説明

検査装置および検査方法

【課題】 検査対象の良否を高速に検査できる検査装置および検査方法を提供する。
【解決手段】 検査対象である液晶パネル(ガラス基板)10の上部にセンサ1を固定して、その検査対象10をエアフローにより浮上させて非接触検査を行う際,測長部4によるレーザ測長によりセンサ1と液晶パネル10間の距離を計測し、その結果をもとにセンサ側からも、エアー噴出部11によるエアー噴出を行ってセンサ1と液晶パネル10間の間隔(ギャップ)を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、液晶パネル、液晶ディスプレイに形成された画素電極の良否を検査する検査装置および検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テレビ受像機、パーソナルコンピュータ等のディスプレイの薄型化や大型化の要求に伴ない、高画素数の液晶表示パネルが開発され、それを採用した製品が市場に出回っている。このような薄型かつ大型の表示装置を採用した製品では、製品組立て後の動作試験はもとより、ディスプレイ単体における画素電極の欠陥の有無を判定するための検査が重要である。
【0003】
画素電極や導電パターン等の検査方法として、いわゆるピンコンタクト方式ではプローブを使用することから検査精度が向上しないため、検査対象である導体パターンとセンサ間の容量結合を介して、非接触状態で検査対象に検査信号を供給し、その信号を非接触状態で検査対象より検出して導通検査を行う方式が、従来より使用されている。このような非接触状態を維持するため、例えば、特許文献1に開示された液晶ディスプレイ基板の検査装置では、ガラス基板検査装置においてエアー浮上を利用している。また、特許文献2には、エアーフローにより検査対象基板をセンサ位置まで移動させるプリント配線板の検査装置が開示されている。
【0004】
一方、特許文献3に記載の浮上装置は、平面状対象物を空気の圧力で安定に浮上させ、圧縮空気消費量を少なくしたものである。そのため、供給される圧縮空気と装置近辺の大気中の空気とを混合する空気混合手段を備え、大気中の空気を混合することによって圧縮空気を減圧すると同時に空気流量を増量し対象物に噴射して浮上させる構成としている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−142802号公報
【特許文献2】特開2002−181875号公報
【特許文献3】特開2004−262608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非接触方式を採用した検査では、液晶ディスプレイの画素電極等にセンサを近接させるため、検査対象である画素電極等が配されたガラス製基板をステージ上に固定し、センサヘッドを空気浮上等させることで、検査対象とセンサヘッド間のギャップを一定に維持する必要がある。すなわち、非接触方式では、検出信号のわずかなレベル差をもとに検査対象の良否判定を行う必要があるが、上述した従来の装置や方法では、検査対象とセンサヘッドを十分に近接できないだけでなく、検査対象とセンサヘッド間のギャップ制御も不可能であるという問題がある。
【0007】
特に特許文献1に記載の検査装置は、検査対象基板とステージとの摩擦抵抗低減のためにエアーを使用しており、また、特許文献3に記載の装置では、基板下部への空気噴射により基板をエアーで浮上させる際、圧縮空気と大気中の空気を混合噴射することによって圧縮空気の節約を図っている。いずれの装置もセンサと検査対象間のギャップ制御を行っていない。
【0008】
従って、上記従来の空気浮上方法では、センサ毎にz軸方向(検査対象に対して鉛直方向)の調整が必要となり、ギャップ維持のための機構が複雑になるという問題がある。また、センサヘッドの慣性質量が比較的大きいため、高速スキャンを行った場合、それに追従できずに停止状態(クラッシュ)に陥る可能性もある。さらには、使用現場での調整作業が煩雑になり、センサの着脱も困難であるという問題がある。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、パネル上の画素電極の良否を高精度かつ高速に検出できる検査装置および検査方法を提供することである。すなわち、高速スキャンに追従できる検査装置および検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成し、上述した課題を解決する一手段として、例えば、以下の構成を備える。すなわち、本発明は、検査対象に検査信号を供給して、その検査対象の状態を検査する検査装置であって、上記検査対象に対して第1の方向から気体流を発生する第1の気体流発生手段と、上記第1の方向に対向する第2の方向から上記検査対象に対して気体流を発生する第2の気体流発生手段と、上記検査対象より上記検査信号を検出するセンサとを備え、上記センサは上記第1の方向からの気体流と上記第2の方向からの気体流とにより浮上した状態にある上記検査対象より非接触で上記検査信号を検出するとともに、上記検出された検出信号の変化に基づいて上記検査対象の良否を識別することを特徴とする。
