説明

情報配信サービスシステム及び情報配信車載装置

【課題】位置情報とリンクされたコンパクトな映像ファイルにて画像情報を蓄積する情報配信サービスシステムを提供する。
【解決手段】車輌側システムは車外の動画像の撮像部と、現在位置の位置情報取得部と、該撮影画像データと該位置情報を車外に送信する無線通信部を有し、情報配信サービスセンター側システムは送信される撮影画像データと位置情報とを受信するデータ受信部231と、路線区間データ、交差点区間データ、路線外区域データと、それぞれのデータ間を区切る仮想的な基準ラインデータとを収録した路線基準ラインデータベース252と、該データベース及び受信位置情報とから基準ラインを検索する基準ライン検索部211と、該基準ラインデータをもとに、撮影画像データを分割して映像ファイル化する画像データファイル分割部213と、分割された映像ファイルを映像ファイルデータベース253に格納する画像データファイル格納部210を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の車輌から収集した動画像データを情報配信サービスセンターから配信する情報配信サービスシステム及び情報配信車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の渋滞状況等を遠隔地の人に伝えるために、主要道路に定点カメラを設置し、このカメラによって撮影された道路の画像を要求する人に配信するというサービスがある。このような定点カメラを用いたサービス形態では、任意の点の画像情報を閲覧することはできない。そこで、車輌運転中に取得した画像情報・天候情報などを他の人にも提供して、有効活用する方策が検討されている。
【0003】
上記のような情報交換を実現させるためのシステムとしては、例えば特許文献1(特開2006−146707号公報)に、個々の車両に搭載される情報交換装置と、前記情報交換装置との間で通信接続可能な複数のサーバとにより構成される情報交換システムであって、前記情報交換装置は、通信手段と、コンテンツのデータ入力が可能な入力手段と、前記コンテンツの保存が可能な記憶媒体と、前記通信手段、前記入力手段及び前記記憶媒体を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は前記入力手段を介して入力されたコンテンツの付加情報に応じて前記コンテンツの保存先を前記記録媒体及び前記複数のサーバのうちから決定し、前記コンテンツが保存されたサーバ、又は前記記憶媒体に前記コンテンツが保存された情報交換装置の制御手段は、他の車両の情報交換装置からコンテンツ提供要求を受けたときに、前記コンテンツの付加情報に応じてコンテンツの提供の可否を決定することを特徴とする情報交換システムが記載されている。
【0004】
また、特許文献2(特開2004−151063号公報)には、地図上に現在位置と指定された経路を表示するナビゲーションシステムにおいて、以前に走行したときに撮影した映像と、そのときの位置情報と、少なくとも天候、時間帯からなる付加情報をリンク付けて登録するデータテーブルと、現在位置あるいは現在位置と走行方向をもとに前記データテーブルを検索して最も一致する映像を抽出する手段と、前記抽出した映像を、前記現在位置と指定された経路に加えて表示する手段とを備えたことを特徴とするナビゲーションシステムが記載されている。
【特許文献1】特開2006−146707号公報
【特許文献2】特開2004−151063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車輌運転中に取得した画像情報などを共有するシステムにおいては、これら情報を蓄積するサービスセンターに設置されるサーバーなどの記憶手段は膨大なものとなる。したがって、このような画像情報は、位置情報とリンクされたコンパクトなファイル形式のものとしておく必要がある。ところが、特許文献1及び特許文献2に記載のシステムにおいては、このような画像情報のファイルの取り扱い性についてまでは考慮されたものではない、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に係る発明は、複数の車輌から収集した動画像データを情報配信サービスセンターから配信する情報配信サービスシステムであって、車輌から送信される撮影画像データを受信するデータ受信部と、路線区間データ、交差点区間データ、路線外区域データと、それぞれのデータ間を区切る基準ラインデータと、該基準ラインをもとに、撮影画像データを分割して映像ファイル化する画像データファイル分割部と、該画像データファイル分割部で分割された映像ファイルを映像ファイルデータベースに格納する画像データファイル格納部と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の情報配信サービスシステムにおいて、該交差点区間データの基準ラインは、交差点の進入部及び進出部に設けられたