説明

機能性支持体、グラフトポリマー層形成用材料、それにより得られるグラフトポリマー層積層体、金属イオン含有材料、及び、金属膜積層体

【課題】可視光領域で高感度な光反応性を持つ機能性支持体、及び、それを用いて形成された、高感度で、加熱保存後も経時的な膜厚の減少が抑制されたグラフトパターン層を備えるグラフトポリマー層積層体、それを用いて得られる金属イオン含有材料、金属膜積層体を提供する。
【解決手段】支持体上に、光重合開始能を有する開始部位と支持体との結合部位とを有するオキシムエステル化合物を、該結合部位を介して結合させてなる機能性支持体である。該機能性支持体表面に、重合性基を有する化合物を含む組成物を接触させた後、エネルギーを付与することで、支持体表面に直接結合してなるグラフトポリマー層を有するグラフトポリマー層積層体を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光開始剤として有用なオキシムエステル構造を表面上に持つ機能性支持体及びそれを用いた各種機能性材料に関する。詳しくは、表面にグラフトポリマー層を形成するのに有用な機能性支持体、及び、それを用いて得られるグラフトポリマー層形成用材料、グラフトポリマー層積層体、さらには、該グラフトポリマー層に金属材料を吸着させてなる金属イオン含有材料、及び、金属膜積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固体表面に防汚性、親水性、その他種々の機能を設ける技術が注目され、なかでも、片末端のみが基材に直接結合してなるグラフトポリマーの機能を応用して固体表面の改質を図る技術について種々の検討がなされている。
なかでも、電子材料の小型化に伴い、高精細な電気配線を容易に形成する方法が求められている。
高精細で導電性に優れた微細配線は、真空成膜法などの気相法により形成されることが一般的であるが、この方法では、広い面積にわたって膜厚や膜質が均一な金属膜を成膜することが困難であり、信頼性の高い配線、電極などを形成しうる方法が切望されていた。
【0003】
これをうけて本願出願人は、赤外線レーザを操作することによりデジタルデータに基づき直接画像形成が可能な導電性パターン材料及びその形成方法について提案した(例えば、特許文献1、参照)。このような材料は、重合開始能を有する層の表面に該表面と少なくとも一カ所で直接結合してなるポリマー鎖(表面グラフトポリマー)により構成されたグラフトポリマー層を有するものである。ここで重合開始能を有する層、即ち、露光によりラジカルを発生しうる層中に含有される重合開始剤としてはトリアジン系の化合物が用いられているが、グラフトポリマーを形成させるために、重合性基を有する化合物を主に塗布などにより接触させる際、溶剤として有機溶剤を用いると、グラフトポリマー層を形成するのに充分な感度が得られず、さらに、このようにして作製されたグラフトポリマー層形成用材料は、長時間加熱時保存後に露光を行うと、保存前と比較して形成される層の膜厚低下が生じ、十分な機能性を発現し得ない懸念があり露光前保存性の向上が望まれていた。
【0004】
露光によりラジカル重合開始能を発現する光開始剤として有用なオキシムエステル化合物(例えば、特許文献2、3参照)や、オキシムエステル構造を含むポリマー(非特許文献1、参照)が、知られており、これらの光開始剤は高感度ではあるが、これら化合物のグラフトポリマー層を形成するために必要な支持体への固定化については検討されておらず、これらを開始剤として用いて、支持体と強固に結合したグラフトポリマー層を形成するのが困難であった。
【特許文献1】特開2000−147762公報
【特許文献2】特開2001−233842
【特許文献3】特開2006−342166
【非特許文献1】ヨーロピアン ポリマー ジャーナル(European Polymer Journal),1970年,第6巻、P933
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、主に可視光領域で高感度な光反応性を持つ機能性支持体、及び、それを用いて形成された、低露光量においても表面グラフトにより、一部が支持体に固定化されたポリマー鎖を生成させることができ、長時間加熱保存後も、形成されるポリマー層膜厚の経時的な減少が抑制されたグラフトパターン層形成用材料、並びに、グラフトポリマー層積層体を提供することにある。
また本発明の別の目的は、該グラフトポリマー層積層体を用いて得られる金属イオン含有材料、及び、該金属イオンを還元することで得られる薄層金属膜を備えた金属膜積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、検討の結果、光感度に優れたオキシムエステル構造を基板に直接結合させて得られる機能性支持体を用いることにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の構成は以下に示す通りである。
<1> 光重合開始能を有する開始部位と支持体との結合部位とを有するオキシムエステル化合物を結合させてなる機能性支持体。
<2> 前記光重合開始能を有する開始部位と支持体との結合部位とを有するオキシムエステル化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする<1>に記載の機能性支持体。
【0007】
【化1】

【0008】
前記一般式(1)中、Rは単結合又は連結基を表し、Rは、1価の置換基を表し、Yは基材結合部位を表す。
<3> 前記オキシムエステル化合物がポリマーまたはオリゴマーであることを特徴とする<1>又は<2>に記載の機能性支持体。
<4> 前記オキシムエステル化合物が低分子化合物であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の機能性支持体。
<5> さらに増感色素を含有することを特徴とする<3>又は<4>に記載の機能性支持体。
【0009】
<6> <1>〜<5>のいずれか1項に記載の該機能性支持体上に、重合性基を有する化合物を含有するグラフトポリマー前駆体層を備えるグラフトポリマー層形成用材料。
<7> 前記グラフトポリマー前駆体層の膜厚が100〜2000nmであることを特徴とする<6>に記載のグラフトポリマー層形成用材料。
<8> <6>又は<7>に記載のグラフトポリマー層形成用材料上に形成されたグラフトポリマー前駆体層に露光を行うことで得られるグラフトポリマー層積層体。
<9> <1>〜<5>のいずれか1項に記載の該機能性支持体を、重合性基を有する化合物と接触させ、露光を行うことで得られるグラフトポリマー層積層体。
<10> <8>又は<9>に記載のグラフトポリマー層積層体のグラフトポリマー層に金属イオンを付着させることで得られる金属イオン含有材料。
<11> <10>に記載の金属イオン含有材料に含まれる金属イオンを還元することで得られる金属膜積層体。
【0010】
本発明の機能性支持体は、支持体上に高感度な光重合開始剤であるオキシムエステル化合物を結合させることで、高感度は反応性表面を有する支持体であり、例えば、高感度でその表面にグラフトポリマーを形成することができる。
このような機能性支持体を用いて、その表面にグラフトポリマー層を有する積層体を作製する場合には、機能性支持体表面に重合性基を有する化合物を接触させるが、この接触は、塗布法により行われても、浸漬法により行われてもよい。この際、重合性基を有する化合物を溶解させる溶剤は、水系溶剤であっても、有機溶剤であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、主に可視光領域で高感度な光反応性を持つ機能性支持体、及び、それを用いて形成された、低露光量においても表面グラフト法により、一部が支持体に固定化されたポリマー鎖を生成させることができ、長時間加熱保存後も、形成されるポリマー層膜厚の経時的な減少が抑制されたグラフトパターン層形成用材料、並びに、グラフトポリマー層積層体を提供することができる。
また、本発明によれば、前記本発明のグラフトポリマー層積層体を用いることで、
金属イオン含有材料、及び、該金属イオンを還元することで得られる薄層金属膜を備えた金属膜積層体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の機能性支持体について説明する。
<機能性支持体>
本発明の機能性支持体は、支持体上に、オキシムエステル化合物を結合させてなることを特徴とする。
(支持体基材)
ここで用いられる支持体の基材としては、寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が含まれる。
本発明に使用される基材の素材としては、ガラス、エポキシ樹脂又はポリイミド樹脂が好ましい。
【0013】
この支持体基材に、後述するオキシムエステル化合物を結合させる処理を行うものであるが、その処理に先立ち、必要に応じて、UVオゾンクリーナー(UV42、日本レーザー電子(株)製)などを用いた表面処理を施してもよい。
また、機能性支持体とオキシムエステル化合物との接着を強固にするため、必要に応じて、アミノプロピルトリメトキシシランなどの反応性基を持つ化合物などをシランカップリング反応などにより支持体基材に結合させてなる下層を設けてもよい。シランカップリング反応による接着性付与の前処理を行う場合には、支持体基材をシランカップリング剤もしくはシランカップリング剤の溶液に浸漬させた後、加熱などによって支持体基材と結合させてもよいし、支持体基材にシランカップリング剤もしくはシランカップリング剤の溶液を塗布後、加熱などによって支持体基材と結合させてもよい。シランカップリング剤を溶液として用いる場合に使用される溶剤としては、水、メチルエチルケトン、トルエン、アセトン、酢酸エチルなどが好適なものとして挙げられる。また、シランカップリング反応による前処理を行う場合には、必要に応じて反応を促進する目的で水やリン酸、酢酸などのブレンステッド酸、チタンテトラエトキシドの様なルイス酸、アンモニアなどの塩基を添加してもよい。
【0014】
(オキシムエステル化合物)
本発明の機能性支持体は、前記した支持体基材表面に光重合開始能を有する開始部位と支持体との結合部位とを有するオキシムエステル化合物を結合させてなる。
ここで、支持体に結合させるために用いるオキシムエステル化合物は、光重合開始能を有する開始部位(X)と支持体との結合部位(Y)とを有している化合物であれば、特に制限はなく、オリゴマーもしくはポリマーであってもよいし、低分子化合物であってもよい。
オキシムエステル化合物における開始部位(X)と基材結合部位(Y)とは、光反応開始剤としての機能を損なわない限りにおいて、化合物のいずれに位置してもよく、例えば、両者が直接結合した態様をとるものであっても、両者が適切な連結基を介して結合していてもよく、また、開始部位(X)を有する構造単位と、基材結合部位(Y)を有する構造単位とが共重合することにより結合した態様をとるものであってもよい。
オキシムエステル化合物に用いられる開始部位(X)は、オキシムエステル構造を有する部位であり、開始部位(X)と、連結基や結合部位(Y)との結合位置については特に限定されない。
【0015】
本発明に用いられる低分子オキシムエステル化合物としては、例えば、下記一般式(1)に示す構造を有する化合物が挙げられる。
【0016】
【化2】

