説明

接合剤及び半導体支持装置

【課題】半導体製造装置用サセプターの平面度を高く保つと共に製造プロセスにおいて汚染源となることがない、耐熱性の高い接合剤を提供する。
【解決手段】接合剤4は、付加硬化型シリコーン粘着剤からなる硬化シートにより形成され、付加硬化型シリコーン粘着剤は、1分子に2個以上のビニル基を含有するオルガノポリシロキサンと、RSiO1/2(Rは脂肪族不飽和結合を有しない炭素数1〜6の1価炭化水素基)で表される単位(以下Mと表記)とSiO4/2で表される単位(以下Qと表記)とをRSiO1/2単位/SiO4/2単位のモル比(M/Q比)が0.6以上1.6以下の範囲内になる割合で含むオルガノポリシロキサンレジンと、ケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、白金触媒と、20[vol%]以上50[vol%]以下の含有率を有する熱伝導性フィラーとを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャック又はヒータ付静電チャック等の半導体製造装置用サセプターと冷却板を接合する接合剤及びこの接合剤により接合された半導体製造装置用サセプターと冷却板を備える半導体支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置用サセプターと、半導体製造装置用サセプター上に保持されるSiウェハ基板の温度を制御する冷却板とは、液状シリコーンゴム,インジウム(In)を含む金属層,又はアクリル系やエポキシ系の有機性接着剤により接合されていた(特許文献1,2,3参照)。
【特許文献1】特開平4−287344号公報
【特許文献2】特開平3−3249号公報
【特許文献3】特開2002−231797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、液状シリコーンゴムを用いて半導体製造装置用サセプターと冷却板を接合した場合、液状シリコーンゴムの硬化時の体積収縮により接合後にそりが発生し、半導体製造装置用サセプターの平面度が低下することがある。また、Inを含む金属層を用いた場合には、Inが製造プロセスにおいて汚染源となることがある。また、有機性接着剤を用いた場合には、有機性接着剤の耐熱温度が100[℃]程度と低いために、耐熱性の面で問題がある。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、半導体製造装置用サセプターの平面度を高く保つと共に製造プロセスにおいて汚染源となることがない、耐熱性の高い接合剤を提供することにある。また、本発明の他の目的は、半導体製造装置用サセプターの平面度を高く保つと共に製造プロセスにおいて半導体製造装置用サセプターと冷却板の接合層が汚染源となることがない、耐熱性の高い半導体支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る半導体支持装置は、半導体製造装置用サセプターと、冷却板と、半導体製造装置用サセプターと冷却板を接合する接合剤とを備える。接合剤は、付加硬化型シリコーン粘着剤からなる硬化シートにより形成され、1分子に2個以上のビニル基を含有するオルガノポリシロキサンと、RSiO1/2(Rは脂肪族不飽和結合を有しない炭素数1〜6の1価炭化水素基)で表される単位(以下Mと表記)とSiO4/2で表される単位(以下Qと表記)とをRSiO1/2単位/SiO4/2単位のモル比(M/Q比)が0.6以上1.6以下の範囲内になる割合で含むオルガノポリシロキサンレジンと、ケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、白金触媒と、20[vol%]以上50[vol%]以下の含有率を有する熱伝導性フィラーとを含有することを特徴とする。
【0006】