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の情報配信サービスシステムにおいて、該データ受信部は車輌から位置情報を受信し、該基準ラインは該位置情報に基づいて基準ラインを決定し、決定された基準ラインに基づいて撮影画像データを分割することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3に記載の情報配信サービスシステムに対して、車輌外を撮影する撮影部で撮影した撮影画像データを送信する無線通信部を少なくとも有する情報配信車載装置であって、路線区間データ、交差点区間データ、路線外区域データと、それぞれのデータ間を区切る基準ラインデータと、該基準ラインをもとに、撮影画像データを分割して映像ファイル化する画像データファイル分割部と、を有し、該無線通信部は該画像データファイル分割部で分割された映像ファイルを送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の情報配信サービスシステム及び情報配信車載装置によれば、基準ラインデータによって、車輌で取得された撮像画像データを分割して映像ファイル化するものであるので、映像ファイルは位置情報とリンクされたコンパクトなものとなる。このような本発明の情報配信サービスシステムで生成される映像ファイルは、システム上での取り扱い性に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施の形態に係る情報配信サービスシステムの概念図であり、図1において、100、100’、100’’は車輌、200は情報配信サービスセンター、300は個人宅、500は通信網、510は無線通信基地局をそれぞれ示している。なお、本発明の情報配信サービスシステムの概念には、図1に示す全ての構成及び個々の構成要素の双方を包含するものである、とする。
【0012】
車輌100、100’、100’’は不図示の動画像撮像手段を備えており、この動画像撮像手段によって車輌100、100’、100’’は車外の映像を撮影する。このようにして撮影された車外の映像は、常時無線通信基地局510にリアルタイムで送信される。無線通信基地局510からは、撮影画像は通信網500を介して情報配信サービスセンター200のサーバー等に蓄積される。なお、撮影画像は個人ユースのために通信網500を介して個人宅300に設置されるホームサーバーなどに送信するように設定することもできる。
【0013】
情報配信サービスセンター200のサーバー等に蓄積された撮影画像は、車輌100、100’、100’’の要求に応じて検索され、通信網500→無線通信基地局510→車輌100、100’、100’’の経路で車輌に向けて配信される。このような動画像の情報配信サービスによって、車輌100、100’、100’’のドライバーは遠隔地の交通事情等をリアルタイムで把握することができる。情報配信サービスセンター200のサーバー等に蓄積された撮影画像はリアルタイムの利用に供されるのみではなく、過去の撮影画像データも参照可能に設定される。例えば、過去の撮影画像データから、○×通りの月曜日の朝8:30の様子などを参照できるようにする。
【0014】
情報配信サービスセンター200のサーバー等に蓄積された撮影画像は、個人宅300などに設置されるパーソナルコンピュータ、不図示の携帯電話などからの閲覧も可能に構成する。
【0015】
図2は本発明の実施の形態に係る情報配信サービスシステムの車輌側システムを示す図である。 図2において、101は演算部、110は撮像部、111は画像解析部、120は計時部、121は位置情報取得部、122は車速センサ部、123は方位センサ部、124は雨滴センサ部、130は画像表示部、131は音声出力部、132はタッチパネル入力部、133は音声入力部、140は無線通信部、150は記憶部、151は地図データ記憶部、152は撮影画像データ記憶部をそれぞれ示している。
【0016】
なお、本発明の情報配信サービスシステムの車輌側システムの通常のカーナビゲーションシステムの構成を一部流用することができるし、通常のカーナビゲーションシステムの機能を一部流用して援用するように構成できる。
【0017】
演算部101は、エレクトロニックコントロールユニットであり、CPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理機構である。
【0018】
撮像部110は、車輌100の前方風景の動画像の撮影を行う撮像手段である。このような撮像部110は、必要に応じて水平方向に回転させるような機構を設けておき、360°全周にわたる映像データを取得する構成とすることもできる。
【0019】
