成膜装置、成膜方法及び記憶媒体
【課題】回転テーブルに基板を載置し、この基板を回転させて基板の表面に互いに反応する複数の反応ガスを順番に供給して反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成するにあたり、基板上にて複数の反応ガスが混合されることを防止しかつ反応ガスの消費量を抑えることができる技術を提供すること。
【解決手段】回転テーブルの回転方向において第1の反応ガス供給手段と第2の反応ガス供給手段との間に分離ガス供給手段を設け、この分離ガス供給手段の前記回転方向両側にて低い天井面を設けることで分離領域Dに前記反応ガスが侵入することを阻止すると共に、前記回転テーブルの回転中心部と真空容器とにより区画した中心部領域から回転テーブルの周縁に向けて分離ガスを吐出する。また第1の反応ガス供給手段と第2の反応ガス供給手段は、真空容器の径方向に伸び、基板の通過領域と対向するガスノズルにより構成する。
【解決手段】回転テーブルの回転方向において第1の反応ガス供給手段と第2の反応ガス供給手段との間に分離ガス供給手段を設け、この分離ガス供給手段の前記回転方向両側にて低い天井面を設けることで分離領域Dに前記反応ガスが侵入することを阻止すると共に、前記回転テーブルの回転中心部と真空容器とにより区画した中心部領域から回転テーブルの周縁に向けて分離ガスを吐出する。また第1の反応ガス供給手段と第2の反応ガス供給手段は、真空容器の径方向に伸び、基板の通過領域と対向するガスノズルにより構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを多数回実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置、成膜方法及びこの方法を実施するプログラムを格納した記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおける成膜手法として、基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)等の表面に真空雰囲気下で第1の反応ガスを吸着させた後、供給するガスを第2の反応ガスに切り替えて、両ガスの反応により1層あるいは複数層の原子層や分子層を形成し、このサイクルを多数回行うことにより、これらの層を積層して、基板上への成膜を行うプロセスが知られている。このプロセスは、例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMLD(Molecular Layer Deposition)などと呼ばれており、サイクル数に応じて膜厚を高精度にコントロールすることができると共に、膜質の面内均一性も良好であり、半導体デバイスの薄膜化に対応できる有効な手法である。
【0003】
このような成膜方法が好適である例としては、例えばゲート酸化膜に用いられる高誘電体膜の成膜が挙げられる。一例を挙げると、シリコン酸化膜(SiO2膜)を成膜する場合には、第1の反応ガス(原料ガス)として、例えばビスターシャルブチルアミノシラン(以下「BTBAS」という)ガス等が用いられ、第2の反応ガス(酸化ガス)としてオゾンガス等が用いられる。
【0004】
このような成膜方法を実施する装置としては、真空容器の上部中央にガスシャワーヘッドを備えた枚葉の成膜装置を用いて、基板の中央部上方側から反応ガスを供給し、未反応の反応ガス及び反応副生成物を処理容器の底部から排気する方法が検討されている。ところで上記の成膜方法は、パージガスによるガス置換に長い時間がかかり、またサイクル数も例えば数百回にもなることから、処理時間が長いという問題があり、高スループットで処理できる装置、手法が要望されている。
【0005】
このような背景から、複数枚の基板を真空容器内の回転テーブルに回転方向に配置して成膜処理を行う装置が以下のように既に知られている。特許文献1には、扁平な円筒状の真空容器を左右に分離し、左側領域及び右側領域に半円の輪郭に沿って形成された排気口が上向きに排気するように設けられると共に、左側半円の輪郭と右側半円の輪郭の間、つまり真空容器の直径領域には分離ガスの吐出口が形成されている。右側半円領域及び左側半円領域には互いに異なる原料ガスの供給領域が形成され、真空容器内の回転テーブルが回転することでワークピースが右側半円領域、分離領域D及び左側半円領域を通過すると共に、両原料ガスは排気口から排気される。そして分離ガスが供給される分離領域Dの天井は原料ガスの供給領域よりも低くなっている。
【0006】
しかしながらこの装置は、分離ガスの吐出口と反応ガスの供給領域との間に上向きの排気口を設け、反応ガスをこの排気口から分離ガスと共に排気する手法を採用しているため、ワークピースに吐出された反応ガスが上向き流となって排気口から吸い込まれるため、パーティクルの巻上げを伴ない、ウエハへのパーティクル汚染を引き起こしやすいという欠点がある。
【0007】
特許文献2には、ウエハ支持部材(回転テーブル)の上に回転方向に沿って4枚のウエハを等距離に配置する一方、ウエハ支持部材と対向するように第1の反応ガス吐出ノズル及び第2の反応ガス吐出ノズルを回転方向に沿って等距離に配置しかつこれらノズルの間にパージノズルを配置し、ウエハ支持部材を水平回転させる構成が記載されている。各ウエハはウエハ支持部材により支持され、ウエハの表面はウエハ支持部材の上面からウエハの厚さだけ上方に位置している。また各ノズルはウエハ支持部材の径方向に伸びるように設けられ、ウエハとノズルとの距離は0.1mm以上であることが記載されている。真空排気はウエハ支持部材の外縁と処理容器の内壁との間から行われる。このような装置によれば、パージガスノズルの下方がいわばエアーカーテンの役割を果たすことで第1の反応ガスと第2の反応ガスとの混合を防止している。
【0008】
しかしながらウエハ支持部材が回転していることもあって、パージガスノズルからのエアーカーテン作用だけではその両側の反応ガスが通過してしまい、特に回転方向上流側から前記エアーカーテン中を拡散してしまうことは避けられない。更にまた第1の反応ガス吐出ノズルから吐出した第1の反応ガスは回転テーブルに相当するウエハ支持部材の中心部を介して容易に第2の反応ガス吐出ノズルからの第2の反応ガス拡散領域に到達してしまう。このように第1の反応ガスと第2の反応ガスとがウエハ上で混合されてしまうと、ウエハ表面に反応生成物が付着し、良好なALD(あるいはMLD)処理ができなくなる。
【0009】
特許文献3には、真空容器内を隔壁により周方向に複数の処理室に分割すると共に、隔壁の下端に対して細隙を介して回転可能な円形の載置台を設けて、この載置台上にウエハを複数配置する構成が記載されている。この装置は、隔壁と載置台あるいはウエハとの間の隙間からプロセスガスが隣の処理室に拡散し、また複数の処理室の間に排気室を設けているので、ウエハがこの排気室を通るときに上流側及び下流側の処理室からのガスが当該排気室にて混合される。このためいわゆるALD方式の成膜手法には適用できない。
【0010】
特許文献4には、円形のガス供給板を周方向に8つに区切り、AsH3ガスの供給口、H2ガスの供給口、TMGガスの供給口及びH2ガスの供給口を90度づつずらして配置し、さらにこれらガス供給口の間に排気口を設け、このガス供給板と対向させてウエハを支持したサセプタを回転させる手法が記載されている。しかしながら、この手法は、2つの反応ガスの分離に対して現実的な手段が何ら開示されておらず、サセプタの中心付近においては勿論のこと、実際には中心付近以外においてもH2ガスの供給口の配列領域を介して2つの反応ガスが混合されてしまう。更にまたウエハの通過領域と対向する面に排気口を設けると、サセプタ表面からのパーティクルの巻上げなどによりウエハのパーティクル汚染が起こりやすいという致命的な問題もある。
【0011】
また特許文献5には、回転テーブルの上方領域を十字に4つの垂直壁で仕切り、こうして仕切られた4つの載置領域にウエハを載置すると共に、ソースガスインジェクタ、反応ガスインジェクタ、パージガスインジェクタを回転方向に交互に配置して十字のインジェクタユニットを構成し、これらインジェクタを前記4つの載置領域に順番に位置させるようにインジェクタユニットを水平回転させかつ回転テーブルの周辺から真空排気する構成が記載されている。しかしながらこのような構成においては、各載置領域にソースガスあるいは反応ガスを供給した後、パージガスノズルにより当該載置領域の雰囲気をパージガスで置換するために長い時間がかかるし、また一の載置領域から垂直壁を越えて隣接する載置領域にソースガスあるいは反応ガスが拡散して、両ガスが載置領域にて反応するおそれが大きい。
【0012】
更にまた特許文献6(特許文献7、8)には、ターゲット(ウエハに相当する)に複数のガスを交互に吸着させる原子層CVD方法を実施するにあたり、ウエハを載置するサセプタを回転させ、サセプタの上方からソースガスとパージガスとを供給する装置が記載されている。段落0023から0025には、チャンバの中心から放射状に隔壁が延びており、隔壁の下に反応ガスまたはパージガスをサセプタに供給するガス流出孔が設けられていること、隔壁からのガス流出孔から不活性ガスを流出させることでガスカーテンを形成することが記載されている。排気に関しては段落0058に初めて記載され、この記載によると、ソースガスとパージガスとを夫々排気チャンネル30a、30bから別々に排気するようになっている。このような構成では、パージガスコンパートメントにおいて両側のソースガスコンパートメンにおけるソースガスの混じり合いを避けられず、反応生成物が発生してウエハへのパーティクル汚染が生じる。この特許文献6は、解読が困難であり、上述以外の構成については把握が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許公報7,153,542号:図6(a)、(b)
【特許文献2】特開2001−254181号公報:図1及び図2
【特許文献3】特許3144664号公報:図1、図2、請求項1
【特許文献4】特開平4−287912号公報
【特許文献5】米国特許公報6,634,314号
【特許文献6】特開2007−247066号公報:段落0023〜0025、0058、図12及び図18
【特許文献7】米国特許公開公報2007−218701号
【特許文献8】米国特許公開公報2007−218702号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はこのような事情に基づいて行われたものであり、その目的は、基板の表面に互いに反応する複数の反応ガスを順番に供給して反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成するにあたり、高いスループットが得られ、基板上にて複数の反応ガスが混合されることを防止して良好な処理を行うことができる成膜装置、成膜方法及びこの方法を実施するプログラムを格納した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は 真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置において、
前記真空容器内に設けられた回転テーブルと、
この回転テーブルに基板を載置するために設けられた基板載置領域と、
前記回転テーブルの回転方向に互いに離れて設けられ、前記回転テーブルにおける基板の載置領域側の面に夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを供給するための第1の反応ガス供給手段及び第2の反応ガス供給手段と、
前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との雰囲気を分離するために前記回転方向においてこれら処理領域の間に位置する分離領域と、
前記第1の処理領域と第2の処理領域との雰囲気を分離するために真空容器内の中心部に位置し、回転テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出する吐出孔が形成された中心部領域と、
前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスと共に前記反応ガスを排気するための排気口と、を備え、
前記分離領域は、分離ガスを供給するための分離ガス供給手段と、この分離ガス供給手段の前記回転方向両側に位置し、当該分離領域から処理領域側に分離ガスが流れるための狭隘な空間を回転テーブルとの間に形成するための天井面と、を備えたことを特徴とする。
前記中心部領域は、例えば回転テーブルの回転中心部と真空容器の上面側とにより区画され、分離ガスがパージされる領域である。また他の例として、前記中心部領域は、真空容器の中心部にて上面及び底面の間に設けた支柱と、この支柱を囲み、鉛直軸回りに回転自在な回転スリーブと、を含み、この場合前記回転スリーブは、回転テーブルの回転軸をなしている。
【0016】
本発明における種々の構成例について列挙する。前記排気口は、例えば回転テーブルの周縁と真空容器の内周壁との隙間から排気するために設けられている例を挙げることができる。また処理領域よりも分離領域の方が圧力が高くなるように構成する例を挙げることができる。前記回転テーブルの表面と基板の表面とは、高さが互いに同じかまたは高さの差が5mm以内であることが好ましい。また本発明は回転テーブルを加熱するための加熱手段が設けられる場合がある。前記第1の反応ガス供給手段、第2の反応ガス供給手段及び分離ガス供給手段へガスを各々導入するためのガス導入ポートは、回転テーブルの周縁部側及び中心部側の少なくとも一方に設けられている構成としてもよい。前記分離ガス供給手段のガス吐出孔は、回転テーブルの回転中心部及び周縁部の一方側から他方側に向かって配列されている構成としてもよい。前記分離領域における天井面は平坦面に形成されていることに限らず曲面に形成されていてもよい。
【0017】
また前記排気口は、各反応ガスの排気を専用に行うために、平面で見たときに前記分離領域の前記回転方向両側に設けられていることが好ましい。加熱手段を設ける場合には、加熱手段は回転テーブルの下方側に設けられていることが好ましいが、回転テーブルの上方側に設けられていてもよいし、回転テーブルの上下両側に設けられていてもよい。また回転テーブルの外側から下方側空間にガスが侵入することを抑えるために、当該回転テーブルの下方側空間にパージガスを吐出してパージする手段を備えることが好ましい。前記分離領域の天井面における真空容器の外縁側の部位は、前記回転テーブルの外端面に対向するように屈曲して真空容器の内周壁の一部を構成し、当該天井面の屈曲部位と前記回転テーブルの外端面との隙間は、反応ガスの侵入防止効果が得られる寸法に設定されている構成としてもよい。
【0018】
前記分離ガス供給手段の両側に各々位置する狭隘な空間を形成する天井面は、基板の中心が通過する部位において回転テーブルの回転方向に沿った幅寸法が50mm以上であることが好ましい。基板載置領域は回転テーブルの回転方向に沿って1個設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。即ち、本発明は1枚の基板を処理するためのものであってもよいし、複数の基板を処理するためのものであってもよい。外部の搬送機構と前記回転テーブルとのあいだで基板の受け渡しを行うために、真空容器の側壁にゲートバルブにより開閉される搬送口が設けられている構成としてもよい。前記分離領域の天井面において、前記ノズルに対して回転テーブルの相対的回転方向の上流側部位は、外縁に位置する部位ほど前記回転方向の幅が大きいことが好ましく、例えば前記ノズルに対して少なくとも回転テーブルの相対的回転方向の上流側部位は、扇型に形成されている構成とすることができる。
前記回転テーブルの回転方向に互いに離れて設けられ、前記回転テーブルにおける基板の載置領域側の面に前記第1の反応ガス及び第2の反応ガスにより生成される反応生成物とは異なる反応生成物を生成するための第3の反応ガス及び第4の反応ガスを夫々供給する第3の反応ガス供給手段及び第4の反応ガス供給手段と、
前記第1の反応ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段から夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを基板の表面に供給して第1の薄膜を成膜するステップと、前記第3の反応ガス供給手段及び前記第4の反応ガス供給手段から夫々第3の反応ガス及び第4の反応ガスを前記基板の表面に供給して第2の薄膜を成膜するステップと、を交互に実行するように制御信号を出力する制御部と、を備えていても良い。この場合において、前記第1の反応ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段は、夫々前記第3の反応ガス供給手段及び前記第4の反応ガス供給手段を兼用していても良い。
【0019】
また本発明の基板処理装置は、内部に基板搬送手段が配置された真空搬送室と、この真空搬送室に気密に接続された請求項ないしのいずれか一つに記載の成膜装置と、前記真空搬送室に気密に接続され、真空雰囲気と大気雰囲気との間で雰囲気が切り替え可能な予備真空室と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
更に本発明の成膜方法は、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜方法において、
真空容器内の回転テーブルに基板をほぼ水平に載置し、当該回転テーブルを回転する工程と、
前記回転方向に互いに離れて前記真空容器に設けられた第1の反応ガス供給手段及び第2の反応ガス供給手段から、前記回転テーブルにおける基板の載置領域側の面に夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを供給する工程と、
前記回転方向において第1の反応ガス供給手段及び第2の反応ガス供給手段の間に位置する分離領域に設けられた分離ガス供給手段から分離ガスを供給し、この分離ガス供給手段の前記回転方向両側にて前記回転テーブルに対向する天井面と当該回転テーブルとの間の狭隘な空間に前記分離ガスを拡散させる工程と、
真空容器内の中心部に位置する中心部領域に形成された吐出口から分離ガスを当該回転テーブルの基板載置面側に吐出する工程と、
前記中心部領域からの分離ガス及び前記天井面の下方から拡散した分離ガスと共に反応ガスを排気する工程と、を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明では例えば前記回転テーブルを加熱する工程が更に含まれる。前記第1の反応ガス及び第2の反応ガスを供給する工程に代えて、前記第1の反応ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段から夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを基板の表面に供給して第1の薄膜を成膜するステップと、前記回転テーブルの回転方向に互いに離れて設けられた第3の反応ガス供給手段及び第4の反応ガス供給手段から、前記第1の反応ガス及び第2の反応ガスにより生成される反応生成物とは異なる反応生成物を生成するための第3の反応ガス及び第4の反応ガスを前記基板の表面に供給して第2の薄膜を成膜するステップと、を交互に実行する工程を行っても良い。更に他の発明は、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置に用いられるプログラムを格納する記憶媒体であって、前記プログラムは、本発明の成膜方法を実施するようにステップ群が組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板の表面に、互いに反応する複数の反応ガスを順番に供給しかつこの供給サイクルを多数回実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成するにあたって、回転テーブルに基板を配置し、第1の反応ガス及び第2の反応ガスを順番に供給して前記供給サイクルを行うようにしているため、高いスループットで成膜処理を行うことができる。そして前記回転方向において第1の反応ガス供給手段と第2の反応ガス供給手段との間に分離ガス供給手段を設けて、この分離ガス供給手段の前記回転方向両側にて低い天井面を設けることで当該天井面と回転テーブルとの間に狭隘な空間を形成し、これにより分離領域に前記反応ガスが侵入することを阻止すると共に、真空容器の中心部領域から回転テーブルの周縁に向けて分離ガスを吐出し、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスと共に前記反応ガスが回転テーブルの周縁と真空容器の内周壁との隙間を介して排気されるため、互いに異なる反応ガス同士が混じり合うことを防止でき、良好な成膜処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る成膜装置の縦断面を示す図3のI−I’線断面図である。
【図2】上記の成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】上記の成膜装置の横断平面図である。
【図4】上記の成膜装置における処理領域及び分離領域を示す縦断面図である。
【図5】上記の成膜装置の一部を示す縦断面図である。
【図6】上記の成膜装置の一部破断斜視図である。
【図7】分離ガスあるいはパージガスの流れる様子を示す説明図である。
【図8】上記の成膜装置の一部破断斜視図である。
【図9】第1の反応ガス及び第2の反応ガスが分離ガスにより分離されて排気される様子を示す説明図である。
【図10】分離領域に用いられる凸状部の寸法例を説明するための説明図である。
【図11】分離領域の他の例を示す縦断面図である。
【図12】分離領域に用いられる凸状部の他の例を示す縦断面図である。
【図13】分離ガス供給手段のガス吐出孔の他の例を示す底面図である。
【図14】凸状部の変形例を示す底面図である。
【図15】本発明の他の実施の形態に係る成膜装置を示す横断平面図である。
【図16】本発明の更に他の実施の形態に係る成膜装置を示す横断平面図である。
【図17】本発明の更にまた他の実施の形態に係る成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【図18】本発明の上記以外の実施の形態に係る成膜装置を示す横断平面図である。
【図19】本発明の上記以外の実施の形態に係る成膜装置を示す縦断面図である。
【図20】本発明の成膜装置を用いた基板処理システムの一例を示す概略平面図である。
【図21】上記の成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図22】上記の他の例における成膜処理の流れを示す模式図である。
【図23】上記の他の例の成膜装置において基板上に成膜される積層膜の一例を示す縦断面図である。
【図24】上記の他の例の成膜装置の変形例を示す平面図である。
【図25】ALD法において薄膜が成膜される様子を示す模式図である。
【図26】BTBASガス及びジイソプロピルアミノシランガスの構造を示す模式図である。
【図27】本発明の実施例にて得られる特性図である。
【図28】本発明の実施例にて得られる特性図である。
【図29】本発明の実施例にて得られる特性図を説明するための説明図である。
【図30】本発明の実施例にて得られる特性図である。
【図31】本発明の実施例にて得られる特性図である。
【図32】本発明の実施例にて得られる特性図である。
【図33】本発明の実施例にて得られる特性図である。
【図34】本発明の実施例にて得られる特性図である。
【図35】本発明の実施例にて得られる特性図である。
【図36】本発明の実施例にて得られる特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態である成膜装置は、図1(図3のI−I’線に沿った断面図)に示すように平面形状が概ね円形である扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は天板11が容器本体12から分離できるように構成されている。天板11は、内部の減圧状態により封止部材例えばOリング13を介して容器本体12側に押し付けられていて気密状態を維持しているが、天板11を容器本体12から分離するときには図示しない駆動機構により上方に持ち上げられる。