M/Q比が0.6未満である場合、耐熱性は向上するが粘着性が低下しやすくなり、またM/Q比が1.6を超えた場合も粘着性が低下しやすくなる。また熱伝導性フィラーの含有率が全系に対し20[vol%]未満である場合、熱伝導率が不十分となり、逆に50[vol%]を超えた場合には、粘着性が低下する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、半導体製造装置用サセプターの平面度を高く保つと共に製造プロセスにおいて汚染源となることがない、耐熱性の高い接合剤を提供することができる。また、本発明によれば、半導体製造装置用サセプターの平面度を高く保つと共に製造プロセスにおいて半導体製造装置用サセプターと冷却板の接合層が汚染源となることがない、耐熱性の高い半導体支持装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る接合剤は、付加硬化型シリコーン粘着剤からなる硬化シートにより形成され、付加硬化型シリコーン粘着剤は、1分子に2個以上のビニル基を含有するオルガノポリシロキサンと、RSiO1/2(Rは脂肪族不飽和結合を有しない炭素数1〜6の1価炭化水素基)で表される単位(以下Mと表記)とSiO4/2で表される単位(以下Qと表記)とをRSiO1/2単位/SiO4/2単位のモル比(M/Q比)が0.6以上1.6以下の範囲内になる割合で含むオルガノポリシロキサンレジンと、ケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、白金触媒と、20[vol%]以上50[vol%]以下の含有率を有する熱伝導性フィラーとを含有する。
【0009】
付加反応硬化型シリコーン粘着剤組成物は、好ましくは、
(A)1分子中に2個以上のビニル基を有するジオルガノポリシロキサン、
(B)RSiO1/2単位(Rは脂肪族不飽和結合を有しない炭素数1〜6の1価炭化水素基)及びSiO4/2単位を含有し、RSiO1/2単位/SiO4/2単位のモル比が0.6〜1.6であるオルガノポリシロキサンレジン、
(C)SiH基を1分子中に3個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(D)白金系触媒、及び
(E)熱伝導性フィラー
とを含有する組成物よりなるものである。
【0010】
(A)成分中のビニル基含有量は、好ましくは0.02〜0.40[モル%]、より好ましくは0.04〜0.25[モル%]である。0.02[モル%]以下では粘着力、保持力が低下し、0.40[モル%]以上では粘着力、タックが低下する。
【0011】
(A)成分は、分子鎖末端及び/又は側鎖にビニル基を含有する鎖状のオルガノポリシロキサンが好ましく、オイル状または生ゴム状であればよく、その粘度は、25[℃]において1000[mPa・s]以上、特に10000[mPa・s]以上が好ましい。なお上限としては、特に限定されないが、重合度が20,000以下となるように選定することが好ましい。(A)成分は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0012】
(B)成分はRSiO1/2単位(Rは脂肪族不飽和結合を有しない炭素数1〜6の1価炭化水素基である)及びSiO4/2単位を含有し、RSiO1/2単位/SiO4/2単位のモル比が0.6〜1.6、好ましくは0.8〜1.5、さらに好ましくは1.0〜1.5であるオルガノポリシロキサンである。RSiO1/2単位/SiO4/2単位のモル比が0.6未満では粘着力やタックが低下することがあり、1.6を越えると粘着力や保持力が低下することがある。(B)成分は、SiOH基を含有していてもよく、OH基含有量は0〜4.0[重量%]であればよい。また、(B)成分は2種以上を併用してもよい。なおRとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0013】
(A)成分と(B)成分との質量比は80/20〜20/80、好ましくは60/40〜30/70である。(A)成分の配合割合が少な過ぎると、タック力の低下という不都合があり、逆に(A)成分の配合割合が多過ぎると、粘着力の低下という不都合があるので好ましくない。
【0014】
粘着性及び剥離性の点から、特に(B)成分のRSiO1/2単位/SiO4/2単位のモル比が1.0〜1.5であり、且つ、(A)成分と(B)成分との質量比が50/50〜40/60であるのがより好ましい。
【0015】
(C)成分は架橋剤であり、1分子中にSiH基を少なくとも3個、好ましくは4個有するオルガノヒドロポリシロキサンで、直鎖状、分岐状、環状のもの等を使用することができる。
【0016】
(C)成分の使用量は、(A)成分中のビニル基に対する(C)成分中のSiH基のモル比が1〜25、特に5〜20の範囲となるように配合することが好ましい。1未満では架橋密度が低くなり、これにともない保持力が低くなることがあり、25を越えると粘着力及びタックが低下したり、粘着シートの作製において、塗工の際の粘着剤組成物の使用可能時間が短くなる場合がある。
