成膜装置、成膜方法及び記憶媒体
【課題】互いに反応する処理ガスを順番に供給して基板の表面に反応生成物を積層すると共に基板に対してプラズマ処理を行うにあたり、基板に対するプラズマダメージを抑えること。
【解決手段】2つのプラズマ発生部81、82を回転テーブル2の回転方向に互いに離間させて設けると共に、これらプラズマ発生部81、82とウエハWとの間にファラデーシールド95を各々配置する。そして、各々のプラズマ発生部81、82におけるアンテナ83と直交する方向に伸びるスリット97を各々のファラデーシールド95に設けて、各々のアンテナ83において発生する電磁界のうち電界については遮断し、一方磁界についてはウエハW側に通過させる。
【解決手段】2つのプラズマ発生部81、82を回転テーブル2の回転方向に互いに離間させて設けると共に、これらプラズマ発生部81、82とウエハWとの間にファラデーシールド95を各々配置する。そして、各々のプラズマ発生部81、82におけるアンテナ83と直交する方向に伸びるスリット97を各々のファラデーシールド95に設けて、各々のアンテナ83において発生する電磁界のうち電界については遮断し、一方磁界についてはウエハW側に通過させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに反応する処理ガスを順番に供給して基板の表面に反応生成物を積層すると共に基板に対してプラズマ処理を行う成膜装置、成膜方法及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基板(以下「ウエハ」と言う)に対して例えばシリコン酸化膜(SiO2)などの薄膜の成膜を行う手法の一つとして、互いに反応する複数種類の処理ガス(反応ガス)をウエハの表面に順番に供給して反応生成物を積層するALD(Atomic Layer Deposition)法が挙げられる。このALD法を用いて成膜処理を行う成膜装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、真空容器内に設けられた回転テーブル上に複数枚のウエハを周方向に並べると共に、例えば回転テーブルに対向するように配置された複数のガス供給部に対して回転テーブルを相対的に回転させることにより、これらウエハに対して各処理ガスを順番に供給する装置が知られている。
【0003】
ところで、ALD法では、通常のCVD(Chemical Vapor Deposition)法と比べて、ウエハの加熱温度(成膜温度)が例えば300℃程度と低い。そのため、前記処理ガスのうちの一つが例えばNH3(アンモニア)ガスなどの場合には、反応生成物が生成する程度までこのNH3ガスを活性化できない場合がある。また、例えば処理ガス中に含まれている有機物などが薄膜中に不純物として取り込まれてしまう場合がある。そこで、処理ガスを活性化させるために、あるいは薄膜中から不純物を低減させるために、薄膜の成膜と共にプラズマ処理を行う技術が知られている(特許文献2)。
【0004】
この時、ウエハの内部に配線構造が形成されている場合には、プラズマによって当該配線構造に対して電気的にダメージを与えてしまうおそれがある。一方、ウエハに対するプラズマダメージを抑えるためにプラズマ源をウエハから離間させると、成膜処理を行う圧力条件ではプラズマ中のイオンやラジカルなどの活性種が失活しやすいので、活性種がウエハに到達しにくくなって良好なプラズマ処理が行われなくなってしまうおそれがある。
【0005】
ところで、例えば上端側の開口径よりも下端側の開口径の方が広くなる逆テーパー形状の凹部に対して薄膜を埋め込もうとすると、当該凹部内に空隙が生じてしまったり、あるいはこの薄膜中に不純物が取り込まれたりしてしまう。
特許文献3〜5には、ALD法により薄膜を成膜する装置について記載されているが、既述の課題については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−239102
【特許文献2】特開2011−40574
【特許文献3】米国特許公報7,153,542号
【特許文献4】特許3144664号公報
【特許文献5】米国特許公報6,869,641号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、互いに反応する処理ガスを順番に供給して基板の表面に反応生成物を積層すると共に基板に対してプラズマ処理を行うにあたり、基板に対するプラズマダメージを抑えることのできる成膜装置、成膜方法及び記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の成膜装置は、
真空容器内にて第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給するサイクルを複数回行って基板に成膜処理を行う成膜装置において、
基板を載置する基板載置領域がその一面側に形成され、前記真空容器内にて前記基板載置領域を公転させるための回転テーブルと、
この回転テーブルの周方向に互いに分離領域を介して離間した領域に夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスを供給する第1の処理ガス供給部及び第2の処理ガス供給部と、
前記真空容器内に主プラズマ発生用ガス及び補助プラズマ発生用ガスを夫々供給するための主プラズマ発生ガス供給部及び補助プラズマ発生ガス供給部と、
前記回転テーブルの周方向に互いに離間するように設けられ、主プラズマ発生用ガス及び補助プラズマ発生用ガスを夫々プラズマ化するための主プラズマ発生部及び補助プラズマ発生部と、を備え、
前記主プラズマ発生部は、
前記真空容器内で主プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化するように、前記回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナと、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止すると共に磁界を基板側に通過させるために、前記アンテナと各々直交する方向に伸びるスリットが当該アンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドと、を有することを特徴とする。
【0009】
前記成膜装置は、以下のように構成しても良い。
前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部は、処理種別の互いに異なるプラズマ処理を行うためのものである構成。
前記補助プラズマ発生部は、
前記真空容器内で補助プラズマ用発生ガスを誘導結合によりプラズマ化するように、前記回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナと、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止すると共に磁界を基板側に通過させるために、前記アンテナと各々直交する方向に伸びるスリットが当該アンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドと、を有する構成。
【0010】
前記主プラズマ発生部は、第1の処理ガス及び第2の処理ガスのうち基板上に吸着した一方の処理ガスと反応するように他方の処理ガスをプラズマ化するためのものであり、
前記補助プラズマ発生部は、基板上に吸着した前記一方の処理ガスの成分と、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの反応により基板上に生成した反応生成物とのいずれか一方の改質を行うためのものである構成。
前記主プラズマ発生部は、基板上に生成した反応生成物をエッチングするプラズマ処理を行うためのものであり、
前記補助プラズマ発生部は、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの反応により基板上に生成した反応生成物の改質を行うためのものである構成。この場合において基板の表面には、上端側の開口寸法よりも下端側の開口寸法の方が広くなる逆テーパー状の凹部が形成されていても良い。
前記アンテナ及び前記ファラデーシールドは、プラズマ処理を行う領域から誘電体により気密に区画されている構成。
本発明の成膜方法は、
真空容器内にて第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給するサイクルを複数回行って基板に成膜処理を行う成膜方法において、
真空容器内に設けられた回転テーブルの一面側の基板載置領域に基板を載置すると共に、この基板載置領域を公転させる工程と、
次いで、前記回転テーブルの周方向に互いに分離領域を介して離間した領域に夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスを供給する工程と、
前記真空容器内に主プラズマ発生用ガス及び補助プラズマ発生用ガスを各々供給する工程と、
主プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化するために、前記回転テーブルの一面側に対向して設けられた主プラズマ発生部のアンテナに対して高周波電力を供給する工程と、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナと各々直交する方向に伸びるスリットが当該アンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドにより、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止すると共に磁界を基板側に通過させる工程と、
前記主プラズマ発生部に対して回転テーブルの周方向に離間した位置に設けられた補助プラズマ発生部において、補助プラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
前記補助プラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程は、
補助プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化するために、前記回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナに対して高周波電力を供給する工程と、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナと各々直交する方向に伸びるスリットが当該アンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドにより、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止すると共に磁界を基板側に通過させる工程と、を含んでいても良い。
前記主プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化する工程は、第1の処理ガス及び第2の処理ガスのうち基板上に吸着した一方の処理ガスと反応するように他方の処理ガスをプラズマ化する工程であり、
前記補助プラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程は、基板上に吸着した前記一方の処理ガスの成分と、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの反応により基板上に生成した反応生成物とのいずれか一方の改質を行う工程であっても良い。
前記主プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化する工程は、基板上に生成した反応生成物をエッチングする工程を含み、
前記補助プラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程は、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの反応により基板上に生成した反応生成物の改質を行う工程であっても良い。
【0012】
本発明の記憶媒体は、
真空容器内にて複数種類の処理ガスを順番に基板に供給するサイクルを複数回繰り返して薄膜を形成する成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、前記成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、真空容器内において回転テーブルを回転させて基板に対して第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給すると共に、回転テーブルの周方向に互いに離間するように設けられた主プラズマ発生部及び補助プラズマ発生部により基板に対して各々プラズマ処理を行っている。そして、主プラズマ発生部について、主プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化するためのアンテナを設けると共に、アンテナと基板との間に、アンテナと各々直交する方向に伸びるスリットの形成されたファラデーシールドを配置している。そのため、アンテナにおいて発生する電磁界における電界成分については前記真空容器の内部への到達を阻害し、一方磁界については基板側に通過させることができるので、基板へのプラズマによる電気的なダメージを抑えることができる。また、主プラズマ発生部及び補助プラズマ発生部において互いに異なる種別のプラズマ処理を行うことができるようにしていることから、基板に対する処理の自由度の高い成膜装置を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の成膜装置の一例を示す縦断面である。
【図2】前記成膜装置の横断断面図である。
【図3】前記成膜装置の横断平面図である。
【図4】前記成膜装置の内部の一部を示す分解斜視図である。
【図5】前記成膜装置の内部の一部を示す縦断面図である。
【図6】前記成膜装置の内部の一部を示す斜視図である。
【図7】前記成膜装置の内部の一部を示す縦断面図である。
【図8】前記成膜装置の内部の一部を示す平面図である。
【図9】前記成膜装置のファラデーシールドの一部を示す斜視図である。
【図10】前記成膜装置のサイドリングを示す分解斜視図である。
【図11】前記成膜装置のラビリンス構造部の一部を示す縦断面図である。
【図12】前記成膜装置におけるガスの流れを示す模式図である。
【図13】前記成膜装置におけるプラズマの発生の様子を示す模式図である。
【図14】前記成膜装置において基板に薄膜が成膜される様子を示す模式図である。
【図15】前記成膜装置の他の例を示す横断平面図である。
【図16】前記他の例において基板に薄膜が成膜される様子を示す模式図である。
【図17】前記成膜装置の更に他の例の一部を示す斜視図である。
【図18】前記更に他の例の一部を示す平面図である。
【図19】前記成膜装置の別の例の一部を示す平面図である。
【図20】前記成膜装置の別の例の一部を示す平面図である。
【図21】前記成膜装置の別の例の一部を示す縦断面図である。
【図22】前記成膜装置の別の例の一部を示す縦断面図である。
【図23】前記成膜装置の他の例の一部を示す斜視図である。
【図24】前記成膜装置の更に別の例の一部を示す斜視図である。
【図25】前記更に別の例の一部を示す斜視図である。
【図26】前記更に別の例の一部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態の成膜装置の一例について、図1〜図11を参照して説明する。この成膜装置は、図1及び図2に示すように、平面形状が概ね円形である真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。そして、この成膜装置では、後で詳述するように、ALD法によりウエハWの表面に反応生成物を積層して薄膜を成膜すると共に、この薄膜の成膜途中においてウエハWに対してプラズマ処理を行うように構成されている。この時、プラズマ処理を行うにあたって、プラズマによって電気的なダメージがウエハWに加わらないように、あるいは前記ダメージができるだけ小さくなるように、前記成膜装置が構成されている。続いて、成膜装置の各部について詳述する。
【0016】
真空容器1は、天板11及び容器本体12を備えており、天板11が容器本体12から着脱できるように構成されている。天板11の上面側における中央部には、真空容器1内の中心部領域Cにおいて互いに異なる処理ガス同士が混ざり合うことを抑制するために、N2(窒素)ガスを分離ガスとして供給するための分離ガス供給管51が接続されている。図1中13は、容器本体12の上面の周縁部にリング状に設けられたシール部材例えばOリングである。
【0017】
回転テーブル2は、中心部にて概略円筒形状のコア部21に固定されており、このコア部21の下面に接続されると共に鉛直方向に伸びる回転軸22によって、鉛直軸周りこの例では時計周りに回転自在に構成されている。図1中23は回転軸22を鉛直軸周りに回転させる駆動部であり、20は回転軸22及び駆動部23を収納するケース体である。このケース体20は、上面側のフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられている。また、このケース体20には、回転テーブル2の下方領域にN2ガスをパージガスとして供給するためのパージガス供給管72が接続されている。真空容器1の底面部14におけるコア部21の外周側は、回転テーブル2に下方側から近接するようにリング状に形成されて突出部12aをなしている。
【0018】
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示すように、回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板であるウエハWを載置するための円形状の凹部24が基板載置領域として設けられている。凹部24は、ウエハWを当該凹部24に落とし込む(収納する)と、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが揃うように、直径寸法及び深さ寸法が設定されている。凹部24の底面には、ウエハWを下方側から突き上げて昇降させるための例えば後述する3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0019】
図2及び図3に示すように、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する位置には、各々例えば石英からなる5本のノズル31、32、34、41、42が真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいて放射状に配置されている。これら各ノズル31、32、34、41、42は、例えば真空容器1の外周壁から中心部領域Cに向かってウエハWに対向して水平に伸びるように各々取り付けられている。この例では、後述の搬送口15から見て時計周り(回転テーブル2の回転方向)に補助プラズマ発生用ガスノズル34、分離ガスノズル41、第1の処理ガスノズル31、分離ガスノズル42及び第2の処理ガスノズルを兼用する主プラズマ発生用ガスノズル32がこの順番で配列されている。プラズマ発生用ガスノズル32、34の上方側には、図3に示すように、プラズマ発生用ガスノズル32、34から夫々吐出されるガスをプラズマ化するために、プラズマ発生部81、82が夫々設けられている。これらプラズマ発生部81、82については後で詳述する。尚、図2はプラズマ発生用ガスノズル32、34が見えるようにプラズマ発生部81、82及び後述の筐体90を取り外した状態、図3はこれらプラズマ発生部81、82及び筐体90を取り付けた状態を表している。また、図1は、図2におけるA−A線にて切断した縦断面を示している。
【0020】
第1の処理ガスノズル31は第1の処理ガス供給部をなし、主プラズマ発生用ガスノズル32は第2の処理ガス供給部及び主プラズマ発生用ガス供給部をなしている。補助プラズマ発生用ガスノズル34は、補助プラズマ発生用ガス供給部をなしている。また、分離ガスノズル41、42は、各々分離ガス供給部をなしている。尚、図1では、プラズマ発生部81について、模式的に一点鎖線で示している。
【0021】
各ノズル31、32、34、41、42は、流量調整バルブを介して夫々以下の各ガス供給源(図示せず)に夫々接続されている。即ち、第1の処理ガスノズル31は、Si(シリコン)を含む第1の処理ガス例えばDCS(ジクロロシラン)ガスなどの供給源に接続されている。主プラズマ発生用ガスノズル32は、第2の処理ガス及び主プラズマ発生用ガスである例えばNH3(アンモニア)ガスの供給源に接続されている。補助プラズマ発生用ガスノズル34は、例えばAr(アルゴン)ガスH2(水素)ガスとの混合ガスからなる補助プラズマ発生用ガスの供給源に接続されている。分離ガスノズル41、42は、分離ガスであるN2(窒素)ガスの供給源に各々接続されている。尚、NH3ガスと共に、主プラズマ発生用ガスの一部となるArガスを供給しても良い。