【0025】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は真空容器1の底面部を14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りにこの例では時計方向に回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0026】
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示すように回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板であるウエハを載置するための円形状の凹部24が設けられている。なお図3には便宜上1個の凹部24だけにウエハWを描いてある。ここで図4は、回転テーブル2を同心円に沿って切断しかつ横に展開して示す展開図であり、凹部24は、図4(a)に示すようにその直径がウエハの直径よりも僅かに例えば4mm大きく、またその深さはウエハの厚みと同等の大きさに設定されている。従ってウエハを凹部24に落とし込むと、ウエハの表面と回転テーブル2の表面(ウエハが載置されない領域)とが揃うことになる。ウエハの表面と回転テーブル2の表面との間の高さの差が大きいとその段差部分で圧力変動が生じることから、ウエハの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えることが、膜厚の面内均一性を揃える観点から好ましい。ウエハの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えるとは、同じ高さであるかあるいは両面の差が5mm以内であることをいうが、加工精度などに応じてできるだけ両面の高さの差をゼロに近づけることが好ましい。凹部24の底面には、ウエハの裏面を支えて当該ウエハを昇降させるための例えば後述する3本の昇降ピン(図8参照)が貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0027】
凹部24はウエハを位置決めして回転テーブル2の回転に伴う遠心力により飛び出さないようにするためのものであり、本発明の基板載置領域に相当する部位であるが、基板載置領域(ウエハ載置領域)は、凹部に限らず例えば回転テーブル2の表面にウエハの周縁をガイドするガイド部材をウエハの周方向に沿って複数並べた構成であってもよく、あるいは回転テーブル2側に静電チャックなどのチャック機構を持たせてウエハを吸着する場合には、その吸着によりウエハが載置される領域が基板載置領域となる。
【0028】
図2及び3に示すように真空容器1には、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する位置に第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32と2本の分離ガスノズル41、42とが真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいて中心部から放射状に伸びている。これら反応ガスノズル31、32及び分離ガスノズル41、42は、例えば真空容器1の側周壁に取り付けられており、その基端部であるガス導入ポート31a、32a、41a、42aは当該側壁を貫通している。
【0029】
ガスノズル31、32、41、42は図示の例では、真空容器1の周壁部から真空容器1内に導入されているが、後述する環状の突出部5から導入してもよい。この場合、突出部5の外周面と天板11の外表面とに開口するL字型の導管を設け、真空容器1内でL字型の導管の一方の開口にガスノズル31、(32、41、42)を接続し、真空容器1の外部でL字型の導管の他方の開口にガス導入ポート31a(32a、41a、42a)を接続する構成を採用することができる。
【0030】
反応ガスノズル31、32は、夫々第1の反応ガスであるBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)ガスのガス供給源及び第2の反応ガスであるO3(オゾン)ガスのガス供給源(いずれも図示せず)に接続されており、分離ガスノズル41、42はいずれも分離ガスであるN2ガス(窒素ガス)のガス供給源(図示せず)に接続されている。この例では、第2の反応ガスノズル32、分離ガスノズル41、第1の反応ガスノズル31及び分離ガスノズル42がこの順に時計方向に配列されている。
【0031】
反応ガスノズル31、32には、下方側に反応ガスを吐出するための吐出孔33がノズルの長さ方向に間隔を置いて配列されている。また分離ガスノズル41、42には、下方側に分離ガスを吐出するための吐出孔40が長さ方向に間隔を置いて穿設されている。反応ガスノズル31、32は夫々第1の反応ガス供給手段及び第2の反応ガス供給手段に相当し、その下方領域は夫々BTBASガスをウエハに吸着させるための第1の処理領域P1及びO3ガスをウエハに吸着させるための第2の処理領域P2となる。
【0032】
分離ガスノズル41、42は、前記第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離するための分離領域Dを形成するためのものであり、この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には図2〜図4に示すように、回転テーブル2の回転中心を中心としかつ真空容器1の内周壁の近傍に沿って描かれる円を周方向に分割してなる、平面形状が扇型で下方に突出した凸状部4が設けられている。分離ガスノズル41、42は、この凸状部4における前記円の周方向中央にて当該円の半径方向に伸びるように形成された溝部43内に収められている。即ち分離ガスノズル41、(42)の中心軸から凸状部4である扇型の両縁(回転方向上流側の縁及び下流側の縁)までの距離は同じ長さに設定されている。なお、溝部43は、本実施形態では凸状部4を二等分するように形成されているが、他の実施形態においては、例えば溝部43から見て凸状部4における回転テーブル2の回転方向上流側が前記回転方向下流側よりも広くなるように溝部43を形成してもよい。
【0033】
従って分離ガスノズル41、42における前記周方向両側には、前記凸状部4の下面である例えば平坦な低い天井面44(第1の天井面)が存在し、この天井面44の前記周方向両側には、当該天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)が存在することになる。この凸状部4の役割は、回転テーブル2との間に第1の反応ガス及び第2の反応ガスの侵入を阻止してこれら反応ガスの混合を阻止するための狭隘な空間である分離空間を形成することにある。
【0034】
即ち、分離ガスノズル41を例にとると、回転テーブル2の回転方向上流側からO3ガスが侵入することを阻止し、また回転方向下流側からBTBASガスが侵入することを阻止する。「ガスの侵入を阻止する」とは、分離ガスノズル41から吐出した分離ガスであるN2ガスが第1の天井面44と回転テーブル2の表面との間に拡散して、この例では当該第1の天井面44に隣接する第2の天井面45の下方側空間に吹き出し、これにより当該隣接空間からのガスが侵入できなくなることを意味する。そして「ガスが侵入できなくなる」とは、隣接空間から凸状部4の下方側空間に全く入り込むことができない場合のみを意味するのではなく、多少侵入はするが、両側から夫々侵入したO3ガス及びBTBASガスが凸状部4内で混じり合わない状態が確保される場合も意味し、このような作用が得られる限り、分離領域Dの役割である第1の処理領域P1の雰囲気と第2の処理領域P2の雰囲気との分離作用が発揮できる。従って狭隘な空間における狭隘の程度は、狭隘な空間(凸状部4の下方空間)と当該空間に隣接した領域(この例では第2の天井面45の下方空間)との圧力差が「ガスが侵入できなくなる」作用を確保できる程度の大きさになるように設定され、その具体的な寸法は凸状部4の面積などにより異なるといえる。またウエハに吸着したガスについては当然に分離領域D内を通過することができ、ガスの侵入阻止は、気相中のガスを意味している。
【0035】
一方天板11の下面には、回転テーブル2におけるコア部21よりも外周側の部位と対向するようにかつ当該コア部21の外周に沿って突出部5が設けられている。この突出部5は凸状部4における前記回転中心側の部位と連続して形成されており、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成されている。図2及び図3は、前記天井面45よりも低くかつ分離ガスノズル41、42よりも高い位置にて天板11を水平に切断して示している。なお突出部5と凸状部4とは、必ずしも一体であることに限られるものではなく、別体であってもよい。
【0036】
凸状部4及び分離ガスノズル41(42)の組み合わせ構造の作り方については、凸状部4をなす1枚の扇型プレートの中央に溝部43を形成してこの溝部43内に分離ガスノズル41(42)を配置する構造に限らず、2枚の扇型プレートを用い、分離ガスノズル41(42)の両側位置にて天板本体の下面にボルト締めなどにより固定する構成などであってもよい。この例では分離ガスノズル41(42)は、真下に向いた例えば口径が0.5mmの吐出孔がノズルの長さ方向に沿って例えば10mmの間隔をおいて配列されている。また反応ガスノズル31、32についても、真下に向いた例えば口径が0.5mmの吐出孔がノズルの長さ方向に沿って例えば10mmの間隔をおいて配列されている。
【0037】
この例では直径300mmのウエハWを被処理基板としており、この場合凸状部4は、回転中心から140mm離れた突出部5との境界部位においては、周方向の長さ(回転テーブル2と同心円の円弧の長さ)が例えば146mmであり、ウエハの載置領域(凹部24)の最も外側部位においては、周方向の長さが例えば502mmである。なお図4(a)に示すように、当該外側部位において分離ガスノズル41(42)の両脇から夫々左右に位置する凸状部4の周方向の長さLでみれば、長さLは246mmである。
【0038】
また図4(a)に示すように凸状部4の下面即ち天井面44における回転テーブル2の表面からの高さhは、例えば0.5mmから10mmであってもよく、約4mmであると好適である。この場合、回転テーブル2の回転数は例えば1rpm〜500rpmに設定されている。分離領域Dの分離機能を確保するためには、回転テーブル2の回転数の使用範囲などに応じて、凸状部4の大きさや凸状部4の下面(第1の天井面44)と回転テーブル2の表面との高さhを例えば実験などに基づいて設定することになる。なお分離ガスとしては、N2ガスに限られずArガスなどの不活性ガスを用いることができるが、不活性ガスに限らず水素ガスなどであってもよく、成膜処理に影響を与えないガスであれば、ガスの種類に関しては特に限定されるものではない。
【0039】
真空容器1の天板11の下面、つまり回転テーブル2のウエハ載置領域(凹部24)から見た天井面は既述のように第1の天井面44とこの天井面44よりも高い第2の天井面45とが周方向に存在するが、図1では、高い天井面45が設けられている領域についての縦断面を示しており、図5では、低い天井面44が設けられている領域についての縦断面を示している。扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は図2及び図5に示されているように回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲して屈曲部46を形成している。扇型の凸状部4は天板11側に設けられていて、容器本体12から取り外せるようになっていることから、前記屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。この屈曲部46も凸状部4と同様に両側から反応ガスが侵入することを防止して、両反応ガスの混合を防止する目的で設けられており、屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、回転テーブル2の表面に対する天井面44の高さhと同様の寸法に設定されている。この例においては、回転テーブル2の表面側領域からは、屈曲部46の内周面が真空容器1の内周壁を構成していると見ることができる。
【0040】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては図5に示すように前記屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されているが、分離領域D以外の部位においては、図1に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底面部14に亘って縦断面形状が矩形に切り欠かれて外方側に窪んだ構造になっている。この窪んだ部分を排気領域6と呼ぶことにすると、この排気領域6の底部には図1及び図3に示すように例えば2つの排気口61、62が設けられている。これら排気口61、62は各々排気管63を介して真空排気手段である例えば共通の真空ポンプ64に接続されている。なお図1中、65は圧力調整手段であり、排気口61、62ごとに設けてもよいし、共通化されていてもよい。排気口61、62は、分離領域Dの分離作用が確実に働くように、平面で見たときに前記分離領域Dの前記回転方向両側に設けられ、各反応ガス(BTBASガス及びO3ガス)の排気を専用に行うようにしている。この例では一方の排気口61は第1の反応ガスノズル31とこの反応ガスノズル31に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に設けられ、また他方の排気口61は、第2の反応ガスノズル32とこの反応ガスノズル32に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に設けられている。
【0041】
排気口の設置数は2個に限られるものではなく、例えば分離ガスノズル42を含む分離領域Dと当該分離領域Dに対して前記回転方向下流側に隣接する第2の反応ガスノズル32との間に更に排気口を設置して3個としてもよいし、4個以上であってもよい。この例では排気口61、62は回転テーブル2よりも低い位置に設けることで真空容器1の内周壁と回転テーブル2の周縁との間の隙間から排気するようにしているが、真空容器1の底面部に設けることに限られず、真空容器1の側壁に設けてもよい。また排気口61、62は、真空容器1の側壁に設ける場合には、回転テーブル2よりも高い位置に設けるようにしてもよい。このように排気口61、62を設けることにより回転テーブル2上のガスは、回転テーブル2の外側に向けて流れるため、回転テーブル2に対向する天井面から排気する場合に比べてパーティクルの巻上げが抑えられるという観点において有利である。
【0042】
前記回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、図1、図2及び図6に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハをプロセスレシピで決められた温度に加熱するようになっている。前記回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の上方空間から排気領域6に至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画するためにヒータユニット7を全周に亘って囲むようにカバー部材71が設けられている。このカバー部材71は上縁が外側に屈曲されてフランジ形状に形成され、その屈曲面と回転テーブル2の下面との間の隙間を小さくして、カバー部材71内に外方からガスが侵入することを抑えている。
【0043】
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底面部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近、コア部21に接近してその間は狭い空間になっており、また当該底面部14を貫通する回転軸22の貫通穴についてもその内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間は前記ケース体20内に連通している。そして前記ケース体20にはパージガスであるN2ガスを前記狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。また真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側位置にて周方向の複数部位に、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が設けられている。
【0044】
このようにパージガス供給管72、73を設けることにより図7にパージガスの流れを矢印で示すように、ケース体20内からヒータユニット7の配置空間に至るまでの空間がN2ガスでパージされ、このパージガスが回転テーブル2とカバー部材71との間の隙間から排気領域6を介して排気口61、62に排気される。これによって既述の第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との一方から回転テーブル2の下方を介して他方にBTBASガスあるいはO3ガスが回り込むことが防止されるため、このパージガスは分離ガスの役割も果たしている。
【0045】
また真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるN2ガスを供給するように構成されている。この空間52に供給された分離ガスは、前記突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50を介して回転テーブル2のウエハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出されることになる。この突出部5で囲まれる空間には分離ガスが満たされているので、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間で回転テーブル2の中心部を介して反応ガス(BTBASガスあるいはO3ガス)が混合することを防止している。即ち、この成膜装置は、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との雰囲気を分離するために回転テーブル2の回転中心部と真空容器11とにより区画され、分離ガスがパージされると共に当該回転テーブル2の表面に分離ガスを吐出する吐出口が前記回転方向に沿って形成された中心部領域Cを備えているということができる。なおここでいう吐出口は前記突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50に相当する。
【0046】
更に真空容器1の側壁には図2、図3及び図8に示すように外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板であるウエハの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15は図示しないゲートバルブにより開閉されるようになっている。また回転テーブル2におけるウエハ載置領域である凹部24はこの搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において当該受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウエハを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン16の昇降機構(図示せず)が設けられる。
【0047】
またこの実施の形態の成膜装置は、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられ、この制御部100のメモリ内には装置を運転するためのプログラムが格納されている。このプログラムは後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体から制御部100内にインストールされる。
【0048】
次に上述実施の形態の作用について説明する。先ず図示しないゲートバルブを開き、外部から搬送アーム10により搬送口15を介してウエハを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに図8に示すように凹部24の底面の貫通孔を介して真空容器の底部側から昇降ピン16が昇降することにより行われる。このようなウエハWの受け渡しを回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に夫々ウエハWを載置する。続いて真空ポンプ64により真空容器1内を予め設定した圧力に真空引きすると共に、回転テーブル2を時計回りに回転させながらヒータユニット7によりウエハWを加熱する。詳しくは、回転テーブル2はヒータユニット7により予め例えば300℃に加熱されており、ウエハWがこの回転テーブル2に載置されることで加熱される。ウエハWの温度が図示しない温度センサにより設定温度になったことを確認した後、第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32から夫々BTBASガス及びO3ガスを吐出させると共に、分離ガスノズル41、42から分離ガスであるN2ガスを吐出する。
【0049】
ウエハWは回転テーブル2の回転により、第1の反応ガスノズル31が設けられる第1の処理領域P1と第2の反応ガスノズル32が設けられる第2の処理領域P2とを交互に通過するため、BTBASガスが吸着し、次いでO3ガスが吸着してBTBAS分子が酸化されて酸化シリコンの分子層が1層あるいは複数層形成され、こうして酸化シリコンの分子層が順次積層されて所定の膜厚のシリコン酸化膜が成膜される。
【0050】
このとき分離ガス供給管51からも分離ガスであるN2ガスを供給し、これにより中心部領域Cから即ち突出部5と回転テーブル2の中心部との間から回転テーブル2の表面に沿ってN2ガスが吐出する。この例では反応ガスノズル31、32が配置されている第2の天井面45の下方側の空間に沿った容器本体12の内周壁においては、既述のように内周壁が切りかかれて広くなっており、この広い空間の下方に排気口61、62が位置しているので、第1の天井面44の下方側の狭隘な空間及び前記中心部領域Cの各圧力よりも第2の天井面45の下方側の空間の圧力の方が低くなる。ガスを各部位から吐出したときのガスの流れの状態を模式的に図9に示す。第2の反応ガスノズル32から下方側に吐出され、回転テーブル2の表面(ウエハWの表面及びウエハWの非載置領域の表面の両方)に当たってその表面に沿って回転方向上流側に向かうO3ガスは、その上流側から流れてきたN2ガスに押し戻されながら回転テーブル2の周縁と真空容器1の内周壁との間の排気領域6に流れ込み、排気口62により排気される。
【0051】
また第2の反応ガスノズル32から下方側に吐出され、回転テーブル2の表面に当たってその表面に沿って回転方向下流側に向かうO3ガスは、中心部領域Cから吐出されるN2ガスの流れと排気口62の吸引作用により当該排気口62に向かおうとするが、一部は下流側に隣接する分離領域Dに向かい、扇型の凸状部4の下方側に流入しようとする。ところがこの凸状部4の天井面44の高さ及び周方向の長さは、各ガスの流量などを含む運転時のプロセスパラメータにおいて当該天井面44の下方側へのガスの侵入を防止できる寸法に設定されているため、図4(b)にも示してあるようにO3ガスは扇型の凸状部4の下方側にほとんど流入できないかあるいは少し流入したとしても分離ガスノズル41付近までには到達できるものではなく、分離ガスノズル41から吐出したN2ガスにより回転方向上流側、つまり処理領域P2側に押し戻されてしまい、中心部領域Cから吐出されているN2ガスと共に、回転テーブル2の周縁と真空容器1の内周壁との隙間から排気領域6を介して排気口62に排気される。