画像解析部111は撮像部110で撮影された撮影画像データの画像解析を実行する。画像解析部111が行う画像解析のうち特に本発明で関連する画像解析は、片道複数車線の道路に車輌があるとき、どの車線に自車両があるか、などを解析するものである。なお、このような画像解析を行わない時には、位置の分かっている基準局が発信するGPS(全地球測位システム)の補正情報を利用して、GPSの計測結果の誤差を補正して精度を高めるディファレンシャルGPD(DGPS)などの高精度な測位システムと車輌に搭載したジャイロ、車速センサ等による自立航法システム及び道路の車線の位置情報まで有する高精度地図を組み合わせたマップマッチングで、正確に位置情報を入手するようにして走行車線を解析することもできる。高精度測位システムとしては、DGPSの他、電子基準点情報を利用して仮想的な基準点VRS(Virtual Reference Station)を使うVRS−DGPSやVRS−リアルタイムキネマティックGPSなどの非常に高精度な測位システムを使用することもできる。将来的に実用化される準天頂衛星や運輸多目的衛星を使ったGPS精度を向上できるシステムを利用してもよい。GPSの補正情報は、通信部500を使って入手できるが、VICS光ビーコンやDSRC(Dedicated Short Range Communication)などの近距離無線により道路側から入手するように構成することもできる。
【0020】
計時部120は時刻情報の発生部であり、位置情報取得部121は、GPS衛星からのGPS信号を受信して自らの位置を計算するGPS測位で車両の位置情報を取得するものである。
【0021】
車速センサ部122は、車輪の回転などによって車輌の走行速度を検知するものであり、方位センサ部123は、車輌の進行方向の方位を検出するものであり、雨滴センサ部124は降雨の状況を検出するセンサである。なお、このような雨滴センサ部124に代えて、ワイパーの動きから降雨状況を検出するように構成しても良い。
【0022】
画像表示部130は、車輌の運転席脇に設けられる液晶パネルなどからなる画像表示出力用インターフェイスであり、当該画像表示部130において、配信画像データの閲覧を行ったり、GUI画面の確認を行ったりする。また、音声出力部131は、音声案内などを行うスピーカにより構成される。
【0023】
タッチパネル入力部132は、指などによる押圧で入力が行えるタッチパネルからなる入力インターフェイス部である。透明なタッチパネル入力部132が、画像表示部130を覆うように設けられることにより、ユーザーは画像表示部130のGUI画面表示に連動して画面を押圧操作することで、システムへの入力ができるようになっている。音声入力部133は、マイクロフォンなどのシステムへの音声入力を行うための構成である。
【0024】
無線通信部140は、車輌外の無線通信基地局510とデータの送受信を行うためのものであり、携帯電話通話用回線、ワイヤレスLAN、ブルートゥースなどの通信インターフェイスを用いることができる。無線通信部140は、情報配信サービスセンター200に撮影画像データとその関連データをアップロードしたり、情報配信サービスセンター200から他車輌の撮影画像データとその関連データをダウンロードしたりする際に用いられる。
【0025】
記憶部150は、ハードディスクなどの比較的大容量の記憶装置からなり、地図データ記憶部151と撮影画像データ記憶部152とからなる。地図データ記憶部151は、位置情報取得部121によって取得される位置情報とともに自車両の位置を重ね合わせたり、画像配信を受けたい車輌のアイコン表示の位置を重ね合わせたり、する際に用いられるものである。また、撮影画像データ記憶部152は、情報配信サービスセンター200に撮影画像データとその関連データをアップロードする前のデータを一時保存しておいたり、情報配信サービスセンター200から他車輌の撮影画像データとその関連データをダウンロードしたりする際に用いられる。
【0026】
次に、情報配信サービスシステムの情報配信サービスセンター側の構成について説明する。図3は本発明の実施の形態に係る情報配信サービスシステムにおける情報配信サービスセンター側システムを示す図である。図3において、201はデータベース読み出し・書き込み部、210は画像データベース検索部、211は基準ライン検索部、213は画像データファイル分割部、214は画像データファイル格納部、230は通信部、231はデータ受信部、232はデータ配信部、250はデータベース部、251は地図情報データベース、252は路線基準ラインデータベース、253は映像ファイルデータベースをそれぞれ示している。
【0027】
データベース読み出し・書き込み部201は、各検索部等と協働してデータベース部250の読み出し処理を行ったり、格納部と協働してデータベース部250の書き込み処理を行ったりする構成である。また、データベース読み出し・書き込み部201は、通信部230とデータベース部250との間の送受信データの橋渡しを行う。
【0028】
画像データベース検索部210は、要求に応じて映像ファイルデータベース253から撮影画像データを検索するものである。
【0029】
