説明

振動子の作製方法、振動子作製用マスク、および振動子用パッケージ

【課題】振動子の発振周波数不安定を抑制し、安定的に発振させる事ができる振動子の作製方法、振動子作製用マスク、及び振動子用パッケージを提供する。
【解決手段】振動子作製方法は、貫通孔14a、14bが設けられたマスク10を基台に載置した状態で、貫通孔内に第1の開口から充填された接着剤と接する貫通孔周りのマスク10の側壁のうち、第1の開口を含むマスク表側側壁領域を除き、第1の開口と反対側の第2の開口を含むマスク裏側側壁領域を加熱素子22a、22bにて加熱する事で、接着剤の側壁部を部分的に硬化させ、マスク10を基台から除去後、基台に設けられた接着剤を用いて振動板を基台に接着させる事により振動子を作製する。振動子作製用マスクは、上記加熱素子を有するマスクで、振動子用パッケージは、振動板を接着するための基台上に、振動板を接着するための接着剤の塗布領域を加熱する加熱素子を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動子を作製する方法、振動子を作製する際に用いるマスクおよび振動子を収納するパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、発振器に用いられる水晶振動板を水晶発振器のセラミックパッケージに搭載するために、導電性接着剤が用いられる。このとき、導電性接着剤をセラミックパッケージ内の基台に塗布する際、ディスペンサが用いられる。
【0003】
図8(a),(b)は、発振器の構成例を示す図である。
図8(a)に示されるように、発振器100は、セラミックパッケージ112と、振動板114と、発振回路、制御回路および出力バッファ回路等を含む回路116と、を備える。
振動板114および回路116は、セラミックパッケージ112内に設けられている。
振動板114の表面には、一対の励振電極118が振動板114を挟むように形成されている。励振電極118から振動板114の端部に延びる接続線120が設けられ、端部において、セラミックパッケージ112の基台112a上に設けられた電極パッド122と接続されている。この電極パッド122は、図示されない接続線により回路116と接続されている。
振動板114上の電極118は、端子122と電気的接続をするために、導電性接着剤124により基台112aと接合されている。
【0004】
図8(b)に示す発振器100では、振動板114に設けられた振動板114から接続線が互いに反対方向に延びており、これらの接続線は、セラミックパッケージ112の両側に設けられた基台112a,112b上の端子と接続されている。このとき、振動板114は、基台112a,112bと導電性接着剤により接合されている。
【0005】
図9(a)〜(d)は、図8(a)に示す発振器100を作製する際に用いる導電性接着剤(以降、接着剤という)の塗布を説明する図である。
図9(a)〜(c)に示すように、導電性接着剤(以下、接着剤という)124の塗布では、接着剤124を、電極パッド122が設けられている位置にディスペンサ126を用いて所定量と塗布する。しかし、図9(d)に示されるように、接着剤124の塗布位置がわずかにずれ、あるいは接着剤124の塗布領域が広がって、接着剤124が電極パッド122からはみ出し、振動板114の接着剤による接合状態が微妙に変化する場合がある。このような場合、発振器100の発振周波数が、時間が経つにつれて不安定になり、あるいは、発振しない場合がある。このような問題は、図8(b)に示す発振器100においても同様に起こり得る。
【0006】
このような状況下、印刷版を貫通する開口部に印刷材を充填し、該印刷材を被印刷体に印刷することによってパターンを形成するとき、印刷材を硬化させた後に印刷版を被印刷体から離脱させるパターン形成方法が知られている。印刷材の硬化は、半硬化であってもよい、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−233560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記パターン形成方法では、印刷版は、印刷材が硬化した後離脱されるので、印刷材が未硬化の状態で流れ出して位置ずれすることは少なくなる。しかし、この方法を、上述の接着剤の塗布に用いた場合、振動板114が基台112a,112bと発振周波数に影響を与えないように接合できない場合がある。