【0052】
また第1の反応ガスノズル31から下方側に吐出され、回転テーブル2の表面に沿って回転方向上流側及び下流側に夫々向かうBTBASガスは、その回転方向上流側及び下流側に隣接する扇型の凸状部4の下方側に全く侵入できないかあるいは侵入したとしても第2の処理領域P1側に押し戻され、中心部領域Cから吐出されているN2ガスと共に、回転テーブル2の周縁と真空容器1の内周壁との隙間から排気領域6を介して排気口61に排気される。即ち、各分離領域Dにおいては、雰囲気中を流れる反応ガスであるBTBASガスあるいはO3ガスの侵入を阻止するが、ウエハに吸着されているガス分子はそのまま分離領域つまり扇型の凸状部4による低い天井面44の下方を通過し、成膜に寄与することになる。
【0053】
更にまた第1の処理領域P1のBTBASガス(第2の処理領域P2のO3ガス)は、中心部領域C内に侵入しようとするが、図7及び図9に示すように当該中心部領域Cからは分離ガスが回転テーブル2の周縁に向けて吐出されているので、この分離ガスにより侵入が阻止され、あるいは多少侵入したとしても押し戻され、この中心部領域Cを通って第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)に流入することが阻止される。
【0054】
そして分離領域Dにおいては、扇型の凸状部4の周縁部が下方に屈曲され、屈曲部46と回転テーブル2の外端面との間の隙間が既述のように狭くなっていてガスの通過を実質阻止しているので、第1の処理領域P1のBTBASガス(第2の処理領域P2のO3ガス)は、回転テーブル2の外側を介して第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)に流入することも阻止される。従って2つの分離領域Dによって第1の処理領域P1の雰囲気と第2の処理領域P2の雰囲気とが完全に分離され、BTBASガスは排気口61に、またO3ガスは排気口62に夫々排気される。この結果、両反応ガスこの例ではBTBASガス及びO3ガスが雰囲気中においてもウエハ上においても混じり合うことがない。なおこの例では、回転テーブル2の下方側をN2ガスによりパージしているため、排気領域6に流入したガスが回転テーブル2の下方側を潜り抜けて、例えばガBTBASスがO3ガスの供給領域に流れ込むといったおそれは全くない。こうして成膜処理が終了すると、各ウエハは搬入動作と逆の動作により順次搬送アーム10により搬出される。
【0055】
ここで処理パラメータの一例について記載しておくと、回転テーブル2の回転数は、300mm径のウエハWを被処理基板とする場合例えば1rpm〜500rpm、プロセス圧力は例えば1067Pa(8Torr)、ウエハWの加熱温度は例えば350℃、BTBASガス及びO3ガスの流量は例えば夫々100sccm及び10000sccm、分離ガスノズル41、42からのN2ガスの流量は例えば20000sccm、真空容器1の中心部の分離ガス供給管51からのN2ガスの流量は例えば5000sccmである。また1枚のウエハに対する反応ガス供給のサイクル数、即ちウエハが処理領域P1、P2の各々を通過する回数は目標膜厚に応じて変わるが、多数回例えば600回である。
【0056】
上述実施の形態によれば、回転テーブル2の回転方向に複数のウエハWを配置し、回転テーブル2を回転させて第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを順番に通過させていわゆるALD(あるいはMLD)を行うようにしているため、高いスループットで成膜処理を行うことができる。そして前記回転方向において第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間に低い天井面を備えた分離領域Dを設けると共に回転テーブル2の回転中心部と真空容器1とにより区画した中心部領域Cから回転テーブル2の周縁に向けて分離ガスを吐出し、前記分離領域Dの両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域Cから吐出する分離ガスと共に前記反応ガスが回転テーブル2の周縁と真空容器の内周壁との隙間を介して排気されるため、両反応ガスの混合を防止することができ、この結果良好な成膜処理を行うことができるし、回転テーブル2上において反応生成物が生じることが全くないか極力抑えられ、パーティクルの発生が抑えられる。なお本発明は、回転テーブル2に1個のウエハWを載置する場合にも適用できる。
【0057】
また回転テーブルに排気口を設ける構成や、ウエハの載置台を固定しかつ反応ガスノズルを回転させる場合には、排気口と反応ガスノズルとの相対位置関係が刻々と変わるので、排気流が変化して不安定な状態となり、このため第1の反応ガス及び第2の反応ガスが混合される懸念や成膜の均一性が低くなる懸念がある。これに対して上述の実施の形態では、反応ガスノズル31(32)と排気口61(62)との位置関係が固定されていることから、排気流が一定であり、上記のような懸念がなく、安定した成膜処理ができる。
【0058】
本発明で適用される処理ガスとしては、上述の例の他に、DCS[ジクロロシラン]、HCD[ヘキサクロロジシラン]、TMA[トリメチルアルミニウム]、3DMAS[トリスジメチルアミノシラン]、TEMAZ[テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム]、TEMHF[テトラキスエチルメチルアミノハフニウム]、Sr(THD)2 [ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト]、Ti(MPD)(THD)[チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト]、モノアミノシランなどを挙げることができる。
【0059】
また前記分離領域Dの天井面44において、前記分離ガスノズル41、42に対して回転テーブル2の回転方向の上流側部位は、外縁に位置する部位ほど前記回転方向の幅が大きいことが好ましい。その理由は回転テーブル2の回転によって上流側から分離領域Dに向かうガスの流れが外縁に寄るほど速いためである。この観点からすれば、上述のように凸状部4を扇型に構成することは得策である。
【0060】
そして前記分離ガス供給ノズル41(42)の両側に各々位置する狭隘な空間を形成する前記第1の天井面44は、図10(a)、(b)に前記分離ガス供給ノズル41を代表して示すように例えば300mm径のウエハWを被処理基板とする場合、ウエハWの中心WOが通過する部位において回転テーブル2の回転方向に沿った幅寸法Lが50mm以上であることが好ましい。凸状部4の両側から当該凸状部4の下方(狭隘な空間)に反応ガスが侵入することを有効に阻止するためには、前記幅寸法Lが短い場合にはそれに応じて第1の天井面44と回転テーブル2との間の距離も小さくする必要がある。更に第1の天井面44と回転テーブル2との間の距離をある寸法に設定したとすると、回転テーブル2の回転中心から離れる程、回転テーブル2の速度が速くなってくるので、反応ガスの侵入阻止効果を得るために要求される幅寸法Lは回転中心から離れる程長くなってくる。
【0061】
このような観点から考察すると、ウエハWの中心WOが通過する部位における前記幅寸法Lが50mmよりも小さいと、第1の天井面44と回転テーブル2との距離をかなり小さくする必要があるため、回転テーブル2を回転したときに回転テーブル2あるいはウエハWと天井面44との衝突を防止するために、回転テーブル2の振れを極力抑える工夫が要求される。更にまた回転テーブル2の回転数が高い程、凸状部4の上流側から当該凸状部4の下方側に反応ガスが侵入しやすくなるので、前記幅寸法Lを50mmよりも小さくすると、回転テーブル2の回転数を低くしなければならず、スループットの点で得策ではない。従って幅寸法Lが50mm以上であることが好ましいが、50mm以下であっても本発明の効果が得られないというものではない。即ち、前記幅寸法LがウエハWの直径の1/10〜1/1であることが好ましく、約1/6以上であることがより好ましい。
【0062】
また本発明では分離ガス供給手段における回転方向両側に低い天井面44が位置することが必要であるが、分離ガスノズル41、42の両側に凸状部44が配置されている上述の構成に限らず、図11に示すように凸状部4の内部に分離ガスの通流室47を回転テーブル2の直径方向に伸びるように形成し、この通流室47の底部に長さ方向に沿って多数のガス吐出孔40が穿設される構成を採用してもよい。
【0063】
分離領域Dの天井面44は平坦面に限られるものではなく、図12(a)に示すよ凹面形状に構成してもよいし、図12(b)に示すように凸面形状にしてもよく、あるいはまた図12(c)に示すように波型状に構成してもよい。
更にまた分離ガスノズル41(42)のガス吐出孔40については、次のような構成としてもよい。
A. 図13(a)に示すように回転テーブル2の直径に対して斜めに向いた横長のスリットからなる多数のガス吐出孔40を、互いに隣接するものの一部同士が前記直径方向に重なるようにして、当該直径方向に間隔をおいて配置した構成。
B. 図13(b)に示すように多数のガス吐出孔40を蛇行ライン状に配列した構成。
C. 図13(c)に示すように回転テーブル2の周縁側に迫る多数の円弧状のスリットからなるガス吐出孔40を前記直径方向に間隔をおいて配列した構成。
【0064】
更にまた凸状部4の平面形状については、次のような構成としてもよい。
A. 図14(a)に示すように凸状部4を角型例えば長方形に形成した構成。
B. 図14(b)に示すように凸状部4を真空容器1の周縁に向かってラッパ状に広がった形状に形成した構成。
C. 図14(c)に示すように凸状部4を、台形の側縁を外側に膨らませた形状であって、長辺側が真空容器1の周縁側に位置している形状に形成した構成。
D. 図14(d)に示すように、凸状部4を回転テーブル2の回転方向上流側(図14では右側が回転方向上流側に相当する)が真空容器1の周縁に向かって広がっている形状に形成した構成。
ウエハを加熱するための加熱手段としては抵抗発熱体を用いたヒータに限られずランプ加熱装置であってもよく、回転テーブル2の下方側に設ける代わりに回転テーブル2の上方側に設けてもよいし、上下両方に設けてもよい。
【0065】
ここで処理領域P1、P2及び分離領域Dの各レイアウトについて上記の実施の形態以外の他の例を挙げておく。図15は第2の反応ガスノズル32を搬送口15よりも回転テーブル2の回転方向上流側に位置させた例であり、このようなレイアウトであっても同様の効果が得られる。また分離領域Dは、扇型の凸状部4を周方向に2つに分割し、その間に分離ガスノズル41(42)を設ける構成であってもよいことを既に述べたが、図16は、このような構成の一例を示す平面図である。この場合、扇型の凸状部4と分離ガスノズル41(42)との距離や扇型の凸状部4の大きさなどは、分離ガスの吐出流量や反応ガスの吐出流量などを考慮して分離領域Dが有効な分離作用が発揮できるように設定される。
【0066】
上述の実施の形態では、前記第1の処理領域P1及び第2の処理領域P2は、その天井面が前記分離領域Dの天井面よりも高い領域に相当するものであったが、本発明は、第1の処理領域P1及び第2の処理領域P2の少なくとも一方は、分離領域Dと同様に反応ガス供給手段の前記回転方向両側にて前記回転テーブル2に対向して設けられ、当該回転テーブル2との間にガスの侵入を阻止するための空間を形成するようにかつ前記分離領域Dの前記回転方向両側の天井面(第2の天井面45)よりも低い天井面例えば分離領域Dにおける第1の天井面44と同じ高さの天井面を備えている構成としてもよい。図17はこのような構成の一例を示すものであり、第2の処理領域(この例ではO3ガスの吸着領域)P2において扇形の凸状部30の下方側に第2の反応ガスノズル32を配置している。なお第2の処理領域P2は、分離ガスノズル41(42)の代わりに第2の反応ガスノズル32を設けた以外は、分離領域Dと全く同様である。
【0067】
本発明は、分離ガスノズル41(42)の両側に狭隘な空間を形成するために低い天井面(第1の天井面)44を設けることが必要であるが、図18に示すように反応ガスノズル31(32)の両側にも同様の低い天井面を設け、これら天井面を連続させる構成、つまり分離ガスノズル41(42)及び反応ガスノズル31(32)が設けられる箇所以外は、回転テーブル2に対向する領域全面に凸状部4を設ける構成としても同様の効果が得られる。この構成は別の見方をすれば、分離ガスノズル41(42)の両側の第1の天井面44が反応ガスノズル31(32)にまで広がった例である。この場合には、分離ガスノズル41(42)の両側に分離ガスが拡散し、反応ガスノズル31(32)の両側に反応ガスが拡散し、両ガスが凸状部4の下方側(狭隘な空間)にて合流するが、これらのガスは分離ガスノズル31(32)と反応ガスノズル42(41)との間に位置する排気口61(62)から排気されることになる。
【0068】
以上の実施の形態では、回転テーブル2の回転軸22が真空容器1の中心部に位置し、回転テーブル2の中心部と真空容器1の上面部との間の空間に分離ガスをパージしているが、本発明は図19に示すように構成してもよい。図19の成膜装置においては、真空容器1の中央領域の底面部14が下方側に突出していて駆動部の収容空間80を形成していると共に、真空容器1の中央領域の上面に凹部80aが形成され、真空容器1の中心部において収容空間80の底部と真空容器1の前記凹部80aの上面との間に支柱81を介在させて、第1の反応ガスノズル31からのBTBASガスと第2の反応ガスノズル32からのO3ガスとが前記中心部を介して混ざり合うことを防止している。
【0069】
回転テーブル2を回転させる機構については、支柱81を囲むように回転スリーブ82を設けてこの回転スリーブ81に沿ってリング状の回転テーブル2を設けている。そして前記収容空間80にモータ83により駆動される駆動ギヤ部84を設け、この駆動ギヤ部84により、回転スリーブ82の下部の外周に形成されたギヤ部85を介して当該回転スリーブ82を回転させるようにしている。86、87及び88は軸受け部である。また前記収容空間80の底部にパージガス供給管74を接続すると共に、前記凹部80aの側面と回転スリーブ82の上端部との間の空間にパージガスを供給するためのパージガス供給管75を真空容器1の上部に接続している。図19では、前記凹部80aの側面と回転スリーブ82の上端部との間の空間にパージガスを供給するための開口部は左右2箇所に記載してあるが、回転スリーブ82の近傍領域を介してBTBASガスとO3ガスとが混じり合わないようにするために、開口部(パージガス供給口)の配列数を設計することが好ましい。
【0070】
図19の実施の形態では、回転テーブル2側から見ると、前記凹部80aの側面と回転スリーブ82の上端部との間の空間は分離ガス吐出孔に相当し、そしてこの分離ガス吐出孔、回転スリーブ82及び支柱81により、真空容器1の中心部に位置する中心部領域が構成される。
【0071】
本発明は、2種類の反応ガスを用いることに限られず、3種類以上の反応ガスを順番に基板上に供給する場合にも適用することができる。その場合には、例えば第1の反応ガスノズル、分離ガスノズル、第2の反応ガスノズル、分離ガスノズル、第3の反応ガスノズル及び分離ガスノズルの順番で真空容器1の周方向に各ガスノズルを配置し、各分離ガスノズルを含む分離領域を既述の実施の形態のように構成すればよい。
【0072】
以上述べた成膜装置を用いた基板処理装置について図20に示しておく。図19中、101は例えば25枚のウエハを収納するフープと呼ばれる密閉型の搬送容器、102は搬送アーム103が配置された大気搬送室、104、105は大気雰囲気と真空雰囲気との間で雰囲気が切り替え可能なロードロック室(予備真空室)、106は、2基の搬送アーム107が配置された真空搬送室、108、109は本発明の成膜装置である。搬送容器101は図示しない載置台を備えた搬入搬出ポートに外部から搬送され、大気搬送室102に接続された後、、図示しない開閉機構により蓋が開けられて搬送アーム103により当該搬送容器101内からウエハが取り出される。次いでロードロック室104(105)内に搬入され当該室内を大気雰囲気から真空雰囲気に切り替え、その後搬送アーム107によりウエハが取り出されて成膜装置108、109の一方に搬入され、既述の成膜処理がされる。このように例えば5枚処理用の本発明の成膜装置を複数個例えば2個備えることにより、いわゆるALD(MLD)を高いスループットで実施することができる。
【0073】
上記の各例では、第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32から夫々第1の反応ガスであるBTBASガス及び第2の反応ガスであるO3ガスを供給してシリコン酸化膜からなる薄膜を成膜する成膜装置や成膜方法について説明したが、本発明は互いに種類の異なる複数の薄膜を連続成膜する場合にも適用でき、例えば2種類の薄膜を交互に積層して多層膜を形成する場合にも適用できる。このような多層膜を成膜するための具体的な成膜装置の構成や成膜方法について、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを交互に積層して絶縁膜である積層膜を形成する場合を例に挙げて以下に説明する。
【0074】
図21に示すように、第1の反応ガスノズル31には、このノズル31のガス導入ポート31aを介して第1のガス供給路110の一端側が接続されており、この第1のガス供給路110の他端側は2本に分岐して、夫々バルブV1、V3及び流量調整部111、113を介して、夫々第1の反応ガスであるBTBASガスの貯留された第1のガス供給源121及び第3のガスであるDCS(ジクロルシラン、Si2H2Cl2)ガスの貯留された第3のガス供給源123に接続されている。また、第2の反応ガスノズル32には、ガス導入ポート32aを介して第2のガス供給路120の一端側が接続されており、この第2のガス供給路120の他端側は同様に2本に分岐して、夫々バルブV2、V4及び流量調整部112、114を介して、夫々第2の反応ガスであるO3ガスの貯留された第2のガス供給源122及び第4の反応ガスであるNH3(アンモニア)ガスの貯留された第4のガス供給源124に接続されている。そのため、この例では第1の反応ガス供給手段である第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガス供給手段である第2の反応ガスノズル32は、夫々第3の反応ガス供給手段及び第4の反応ガス供給手段を兼用していることになる。尚、既述の図1に示した成膜装置と同じ構成の部位については説明を省略する。
【0075】
次に、この成膜装置において多層膜を成膜する成膜方法について説明する。先ず、図22(a)に示すように、バルブV1、V2を開放して、既述の例と同様にウェハWの表面に第1の薄膜であるシリコン酸化膜を成膜する。この時、既述のように真空容器1内ではBTBASガスとO3ガスとが互いに混じり合わないように分離領域D、中心部領域C及び回転テーブル2の下方領域にN2ガスを供給しているので、第1の反応ガスノズル31にはBTBASガスだけが接触し、第2の反応ガスノズル32にはO3ガスだけが接触する。従って、各ノズル31、32にはシリコン酸化膜が付着(成膜)しない。尚、この図22では、バルブV1〜V4について「開」状態を白色、「閉」状態を黒色として描画している。
【0076】
次いで、真空容器1内及び各ノズル31、32の内部領域からBTBASガス及びO3ガスが排気されるように、各バルブV1、V2を閉じると共に、例えば圧力調整手段(バルブ)65により真空容器1内を引き切りの状態にする。
続いて、回転テーブル2上のウエハWが所定の温度例えば300℃となるようにヒータユニット7の設定温度を調整する。そして、真空容器1内の雰囲気が所定の真空度となるように圧力調整手段(バルブ)65の開度を調整すると共に、図22(b)に示すように、バルブV3、V4を開放して各ノズル31、32から夫々DCSガス及びNH3ガスを所定の流量で供給する。また、各分離領域D、中心部領域C及び回転テーブル2の下方領域にN2ガスを所定の流量で供給する。
【0077】
そして、回転テーブル2の回転を所定の回数例えば200回続けることにより、ウエハWの表面にDCSガスが吸着し、次いでこのDCSガスがNH3ガスにより窒化されるプロセスが複数回繰り返されるので、先の成膜処理により成膜されたシリコン酸化膜の上層には、所定の膜厚の第2の薄膜である窒化シリコン膜が積層される。この時、同様にDCSガスとNH3ガスとが互いに混じり合わないように分離領域D、中心部領域C及び回転テーブル2の下方領域にN2ガスを供給しているので、ノズル31、32には窒化シリコンが付着しない。
続いて、同様に真空容器1内及びノズル31、32の内部領域からDCSガス及びNH3ガスが排気されるように、バルブV3、V4を閉じると共に、圧力調整手段65により真空容器1を引き切りの状態にする。その後、同様に反応ガスをBTBASガス及びO3ガスに切り替えて、このシリコン窒化膜の上層にシリコン酸化膜を成膜する。
こうして図23に示すように、ウエハWに、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜が下側からこの順番で積層されたいわゆるONO膜と呼ばれる絶縁膜である積層膜200が形成される。この積層膜200は、例えばウエハW上に成膜されたゲート絶縁膜の上層に積層されるが、この図23では省略して示している。
【0078】
上述の実施の形態によれば、既に詳述したように、各処理領域P1、P2が分離されているので、BTBASガスとO3ガスとの混合、及びDCSガスとNH3ガスとの混合を抑えることができ、そのため各ノズル31、32への反応生成物(シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜)の生成(付着)を抑えることができ、つまりノズル31、32には反応生成物が実質成膜されない。また、従来の枚葉成膜装置や縦型熱処理装置でALDにより複数種の膜を成膜する場合には、互いに異なる装置を用いる必要があるが、共通の処理容器内に各反応ガスが供給されるので、ノズルに反応生成物が生成してパーティクルの原因となってしまう。一方、上述の実施の形態では、ノズル31、32に成膜が起こらないのでこうした問題がなく、またノズル31、32は回転テーブル2上のウエハWの表面から上方に離間して配置されており、ウエハWよりも温度が低いため、ノズル31、32には各ガスが吸着しないか、あるいは吸着したとしても成膜に影響がない程度に抑えられるので、各ノズル31、32を種類の異なる反応ガス同士で共通化できる。そのため、設備の費用の低廉化、省スペース化及び高スループット化を図ることができる。
【0079】
上記の例では、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを交互に積層して積層膜200を形成する例について説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、例えば第1の薄膜である酸化ストロンチウム膜(SrO膜)と第2の薄膜である酸化チタン膜(TiO膜)とを交互に積層して積層膜200(STO膜)を形成する場合にも適用できる。このような積層膜200を形成する場合には、例えば図24に示す成膜装置が用いられる。
【0080】
図24に示すように、第1のガス供給源121には、例えば第1の反応ガスとして、チタンソースガス例えばTi(OiPr)2(THD)2(チタニウムビスイソプロポキサイドビステトラメチルヘプタンジオナト)や、Ti(OiPr)(チタニウムテトライソプロポキサイド)等のチタンを含む化合物が気体状で供給できるように貯留されている。また、第3のガス供給源123には、例えば第3の反応ガスとして、ストロンチウムソースガス例えばSr(THD)2(ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト)や、Sr(Me5Cp)2(ビスペンタメチルシクロペンタジエニエルストロンチウム)等のストロンチウムを含む化合物が気体状で供給できるように貯留されている。
