説明

検査方法

【課題】数十μmから百数十μm程度の孔径の孔においても正確な検査が実施できる検査方法を提供する。
【解決手段】検査方法は、孔基板に形成された孔の状態を検査する検査方法であって、孔基板における第一の面の方向から撮影した孔の孔画像を取得する画像取得工程と、孔画像から孔の状態を判定する状態判定工程と、を有し、状態判定工程は、孔画像における孔基板の第一の面と反対側の第二の面から孔の壁面にかけて形成された膜の端面の部分の端面画像から、端面の位置である膜端位置を取得する膜端位置取得工程と、膜端位置によって膜の第二の面からの入り込み量を判定する入り込み量判定工程と、を有す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔基板に形成された孔の状態を検査する検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液状体を液滴として吐出し、任意の位置に着弾させることによって、所定の量の液状体を所定の位置に精度よく配置する液状体吐出装置が知られている。所定の量の液状体を所定の位置に精度よく配置するためには、吐出量や吐出方向が正確であることが必要であり、液状体を吐出する吐出ノズル孔は、所定の形状であることや、壁面が所定の状態であること、などが厳密に求められる。吐出ノズル孔を有するノズル部材の製造においては、吐出ノズル孔の形状や、異物の有無も含む壁面の状態などの精密な検査が実施されている。しかし、吐出ノズル孔のような小径孔を精密に検査することは困難であり、確実に検査を実施するための検査方法や検査装置が工夫されている。
【0003】
特許文献1には、ホール内に挿入した投光部からホール内壁に光を投射し、反射光を検出することによって、ホールの内壁の表面状態を抽出し、良否を検査できるホール内検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−174454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液状体吐出装置の吐出ノズル孔の孔径は、数十μmから百数十μm程度である。特許文献1に開示されたような装置を用いるためには、数十μmから百数十μm程度の孔径の孔に遊嵌させることができるような投光部を形成することが必要であるが、そのような微細な投光部を形成することは物理的にほとんど不可能であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる検査方法は、孔基板に形成された孔の状態を検査する検査方法であって、前記孔基板における第一の面の方向から撮影した前記孔の孔画像を取得する画像取得工程と、前記孔画像から前記孔の状態を判定する状態判定工程と、を有し、前記状態判定工程は、前記孔画像における前記孔基板の前記第一の面と反対側の第二の面から前記孔の壁面にかけて形成された膜の端面の部分の端面画像から、前記端面の位置である膜端位置を取得する膜端位置取得工程と、前記膜端位置によって前記膜の前記第二の面からの入り込み量を判定する入り込み量判定工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
本適用例にかかる検査方法によれば、画像における膜の端面の部分の端面画像から、膜端位置を取得し、膜の第二の面からの入り込み量を判定する。端面画像が焦点の合った画像である場合、画像を撮影する撮影装置の焦点位置が膜の端面に略合致しているため、端面画像が焦点の合った画像となる焦点位置を検出することで膜端位置を検出することができる。端面画像を含む孔画像を取得することや、焦点が合った孔画像を取得することは、撮影装置の分解能の範囲であれば、微小な孔の孔画像でも容易であることから、微小な孔であっても膜端位置を容易に検出することができる。これにより、膜部の第二の面からの入り込み量の正確な判定を容易に実施することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる検査方法は、前記膜端位置取得工程は、環状形状である前記端面画像の環形状を構成する第一円又は第二円の近似円である第一近似円及び第二近似円を求める近似円取得工程と、前記第一近似円の直径と前記第二近似円の直径との和である近似円径和を径基準値と比較し、前記近似円径和の前記径基準値との差が閾値以下となる前記孔画像を撮像する際の焦点位置を求める焦点位置取得工程とを有することが好ましい。
【0010】
この検査方法によれば、端面画像を構成する第一円又は第二円の第一近似円及び第二近似円を求め、当該近似円の直径の和である近似円径和を径基準値と比較し、近似円径和の和基準値との差が閾値以下となる孔画像を撮像する際の焦点位置を求めることで、膜端位置を取得する。
端面画像は、膜の端面が必ずしも平坦ではないことに起因してぼけていたり、例えば付着物などがあった場合には、一部が欠けて円でなくなっていたりする可能性がある。このような端面画像の部分的な欠陥に起因して、第一円の直径と第二円の直径との和は求められない可能性がある。端面画像を構成する第一円及び第二円に代えて第一近似円及び第二近似円を用いることで、端面画像の部分的な欠陥の影響に起因して近似円径和を求めることができなくなることを実質的になくすることができる。
端面画像が焦点が合っていない画像であった場合、端面画像の境界線である第一円及び第二円は、境界線が不明瞭になり境界線の線幅が広くなった状態となると共に、直径が変化する。したがって、端面画像が焦点が合っていない画像であった場合、第一近似円及び第二近似円の直径も、あるべき値から離れた値となる。近似円径和の和基準値との差が閾値以下となる孔画像を撮像する際撮像装置の焦点位置は、焦点位置が膜の端面に略合っている。これにより、近似円径和の和基準値との差が閾値以下となる孔画像を撮像する際の焦点位置を求めることで、膜端位置を取得することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる検査方法は、前記入り込み量判定工程が、前記孔が良品孔か不良品孔の候補である不良候補孔かを判定する予備判定工程と、前記予備判定工程において前記不良候補孔と判定された前記孔について判定する本判定工程と、を有することが好ましい。
【0012】
この検査方法によれば、予備判定工程と本判定工程の2回の判定工程を実施する。2回の判定工程を実施することで、判定工程が1回の場合にくらべて、誤った判定を実施する可能性を低減することができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる検査方法は、前記予備判定工程では、判定対象の前記孔の前に検査した所定の数の前記孔における前記膜端位置の平均位置を基準位置として判定することが好ましい。
【0014】
この検査方法によれば、現在の検査対象の孔の前に検査した孔における膜端位置を基準位置とする。膜端位置は、撮像装置との相対位置であるため、例えば孔基板の微小なうねりなどのように撮像装置とはかかわりのない原因の影響によって、値が変わる可能性がある。影響の大きさは、それぞれの孔ごとにばらつきがある。判定対象の孔の前に検査した孔は、判定対象の孔と環境条件の差が小さい可能性が高いため、撮像装置とはかかわりのない、それぞれの孔ごとにばらつきのある原因の影響による判定誤差の発生を抑制することができる。所定の数を複数とし、複数の孔における膜端位置の平均位置を基準位置とすることで、単一の孔の膜端位置を基準位置とする場合にくらべて孔の個体差の影響を抑制することができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例にかかる検査方法は、前記本判定工程が、複数の前記孔からなる孔群において、前記予備判定工程において前記良品孔と判定された前記孔と当該孔に対応する前記膜端位置とから予測膜端位置を求める予測膜端位置取得工程と、前記不良候補孔の前記膜端位置を前記予測膜端位置と比較する比較工程と、を有することが好ましい。
