説明

接着剤用硬化性組成物

【課題】被接着体に対する接着性および剥離性のバランスに優れる接着剤用硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】末端又は側鎖に脂環式エポキシ基を1個以上含有する特定のオルガノシロキサン化合物を含むことを特徴とする接着剤用硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被接着体に対する接着性および剥離性のバランスに優れた硬化物を形成することができる接着剤用硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性樹脂組成物は、電気・電子部品の接着・接合、封止など、さまざまな用途に用いられている。しかし、硬化性樹脂は、硬化すると3次元網目構造を形成するため、再溶融させることができない。したがって、熱硬化性樹脂組成物を用いて部品の接合などを行なった場合には、のちに取り外す必要が生じても取り外すことが著しく困難であるという問題がある。
【0003】
硬化させたのちに除去する必要が生じる硬化性樹脂組成物の例として、たとえばBGA(Ball Grid Array)等のフリップチップ半導体装置や半導体チップをガラス基板に実装したCOG(Chip On Glass)液晶装置製造用の接着剤があげられる。
【0004】
これらの装置は、半導体装置あるいは半導体チップの片面に突出して設けられた多数の電極(バンプ)とこれを実装する基板の接続端子とを対向するように位置合わせして接合し、接合された装置と基板との隙間に、毛管現象を利用して液状の硬化性接着剤を注入後、硬化性接着剤を硬化する方法や、液状あるいはシート状の硬化性接着剤を接続端子を含む基板上に塗布あるいは貼り付け、装置あるいは半導体チップの電極(バンプ)を位置合わせして圧着した後硬化性接着剤を硬化する方法により製造される(例えば特許文献1参照)。
【0005】
しかし、これらの方法では、実装後の半導体装置や半導体チップに不良がある場合や位置ずれが生じている場合に、基板から半導体装置や半導体チップを剥離する必要がある際に硬化した接着剤が存在するため、剥離(リペア)するために外力を加えると半導体装置や半導体チップの破損が発生する、あるいは剥離できても樹脂(接着剤)の凝集破壊が起ったりして、半導体装置や半導体チップを再利用できないという問題がある。
【0006】
これまで上記リペア性の問題点を解決するために硬化性樹脂組成物の組成の検討やリペア方法の検討がなされている。特許文献2にはポリヒドロキシポリエーテル樹脂、ポリアクリレート樹脂およびポリメタクリレート樹脂の少なくとも一方、エポキシ樹脂、硬化剤よりなるシート状接着剤組成物が開示されている。しかしながら、この文献に開示された組成物では、リペアするために硬化樹脂を溶解する有機溶剤を使用する必要があり、作業性が良好ではない。
【0007】
特許文献3には、2官能エポキシ化合物、活性水素を2個有するアミンおよび(または)2官能チオール、ならびにエポキシ硬化触媒を所定の配合比で含有する2液型リペアラブル組成物およびそれを用いた接着剤が開示されている。この接着剤は加熱することにより溶融することで剥離できる旨の記載はあるが、剥離後接着剤の残渣を溶剤に溶解、あるいは膨潤させて拭い取る工程を必要としている。
【0008】
特許文献4には、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサン化合物と、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合とエポキシ基を1分子中に少なくとも各1個含有する有機化合物とを、ヒドロシリル化触媒の存在下で反応させて得られるエポキシ基含有オルガノシロキサン化合物が開示されている。しかしながら、この特許文献4にはこの化合物を含む組成物を接着剤として使用すること
ができる旨の記載はあるが、剥離性についての記載は全くない。
【特許文献1】特開平10−101906号公報
【特許文献2】特開2000−129217号公報
【特許文献3】特開2003−231736号公報
【特許文献4】特開2007−154008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、被接着体に対する接着性および剥離性のバランスに優れる接着剤用硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、本発明を見出すに至った。すなわち、本発明は以下の[1]〜[5]の実施態様を有する。
[1]下記一般式(1)、(2)又は(3)で表されるエポキシ基含有オルガノシロキサン化合物を含むことを特徴とする接着剤用硬化性組成物:
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

【0014】
(上記式(1)〜(3)中、R11は水素原子またはメチル基であり、R12は水素原子、メチル基またはフェニル基であり、R13は水素原子またはメチル基であり、R14、R15は独立に
置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、R16、R17は独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基または下記一般式(4)で表される一価炭化水素基であり、R18は水素原子、メチル基、エチル基またはフェニル基であり、n、
qは1以上の整数であり、pは0以上の整数であり、mは3から6までの整数である。)

【0015】
【化4】

【0016】
(上記式(4)において、R11は水素原子またはメチル基であり、R12は水素原子、メチル基またはフェニル基であり、R13は水素原子またはメチル基であり、*は結合手を示す。
)。
【0017】
[2]さらにオニウム塩系光重合開始剤を含むことを特徴とする[1]に記載の接着剤用硬化性組成物。
[3]3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチルをさらに含む[2]に記載の接着剤用硬化性組成物。
【0018】
[4]前記エポキシ基含有オルガノシロキサン化合物の、全シロキサン単位中のエポキシ基含有シロキサン単位の割合が、5〜80%である[1]乃至[3]のいずれかに記載の接着剤用硬化性組成物。
【0019】
[5]下記一般式(5)、(6)、又は(7)で表されるオルガノヒドロシロキサン化合物と、下記一般式(8)で表されるエポキシ基及びアルケニル基を含有する化合物とをヒドロシリル化反応させることにより、エポキシ基含有オルガノシロキサン化合物を製造
する工程を含むことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の接着剤用硬化性組成物の製造方法:
【0020】
【化5】