この例においては、ウエハWに吸着した上記の各反応ガスと反応する反応ガスとしてはどちらもO3ガスが用いられるので、第2の反応ガスノズル32の上流側には、第2の反応ガスであるO3ガスが貯留された第2のガス供給源122が接続されている。
【0081】
そして、この成膜装置においては、ストロンチウムソースガスとチタンソースガスとを既述のように交互に切り替えると共に、ウエハW上に吸着したこれらの反応ガスに対してO3ガスを供給することにより、酸化ストロンチウム膜と酸化チタン膜とが交互に積層されて例えば酸化ストロンチウム膜と酸化チタン膜との積層膜200が形成される。この例においても、上記の積層膜200を積層した時と同様の効果が得られる。
【0082】
上記の各例において、互いに種類の異なる膜の積層数としては、3層に限られず、2層あるいは4層以上であっても良い。更に、既述のように、例えばBTBASガス、O3ガス、DCSガス及びNH3ガスを供給するノズルを回転テーブル2の周方向にこの順番で個別に設けて、各々のノズルから供給される反応ガス同士が互いに混じり合わないように各々のノズル間に分離領域Dを設けて積層膜200を成膜するようにしても良い。また、処理領域P1にBTBASガス及びDCSガスを夫々供給する2本のノズルを隣接して設けると共に、処理領域P2にO3ガス及びNH3ガスを夫々供給する2本のノズルを隣接して設けて、所定の膜厚の薄膜を成膜する度にウェハWに供給する反応ガスを切り替えるようにしても良い。
尚、第1のガス供給路110及び第2のガス供給路120から供給される各反応ガスは、実際には各々の供給路110、120の上流側が例えば複数本に分岐して各々の反応ガスが貯留されたガス供給源に接続されて、これらの複数のガス供給源から供給されるように構成されているが、上記の図21及び図24では必要のないガス供給源については描画を省略している。
【0083】
既述の各例では、酸化シリコン膜を成膜するための反応ガスとして例えばBTBASガスなどを用いたが、以下の実施の形態では、BTBASガスなどよりも好適な反応ガスについて説明する。
始めに、BTBASガスを用いた上記のALD(MLD)プロセスについて再度述べておく。先ず、図25(a)に示すように、例えば第1の処理領域P1においてウェハW上にBTBASガスが吸着し、次いで同図(b)に示すように、第2の処理領域P2においてO3ガスによりウェハW上のBTBASガスが酸化され、同図(c)に示すように酸素とBTBASガス中のシリコンとを含む反応生成物がウェハW上に生成すると共に、BTBASガスから不純物例えば有機物が副生成ガスとして脱離していく。そして、この反応生成物がウェハW上に面内に亘って形成されることによって既述のシリコン酸化膜が成膜され、こうしてBTBASガスの吸着と酸化とが繰り返されることによりシリコン酸化膜が積層されていくことになる。
【0084】
ところで、BTBASは蒸気圧が低く、また図26(a)に示すように、シリコン原子を対称として窒素(N)原子とt−ブチル基(−C(CH3)3)とが両側に結合した大きな分子構造であることから、デバイスに使用する箇所やユーザ側の要求などによっては、成膜速度、埋め込み特性及びシリコン酸化膜の膜質の点で、特に有利なガスであるとは言えないかもしれない。そこで、上述の点においてBTBASよりも有利なシリコン酸化膜の成膜用の反応ガスとしてジイソプロピルアミノシランガスを挙げることができる。
【0085】
ジイソプロピルアミノシランは、BTBASよりも蒸気圧が高く、また図26(b)から分かるようにBTBASよりも分子が小さい。BTBASは蒸気圧が低いことから、高い処理圧力で、ガス流量を高くできないので、ガスの流量及び処理圧力をあまり高くできないので、速い成膜速度が得られにくい。これに対してジイソプロピルアミノシランは、例えば50℃における蒸気圧がBTBASの約10倍程度であるため、ガス流量を多くしたり処理圧力を高くしたりできるので、成膜速度が速い。
【0086】
更に図26(a)と図26(b)とを比較して分かるように、BTBASはSi−Hの両側にt−ブチル基が存在するので、ウェハW上にガスが吸着する時にこのt−ブチル基が立体障害になりやすい。これに対してジイソプロピルアミノシランの場合には、こうした立体障害の度合いが小さい。そのためO3ガスのアタックに対して、ジイソプロピルアミノシランの方がBTBASに比べてシリコンと窒素との間の結合が切れやすい。このような点からも、ジイソプロピルアミノシランを用いる方が速い成膜速度が得られる。また、反応ガス中から有機物や窒化物が速やかに脱離し、膜中の不純物が少なくなるので、良好な電気的特性が得られる。
【0087】
また、ジイソプロピルアミノシランは、BTBASよりも分子が小さいためウェハW上に互いに近接して配列され、このためシリコン酸化膜が緻密になる。従って、その後のアニール処理において収縮(シュリンク)が小さくなるので、アニール処理によるパターン倒れを抑えることができる。そして、ジイソプロピルアミノシランは分子が小さいことから、またガス流量を増やしたり処理圧力を高めたりすることができることから、ウェハWの凹部内への埋め込み特性が良好である。
【0088】
更に、ジイソプロピルアミノシランガスではウェハWへの反応ガスの吸着が速やかに起こることから、反応ガスの使用量が抑えられる。更にまた、反応ガスの流量や処理圧力を調整することによりウェハWの面内均一性を調整できることから、反応ガスの流量や処理圧力の調整幅が広がることで面内均一性の調整幅も広くなる。
【0089】
この反応ガスを用いて成膜処理を行う場合には、例えば回転テーブル2の回転数、処理圧力、ウェハWの加熱温度、反応ガスの流量、O3ガスの流量及び分離ガスノズル41、42からのN2ガスの流量は夫々例えば240rpm、2.13kPa(16Torr)、350〜500℃、275sccm、10000sccm、10000sccmに設定される。
【実施例】
【0090】
次に、上記のジイソプロピルアミノシランガスを反応ガスとして用いた場合に得られる薄膜の特性について、以下に説明する。
(実施例1:成膜速度確認実験)
先ず、処理ガスとしてBTBASガスとジイソプロピルアミノシランガスとを用いた場合の成膜速度を比較すると共に、ジイソプロピルアミノシランガスを用いた場合において、成膜速度に対するガス流量、処理圧力及び成膜温度の各依存性を確認する実験を行った。実験条件は各実施例1−1〜1−9毎に、以下の表1に示す条件で行った。
(表1)
実施例1−1はBTBASガスを用いた場合に成膜速度が最も高くなる条件で行った実験である。尚、いずれの実施例1−1〜1−9においても回転テーブル2の回転数は240rpmとした。
【0091】
この結果、図27に示すように、BTBASガスとジイソプロピルアミノシランガスとを比べると、同じ処理条件ではジイソプロピルアミノシランガスの方が成膜速度が速くなっていた。また、ジイソプロピルアミノシランガスを用いると、ガス流量及び処理圧力のいずれについてもBTBASガスのほぼ上限値よりも増やすことができ、その増加分に応じて成膜速度が速くなることが分かった。実施例1−6の条件では、BTBASガスよりも80%程度速い成膜速度となっていた。また、ジイソプロピルアミノシランガスでは、成膜温度を350℃〜500℃の間で変化させても成膜速度がほとんど変わらなかったことから、ジイソプロピルアミノシランガスはこの温度範囲では安定で熱分解が抑えられて、ALD法による良好な成膜が行われることが分かった。従って、例えばO3ガスにより酸化される前におけるジイソプロピルアミノシランガスの熱分解が抑えられることが分かった。
【0092】
(実施例2:成膜速度確認実験)
次に、上記の実施例1よりも更に処理圧力を高めて実験を行った。実験条件を以下の表2に示す。
(表2)
実施例1−1と同様に、実施例2−1としてBTBASガスの結果を併記する。尚、反応ガスの流量や処理圧力を増やすにあたって、O3ガスの流量や真空容器1の中央部に対して分離ガス供給管51及びパージガス供給管72から夫々供給する窒素ガスの流量についても増やしてある。また、いずれの実験においても成膜温度は350℃、回転テーブル2の回転数は240rpmとした。
【0093】
この実験の結果、図28に示すように、反応ガスとしてジイソプロピルアミノシランガスを用いた場合には、4.27kPa(32Torr)もの高圧の条件で成膜処理を行うことができ、その時の成膜速度はBTBASガスを用いた場合の2倍近くまで速くなることが分かった。
【0094】
(実施例3:埋め込み特性確認実験)
次に、ウェハWの表面にアスペクト比(=30)の極めて大きな凹部(開口部)を含むパターン(開口深さ:10μm、開口幅:0.3μm)を形成し、このウェハWに対して薄膜の埋め込み特性を確認する実験を行った。この実験では、図29に示すように、ウェハW上に成膜された薄膜の膜厚について、ウェハWの表面における凹部以外の部位の膜厚をtT、凹部の側壁面における膜厚をtS、凹部即ち凹底面における膜厚をtBとした。そして、通常であれば凹部内へは薄膜を埋め込みにくい(膜厚が薄くなる)ことから、凹部以外の膜厚tTに対する凹部側壁面の膜厚tS及び凹部底面の膜厚tBの割合(側壁膜厚比RS=tS÷tT×100、底面膜厚比RB=tB÷tT×100)を計算して、凹部への埋め込み特性の評価の指標として用いた。この時の実験条件を以下の表3に示す。尚、既述の図29については、凹部や薄膜の各寸法について模式的に示している。
(表3)
また、実施例3−1〜3−3の各々について、回転テーブル2の回転数を30、60、120、240rpmとして夫々実験を行った。また、いずれの条件においてもO3ガスの濃度及び流量は夫々300g/Nm3及び10slm、成膜温度は350℃とした。
【0095】
実施例3−1、3−2、3−3の結果について、得られたSEM(Scanning Electron Microscope)画像を読み取って模式的に示した図を夫々図30、図31、図32に示す。これらの図30、図31、図32中括弧で示した数字は、各々の回転数毎に算出された上記の膜厚比RS、RBであり、凹部以外の部位については100%として示している。また、凹部底面付近における側壁面の膜厚比RSについても併記してある。
この結果、実施例3−1(BTBASガス)では回転テーブル2の回転数が速くなる程、凹部の側壁面及び凹部底面における膜厚比RS、RBが小さくなって埋め込み特性が悪化しており、240rpmでは38%程度まで減少していた。一方、実施例3−2、3−3においても同様の傾向が見られたが、240rpmでは夫々50%及び55%程度に留まっていた。そのため、BTBASガスよりもジイソプロピルアミノシランガスを用いた方が良好な埋め込み特性が得られることが分かった。また、実施例3−2、3−3の結果から、処理圧力が高くなる程埋め込み特性が向上することが分かった。尚、実施例3−1の回転数が30rpmの結果では、凹部の底面側において両側面側から成長した薄膜同士が繋がっていたため、見かけ上底面の膜厚tBが厚くなっていた。この時得られた膜厚比Rをまとめたものを図33に示す。図33では、得られた膜厚比Rとして、側壁膜厚比RS及び底面膜厚比RBのうち、小さい方の値をプロットしている。
【0096】
この時、いずれの実験結果においても回転テーブル2の回転数が速くなる程成膜速度が向上していることが分かった。この成膜速度の結果を表4に示す。
(表4:成膜速度、単位:nm/min)
【0097】
(実施例4:ウェットエッチング特性確認実験)
続いて、成膜後の薄膜のウェットエッチング特性を評価した実験について説明する。実施例4−1〜4−9として、既述の実施例1と同じ条件にて成膜したシリコン酸化膜について、1重量%の希沸酸水溶液に浸析してウェットエッチングレートを求めた。尚、参考例4−1、4−2として、夫々950℃の処理温度にて得られた熱酸化膜及び780℃にてジクロロシランガスとHigh Temp. Oxide(N2O)とを用いたCVD法により成膜したシリコン酸化膜についての結果を示す。この実験結果を図34に示す。尚、この図34では、参考例4−1の熱酸化膜について得られた値を1として各々の結果を規格化した値を示している。
【0098】
その結果、ジイソプロピルアミノシランガスを用いた場合には、ガス流量及び処理圧力を変化させても、ウェットエッチングレートはほぼ同じであった。一方成膜温度を高くするに従って、ウェットエッチングレートが低くなっていた。この時、ジイソプロピルアミノシランガスを用いることでウェットエッチングレートがBTBASガスを用いた結果よりも僅かに大きくなっているが、これはBTBASガスを用いて成膜したシリコン酸化膜には不純物として窒素が含まれているため、理想的な組成のシリコン酸化膜よりもウェットエッチング耐性が増しているためだと考えられる。つまり、ジイソプロピルアミノシランガスを用いた場合には、BTBASガスを用いる場合よりも膜中の窒素濃度が減少すると言える。
【0099】
(実施例5:アニール処理による収縮量確認実験)
次に、成膜後のシリコン酸化膜がどの程度緻密化しているかを評価する実験を行った。既述のように、反応ガス中に含まれる有機物が大きいと、シリコン酸化膜が疎になり、成膜後のアニール処理によりシリコン酸化膜が大きく収縮(シュリンク)する。このような収縮が大きいと、パターン倒れの原因となるため好ましくない。そこで、実施例5−1〜5−9について既述の実施例1と同様にシリコン酸化膜を成膜し、各々のウェハWに対して窒素雰囲気中で850℃のアニール処理を行ってアニール処理前後における膜厚の収縮率を求めた。この結果を図35に示す。尚、参考例5−1として参考例4−2と同様にCVD法により成膜したシリコン酸化膜について得られた結果を示す。
この結果から、ジイソプロピルアミノシランガスを用いることにより、BTBASガスを用いるよりも収縮率が減少し、従って緻密なシリコン酸化膜が形成されていることが分かる。
【0100】
(実施例6:不純物確認実験)
この実験では、成膜後のシリコン酸化膜中に含まれる不純物(水素、窒素、炭素)について、SIMS(二次イオン質量分析法)を用いて膜厚方向において50nmの深さに亘って測定した。尚、成膜時の処理圧力及び回転テーブル2の回転数は、夫々1.07kPa(8Torr)、240rpmとした。
この実験の結果、図36に示すように、ジイソプロピルアミノシランガスを用いることによって、水素、窒素及び炭素のいずれについてもBTBASガスを用いた場合よりも減少しており、窒素及び炭素についてはBTBASガスよりも大きく減少していた。また、ジイソプロピルアミノシランガスの場合には、成膜温度を高くするにつれて水素及び窒素については減少量が増えることが分かった。
【0101】
図示や詳細の説明については省略するが、別途行った実験により、ジイソプロピルアミノシランガスを用いることによって、サイクルレート(回転テーブル2の回転毎に成膜されるシリコン酸化膜の膜厚)及びウェハW内のシリコン酸化膜の面内均一性のいずれについても、BTBASガスを用いるよりも向上することが分かった。サイクルレートについては、バッチ式の反応炉を用いた実験の結果、ジイソプロピルアミノシランガスではBTBASガスの1.34倍となっていた。
【符号の説明】
【0102】
1 真空容器
W ウエハ
11 天板
12 容器本体
15 搬送口
2 回転テーブル
21 コア部
24 凹部(基板載置領域)
31 第1の反応ガスノズル
32 第2の反応ガスノズル
P1 第1の処理領域
P2 第2の処理領域
D 分離領域
C 中心部領域
4 凸状部
41、42 分離ガスノズル
44 第1の天井面
45 第2の天井面
5 突出部
51 分離ガス供給管
6 排気領域
61、62 排気口
7 ヒータユニット
72〜75 パージガス供給管
81 支柱
82 回転スリーブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを多数回実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置、成膜方法及びこの方法を実施するプログラムを格納した記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおける成膜手法として、基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)等の表面に真空雰囲気下で第1の反応ガスを吸着させた後、供給するガスを第2の反応ガスに切り替えて、両ガスの反応により1層あるいは複数層の原子層や分子層を形成し、このサイクルを多数回行うことにより、これらの層を積層して、基板上への成膜を行うプロセスが知られている。このプロセスは、例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMLD(Molecular Layer Deposition)などと呼ばれており、サイクル数に応じて膜厚を高精度にコントロールすることができると共に、膜質の面内均一性も良好であり、半導体デバイスの薄膜化に対応できる有効な手法である。
【0003】
このような成膜方法が好適である例としては、例えばゲート酸化膜に用いられる高誘電体膜の成膜が挙げられる。一例を挙げると、シリコン酸化膜(SiO2膜)を成膜する場合には、第1の反応ガス(原料ガス)として、例えばビスターシャルブチルアミノシラン(以下「BTBAS」という)ガス等が用いられ、第2の反応ガス(酸化ガス)としてオゾンガス等が用いられる。
【0004】
このような成膜方法を実施する装置としては、真空容器の上部中央にガスシャワーヘッドを備えた枚葉の成膜装置を用いて、基板の中央部上方側から反応ガスを供給し、未反応の反応ガス及び反応副生成物を処理容器の底部から排気する方法が検討されている。ところで上記の成膜方法は、パージガスによるガス置換に長い時間がかかり、またサイクル数も例えば数百回にもなることから、処理時間が長いという問題があり、高スループットで処理できる装置、手法が要望されている。
【0005】
このような背景から、複数枚の基板を真空容器内の回転テーブルに回転方向に配置して成膜処理を行う装置が以下のように既に知られている。特許文献1には、扁平な円筒状の真空容器を左右に分離し、左側領域及び右側領域に半円の輪郭に沿って形成された排気口が上向きに排気するように設けられると共に、左側半円の輪郭と右側半円の輪郭の間、つまり真空容器の直径領域には分離ガスの吐出口が形成されている。右側半円領域及び左側半円領域には互いに異なる原料ガスの供給領域が形成され、真空容器内の回転テーブルが回転することでワークピースが右側半円領域、分離領域D及び左側半円領域を通過すると共に、両原料ガスは排気口から排気される。そして分離ガスが供給される分離領域Dの天井は原料ガスの供給領域よりも低くなっている。
【0006】
しかしながらこの装置は、分離ガスの吐出口と反応ガスの供給領域との間に上向きの排気口を設け、反応ガスをこの排気口から分離ガスと共に排気する手法を採用しているため、ワークピースに吐出された反応ガスが上向き流となって排気口から吸い込まれるため、パーティクルの巻上げを伴ない、ウエハへのパーティクル汚染を引き起こしやすいという欠点がある。
【0007】
特許文献2には、ウエハ支持部材(回転テーブル)の上に回転方向に沿って4枚のウエハを等距離に配置する一方、ウエハ支持部材と対向するように第1の反応ガス吐出ノズル及び第2の反応ガス吐出ノズルを回転方向に沿って等距離に配置しかつこれらノズルの間にパージノズルを配置し、ウエハ支持部材を水平回転させる構成が記載されている。各ウエハはウエハ支持部材により支持され、ウエハの表面はウエハ支持部材の上面からウエハの厚さだけ上方に位置している。また各ノズルはウエハ支持部材の径方向に伸びるように設けられ、ウエハとノズルとの距離は0.1mm以上であることが記載されている。真空排気はウエハ支持部材の外縁と処理容器の内壁との間から行われる。このような装置によれば、パージガスノズルの下方がいわばエアーカーテンの役割を果たすことで第1の反応ガスと第2の反応ガスとの混合を防止している。
【0008】
しかしながらウエハ支持部材が回転していることもあって、パージガスノズルからのエアーカーテン作用だけではその両側の反応ガスが通過してしまい、特に回転方向上流側から前記エアーカーテン中を拡散してしまうことは避けられない。更にまた第1の反応ガス吐出ノズルから吐出した第1の反応ガスは回転テーブルに相当するウエハ支持部材の中心部を介して容易に第2の反応ガス吐出ノズルからの第2の反応ガス拡散領域に到達してしまう。このように第1の反応ガスと第2の反応ガスとがウエハ上で混合されてしまうと、ウエハ表面に反応生成物が付着し、良好なALD(あるいはMLD)処理ができなくなる。
【0009】
特許文献3には、真空容器内を隔壁により周方向に複数の処理室に分割すると共に、隔壁の下端に対して細隙を介して回転可能な円形の載置台を設けて、この載置台上にウエハを複数配置する構成が記載されている。この装置は、隔壁と載置台あるいはウエハとの間の隙間からプロセスガスが隣の処理室に拡散し、また複数の処理室の間に排気室を設けているので、ウエハがこの排気室を通るときに上流側及び下流側の処理室からのガスが当該排気室にて混合される。このためいわゆるALD方式の成膜手法には適用できない。
【0010】
特許文献4には、円形のガス供給板を周方向に8つに区切り、AsH3ガスの供給口、H2ガスの供給口、TMGガスの供給口及びH2ガスの供給口を90度づつずらして配置し、さらにこれらガス供給口の間に排気口を設け、このガス供給板と対向させてウエハを支持したサセプタを回転させる手法が記載されている。しかしながら、この手法は、2つの反応ガスの分離に対して現実的な手段が何ら開示されておらず、サセプタの中心付近においては勿論のこと、実際には中心付近以外においてもH2ガスの供給口の配列領域を介して2つの反応ガスが混合されてしまう。更にまたウエハの通過領域と対向する面に排気口を設けると、サセプタ表面からのパーティクルの巻上げなどによりウエハのパーティクル汚染が起こりやすいという致命的な問題もある。
【0011】
また特許文献5には、回転テーブルの上方領域を十字に4つの垂直壁で仕切り、こうして仕切られた4つの載置領域にウエハを載置すると共に、ソースガスインジェクタ、反応ガスインジェクタ、パージガスインジェクタを回転方向に交互に配置して十字のインジェクタユニットを構成し、これらインジェクタを前記4つの載置領域に順番に位置させるようにインジェクタユニットを水平回転させかつ回転テーブルの周辺から真空排気する構成が記載されている。しかしながらこのような構成においては、各載置領域にソースガスあるいは反応ガスを供給した後、パージガスノズルにより当該載置領域の雰囲気をパージガスで置換するために長い時間がかかるし、また一の載置領域から垂直壁を越えて隣接する載置領域にソースガスあるいは反応ガスが拡散して、両ガスが載置領域にて反応するおそれが大きい。
【0012】
更にまた特許文献6(特許文献7、8)には、ターゲット(ウエハに相当する)に複数のガスを交互に吸着させる原子層CVD方法を実施するにあたり、ウエハを載置するサセプタを回転させ、サセプタの上方からソースガスとパージガスとを供給する装置が記載されている。段落0023から0025には、チャンバの中心から放射状に隔壁が延びており、隔壁の下に反応ガスまたはパージガスをサセプタに供給するガス流出孔が設けられていること、隔壁からのガス流出孔から不活性ガスを流出させることでガスカーテンを形成することが記載されている。排気に関しては段落0058に初めて記載され、この記載によると、ソースガスとパージガスとを夫々排気チャンネル30a、30bから別々に排気するようになっている。このような構成では、パージガスコンパートメントにおいて両側のソースガスコンパートメンにおけるソースガスの混じり合いを避けられず、反応生成物が発生してウエハへのパーティクル汚染が生じる。この特許文献6は、解読が困難であり、上述以外の構成については把握が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許公報7,153,542号:図6(a)、(b)
【特許文献2】特開2001−254181号公報:図1及び図2
【特許文献3】特許3144664号公報:図1、図2、請求項1
【特許文献4】特開平4−287912号公報
【特許文献5】米国特許公報6,634,314号
【特許文献6】特開2007−247066号公報:段落0023〜0025、0058、図12及び図18
【特許文献7】米国特許公開公報2007−218701号