【0009】
そこで、本発明は、従来と異なる方法により、発振周波数の不安定を抑制し、安定的に発振することができる振動子の作製方法、振動子作製用マスク、および振動子用パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、振動子を作製する方法であって、
貫通孔が設けられたマスクを基台に載置した状態で、前記貫通孔の第1の開口から接着剤を前記貫通孔内に充填し、
前記孔貫通内に充填した接着剤と接する前記貫通孔周りの側壁のうち、前記第1の開口の側にあるマスク表側側壁領域を除き、前記第1の開口と反対側の第2の開口の側にあるマスク裏側側壁領域を、第1加熱素子を用いて加熱することにより、接着剤の側壁部を部分的に硬化させ、
前記マスクを前記基台から取り除いた後、前記基台に設けられた接着剤を用いて振動板を前記基台に接着させる、ことにより振動子を作製することを特徴とする振動子の作製方法である。
【0011】
本発明の他の一態様は、振動子を作製するために用いるマスクであって、
接着剤が第1の開口から内部に充填される貫通孔と、
前記貫通孔の側壁のうち、前記第1の開口の側にあるマスク表側側壁領域を除き、前記第1の開口と反対側の第2の開口の側にあるマスク裏側側壁領域を加熱する第1加熱素子と、が設けられていることを特徴とする振動子作製用マスクである。
【0012】
さらに、本発明の一態様は、振動板を収容する振動子用パッケージであって、
振動板を接着するための基台と、
前記基台に前記振動板を接着するために接着剤を塗布する、前記基台の少なくとも一部分の領域を加熱する第2加熱素子と、を有することを特徴とする振動子用パッケージである。
【発明の効果】
【0013】
上述の態様の振動子の作製方法、振動子作製用マスク、および振動子用パッケージによれば、発振周波数の不安定を抑制し、安定的に発振することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)〜(c)は、本実施形態の振動子作製用マスクの例を示す図である。
【図2】(a),(b)は、本実施形態の振動子用パッケージの例を示す図である。
【図3】(a)〜(c)は、本実施形態の振動子の作製方法の前半のフローを説明する図である。
【図4】(a)〜(e)は、本実施形態の振動子の作製方法の後半のフローを説明する図である。
【図5】(a),(b)は、接着剤の硬化を説明する図である。
【図6】本実施形態に用いる接着剤の硬化の時間依存性を示す図である。
【図7】他の一実施形態である振動子作製用マスクおよび振動子用パッケージを説明する図である。
【図8】(a),(b)は従来の発振器の構成を示す図である。
【図9】(a)〜(d)は、従来の接着剤の塗布を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の振動子の作製方法、振動子作製用マスク、および振動子用パッケージについて説明する。
【0016】
(振動子用マスク)
図1(a)は、本実施形態の振動子作製用マスク(以降、マスクという)10の概略斜視図である。図1(b)は、マスク10に設けられる貫通孔周囲のマスク10の断面図であり、図1(c)は、マスク10に設けられる発熱ヒータを説明する図である。
【0017】
マスク10は、振動板をセラミック製のパッケージ内の所定位置に接合するときに用いる熱硬化性接着剤(以降、接着剤という)の塗布に用いる、セラミック材製のマスクである。すなわち、マスク10は、接着剤を所定の位置に塗布するとき所定の形状で部分的に硬化させるために用いられる。
【0018】
マスク10は、一定の厚さの板材のうち、一方の端部の厚さが薄くなった段差形状を成し、厚さの薄い部分12に、2つの貫通孔14a,14bが設けられている。貫通孔14a,14bのぞれぞれは、後述するように、導電性の熱硬化型接着剤を図1(b)に示すマスク10の表側の開口16a,16bからスキージを用いて貫通孔14a,14bの孔形状に合わせて充填するための孔である。ここで、マスク10が後述するパッケージの基台と接触するとき、マスク10の両面のうち、この基台と接触する側をマスク裏側といい、パッケージの基台と接触しない側をマスク表側という。
