説明

樹脂組成物の組合せ及びその使用方法

【課題】
アンダーフィル材料として使用される組成物が提供される。
【解決手段】
このアンダーフィル材料は第1の硬化性透明樹脂組成物と第2の硬化性フラックス樹脂組成物とを含んでいる。第1の硬化性樹脂組成物は、1種以上の芳香族エポキシ樹脂を、溶媒、官能化コロイダルシリカ分散物、並びに、環式脂肪族エポキシモノマー、脂肪族エポキシモノマー、ヒドロキシ芳香族化合物並びにこれらの組合せ及び混合物からなる群から選択される1種以上の他の成分と組み合わせて含んでいることにより、溶媒変性樹脂を形成している。第2の硬化性フラックス組成物は1種以上のエポキシ樹脂を含んでいる。これらの2種の樹脂組成物の組合せは、アンダーフィル材料を製造するのに有用であり、電子チップ用の封止材として使用するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の硬化性樹脂組成物を第2の硬化性フラックス樹脂組成物と組み合わせてアンダーフィル材料中に使用することに関する。より具体的には、第1の硬化性樹脂組成物は熱硬化性樹脂、溶媒及び官能化コロイダルシリカを含む。第2の硬化性フラックス樹脂組成物は好ましくは熱硬化性エポキシ樹脂及び任意の添加剤を含む。最終の硬化した組成物は低い熱膨張率と高いガラス転移温度をもっている。
【背景技術】
【0002】
より小型でより精巧な電子機器に対する需要により、エレクトロニクス産業は、より高い入出力(I/O)密度を支えることができると共により小さいダイ面積で性能の向上した改良集積回路パッケージに向けて駆り立てられ続けている。これらの厳しい要件に答えるためにフリップチップ技術が開発されているが、フリップチップ構造の弱点は、シリコンダイと基板との間の熱膨張率(CTE)の不整合のために熱サイクル中にはんだバンプが受ける大きな機械的応力である。この不整合は、次いで、電子機器の機械的及び電気的な故障を引き起こす。現在のところ、キャピラリーアンダーフィルを用いて、シリコンチップと基板の間の間隙を充填し、はんだバンプの疲労寿命を改良している。しかしながら、キャピラリーアンダーフィルに基づく製造プロセスはチップ組み立てプロセスに追加のステップを導入し、そのため生産性が低下する。
【0003】
理想的には、アンダーフィル樹脂は、キャピラリーアンダーフィルに関連する製造効率の悪さを排除するためにウエハー段階で使用するべきであろう。しかしながら、低いCTEのために必要とされる慣用の溶融シリカ充填材を含有する樹脂を使用することには問題がある。溶融シリカ充填材は、ウエハーのダイシングに使用するガイドマークを隠し、またはんだリフロー作業中の良好な電気的接続の形成を妨害するからである。従って、幾つかの用途においては、アンダーフィル材料が塗布されているウエハーの効率的なダイシングを可能にするために透明性の改良が必要とされる。
【0004】
また、ウエハー段階でアンダーフィル樹脂を塗布することに伴う問題は、基板上にチップを配置した後に起こり得るチップの整列不整合である。基板又はデバイス上の適正な位置にチップを保持する手段がないと、チップはリフロー作業中にずれる可能性があり、整列不整合になる可能性がある。この整列不整合は殊にチップアセンブリの輸送作業中重要である。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0171456号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0164555号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0141592号明細書
【特許文献4】米国特許第6566234号明細書
【特許文献5】米国特許第6518677号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2002/0089067号明細書
【特許文献7】米国特許第6399426号明細書
【特許文献8】米国特許第6335571号明細書
【特許文献9】米国特許第6297560号明細書
【特許文献10】米国特許第6121689号明細書
【特許文献11】国際公開第03/075338号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、チップの整列不整合を低減することができる、低いCTEと透明性の向上した改良アンダーフィル材料、及びその使用法が望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2種類の樹脂組成物の組合せを用いてアンダーフィル材料を作成することに関する。第1の樹脂組成物は、透明であり、硬化性樹脂を、溶媒及びコロイダルシリカ充填材と組み合わせて含んでいる。好ましくは、第1の硬化性樹脂は芳香族エポキシ樹脂と、環式脂肪族エポキシモノマー、脂肪族エポキシモノマー、ヒドロキシ芳香族化合物、並びにこれらの組合せ及び混合物からなる群から選択される1種以上の追加の成分との組合せである。この第1の溶媒変性樹脂は、形成されたら、ウエハー又はチップに塗布(適用)される。好ましくは、第1の樹脂組成物中に利用される樹脂は溶媒の除去により硬くて透明なBステージの樹脂を形成する。このBステージの樹脂が形成されたら、チップは基板上に配置される準備完了である。
【0007】
第2の、そして区別される硬化性フラックス樹脂は、チップの配置に先立って基板又はデバイスに塗布される。好ましくは、第2の硬化性フラックス組成物はエポキシ樹脂である。フラックス樹脂を基板に添加すると、被覆チップがリフロー中適正な位置に保持され、それによりチップの配置とリフローとの間の整列不整合が防止される。リフロー中にはんだの相互接続が形成され、はんだボールのフラックスが高まる。
【0008】
本発明で利用する第1の溶媒変性樹脂と第2の硬化性フラックス樹脂の組合せにより、硬化の際に低いCTE、高いTgの熱硬化樹脂が生成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、アンダーフィル材料として有用な樹脂材料の組合せに関する。本発明のアンダーフィル材料は2種類の樹脂、すなわち第1の硬化性透明樹脂組成物と第2の硬化性フラックス樹脂組成物を含んでいる。第1の硬化性樹脂組成物は好ましくはウエハー段階で塗布し、その樹脂を溶媒の除去によりBステージにし、次いでそのウエハーをダイシング又は類似の工程にかけて個別のチップを製造する。しかしながら、幾つかの実施形態では、第1の硬化性樹脂をダイシング後の個別のチップに塗布することができる。第2の硬化性フラックス樹脂は、チップが設置される基板又はデバイスに塗布される。この第2の硬化性フラックス樹脂はリフロー作業中チップを適正な位置に保持することにより、チップの整列不整合を制限する。
【0010】
本発明の第1の硬化性樹脂組成物は好ましくは1種以上のエポキシ樹脂の樹脂マトリックスを含んでいる。好ましくは、第1の硬化性樹脂組成物は、1種以上の芳香族エポキシ樹脂と、1種以上の環式脂肪族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、ヒドロキシ芳香族化合物、又はこれらの混合物若しくは組合せを含んでいる。樹脂マトリックスは1種以上の溶媒及び粒子充填材分散物と組み合わせる。一実施形態では、芳香族エポキシ樹脂はノボラッククレゾール樹脂から誘導されたエポキシである。別の実施形態では、粒子充填材分散物は1種以上の官能化コロイダルシリカを含む。また、第1の硬化性樹脂組成物は、他の添加剤もあるが、取り分け1種以上の硬化剤及び/又は触媒を含んでいてもよい。加熱し溶媒を除去すると、第1の硬化性樹脂は透明なBステージの樹脂を形成するが、本明細書ではこれを「溶媒変性樹脂」ということがある。この第1の溶媒変性樹脂材料の透明性は、ウエハーレベルのアンダーフィルとして殊に有用であり、ウエハーダイシング作業中ウエハーダイシングガイドマークを目に見えるようにする。
【0011】
本発明の第2の硬化性フラックス樹脂組成物は好ましくは1種以上のエポキシ樹脂の樹脂マトリックスを含んでいる。好ましくは、フラックス樹脂は低粘度の液体であり、エポキシ硬化剤を含んでいる。一実施形態では、第2の硬化性フラックス樹脂は1種以上の官能化コロイダルシリカを含んでいる。
【0012】
これら2種類の樹脂の組合せにより、加熱によって最終的に低い熱膨張率(「CTE」)と高いガラス転移温度(「Tg」)を有する硬化した硬い樹脂に硬化可能なアンダーフィル材料が生成する。幾つかの実施形態では、アンダーフィル材料は自己フラックス能を有していることができる。コロイダルシリカ充填材は本質的に本発明の組成物全体に均一に分布しており、この分布は室温で、また第1の硬化性樹脂からの溶媒除去及び全ての硬化ステップ中安定している。
【0013】
本明細書で使用する場合、「低い熱膨張率」とは、熱膨張率がセ氏1度に付き百万部当たりの部(ppm/℃)で測定してベース樹脂より低い硬化した全組成物を指していう。通例、硬化した全組成物の熱膨張率は約50ppm/℃未満である。本明細書で使用する場合、「硬化した」とは、反応性基を有する全配合物で、その反応性基の約50〜約100%が反応しているものをいう。「Bステージ樹脂」とは、本明細書で使用する場合、樹脂が通例硬く、汎用溶媒に対して部分的にのみ可溶性である熱硬化性樹脂の二次的段階をいう。本明細書で言及する場合、「ガラス転移温度」は、非晶質材料が硬質状態から塑性状態に変化する温度である。「硬化前の全組成物の低い粘度」とは、通例、組成物が硬化する前に25℃で約50〜約100000センチポアズの範囲、好ましくは約1000〜約20000センチポアズの範囲であるアンダーフィル材料の粘度をいう。本明細書で使用する場合、「透明」とは、15の最大曇り率、通例10の最大曇り率、最も一般的には3の最大曇り率を指す。「基板」とは、本明細書で使用する場合、チップを付けるあらゆるデバイス又は素子をいう。
【0014】
第1の硬化性透明樹脂組成物中に使用するのに適切な樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサン樹脂、アクリレート樹脂、その他のオルガノ官能化ポリシロキサン樹脂、ポリイミド樹脂、フルオロカーボン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フッ素化ポリアリルエーテル、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、フェノールクレゾール樹脂 芳香族ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ビスマレイミド トリアジン樹脂、フルオロ樹脂、その他高度に架橋した熱硬化材料に硬化させることができる当業者に公知のあらゆるポリマー系がある。(汎用ポリマーについては、「Polymer Handbook」、Branduf,J.、Immergut,E.H、Grulke,Eric A、Wiley Interscience Publication、New York、4th ed.(1999)、「Polymer Data Handbook」、Mark,James、Oxford University Press、New York(1999)を参照されたい)。好ましい硬化性熱硬化材料はエポキシ樹脂、アクリレート樹脂、ポリジメチルシロキサン樹脂、その他フリーラジカル重合、原子移動、ラジカル重合、開環重合、開環メタセシス重合、アニオン重合、カチオン重合その他当業者に公知の方法によって架橋網目構造を形成することができるオルガノ官能化ポリシロキサン樹脂である。適切な硬化性シリコーン樹脂としては、例えば、「Chemistry and Technology of Silicone」、Noll、W.、Academic Press(1968)に記載されているような付加硬化性及び縮合硬化性マトリックスがある。
【0015】
第1の樹脂組成物中に使用するエポキシ樹脂は、好ましくは、1種以上の芳香族エポキシ樹脂と、1種以上の環式脂肪族エポキシモノマー、脂肪族エポキシモノマー、若しくはヒドロキシ芳香族化合物、又は以上のいずれかの混合物とを含むエポキシ樹脂マトリックスである。エポキシ樹脂はさらに、エポキシ官能性を有するいかなる有機系又は無機系を含んでいてもよい。本明細書及び特許請求の範囲を通じて芳香族、脂肪族及び環式脂肪族樹脂を含めて樹脂について記載するときは、その特定名称の樹脂又はその名称の樹脂の部分を有する分子のいずれも考えられる。有用なエポキシ樹脂としては、「Chemistry and Technology of the Epoxy Resins」、B.Ellis(Ed.) Chapman Hall 1993、New York及び「Epoxy Resins Chemistry and Technology」、C.May及びY.Tanaka、Marcel Dekker、New York(1972)に記載されているものがある。エポキシ樹脂は充填材分散物とブレンドすることができる硬化性のモノマー及びオリゴマーである。エポキシ樹脂としては、その分子内に2以上のエポキシ基を有する芳香族エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂を挙げることができる。本発明の組成物中のエポキシ樹脂は、好ましくは2以上の官能性、より好ましくは2〜4の官能性を有している。有用なエポキシ樹脂としては、好ましくは金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムのような塩基性触媒の存在下におけるヒドロキシル、カルボキシル又はアミンを含有する化合物とエピクロロヒドリンとの反応により製造することができるものがある。また、1以上、好ましくは2以上の炭素−炭素二重結合を含有する化合物とペルオキシ酸のような過酸化物との反応によって製造されるエポキシ樹脂もある。
【0016】
エポキシ樹脂マトリックスに有用な芳香族エポキシ樹脂は、好ましくは2以上のエポキシ官能性、より好ましくは2〜4のエポキシ官能性を有する。これらの物質を加えると、より高いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂組成物が得られる。本発明に有用な芳香族エポキシ樹脂の例としては、クレゾール−ノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノール−Aエポキシ樹脂、ビスフェノール−Fエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂、ビフェニルエポキシ樹脂、4,4′−ビフェニルエポキシ樹脂、多官能性エポキシ樹脂、ジビニルベンゼンジオキシド、及び2−グリシジルフェニルグリシジルエーテルがある。三官能性芳香族エポキシ樹脂の例としては、トリグリシジルイソシアヌレートエポキシ、VG3101L、三井化学(株)製などがあり、四官能性芳香族エポキシ樹脂の例としてはCiba Geigy社製のAraldite MTO163、などがある。一実施形態では、本発明で使用するのに好ましいエポキシ樹脂としては、クレゾール−ノボラックエポキシ樹脂、及びビスフェノールから誘導されたエポキシ樹脂がある。
【0017】
多官能性エポキシモノマーは、全組成物の約1〜約70重量%の範囲の量で本発明の第1の樹脂組成物中に含まれ、約5〜約35重量%の範囲が好ましい。幾つかの場合、エポキシ樹脂の量は、ノボラック樹脂硬化剤のような他の試薬のモル量に対応するように調節される。
【0018】
本発明の組成物に有用な環式脂肪族エポキシ樹脂は当技術分野で周知であり、本明細書に記載されているように、約1以上の環式脂肪族基と1以上のオキシラン基を含有する化合物である。一実施形態では、環式脂肪族オレフィンのエポキシドが好ましい。より好ましい環式脂肪族エポキシは、1分子当たり約1個の環式脂肪族基と2個以上のオキシラン環を含有する化合物である。具体例としては、3−(1,2−エポキシエチル)−7−オキサビシクロヘプタン、ヘキサン二酸、ビス(7−オキサビシクロヘプチルメチル)エステル、2−(7−オキサビシクロヘプト−3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサ−5,3′−(7)−オキサビシクロヘプタン、メチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3−シクロヘキセニルメチル−3−シクロヘキセニルカルボキシレートジエポキシド、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ−(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、3,4−エポキシシクロヘキシルアルキル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキサンジオキシド、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−エキソビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エンド−エキソビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、2,2−ビス(4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル)プロパン、2,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシシクロヘキシル−p−ジオキサン)、2,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ノルボルネン、リノール酸ダイマーのジグリシジルエーテル、リモネンジオキシド、2、2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジオキシド、1,2−エポキシ−6−(2,3−エポキシプロポキシ)−ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン、p−(2,3−エポキシ)シクロペンチルフェニル−2,3−エポキシプロピルエーテル、1−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル−5,6−エポキシヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン、o−(2,3−エポキシ)シクロペンチルフェニル−2,3−エポキシプロピルエーテル)、1,2−ビス(5−(1,2−エポキシ)−4,7−ヘキサヒドロメタノインダノキシル)エタン、シクロペンテニルフェニルグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ブタジエンジオキシド、ジメチルペンタンジオキシド、ジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、及びジペンテンジオキシド、並びにジグリシジルヘキサヒドロフタレートがある。通例、環式脂肪族エポキシ樹脂は3−シクロヘキセニルメチル−3−シクロヘキセニルカルボキシレートジエポキシドである。
