説明

攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受

【課題】定格荷重が高く、ころの表面損傷を軽減した攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受を提供する。
【解決手段】攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受は、内輪12と、外径面が凸球面状の外輪14と、外輪14を内包し内径面が凹球面状の調心輪20と、内輪軌道面と外輪軌道面との間に転動自在に介在する複数のころ16と、隣り合うころ16間に介在させた間座18とを具備し、間座18の軸方向両端にころ端面16bと向き合う面をもった拡張部18bが設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型攪拌機の攪拌軸の支持に好適な調心輪付き円筒ころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンなどの化学物質の混練、攪拌に使用される大型の攪拌機は、おおかた長い攪拌軸を有し、その支持軸受間距離も長いために、運転中は攪拌軸が大きく撓む傾向がある。そのため、攪拌軸の支持軸受には、軸の撓みを許容できるだけの調心性が要求される。さらに、攪拌槽内部の温度は150℃程度と高いため、軸の熱膨張を許容できる必要がある。そのため、攪拌軸の支持軸受には、自動調心ころ軸受の調心性と、円筒ころ軸受のアキシャル方向への移動能力を兼ね備えた、特許文献1にみられるような調心輪付き円筒ころ軸受が多用されている。
【0003】
特許文献1に記載された調心輪付きころ軸受は、図7に示すように、円筒ころ軸受の外周に調心輪を付加した構造である。すなわち、内輪2と、外輪4と、複数の円筒ころ6と、保持器8と、調心輪10によって構成されている。内輪2は円筒状で、その円筒形の外周に軌道が形成されている。外輪4は内周の軌道の両側につばが形成されており、外周面は部分球面状である。内輪2の軌道と外輪4の軌道の間には、円筒ころ6が転動自在に介在させてあり、保持器8によって所定間隔に保持されている。調心輪10は、部分球面状内周面で外輪4の部分球面状外周面と球面接触している。したがって、内輪2と円筒ころ6の間でアキシャル方向に移動することができ、さらには外輪4と調心輪10との間で調心作用を発揮することができる。
【0004】
特許文献2には保持器に代えて間座を採用した円筒ころ軸受が記載されている。
【特許文献1】特開2001−271832号公報
【特許文献2】特許第3549530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
調心輪付き円筒ころ軸受は、内輪や外輪のほかに調心輪を設けるスペースを要するため、ころ径を大きくすることができず、同サイズの自動調心ころ軸受よりも定格荷重が大きく劣る。ここで、攪拌軸の回転数は数min−1と低速であるため、調心輪付き円筒ころ軸受は、総転動体軸受とすることで定格荷重を増大させることもできるが、総転動体軸受は隣り合うころ同士が逆回転で接触するため、ころにスミアリングと呼ばれる表面損傷を引き起こすおそれがある。とくに、攪拌槽に近い軸受は、高温にさらされるため軸受中のグリースが軟化しやすく、低速回転という使用条件も相俟って、転がり面において油膜が形成されにくく、スミアリング損傷が発生しやすい傾向にある。さらに、総転動体軸受は保持器がないために、外輪または内輪のいずれか一方を取り外すところが脱落してしまうため、調心輪+外輪+ころのサブアセンブリと内輪(または、内輪+ころのサブアセンブリと調心輪+外輪のサブアセンブリ)を装置に別々に取り付けることができず、取り扱い性もよくない。
【0006】
特許文献2に記載された円筒ころ軸受では、間座の動きを内輪および外輪の軌道面とつば側面とによって規制するため、必然的にころの径方向断面と同程度の大きさの間座を介在させることになり、ころ間に多くの潤滑剤を保持できないほか、運転中の熱膨張によって間座が軌道輪のつば側面間で突っ張るおそれがある。さらに、間座を内輪または外輪の軌道面に摺動させるため、転がり面における円滑な油膜形成が損なわれるおそれがある。
【0007】
本発明の主要な目的は、定格荷重が高く、ころの表面損傷を軽減した攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受は、内輪と、外径面が凸球面状の外輪と、外輪を内包し内径面が凹球面状の調心輪と、内輪軌道面と外輪軌道面との間に転動自在に介在する複数のころと、隣り合うころ間に間座を具備する調心輪付き円筒ころ軸受において、前記間座の軸方向両端にころ端面と向き合う拡張部を設けたことを特徴とするものである。このような構成を採用することで、より多くのころを軸受に組み込むことができ、定格荷重の高い調心輪付き円筒ころ軸受を提供することができる。さらに、総転動体軸受と異なり、隣り合うころの接触を回避することができ、ころ同士が逆回転で摺動することがないため、ころの自転が阻害されにくく、かじりやスミアリングといった表面損傷を大幅に軽減することができる。