【0022】
ガスノズル31、32、41、42の下面側には、回転テーブル2の半径方向に沿って複数箇所にガス吐出孔33が例えば等間隔に形成されている。プラズマ発生用ガスノズル32、34の外周面には、回転テーブル2の回転方向上流側且つ下方側(斜め下)を各々向くように、当該プラズマ発生用ガスノズル32、34の長さ方向に沿ってガス吐出孔33が複数箇所に例えば等間隔で形成されている。このようにプラズマ発生用ガスノズル32、34のガス吐出孔33の向きを設定した理由については、後で説明する。これら各ノズル31、32、34、41、42は、当該ノズル31、32、34、41、42の下端縁と回転テーブル2の上面との離間距離が例えば1〜5mm程度となるように配置されている。
【0023】
処理ガスノズル31の下方領域は、Si含有ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1であり、主プラズマ発生用ガスノズル32の下方領域は、ウエハWに吸着したSi含有ガスとNH3ガスのプラズマとを反応させるための第2の処理領域P2となる。また、補助プラズマ発生用ガスノズル34の下方領域は、処理領域P1、P2を通過することによってウエハW上に形成された反応生成物の改質処理を行う第3の処理領域P3となる。分離ガスノズル41、42は、各々第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離する分離領域Dを形成するためのものである。この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には、図2及び図3に示すように、概略扇形の凸状部4が設けられており、分離ガスノズル41、42は、この凸状部4に形成された溝部43内に収められている。従って、分離ガスノズル41、42における回転テーブル2の周方向両側には、各処理ガス同士の混合を阻止するために、前記凸状部4の下面である低い天井面44(第1の天井面)が配置され、この天井面44の前記周方向両側には、当該天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)が配置されている。凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は、各処理ガス同士の混合を阻止するために、回転テーブル2の外端面に対向すると共に容器本体12に対して僅かに離間するように、L字型に屈曲している。
【0024】
次に、既述の主プラズマ発生部81及び補助プラズマ発生部82について詳述する。始めに、主プラズマ発生部81について説明すると、この主プラズマ発生部81は、既述のように搬送口15から見て右側(回転テーブル2の回転方向上流側)に設けられており、金属線からなるアンテナ83をコイル状に巻回して構成されている。この例では、アンテナ83は、例えば銅(Cu)の表面にニッケルメッキ及び金メッキをこの順番で施した材質により構成されている。また、アンテナ83は、真空容器1の内部領域から気密に区画されるように、当該真空容器1の天板11上に設けられている。具体的には、図4に示すように、既述の主プラズマ発生用ガスノズル32の上方側(詳しくはこのノズル32よりも僅かに回転テーブル2の回転方向上流側の位置から搬送口15よりも僅かにノズル32側に寄った位置まで)における天板11には、平面的に見た時に概略扇形に開口する開口部11aが形成されている。尚、プラズマ発生部81、82について、混同を避けるために夫々「主」及び「補助」の用語を付して説明するが、これらプラズマ発生部81、82は互いにほぼ同じ構成となっており、また各々のプラズマ発生部81、82にて各々行われるプラズマ処理についても互いに独立した処理となっている。
【0025】
前記開口部11aは、回転テーブル2の回転中心から例えば60mm程度外周側に離間した位置から、回転テーブル2の外縁よりも80mm程度外側に離れた位置までに亘って形成されている。また、開口部11aは、真空容器1の中心部領域Cに設けられた後述のラビリンス構造部110に干渉しない(避ける)ように、平面で見た時に回転テーブル2の中心側における端部が当該ラビリンス構造部110の外縁に沿うように円弧状に窪んでいる。そして、この開口部11aは、図4及び図5に示すように、天板11の上端面から下端面に向かって当該開口部11aの開口径が段階的に小さくなるように、例えば3段の段部11bが周方向に亘って形成されている。これら段部11bのうち最下段の段部(口縁部)11bの上面には、図5に示すように、周方向に亘って溝11cが形成されており、この溝11c内にはシール部材例えばO−リング11dが配置されている。尚、溝11c及びO−リング11dについては、図4では図示を省略しており、また天板11を切り欠いている。
【0026】
この開口部11aには、図6にも示すように、上方側の周縁部が周方向に亘ってフランジ状に水平に伸び出してフランジ部90aをなすと共に、中央部が下方側の真空容器1の内部領域に向かって窪むように形成された筐体90が配置されている。この筐体90は、主プラズマ発生部81において発生する磁界をウエハW側に通過させるために、例えば石英などの誘電体により透磁体(磁界を透過させる材質)として構成されており、図9に示すように、前記窪んだ部分の厚み寸法tが例えば20mmとなっている。また、この筐体90は、当該筐体90の下方にウエハWが位置した時に、中心部領域C側における筐体90の内壁面とウエハWの外縁との間の距離が70mmとなり、回転テーブル2の外周側における筐体90の内壁面とウエハWの外縁との間の距離が70mmとなるように構成されている。
【0027】
この筐体90を既述の開口部11a内に落とし込むと、フランジ部90aと段部11bのうち最下段の段部11bとが互いに係止する。そして、既述のO−リング11dによって、当該段部11b(天板11)と筐体90とが気密に接続される。また、開口部11aの外縁に沿うように枠状に形成された押圧部材91によって前記フランジ部90aを下方側に向かって周方向に亘って押圧すると共に、この押圧部材91を図示しないボルトなどにより天板11に固定することにより、真空容器1の内部雰囲気が気密に設定される。このように筐体90を天板11に気密に固定した時の当該筐体90の下面と回転テーブル2上のウエハWの表面との間の離間寸法hは、4〜60mmこの例では30mmとなっている。尚、図6は、筐体90を下方側から見た図を示している。
【0028】
筐体90の下面は、当該筐体90の下方領域へのN2ガスの侵入を阻止するために、図5〜図7に示すように、外縁部が周方向に亘って下方側(回転テーブル2側)に垂直に伸び出して、ガス規制用の突起部92をなしている。そして、この突起部92の内周面、筐体90の下面及び回転テーブル2の上面により囲まれた領域には、回転テーブル2の回転方向上流側に、既述の主プラズマ発生用ガスノズル32が収納されている。
【0029】
主プラズマ発生用ガスノズル32の基端側(真空容器1の側壁側)における突起部92は、当該プラズマ発生用ガスノズル34の外形に沿うように概略円弧状に切り欠かれている。突起部92の下面と回転テーブル2の上面との間の離間寸法dは、0.5〜5mmこの例では2mmとなっている。この突起部92の幅寸法及び高さ寸法は、夫々例えば10mm及び28mmとなっている。尚、図7は、回転テーブル2の回転方向に沿って真空容器1を切断した縦断面図を示している。
【0030】
また、成膜処理中には回転テーブル2が時計周りに回転するので、N2ガスがこの回転テーブル2の回転に連れられて回転テーブル2と突起部92との間の隙間から筐体90の下方側に侵入しようとする。そのため、前記隙間を介して筐体90の下方側へのN2ガスの侵入を阻止するために、前記隙間に対して筐体90の下方側からガスを吐出させている。具体的には、主プラズマ発生用ガスノズル32のガス吐出孔33について、図5及び図7に示すように、この隙間を向くように、即ち回転テーブル2の回転方向上流側且つ下方を向くように配置している。鉛直軸に対する主プラズマ発生用ガスノズル32のガス吐出孔33の向く角度θは、図7に示すように例えば45°程度となっている。
【0031】
ここで、筐体90の下方(第2の処理領域P2)側から天板11と筐体90との間の領域をシールする既述のO−リング11dを見ると、図5に示すように、当該第2の処理領域P2とO−リング11dとの間には突起部92が周方向に亘って形成されている。そのため、O−リング11dは、プラズマに直接曝されないように、第2の処理領域P2から隔離されていると言える。従って、第2の処理領域P2からプラズマが例えばO−リング11d側に拡散しようとしても、突起部92の下方を経由して行くことになるので、O−リング11dに到達する前にプラズマが失活することになる。
【0032】
筐体90の内側には、当該筐体90の内部形状に概略沿うように形成された厚み寸法kが例えば1mm程度の導電性の板状体である金属板からなる、接地されたファラデーシールド95が収納されている。この例では、ファラデーシールド95は、例えば銅(Cu)板または銅板にニッケル(Ni)膜及び金(Au)膜とを下側からメッキした板材により構成されている。即ち、このファラデーシールド95は、筐体90の底面に沿うように水平に形成された水平面95aと、この水平面95aの外周端から周方向に亘って上方側に伸びる垂直面95bと、を備えており、上方側から見た時に筐体90の内縁に沿って概略扇状となるように構成されている。このファラデーシールド95は、例えば金属板の圧延加工により、あるいは金属板における水平面95aの外側に対応する領域を上方側に折り曲げることにより形成されている。
【0033】
また、回転テーブル2の回転中心からファラデーシールド95を見た時の右側及び左側におけるファラデーシールド95の上端縁は、夫々右側及び左側に水平に伸び出して支持部96をなしている。そして、ファラデーシールド95を筐体90の内部に収納すると、ファラデーシールド95の下面と筐体90の上面とが互いに接触すると共に、前記支持部96が筐体90のフランジ部90aにより支持される。この水平面95a上には、ファラデーシールド95の上方に載置される主プラズマ発生部81との絶縁を取るために、厚み寸法が例えば2mm程度の例えば石英からなる絶縁板94が積層されている。前記水平面95aには、多数のスリット97が形成されているが、このスリット97の形状や配置レイアウトについては、主プラズマ発生部81のアンテナ83の形状と併せて詳述する。尚、絶縁板94については、後述の図8及び図9などでは描画を省略している。
【0034】
主プラズマ発生部81は、ファラデーシールド95の内側に収納されるように構成されており、従って図4及び図5に示すように、筐体90、ファラデーシールド95及び絶縁板94を介して真空容器1の内部(回転テーブル2上のウエハW)を臨むように配置されている。この主プラズマ発生部81は、既述のようにアンテナ83を鉛直軸周りに例えば3重に巻回して構成されており、この例では2つのアンテナ83、83が設けられている。これら2つのアンテナ83、83のうち一方を第1のアンテナ83a、他方を第2のアンテナ83bと呼ぶと、第1のアンテナ83aは、図4及び図5に示すように、平面的に見た時に筐体90の内縁に沿うように概略扇状となっている。また、第1のアンテナ83aは、当該第1のアンテナ83aの下方にウエハWが位置した時に、このウエハWにおける中心部領域C側の端部と回転テーブル2の外縁側の端部との間に亘ってプラズマを照射(供給)できるように、中心部領域C側及び外周側の端部が各々筐体90の内壁面に近接するように配置されている。尚、アンテナ83a、83bの内部には冷却水の通流する流路が各々形成されているが、ここでは省略している。
【0035】
第2のアンテナ83bは、回転テーブル2の半径方向外周側においてウエハWにプラズマを供給できるように、回転テーブル2上のウエハWの中心位置から200mm程度外周側に離間した位置と、回転テーブル2の外縁から90mm程度外周側に離間した位置と、の間に配置されている。即ち、回転テーブル2が回転すると、中心部側に比べて外周部側では周速度が速くなる。そのため、外周部側では内周部側よりもウエハWに供給されるプラズマの量が少なくなる場合がある。そこで、回転テーブル2の半径方向においてウエハWに供給されるプラズマの量を揃えるために、いわば第1のアンテナ83aによってウエハWに供給されるプラズマの量を補償するために、第2のアンテナ83bを設けている。
【0036】
第1のアンテナ83a及び第2のアンテナ83bは、各々整合器84を介して周波数が例えば13.56MHz及び出力電力が例えば5000Wの高周波電源85に個別に接続されており、当該第1のアンテナ83a及び第2のアンテナ83bに対して独立して高周波電力が調整されるように構成されている。尚、図1、図3及び図4などおける86は、各々のアンテナ83a、83bと整合器84及び高周波電源85とを電気的に接続するための接続電極である。
【0037】
ここで、既述のファラデーシールド95のスリット97について詳述する。このスリット97は、各々のアンテナ83a、83bにおいて発生する電界及び磁界(電磁界)のうち電界成分が下方のウエハWに向かうことを阻止すると共に、磁界をウエハWに到達させるためのものである。即ち、電界がウエハWに到達すると、当該ウエハWの内部に形成されている電気配線が電気的にダメージを受けてしまう場合がある。一方、ファラデーシールド95は、既述のように接地された金属板により構成されているので、スリット97を形成しないと、電界に加えて磁界も遮断してしまう。また、アンテナ83の下方に大きな開口部を形成すると、磁界だけでなく電界も通過してしまう。そこで、電界を遮断して磁界を通過させるために、以下のように寸法及び配置レイアウトを設定したスリット97を形成している。
【0038】
具体的には、スリット97は、図8に示すように、第1のアンテナ83a及び第2のアンテナ83bの各々の巻回方向に対して直交する方向に伸びるように、周方向に亘ってアンテナ83a、83bの下方位置に各々形成されている。従って、例えば回転テーブル2の半径方向に沿ってアンテナ83a、83bが配置された領域においては、スリット97は回転テーブル2の接線方向あるいは円周方向に沿うように直線状または円弧状に形成されている。また、回転テーブル2の外縁に沿うように円弧状にアンテナ83a、83bが配置された領域においては、スリット97は回転テーブル2の回転中心から外縁に向かう方向に直線状に形成されている。そして、前記2つの領域間においてアンテナ83a、83bが屈曲する部分では、スリット97は当該屈曲する部分におけるアンテナ83a、83bの伸びる方向に対して直交するように、回転テーブル2の周方向及び半径方向に対して各々傾斜する向きに形成されている。従って、スリット97は、アンテナ83a、83bの各々の伸びる方向に沿って多数配列されている。
【0039】
ここで、アンテナ83a、83bには、既述のように周波数が13.56MHzの高周波電源85が接続されており、この周波数に対応する波長は22mである。そのため、スリット97は、この波長の1/10000以下程度の幅寸法となるように、図9に示すように、幅寸法d1が1〜5mmこの例では2mm、スリット97、97間の離間寸法d2が1〜5mmこの例では2mmとなるように形成されている。また、このスリット97は、既述の図8に示すように、アンテナ83a(83b)の伸びる方向から見た時に、長さ寸法が例えば各々60mmとなるように、当該アンテナ83a(83b)の右端よりも30mm程度右側に離間した位置から、アンテナ83a(83b)の左端よりも30mm程度左側に離間した位置までに亘って形成されている。従って、各々のスリット97の長さ方向における一端側及び他端側には、これらスリット97の開口端を塞ぐように、接地された導電体からなる導電路97a、97aが周方向に亘って各々配置されていると言える。
【0040】
ファラデーシールド95においてこれらスリット97の形成領域から外れた領域、即ちアンテナ83a、83bの巻回された領域の中央側には、当該領域を介してプラズマの発光状態を確認するための開口部98が各々形成されている。尚、図3ではスリット97を省略している。また、図4及び図5などではスリット97について簡略化しているが、スリット97は例えば150本程度形成されている。スリット97は、開口部98に近接する領域から当該開口部98から離れた領域に向かうにつれて、幅寸法d1が広がるように形成されているが、ここでは図示を省略している。
【0041】
以上説明した主プラズマ発生部81に対して回転テーブル2の回転方向下流側に離間するように、補助プラズマ発生部82が配置されており、この補助プラズマ発生部82は、主プラズマ発生部81とほぼ同じ構成となっている。即ち、補助プラズマ発生部82は、第1のアンテナ83a及び第2のアンテナ83bにより構成されており、筐体90、ファラデーシールド95及び絶縁板94の上方側に配置されている。補助プラズマ発生部82のアンテナ83a、83bについても、主プラズマ発生部81と同様に、整合器84を介して周波数が例えば13.56MHz及び出力電力が例えば5000Wの高周波電源85に個別に接続されており、当該第1のアンテナ83a及び第2のアンテナ83bに対して独立して高周波電力が供給されるように構成されている。
【0042】
続いて、真空容器1の各部の説明に戻る。回転テーブル2の外周側において当該回転テーブル2よりも僅かに下位置には、図2、図5及び図10に示すように、カバー体であるサイドリング100が配置されている。このサイドリング100は、例えば装置のクリーニング時において、各処理ガスに代えてフッ素系のクリーニングガスを通流させた時に、当該クリーニングガスから真空容器1の内壁を保護するためのものである。即ち、サイドリング100を設けないと、回転テーブル2の外周部と真空容器1の内壁との間には、横方向に気流(排気流)が形成される凹部状の気流通路が周方向に亘ってリング状に形成されていると言える。そのため、このサイドリング100は、気流通路に真空容器1の内壁面ができるだけ露出しないように、当該気流通路に設けられている。この例では、各分離領域D及び筐体90における外縁側の領域は、このサイドリング100の上方側に露出している。
【0043】
サイドリング100の上面には、互いに周方向に離間するように2箇所に排気口61、62が形成されている。言い換えると、前記気流通路の下方側に2つの排気口が形成され、これら排気口に対応する位置におけるサイドリング100に、排気口61、62が形成されている。これら2つの排気口61、62のうち一方及び他方を夫々第1の排気口61及び第2の排気口62と呼ぶと、第1の排気口61は、第1の処理ガスノズル31と、当該第1の処理ガスノズル31よりも回転テーブルの回転方向下流側における分離領域Dとの間において、当該分離領域D側に寄った位置に形成されている。第2の排気口62は、補助プラズマ発生用ガスノズル34と、当該ノズル34よりも回転テーブルの回転方向下流側における分離領域Dとの間において、当該分離領域D側に寄った位置に形成されている。第1の排気口61は、Si含有ガス及び分離ガスを排気するためのものであり、第2の排気口62は、NH3ガス及び分離ガスに加えて、補助プラズマ発生用ガスノズル34から供給されるプラズマ発生用ガスを排気するためのものである。これら第1の排気口61及び第2の排気口62は、図1に示すように、各々バタフライバルブなどの圧力調整部65の介設された排気管63により、真空排気機構である例えば真空ポンプ64に接続されている。
【0044】
ここで、既述のように、中心部領域C側から外縁側に亘って筐体90を形成しているので、例えば主プラズマ発生部81よりも回転テーブル2の回転方向上流側に吐出された分離ガスは、当該筐体90によって第2の排気口62に向かおうとするガス流がいわば規制されてしまう。また、補助プラズマ発生部82についても、中心部領域C側から外縁部側に亘って筐体90を形成しているので、当該筐体90よりも上流側から第2の排気口62に向かおうとするガス流が規制されてしまう。そこで、筐体90の外側における既述のサイドリング100の上面に、分離ガスが流れるための溝状のガス流路101を形成している。具体的には、このガス流路101は、図3に示すように、主プラズマ発生部81の筐体90における回転テーブル2の回転方向上流側の端部よりも例えば60mm程度第1の排気口61側に寄った位置から、既述の第2の排気口62までの間に亘って、深さ寸法が例えば30mmとなるように円弧状に形成されている。従って、このガス流路101は、筐体90の外縁に沿うように、また上方側から見た時に主プラズマ発生部81及び補助プラズマ発生部82の筐体90、90の外縁部に跨がるように形成されている。このサイドリング100は、図示を省略しているが、フッ素系ガスに対する耐腐食性を持たせるために、表面が例えばアルミナなどによりコーティングされているか、あるいは石英カバーなどにより覆われている。