【0011】
例えば、上記第1の方向から気体流は上記検査対象に向けて上昇する気体流であり、上記第2の方向から気体流は上記検査対象に向けて下降する気体流であることを特徴とする。また、例えば、上記第2の気体流発生手段は上記センサ近傍の複数の領域に設けられていることを特徴とする。
【0012】
例えば、上記センサを上記検査対象より所定距離離間させるよう上記第2の気体流発生手段による気体流の噴出を制御する制御手段をさらに備えることを特徴とする。また、例えば、上記制御手段は上記センサと上記検査対象間の距離に応じて、上記第2の気体流発生手段を個別に選択して上記気体流の噴出を行うことを特徴とする。
【0013】
例えば、上記制御手段は上記検査対象への入射レーザ光と反射レーザ光の干渉位相差をもとに上記センサと上記検査対象間の距離を測長し、その測長結果をもとに上記第2の気体流発生手段による気体流の噴出制御を行うことを特徴とする。
【0014】
例えば、上記気体流には少なくとも空気、窒素、その他の不活性気体による気体流が含まれることを特徴とする。
【0015】
例えば、上記センサは、上記検査対象に対向する部分が突出し、その突出部分にセンサ電極を配した構成を有し、上記センサ電極と上記検査対象間の容量結合を介して非接触で上記検査対象より上記検査信号を検出することを特徴とする。
【0016】
例えば、上記センサ電極と上記検査対象の近接状態を維持したまま上記検査対象を順次走査するよう上記検査対象を位置決め移動させる位置決め移動手段をさらに備えることを特徴とする。
【0017】
上述した課題を解決する他の手段として、例えば、以下の構成を備える。すなわち、本発明は、検査対象に検査信号を供給して、その検査対象の状態をセンサにより検査する検査方法であって、上記検査対象の第1の方向から気体流を発生するとともに上記第1の方向に対向する第2の方向からも上記検査対象に向けて気体流を噴出し、上記検査対象を浮上させた状態で上記センサによって上記検査対象より非接触で上記検査信号を検出し、その検出信号の変化に基づいて上記検査対象の良否を識別することを特徴とする。
【0018】
例えば、上記センサを上記検査対象より所定距離離間させるよう上記第2の方向からの気体流の噴出を制御することを特徴とする。また、例えば、上記第2の方向からの気体流は上記センサ近傍の複数の領域より噴出し、上記センサと上記検査対象間の距離に応じて上記第2の方向からの気体流を個別に選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、検査対象とセンサヘッド間のギャップ制御を容易かつ高精度に行うことができ、検査対象の良否を精度よく、かつ高速に検出できる。また、簡単な機構であるためセンサの着脱が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施の形態例を詳細に説明する。図1は、本実施の形態例に係る検査装置(アレイテスタ)の全体構成を示すブロック図であり、図1(a)は信号処理の構成を、図1(b)はエアー制御のための構成をそれぞれ示している。ここでの検査対象は、例えば、ガラス製の基板上に複数の画素電極、およびそれらを駆動するための薄膜トランジスタ(TFT)がアレイ状(あるいは、マトリックス状)に配列された構造を有する液晶表示パネルやタッチ式パネル等である。
【0021】
図1(a)に示す検査装置では、画素電極等を非接触方式で検査するために、液晶パネル10から鉛直方向に所定距離離間した位置にライン状のセンサ1が位置決めされている。このセンサ1は、例えば、液晶パネル10の幅と同じ幅を有するとともに、後述するセンサ回路等により非接触方式で液晶パネル10上の画素電極の断線の有無等を判定する一次元ラインセンサである。本検査装置は、センサ1からの出力に基づいて、液晶パネル10の画素電極等の良否を検査する。また、液晶パネル10には、画素電圧供給部13が接続されており、それにより個々の画素電極に画素の検査に必要な信号を供給している。
【0022】