【0016】
この検査方法によれば、予測膜端位置を求め、不良候補孔の膜端位置を予測膜端位置と比較することで良否判定を実施する。膜端位置の測定値は、撮像装置とはかかわりのない要因によって、複数の孔に略同等の影響と、それぞれの孔ごとにばらつきのある影響とをうける可能性がある。複数の孔に略同等の影響は、良品孔と判定された孔についても、不良候補孔と判定された孔についても、略同等であり、良品孔と判定された孔に対応する膜端位置から求められた予測膜端位置は、当該複数の孔に略同等の影響を受けた状態での膜端位置である。不良候補孔の膜端位置を予測膜端位置と比較することで、不良候補孔の膜端位置と予測膜端位置とに共通する、撮像装置とはかかわりのない要因による複数の孔に略同等の影響を排除した判定を実施することができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例にかかる検査方法は、前記予測膜端位置は、前記孔が属する前記孔群における前記孔の位置と当該孔に対応する前記膜端位置の実測値とから求められる前記孔の位置と当該孔に対応する前記膜端位置との関係式における、前記孔の位置に対応する前記膜端位置であることが好ましい。
【0018】
この検査方法によれば、予測膜端位置は、孔の位置と膜端位置との関係式における孔の位置に対応する膜端位置である。撮像装置とはかかわりのない要因によるそれぞれの孔ごとにばらつきのある影響は、孔基板における孔の位置が互いに異なることがばらつき要因のひとつである。孔の位置と膜端位置との関係式を求めることにより、孔の位置に対応する予測膜端位置を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は、液滴吐出装置全体の概略構成を示す外観斜視図。(b)は、液滴吐出装置が備える液滴吐出ヘッドの概略構成を示す外観斜視図。
【図2】(a)は、個別のノズル基板の平面形状を示す平面図。(b)は、吐出ノズルの断面形状を示す断面図。(c)は、マザーノズル基板の平面形状を示す平面図。
【図3】(a)は、ノズル検査装置の構成を示す説明図。(b)は、マザー基板治具の形状を示す平面図。(c)は、マザー基板治具の形状を示す側面図。
【図4】吐出ノズル検査工程の各工程を示すフローチャート。
【図5】吐出ノズルを撮影した画像の例を示す説明図。
【図6】予測膜端位置を例示する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、検査方法について、図面を参照して説明する。本実施形態は、液滴吐出装置が備えるインクジェット方式の液滴吐出ヘッドが有するノズル基板における吐出ノズル孔を検査する検査方法を例にして説明する。なお、以下の説明において参照する図面では、図示の便宜上、部材又は部分の縦横の縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0021】
<液滴吐出装置>
最初に、検査対象である吐出ノズル孔が形成されたノズル基板を有するインクジェット方式の吐出ヘッドを備える液滴吐出装置1について、図1を参照して説明する。図1は、液滴吐出装置の概略構成を示す外観斜視図である。図1(a)は、液滴吐出装置全体の概略構成を示す外観斜視図であり、図1(b)は、液滴吐出装置が備える液滴吐出ヘッドの概略構成を示す外観斜視図である。
【0022】
図1に示すように、液滴吐出装置1は、液状体を液滴として吐出するインクジェット方式の液滴吐出ヘッド20を有するヘッド機構部2と、液滴吐出ヘッド20から吐出された液滴の吐出対象であるワークWを載置するワーク載置台33を有するワーク機構部3と、液滴吐出ヘッド20への液状体の供給を行う機能液供給部4と、液滴吐出ヘッド20の保守を行うメンテナンス装置部5と、を備えている。また、これら各機構部等を総括的に制御する吐出装置制御部6を備えている。さらに、液滴吐出装置1は、床上に設置された複数の支持脚8と、支持脚8の上側に設置された定盤9とを備えている。
【0023】
定盤9の上面には、ワーク機構部3が配設されている。ワーク機構部3は、定盤9の長手方向(X軸方向)に延在している。ワーク機構部3の上方には、定盤9に固定された2本の支持柱で支持されているヘッド機構部2が、に配設されている。ヘッド機構部2は、ワーク機構部3と直交する方向(Y軸方向)に延在している。定盤9の傍らには、ヘッド機構部2の液滴吐出ヘッド20に連通する供給管を有する機能液供給部4の液状体タンクなどが配置されている。ヘッド機構部2の一方の支持柱の近傍には、メンテナンス装置部5がワーク機構部3と並んでX軸方向に延在して配設されている。さらに、定盤9の下側に、吐出装置制御部6が収容されている。
【0024】
ヘッド機構部2は、液滴吐出ヘッド20を有するヘッドユニット21と、ヘッドユニット21を支持するヘッドキャリッジ22とを有し、ヘッドキャリッジ22をY軸方向に移動させることで、液滴吐出ヘッド20をY軸方向に自在に移動させる。また、移動した位置に保持する。ワーク機構部3は、ワーク載置台33をX軸方向に移動させることで、ワーク載置台33に載置されたワークWをX軸方向に自在に移動させる。また、移動した位置に保持する。
【0025】
液滴吐出ヘッド20を、Y軸方向の吐出位置まで移動させて停止させ、下方にあるワークWのX軸方向の移動に同調させて、液状体を液滴として吐出させる。X軸方向に移動させるワークWと、Y軸方向に移動させる液滴吐出ヘッド20とを相対的に制御することにより、ワークW上の任意の位置に液滴を着弾させることで、所望する描画などを行うことが可能である。
【0026】
図1(b)に示すように、液滴吐出ヘッド20は、ノズル基板25を備えている。ノズル基板25には、多数の吐出ノズル24が略一直線状に並んだノズル列24Aが2列形成されている。吐出ノズル24から機能液を液滴として吐出し、対向する位置にあるワークWなどに着弾させることで、当該位置に機能液を配置する。ノズル列24Aは、液滴吐出ヘッド20が液滴吐出装置1に装着された状態で、図1(a)に示したY軸方向に延在している。ノズル列24Aにおいて吐出ノズル24は等間隔のノズルピッチで並んでおり、2列のノズル列24A間で、吐出ノズル24の位置がY軸方向に半ノズルピッチずれている。したがって、液滴吐出ヘッド20としては、Y軸方向に半ノズルピッチ間隔で機能液の液滴を配置することができる。
【0027】
<マザーノズル基板>
次に、検査対象となるマザーノズル基板25A及び吐出ノズル24について、図2を参照して説明する。ノズル基板25は、複数のノズル基板25がマトリックス状に区画形成されるマザーノズル基板25Aの形で製造され、吐出ノズル24の検査もマザーノズル基板25Aの状態で実施する。
図2は、マザーノズル基板の概要を示す説明図である。図2(a)は、個別のノズル基板の平面形状を示す平面図であり、図2(b)は、吐出ノズルの断面形状を示す断面図であり、図2(c)は、マザーノズル基板の平面形状を示す平面図である。
【0028】
図2(a)に示すように、ノズル基板25は、略長方形形状の板に多数の吐出ノズル24が略一直線状に並んだノズル列24Aが2列形成されている。図2(a)に示したノズル形成面25aは、ノズル基板25が液滴吐出ヘッド20に組み込まれた状態で、液滴吐出ヘッド20の外面となる面である。図2(b)に示すように、ノズル形成面25aには、撥液メッキ27が形成されている。吐出ノズル24は丸孔であり、撥液メッキ27は、ノズル形成面25aに開口した吐出ノズル24の壁面の一部にも形成されている。吐出ノズル24の壁面に撥液メッキ27が形成されている部分のノズル形成面25aからの長さを、メッキ入込量dと表記する。吐出ノズル24の壁面に形成された撥液メッキ27の端を、メッキ端部27aと表記する。
