説明

情報システム

【課題】移動電話機を用いたデータ通信を行いつつ、バッテリ残量の不足によって移動電話機の音声通信機能が利用できなくなることを抑制する「情報システム」を提供する。
【解決手段】移動電話機2のバッテリ23のバッテリ残量がThnormを超えている間は、定期データ通信間隔をTstdに設定し、当該Tstd間隔で移動電話機2を用いて、WAN4上に配置された交通情報センタ5とデータ通信を行う。移動電話機2のバッテリ23のバッテリ残量がThnorm以下となったならば、バッテリ残量の減少に伴って定期データ通信間隔を定期データ通信間隔=(k×Tstd×Thnorm)/(バッテリ残量)に従って大きくする。そして、移動電話機2のバッテリ23のバッテリ残量がThmin未満となったならば、定期データ通信を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動電話機を用いたデータ通信を行う情報システムにおいて、当該移動電話機を用いたデータ通信を管理する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などと呼称される移動電話機を用いたデータ通信を行う情報システムとしては、自動車に搭載されたナビゲーション装置において、定期的もしくは所定距離走行毎に、現在位置の情報を移動電話機を用いたデータ通信によって交通状況を管理するサーバに送信する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
また、自動車に搭載されたナビゲーション装置において、移動電話機を用いたデータ通信によって交通状況を管理するサーバから、定期的に渋滞情報を取得する技術も知られている(たとえば、特許文献2)。
一方、通信を管理する技術としては、移動電話機のバッテリ残量が所定レベル以下となったならば、移動電話機の通信に直接関係しない機能を停止する技術などが知られている(たとえば、特許文献3)。
【特許文献1】特開平10-307993号公報
【特許文献2】特開2003-248891号公報
【特許文献3】特開平6-677663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動電話機を用いたデータ通信を行う情報システムでは、移動電話機がユーザの音声通信(いわゆる、電話)にも共用されることが一般的である。また、移動電話機の音声通信機能を確保することは、情報システムにおけるデータ通信機能が確保されることよりも、ユーザにとっての必要性が高いと考えられる。
【0005】
しかしながら、前述のように情報システムにおいて移動電話機を用いたデータ通信によって定期的に情報を送受すると、当該データ通信による電力消費により、移動電話機の音声通信機能を利用できなくなるほどに、移動電話機のバッテリ残量が不足してしまうことがある。
【0006】
そこで、本発明は、移動電話機を用いたデータ通信を行う情報システムにおいて、バッテリ残量の不足によって移動電話機の音声通信機能が利用できなくなることを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、移動電話機を用いたデータ通信を行う情報システムに、設定されたデータ通信間隔が表す時間間隔で、前記移動電話機を用いた所定のデータ通信を行うデータ通信手段と、前記移動電話機のバッテリ残量を検出するバッテリ残量検出手段と、前記バッテリ残量検出手段が検出したバッテリ残量に応じて、バッテリ残量が少ないほど長くなるように前記データ通信間隔を設定するデータ通信間隔設定手段とを備えたものである。
【0008】
このような情報システムによれば、移動電話機のバッテリ残量に応じてデータ通信を行う時間間隔を変更することにより、所定のデータ通信を間欠的に、バッテリ残量の不足によって移動電話機の音声通信機能が利用できなくならない範囲内において、できるだけ長い間、できるだけ所望の時間間隔に近い時間間隔で行うことができるようになる。よって、長期間に渡り所定のデータ通信をできるだけ所望の時間間隔に近い時間間隔で間欠的に行いつつ、バッテリ残量の不足によって移動電話機の音声通信機能が利用できなくなることを抑制することができる。
【0009】
ここで、前記データ通信間隔設定手段は、より具体的には、たとえば、前記バッテリ残量検出手段が検出したバッテリ残量が第1のしきい値以上である場合には、前記データ通信間隔として第1の時間を設定し、前記バッテリ残量検出手段が検出したバッテリ残量が第1のしきい値未満かつ当該第1のしきい値より小さい第2のしきい値以上である場合には、バッテリ残量が少ないほど長くなるように選定した前記第1の時間より短い時間を前記データ通信間隔として設定し、前記バッテリ残量検出手段が検出したバッテリ残量が前記第2のしきい値未満である場合には、前記データ通信を行わないように前記データ通信手段を制御するものとしてよい。