センサ1は、図1(a)に示すように規則的に配列した複数のセンサ基板5a,5bからなる。すなわち、センサ1は、センサ基板5a,5bをライン状に配し、それらを、所定の厚さを有するスペーサ33上に一定のピッチ幅で交互に並置するとともに、全体として液晶パネル10の検査対象部分とほぼ同じ幅を有するように構成された一次元ラインセンサであり、センサ基板5a,5bのスペーサ33側の先端部分は、対向して配された他のセンサ基板の先端端部と列方向において互いに一部が重なり合う配列構成をとる。
【0023】
このように各センサ基板5a,5bの先端端部が、対向するセンサ基板と一部が重なり合う構成をとることで、各センサ基板5a,5bに配されたセンサ回路31(図2参照)が有するセンサ電極も列方向に互いに重なり合うため、液晶パネル10の画素電極とセンサ回路との相対的な位置関係によっては、1つの画素電極に対して2つのセンサ回路(具体的にはセンサ電極31)で同時に信号を検出できるため、その画素電極の確実な良否判定が可能となる。
【0024】
各センサ基板5a,5b上に配されたセンサ回路31で検出された画素信号は信号処理部3に入力される。この信号処理部3は、例えば、増幅、多重化、波形整形、A/D変換等の処理を行う。そして、制御部6は、信号処理部3で処理された信号レベルと、あらかじめ設定した基準値とを比較し、それが基準の範囲内か否かを判定する。判定結果は、表示部9へ送られる。
【0025】
さらにセンサ1は、図1(b)に示すように検査対象である液晶パネル10に向けてレーザ光18a(例えば、パルスレーザ)を出力するため、レーザダイオード等からなる出力部18と、その液晶パネル10に当たって反射し、再び戻ってくるレーザ光19a(反射ビーム)を受光する受光部19(例えば、光電子倍増管)とからなるレーザ入出力部2を有する。また、これら出力レーザ光18aと反射レーザ光19aをもとに、検査対象(液晶パネル10)までの距離を計測する測長部4と、後述するように測長部4より測長結果を受けるエアー制御部12と、エアー制御部12からの制御に従って、センサ1より検査対象へ向けて空気(下降気流)を噴出するエアー噴出部11とを有する。
【0026】
なお、以下の説明では、検査対象に向けて噴出される気体は空気を例として説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、窒素、その他の不活性気体による気体流としてもよい。
【0027】
制御部6は、本検査装置全体の制御を行うため、例えば、マイクロプロセッサで構成され、所定の検査シーケンスを統括的に制御する。制御部6は、ROM7やRAM8を有し、ROM7には、検査手順を含む制御手順等が、例えば、コンピュータプログラムとして格納され、RAMは、例えば、制御データや検査データ等を一時的に格納するための作業領域として使用される。
【0028】
表示部9は、例えば、CRTや液晶表示器等からなり、制御部6から送られた判定結果である検査対象(液晶パネルの画素電極)の良否やセンサ1の位置情報等を、検査員が容易に理解できる形式で可視表示する。センサ1の位置に異常があればその旨を表示し、また、画素電極等に不良があれば、その電極のパネル基板上での位置も、例えば、電極番号や座標等で表示する。なお、検査結果の表示は、可視表示に限定されず、音声等の形式で出力してもよい。また、可視表示と音声を混在させてもよい。
【0029】
駆動部16は、制御部6からの制御信号を受けて、液晶パネル10全体を所定方向に所定の速度で移動させる。その結果、センサ1は、非接触の状態で液晶パネル10上のアレイ状の画素電極を順次走査する。具体的には、駆動部16は、後述するように、下方から上方へ向かう空気流により浮上している液晶パネル10を、μmオーダーで所定方向へ移動する。そのため、XYZCθ角度の4軸制御により三次元位置制御が可能に構成されており、液晶パネル10をセンサ位置より一定距離離反させた検査前の基準となる位置に位置決めする。
【0030】
次に、本実施の形態例に係る検査装置におけるセンサ部について説明する。図2は、図1(a)の二点鎖線A−A’に沿ってセンサ1を切断したときの断面構成を示している。センサ基板5a,5bは、その大きさが、例えば、250mm×100mmで所定厚t2(例えば、0.5mm)のガラスで構成され、ほぼ中央部において、その断面がゆるいS字型に屈曲した(たわんだ)構造を有する。そして、センサ基板5a,5bの検査対象と対向する側の上面端部には、センサ電極20を有するセンサ回路31が配されている。なお、センサ基板5a,5bの基板材料はガラスに限定されず、例えばプラスチックや石英等で構成してもよい。
