説明

感光性熱硬化型樹脂組成物、およびフレキシブルプリント配線板

【課題】臭素化エポキシ樹脂やハロゲン系難燃剤を用いずに優れた難燃性を得ることができ、解像性、密着性、耐熱性、耐薬品性、耐折性に優れ、燃焼時の臭化水素やダイオキシン類等の有害ガスの発生が抑制された感光性熱硬化型樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)1分子中に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基とを有し、希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分、(B)エポキシ基を有する熱硬化成分、(C)下記一般式[1]で示される(メタ)アクリロイル基含有リン化合物、


(但し、式中、Rは水素またはメチル基を示す。)
(D)ホスファゼン化合物、(E)光重合開始剤、および(F)希釈剤を含有する感光性熱硬化型樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭素化エポキシ樹脂やハロゲン系難燃剤を用いずに優れた難燃性を得ることができ、解像性、密着性、耐熱性、耐薬品性、耐折性に優れ、燃焼時の臭化水素やダイオキシン類等の有害ガスの発生が抑制された感光性熱硬化型樹脂組成物と、これを用いたフレキシブルプリント配線板とに関する。
【背景技術】
【0002】
基板上にスクリーン印刷等の方法によって形成した配線パターンを外部環境から保護し、また電子部品をプリント配線板に表面実装する際に不必要な部分にはんだが付着しないように、カバーコート、またはソルダーマスクと呼ばれる保護膜が用いられている。このような保護膜は、例えばエポキシ樹脂組成物からなるものとされているが、エポキシ樹脂が燃焼しやすいことからそのまま用いることができない。そこで、難燃性を付与するために、ハロゲン系難燃剤を添加したり、あるいはエポキシ樹脂として骨格に臭素を有するものを用いたりしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところが、最も代表的な臭素系難燃剤であるデカブロモフェニルオキサイドが焼却時に有毒な臭素化ジベンゾオキサイドとフランとを生成することが報告されて以来、臭素系難燃剤全体に対する安全性が疑われている。また、これまでの臭素系難燃剤を使用した樹脂についても、焼却時にダイオキシン類のような有害ガスが発生することから、焼却時、廃棄時の環境負荷が大きい。
【0004】
さらに、近年、環境問題への対応から、臭素系難燃剤の代わりに有機リン系難燃剤が用いられている。しかしながら、有機リン系難燃剤は必ずしも難燃性に優れず、臭素系難燃剤と同等の難燃性を付与する場合、臭素系難燃剤に比較して多量に添加しなければならず、特性低下やブリード等の問題がある。このような特性低下等を改善するために、例えば特定の化合物を用いた樹脂系の検討がなされているが、未だ十分な特性を有するものとはなっていない(例えば、特許文献2、3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−54434号公報
【特許文献2】特開2001−72835号公報
【特許文献3】特開2007−147720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、臭素化エポキシ樹脂やハロゲン系難燃剤を用いずに優れた難燃性を得ることができ、解像性、密着性、耐熱性、耐薬品性、耐折性に優れ、燃焼時の臭化水素やダイオキシン類等の有害ガスの発生が抑制された感光性熱硬化型樹脂組成物を提供することを目的としている。また、本発明は、上記した感光性熱硬化型樹脂組成物を用いて得られる難燃性等に優れ、燃焼時の臭化水素やダイオキシン類等の有害ガスの発生が抑制されたフレキシブルプリント配線板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の感光性熱硬化型樹脂組成物は、アルカリ現像型の感光性熱硬化型樹脂組成物であって、(A)1分子中に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基とを有し、希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分、(B)エポキシ基を有する熱硬化成分、(C)下記一般式[1]で示される(メタ)アクリロイル基含有リン化合物、
【化1】

(但し、式中、Rは水素またはメチル基を示す。)
(D)ホスファゼン化合物、(E)光重合開始剤、および(F)希釈剤を含有することを特長とする。
【0008】
本発明の感光性熱硬化型樹脂組成物においては、前記(D)ホスファゼン化合物が下記一般式[2]または[3]で示されるホスファゼンオリゴマーを含有することが好ましい。
【化2】

(但し、式中、R、Rは、同一または互いに異なって、水素原子、アミノ基、またはハロゲンを含まない炭素数1〜12以下の1価の有機基を示し、R、Rは、同一または互いに異なって、水素原子、水酸基、または炭素数1〜12以下の1価の有機基を示し、mは3以上10以下の整数を示す。)
【化3】