以降、貫通孔14a,14bのうち、貫通孔14a及びその周辺の構成の説明をするが、貫通孔14bについても同様である。貫通孔14bの周辺の構成の符号については括弧を用いて記す。
【0019】
図1(b)に示すように、開口16a(16b)の接着剤と接触する側壁部18a(18b)には、マスク10の側壁領域を加熱する加熱ヒータ22a(22b)が設けられている。加熱ヒータ22a(22b)は、図1(c)に示されるように、貫通孔14a(14b)の周囲を取り巻くように設けられている。加熱ヒータ22a(22b)は、ニクロム線等の抵抗の高い線材が用いられる。
加熱ヒータ22a(22b)は、通電用端子24,26が、マスク10の側面に設けられている。振動板をパッケージ内の基台に接着するために、接着剤を塗布する際、この側壁の通電用端子24,26に電源が接続され、加熱ヒータ22a(22b)は通電され加熱される。
【0020】
加熱ヒータ22a(22b)による加熱は、貫通孔14a,14b内に接着剤が充填された状態で、接着剤を部分的に硬化させるために行われる。
加熱ヒータ22a(22b)は、図1(b)に示されるように、貫通孔14a(14b)におけるマスク10の側壁領域のうち、開口16a(16b)の側にあるマスク表側側壁領域を除き、開口16a(16b)と反対側の開口20a(20b)の側にあるマスク裏側側壁領域に設けられている。マスク表側側壁領域に加熱ヒータ22a(22b)が設けられないのは、接着剤の硬化がマスク表側に及ぶと、マスク表側にある接着剤が振動板と接着しなくなるからである。
【0021】
一方、マスク裏側側壁領域と接触する接着剤を、加熱ヒータ22a(22b)を用いて硬化させるのは、マスク10が取り除かれた後、振動板が接着剤上に載せられて接着剤が硬化するまでの間にマスク裏側側壁領域近傍の接着剤が流れ出して、振動板と基台との接着剤の位置が予め設定された位置からずれることを抑制するためである。加熱温度は、接着剤が硬化する温度であり、例えば150℃である。接着剤の熱伝導により、マスク表側領域の接着剤が硬化されないように、加熱時間が制御される。
【0022】
マスク10の厚さの薄い部分12における厚さをt1(mm)とし、加熱ヒータ22a(22b)の厚さ、すなわち、開口20a(20b)の位置から、開口16a(16b)に向かって延びる加熱ヒータ22a(22b)の端部の位置mかでの長さをt2(mm)としたとき、t2/t1は、例えば0.8〜0.9であり、振動板と接着する部分の高さはt1の0.1〜0.2倍である。マスク10の部分12の厚さt1は、例えば1mmであり、貫通孔14a,14bの孔サイズは、例えば直径2mmである。
なお、マスク10の貫通孔14a,14bの位置は、振動板を接着するパッケージの基台上に設けられた電極パッドの位置に合わせるように定められている。
【0023】
(振動子用パッケージ)
図2(a)は、振動子用パッケージ(以降、パッケージという)30の平面図であり、図2(b)は、パッケージ30の、図2(a)に示されるA−A’矢視断面図である。
パッケージ30は、底部32と、側壁部34と、基台36と、を有する、セラミック製パッケージである。パッケージ30には、振動板が収納され、パッケージ30の上部に図示されないリッドが被されて、振動板はパッケージ30内に密閉される。
【0024】
基台36は、底部32から段差形状をなすように、パッケージ30内の内部空間の端から突出した部分である。この基台36の表面には、振動板の電極と接続される電極パッド38a,38bが設けられ、電極パッド38a,38bそれぞれは、導線42a,42bを介して、パッケージパッド40a,40bと接続されている。パッケージパッド40a,40bは、図示されないプリント配線板あるいは基板に設けられたパッドと接続されて、プリント配線板あるいは基板に振動子として実装される。
基台36の段差形状に対応して、マスク10の段差形状は形成されているため、マスク10を用いて接着剤を基台36上に塗布する際、マスク10は、パッケージ30の側壁部34で囲まれた領域にぴったりと位置あわせされて載置される。このとき、マスク10の貫通孔14a,14bは、電極パッド38a,38bの位置に合うように設けられている。
【0025】