【0045】
天板11の下面における中央部には、図2に示すように、凸状部4における中心部領域C側の部位と連続して周方向に亘って概略リング状に形成されると共に、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成された突出部5が設けられている。この突出部5よりも回転テーブル2の回転中心側におけるコア部21の上方側には、中心部領域CにおいてSi含有ガスとNH3ガスなどとが互いに混ざり合うことを抑制するためのラビリンス構造部110が配置されている。即ち、既述の図1から分かるように、筐体90を中心部領域C側に寄った位置まで形成しているので、回転テーブル2の中央部を支持するコア部21は、回転テーブル2の上方側の部位が筐体90を避けるように前記回転中心側に寄った位置に形成されている。従って、中心部領域C側では、外縁部側よりも例えば処理ガス同士が混ざりやすい状態となっていると言える。そこで、ラビリンス構造部110を形成することにより、ガスの流路を稼いで処理ガス同士が混ざり合うことを防止している。
【0046】
具体的には、このラビリンス構造部110は、図11に当該ラビリンス構造部110を拡大して示すように、回転テーブル2側から天板11側に向かって垂直に伸びる第1の壁部111と、天板11側から回転テーブル2に向かって垂直に伸びる第2の壁部112と、が各々周方向に亘って形成されると共に、これら壁部111、112が回転テーブル2の半径方向において交互に配置された構造を採っている。具体的には、既述の突出部5側から中心部領域C側に向かって、第2の壁部112、第1の壁部111及び第2の壁部112がこの順番で配置されている。この例では、突出部5側の第2の壁部112は、他の壁部111、112よりも当該突出部5側に膨らんだ構造となっている。このような壁部111、112の各寸法について一例を挙げると、壁部111、112間の離間寸法jは例えば1mm、壁部111と天板11との間の離間寸法(壁部112とコア部21との間の隙間寸法)mは例えば1mmとなっている。
【0047】
従って、ラビリンス構造部110では、例えば第1の処理ガスノズル31から吐出されて中心部領域Cに向かおうとするSi含有ガスは、壁部111、112を乗り越えていく必要があるので、中心部領域Cに向かうにつれて流速が遅くなり、拡散しにくくなる。そのため、処理ガスが中心部領域Cに到達する前に、当該中心部領域Cに供給される分離ガスにより処理領域P1側に押し戻されることになる。また、中心部領域Cに向かおうとするNH3ガスなどのプラズマ発生用ガスについても、同様にラビリンス構造部110によって中心部領域Cに到達しにくくなる。そのため、処理ガス同士が中心部領域Cにおいて互いに混ざり合うことが防止される。
【0048】
一方、この中心部領域Cに上方側から供給されたN2ガスは、周方向に勢いよく広がって行こうとするが、ラビリンス構造部110を設けているので、当該ラビリンス構造部110における壁部111、112を乗り越えるうちに流速が抑えられていく。この時、前記N2ガスは、例えば回転テーブル2と突起部92との間の極めて狭い領域へも侵入しようとするが、ラビリンス構造部110により流速が抑えられているので、当該狭い領域よりも広い領域(例えば処理領域P1や筐体90、90間の領域)に流れて行く。そのため、筐体90の下方側へのN2ガスの流入が抑えられる。また、後述するように、筐体90の下方側の空間は、真空容器1内の他の領域よりも陽圧に設定されていることからも、当該空間へのN2ガスの流入が抑えられている。
【0049】
回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、図1に示すように、加熱機構であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWを例えば300℃に加熱するようになっている。図1中71aはヒータユニット7の側方側に設けられたカバー部材、7aはこのヒータユニット7の上方側を覆う覆い部材である。また、真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側において、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が周方向に亘って複数箇所に設けられている。
【0050】
真空容器1の側壁には、図2及び図3に示すように図示しない外部の搬送アームと回転テーブル2との間においてウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15はゲートバルブGより気密に開閉自在に構成されている。また、回転テーブル2の凹部24は、この搬送口15に臨む位置にて搬送アームとの間でウエハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において当該受け渡し位置に対応する部位には、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。
【0051】
また、この成膜装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部120が設けられており、この制御部120のメモリ内には後述の成膜処理及び改質処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムは、後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体である記憶部121から制御部120内にインストールされる。
【0052】
次に、上述実施の形態の作用について説明する。先ず、ゲートバルブGを開放して、回転テーブル2を間欠的に回転させながら、図示しない搬送アームにより搬送口15を介して回転テーブル2上に例えば5枚のウエハWを載置する。このウエハWには、ドライエッチング処理やCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いた配線埋め込み工程が既に施されており、従って当該ウエハWの内部には電気配線構造が形成されている。また、ウエハWの表面には、図14の左端に示すように、ホールや溝などの凹部130が形成されている。次いで、ゲートバルブGを閉じ、真空ポンプ64により真空容器1内を引き切りの状態にすると共に、回転テーブル2を時計周りに回転させながらヒータユニット7によりウエハWを例えば300℃に加熱する。尚、図14はウエハWの一部を模式的に描画している。
【0053】
続いて、処理ガスノズル31からSi含有ガスを吐出すると共に、主プラズマ発生用ガスノズル32からNH3ガスを吐出する。また、補助プラズマ発生用ガスノズル34からArガス及びH2ガスの混合ガスを吐出する。更に、分離ガスノズル41、42から分離ガスを所定の流量で吐出し、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72、72からもN2ガスを所定の流量で吐出する。そして、圧力調整部65により真空容器1内を予め設定した処理圧力例えば400〜500Paこの例では500Paに調整する。また、主プラズマ発生部81では、各々のアンテナ83a、83bに対して、例えば夫々1500W及び1000Wとなるように高周波電力を供給すると共に、補助プラズマ発生部82では、各々のアンテナ83a、83bに対して、例えば夫々1500W及び1000Wとなるように高周波電力を供給する。
【0054】
この時、各々の筐体90よりも回転テーブル2の回転方向上流側から例えば当該回転テーブル2の回転に連れられて当該筐体90に向かって通流してくる例えばN2ガスは、筐体90によってガス流が乱されようとする。しかし、筐体90の外周側におけるサイドリング100にガス流路101を形成しているので、前記ガスは、筐体90を避けるように、当該ガス流路101を通って排気される。
【0055】
一方、筐体90の上流側から当該筐体90に向かって通流してくるガスのうち一部のガスは、筐体90の下方に侵入しようとする。しかし、既述の筐体90の下方側の領域では、突起部92が当該領域を覆うように形成されると共に、プラズマ発生用ガスノズル32、34のガス吐出孔33が各々回転テーブル2の回転テーブル2の回転方向上流側の斜め下を向いている。従って、プラズマ発生用ガスノズル32、34から吐出したプラズマ発生用ガスは、突起部92の下方側に衝突し、前記上流側から流入しようとするN2ガスなどを筐体90の外側へと追い出す。そして、各プラズマ発生用ガスノズル32、34から吐出されたプラズマ発生用ガスは、突起部92により回転テーブル2の回転方向下流側へと押し戻されて行く。この時、筐体90の下方における処理領域P2、P3は、真空容器1内の他の領域よりも例えば10Pa程度陽圧となっている。このことからも、筐体90の下方側へのN2ガスなどの侵入が阻止される。
【0056】
そして、Si含有ガスは、中心部領域Cに侵入しようとするが、この中心部領域Cには既述のラビリンス構造部110を設けているので、このラビリンス構造部110によって既述のようにガス流が阻害され、中心部領域Cに上方側から供給される分離ガスにより元の処理領域P1側に押し戻されることになる。また、中心部領域Cに侵入しようとする各ガスついても、同様に当該中心部領域Cへの侵入が阻害される。従って、中心部領域Cにおける処理ガス(プラズマ発生用ガス)同士の混合が防止される。また、同様にラビリンス構造部110によって、中心部領域Cから外周側に吐出されるN2ガスについての筐体90の下方側への侵入が抑えられる。
【0057】
更に、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間においてN2ガスを供給しているので、図12に示すように、Si含有ガスとNH3ガスなどのプラズマ発生用ガスとが互いに混合しないように各ガスが排気されることとなる。また、回転テーブル2の下方側にパージガスを供給しているため、回転テーブル2の下方側に拡散しようとするガスは、前記パージガスにより排気口61、62側へと押し戻される。
【0058】
この時、各々のプラズマ発生部81、82では、高周波電源85から供給される高周波電力により、図13に模式的に示すように、電界及び磁界が発生する。これら電界及び磁界のうち電界は、既述のようにファラデーシールド95を設けていることから、このファラデーシールド95により反射あるいは吸収(減衰)されて、真空容器1内への到達が阻害される(遮断される)。また、スリット97の長さ方向における一端側及び他端側に導電路97a、97aを各々配置していることから、当該一端側及び他端側を回り込んでウエハW側に向かおうとする電界についても遮断される。一方、磁界は、ファラデーシールド95にスリット97を形成しているので、このスリット97を通過して、筐体90の底面を介して真空容器1内に到達する。また、プラズマ発生部81、82の側方側におけるファラデーシールド95には周方向に亘ってスリット97が形成されていないので、電界及び磁界は、当該側方側を介して下方側に回り込まない。
【0059】
従って、プラズマ発生用ガスノズル32、34から吐出されたプラズマ発生用ガスは、スリット97を介して通過してきた磁界によって各々活性化されて、例えばイオンやラジカルなどのプラズマが生成する。具体的には、第2の処理領域P2ではNH3ガスのプラズマが発生する。また、第3の処理領域P3では、Arガス及びH2ガスのプラズマが発生する。この時、回転テーブル2の半径方向に第1のアンテナ83a及び第2のアンテナ83bを設けていることから、真空容器1内に生成するプラズマの強度は、回転テーブル2の中心部側よりも外周部側の方が大きくなる。尚、図12ではアンテナ83a、83bについて模式的に示しており、これらアンテナ83a、83b、ファラデーシールド95、筐体90及びウエハWの間の各寸法については模式的に大きく描画している。
【0060】
一方、ウエハWの表面では、回転テーブル2の回転によって第1の処理領域P1においてSi含有ガスが吸着し、次いで第2の処理領域P2においてウエハW上に吸着したSi含有ガスがNH3ガスのプラズマにより窒化され、薄膜成分であるシリコン窒化膜(Si−N)の分子層が1層あるいは複数層形成されて反応生成物が形成される。この時、シリコン窒化膜中には、例えばSi含有ガス中に含まれる残留基のため、塩素(Cl)や有機物などの不純物が含まれている場合がある。
【0061】
そして、回転テーブル2の回転によって、ウエハWの表面に補助プラズマ発生用ガス(Ar、H2)のプラズマが接触すると、シリコン窒化膜の改質処理が行われることになる。具体的には、例えばプラズマがウエハWの表面に衝突することにより、図14に示すように、例えばシリコン窒化膜から前記不純物がHClや有機ガスなどとして放出されたり、シリコン窒化膜内の元素が再配列されてシリコン窒化膜の緻密化(高密度化)が図られたりすることになる。
【0062】
この時、回転テーブル2が回転することにより、中心部側よりも外周部側において周速度が速くなっているので、当該外周部側では中心部側よりもプラズマ処理の程度(窒化処理あるいは改質処理の度合い)が小さくなろうとする。しかし、回転テーブル2の中心部側よりも外周部側においてプラズマの強度が強くなっていることから、回転テーブル2の半径方向においてプラズマ処理の度合いが揃う。こうして回転テーブル2の回転を続けることにより、図14に示すように、ウエハW表面へのSi含有ガスの吸着、ウエハW表面に吸着したSi含有ガスの成分の窒化及び反応生成物のプラズマ改質がこの順番で多数回に亘って行われて、反応生成物が積層されて既述の凹部130が埋め込まれるように薄膜が形成される。ここで、既述のようにウエハWの内部には電気配線構造が形成されているが、プラズマ発生部81、82とウエハWとの間にファラデーシールド95を設けて電界を遮断しているので、この電気配線構造に対する電気的ダメージが抑えられる。
【0063】
上述の実施の形態によれば、2つのプラズマ発生部81、82を回転テーブル2の回転方向に互いに離間させて設けると共に、これらプラズマ発生部81、82とウエハWとの間にファラデーシールド95を各々配置しているので、これらプラズマ発生部81、82において発生する電界については遮断することができる。一方、プラズマ発生部81、82において発生する磁界については、アンテナ83と直交する方向に伸びるスリット97をファラデーシールド95に設けているので、このスリット97を介して真空容器1内に到達させることができ、従ってプラズマによるウエハWの内部の電気配線構造に対する電気的ダメージを抑えてプラズマ処理を行うことができる。そのため、良好な膜質及び電気的特性を持つ薄膜を速やかに得ることができる。更に、2つのプラズマ発生部81、82を設けているので、互いに異なる種別のプラズマ処理を組み合わせることができる。従って、既述のようにウエハWの表面に吸着したSi含有ガスのプラズマ窒化処理及び反応生成物のプラズマ改質処理といった互いに異なる種別のプラズマ処理を組み合わせることができるので、自由度の高い装置を得ることができる。
【0064】
また、ファラデーシールド95を設けていることから、プラズマによる筐体90などの石英部材へのダメージ(エッチング)を抑えることができる。そのため、前記石英部材のロングライフ化を図ることができ、またコンタミの発生を抑えることができるし、更には石英(SiO2)の薄膜(SiO2)中への混入による膜厚の不均一化を抑えることができる。
【0065】
更に、筐体90を設けているので、プラズマ発生部81、82を回転テーブル2上のウエハWに近接させることができる。そのため、成膜処理を行う程度の高い圧力雰囲気(低い真空度)であっても、プラズマ中のイオンやラジカルの失活を抑えて良好な改質処理を行うことができる。そして、筐体90に突起部92を設けているので、処理領域P2、P3にO−リング11dが露出しない。そのため、O−リング11dに含まれる例えばフッ素系成分のウエハWへの混入を抑えることができ、また当該O−リング11dのロングライフ化を図ることができる。
【0066】
更にまた、筐体90の下面に突起部92を形成すると共に、プラズマ発生用ガスノズル32、34のガス吐出孔33が回転テーブル2の回転方向上流側を向くようにしている。そのため、プラズマ発生用ガスノズル32、34から吐出するガス流量が小流量であっても、筐体90の下方領域へのNH3ガスやN2ガスの侵入を抑えることができる。そのため、成膜処理と共にプラズマ処理を共通の成膜装置で行うにあたって、例えばプラズマ発生部81、82間の領域あるいは処理領域P1と主プラズマ発生部81との間の領域に個別に排気口やポンプを設けなくて済むので、更には前記領域に分離領域Dを設けなくて済むので、装置構成を簡略化できる。
【0067】
また、筐体90を配置するにあたって、当該筐体90の外周側におけるサイドリング100にガス流路101を形成しているので、筐体90を避けて各ガスを良好に排気することができる。
更にまた、筐体90の内部にプラズマ発生部81、82を収納しているので、これらプラズマ発生部81、82を大気雰囲気の領域(真空容器1の外側領域)に配置することができ、従ってプラズマ発生部81、82のメンテナンスが容易となる。
【0068】
ここで、筐体90の内部にプラズマ発生部81、82を収納しているので、例えば中心部領域C側では、この筐体90の側壁の厚み寸法の分、プラズマ発生部81の端部が回転テーブル2の回転中心から離間することになる。そのため、中心部領域C側におけるウエハWの端部にはプラズマが到達しにくくなる。一方、中心部領域C側におけるウエハWの端部にプラズマが到達するように筐体90(を中心部領域C側に寄った位置にまで形成しようとすると、既述のように中心部領域Cが狭くなる。この場合には、Si含有ガスとNH3ガスなどとが中心部領域Cにおいて混ざり合ってしまうおそれがある。しかし、本発明では、中心部領域Cにラビリンス構造部110を形成し、ガス流路を稼いでいるので、回転テーブル2の半径方向に亘って広いプラズマ空間を確保しながら、中心部領域CにおけるSi含有ガスとNH3ガスなどとの混合及び当該プラズマ空間内へのN2ガスの流入を抑えることができる。
更にまた、アンテナ83a、83bを設けて、回転テーブル2の半径方向においてウエハWの改質の度合いを揃えていることから、面内に亘って均質な膜質の薄膜を得ることができる。
【0069】
既述の例では、反応生成物の成膜と当該反応生成物の改質処理とを交互に行ったが、反応生成物を例えば70層(およそ10nmの膜厚)程度積層した後、これら反応生成物の積層体に対して改質処理を行っても良い。具体的には、Si含有ガス及びNH3ガスのプラズマを供給して反応生成物の成膜処理を行っている間はプラズマ発生部82への高周波電力の供給を停止する。そして、積層体の形成後、これらSi含有ガス及びNH3ガスの供給を停止してプラズマ発生部82へ高周波電力を供給する。このようないわば一括改質の場合にも、既述の例と同様の効果が得られる。
【0070】
以上の例では、2つのプラズマ発生部81、82において、反応生成物(Si−N)を生成させるプラズマ処理(窒化処理)及びプラズマ改質処理を夫々行う例を挙げたが、例えば主プラズマ発生部81では、反応生成物を生成させるプラズマ処理と共にプラズマエッチング処理を行うようにしても良い。このようなプラズマエッチング処理を行う例について、成膜装置及びウエハWの構成について以下に説明する。
【0071】
始めに、成膜装置について説明すると、この成膜装置の第1の処理ガスノズル31には、図15に示すように、第1の処理ガスとして例えばBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン:SiH2(NH−C(CH3)3)2)ガスの貯留源が接続されている。主プラズマ発生用ガスノズル32には、C(炭素)とF(フッ素)とを含むエッチングガス例えばCHF3ガスと、第2の処理ガスであるO2ガスと、主プラズマ発生用ガスであるArガスとの貯留源が接続されている。具体的には、主プラズマ発生用ガスノズル32の上流側は、図示を省略するが、例えば3本の分岐管に分岐して、各々の分岐管がバルブ及び流量調整部を介して前記各ガスの貯留源に個別に接続されている。補助プラズマ発生用ガスノズル34には、補助プラズマ発生用ガスとして、O2ガス、Arガス及びH2ガスの貯留源が接続されている。
続いてウエハWの構成について説明すると、ウエハWには既述の例と同様に凹部130が形成されており、この凹部130は、図16の左側に示すように、下端側の開口寸法よりも上端側の開口寸法の方が小さくなる逆テーパー形状となっている。尚、図16は、ウエハWの一部を模式的に描画しており、凹部130の逆テーパー形状については誇張している。
【0072】