(但し、式中、R、Rは、同一または互いに異なって、水素原子、アミノ基、またはハロゲンを含まない炭素数1〜12以下の1価の有機基を示し、nは3以上10以下の整数を示す。)
【0009】
また、本発明の感光性熱硬化型樹脂組成物においては、前記(A)希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分100質量部に対して、前記(B)エポキシ基を有する熱硬化成分1質量部以上100質量部以下、前記(C)(メタ)アクリロイル基含有リン化合物1質量部以上50質量部以下、前記(D)ホスファゼン化合物1質量部以上50質量部以下、前記(E)光重合開始剤1質量部以上50質量部以下、および前記(F)希釈剤を1質量部以上100質量部以下含有することが好ましい。
【0010】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、ポリイミド層と、前記ポリイミド層の少なくとも一方の主面に積層される銅層とを有するフレキシブルプリント配線板であって、少なくとも一方の主面に上記した本発明の感光性熱硬化型樹脂組成物からなる樹脂層を有することを特長とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定の(メタ)アクリロイル基含有リン化合物とホスファゼン化合物とを組み合わせて用い、特にホスファゼン化合物として特定のホスファゼン化合物を組み合わせて用いることで、臭素化エポキシ樹脂やハロゲン系難燃剤を用いずに優れた難燃性を得ることができ、解像性、密着性、耐熱性、耐薬品性、耐折性に優れ、燃焼時の臭化水素やダイオキシン類等の有害ガスの発生が抑制された感光性熱硬化型樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、このような感光性熱硬化型樹脂組成物を用いることで、難燃性等に優れ、燃焼時の臭化水素やダイオキシン類等の有害ガスの発生が抑制されたフレキシブルプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の感光性熱硬化型樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物という)は、アルカリ現像型の樹脂組成物であって、(A)1分子中に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基とを有し、希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分、(B)エポキシ基を有する熱硬化成分、(C)下記一般式[1]で示される(メタ)アクリロイル基含有リン化合物、(D)ホスファゼン化合物、(E)光重合開始剤、および(F)希釈剤を含有することを特長とする。
【化4】

(但し、式中、Rは水素またはメチル基を示す。)
【0013】
(A)成分の希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分は、1分子中に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基とを有するものであって、希アルカリ溶液に可溶なものである。この樹脂成分は、紫外線等の活性エネルギー線の照射によって(E)成分の光重合開始剤から発生するラジカルにより分子中の(メタ)アクリロイル基が重合し、結果として樹脂組成物を不溶化させるものである。
【0014】
このような希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分としては、例えばエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸をエステル化反応させてアクリル変性し、さらに酸無水物を付加して得られるエポキシアクリレート化合物(例えば、エポキシアクリレートオリゴマー)が挙げられる。
【0015】
このエポキシアクリレート化合物の合成に用いられるエポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂が挙げられ、特にビスフェノール型エポキシ樹脂が好適なものとして挙げられる。また、エポキシアクリレート化合物の合成に用いられる(メタ)アクリル酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの混合物が挙げられる。さらに、エポキシアクリレート化合物の合成に用いられる酸無水物としては、例えば無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、特に無水コハク酸、無水フタル酸が好適なものとして挙げられる。
【0016】
また、(A)成分の希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分としては、例えばポリオール化合物と、分子中に2個の無水物を有する多塩基酸無水物と、分子中に1個のエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるカルボキシル基含有ウレタン化合物(例えば、カルボキシル基含有ウレタンオリゴマー)が挙げられる。
【0017】
(A)成分の希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分は、50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下の酸価を有することが好ましい。酸価が50mgKOH/g未満であると、アルカリ溶解性が低下してアルカリ現像が困難となるおそれがあり、200mgKOH/gを超えると、現像時の膜減りが大きく、解像度が著しく低下するおそれがある。(A)成分のアルカリ可溶成分の酸価は、好ましくは80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である。
【0018】
(A)成分の希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分の含有量は、樹脂組成物の全体中、20質量%以上70質量%以下であることが好ましい。(A)成分の希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分の含有量が20質量%未満であると、活性エネルギー線の照射による樹脂組成物の不溶化が十分でなくなるおそれがあり、また70質量%を超えると、樹脂組成物の耐熱性等が十分でなくなるおそれがある。
【0019】
(B)成分のエポキシ基を有する熱硬化成分は、例えば分子中に1個以上のグリシジルエーテル基を有する化合物であり、具体的には一般にエポキシ樹脂といわれるものが挙げられる。このようなエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェニルフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック等のポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるグリシジルエーテル類;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルフォン等に代表されるグリシジルアミン類等が挙げられ、好ましくはエポキシ当量130g/eq以上1500g/eq以下のものを単独で、または混合して用いることができる。
【0020】
(B)成分のエポキシ基を有する熱硬化成分の含有量は、(A)成分の希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分100質量部に対し、1質量部以上100質量部以下が好ましい。(B)成分のエポキシ基を有する熱硬化成分の含有量が1質量部未満であると、樹脂組成物の硬化物の耐熱性等が十分でなくなるおそれがあり、100質量部を超えると、樹脂組成物のアルカリ溶解性が低下してアルカリ現像が困難となるおそれがある。
【0021】
また、樹脂組成物には、密着性、耐薬品性、耐熱性等の特性を一層向上させるために、エポキシ樹脂硬化剤を含有させることが好ましい。このようなエポキシ樹脂硬化剤としては、例えば2MZ、2E4MZ、C11Z、C17Z、2PZ、1B2MZ、2MZ−CN、2E4MZ−CN、C11Z−CN、2PZ−CN、2PHZ−CN、2MZ−CNS、2E4MZ−CNS、2PZ−CNS、2MZ−AZINE、2E4MZ−AZINE、C11Z−AZ1NE、2MA−OK、2P4MHZ、2PHZ、2P4BHZ等のイミダゾール誘導体(いずれも四国化成工業社製);アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類;ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類;これらポリアミン類の有機酸塩および/またはエポキシアダクト;三フッ化ホウ素のアミン錯休;エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジン等のトリアジン誘導体類;トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、ヘキサ(N−メチル)メラミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、m−アミノフェノール等の三級アミン類;ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、フェノールノボラック、アルキルフェノールノボラック等のポリフェノール類;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−2−シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン類、トリ−n−ブチル(2,5−ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類、前記多塩基酸無水物;ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボロエート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6−トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェート、イルガキュアー261(チバ・ガイギー社製)、オプトマーSP−170(旭電化社製)等
の光カチオン重合触媒;スチレン−無水マレイン酸樹脂;フェニルイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物やトリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物等の公知慣用の硬化剤類または硬化促進剤類が挙げられ、これらは単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0022】
エポキシ樹脂硬化剤の含有量は、(A)成分の希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分100質量部に対し、0.01質量部以上25質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上15質量部以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂硬化剤の含有量が0.01質量部未満であると、樹脂組成物を十分に硬化させることができないおそれがあり、25質量部を超えると、樹脂組成物の硬化物の耐熱性等が低下するおそれがある。
【0023】
(C)成分の(メタ)アクリル基含有リン化合物は、紫外線等の活性エネルギー線の照射によって(E)成分の光重合開始剤から発生するラジカルにより重合して樹脂組成物を不溶化させると共に、(D)成分のホスファゼン化合物と併用することで、難燃性を初めとする諸特性を向上させるために含有されるものである。この(C)成分の(メタ)アクリル基含有リン化合物は、上記一般式[1]で示されるものであり、具体的には下記化学式[1a]、[1b]で示されるものである。
【0024】
【化5】