基準ライン検索部211は、路線基準ラインデータベース252から必要となる基準ラインデータを検索するものである。ここで、本発明の情報配信サービスシステムにおける基準ラインデータについて説明する。基準ラインデータは、各車輌100、100’、100’’で取得された撮像画像データの取り扱い性をよくするために、撮像画像データを映像ファイルに分割する際に用いるための目印となるインデックス的なものである。
【0030】
図4には、本発明の実施の形態に係る情報配信サービスシステムにおいて用いる基準ラインの概念を説明する図である。図4は路線区間、交差点区間、路線外区域と、それらを区切るようにして設けられる基準ラインの様子を示す図である。図4に示すように、基準ラインは概念的・仮想的に路線区間と交差点との間、路線区間と路線外区域との間に設けられるものであり、この基準ラインを基準として像画像データを分割してファイル化する。
【0031】
線基準ラインデータベースは、図4に示すような「路線区間」とその位置情報、「交差点区間」とその位置情報、「路線外区域」とその位置情報、「基準ライン」とその位置情報のデータベースからなあるデータベースである。路線基準ラインデータベース252は、路線区間データ、交差点区間データ、路線外区域データと、それぞれのデータ間を区切る仮想的な基準ラインデータとを収録したデータベースである、ということができる。
【0032】
画像データファイル分割部213は、基準ライン抽出部212によって得られた基準ラインデータ相当箇所において撮影画像データを分割してファイル化するものである。
【0033】
画像データファイル分割部213は、画像データファイル分割部213において分割された映像ファイルを映像ファイルデータベース253に格納する役割を果たす。
【0034】
通信部230は通信網500に接続されるデータ受信部231とデータ配信部232によって構成される。データ受信部231は、情報配信サービスセンター200に向けて各車輌100、100’、100’’から送信された撮影画像データとその関連データを受信する構成であり、データ配信部232は、各車輌100、100’、100’’やその他の情報処理端末からの配信要求に従って映像ファイルの配信を行う構成である。
【0035】
次に、情報配信サービスシステムの情報配信サービスセンターが各車輌100、100’、100’’から撮影画像データを受信し映像ファイル化するまでのフローについて説明する。図5は本発明の実施の形態に係る情報配信サービスセンター側システムにおけるデータ受信から映像ファイル化までの流れを示す図である。
【0036】
各車輌100、100’、100’’からは、撮像部110で取得される「撮影画像データ」、計時部120で取得される「時刻データ」、位置情報取得部121で取得される「位置情報データ」、車速センサ部で取得される「車速データ」の各データが、情報配信サービスセンターに向けて発信される。ステップS100においては、情報配信サービスセンター側システムのデータ受信部231がこれら「撮影画像データ」、「時刻データ」、「位置情報データ」、「車速データ」の各データを受信する。
【0037】
なお、ここでは、各車輌100、100’、100’’から情報配信サービスセンター側システムにアップロードするデータを「撮影画像データ」、「時刻データ」、「位置情報データ」、「車速データ」としたが、方位センサ部123や雨滴センサ部124で取得されるデータを付加するように構成しても構わない。
【0038】
ステップS101では、基準ライン検索部211が、受信した各データのうち、「位置情報データ」に基づいて、路線基準ラインデータベース252から、撮影画像データの分割のために必要となる基準ラインデータを検索する。
【0039】
ステップS102では、画像データファイル分割部213が、基準ライン検索部211によって検索された基準ラインデータを基準として、撮影画像データを分割して映像ファイル化する。
【0040】
ステップS103では、画像データファイル格納部214が、画像データファイル分割部213が、分割した映像ファイルを映像ファイルデータベース252に格納する。
【0041】
以上のような撮影画像データの映像ファイル化によって得られる映像ファイルについて図6を参照しつつ説明する。図6は、車両の走行状況と映像ファイルとの関係を示す図である。
【0042】
図6における車輌Iによる走行例Iの場合について説明する。車輌Iは太い矢印で図に示す走行中に撮像部110で撮影画像データを取得して、その他のセンサ類で付帯的な情報を取得してこれを情報配信サービスセンター側に送信するものである。このとき、情報配信サービスセンター側で撮影画像データを受信し映像ファイル化する。
【0043】
車輌Iは、路肩から発進して路線に合流して、交差点を通過しつつ路線を走行する例である。
車輌Iは、その走行中に基準ラインL1→基準ラインL4→基準ラインL6→基準ラインL8を通過するものである。従って、車輌Iによって取得された撮影画像データは、情報配信サービスセンター側システムの画像データファイル分割部213によって、これらの基準ラインで分割されることとなる。そして、映像ファイルデータベース253には、映像ファイルI−1、映像ファイルI−2、映像ファイルI−3、映像ファイルI−4、映像ファイルI−5の形に分割された映像ファイルが格納されることとなる。