このウエハWに対して、図15の成膜装置において既述の例と同様に成膜処理を行うと、図16の左側から2番目に示すように、第1の処理領域P1において、凹部130の内部を含むウエハWの表面に、BTBASガスの成分が吸着する。そして、第2の処理領域P2では、アンテナ83の磁界によりArガスがプラズマ化され、このArガスのプラズマにより既述のエッチングガス及びO2ガスが各々プラズマ化される。これらエッチングガスのプラズマ及びO2ガスのプラズマのうち例えばO2ガスのプラズマ(ラジカルやイオン)は、ウエハWの上面側の領域から凹部130内の下端部の領域までに亘って拡散して、これら領域におけるBTBASガスの成分を酸化して反応生成物(シリコン酸化物)を生成させる。
【0073】
一方、エッチングガスのプラズマは、O2ガスのプラズマ(ラジカル)よりも寿命が短いので、活性を保ったまま凹部130内の下端部までは拡散できず、従ってウエハWの上面側及び凹部130内の上端部付近に接触する。このエッチングガスのプラズマにウエハWが接触すると、図16の中央部に示すように、ウエハW上の反応生成物がエッチングされて、例えばガスとして未反応の処理ガスや副生成物などのガスなどと共に排気される。従って、凹部130の内部に成膜される反応生成物は、下端側よりも上端側の方が薄くなるので、いわば当該凹部130の逆テーパーの程度が僅かに緩和されて、凹部130の内壁のテーパー角度が垂直に近くなる。この時、ウエハW上の反応生成物には、第1の処理ガスやエッチングガスに含まれる不純物(水分やF)が含まれている場合がある。
【0074】
続いて、第3の処理領域P3では、図16の右側から2番目に示すように、ウエハWに形成された反応生成物から不純物がHFガスなどのガスとして除去されて改質処理が行われる。そして、回転テーブル2の回転により、このようなBTBASガスの吸着と、BTBASガスの酸化及びエッチングと、反応生成物の改質処理と、を多数回に亘って繰り返すと、凹部130の逆テーパー形状がより一層直角に近くなりながら、あるいは更にテーパー形状(上端部の開口寸法が下端部の開口寸法よりも広い形状)になりながら、不純物が除去(低減)されつつ凹部130内に反応生成物が順次埋め込まれていく。従って、凹部130への薄膜の埋め込みが完了すると、図16の右側に示すように、当該凹部130内にはボイドなどの空隙が生成せず、またBTBASガス中の不純物に加えてエッチングガス中の不純物についても濃度が極めて低い薄膜が得られる。
【0075】
ここで、このような逆テーパー形状の凹部130に対して例えば通常のCVD法により薄膜を埋め込もうとすると、当該凹部130の形状に倣って反応生成物が積層される時には、凹部130の内部に薄膜が充填される前に、当該凹部130の上端部が塞がってしまう場合がある。この場合には、凹部130内に空隙が形成されるので、例えばデバイスの電気的抵抗が設計値よりも大きくなってしまう。一方、このようなCVD法にプラズマエッチングを組み合わせると、具体的にはCVD法による成膜工程と、凹部130内の上端部側のプラズマエッチング工程と、を繰り返して凹部130に薄膜を埋め込むと、プラズマエッチング工程では例えばFが不純物として薄膜に混入してしまうおそれがある。そのため、凹部130に薄膜を埋め込んだ後にアニール工程などを行っても、この凹部130の内部に入り込んだ不純物については除去することが極めて困難であり、従って例えば設計通りの電気的特性が得られなくなってしまう。
【0076】
そこで、本発明では、反応生成物の形成工程と、プラズマエッチング工程と、改質工程と、をこの順番で多数回に亘って行うことにより、反応生成物を形成する度にエッチング処理を行うと共にこれら反応生成物の形成工程及びエッチング工程において反応生成物に取り込まれた不純物を除去している。そのため、膜厚方向に亘って不純物濃度の極めて低い薄膜を形成でき、また凹部130の逆テーパー形状が徐々に緩和されるように(垂直に近づくように)エッチングを行っていることから、凹部130内にボイドなどの空隙が生じることを抑制できる。
【0077】
ここで、補助プラズマ発生用ガスノズル32から供給されるガスにはO2ガスが含まれていることから、主プラズマ発生用ガスノズル32からはO2ガスを供給せずに、第3の処理領域P3において反応生成物の生成(ウエハW上のBTBASガスの酸化)と改質とを行うようにしても良い。この場合には、第2の処理領域P2では、既述のCHF3ガスからなるエッチングガスに代えて、あるいはこのエッチングガスと共にSiをエッチングするエッチングガス例えばBr(臭素)系のガスが用いられて、プラズマエッチング処理が行われる。また、第2の処理領域P2及び第3の処理領域P3において夫々プラズマエッチング処理だけ及びプラズマ改質処理だけを行う場合には、当該第2の処理領域P2と第3の処理領域P3との間に第3のプラズマ発生部(図示せず)を設けて、この第3のプラズマ発生部においてBTBASガスの酸化処理を行っても良い。
【0078】
更に、以上述べた成膜装置では、各々のプラズマ発生部81、82において互いに異なる種別のプラズマ処理を行うようにしたが、互いに同じ種別のプラズマ処理を行っても良い。具体的には、シリコン酸化膜を成膜する時に、プラズマ発生用ガスノズル32、34から各々O2ガス及びArガスを供給し、処理領域P2、P3において各々BTBASガスを酸化すると共に反応生成物中に含まれる不純物を除去するようにしても良い。
【0079】
続いて、以上説明した成膜装置におけるプラズマ発生部81、82の他の例について列挙する。以下の他の例については、これらプラズマ発生部81、82の一方だけあるいは双方について適用しても良い。図17及び図18は、アンテナ83を一つだけ設けると共に、当該アンテナ83について、平面で見た時に概略方形(概略8角形)となるように配置した例を示している。この例においても、スリット97は、開口部98に近接する領域から当該開口部98から離れた領域に向かうにつれて、幅寸法d1が広がるように形成されているが図示を省略している。
【0080】
図19は、図17及び図18のように2つのアンテナ83a、83bを概略方形となるように配置すると共に、第1のアンテナ83aについては既述の図8と同様に回転テーブル2の半径方向に亘って形成し、一方第2のアンテナ83bについては回転テーブル2の外周部側に配置している。尚、図19は、天板11を上方側から見た様子を示しており、アンテナ83a、83bを模式的に描画している。以下の図20についても同様である。
【0081】
図20は、2つのアンテナ83a、83bを図17及び図18のように概略方形となるように配置すると共に、第1のアンテナ83aについては回転テーブル2の半径方向内側に配置し、第2のアンテナ83bについては前記半径方向外側に配置した例を示している。この例では、これらアンテナ83a、83bは、互いに同じ面積となるように各々巻回されている。
図21は、既述のファラデーシールド95について、筐体90の内部に埋設した例を示している。具体的には、プラズマ発生部81(82)の下方における筐体90は、上端面が着脱自在に構成されており、この上端面を取り外した部位にファラデーシールド95を収納できるように構成されている。即ち、ファラデーシールド95は、プラズマ発生部81(82)とウエハWとの間に設けられていれば良い。
【0082】
図22は、プラズマ発生部81(82)及びファラデーシールド95を筐体90の内部に収納することに代えて、これらプラズマ発生部81(82)及びファラデーシールド95を天板11の上方に配置した例を示している。この例では、プラズマ発生部81(82)の下方における天板11は、他の部位における天板11とは別部材として例えば石英などの誘電体により構成されており、下面周縁部が既述のように周方向に亘ってO−リング11dにより前記他の部位における天板11と気密に接続されている。
【0083】
図23は、アンテナ83を鉛直軸方向に巻回することに代えて、水平軸方向に巻回した例を示している。具体的には、このアンテナ83は、回転テーブル2の回転方向に沿って円弧状に伸びる軸の周りに巻回されている。尚、図23はアンテナ83及びファラデーシールド95以外については省略している。
【0084】
ここで、アンテナ83としては、真空容器1の内部領域から気密に区画された領域(筐体90の内部あるいは天板11上)に配置したが、真空容器1の内部領域に配置しても良い。具体的には、例えば天板11の下面よりも僅かに下方側にアンテナ83を配置しても良い。この場合には、プラズマによりアンテナ83がエッチングされないように、当該アンテナ83は、例えば石英などの誘電体により表面がコーティングされる。また、この場合においてファラデーシールド95は、同様にプラズマによりエッチングされないように、アンテナ83とウエハWとの間において石英などの誘電体により表面がコーティングされる。更に、アンテナ83としては、コイル状に巻回した構成以外にも、基端側が例えば真空容器1の外側から当該真空容器1内に気密に挿入されると共に、他端側が中心部領域Cに向かって直線状に伸びる構成であっても良い。
【0085】
また、以上の各例では、プラズマ発生部81(82)として、アンテナ83を巻回して誘導結合型のプラズマ(ICP:Inductively coupled plasma)を発生させたが、プラズマ発生部81、82の一方において、容量結合型のプラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)を発生させるようにしても良い。具体的には、図24〜図26に示すように、プラズマ発生用ガスノズル32(34)に対して回転テーブル2の回転方向下流側に、一対の電極141、142が平行電極として設けられており、これら電極141、142は、支持部143を介して真空容器1の側壁から気密に挿入されている。また、電極141、142には、支持部143を介して整合器84及び高周波電源85が接続されている。尚、これら電極141、142の表面には、プラズマから当該電極141、142を保護するために、例えば石英などの保護被膜が形成されている。
【0086】
これら電極141、142及びプラズマ発生用ガスノズル32(34)の上方側には、プラズマの発生する領域(処理領域P2(P3))へのN2ガスなどの流入を抑えるために、概略ハット型のカバー部材144が設けられている。このカバー部材144は、電極141、142及びノズル32(34)を覆うように箱型に形成されると共に下面側が開口するカバー本体145と、このカバー本体145における回転テーブル2の回転方向上流側、下流側及び中心部領域Cの下端面から水平方向に向かって各々伸び出す気流規制面146とを備えている。図24は、カバー部材144を取り外した状態、図25はカバー部材144を取り付けた状態を示している。
このようなプラズマ発生部81(82)においても、気流規制面146により処理領域P2(P3)へのガスの進入を抑えながら、電極141、142間においてプラズマ発生用ガスがプラズマ化されてプラズマ処理が行われる。
【0087】
以上の各例において、ファラデーシールド95を構成する材質としては、磁界をできるだけ透過するように、比透磁率のなるべく低い材質が好ましく、具体的には、銀(Ag)、アルミニウム(Al)などを用いても良い。また、ファラデーシールド95のスリット97の数量としては、少なすぎると真空容器1内に到達する磁界が小さくなり、一方多すぎるとファラデーシールド95を製造しにくくなることから、例えばアンテナ83の長さ1mに対して100〜500本程度であることが好ましい。更に、プラズマ発生用ガスノズル34のガス吐出孔33について、回転テーブル2の回転方向上流側を向くように形成したが、このガス吐出孔33を下方側あるいは下流側を向くように配置しても良い。
【0088】
筐体90を構成する材質としては、石英に代えて、アルミナ(Al2O3)、イットリアなどの耐プラズマエッチング材を用いても良いし、例えばパイレックスガラス(コーニング社の耐熱ガラス、商標)などの表面にこれら耐プラズマエッチング材をコーティングしても良い。即ち、筐体90はプラズマに対する耐性が高く、且つ磁界を透過する材質(誘電体)により構成すれば良い。
また、ファラデーシールド95の上方に絶縁板94を配置して、当該ファラデーシールド95とアンテナ83との絶縁を取るようにしたが、この絶縁板94を配置せずに、例えばアンテナ83を石英などの絶縁材により被覆するようにしても良い。
【符号の説明】
【0089】
W ウエハ
P1、P2、P3 処理領域
1 真空容器
2 回転テーブル
31 処理ガスノズル
32、34 プラズマ発生用ガスノズル
81、82 プラズマ発生部
83,83a、83b アンテナ
95 ファラデーシールド
97 スリット
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに反応する処理ガスを順番に供給して基板の表面に反応生成物を積層すると共に基板に対してプラズマ処理を行う成膜装置、成膜方法及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基板(以下「ウエハ」と言う)に対して例えばシリコン酸化膜(SiO2)などの薄膜の成膜を行う手法の一つとして、互いに反応する複数種類の処理ガス(反応ガス)をウエハの表面に順番に供給して反応生成物を積層するALD(Atomic Layer Deposition)法が挙げられる。このALD法を用いて成膜処理を行う成膜装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、真空容器内に設けられた回転テーブル上に複数枚のウエハを周方向に並べると共に、例えば回転テーブルに対向するように配置された複数のガス供給部に対して回転テーブルを相対的に回転させることにより、これらウエハに対して各処理ガスを順番に供給する装置が知られている。
【0003】
ところで、ALD法では、通常のCVD(Chemical Vapor Deposition)法と比べて、ウエハの加熱温度(成膜温度)が例えば300℃程度と低い。そのため、前記処理ガスのうちの一つが例えばNH3(アンモニア)ガスなどの場合には、反応生成物が生成する程度までこのNH3ガスを活性化できない場合がある。また、例えば処理ガス中に含まれている有機物などが薄膜中に不純物として取り込まれてしまう場合がある。そこで、処理ガスを活性化させるために、あるいは薄膜中から不純物を低減させるために、薄膜の成膜と共にプラズマ処理を行う技術が知られている(特許文献2)。
【0004】
この時、ウエハの内部に配線構造が形成されている場合には、プラズマによって当該配線構造に対して電気的にダメージを与えてしまうおそれがある。一方、ウエハに対するプラズマダメージを抑えるためにプラズマ源をウエハから離間させると、成膜処理を行う圧力条件ではプラズマ中のイオンやラジカルなどの活性種が失活しやすいので、活性種がウエハに到達しにくくなって良好なプラズマ処理が行われなくなってしまうおそれがある。
【0005】
ところで、例えば上端側の開口径よりも下端側の開口径の方が広くなる逆テーパー形状の凹部に対して薄膜を埋め込もうとすると、当該凹部内に空隙が生じてしまったり、あるいはこの薄膜中に不純物が取り込まれたりしてしまう。
特許文献3〜5には、ALD法により薄膜を成膜する装置について記載されているが、既述の課題については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−239102
【特許文献2】特開2011−40574
【特許文献3】米国特許公報7,153,542号
【特許文献4】特許3144664号公報
【特許文献5】米国特許公報6,869,641号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、互いに反応する処理ガスを順番に供給して基板の表面に反応生成物を積層すると共に基板に対してプラズマ処理を行うにあたり、基板に対するプラズマダメージを抑えることのできる成膜装置、成膜方法及び記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の成膜装置は、
真空容器内にて第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給するサイクルを複数回行って基板に成膜処理を行う成膜装置において、
基板を載置する基板載置領域がその一面側に形成され、前記真空容器内にて前記基板載置領域を公転させるための回転テーブルと、
この回転テーブルの周方向に互いに分離領域を介して離間した領域に夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスを供給する第1の処理ガス供給部及び第2の処理ガス供給部と、
前記真空容器内に主プラズマ発生用ガス及び補助プラズマ発生用ガスを夫々供給するための主プラズマ発生ガス供給部及び補助プラズマ発生ガス供給部と、
前記回転テーブルの周方向に互いに離間するように設けられ、主プラズマ発生用ガス及び補助プラズマ発生用ガスを夫々プラズマ化するための主プラズマ発生部及び補助プラズマ発生部と、を備え、
前記主プラズマ発生部は、
前記真空容器内で主プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化するように、前記回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナと、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止すると共に磁界を基板側に通過させるために、前記アンテナと各々直交する方向に伸びるスリットが当該アンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドと、を有することを特徴とする。
【0009】
前記成膜装置は、以下のように構成しても良い。
前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部は、処理種別の互いに異なるプラズマ処理を行うためのものである構成。
前記補助プラズマ発生部は、
前記真空容器内で補助プラズマ用発生ガスを誘導結合によりプラズマ化するように、前記回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナと、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止すると共に磁界を基板側に通過させるために、前記アンテナと各々直交する方向に伸びるスリットが当該アンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドと、を有する構成。
【0010】
前記主プラズマ発生部は、第1の処理ガス及び第2の処理ガスのうち基板上に吸着した一方の処理ガスと反応するように他方の処理ガスをプラズマ化するためのものであり、
前記補助プラズマ発生部は、基板上に吸着した前記一方の処理ガスの成分と、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの反応により基板上に生成した反応生成物とのいずれか一方の改質を行うためのものである構成。
前記主プラズマ発生部は、基板上に生成した反応生成物をエッチングするプラズマ処理を行うためのものであり、
前記補助プラズマ発生部は、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの反応により基板上に生成した反応生成物の改質を行うためのものである構成。この場合において基板の表面には、上端側の開口寸法よりも下端側の開口寸法の方が広くなる逆テーパー状の凹部が形成されていても良い。
前記アンテナ及び前記ファラデーシールドは、プラズマ処理を行う領域から誘電体により気密に区画されている構成。
本発明の成膜方法は、
真空容器内にて第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給するサイクルを複数回行って基板に成膜処理を行う成膜方法において、
真空容器内に設けられた回転テーブルの一面側の基板載置領域に基板を載置すると共に、この基板載置領域を公転させる工程と、
次いで、前記回転テーブルの周方向に互いに分離領域を介して離間した領域に夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスを供給する工程と、
前記真空容器内に主プラズマ発生用ガス及び補助プラズマ発生用ガスを各々供給する工程と、
主プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化するために、前記回転テーブルの一面側に対向して設けられた主プラズマ発生部のアンテナに対して高周波電力を供給する工程と、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナと各々直交する方向に伸びるスリットが当該アンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドにより、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止すると共に磁界を基板側に通過させる工程と、