【0025】
【化6】

【0026】
このような(メタ)アクリル基含有リン化合物は、例えば特開平7−48394号公報に記載される方法に従って製造することができる。(C)成分の(メタ)アクリル基含有リン化合物の含有量は、(A)成分の希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下が好ましい。(C)成分の(メタ)アクリル基含有リン化合物の含有量が1質量部未満であると、樹脂組成物の硬化物の難燃性が十分でなくなるおそれがあり、また50質量部を超えると、樹脂組成物の硬化物の密着性が低下し、またクラック等が発生しやすくなる。
【0027】
(D)成分のホスファゼン化合物は、(C)成分の(メタ)アクリル基含有リン化合物と併用することで、難燃性を初めとする諸特性を向上させるために含有されるものである。このようなホスファゼン化合物としては、難燃性の付与に用いられる公知のホスファゼン化合物を用いることができるが、例えば下記一般式[2]、[3]で示されるホスファゼンオリゴマーを好適に用いることができる。
【0028】
【化7】

(但し、式中、R、Rは、同一または互いに異なって、水素原子、アミノ基、またはハロゲンを含まない炭素数1〜12以下の1価の有機基を示し、R、Rは、同一または互いに異なって、水素原子、水酸基、または炭素数1〜12以下の1価の有機基を示し、mは3以上10以下の整数を示す。)
【0029】
【化8】