【0019】
環式脂肪族エポキシモノマーは第1の樹脂組成物の約0.3〜約15重量%の範囲の量で溶媒変性樹脂組成物に含まれ、約0.5〜約10重量%の範囲が好ましい。
【0020】
溶媒変性樹脂組成物中に有用な脂肪族エポキシ樹脂としては、1以上の脂肪族基を含有する化合物、例えばC〜C20脂肪族樹脂又はポリグリコール型樹脂がある。脂肪族エポキシ樹脂は単官能性、すなわち1分子当たり1個のエポキシ基であっても、多官能性、すなわち1分子当たり2個以上のエポキシ基であってもよい。脂肪族エポキシ樹脂の例としては、特に限定されないが、ブタジエンジオキシド、ジメチルペンタンジオキシド、ジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、及びジペンテンジオキシドがある。かかる脂肪族エポキシ樹脂は、例えば、DowからDER 732及びDER 736として市販されている。
【0021】
脂肪族エポキシモノマーは全組成物の約0.3〜約15重量%の範囲の量で溶媒変性樹脂組成物に含まれ、約0.5〜約10重量%の範囲が好ましい。
【0022】
シリコーン−エポキシ樹脂を利用してもよく、次式で表すことができる。
M′D′T′
式中、下付文字a、b、c、d、e、f及びgはゼロ又は正の整数であるが、下付文字b、d及びfの合計は1以上でなければならない。ここで、Mは次式を有する。
SiO1/2
M′は次式を有する。
(Z)RSiO1/2
Dは次式を有する。
SiO2/2
D′は次式を有する。
(Z)RSiO2/2
Tは次式を有する。
SiO3/2
T′は次式を有する。
(Z)SiO3/2
そして、Qは次式を有する。
SiO4/2
上記式中、各R、R、R、R、Rは独立に各々水素原子、C1−22アルキル、C1−22アルコキシ、C2−22アルケニル、C6−14アリール、C6−22アルキル置換アリール、又はC6−22アリールアルキルであり、これらの基はハロゲン化、例えばフッ素化されてC1−22フルオロアルキルのようなフルオロカーボンを含有していてもよく、又はアミノ基を含有していてアミノアルキル、例えばアミノプロピル若しくはアミノエチルアミノプロピルを形成していてもよく、又は式(CHCHRO)のポリエーテル単位を含有していてもよく、この式中のRはCH又はHであり、kは約4〜20の範囲である。また、前記式中のZは各々独立にエポキシ基を含有する基を表す。本発明の様々な実施形態で使用する用語「アルキル」は、ノルマルアルキル、枝分れアルキル、アラルキル、及びシクロアルキル基を示すものである。ノルマル及び枝分れアルキル基は好ましくは約1又は約12個の範囲の炭素原子を含有するものであり、具体的な非限定例としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第三−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、及びヘキシルがある。表されるシクロアルキル基は好ましくは約4〜約12個の範囲の環炭素原子を含有するものである。これらのシクロアルキル基の幾つかの具体的な非限定例としては、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、及びシクロヘプチルがある。好ましいアラルキル基は約7〜約14個の範囲の炭素原子を含有するものであり、これらには、特に限定されないが、ベンジル、フェニルブチル、フェニルプロピル、及びフェニルエチルがある。本発明の様々な実施形態で使用するアリール基は好ましくは約6〜約14個の範囲の環炭素原子を含有するものである。これらのアリール基の幾つかの具体的な非限定例としてはフェニル、ビフェニル、及びナフチルがある。適切なハロゲン化部分の具体的な非限定例は3,3,3−トリフルオロプロピルである。エポキシモノマーとオリゴマーの組合せも本発明で使用することが考えられる。
【0023】
樹脂と共に使用するのに適している溶媒としては、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、メトキシプロパノールアセテート、酢酸ブチル、メトキシエチルエーテル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチルセロソルブ、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、並びにセロソルブ、例えば酢酸エチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、及びブチルカルビトールアセテートがある。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、又は2種以上のものの組合せの形態で使用してもよい。一実施形態では、本発明で使用するのに好ましい溶媒は1−メトキシ−2−プロパノールである。溶媒は溶媒変性樹脂組成物中に約5〜約70重量パーセント、好ましくは約15〜約40重量パーセントの量で存在する。溶媒の添加のため、第1の硬化性透明樹脂は本明細書中で「溶媒変性樹脂」ということがあり、これらの用語は互換的に使用することができる。
【0024】
本発明の第1の樹脂組成物中の改質充填材を作成するのに利用される充填材は好ましくは、サブミクロンサイズのシリカ(SiO)粒子が水性又はその他の溶媒媒質中に分散しているコロイダルシリカである。この分散物は、約10重量パーセント以上約85重量パーセント以下の二酸化ケイ素(SiO)、通例は約30〜約60重量パーセントの二酸化ケイ素を含有する。第1の樹脂組成物中のコロイダルシリカの粒径は通例約1〜約250ナノメートル(nm)の範囲、より典型的には約5〜約100nmの範囲であり、一実施形態では約5〜約50nmの範囲が好ましい。
【0025】
さらに別の実施形態では、好ましい範囲は約50〜約100nmであり、約50〜約75nmの範囲がより好ましい。コロイダルシリカは、以下に記載するようにオルガノアルコキシシランで官能化されて官能化コロイダルシリカを形成している。
【0026】
コロイダルシリカを官能化するのに使用するオルガノアルコキシシランは次式に包含される。
(RSi(OR4−a
式中、Rは各々独立に、場合によりアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート若しくはエポキシド基又はC6−14アリール若しくはアルキル基でさらに官能化されていてもよいC1−18一価炭化水素基であり、Rは各々独立にC1−18一価炭化水素基又は水素基であり、「a」は1〜3に等しい整数である。好ましくは、本発明に包含されるオルガノアルコキシシランはフェニルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランである。好ましい実施形態では、フェニルトリメトキシシランを用いてコロイダルシリカを官能化することができる。さらに別の実施形態では、フェニルトリメトキシシランを使用してコロイダルシリカを官能化する。官能基の組合せも可能である。
【0027】
通例、オルガノアルコキシシランは第1の樹脂組成物中のコロイダルシリカが含有する二酸化ケイ素の重量を基準にして約0.5〜約60重量%、好ましくは約5〜約30重量%の範囲で存在する。
【0028】
コロイダルシリカの官能化は、脂肪族アルコールが添加されている上記重量比のコロイダルシリカの市販水性分散物に官能化剤を添加することによって実施することができる。得られる脂肪族アルコール中に官能化コロイダルシリカと官能化剤を含む組成物を本発明では予備分散物と定義する。脂肪族アルコールは特に限定されないが、イソプロパノール、t−ブタノール、2−ブタノール、及びこれらの組合せから選択することができる。脂肪族アルコールの量は通例水性コロイダルシリカ予備分散物中に存在する二酸化ケイ素の量の約1〜約10倍の範囲である。
【0029】
得られたオルガノ官能化コロイダルシリカは酸又は塩基で処理してpHを中和することができる。酸又は塩基及びシラノールとアルコキシシラン基の縮合を促進するその他の触媒を使用して官能化プロセスを補助することもできる。かかる触媒としては、オルガノ−チタネート及びオルガノ−スズ化合物、例えばチタン酸テトラブチル、チタンイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)、ジラウリン酸ジブチルスズ、又はこれらの組合せがある。幾つかの場合、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ(すなわち、4−ヒドロキシTEMPO)のような安定剤をこの予備分散物に添加してもよい。得られた予備分散物は通例、約1〜約12時間の範囲の期間約50〜約100℃の範囲に加熱する。
【0030】
次に、冷却した透明な予備分散物をさらに処理して最終の分散物を形成する。場合により、硬化性モノマー又はオリゴマーを添加してもよく、場合によっては、より脂肪族性の溶媒を加えてもよい。この溶媒は、特に限定されないが、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、トルエン、及びこれらの組合せから選択することができる。この最終の官能化コロイダルシリカ分散物を酸若しくは塩基又はイオン交換樹脂で処理して酸性又は塩基性の不純物を除去してもよい。
【0031】
最終の分散組成物は手動混合することができ、又はドウミキサー、チェインカンミキサー及び遊星型ミキサーのような標準的な混合装置により混合することができる。分散物成分のブレンド操作は当業者により用いられる何らかの手段により回分式、連続式、又は半連続式に行うことができる。
【0032】
この最終の官能化コロイダルシリカ分散物を次に、約0.5〜約250Torrの範囲の真空下約20〜約140℃の範囲の温度で濃縮して、溶媒、残留水、及びこれらの組合せのような低沸点成分を実質的に除去して官能化コロイダルシリカの透明な分散物を得る。この分散物は場合により硬化性モノマーを含有していてもよく、本明細書では最終(の)濃縮分散物という。本明細書中で、低沸点成分の実質的な除去とは、約15〜約80%のシリカを含有する濃縮シリカ分散物を得るような低沸点成分の除去と定義される。
【0033】
第1の樹脂組成物のBステージ化は通例、約50〜約250℃の範囲、より典型的には約70〜約100℃の範囲の温度、約25〜約250mmHg、より好ましくは約100〜約200mmHgの範囲の圧力の真空中で行われる。加えて、Bステージ化は通例、約30分〜約5時間の範囲、より典型的には約45分〜約2.5時間の範囲の時間にわたり行うことができる。場合により、このBステージ化樹脂は約100〜約250℃の範囲、より典型的には約150〜約200℃の範囲の温度で約45分〜約3時間の範囲の時間にわたり後硬化させることができる。
【0034】
得られる第1の樹脂組成物は好ましくは官能化コロイダルシリカとして官能化された二酸化ケイ素を含有している。かかる場合、最終組成物中の二酸化ケイ素の量は、最終組成物の約15〜約80重量%、より好ましくは約25〜約75重量%、最も好ましくは最終の硬化した樹脂組成物の約30〜約70重量%の範囲であることができる。このコロイダルシリカ充填材は本発明の組成物の全体に本質的に均一に分布しており、この分布は室温で安定に維持される。本明細書で使用する場合、「均一な分布」とは、目に見える沈殿が存在せず、かかる分散物が透明であることを意味する。
【0035】
幾つかの場合において、官能化コロイダルシリカの予備分散物又は最終分散物をさらに官能化してもよい。低沸点成分を少なくとも部分的に除去し、その後、官能化コロイダルシリカの残留ヒドロキシル官能基と反応する適当な封鎖剤を、予備分散物又は最終分散物中に存在する二酸化ケイ素の量の約0.05〜約10倍の範囲の量で添加する。本明細書で使用する場合、低沸点成分の部分的な除去とは、低沸点成分の総量の約10%以上、好ましくは低沸点成分の総量の約50%以上の除去をいう。
【0036】
有効量の封鎖剤が官能化コロイダルシリカを封鎖する。本明細書中で、封鎖官能化コロイダルシリカとは、対応する未封鎖の官能化コロイダルシリカ中に存在する遊離のヒドロキシル基の10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは35%以上が封鎖剤との反応により官能化されている官能化コロイダルシリカと定義される。
【0037】
幾つかの場合において、官能化コロイダルシリカを封鎖すると、樹脂配合物の室温安定性が改良されるため、硬化性樹脂配合物全体の硬化が有効に改良される。幾つかの場合において、封鎖官能化コロイダルシリカを含む配合物は、コロイダルシリカが封鎖されていない類似の配合物よりずっと良好な室温安定性を示す。
【0038】
代表的な封鎖剤としては、シリル化剤のようなヒドロキシル反応性物質がある。シリル化剤の例としては、特に限定されないが、ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、テトラメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザン、N−(トリメチルシリル)ジエチルアミン、1−(トリメチルシリル)イミダゾール、トリメチルクロロシラン、ペンタメチルクロロジシロキサン、ペンタメチルジシロキサン、及びこれらの組合せがある。好ましい実施形態では、ヘキサメチルジシラザンを封鎖剤として使用する。分散物が、例えば封鎖によりさらに官能化されている場合には、1種以上の硬化性モノマーを添加して最終分散物を形成する。次に、この分散物を、約20〜約140℃の範囲に、約0.5〜約48時間の範囲の時間加熱する。次いで、得られた混合物をろ過する。硬化性モノマー中の官能化コロイダルシリカの混合物を、約0.5〜約250Torrの範囲の圧力で濃縮して最終の濃縮分散物を形成する。このプロセスの間に、溶媒、残留水、封鎖剤とヒドロキシル基の副生物、過剰の封鎖剤、及びこれらの組合せのような低沸点成分が実質的に除去されて、約15〜約75%のシリカを含有する封鎖官能化コロイダルシリカの分散物が得られる。
【0039】
場合により、アミン系エポキシ硬化剤、フェノール樹脂、ヒドロキシ芳香族化合物、カルボン酸−無水物、又はノボラック硬化剤のようなエポキシ硬化剤を添加してもよい。幾つかの実施形態では、二官能性シロキサン無水物をエポキシ硬化剤として、場合により1種以上の以上の硬化剤と組み合わせて使用してもよい。さらに、場合により、硬化触媒又はヒドロキシル部分を含有する有機化合物をエポキシ硬化剤と共に添加する。
【0040】
代表的なアミン系エポキシ硬化剤には通例、芳香族アミン、脂肪族アミン、又はこれらの組合せが含まれる。芳香族アミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、4,4′−メチレンジアニリン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルエーテル、トルエンジアミン、ジアニシデン及びアミンの混合物がある。脂肪族アミンとしては、例えば、エチレンアミン、シクロヘキシルジアミン、アルキル置換ジアミン、メンタンジアミン、イソホロンジアミン、及び芳香族ジアミンの水素化物がある。アミン系エポキシ硬化剤の組合せを使用することもできる。アミン系エポキシ硬化剤の具体的な例も、「Chemistry and Technology of the Epoxy Resins」 B.Ellis(Ed.)Chapman Hall、New York、1993に記載されている。
【0041】
代表的なフェノール樹脂としては、通例、フェノール−ホルムアルデヒド縮合生成物である、一般にノボラック又はクレゾール樹脂といわれるものがある。これらの樹脂は、いろいろなフェノールと様々なモル比のホルムアルデヒドとの縮合生成物であり得る。かかるノボラック樹脂硬化剤としては、それぞれ荒川化学工業(株)及びSchenectady International社から市販のTAMANOL 758又はHRJ1583オリゴマー樹脂のような市販のものがある。フェノール樹脂硬化剤の追加の例も、「Chemistry and Technology of the Epoxy Resins」 B.Ellis(Ed.)Chapman Hall、New York、1993に記載されている。これらの物質はエポキシ配合物の硬化を促進するのに使用される添加剤の代表例であるが、当業者には明らかなように、特に限定されないがアミノホルムアルデヒド樹脂のような他の物質を硬化剤として使用することができ、従って本発明の範囲内に入る。
【0042】
適切なヒドロキシ芳香族化合物は、本組成物の樹脂マトリックスと干渉することがないものである。かかるヒドロキシ含有モノマーとしては、次式で表されるヒドロキシ芳香族化合物を挙げることができる。
【0043】
【化1】