【0029】
ノズル基板25におけるノズル形成面25aと反対側の圧力室面25bは、ノズル基板25が液滴吐出ヘッド20に組み込まれた状態で、機能液が溜められており、溜められた機能液を液滴として吐出するための圧力を付与する圧力室に臨む面である。吐出ノズル24の圧力室面25b側の端には、ノズル斜面部26が形成されている。ノズル斜面部26に囲まれた空間と吐出ノズル24とで、円錐台の頂部が円柱状に伸びた形状の空間を形成している。メッキ端部27aと圧力室面25bとの距離を、メッキ端部深さhと表記する。なお、図2(b)に示したメッキ端部27aは略平坦であり、圧力室面25bと略平行であり、角部は略直角な角であるが、実際は、微小なうねりがあり、圧力室面25bに対して傾いた斜面であり、角部は曲面である。
【0030】
図2(c)に示すように、ノズル基板25は、マザーノズル基板25A上にマトリックス状に形成されており、マザーノズル基板25Aを分割することにより取り出される。図2(c)に2点鎖線で示した略長方形形状の領域が、分割されて1個のノズル基板25となる部分である。マザーノズル基板25Aにおけるノズル基板25となる部分以外の部分には、吐出ノズル24を形成する際に使用する基準孔(図示省略)などが形成されている。1枚のマザーノズル基板25Aには、例えば、12個のノズル基板25が形成される。マザーノズル基板25Aの分割方法としては、ダイシング、レーザーカット、プレス等を用いることができる。
【0031】
<ノズル検査装置>
次に、本実施形態で用いるノズル検査装置40について、図3を参照して説明する。図3は、ノズル検査装置及びマザー基板治具の概要を示す説明図である。図3(a)は、ノズル検査装置の構成を示す説明図であり、図3(b)は、マザー基板治具の形状を示す平面図であり、図3(c)は、マザー基板治具の形状を示す側面図である。
【0032】
図3(a)に示すように、ノズル検査装置40は、撮像装置41と、撮像装置昇降機構61と、基板移動機構51と、制御ユニット71と、を備えている。
図3(b)及び図3(c)に示すように、マザー基板治具30は、上治具枠30aと、下治具枠30bと、を備えている。上治具枠30aには枠開口31aが、下治具枠30bには枠開口31bが、それぞれ形成されている。枠開口31a及び枠開口31bは、ノズル基板25の平面形状と略相似形状の平面形状を有する角孔であり、マザーノズル基板25Aにおける12個のノズル基板25に対応して、それぞれ12個形成されている。上治具枠30aと下治具枠30bとの間にマザーノズル基板25Aを挟み、図示省略した固定機構によって上治具枠30aと下治具枠30bとを固定することによって、マザー基板治具30にマザーノズル基板25Aを保持させる。マザー基板治具30に保持されたマザーノズル基板25Aのノズル基板25における吐出ノズル24は、枠開口31a又は枠開口31bを介して観察可能である。また、枠開口31a又は枠開口31bを介して照明光を吐出ノズル24に照射することが可能である。
【0033】
図3(a)に示すように、ノズル検査装置40の基板移動機構51は、X軸スライド機構52と、Y軸スライド機構53と、回動機構54と、ステージ55と、を備えている。
マザーノズル基板25Aを保持したマザー基板治具30を、ステージ55に載置して、図示省略した固定装置を用いて固定することによって、マザーノズル基板25Aをステージ55上に固定する。
ステージ55は、Y軸スライド機構53に固定されており、Y軸スライド機構53によってY軸方向に移動自在かつ任意の位置に保持可能である。Y軸方向は、図3(a)に矢印Yで示した方向である。ステージ55上に固定されたマザーノズル基板25Aは、Y軸スライド機構53によって、Y軸方向に移動自在かつ任意の位置に保持可能である。
Y軸スライド機構53は回動機構54に固定されており、回動機構54によってステージ55の面に垂直な方向のZ軸回りに回動自在かつ任意の位置に保持可能である。ステージ55上に固定されたマザーノズル基板25Aは、回動機構54によって、Z軸回りに回動自在かつ任意の方向に保持可能である。
回動機構54は、X軸スライド機構52に固定されており、X軸スライド機構52によってX軸方向に移動自在かつ任意の位置に保持可能である。X軸方向は、Y軸方向及びZ軸方向に直交する方向である。ステージ55上に固定されたマザーノズル基板25Aは、X軸スライド機構52によって、X軸方向に移動自在かつ任意の位置に保持可能である。
【0034】
X軸スライド機構52、Y軸スライド機構53、回動機構54、及びステージ55の中央には、照明開口52a、照明開口53a、照明開口54a、又は照明開口55aが形成されている。ステージ55上に固定されたマザー基板治具30の枠開口31bは、ステージ55の照明開口55aに臨んでいる。照明開口52a、照明開口53a、照明開口54a、及び照明開口55aは互いに連通しており、基板移動機構51の中央に上下に貫通する貫通空間を形成している。貫通空間の底部には、撮像装置41が備える透過照明47が配設されている。透過照明47は発光素子47aと集光レンズ47bとを備え、発光素子47aから射出された照明光は、集光レンズ47bによって集光され、貫通空間及び照明開口55aに臨んでいる枠開口31bを通って、枠開口31bに臨んでいるマザーノズル基板25Aの部分に照射される。
【0035】
ノズル検査装置40の撮像装置41は、カメラ42と、レンズ43と、鏡筒44と、同軸照明46と、上述した透過照明47と、を備えている。カメラ42は、ステージ55の照明開口55aに臨んでおり、鏡筒44を介して取り付けられたレンズ43を介して、ステージ55上に固定されたマザーノズル基板25Aを撮像可能である。同軸照明46は鏡筒44に取り付けられており、ハーフミラー(図示省略)及びレンズ43を介して、カメラ42が撮影する被撮影物に照明光を照射できる。本実施形態の同軸照明46及び透過照明47から射出される照明光は、白色光である。
【0036】
撮像装置昇降機構61は、固定部62と、昇降部63と、昇降センサー66とを備えている。昇降部63は、固定部62に保持されており、昇降モーター(図示省略)によって、Z軸方向に移動自在かつ任意の位置に保持可能である。カメラ42は、昇降部63に固定されており、撮像装置昇降機構61によってカメラ42をZ軸方向に昇降させることで、Z軸方向におけるカメラ42の焦点位置を調整可能である。昇降センサー66は、固定部62に固定された本体に対する昇降部63の位置を測定することによって、固定部62に対する昇降部63の位置を測定する。昇降センサー66によって、ステージ55の面などを基準位置として、当該基準位置に対するカメラ42の焦点位置を測定することができる。
【0037】
上記各構成を制御する制御部としての制御ユニット71は、メインコンピューター72を備えており、メインコンピューター72は、ノズル検査装置40を統括制御する制御装置76を備えている。また、メインコンピューター72には、吐出ノズル24の測定の際に用いられる各種データを入力する入力装置74と、測定結果や良否判定などの各種情報を表示する表示装置73が接続されている。
【0038】
検査対象の吐出ノズル24が形成されたマザーノズル基板25Aは、マザー基板治具30に保持されて、ステージ55上に固定される。検査対象の吐出ノズル24は、基板移動機構51によってX軸方向及びY軸方向に移動させられて、撮像装置41の撮像位置に位置する。撮像装置41が撮像装置昇降機構61によってZ方向に移動させられて、カメラ42の焦点位置が、検査対象の吐出ノズル24のZ軸方向の所定の位置にあわされて、当該位置の画像が取得されることで、当該吐出ノズル24の検査が実施される。
【0039】
<吐出ノズル検査工程>
次に、ノズル検査装置40を用いて吐出ノズル24の検査を実施する吐出ノズル検査工程について、図4、図5、及び図6を参照して説明する。図4は、吐出ノズル検査工程の各工程を示すフローチャートである。図5は、吐出ノズルを撮影した画像の例を示す説明図である。図6は、予測膜端位置を例示する説明図である。