【0021】
【化6】

【0022】
【化7】

【0023】
(上記式(5)〜(7)中、R14、R15は独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、R16、R17は独立に水素原子または置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、R18は水素原子、メチル基、エチル基またはフェニル基で
あり、n、qは1以上の整数であり、pは0以上の整数であり、mは3から6までの整数
である。);
【0024】
【化8】

【0025】
(上記式(8)中、R11は水素原子またはメチル基であり、R12は水素原子、メチル基またはフェニル基であり、R13は水素原子またはメチル基である。)。
【発明の効果】
【0026】
本発明のエポキシ基含有オルガノシロキサン化合物を含む硬化性組成物は短時間で容易に硬化し、その硬化物は被接着体との良好な密着性を有する反面、被接着体に外力を加えて剥離する際には硬化物が凝集破壊し難く、被接着体を剥離する際に被接着体表面への硬化物の付着が少ない。すなわち本発明の接着剤用硬化性組成物は、接着性と剥離性のバランスが良好な接着剤組成物であり、半導体装置や半導体チップの、基板への接合および基板からのリペア(剥離)が可能な接着剤として有用である。また、本発明の組成物は紫外
線照射によって容易に短時間で硬化することから、紙、金属、プラスチックの保護コーティング剤、塗料用ベース材料としても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は以下の態様のみに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0028】
[エポキシ基含有オルガノシロキサン化合物および本発明の接着剤用硬化性組成物の製造方法]
本発明の接着剤用硬化性組成物(以下単に硬化性組成物ともいう)は一般式(1)、(2)又は(3)で表されるエポキシ基含有オルガノシロキサン化合物を含むことを特徴とする。
【0029】
【化9】

【0030】
【化10】

【0031】
【化11】

【0032】
上記式(1)〜(3)において、R11は水素原子またはメチル基であり、R12は水素原子、メチル基またはフェニル基であり、R13は水素原子またはメチル基であり、R14、R15は独
立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、R16、R17は置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基または下記一般式(4)で表される一価炭化水素基であり、R18は水素原子、メチル基、エチル基またはフェニル基であり、n、q
は1以上の整数であり、pは0以上の整数であり、mは3から6までの整数である。
【0033】
【化12】

【0034】
上記式(4)において、R11は水素原子またはメチル基であり、R12は水素原子、メチル基またはフェニル基であり、R13は水素原子またはメチル基であり、*は結合手を示す。
前記置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基における置換基は、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基であり、それらの例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロへキシル基、n−オクチル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、フェニル基、p−t−ブチルフェニル基、p−トリル基、o−トリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられる。
【0035】
R14、R15として好ましい置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、フェニル基である。
R16、R17として好ましい置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基は、メチル基、エチル基、フェニル基である。
【0036】
またnは1以上の整数であるが、好ましくは1〜50の整数であり、より好ましくは1〜5の整数である。
qは1以上の整数であるが、好ましくは1〜30の整数であり、より好ましくは2〜10の整数である。
【0037】
pは0以上の整数であるが、好ましくは0〜200の整数であり、より好ましくは1〜100の整数である。
mは3から6までの整数であるが、好ましくは4から5までの整数である。
【0038】
上記一般式(1)、(2)又は(3)で表されるエポキシ基含有オルガノシロキサン化合物は、それぞれ一般式(5)、(6)、又は(7)で表されるオルガノヒドロシロキサン化合物と、下記一般式(8)で表されるエポキシ基及びアルケニル基を含有する化合物とをヒドロシリル化反応させることで得られる。
【0039】
【化13】