式中、R〜Rは独立にC〜C10枝分れ若しくは鎖脂肪族若しくは芳香族基、又はヒドロキシルである。かかるヒドロキシル芳香族化合物の例としては、特に限定されないが、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、メチルヒドロキノン、メチルレゾルシノール及びメチルカテコールがある。存在する場合、ヒドロキシ芳香族化合物は約0.3〜約15重量パーセント、好ましくは約0.5〜約10重量パーセントの量で存在する。
【0044】
代表的な無水物硬化剤としては通例、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(MHHPA)、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、ピロメリト酸二無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、クロレンド酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、などがある。2種以上の無水物硬化剤を含む組合せも使用できる。具体的な例は「Chemistry and Technology of the Epoxy Resins」、B.Ellis(Ed.)Chapman Hall、New York、(1993)及び「Epoxy Resins Chemistry and Technology」、C.A.May編、Marcel Dekker、New York、2nd edition(1988)に記載されている。
【0045】
代表的な二官能性シロキサン無水物及びその製造方法は当業者に公知であり、例えば、米国特許第4542226号及び同第4381396号に開示されている無水物がある。適切な無水物として、次式のものがある。
【0046】
【化2】

式中、Xは0〜50であることができ、好ましくはXは0〜10であることができ、最も好ましくはXは1〜6であることができ、各R′及びR″は各々独立にC1−22アルキル、C1−22アルコキシ、C2−22アルケニル、C6−14アリール、C6−22アルキル置換アリール、及びC6−22アリールアルキルであり、Yは次式で表される。
【0047】
【化3】

式中、R〜R15は水素、ハロゲン、C(1−13)一価炭化水素基及び置換C(1−13)一価炭化水素基から選択されるものであり、Wは−O−及びCR−から選択され、RはR〜R15と同じ定義を有する。
【0048】
幾つかの実施形態では、R′及びR″はハロゲン化、例えばフッ素化されて、C1−22フルオロアルキルのようなフルオロカーボンとなっていてもよい。好ましくは、R′とR″はメチル、エチル、3,3,3−トリフルオロプロピル又はフェニルであり、最も好ましくはR′とR″の両方がメチルである。本発明でエポキシ硬化剤として使用する二官能性シロキサン無水物は単一の化合物であることも、又はY部分で末端停止したいろいろな長さのシロキサン鎖を有するオリゴマーの混合物であることもできる。
【0049】
好ましくは、本発明の二官能性シロキサン無水物は次式のものである。
【0050】
【化4】