(但し、式中、R、Rは、同一または互いに異なって、水素原子、アミノ基、またはハロゲンを含まない炭素数1〜12以下の1価の有機基を示し、nは3以上10以下の整数を示す。)
【0030】
一般式[2]、[3]のR、R、R、Rにおける1価の有機基としては、例えばアルキル基、アリール基、シアノアリール基、シアネートアリール基、アリル基が挙げられる。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基が挙げられる。アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n−プロピルフェニル基、イソブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基等が挙げられる。シアノアリール基としては、例えば4−シアノフェニル基、4−シアノビフェニル基等が挙げられる。シアネートアリール基としては、例えばシアネートフェニル基が挙げられる。
【0031】
また、一般式[2]の末端基であるR、Rにおける1価の有機基としては、例えばアルキル基、アリール基、シアノアリール基、シアネートアリール基、アリル基、シアネート基、アルコキシル基、アリールオキシ基が挙げられる。アルキル基、アリール基、シアノアリール基、シアネートアリール基としては、上記したR等におけるものと同様のものが挙げられる。アルコキシル基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基が挙げられる。また、アリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基が挙げられる。
【0032】
より好ましいホスファゼン化合物としては、例えばプロポキシホスファゼンオリゴマー、フェノキシホスファゼンオリゴマー、シアネートフェニルホスファゼンオリゴマー、シアノフェノキシホスファゼンオリゴマー等が挙げられる。さらに、耐熱性、耐湿性、難燃性、耐薬品性等の観点から、融点80℃以上のホスファゼン化合物が好適に用いられる。このようなホスファゼン化合物は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
(D)成分のホスファゼン化合物の含有量は、(A)成分の希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分100質量部に対し、1質量部以上50質量部以下が好ましく、特に1質量部以上30質量部以下が好ましい。(D)成分のホスファゼン化合物の含有量が1質量部未満であると、樹脂組成物の硬化物の難燃性が十分でなくなるおそれがあり、50質量部を超えると、樹脂組成物の硬化物の密着性が低下し、またクラック等が発生しやすくなる。
【0034】
(E)成分の光重合開始剤は、紫外線等の活性エネルギー線の照射により活性ラジカルを発生する活性ラジカル発生剤であり、公知慣用のものを用いることができる。
【0035】
活性ラジカル発生剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−アミノアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’ −ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4−ベンゾイル−4’ −メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
光重合開始剤を複数種組み合わせて用いる場合には、例えば2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュアー907、チバ・ガイギー社製)と、2,4−ジエチルチオキサントン(カヤキュアーDETX、日本化薬社製)、2−イソプロピルチオキサントン、または4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイドとの組み合わせ等が好ましいものとして挙げられる。
【0037】
(E)成分の光重合開始剤の含有量は、(A)成分の希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分100質量部に対し、1質量部以上50質量部以下が好ましい。(E)成分の光重合開始剤の含有量が1質量部未満であると、活性エネルギー線の照射による樹脂組成物の不溶化が十分でなくなるおそれがあり、50質量部を超えると、樹脂組成物の硬化物の密着性が低下し、またクラック等が発生しやすくなる。
【0038】
また、樹脂組成物には、必要に応じて光増感剤を含有させることができる。光増感剤としては、例えばN,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類が挙げられ、これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
(F)成分の希釈剤としては、有機溶剤、光重合性モノマーが挙げられる。光重合性モノマーは、(A)成分の希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分を希釈し、塗布しやすい状態まで粘度を調整すると共に、光重合性を増強するものである。また、有機溶剤は、(A)成分の希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分を希釈し、塗布しやすい状態まで粘度を調整すると共に、塗布した後、乾燥させることによって造膜させるものである。従って、用いる希釈剤の種類に応じて、フォトマスクを塗膜に接触させる接触方式または非接触方式のいずれかの露光方式を選択するものである。
【0040】
有機溶剤としては、例えばエチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレンゲリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等を挙げることができる。
【0041】
光重合性モノマーとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート類;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコール;これら多価アルコールのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート類;カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のε−カプロラクトン変性(メタ)アクリレート類;メラミン(メタ)アクリレート等が挙げられる。このような希釈剤は、単独で、または2種を混合物して用いることができる。
【0042】
(F)成分の希釈剤の含有量は、特に限定されるものではなく、樹脂組成物の塗布方法に応じて適宜選択することができるが、例えば(A)成分の希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分100質量部に対し、1質量部以上100質量部以下が好ましく、特に10質量部以上80質量部以下が好ましい。(F)成分の希釈剤の含有量が1質量部未満または100質量部を超える場合、いずれも樹脂組成物の塗布性が優れないために好ましくない。
【0043】
本発明では、(C)成分の(メタ)アクリル基含有リン化合物、(D)成分のホスファゼン化合物と共に、これら以外の有機リン化合物を含有させもよい。このような有機リン化合物を含有させることにより、難燃剤の添加量を少なくした場合でも十分な難燃性を得ることができる点で好ましい。このような有機リン化合物としては、感光性熱硬化型樹脂組成物の難燃剤として一般に用いられている有機リン化合物であればよく、例えばリン酸メラミン化合物、ホスフィン酸塩等の有機リン化合物を挙げることができる。
【0044】
リン酸メラミン化合物としては、下記一般式[4]で示されるリン酸メラミン化合物が挙げられる。これは、リン酸とメラミンが塩の状態で存在するものである。
【0045】
【化9】