【0017】
(D)成分は白金系触媒であり、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物等が挙げられる。中でも塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物が好ましく、商品名CAT−PL−50T(信越化学工業製)として市販されている。
【0018】
(D)成分の添加量は、(A)及び(B)成分の合計100質量部に対して白金分が5〜500[ppm]、特に10〜200[ppm]である量が好ましい。5[ppm]未満では硬化性が低下し、架橋密度が低くなり、保持力が低下することがあり、500[ppm]を越えると塗工の際の粘着剤組成物の使用可能時間が短くなる場合がある。
【0019】
(E)成分の熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、及びシリコンカーバイト(SiC)のうちのいずれかにより形成されていることが望ましい。
【0020】
熱伝導性フィラーは、平均粒径が1[μm]以下の微細粒子と平均粒径が10[μm]以上30[μm]以下の数値範囲内にある粗粒子とを重量比が3:7以上1:9以下の範囲内になるように混合した粒子により形成されていることが望ましい。これにより、微細粒子が粗粒子の間に充填され、熱伝導性が安定化する。また最密充填化が図れることにより、接合剤の低弾性を維持しつつ半導体製造装置用サセプター及び冷却板との密着性を向上させることができる。なお、熱伝導性フィラーの平均粒径が30[μm]以上になると接合剤表面の平滑性が低下することによって粘着性が低下しやすくなる。
【0021】
接合剤と半導体製造装置用サセプター及び冷却板の接合面には予めシランカップリング系プライマーを塗布しておくことが望ましい。また半導体製造装置用サセプターは、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ホウ素(BN)、イットリアのうちのいずれかにより形成され、冷却板は、アルミニウム合金、真鍮のうちのいずれかにより形成されていることが望ましい。
【0022】
必要に応じて(F)成分として付加反応制御剤を添加することができる。(F)成分はシリコーン粘着剤組成物を調製乃至塗工する際、加熱硬化の以前に粘着剤組成物が増粘やゲル化をおこさないようにするために添加されるものである。
【0023】
(F)成分の具体例としては、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ブチン、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ペンチン、3,5−ジメチル−3−トリメチルシロキシ−1−ヘキシン、1−エチニル−1−トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2−ジメチル−3−ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン等が挙げられる。
【0024】
(F)成分の配合量は、(A)及び(B)成分の合計100質量部に対して0〜8.0質量部の範囲であることが好ましく、特に0.05〜2.0質量部が好ましい。8.0質量部を越えると硬化性が低下することがある。
【0025】
本発明に係るシリコーン粘着剤組成物には、上記各成分以外に任意成分を添加することができる。例えば、ジメチルポリシロキサン、ジメチルジフェニルポリシロキサンなどの非反応性のオルガノポリシロキサン、塗工の際の粘度を下げるためのトルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、オクタン、イソパラフィン等の脂肪族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤、酸化防止剤、染料、顔料等が挙げられる。なお、通常、組成物の粘度を下げ、塗工を容易にするために溶剤が使用される。
【0026】
シリコーン粘着剤組成物の塗工量は、硬化した後の粘着層の厚みが50〜300[μm]、好ましくは100〜200[μm]であるように選択することができる。