【特許文献8】米国特許公開公報2007−218702号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はこのような事情に基づいて行われたものであり、その目的は、基板の表面に互いに反応する複数の反応ガスを順番に供給して反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成するにあたり、高いスループットが得られ、基板上にて複数の反応ガスが混合されることを防止して良好な処理を行うことができる成膜装置、成膜方法及びこの方法を実施するプログラムを格納した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は 真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置において、
前記真空容器内に設けられた回転テーブルと、
この回転テーブルに基板を載置するために設けられた基板載置領域と、
前記回転テーブルの回転方向に互いに離れて設けられ、前記回転テーブルにおける基板の載置領域側の面に夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを供給するための第1の反応ガス供給手段及び第2の反応ガス供給手段と、
前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との雰囲気を分離するために前記回転方向においてこれら処理領域の間に位置する分離領域と、
前記第1の処理領域と第2の処理領域との雰囲気を分離するために真空容器内の中心部に位置し、回転テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出する吐出孔が形成された中心部領域と、
前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスと共に前記反応ガスを排気するための排気口と、を備え、
前記分離領域は、分離ガスを供給するための分離ガス供給手段と、この分離ガス供給手段の前記回転方向両側に位置し、当該分離領域から処理領域側に分離ガスが流れるための狭隘な空間を回転テーブルとの間に形成するための天井面と、を備えたことを特徴とする。
前記中心部領域は、例えば回転テーブルの回転中心部と真空容器の上面側とにより区画され、分離ガスがパージされる領域である。また他の例として、前記中心部領域は、真空容器の中心部にて上面及び底面の間に設けた支柱と、この支柱を囲み、鉛直軸回りに回転自在な回転スリーブと、を含み、この場合前記回転スリーブは、回転テーブルの回転軸をなしている。
【0016】
本発明における種々の構成例について列挙する。前記排気口は、例えば回転テーブルの周縁と真空容器の内周壁との隙間から排気するために設けられている例を挙げることができる。また処理領域よりも分離領域の方が圧力が高くなるように構成する例を挙げることができる。前記回転テーブルの表面と基板の表面とは、高さが互いに同じかまたは高さの差が5mm以内であることが好ましい。また本発明は回転テーブルを加熱するための加熱手段が設けられる場合がある。前記第1の反応ガス供給手段、第2の反応ガス供給手段及び分離ガス供給手段へガスを各々導入するためのガス導入ポートは、回転テーブルの周縁部側及び中心部側の少なくとも一方に設けられている構成としてもよい。前記分離ガス供給手段のガス吐出孔は、回転テーブルの回転中心部及び周縁部の一方側から他方側に向かって配列されている構成としてもよい。前記分離領域における天井面は平坦面に形成されていることに限らず曲面に形成されていてもよい。
【0017】
また前記排気口は、各反応ガスの排気を専用に行うために、平面で見たときに前記分離領域の前記回転方向両側に設けられていることが好ましい。加熱手段を設ける場合には、加熱手段は回転テーブルの下方側に設けられていることが好ましいが、回転テーブルの上方側に設けられていてもよいし、回転テーブルの上下両側に設けられていてもよい。また回転テーブルの外側から下方側空間にガスが侵入することを抑えるために、当該回転テーブルの下方側空間にパージガスを吐出してパージする手段を備えることが好ましい。前記分離領域の天井面における真空容器の外縁側の部位は、前記回転テーブルの外端面に対向するように屈曲して真空容器の内周壁の一部を構成し、当該天井面の屈曲部位と前記回転テーブルの外端面との隙間は、反応ガスの侵入防止効果が得られる寸法に設定されている構成としてもよい。
【0018】
前記分離ガス供給手段の両側に各々位置する狭隘な空間を形成する天井面は、基板の中心が通過する部位において回転テーブルの回転方向に沿った幅寸法が50mm以上であることが好ましい。基板載置領域は回転テーブルの回転方向に沿って1個設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。即ち、本発明は1枚の基板を処理するためのものであってもよいし、複数の基板を処理するためのものであってもよい。外部の搬送機構と前記回転テーブルとのあいだで基板の受け渡しを行うために、真空容器の側壁にゲートバルブにより開閉される搬送口が設けられている構成としてもよい。前記分離領域の天井面において、前記ノズルに対して回転テーブルの相対的回転方向の上流側部位は、外縁に位置する部位ほど前記回転方向の幅が大きいことが好ましく、例えば前記ノズルに対して少なくとも回転テーブルの相対的回転方向の上流側部位は、扇型に形成されている構成とすることができる。
前記回転テーブルの回転方向に互いに離れて設けられ、前記回転テーブルにおける基板の載置領域側の面に前記第1の反応ガス及び第2の反応ガスにより生成される反応生成物とは異なる反応生成物を生成するための第3の反応ガス及び第4の反応ガスを夫々供給する第3の反応ガス供給手段及び第4の反応ガス供給手段と、
前記第1の反応ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段から夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを基板の表面に供給して第1の薄膜を成膜するステップと、前記第3の反応ガス供給手段及び前記第4の反応ガス供給手段から夫々第3の反応ガス及び第4の反応ガスを前記基板の表面に供給して第2の薄膜を成膜するステップと、を交互に実行するように制御信号を出力する制御部と、を備えていても良い。この場合において、前記第1の反応ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段は、夫々前記第3の反応ガス供給手段及び前記第4の反応ガス供給手段を兼用していても良い。
【0019】
また本発明の基板処理装置は、内部に基板搬送手段が配置された真空搬送室と、この真空搬送室に気密に接続された請求項ないしのいずれか一つに記載の成膜装置と、前記真空搬送室に気密に接続され、真空雰囲気と大気雰囲気との間で雰囲気が切り替え可能な予備真空室と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
更に本発明の成膜方法は、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜方法において、
真空容器内の回転テーブルに基板をほぼ水平に載置し、当該回転テーブルを回転する工程と、
前記回転方向に互いに離れて前記真空容器に設けられた第1の反応ガス供給手段及び第2の反応ガス供給手段から、前記回転テーブルにおける基板の載置領域側の面に夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを供給する工程と、
前記回転方向において第1の反応ガス供給手段及び第2の反応ガス供給手段の間に位置する分離領域に設けられた分離ガス供給手段から分離ガスを供給し、この分離ガス供給手段の前記回転方向両側にて前記回転テーブルに対向する天井面と当該回転テーブルとの間の狭隘な空間に前記分離ガスを拡散させる工程と、
真空容器内の中心部に位置する中心部領域に形成された吐出口から分離ガスを当該回転テーブルの基板載置面側に吐出する工程と、
前記中心部領域からの分離ガス及び前記天井面の下方から拡散した分離ガスと共に反応ガスを排気する工程と、を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明では例えば前記回転テーブルを加熱する工程が更に含まれる。前記第1の反応ガス及び第2の反応ガスを供給する工程に代えて、前記第1の反応ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段から夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを基板の表面に供給して第1の薄膜を成膜するステップと、前記回転テーブルの回転方向に互いに離れて設けられた第3の反応ガス供給手段及び第4の反応ガス供給手段から、前記第1の反応ガス及び第2の反応ガスにより生成される反応生成物とは異なる反応生成物を生成するための第3の反応ガス及び第4の反応ガスを前記基板の表面に供給して第2の薄膜を成膜するステップと、を交互に実行する工程を行っても良い。更に他の発明は、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置に用いられるプログラムを格納する記憶媒体であって、前記プログラムは、本発明の成膜方法を実施するようにステップ群が組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板の表面に、互いに反応する複数の反応ガスを順番に供給しかつこの供給サイクルを多数回実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成するにあたって、回転テーブルに基板を配置し、第1の反応ガス及び第2の反応ガスを順番に供給して前記供給サイクルを行うようにしているため、高いスループットで成膜処理を行うことができる。そして前記回転方向において第1の反応ガス供給手段と第2の反応ガス供給手段との間に分離ガス供給手段を設けて、この分離ガス供給手段の前記回転方向両側にて低い天井面を設けることで当該天井面と回転テーブルとの間に狭隘な空間を形成し、これにより分離領域に前記反応ガスが侵入することを阻止すると共に、真空容器の中心部領域から回転テーブルの周縁に向けて分離ガスを吐出し、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスと共に前記反応ガスが回転テーブルの周縁と真空容器の内周壁との隙間を介して排気されるため、互いに異なる反応ガス同士が混じり合うことを防止でき、良好な成膜処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る成膜装置の縦断面を示す図3のI−I’線断面図である。
【図2】上記の成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】上記の成膜装置の横断平面図である。
【図4】上記の成膜装置における処理領域及び分離領域を示す縦断面図である。
【図5】上記の成膜装置の一部を示す縦断面図である。
【図6】上記の成膜装置の一部破断斜視図である。
【図7】分離ガスあるいはパージガスの流れる様子を示す説明図である。
【図8】上記の成膜装置の一部破断斜視図である。
【図9】第1の反応ガス及び第2の反応ガスが分離ガスにより分離されて排気される様子を示す説明図である。
【図10】分離領域に用いられる凸状部の寸法例を説明するための説明図である。
【図11】分離領域の他の例を示す縦断面図である。
【図12】分離領域に用いられる凸状部の他の例を示す縦断面図である。
【図13】分離ガス供給手段のガス吐出孔の他の例を示す底面図である。
【図14】凸状部の変形例を示す底面図である。
【図15】本発明の他の実施の形態に係る成膜装置を示す横断平面図である。
【図16】本発明の更に他の実施の形態に係る成膜装置を示す横断平面図である。
【図17】本発明の更にまた他の実施の形態に係る成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【図18】本発明の上記以外の実施の形態に係る成膜装置を示す横断平面図である。
【図19】本発明の上記以外の実施の形態に係る成膜装置を示す縦断面図である。
【図20】本発明の成膜装置を用いた基板処理システムの一例を示す概略平面図である。
【図21】上記の成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図22】上記の他の例における成膜処理の流れを示す模式図である。
【図23】上記の他の例の成膜装置において基板上に成膜される積層膜の一例を示す縦断面図である。
【図24】上記の他の例の成膜装置の変形例を示す平面図である。
【図25】ALD法において薄膜が成膜される様子を示す模式図である。
【図26】BTBASガス及びジイソプロピルアミノシランガスの構造を示す模式図である。
【図27】本発明の実施例にて得られる特性図である。
【図28】本発明の実施例にて得られる特性図である。
【図29】本発明の実施例にて得られる特性図を説明するための説明図である。
【図30】本発明の実施例にて得られる特性図である。
【図31】本発明の実施例にて得られる特性図である。
【図32】本発明の実施例にて得られる特性図である。
【図33】本発明の実施例にて得られる特性図である。
【図34】本発明の実施例にて得られる特性図である。
【図35】本発明の実施例にて得られる特性図である。
【図36】本発明の実施例にて得られる特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態である成膜装置は、図1(図3のI−I’線に沿った断面図)に示すように平面形状が概ね円形である扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は天板11が容器本体12から分離できるように構成されている。天板11は、内部の減圧状態により封止部材例えばOリング13を介して容器本体12側に押し付けられていて気密状態を維持しているが、天板11を容器本体12から分離するときには図示しない駆動機構により上方に持ち上げられる。
【0025】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は真空容器1の底面部を14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りにこの例では時計方向に回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0026】
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示すように回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板であるウエハを載置するための円形状の凹部24が設けられている。なお図3には便宜上1個の凹部24だけにウエハWを描いてある。ここで図4は、回転テーブル2を同心円に沿って切断しかつ横に展開して示す展開図であり、凹部24は、図4(a)に示すようにその直径がウエハの直径よりも僅かに例えば4mm大きく、またその深さはウエハの厚みと同等の大きさに設定されている。従ってウエハを凹部24に落とし込むと、ウエハの表面と回転テーブル2の表面(ウエハが載置されない領域)とが揃うことになる。ウエハの表面と回転テーブル2の表面との間の高さの差が大きいとその段差部分で圧力変動が生じることから、ウエハの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えることが、膜厚の面内均一性を揃える観点から好ましい。ウエハの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えるとは、同じ高さであるかあるいは両面の差が5mm以内であることをいうが、加工精度などに応じてできるだけ両面の高さの差をゼロに近づけることが好ましい。凹部24の底面には、ウエハの裏面を支えて当該ウエハを昇降させるための例えば後述する3本の昇降ピン(図8参照)が貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0027】
凹部24はウエハを位置決めして回転テーブル2の回転に伴う遠心力により飛び出さないようにするためのものであり、本発明の基板載置領域に相当する部位であるが、基板載置領域(ウエハ載置領域)は、凹部に限らず例えば回転テーブル2の表面にウエハの周縁をガイドするガイド部材をウエハの周方向に沿って複数並べた構成であってもよく、あるいは回転テーブル2側に静電チャックなどのチャック機構を持たせてウエハを吸着する場合には、その吸着によりウエハが載置される領域が基板載置領域となる。
【0028】
図2及び3に示すように真空容器1には、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する位置に第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32と2本の分離ガスノズル41、42とが真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいて中心部から放射状に伸びている。これら反応ガスノズル31、32及び分離ガスノズル41、42は、例えば真空容器1の側周壁に取り付けられており、その基端部であるガス導入ポート31a、32a、41a、42aは当該側壁を貫通している。
【0029】
ガスノズル31、32、41、42は図示の例では、真空容器1の周壁部から真空容器1内に導入されているが、後述する環状の突出部5から導入してもよい。この場合、突出部5の外周面と天板11の外表面とに開口するL字型の導管を設け、真空容器1内でL字型の導管の一方の開口にガスノズル31、(32、41、42)を接続し、真空容器1の外部でL字型の導管の他方の開口にガス導入ポート31a(32a、41a、42a)を接続する構成を採用することができる。
【0030】
反応ガスノズル31、32は、夫々第1の反応ガスであるBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)ガスのガス供給源及び第2の反応ガスであるO3(オゾン)ガスのガス供給源(いずれも図示せず)に接続されており、分離ガスノズル41、42はいずれも分離ガスであるN2ガス(窒素ガス)のガス供給源(図示せず)に接続されている。この例では、第2の反応ガスノズル32、分離ガスノズル41、第1の反応ガスノズル31及び分離ガスノズル42がこの順に時計方向に配列されている。
【0031】
反応ガスノズル31、32には、下方側に反応ガスを吐出するための吐出孔33がノズルの長さ方向に間隔を置いて配列されている。また分離ガスノズル41、42には、下方側に分離ガスを吐出するための吐出孔40が長さ方向に間隔を置いて穿設されている。反応ガスノズル31、32は夫々第1の反応ガス供給手段及び第2の反応ガス供給手段に相当し、その下方領域は夫々BTBASガスをウエハに吸着させるための第1の処理領域P1及びO3ガスをウエハに吸着させるための第2の処理領域P2となる。
【0032】
分離ガスノズル41、42は、前記第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離するための分離領域Dを形成するためのものであり、この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には図2〜図4に示すように、回転テーブル2の回転中心を中心としかつ真空容器1の内周壁の近傍に沿って描かれる円を周方向に分割してなる、平面形状が扇型で下方に突出した凸状部4が設けられている。分離ガスノズル41、42は、この凸状部4における前記円の周方向中央にて当該円の半径方向に伸びるように形成された溝部43内に収められている。即ち分離ガスノズル41、(42)の中心軸から凸状部4である扇型の両縁(回転方向上流側の縁及び下流側の縁)までの距離は同じ長さに設定されている。なお、溝部43は、本実施形態では凸状部4を二等分するように形成されているが、他の実施形態においては、例えば溝部43から見て凸状部4における回転テーブル2の回転方向上流側が前記回転方向下流側よりも広くなるように溝部43を形成してもよい。
【0033】
従って分離ガスノズル41、42における前記周方向両側には、前記凸状部4の下面である例えば平坦な低い天井面44(第1の天井面)が存在し、この天井面44の前記周方向両側には、当該天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)が存在することになる。この凸状部4の役割は、回転テーブル2との間に第1の反応ガス及び第2の反応ガスの侵入を阻止してこれら反応ガスの混合を阻止するための狭隘な空間である分離空間を形成することにある。
【0034】
即ち、分離ガスノズル41を例にとると、回転テーブル2の回転方向上流側からO3ガスが侵入することを阻止し、また回転方向下流側からBTBASガスが侵入することを阻止する。「ガスの侵入を阻止する」とは、分離ガスノズル41から吐出した分離ガスであるN2ガスが第1の天井面44と回転テーブル2の表面との間に拡散して、この例では当該第1の天井面44に隣接する第2の天井面45の下方側空間に吹き出し、これにより当該隣接空間からのガスが侵入できなくなることを意味する。そして「ガスが侵入できなくなる」とは、隣接空間から凸状部4の下方側空間に全く入り込むことができない場合のみを意味するのではなく、多少侵入はするが、両側から夫々侵入したO3ガス及びBTBASガスが凸状部4内で混じり合わない状態が確保される場合も意味し、このような作用が得られる限り、分離領域Dの役割である第1の処理領域P1の雰囲気と第2の処理領域P2の雰囲気との分離作用が発揮できる。従って狭隘な空間における狭隘の程度は、狭隘な空間(凸状部4の下方空間)と当該空間に隣接した領域(この例では第2の天井面45の下方空間)との圧力差が「ガスが侵入できなくなる」作用を確保できる程度の大きさになるように設定され、その具体的な寸法は凸状部4の面積などにより異なるといえる。またウエハに吸着したガスについては当然に分離領域D内を通過することができ、ガスの侵入阻止は、気相中のガスを意味している。
【0035】
一方天板11の下面には、回転テーブル2におけるコア部21よりも外周側の部位と対向するようにかつ当該コア部21の外周に沿って突出部5が設けられている。この突出部5は凸状部4における前記回転中心側の部位と連続して形成されており、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成されている。図2及び図3は、前記天井面45よりも低くかつ分離ガスノズル41、42よりも高い位置にて天板11を水平に切断して示している。なお突出部5と凸状部4とは、必ずしも一体であることに限られるものではなく、別体であってもよい。
【0036】
凸状部4及び分離ガスノズル41(42)の組み合わせ構造の作り方については、凸状部4をなす1枚の扇型プレートの中央に溝部43を形成してこの溝部43内に分離ガスノズル41(42)を配置する構造に限らず、2枚の扇型プレートを用い、分離ガスノズル41(42)の両側位置にて天板本体の下面にボルト締めなどにより固定する構成などであってもよい。この例では分離ガスノズル41(42)は、真下に向いた例えば口径が0.5mmの吐出孔がノズルの長さ方向に沿って例えば10mmの間隔をおいて配列されている。また反応ガスノズル31、32についても、真下に向いた例えば口径が0.5mmの吐出孔がノズルの長さ方向に沿って例えば10mmの間隔をおいて配列されている。
【0037】
この例では直径300mmのウエハWを被処理基板としており、この場合凸状部4は、回転中心から140mm離れた突出部5との境界部位においては、周方向の長さ(回転テーブル2と同心円の円弧の長さ)が例えば146mmであり、ウエハの載置領域(凹部24)の最も外側部位においては、周方向の長さが例えば502mmである。なお図4(a)に示すように、当該外側部位において分離ガスノズル41(42)の両脇から夫々左右に位置する凸状部4の周方向の長さLでみれば、長さLは246mmである。