(但し、式中、qは1以上10以下の整数である。)
【0046】
ホスフィン酸塩としては、下記一般式[5]、[6]で示されるホスフィン酸塩が挙げられる。
【0047】
【化10】

(但し、式中、R、Rは、同一または互いに異なって、直鎖状若しくは分枝鎖状の炭素数1以上6以下のアルキル基、または炭素数6以上12以下のアリール基であり、Ms+は、イオン化したMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、およびK、ならびにプロトン化された窒素塩基から選ばれる少なくとも一つのイオンであり、r、s、tはそれぞれ1以上4以下であり、かつr=s×tを満たすものである。)
【化11】

(但し、式中、R10、R11は、同一または互いに異なって、直鎖状若しくは分枝鎖状の炭素数1以上6以下のアルキル基、または炭素数6以上12以下のアリール基であり、R12は、直鎖状若しくは分枝鎖状の炭素数1以上10以下のアルキレン基、炭素数6以上10以下のアリーレン基、炭素数6以上10以下のアルキルアリーレン基、または炭素数6以上10以下のアリールアルキレン基であり、Mv+は、イオン化したMg、Ca、A1、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、およびK、ならびにプロトン化された窒素塩基から選ばれる少なくとも一つのイオンであり、u、v、Wはそれぞれ1以上4以下であり、かつ2×u=v×wを満たすものである。)。
【0048】
なお、一般式[5]、[6]のMs+、Mv+におけるプロトン化された窒素塩基としては、例えば、アンモニア、メラミン、トリエタノールアミン等の窒素塩基がプロトン化されたものが挙げられ、特にアンモニウムイオン(NH)であることが好ましい。
【0049】
また、一般式[5]、[6]におけるR〜R11のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、第三ブチル基、n−ペンチル基が挙げられ、アリール基としては、例えばフェニル基が挙げられる。また、R12のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、第三ブチレン基、n−ペンチレン基、n−オクチレン基、n−ドデシレン基等が挙げられ、アリーレン基としては、例えばフェニレン基、ナフチレン基が挙げられ、アルキルアリーレン基としては、例えばメチルフェニレン基、エチルフェニレン基、第三ブチルフェニレン基、メチルナフチレン基、エチルナフチレン基、第三ブチルナフチレン基等が挙げられ、アリールアルキレン基としては、例えばフェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基、フェニルブチレン基等が挙げられる。
【0050】
また、その他の有機リン化合物として、下記一般式[7]で表されるホスフィノイルプロピオン酸が挙げられる。
【化12】