また、以上の情報システムは、自動車に搭載された車載システムであってよい。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、移動電話機を用いたデータ通信を行う情報システムにおいて、バッテリ残量の不足によって移動電話機の音声通信機能が利用できなくなることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る情報システムの一実施形態を車載システムへの適用を例にとり説明する。
図1に、本実施形態に係る車載システム100の構成を示す。
図示するように、車載システム100は、移動電話機2と有線通信もしくは近距離無線通信を介して接続する移動電話機インタフェース111、交通情報受信装置112、表示装置113、操作部114、GPS受信機118や車両センサ119を備えたナビゲーション装置115、スピーカ120やマイクロフォン121を備えたハンズフリー通話装置116、制御部117とを備えている。
【0012】
ここで、交通情報受信装置112は、VICS受信機などの、交通情報を放送する交通情報送信局3から交通情報を受信する受信装置である。また、車両センサ119は、車速センサや角速度センサなどの車両の各種走行状態を検出するセンサである。
そして、このような車載システム100において、制御部117は、設定されている定期データ通信間隔が表す時間間隔で、移動電話機インタフェース111に接続した移動電話機2を用いて、移動電話機2が収容される移動体通信網を含んで構成されたWAN4上に配置された交通情報センタ5とデータ通信を行い、交通情報センタ5から交通情報や天気情報や周辺地点情報を取得したり、交通情報センタ5に自車の現在位置や平均走行速度などの情報を提供する処理を行う。
【0013】
また、ナビゲーション装置115は、地図データを備え、地図データに基づいて、GPS受信機118や車両センサ119の出力から現在位置を算出したり、操作部114で受け付けた目的地までの推奨される経路を地図データを参照して探索したり、地図データが表す地図上に現在位置や目的地や目的地までの経路を表した案内画像を表示装置113に表示する処理などを行う。ここで、ナビゲーション装置115は、制御部117が交通情報センタ5から取得した交通情報や、交通情報受信装置112が交通情報送信局3から受信した交通情報が表す渋滞の発生状況を考慮して、最短時間で目的地に到達できる経路を、目的地までの推奨される経路として探索する他、これらの交通情報が表す渋滞の発生状況の変化に応じて目的地までの推奨される経路を再探索して再設定する処理を行う。また、ナビゲーション装置115は、これらの交通情報が表す渋滞の発生状況を案内画像上に表示する処理なども行う。
【0014】
次に、ハンズフリー通話装置116は、ユーザが移動電話機2を手持ち操作することなく通話を行える機能であるハンズフリー通話機能を移動電話機2に付加する。
すなわち、ハンズフリー通話装置116は、移動電話機2の音声通信時、移動電話機2から移動電話機インタフェース111を介して入力する受信音声信号の表す音声をスピーカ120から出力し、マイクロフォン121から入力する音声を表す音声信号を送信音声信号として移動電話機インタフェース111を介して移動電話機2に出力する。移動電話機2は、車載システム100に接続しているときには、音声通信でWAN4を介して通話相手から受信した受信音声信号を車載システム100に出力し、車載システム100から入力する送信音声信号をWAN4を介して通信相手に送信する。
【0015】
ここで、移動電話機2は、図1に示すように、上述のようなWAN4を介したデータ通信や音声通信を行う移動電話機能部21の他に、車載システム100に上述のように有線通信また近距離無線通信で接続するためのホストインタフェース22と、移動電話機2の電源となるバッテリ23と、バッテリ23の蓄電レベルを表すバッテリ残量を検出するバッテリ残量検出部24と、車載システム100からのホストインタフェース22を介した問い合わせに応答して、バッテリ残量検出部24が検出しているバッテリ残量を車載システム100に通知するバッテリ残量通知部25とを備えている。なお、移動電話機能部21は、移動電話機単体で、WAN4を介したデータ通信や音声通信を行ったり、当該移動電話機単体で行うデータ通信や音声通信で送受信するデータや音声をユーザとの間で入出力する機能も備えている。