【0017】
前記一般式(1)中、Rは単結合又は連結基を表し、Rは、1価の置換基を表し、Yは基材結合部位を表す。
なお、一般式(1)においては、Rで記載される以外の位置にさらに置換基を有していてもよく、Rを含む複数の置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。
本発明に用いられるオリゴマーもしくはポリマーであるオキシムエステル化合物としては、例えば、一般式(2)に示すオキシムエステル化合物モノマーと、一般式(3)に示す基材結合部位を有するモノマーと、を共重合することによって得られた化合物が挙げられる。
【0018】
【化3】

【0019】
前記一般式(2)、(3)中、R、Rはそれぞれ独立に、単結合又は連結基を表し、Rは1価の置換基を表す。Yは基材結合部位を表す。A及びBは重合性基を有する部分構造を表す。なお、一般式(2)においては、Rで記載される以外の位置にさらに置換基を有していてもよく、Rを含む複数の置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0020】
一般式(1)、一般式(2)における開始部位(オキシムエステル部分構造)のなかでも、反応性の観点からは、下記一般式(4)で表されるモノマーに由来する開始部位が好ましい。
【0021】
【化4】

【0022】
一般式(4)中、Rは単結合又は連結基を表す。一般式(4)で表される部分構造をもつ低分子オキシムエステル化合物を表す場合、Xは基材結合部位を表す。一般式(4)で表される部分構造をもつポリマー又はオリゴマーであるオキシムエステル化合物を表す場合、Xは重合性基を有する部分構造を表す。Rは一価の置換基を表し、一価の置換基としては、具体的には、例えばアリール基、複素環基、アルキル基、アルコキシ基、カルバモイル基、カルバモイルオキシ基などが挙げられる。これらの構造において、ラジカル発生剤としての機能を損なわない限り、この骨格に、さらに置換基を有するものであってもよい。mは、0〜4の整数を表し、2以上の場合は、互いに連結し環を形成してもよい。Aは、4、5、6、及び7員のいずれかによる環構造を表す。Aで表される環構造は、O、Sなどのヘテロ原子を含んで構成されてもよい。Aで表される環構造としては、5員環、又は、6員環が好ましく、6員環がより好ましい。
【0023】
オキシムエステル化合物における開始部位と基材結合部位(Y、Y)とは、光反応開始剤としての機能を損なわない限りにおいて、化合物のいずれに位置してもよく、例えば、一般式(1)におけるRが単結合の場合の如く、両者が直接結合した態様をとるものであってもよく、両者が適切な連結基(Rが単結合を除く構造をとる場合)を介して結合していてもよく、また、一般式(2)で表されるモノマーと一般式(3)で表されるモノマーとの共重合体である場合のように、オキシムエステル部分構造を有する構造単位と、基材結合部位(Y)を有する構造単位と、が共重合することにより結合した態様をとるものであってもよい。
【0024】
オキシムエステル化合物に用いられる開始部位とは、オキシムエステル構造を有する部位であり、開始部位と、連結基や結合部位との結合位置については特に限定されない。
前記オキシムエステル構造を有する開始部位は、2種類の立体配置(Z)又は(E)で存在するものであってもよい。慣用の方法によって、異性体を分離してもよいし、異性体混合物を光開始用の種として、そのままで用いてもよい。従って、本発明におけるオキシム化合物中のオキシムエステル構造は、立体配置上の異性体の混合物であってもよい。
オキシムエステル化合物が低分子量化合物である場合には、その分子量は100〜1000の範囲であることが好ましい。
【0025】
次に、本発明に係るオキシムエステル化合物の支持体との結合部位〔前記一般式(1)及び一般式(3)におけるY、Y〕について説明する。
オキシムエステル化合物が有する結合部位(Y、Y)としては、一般に支持体基板との吸着性に優れる、シランカップリング基、ヒドロキシアルキル基、ハロアルキル基、アルキルアミノ基などから選択することができ、例えば、トリハロシリル基、トリアルコキシシリル基、アミノ基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、ハロアルキル基、ジハロアルキル基、トリハロアルキル基、メルカプト基、アルキルアミノ基など、或いは、これらから選択される置換基を部分構造として有する基が挙げられる。
これら支持体との結合部位(Y、Y)は、使用される支持体基材の物性を考慮して適宜選択されるが、一般的には、シランカップリング基またはヒドロキシル基、アルキルアミノ基が好ましい。
【0026】
前記開始部位(オキシムエステル部分構造)と結合部位(Y、Y)とが直接結合して本発明に係るオキシムエステル化合物を構成してもよく、適切な連結基(R、R、R、Rが単結合以外のもの)を介して結合してもよいことは前述の通りであるが、これらが連結基を介して結合する場合、或いは、これらが連結基を介して重合体を構成する構造単位の側鎖に結合する場合、などに使用される連結基としては、炭素、窒素、酸素、及びイオウからなる群より選択される原子を含んで構成される連結基が挙げられる。
このような連結基としては、具体的には、例えば、アルキレン基等の如き飽和炭素基、アリーレン基の如き芳香族基、エステル基、アミド基、ウレイド基、エーテル基、アミノ基、スルホンアミド基、等が挙げられる。また、この連結基は更に置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、等が挙げられる。
【0027】
前記一般式(1)、(2)におけるR、Rは一価の置換基をあらわす事は前述の通りであるが、例えばアリール基、複素環基、アルキル基などが挙げられる。これらの構造はラジカル発生剤としての機能を損なわない限り置換基を有していてもよい。
【0028】
次に、オキシムエステル化合物がオリゴマーもしくはポリマーである場合について詳細に説明する。オリゴマーもしくはポリマーであるオキシムエステル化合物としては、上述したように、下記一般式(2)に示すオキシムエステル化合物モノマーと、一般式(3)に示す基材結合部位を含むモノマーと、を共重合することによって得られた化合物が好ましく挙げられる。
【0029】
【化5】