【0009】
また、間座の軸方向両端にころ端面と向かい合う面をもった拡張部を設けることで、間座の軸方向の動きを拡張部ところ端面とで規制することができる。半径方向の動きは、ころ転動面または内輪つば外径もしくは外輪つば内径にて規制することができる。すなわち、間座の移動規制手段として内輪や外輪の軌道面やつば側面を使用しないため、隣り合うころ間において、間座を広域にわたって介在させる必要がなく、ころ間に多くの潤滑剤を保持させることができる。また、軸受が高温にさらされても、間座の拡張部ところ端面との間のすきまがつぶれることもない。さらに、間座を内輪つば外径または外輪つば内径に案内させる場合、拡張部はその案内面積を拡大する効果をも発揮するため、案内面において油膜が形成されやすくなる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受において、間座のころ転動面と向き合う面がころのピッチ円を跨いで延在する凹形状であり、かつ、間座が内輪つば外径面または外輪つば内径面によって案内され、隣り合うころで間座を挟み込んだとき、間座と前記内輪つば外径面または外輪つば内径面との間にすきまがあることを特徴とするものである。軌道面上で間座をころで挟み込むと、凹形状の底を接触位置として間座の軸受半径方向における位置が決まる。そのとき、間座と軌道輪との間にすきまがあるように設定することで、間座が隣り合うころによって軌道輪に押し付けられる状態を回避することができる。すなわち、上記設定により間座は基本的にはころ案内となり、軸受の円周方向すきまに位置する間座だけが隣り合うころの拘束から解放され、回転速度が高い場合には外輪つば内径面に、低い場合にはころに案内される仕様となる。解放された間座には、自重、遠心力以外に軸受半径方向の力が作用しないため、間座の案内面における発熱や磨耗を軽減させることができる。とくに、グリース潤滑で使用する場合、内輪つば外径面または外輪つば内径面と接触する間座の案内面は潤滑不良に陥りやすいため、本発明の適用が望ましい。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2の攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受において、前記間座の外輪つば内径面と向き合う面が、外輪つば内径の曲率半径よりも小さい曲率半径の凸曲面であることを特徴とするものである。また、請求項4の発明は、請求項1または2の攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受において、前記間座の内輪つば外径面と向き合う面が、内輪つば外径の曲率半径よりも大きい曲率半径の凹曲面であることを特徴とするものである。このような構成を採用することで、いわゆる「くさび膜効果」(運動方向に狭まっているくさび状のすきまに、流体が粘性によって引き込まれて圧力すなわち負荷能力を発生する効果)が得られ、間座の案内面における発熱や磨耗を軽減させることができる。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受において、ころと間座でキーストン効果を発揮することを特徴とするものである。このような構成を採用することで、内輪を取り外してもころおよび間座が脱落しない仕様を作り出すことができ、内輪の別体組み付けが可能となる。すなわち、あらかじめ内輪を軸に、調心輪と外輪ところのサブアセンブリをハウジングに取り付け、軸ごと内輪を挿入するといった組み付けが可能となる。すなわち、従来の保持器付き円筒ころ軸受同様の組み付けが可能となる。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受において、内輪と外輪ところに耐熱処理が施してあることを特徴とするものである。このような構成を採用することで、高温雰囲気下における軸受の寸法変化を抑えることができる。耐熱処理の具体例としては、焼入れ後に高温焼戻しすることが挙げられる。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受において、シリコン系グリースまたはフッ素系グリースを封入したことを特徴とするものである。このような構成を採用することで、高温雰囲気下におけるグリース寿命を延伸することができ、ひいては軸受寿命を延伸することができる。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受において、前記間座に潤滑剤保持部を設けたことを特徴とするものである。潤滑剤保持部は潤滑剤の保持を目的とするもので、たとえば、有底の凹部、溝、貫通穴、その他の種々形態をとることができる。