【0016】
さて、このような構成において制御部117は、上述のように移動電話機インタフェース111に接続した移動電話機2を用いて、WAN4上に配置された交通情報センタ5とデータ通信を行う時間間隔を定める定期データ通信間隔を設定するために、図2に示す定期データ通信間隔設定処理を行う。ここで、定期データ通信間隔設定処理は、移動電話機2が接続されたときに制御部117によって起動される。
【0017】
図示するように、この処理では、まず、移動電話機インタフェース111を介して、移動電話機2に問い合わせることにおり、移動電話機2のバッテリ23のバッテリ残量を取得する(ステップ202)。
そして、バッテリ残量がThmin未満であるかどうかを調べる(ステップ204)。ここで、Thminは、予め定めたバッテリ残量のしきい値であり、移動電話機2の音声通信が正常に行えなくなる最大のバッテリ残量に、1分の音声通信数十回分程度分の消費電力を加えた値を、Thminとして設定する。
そして、バッテリ残量がThmin未満であれば(ステップ204)、定期データ通信の停止を設定し(ステップ212)、処理を終了する。ここで、制御部117は、定期データ通信の停止が設定されている期間中は、移動電話機2を用いた交通情報センタ5とデータ通信を行わない。
【0018】
一方、バッテリ残量がThmin以上であれば(ステップ204)、バッテリ残量がThnorm(>Thmin)を超えているかどうかを調べる(ステップ206)。ここで、Thnormは、予め定めたバッテリ残量のしきい値であり、充分にバッテリ残量があると見なせる最小のバッテリ残量の値を、Thnormとして設定する。
【0019】
そして、バッテリ残量がThnormを超えていれば(ステップ206)、定期データ通信間隔にTstdを設定し(ステップ214)、ステップ210に進む。Tstdは、正常動作時の標準とする時間間隔であり、たとえば、15分とする。
一方、バッテリ残量がThnorm以下であれば(ステップ206)、定期データ通信間隔に、(k×Tstd×Thnorm)/(バッテリ残量)を設定し(ステップ208)、ステップ210に進む。ただし、kは1以上の係数であり、ステップ208では、Tstdより長い時間間隔が定期データ通信間隔に、バッテリ残量が少ないほど定期データ通信間隔が長くなるように設定されることになる。
【0020】
そして、ステップ210に進んだならば、所定時間たとえば10分待って、ステップ202からの処理に戻る。
以上、定期データ通信間隔設定処理について説明した。
なお、以上の定期データ通信間隔設定処理は、移動電話機2の接続が解除された場合にも、制御部117によって無条件に実行が終了される。
ここで、図3に、以上の定期データ通信間隔設定処理によって設定される、定期データ通信間隔と移動電話機2のバッテリ残量との関係を示す。
図示するように、以上の定期データ通信間隔設定処理によれば、移動電話機2のバッテリ23のバッテリ残量がThnormを超えている間は、定期データ通信間隔がTstdに設定され、当該Tstd間隔で移動電話機2を用いて、WAN4上に配置された交通情報センタ5とデータ通信が行われる。一方、データ通信を重ねるうちに移動電話機2のバッテリ23のバッテリ残量がThnorm以下となったならば、バッテリ残量の減少に伴って定期データ通信間隔は定期データ通信間隔=(k×Tstd×Thnorm)/(バッテリ残量)に従って大きくなっていく。したがって、バッテリ残量の減少に伴って、移動電話機2を用いたデータ通信を行う頻度は減少し、結果、データ通信による移動電話機2の単位時間あたりの電力消費も減少していく。そして、やがて移動電話機2のバッテリ23のバッテリ残量がThmin未満となったならば、定期データ通信は停止され、データ通信による移動電話機2の電力消費は発生しなくなる。
【0021】
よって、本実施形態によれば、交通情報センタ5との間欠的なデータ通信を、バッテリ残量の不足によって移動電話機2の音声通信機能が利用できなくならない範囲内において、できるだけ長い間、できるだけ所望の時間間隔に近い時間間隔で行うことができる。すなわち、長期間に渡り交通情報センタ5とのデータ通信をできるだけ所望の時間間隔に近い時間間隔で行いつつ、バッテリ残量の不足によって移動電話機2の音声通信機能が利用できなくなることを抑制することができる。
【0022】