【0040】
【化14】

【0041】
【化15】

【0042】
【化16】

【0043】
上記式(5)〜(7)において、R14、R15は独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、R16、R17は独立に水素原子または置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、R18は水素原子、メチル基、エチル基またはフェニル
基であり、n、qは1以上の整数であり、pは0以上の整数であり、mは3から6までの
整数である。
【0044】
また上記式(8)において、R11は水素原子またはメチル基であり、R12は水素原子、メ
チル基またはフェニル基であり、R13は水素原子またはメチル基である。
前記置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基における置換基の例、R14
〜R17として好ましい置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基は、前述の
一般式(1)〜(3)の化合物および一般式(4)で表わされる一価炭化水素基について述べたのと同様である。
【0045】
またm、n、p、qについても、好ましい数値は、前述の一般式(1)〜(3)の化合物について述べたのと同様である。
【0046】
一般式(5)、(6)、又は(7)で表されるオルガノヒドロシロキサン化合物としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラエチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、両末端水素化ポリジメチルシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー等の直鎖シロキサン化合物;1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラエチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状シロキサン化合物などが挙げられる。上記オルガノヒドロシロキサン化合物は、2種以上の混合物でもよいし、単独で用いてもよい。
【0047】
前記一般式(8)で表される化合物としては具体的には、ブタジエンと(メタ)アクリル酸、クロトン酸または桂皮酸との反応物を前駆体として、(メタ)アリルエステル化後位置選択的なエポキシ化反応を行うことにより得られるモノエポキシ化合物を挙げることができる。このようなモノエポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸(メタ)アリルエステル、3,4−エポキシシクロヘキサン−1−メチル−1−カルボン酸(メタ)アリルエステル、3,4−エポキシシクロヘキサン−6−メチル−1−カルボン酸(メタ)アリルエステル、3,4−エポキシシクロヘキサン−6−フェニル−1−カルボン酸(メタ)アリルエステル等が挙げられる。
【0048】
一般式(5)、(6)、又は(7)で表されるオルガノヒドロシロキサン化合物と一般式(8)で表わされるエポキシ基及びアルケニル基を含有する化合物とのヒドロシリル化反応において、一般式(5)、(6)、又は(7)で表される化合物のSiH基と、一般
式(8)で表される化合物のアルケニル基の割合、即ち、アルケニル基とSiH基の数の比(アルケニル基/SiH基)は通常0.8以上、好ましくは0.98〜1.5とする。この比が0.8より小さいとSiHの残存による他の副反応が起こりやすくなる。また、アルケニル基を過剰に用いすぎた場合、すなわち前記比が大きすぎる場合には、エポキシ基及びアルケニル基を含有する化合物が多く残留するために、蒸留精製等の余分な操作が必要となる場合がある。
【0049】
また、ヒドロシリル化反応に際しては、白金系触媒などの付加反応触媒を用いる。この触媒としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物などの白金系触媒がある。これらの触媒添加量には特に制限はないが、白金金属として反応基質の質量の0.0001〜0.5質量%でよい。
【0050】
この反応は、通常、室温〜200℃の範囲で行えばよいが、50℃以上に加熱した方が反応は早く進行するため好ましい。一方、150℃より高くなると副反応が多くなるため、150℃以下で行うことが好ましい。反応時間は特に限定されないが、1〜20時間が好ましい。
【0051】
ヒドロシリル化反応は、必要に応じて溶剤中で行う。溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶剤、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤、又はこれらの混合溶剤を使用することができる。
【0052】
また、反応の雰囲気としては空気中、不活性気体中のいずれでもよいが、安全のためには不活性気体中が好ましい。
ヒドロシリル化反応終了後、反応混合物を水洗や活性炭処理などの一般的な方法により精製して付加反応触媒を除去する。溶剤を使用した場合は、加熱及び/又は減圧下で留去して、エポキシ基含有オルガノシロキサン化合物を得る。本発明の接着剤用硬化性組成物の製造方法は、このようなエポキシ基含有オルガノシロキサン化合物を製造する工程を有することを特徴としている。
【0053】
反応後反応物中には過剰に用いたエポキシ系のモノマー(一般式(8)で表わされる化合物)や副反応物も残存しているので、特に硬化性組成物の収縮率や該組成物の硬化物の機械特性を向上させる場合には、薄膜蒸発装置や分子蒸留装置を用いて、残存モノマーや低沸点不純物、低分子量オリゴマーを留出させることは有効な手法である。
【0054】
上記の薄膜蒸発装置とはヒドロシリル化反応終了後、必要に応じて溶剤を留去した後の反応混合物を薄膜にして、真空下でより低い温度で熱影響を及ぼさずに蒸発させる装置であり、流下膜式薄膜蒸発装置、攪拌式薄膜蒸発装置、遠心薄膜蒸発装置等が知られている。一般にこの装置は、圧力0.01kPa〜10kPaで、温度は50℃〜250℃で操作される。
【0055】
上記の分子蒸発装置とは、極めて高真空に維持され蒸発面から極めて静かな蒸発が起こるように蒸発面での反応液の液膜をできる限り薄く、蒸発面と凝縮面の距離が分子の平均自由行動路以下となるようにし、蒸発面と凝縮面との温度差を十分保つことによって、分子が凝縮面に戻ることを極力抑制するようにした装置であり、ポット分子蒸留装置、流下膜式分子蒸留装置、遠心式分子蒸留装置、実験遠心式分子蒸留装置等が知られている。この装置は一般に圧力2kPa以下、通常は0.0001〜1kPaで、温度は50℃〜250℃で操作され、分子量が1,000近くのものでも蒸発させることができる。
【0056】