【0051】
その他の有機リン化合物の含有量は、(A)成分の希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分100質量部に対し、1質量部以上50質量部以下が好ましく、特に1質量部以上30質量部以下が好ましい。また、その他の有機リン化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
樹脂組成物には、密着性、硬度等を向上させる目的で、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉等の公知慣用の無機充填剤を必要に応じて含有させることができる。無機充填剤を含有させる場合、その含有量は、樹脂組成物全体に対し、60質量%以下が好ましく、特に5質量%以上40質量%以下が好ましい。
【0053】
さらに、樹脂組成物には、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の公知慣用の重合禁止剤、アスベスト、オルベン、ベントン、モンモリロナイト等の公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤、レベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤等の公知慣用の添加剤を必要に応じて含有させることができる。
【0054】
また、アクリル酸エステル等のエチレン性不飽和化合物の共重合体類や、多価アルコール類と多塩基酸化合物とから合成されるポリエステル樹脂類等の公知慣用のバインダー樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性オリゴマー類等を、ソルダーレジスト等としての諸特性に影響を及ぼさない範囲で用いることができる。
【0055】
本発明の樹脂組成物は、上記した(A)〜(F)の各成分を必須成分とし、必要に応じて、かつ本発明の主旨に反しない限度において、上記したようなその他の成分を添加・配合した後、三本ロールミル等で均一に混合することによって製造することができる。
【0056】
このようにして製造された樹脂組成物は、例えば配線パターンを形成したフレキシブル銅張積層板上に、スクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の方法により塗布し、60〜100℃の温度で熱処理して有機溶剤を揮発乾燥させて塗膜とする。その後、この塗膜に所定の露光パターンを形成したフォトマスクを通して紫外線等の活性エネルギー線を照射して選択的に露光し、未露光部を希アルカリ水溶液によって現像することによりレジストパターンとする。そして、このレジストパターンを140〜180℃の温度に加熱することより、熱硬化性成分を硬化させてレジスト膜を得ることができる。
【0057】
現像に用いるアルカリ水溶液としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等が挙げられる。また、露光に用いる照射光源としては、例えば低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプが挙げられる。
【0058】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、ポリイミド層と、このポリイミド層の少なくとも一方の主面に積層される銅層とを有するものであって、少なくとも一方の主面に上記した本発明の樹脂組成物からなる樹脂層を有するものである。フレキシブルプリント配線板を構成するポリイミド層と銅層とは直接積層されていてもよいし、接着剤層を介して積層されていてもよい。銅層部分には必要に応じて配線パターンを形成することができ、また穴あけスルーホールメッキを施すことができる。
【0059】
このようなフレキシブルプリント配線板は、例えばポリイミドフィルムの片面または両面に銅箔を貼り合わせたフレキシブル銅張積層板の該銅箔部分に配線パターンを形成した後、上記したように配線パターンを覆うようにして本発明の樹脂組成物を塗布し、露光・現像し、熱硬化させることに樹脂層を形成することで容易に製造することができる。
【0060】
また、本発明のフレキシブルプリント配線板には、接着剤としての熱硬化性樹脂組成物等を介して補強板を重ね合わせて加熱加圧成形することで、本発明の新たなフレキシブルプリント配線板としての補強板付きフレキシブルプリント配線板とすることができる。さらに、本発明のフレキシブルプリント配線板には、接着剤としての熱硬化性樹脂組成物等を介して他のフレキシブルプリント配線板を重ね合わせて加熱加圧成形し、必要に応じてスルーホールの形成、スルーホールメッキを行い、回路形成することで、本発明の新たなフレキシブルプリント配線板としての多層フレキシブルプリント配線板とすることができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明する。
【0062】
まず、実施例および比較例の感光性熱硬化型樹脂組成物の製造について説明する。なお、それぞれの感光性熱硬化型樹脂組成物の配合量は表1に示すとおりである。
【0063】
(リン含有エポキシ樹脂の合成)
比較例の樹脂組成物の調製に用いるリン含有エポキシ樹脂を以下のようにして合成した。すなわち、エポキシ樹脂としてビスフェノールF型ジグリシジルエーテル(EPICLON830、大日本インキ化学工業社製、エポキシ当量185g/eq)453.5gと、リン化合物として10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(HCA−HQ、三光化学社製、分子量324.3)104.5gとを、反応触媒としてテトラメチルアンモニウムクロライド0.5gを水溶液として用い、エタノール中においてリン化合物とエポキシ樹脂とを当量比0.140/1で100〜180℃の温度で5時間反応させ、エポキシ当量300g/eq、リン含有量2.0%のリン含有エポキシ樹脂を得た。
【0064】
(実施例1)
1分子中に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基とを有し、希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分としてエポキシアクリレート化合物(カヤラッドZFRl122、日本化薬社製)44質量部、希釈剤として光重合性モノマー(カヤラッドDPHA、日本化薬社製)6.5質量部、光重合開始剤として光重合開始剤1(ダロキュアTPO、チバ・ガイギー社製)4.5質量部と光重合開始剤2(イルガキュア184、チバ・ガイギー社製)2.0質量部、(メタ)アクリル基含有リン化合物として化学式[1a]で示される(メタ)アクリル基含有リン化合物13質量部、熱硬化成分としてビフェニル型エポキシ樹脂(エピコートYL6121H、ジャパンエポキシレジン社製)13質量都、硬化剤としてイミダゾール系重合触媒(2E4MZ、四国化成工業社製)1.3質量部とメラミン1.3質量部、硫酸バリウム(B−30、堺化学工業社製)6.5質量部、フタロシアニン・グリーン1.3質量部、微粉シリカ(アエロジルR972、日本アエロジル社製)3.3質量部、およびホスファゼン化合物としてフェノキシホスファゼンオリゴマー(融点110℃)3.3質量部を配合し、3本ロールミルで混練することにより樹脂組成物(感光性熱硬化型樹脂組成物)を製造した。
【0065】
(実施例2)