【0044】
次に、図6における車輌IIによる走行例IIの場合について説明する。車輌IIは太い矢印で図に示す走行中に撮像部110で撮影画像データを取得して、その他のセンサ類で付帯的な情報を取得してこれを情報配信サービスセンター側に送信するものである。このとき、情報配信サービスセンター側で撮影画像データを受信し映像ファイル化する。
【0045】
車輌IIは、駐車場等の線路外区域から線路に出て路線を走行し、さらに交差点を通過し、路肩に停止、というような走行パターン例をするものである。そして、車輌IIは、その走行中に基準ラインL5→基準ラインL4→基準ラインL1を通過するものである。従って、車輌IIによって取得された撮影画像データは、情報配信サービスセンター側システムの画像データファイル分割部213によって、これらの基準ラインで分割されることとなる。そして、映像ファイルデータベース253には、映像ファイルII−1、映像ファイルII−2、映像ファイルII−3、映像ファイルII−4の形に分割された映像ファイルが格納されることとなる。
【0046】
次に、図6における車輌IIIによる走行例IIIの場合について説明する。車輌IIIは太い矢印で図に示す走行中に撮像部110で撮影画像データを取得して、その他のセンサ類で付帯的な情報を取得してこれを情報配信サービスセンター側に送信するものである。このとき、情報配信サービスセンター側で撮影画像データを受信し映像ファイル化する。
【0047】
車輌IIIは、線路の走行、交差点の通過、駐車場等の線路外区域での停止、というような走行パターン例である。そして、車輌IIIは、その走行中に基準ラインL9→基準ラインL6→基準ラインL5を通過するものである。従って、車輌IIIによって取得された撮影画像データは、情報配信サービスセンター側システムの画像データファイル分割部213によって、これらの基準ラインで分割されることとなる。そして、映像ファイルデータベース253には、映像ファイルIII−1、映像ファイルIII−2、映像ファイルIII−3、映像ファイルIII−4の形に分割された映像ファイルが格納されることとなる。
【0048】
次に、情報配信サービスシステムの情報配信サービスセンターにおいて、映像ファイル化されたファイルの種類について説明する。本発明の情報配信サービスシステムでは映像ファイルは、次のような4種類のファイルに分類することができる。図7乃至図10は、映像ファイルに用いられるヘッダー情報の構造を示す図である。
1.交差点映像ファイル−交差点を中心とした区間の映像ファイル
基準ラインデータは、交差点の進入部・進出部に設けられる。従って、交差点映像ファイルは、交差点の入口を始点とし、出口を終点とした映像ファイルである。このような映像ファイルに付加されるヘッダー情報としては、図7に示すように「交差点名称データ」、「交差点名称データ」、「撮影開始基準ラインデータ」、「撮影終了基準ラインデータ」、「時刻データ」、「平均車速データ」の各データからなる構成となる。
【0049】
なお、本実施形態においては片道単車線の場合を例にとって説明しているが、交差点の形状や交差する道路の車線数等のデータをヘッダー情報に盛り込むようにしても構わない。また、交差点の進入部・進出部はそれぞれ交差点の側端、すなわち2つの道路が交差する角部から所定距離手前と所定距離後に設定すればよく、側端からの距離は側端の前後で異なっていても構わない。
2.路線通過映像ファイル−交差点を始点・終点とした区間の映像ファイル
この路線通過映像ファイルは、交差点出口を始点とし、次の交差点入口を終点とした映像ファイルとなる。路線通過映像ファイルに付加されるヘッダー情報としては、図8に示すように「路線名称データ」、「両端交差点名称データ」、「撮影開始基準ラインデータ」、「撮影終了基準ラインデータ」、「時刻データ」、「平均車速データ」の各データからなる構成となる。
【0050】
なお、本実施形態においては片道単車線の場合を例にとって説明しているが、交差点の形状や交差する道路の車線数等のデータをヘッダー情報に盛り込むようにしても構わない。交差点の出口、入口は交差点の形状や交差する道路の車線数等をヘッダー情報に盛り込むようにしても構わない。また、さらに複数車線ある路線では、走行車線位置も付加して保存するような構成とすることもできる。このような複数車線ある路線の情報を付加するようなときにおいて、車線変更した場合には、車線変更を示す識別符号と共に、当初の車線と変更後の車線、車線変更を開始した位置と時刻、終了した位置と時刻を保存するように構成することが適当である。
3.路線入出映像ファイル−駐車場(路線外区域)への出入りや、途中で駐車などの区間の映像ファイル
路線上に出入りする位置に基準ラインデータが存在するので、このような路線入出映像ファイルは、路線上に出入りする位置の基準ラインデータとこの基準ラインデータの次の基準ラインデータとの間の撮影画像データが映像ファイル化されたものとなる。