【0016】
請求項9の発明は、請求項1ないし8のいずれかの攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受において、間座をシリコン樹脂またはフッ素樹脂で形成したことを特徴とするものである。このような構成を採用することで、ころ転動面のかじりやスミアリングといった表面損傷を大幅に軽減することができる。樹脂材は間座の製作上好適であるだけでなく、一般的に優れた自己潤滑性を有し、ころ転動面と円滑に摺動する。なかでも、シリコン樹脂やフッ素樹脂は耐熱性に優れているため、高温雰囲気下における強度低下を抑えることができる。
【0017】
請求項10の発明は、請求項1ないし8のいずれかの攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受において、間座を焼結合金で形成したことを特徴とするものである。このような構成を採用することで、ころ転動面のかじりやスミアリングといった表面損傷を大幅に軽減することができる。焼結合金は上述の樹脂と同様、間座の製作上好適であるほか、その気孔に潤滑剤を含浸させることができるため、ころ転動面と円滑に摺動する。さらに、線膨張係数が比較的小さいため、高温雰囲気下における熱膨張を抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、大型攪拌機の攪拌軸の支持軸受として、定格荷重が高く、ころの表面損傷を軽減した調心輪付き円筒ころ軸受を提供することができ、攪拌機の長寿命化、信頼性向上に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に従って本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
図1に示す調心輪付き円筒ころ軸受は、内輪12と外輪14と円筒ころ16と間座18と調心輪20を主要な構成要素としている。内輪12は円筒状で、その円筒形の外周面が軌道面となっている。外輪14は両つば付きで、軌道の両側につばが形成してある。円筒ころ16は内輪12の軌道と外輪14の軌道との間で転動自在で、転動面を符号16aで指してある。円筒ころ16の端面16bは外輪14のつばの内側面と接触する。外輪14の外周面は部分球面状で、一方、調心輪20の内周面も部分球面状で、両者は球面嵌合している。
【0021】
内輪12と外輪14と円筒ころ16に耐熱処理、たとえば焼入れ後に高温焼戻しを施すことにより、高温雰囲気下における軸受の寸法変化を抑えることができる。また、シリコン系グリースまたはフッ素系グリースを封入することで、高温雰囲気下におけるグリース寿命を延伸することができ、ひいては軸受寿命を延伸することができる。シリコン系グリースとしては、ダウコーニング社製の「FS345 No.2」や東レシリコーン社製の「SH33L」などが挙げられ、フッ素系グリースとしてはNOKクリューバー社製の「バリエルタL55/2」などが挙げられる。
【0022】
隣り合う円筒ころ16間に間座18が介在させてある。間座18は概ね板状で、円筒ころ16の転動面16aと接触する面、すなわち、ころ接触面を符号18aで指してある。ころ接触面18aの断面形状は、円筒ころ16の転動面16aを受け入れる凹形状、たとえば凹円弧状である。軸受に組み込んだ状態で、間座18のころ接触面18aは円筒ころ16のピッチ円を跨いで軸受半径方向に延在する。したがって、間座18は円筒ころ16だけで案内、つまりころ案内とすることができるが、以下の実施例においては、図4に示すとおり、外輪14のつばの内径面に案内させる仕様について説明する。
【0023】
図2に示すように、間座18の長手方向の両端に拡張部18bが形成してあり、互いに対向する拡張部18bの内側面は、軸受に組み込んだ状態では円筒ころ16の端面16bと向かい合う。そうして、間座18の拡張部18bと円筒ころ16との干渉により、間座18の軸受軸方向の移動が規制される。間座18の拡張部18の上面、つまり軸受に組み込んだ状態で軸受の半径方向外側を向く面は、図4に示すとおり、外輪14のつばの内径面と向かい合う。そして、上に述べたとおり、軸受の運転中、間座18は外輪14のつばの内径面によって案内させることもできる。間座18の外輪14のつば内径面と向き合う面は凸曲面であり、その曲率半径は外輪14のつば内径面の曲率半径よりも小さく設定してある。そのため、間座18と外輪14のつばとの間に潤滑油のくさび膜効果が発生し、間座18の磨耗を軽減させる。なお、軸受の円周方向を向いた拡張部18bの端縁には、外輪14のつば内径面とのエッジ接触を避けるため、面取りを設けるのが望ましい。
【0024】