【0027】
硬化条件としては、付加反応硬化型のものは90〜120[℃]で5〜20[分]とすることができるが、この限りではない。
【0028】
本発明に係る接合剤は、例えば図1に示すような、半導体ウェハ1を支持する半導体製造装置用サセプター2と、冷却媒体供給路3aに供給された冷却媒体によって半導体製造装置用サセプター2を冷却することにより半導体ウェハ1の温度を制御する冷却板3とを備える半導体支持装置における、半導体製造装置用サセプター2と冷却板3を接合するための接合剤4に適用することができる。なお、図1に示す半導体支持装置では、半導体製造装置用サセプター2,冷却板3,及び接合剤4には、半導体ウェハ1と半導体製造装置用サセプター2の間にガスを供給するためのガスチャンネル5と、リフトピンを挿入して半導体製造装置用サセプター2から半導体ウェハ1を取り外すためのリフトピン穴6が形成されている。
【0029】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0030】
〔実施例1〕
実施例1では、始めに、分子鎖両末端にビニル基を含有するオルガノポリシロキサンを100質量部、RSiO1/2(Rは脂肪族不飽和結合を有しない炭素数1〜6の1価炭化水素基)で表される単位(以下Mと表記)とSiO4/2で表される単位(以下Qと表記)とをRSiO1/2単位/SiO4/2単位のモル比(M/Q比)が1.1になる割合で含むオルガノポリシロキサンレジンを180質量部、ケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンをビニル基を含有するオルガノポリシロキサンのビニル基に対する成分中のSiH基のモル比が15となる量、白金触媒、及び20[vol%]の含有率を有し、平均粒径0.7[μm]の酸化アルミニウム(微細粒子)と平均粒径20[μm]の酸化アルミニウム(粗粒子)とを重量比10:90の割合で混合した熱伝導性フィラーからなる混合物をトルエンに溶解させた付加硬化型シリコーン粘着剤をPET離型フィルムに塗工し、100[℃]の熱風循環式乾燥機内にて10分間硬化後、硬化物をPET離型フィルムから剥離することにより厚さ120[μm]の実施例1の接合剤を得た。次に、本接合剤を種々の形状のアルミニウム(Al)角板と窒化アルミニウム(AlN)角板に100[℃],1.4[MPa]で10分間加熱加圧接合することにより実施例1の接合体を得た。
【0031】
〔実施例2〕
実施例2では、AlとAlNの接合面に予めシランカップリング系プライマーを塗布した以外は実施例1と同じ条件で製造することにより、実施例2の接合体を得た。
【0032】
〔実施例3〕
実施例3では、微細粒子と粗粒子の重量比を30:70とした以外は実施例1と同じ条件で製造することにより、実施例3の接合体を得た。
【0033】
〔実施例4〕
実施例4では、微細粒子と粗粒子の重量比を20:80とした以外は実施例1と同じ条件で製造することにより、実施例4の接合体を得た。
【0034】
〔実施例5〕
実施例5では、熱伝導性フィラーの含有率を33[vol%]とした以外は実施例1と同じ条件で製造することにより、実施例5の接合体を得た。
【0035】
〔実施例6〕
実施例6では、微細粒子と粗粒子の重量比を20:80とした以外は実施例5と同じ条件で製造することにより、実施例6の接合体を得た。
【0036】
〔実施例7〕
実施例7では、AlとAlNの接合面に予めシランカップリング系プライマーを塗布した以外は実施例6と同じ条件で製造することにより、実施例7の接合体を得た。
【0037】
〔実施例8〕
実施例8では、M/Q比を1.5とした以外は実施例6と同じ条件で製造することにより、実施例8の接合体を得た。
【0038】
〔実施例9〕
実施例9では、AlとAlNの接合面に予めシランカップリング系プライマーを塗布した以外は実施例8と同じ条件で製造することにより、実施例9の接合体を得た。
【0039】
〔実施例10〕
実施例10では、M/Q比を0.6とした以外は実施例7と同じ条件で製造することにより、実施例10の接合体を得た。
【0040】
〔実施例11〕
実施例11では、粗粒子の平均粒径を10[μm]とした以外は実施例7と同じ条件で製造することにより、実施例11の接合体を得た。
【0041】
〔実施例12〕
実施例12では、粗粒子の平均粒径を30[μm]とした以外は実施例7と同じ条件で製造することにより、実施例12の接合体を得た。