【0051】
路線入出映像ファイルに付加されるヘッダー情報としては、図9に示すように「路線名称データ」、「区域名称データ」、「撮影開始基準ラインデータ」、「撮影終了基準ラインデータ」、「時刻データ」、「平均車速データ」の各データからなる構成となる。このような路線入出映像ファイルはいわば車道への出入り地点を記録したファイルとなる。
【0052】
路上駐車やエンジンを停止した状態での停車の場合は、不図示のキーをアクセサリーONしてから次の交差点までの区間映像ファイル、または、交差点からアクセサリーOFFにした時点までの区間映像ファイルを保存する。なお、本発明の車輌側のシステムの始動、停止指示は、不図示のキーポジションがアクセサリーONまたはOFFとなった時点とする。
【0053】
本発明のシステムの始動時に車道以外の地点にある場合は、車道へ入った路線上の地点を記録する。また、本発明のシステムが停止時に車道以外の地点にある場合は、車道を出た路線上の地点を記録する。
4.路線外映像ファイル−駐車場など路線以外での走行中の画像
このような路線外映像ファイルは、路線外区域である駐車場などで始動して路線に出るまでの映像ファイルとなる。すなわち、路線から駐車場などに入って駐車(キーポジションがアクセサリーOFF)されるまでの映像ファイルや、路線から駐車場に入り、駐車(キーポジションがアクセサリーOFF)せず、そのまま路線に出る映像ファイルなどである。
【0054】
路線外映像ファイルに付加されるヘッダー情報としては、図10に示すように「区域名称データ」、「路線名称データ」、「撮影開始基準ラインデータ」、「撮影終了基準ラインデータ」、「時刻データ」、「平均車速データ」の各データからなる構成となる。
【0055】
本発明のシステムの始動時に車道以外の地点にある場合は、車道へ出た路線上の地点を記録する。また、本発明のシステムが停止時に車道以外の地点にある場合は、車道を出た路線上の地点を記録する。
【0056】
以上のような「交差点映像ファイル」、「路線通過映像ファイル」、「路線入出映像ファイル」、「路線外映像ファイル」の4種類のファイルとして分類した場合、図6に示す分割映像ファイルは図11に示すような形で分類されることとなる。図11は走行例と映像ファイル種類との対応関係を示す図である。
【0057】
以上のように本発明の情報配信サービスシステムによれば、基準ラインデータによって、車輌100、100’、100’’で取得された撮像画像データを分割して映像ファイル化するものであるので、映像ファイルは位置情報とリンクされたコンパクトなものとなる。このような本発明の情報配信サービスシステムで生成される映像ファイルは、システム上での取り扱い性に優れるものである。
【0058】
なお、上記の実施形態においては、以上のような基準ラインデータに係るシステム構成を情報配信サービスセンター側に持たせる例について説明したが、基準ラインデータに係るシステム構成を各車輌100、100’、100’’に持たせるようにして、各車輌から分割した映像ファイルを情報配信サービスセンターにアップロードするような形式としても良い。
【0059】
次に、映像ファイルデータベース253から各車輌100、100’、100’’に映像ファイルを配信する場合について説明する。図12は本発明の実施の形態に係る情報配信サービスシステムにおける車輌100、100’、100’’側の画像表示部130の表示例を示す図である。図12に示すように、各車輌100、100’、100’’のユーザーには、画像表示部130の地図上に受信可能な映像の位置がアイコン131、132によって表示される。画像表示部130においては、このアイコン131、132は、映像を送信している車輌が走行して移動するたびに、逐次地図上を移動する。ユーザーは、その中から受信したい映像のアイコン132を選択すると、車輌側情報配信サービスシステムのシステムは、当該アイコン132に相当する車輌の映像ファイルの要求を情報配信サービスセンター側システムに要求する。情報配信サービスセンター側システムはこの要求を受けて、画像データベース検索部210が映像ファイルデータベース253から相当するファイルの検索を行い、これをデータ配信部232から要求発信元車輌に対して送信する。車輌側システムはこの映像ファイルを受信して、再生することによって画像表示部130に表示する。このような本発明の情報配信サービスシステムによれば、各車輌100、100’、100’’から離れた場所の渋滞状況や天候、路面状況などを目視で確認することができる。図13は、このような車輌側の画像表示部130での表示例を示す図である。
【0060】
以上の例では、車輌100、100’、100’’側の画像表示部130における表示例について示したが、同様の仕組みはパーソナルコンピュータや携帯電話などの情報処理端末によっても達成可能なものであり、これら情報処理端末によって構成されるシステムについても本発明の範疇に入るものである。
【0061】