間座18のころ接触面18aは円筒ころ16のピッチ円を跨いで延在する凹形状であり、かつ、間座18が外輪14のつば内径面によって案内される。この場合、外輪14の軌道面上で間座18を円筒ころ16で挟み込むと、凹形状のころ接触面18aの底を接触位置として間座18の軸受半径方向における位置が決まる。そのとき、間座18と軌道輪ここでは外輪14のつば内径面との間にすきまSr(図4)があるように設定することで、図3に示すような、間座18が隣り合う円筒ころ16によって軌道輪14に押し付けられる状態を回避することができる。すなわち、上記設定により間座18は基本的にはころ案内となり、軸受の円周方向すきまに位置する間座18だけが隣り合う円筒ころ16の拘束から解放され、回転速度が高い場合には外輪14のつば内径面に、低い場合にはころに案内される仕様となる。解放された間座18には、自重、遠心力以外に軸受半径方向の力が作用しないため、間座18の案内面(内輪つば外径面または外輪つば内径面と接触する面)における発熱や磨耗が軽減する。
【0025】
図4に示すように、外輪案内の場合、間座18の、外輪14のつば内径面と向き合う面を、外輪14のつば内径面の曲率半径R2よりも小さい曲率半径R1の凸曲面とするのが好ましい。また、図示は省略するが、内輪案内の場合、間座18の、内輪12のつば外径面と向き合う面を、内輪12のつば外径面の曲率半径よりも大きい曲率半径の凹曲面とするのが好ましい。このような構成を採用することにより、いわゆる「くさび膜効果」(運動方向に狭まっているくさび状のすきまに、流体が粘性によって引き込まれて圧力すなわち負荷能力を発生する効果)が得られ、間座18の案内面(内輪つば外径面または外輪つば内径面と接触する面)における発熱や磨耗が軽減する。
【0026】
円筒ころ16と間座18でキーストン効果を発揮するようにすることで、内輪12を取り外しても円筒ころ16および間座18が脱落しない仕様を作り出すことができる。したがって、内輪12の別体組み付け、すなわち、あらかじめ内輪12を軸に、調心輪20と外輪14と円筒ころ16のサブアセンブリをハウジングに取り付け、軸ごと内輪12を挿入するといった組み付けが可能となる。すなわち、円周方向すきまS(転動体を、隣り合う転動体と接するように寄せたとき、円周方向にできるすきま)を所定の範囲とすることで、運転中の昇温によって円周方向すきまが潰れることがなく、さらに、円筒ころ16と間座18でキーストン効果が発揮され、内輪12を抜いても外輪14から円筒ころ16および間座18が脱落しない仕様となる。なお、キーストン効果が発揮されるための条件は、図5に示すように、外輪14の内周に円筒ころ16と間座18を交互に配列していき、最後の1個の円筒ころ16の直径とその両脇に位置すべき一対の間座18の肉厚との和をAとし、配列済みのころ列の終端間距離をScとしたとき、A>Scで表される。
【0027】
図5は、調心輪付き円筒ころ軸受の組み立て過程を例示したものである。図1の実施例の場合を例にとって組み立て手順を説明すると次のとおりである。外輪14の内周にころ16と間座18を交互に配列していき、最後に組み込むころ16の両脇に位置すべき間座18を、配列済みのころ16の転動面16aの軸受内径側に沿わせた上で、最後のころ16を外輪14に向かって押し込むことにより、両脇の間座18をスライドさせつつ、ころ16を組み込む。間座18のころ転動面16aと向き合う面すなわちころ接触面18aはころ転動面16aを受け入れる凹形状である。なお、最後のころ16を外輪14に向かって挿入する際に、間座18の両端の拡張部18bをころ端面16bに引っ掛けておくことができるので、間座18をスライドさせる間も間座18が軸方向にずれることがなく、作業性が著しく向上する。
【0028】
図6は間座18に潤滑剤の保持を目的とした潤滑剤保持部18cを設けた種々変形例を示す。図6(A)は、ころ接触面18aに互いに独立した窪みの形態をした潤滑剤保持部18cを設けた例を示す。図6(B)は、ころ接触面18aに間座18の長手方向、言い換えれば軸受軸方向に延びる2本の溝の形態をした潤滑剤保持部18cを設けた例を示す。図6(C)は、ころ接触面18aに、軸受半径方向に延びる、軸受軸方向に離間した2本の溝の形態をした潤滑剤保持部18cを設けた例を示す。図6(D)は、拡張部18bの内側面に、軸受半径方向に延びる溝の形態をした潤滑剤保持部18cを設けた例を示す。図6(E)は、ころ接触面18aに、貫通穴の形態をした潤滑剤保持部18cを設けた例を示す。図6(F)は、ころ接触面18aの上部と下部、言い換えれば軸受半径方向の外側と内側に、切り欠きの形態をした潤滑剤保持部18cを設けた例を示す。ここに例示した潤滑剤保持部は各別に採用するほか、適宜組み合わせて採用することもできる。
【0029】