【0030】
前記一般式(2)中、Rは一般式(1)におけるRと、Rは一般式(1)におけるRと、それぞれ同義である。Aは重合性基を有する部分構造を表す。
前記一般式(3)中、Rは一般式(1)におけるRと、YはYと、それぞれ同義である。Bは重合性基を有する部分構造を表す。
重合性基を有する部分構造AおよびBとしては、共重合できる官能基を有する構造であれば特に限定されないが、ラジカル重合、カチオン重合に活性な置換基又は部分構造を有するものが好適に用いられる。
前記ラジカル重合性基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルアミノ基が好ましい。
前記カチオン重合性基としては例えば、環状エーテル基(エポキシ基、オキセタン基等)、ビニル基、ラクトン基、アジリジン基等が挙げられ、これらの中でも、ビニル基、又はエポキシ基が好ましい。
【0031】
このような重合性基、不飽和二重結合を有するA及びBは、ポリマーの主鎖を形成する部分構造であれば、その形態には特に制限はなく、具体的には、例えば、アクリル樹脂骨格、スチレン樹脂骨格、フェノール樹脂(フェノール−ホルムアルデヒド樹脂)骨格、メラミン樹脂(メラミンとホルムアルデヒドの重縮合体)骨格、ユリア樹脂(尿素とホルムアルデヒドの重縮合体)骨格、ポリエステル樹脂骨格、ポリウレタン骨格、ポリイミド骨格、ポリオレフィン骨格、ポリシクロオレフィン骨格、ポリスチレン骨格、ポリアクリル骨格、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの重合体)骨格、ポリアミド骨格、ポリアセタール骨格、ポリカーボネート骨格、ポリフェニレンエーテル骨格、ポリフェニレンスルファイド骨格、ポリスルホン骨格、ポリエーテールスルホン骨格、ポリアリレート骨格、ポリエーテルエーテルケトン骨格、ポリアミドイミド骨格を主鎖構造として形成しうるモノマー構造であれば、いかなる構造のものであってもよいが、 の観点からはアクリル樹脂骨格を形成しうる部分構造が好ましい。このようなポリマーの合成方法には特に制限はなく、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合やメタセシス重合などを適宜用いることができる。
【0032】
オキシムエステル化合物がオキシムエステル構造を有する一般式(2)で表されるモノマーと、支持体との結合部位を有する一般式(3)で表されるモノマーとの共重合体である場合、該共重合体中に導入されるオキシムエステル構造〔開始部位(X)〕及び〔結合部位(Y)〕の含有量はモル比で20/80〜20/80の範囲であることが好ましい。また、このような高分子化合物のGPC法による重量平均分子量は、効果とハンドリング性の観点から溶解性の観点から分子量1000〜4万の範囲であることが好ましく、分子量1万〜2万の範囲であることがより好ましい。
【0033】
前記開始部位(オキシムエステル部分構造)と結合部位(Y)もしくは(Y)を有する、本発明に好適に使用しうるオキシムエステル化合物の具体例としては、下記例示化合物(T−1)〜(T−16)が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、例示化合物(T−1)〜(T−12)は一般式(2)で表されるモノマーと一般式(3)で表されるモノマーの共重合により得られたポリマーまたはオリゴマーであり、それぞれそれを構成する構造単位とその重合モル比を表示することで表す。ポリマーの重量平均分子量(Mw)は1万〜5万、オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は2000〜9000である。
例示化合物(T−13)〜(T−16)は一般式(1)で表される低分子量化合物である。
【0034】
【化6】