前記主プラズマ発生部に対して回転テーブルの周方向に離間した位置に設けられた補助プラズマ発生部において、補助プラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
前記補助プラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程は、
補助プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化するために、前記回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナに対して高周波電力を供給する工程と、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナと各々直交する方向に伸びるスリットが当該アンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドにより、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止すると共に磁界を基板側に通過させる工程と、を含んでいても良い。
前記主プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化する工程は、第1の処理ガス及び第2の処理ガスのうち基板上に吸着した一方の処理ガスと反応するように他方の処理ガスをプラズマ化する工程であり、
前記補助プラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程は、基板上に吸着した前記一方の処理ガスの成分と、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの反応により基板上に生成した反応生成物とのいずれか一方の改質を行う工程であっても良い。
前記主プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化する工程は、基板上に生成した反応生成物をエッチングする工程を含み、
前記補助プラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程は、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの反応により基板上に生成した反応生成物の改質を行う工程であっても良い。
【0012】
本発明の記憶媒体は、
真空容器内にて複数種類の処理ガスを順番に基板に供給するサイクルを複数回繰り返して薄膜を形成する成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、前記成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、真空容器内において回転テーブルを回転させて基板に対して第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給すると共に、回転テーブルの周方向に互いに離間するように設けられた主プラズマ発生部及び補助プラズマ発生部により基板に対して各々プラズマ処理を行っている。そして、主プラズマ発生部について、主プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化するためのアンテナを設けると共に、アンテナと基板との間に、アンテナと各々直交する方向に伸びるスリットの形成されたファラデーシールドを配置している。そのため、アンテナにおいて発生する電磁界における電界成分については前記真空容器の内部への到達を阻害し、一方磁界については基板側に通過させることができるので、基板へのプラズマによる電気的なダメージを抑えることができる。また、主プラズマ発生部及び補助プラズマ発生部において互いに異なる種別のプラズマ処理を行うことができるようにしていることから、基板に対する処理の自由度の高い成膜装置を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の成膜装置の一例を示す縦断面である。
【図2】前記成膜装置の横断断面図である。
【図3】前記成膜装置の横断平面図である。
【図4】前記成膜装置の内部の一部を示す分解斜視図である。
【図5】前記成膜装置の内部の一部を示す縦断面図である。
【図6】前記成膜装置の内部の一部を示す斜視図である。
【図7】前記成膜装置の内部の一部を示す縦断面図である。
【図8】前記成膜装置の内部の一部を示す平面図である。
【図9】前記成膜装置のファラデーシールドの一部を示す斜視図である。
【図10】前記成膜装置のサイドリングを示す分解斜視図である。
【図11】前記成膜装置のラビリンス構造部の一部を示す縦断面図である。
【図12】前記成膜装置におけるガスの流れを示す模式図である。
【図13】前記成膜装置におけるプラズマの発生の様子を示す模式図である。
【図14】前記成膜装置において基板に薄膜が成膜される様子を示す模式図である。
【図15】前記成膜装置の他の例を示す横断平面図である。
【図16】前記他の例において基板に薄膜が成膜される様子を示す模式図である。
【図17】前記成膜装置の更に他の例の一部を示す斜視図である。
【図18】前記更に他の例の一部を示す平面図である。
【図19】前記成膜装置の別の例の一部を示す平面図である。
【図20】前記成膜装置の別の例の一部を示す平面図である。
【図21】前記成膜装置の別の例の一部を示す縦断面図である。
【図22】前記成膜装置の別の例の一部を示す縦断面図である。
【図23】前記成膜装置の他の例の一部を示す斜視図である。
【図24】前記成膜装置の更に別の例の一部を示す斜視図である。
【図25】前記更に別の例の一部を示す斜視図である。
【図26】前記更に別の例の一部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態の成膜装置の一例について、図1〜図11を参照して説明する。この成膜装置は、図1及び図2に示すように、平面形状が概ね円形である真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。そして、この成膜装置では、後で詳述するように、ALD法によりウエハWの表面に反応生成物を積層して薄膜を成膜すると共に、この薄膜の成膜途中においてウエハWに対してプラズマ処理を行うように構成されている。この時、プラズマ処理を行うにあたって、プラズマによって電気的なダメージがウエハWに加わらないように、あるいは前記ダメージができるだけ小さくなるように、前記成膜装置が構成されている。続いて、成膜装置の各部について詳述する。
【0016】
真空容器1は、天板11及び容器本体12を備えており、天板11が容器本体12から着脱できるように構成されている。天板11の上面側における中央部には、真空容器1内の中心部領域Cにおいて互いに異なる処理ガス同士が混ざり合うことを抑制するために、N2(窒素)ガスを分離ガスとして供給するための分離ガス供給管51が接続されている。図1中13は、容器本体12の上面の周縁部にリング状に設けられたシール部材例えばOリングである。
【0017】
回転テーブル2は、中心部にて概略円筒形状のコア部21に固定されており、このコア部21の下面に接続されると共に鉛直方向に伸びる回転軸22によって、鉛直軸周りこの例では時計周りに回転自在に構成されている。図1中23は回転軸22を鉛直軸周りに回転させる駆動部であり、20は回転軸22及び駆動部23を収納するケース体である。このケース体20は、上面側のフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられている。また、このケース体20には、回転テーブル2の下方領域にN2ガスをパージガスとして供給するためのパージガス供給管72が接続されている。真空容器1の底面部14におけるコア部21の外周側は、回転テーブル2に下方側から近接するようにリング状に形成されて突出部12aをなしている。
【0018】
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示すように、回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板であるウエハWを載置するための円形状の凹部24が基板載置領域として設けられている。凹部24は、ウエハWを当該凹部24に落とし込む(収納する)と、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが揃うように、直径寸法及び深さ寸法が設定されている。凹部24の底面には、ウエハWを下方側から突き上げて昇降させるための例えば後述する3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0019】
図2及び図3に示すように、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する位置には、各々例えば石英からなる5本のノズル31、32、34、41、42が真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいて放射状に配置されている。これら各ノズル31、32、34、41、42は、例えば真空容器1の外周壁から中心部領域Cに向かってウエハWに対向して水平に伸びるように各々取り付けられている。この例では、後述の搬送口15から見て時計周り(回転テーブル2の回転方向)に補助プラズマ発生用ガスノズル34、分離ガスノズル41、第1の処理ガスノズル31、分離ガスノズル42及び第2の処理ガスノズルを兼用する主プラズマ発生用ガスノズル32がこの順番で配列されている。プラズマ発生用ガスノズル32、34の上方側には、図3に示すように、プラズマ発生用ガスノズル32、34から夫々吐出されるガスをプラズマ化するために、プラズマ発生部81、82が夫々設けられている。これらプラズマ発生部81、82については後で詳述する。尚、図2はプラズマ発生用ガスノズル32、34が見えるようにプラズマ発生部81、82及び後述の筐体90を取り外した状態、図3はこれらプラズマ発生部81、82及び筐体90を取り付けた状態を表している。また、図1は、図2におけるA−A線にて切断した縦断面を示している。
【0020】
第1の処理ガスノズル31は第1の処理ガス供給部をなし、主プラズマ発生用ガスノズル32は第2の処理ガス供給部及び主プラズマ発生用ガス供給部をなしている。補助プラズマ発生用ガスノズル34は、補助プラズマ発生用ガス供給部をなしている。また、分離ガスノズル41、42は、各々分離ガス供給部をなしている。尚、図1では、プラズマ発生部81について、模式的に一点鎖線で示している。
【0021】
各ノズル31、32、34、41、42は、流量調整バルブを介して夫々以下の各ガス供給源(図示せず)に夫々接続されている。即ち、第1の処理ガスノズル31は、Si(シリコン)を含む第1の処理ガス例えばDCS(ジクロロシラン)ガスなどの供給源に接続されている。主プラズマ発生用ガスノズル32は、第2の処理ガス及び主プラズマ発生用ガスである例えばNH3(アンモニア)ガスの供給源に接続されている。補助プラズマ発生用ガスノズル34は、例えばAr(アルゴン)ガスH2(水素)ガスとの混合ガスからなる補助プラズマ発生用ガスの供給源に接続されている。分離ガスノズル41、42は、分離ガスであるN2(窒素)ガスの供給源に各々接続されている。尚、NH3ガスと共に、主プラズマ発生用ガスの一部となるArガスを供給しても良い。
【0022】
ガスノズル31、32、41、42の下面側には、回転テーブル2の半径方向に沿って複数箇所にガス吐出孔33が例えば等間隔に形成されている。プラズマ発生用ガスノズル32、34の外周面には、回転テーブル2の回転方向上流側且つ下方側(斜め下)を各々向くように、当該プラズマ発生用ガスノズル32、34の長さ方向に沿ってガス吐出孔33が複数箇所に例えば等間隔で形成されている。このようにプラズマ発生用ガスノズル32、34のガス吐出孔33の向きを設定した理由については、後で説明する。これら各ノズル31、32、34、41、42は、当該ノズル31、32、34、41、42の下端縁と回転テーブル2の上面との離間距離が例えば1〜5mm程度となるように配置されている。
【0023】
処理ガスノズル31の下方領域は、Si含有ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1であり、主プラズマ発生用ガスノズル32の下方領域は、ウエハWに吸着したSi含有ガスとNH3ガスのプラズマとを反応させるための第2の処理領域P2となる。また、補助プラズマ発生用ガスノズル34の下方領域は、処理領域P1、P2を通過することによってウエハW上に形成された反応生成物の改質処理を行う第3の処理領域P3となる。分離ガスノズル41、42は、各々第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離する分離領域Dを形成するためのものである。この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には、図2及び図3に示すように、概略扇形の凸状部4が設けられており、分離ガスノズル41、42は、この凸状部4に形成された溝部43内に収められている。従って、分離ガスノズル41、42における回転テーブル2の周方向両側には、各処理ガス同士の混合を阻止するために、前記凸状部4の下面である低い天井面44(第1の天井面)が配置され、この天井面44の前記周方向両側には、当該天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)が配置されている。凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は、各処理ガス同士の混合を阻止するために、回転テーブル2の外端面に対向すると共に容器本体12に対して僅かに離間するように、L字型に屈曲している。
【0024】
次に、既述の主プラズマ発生部81及び補助プラズマ発生部82について詳述する。始めに、主プラズマ発生部81について説明すると、この主プラズマ発生部81は、既述のように搬送口15から見て右側(回転テーブル2の回転方向上流側)に設けられており、金属線からなるアンテナ83をコイル状に巻回して構成されている。この例では、アンテナ83は、例えば銅(Cu)の表面にニッケルメッキ及び金メッキをこの順番で施した材質により構成されている。また、アンテナ83は、真空容器1の内部領域から気密に区画されるように、当該真空容器1の天板11上に設けられている。具体的には、図4に示すように、既述の主プラズマ発生用ガスノズル32の上方側(詳しくはこのノズル32よりも僅かに回転テーブル2の回転方向上流側の位置から搬送口15よりも僅かにノズル32側に寄った位置まで)における天板11には、平面的に見た時に概略扇形に開口する開口部11aが形成されている。尚、プラズマ発生部81、82について、混同を避けるために夫々「主」及び「補助」の用語を付して説明するが、これらプラズマ発生部81、82は互いにほぼ同じ構成となっており、また各々のプラズマ発生部81、82にて各々行われるプラズマ処理についても互いに独立した処理となっている。
【0025】
前記開口部11aは、回転テーブル2の回転中心から例えば60mm程度外周側に離間した位置から、回転テーブル2の外縁よりも80mm程度外側に離れた位置までに亘って形成されている。また、開口部11aは、真空容器1の中心部領域Cに設けられた後述のラビリンス構造部110に干渉しない(避ける)ように、平面で見た時に回転テーブル2の中心側における端部が当該ラビリンス構造部110の外縁に沿うように円弧状に窪んでいる。そして、この開口部11aは、図4及び図5に示すように、天板11の上端面から下端面に向かって当該開口部11aの開口径が段階的に小さくなるように、例えば3段の段部11bが周方向に亘って形成されている。これら段部11bのうち最下段の段部(口縁部)11bの上面には、図5に示すように、周方向に亘って溝11cが形成されており、この溝11c内にはシール部材例えばO−リング11dが配置されている。尚、溝11c及びO−リング11dについては、図4では図示を省略しており、また天板11を切り欠いている。
【0026】
この開口部11aには、図6にも示すように、上方側の周縁部が周方向に亘ってフランジ状に水平に伸び出してフランジ部90aをなすと共に、中央部が下方側の真空容器1の内部領域に向かって窪むように形成された筐体90が配置されている。この筐体90は、主プラズマ発生部81において発生する磁界をウエハW側に通過させるために、例えば石英などの誘電体により透磁体(磁界を透過させる材質)として構成されており、図9に示すように、前記窪んだ部分の厚み寸法tが例えば20mmとなっている。また、この筐体90は、当該筐体90の下方にウエハWが位置した時に、中心部領域C側における筐体90の内壁面とウエハWの外縁との間の距離が70mmとなり、回転テーブル2の外周側における筐体90の内壁面とウエハWの外縁との間の距離が70mmとなるように構成されている。
【0027】
この筐体90を既述の開口部11a内に落とし込むと、フランジ部90aと段部11bのうち最下段の段部11bとが互いに係止する。そして、既述のO−リング11dによって、当該段部11b(天板11)と筐体90とが気密に接続される。また、開口部11aの外縁に沿うように枠状に形成された押圧部材91によって前記フランジ部90aを下方側に向かって周方向に亘って押圧すると共に、この押圧部材91を図示しないボルトなどにより天板11に固定することにより、真空容器1の内部雰囲気が気密に設定される。このように筐体90を天板11に気密に固定した時の当該筐体90の下面と回転テーブル2上のウエハWの表面との間の離間寸法hは、4〜60mmこの例では30mmとなっている。尚、図6は、筐体90を下方側から見た図を示している。
【0028】
筐体90の下面は、当該筐体90の下方領域へのN2ガスの侵入を阻止するために、図5〜図7に示すように、外縁部が周方向に亘って下方側(回転テーブル2側)に垂直に伸び出して、ガス規制用の突起部92をなしている。そして、この突起部92の内周面、筐体90の下面及び回転テーブル2の上面により囲まれた領域には、回転テーブル2の回転方向上流側に、既述の主プラズマ発生用ガスノズル32が収納されている。
【0029】
主プラズマ発生用ガスノズル32の基端側(真空容器1の側壁側)における突起部92は、当該プラズマ発生用ガスノズル34の外形に沿うように概略円弧状に切り欠かれている。突起部92の下面と回転テーブル2の上面との間の離間寸法dは、0.5〜5mmこの例では2mmとなっている。この突起部92の幅寸法及び高さ寸法は、夫々例えば10mm及び28mmとなっている。尚、図7は、回転テーブル2の回転方向に沿って真空容器1を切断した縦断面図を示している。
【0030】
また、成膜処理中には回転テーブル2が時計周りに回転するので、N2ガスがこの回転テーブル2の回転に連れられて回転テーブル2と突起部92との間の隙間から筐体90の下方側に侵入しようとする。そのため、前記隙間を介して筐体90の下方側へのN2ガスの侵入を阻止するために、前記隙間に対して筐体90の下方側からガスを吐出させている。具体的には、主プラズマ発生用ガスノズル32のガス吐出孔33について、図5及び図7に示すように、この隙間を向くように、即ち回転テーブル2の回転方向上流側且つ下方を向くように配置している。鉛直軸に対する主プラズマ発生用ガスノズル32のガス吐出孔33の向く角度θは、図7に示すように例えば45°程度となっている。
【0031】
ここで、筐体90の下方(第2の処理領域P2)側から天板11と筐体90との間の領域をシールする既述のO−リング11dを見ると、図5に示すように、当該第2の処理領域P2とO−リング11dとの間には突起部92が周方向に亘って形成されている。そのため、O−リング11dは、プラズマに直接曝されないように、第2の処理領域P2から隔離されていると言える。従って、第2の処理領域P2からプラズマが例えばO−リング11d側に拡散しようとしても、突起部92の下方を経由して行くことになるので、O−リング11dに到達する前にプラズマが失活することになる。
【0032】
筐体90の内側には、当該筐体90の内部形状に概略沿うように形成された厚み寸法kが例えば1mm程度の導電性の板状体である金属板からなる、接地されたファラデーシールド95が収納されている。この例では、ファラデーシールド95は、例えば銅(Cu)板または銅板にニッケル(Ni)膜及び金(Au)膜とを下側からメッキした板材により構成されている。即ち、このファラデーシールド95は、筐体90の底面に沿うように水平に形成された水平面95aと、この水平面95aの外周端から周方向に亘って上方側に伸びる垂直面95bと、を備えており、上方側から見た時に筐体90の内縁に沿って概略扇状となるように構成されている。このファラデーシールド95は、例えば金属板の圧延加工により、あるいは金属板における水平面95aの外側に対応する領域を上方側に折り曲げることにより形成されている。