このようにして一般式(1)、(2)、又は(3)で表されるエポキシ基含有オルガノシロキサン化合物を得ることができる。
本発明の接着剤用硬化性組成物に含有されるエポキシ基含有オルガノシロキサン化合物の、全シロキサン単位中のエポキシ基含有シロキサン単位の割合は、通常2〜100%である。2%未満では硬化性組成物の硬化性が低下するおそれがある。なお、80%を超えると該組成物の硬化物の剥離性が不十分となる場合があるので、前記エポキシ基含有シロキサン単位の割合は、好ましくは5〜80%であり、より好ましくは20〜60%である。
【0057】
なお、一般式(1)、(2)、(3)の化合物の全シロキサン単位数は、各々n+1、p+q+2、mであるので、全シロキサン単位中のエポキシ基含有シロキサン単位の割合は(2/n+1)%、(q/p+q+2)%、100%である。これらn、p、qの値はNMR等の分析により求めることができる。
【0058】
また、ヒドロシリル化反応終了後、反応混合物や単離した生成品のエポキシ当量も重要である。ヒドロシリル化時に反応暴走等を起こすと副反応としてヒドロシリル基とエポキ
シ基が反応し、エポキシ基が開環してしまうことがあるし、反応装置や精製装置に意図せずに水が混入することにより、エポキシ基が加水分解を受けジオールに変換されたり、この副反応によって生成したジオール中の水酸基が、更に他のエポキシ基と反応するとエポキシ当量が増加してしまう。このような意図しない反応が起きていないことを確認する上でも、エポキシ当量の測定は重要であり、反応混合物又は生成品のエポキシ当量を確認し、理論値に対して2倍以上の値になっていないことを確認しておいたほうがよい。
【0059】
[本発明の接着剤用硬化性組成物]
本発明の接着剤用硬化性組成物としては、前述の一般式(1)、(2)または(3)で表わされるエポキシ基含有オルガノシロキサン化合物を、それ単独で用いることができる。また、重合開始剤などの成分を含有させることにより、光硬化に適した組成物とすることもでき、熱硬化に適した組成物とすることもできる。
【0060】
本発明の硬化性組成物における一般式(1)、(2)または(3)で表わされるエポキシ基含有オルガノシロキサン化合物の合計の含有量は、接着性と耐熱性、柔軟性、硬化性の観点から、通常10〜98質量%であり、好ましくは20〜95質量%であり、より好ましくは30〜90質量%である。
【0061】
本発明の硬化性組成物には、上記一般式(1)、(2)または(3)で表わされる化合物のいずれかを一種単独で含有させることもできるし、複数種を含有させることもできる。
【0062】
本発明の硬化性組成物には、光硬化性を上げる目的で、3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチルを含有させることもできる。
本発明の硬化性組成物には、上記エポキシ基含有オルガノシロキサン化合物、3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチルに加えて、更に剥離性を調整するために重合度又はエポキシ基含有率の異なる同種のオルガノシロキサン、あるいはエポキシ基含有の異種のオルガノシロキサンを含有させ、紫外線硬化性オルガノシロキサン組成物とすることができる。この組成物は各成分の所定量を均一に混合することによって得られる。
【0063】
本発明の硬化性組成物を紫外線硬化させる場合は、光重合開始剤を必要に応じて該組成物に含有させることができる。含有させる光重合開始剤としては、オニウム塩系光重合開始剤が適当である。オニウム塩系光重合開始剤としては、例えばR12+-、R13+-、R13Se+-、R14+-、R1+-(R1はアリール基、X-はSbF6 -、AsF6 -、PF6 -、BF4 -、HSO4 -、ClO4 -などの陰イオンであり、複数存在するR1は同じでも異なっていてもよい)で示されるジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレノニウム塩、テトラアリールホスホニウム塩、アリールジアゾニウム塩などが挙げられる。
【0064】
これらの光重合開始剤は単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができ、その含有量は、本発明の硬化性組成物100質量%中、通常0.1〜20質量%とすればよい。これより少ないと硬化性が不十分となる場合があり、多いと硬化皮膜の表面状態に悪影響が生じて、剥離特性が劣化する場合がある。
【0065】
なお、ここでいう「硬化性組成物100質量%」の「硬化性組成物」とは、一般式(1)、(2)または(3)で表わされるエポキシ基含有オルガノシロキサン化合物と、必要に応じて本発明の硬化性組成物に含有させる光重合開始剤と、後述するその他の任意成分とからなる組成物を指す。すなわち、「硬化性組成物100質量%」はこれらの合計量を100質量%とすることを意味する。
【0066】
本発明の硬化性組成物を熱硬化させる場合は、熱カチオン重合開始剤を必要に応じて本発明の硬化性組成物に含有させることができる。含有させる熱カチオン重合開始剤としては、トリフル酸(Trif1ic acid)塩、三弗化硼素エーテル錯化合物、三弗化硼素、トリフェニルシラノールなどのシラノール系化合物やアルミニウムトリス(アセチルアセトン)などのアルミキレート系化合物のようなカチオン系又はプロトン酸触媒が挙げられる。
【0067】
また、活性エネルギー線カチオン重合開始剤としても用いられる芳香族オニウム塩のうち、熱によりカチオン種を発生するものがあり、これらも熱カチオン重合開始剤として用いることができる。これらの熱カチオン重合開始剤の中では、芳香族オニウム塩が、取り扱い性及び潜在性と硬化性のバランスに優れるという点で好ましい。
【0068】
これらの熱カチオン重合開始剤は単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、硬化性組成物100質量%中、通常0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%の量で含有させるのが好ましい。熱カチオン重合開始剤の場合も、含有量が少なすぎると本発明の硬化性組成物の硬化性が不十分となる場合があり、多いと硬化皮膜の表面状態に悪影響が生じて、剥離特性が劣化する場合がある。
【0069】
なお、ここでいう「硬化性組成物100質量%」の「硬化性組成物」とは、一般式(1)、(2)または(3)で表わされるエポキシ基含有オルガノシロキサン化合物と、必要に応じて本発明の硬化性組成物に含有させる熱カチオン重合開始剤と、後述するその他の任意成分とからなる組成物を指す。すなわち、「硬化性組成物100質量%」はこれらの合計量を100質量%とすることを意味する。
【0070】