【0035】
【化7】

【0036】
【化8】

【0037】
【化9】

【0038】
これらのオキシムエステル化合物のなかでも、ラジカル発生量と支持体基材との結合性の観点から、T−3、T−14、T−16が好ましく用いられる。
【0039】
(オキシムエステル化合物の支持体との結合方法)
支持体上にポリマーやオリゴマーのオキシムエステル化合物を結合させる方法としては用いる支持体を構成する基材の材料や物性によって好適な方法を用いることができる。
ここで、支持体表面にオキシムエステル化合物を結合させるとは、オキシムエステル化合物の有する支持体との結合部位と支持体との間に何らかの相互作用を形成させて結合させることを意味し、シランカップリング反応による結合、ヒドロキシル基、アミノ基などの反応性基を介する結合、多官能イソシアネート、多官能アルコールなどによる架橋構造の形成、クロロメチル基などの反応性基を介する結合、水素結合、イオン結合などの形成等の手段が挙げられる。
【0040】
以下、ガラスを支持体として用い、ガラス表面上に存在するヒドロキシシリル基などの官能基とオキシムエステル化合物とを結合させる態様を例にして説明する。
ガラス製の支持体を用いる場合には、表面にヒドロキシシリル基などの官能基を有することから、このような支持体表面に存在する官能基と相互作用を形成しうる結合部位(前記Y、Yに代表される構造Y)を有する化合物を用いればよい。例えば、オキシムエステル化合物の結合部位としてシランカップリング部位を有するものを用いる方法、ヒドロキシル基、アミノ基などの反応性基を持つオキシムエステル化合物と支持体表面のヒドロキシシリル基との間に、多官能イソシアネートなどにより架橋構造を形成することで固定化し結合をさせる方法、イソシアネート基などの反応性基と重合性基とを有するオキシムエステル化合物を用い、多官能アルコールを用い架橋構造を形成して固定化し結合をさせる方法、クロロメチル基などを導入したオキシムエステル化合物のクロロメチル基を介して結合させる方法などが挙げられる。
【0041】
支持体上に低分子のオキシムエステル化合物を結合させる方法としては例えば、シランカップリング部位を持つオキシムエステル化合物を用いる方法が好適に用いられるが、特に限定されるものではなく、共有結合や水素結合、イオン結合などにより基板と結合していればいずれの方法をとることもできる。
上記は、ガラス製支持体を用いた例であるが、これ以外の支持体を用いた場合でも、同様の方法で結合させることができる。
また、強固な結合を容易に行う目的で、支持体を構成する樹脂材料として、重合性基を有する樹脂材料を用いることもできる。
【0042】
オキシムエステル化合物を支持体表面に適用する場合、オキシムエステル化合物を適切な溶媒に溶解した塗布液組成物を支持体表面に塗布する方法が作業性の観点から好ましい。塗布液組成物中のオキシムエステル化合物の含有量には特に制限はないが、高分子化合物の場合には、2〜20質量%、低分子量化合物の場合には、5〜50質量%の範囲であることが好ましい。使用しうる溶媒としては用いるオキシムエステル化合物を溶解できる溶媒であり、乾燥により揮発可能な溶媒であれば得に限定されないがメチルエチルケトン、アセトン、水、トルエン、1-メトキシ‐2−プロパノール、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノールなどが挙げられる。なお、用いるオキシムエステル化合物が低分子量化合物であって、それ自体流動性を有するある場合には、溶剤はとくに必要としない。
【0043】
オキシムエステル化合物の支持体への結合に際しては、オキシムエステル化合物又はそれを含有する組成物を支持体表面に適用した後加熱などのエネルギー付与を行うことが好ましい。
塗布後の加熱条件には特に制限はないが、例えば塗布膜を乾燥機で加熱するなどの方法を挙げることができる。加熱温度は60〜170℃が好ましく、80℃〜120℃がより好ましい。
エネルギー付与後、洗浄を行うことで、支持体と結合しなかった余分なオキシムエステル化合物を除去することが好ましい。この洗浄工程には、メチルエチルケトンや、アセトン、メタノール、水などを洗浄液として使用する。
このようにしてオキシムエステル化合物が結合された機能性支持体を得ることができる。オキシムエステル化合物の導入量としては、効果の観点から、1〜10g/m程度であることが好ましい。
本発明の機能性支持体は、オキシムエステル化合物の機能により光重合開始能を有する支持体として用いることができる。
なお、支持体表面にオキシムエステル化合物が結合していることは、例えば、UVスペクトル測定により、塗布したオキシムエステル化合物由来の吸収を観測することにより確認する方法や、AFM等による膜厚測定で、基材表面と、オキシムエステル化合物の導入領域との間に1〜20nm程度の厚みの増加が見られることなどにより確認することができる。
【0044】
本発明の機能性支持体において、このオキシムエステル化合物のラジカル発生機構について説明する。
本発明の機能性支持体に対する露光波長として、オキシムエステル自身が吸収を持つ短波領域の光(例えば、365nm近傍の波長など)を照射する場合には、オキシムエステル単独でラジカルが発生され、目的とする重合開始能を発現しうるため、増感剤の併用は特に必須ではない。
他方、オキシムエステル化合物自体が吸収を持たない長波領域の光を照射する方法には、増感剤を併用することで優れたラジカル発生能を発現させることができる。
即ち、本発明の機能性支持体を、例えば、後述するグラフトポリマー層積層体の形成など、機能性支持体の開始能を活用する目的で用いる場合には、感度を高めたり、該オキシムエステル化合物が吸収を持たない波長領域での露光を行う際に光反応性を発現させるために、増感剤を用いることができる。
増感剤を添加する場合には、(1)増感剤をオキシムエステル化合物の層に混合する方法、(2)重合性基を持つ増感剤を、オキシムエステル部位を持つモノマーと共重合することで本発明に係るオキシムエステル化合物に増感剤を導入する方法、(3)増感剤としてオキシムエステル部位構造と増感部位とを分子内に持つ化合物を用いる方法、などの手段をとることができる。
また、後述するように、(4)他の反応性の層、例えば、重合性基を有する化合物を含有する層などを積層して、オキシムエステル化合物の開始能を発現させる場合には、増感剤を、隣接して設けられる反応性の層、例えば、重合性基を有する化合物を含有する組成物層などに添加する方法をとることもできる。この方法によれば、隣接する層間での増感となるが、目的に応じた程度の増感効果を得ることは可能である。
【0045】
(1)増感剤をオキシムエステル化合物の層に混合する方法では、増感剤自体は基板に結合、固定化されていないものの、オキシムエステル化合物自体が支持体基材に固定化されるため、基板洗浄などの操作を繰り返し行わない限り増感色素は有効量、該当する層内に残存する。ここで、洗浄液として、オキシムエステル化合物を溶解しない、問えば、水などを用いて洗浄する場合には、増感剤の含有量も殆ど変化しないことが確認されている。このように、増感剤がラジカル発生能を有する、支持体に固定化されたオキシムエステル化合物の近傍に存在することで、光化学的に有効な増感が可能となる。なお、機能性支持体を画像形成材料などに適用する場合には、非画像部に増感剤由来の吸収を生じるため、注意が必要である。
【0046】
増感剤の固定化を図る場合には、前記(2)又は(3)の如く、オキシムエステル部分構造と増感剤部分構造を持つ低分子化合物又は共重合体を用いる方法をとることができる。いずれの方法法を取る場合でも、オキシムエステル部位と増感部位とが近接して存在することになるため、所望の効果を発現しうる。
他方、(4)に記載の方法の如く、増感剤を単独で基材表面に固定化する場合、増感剤の有効半径が数nm程度であることを考慮すれば、増感剤はオキシムエステル化合物の極近傍に存在することが好ましく、そのような観点からは、重合性基を有するオキシムエステル化合物と重合性基をもつ増感剤とを混合溶液として基材表面に塗布し、加熱などにより同時に固定化することが好ましい。
【0047】
本発明に用いる増感剤としては、特に制限はなく、公知の増感剤の中から前記露光波長に応じて、適宜選択することができる。
ここで用いる増感剤とは、スペクトル感度を移動又は拡大する化合物である。このような増感剤としては、芳香族化合物を用いるのが特に好ましく、例えば、(a)ベンゾフェノン及びその誘導体、(b)チオキサントン及びその誘導体、(c)クマリン及びその誘導体、(d)3−(アロイルメチレン)チアゾリン類、(e)ローダニン類、アントラキノン及びその誘導体、フェノチアジン及びその誘導体、カンファーキノン、エオシン、ローダミン、エリスロシン、キサンテン、チオキサンテン、アクリジン(例えば、9−フェニルアクリジン)、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス(9−アクリジニル)ペンタン、シアニン染料やメロシアニン染料などが挙げられる。
【0048】
(a)ベンゾフェノン及びその誘導体としては、例えば、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(メチルエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(p−イソプロピルフェノキシ)ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−(4−メチルチオフェニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾイルベンゾアート、4−(2−ヒドロキシエチルチオ)ベンゾフェノン、4−(4−トリルチオ)ベンゾフェノン、1−〔4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル〕−2−メチル−2−(トルエン−4−スルホニル)プロパン−1−オン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチルベンゼンメタナミニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパナミニウムクロリド一水和物、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−〔2−(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ〕エチルベンゼンメタナミニウムクロリド、が挙げられる。
【0049】
(b)チオキサントン及びその誘導体としては、例えば、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル〕チオキサントン、1,3−ジメチル−2−ヒドロキシ−9H−チオキサンテン−9−オン2−エチルヘキシルエーテル、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノエチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチルチオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、N−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−カルボン酸ポリエチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド、が挙げられる。
【0050】
(c)クマリン及びその誘導体としては、例えば、クマリン1、クマリン2、クマリン6、クマリン7、クマリン30、クマリン102、クマリン106、クマリン138、クマリン152、クマリン153、クマリン307、クマリン314、クマリン314T、クマリン334、クマリン337、クマリン500、3−ベンゾイルクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン、3−ベンゾイル−6,8−ジクロロクマリン、3−ベンゾイル−6−クロロクマリン、3,3’−カルボニル−ビス〔5,7−ジ(プロポキシ)クマリン〕、3,3’−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−イソブチロイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジエトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジブトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(メトキシエトキシ)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(アリルオキシ)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−イソブチロイル−7−ジメチルアミノクマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、5,7−ジエトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、3−ベンゾイルベンゾ〔f〕クマリン、7−ジエチルアミノ−3−チエノイルクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−5,7−ジメトキシクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−5,7−ジプロポキシクマリン、7−ジメチルアミノ−3−フェニルクマリン、7−ジエチルアミノ−3−フェニルクマリン、特開平9−179,299号および第9−325,209号公報に開示されたクマリン誘導体、例えば7−〔{4−クロロ−6−(ジエチルアミノ)−S−トリアジン−2−イル}アミノ〕−3−フェニルクマリン、が挙げられる。