基台36の表面には、電極パッド38a,38bを囲むように加熱ヒータ44a,44bが設けられる。加熱ヒータ44a,44bは、導線46a,46bを介して、パッケージ30の側壁部34の外側部分に通電端子48,50が設けられ、電源を用いて加熱ヒータ44a,44bを加熱することができる。加熱ヒータ44a,44bは、上述のマスク10を用いて電極パッド38a,38bに接着剤を塗布して部分的に硬化させるとき、硬化のために通電加熱される。加熱ヒータ44a,44bの加熱により、電極パッド38a,38bに接触する接着剤底部が硬化される。加熱温度は、加熱ヒータ22a,22bと同様に、接着剤が硬化する温度であり、例えば150℃である。加熱ヒータ44a,44bの加熱時間により接着剤の硬化は制御される。
【0026】
(振動子の作製方法)
図3(a)〜(c)は、振動子の作製方法の前半部の処理の流れを説明する図である。図4(a)〜(e)は、振動子の作製方法の後半部の処理の流れを説明する図である。
【0027】
まず、図4(a)に示されるように、上述したマスク10とパッケージ30とが用意される。マスク10の段差形状とパッケージ30の基台36の段差形状が対応しているので、マスク10をパッケージ30の所定の位置に載置することができる。このとき、マスク10の貫通孔14a,14bの位置は、電極パッド38a,38の位置に合う。
【0028】
この状態で、図4(b)に示されるように、マスク10の側面に設けられた接続端子24,26を介して、加熱ヒータ22a,22bは電源51と接続される。一方、パッケージ30の側壁部34に設けられた通電端子48,50を介して、加熱ヒータ44a,44bは電源52と接続される。
次に、図4(c)に示されるように、図4(b)に示す状態で、ディスペンサ54を用いて、接着剤56をマスク10の貫通孔14a,14b内に所定量塗布する。ディスペンサ54は、スクリュー吐出方式あるいはエアー吐出方式等が用いられる。
【0029】
次に、図4(a)に示されるように、スキージ58を用いて、マスク10の貫通孔14a,14b内に接着剤56を充填するとともに、余分な接着剤56を除去する。この状態で、電源51,52を用いてマスク10の加熱ヒータ22a,22bおよびパッケージ30の加熱ヒータ44a,44bを通電して、貫通孔14a,14b内の接着剤56を加熱する。
【0030】
図5(a)に示すように、加熱ヒータ22a,22bおよび加熱ヒータ44a,44bを用いて加熱することにより、貫通孔14a,14b内の接着剤56の底部周辺と下部側壁を硬化することができ(図5(a)中の黒領域)、それ以外の部分は未硬化状態に維持することができる。なお、加熱ヒータ44a,44bが設けられない、あるいは加熱ヒータ44a,44bによる加熱をしない場合、図5(b)に示すように、接着剤56の底部周辺の硬化が十分に行われないため、マスク10をパッケージ30から取り除いたとき、接着剤56の底部から未硬化状態の接着剤56が流れ出し、この後に行うパッケージへの振動板の接着において、接着部分が広がる場合がある。このため、図5(a)に示すように、パッケージ30aの加熱ヒータ44a,44bを用いて貫通孔14a,14b内の接着剤56の下部側壁部分および底部周辺を加熱して硬化させることが好ましい。
本実施形態では、加熱ヒータ44a,44bにより接着剤56の底部周辺が加熱されるが、底部全体が加熱されるように加熱ヒータ44a,44bの加熱面を設けてもよい。
【0031】
図6は、接着剤56として、エポキシ樹脂に銀を含有させた導電性接着剤を用いたときの熱硬化の時間依存性の例を示すグラフである。加熱温度は150℃である。図6から判るように、30分で100%の硬化、すなわち、接着剤56全体が硬化する。一方、約10分で硬化の程度は33%程度となり、この時点で接着剤56の下部側壁部分および底部周辺のみが硬化する。接着剤56の下側側壁部分とは、マスク10の加熱ヒータ22a,22bが設けられるマスク裏側側壁領域に接する部分をいう。
このように、加熱ヒータ22a,22bおよび加熱ヒータ44a,44bは、加熱時間を調整することにより、接着剤56の下部側壁部分および底部周辺を加熱して硬化させることができる。
【0032】