また、必要に応じて本発明の硬化性組成物に配合できる熱カチオン重合可能な化合物としては、多官能エポキシ化合物が挙げられ、一般式(1)、(2)または(3)で表わされるエポキシ基含有オルガノシロキサン化合物との相溶性があれば特に限定されない。
【0071】
具体的には、ジシクロペンタジエンオキサイド、リモネンジオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアルコール、(3,4−エポキシ−6−メチ
ルシクロヘキシル)メチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレ
ート、エチレン1,2−ジ(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸)エステル、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸アリル、フェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、o−、m−、p−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノール
ノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールのポリグリシジルエーテル等が例示できる。
【0072】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、エポキシ系希釈剤、ビニルエーテル系希釈剤、基材への密着向上剤(たとえばビッグケミー・ジャパン(株)製BYK-340のようなフ
ッ素変性ポリマー)、チクソ剤、レベリング剤、帯電防止剤、消泡剤、顔料、他種のオルガノポリシロキサンなどを添加してもよいし、また本発明の硬化性組成物は、有機溶剤で希釈して使用してもよい。
【0073】
本発明の接着剤用硬化性組成物は、短時間に紫外線照射によって容易に硬化することから、紙、金属、プラスチックの保護コーティング剤、塗料用ベース材料としても有用である。
【0074】
本発明の組成物を上記用途に適用する場合、基材としてはグラシン紙、クラフト紙、ク
レーコート紙などの紙基材、ポリエチレンラミネート上質紙、ポリエチレンラミネートクラフト紙などのラミネート紙、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミドなどの合成樹脂から得られるプラスチックフィルム,シート等、アルミニウムなどの金属箔等が挙げられる。
【0075】
基材に本発明の硬化性組成物を塗布するには、ロール塗布、グラビア塗布、ワイヤードクター塗布、エアーナイフ塗布、ディッピング塗布などの公知の方法を用いることができる。塗布量としては0.02〜100g/m2とすればよく、この塗膜は紫外線を照射す
れば容易に硬化する。紫外線の光源としては高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、水銀アーク灯などが例示できる。上記塗膜を硬化させるためには、高圧水銀ランプ(80W/cm)を使用した場合には5〜20cmの距離から0.01〜600秒間照射すればよい。
【0076】
一方上記塗膜を熱硬化させるには、通常50〜190℃で0.5〜20時間加熱すればよい。この加熱は、加熱温度を同一または変えて複数回に分けて行ってもよい。
【0077】
なお、本明細書を通して、エポキシ基含有オルガノシロキサン化合物のエポキシ当量は以下の方法により測定したものである。測定原理は、塩酸とエポキシ基を反応させて、残存した塩酸量をアルカリにより滴定することにより定量し、反応した塩酸量を求め、前記エポキシ基含有オルガノシロキサン化合物中に存在するエポキシ量を計算するというものである。
【0078】
測定に使用する塩酸量よりもエポキシ基の量が少ない2〜4ミリモル当量になるくらいの試料を、精密に秤採り、200mlの共栓三角フラスコに入れ、この容器に0.2M塩酸−ジオキサン溶液25mLを、ホールピペットを用いて添加して溶解し、室温で30分間放置する。次に、10mlのメチルセロソルブで三角フラスコの栓及び内壁を洗いながら添加し、指示薬として0.1%クレゾールレッド−エタノール溶液を4〜6滴添加し、試料が均一になるまで十分に攪拌する。これを、0.1M水酸化カリウム−エタノール溶液で滴定し、指示薬の青紫色が30秒間続いたときを、中和の終点とする。その結果から下記の計算式を用いて得た値を、エポキシ基含有オルガノシロキサン化合物のエポキシ当量とする。
【0079】
エポキシ当量(g/eq.)=(10,000×S)/[(B−A)×f]
S:試料の採取量(g)
A:0.1M水酸化カリウム−エタノール溶液使用量(ml)
B:空試験での0.1M水酸化カリウム−エタノール溶液使用量(ml)
f:0.1M水酸化カリウム−エタノール溶液のファクター
【実施例】
【0080】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0081】
[合成例1]
温度計、滴下ロート、撹拌装置、およびジムロート冷却管を備え、オイルバス中に設置した2L三ツ口フラスコに、窒素雰囲気下において3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸(メタ)アリルエステル456.56(g)、トルエン314.90(g)、およびPt-VTS(白金
のジビニルテトラメチルジシロキサン錯体)触媒(白金換算3%のイソプロピルアルコー
ル溶液)0.0607(g)を仕込んだ。
【0082】
撹拌を開始し、内温が40(℃)となるように調整した。そこに1,1,3,3-テトラメチル
ジシロキサン168.58(g)を内温が42℃を超えないように調整しながら10時間かけて滴下
した。滴下終了後、40℃で一昼夜熟成させた。
【0083】
熟成終了後、ロータリーエバポレータを用いて溶媒として使用したトルエンを留去し、粗生成物612.34(g)を得た。分子蒸留装置(大科工業(株)製MS-FL特型)を用いて精製し、生成物597.28(g)を得た。該生成物のエポキシ当量は251.4であった。
【0084】
NMRおよびIRを用いて前記生成物の構造の確認を行った。NMR(1H-NMRおよび13C-NMR)
チャートおよびIRを図1および2ならびに図3に示す。
それぞれの観測されたNMRスペクトルを解析した結果、1H-NMRの観測結果では2(ppm)に
脂環エポキシに帰属されるピークが観測され、同様に13C-NMRの測定結果からは50(ppm)付近にエポキシシクロヘキサンのエポキシ基に由来する明瞭なピークが認められた。
【0085】
またIR解析の結果、1172cm-1に脂環エポキシ由来の吸収、1732cm-1にエステルカルボニル由来の吸収、および1057cm-1にSi-Oに由来する特徴的な吸収が観測された。
以上の解析結果から、ここで得られた生成物は下記の構造で示される目的化合物であることが確認できた。
【0086】
【化17】