【0038】
また図4(a)に示すように凸状部4の下面即ち天井面44における回転テーブル2の表面からの高さhは、例えば0.5mmから10mmであってもよく、約4mmであると好適である。この場合、回転テーブル2の回転数は例えば1rpm〜500rpmに設定されている。分離領域Dの分離機能を確保するためには、回転テーブル2の回転数の使用範囲などに応じて、凸状部4の大きさや凸状部4の下面(第1の天井面44)と回転テーブル2の表面との高さhを例えば実験などに基づいて設定することになる。なお分離ガスとしては、N2ガスに限られずArガスなどの不活性ガスを用いることができるが、不活性ガスに限らず水素ガスなどであってもよく、成膜処理に影響を与えないガスであれば、ガスの種類に関しては特に限定されるものではない。
【0039】
真空容器1の天板11の下面、つまり回転テーブル2のウエハ載置領域(凹部24)から見た天井面は既述のように第1の天井面44とこの天井面44よりも高い第2の天井面45とが周方向に存在するが、図1では、高い天井面45が設けられている領域についての縦断面を示しており、図5では、低い天井面44が設けられている領域についての縦断面を示している。扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は図2及び図5に示されているように回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲して屈曲部46を形成している。扇型の凸状部4は天板11側に設けられていて、容器本体12から取り外せるようになっていることから、前記屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。この屈曲部46も凸状部4と同様に両側から反応ガスが侵入することを防止して、両反応ガスの混合を防止する目的で設けられており、屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、回転テーブル2の表面に対する天井面44の高さhと同様の寸法に設定されている。この例においては、回転テーブル2の表面側領域からは、屈曲部46の内周面が真空容器1の内周壁を構成していると見ることができる。
【0040】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては図5に示すように前記屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されているが、分離領域D以外の部位においては、図1に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底面部14に亘って縦断面形状が矩形に切り欠かれて外方側に窪んだ構造になっている。この窪んだ部分を排気領域6と呼ぶことにすると、この排気領域6の底部には図1及び図3に示すように例えば2つの排気口61、62が設けられている。これら排気口61、62は各々排気管63を介して真空排気手段である例えば共通の真空ポンプ64に接続されている。なお図1中、65は圧力調整手段であり、排気口61、62ごとに設けてもよいし、共通化されていてもよい。排気口61、62は、分離領域Dの分離作用が確実に働くように、平面で見たときに前記分離領域Dの前記回転方向両側に設けられ、各反応ガス(BTBASガス及びO3ガス)の排気を専用に行うようにしている。この例では一方の排気口61は第1の反応ガスノズル31とこの反応ガスノズル31に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に設けられ、また他方の排気口61は、第2の反応ガスノズル32とこの反応ガスノズル32に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に設けられている。
【0041】
排気口の設置数は2個に限られるものではなく、例えば分離ガスノズル42を含む分離領域Dと当該分離領域Dに対して前記回転方向下流側に隣接する第2の反応ガスノズル32との間に更に排気口を設置して3個としてもよいし、4個以上であってもよい。この例では排気口61、62は回転テーブル2よりも低い位置に設けることで真空容器1の内周壁と回転テーブル2の周縁との間の隙間から排気するようにしているが、真空容器1の底面部に設けることに限られず、真空容器1の側壁に設けてもよい。また排気口61、62は、真空容器1の側壁に設ける場合には、回転テーブル2よりも高い位置に設けるようにしてもよい。このように排気口61、62を設けることにより回転テーブル2上のガスは、回転テーブル2の外側に向けて流れるため、回転テーブル2に対向する天井面から排気する場合に比べてパーティクルの巻上げが抑えられるという観点において有利である。
【0042】
前記回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、図1、図2及び図6に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハをプロセスレシピで決められた温度に加熱するようになっている。前記回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の上方空間から排気領域6に至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画するためにヒータユニット7を全周に亘って囲むようにカバー部材71が設けられている。このカバー部材71は上縁が外側に屈曲されてフランジ形状に形成され、その屈曲面と回転テーブル2の下面との間の隙間を小さくして、カバー部材71内に外方からガスが侵入することを抑えている。
【0043】
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底面部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近、コア部21に接近してその間は狭い空間になっており、また当該底面部14を貫通する回転軸22の貫通穴についてもその内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間は前記ケース体20内に連通している。そして前記ケース体20にはパージガスであるN2ガスを前記狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。また真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側位置にて周方向の複数部位に、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が設けられている。
【0044】
このようにパージガス供給管72、73を設けることにより図7にパージガスの流れを矢印で示すように、ケース体20内からヒータユニット7の配置空間に至るまでの空間がN2ガスでパージされ、このパージガスが回転テーブル2とカバー部材71との間の隙間から排気領域6を介して排気口61、62に排気される。これによって既述の第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との一方から回転テーブル2の下方を介して他方にBTBASガスあるいはO3ガスが回り込むことが防止されるため、このパージガスは分離ガスの役割も果たしている。
【0045】
また真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるN2ガスを供給するように構成されている。この空間52に供給された分離ガスは、前記突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50を介して回転テーブル2のウエハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出されることになる。この突出部5で囲まれる空間には分離ガスが満たされているので、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間で回転テーブル2の中心部を介して反応ガス(BTBASガスあるいはO3ガス)が混合することを防止している。即ち、この成膜装置は、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との雰囲気を分離するために回転テーブル2の回転中心部と真空容器11とにより区画され、分離ガスがパージされると共に当該回転テーブル2の表面に分離ガスを吐出する吐出口が前記回転方向に沿って形成された中心部領域Cを備えているということができる。なおここでいう吐出口は前記突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50に相当する。
【0046】
更に真空容器1の側壁には図2、図3及び図8に示すように外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板であるウエハの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15は図示しないゲートバルブにより開閉されるようになっている。また回転テーブル2におけるウエハ載置領域である凹部24はこの搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において当該受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウエハを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン16の昇降機構(図示せず)が設けられる。
【0047】
またこの実施の形態の成膜装置は、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられ、この制御部100のメモリ内には装置を運転するためのプログラムが格納されている。このプログラムは後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体から制御部100内にインストールされる。
【0048】
次に上述実施の形態の作用について説明する。先ず図示しないゲートバルブを開き、外部から搬送アーム10により搬送口15を介してウエハを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに図8に示すように凹部24の底面の貫通孔を介して真空容器の底部側から昇降ピン16が昇降することにより行われる。このようなウエハWの受け渡しを回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に夫々ウエハWを載置する。続いて真空ポンプ64により真空容器1内を予め設定した圧力に真空引きすると共に、回転テーブル2を時計回りに回転させながらヒータユニット7によりウエハWを加熱する。詳しくは、回転テーブル2はヒータユニット7により予め例えば300℃に加熱されており、ウエハWがこの回転テーブル2に載置されることで加熱される。ウエハWの温度が図示しない温度センサにより設定温度になったことを確認した後、第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32から夫々BTBASガス及びO3ガスを吐出させると共に、分離ガスノズル41、42から分離ガスであるN2ガスを吐出する。
【0049】
ウエハWは回転テーブル2の回転により、第1の反応ガスノズル31が設けられる第1の処理領域P1と第2の反応ガスノズル32が設けられる第2の処理領域P2とを交互に通過するため、BTBASガスが吸着し、次いでO3ガスが吸着してBTBAS分子が酸化されて酸化シリコンの分子層が1層あるいは複数層形成され、こうして酸化シリコンの分子層が順次積層されて所定の膜厚のシリコン酸化膜が成膜される。
【0050】
このとき分離ガス供給管51からも分離ガスであるN2ガスを供給し、これにより中心部領域Cから即ち突出部5と回転テーブル2の中心部との間から回転テーブル2の表面に沿ってN2ガスが吐出する。この例では反応ガスノズル31、32が配置されている第2の天井面45の下方側の空間に沿った容器本体12の内周壁においては、既述のように内周壁が切りかかれて広くなっており、この広い空間の下方に排気口61、62が位置しているので、第1の天井面44の下方側の狭隘な空間及び前記中心部領域Cの各圧力よりも第2の天井面45の下方側の空間の圧力の方が低くなる。ガスを各部位から吐出したときのガスの流れの状態を模式的に図9に示す。第2の反応ガスノズル32から下方側に吐出され、回転テーブル2の表面(ウエハWの表面及びウエハWの非載置領域の表面の両方)に当たってその表面に沿って回転方向上流側に向かうO3ガスは、その上流側から流れてきたN2ガスに押し戻されながら回転テーブル2の周縁と真空容器1の内周壁との間の排気領域6に流れ込み、排気口62により排気される。
【0051】
また第2の反応ガスノズル32から下方側に吐出され、回転テーブル2の表面に当たってその表面に沿って回転方向下流側に向かうO3ガスは、中心部領域Cから吐出されるN2ガスの流れと排気口62の吸引作用により当該排気口62に向かおうとするが、一部は下流側に隣接する分離領域Dに向かい、扇型の凸状部4の下方側に流入しようとする。ところがこの凸状部4の天井面44の高さ及び周方向の長さは、各ガスの流量などを含む運転時のプロセスパラメータにおいて当該天井面44の下方側へのガスの侵入を防止できる寸法に設定されているため、図4(b)にも示してあるようにO3ガスは扇型の凸状部4の下方側にほとんど流入できないかあるいは少し流入したとしても分離ガスノズル41付近までには到達できるものではなく、分離ガスノズル41から吐出したN2ガスにより回転方向上流側、つまり処理領域P2側に押し戻されてしまい、中心部領域Cから吐出されているN2ガスと共に、回転テーブル2の周縁と真空容器1の内周壁との隙間から排気領域6を介して排気口62に排気される。
【0052】
また第1の反応ガスノズル31から下方側に吐出され、回転テーブル2の表面に沿って回転方向上流側及び下流側に夫々向かうBTBASガスは、その回転方向上流側及び下流側に隣接する扇型の凸状部4の下方側に全く侵入できないかあるいは侵入したとしても第2の処理領域P1側に押し戻され、中心部領域Cから吐出されているN2ガスと共に、回転テーブル2の周縁と真空容器1の内周壁との隙間から排気領域6を介して排気口61に排気される。即ち、各分離領域Dにおいては、雰囲気中を流れる反応ガスであるBTBASガスあるいはO3ガスの侵入を阻止するが、ウエハに吸着されているガス分子はそのまま分離領域つまり扇型の凸状部4による低い天井面44の下方を通過し、成膜に寄与することになる。
【0053】
更にまた第1の処理領域P1のBTBASガス(第2の処理領域P2のO3ガス)は、中心部領域C内に侵入しようとするが、図7及び図9に示すように当該中心部領域Cからは分離ガスが回転テーブル2の周縁に向けて吐出されているので、この分離ガスにより侵入が阻止され、あるいは多少侵入したとしても押し戻され、この中心部領域Cを通って第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)に流入することが阻止される。
【0054】
そして分離領域Dにおいては、扇型の凸状部4の周縁部が下方に屈曲され、屈曲部46と回転テーブル2の外端面との間の隙間が既述のように狭くなっていてガスの通過を実質阻止しているので、第1の処理領域P1のBTBASガス(第2の処理領域P2のO3ガス)は、回転テーブル2の外側を介して第2の処理領域P2(第1の処理領域P1)に流入することも阻止される。従って2つの分離領域Dによって第1の処理領域P1の雰囲気と第2の処理領域P2の雰囲気とが完全に分離され、BTBASガスは排気口61に、またO3ガスは排気口62に夫々排気される。この結果、両反応ガスこの例ではBTBASガス及びO3ガスが雰囲気中においてもウエハ上においても混じり合うことがない。なおこの例では、回転テーブル2の下方側をN2ガスによりパージしているため、排気領域6に流入したガスが回転テーブル2の下方側を潜り抜けて、例えばガBTBASスがO3ガスの供給領域に流れ込むといったおそれは全くない。こうして成膜処理が終了すると、各ウエハは搬入動作と逆の動作により順次搬送アーム10により搬出される。
【0055】
ここで処理パラメータの一例について記載しておくと、回転テーブル2の回転数は、300mm径のウエハWを被処理基板とする場合例えば1rpm〜500rpm、プロセス圧力は例えば1067Pa(8Torr)、ウエハWの加熱温度は例えば350℃、BTBASガス及びO3ガスの流量は例えば夫々100sccm及び10000sccm、分離ガスノズル41、42からのN2ガスの流量は例えば20000sccm、真空容器1の中心部の分離ガス供給管51からのN2ガスの流量は例えば5000sccmである。また1枚のウエハに対する反応ガス供給のサイクル数、即ちウエハが処理領域P1、P2の各々を通過する回数は目標膜厚に応じて変わるが、多数回例えば600回である。
【0056】
上述実施の形態によれば、回転テーブル2の回転方向に複数のウエハWを配置し、回転テーブル2を回転させて第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを順番に通過させていわゆるALD(あるいはMLD)を行うようにしているため、高いスループットで成膜処理を行うことができる。そして前記回転方向において第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間に低い天井面を備えた分離領域Dを設けると共に回転テーブル2の回転中心部と真空容器1とにより区画した中心部領域Cから回転テーブル2の周縁に向けて分離ガスを吐出し、前記分離領域Dの両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域Cから吐出する分離ガスと共に前記反応ガスが回転テーブル2の周縁と真空容器の内周壁との隙間を介して排気されるため、両反応ガスの混合を防止することができ、この結果良好な成膜処理を行うことができるし、回転テーブル2上において反応生成物が生じることが全くないか極力抑えられ、パーティクルの発生が抑えられる。なお本発明は、回転テーブル2に1個のウエハWを載置する場合にも適用できる。
【0057】
また回転テーブルに排気口を設ける構成や、ウエハの載置台を固定しかつ反応ガスノズルを回転させる場合には、排気口と反応ガスノズルとの相対位置関係が刻々と変わるので、排気流が変化して不安定な状態となり、このため第1の反応ガス及び第2の反応ガスが混合される懸念や成膜の均一性が低くなる懸念がある。これに対して上述の実施の形態では、反応ガスノズル31(32)と排気口61(62)との位置関係が固定されていることから、排気流が一定であり、上記のような懸念がなく、安定した成膜処理ができる。
【0058】
本発明で適用される処理ガスとしては、上述の例の他に、DCS[ジクロロシラン]、HCD[ヘキサクロロジシラン]、TMA[トリメチルアルミニウム]、3DMAS[トリスジメチルアミノシラン]、TEMAZ[テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム]、TEMHF[テトラキスエチルメチルアミノハフニウム]、Sr(THD)2 [ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト]、Ti(MPD)(THD)[チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト]、モノアミノシランなどを挙げることができる。
【0059】
また前記分離領域Dの天井面44において、前記分離ガスノズル41、42に対して回転テーブル2の回転方向の上流側部位は、外縁に位置する部位ほど前記回転方向の幅が大きいことが好ましい。その理由は回転テーブル2の回転によって上流側から分離領域Dに向かうガスの流れが外縁に寄るほど速いためである。この観点からすれば、上述のように凸状部4を扇型に構成することは得策である。
【0060】
そして前記分離ガス供給ノズル41(42)の両側に各々位置する狭隘な空間を形成する前記第1の天井面44は、図10(a)、(b)に前記分離ガス供給ノズル41を代表して示すように例えば300mm径のウエハWを被処理基板とする場合、ウエハWの中心WOが通過する部位において回転テーブル2の回転方向に沿った幅寸法Lが50mm以上であることが好ましい。凸状部4の両側から当該凸状部4の下方(狭隘な空間)に反応ガスが侵入することを有効に阻止するためには、前記幅寸法Lが短い場合にはそれに応じて第1の天井面44と回転テーブル2との間の距離も小さくする必要がある。更に第1の天井面44と回転テーブル2との間の距離をある寸法に設定したとすると、回転テーブル2の回転中心から離れる程、回転テーブル2の速度が速くなってくるので、反応ガスの侵入阻止効果を得るために要求される幅寸法Lは回転中心から離れる程長くなってくる。
【0061】
このような観点から考察すると、ウエハWの中心WOが通過する部位における前記幅寸法Lが50mmよりも小さいと、第1の天井面44と回転テーブル2との距離をかなり小さくする必要があるため、回転テーブル2を回転したときに回転テーブル2あるいはウエハWと天井面44との衝突を防止するために、回転テーブル2の振れを極力抑える工夫が要求される。更にまた回転テーブル2の回転数が高い程、凸状部4の上流側から当該凸状部4の下方側に反応ガスが侵入しやすくなるので、前記幅寸法Lを50mmよりも小さくすると、回転テーブル2の回転数を低くしなければならず、スループットの点で得策ではない。従って幅寸法Lが50mm以上であることが好ましいが、50mm以下であっても本発明の効果が得られないというものではない。即ち、前記幅寸法LがウエハWの直径の1/10〜1/1であることが好ましく、約1/6以上であることがより好ましい。
【0062】
また本発明では分離ガス供給手段における回転方向両側に低い天井面44が位置することが必要であるが、分離ガスノズル41、42の両側に凸状部44が配置されている上述の構成に限らず、図11に示すように凸状部4の内部に分離ガスの通流室47を回転テーブル2の直径方向に伸びるように形成し、この通流室47の底部に長さ方向に沿って多数のガス吐出孔40が穿設される構成を採用してもよい。
【0063】
分離領域Dの天井面44は平坦面に限られるものではなく、図12(a)に示すよ凹面形状に構成してもよいし、図12(b)に示すように凸面形状にしてもよく、あるいはまた図12(c)に示すように波型状に構成してもよい。
更にまた分離ガスノズル41(42)のガス吐出孔40については、次のような構成としてもよい。
A. 図13(a)に示すように回転テーブル2の直径に対して斜めに向いた横長のスリットからなる多数のガス吐出孔40を、互いに隣接するものの一部同士が前記直径方向に重なるようにして、当該直径方向に間隔をおいて配置した構成。
B. 図13(b)に示すように多数のガス吐出孔40を蛇行ライン状に配列した構成。
C. 図13(c)に示すように回転テーブル2の周縁側に迫る多数の円弧状のスリットからなるガス吐出孔40を前記直径方向に間隔をおいて配列した構成。
【0064】
更にまた凸状部4の平面形状については、次のような構成としてもよい。
A. 図14(a)に示すように凸状部4を角型例えば長方形に形成した構成。
B. 図14(b)に示すように凸状部4を真空容器1の周縁に向かってラッパ状に広がった形状に形成した構成。
C. 図14(c)に示すように凸状部4を、台形の側縁を外側に膨らませた形状であって、長辺側が真空容器1の周縁側に位置している形状に形成した構成。
D. 図14(d)に示すように、凸状部4を回転テーブル2の回転方向上流側(図14では右側が回転方向上流側に相当する)が真空容器1の周縁に向かって広がっている形状に形成した構成。
ウエハを加熱するための加熱手段としては抵抗発熱体を用いたヒータに限られずランプ加熱装置であってもよく、回転テーブル2の下方側に設ける代わりに回転テーブル2の上方側に設けてもよいし、上下両方に設けてもよい。
【0065】