【0042】
〔実施例13〕
実施例13では、熱伝導性フィラーの含有率を50[vol%]とした以外は実施例7と同じ条件で製造することにより、実施例13の接合体を得た。
【0043】
〔実施例14〕
実施例14では、熱伝導性フィラーの材質を窒化アルミニウム(AlN)とした以外は実施例7と同じ条件で製造することにより、実施例14の接合体を得た。
【0044】
〔実施例15〕
実施例15では、熱伝導性フィラーの材質を炭化珪素(SiC)とした以外は実施例7と同じ条件で製造することにより、実施例15の接合体を得た。
【0045】
〔比較例1〕
比較例1では、平均粒径10[μm]の熱伝導性フィラーを30[vol%]含有するアクリル樹脂を用意し、このアクリル樹脂によってAl及びAlNと接合することにより比較例1の接合体を得た。
【0046】
〔比較例2〕
比較例2では、M/Q比を0.4とした以外は実施例6と同じ条件で製造することにより、比較例2の接合体を得た。
【0047】
〔比較例3〕
比較例3では、M/Q比を1.7とした以外は実施例6と同じ条件で製造することにより、比較例3の接合体を得た。
【0048】
〔比較例4〕
比較例4では、熱伝導性フィラーの含有率を60[vol%]とした以外は実施例6と同じ条件で製造することにより、比較例4の接合体を得た。
【0049】
〔比較例5〕
比較例5では、微細粒子と粗粒子の重量比を5:95とした以外は実施例7と同じ条件で製造することにより、比較例5の接合体を得た。
【0050】
〔比較例6〕
比較例6では、粗粒子の平均粒径を40[μm]とした以外は実施例7と同じ条件で製造することにより、比較例6の接合体を得た。
【0051】
〔比較例7〕
比較例7では、熱伝導性フィラーの材質を窒化アルミニウム(AlN)とした以外は比較例4と同じ条件で製造することにより、比較例7の接合体を得た。
【0052】
〔比較例8〕
比較例8では、熱伝導性フィラーの材質を炭化珪素(SiC)とした以外は比較例4と同じ条件で製造することにより、比較例8の接合体を得た。
【0053】
〔比較例9〕
比較例9では、熱伝導性フィラーの含有率を15[vol%]とした以外は実施例7と同じ条件で製造することにより、比較例9の接合体を得た。
【0054】
〔比較例10〕
比較例10では、熱伝導性フィラーの材質を窒化アルミニウム(AlN)とした以外は比較例9と同じ条件で製造することにより、比較例10の接合体を得た。
【0055】
〔比較例11〕
比較例11では、熱伝導性フィラーの材質を炭化珪素(SiC)とした以外は比較例9と同じ条件で製造することにより、比較例11の接合体を得た。
【0056】
[せん断剥離試験]
幅25[mm]×長さ35[mm]×厚さ10[mm]のAlN製角板11とAl製角板12の間に、上記実施例1〜15及び比較例1〜8の各接合剤を25×25[mm]の大きさに切り出したものを挟み、100[℃],14[atm]で加熱加圧して接合体を作製した。そして図2に示すようなせん断剥離試験装置を用いて、室温及び150[℃]における各接合体のせん断剥離強度とせん断伸びを測定した。測定結果を以下の表1に示す。なお、φ300mmサイズの実体接合体においては、接合界面の気密性を保持するために、せん断剥離強度が室温で0.5[MPa]以上、150[℃]で0.2[MPa]以上、またせん断伸びについては室温,150[℃]共に0.04以上を目標値とすることが経験的にわかっている。
【0057】
表1から明らかなように、実施例1〜15の接合体は、比較例1〜8の接合体と比較してせん断剥離強度及びせん断伸びが優れていた。一方、比較例1の接合体は、接合剤が耐熱性の低いアクリル樹脂により形成されているために、昇温に伴うせん断剥離強度の劣化が激しかった。比較例2の接合体は、接合剤のM/Q比が低く粘着性が弱いために、せん断剥離強度が低かった。比較例3の接合体は、接合剤のM/Q比が高く粘着性が強いが軟らかすぎるために、せん断剥離強度が低かった。比較例4の接合体は、接合剤の熱伝導性フィラーの含有率が多すぎるために粘着性が弱く、せん断剥離強度が低かった。比較例5の接合体は、熱伝導性フィラーの微細粒子が少なすぎるために、粘着性が弱く、せん断剥離強度が低かった。比較例の接合体は、熱伝導性フィラーの粗粒子の平均粒径が大きすぎるために、粘着性が弱く、せん断剥離強度が低かった。比較例7及び比較例8の接合体では、熱伝導性フィラーの含有量が多すぎるために、粘着性が弱く、せん断剥離強度が低かった。