なお、本発明の実施の形態に係る情報配信サービスシステムは上記のような仕組みによってリアルタイムで他車輌からの映像を参照することできるので、個人情報秘匿性などを考慮しなくてはならない。
【0062】
本発明の実施の形態に係る情報配信サービスシステムでは、このような個人情報秘匿を考慮し、映像ファイルの発信元車輌を特定できないようにするため、受信側システムの現在位置を通知した端末のみ作動することにし、受信側端末の一定範囲以内のアイコンを表示しないようにして、画像を受信できないようにする。情報配信サービスセンター側システムでこの個人情報秘匿システムの設定を変更できるようにするとよい。
【0063】
このような現在位置を通知して映像を送信する仕組みは、次のような例がある。車輌100、100’、100’’側システムは専用のGPS装置とソフトウェアにて構成し、情報配信サービスセンター側システムへ暗号化した端末固有番号、時刻と現在位置データを随時送信し、サービスセンター側の認証を得る。情報配信サービスセンター側システムは、認証している期間のみ他車走行映像データやアイコンデータを端末側に送る仕組みとする。認証が得られない場合は、他車輌のアイコンや走行映像データを送信しない。
【0064】
なお、情報配信サービスセンター側システムにて映像送信専用車輌を設定し、この車輌の走行中の映像を送信すれば、先の個人情報秘匿制約の例外とできる。また、固定カメラによる映像提供サービスを情報配信サービスシステムに組み込みこむことにより、渋滞で有名な交差点などは常時映像が確認でき利便性が向上する。この固定カメラの映像も、当然、先の個人情報秘匿制約の例外にできる。このように、現在位置を通知しない端末にはこのような一般的な映像のみ利用できることにすると良い。
【0065】
次に、本発明の情報配信サービスシステムによる特定地点前後の最近映像の表示について説明する。情報配信サービスシステムのサービスセンターでは各車輌100、100’、100’’から送信された映像情報を時刻・位置の情報に基づき整理し、映像ファイルデータベース253に保存しているので、ユーザーが車輌側のシステム端末にて地図や交差点名、住所等にて特定地点を設定すれば、その付近の最新映像を随時センターが配信することが可能となる。現時刻にユーザーが要望する地点に他車輌が存在していなくても、最新の映像が確認できる。
【0066】
次に、本発明の情報配信サービスシステムによる複数の特定地点前後の最近映像の表示について説明する。あらかじめ複数の特定地点を設定しておき、これから通るルートを経路探索などにて設定された場合には、現地点から最も近い経路上の特定地点の映像を画像表示部130に表示する。表示方法は画面の一部にサブウインドーで常時表示したり、アイコンのみ表示して運転者の指示に基づき映像を表示するようにしても良い。表示中の特定地点を車輌が通過した場合には、次のルート上の特定地点を同様に表示する。次の特定地点の映像の切り替えは、通過後以外にも通過以前でもよい。たとえば、車輌が特定地点付近に到着し、車輌から特定地点を実際に目で確認できる地点で切り替えても良く、運転者の指示によって次々に表示地点を変更しても良い。
【0067】
次に、本発明の情報配信サービスシステムによる実写映像による経路案内について説明する。
情報配信サービスシステムのサービスセンターでは各車輌100、100’、100’’から送信された映像情報を時刻・位置の情報に基づき整理し、映像ファイルデータベース253に保存しているので、ユーザーが車輌側のシステム端末にて経路を設定すると、その情報に基づいて通過路線を判断してその路線に該当する画像があれば、その映像ファイルをユーザー端末に送信し表示することができる。映像ファイルを経路の順番に再生すると実写映像による経路の説明ができる。車輌の現在位置情報に基づき実写映像の再生速度を調整すると、常にこれから走る地点の映像を確認できるので、実際の映像による経路案内ができる。この映像にこれから走行する経路を矢印で示すとより分かり易い。
【0068】
なお、以上のような表示・案内についても、パーソナルコンピュータや携帯電話などの情報処理端末によっても達成可能なものであり、これらの情報処理端末によるシステム構成も本発明の範疇に入るものである。
【0069】
以下、本発明を実現するための補足的な事項について記載する。
【0070】
情報配信サービスセンター側システムの映像ファイルデータベース253には、HDDアレイシステムなどの瞬時にランダムアクセスが可能な記憶装置を用いることが適当である。
【0071】