【0051】
(d)3−(アロイルメチレン)チアゾリン類としては、3−メチル−2−ベンゾイルメチレン−β−ナフトチアゾリン、3−メチル−2−ベンゾイルメチレン−ベンゾチアゾリン、3−エチル−2−プロピオニルメチレン−β−ナフトチアゾリン、が挙げられる。
【0052】
(e)ローダニン類としては、4−ジメチルアミノベンザルローダニン、4−ジエチルアミノベンザルローダニン、3−エチル−5−(3−オクチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)ローダニン、特開平8−305019号公報に開示された、式〔1〕、〔2〕、〔7〕で表されるローダニン誘導体、が挙げられる。
【0053】
その他の化合物類に属する具体的な増感剤としては、例えば、アセトフェノン、3−メトキシアセトフェノン、4−フェニルアセトフェノン、ベンジル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンジル、2−アセチルナフタレン、2−ナフトアルデヒド、ダンシル酸誘導体、9,10−アントラキノン、アントラセン、ピレン、アミノピレン、ペリレン、フェナトレン、フェントレンキノン、9−フルオレノン、ジベンゾスベロン、クルクミン、キサントン、チオミヒラーケトン、α−(4−ジメチルアミノベンジリデン)ケトン、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデンシクロペンタノン、2−(4−ジメチルアミノベンジリデン)インダン−1−オン、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−インダン−5−イルプロペノン、3−フェニルチオフタルイミド、N−メチル−3,5−ジ(エチルチオ)フタルイミド、N−メチル−3,5−ジ(エチルチオ)フタルイミド、フェノチアジン、メチルフェノチアジン、アミン、N−フェニルグリシン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチル、4−ジメチルアミノアセトフェノン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾアート、ポリ(プロピレングリコール)−4−(ジメチルアミノ)ベンゾアート、などを挙げることができる。
【0054】
これらの増感剤の中でも、効果の観点からは、(a)ベンゾフェノン及びその誘導体、(b)チオキサントン及びその誘導体、(c)クマリン誘導体、9,10−アントラキノンなどのアントラキノン及びその誘導体から選択される少なくとも1種が好ましく挙げられる。
増感剤の添加量は、目的や使用する増感剤の露光波長での吸収強度に応じて適宜選択される。塗布膜などにした場合に、増感剤の量が少ないと十分な光増感がなされず、また多すぎるとフィルター効果により膜内で光の減衰が起こってしまうため、膜の深部にある増感剤が有効に機能しない。一般的には、塗布膜などにした際に、膜の吸収強度が0.1〜1.0の量で用いられることが好ましい。この膜の吸収強度は、膜厚と増感剤の添加量により調整されるため、塗布膜厚に応じた添加量を適宜選択すればよく、一般的には1〜100mg/m程度の量で使用される。
【0055】
<グラフトポリマー層形成用材料及びそれにより得られるグラフトポリマー層積層体>
前記本発明の機能性支持体上に、重合性基を有する化合物を含有するグラフトポリマー前駆体層を備えることで、本発明のグラフトポリマー層形成用材料を得ることができる。また、このグラフトポリマー層積層体のグラフトポリマー前駆体層にエネルギーを付与することで、エネルギー付与領域において表面グラフトにより、少なくとも一部が支持体表面に直接結合したポリマー鎖が形成され、該ポリマー鎖からなるグラフトポリマー層を有するグラフトポリマー層積層体を得ることができる。得られたグラフトポリマー層積層体は、形成されたグラフトポリマー層に各種機能性材料を付与することで種々の機能を持つ表面層を形成することができ、なかでも、金属を付与することで後述する金属膜積層体を形成しうる。
【0056】
機能性支持体表面にグラフトポリマー層を形成するに際しては、機能性支持体表面に重合性基を有する化合物を接触させ、露光、加熱などによりエネルギーを付与すればよい。この重合性基を有する化合物を接触させるに際しては、このような化合物を含有する組成物の層、即ち、グラフトポリマー前駆体層を設ける方法、機能性支持体を、重合性基を有する化合物を含有する組成物に浸漬する方法のいずれも適用することができる。
重合性基を有する化合物は、必要に応じて用いられる界面活性剤や増感剤などの各種添加剤とともに溶剤に溶解され、グラフトポリマー前駆体層形成用組成物が得られ、このような塗布液を塗布、乾燥することでグラフトポリマー前駆体層を形成する方法が好適に用いられる。
【0057】
この際、重合性基を有する化合物を溶解、分散させるために用いる溶剤としては、沸点150℃以下のものであれば特に限定されないが、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシプロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、水などを用いることができる。
【0058】
作製するグラフトポリマー層積層体におけるグラフトポリマー層の加熱時の保存性の観点からは、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテートなどの有機溶剤を用いることがより好ましい。
【0059】
(重合性基を有する化合物)
該機能性支持体上に用いる重合性化合物の例としては重合性基を持つものでは特に限定されず、一般に用いられているモノマーやポリマーを用いることができる。これらがエネルギー付与によりグラフトポリマーを生成するグラフトポリマー前駆体としての機能を果たす。
以下、重合性基を有する化合物(以下、適宜、「重合性化合物」と称する。)について説明する。
本発明に用いられる重合性化合物としては、重合性基として、ラジカル重合性基やカチオン重合性基を有するものであれば、モノマーであっても、オリゴマーやポリマーであってもよい。本発明において得られるグラフトポリマー層に金属や金属イオンを付与して金属膜の形成に用いる場合には、重合性化合物として、金属イオンに対して親和性が高い化合物を用いることが好ましく、重合性基と金属イオン吸着基とを有する化合物(以下、適宜、「特定重合性化合物」と称する。)が好ましい。
また、機能性支持体表面に金属イオンや金属化合物以外の特定の化合物、例えば、赤外線吸収剤、着色剤などを付与して、その積層体に目的とする物性を与えようとする場合には、そのような特定の化合物を吸着しうる官能基や特定の化合物との親和性が高い官能基などを導入すればよい。
【0060】
前記重合性化合物に含まれる重合性基としては、上記のように、ラジカル重合性基が好適である。
ラジカル重合性基としては、具体的には、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルアミノ基が好ましく例示される。
【0061】
また、本発明の機能性支持体を、グラフトポリマー層積層体であって金属膜を有する積層体の形成に用いる場合には、重合性化合物として、ラジカル重合性基とともに金属イオン吸着基を有する前記特定重合性化合物を用いることが好ましく、そのような特定重合性化合物中の金属イオン吸着基としては、多座配位を形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基が挙げられ、具体的には、イミダゾール基、イミノ基、イミド基、ウレア基、ピリジン基、1〜3級のアミノ基、アンモニウム基、ピロリドン基、アミド基、アミジノ基、トリアジン環構造、イソシアヌル構造、ウレタン基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、イソシアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基、水酸基(フェノールも含む)、エーテル基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造、S−オキシド構造、N−ヒドロキシ構造、チオカルボキシ基、ジチオカルボキシ基、などの含酸素官能基、チオール基、チオエーテル基、チオウレア基、チオキシ基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造、スルホキシニウム塩構造、スルホン酸エステル構造、スルホキシ基、スルフィノ基、スルフェノ基、チオカルボニル基などの含硫黄官能基、フォスフィン基などの含リン官能基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基などの酸基、塩素、臭素などを含むハロゲン化合物、フルオロ基、ペルオキシカルボキシ基、及びアルケン、アルキンなどの不飽和炭素基などが挙げられる。
【0062】
重合性化合物の分子量としては、特に限定されるものではなく、塗布時に一般的な溶剤に溶解し、ろ過によって固形不要物を除去できるような分子量であればよい。
【0063】
本発明に用いられる特定重合性化合物としてのモノマーは、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、スチレンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、N−ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルチオフェン、スチレン、エチル(メタ)アクリル酸エステル、n-ブチル(メタ)アクリル酸エステルなど炭素数1〜24までのアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。
【0064】
また、本発明に用いうる特定重合性化合物としてのマクロモノマーは、前記モノマーを用いて公知の方法にて作製することができる。本態様に用いられるマクロモノマーの製造方法は、例えば、平成1年9月20日にアイピーシー出版局発行の「マクロモノマーの化学と工業」(編集者 山下雄也)の第2章「マクロモノマーの合成」に各種の製法が提案されている。
このようなマクロモノマーの有用な重量平均分子量は、500〜50万の範囲であり、特に好ましい範囲は1000〜5万である。
【0065】
本発明に用いうる特定重合性化合物としてのポリマーは、金属イオン吸着基と、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性基)と、を導入したポリマーであることが好ましい。このポリマーは、少なくとも末端又は側鎖にエチレン付加重合性不飽和基を有するものであり、側鎖にエチレン付加重合性不飽和基を有するものがより好ましく、末端及び側鎖にエチレン付加重合性不飽和基を有するものが更に好ましい。
このような高分子化合物の有用な重量平均分子量は、500〜50万の範囲で、特に好ましい範囲は1000〜5万である。
【0066】
このような特定重合性化合物として使用しうるポリマーの具体例として、本願出願人が先に提案した特願2007−95758明細書に記載された新規ポリマー、より具体的には、該明細書の段落番号〔0086〕から同〔0090〕に例示されたポリマーを本発明にも適用することができる。
【0067】
金属イオン吸着基と重合性基とを有する高分子化合物の合成方法としては、i)金属イオン吸着基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)金属イオン吸着基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)金属イオン吸着基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法が挙げられる。
好ましい合成方法は、合成適性の観点から、ii)金属イオン吸着基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により重合性基を導入する方法、iii)金属イオン吸着基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
【0068】
上記i)及びii)の合成方法に用いられる金属イオン吸着基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、より具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン(下記構造)、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニル安息香酸等が挙げられ、一般的には、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、アミド基、ホスフィン基、イミダゾール基、ピリジン基、若しくはそれらの塩、及びエーテル基などの官能基を有するモノマーが使用できる。
【0069】
【化10】