【0087】
[合成例2]
温度計、滴下ロート、撹拌装置、およびジムロート冷却管を備え、オイルバス中に設置した1L三ツ口フラスコに、窒素雰囲気下において3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸(メタ)アリルエステル 155.78(g)、トルエン 108.32(g)、およびPt-VTS(
白金のジビニルテトラメチルジシロキサン錯体)触媒(白金換算3%のイソプロピルアル
コール溶液)0.0260(g)を仕込んだ。
【0088】
撹拌を開始し、内温が60(℃)となるように調整した。そこに1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン51.42(g)を、内温が61℃を超えないように調整しながら5時間か
けて滴下した。滴下終了後、60℃で一昼夜熟成させ、GC分析によって原料である1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンのピークが消失したことを確認した。
【0089】
熟成終了後、ロータリーエバポレータを用いて溶媒として使用したトルエンを留去し、粗生成物207.19(g)を得た。分子蒸留装置(大科工業(株)製MS-FL特型)を用いて精製し、生成物150.10(g)を得た。該生成物のエポキシ当量は245.5であった。
【0090】
NMRおよびIRを用いて構造の確認を行った。NMR(1H-NMRおよび13C-NMR)チャートおよ
びIRを図4および5ならびに図6に示す。
それぞれの観測されたNMRスペクトルを解析した結果、1H-NMRの観測結果では2(ppm)に
脂環エポキシに帰属されるピークが観測され、同様に13C-NMRの測定結果からは50(ppm)付近にエポキシシクロヘキサンのエポキシに由来する明瞭なピークが認められた。
【0091】
またIR解析の結果、1172cm-1に脂環エポキシ由来の吸収、1732cm-1にエステルカルボニル由来の吸収、および1057cm-1にSi-Oに由来する特徴的な吸収が観測された。
以上の解析結果から、ここで得られた生成物は下記の構造で示される目的化合物である
ことが確認できた。
【0092】
【化18】