ここで処理領域P1、P2及び分離領域Dの各レイアウトについて上記の実施の形態以外の他の例を挙げておく。図15は第2の反応ガスノズル32を搬送口15よりも回転テーブル2の回転方向上流側に位置させた例であり、このようなレイアウトであっても同様の効果が得られる。また分離領域Dは、扇型の凸状部4を周方向に2つに分割し、その間に分離ガスノズル41(42)を設ける構成であってもよいことを既に述べたが、図16は、このような構成の一例を示す平面図である。この場合、扇型の凸状部4と分離ガスノズル41(42)との距離や扇型の凸状部4の大きさなどは、分離ガスの吐出流量や反応ガスの吐出流量などを考慮して分離領域Dが有効な分離作用が発揮できるように設定される。
【0066】
上述の実施の形態では、前記第1の処理領域P1及び第2の処理領域P2は、その天井面が前記分離領域Dの天井面よりも高い領域に相当するものであったが、本発明は、第1の処理領域P1及び第2の処理領域P2の少なくとも一方は、分離領域Dと同様に反応ガス供給手段の前記回転方向両側にて前記回転テーブル2に対向して設けられ、当該回転テーブル2との間にガスの侵入を阻止するための空間を形成するようにかつ前記分離領域Dの前記回転方向両側の天井面(第2の天井面45)よりも低い天井面例えば分離領域Dにおける第1の天井面44と同じ高さの天井面を備えている構成としてもよい。図17はこのような構成の一例を示すものであり、第2の処理領域(この例ではO3ガスの吸着領域)P2において扇形の凸状部30の下方側に第2の反応ガスノズル32を配置している。なお第2の処理領域P2は、分離ガスノズル41(42)の代わりに第2の反応ガスノズル32を設けた以外は、分離領域Dと全く同様である。
【0067】
本発明は、分離ガスノズル41(42)の両側に狭隘な空間を形成するために低い天井面(第1の天井面)44を設けることが必要であるが、図18に示すように反応ガスノズル31(32)の両側にも同様の低い天井面を設け、これら天井面を連続させる構成、つまり分離ガスノズル41(42)及び反応ガスノズル31(32)が設けられる箇所以外は、回転テーブル2に対向する領域全面に凸状部4を設ける構成としても同様の効果が得られる。この構成は別の見方をすれば、分離ガスノズル41(42)の両側の第1の天井面44が反応ガスノズル31(32)にまで広がった例である。この場合には、分離ガスノズル41(42)の両側に分離ガスが拡散し、反応ガスノズル31(32)の両側に反応ガスが拡散し、両ガスが凸状部4の下方側(狭隘な空間)にて合流するが、これらのガスは分離ガスノズル31(32)と反応ガスノズル42(41)との間に位置する排気口61(62)から排気されることになる。
【0068】
以上の実施の形態では、回転テーブル2の回転軸22が真空容器1の中心部に位置し、回転テーブル2の中心部と真空容器1の上面部との間の空間に分離ガスをパージしているが、本発明は図19に示すように構成してもよい。図19の成膜装置においては、真空容器1の中央領域の底面部14が下方側に突出していて駆動部の収容空間80を形成していると共に、真空容器1の中央領域の上面に凹部80aが形成され、真空容器1の中心部において収容空間80の底部と真空容器1の前記凹部80aの上面との間に支柱81を介在させて、第1の反応ガスノズル31からのBTBASガスと第2の反応ガスノズル32からのO3ガスとが前記中心部を介して混ざり合うことを防止している。
【0069】
回転テーブル2を回転させる機構については、支柱81を囲むように回転スリーブ82を設けてこの回転スリーブ81に沿ってリング状の回転テーブル2を設けている。そして前記収容空間80にモータ83により駆動される駆動ギヤ部84を設け、この駆動ギヤ部84により、回転スリーブ82の下部の外周に形成されたギヤ部85を介して当該回転スリーブ82を回転させるようにしている。86、87及び88は軸受け部である。また前記収容空間80の底部にパージガス供給管74を接続すると共に、前記凹部80aの側面と回転スリーブ82の上端部との間の空間にパージガスを供給するためのパージガス供給管75を真空容器1の上部に接続している。図19では、前記凹部80aの側面と回転スリーブ82の上端部との間の空間にパージガスを供給するための開口部は左右2箇所に記載してあるが、回転スリーブ82の近傍領域を介してBTBASガスとO3ガスとが混じり合わないようにするために、開口部(パージガス供給口)の配列数を設計することが好ましい。
【0070】
図19の実施の形態では、回転テーブル2側から見ると、前記凹部80aの側面と回転スリーブ82の上端部との間の空間は分離ガス吐出孔に相当し、そしてこの分離ガス吐出孔、回転スリーブ82及び支柱81により、真空容器1の中心部に位置する中心部領域が構成される。
【0071】
本発明は、2種類の反応ガスを用いることに限られず、3種類以上の反応ガスを順番に基板上に供給する場合にも適用することができる。その場合には、例えば第1の反応ガスノズル、分離ガスノズル、第2の反応ガスノズル、分離ガスノズル、第3の反応ガスノズル及び分離ガスノズルの順番で真空容器1の周方向に各ガスノズルを配置し、各分離ガスノズルを含む分離領域を既述の実施の形態のように構成すればよい。
【0072】
以上述べた成膜装置を用いた基板処理装置について図20に示しておく。図19中、101は例えば25枚のウエハを収納するフープと呼ばれる密閉型の搬送容器、102は搬送アーム103が配置された大気搬送室、104、105は大気雰囲気と真空雰囲気との間で雰囲気が切り替え可能なロードロック室(予備真空室)、106は、2基の搬送アーム107が配置された真空搬送室、108、109は本発明の成膜装置である。搬送容器101は図示しない載置台を備えた搬入搬出ポートに外部から搬送され、大気搬送室102に接続された後、、図示しない開閉機構により蓋が開けられて搬送アーム103により当該搬送容器101内からウエハが取り出される。次いでロードロック室104(105)内に搬入され当該室内を大気雰囲気から真空雰囲気に切り替え、その後搬送アーム107によりウエハが取り出されて成膜装置108、109の一方に搬入され、既述の成膜処理がされる。このように例えば5枚処理用の本発明の成膜装置を複数個例えば2個備えることにより、いわゆるALD(MLD)を高いスループットで実施することができる。
【0073】
上記の各例では、第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32から夫々第1の反応ガスであるBTBASガス及び第2の反応ガスであるO3ガスを供給してシリコン酸化膜からなる薄膜を成膜する成膜装置や成膜方法について説明したが、本発明は互いに種類の異なる複数の薄膜を連続成膜する場合にも適用でき、例えば2種類の薄膜を交互に積層して多層膜を形成する場合にも適用できる。このような多層膜を成膜するための具体的な成膜装置の構成や成膜方法について、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを交互に積層して絶縁膜である積層膜を形成する場合を例に挙げて以下に説明する。
【0074】
図21に示すように、第1の反応ガスノズル31には、このノズル31のガス導入ポート31aを介して第1のガス供給路110の一端側が接続されており、この第1のガス供給路110の他端側は2本に分岐して、夫々バルブV1、V3及び流量調整部111、113を介して、夫々第1の反応ガスであるBTBASガスの貯留された第1のガス供給源121及び第3のガスであるDCS(ジクロルシラン、Si2H2Cl2)ガスの貯留された第3のガス供給源123に接続されている。また、第2の反応ガスノズル32には、ガス導入ポート32aを介して第2のガス供給路120の一端側が接続されており、この第2のガス供給路120の他端側は同様に2本に分岐して、夫々バルブV2、V4及び流量調整部112、114を介して、夫々第2の反応ガスであるO3ガスの貯留された第2のガス供給源122及び第4の反応ガスであるNH3(アンモニア)ガスの貯留された第4のガス供給源124に接続されている。そのため、この例では第1の反応ガス供給手段である第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガス供給手段である第2の反応ガスノズル32は、夫々第3の反応ガス供給手段及び第4の反応ガス供給手段を兼用していることになる。尚、既述の図1に示した成膜装置と同じ構成の部位については説明を省略する。
【0075】
次に、この成膜装置において多層膜を成膜する成膜方法について説明する。先ず、図22(a)に示すように、バルブV1、V2を開放して、既述の例と同様にウェハWの表面に第1の薄膜であるシリコン酸化膜を成膜する。この時、既述のように真空容器1内ではBTBASガスとO3ガスとが互いに混じり合わないように分離領域D、中心部領域C及び回転テーブル2の下方領域にN2ガスを供給しているので、第1の反応ガスノズル31にはBTBASガスだけが接触し、第2の反応ガスノズル32にはO3ガスだけが接触する。従って、各ノズル31、32にはシリコン酸化膜が付着(成膜)しない。尚、この図22では、バルブV1〜V4について「開」状態を白色、「閉」状態を黒色として描画している。
【0076】
次いで、真空容器1内及び各ノズル31、32の内部領域からBTBASガス及びO3ガスが排気されるように、各バルブV1、V2を閉じると共に、例えば圧力調整手段(バルブ)65により真空容器1内を引き切りの状態にする。
続いて、回転テーブル2上のウエハWが所定の温度例えば300℃となるようにヒータユニット7の設定温度を調整する。そして、真空容器1内の雰囲気が所定の真空度となるように圧力調整手段(バルブ)65の開度を調整すると共に、図22(b)に示すように、バルブV3、V4を開放して各ノズル31、32から夫々DCSガス及びNH3ガスを所定の流量で供給する。また、各分離領域D、中心部領域C及び回転テーブル2の下方領域にN2ガスを所定の流量で供給する。
【0077】
そして、回転テーブル2の回転を所定の回数例えば200回続けることにより、ウエハWの表面にDCSガスが吸着し、次いでこのDCSガスがNH3ガスにより窒化されるプロセスが複数回繰り返されるので、先の成膜処理により成膜されたシリコン酸化膜の上層には、所定の膜厚の第2の薄膜である窒化シリコン膜が積層される。この時、同様にDCSガスとNH3ガスとが互いに混じり合わないように分離領域D、中心部領域C及び回転テーブル2の下方領域にN2ガスを供給しているので、ノズル31、32には窒化シリコンが付着しない。
続いて、同様に真空容器1内及びノズル31、32の内部領域からDCSガス及びNH3ガスが排気されるように、バルブV3、V4を閉じると共に、圧力調整手段65により真空容器1を引き切りの状態にする。その後、同様に反応ガスをBTBASガス及びO3ガスに切り替えて、このシリコン窒化膜の上層にシリコン酸化膜を成膜する。
こうして図23に示すように、ウエハWに、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜が下側からこの順番で積層されたいわゆるONO膜と呼ばれる絶縁膜である積層膜200が形成される。この積層膜200は、例えばウエハW上に成膜されたゲート絶縁膜の上層に積層されるが、この図23では省略して示している。
【0078】
上述の実施の形態によれば、既に詳述したように、各処理領域P1、P2が分離されているので、BTBASガスとO3ガスとの混合、及びDCSガスとNH3ガスとの混合を抑えることができ、そのため各ノズル31、32への反応生成物(シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜)の生成(付着)を抑えることができ、つまりノズル31、32には反応生成物が実質成膜されない。また、従来の枚葉成膜装置や縦型熱処理装置でALDにより複数種の膜を成膜する場合には、互いに異なる装置を用いる必要があるが、共通の処理容器内に各反応ガスが供給されるので、ノズルに反応生成物が生成してパーティクルの原因となってしまう。一方、上述の実施の形態では、ノズル31、32に成膜が起こらないのでこうした問題がなく、またノズル31、32は回転テーブル2上のウエハWの表面から上方に離間して配置されており、ウエハWよりも温度が低いため、ノズル31、32には各ガスが吸着しないか、あるいは吸着したとしても成膜に影響がない程度に抑えられるので、各ノズル31、32を種類の異なる反応ガス同士で共通化できる。そのため、設備の費用の低廉化、省スペース化及び高スループット化を図ることができる。
【0079】
上記の例では、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを交互に積層して積層膜200を形成する例について説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、例えば第1の薄膜である酸化ストロンチウム膜(SrO膜)と第2の薄膜である酸化チタン膜(TiO膜)とを交互に積層して積層膜200(STO膜)を形成する場合にも適用できる。このような積層膜200を形成する場合には、例えば図24に示す成膜装置が用いられる。
【0080】
図24に示すように、第1のガス供給源121には、例えば第1の反応ガスとして、チタンソースガス例えばTi(OiPr)2(THD)2(チタニウムビスイソプロポキサイドビステトラメチルヘプタンジオナト)や、Ti(OiPr)(チタニウムテトライソプロポキサイド)等のチタンを含む化合物が気体状で供給できるように貯留されている。また、第3のガス供給源123には、例えば第3の反応ガスとして、ストロンチウムソースガス例えばSr(THD)2(ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト)や、Sr(Me5Cp)2(ビスペンタメチルシクロペンタジエニエルストロンチウム)等のストロンチウムを含む化合物が気体状で供給できるように貯留されている。
この例においては、ウエハWに吸着した上記の各反応ガスと反応する反応ガスとしてはどちらもO3ガスが用いられるので、第2の反応ガスノズル32の上流側には、第2の反応ガスであるO3ガスが貯留された第2のガス供給源122が接続されている。
【0081】
そして、この成膜装置においては、ストロンチウムソースガスとチタンソースガスとを既述のように交互に切り替えると共に、ウエハW上に吸着したこれらの反応ガスに対してO3ガスを供給することにより、酸化ストロンチウム膜と酸化チタン膜とが交互に積層されて例えば酸化ストロンチウム膜と酸化チタン膜との積層膜200が形成される。この例においても、上記の積層膜200を積層した時と同様の効果が得られる。
【0082】
上記の各例において、互いに種類の異なる膜の積層数としては、3層に限られず、2層あるいは4層以上であっても良い。更に、既述のように、例えばBTBASガス、O3ガス、DCSガス及びNH3ガスを供給するノズルを回転テーブル2の周方向にこの順番で個別に設けて、各々のノズルから供給される反応ガス同士が互いに混じり合わないように各々のノズル間に分離領域Dを設けて積層膜200を成膜するようにしても良い。また、処理領域P1にBTBASガス及びDCSガスを夫々供給する2本のノズルを隣接して設けると共に、処理領域P2にO3ガス及びNH3ガスを夫々供給する2本のノズルを隣接して設けて、所定の膜厚の薄膜を成膜する度にウェハWに供給する反応ガスを切り替えるようにしても良い。
尚、第1のガス供給路110及び第2のガス供給路120から供給される各反応ガスは、実際には各々の供給路110、120の上流側が例えば複数本に分岐して各々の反応ガスが貯留されたガス供給源に接続されて、これらの複数のガス供給源から供給されるように構成されているが、上記の図21及び図24では必要のないガス供給源については描画を省略している。
【0083】
既述の各例では、酸化シリコン膜を成膜するための反応ガスとして例えばBTBASガスなどを用いたが、以下の実施の形態では、BTBASガスなどよりも好適な反応ガスについて説明する。
始めに、BTBASガスを用いた上記のALD(MLD)プロセスについて再度述べておく。先ず、図25(a)に示すように、例えば第1の処理領域P1においてウェハW上にBTBASガスが吸着し、次いで同図(b)に示すように、第2の処理領域P2においてO3ガスによりウェハW上のBTBASガスが酸化され、同図(c)に示すように酸素とBTBASガス中のシリコンとを含む反応生成物がウェハW上に生成すると共に、BTBASガスから不純物例えば有機物が副生成ガスとして脱離していく。そして、この反応生成物がウェハW上に面内に亘って形成されることによって既述のシリコン酸化膜が成膜され、こうしてBTBASガスの吸着と酸化とが繰り返されることによりシリコン酸化膜が積層されていくことになる。
【0084】
ところで、BTBASは蒸気圧が低く、また図26(a)に示すように、シリコン原子を対称として窒素(N)原子とt−ブチル基(−C(CH3)3)とが両側に結合した大きな分子構造であることから、デバイスに使用する箇所やユーザ側の要求などによっては、成膜速度、埋め込み特性及びシリコン酸化膜の膜質の点で、特に有利なガスであるとは言えないかもしれない。そこで、上述の点においてBTBASよりも有利なシリコン酸化膜の成膜用の反応ガスとしてジイソプロピルアミノシランガスを挙げることができる。
【0085】
ジイソプロピルアミノシランは、BTBASよりも蒸気圧が高く、また図26(b)から分かるようにBTBASよりも分子が小さい。BTBASは蒸気圧が低いことから、高い処理圧力で、ガス流量を高くできないので、ガスの流量及び処理圧力をあまり高くできないので、速い成膜速度が得られにくい。これに対してジイソプロピルアミノシランは、例えば50℃における蒸気圧がBTBASの約10倍程度であるため、ガス流量を多くしたり処理圧力を高くしたりできるので、成膜速度が速い。
【0086】
更に図26(a)と図26(b)とを比較して分かるように、BTBASはSi−Hの両側にt−ブチル基が存在するので、ウェハW上にガスが吸着する時にこのt−ブチル基が立体障害になりやすい。これに対してジイソプロピルアミノシランの場合には、こうした立体障害の度合いが小さい。そのためO3ガスのアタックに対して、ジイソプロピルアミノシランの方がBTBASに比べてシリコンと窒素との間の結合が切れやすい。このような点からも、ジイソプロピルアミノシランを用いる方が速い成膜速度が得られる。また、反応ガス中から有機物や窒化物が速やかに脱離し、膜中の不純物が少なくなるので、良好な電気的特性が得られる。
【0087】
また、ジイソプロピルアミノシランは、BTBASよりも分子が小さいためウェハW上に互いに近接して配列され、このためシリコン酸化膜が緻密になる。従って、その後のアニール処理において収縮(シュリンク)が小さくなるので、アニール処理によるパターン倒れを抑えることができる。そして、ジイソプロピルアミノシランは分子が小さいことから、またガス流量を増やしたり処理圧力を高めたりすることができることから、ウェハWの凹部内への埋め込み特性が良好である。
【0088】
更に、ジイソプロピルアミノシランガスではウェハWへの反応ガスの吸着が速やかに起こることから、反応ガスの使用量が抑えられる。更にまた、反応ガスの流量や処理圧力を調整することによりウェハWの面内均一性を調整できることから、反応ガスの流量や処理圧力の調整幅が広がることで面内均一性の調整幅も広くなる。
【0089】
この反応ガスを用いて成膜処理を行う場合には、例えば回転テーブル2の回転数、処理圧力、ウェハWの加熱温度、反応ガスの流量、O3ガスの流量及び分離ガスノズル41、42からのN2ガスの流量は夫々例えば240rpm、2.13kPa(16Torr)、350〜500℃、275sccm、10000sccm、10000sccmに設定される。
【実施例】
【0090】
次に、上記のジイソプロピルアミノシランガスを反応ガスとして用いた場合に得られる薄膜の特性について、以下に説明する。
(実施例1:成膜速度確認実験)
先ず、処理ガスとしてBTBASガスとジイソプロピルアミノシランガスとを用いた場合の成膜速度を比較すると共に、ジイソプロピルアミノシランガスを用いた場合において、成膜速度に対するガス流量、処理圧力及び成膜温度の各依存性を確認する実験を行った。実験条件は各実施例1−1〜1−9毎に、以下の表1に示す条件で行った。
(表1)
実施例1−1はBTBASガスを用いた場合に成膜速度が最も高くなる条件で行った実験である。尚、いずれの実施例1−1〜1−9においても回転テーブル2の回転数は240rpmとした。
【0091】
この結果、図27に示すように、BTBASガスとジイソプロピルアミノシランガスとを比べると、同じ処理条件ではジイソプロピルアミノシランガスの方が成膜速度が速くなっていた。また、ジイソプロピルアミノシランガスを用いると、ガス流量及び処理圧力のいずれについてもBTBASガスのほぼ上限値よりも増やすことができ、その増加分に応じて成膜速度が速くなることが分かった。実施例1−6の条件では、BTBASガスよりも80%程度速い成膜速度となっていた。また、ジイソプロピルアミノシランガスでは、成膜温度を350℃〜500℃の間で変化させても成膜速度がほとんど変わらなかったことから、ジイソプロピルアミノシランガスはこの温度範囲では安定で熱分解が抑えられて、ALD法による良好な成膜が行われることが分かった。従って、例えばO3ガスにより酸化される前におけるジイソプロピルアミノシランガスの熱分解が抑えられることが分かった。
【0092】
(実施例2:成膜速度確認実験)
次に、上記の実施例1よりも更に処理圧力を高めて実験を行った。実験条件を以下の表2に示す。
(表2)
実施例1−1と同様に、実施例2−1としてBTBASガスの結果を併記する。尚、反応ガスの流量や処理圧力を増やすにあたって、O3ガスの流量や真空容器1の中央部に対して分離ガス供給管51及びパージガス供給管72から夫々供給する窒素ガスの流量についても増やしてある。また、いずれの実験においても成膜温度は350℃、回転テーブル2の回転数は240rpmとした。
【0093】
この実験の結果、図28に示すように、反応ガスとしてジイソプロピルアミノシランガスを用いた場合には、4.27kPa(32Torr)もの高圧の条件で成膜処理を行うことができ、その時の成膜速度はBTBASガスを用いた場合の2倍近くまで速くなることが分かった。
【0094】
(実施例3:埋め込み特性確認実験)
次に、ウェハWの表面にアスペクト比(=30)の極めて大きな凹部(開口部)を含むパターン(開口深さ:10μm、開口幅:0.3μm)を形成し、このウェハWに対して薄膜の埋め込み特性を確認する実験を行った。この実験では、図29に示すように、ウェハW上に成膜された薄膜の膜厚について、ウェハWの表面における凹部以外の部位の膜厚をtT、凹部の側壁面における膜厚をtS、凹部即ち凹底面における膜厚をtBとした。そして、通常であれば凹部内へは薄膜を埋め込みにくい(膜厚が薄くなる)ことから、凹部以外の膜厚tTに対する凹部側壁面の膜厚tS及び凹部底面の膜厚tBの割合(側壁膜厚比RS=tS÷tT×100、底面膜厚比RB=tB÷tT×100)を計算して、凹部への埋め込み特性の評価の指標として用いた。この時の実験条件を以下の表3に示す。尚、既述の図29については、凹部や薄膜の各寸法について模式的に示している。
(表3)
また、実施例3−1〜3−3の各々について、回転テーブル2の回転数を30、60、120、240rpmとして夫々実験を行った。また、いずれの条件においてもO3ガスの濃度及び流量は夫々300g/Nm3及び10slm、成膜温度は350℃とした。
【0095】
実施例3−1、3−2、3−3の結果について、得られたSEM(Scanning Electron Microscope)画像を読み取って模式的に示した図を夫々図30、図31、図32に示す。これらの図30、図31、図32中括弧で示した数字は、各々の回転数毎に算出された上記の膜厚比RS、RBであり、凹部以外の部位については100%として示している。また、凹部底面付近における側壁面の膜厚比RSについても併記してある。