ところで、以上の実施形態において、制御部117は、以上の定期データ通信間隔設定処理の他に、WAN4上に配置された交通情報センタ5とデータ通信を行う際にも、バッテリ残量を移動電話機2から取得し、定期データ通信間隔設定処理のステップ204-210、212の処理と同様の処理を行って、バッテリ残量に応じた定期データ通信間隔の設定を行うようにしてもよい。または、以上の定期データ通信間隔設定処理は行わずに、WAN4上に配置された交通情報センタ5とデータ通信を行う際にも、バッテリ残量を移動電話機2から取得し、定期データ通信間隔設定処理のステップ204-210、212と同様の処理を行って、バッテリ残量に応じた定期データ通信間隔の設定を行うようにしてもよい。
【0023】
また、以上では車載システムへの適用を例にとり本発明の実施形態を説明したが、本実施形態で示した移動電話機のバッテリ残量に応じた定期データ通信間隔設定の技術は、移動電話機を用いたデータ通信を定期的に行う任意の情報システムに同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る車載システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る定期データ通信間隔設定処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係る定期データ通信間隔設定処理によって設定される定期データ通信間隔を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
2…移動電話機、3…交通情報送信局、4…WAN、5…交通情報センタ、21…移動電話機能部、22…ホストインタフェース、23…バッテリ、24…バッテリ残量検出部、25…バッテリ残量通知部、100…車載システム、111…移動電話機インタフェース、112…交通情報受信装置、113…表示装置、114…操作部、115…ナビゲーション装置、116…ハンズフリー通話装置、117…制御部、118…GPS受信機、119…車両センサ、120…スピーカ、121…マイクロフォン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動電話機を用いたデータ通信を行う情報システムであって、
設定されたデータ通信間隔が表す時間間隔で、前記移動電話機を用いた所定のデータ通信を行うデータ通信手段と、
前記移動電話機のバッテリ残量を検出するバッテリ残量検出手段と、
前記バッテリ残量検出手段が検出したバッテリ残量に応じて、バッテリ残量が少ないほど長くなるように前記データ通信間隔を設定するデータ通信間隔設定手段とを有することを特徴とする情報システム。
【請求項2】
請求項1記載の情報システムであって、
前記データ通信間隔設定手段は、前記バッテリ残量検出手段が検出したバッテリ残量が第1のしきい値以上である場合には、前記データ通信間隔として第1の時間を設定し、前記バッテリ残量検出手段が検出したバッテリ残量が第1のしきい値未満かつ当該第1のしきい値より小さい第2のしきい値以上である場合には、バッテリ残量が少ないほど長くなるように選定した前記第1の時間より短い時間を前記データ通信間隔として設定し、前記バッテリ残量検出手段が検出したバッテリ残量が前記第2のしきい値未満である場合には、前記データ通信を行わないように前記データ通信手段を制御することを特徴とする情報システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の情報システムであって、
当該情報システムは、自動車に搭載されていることを特徴とする情報システム。
【請求項4】
移動電話機を用いたデータ通信を行う情報システムにおいて前記データ通信を制御するデータ通信制御方法であって、
設定されたデータ通信間隔が表す時間間隔で、前記移動電話機を用いた所定のデータ通信を行うステップと、
前記移動電話機のバッテリ残量を検出するステップと、
検出したバッテリ残量に応じて、バッテリ残量が少ないほど長くなるように前記データ通信間隔を設定するステップとを有することを特徴とするデータ通信制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−270949(P2008−270949A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108067(P2007−108067)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】