実施例1の樹脂組成物の製造において、(メタ)アクリル基含有リン化合物として一般式[1a]で示される(メタ)アクリル基含有リン化合物の代わりに、一般式[1b]で示される(メタ)アクリル基含有リン化合物を用いて製造を行った。
【0066】
(実施例3)
実施例2の樹脂組成物の製造において、ホスファゼン化合物としてフェノキシホスファゼンオリゴマー(融点110℃)のみを用いる代わりに、フェノキシホスファゼンオリゴマー(融点110℃)2.3質量部とシアノフェノキシホスファゼン(融点120℃)1.0質量部とを用いて製造を行った。
【0067】
(案施例4)
実施例1の樹脂組成物の製造において、(メタ)アクリル基含有リン化合物として一般式[1a]で示される(メタ)アクリル基含有リン化合物のみを用いる代わりに、一般式[1a]で示される(メタ)アクリル基含有リン化合物6.5質量部と、一般式[1b]で示される(メタ)アクリル基含有リン化合物6.5質量部とを用いて製造を行った。
【0068】
(実施例5)
1分子中に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基とを有し、希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分としてエポキシアクリレート化合物(カヤラッドZFRl122、日本化薬社製)51質量部、希釈剤として光重合性モノマー(カヤラッドDPHA、日本化薬社製)12.5質量部、光重合開始剤として光重合開始剤1(ダロキュアTPO、チバ・ガイギー社製)4.5質量部と光重合開始剤2(イルガキュア184、チバ・ガイギー社製)2.0質量部、(メタ)アクリル基含有リン化合物として化学式[1a]で示される(メタ)アクリル基含有リン化合物6.5質量部、熱硬化成分としてビフェニル型エポキシ樹脂(エピコートYL6121H、ジャパンエポキシレジン社製)6.5質量部、硬化剤としてイミダゾール系重合触媒(2E4MZ、四国化成工業社製)1.3質量部とメラミン1.3質量部、硫酸バリウム(B−30、堺化学工業社製)6.5質量部、フタロシアニン・グリーン1.3質量部、微粉シリカ(アエロジルR972、日本アエロジル社製)3.3質量部、ホスファゼン化合物としてフェノキシホスファゼンオリゴマー(融点110℃)3.3質量部を配合し、3本ロールミルで混練することにより樹脂組成物を製造した。
【0069】
(比較例1)
1分子中に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基とを有し、希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分としてエポキシアクリレート化合物(カヤラッドZPRl122、日本化薬社製)51質量部、希釈剤として光重合性モノマー(カヤラッドDPHA、日本化薬社製)12.5質量部、光重合開始剤として光重合開始剤1(ダロキュアTPO、チバ・ガイギー社製)4.5質量部と光重合開始剤2(イルガキュア184、チバ・ガイギー社製)2.0質量部、熱硬化成分として臭化エポキシ樹脂(エピクロン1121、大日本インキ社製)13質量部、硬化剤としてイミダゾール系重合触媒(2E4MZ、四国化成工業社製)1.3質量部とメラミン1.3質量部、硫酸バリウム(B−30、堺化学工業社製)6.5質量部、フタロシアニン・グリーン1.3質量部、微粉シリカ(アエロジルR972、日本アエロジル社製)3.3質量部、およびホスファゼン化合物としてフェノキシホスファゼンオリゴマー(融点110℃)3.3質量部を配合し、3本ロールミルで混練することにより樹脂組成物を製造した。
【0070】
(比較例2)
比較例1の樹脂組成物の製造において、臭素化エポキシ樹脂を用いる代わりに、上記したリン含有エポキシ樹脂を用いて製造を行った。
【0071】
(比較例3)
比較例2の樹脂組成物の製造において、リン含有エポキシ樹脂の配合量を13質量部から16.3質量部へと変更し、かつホスファゼン化合物を配合せずに樹脂組成物を製造した。
【0072】
(比較例4)
1分子中に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基とを有し、希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分としてエポキシアクリレート化合物(カヤラッドZFRl122、日本化薬社製)53.3質量部、希釈剤として光重合性モノマー(カヤラッドDPHA、日本化薬社製)13.5質量部、光重合開始剤として光重合開始剤1(ダロキュアTPO、チバ・ガイギー社製)4.5質量部と光重合開始剤2(イルガキュア184、チバ・ガイギー社製)2.0質量部、硬化剤としてイミダゾール系重合触媒(2E4MZ、四国化成工業株式会社製)1.3質量部とメラミン1.3質量部、硫酸バリウム(B−30、堺化学工業社製)6.5質量部、フタロシアニン・グリーン1.3質量部、微粉シリカ(アエロジルR972、日本アエロジル社製)3.3質量部、ホスファゼン化合物としてフェノキシホスファゼンオリゴマー(融点110℃)13.0質量部を配合し、3本ロールミルで混練することにより樹脂組成物を製造した。
【0073】
次に、パターン形成された銅張ポリイミドフィルム基板(銅厚18μm/ポリイミドフィルム厚25μm)に、150メッシュポリエステルスクリーンを用いたスクリーン印刷により実施例および比較例の樹脂組成物を20〜30μmの厚さになるように全面塗布し、80℃の熱風乾燥機により30分間乾燥させて塗膜を形成した。
【0074】
その後、レジストパターンのネガフィルムを塗膜に接触させ、紫外線照射露光装置を用いて紫外線を照射した(露光量400mJ/cm)。そして、1質量%濃度の炭酸ナトリウム水溶液を用いて1kgf/cm、1分間のスプレーで現像し、未露光部を溶解除去した。さらに、150℃×60分の条件で熱硬化させて硬化膜を得た。
【0075】
得られた硬化膜について、以下に示す方法および基準に基づいて、難燃性、絶縁抵抗、燃焼ガス分析、密着性、鉛筆硬度、解像度、はんだ耐熱性、耐薬品牲、耐折性を測定、評価した。結果を表1に合わせて示す。
【0076】
[難燃性試験]
UL94難燃性試験に準じて試験を行った。
[絶縁抵抗]
IEC−PB112に準じて試験を行った。
[燃焼ガス分析]
空気中、サンプルを750℃で10分間燃焼させ、その際に発生したガスを吸収液としての水に吸収させてイオンクロマトグラフィにより分析し、発生ガス100g中の臭化水素濃度を算出した。
[密着性]
試験基板の硬化膜表面をJIS D 0202に準じて100升にクロスカットした試験片について、セロハンテープによるピーリング試験を行い、剥れた枚数を調べた。
[鉛筆硬度]
JIS K 5400に準じて測定した。
[解像性]
電子顕微鏡を用い、基板上でアルカリ現像したときの開口状態を確認した。
[はんだ耐熱性]
260℃のはんだ浴上に試験片を1分間浮かべて膨れの有無を観察し、以下の基準により評価を行った。◎…膨れなし、○…一部に膨れ有り、×…全体に膨れ有り
[耐薬品性]
10%硫酸、10%水酸化ナトリウム水溶液、イソプロピルアルコール、メタノール、メチルエチルケトンのそれぞれに試験片を室温で30分間浸漬して外観を確認し、以下の基準により評価を行った。○…外観に変化なし、×…外観に変化有り
[耐折性]
JIS C 6471に準じ、MlT耐折性試験機を用いてR=0.8mm、荷重4.9Nで硬化膜にクラックが発生するまでの回数を測定した。
【0077】
【表1】