式中、X、R′及びR″は式(1)について上で定義した通りであり、すなわち、Xは0〜50であることができ、好ましくはXは0〜10であることができ、最も好ましくはXは1〜6であることができ、各R′とR″は独立に各々がC1−22アルキル、C1−22アルコキシ、C2−22アルケニル、C6−14アリール、C6−22アルキル置換アリール、及びC6−22アリールアルキルである。幾つかの実施形態では、R′とR″はハロゲン化、例えばフッ素化されて、C1−22フルオロアルキルのようなフルオロカーボンとなっていてもよい。好ましくは、R′とR″はメチル、エチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、又はフェニルであり、最も好ましくはメチルである。上述の通り、単一の化合物を使用することもできるし、又はいろいろな長さのシロキサン鎖を有するオリゴマーの混合物を使用してもよい。
【0051】
一実施形態では、本発明のオリゴシロキサン二無水物は、Karstedtの白金触媒(米国特許第3775442号に記載されているPtとジビニルテトラメチルジシロキサンの複合体)の存在下で1モルの1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサンと2モルの5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物のヒドロシリル化によって合成される。一実施形態では、5,5′−(1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−トリシロキサンジイル)ビス[ヘキサヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1,3−ジオン]を二官能性シロキサン無水物として使用することができる。
【0052】
エポキシ配合物を形成するのに添加することができる硬化触媒は、特に限定されないがアミン、アルキル置換イミダゾール、イミダゾリウム塩、ホスフィン、アルミニウムアセチルアセトナート(A1(acac))のような金属塩、窒素含有化合物と酸性化合物との塩、及びこれらの組合せを始めとする典型的なエポキシ硬化用触媒から選択することができる。窒素含有化合物としては、例えば、アミン化合物、ジアザ化合物、トリアザ化合物、ポリアミン化合物及びこれらの組合せがある。酸性化合物としては、フェノール、オルガノ−置換フェノール、カルボン酸、スルホン酸及びこれらの組合せがある。好ましい触媒は窒素含有化合物の塩である。窒素含有化合物の塩としては、例えば1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデカンがある。窒素含有化合物の塩は市販されており、例えばAir Products社からPolycat SA−1及びPolycat SA−102として入手可能である。好ましい触媒としては、トリフェニルホスフィン(TPP)、N−メチルイミダゾール(NMI)、及びジブチルスズジラウレート(DiBSn)がある。
【0053】
ヒドロキシル含有部分として利用される有機化合物の例としては、ジオール、1以上のヒドロキシル基を含有する高沸点アルキルアルコール、及びビスフェノールのようなアルコールがある。アルキルアルコールは直鎖、枝分れ又は環式脂肪族でよく、2〜12個の炭素原子を含有し得る。かかるアルコールの例としては、特に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、すなわち、1,2−及び1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル,2−メチル,1,3−プロパンジオール、1,3−及び1,5−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジメタノールデカリン、ジメタノールビシクロオクタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、特にそのシス−及びトランス−異性体、トリエチレングリコール、1,10−デカンジオール、並びに以上の組合せがある。アルコール類の別の例としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチル−オキセタン(Dow Chemicals社からUVR6000として市販及びビスフェノール類がある。
【0054】
ビスフェノールの幾つかの具体的な非限定例としては、米国特許第4217438号に一般的に又は個々に開示されているジヒドロキシ置換芳香族炭化水素がある。ジヒドロキシ置換芳香族化合物の幾つかの好ましい例としては、4,4′−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)−ジフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(一般にビスフェノールAといわれる)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(一般にビスフェノールFといわれる)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1、1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニルエタン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、2,2,2′,2′−テトラヒドロ−3,3,3′,3′−テトラメチル,1′−スピロビ[1H−インデン]−6,6′−ジオール(SBI)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(一般にDMBPCといわれる)、及びC1−13アルキル置換レゾルシノールがある。最も一般的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンが好ましいビスフェノール化合物である。ヒドロキシル部分を含有する有機化合物の組合せも本発明で使用することができる。
【0055】
また、硬化性エポキシ配合物全体に反応性の有機希釈剤を添加して組成物の粘度を低下させることもできる。反応性希釈剤の例としては、特に限定されないが、3−エチル−3−ヒドロキシメチル−オキセタン、ドデシルグリシジルエーテル、4−ビニル−1−シクロヘキサンジエポキシド、ジ(β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル)−テトラメチルジシロキサン、及びこれらの組合せがある。反応性有機希釈剤としてはまた、単官能性エポキシ及び/又は1以上のエポキシ官能性を含有する化合物を挙げることもできる。かかる希釈剤の代表例としては、特に限定されないが、3−(2−ノニルフェニルオキシ)−1,2−エポキシプロパン又は3−(4−ノニルフェニルオキシ)−1,2−エポキシプロパンのようなフェノールグリシジルエーテルのアルキル誘導体がある。使用できるその他の希釈剤としては、フェノール自体、並びに2−メチルフェノール、4−メチルフェノール、3−メチルフェノール、2−ブチルフェノール、4−ブチルフェノール、3−オクチルフェノール、4−オクチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、4−フェニルフェノール及び4−(フェニルイソプロピリデン)フェノールのような置換フェノールのグリシジルエーテルがある。
【0056】
また、トリアルコキシオルガノシラン(例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びビス(トリメトキシシリルプロピル)フマレート)のような接着促進剤を第1の硬化性樹脂と共に使用することができる。存在する場合、接着促進剤は、通例最終分散物全体の約0.01〜約2重量%の範囲の有効量で添加する。
【0057】
場合により、ミクロンサイズの溶融シリカ充填材を樹脂に添加してもよい。存在する場合、溶融シリカ充填材はCTEをさらに低下させるのに有効量で添加する。
【0058】
場合により、難燃剤を、最終分散物全体の量に対して約0.5〜約20重量%の範囲で第1の硬化性樹脂中に使用することができる。難燃剤の例としては、ホスホルアミド、リン酸トリフェニル(TPP)、レゾルシノールジホスフェート(RDP)、ビスフェノール−a−ジホスフェート(BPA−DP)、有機ホスフィンオキシド、ハロゲン化エポキシ樹脂(テトラブロモビスフェノールA)、金属酸化物、金属水酸化物、及びこれらの組合せがある。
【0059】
上記エポキシ樹脂マトリックスに加えて、第1の硬化性樹脂の芳香族エポキシ樹脂の代わりに、2種以上のエポキシ樹脂を組み合わせて、例えば脂環式エポキシと芳香族エポキシの混合物を使用してもよい。かかる組合せにより、透明性と流動性が改良される。3以上の官能性を有する1種以上のエポキシ樹脂を含有するエポキシ混合物を使用することにより、低いCTE、良好なフラックス性能、及び高いガラス転移温度を有するアンダーフィル樹脂を形成するのが好ましい。このエポキシ樹脂としては、少なくとも1種の二官能性脂環式エポキシ及び二官能性芳香族エポキシに加えて三官能性のエポキシ樹脂を挙げることができる。
【0060】
本発明の第2の硬化性フラックス樹脂組成物は1種以上のエポキシ樹脂の樹脂マトリックスを含んでいる。この第2のフラックス組成物のエポキシ樹脂は、第1の溶媒変性樹脂中に使用するのに適切なものとして上記したいずれかのエポキシ樹脂、又はその組合せであることができる。また、第2の硬化性フラックス樹脂は、上記エポキシ硬化剤、並びに溶媒変性樹脂と共に使用するのに適切なものとして上述のような触媒、ヒドロキシル含有部分、反応性有機希釈剤、接着促進剤、難燃剤、又はこれらの組合せを含んでいることができる。
【0061】
幾つかの実施形態では、利用する場合、脂肪族エポキシモノマーは、第2のフラックス組成物の樹脂成分の約1〜約50重量%の範囲の量で、第2のフラックス樹脂組成物の樹脂成分中に含まれていることができ、約5〜約25重量%の範囲が好ましい。
【0062】
幾つかの実施形態では、利用する場合、環式脂肪族エポキシモノマーは、第2のフラックス組成物の樹脂成分の約1〜約100重量%の範囲の量で、第2のフラックス樹脂組成物の樹脂成分中に含まれていることができ、約25〜約75重量%の範囲が好ましい。
【0063】
幾つかの実施形態では、利用する場合、芳香族エポキシモノマーは、第2のフラックス樹脂組成物の樹脂成分中に、第2のフラックス組成物の樹脂成分の約1〜約100重量%の範囲の量で含まれていることができ、約25〜約75重量%の範囲が好ましい。
【0064】
一実施形態では、エポキシ樹脂は、3−シクロヘキセニルメチル−3−シクロヘキセニルカルボキシレートジエポキシド(Dow Chemical社からUVR 6105として市販)と、ビスフェノール−Fエポキシ樹脂(Resolution Performance ProductからRSL−1739として市販)との組合せであることができる。別の実施形態では、適切なエポキシ樹脂としては、3−シクロヘキセニルメチル−3−シクロヘキセニルカルボキシレートジエポキシドと、ビスフェノール−Aエポキシ樹脂(Resolution Performance ProductからRSL−1462として市販)との組合せがある。以上のものの組合せも使用できる。
【0065】
一実施形態では、第2の硬化性フラックス樹脂は上述のような二官能性シロキサン無水物を含んでおり、これは幾つかの場合上述の通りアミン系エポキシ硬化剤、フェノール樹脂、カルボン酸−無水物、又はノボラック硬化剤のような別のエポキシ硬化剤と組み合わせることができる。幾つかの実施形態では、本発明の二官能性シロキサン無水物は液体カルボン酸−無水物と混和性である。従って、二官能性シロキサン無水物をカルボン酸−無水物とブレンドして液体溶液を形成してもよい。これらの実施形態では、エポキシ硬化剤は好ましくは、ヘキサヒドロフタル酸無水物、MHHPA、又はテトラヒドロフタル酸無水物のような液体有機無水物、最も好ましくはMHHPAと組み合わせて二官能性シロキサン無水物を含む。