【0040】
図4のステップS21では、マザーノズル基板25Aをノズル検査装置40にセットする。上述したように、マザーノズル基板25Aを保持したマザー基板治具30を、ノズル検査装置40のステージ55上に固定する。マザーノズル基板25Aは、圧力室面25b側がカメラ42に対向するようにセットされる。なお、吐出ノズル24は、設計上丸孔の軸方向がマザーノズル基板25Aの面に垂直に形成されており、吐出ノズル24の軸方向は、Z軸方向に、設計上は一致している。
吐出ノズル24が、検査対象としての孔に相当する。マザーノズル基板25Aが、孔基板に相当する。圧力室面25bが、第一の面に相当し、反対側のノズル形成面25aが、第二の面に相当する。
【0041】
次に、ステップS22では、マザーノズル基板25Aの位置のキャリブレーションを実施する。詳細には、回動機構54によって、ノズル列24Aの方向を、ノズル検査装置40の軸方向に一致させる。X軸スライド機構52とY軸スライド機構53とを用いて、マザーノズル基板25Aの基準点を、ノズル検査装置40の基準位置に一致させる。キャリブレーションによって、ノズル検査装置40に対するマザーノズル基板25Aの姿勢及び位置が明確になり、マザーノズル基板25Aにおける任意の吐出ノズル24を、検査位置であるカメラ42の撮像領域に位置させることが可能となる。
【0042】
次に、ステップS23では、撮像装置41のカメラ42の焦点位置をマザーノズル基板25Aの表面に移動させる。すなわち、カメラ42の焦点位置をマザーノズル基板25Aの表面に一致させる。
カメラ42の焦点位置は、撮像装置昇降機構61によってカメラ42をZ軸方向に昇降させることによって移動する。マザーノズル基板25Aは圧力室面25b側がカメラ42に対向するようにセットされているため、カメラ42の焦点位置は圧力室面25bとなる。すなわち、ノズル検査装置40におけるカメラ42の焦点位置が、マザーノズル基板25Aの圧力室面25bの位置と一致する。これにより、ノズル検査装置40に対するマザーノズル基板25AのZ軸方向の位置が明確になる。
カメラ42の焦点位置が、圧力室面25bの位置と一致した状態からの昇降部63の昇降量を昇降センサー66で測定して昇降部63の昇降量を制御することによって、吐出ノズル24の軸方向における任意の位置にカメラ42の焦点位置を位置させることが可能となる。なお、カメラ42の光軸方向に略平行である吐出ノズル24の壁面の任意の位置にカメラ42の焦点を合わせることは非常に困難であるが、カメラ42の光軸方向に略垂直である圧力室面25bにカメラ42の焦点を合わせることは、自動で容易に実施することができる。
【0043】
次に、ステップS24では、撮像装置41のカメラ42の焦点位置を、吐出ノズル24の軸方向(Z軸方向)に、定められた一定量を移動させて、検査位置に移動させる。検査位置は、例えば、撥液メッキ27のメッキ端部27aの画像を明確に撮影できる位置であり、カメラ42の焦点位がメッキ端部27aの位置と略一致する位置である。その場合、ステップS24における移動量は、検査位置と圧力室面25bとの距離であるメッキ端部深さhと略一致する量である。
メッキ端部27aの位置は、測定対象となるノズル孔の形状によって異なり、それぞれのノズル基板25に固有の位置である。また、上述したように、メッキ端部27aは、微小なうねりがあり、圧力室面25bに対して傾いた斜面であり、角部は曲面である可能性が高い。これらにより、検査位置は、測定対象となるノズル孔の形状によって異なり、それぞれ固有の位置であるため、予め実験によって求めておくことが必要である。撥液メッキ27が、膜に相当する。
【0044】
次に、ステップS25では、吐出ノズル24のノズル孔画像100(図5参照)を取得する。焦点位置が検査位置に合わせられたカメラ42によって撮影することで、図5に示したようなノズル孔画像100を取得する。
図5に示すように、ノズル孔画像100は、3重の円が有る画像である。3重の円のそれぞれを内側から、第一円101、第二円102、第三円103と表記する。
第一円101の内側の部分は、吐出ノズル24の開口部の画像である。当該部分を孔部画120と表記する。孔部画120は、透過照明47から射出された照明光が吐出ノズル24の開口部分を通過してきた光の画像であり、白色(透過照明47から射出された照明光の色)となる。ノズル孔画像100が、孔画像に相当する。
【0045】
第一円101と第二円102との間の環状部分は、吐出ノズル24の壁面に形成された撥液メッキ27の画像である。当該部分をメッキ画127と表記する。メッキ画127は灰色の画像となる。メッキ画127が、孔画像における膜の端面の部分の端面画像に相当する。
第二円102は、吐出ノズル24の撥液メッキ27が形成されていない部分の壁面である。第二円102と第三円103との間の環状部分は、ノズル斜面部26の画像である。当該部分を斜面部画126と表記する。斜面部画126は、略白色となる。
第三円103の外側は、圧力室面25bの画像である。当該部分を面部画125と表記する。面部画125は、略黒色となる。
【0046】
次に、図4のステップS26では、第一近似円及び第二近似円の径を取得する。第一近似円は、第一円101を真円に近似した円であり、第二近似円は、第二円102を真円に近似した円である。第二円102は吐出ノズル24の撥液メッキ27が形成されていない部分の壁面であり、第一円101は吐出ノズル24の壁面に形成された撥液メッキ27の壁面であり、設計上は真円となるものの画像である。しかし、製造上の形状誤差や、撥液メッキ27の状態や、カメラ42の焦点位置のばらつきによる画像のぼけなどによって、必ずしも円にならいため、近似円である第一近似円及び第二近似円を求めて、検査結果の判定に際しては、当該第一近似円及び第二近似円を使用する。ステップS26の第一近似円及び第二近似円の径を取得する工程が、近似円取得工程に相当する。
【0047】
次に、ステップS27では、第一近似円の径と第二近似円の径との和である近似円径和を、基準値と比較して、差が閾値以下であるか否かを判定する。基準値及び閾値は、正常であることが確認された吐出ノズル24について予め測定して求めておく。
近似円径和が基準値と大きく異なる要因としては、カメラ42の焦点位置が所定の検査位置からずれていることによって画像がぼけている場合や、吐出ノズル24の壁面に形成された撥液メッキ27の厚さが適切な厚さではないこと、などがある。
近似円径和を基準値と比較して、差が閾値以下でなかった(ステップS27でNO)場合には、ステップS28に進む。近似円径和を基準値と比較して、差が閾値以下であった(ステップS27でYES)場合には、ステップS37に進む。
【0048】
ステップS27の次に、ステップS28では、検査位置検索回数が基準回数以上であるか否かを判定する。検査位置検索回数は、カメラ42の焦点位置を検索位置に移動させる工程と、画像を取得する工程と、画像から第一近似円の径と第二近似円の径との和を求める工程と、求めた和を基準値と比較して閾値以下であるか否かを判定する工程とを実施した回数である。ステップS27を終了した時点で、検査位置検索回数は1である。
検査位置検索回数が基準回数以下である(ステップS28でNO)場合は、ステップS29に進む。検査位置検索回数が基準回数以上である(ステップS28でYES)場合は、ステップS34に進む。
【0049】
ステップS28の次に、ステップS29では、カメラ42の焦点位置を、吐出ノズル24の軸方向(Z軸方向)に予め定めた所定量だけ移動させる。所定量は、例えば2μmである。
次に、ステップS30では、ステップS29で焦点位置を移動した位置において、ステップS25と同様に、吐出ノズル24のノズル孔画像100を取得する。