次に、マスク10がパッケージ30から取り除かれる。このとき、接着剤56の下部側壁部分および底部周辺は硬化されているので、接着剤56が型崩れしない。接着剤56の上部は未硬化状態であるが、硬化した下部側壁部分および底部周辺に支えられて流動しない。この状態で、振動板60が接着剤56を介してパッケージ30の基台36と接合される。このとき、振動板60を励振させるために、振動板60の両主面に設けられた一対の電極(図示されない)に接続された電極パッドは、基台36に設けられた電極パッド38a,38bと、導電性の接着剤56を介して接続される。
振動板60が設けられたパッケージ10は、150℃程度の温度雰囲気中に置かれて、図4(d)に示されるように接着剤56は全面的に硬化する。
この後、パッケージ30の上部にリッド62が被されて振動板60が密閉される。
以上のようにして作製された振動子は、パッケージパッド40a,40bと、プリント配線板あるいは基板に設けられたパッドと接続されて実装される。
【0033】
このように、本実施形態では、マスク10の開口20a,20bの側に位置するマスク裏側側壁領域を、加熱ヒータ22,22bを用いて加熱することにより、接着剤56の下部側壁部分を硬化させ、マスク10を基台36から取り除く。この後、基台36に設けられた接着剤56の未硬化状態の上部を用いて振動板60を基台36に接着させる。このため、本実施形態の方法は、振動板60が基台36に接着される接合部分を常に一定の領域とすることができるので、振動子の発振周波数の不安定を抑制し、振動子を安定的に発振させることができる。
【0034】
本実施形態では、加熱ヒータ22a,22bおよび加熱ヒータ44a,44bを、接着剤を加熱する加熱素子としたが、これらの加熱ヒータに代わり、図7に示すように、電磁誘導により誘導加熱する加熱用金属を用いることができる。この場合、マスク10をパッケージ30にセットし、接着剤56を貫通孔14a,14bに充填した状態で、電磁波源70を用いて電磁波を発生させることにより、上記加熱金属を加熱させて接着剤56を部分的に硬化させることができる。
【0035】
上記実施形態は、以下に示す内容を開示する。
【0036】
(付記1)
振動子を作製する方法であって、
貫通孔が設けられたマスクを基台に載置した状態で、前記貫通孔の第1の開口から接着剤を前記貫通孔内に充填し、
前記孔貫通内に充填した接着剤と接する前記貫通孔周りの側壁のうち、前記第1の開口の側にあるマスク表側側壁領域を除き、前記第1の開口と反対側の第2の開口の側にあるマスク裏側側壁領域を、第1加熱素子を用いて加熱することにより、接着剤の側壁部を部分的に硬化させ、
前記マスクを前記基台から取り除いた後、前記基台に設けられた接着剤を用いて振動板を前記基台に接着させる、ことにより振動子を作製することを特徴とする振動子の作製方法。
【0037】
(付記2)
接着剤の側壁部を部分的に硬化させるとき、接着剤が接触する前記基台の領域を、第2加熱素子を用いて加熱することにより、接着剤の底部の少なくとも一部分を硬化させる、付記1に記載の振動子の作製方法。
【0038】
(付記3)
前記第1加熱素子は、前記マスク裏側側壁領域に設けられたヒータ素子である、付記1または2に記載の振動子の作製方法。
【0039】
(付記4)
前記第2加熱素子は、前記基台に接着剤が設けられる領域に設けられたヒータ素子である、付記2に記載の振動子の作製方法。
【0040】
(付記5)
前記第1加熱素子は、前記マスク裏側側壁領域に設けられた、電磁誘導により発熱する金属素子である、付記1または2に記載の振動子の作製方法。
【0041】
(付記6)
前記第2加熱素子は、前記基台に接着剤が設けられる領域に設けられた、電磁誘導により発熱する金属素子である、付記2に記載の振動子の作製方法。
【0042】
(付記7)
振動子を作製するために用いるマスクであって、
接着剤が第1の開口から内部に充填される貫通孔と、
前記貫通孔の側壁のうち、前記第1の開口の側にあるマスク表側側壁領域を除き、前記第1の開口と反対側の第2の開口の側にあるマスク裏側側壁領域を加熱する第1加熱素子と、が設けられていることを特徴とする振動子作製用マスク。
【0043】
(付記8)
前記第1加熱素子は、前記マスク裏側側壁領域に設けられたヒータ素子である、付記7に記載の振動子作製用マスク。
【0044】
(付記9)
前記ヒータ素子の通電用端子は、前記振動子作製用マスクの側面に設けられている、付記8に記載の振動子作製用マスク。