【0070】
上記金属イオン吸着基を有するモノマーと共重合する重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレート、2−アリルオキシエチルメタクリレートが挙げられる。
また、上記ii)の合成方法に用いられる重合性基前駆体を有するモノマーとしては、2−(3−クロロ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレー卜や、特開2003−335814号公報に記載の化合物(i−1〜i−60)が使用することができ、これらの中でも、特に下記化合物(i−1)が好ましい。
【0071】
【化11】

【0072】
更に、上記iii)の合成方法に用いられる金属イオン吸着基を有するポリマー中の、カルボキシル基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、及びエポキシ基などの官能基との反応を利用して、重合性基を導入するために用いられる重合性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどがある。
【0073】
上記ii)の合成方法における、金属イオン吸着基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させた後の、塩基などの処理により重合性基を導入する方法については、例えば、特開2003−335814号公報に記載の手法を用いることができる。
【0074】
なお、本発明においては、予め、分子内に金属イオンが導入された重合性化合物を用い、ポリマー層を形成してもよい。
分子内に金属イオンが導入された重合性化合物としては、例えばアクリル酸やメタクリル酸のカルボキシル基を持つモノマーの金属塩が好適に使用される。例えば、アクリル酸銀、アクリル酸銅(I)、アクリル酸銅(II)、アクリル酸パラジウム(II)、3−アクリロイルオキシプロピオン酸銀などが挙げられる。
【0075】
本発明における重合性化合物は、本工程で用いる重合性組成物中に、50〜99.5質量%含まれることが好ましく、70〜99質量%含まれることがより好ましい。
また、これらの重合性化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
本工程において用いられる重合性組成物は、上記の成分以外に、必要に応じて、重合開始剤、増感剤、連鎖移動剤、重合禁止剤などを添加することができる。
以下、ポリマー層を形成する際に用いられる重合性組成物に添加される各種成分について説明する。
【0077】
[重合開始剤]
本発明に用いられる重合開始剤としては、所定のエネルギー、例えば、活性光線の照射、加熱、電子線の照射などにより、重合開始能を発現し得る公知の熱重合開始剤、光重合開始剤などを、目的に応じて、適宜選択して用いることができる。中でも、光重合を利用することが製造適性の観点から好適であり、このため、光重合開始剤を用いることが好ましい。つまり、本発明における重合性組成物は光重合開始剤を用いることで、光重合性の組成物であることが好ましい。
【0078】
本発明における光重合開始剤としては、水素引き抜き型のラジカル重合開始剤、光開裂型のラジカル重合開始剤等を用いることもできる。
水素引き抜き型のラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのケトン、ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイン類、α−アシロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、トリクロロメチルトリアジン及びチオキサントン等の公知のラジカル発生剤を使用できる。また、通常、光酸発生剤として用いられるスルホニウム塩やヨードニウム塩なども光照射によりラジカル発生剤として作用するため、本発明ではこれらを用いてもよい。
【0079】
また、光開裂型のラジカル重合開始剤は、光により開裂する単結合を含む構造を有するものである。光により開裂する単結合としては、カルボニルのα開裂、β海裂反応、光フリー転移反応、フェナシルエステルの開裂反応、スルホンイミド開裂反応、スルホニルエステル開裂反応、N−ヒドロキシスルホニルエステル開裂反応、ベンジルイミド開裂反応、活性ハロゲン化合物の開裂反応、などを利用した開裂が可能な単結合が挙げられる。これらの反応により、光により開裂しうる単結合が切断される。この開裂しうる単結合としては、C−C結合、C−O結合、S−N結合、C−N結合、N−O結合及びC−Cl結合等が挙げられる。
【0080】
このような光により開裂しうる単結合を有し、かつ、ラジカルを発生可能な重合開始剤としては、以下に挙げる基を含むものが挙げられる。
即ち、例えば、芳香族ケトン基、フェナシルエステル基、スルホンイミド基、スルホニルエステル基、N−ヒドロキシスルホニルエステル基、ベンジルイミド基、トリクロロメチル基、ベンジルクロライド基、などが挙げられる。
【0081】
本工程で用いる重合開始剤は、特に限定されず、付与されるエネルギーに応じて選択すればよく、また、前記増感剤をこの重合性組成物に添加して併用することもできる。
本発明における重合開始剤は、該重合性組成物中に、0.1〜10質量%含まれることが好ましく、1〜5質量%含まれることがより好ましい。
また、これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
上記の各成分を含有する重合性組成物は、中間層への接触を容易にするために液状組成物であることが好ましく、この液状組成物を調製するために、適当な溶剤を用いることが好ましい。
ここで用いられる溶剤としては、主成分である重合性化合物を溶解或いは分散することが可能であれば特に制限はないが、水、水溶性溶剤などの水性溶剤が好ましく、これらの混合物であってもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミドの如きアミド系溶剤、などが挙げられる。
【0083】
また、この液状組成物に対し、必要に応じて添加することのできる界面活性剤は、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0084】
(機能性支持体表面への重合性化合物の接触態様)
前述の重合性化合物を含有する重合性組成物を、本発明の機能性支持体表面に接触させる方法としては、任意の方法で行うことができるが、具体的には、液状の重合性組成物中に機能性支持体を浸漬する方法や、液状の重合性組成物を機能性支持体表面に塗布する方法が挙げられる。
これらのうち、取り扱い性や製造効率の観点からは、機能性支持体表面に液状の重合性組成物を塗布し、乾燥して、グラフトポリマー前駆体層を形成する態様が好ましい。
グラフトポリマー前駆体層を形成する場合、該重合性組成物の塗布量は、固形分換算で0.1〜10g/mが好ましく、特に0.5〜5g/mが好ましい。
【0085】
(エネルギーの付与)
本発明においては、機能性支持体表面に結合したオキシムエステル化合物と重合性基を有する化合物とを反応させて、機能性支持体表面に直接結合してなるグラフトポリマーを形成させるために、エネルギー付与を行う。
ここで用いられるエネルギー付与手段としては、例えば、活性光線の照射、加熱、電子線の照射などが挙げられる。このエネルギー付与をグラフトポリマー前駆体層形成領域の全面に行うことで、機能性支持体表面の全面にグラフトポリマー層が形成されてなるグラフトポリマー層積層体を得ることができる。なお、支持体の端部に設けられる掴み部などにポリマー非形成領域を残す場合であっても、必要な領域の全面にグラフトポリマーを設ける場合は、本発明で言う「全面」に包含される。
ここで、画像様にエネルギーの付与を行うと、エネルギー付与領域のみに画像様にグラフトポリマー層が生成される。
このような画像用の露光を、容易に、且つ、精度よく行うためには、エネルギーの付与手段としてパターン露光を用いることが好ましい。
【0086】
−パターン露光−
パターン露光は、機能性支持体表面に結合したオキシムエステル化合物と重合性基を有する化合物とを反応させうる光を照射しうるものであればよく、具体的には、360nm〜700nmの波長のレーザを用いることが好ましい。
パターン露光としては、例えば、陰極線(CRT)を用いた走査露光を用いることができる。この露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば、赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種又は2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤色、緑色及び青色に限定されず、黄色、橙色、紫色に発光する蛍光体も用いられる。
【0087】
また、本工程においては、パターン露光は種々のレーザビームを用いて行うことができる。例えば、ガスレーザ、発光ダイオード、半導体レーザなどのレーザ、半導体レーザ、又は半導体レーザを励起光源に用いた固体レーザと非線形光学結晶を組み合わせた第二高調波発光光源(SHG)、等の単色高密度光を用いた走査露光方式を好ましく用いることができる。更に、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F2レーザ等も用いることができる。
【0088】
本発明により形成される画像様のポリマー層の解像度は露光条件に左右される。つまり、ポリマー層を形成するためのパターン露光において、高精細のパターン露光を施すことにより、露光に応じた高精細パターンが形成される。高精細パターンの形成のための露光方法としては、光学系を用いた光ビーム走査露光、マスクを用いた露光などが挙げられ、所望のパターンの解像度に応じた露光方法をとればよい。
高精細パターン露光としては、具体的には、i線ステッパー、g線ステッパー、KrFステッパー、ArFステッパーのようなステッパー露光などが挙げられる。
【0089】
本発明において、以上のようにしてグラフトポリマー層が形成された支持体は、溶剤浸漬や溶剤洗浄などの処理が行われ、未反応の重合性組成物や機能性支持体表面に結合していないホモポリマー等を除去する(この処理は、現像処理とも呼ばれる)。この処理には、具体的には、水や、アセトン、水酸化ナトリウム水溶液、重曹水溶液、塩酸、メチルエチルケトン、アセトン、エタノールが用いられる。なお、溶剤浸漬や溶剤洗浄などの処理後には、乾燥が行われることが好ましい。
なお、この処理時には、ベンコットなどの工業用ワイパーを併用してもよく、また、ホモポリマーの除去性の観点からは、超音波などの手段をとってもよい。
このような処理後は、未反応の重合性組成物やホモポリマーが除去され、機能性支持体表面と強固に結合した表面グラフトポリマーのみが存在することになる。
【0090】
このようにして、機能性支持体表面に、該支持体に直接結合してなるポリマーからなるグラフトポリマー層を任意の領域に形成することができる。
形成されたポリマー層の膜厚は、100〜2000nmであることが好ましく、500〜1000nmが好ましく、500〜680nmがより好ましい。ポリマー層の厚さがこの範囲であると、該グラフトポリマー層中に目的とする金属やその他の特定化合物を多く付着させることができるため好ましい。
【0091】
本発明において、形成されるグラフトポリマー層の厚さは、少なくとも重合性化合物を含有する組成物を機能性支持体表面に接触させて、そこに付与されるエネルギー量(パターン露光の場合はその露光量)を制御することにより調整することができる。
ポリマー層の厚さは、AFM(NPX100M001、セイコーインスツルメンツ株式会社製)により、測定することができる。
【0092】
<金属イオン含有材料及び金属膜積層体>