次に、ステップS31では、ステップS26と同様に、ステップS30で取得したノズル孔画像100における第一近似円の径及び第二近似円の径を取得する。ステップS31の第一近似円及び第二近似円の径を取得する工程が、近似円取得工程に相当する。
【0050】
次に、ステップS32では、ステップS27と同様に、近似円径和を基準値と比較して、差が閾値以下であるか否かを判定する。
近似円径和を基準値と比較して、差が閾値以下でなかった(ステップS32でNO)場合には、ステップS33に進む。近似円径和を基準値と比較して、差が閾値以下であった(ステップS32でYES)場合には、ステップS37に進む。
ステップS32において近似円径和を基準値と比較して差が閾値以下となるのは、ステップS24においてカメラ42の焦点位置を移動した位置が適切な検査位置ではなかったが、ステップS29において移動させることによって、適切な検査位置に位置した場合である。
差が閾値以下とならないのは、ステップS29において移動させても、適切な検査位置に至らなかった場合、又は撥液メッキ27の厚さが適切な厚さではないなどの他の要因に起因して、近似円径和が基準値と比較して差が閾値以下でない場合である。
【0051】
ステップS32の次に、ステップS33では、検査位置検索回数の数値を1大きくする。
ステップS33の次に、ステップS28に戻り、ステップS28からステップS32を繰り返す。
【0052】
ステップS28の次に、ステップS34では、ステップS23と同様に、撮像装置41のカメラ42の焦点位置をマザーノズル基板25Aの表面(圧力室面25b)に移動させる。
次に、ステップS35では、ステップS24と同様に、撮像装置41のカメラ42の焦点位置を、吐出ノズル24の軸方向(Z軸方向)に、定められた一定量移動させて、検査位置に移動させる。
次に、ステップS36では、ステップS25と同様に、吐出ノズル24のノズル孔画像100を取得する。
ステップS34とステップS35とを実施することによって、カメラ42の焦点位置が適切な検査位置になった場合には、ステップS36で適切な画像が取得できる。例えば、マザーノズル基板25Aの微小なうねりに起因して、検査対象の吐出ノズル24の周辺の圧力室面25bの位置が、ステップS23においてカメラ42の焦点位置を合わせた圧力室面25bの位置とずれているために、ノズル検査装置40に対して圧力室面25bの位置がずれている可能性がある。この場合、適切な検査位置がノズル検査装置40に対してずれていた可能性がある。当該ずれ量がステップS28からステップS32を繰り返えしてカメラ42の焦点位置を移動させた移動量より大きかった場合などには、ステップS34とステップS35とを実施することによって、カメラ42の焦点位置が適切な検査位置になる可能性がある。
ステップS36の次には、ステップS37に進む。
【0053】
ステップS27、ステップS32、又はステップS36の次に、ステップS37では、吐出ノズル24の欠陥の有無を検証する。
検査項目は、例えば、撥液メッキ27のメッキ入込量d、撥液メッキ27のメッキ厚、撥液メッキ27のメッキ切れ、吐出ノズル24内の異物などである。
撥液メッキ27のメッキ入込量dの検証は、ステップS23、又はステップS29におけるカメラ42の焦点位置の移動量を検証することによって実施する。その他の吐出ノズル24の欠陥の有無の検証は、ステップS25、ステップS30、又はステップS36で取得した吐出ノズル24のノズル孔画像100を検証することによって実施する。ステップS36で取得したノズル孔画像100は、焦点が合っていない画像である可能性が高いが、焦点が合っていない画像であっても、欠陥の有無を検証するためのノズル孔画像100として用いることは可能である。
【0054】
上述したように、検査位置は、例えば、撥液メッキ27のメッキ端部27aの画像を明確に撮影できる焦点位置であり、焦点が合っているノズル孔画像100を取得した際の焦点位置であり、一般的に、カメラ42の焦点位がメッキ端部27aの位置と略一致する位置である。焦点が合っているノズル孔画像100を取得した際の焦点位置を、膜端位置と表記する。
【0055】
メッキ入込量dは、膜端位置を基準膜端位置と比較することで検証する。焦点が合っているノズル孔画像100を取得した際の焦点位置である膜端位置は、上述した検査位置であって、圧力室面25bからの焦点位置の移動量で表示できる。より詳細には、メッキ入込量dは、ステップS27の次に、ステップS37に進んだ場合には、ステップS23におけるカメラ42の焦点位置の移動量を基準膜端位置と比較することで検証する。ステップS32の次に、ステップS37に進んだ場合には、ステップS29におけるカメラ42の焦点位置の移動量とステップS23におけるカメラ42の焦点位置の移動量との合計の移動量を基準膜端位置と比較することで検証する。移動量は方向も含んだ量であり、ステップS29における移動方向がステップS23における移動方向と異なる場合には、合計の移動量は、ステップS23における移動量より小さくなる。ステップS29を複数回実施している場合には、複数回の移動における移動量の合計が、ステップS29における移動量に相当する。ステップS36の次に、ステップS37に進んだ場合には、焦点が合っているノズル孔画像100を取得できていない可能性が高いため、ステップS37ではメッキ入込量dの検証は実施しない。
ステップS23又はステップS29の焦点位置を規定量移動して焦点位置合わせをする工程と、ステップS27又はステップS32の近似円径和を基準値と比較して、差が閾値以下であるか否かを判定する工程と、ステップS37の膜端位置を基準膜端位置と比較することで検証する工程とが、焦点位置取得工程に相当する。
【0056】
ノズル孔画像100から第一近似円及び第二近似円を求めて近似円径和を求め、当該近似円和に拠って焦点が合っていることを検証し、既知である、圧力室面25bから焦点が合っているノズル孔画像100を取得できる焦点位置への焦点位置の移動量から、膜端位置に相当する焦点位置を求める工程が、膜端位置取得工程に相当する。
【0057】
基準膜端位置は、検査対象としている吐出ノズル24の前に検査を実施した複数の吐出ノズル24における膜端位置(圧力室面25bからの焦点位置の移動量)の平均値を用いる。基準膜端位置を求めるために用いる吐出ノズル24は、例えば3個である。検査対象としている吐出ノズル24の前に検査を実施した吐出ノズル24の数が少ない場合には、基準膜端位置は、メッキ端部深さhの設計値を用いることができる。
【0058】
撥液メッキ27のメッキ厚は、吐出ノズル24の壁面に形成された撥液メッキ27の厚さを求め、基準値と比較することで検証する。撥液メッキ27のメッキ厚は、ステップS26、又はステップS31で取得した第一近似円及び第二近似円の径から求められる。第一近似円の径と第二近似円の径との差の1/2が、撥液メッキ27のメッキ厚である。
【0059】
撥液メッキ27のメッキ切れは、円柱形状の吐出ノズル24における周方向において、撥液メッキ27が形成されていないところが部分的に存在する欠陥である。メッキ切れが存在する場合は、第一円101におけるメッキ切れがある部分がぼけて不明瞭になるため、第一円101を検出することで、メッキ切れの有無を検出することができる。より詳細には、第一円101は、孔部画120とメッキ画127との境界である。上述したように、孔部画120は略白色でありメッキ画127は灰色であることから、第一円101は、グレー値の明確な差異によってエッジであると確認できる点の集合である。孔部画120の中心から放射状に広がる複数の走査線を想定し、当該走査線に沿って走査してグレー値を検出すると、撥液メッキ27のメッキ切れがない場合には、孔部画120とメッキ画127との境界でグレー値の段差が検出される。メッキ切れが存在する部分では、孔部画120からメッキ画127にかけてグレー値が緩やかに変化して、グレー値が明確に変化する点がなくなることで、メッキ切れが有ることが検出される。