この結果、実施例3−1(BTBASガス)では回転テーブル2の回転数が速くなる程、凹部の側壁面及び凹部底面における膜厚比RS、RBが小さくなって埋め込み特性が悪化しており、240rpmでは38%程度まで減少していた。一方、実施例3−2、3−3においても同様の傾向が見られたが、240rpmでは夫々50%及び55%程度に留まっていた。そのため、BTBASガスよりもジイソプロピルアミノシランガスを用いた方が良好な埋め込み特性が得られることが分かった。また、実施例3−2、3−3の結果から、処理圧力が高くなる程埋め込み特性が向上することが分かった。尚、実施例3−1の回転数が30rpmの結果では、凹部の底面側において両側面側から成長した薄膜同士が繋がっていたため、見かけ上底面の膜厚tBが厚くなっていた。この時得られた膜厚比Rをまとめたものを図33に示す。図33では、得られた膜厚比Rとして、側壁膜厚比RS及び底面膜厚比RBのうち、小さい方の値をプロットしている。
【0096】
この時、いずれの実験結果においても回転テーブル2の回転数が速くなる程成膜速度が向上していることが分かった。この成膜速度の結果を表4に示す。
(表4:成膜速度、単位:nm/min)
【0097】
(実施例4:ウェットエッチング特性確認実験)
続いて、成膜後の薄膜のウェットエッチング特性を評価した実験について説明する。実施例4−1〜4−9として、既述の実施例1と同じ条件にて成膜したシリコン酸化膜について、1重量%の希沸酸水溶液に浸析してウェットエッチングレートを求めた。尚、参考例4−1、4−2として、夫々950℃の処理温度にて得られた熱酸化膜及び780℃にてジクロロシランガスとHigh Temp. Oxide(N2O)とを用いたCVD法により成膜したシリコン酸化膜についての結果を示す。この実験結果を図34に示す。尚、この図34では、参考例4−1の熱酸化膜について得られた値を1として各々の結果を規格化した値を示している。
【0098】
その結果、ジイソプロピルアミノシランガスを用いた場合には、ガス流量及び処理圧力を変化させても、ウェットエッチングレートはほぼ同じであった。一方成膜温度を高くするに従って、ウェットエッチングレートが低くなっていた。この時、ジイソプロピルアミノシランガスを用いることでウェットエッチングレートがBTBASガスを用いた結果よりも僅かに大きくなっているが、これはBTBASガスを用いて成膜したシリコン酸化膜には不純物として窒素が含まれているため、理想的な組成のシリコン酸化膜よりもウェットエッチング耐性が増しているためだと考えられる。つまり、ジイソプロピルアミノシランガスを用いた場合には、BTBASガスを用いる場合よりも膜中の窒素濃度が減少すると言える。
【0099】
(実施例5:アニール処理による収縮量確認実験)
次に、成膜後のシリコン酸化膜がどの程度緻密化しているかを評価する実験を行った。既述のように、反応ガス中に含まれる有機物が大きいと、シリコン酸化膜が疎になり、成膜後のアニール処理によりシリコン酸化膜が大きく収縮(シュリンク)する。このような収縮が大きいと、パターン倒れの原因となるため好ましくない。そこで、実施例5−1〜5−9について既述の実施例1と同様にシリコン酸化膜を成膜し、各々のウェハWに対して窒素雰囲気中で850℃のアニール処理を行ってアニール処理前後における膜厚の収縮率を求めた。この結果を図35に示す。尚、参考例5−1として参考例4−2と同様にCVD法により成膜したシリコン酸化膜について得られた結果を示す。
この結果から、ジイソプロピルアミノシランガスを用いることにより、BTBASガスを用いるよりも収縮率が減少し、従って緻密なシリコン酸化膜が形成されていることが分かる。
【0100】
(実施例6:不純物確認実験)
この実験では、成膜後のシリコン酸化膜中に含まれる不純物(水素、窒素、炭素)について、SIMS(二次イオン質量分析法)を用いて膜厚方向において50nmの深さに亘って測定した。尚、成膜時の処理圧力及び回転テーブル2の回転数は、夫々1.07kPa(8Torr)、240rpmとした。
この実験の結果、図36に示すように、ジイソプロピルアミノシランガスを用いることによって、水素、窒素及び炭素のいずれについてもBTBASガスを用いた場合よりも減少しており、窒素及び炭素についてはBTBASガスよりも大きく減少していた。また、ジイソプロピルアミノシランガスの場合には、成膜温度を高くするにつれて水素及び窒素については減少量が増えることが分かった。
【0101】
図示や詳細の説明については省略するが、別途行った実験により、ジイソプロピルアミノシランガスを用いることによって、サイクルレート(回転テーブル2の回転毎に成膜されるシリコン酸化膜の膜厚)及びウェハW内のシリコン酸化膜の面内均一性のいずれについても、BTBASガスを用いるよりも向上することが分かった。サイクルレートについては、バッチ式の反応炉を用いた実験の結果、ジイソプロピルアミノシランガスではBTBASガスの1.34倍となっていた。
【符号の説明】
【0102】
1 真空容器
W ウエハ
11 天板
12 容器本体
15 搬送口
2 回転テーブル
21 コア部
24 凹部(基板載置領域)
31 第1の反応ガスノズル
32 第2の反応ガスノズル
P1 第1の処理領域
P2 第2の処理領域
D 分離領域
C 中心部領域
4 凸状部
41、42 分離ガスノズル
44 第1の天井面
45 第2の天井面
5 突出部
51 分離ガス供給管
6 排気領域
61、62 排気口
7 ヒータユニット
72〜75 パージガス供給管
81 支柱
82 回転スリーブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給するサイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置において、
前記真空容器内に設けられた回転テーブルと、
この回転テーブルに基板を載置するために設けられた基板載置領域と、
前記真空容器の周壁から前記回転テーブルの回転中心に向かう方向と、前記回転中心から前記周壁に向かう方向と、のうちの一方の方向に沿って延びると共に、第1の反応ガスを前記基板に供給するための吐出孔を含み、前記基板載置領域の通過領域に対向して設けられた第1の反応ガスノズルを含む第1の反応ガス供給手段と、
前記真空容器の周壁から前記回転テーブルの回転中心に向かう方向と、前記回転中心から前記周壁に向かう方向と、のうちの一方の方向に沿って延びると共に、前記回転テーブルの回転方向に沿って前記第1の反応ガスノズルから離れ、第2の反応ガスを前記基板に供給する吐出孔を含み、前記基板載置領域の通過領域に対向して設けられた第2の反応ガスノズルを含む第2の反応ガス供給手段と、
前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との雰囲気を分離するために前記回転方向においてこれら処理領域の間に位置し、第1の分離ガスを供給する分離ガス供給部を含む分離領域と、
前記第1の処理領域と前記第2の処理領域との雰囲気を分離するために真空容器の中心部に位置し、前記基板に沿って第2の分離ガスを吐出する吐出孔が形成された中心部領域と、
前記真空容器内の雰囲気を排気するために前記真空容器に設けられた排気口と、を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記分離ガス供給部は、前記周壁から前記回転テーブルの回転中心に向かう方向に延び、
前記排気口は、前記第1の反応ガス及び前記第2の反応ガスが前記分離領域へ進入するのを阻止するために、前記第1の処理領域の前記周壁側に設けられた一方の排気口と、前記第2の処理領域の前記周壁側に設けられた他方の排気口と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記中心部領域の前記吐出孔から吐出される前記第2の分離ガスが、前記分離ガス供給部から供給される前記第1の分離ガスと共に、前記第1の処理領域を通して前記一方の排気口から排気され、前記第2の処理領域を通して前記他方の排気口から排気されることを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記第1の反応ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段の各々から前記回転テーブルの回転方向に沿って離間して設けられ、前記回転テーブルに対して第3の反応ガスを供給する第3の反応ガス供給手段を更に備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記第1、前記第2、及び前記第3の反応ガス供給手段の各々から前記回転テーブルの回転方向に沿って離間して設けられ、前記回転テーブルに対して第4の反応ガスを供給する第4の反応ガス供給手段を更に備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記第1の反応ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段から夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを基板の表面に供給して第1の薄膜を成膜するステップと、前記第3の反応ガス供給手段及び前記第4の反応ガス供給手段から夫々前記第3の反応ガス及び第4の反応ガスを前記基板の表面に供給して第2の薄膜を成膜するステップと、を交互に実行するように制御信号を出力する制御部を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記第1の反応ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段は、夫々前記第3の反応ガス供給手段及び前記第4の反応ガス供給手段を兼用していることを特徴とする請求項5または6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記中心部領域は、回転テーブルの回転中心部と前記真空容器の内側上面とにより区画され、かつ、前記中心部領域が第2の分離ガスでパージされることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項9】
内部に基板搬送手段が配置された真空搬送室と、この真空搬送室に気密に接続された請求項1ないし8のいずれか一項に記載の成膜装置と、前記真空搬送室に気密に接続され、真空排気され得る予備予備室と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜方法において、
前記真空容器内の回転テーブルに基板を載置し、当該回転テーブルを回転する工程と、
前記真空容器の周壁から前記回転テーブルの回転中心に向かう方向と、前記回転中心から前記周壁に向かう方向と、のうちの一方の方向に沿って延びると共に、第1の反応ガスを前記基板に供給するための吐出孔を含み、前記基板載置領域の通過領域に対向して設けられた第1の反応ガスノズルを含む第1の反応ガス供給手段から前記回転テーブルへ第1の反応ガスを供給する工程と、
前記真空容器の周壁から前記回転テーブルの回転中心に向かう方向と、前記回転中心から前記周壁に向かう方向と、のうちの一方の方向に沿って延びると共に、前記回転テーブルの回転方向に沿って前記第1の反応ガスノズルから離れ、第2の反応ガスを前記基板に供給する吐出孔を含み、前記基板載置領域の通過領域に対向して設けられた第2の反応ガスノズルを含む第2の反応ガス供給手段から前記回転テーブルへ第2の反応ガスを供給する工程と、
前記回転方向において、前記第1の反応ガスノズルから前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と、前記第2の反応ガスノズルから前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との間に位置し、前記第1の処理領域と前記第2の処理領域とを分離する分離領域に設けられる分離ガス供給部から前記処理領域側に前記第1の分離ガスを流す工程と、
前記真空容器の中心部に位置する中心部領域に形成された吐出孔から基板に沿って第2の分離ガスを供給する工程と、
前記真空容器内の雰囲気を排気する工程と、を含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項11】
前記第1の反応ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段の各々から前記回転テーブルの回転方向に沿って離間して設けられる第3の反応ガス供給手段から前記回転テーブルに対して第3の反応ガスを供給するステップを更に含むことを特徴とする請求項10に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記第1、前記第2、及び前記第3の反応ガス供給手段の各々から前記回転テーブルの回転方向に沿って離間して設けられる第4の反応ガス供給手段から前記回転テーブルに対して第4の反応ガスを供給するステップを更に含むことを特徴とする請求項11に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記第1の反応ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段から夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを基板の表面に供給して第1の薄膜を成膜するステップと、
前記第3の反応ガス供給手段及び前記第4の反応ガス供給手段から、夫々前記第3の反応ガス及び第4の反応ガスを前記基板の表面に供給して第2の薄膜を成膜するステップと、を交互に実行する工程を含むことを特徴とする請求項12に記載の成膜方法。
【請求項14】
前記第1の反応ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段は、夫々前記第3の反応ガス供給手段及び前記第4の反応ガス供給手段を兼用していることを特徴とする請求項12または13に記載の成膜方法。
【請求項15】
真空容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給するサイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置に用いられるプログラムを格納する記憶媒体であって、前記プログラムは、請求項10ないし14のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するようにステップ群を備えることを特徴とする記憶媒体。
【請求項1】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給するサイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置において、
前記真空容器内に設けられた回転テーブルと、
この回転テーブルに基板を載置するために設けられた基板載置領域と、
前記真空容器の周壁から前記回転テーブルの回転中心に向かう方向と、前記回転中心から前記周壁に向かう方向と、のうちの一方の方向に沿って延びると共に、第1の反応ガスを前記基板に供給するための吐出孔を含み、前記基板載置領域の通過領域に対向して設けられた第1の反応ガスノズルを含む第1の反応ガス供給手段と、
前記真空容器の周壁から前記回転テーブルの回転中心に向かう方向と、前記回転中心から前記周壁に向かう方向と、のうちの一方の方向に沿って延びると共に、前記回転テーブルの回転方向に沿って前記第1の反応ガスノズルから離れ、第2の反応ガスを前記基板に供給する吐出孔を含み、前記基板載置領域の通過領域に対向して設けられた第2の反応ガスノズルを含む第2の反応ガス供給手段と、
前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との雰囲気を分離するために前記回転方向においてこれら処理領域の間に位置し、第1の分離ガスを供給する分離ガス供給部を含む分離領域と、
前記第1の処理領域と前記第2の処理領域との雰囲気を分離するために真空容器の中心部に位置し、前記基板に沿って第2の分離ガスを吐出する吐出孔が形成された中心部領域と、
前記真空容器内の雰囲気を排気するために前記真空容器に設けられた排気口と、を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記分離ガス供給部は、前記周壁から前記回転テーブルの回転中心に向かう方向に延び、
前記排気口は、前記第1の反応ガス及び前記第2の反応ガスが前記分離領域へ進入するのを阻止するために、前記第1の処理領域の前記周壁側に設けられた一方の排気口と、前記第2の処理領域の前記周壁側に設けられた他方の排気口と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記中心部領域の前記吐出孔から吐出される前記第2の分離ガスが、前記分離ガス供給部から供給される前記第1の分離ガスと共に、前記第1の処理領域を通して前記一方の排気口から排気され、前記第2の処理領域を通して前記他方の排気口から排気されることを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記第1の反応ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段の各々から前記回転テーブルの回転方向に沿って離間して設けられ、前記回転テーブルに対して第3の反応ガスを供給する第3の反応ガス供給手段を更に備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記第1、前記第2、及び前記第3の反応ガス供給手段の各々から前記回転テーブルの回転方向に沿って離間して設けられ、前記回転テーブルに対して第4の反応ガスを供給する第4の反応ガス供給手段を更に備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記第1の反応ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段から夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを基板の表面に供給して第1の薄膜を成膜するステップと、前記第3の反応ガス供給手段及び前記第4の反応ガス供給手段から夫々前記第3の反応ガス及び第4の反応ガスを前記基板の表面に供給して第2の薄膜を成膜するステップと、を交互に実行するように制御信号を出力する制御部を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記第1の反応ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段は、夫々前記第3の反応ガス供給手段及び前記第4の反応ガス供給手段を兼用していることを特徴とする請求項5または6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記中心部領域は、回転テーブルの回転中心部と前記真空容器の内側上面とにより区画され、かつ、前記中心部領域が第2の分離ガスでパージされることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項9】
内部に基板搬送手段が配置された真空搬送室と、この真空搬送室に気密に接続された請求項1ないし8のいずれか一項に記載の成膜装置と、前記真空搬送室に気密に接続され、真空排気され得る予備予備室と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜方法において、
前記真空容器内の回転テーブルに基板を載置し、当該回転テーブルを回転する工程と、
前記真空容器の周壁から前記回転テーブルの回転中心に向かう方向と、前記回転中心から前記周壁に向かう方向と、のうちの一方の方向に沿って延びると共に、第1の反応ガスを前記基板に供給するための吐出孔を含み、前記基板載置領域の通過領域に対向して設けられた第1の反応ガスノズルを含む第1の反応ガス供給手段から前記回転テーブルへ第1の反応ガスを供給する工程と、
前記真空容器の周壁から前記回転テーブルの回転中心に向かう方向と、前記回転中心から前記周壁に向かう方向と、のうちの一方の方向に沿って延びると共に、前記回転テーブルの回転方向に沿って前記第1の反応ガスノズルから離れ、第2の反応ガスを前記基板に供給する吐出孔を含み、前記基板載置領域の通過領域に対向して設けられた第2の反応ガスノズルを含む第2の反応ガス供給手段から前記回転テーブルへ第2の反応ガスを供給する工程と、
前記回転方向において、前記第1の反応ガスノズルから前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と、前記第2の反応ガスノズルから前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との間に位置し、前記第1の処理領域と前記第2の処理領域とを分離する分離領域に設けられる分離ガス供給部から前記処理領域側に前記第1の分離ガスを流す工程と、
前記真空容器の中心部に位置する中心部領域に形成された吐出孔から基板に沿って第2の分離ガスを供給する工程と、
前記真空容器内の雰囲気を排気する工程と、を含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項11】
前記第1の反応ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段の各々から前記回転テーブルの回転方向に沿って離間して設けられる第3の反応ガス供給手段から前記回転テーブルに対して第3の反応ガスを供給するステップを更に含むことを特徴とする請求項10に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記第1、前記第2、及び前記第3の反応ガス供給手段の各々から前記回転テーブルの回転方向に沿って離間して設けられる第4の反応ガス供給手段から前記回転テーブルに対して第4の反応ガスを供給するステップを更に含むことを特徴とする請求項11に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記第1の反応ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段から夫々第1の反応ガス及び第2の反応ガスを基板の表面に供給して第1の薄膜を成膜するステップと、
前記第3の反応ガス供給手段及び前記第4の反応ガス供給手段から、夫々前記第3の反応ガス及び第4の反応ガスを前記基板の表面に供給して第2の薄膜を成膜するステップと、を交互に実行する工程を含むことを特徴とする請求項12に記載の成膜方法。
【請求項14】
前記第1の反応ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段は、夫々前記第3の反応ガス供給手段及び前記第4の反応ガス供給手段を兼用していることを特徴とする請求項12または13に記載の成膜方法。
【請求項15】
真空容器内にて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給するサイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置に用いられるプログラムを格納する記憶媒体であって、前記プログラムは、請求項10ないし14のいずれか一項に記載の成膜方法を実施するようにステップ群を備えることを特徴とする記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【公開番号】特開2011−103495(P2011−103495A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29190(P2011−29190)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【分割の表示】特願2009−139575(P2009−139575)の分割
【原出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【分割の表示】特願2009−139575(P2009−139575)の分割
【原出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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