【0066】
利用する場合、二官能性シロキサン無水物は、第2の硬化性フラックス樹脂組成物の硬化剤成分中に、第2の硬化性フラックス樹脂組成物の硬化剤成分の約1〜約100重量%、好ましくは約10〜約90重量%の範囲、最も好ましくは約10〜約40重量%の範囲の量で含まれていることができる。
【0067】
利用する場合、カルボン酸−無水物は、第2の硬化性フラックス樹脂組成物の硬化剤成分中に、組成物の硬化剤成分の約1〜約95重量%の範囲の量で含まれており、約10〜約90重量%の範囲が好ましく、60〜約90重量%が最も好ましい。
【0068】
第2のフラックス樹脂の例としては、3−シクロヘキセニルメチル−3−シクロヘキセニルカルボキシレートジエポキシド(Dow Chemical社からUVR 6105として市販)、ビスフェノール−Fエポキシ樹脂(例えば、Resolution Performance Productから市販されているRSL−1739)、MHHPA、Polycat SA−1(Air Products社製)のような窒素含有化合物の塩を始めとする触媒、及び3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(Dow Chemical社からUVR 6000として市販)のようなヒドロキシル含有部分を有する有機化合物の組合せがある。幾つかの実施形態では、ビスフェノール−Aエポキシ樹脂(例えば、Resolution Performance ProductのRSL−1462)をビスフェノール−F樹脂の代わりに使用してもよい。他の実施形態では、5,5′−(1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5,トリシロキサンジイル)ビス[ヘキサヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1,3−ジオン](TriSDA)のような追加の二官能性シロキサン無水物エポキシ硬化剤を含ませるのが好ましい。ビスフェノールエポキシ樹脂を利用する場合、ビスフェノール樹脂は好ましくは、第2のフラックス樹脂のエポキシ成分中に、樹脂組成物の約1〜100重量%の範囲の量で存在し、約25〜約75重量%の範囲が好ましい。
【0069】
第2の硬化性フラックス樹脂組成物は好ましくは、組成物が硬化する前25℃で約50〜約100000センチポアズの範囲、より好ましくは約1000〜約20000センチポアズの範囲の粘度を有する液体である。場合により、この第2のフラックス樹脂を粒子充填材分散物と組み合わせることができ、この分散物は一実施形態では、約1〜約500nmの範囲、より典型的には約5〜約200nmの範囲の粒径を有する上述のようなオルガノアルコキシシランで官能化された1種以上のコロイダルシリカを含んでいる。
【0070】
本発明の組成物を製造する方法によって改良アンダーフィル材料が得られる。第1の溶媒変性樹脂組成物の場合、一実施形態では、組成物を製造するには、コロイダルシリカの安定な濃縮分散物が形成されるようにコロイダルシリカを官能化し、約15〜約75%のシリカを含有する官能化コロイダルシリカの濃縮分散物を形成し、少なくとも芳香族エポキシ樹脂を含み、場合によりこれと組み合わせて環式脂肪族エポキシモノマー、脂肪族エポキシモノマー、及び/又はヒドロキシ芳香族化合物、さらに場合により硬化剤、触媒その他上記の添加剤のような1種以上の添加剤を含み、1種以上の溶媒を含むエポキシモノマーの溶液を、前記官能化コロイダルシリカ分散物とブレンドし、溶媒を
除去して、硬くて透明なBステージの樹脂フィルムを形成する。
【0071】
第2の硬化性フラックス樹脂組成物は同様に製造することができる。一実施形態では、第2の硬化性フラックス樹脂組成物は、エポキシモノマーの溶液、及び場合により硬化剤、触媒その他上記添加剤のような1種以上の添加剤をブレンドすることによって製造する。幾つかの場合において、第2のフラックス樹脂は、充填材として官能化コロイダルシリカ分散物を含んでおり、第1の溶媒変性樹脂中に利用される官能化コロイダルシリカ分散物と同様にして製造される。他の実施形態では、第2のフラックス樹脂は、充填材として官能化コロイダルシリカ分散物を含まない。
【0072】
Bステージ樹脂フィルムを第2のフラックス樹脂と組み合わせて硬化させることは、アンダーフィル材料として使用する低いCTEの高Tg熱硬化樹脂を形成する上で有用である。
【0073】
アンダーフィル充填操作は当技術分野で公知のいかなる方法によっても達成することができるが、好ましくは本発明の第1の樹脂組成物はウエハーレベルアンダーフィルとして使用(適用)する。ウエハーレベルのアンダーフィル充填プロセスは、アンダーフィル材料をウエハー上に分配した後、溶媒を除去して固体の透明なBステージ樹脂を形成してから、個別のチップにダイシング(切断)し、その後これらのチップをフリップチップ型工程によって最終の構造体に搭載することを含んでいる。
【0074】
次に、第2の硬化性フラックス樹脂をノンフローアンダーフィルとして基板に施す。このプロセスは一般に、まず最初に第2の樹脂材料を基板又は半導体デバイス上に分配し、本発明の溶媒変性樹脂で被覆したフリップチップをフラックス樹脂の上に配置した後、はんだバンプリフロー作業を行って、はんだ接合を形成すると同時にアンダーフィル材料を構成する2種類の樹脂組成物を硬化させることを含んでいる。こうして、これらの組み合わせた樹脂がチップと基板との間の封止材として機能する。
【0075】
好ましくは、本発明の2種の樹脂組成物は以下のように利用する。第1の溶媒変性樹脂を上述の通りウエハー又はチップに塗布(適用)し硬化させてBステージ樹脂を形成する。第1の溶媒変性樹脂がウエハーレベルのアンダーフィルとして塗布されているのであれば、Bステージ樹脂の形成後ダイシング又は類似の工程にかけて個別のチップを製造する。
【0076】
チップが製造されたなら、第2のフラックス樹脂を基板に塗布する。第2のフラックス樹脂を塗布する方法は当業者に公知であり、例えば、ニードルで分配したり印刷したりする。好ましくは、本発明の第2のフラックス樹脂は、ニードルを用いて素子フットプリント領域の中心にドットパターンで分配する。第2のフラックス樹脂の量は、過剰のフラックス樹脂を分配することになる「チップフローティング」という現象を避けるように、慎重に制御する。Bステージ化されている溶媒変性樹脂で被覆したフリップチップダイを、自動ピックアンドプレイス機を用いて、分配された第2のフラックス樹脂の上に配置する。配置力及び配置ヘッド滞留時間を制御して、プロセスのサイクル時間と歩留まりを最適化する。
【0077】
次いで、構造全体を加熱して、はんだボールを融解し、はんだの相互接続を形成し、かつBステージ樹脂をフラックス樹脂と組み合わせて硬化させる。この加熱工程は通常、リフローオーブン内のコンベヤ上で行う。アンダーフィルは、2つの大きく異なるリフロープロフィールで硬化させることができる。第1のプロフィールは「プラトー」プロフィールといわれ、はんだの融点より低いソークゾーンを含んでいる。第2のプロフィールは、「火山」プロフィールといわれ、最高温度に達するまで一定の加熱速度で温度を上昇させる。硬化サイクル中の最高温度は約200〜約260℃の範囲であることができる。リフロー中の最高温度ははんだの組成に大いに依存しており、はんだボールの融点より約10〜約40℃高くするべきである。加熱サイクルは約3〜約10分、より典型的には約4〜約6分である。アンダーフィルは、はんだ接合の形成後完全に硬化していることもあるし、又は追加の後硬化が必要なこともある。場合により、後硬化は約100〜約180℃、より典型的には約140〜約160℃の範囲の温度で約1〜約4時間の範囲の時間にわたり行うことができる。
【0078】
このように、第1の溶媒変性エポキシ樹脂を使用することはBステージの樹脂フィルムを製造する際に有用であり、第2のフラックス樹脂と組み合わせたとき、2つの樹脂の組合せを硬化させることは低いCTEの高Tg熱硬化樹脂を製造する際に有用である。本発明の第1の溶媒変性樹脂から形成されたBステージの樹脂フィルムは、その透明性のため、これらのフィルムはウエハーダイシングに用いるガイドマークを隠さないのでウエハーレベルのアンダーフィル材料として殊に適している。
【0079】
第2のフラックス樹脂は、有利なことに、第1の溶媒変性樹脂が塗布されたチップをリフロー工程中適正な位置に保持する。さらに、本発明の方法に従って、第2のフラックス樹脂が充填されていない場合、材料のCTEが基板からチップに向かって低下する傾斜アンダーフィル材料を得ることができる。
【0080】
驚くべきことに、本発明の方法に従って、現状の方法では得ることができない高レベルの官能化コロイダルシリカを有するアンダーフィル材料を得ることができるということが判明した。加えて、Bステージ樹脂フィルムを第2のフラックス樹脂と組み合わせることによって、はんだリフロー工程中に良好な電気的接続が達成され、その結果硬化後に低いCTE、高いTgの熱硬化樹脂が得られる。
【0081】
本明細書に記載したアンダーフィル材料は分配することができ、特に限定されないがコンピューターや半導体のような固体デバイス及び/又は電子機器、又はアンダーフィル、オーバーモールド、若しくはこれらの組合せが必要とされるあらゆるデバイスのようなデバイスに有用である。これらのアンダーフィル材料は、通例チップと基板を接続するはんだバンプの物理的、機械的、及び電気的性質を強化するのに使用することができる。本発明のアンダーフィル材料は高まった性能を示し、しかも有利なことに、殊に第2の樹脂を使用してリフロー中のチップの整列不整合を最小にしたとき、製造コストが低くなる。本発明のアンダーフィル材料では、アンダーフィル材料がゲル点に達する前にはんだ接合の形成が可能であり、それでもこのアンダーフィル材料は熱サイクルの終わりに固体封止材を形成することができる。本発明の組成物は約30〜約500ミクロンの範囲の間隙を充填することが可能である。
【実施例】
【0082】
当業者がより容易に本発明を実施することができるように、限定ではなく例示の意味で以下の実施例を挙げる。
【0083】
実施例1 官能化コロイダルシリカ(FCS)予備分散物の調製
以下のものを混合することによって、官能化コロイダルシリカ予備分散物を調製した。すなわち、935gのイソプロパノール(Aldrich社)を、34重量%の20nmSiO粒子を含有する675グラムの水性コロイダルシリカ(Nalco 1034A、Nalco Chemical Company)に、撹拌しながらゆっくり加えた。その後、混合物を撹拌しながら、100gのイソプロパノールに溶かした58.5gのフェニルトリメトキシシラン(PTS)(Aldrich社)を加えた。次に、混合物を1〜2時間80℃に加熱して透明な懸濁液を得た。得られた官能化コロイダルシリカの懸濁液は室温で保存した。実施例2で使用するために、様々なレベルのSiO(10〜30%)を有する複数の分散物を調製した。
【0084】
実施例2 エポキシ樹脂中官能化コロイダルシリカの分散物の調製
2000mlの丸底フラスコに、実施例1で調製した各予備分散物540gを仕込んだ。追加の予備分散物の組成は下記表1に示す。次に、1−メトキシ−2−プロパノール(750g)を各フラスコに加えた。得られた官能化コロイダルシリカの分散物を60℃、60mmHgで真空ストリッピングして、約1Lの溶媒を除去した。真空度をゆっくり下げて、充分に撹拌しながら分散物の重量が140gになるまで溶媒除去を続けた。このフェニル−官能化コロイダルシリカの透明な分散物は50%のSiOを含有したが、沈降シリカは含有していなかった。この分散物は室温で3ヶ月より長い期間安定であった。表1の結果は、1−メトキシ−2−プロパノール中の濃縮された安定なFCS分散物(分散物1〜5)を調製するにはある程度のレベルのフェニル官能性が必要であることを示している。官能性レベルを調節して、メトキシプロパノールアセテート中の透明な安定分散物を得ることができる。この調節は、官能性レベルの最適化により他の溶媒中で分散物(分散物6及び7)を調製するのが可能であることを示している。
【0085】
【表1】