【0033】
また、回転テーブル2の回転中心からファラデーシールド95を見た時の右側及び左側におけるファラデーシールド95の上端縁は、夫々右側及び左側に水平に伸び出して支持部96をなしている。そして、ファラデーシールド95を筐体90の内部に収納すると、ファラデーシールド95の下面と筐体90の上面とが互いに接触すると共に、前記支持部96が筐体90のフランジ部90aにより支持される。この水平面95a上には、ファラデーシールド95の上方に載置される主プラズマ発生部81との絶縁を取るために、厚み寸法が例えば2mm程度の例えば石英からなる絶縁板94が積層されている。前記水平面95aには、多数のスリット97が形成されているが、このスリット97の形状や配置レイアウトについては、主プラズマ発生部81のアンテナ83の形状と併せて詳述する。尚、絶縁板94については、後述の図8及び図9などでは描画を省略している。
【0034】
主プラズマ発生部81は、ファラデーシールド95の内側に収納されるように構成されており、従って図4及び図5に示すように、筐体90、ファラデーシールド95及び絶縁板94を介して真空容器1の内部(回転テーブル2上のウエハW)を臨むように配置されている。この主プラズマ発生部81は、既述のようにアンテナ83を鉛直軸周りに例えば3重に巻回して構成されており、この例では2つのアンテナ83、83が設けられている。これら2つのアンテナ83、83のうち一方を第1のアンテナ83a、他方を第2のアンテナ83bと呼ぶと、第1のアンテナ83aは、図4及び図5に示すように、平面的に見た時に筐体90の内縁に沿うように概略扇状となっている。また、第1のアンテナ83aは、当該第1のアンテナ83aの下方にウエハWが位置した時に、このウエハWにおける中心部領域C側の端部と回転テーブル2の外縁側の端部との間に亘ってプラズマを照射(供給)できるように、中心部領域C側及び外周側の端部が各々筐体90の内壁面に近接するように配置されている。尚、アンテナ83a、83bの内部には冷却水の通流する流路が各々形成されているが、ここでは省略している。
【0035】
第2のアンテナ83bは、回転テーブル2の半径方向外周側においてウエハWにプラズマを供給できるように、回転テーブル2上のウエハWの中心位置から200mm程度外周側に離間した位置と、回転テーブル2の外縁から90mm程度外周側に離間した位置と、の間に配置されている。即ち、回転テーブル2が回転すると、中心部側に比べて外周部側では周速度が速くなる。そのため、外周部側では内周部側よりもウエハWに供給されるプラズマの量が少なくなる場合がある。そこで、回転テーブル2の半径方向においてウエハWに供給されるプラズマの量を揃えるために、いわば第1のアンテナ83aによってウエハWに供給されるプラズマの量を補償するために、第2のアンテナ83bを設けている。
【0036】
第1のアンテナ83a及び第2のアンテナ83bは、各々整合器84を介して周波数が例えば13.56MHz及び出力電力が例えば5000Wの高周波電源85に個別に接続されており、当該第1のアンテナ83a及び第2のアンテナ83bに対して独立して高周波電力が調整されるように構成されている。尚、図1、図3及び図4などおける86は、各々のアンテナ83a、83bと整合器84及び高周波電源85とを電気的に接続するための接続電極である。
【0037】
ここで、既述のファラデーシールド95のスリット97について詳述する。このスリット97は、各々のアンテナ83a、83bにおいて発生する電界及び磁界(電磁界)のうち電界成分が下方のウエハWに向かうことを阻止すると共に、磁界をウエハWに到達させるためのものである。即ち、電界がウエハWに到達すると、当該ウエハWの内部に形成されている電気配線が電気的にダメージを受けてしまう場合がある。一方、ファラデーシールド95は、既述のように接地された金属板により構成されているので、スリット97を形成しないと、電界に加えて磁界も遮断してしまう。また、アンテナ83の下方に大きな開口部を形成すると、磁界だけでなく電界も通過してしまう。そこで、電界を遮断して磁界を通過させるために、以下のように寸法及び配置レイアウトを設定したスリット97を形成している。
【0038】
具体的には、スリット97は、図8に示すように、第1のアンテナ83a及び第2のアンテナ83bの各々の巻回方向に対して直交する方向に伸びるように、周方向に亘ってアンテナ83a、83bの下方位置に各々形成されている。従って、例えば回転テーブル2の半径方向に沿ってアンテナ83a、83bが配置された領域においては、スリット97は回転テーブル2の接線方向あるいは円周方向に沿うように直線状または円弧状に形成されている。また、回転テーブル2の外縁に沿うように円弧状にアンテナ83a、83bが配置された領域においては、スリット97は回転テーブル2の回転中心から外縁に向かう方向に直線状に形成されている。そして、前記2つの領域間においてアンテナ83a、83bが屈曲する部分では、スリット97は当該屈曲する部分におけるアンテナ83a、83bの伸びる方向に対して直交するように、回転テーブル2の周方向及び半径方向に対して各々傾斜する向きに形成されている。従って、スリット97は、アンテナ83a、83bの各々の伸びる方向に沿って多数配列されている。
【0039】
ここで、アンテナ83a、83bには、既述のように周波数が13.56MHzの高周波電源85が接続されており、この周波数に対応する波長は22mである。そのため、スリット97は、この波長の1/10000以下程度の幅寸法となるように、図9に示すように、幅寸法d1が1〜5mmこの例では2mm、スリット97、97間の離間寸法d2が1〜5mmこの例では2mmとなるように形成されている。また、このスリット97は、既述の図8に示すように、アンテナ83a(83b)の伸びる方向から見た時に、長さ寸法が例えば各々60mmとなるように、当該アンテナ83a(83b)の右端よりも30mm程度右側に離間した位置から、アンテナ83a(83b)の左端よりも30mm程度左側に離間した位置までに亘って形成されている。従って、各々のスリット97の長さ方向における一端側及び他端側には、これらスリット97の開口端を塞ぐように、接地された導電体からなる導電路97a、97aが周方向に亘って各々配置されていると言える。
【0040】
ファラデーシールド95においてこれらスリット97の形成領域から外れた領域、即ちアンテナ83a、83bの巻回された領域の中央側には、当該領域を介してプラズマの発光状態を確認するための開口部98が各々形成されている。尚、図3ではスリット97を省略している。また、図4及び図5などではスリット97について簡略化しているが、スリット97は例えば150本程度形成されている。スリット97は、開口部98に近接する領域から当該開口部98から離れた領域に向かうにつれて、幅寸法d1が広がるように形成されているが、ここでは図示を省略している。
【0041】
以上説明した主プラズマ発生部81に対して回転テーブル2の回転方向下流側に離間するように、補助プラズマ発生部82が配置されており、この補助プラズマ発生部82は、主プラズマ発生部81とほぼ同じ構成となっている。即ち、補助プラズマ発生部82は、第1のアンテナ83a及び第2のアンテナ83bにより構成されており、筐体90、ファラデーシールド95及び絶縁板94の上方側に配置されている。補助プラズマ発生部82のアンテナ83a、83bについても、主プラズマ発生部81と同様に、整合器84を介して周波数が例えば13.56MHz及び出力電力が例えば5000Wの高周波電源85に個別に接続されており、当該第1のアンテナ83a及び第2のアンテナ83bに対して独立して高周波電力が供給されるように構成されている。
【0042】
続いて、真空容器1の各部の説明に戻る。回転テーブル2の外周側において当該回転テーブル2よりも僅かに下位置には、図2、図5及び図10に示すように、カバー体であるサイドリング100が配置されている。このサイドリング100は、例えば装置のクリーニング時において、各処理ガスに代えてフッ素系のクリーニングガスを通流させた時に、当該クリーニングガスから真空容器1の内壁を保護するためのものである。即ち、サイドリング100を設けないと、回転テーブル2の外周部と真空容器1の内壁との間には、横方向に気流(排気流)が形成される凹部状の気流通路が周方向に亘ってリング状に形成されていると言える。そのため、このサイドリング100は、気流通路に真空容器1の内壁面ができるだけ露出しないように、当該気流通路に設けられている。この例では、各分離領域D及び筐体90における外縁側の領域は、このサイドリング100の上方側に露出している。
【0043】
サイドリング100の上面には、互いに周方向に離間するように2箇所に排気口61、62が形成されている。言い換えると、前記気流通路の下方側に2つの排気口が形成され、これら排気口に対応する位置におけるサイドリング100に、排気口61、62が形成されている。これら2つの排気口61、62のうち一方及び他方を夫々第1の排気口61及び第2の排気口62と呼ぶと、第1の排気口61は、第1の処理ガスノズル31と、当該第1の処理ガスノズル31よりも回転テーブルの回転方向下流側における分離領域Dとの間において、当該分離領域D側に寄った位置に形成されている。第2の排気口62は、補助プラズマ発生用ガスノズル34と、当該ノズル34よりも回転テーブルの回転方向下流側における分離領域Dとの間において、当該分離領域D側に寄った位置に形成されている。第1の排気口61は、Si含有ガス及び分離ガスを排気するためのものであり、第2の排気口62は、NH3ガス及び分離ガスに加えて、補助プラズマ発生用ガスノズル34から供給されるプラズマ発生用ガスを排気するためのものである。これら第1の排気口61及び第2の排気口62は、図1に示すように、各々バタフライバルブなどの圧力調整部65の介設された排気管63により、真空排気機構である例えば真空ポンプ64に接続されている。
【0044】
ここで、既述のように、中心部領域C側から外縁側に亘って筐体90を形成しているので、例えば主プラズマ発生部81よりも回転テーブル2の回転方向上流側に吐出された分離ガスは、当該筐体90によって第2の排気口62に向かおうとするガス流がいわば規制されてしまう。また、補助プラズマ発生部82についても、中心部領域C側から外縁部側に亘って筐体90を形成しているので、当該筐体90よりも上流側から第2の排気口62に向かおうとするガス流が規制されてしまう。そこで、筐体90の外側における既述のサイドリング100の上面に、分離ガスが流れるための溝状のガス流路101を形成している。具体的には、このガス流路101は、図3に示すように、主プラズマ発生部81の筐体90における回転テーブル2の回転方向上流側の端部よりも例えば60mm程度第1の排気口61側に寄った位置から、既述の第2の排気口62までの間に亘って、深さ寸法が例えば30mmとなるように円弧状に形成されている。従って、このガス流路101は、筐体90の外縁に沿うように、また上方側から見た時に主プラズマ発生部81及び補助プラズマ発生部82の筐体90、90の外縁部に跨がるように形成されている。このサイドリング100は、図示を省略しているが、フッ素系ガスに対する耐腐食性を持たせるために、表面が例えばアルミナなどによりコーティングされているか、あるいは石英カバーなどにより覆われている。
【0045】
天板11の下面における中央部には、図2に示すように、凸状部4における中心部領域C側の部位と連続して周方向に亘って概略リング状に形成されると共に、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成された突出部5が設けられている。この突出部5よりも回転テーブル2の回転中心側におけるコア部21の上方側には、中心部領域CにおいてSi含有ガスとNH3ガスなどとが互いに混ざり合うことを抑制するためのラビリンス構造部110が配置されている。即ち、既述の図1から分かるように、筐体90を中心部領域C側に寄った位置まで形成しているので、回転テーブル2の中央部を支持するコア部21は、回転テーブル2の上方側の部位が筐体90を避けるように前記回転中心側に寄った位置に形成されている。従って、中心部領域C側では、外縁部側よりも例えば処理ガス同士が混ざりやすい状態となっていると言える。そこで、ラビリンス構造部110を形成することにより、ガスの流路を稼いで処理ガス同士が混ざり合うことを防止している。
【0046】
具体的には、このラビリンス構造部110は、図11に当該ラビリンス構造部110を拡大して示すように、回転テーブル2側から天板11側に向かって垂直に伸びる第1の壁部111と、天板11側から回転テーブル2に向かって垂直に伸びる第2の壁部112と、が各々周方向に亘って形成されると共に、これら壁部111、112が回転テーブル2の半径方向において交互に配置された構造を採っている。具体的には、既述の突出部5側から中心部領域C側に向かって、第2の壁部112、第1の壁部111及び第2の壁部112がこの順番で配置されている。この例では、突出部5側の第2の壁部112は、他の壁部111、112よりも当該突出部5側に膨らんだ構造となっている。このような壁部111、112の各寸法について一例を挙げると、壁部111、112間の離間寸法jは例えば1mm、壁部111と天板11との間の離間寸法(壁部112とコア部21との間の隙間寸法)mは例えば1mmとなっている。
【0047】
従って、ラビリンス構造部110では、例えば第1の処理ガスノズル31から吐出されて中心部領域Cに向かおうとするSi含有ガスは、壁部111、112を乗り越えていく必要があるので、中心部領域Cに向かうにつれて流速が遅くなり、拡散しにくくなる。そのため、処理ガスが中心部領域Cに到達する前に、当該中心部領域Cに供給される分離ガスにより処理領域P1側に押し戻されることになる。また、中心部領域Cに向かおうとするNH3ガスなどのプラズマ発生用ガスについても、同様にラビリンス構造部110によって中心部領域Cに到達しにくくなる。そのため、処理ガス同士が中心部領域Cにおいて互いに混ざり合うことが防止される。
【0048】
一方、この中心部領域Cに上方側から供給されたN2ガスは、周方向に勢いよく広がって行こうとするが、ラビリンス構造部110を設けているので、当該ラビリンス構造部110における壁部111、112を乗り越えるうちに流速が抑えられていく。この時、前記N2ガスは、例えば回転テーブル2と突起部92との間の極めて狭い領域へも侵入しようとするが、ラビリンス構造部110により流速が抑えられているので、当該狭い領域よりも広い領域(例えば処理領域P1や筐体90、90間の領域)に流れて行く。そのため、筐体90の下方側へのN2ガスの流入が抑えられる。また、後述するように、筐体90の下方側の空間は、真空容器1内の他の領域よりも陽圧に設定されていることからも、当該空間へのN2ガスの流入が抑えられている。
【0049】
回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、図1に示すように、加熱機構であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWを例えば300℃に加熱するようになっている。図1中71aはヒータユニット7の側方側に設けられたカバー部材、7aはこのヒータユニット7の上方側を覆う覆い部材である。また、真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側において、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が周方向に亘って複数箇所に設けられている。
【0050】
真空容器1の側壁には、図2及び図3に示すように図示しない外部の搬送アームと回転テーブル2との間においてウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15はゲートバルブGより気密に開閉自在に構成されている。また、回転テーブル2の凹部24は、この搬送口15に臨む位置にて搬送アームとの間でウエハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において当該受け渡し位置に対応する部位には、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。
【0051】
また、この成膜装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部120が設けられており、この制御部120のメモリ内には後述の成膜処理及び改質処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムは、後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体である記憶部121から制御部120内にインストールされる。
【0052】
次に、上述実施の形態の作用について説明する。先ず、ゲートバルブGを開放して、回転テーブル2を間欠的に回転させながら、図示しない搬送アームにより搬送口15を介して回転テーブル2上に例えば5枚のウエハWを載置する。このウエハWには、ドライエッチング処理やCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いた配線埋め込み工程が既に施されており、従って当該ウエハWの内部には電気配線構造が形成されている。また、ウエハWの表面には、図14の左端に示すように、ホールや溝などの凹部130が形成されている。次いで、ゲートバルブGを閉じ、真空ポンプ64により真空容器1内を引き切りの状態にすると共に、回転テーブル2を時計周りに回転させながらヒータユニット7によりウエハWを例えば300℃に加熱する。尚、図14はウエハWの一部を模式的に描画している。
【0053】
続いて、処理ガスノズル31からSi含有ガスを吐出すると共に、主プラズマ発生用ガスノズル32からNH3ガスを吐出する。また、補助プラズマ発生用ガスノズル34からArガス及びH2ガスの混合ガスを吐出する。更に、分離ガスノズル41、42から分離ガスを所定の流量で吐出し、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72、72からもN2ガスを所定の流量で吐出する。そして、圧力調整部65により真空容器1内を予め設定した処理圧力例えば400〜500Paこの例では500Paに調整する。また、主プラズマ発生部81では、各々のアンテナ83a、83bに対して、例えば夫々1500W及び1000Wとなるように高周波電力を供給すると共に、補助プラズマ発生部82では、各々のアンテナ83a、83bに対して、例えば夫々1500W及び1000Wとなるように高周波電力を供給する。
【0054】
この時、各々の筐体90よりも回転テーブル2の回転方向上流側から例えば当該回転テーブル2の回転に連れられて当該筐体90に向かって通流してくる例えばN2ガスは、筐体90によってガス流が乱されようとする。しかし、筐体90の外周側におけるサイドリング100にガス流路101を形成しているので、前記ガスは、筐体90を避けるように、当該ガス流路101を通って排気される。
【0055】
一方、筐体90の上流側から当該筐体90に向かって通流してくるガスのうち一部のガスは、筐体90の下方に侵入しようとする。しかし、既述の筐体90の下方側の領域では、突起部92が当該領域を覆うように形成されると共に、プラズマ発生用ガスノズル32、34のガス吐出孔33が各々回転テーブル2の回転テーブル2の回転方向上流側の斜め下を向いている。従って、プラズマ発生用ガスノズル32、34から吐出したプラズマ発生用ガスは、突起部92の下方側に衝突し、前記上流側から流入しようとするN2ガスなどを筐体90の外側へと追い出す。そして、各プラズマ発生用ガスノズル32、34から吐出されたプラズマ発生用ガスは、突起部92により回転テーブル2の回転方向下流側へと押し戻されて行く。この時、筐体90の下方における処理領域P2、P3は、真空容器1内の他の領域よりも例えば10Pa程度陽圧となっている。このことからも、筐体90の下方側へのN2ガスなどの侵入が阻止される。
【0056】
そして、Si含有ガスは、中心部領域Cに侵入しようとするが、この中心部領域Cには既述のラビリンス構造部110を設けているので、このラビリンス構造部110によって既述のようにガス流が阻害され、中心部領域Cに上方側から供給される分離ガスにより元の処理領域P1側に押し戻されることになる。また、中心部領域Cに侵入しようとする各ガスついても、同様に当該中心部領域Cへの侵入が阻害される。従って、中心部領域Cにおける処理ガス(プラズマ発生用ガス)同士の混合が防止される。また、同様にラビリンス構造部110によって、中心部領域Cから外周側に吐出されるN2ガスについての筐体90の下方側への侵入が抑えられる。