【0060】
吐出ノズル24内の異物は、ノズル孔画像100内の異物の像の存在を検出することで有無を検出することができる。ノズル孔画像100の孔部画120や斜面部画126において、部分的にグレー値が大きく異なる領域が異物の像の部分である。
【0061】
次に、図4のステップS38では、メッキ入込量dが正常であるか否かを判定する。ステップS37において検証された圧力室面25bからの焦点位置の移動量の基準膜端位置との差が閾値以下の場合には、メッキ入込量dが正常であると判定し、基準膜端位置との差が閾値を超えた場合には、メッキ入込量dが正常ではない可能性があると判定する。
ステップS27の次に、ステップS37に進んだ場合には、ステップS37ではメッキ入込量dの検証は実施しないため、一義的にメッキ入込量dが正常ではない可能性があると判定する。
メッキ入込量dが正常であると判定した場合(ステップS38でYES)は、ステップS40に進む。メッキ入込量dが正常ではない可能性があると判定した場合(ステップS38でNO)には、ステップS39に進む。ステップS39では、検査中の吐出ノズル24を入込量不良候補ノズルとして登録する。ステップS39の次には、ステップS40に進む。入込量不良候補ノズルが、不良候補孔に相当する。
メッキ入込量dを検査し、入込量不良候補ノズルを抽出する工程であるステップS37とステップS38とが、入り込み量判定工程の、予備判定工程に相当する。
【0062】
ステップS38又はステップS39の次に、ステップS40では、メッキ入込量不良以外の不良が有るか否かを判定する。
ステップS37において求められた撥液メッキ27のメッキ厚が基準値に対して閾値の範囲を超えて厚い場合は、メッキ厚が厚い不良と判定し、閾値の範囲を超えて薄い場合は、メッキ厚が薄い不良と判定する。
ステップS37において求められた第一円101が明確でない部分の範囲が閾値を越えた場合は、メッキ切れ不良と判定する。第一円101が明確でない部分の範囲は、孔部画120の中心から放射状に走査してグレー値を検出する際の走査線において、グレー値が明確に変化する点がなかった走査線の数から求めることができる。
ステップS37において、ノズル孔画像100内の異物の像の存在が確認された場合は、異物不良と判定する。
【0063】
不良がないと判定された場合(ステップS40でNO)には、ステップS44に進む。いずれかの不良があると判定された場合(ステップS40でYES)には、ステップS41に進む。ステップS41では、検査中の吐出ノズル24を不良ノズルとして登録する。
ステップS41の次に、ステップS42では、検査中のノズル基板25において不良ノズルとして登録された数が基準値を超えたか否かを判定する。
不良ノズルとして登録された数が基準値未満の場合(ステップS42でNO)には、ステップS44に進む。不良ノズルとして登録された数が基準値以上の場合(ステップS42でYES)には、ステップS43に進む。
ステップS43では、検査中のノズル基板25を不良ノズル基板として登録する。ステップS43の次には、ステップS50に進む。
【0064】
ステップS40又はステップS41の次に、ステップS44では、検査中の吐出ノズル24が当該吐出ノズル24を含むノズル列24Aにおける最後の吐出ノズル24であるか否かを判定する。
検査中の吐出ノズル24がノズル列24Aにおける最後の吐出ノズル24ではない場合(ステップS44でNO)には、ステップS45に進む。
検査中の吐出ノズル24がノズル列24Aにおける最後の吐出ノズル24である場合(ステップS44でYES)には、ステップS46に進む。
【0065】
ステップS46では、ステップS39において入込量不良候補ノズルとして登録された吐出ノズル24について、メッキ入込量不良であるか検証する。検証は、入込量不良候補ノズルにおける膜端位置を予測膜端位置と比較することで実施する。上述したように膜端位置は検査位置であって、圧力室面25bからの焦点位置の移動量で表示できる。
【0066】
最初に、予測膜端位置について、図6を参照して説明する。図6は、予測膜端位置を例示する説明図であって、吐出ノズル24の位置と当該吐出ノズル24の膜端位置との関係から任意の吐出ノズル24の予測膜端位置を求めるグラフの例を示している。
【0067】
図6のグラフにおいて、横軸は、1列のノズル列24Aにおける吐出ノズル24の位置をノズル番号で示している。横軸におけるノズル番号の相対位置は、ノズル列24Aにおける対応する吐出ノズル24の相対位置と相似になっている。縦軸は、膜端位置を示している。上述したように、膜端位置はメッキ端部27aの位置と略一致する位置である。この場合のノズル列24Aが、孔群に相当する。
図6にh1、h2、hl、hm、hn、hs、ht、hu、ha、又はhbと示した点は、ノズル番号が1、2、l、m、n、s、t、u、a、又はbである吐出ノズル24の、ステップS37において求められた膜端位置を示している。以降、ノズル番号が例えばnの吐出ノズル24を吐出ノズル24nと表記する。
吐出ノズル24a及び吐出ノズル24bは、入込量不良候補ノズルである。吐出ノズル24aの膜端位置haは、実測許容範囲hwaの範囲から外れているため、吐出ノズル24aは、入込量不良候補ノズルとして登録されている。実測許容範囲hwaは、膜端位置hl、膜端位置hm、及び膜端位置hnの平均値と閾値とから求められた許容範囲である。吐出ノズル24bの膜端位置hbは、実測許容範囲hwbの範囲から外れているため、吐出ノズル24bは、入込量不良候補ノズルとして登録されている。実測許容範囲hwbは、膜端位置hs、膜端位置ht、及び膜端位置huの平均値と閾値とから求められた許容範囲である。
【0068】
膜端位置曲線Sは、ステップS38においてメッキ入込量dが正常であると判定された吐出ノズル24の膜端位置を結ぶ折れ線を滑らかな曲線に近似した曲線である。ノズル列24Aにおける任意の吐出ノズル24の予測膜端位置は、グラフの横軸における当該吐出ノズル24の位置に対応する膜端位置曲線Sが示す膜端位置である。横軸にaで示した吐出ノズル24aの位置において膜端位置曲線Sから読み取れる予測膜端位置が、吐出ノズル24aの予測膜端位置saである。横軸にbで示した吐出ノズル24bの位置において膜端位置曲線Sから読み取れる予測膜端位置が、吐出ノズル24bの予測膜端位置sbである。膜端位置曲線Sが、孔の位置と当該孔に対応する膜端位置との関係式を表す曲線である。
【0069】
予測膜端位置saに閾値を加えた許容範囲が、予測許容範囲swaであり、予測膜端位置sbに閾値を加えた許容範囲が、予測許容範囲swbである。
膜端位置haについて、予測膜端位置saを基準にした予測許容範囲swaに入るか否かを判定し、吐出ノズル24aのメッキ入込量dが正常であるか否かを判定する。膜端位置hbについて、予測膜端位置sbを基準にした予測許容範囲swbに入るか否かを判定し、吐出ノズル24bのメッキ入込量dが正常であるか否かを判定する。
膜端位置haは、予測許容範囲swaに入っており、吐出ノズル24aのメッキ入込量dが正常であると判定できる。実測許容範囲hwaを規定する膜端位置hl、膜端位置hm、及び膜端位置hnは大きい方にずれており、実測許容範囲hwaが値の大きい方にずれたために、ステップS38では、実測許容範囲hwaを基準にして判定して、膜端位置haは許容範囲を外れると判定されている。
実測許容範囲hwbを規定する膜端位置hs、膜端位置ht、及び膜端位置huは膜端位置曲線Sに近い値であり、実測許容範囲hwbの値も、予測許容範囲swbの値と近い値である。膜端位置hbは、予測許容範囲swbからも外れており、吐出ノズル24bのメッキ入込量dは、ステップS46でも正常ではないと判定される。