前記のようにして得られる本発明のグラフトポリマー層積層体のグラフトポリマー層に金属イオンを付着させること、金属イオン含有材料を得ることができる。さらに、この金属イオン含有材料に含まれる金属イオンを還元することで、グラフトポリマー層に密着した金属膜が形成され、本発明の金属膜積層体を得ることができる。
【0093】
(金属イオンの付着)
本発明においては、前記グラフトポリマー層積層体のグラフトポリマー層に金属イオンを付着させて金属イオン吸着材料を得ることができるが、グラフトポリマー層の形成時に、重合性基を有する化合物に加え、金属イオンを含む重合性組成物を用いて、グラフトポリマー層を形成することで、金属イオンを含むグラフトポリマー層を形成することもできる。この方法によれば、グラフトポリマー層積層体形成後の金属イオン付着工程を省略することができ、得られたグラフトポリマー層積層体自体が、金属イオンが吸着した金属イオン吸着材料となる。
ここで用いられる金属イオンとしては、銀イオン、銅(I)イオン、銅(II)イオン、パラジウムイオン(II)、パラジウムイオン(IV)、アルミニウムイオン、ニッケルイオン、鉄イオン(II)、鉄イオン(III)、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、錫イオン等が挙げられ、中でも、容易に還元できるという観点から、銀イオン、パラジウムイオンが好ましい。
なお、金属イオンは、前述の重合性化合物が金属イオン吸着基を有する場合、塩交換により、該化合物中に導入されてもよい。
【0094】
本発明における金属イオンは、本工程で用いる重合性組成物中に、1〜30質量%含まれることが好ましく、2〜10質量%含まれることがより好ましい。
また、これらの金属イオンは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0095】
また、グラフトポリマー層積層体を得た後、グラフトポリマー層に金属イオンを付与させる方法としては、金属イオンを含有する溶液を、グラフトポリマー層積層体表面に形成されたグラフトポリマー層上に塗布してもよいし、該溶液中に、グラフトポリマー層積層体を浸漬させてもよい。
ここで用いられる金属イオンは、前述の重合性組成物に用いられる金属イオンと同様のものが挙げられ、好ましい例も同様である。
金属イオンを含有する溶液中の金属イオンの濃度は、0.1〜10質量%であることが好ましい。
なお、この溶液に用いられる溶剤としては、金属イオン源となる金属化合物を溶解できれば特に制限はないが、水、メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、ピリジン、アンモニア水等が好適に用いられる。
【0096】
前記金属イオンを含有する溶液をグラフトポリマー層に接触させる時間としては、グラフトポリマー層の組成、金属イオン濃度、用途等に応じて、適宜、決定すればよいが、通常、10秒〜10分の間であることが好ましい。
なお、この接触により、金属イオンは、グラフトポリマー層が金属イオン吸着基を有するポリマーからなる場合、塩交換により、該ポリマー中に導入されてもよい。
このようにして本発明の金属イオン吸着材料を得ることができる。この材料はグラフトポリマー層に金属イオンが強固にまた、所定の量吸着しているため、例えば、反射膜や導電性材料など、金属イオンを表面に有することが必要な種々の用途に応用することができる。
【0097】
上記のようにして得られた本発明の金属イオン吸着材料を用い、グラフトポリマー層中に吸着した金属イオンを還元することで、金属が析出する。金属は微粒子の形状で析出するが、それらが密に存在することで連続層としての金属膜が形成されることになる。
金属イオンの還元には、還元剤が用いられる。この還元剤としては、ポリマー層中の金属イオンを還元するに充分な還元力があれば特に限定はされず、一般的な還元剤が用いられる。例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ヒドラジンなどの有機還元剤や、NaBH、LiAlH、ボランなどの金属、半金属還元剤を用いることができる。
【0098】
また、金属イオンの還元方法としては、上記の還元剤を含む溶液に、金属イオン吸着材料を浸漬する方法が簡便であり、好適に用いられる。還元剤の溶液に用いられる溶媒としては、用いる還元剤の反応性、危険性などを考慮して用いる必要があるが、水、メタノール、アセトン、トルエン、テトラヒドロフランなどの通常用いられる溶剤を用いることができる。
浸漬時間としては、ポリマー層中の金属イオン濃度や、溶液中の還元剤の含有量によって適宜決定されるが、通常、1秒〜600秒が好ましい。
【0099】
本発明における金属イオン吸着や金属析出工程は、それぞれ、前述の現像処理、即ち、グラフトポリマー層形成後の未反応成分を除去する工程の前に行ってもよいし、現像後に行ってもよいが、現像処理が容易であることから現像後にこれらの処理を行うことが望ましい。
以上のようにして、金属粒子が吸着したグラフトポリマー層を得ることができる。ここで、密に存在する金属粒子により連続層としての金属膜が形成されるが、目的に応じて、金属膜形成後に加熱処理を行い、金属粒子間の密着性を向上させることもできる。
この加熱処理の温度は、例えば、80〜170℃が好適に用いられる。
【0100】
本発明により得られた薄層金属膜積層体(本発明の金属膜積層体)は、グラフトポリマー層が形成された領域にのみ金属粒子が存在する。従って、グラフトポリマー層生成に際し、必要な領域の全面にエネルギー付与することで、連続層の金属膜を有する金属膜積層体を得ることができる。このような金属膜積層体は、公知の方法、例えば、エッチングなどにより、パターニングすることもでき、平滑な支持体表面に密着性に優れた金属膜を有することから、種々の用途に使用しうる。
また、パターン状にエネルギーを付与して画像様にグラフトポリマー層を形成することにより、任意の位置に画像様に金属膜を形成することができ、パターン精度も任意に選択できるため、金属層による任意の画像、高精細の配線、金属層を遮光部とするフォトマスク、磁気材料など、パターン状の金属層を用いる種々の用途に適用することができる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例、比較例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0102】
(合成例1:特定重合性ポリマーPの合成)
ポリアクリル酸(平均分子量25,000)18gをDMAc(ジメチルアセトアミド)300gに溶解し、そこに、ハイドロキノン0.41gと2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート19.4gとジブチルチンジラウレート0.25gを添加し、65℃で4時間反応させた。得られたポリマーの酸価は7.02meq/gであった。1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液でカルボキシル基を中和し、酢酸エチルに加えポリマーを沈殿させ、よく洗浄し、特定重合性ポリマーPを得た。
【0103】
[実施例1]
<機能性支持体の作製>
機能性支持体の支持体基板として、ガラス基板を用いた。ガラス基板は、アセトン、蒸留水で洗浄した後、UVオゾンクリーナー(UV42、日本レーザー電子社製)を用いて5分間UVオゾン処理を行った。
前記前処理を行ったガラス基板表面に、オキシムエステル化合物〔前記例示化合物(T−1)〕0.1g及びトリレンジイソシアネート0.03gをメチルエチルケトン9.90gに溶解した塗布液を、スピンコートにより塗布した。スピンコートは、まず、300rpmで5秒回転させ、次に750rpmで20秒間回転させた。オキシムエステル化合物を含有する塗布液をスピンコートした後、120℃で20分時間加熱し、メチルエチルケトンで洗浄することで本発明の機能性支持体A1を得た。
支持体表面にオキシムエステル化合物が結合していることを、AFM(ナノピクス1000、セイコーインスツルメンツ社製、DFMカンチレバー使用)により、機能性支持体A1の厚みを測定し、支持体基材膜厚よりも厚みが10nm増加していることにより確認した。
【0104】
<グラフトポリマー層積層体の調製>
(グラフトポリマー層形成用材料)
前記合成例1で得られた特定重合性ポリマーP 0.5gと、重合開始剤:イルガキュア(R)369 2.5mgとを、1−メトキシ−2−プロパノール3.5gおよびメチルエチルケトン3.5gの混合溶媒に溶かしてグラフトポリマー形成層用塗布液とした。そのグラフト形成層用塗布液を、前記の如くして得られた機能性支持体A1表面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、その後500rpmで20秒間回転させた。さらに80℃で5分間乾燥することで、機能性支持体表面にグラフトポリマー前駆体層が形成されたグラフトポリマー層形成用材料B1を得た。
【0105】
(露光によるグラフトポリマー層の形成)
機能性支持体表面にグラフトポリマー前駆体層を有するグラフトポリマー層形成用材料B1を、405nmの発信波長を有するレーザ露光機で所定のパターンに従って100mJ/cm露光した。露光後、基板表面をワイパー(ベンコット、小津産業社製)で軽くこすりながらアセトンで洗浄した後、窒素吹き付けを行った。
以上のようにして、グラフトポリマー層が表面にパターン状に形成されたグラフトポリマー層積層体C1を作製した。
【0106】
得られたパターンをAFM(ナノピクス1000、セイコーインスツルメンツ社製、DFMカンチレバー使用)で観察した。その結果、グラフトポリマー層積層体C1においては、機能性支持体A1の表面に線幅10μm、空隙幅10μmが交互に存在するグラフトポリマー層によるパターンが形成されていることが確認された。形成されたグラフトポリマー層の膜厚は400nmであった。
【0107】
〔金属粒子析出工程〕
得られた基板C1を硝酸銀(和光純薬製)0.1%水溶液に5分間浸漬して、グラフトポリマー層中に硝酸銀に起因する銀イオンを含む金属イオン含有材料を得た後、水50mLかけ荒い洗浄を行い、さらにホルマリンに10分間浸漬した。その後、水50mLによりかけ洗い洗浄を行い、金属粒子を含有するポリマー層を備えた基板D1、即ち、実施例1の金属膜積層体を得た。
【0108】
<評価>
得られた金属膜積層体のポリマー層形成領域(金属膜生成領域)の波長365nmにおける吸光度を、可視、近赤外分光光度計(UV−3600、島津)を用いて測定したところ1.8であった。
また、ポリマー層非形成領域の365nmでの吸光度は0.1以下であった。
【0109】
[実施例2]
実施例1で作製したグラフトポリマー前駆体層を備えたグラフトポリマー層形成用材料B1を、直ちに露光せず、60℃の雰囲気下、1日保存した後に露光を行った以外は実施例1と同様な方法によりグラフトポリマー層積層体C2を作製した。
形成されたグラフトポリマー層の膜厚は390nmであった。
【0110】
〔金属粒子析出工程〕
得られた基板C2を用い、実施例1と同様な方法により、金属粒子を含有するポリマー層を備えた基板D2、即ち、実施例12金属膜積層体を得た。金属膜形成領域、即ち、画像部における波長365nmでの吸収強度は1.8であった。
【0111】
[比較例1]
実施例1で基板A1を作成する際に用いたオキシムエステル化合物(T−1)に変えて、下記比較化合物(1)0.1gを用いた以外は実施例1の方法と同様な方法で機能性支持体A2を得た。この比較例である機能性支持体A2を用い、実施例1におけるのと同様にしてグラフトポリマー層積層体C3を得て、同様に評価したところ、形成されたグラフトポリマー層の膜厚は30nm以下であった。
【0112】
【化12】