【0057】
更に、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間においてN2ガスを供給しているので、図12に示すように、Si含有ガスとNH3ガスなどのプラズマ発生用ガスとが互いに混合しないように各ガスが排気されることとなる。また、回転テーブル2の下方側にパージガスを供給しているため、回転テーブル2の下方側に拡散しようとするガスは、前記パージガスにより排気口61、62側へと押し戻される。
【0058】
この時、各々のプラズマ発生部81、82では、高周波電源85から供給される高周波電力により、図13に模式的に示すように、電界及び磁界が発生する。これら電界及び磁界のうち電界は、既述のようにファラデーシールド95を設けていることから、このファラデーシールド95により反射あるいは吸収(減衰)されて、真空容器1内への到達が阻害される(遮断される)。また、スリット97の長さ方向における一端側及び他端側に導電路97a、97aを各々配置していることから、当該一端側及び他端側を回り込んでウエハW側に向かおうとする電界についても遮断される。一方、磁界は、ファラデーシールド95にスリット97を形成しているので、このスリット97を通過して、筐体90の底面を介して真空容器1内に到達する。また、プラズマ発生部81、82の側方側におけるファラデーシールド95には周方向に亘ってスリット97が形成されていないので、電界及び磁界は、当該側方側を介して下方側に回り込まない。
【0059】
従って、プラズマ発生用ガスノズル32、34から吐出されたプラズマ発生用ガスは、スリット97を介して通過してきた磁界によって各々活性化されて、例えばイオンやラジカルなどのプラズマが生成する。具体的には、第2の処理領域P2ではNH3ガスのプラズマが発生する。また、第3の処理領域P3では、Arガス及びH2ガスのプラズマが発生する。この時、回転テーブル2の半径方向に第1のアンテナ83a及び第2のアンテナ83bを設けていることから、真空容器1内に生成するプラズマの強度は、回転テーブル2の中心部側よりも外周部側の方が大きくなる。尚、図12ではアンテナ83a、83bについて模式的に示しており、これらアンテナ83a、83b、ファラデーシールド95、筐体90及びウエハWの間の各寸法については模式的に大きく描画している。
【0060】
一方、ウエハWの表面では、回転テーブル2の回転によって第1の処理領域P1においてSi含有ガスが吸着し、次いで第2の処理領域P2においてウエハW上に吸着したSi含有ガスがNH3ガスのプラズマにより窒化され、薄膜成分であるシリコン窒化膜(Si−N)の分子層が1層あるいは複数層形成されて反応生成物が形成される。この時、シリコン窒化膜中には、例えばSi含有ガス中に含まれる残留基のため、塩素(Cl)や有機物などの不純物が含まれている場合がある。
【0061】
そして、回転テーブル2の回転によって、ウエハWの表面に補助プラズマ発生用ガス(Ar、H2)のプラズマが接触すると、シリコン窒化膜の改質処理が行われることになる。具体的には、例えばプラズマがウエハWの表面に衝突することにより、図14に示すように、例えばシリコン窒化膜から前記不純物がHClや有機ガスなどとして放出されたり、シリコン窒化膜内の元素が再配列されてシリコン窒化膜の緻密化(高密度化)が図られたりすることになる。
【0062】
この時、回転テーブル2が回転することにより、中心部側よりも外周部側において周速度が速くなっているので、当該外周部側では中心部側よりもプラズマ処理の程度(窒化処理あるいは改質処理の度合い)が小さくなろうとする。しかし、回転テーブル2の中心部側よりも外周部側においてプラズマの強度が強くなっていることから、回転テーブル2の半径方向においてプラズマ処理の度合いが揃う。こうして回転テーブル2の回転を続けることにより、図14に示すように、ウエハW表面へのSi含有ガスの吸着、ウエハW表面に吸着したSi含有ガスの成分の窒化及び反応生成物のプラズマ改質がこの順番で多数回に亘って行われて、反応生成物が積層されて既述の凹部130が埋め込まれるように薄膜が形成される。ここで、既述のようにウエハWの内部には電気配線構造が形成されているが、プラズマ発生部81、82とウエハWとの間にファラデーシールド95を設けて電界を遮断しているので、この電気配線構造に対する電気的ダメージが抑えられる。
【0063】
上述の実施の形態によれば、2つのプラズマ発生部81、82を回転テーブル2の回転方向に互いに離間させて設けると共に、これらプラズマ発生部81、82とウエハWとの間にファラデーシールド95を各々配置しているので、これらプラズマ発生部81、82において発生する電界については遮断することができる。一方、プラズマ発生部81、82において発生する磁界については、アンテナ83と直交する方向に伸びるスリット97をファラデーシールド95に設けているので、このスリット97を介して真空容器1内に到達させることができ、従ってプラズマによるウエハWの内部の電気配線構造に対する電気的ダメージを抑えてプラズマ処理を行うことができる。そのため、良好な膜質及び電気的特性を持つ薄膜を速やかに得ることができる。更に、2つのプラズマ発生部81、82を設けているので、互いに異なる種別のプラズマ処理を組み合わせることができる。従って、既述のようにウエハWの表面に吸着したSi含有ガスのプラズマ窒化処理及び反応生成物のプラズマ改質処理といった互いに異なる種別のプラズマ処理を組み合わせることができるので、自由度の高い装置を得ることができる。
【0064】
また、ファラデーシールド95を設けていることから、プラズマによる筐体90などの石英部材へのダメージ(エッチング)を抑えることができる。そのため、前記石英部材のロングライフ化を図ることができ、またコンタミの発生を抑えることができるし、更には石英(SiO2)の薄膜(SiO2)中への混入による膜厚の不均一化を抑えることができる。
【0065】
更に、筐体90を設けているので、プラズマ発生部81、82を回転テーブル2上のウエハWに近接させることができる。そのため、成膜処理を行う程度の高い圧力雰囲気(低い真空度)であっても、プラズマ中のイオンやラジカルの失活を抑えて良好な改質処理を行うことができる。そして、筐体90に突起部92を設けているので、処理領域P2、P3にO−リング11dが露出しない。そのため、O−リング11dに含まれる例えばフッ素系成分のウエハWへの混入を抑えることができ、また当該O−リング11dのロングライフ化を図ることができる。
【0066】
更にまた、筐体90の下面に突起部92を形成すると共に、プラズマ発生用ガスノズル32、34のガス吐出孔33が回転テーブル2の回転方向上流側を向くようにしている。そのため、プラズマ発生用ガスノズル32、34から吐出するガス流量が小流量であっても、筐体90の下方領域へのNH3ガスやN2ガスの侵入を抑えることができる。そのため、成膜処理と共にプラズマ処理を共通の成膜装置で行うにあたって、例えばプラズマ発生部81、82間の領域あるいは処理領域P1と主プラズマ発生部81との間の領域に個別に排気口やポンプを設けなくて済むので、更には前記領域に分離領域Dを設けなくて済むので、装置構成を簡略化できる。
【0067】
また、筐体90を配置するにあたって、当該筐体90の外周側におけるサイドリング100にガス流路101を形成しているので、筐体90を避けて各ガスを良好に排気することができる。
更にまた、筐体90の内部にプラズマ発生部81、82を収納しているので、これらプラズマ発生部81、82を大気雰囲気の領域(真空容器1の外側領域)に配置することができ、従ってプラズマ発生部81、82のメンテナンスが容易となる。
【0068】
ここで、筐体90の内部にプラズマ発生部81、82を収納しているので、例えば中心部領域C側では、この筐体90の側壁の厚み寸法の分、プラズマ発生部81の端部が回転テーブル2の回転中心から離間することになる。そのため、中心部領域C側におけるウエハWの端部にはプラズマが到達しにくくなる。一方、中心部領域C側におけるウエハWの端部にプラズマが到達するように筐体90(を中心部領域C側に寄った位置にまで形成しようとすると、既述のように中心部領域Cが狭くなる。この場合には、Si含有ガスとNH3ガスなどとが中心部領域Cにおいて混ざり合ってしまうおそれがある。しかし、本発明では、中心部領域Cにラビリンス構造部110を形成し、ガス流路を稼いでいるので、回転テーブル2の半径方向に亘って広いプラズマ空間を確保しながら、中心部領域CにおけるSi含有ガスとNH3ガスなどとの混合及び当該プラズマ空間内へのN2ガスの流入を抑えることができる。
更にまた、アンテナ83a、83bを設けて、回転テーブル2の半径方向においてウエハWの改質の度合いを揃えていることから、面内に亘って均質な膜質の薄膜を得ることができる。
【0069】
既述の例では、反応生成物の成膜と当該反応生成物の改質処理とを交互に行ったが、反応生成物を例えば70層(およそ10nmの膜厚)程度積層した後、これら反応生成物の積層体に対して改質処理を行っても良い。具体的には、Si含有ガス及びNH3ガスのプラズマを供給して反応生成物の成膜処理を行っている間はプラズマ発生部82への高周波電力の供給を停止する。そして、積層体の形成後、これらSi含有ガス及びNH3ガスの供給を停止してプラズマ発生部82へ高周波電力を供給する。このようないわば一括改質の場合にも、既述の例と同様の効果が得られる。
【0070】
以上の例では、2つのプラズマ発生部81、82において、反応生成物(Si−N)を生成させるプラズマ処理(窒化処理)及びプラズマ改質処理を夫々行う例を挙げたが、例えば主プラズマ発生部81では、反応生成物を生成させるプラズマ処理と共にプラズマエッチング処理を行うようにしても良い。このようなプラズマエッチング処理を行う例について、成膜装置及びウエハWの構成について以下に説明する。
【0071】
始めに、成膜装置について説明すると、この成膜装置の第1の処理ガスノズル31には、図15に示すように、第1の処理ガスとして例えばBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン:SiH2(NH−C(CH3)3)2)ガスの貯留源が接続されている。主プラズマ発生用ガスノズル32には、C(炭素)とF(フッ素)とを含むエッチングガス例えばCHF3ガスと、第2の処理ガスであるO2ガスと、主プラズマ発生用ガスであるArガスとの貯留源が接続されている。具体的には、主プラズマ発生用ガスノズル32の上流側は、図示を省略するが、例えば3本の分岐管に分岐して、各々の分岐管がバルブ及び流量調整部を介して前記各ガスの貯留源に個別に接続されている。補助プラズマ発生用ガスノズル34には、補助プラズマ発生用ガスとして、O2ガス、Arガス及びH2ガスの貯留源が接続されている。
続いてウエハWの構成について説明すると、ウエハWには既述の例と同様に凹部130が形成されており、この凹部130は、図16の左側に示すように、下端側の開口寸法よりも上端側の開口寸法の方が小さくなる逆テーパー形状となっている。尚、図16は、ウエハWの一部を模式的に描画しており、凹部130の逆テーパー形状については誇張している。
【0072】
このウエハWに対して、図15の成膜装置において既述の例と同様に成膜処理を行うと、図16の左側から2番目に示すように、第1の処理領域P1において、凹部130の内部を含むウエハWの表面に、BTBASガスの成分が吸着する。そして、第2の処理領域P2では、アンテナ83の磁界によりArガスがプラズマ化され、このArガスのプラズマにより既述のエッチングガス及びO2ガスが各々プラズマ化される。これらエッチングガスのプラズマ及びO2ガスのプラズマのうち例えばO2ガスのプラズマ(ラジカルやイオン)は、ウエハWの上面側の領域から凹部130内の下端部の領域までに亘って拡散して、これら領域におけるBTBASガスの成分を酸化して反応生成物(シリコン酸化物)を生成させる。
【0073】
一方、エッチングガスのプラズマは、O2ガスのプラズマ(ラジカル)よりも寿命が短いので、活性を保ったまま凹部130内の下端部までは拡散できず、従ってウエハWの上面側及び凹部130内の上端部付近に接触する。このエッチングガスのプラズマにウエハWが接触すると、図16の中央部に示すように、ウエハW上の反応生成物がエッチングされて、例えばガスとして未反応の処理ガスや副生成物などのガスなどと共に排気される。従って、凹部130の内部に成膜される反応生成物は、下端側よりも上端側の方が薄くなるので、いわば当該凹部130の逆テーパーの程度が僅かに緩和されて、凹部130の内壁のテーパー角度が垂直に近くなる。この時、ウエハW上の反応生成物には、第1の処理ガスやエッチングガスに含まれる不純物(水分やF)が含まれている場合がある。
【0074】
続いて、第3の処理領域P3では、図16の右側から2番目に示すように、ウエハWに形成された反応生成物から不純物がHFガスなどのガスとして除去されて改質処理が行われる。そして、回転テーブル2の回転により、このようなBTBASガスの吸着と、BTBASガスの酸化及びエッチングと、反応生成物の改質処理と、を多数回に亘って繰り返すと、凹部130の逆テーパー形状がより一層直角に近くなりながら、あるいは更にテーパー形状(上端部の開口寸法が下端部の開口寸法よりも広い形状)になりながら、不純物が除去(低減)されつつ凹部130内に反応生成物が順次埋め込まれていく。従って、凹部130への薄膜の埋め込みが完了すると、図16の右側に示すように、当該凹部130内にはボイドなどの空隙が生成せず、またBTBASガス中の不純物に加えてエッチングガス中の不純物についても濃度が極めて低い薄膜が得られる。
【0075】
ここで、このような逆テーパー形状の凹部130に対して例えば通常のCVD法により薄膜を埋め込もうとすると、当該凹部130の形状に倣って反応生成物が積層される時には、凹部130の内部に薄膜が充填される前に、当該凹部130の上端部が塞がってしまう場合がある。この場合には、凹部130内に空隙が形成されるので、例えばデバイスの電気的抵抗が設計値よりも大きくなってしまう。一方、このようなCVD法にプラズマエッチングを組み合わせると、具体的にはCVD法による成膜工程と、凹部130内の上端部側のプラズマエッチング工程と、を繰り返して凹部130に薄膜を埋め込むと、プラズマエッチング工程では例えばFが不純物として薄膜に混入してしまうおそれがある。そのため、凹部130に薄膜を埋め込んだ後にアニール工程などを行っても、この凹部130の内部に入り込んだ不純物については除去することが極めて困難であり、従って例えば設計通りの電気的特性が得られなくなってしまう。
【0076】
そこで、本発明では、反応生成物の形成工程と、プラズマエッチング工程と、改質工程と、をこの順番で多数回に亘って行うことにより、反応生成物を形成する度にエッチング処理を行うと共にこれら反応生成物の形成工程及びエッチング工程において反応生成物に取り込まれた不純物を除去している。そのため、膜厚方向に亘って不純物濃度の極めて低い薄膜を形成でき、また凹部130の逆テーパー形状が徐々に緩和されるように(垂直に近づくように)エッチングを行っていることから、凹部130内にボイドなどの空隙が生じることを抑制できる。
【0077】
ここで、補助プラズマ発生用ガスノズル32から供給されるガスにはO2ガスが含まれていることから、主プラズマ発生用ガスノズル32からはO2ガスを供給せずに、第3の処理領域P3において反応生成物の生成(ウエハW上のBTBASガスの酸化)と改質とを行うようにしても良い。この場合には、第2の処理領域P2では、既述のCHF3ガスからなるエッチングガスに代えて、あるいはこのエッチングガスと共にSiをエッチングするエッチングガス例えばBr(臭素)系のガスが用いられて、プラズマエッチング処理が行われる。また、第2の処理領域P2及び第3の処理領域P3において夫々プラズマエッチング処理だけ及びプラズマ改質処理だけを行う場合には、当該第2の処理領域P2と第3の処理領域P3との間に第3のプラズマ発生部(図示せず)を設けて、この第3のプラズマ発生部においてBTBASガスの酸化処理を行っても良い。
【0078】
更に、以上述べた成膜装置では、各々のプラズマ発生部81、82において互いに異なる種別のプラズマ処理を行うようにしたが、互いに同じ種別のプラズマ処理を行っても良い。具体的には、シリコン酸化膜を成膜する時に、プラズマ発生用ガスノズル32、34から各々O2ガス及びArガスを供給し、処理領域P2、P3において各々BTBASガスを酸化すると共に反応生成物中に含まれる不純物を除去するようにしても良い。
【0079】
続いて、以上説明した成膜装置におけるプラズマ発生部81、82の他の例について列挙する。以下の他の例については、これらプラズマ発生部81、82の一方だけあるいは双方について適用しても良い。図17及び図18は、アンテナ83を一つだけ設けると共に、当該アンテナ83について、平面で見た時に概略方形(概略8角形)となるように配置した例を示している。この例においても、スリット97は、開口部98に近接する領域から当該開口部98から離れた領域に向かうにつれて、幅寸法d1が広がるように形成されているが図示を省略している。
【0080】
図19は、図17及び図18のように2つのアンテナ83a、83bを概略方形となるように配置すると共に、第1のアンテナ83aについては既述の図8と同様に回転テーブル2の半径方向に亘って形成し、一方第2のアンテナ83bについては回転テーブル2の外周部側に配置している。尚、図19は、天板11を上方側から見た様子を示しており、アンテナ83a、83bを模式的に描画している。以下の図20についても同様である。
【0081】
図20は、2つのアンテナ83a、83bを図17及び図18のように概略方形となるように配置すると共に、第1のアンテナ83aについては回転テーブル2の半径方向内側に配置し、第2のアンテナ83bについては前記半径方向外側に配置した例を示している。この例では、これらアンテナ83a、83bは、互いに同じ面積となるように各々巻回されている。
図21は、既述のファラデーシールド95について、筐体90の内部に埋設した例を示している。具体的には、プラズマ発生部81(82)の下方における筐体90は、上端面が着脱自在に構成されており、この上端面を取り外した部位にファラデーシールド95を収納できるように構成されている。即ち、ファラデーシールド95は、プラズマ発生部81(82)とウエハWとの間に設けられていれば良い。
【0082】
図22は、プラズマ発生部81(82)及びファラデーシールド95を筐体90の内部に収納することに代えて、これらプラズマ発生部81(82)及びファラデーシールド95を天板11の上方に配置した例を示している。この例では、プラズマ発生部81(82)の下方における天板11は、他の部位における天板11とは別部材として例えば石英などの誘電体により構成されており、下面周縁部が既述のように周方向に亘ってO−リング11dにより前記他の部位における天板11と気密に接続されている。
【0083】
図23は、アンテナ83を鉛直軸方向に巻回することに代えて、水平軸方向に巻回した例を示している。具体的には、このアンテナ83は、回転テーブル2の回転方向に沿って円弧状に伸びる軸の周りに巻回されている。尚、図23はアンテナ83及びファラデーシールド95以外については省略している。
【0084】
ここで、アンテナ83としては、真空容器1の内部領域から気密に区画された領域(筐体90の内部あるいは天板11上)に配置したが、真空容器1の内部領域に配置しても良い。具体的には、例えば天板11の下面よりも僅かに下方側にアンテナ83を配置しても良い。この場合には、プラズマによりアンテナ83がエッチングされないように、当該アンテナ83は、例えば石英などの誘電体により表面がコーティングされる。また、この場合においてファラデーシールド95は、同様にプラズマによりエッチングされないように、アンテナ83とウエハWとの間において石英などの誘電体により表面がコーティングされる。更に、アンテナ83としては、コイル状に巻回した構成以外にも、基端側が例えば真空容器1の外側から当該真空容器1内に気密に挿入されると共に、他端側が中心部領域Cに向かって直線状に伸びる構成であっても良い。
【0085】
また、以上の各例では、プラズマ発生部81(82)として、アンテナ83を巻回して誘導結合型のプラズマ(ICP:Inductively coupled plasma)を発生させたが、プラズマ発生部81、82の一方において、容量結合型のプラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)を発生させるようにしても良い。具体的には、図24〜図26に示すように、プラズマ発生用ガスノズル32(34)に対して回転テーブル2の回転方向下流側に、一対の電極141、142が平行電極として設けられており、これら電極141、142は、支持部143を介して真空容器1の側壁から気密に挿入されている。また、電極141、142には、支持部143を介して整合器84及び高周波電源85が接続されている。尚、これら電極141、142の表面には、プラズマから当該電極141、142を保護するために、例えば石英などの保護被膜が形成されている。