【0093】
[合成例3]
温度計、滴下ロート、撹拌装置、およびジムロート冷却管を備え、オイルバス中に設置した1L三ツ口フラスコに、窒素雰囲気下において3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸(メタ)アリルエステル213.95(g)、トルエン150.32 (g)、およびPt-VTS触媒
(白金換算3%のイソプロピルアルコール溶液)0.0315(g)を仕込んだ。
【0094】
撹拌を開始し、内温が40(℃)となるように調整した。そこに1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン121.17(g)を、内温が40℃〜43℃の範囲となるように適宜調整しながら6時間かけて滴下した。滴下終了後、40℃で一昼夜熟成させた。
【0095】
熟成終了後、ロータリーエバポレータを用いてトルエンを留去して得られた粗生成物を分子蒸留装置(大科工業(株)製MS-FL特型)を用いて精製した。その結果、下記の構造で示
される生成物を268.10(g)を得られた。
【0096】
【化19】

【0097】
[合成例4]
温度計、滴下ロート、撹拌装置、およびジムロート冷却管を備え、オイルバス中に設置した1000mL三ツ口フラスコに、窒素雰囲気下において3,4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸(メタ)アリルエステル150.12(g)、トルエン200.59(g)、およびPt-VTS触媒(白金換算3%のイソプロピルアルコール溶液)0.0217(g)を仕込んだ。
【0098】
撹拌を開始し、内温が60(℃)となるように調整した。そこに1,3,5,7,9-ペンタメチルシクロペンタシロキサン48.27(g)を内温が61℃を超えないように調整しながら2時間か
けて滴下した。滴下終了後、60℃で一昼夜熟成させた。
【0099】
熟成終了後、ロータリーエバポレータを用いてトルエンを留去して得られた粗生成物を分子蒸留装置(大科工業(株)製MS-FL特型)を用いて精製し、下記の構造で示される生成物170.58(g)を得た。
【0100】
【化20】

【0101】
<剪断密着力測定>
以下に述べる実施例および比較例における剪断密着力の測定方法を説明する。
【0102】
(評価法−A:UV硬化での剪断密着力測定)
25mm×100mmに加工したガラスエポキシ基板((株)セイナック社製)の下端に評価をす
る硬化性組成物を下端より15mm塗布し、同様に加工した300μm膜厚のシクロオレフィンポリマー押出成形シート(ゼオノア1020R、日本ゼオン(株)社製)を25mm×15mmの範囲で貼り合わせ、上から1(kg)の荷重を30秒間与えた。作成した試験片をUV照射機(メタルハライ
ドランプ出力800W:照度計での実測値で17.7mW/cm2のもの)で120秒間のUV照射を与える
ことで硬化性組成物を硬化させた。
【0103】
UV照射により得られた試験片のフィルムを、硬化性組成物を塗布したガラスエポキシ基板を下に設置して、引っ張り試験機を用いて10mm/分の速度で引っ張ることで接着部分に負荷を与え、貼り合わせ部位を破断するに要した力(N/mm2)を剪断密着力として測定し
た。
【0104】
(評価法−B:熱硬化での剪断密着力測定)
25mm×100mmに加工したガラスエポキシ基板((株)セイナック社製)の下端に評価をす
る硬化性組成物を下端より15mm塗布し、同様に加工したガラスエポキシ基板を25mm×15mmの範囲で貼り合わせ、上から1(kg)の荷重を30秒間与えた。作成した試験片を恒温槽中で80℃で一時間、加えて170℃で一時間加熱することで硬化性組成物を硬化させた。
【0105】
その加熱により得られた試験片を、硬化性組成物を塗布したガラスエポキシ基板を下に
設置して、引っ張り試験機を用いて10mm/分の速度で引っ張ることで接着部分に負荷を与え、貼り合わせ部位を破断するに要した力(N/mm2)を剪断密着力として測定した。
【0106】
[実施例1]
150mLの蓋付きポリ容器に合成例1で合成した樹脂10.34(g)を量り取った。そこに0.21(g)の芳香族スルホニウム塩(CPI-101A、三新化学工業(株)社製)および0.52(g)のフュームドシリカ(AEROSIL R974、日本アエロジル(株)社製)を加え、自転・公転ハイブリッドミキサーにて撹拌5分間および脱泡5分間の条件で混練し、硬化性組成物Aを得た。
【0107】
評価法−Aにより、硬化性組成物Aの硬化物の剪断密着力測定用試験片を作成し評価を
実施したところ、試験片5つの評価結果を平均して求められた剪断密着力は0.87(N/mm2
)であり、ガラスエポキシ基板に塗布した硬化性組成物Aの硬化物はシクロオレフィンポ
リマー押出成形シートから綺麗に剥がれていた。
【0108】
[実施例2]
合成例2で合成した樹脂を用いた他は実施例1と同様の操作で硬化性組成物Bを作成し
、同様に評価を実施したところ、剪断密着力は0.79(N/mm2)であり、ガラスエポキシ基
板に塗布した硬化性組成物Bの硬化物はシクロオレフィンポリマー押出成形シートから綺麗に剥がれていた。
【0109】
[実施例3]
150mLの蓋付きポリ容器に合成例1で合成した樹脂4.97(g)を量り取った。そこに0.12(g)の芳香族スルホニウム塩(サンエイドSI-100L、三新化学工業(株)社製)および0.25(g)のフュームドシリカ(AEROSIL R974、日本アエロジル(株)社製)を加え、自転・公転ハイ
ブリッドミキサーにて撹拌5分間および脱泡5分間の条件で混練し、硬化性組成物Cを得た