【0045】
(付記10)
振動板を収容する振動子用パッケージであって、
振動板を接着するための基台と、
前記基台に前記振動板を接着するために接着剤を塗布する、前記基台の少なくとも一部分の領域を加熱する第2加熱素子と、を有することを特徴とする振動子用パッケージ。
【0046】
(付記11)
前記第2加熱素子は、前記基台に接着剤が設けられる領域に設けられたヒータ素子である、付記10に記載の振動子用パッケージ。
【0047】
(付記12)
前記ヒータ素子の通電用端子は、前記振動子用パッケージの側壁の外側に設けられている、付記11に記載の振動子用パッケージ。
【0048】
以上、本発明の振動子の作製方法、振動子作製用マスク、および振動子用パッケージについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0049】
10 マスク
12 部分
14a,14b 貫通孔
16a,16b,20a,20b 開口
18a,18b 側壁部
22a,22b,44a,44b 加熱ヒータ
24,26,48,50 通電用端子
30 振動子用パッケージ
32 底部
34 側壁部
36,112a 基台
38a,38b,122 電極パッド
40a,40b パッケージパッド
42a,42b,46a,46b 導線
51,52 電源
54,126 ディスペンサ
56 接着剤
58 スキージ
60,114 振動板
62 リッド
100 発振器
112 セラミックパッケージ
116 回路
118 励振電極
120 接続線
124 導電性接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子を作製する方法であって、
貫通孔が設けられたマスクを基台に載置した状態で、前記貫通孔の第1の開口から接着剤を前記貫通孔内に充填し、
前記孔貫通内に充填した接着剤と接する前記貫通孔周りの側壁のうち、前記第1の開口の側にあるマスク表側側壁領域を除き、前記第1の開口と反対側の第2の開口の側にあるマスク裏側側壁領域を、第1加熱素子を用いて加熱することにより、接着剤の側壁部を部分的に硬化させ、
前記マスクを前記基台から取り除いた後、前記基台に設けられた接着剤を用いて振動板を前記基台に接着させる、ことにより振動子を作製することを特徴とする振動子の作製方法。
【請求項2】
接着剤の側壁部を部分的に硬化させるとき、接着剤が接触する前記基台の領域を、第2加熱素子を用いて加熱することにより、接着剤の底部の少なくとも一部分を硬化させる、請求項1に記載の振動子の作製方法。
【請求項3】
前記第1加熱素子は、前記マスク裏側側壁領域に設けられたヒータ素子である、請求項1または2に記載の振動子の作製方法。
【請求項4】
前記第2加熱素子は、前記基台に接着剤が設けられる領域に設けられたヒータ素子である、請求項2に記載の振動子の作製方法。
【請求項5】
前記第1加熱素子は、前記マスク裏側側壁領域に設けられた、電磁誘導により発熱する金属素子である、請求項1または2に記載の振動子の作製方法。
【請求項6】
前記第2加熱素子は、前記基台に接着剤が設けられる領域に設けられた、電磁誘導により発熱する金属素子である、請求項2に記載の振動子の作製方法。
【請求項7】
振動子を作製するために用いるマスクであって、
接着剤が第1の開口から内部に充填される貫通孔と、
前記貫通孔の側壁のうち、前記第1の開口の側にあるマスク表側側壁領域を除き、前記第1の開口と反対側の第2の開口の側にあるマスク裏側側壁領域を加熱する第1加熱素子と、が設けられていることを特徴とする振動子作製用マスク。
【請求項8】
振動板を収容する振動子用パッケージであって、
振動板を接着するための基台と、
前記基台に前記振動板を接着するために接着剤を塗布する、前記基台の少なくとも一部分の領域を加熱する第2加熱素子と、を有することを特徴とする振動子用パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−60556(P2012−60556A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204054(P2010−204054)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】