実施例3 封鎖官能化コロイダルシリカのエポキシ樹脂中分散物の調製
3.0gの1−メトキシ−2−プロパノール中に5.33gのエポキシクレゾールノボラック(ECN 195XL−25、住友化学(株)から入手可能)と、2.6gのノボラック硬化剤(タマノール758、荒川化学工業(株)から入手可能)を組み合わせて含む溶液を約50℃に加熱した。この溶液の7.28gの部分を、50℃で撹拌しながら、10.0gのFCS分散物(上記表1、試料番号3参照、メトキシプロパノール中50%SiO)に滴下して加えた。この透明な懸濁液を冷却し、N−メチルイミダゾールの触媒溶液、すなわちメトキシプロパノール中50%w/w溶液60マイクロリットルを撹拌することにより加えた。この透明な溶液を特性決定のために直接キャストして樹脂フィルムとするか、又は−10℃で保存した。最終の樹脂組成を示す下記表2に挙げるようにいろいろな触媒を様々な量で含ませ、エポキシを多少変えて追加のフィルムを調製した。
【0086】
エポキシ−シリカ分散物の一部分をガラスプレート上に拡げて塗ることによってフィルムをキャストし、85℃に設定したオーブン中150mmHgの真空下で溶媒を除去した。1〜2時間後、ガラスプレートを取り除いたところ、残っているフィルムは透明で硬かった。幾つかの場合には、乾いたフィルムを220℃で5分硬化させた後160℃で60分加熱した。ガラス転移温度の測定値は、Perkin Elmerから市販のDSCを用いたDifferential Scanning Calorimetry(示差走査熱量分析)で得た。試験した配合物とそのTgを下記表2に示す。
【0087】
【表2】

実施例4
ウエハーレベルのアンダーフィル(WLU)材料の熱膨張率性能を測定した。実施例3に従って調製した材料の10ミクロンフィルムを、Teflonスラブ(寸法4″×4″×0.25″)上にキャストし、40℃、100mmHgで一晩乾燥して透明な硬いフィルムを得、その後85℃、150mmHgでさらに乾燥した。このフィルムを実施例3の方法に従って硬化させ、熱機械的分析(TMA)によって熱膨張率(CTE)値を測定した。手術用のナイフを用いて試料を4mm幅に切断し、薄膜プローブを用いてTMAでCTEを測定した。
【0088】
熱機械的分析はTA Instruments製のTMA 2950 Thermo Mechanical Analyzerで行った。実験パラメーターは、0.05Nの力、5.000gの静止重量、100mL/minの窒素パージ、及び2.0sec/pt試料採取間隔に設定した。この試料を30℃で2分間平衡化した後、5.00℃/minで250.00℃まで昇温し、2分間平衡化してから10.00℃/minで0.00℃にし、2分間平衡化し、その後250.00℃にまで上昇させた。
【0089】
下記表3に、得られたCTEデータを示す。表3の第2と第3の試料番号に対する結果は、5ミクロンの溶融シリカを用いた同じ組成物から生成したフィルムとは対照的に、透明なフィルムで得られた。5ミクロンの溶融シリカも官能化コロイダルシリカもいずれも50重量%の同じ充填率で用いた。また、これらの材料(表3、第2と第3の試料番号)が示している未充填樹脂(表3、試料番号1)よりも低下したCTEは、官能化コロイダルシリカが樹脂のCTEを低減するのに有効であることを示している。
【0090】
【表3】