また、映像ファイルデータベース253などの容量の関係などから、センター側の処理能力によっては全ての映像を処理できないので、処理映像を選別するなどの考え方を採用することも有効である。このとき、選別の条件としては、地点の重要度により選別することなどで対処する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態に係る情報配信サービスシステムの概念図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る情報配信サービスシステムの車輌側システムを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る情報配信サービスシステムにおける情報配信サービスセンター側システムを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る情報配信サービスシステムにおいて用いる基準ラインの概念を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る情報配信サービスセンター側システムにおけるデータ受信から映像ファイル化までの流れを示す図である。
【図6】、車両の走行状況と映像ファイルとの関係を示す図である。
【図7】映像ファイルに用いられるヘッダー情報の構造を示す図である。
【図8】映像ファイルに用いられるヘッダー情報の構造を示す図である。
【図9】映像ファイルに用いられるヘッダー情報の構造を示す図である。
【図10】映像ファイルに用いられるヘッダー情報の構造を示す図である。
【図11】走行例と映像ファイル種類との対応関係を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る情報配信サービスシステムにおける車輌側の画像表示部表示例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る情報配信サービスシステムにおける車輌側の画像表示部表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
100、100’、100’’・・・車輌、101・・・演算部、110・・・撮像部、111・・・画像解析部、120・・・計時部、121・・・位置情報取得部、122・・・車速センサ部、123・・・方位センサ部、124・・・雨滴センサ部、130・・・画像表示部、131・・・音声出力部、132・・・タッチパネル入力部、133・・・音声入力部、140・・・無線通信部、150・・・記憶部、151・・・地図データ記憶部、152・・・撮影画像データ記憶部、200・・・情報配信サービスセンター、201・・・データベース読み出し・書き込み部、210・・・画像データベース検索部、211・・・基準ライン検索部、213・・・画像データファイル分割部、214・・・画像データファイル格納部、230・・・通信部、231・・・データ受信部、232・・・データ配信部、250・・・データベース部、251・・・地図情報データベース、252・・・路線基準ラインデータベース、253・・・映像ファイルデータベース、300・・・個人宅、500・・・通信網、510・・・無線通信基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輌から収集した動画像データを情報配信サービスセンターから配信する情報配信サービスシステムであって、
車輌から送信される撮影画像データを受信するデータ受信部と、
路線区間データ、交差点区間データ、路線外区域データと、それぞれのデータ間を区切る基準ラインデータと、
該基準ラインをもとに、撮影画像データを分割して映像ファイル化する画像データファイル分割部と、
該画像データファイル分割部で分割された映像ファイルを映像ファイルデータベースに格納する画像データファイル格納部と、を有することを特徴とする情報配信サービスシステム。
【請求項2】
該交差点区間データの基準ラインは、交差点の進入部及び進出部に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の情報配信サービスシステム。
【請求項3】
該データ受信部は車輌から位置情報を受信し、該基準ラインは該位置情報に基づいて基準ラインを決定し、決定された基準ラインに基づいて撮影画像データを分割することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の情報配信サービスシステム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載の情報配信サービスシステムに対して、車輌外を撮影する撮影部で撮影した撮影画像データを送信する無線通信部を少なくとも有する情報配信車載装置であって、
路線区間データ、交差点区間データ、路線外区域データと、それぞれのデータ間を区切る基準ラインデータと、
該基準ラインをもとに、撮影画像データを分割して映像ファイル化する画像データファイル分割部と、を有し、
該無線通信部は該画像データファイル分割部で分割された映像ファイルを送信することを特徴とする情報配信車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−242691(P2008−242691A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80560(P2007−80560)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】