【0086】
これら電極141、142及びプラズマ発生用ガスノズル32(34)の上方側には、プラズマの発生する領域(処理領域P2(P3))へのN2ガスなどの流入を抑えるために、概略ハット型のカバー部材144が設けられている。このカバー部材144は、電極141、142及びノズル32(34)を覆うように箱型に形成されると共に下面側が開口するカバー本体145と、このカバー本体145における回転テーブル2の回転方向上流側、下流側及び中心部領域Cの下端面から水平方向に向かって各々伸び出す気流規制面146とを備えている。図24は、カバー部材144を取り外した状態、図25はカバー部材144を取り付けた状態を示している。
このようなプラズマ発生部81(82)においても、気流規制面146により処理領域P2(P3)へのガスの進入を抑えながら、電極141、142間においてプラズマ発生用ガスがプラズマ化されてプラズマ処理が行われる。
【0087】
以上の各例において、ファラデーシールド95を構成する材質としては、磁界をできるだけ透過するように、比透磁率のなるべく低い材質が好ましく、具体的には、銀(Ag)、アルミニウム(Al)などを用いても良い。また、ファラデーシールド95のスリット97の数量としては、少なすぎると真空容器1内に到達する磁界が小さくなり、一方多すぎるとファラデーシールド95を製造しにくくなることから、例えばアンテナ83の長さ1mに対して100〜500本程度であることが好ましい。更に、プラズマ発生用ガスノズル34のガス吐出孔33について、回転テーブル2の回転方向上流側を向くように形成したが、このガス吐出孔33を下方側あるいは下流側を向くように配置しても良い。
【0088】
筐体90を構成する材質としては、石英に代えて、アルミナ(Al2O3)、イットリアなどの耐プラズマエッチング材を用いても良いし、例えばパイレックスガラス(コーニング社の耐熱ガラス、商標)などの表面にこれら耐プラズマエッチング材をコーティングしても良い。即ち、筐体90はプラズマに対する耐性が高く、且つ磁界を透過する材質(誘電体)により構成すれば良い。
また、ファラデーシールド95の上方に絶縁板94を配置して、当該ファラデーシールド95とアンテナ83との絶縁を取るようにしたが、この絶縁板94を配置せずに、例えばアンテナ83を石英などの絶縁材により被覆するようにしても良い。
【符号の説明】
【0089】
W ウエハ
P1、P2、P3 処理領域
1 真空容器
2 回転テーブル
31 処理ガスノズル
32、34 プラズマ発生用ガスノズル
81、82 プラズマ発生部
83,83a、83b アンテナ
95 ファラデーシールド
97 スリット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内にて第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給するサイクルを複数回行って基板に成膜処理を行う成膜装置において、
基板を載置する基板載置領域がその一面側に形成され、前記真空容器内にて前記基板載置領域を公転させるための回転テーブルと、
この回転テーブルの周方向に互いに分離領域を介して離間した領域に夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスを供給する第1の処理ガス供給部及び第2の処理ガス供給部と、
前記真空容器内に主プラズマ発生用ガス及び補助プラズマ発生用ガスを夫々供給するための主プラズマ発生ガス供給部及び補助プラズマ発生ガス供給部と、
前記回転テーブルの周方向に互いに離間するように設けられ、主プラズマ発生用ガス及び補助プラズマ発生用ガスを夫々プラズマ化するための主プラズマ発生部及び補助プラズマ発生部と、を備え、
前記主プラズマ発生部は、
前記真空容器内で主プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化するように、前記回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナと、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止すると共に磁界を基板側に通過させるために、前記アンテナと各々直交する方向に伸びるスリットが当該アンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドと、を有することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部は、処理種別の互いに異なるプラズマ処理を行うためのものであることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記補助プラズマ発生部は、
前記真空容器内で補助プラズマ用発生ガスを誘導結合によりプラズマ化するように、前記回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナと、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止すると共に磁界を基板側に通過させるために、前記アンテナと各々直交する方向に伸びるスリットが当該アンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドと、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記主プラズマ発生部は、第1の処理ガス及び第2の処理ガスのうち基板上に吸着した一方の処理ガスと反応するように他方の処理ガスをプラズマ化するためのものであり、
前記補助プラズマ発生部は、基板上に吸着した前記一方の処理ガスの成分と、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの反応により基板上に生成した反応生成物とのいずれか一方の改質を行うためのものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項5】
前記主プラズマ発生部は、基板上に生成した反応生成物をエッチングするプラズマ処理を行うためのものであり、
前記補助プラズマ発生部は、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの反応により基板上に生成した反応生成物の改質を行うためのものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項6】
基板の表面には、上端側の開口寸法よりも下端側の開口寸法の方が広くなる逆テーパー状の凹部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記アンテナ及び前記ファラデーシールドは、プラズマ処理を行う領域から誘電体により気密に区画されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項8】
真空容器内にて第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給するサイクルを複数回行って基板に成膜処理を行う成膜方法において、
真空容器内に設けられた回転テーブルの一面側の基板載置領域に基板を載置すると共に、この基板載置領域を公転させる工程と、
次いで、前記回転テーブルの周方向に互いに分離領域を介して離間した領域に夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスを供給する工程と、
前記真空容器内に主プラズマ発生用ガス及び補助プラズマ発生用ガスを各々供給する工程と、
主プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化するために、前記回転テーブルの一面側に対向して設けられた主プラズマ発生部のアンテナに対して高周波電力を供給する工程と、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナと各々直交する方向に伸びるスリットが当該アンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドにより、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止すると共に磁界を基板側に通過させる工程と、
前記主プラズマ発生部に対して回転テーブルの周方向に離間した位置に設けられた補助プラズマ発生部において、補助プラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程と、を含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項9】
前記補助プラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程は、
補助プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化するために、前記回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナに対して高周波電力を供給する工程と、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナと各々直交する方向に伸びるスリットが当該アンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドにより、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止すると共に磁界を基板側に通過させる工程と、を含むことを特徴とする請求項8に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記主プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化する工程は、第1の処理ガス及び第2の処理ガスのうち基板上に吸着した一方の処理ガスと反応するように他方の処理ガスをプラズマ化する工程であり、
前記補助プラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程は、基板上に吸着した前記一方の処理ガスの成分と、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの反応により基板上に生成した反応生成物とのいずれか一方の改質を行う工程であることを特徴とする請求項8または9に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記主プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化する工程は、基板上に生成した反応生成物をエッチングする工程を含み、
前記補助プラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程は、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの反応により基板上に生成した反応生成物の改質を行う工程であることを特徴とする請求項8または9に記載の成膜方法。
【請求項12】
真空容器内にて複数種類の処理ガスを順番に基板に供給するサイクルを複数回繰り返して薄膜を形成する成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、請求項8ないし11のいずれか一つに記載の成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【請求項1】
真空容器内にて第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給するサイクルを複数回行って基板に成膜処理を行う成膜装置において、
基板を載置する基板載置領域がその一面側に形成され、前記真空容器内にて前記基板載置領域を公転させるための回転テーブルと、
この回転テーブルの周方向に互いに分離領域を介して離間した領域に夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスを供給する第1の処理ガス供給部及び第2の処理ガス供給部と、
前記真空容器内に主プラズマ発生用ガス及び補助プラズマ発生用ガスを夫々供給するための主プラズマ発生ガス供給部及び補助プラズマ発生ガス供給部と、
前記回転テーブルの周方向に互いに離間するように設けられ、主プラズマ発生用ガス及び補助プラズマ発生用ガスを夫々プラズマ化するための主プラズマ発生部及び補助プラズマ発生部と、を備え、
前記主プラズマ発生部は、
前記真空容器内で主プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化するように、前記回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナと、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止すると共に磁界を基板側に通過させるために、前記アンテナと各々直交する方向に伸びるスリットが当該アンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドと、を有することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記主プラズマ発生部及び前記補助プラズマ発生部は、処理種別の互いに異なるプラズマ処理を行うためのものであることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記補助プラズマ発生部は、
前記真空容器内で補助プラズマ用発生ガスを誘導結合によりプラズマ化するように、前記回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナと、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止すると共に磁界を基板側に通過させるために、前記アンテナと各々直交する方向に伸びるスリットが当該アンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドと、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記主プラズマ発生部は、第1の処理ガス及び第2の処理ガスのうち基板上に吸着した一方の処理ガスと反応するように他方の処理ガスをプラズマ化するためのものであり、
前記補助プラズマ発生部は、基板上に吸着した前記一方の処理ガスの成分と、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの反応により基板上に生成した反応生成物とのいずれか一方の改質を行うためのものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項5】
前記主プラズマ発生部は、基板上に生成した反応生成物をエッチングするプラズマ処理を行うためのものであり、
前記補助プラズマ発生部は、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの反応により基板上に生成した反応生成物の改質を行うためのものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項6】
基板の表面には、上端側の開口寸法よりも下端側の開口寸法の方が広くなる逆テーパー状の凹部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記アンテナ及び前記ファラデーシールドは、プラズマ処理を行う領域から誘電体により気密に区画されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項8】
真空容器内にて第1の処理ガス及び第2の処理ガスを順番に供給するサイクルを複数回行って基板に成膜処理を行う成膜方法において、
真空容器内に設けられた回転テーブルの一面側の基板載置領域に基板を載置すると共に、この基板載置領域を公転させる工程と、
次いで、前記回転テーブルの周方向に互いに分離領域を介して離間した領域に夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスを供給する工程と、
前記真空容器内に主プラズマ発生用ガス及び補助プラズマ発生用ガスを各々供給する工程と、
主プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化するために、前記回転テーブルの一面側に対向して設けられた主プラズマ発生部のアンテナに対して高周波電力を供給する工程と、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナと各々直交する方向に伸びるスリットが当該アンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドにより、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止すると共に磁界を基板側に通過させる工程と、
前記主プラズマ発生部に対して回転テーブルの周方向に離間した位置に設けられた補助プラズマ発生部において、補助プラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程と、を含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項9】
前記補助プラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程は、
補助プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化するために、前記回転テーブルの一面側に対向して設けられたアンテナに対して高周波電力を供給する工程と、
前記アンテナとプラズマ処理を行う領域との間に介在して設けられ、前記アンテナと各々直交する方向に伸びるスリットが当該アンテナの伸びる方向に多数配列された導電性の板状体からなる、接地されたファラデーシールドにより、前記アンテナの周囲に発生した電磁界における電界成分の通過を阻止すると共に磁界を基板側に通過させる工程と、を含むことを特徴とする請求項8に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記主プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化する工程は、第1の処理ガス及び第2の処理ガスのうち基板上に吸着した一方の処理ガスと反応するように他方の処理ガスをプラズマ化する工程であり、
前記補助プラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程は、基板上に吸着した前記一方の処理ガスの成分と、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの反応により基板上に生成した反応生成物とのいずれか一方の改質を行う工程であることを特徴とする請求項8または9に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記主プラズマ発生用ガスを誘導結合によりプラズマ化する工程は、基板上に生成した反応生成物をエッチングする工程を含み、
前記補助プラズマ発生用ガスをプラズマ化する工程は、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの反応により基板上に生成した反応生成物の改質を行う工程であることを特徴とする請求項8または9に記載の成膜方法。
【請求項12】
真空容器内にて複数種類の処理ガスを順番に基板に供給するサイクルを複数回繰り返して薄膜を形成する成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、請求項8ないし11のいずれか一つに記載の成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2013−55243(P2013−55243A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193046(P2011−193046)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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