【0031】
なお、検査対象である液晶パネル10は、図2に示すようにガラス基板とその表面に形成された複数の画素電極15からなり、それらの画素電極15に近接して配されるセンサ1のセンサ電極20は、図1に示す画素電圧供給部13より液晶パネル10の画素電極15に印加された信号電位(画素電圧)を非接触方式で検出する。
【0032】
本実施の形態例に係る検査装置では、センサ1を使用して非接触で液晶パネルの検査を行うため、センサ電極20と液晶パネル10上の画素電極15との距離dを、例えば50μm以下にする。そのため、基板24上に設けたスペーサ33(その厚さt1は、例えば、1.0mm)によって、センサ1の中央部分が基板24よりも鉛直方向に突出した構造としている。また、センサ回路31を構成するセンサ電極20は、例えば、センサ基板5a,5b上に形成されたCMOS素子(MOS型電界効果トランジスタ)のゲート端子(G)に連結されており、所定の面積を有する導体膜(例えば、ITO膜等)からなる。基板24は、例えば、アルミニウム等の金属からなる。
【0033】
次に、本実施の形態例に係る検査装置における検査対象とセンサ間の距離制御(ギャップ制御)について説明する。図3は、検査時における検査対象とセンサとの位置制御と位置関係を説明するための図である。図3に示すように、検査対象である液晶パネル10上部の所定位置に、その液晶パネル10と非接触状態でセンサ1を固定配置するとともに、液晶パネル10の下部に空気供給部50を配置する。空気供給部50からは、液晶パネル10に向けて空気流(図中、上向きの矢印で示す上昇流)が発生しており、液晶パネル10は、その空気流を受けて所定距離だけ浮上した状態となる。すなわち、この空気供給部50には、その上面全体に渡って多数の孔(不図示)が空けられており、それらの孔より噴出する空気流は、検査対象全体に均等に吹き付けられ、その空気流による圧力で液晶パネル10が浮上するようになっている。
【0034】
図4は、センサにおけるレーザ入出力部やエアー噴出部の配置例を示している。なお、図4は、センサ1を液晶パネル10側から見たときの様子である。図3および図4に示すように、センサ1の基板24のセンサ基板5a,5bが配された側には、各センサ基板5a,5bの近傍であって基板24の端部に一定間隔でレーザ入出力部2a〜2zとエアー噴出部11a〜11zが配されている。各レーザ入出力部2a〜2zは、検査実行中、その出力部18(図1(b)参照)より液晶パネル10に向けてレーザ光を出力し、その反射レーザ光を受光部19で受ける。そして、測長部4は、液晶パネル10への入射レーザ光と反射レーザ光の干渉位相差をもとに、センサ電極20と液晶パネル10上の画素電極15間の距離dを測長する。
【0035】
これらの計測結果は、距離(ギャップ)データとして測長部4よりエアー制御部12へ送られる。エアー制御部12は、この距離データをもとに、各センサ基板5a,5bのうち、どの基板部分において、センサ電極20と画素電極15間の距離dに異常があるか、つまり、あらかじめ決めた所定距離よりも近づき過ぎであるか、あるいは離れ過ぎであるかを判定する。そして、エアー制御部12は、その判定結果に従って、エアー噴出部11a〜11zを個別に制御する。
【0036】
すなわち、実測されたセンサ電極20と画素電極15間の距離(ギャップ)dをもとに、各エアー噴出部11a〜11zからの空気噴出量を調整することによって、センサ電極と液晶パネルの画素電極間の距離dが所定値(一定値)に維持されるようにフィードバック制御を行う。例えば、レーザ入出力部2a〜2c近辺においてセンサ電極と画素電極間の距離dが所定値よりも小さくなっている場合、エアー制御部12は、その箇所において液晶パネル10がセンサ1に接近しすぎていると判断して、エアー噴出部11a〜11cから所定量の空気(下降流)を噴出する。この噴出空気による圧力を受けた液晶パネル10は、その圧力と空気供給部50からの空気流による圧力とが均衡する位置まで押しやられる。このような距離(ギャップ)dの計測と空気噴出を繰り返すことで、センサ電極と画素電極間の距離dが所定値になるように制御される。
【0037】
図5は、本実施の形態例に係る検査装置における検査対象とセンサ間の距離(ギャップ)の制御手順を示すフローチャートである。図5のステップS11で、測長部4は、全てのレーザ入出力部2a〜2zからの入射レーザ光と反射レーザ光の干渉位相差をもとに、センサ電極と液晶パネル上の画素電極間の距離dを計測する。続くステップS13において、その計測値とあらかじめ決めた所定値とを対比して、センサ電極と画素電極間の距離(ギャップ)dが適正な範囲内にあるかどうかを判断する。