【表1】

【0058】
[熱伝導率の熱劣化試験]
φ10×t1[mm]のAlN製円板とφ10×t2[mm]のAl製円板の間に実施例1,5〜9及び比較例1,4,7〜11の各接合剤を25×25[mm]の大きさに切り出したものを挟み、100[℃],14[atm]で加熱加圧して接合体を作製した。そして、150[℃]の状態に500時間保持する耐久試験を行った後の各接合体の熱伝導率をレーザーフラッシュ法により測定し、熱伝導率の熱劣化を測定した。そして、測定された接合体全体の熱伝導率から既知であるAlN(90[W/mK])及びAl(160[W/mK])の熱伝導率を除くことにより接合剤単体及び接合界面の熱抵抗を加味した接合層の熱伝導率を算出した。測定結果を以下の表2に示す。熱伝導率の目標値は0.30[W/mK]以下である。
【0059】
比較例1,4,7〜11の接合体では、接合剤の熱伝導率が耐久試験後に低下するのに対して、実施例1,5〜9,11〜15の接合体では、耐久試験前後で接合剤の熱伝導率の低下は認められなかった。実施例1,5〜9,11〜15の接合体では耐久試験前後で接合剤の熱伝導率の低下が認められなかった理由としては、実施例1,5〜9,11〜15の接合体では、接合剤が基本的に耐熱性を有するシリコーン樹脂であり、またM/Q比及び熱伝導性フィラーの含有量が適当であるので、接合剤の粘着性が十分に発現したためであると考えられる。一方、比較例1,4,7〜11の接合体では接合剤の熱伝導率が耐久試験後に低下した理由としては、比較例1の接合体では接合剤が耐熱性の低いアクリル樹脂であるため、比較例2の接合体では接合剤のM/Q比が低く粘着性が弱いため、比較例3の接合体では接合剤のM/Q比が高く、粘着性が弱いため、比較例4,7,8の接合体では熱伝導性フィラーの含有率が多いために接合剤の粘着性が弱いため、比較例9〜11の接合体では熱伝導性フィラーの含有量が少なすぎるためと考えられる。
【表2】

【0060】
[熱サイクル試験]
AlN製の半導体製造装置用サセプターとAl製の冷却板とをせん断剥離試験から抽出した代表例である実施例1,5〜9,13〜15及び比較例1〜4の接合剤を挟んで100[℃],14[atm]で加熱加圧接合し、接合後及び耐久試験(30[℃]から150[℃]に昇温した後に再び30[℃]に降温する処理を30サイクル実施)後の平面度と接合界面におけるガスリークを評価した。なお、半導体製造装置用サセプターと冷却板の寸法はそれぞれφ300×t10[mm],φ300×t30[mm]とした。また、ガスリークの評価は、半導体製造装置用サセプターのガスチャネルを塞ぎ、冷却板にあるガスチャネルからHeリークディテクタで排気しながら接合部にHeを吹きつけ、Heリーク量を測定することにより行った。この結果を以下の表3に示す。実施例1,5〜9,13〜15の接合剤により半導体製造装置用サセプターと冷却板を接合した場合、接合後及び耐久試験後にもガスリークが認められなかったのに対して、比較例1〜4の接合剤により接合した場合には、30サイクルの耐久試験後にガスリークが認められた。平面度は、実施例1,5〜9,13〜15及び比較例1〜4共に30[um]以下であり、実使用
上問題がないレベルであった。
【表3】

【0061】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態となる半導体支持装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態となるせん断剥離試験装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0063】
1:半導体ウェハ
2:半導体製造装置用サセプター
3:冷却板
3a:冷却媒体供給路
4:接合剤
5:ガスチャンネル
6:リフトピン穴
11:AlN製角板
12:Al製角板
13a,13b:せん断試験治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置用サセプターと冷却板を接合する接合剤であって、