【0110】
評価法−Bにより、評価硬化性組成物Cの剪断密着力測定用試験片を作成し評価を実施したところ、試験片5つの平均値で剪断密着力は1.26(N/mm2)であり、ガラスエポキシ基板に塗布した硬化性組成物Cの硬化物は、該硬化性組成物Cを塗布した基板に接着しており、硬化性組成物Cを塗布していないガラスエポキシ基板から綺麗に剥がれていた。
【0111】
[実施例4]
合成例2で合成した樹脂を用いた他は実施例3と同様の操作で硬化性組成物Dを作成し
、同様に評価を実施したところ剪断密着力は4.34(N/mm2)であり、ガラスエポキシ基板
に塗布した硬化性組成物Dの硬化物は、該硬化性組成物Dを塗布した基板に接着しており、硬化性組成物Dを塗布していないガラスエポキシ基板から綺麗に剥がれていた。
【0112】
[比較例1]
1,3-ビス(3-グリシジロキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンを用いた他
は実施例1と同様の操作で硬化性組成物Eを作成し、同様に評価を実施したところ、剪断
密着力は0.04(N/mm2)であり、ガラスエポキシ基板に塗布した硬化性組成物Eの硬化物
はシクロオレフィンポリマー押出成形シートから綺麗に剥がれていた。
【0113】
[比較例2]
ビスフェノール−A型液状エポキシ樹脂(jER-828、ジャパンエポキシレジン(株)社製)を用いた他は実施例1と同様の操作で硬化性組成物Fを作成し、同様に評価を実施した
ところ剪断密着力は0.08(N/mm2)であり、ガラスエポキシ基板に塗布した硬化性組成物
Fの硬化物はシクロオレフィンポリマー押出成形シートから綺麗に剥がれていた。
【0114】
[比較例3]
1,3-ビス(3-グリシジロキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンを用いた他
は実施例3と同様の操作で硬化性組成物Gを作成し、同様に評価を実施したところ剪断密
着力は0.71(N/mm2)であり、ガラスエポキシ基板に塗布した硬化性組成物Gの硬化物は
、該硬化性組成物Gを塗布した基板に接着しており、硬化性組成物Gを塗布していないガラスエポキシ基板から綺麗に剥がれていた。
【0115】
[比較例4]
ビスフェノール−A型液状エポキシ樹脂(jER-828、ジャパンエポキシレジン(株)社製)を用いた他は実施例4と同様の操作で硬化性組成物Hを作成し、同様に評価を実施した
ところ剪断密着力は0.89(N/mm2)であり、ガラスエポキシ基板に塗布した硬化性組成物
Hの硬化物は、該硬化性組成物Hを塗布したガラスエポキシ基板に接着しており、硬化性組成物Hを塗布していないガラスエポキシ基板から綺麗に剥がれていた。
【0116】
以上の実施例および比較例から明らかなように、本発明の接着剤用硬化性組成物は紫外線の照射により短時間で容易に硬化し、得られる硬化物は十分な接着性及びリペア(剥離)特性を示す。一方比較例で使用した従来の硬化性組成物は、熱硬化させれば本発明の硬化性組成物を紫外線硬化して得られた硬化物とほぼ同等の接着性及びリペア特性を示すものの、熱硬化には時間がかかり、また紫外線硬化では十分な接着力は得られない。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】図1は、合成例1の生成物の1H−NMRチャートを示す。
【図2】図2は、合成例1の生成物の13C−NMRチャートを示す。
【図3】図3は、合成例1の生成物のIRチャートを示す。
【図4】図4は、合成例2の生成物の1H−NMRチャートを示す。
【図5】図5は、合成例2の生成物の13C−NMRチャートを示す。
【図6】図6は、合成例2の生成物のIRチャートを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)、(2)又は(3)で表されるエポキシ基含有オルガノシロキサン化合物を含むことを特徴とする接着剤用硬化性組成物:
【化1】

【化2】

【化3】

(上記式(1)〜(3)中、R11は水素原子またはメチル基であり、R12は水素原子、メチル基またはフェニル基であり、R13は水素原子またはメチル基であり、R14、R15は独立に
置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、R16、R17は独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基または下記一般式(4)で表される一価炭化水素基であり、R18は水素原子、メチル基、エチル基またはフェニル基であり、n、
qは1以上の整数であり、pは0以上の整数であり、mは3から6までの整数である。)

【化4】

(上記式(4)において、R11は水素原子またはメチル基であり、R12は水素原子、メチル基またはフェニル基であり、R13は水素原子またはメチル基であり、*は結合手を示す。
)。
【請求項2】
さらにオニウム塩系光重合開始剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の接着剤用硬化性組成物。
【請求項3】
3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボン酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチルをさらに含む請求項2に記載の接着剤用硬化性組成物。
【請求項4】
前記エポキシ基含有オルガノシロキサン化合物の、全シロキサン単位中のエポキシ基含有シロキサン単位の割合が5〜80%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の接着剤用硬化性組成物。
【請求項5】
下記一般式(5)、(6)、又は(7)で表されるオルガノヒドロシロキサン化合物と、下記一般式(8)で表されるエポキシ基及びアルケニル基を含有する化合物とをヒドロシリル化反応させることにより、エポキシ基含有オルガノシロキサン化合物を製造する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の接着剤用硬化性組成物の製造方法:
【化5】

【化6】

【化7】

(上記式(5)〜(7)中、R14、R15は独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、R16、R17は独立に水素原子または置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、R18は水素原子、メチル基、エチル基またはフェニル基で
あり、n、qは1以上の整数であり、pは0以上の整数であり、mは3から6までの整数
である。);
【化8】

(上記式(8)中、R11は水素原子またはメチル基であり、R12は水素原子、メチル基またはフェニル基であり、R13は水素原子またはメチル基である。)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−106199(P2010−106199A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281805(P2008−281805)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】