実施例5 はんだ濡れ及びリフロー実験
上記実施例で調製したウエハーレベルのアンダーフィルの存在下におけるはんだバンプの濡れ作用を立証するために、以下の実験を行った。
【0091】
パートA
バンプを設けたフリップチップダイを、実施例3の実験用アンダーフィル材料の層でコートした。このアンダーフィルコーティングはかなりの量すなわち約30%の溶媒を含有していた。この溶媒を追い出すために、被覆チップを真空オーブン中85℃、150mmHgでベーキングした。この結果はんだバンプの先端が露出され、透明なBステージ樹脂層がチップの全活性表面を被覆していた。
【0092】
パートB
はんだバンプの濡れ能がこのBステージ層の存在によって妨げられないことを確実にするために、CuクラッドFR−4クーポン(MG Chemicals社から市販されている銅を積層したガラスエポキシシート)にフラックスの薄いコーティングを設けた。このフラックス(Kester TSF 6522 Tacflux)は、はんだバンプが銅表面と接触する領域のみに設けた。次に、このアセンブリをZepher対流リフローオーブン(MannCorp)でリフローに供した。リフロー後、これらのダイを手操作で剥ぎ取り、銅表面上の浸潤はんだを検査した。銅表面を濡らした溶融はんだは基板に接着したままであり、粘着性のフラックスの存在下での濡れ能がウエハーレベルのアンダーフィル材料のBステージ化層によって妨げられなかったことを示していた。
【0093】
パートC
パートAに記載した方法を用いて被覆チップを調製した。これらのチップをデイジーチェーン試験パターンで試験基板上に組み立てた。使用した試験基板はMG Chemicals社から市販されている62ミルの厚さのFR−4基板であった。パッド仕上げ金属はNi/Auであった。粘着性のフラックス(Kester TSF 6522)は、30ゲージのニードルチップとEFD手動ディスペンサー(EFD、Inc.)を用いて、試験基板の露出したパッド上に注射器で分配した。これらのダイを、MRSI 505自動ピックアンドプレイス機(Newport/MSRI Corp.)を用いて基板上に配置した。次に、このアセンブリをZepher対流リフローオーブンでリフローに供した。約2オーム(Flukeマルチメーターで測定)の電気抵抗の読み値は、はんだがウエハーレベルのアンダーフィルの存在下でパッドを濡らしたことを示していた。対照ダイと本発明の組成物で被覆したダイのCuパッドに接着したチップアセンブリのX線分析を、MICROFOCUS X線管を有するX線機を利用して行った。X線分析の結果は、はんだバンプがリフロー後対照と実験の樹脂の両者に対して類似のはんだボール形態学を示したという点で、Cuパッドのはんだ濡れ性を示していた。
【0094】
実施例6 官能化コロイダルシリカ(FCS)予備分散物の調製
以下のものを混合することによって官能化コロイダルシリカ予備分散物を調製した。すなわち、1035gのイソプロパノール(Aldrich社)を、SiOの50nm粒子を20〜21重量%含有する675グラムの水性コロイダルシリカ(Snowtex OL、Nissan Chemical Company)に撹拌しながらゆっくり加えた。その後、混合物を撹拌しながら17.6gのフェニルトリメトキシシラン(PTS)(Aldrich社)を加えた。次に、混合物を80℃に1〜2時間加熱して官能化コロイダルシリカの予備分散物を得、これを室温で保存した。
【0095】
実施例7 溶媒中の官能化コロイダルシリカの分散物の調製
2000mlの丸底フラスコに、実施例6で調製した各予備分散物を540g仕込んだ。追加の予備分散物の組成を下記表4に示す。次に、1−メトキシ−2−プロパノール(750g)を各フラスコに加えた。得られた官能化コロイダルシリカの分散物を60℃、60mmHgで真空ストリッピングして約1Lの溶媒を除去した。真空をゆっくり下げ、充分に撹拌しながら分散物の重量が80gに達するまで溶媒除去を続けた。フェニル−官能化コロイダルシリカの分散物は50%のSiOを含有しており、沈降したシリカはなかった。この分散物は3ヶ月以上にわたって室温で安定であった。表4の結果は、1−メトキシ−2−プロパノール中の濃縮された安定なFCS分散物(分散物1〜4、6)を調製するためには一定レベルのフェニル官能性が必要であることを示している。実施例2、表1の試料番号3の組成物(表4では試料番号6)は比較のために挙げてある。
【0096】
【表4】

実施例8 エポキシ樹脂中官能化コロイダルシリカの分散物の調製
3.0gの1−メトキシ−2−プロパノール中に5.33gのエポキシクレゾールノボラック(ECN 195XL−25、住友化学(株)から入手可能)と、2.6gのノボラック硬化剤(タマノール758、荒川化学工業(株)から入手可能)を合わせて含む溶液を約50℃に加熱した。この溶液の7.28gの部分を、50℃で撹拌しながら10.0gのFCS分散物(上記表4参照、試料番号3、メトキシプロパノール中50%SiO)に滴下して加えた。透明な懸濁液を冷却し、N−メチルイミダゾールの触媒溶液、メトキシプロパノール中50%w/w溶液60マイクロリットルを撹拌しながら加えた。この透明な溶液を直接用いて特性決定用に樹脂フィルムをキャストするか又は−10℃に保存した。いろいろな触媒を様々な量で用い、エポキシ/硬化剤組成物を変化させると共に、最終の樹脂組成物を示す下記表5に挙げる様々なFCS分散物を用いて追加のフィルムを作成した。
【0097】
エポキシ−シリカ分散物の一部分をガラスプレート上に拡げて塗ることによってフィルムをキャストし、真空オーブン中90C/200mmで1時間、90C/100mmでさらに1時間かけて溶媒を除去した。ガラスプレートを取り除いたところ、残っているフィルムは透明で固体のBステージ物質であった。幾つかの場合には、乾燥フィルムを220℃で5分間硬化させた後160℃で60分加熱した。ガラス転移温度の測定値は、Perkin Elmerから市販しているDSCを用いてDifferential Scanning Calorimetryにより得た。DSC分析の結果を下記表6に示す。
【0098】
【表5】

実施例9 50nm官能化コロイダルシリカ配合物の流れ性能
鉛共融はんだボールを含有する樹脂フィルムを調製するために、表5に記載した樹脂組成物のフィルムをガラススライド上にキャストした。鉛共融はんだボール(直径25ミル、mp183℃)が確実に樹脂フィルム中に沈められるように2枚のガラススライドを互いに押し付けることによってはんだボールをこのフィルム中に配置した。次に、これらのアセンブリをオーブン内で90℃/200mmで1時間、次いで90℃/100mmでさらに1時間加熱して、溶媒を全て除去すると共に樹脂フィルムをはんだボールが埋め込まれた硬いBステージフィルムに変換した。これらのフィルムは周囲温度に冷却したとき、表6に示すように一般に硬かった。樹脂の流れ及びフラックス能の試験をするために、ガラススライドを一滴のKesterフラックス(Northrup GrummanのKester部門から市販の製品TSF−6522)が載せてある銅クラッドFR−4回路基板上に載せた。ガラススライドは、はんだボール/樹脂フィルムがフラックスと接触するように配置した。次に、アセンブリ全体を230〜240℃に維持されたホットプレート上に載せた。はんだボールがつぶれ一緒に流れれば、流れ及びフラックス性能が良好であると考えた。対照的に、流れ及びフラックス特性が良くない樹脂ははんだボールがつぶれるのを妨げ、元のはんだボールの形態が明らかに目視できた。はんだボールが融解しつぶれるのを可能にする良好な流れ及びフラックス性能はデバイス中に良好な電気的接続を形成するのに重要であると考えられ、上記の試験はデバイス製造における有用性の尺度である。
【0099】
表6にまとめた結果は、50nmの官能化コロイダルシリカ(試料番号6、7及び12〜16)を用いて、慣用の5ミクロンの充填材に基づく組成物(試料番号2)に対して実質的に改良された透明度を有するフィルムを製造することができるということを示している。もっとも、これらのフィルムは許容できる透明度ではあっても、20nmの官能化コロイダルシリカに基づく組成物(試料番号3〜5)程には透明でない。しかしながら、予想外のことに、小量の環式脂肪族エポキシモノマーUVR 6105を添加すると、50nmの官能化コロイダルシリカの高い使用量(試料番号8〜11)でも優れた透明度を有するフィルムが得られる。また、試料番号8〜11の結果は、フィルムの硬さがある範囲のUVR 6105レベルに渡って保存されることを示している。
【0100】
【表6】