【0078】
表1から明らかなように、実施例の樹脂組成物については、難燃性に優れると共に、臭化水素の発生が抑制されており、密着性、硬度、解像性、はんだ耐熱性、耐薬品性、耐折性についても十分な特性を有し、従来の臭素化エポキシ樹脂あるいはリン含有エポキシ樹脂を用いた樹脂組成物に比べて優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に(メタ)アクリロイル基とカルボキシル基とを有し、希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分、
(B)エポキシ基を有する熱硬化成分、
(C)下記一般式[1]で示される(メタ)アクリロイル基含有リン化合物、
【化1】

(但し、式中、Rは水素またはメチル基を示す。)
(D)ホスファゼン化合物、
(E)光重合開始剤、および
(F)希釈剤
を含有することを特徴とする感光性熱硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記(D)ホスファゼン化合物は、下記一般式[2]または[3]で示されるホスファゼンオリゴマーを含有することを特徴とする請求項1記載の感光性熱硬化型樹脂組成物。
【化2】

(但し、式中、R、Rは、同一または互いに異なって、水素原子、アミノ基、またはハロゲンを含まない炭素数1〜12以下の1価の有機基を示し、R、Rは、同一または互いに異なって、水素原子、水酸基、または炭素数1〜12以下の1価の有機基を示し、mは3以上10以下の整数を示す。)
【化3】

(但し、式中、R、Rは、同一または互いに異なって、水素原子、アミノ基、またはハロゲンを含まない炭素数1〜12以下の1価の有機基を示し、nは3以上10以下の整数を示す。)
【請求項3】
前記(A)希アルカリ溶液に可溶な樹脂成分100質量部に対して、前記(B)エポキシ基を有する熱硬化成分1質量部以上100質量部以下、前記(C)(メタ)アクリロイル基含有リン化合物1質量部以上50質量部以下、前記(D)ホスファゼン化合物1質量部以上50質量部以下、前記(E)光重合開始剤1質量部以上50質量部以下、および前記(F)希釈剤を1質量部以上100質量部以下含有することを特徴とする請求項1または2記載の感光性熱硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
ポリイミド層と、前記ポリイミド層の少なくとも一方の主面に積層される銅層とを有するフレキシブルプリント配線板であって、
少なくとも一方の主面に請求項1乃至3のいずれか1項記載の感光性熱硬化型樹脂組成物からなる樹脂層を有することを特徴とするフレキシブルプリント配線板。

【公開番号】特開2010−191215(P2010−191215A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35879(P2009−35879)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】