付加硬化型シリコーン粘着剤からなる硬化シートにより形成され、前記付加硬化型シリコーン粘着剤は、1分子に2個以上のビニル基を含有するオルガノポリシロキサンと、RSiO1/2(Rは脂肪族不飽和結合を有しない炭素数1〜6の1価炭化水素基)で表される単位(以下Mと表記)とSiO4/2で表される単位(以下Qと表記)とをRSiO1/2単位/SiO4/2単位のモル比(M/Q比)が0.6以上1.6以下の範囲内になる割合で含むオルガノポリシロキサンレジンと、ケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、白金触媒と、20[vol%]以上50[vol%]以下の含有率を有する熱伝導性フィラーとを含有することを特徴とする接合剤。
【請求項2】
請求項1に記載の接合剤と前記半導体製造装置用サセプター及び前記冷却板の接合界面にシランカップリング系プライマー層を有することを特徴とする接合剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の接合剤であって、前記熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及びシリコンカーバイトのうちのいずれかにより形成されていることを特徴とする接合剤。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1項に記載の接合剤であって、前記熱伝導性フィラーは、平均粒径が1[μm]以下の微細粒子と平均粒径が10[μm]以上30[μm]以下の数値範囲内にある粗粒子とを重量比が3:7以上1:9以下の範囲内になるように混合した粒子により形成されていることを特徴とする接合剤。
【請求項5】
半導体製造装置用サセプターと、
冷却板と、
前記半導体製造装置用サセプターと前記冷却板を接合する接合剤とを備え、
前記接合剤は、付加硬化型シリコーン粘着剤からなる硬化シートにより形成され、前記付加硬化型シリコーン粘着剤は、1分子に2個以上のビニル基を含有するオルガノポリシロキサンと、RSiO1/2(Rは脂肪族不飽和結合を有しない炭素数1〜6の1価炭化水素基)で表される単位(以下Mと表記)とSiO4/2で表される単位(以下Qと表記)とをRSiO1/2単位/SiO4/2単位のモル比(M/Q比)が0.6以上1.6以下の範囲内になる割合で含むオルガノポリシロキサンレジンと、ケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、白金触媒と、20[vo%]以上50[vol%]以下の含有率を有する熱伝導性フィラーとを含有することを特徴とする半導体支持装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体支持装置であって、前記接合剤と前記半導体製造装置用サセプター及び前記冷却板の接合界面にシランカップリング系プライマー層を有することを特徴とする半導体支持装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の半導体支持装置であって、前記熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、及びシリコンカーバイトのうちのいずれかにより形成されていることを特徴とする半導体支持装置。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のうち、いずれか1項に記載の半導体支持装置であって、前記熱伝導性フィラーは、平均粒径が1[μm]以下の微細粒子と平均粒径が10[μm]以上30[μm]以下の数値範囲内にある粗粒子とを重量比が3:7以上1:9以下の範囲内になるように混合した粒子により形成されていることを特徴とする半導体支持装置。
【請求項9】
請求項5乃至請求項8のうち、いずれか1項に記載の半導体支持装置であって、前記半導体製造装置用サセプターは、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、イットリアのうちのいずれかにより形成され、前記冷却板は、アルミニウム合金、真鍮のうちのいずれかにより形成されていることを特徴とする半導体支持装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−218992(P2008−218992A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24050(P2008−24050)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】