【0038】
ステップS13における判断の結果、距離(ギャップ)dが適正な値にあれば、ステップS14で、エアー噴出部11a〜11zからのエアー量を現状の値に維持する。また、距離(ギャップ)dが小さいと判断した場合、液晶パネル10がセンサ1に接近し過ぎているとして、ステップS15において、センサ1のうち、液晶パネル10に接近し過ぎている箇所を特定し、続くステップS16で、特定した箇所に対応するエアー噴出部を選定する。そして、ステップS17において、選定されたエアー噴出部からのエアー噴出量を増量する。
【0039】
一方、距離(ギャップ)dが大きいと判断された場合には、液晶パネル10がセンサ1から離れ過ぎているため、ステップS25において、センサ1のうち、液晶パネル10から離れ過ぎている箇所を特定し、ステップS26で、特定した箇所に対応するエアー噴出部を選定する。そして、続くステップS27において、選定されたエアー噴出部からのエアー噴出量を減量する。
【0040】
上記の制御の結果、エアー噴出部11a〜11zからのエアー噴出量を増量、あるいは減量することで、そのエアー量に応じて増加、あるいは減少した圧力分だけ、空気供給部50からの空気流による圧力が劣勢、あるいは優勢となる。その結果、液晶パネル10がセンサ1側より離れるか、あるいは接近することになる。このように、各エアー噴出部11a〜11zからの空気噴出量を調整することによって、センサ電極20と液晶パネル10の画素電極15間の距離dが一定となるように、測長部4とエアー制御部12間でフィードバック制御を行うことで、液晶パネルとセンサとの距離が一定に維持される。
【0041】
検査の際、液晶パネル10は、例えば、図1中の矢印方向へ移動される。そして、センサ1によって液晶パネル10上の画素電極15を順次、走査することで、その良否を連続して検査する。ステップS30で検査の終了を判断し、全画素の検査が終了していない場合には処理をステップS11に戻して、再度、センサ電極と画素電極間の距離dを計測し、上記と同様にエアー噴出制御を継続する。検査が終了した場合には、計測およびエアー制御も終了する。
【0042】
以上説明したように、検査対象である液晶パネル(ガラス基板)の上部にセンサを固定して、その検査対象をエアフローにより浮上させて非接触検査を行う際、レーザ測長によりセンサと液晶パネル間の距離を計測し、その結果をもとにセンサ側からもエアー噴出を行ってセンサと液晶パネル間のギャップを制御することで、現場での調整が不要になり、それに伴ってセンサの着脱も容易になる。
【0043】
また、検査対象(ガラス基板)の両面からエアフローを行うことで、センサと検査対象間の間隔制御が容易になるだけでなく、検査対象の走査、検査のための高速動作における追従性が高くなり、しかも液晶パネルの損傷等を容易に回避できる。さらには、センサと検査対象の間隔を最小に制御できるため、センサの感度と分解能が向上し、画素電極の画素電圧を非接触方式で確実に検出することができる。
【0044】
また、センサのセンサ基板対応に測長部とエアー制御部を設けることで、センサの複数箇所において同時に、あるいは個別にセンサと検査対象の間隔制御ができ、センサ毎にz軸を調整する必要がなくなる。
【0045】
なお、本発明は、上述の実施の形態例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限度において種々の変形が可能である。例えば、センサにおけるレーザ入出力部とエアー噴出部の配置は、図4に示す例に限定されず、図6に示すようにレーザ入出力部を各センサ基板5a,5bの先端部の両側に設けてよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態例に係る検査装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態例のセンサを切断したときの断面構成を示す図である。
【図3】検査時における検査対象とセンサの位置制御を説明するための図である。
【図4】センサにおけるレーザ入出力部やエアー噴出部の配置例を示す図である。
【図5】本実施の形態例に係る検査装置における検査対象とセンサ間の距離(ギャップ)の制御手順を示すフローチャートである。
【図6】レーザ入出力部やエアー噴出部の他の配置例を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 センサ
2 レーザ入出力部
3 信号処理部
4 測長部
5a,5b センサ基板
6 制御部