入込量不良候補ノズルとして登録された吐出ノズル24について、メッキ入込量不良であるか検証するステップS46の工程が、入り込み量判定工程の、本判定工程に相当する。
【0070】
図4のステップS46の次に、ステップS47では、メッキ入込量dが正常でない吐出ノズル24が存在したか否かを判定する。
メッキ入込量dが正常でない吐出ノズル24が存在しない場合(ステップS47でNO)には、ステップS49に進む。メッキ入込量dが正常でない吐出ノズル24が存在した場合(ステップS47でYES)には、ステップS48に進む。
ステップS47の次に、ステップS48では、メッキ入込量dが正常でない吐出ノズル24を、メッキ入込量不良ノズルとして登録する。ステップS48の次には、ステップS49に進む。
【0071】
ステップS47又はステップS48の次に、ステップS49では、最後に検査を実施した吐出ノズル24が当該吐出ノズル24を含むノズル基板25における最後の吐出ノズル24であるか否かを判定する。
最後に検査を実施した吐出ノズル24がノズル基板25における最後の吐出ノズル24ではない場合(ステップS49でNO)には、ステップS45に進む。
最後に検査を実施した吐出ノズル24がノズル基板25における最後の吐出ノズル24であった場合(ステップS49でYES)には、ステップS50に進む。
【0072】
ステップS43又はステップS49の次に、ステップS50では、最後に検査を実施した吐出ノズル24がマザーノズル基板25Aにおける最後の吐出ノズル24であるか否かを判定する。
最後に検査を実施した吐出ノズル24がマザーノズル基板25Aにおける最後の吐出ノズル24ではない場合(ステップS50でNO)には、ステップS45に進む。
【0073】
ステップS44、ステップS49、又はステップS50の次に、ステップS45では、検査対象を次の吐出ノズル24に移動する。基板移動機構51によってマザーノズル基板25Aを移動させることによって、同じノズル列24Aにおける隣の吐出ノズル24、次のノズル列24Aにおける最初の吐出ノズル24、又は次のノズル基板25における最初の吐出ノズル24を、撮像装置41のカメラ42が臨む位置に位置させる。
ステップS45の次には、ステップS25に戻り、ステップS25からステップS50の各ステップを繰り返す。
【0074】
ステップS50において、最後に検査を実施した吐出ノズル24がマザーノズル基板25Aにおける最後の吐出ノズル24ではあった場合(ステップS50でYES)には、マザーノズル基板25Aの吐出ノズル24の検査を終了する。
【0075】
以下、実施形態による効果を記載する。本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)カメラ42の焦点位置を検査位置(メッキ端部27aの位置)に合わせるために、最初に圧力室面25bに焦点位置を合わせて、次に検査位置に移動させている。カメラ42の光軸に略平行である吐出ノズル24の壁面の途中にある微小なメッキ端部27aにカメラ42の焦点を合わせることは困難であるが、カメラ42の光軸方向に略垂直で広い面積を有する圧力室面25bにカメラ42の焦点を合わせることは、自動で容易に実施することができる。これにより、カメラ42の焦点位置を検査位置に容易に、また迅速に合わせることができる。
【0076】
(2)ノズル孔画像100の第一円101又は第二円102を検査に用いる際に、第一円101又は第二円102に代えて、第一近似円及び第二近似円を求めて、第一近似円及び第二近似円の径を用いて検査を実施している。第一円101及び第二円102は、例えば異物の存在や、撮像装置の焦点ずれなどに影響されて、実物は正常でも、画像としては円の一部が損なわれていたり、焦点が合っていない画像となっていたりする場合がある。この場合、適切な検査が実施できない可能性がある。第一近似円及び第二近似円を用いることで、画像の部分的な欠陥を補正して、適切な検査を実施することができる。
【0077】
(3)第一近似円の径と第二近似円の径との和を、基準値と比較して、差が閾値以下であるか否かを判定する工程を実施する。カメラ42の焦点位置が適正な検査位置にない場合には、第一近似円の径と第二近似円の径との和が変わってしまうため、第一近似円の径と第二近似円の径との和を、基準値と比較することで、カメラ42の焦点位置が適正な検査位置にない場合を検出することができる。
【0078】
(4)カメラ42の焦点位置が検査位置に合っていない可能性がある場合には、カメラ42の焦点位置を移動して、ノズル孔画像100の取得及び第一近似円の径と第二近似円の径との和を基準値と比較する工程を実施している。これにより、焦点位置が適正な検査位置からずれていた場合には、ずれていることを検出することができ、焦点位置を適正な検査位置に合わせることができる。
【0079】
(5)検査位置にカメラ42の焦点位置を合わせ、焦点位置がずれた可能性がなければ、焦点位置をZ軸方向の同じ位置に維持して検査を実施する。これにより、吐出ノズルごとに焦点位置合わせを実施する場合に比べて、検査時間を抑制することができる。
【0080】
(6)カメラ42の焦点位置が検査位置に合っていない可能性がある場合で、焦点位置をずらしても焦点位置を適正な検査位置に合わせることができなかった場合には、検査位置にカメラ42の焦点位置を合わせる工程を再度実施する。この工程を実施することで、圧力室面25bの位置がずれてしまったことに伴って検査位置がずれていた場合には、圧力室面25bの位置を取得しなおして、適正な検査を実施することができる。
【0081】
(7)メッキ入込量dが正常ではない可能性があると判定した吐出ノズル24を入込量不良候補ノズルとして登録し、再度検査を実施している。2回の検査工程を実施することで、検査工程が1回の場合にくらべて、誤った判定を実施する可能性を低減することができる。
【0082】
(8)基準膜端位置は、検査対象としている吐出ノズル24の前に検査を実施した例えば3個の吐出ノズル24における膜端位置(圧力室面25bからの焦点位置の移動量)の平均値を用いる。膜端位置は、圧力室面25bに焦点位置をあわせることによってノズル検査装置40にたいして関係付けられた相対位置である。このため、例えばマザーノズル基板25Aの微小なうねりなどのように、マザーノズル基板25Aには関わり、ノズル検査装置40とは関わりのない要因の影響によって、位置が変わる可能性がある。影響の大きさは、それぞれの吐出ノズル24ごとにばらつきがある。判定対象の吐出ノズル24の前に検査した吐出ノズル24は、判定対象の吐出ノズル24と環境条件の差が小さい可能性が高く、それぞれの吐出ノズル24ごとにばらつきのある要因の影響による判定誤差の発生を抑制することができる。
3個の吐出ノズル24における膜端位置の平均位置を基準位置とすることで、単一の吐出ノズル24の膜端位置を基準位置とする場合にくらべて吐出ノズル24の個体差の影響を抑制することができる。
【0083】
(9)入込量不良候補ノズルとして登録された吐出ノズル24は、予測膜端位置を基準として検査することによって、メッキ入込量dの良否の再検査を実施される。膜端位置は、圧力室面25bに焦点位置を合わせることによってノズル検査装置40に対して関係付けられた相対位置である。このため、例えばマザーノズル基板25Aの微小なうねりなどのように、マザーノズル基板25Aには関わり、ノズル検査装置40とは関わりのない要因の影響によって、位置が変わる可能性がある。当該要因の影響には、複数の吐出ノズル24に略同等の影響と、それぞれの吐出ノズル24ごとにばらつきのある影響とがある。複数の吐出ノズル24に略同等の影響は、良品ノズルと判定された吐出ノズル24についても、入込不良候補ノズルと判定された吐出ノズル24についても、略同等であり、良品ノズルと判定された孔に対応する膜端位置から求められた予測膜端位置は、当該複数の孔に略同等の影響を受けた状態での膜端位置である。不良候補孔の膜端位置を予測膜端位置と比較することで、不良候補孔の膜端位置と予測膜端位置とに共通する、ノズル検査装置40とはかかわりのない要因による吐出ノズル24に略同等の影響を排除した判定を実施することができる。