表6の結果は、ベース樹脂(試料番号1)が優れたはんだボールのつぶれに示されるように良好な流れを示すことを示している。しかしながら、この樹脂は許容できないほどに高いCTE値を有しており、フリップチップデバイスでウエハーレベルのアンダーフィルとして使用したときに信頼性が低いことが予想される。慣用の5ミクロンの充填材を使用すると(試料番号2)、優れたはんだボールのつぶれは保存しながらより低いCTEが得られるが、ウエハーダイシング工程で必要とされる透明性が失われる。20nmの充填材系を使用すると優れた透明性が得られるが、5ミクロンの充填材を使用する場合と匹敵する充填材使用量で許容できないほどに悪いはんだボールのつぶれ(試料番号3)によって示されるように流動性が失われる。良好なはんだボールのつぶれは10%SiOの20nm充填材で観察されるが、15%より多くのSiOの20nm充填材では見られない(それぞれ試料番号3及び4)。50nmの充填材を使用すると(表4、試料番号6〜7)、30重量パーセント以下の充填材で良好なはんだボールのつぶれにより示されるように流れの実質的な上昇を示す。さらに、環式脂肪族エポキシ樹脂を配合物に添加すると、流れが実質的に良くなると共により良好なフィルム透明性が得られ、脂肪族エポキシ樹脂を添加しても類似の結果が得られる(表6、それぞれ試料番号8〜11及び17〜18)。さらに、50nmの充填材と幾つかのジヒドロキシ化合物を始めとするモノマー状硬化剤との組合せを用いても類似の流れの改良が見られる(表6、試料番号19〜22)。
【0101】
実施例10 二官能性シロキサン無水物の調製
メカニカルスターラー、温度計、凝縮器、添加漏斗及び窒素導入口を備えた500ミリリットル(ml)のフラスコに、127グラム(0.77モル)の5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、150グラムのトルエン及びKarstedt’s触媒(すなわち、米国特許第3775442号に記載されているPtとジビニルテトラメチルジシロキサンとの複合体)としての20ppmの白金を仕込んだ。この溶液を80℃に加熱し、その時点で84.3グラム(0.4モル)の1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサンを滴下して反応混合物に加えた。穏やかな発熱が起こり、温度が100℃に上昇した。水素化シリコーンの添加は1時間で完了した。反応混合物をさらに1時間80℃で撹拌した。Avatar 370 FT−IR(Thermo Electron Corporation製)を用いて赤外(IR)分析を行ったところ、結果はSi−H基の75%変換を示していた。追加の20ppmの白金触媒を加え、反応混合物を窒素下で一晩撹拌しながら80℃に加熱した。翌朝、IR分析を再び行ったところ、結果は99%より多くのSi−Hの消費を示していた。この時点で反応混合物を室温まで冷却した。
【0102】
次に、冷却した反応混合物を300mlのヘキサンと混合した。白色粉末の沈殿が観察された。この固体物質をろ過により分離し、真空オーブン中50℃で乾燥して、180グラムの所望の二官能性シロキサン無水物を得た。400MHzのBruker Avance 400を用いてH、29Si NMRを実施して、この無水物の構造と純度を確認した。
【0103】
実施例11 官能化コロイダルシリカ予備分散物の調製
以下の手順を用いて官能化コロイダルシリカ予備分散物を調製した。約34重量%の20nm粒子シリカを含有する465グラムの水性コロイダルシリカ(Nalco 1034A、Nalco Chemical Company)を、800グラムのイソプロパノール(Aldrich社)及び56.5グラムのフェニルトリメトキシシラン(Aldrich社)と、撹拌しながら混合した。この混合物を60〜70℃に2時間加熱して透明な懸濁液を得た。得られた予備分散物を室温に冷却し、ガラス瓶に保存した。
【0104】
実施例12 安定化官能化コロイダルシリカを含有する樹脂の調製
1000ミリリットル(ml)のフラスコに、300グラムの実施例11のコロイダルシリカ予備分散物、溶媒として150グラムの1−メトキシ−2−プロパノール(Aldrich社)、及び0.5グラム架橋したポリビニルピリジンを仕込んだ。この混合物を70℃で撹拌した。1時間後この懸濁液を4グラムのCelite(登録商標)545(市販のケイ藻土ろ過助剤)とブレンドし、室温まで冷却し、ろ過した。得られた官能化コロイダルシリカの分散物を30グラムの3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(UVR6105、Dow Chemical Company)及び10グラムのビスフェノール−Fエポキシ樹脂(RSL−1739、Resolution Performance Product)とブレンドし、75℃、1Torrで一定の重量になるまで真空ストリッピングして、88.7グラムの粘稠な液体樹脂を得た。
【0105】
実施例13 エポキシフラックス組成物の調製
5グラムの実施例12の官能化コロイダルシリカ樹脂を、室温で、1.56グラムの4−メチル−ヘキサヒドロフタル酸無水物(MHHPA)(Aldrich社製)及び1.56グラムの5,5′−(1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−トリシロキサンジイル)ビス[ヘキサヒドロ−4,7−メタノイソベンゾフラン−1,3−ジオン](TriSDA)(実施例10の二官能性シロキサン無水物生成物)とブレンドした。0.01グラムの触媒(Polycat SA−1、Air Products社)及び0.07グラムのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GE Silicones社)を室温で加えた。この配合物を室温で約10分間ブレンドし、その後配合物を高真空、室温で20分間脱気した。得られた物質を−40℃で保存した。
【0106】
実施例14 チップコーティング手順
シリコンダイ及び石英ダイをウエハーレベルアンダーフィル材料(上記表2、実施例3の試料番号9)でコートした。このシリコンダイは、Delphi Delco Electronicsから購入したウエハーから切り取った8ミルピッチの窒化物不動態化ペリメーターアレイPB08であった。石英ダイは、Practical Componentsから購入したウエハーから切り取った8ミルピッチのペリメーターアレイであった。このアンダーフィル材料を、はんだボールの頂部が被覆されるようにマスク備品を用いて個々のダイ上に印刷した。Bステージプロセスを実施するために、コートされたダイを真空オーブン中に配置して、ダイの表面温度が95℃になり、200mmHgの真空に1時間、次いでさらに1時間100mmHgになるようにした。次に、ダイをオーブンから取り出し、室温まで放冷した。
【0107】
銅クラッドFR4基板(MG Chemicals社から市販)を清浄にするために、180グリットペーパーで磨いた後、イソプロパノールとリントフリーの布で十分に洗浄した。2種の異なるフラックス樹脂を検査した。各々の場合に、EFD 1000シリーズディスペンサーを用いて中心ドットのフラックス剤を清浄な基板に分配した後コートされた石英ダイを載せた。次いで、この試験アセンブリを、以下の典型的なリフロープロフィールを用いてZepher対流リフローオーブンに通した。すなわち、最高温度上昇速度は2.1℃/秒であり、130℃から160℃までの時間は53秒であり、160℃を超えた温度上昇時間は120秒であり、160℃から183℃までの時間は74秒であり、183℃を超えた後の時間は70秒であり、216℃の最高温度の後2.5℃/秒で温度を下げた。
【0108】
3つのチップ/基板アセンブリを調製した。第1のアセンブリでは、粘着性のフラックス(Kester TSF 6522 Tacflux)をFR4銅クラッド基板に分配し、フラックス剤として利用した。次に、上記表2(実施例3の試料番号9)のウエハーレベルアンダーフィル組成物で被覆した石英ダイをフラックス樹脂に付け、リフローに供した。リフロー後このアセンブリを検査したところ、良好なはんだ濡れは認められたが広範な許容できない空隙が見られた。
【0109】
第2のアセンブリでは、上記実施例13のフラックス樹脂をFR4銅クラッド基板上に分配した。次に、上記表2(実施例3の試料番号9)のウエハーレベルアンダーフィル組成物で被覆した石英ダイをフラックス樹脂に付け、リフローに供した。リフロー後このアセンブリを検査したところ、空隙はなく、優れた接着の徴候を示した。
【0110】
第3のアセンブリでは、上記実施例13のフラックス樹脂をFR4銅クラッド基板上に分配した。次に、上記表2(実施例3の試料番号9)のウエハーレベルアンダーフィル組成物で被覆したシリコンダイをフラックス樹脂につけ、アセンブリをリフローに供した。リフロー後このアセンブリを検査したところ、優れた接着の徴候を示した。ダイの除去後、空隙は存在しなかった。この実施例は、Bステージの樹脂フィルムを製造する際に溶媒変性エポキシ樹脂を使用し、合わせて第2のフラックス樹脂を使用して空隙のない高い接着力のチップアセンブリを製造することの利点を立証している。
【0111】
本発明の好ましい実施形態及び他の実施形態について説明してきたが、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく別の実施形態が当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族エポキシ樹脂を、溶媒、官能化コロイダルシリカ分散物、並びに、環式脂肪族エポキシモノマー、脂肪族エポキシモノマー、ヒドロキシ芳香族化合物及びこれらの組合せ及び混合物からなる群から選択される1種以上の他の成分と組み合わせて含む第1の硬化性透明樹脂組成物と、
1種以上のエポキシ樹脂を含む第2の硬化性フラックス組成物と
を含んでなるアンダーフィル組成物。
【請求項2】
コロイダルシリカが約20〜約100nmの粒径を有する、請求項1記載のアンダーフィル組成物。
【請求項3】
1種以上の溶媒が、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸ブチル、メトキシエチルエーテル、メトキシプロパノールアセテート及びメタノールからなる群から選択される、請求項1記載のアンダーフィル組成物。
【請求項4】
第2の硬化性フラックス組成物がさらに、アミン系エポキシ硬化剤、フェノール樹脂、カルボン酸−無水物、ノボラック硬化剤、及び二官能性シロキサン無水物からなる群から選択される1種以上のエポキシ硬化剤を含んでいる、請求項1記載のアンダーフィル組成物。
【請求項5】
1種以上のエポキシ硬化剤が次式の二官能性シロキサン無水物からなる、請求項4記載のアンダーフィル組成物。
【化1】

式中、Xは0〜50であり、R′及びR″は各々独立にC1−22アルキル、C1−22アルコキシ、C2−22アルケニル、C6−14アリール、C6−22アルキル置換アリール、及びC6−22アリールアルキルからなる群から選択される。
【請求項6】
第2の硬化性フラックス組成物がさらに、1種以上のオルガノアルコキシシランで官能化されたコロイダルシリカ分散物を含んでいる、請求項1記載のアンダーフィル組成物。
【請求項7】
チップと、
基板と、
チップと基板の間にあり、1種以上の芳香族エポキシ樹脂を、1種以上の溶媒、約50〜約100nmの粒径を有する官能化コロイダルシリカ分散物、並びに、環式脂肪族エポキシモノマー、脂肪族エポキシモノマー、ヒドロキシ芳香族化合物並びにこれらの組合せ及び混合物からなる群から選択される1種以上の追加の成分と組み合わせて含む第1の硬化性透明樹脂組成物と、1種以上のエポキシ樹脂を次式の二官能性シロキサン無水物エポキシ硬化剤からなる1種以上のエポキシ硬化剤と組み合わせて含む第2の硬化性フラックス組成物とを含んでなるアンダーフィル組成物と
を含んでなる固体デバイス。
【化2】

式中、Xは0〜50であり、R′及びR″は各々独立にC1−22アルキル、C1−22アルコキシ、C2−22アルケニル、C6−14アリール、C6−22アルキル置換アリール、及びC6−22アリールアルキルからなる群から選択される。
【請求項8】
溶媒、官能化コロイダルシリカ分散物、並びに環式脂肪族エポキシモノマー、脂肪族エポキシモノマー、ヒドロキシ芳香族化合物及びこれらの組合せ及び混合物からなる群から選択される1種以上の他の成分と組み合わせて芳香族エポキシ樹脂を含む第1の硬化性透明樹脂組成物をチップに適用して、被覆チップを製造し、
1種以上のエポキシ硬化剤と組み合わせて1種以上のエポキシ樹脂を含む第2の硬化性フラックス組成物を基板に適用し、
被覆チップを、フラックス組成物が適用されている基板の一部分上に配置し、
第1の硬化性透明樹脂組成物及び第2の硬化性フラックス組成物を硬化させてアンダーフィル組成物を形成する
ことを含んでなる固体デバイスの製造方法。
【請求項9】
第1の硬化性透明樹脂組成物を適用するステップが、さらに、溶媒を除去して、硬くて透明なBステージの樹脂フィルムをチップ上に形成することを含んでいる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
第2の硬化性フラックス組成物を基板に適用するステップが、さらに、エポキシ樹脂を、次式の二官能性シロキサン無水物からなる1種以上のエポキシ硬化剤と組み合わせて適用することを含んでいる、請求項8記載の方法。
【化3】

式中、Xは0〜50であり、R′及びR″は各々独立にC1−22アルキル、C1−22アルコキシ、C2−22アルケニル、C6−14アリール、C6−22アルキル置換アリール、及びC6−22アリールアルキルからなる群から選択される。

【公表番号】特表2007−515524(P2007−515524A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545643(P2006−545643)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/037872
【国際公開番号】WO2005/062369
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】