グリセリン、ヒドラジン、ロジン等が挙げられる。これらの中では、室温付近の反応性が低く160℃付近に活性温度を有するため、ヒドロキシエチルラウリルアミンが好ましい。フラックスの使用量は、樹脂100部に対して3〜15部である。フラックスが3部より少ない場合は金属粉のメタライズ化が十分に進行せず、一方、15部より多い場合は、樹脂の硬化密度が下がり耐熱性が低下するおそれがある。
【0033】
本発明の導電性ペーストは、上記した各成分を所定量配合して十分混合することにより得られる。
【0034】
なお、本発明の導電性ペーストには、従来から同種の導電性ペーストに添加されることのあった添加剤を、本発明の目的から外れない範囲内で添加することもできる。その例としては、消泡剤、粘度調整剤、粘着剤等が挙げられる。
【0035】
上記により得られる本発明の導電性ペーストの硬化(加熱)条件としては、樹脂成分の硬化と金属粉のメタライズ化の双方に適した条件を選択するのが好ましく、具体的な条件は組成等により異なるが、通常は約160〜200℃の温度範囲内で、約15〜60分間程度加熱すればよい。
【0036】
次に、本発明の導電性ペーストを用いた多層基板、及びその製造方法について説明する。
【0037】
図1は、本発明による多層基板の例を示す模式拡大断面図である。図1において、符号1は多層基板を示し、符号2は絶縁層を示し、符号3は導電性ペーストが硬化してなる充填物を示し、符号L1〜L6は導電層を示す。
【0038】
本図に示した多層基板1を得るには、例えば、絶縁層2に例えばドリルやレーザーによりバイアホールを形成し、このバイアホールに導電性ペースト3を充填すると共に導電層L1〜L6を形成して各層を積層する。その後、所定の条件で加熱することにより樹脂成分を硬化させるとともに金属粉のメタライズ化を進行させればよい。
【実施例】
【0039】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0040】
[実施例,比較例]
表1に示す割合で各成分を配合し、混合して導電性ペーストを調製した。なお、使用した各成分の詳細は以下の通りである。また、樹脂成分全体の加水分解性塩素濃度を表1に併記する。
【0041】
エポキシ樹脂1:(株)ADEKA製、アデカレジンEPR4030(エポキシ当量380、加水分解性塩素濃度100ppm)
エポキシ樹脂2(2官能エポキシ樹脂):ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート828EL(エポキシ当量180、加水分解性塩素濃度1000ppm)
エポキシ樹脂3(希釈剤):(株)ADEKA製、アデカレジンED529(エポキシ当量180、加水分解性塩素濃度500ppm)
エポキシ樹脂4:大日本インキ化学工業(株)製、HP820(エポキシ当量220、加水分解性塩素濃度2000ppm)
金属粉:Sn−Bi合金金属粉(Sn:Bi=42:58、融点138℃、粒径20μm)
銀粉:融点961℃、粒径20μm
フラックス:ヒドロキシエチルラウリルアミン
【0042】
上記により得られた導電性ペーストを160℃で60分間加熱して硬化させ、TG/DTAを用いて融点測定したところ、500℃付近に融点の吸熱ピークが観察された。また、電子顕微鏡及びX線マイクロアナライザーによる観察において、金属粉がメタライズ化しているのが確認された。
【0043】
次に、導電層(銅箔、厚さ18μm)と絶縁層(ガラスエポキシ、厚さ:約200μm)とが交互に積層されてなる多層基板(板厚1.1mm)にスルーホール(孔径0.3mm、1000孔チェーンパターン)を形成して、上記導電性ペーストを充填し、160℃で60分間硬化させた後、表面から突出した硬化物を研磨により除去し、図1に示す構造の多層基板を得た。
【0044】
この多層基板につき、初期導電性の測定及びハンダディップ試験を行い、耐湿性(長期信頼性)の評価としてPCT(プレッシャークッカーテスト)耐性時間の測定を行った。
【0045】
導電性は、図1に示す多層基板の導電層の最上層(L1)と最下層(L6)間で抵抗を測定した。
【0046】
PCT耐性試験は、2気圧、湿度100%、121℃の条件下、導電性の変化率が10%以内に保持される時間を調べた。
【0047】
また、ハンダディップ試験として、260℃のハンダに多層基板を10秒間ずつ3回浸漬した後、導電性変化率(%)を求めた。
【0048】
さらに、ヒートサイクル試験として、−65℃で30分間、125℃で30分間のヒートサイクルを1000サイクル行った後、導電性変化率(%)を求めた。
【0049】
また、導電性ペーストについては、粘性及びポットライフを評価した。粘性(初期粘度)は、BH型粘度計ロータNo.7を用いて10rpmでの粘度を測定して、スクリーン印刷に適正があるかという観点から、4000dPa・s以下であれば○、3000dPa・s以下であれば◎と評価した。ポットライフは、常温で放置して初期粘度に対する粘度変化率が20%以内に保持される時間を調べた。
【0050】
上記各試験、評価の結果を表1に併記する。
【0051】
【表1】

【0052】
表1に示された結果から、実施例1,2の多層基板は、ヒートサイクル試験後の導電性変化率が比較例1のものと比較して顕著に優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明による多層基板の例を示す模式拡大断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1……多層基板
2……絶縁層
3……導電性ペースト
L1〜L6……導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ当量が200〜600の範囲内であり、かつ加水分解性塩素濃度が200ppm未満であるエポキシ樹脂20重量部以上とこのエポキシ樹脂以外の樹脂80重量部未満とからなり、全体の加水分解性塩素濃度が1000ppm未満である樹脂成分100重量部に対し、
(B)融点180℃以下の低融点金属少なくとも1種と融点800℃以上の高融点金属少なくとも1種とを含む、2種以上の金属からなる金属粉200〜1800重量部、
(C)硬化剤3〜20重量部、及び
(D)フラックス3〜15重量部
を含有してなる、導電性ペースト。
【請求項2】
前記(B)成分の低融点金属が、インジウム単独、又は錫、鉛、ビスマス及びインジウムからなる群から選択された1種又は2種以上の合金であり、高融点金属が、銀、銅、銀コート銅粉からなる群から選択された1種又は2種以上の金属粉からなることを特徴とする、請求項1に記載の導電性ペースト
【請求項3】
前記低融点金属がスズ(Sn)とビスマス(Bi)の合金であり、その合金比率がSn:Bi=80:20〜42:58の範囲内であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
複数の導電層と絶縁層とが交互に積層されてなる多層基板であって、前記導電層間の導通が絶縁層の厚み方向に設けられた貫通もしくは有底のバイアホールに充填された導電性ペーストによって得られる多層基板において、このバイアホールに請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ペーストが充填され、加熱されたことにより、導電性ペースト中に含有される金属粉が溶融して相互に一体化し、合金化したことを特徴とする多層基板。

【図1】
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【公開番号】特開2008−108629(P2008−108629A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291568(P2006−291568)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(503346913)タツタ システム・エレクトロニクス株式会社 (31)
【Fターム(参考)】