7 ROM
8 RAM
9 表示部
10 液晶パネル
11 エアー噴出部
12 エアー制御部
13 画素電圧供給部
15 画素電極
16 駆動部
18a,19a レーザ光
20 センサ電極
24 基板
31 センサ回路
33 スペーサ
50 空気供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象に検査信号を供給して、その検査対象の状態を検査する検査装置であって、
前記検査対象に対して第1の方向から気体流を発生する第1の気体流発生手段と、
前記第1の方向に対向する第2の方向から前記検査対象に対して気体流を発生する第2の気体流発生手段と、
前記検査対象より前記検査信号を検出するセンサとを備え、
前記センサは前記第1の方向からの気体流と前記第2の方向からの気体流とにより浮上した状態にある前記検査対象より非接触で前記検査信号を検出するとともに、前記検出された検出信号の変化に基づいて前記検査対象の良否を識別することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記第1の方向から気体流は前記検査対象に向けて上昇する気体流であり、前記第2の方向から気体流は前記検査対象に向けて下降する気体流であることを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
前記第2の気体流発生手段は前記センサ近傍の複数の領域に設けられていることを特徴とする請求項2記載の検査装置。
【請求項4】
さらに、前記センサを前記検査対象より所定距離離間させるよう前記第2の気体流発生手段による気体流の噴出を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項3記載の検査装置。
【請求項5】
前記制御手段は前記センサと前記検査対象間の距離に応じて、前記第2の気体流発生手段を個別に選択して前記気体流の噴出を行うことを特徴とする請求項4記載の検査装置。
【請求項6】
前記制御手段は前記検査対象への入射レーザ光と反射レーザ光の干渉位相差をもとに前記センサと前記検査対象間の距離を測長し、その測長結果をもとに前記第2の気体流発生手段による気体流の噴出制御を行うことを特徴とする請求項5記載の検査装置。
【請求項7】
前記気体流には少なくとも空気、窒素、その他の不活性気体による気体流が含まれることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の検査装置。
【請求項8】
前記センサは、前記検査対象に対向する部分が突出し、その突出部分にセンサ電極を配した構成を有し、前記センサ電極と前記検査対象間の容量結合を介して非接触で前記検査対象より前記検査信号を検出することを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項9】
さらに、前記センサ電極と前記検査対象の近接状態を維持したまま前記検査対象を順次走査するよう前記検査対象を位置決め移動させる位置決め移動手段を備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の検査装置。
【請求項10】
検査対象に検査信号を供給して、その検査対象の状態をセンサにより検査する検査方法であって、
前記検査対象の第1の方向から気体流を発生するとともに前記第1の方向に対向する第2の方向からも前記検査対象に向けて気体流を噴出し、前記検査対象を浮上させた状態で前記センサによって前記検査対象より非接触で前記検査信号を検出し、その検出信号の変化に基づいて前記検査対象の良否を識別することを特徴とする検査方法。
【請求項11】
前記センサを前記検査対象より所定距離離間させるよう前記第2の方向からの気体流の噴出を制御することを特徴とする請求項10記載の検査方法。
【請求項12】
前記第2の方向からの気体流は前記センサ近傍の複数の領域より噴出し、前記センサと前記検査対象間の距離に応じて前記第2の方向からの気体流を個別に選択することを特徴とする請求項11記載の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−242860(P2006−242860A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61290(P2005−61290)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(594157142)オー・エイチ・ティー株式会社 (28)
【Fターム(参考)】