【0084】
(10)メッキ入込量dの2回の検査工程において、1回目の検査工程では、基準値は、検査対象としている吐出ノズル24の前に検査を実施した複数の吐出ノズル24における膜端位置の平均値を用いる。2回目の検査工程では、基準値は、予測膜端位置を用いる。2回の検査工程で、それぞれ求め方が異なる基準値を使用することで、基準値の求め方に起因して基準値に含まれる誤差要因を分散させて、誤った検査を実施する可能性を低減することができる。
【0085】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、前記実施形態に限らない。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0086】
(変形例1)前記実施形態においては、検査対象はマザーノズル基板25Aに形成された吐出ノズル24におけるメッキ入込量dであったが、検査対象の孔は吐出ノズルに限らない。また、入込量を検査する対象の膜もメッキに限らない。孔の壁面に、孔の途中まで膜を形成するものであれば、上述した検査方法を用いて好適に検査を実施することができる。
【0087】
また、マザーノズル基板25Aに区画形成されたノズル基板25は、インクジェット方式の液滴吐出ヘッド20を構成するノズル基板であり、吐出ノズル24はインクジェット方式の液滴吐出ヘッドが有する吐出ノズルであったが、検査対象の吐出ノズルはインクジェット方式の液滴吐出ヘッドが有する吐出ノズルに限らない。インクジェット方式以外の方式の液滴吐出ヘッドにおいても、液滴を対象物に向けて精度よく吐出するためには、撥液メッキ27のように吐出ノズルの状態を好適に形成するための処理が必要である。そのような処理の状態を検査する際には、、上述した検査方法を用いて好適に検査を実施することができる。
【0088】
(変形例2)前記実施形態においては、ステップS39において入込量不良候補ノズルを登録し、ステップS46では入込量不良候補ノズルとして登録された吐出ノズル24について、メッキ入込量不良であるか検証していたが、検査を2回実施することは必須ではない。検査結果における不良率などを検証し、検査工数と不適切な検査結果が出される確率などを総合して、検査工程を決定することが好ましい。
【0089】
(変形例3)前記実施形態においては、ステップS46では、ステップS39において入込量不良候補ノズルとして登録された吐出ノズル24について、入込量不良候補ノズルにおける膜端位置を予測膜端位置と比較することで実施していたが、予測膜端位置と比較する方法を用いることは必須ではない。例えば、全ての入込量不良候補ノズルについて、表面に焦点あわせを実施する工程から実施するなど、他の方法であってもよい。
【0090】
(変形例4)前記実施形態においては、ステップS37において膜端位置を比較する基準値は、検査対象としている吐出ノズル24の前に検査を実施した所定の数としての3個の吐出ノズル24における膜端位置の平均値を用いていた。しかし、所定の数が3個であることは必須ではない。所定の数は3個以外の複数の数であってもよいし、1個であってもよい。所定の数は、数が増加することによって孔の個体差の影響を低減できる効果と、数が増加することによって工数が増加することと、を考慮して適切な値を定めることが好ましい。
【0091】
(変形例5)前記実施形態においては、ステップS36の次に、ステップS37に進んだ場合には、焦点が合っているノズル孔画像100を取得できていない可能性が高いため、ステップS37ではメッキ入込量dの検証は実施していない。しかし、焦点位置があっているかを検証する工程を実施してもよい。例えば、ステップS36の次に近似円をもとめ、焦点位置が合っているかを検証し、合っていた場合は、ステップS27の次に、ステップS37に進んだ場合と同様に検証を実施し、合っていなかった場合には、メッキ入込量dが正常ではない可能性がある、又は不良であると判定してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…液滴吐出装置、20…液滴吐出ヘッド、24…吐出ノズル、24A…ノズル列、25…ノズル基板、25A…マザーノズル基板、25a…ノズル形成面、25b…圧力室面、26…ノズル斜面部、27…撥液メッキ、27a…メッキ端部、30…マザー基板治具、30a…上治具枠、30b…下治具枠、40…ノズル検査装置、41…撮像装置、42…カメラ、43…レンズ、44…鏡筒、46…同軸照明、47…透過照明、51…基板移動機構、61…撮像装置昇降機構、66…昇降センサー、71…制御ユニット、100…ノズル孔画像、101…第一円、102…第二円、103…第三円、120…孔部画、125…面部画、126…斜面部画、127…メッキ画。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔基板に形成された孔の状態を検査する検査方法であって、
前記孔基板における第一の面の方向から撮影した前記孔の孔画像を取得する画像取得工程と、
前記孔画像から前記孔の状態を判定する状態判定工程と、を有し、
前記状態判定工程は、前記孔画像における前記孔基板の前記第一の面と反対側の第二の面から前記孔の壁面にかけて形成された膜の端面の部分の端面画像から、前記端面の位置である膜端位置を取得する膜端位置取得工程と、前記膜端位置によって前記膜の前記第二の面からの入り込み量を判定する入り込み量判定工程と、を有することを特徴とする検査方法。
【請求項2】
前記膜端位置取得工程は、
環状形状である前記端面画像の環形状を構成する第一円又は第二円の近似円である第一近似円及び第二近似円を求める近似円取得工程と、
前記第一近似円の直径と前記第二近似円の直径との和である近似円径和を径基準値と比較し、前記近似円径和の前記径基準値との差が閾値以下となる前記孔画像を撮像する際の焦点位置を求める焦点位置取得工程とを有することを特徴とする、請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記入り込み量判定工程は、前記孔が良品孔か不良品孔の候補である不良候補孔かを判定する予備判定工程と、前記予備判定工程において前記不良候補孔と判定された前記孔について判定する本判定工程と、を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記予備判定工程では、判定対象の前記孔の前に検査した所定の数の前記孔における前記膜端位置の平均位置を基準位置として判定することを特徴とする、請求項3に記載の検査方法。
【請求項5】
前記本判定工程は、複数の前記孔からなる孔群において、前記予備判定工程において前記良品孔と判定された前記孔と当該孔に対応する前記膜端位置とから予測膜端位置を求める予測膜端位置取得工程と、
前記不良候補孔の前記膜端位置を前記予測膜端位置と比較する比較工程と、を有することを特徴とする、請求項3又は4に記載の検査方法。
【請求項6】
前記予測膜端位置は、前記孔が属する前記孔群における前記孔の位置と当該孔に対応する前記膜端位置の実測値とから求められる前記孔の位置と当該孔に対応する前記膜端位置との関係式における、前記孔の位置に対応する前記膜端位置であることを特徴とする、請求項5に記載の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−163802(P2011−163802A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24068(P2010−24068)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】