間座18の材質は、樹脂であっても金属であってもよい。間座18をシリコン樹脂またはフッ素樹脂で形成した場合、ころ転動面のかじりやスミアリングといった表面損傷を大幅に軽減することができる。樹脂材は間座18の製作上好適であるだけでなく、一般的に優れた自己潤滑性を有し、ころ転動面16aと円滑に摺動する。なかでも、シリコン樹脂やフッ素樹脂は耐熱性に優れているため、高温雰囲気下における強度低下を抑えることができる。
【0030】
間座18を焼結合金で形成した場合、ころ転動面のかじりやスミアリングといった表面損傷を大幅に軽減することができる。焼結合金は上述の樹脂と同様、間座18の製作上好適であるほか、その気孔に潤滑剤を含浸させることができるため、ころ転動面16aと円滑に摺動する。さらに、線膨張係数が比較的小さいため、高温雰囲気下における熱膨張を抑えることができる。なお、焼結合金の製作方法としては、固相焼結であっても液相焼結であってもよい。固相焼結の場合、その気孔内に効果的に潤滑剤を含浸させることができる。液相焼結の場合、固相焼結に見られる気候を融点の低い金属で埋めることができ、間座の強度を向上させることができる。例を挙げるならば、焼結母材を鉄とし、封孔金属を銅とする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例を示す調心輪付き円筒ころ軸受の破断斜視図
【図2】図1の軸受における間座の拡大斜視図
【図3】調心輪を除いた円筒ころ軸受の部分側面図
【図4】調心輪を除いた図1の軸受の部分側面図
【図5】図1の軸受の組み立て過程を示す横断面図
【図6】間座の種々変形例を示す斜視図
【図7】従来の技術を示す調心輪付き円筒ころ軸受の断面図
【符号の説明】
【0032】
12 内輪
14 外輪
16 ころ
16a 転動面
16b 端面
18 間座
18a ころ接触面
18b 拡張部
18c 凹部
20 調心輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と、外径面が凸球面状の外輪と、外輪を内包し内径面が凹球面状の調心輪と、内輪軌道面と外輪軌道面との間に転動自在に介在する複数のころと、隣り合うころ間に間座を具備する調心輪付き円筒ころ軸受において、前記間座の軸方向両端にころ端面と向き合う拡張部を設けた攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受。
【請求項2】
前記間座のころ転動面と向き合う面がころのピッチ円を跨いで延在する凹形状であり、かつ、間座が内輪つば外径面または外輪つば内径面によって案内され、隣り合うころで間座を挟み込んだとき、間座と前記内輪つば外径面または外輪つば内径面との間にすきまがある請求項1の攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受。
【請求項3】
前記間座の外輪つば内径面と向き合う面が、外輪つば内径の曲率半径よりも小さい曲率半径の凸曲面である請求項1または2の攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受。
【請求項4】
前記間座の内輪つば外径面と向き合う面が、内輪つば外径の曲率半径よりも大きい曲率半径の凹曲面である請求項1または2の攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受。
【請求項5】
ころと間座でキーストン効果を発揮する請求項1ないし4のいずれかの攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受。
【請求項6】
内輪と外輪ところに耐熱処理が施してある請求項1ないし5のいずれかの攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受。
【請求項7】
シリコン系グリースまたはフッ素系グリースを封入した請求項1ないし6のいずれかの攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受。
【請求項8】
前記間座に潤滑剤保持部を設けた請求項1ないし7のいずれかの攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受。
【請求項9】
前記間座をシリコン樹脂またはフッ素樹脂で形成した請求項1ないし8のいずれかの攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受。
【請求項10】
前記間座を焼結合金で形成した請求項1ないし8のいずれかの攪拌機用調心輪付き円筒ころ軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−247849(P2007−247849A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74901(P2006−74901)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】