【0113】
〔金属粒子析出工程〕
得られた基板C3用い、実施例1と同様な方法により、金属粒子を含有するポリマー層を備えた基板D3、即ち、比較例1の金属膜積層体を得た。金属膜形成領域、即ち、画像部における波長365nmでの吸収強度は0.2であった。
【0114】
[比較例2]
実施例1で基板A1を作成する際に用いたオキシムエステル化合物(T−1)に変えて、下記比較化合物(2)0.1gを用いた以外は実施例1の方法と同様な方法で機能性支持体A3を得た。この比較例である機能性支持体A3を用い、実施例1におけるのと同様にしてグラフトポリマー層積層体C4を得て、同様に評価したところ、形成されたグラフトポリマー層の膜厚は10nm以下であった。
【0115】
【化13】

【0116】
〔金属粒子析出工程〕
得られた基板C4用い、実施例1と同様な方法により、金属粒子を含有するポリマー層を備えた基板D4、即ち、比較例2の金属膜積層体を得た。金属膜形成領域、即ち、画像部における波長365nmでの吸収強度は0.1であった。
これらの結果を下記表1に示す。
【0117】
【表1】

【0118】
表1に示されるように、本発明の機能性支持体を用いた実施例1では、十分な膜厚を有するグラフトポリマー層が形成されたグラフトポリマー層積層体が得られることがわかる。また、実施例1と実施例2との対比において、本発明の機能性支持体を用いたグラフトポリマー層形成用材料は、高温下で保存した後も、保存前に比較して形成されたグラフトポリマー層の膜厚が低下しないことから、本発明のグラフトポリマー層形成用材料は経時安定性に優れることがわかる。
また、グラフトポリマー層積層体を用いて金属膜積層体を形成したところ、グラフトポリマー層の形成領域に十分な厚みの金属膜が形成されていることが吸光度から確認された。
他方、比較例1の如く、基板との結合部位(Y)を持たない化合物(1)や、比較例2の如く開始部位(オキシムエステル部分構造)を持たない化合物(2)を用いて機能性支持体を形成しても、本発明の如き十分な膜厚のグラフトポリマー層は形成されず、それを用いて作製した金属膜積層体では、十分な厚みの金属膜が形成されないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、光重合開始能を有する開始部位と支持体との結合部位とを有するオキシムエステル化合物を結合させてなる機能性支持体。
【請求項2】
前記光重合開始能を有する開始部位と支持体との結合部位とを有するオキシムエステル化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の機能性支持体。
【化1】


前記一般式(1)中、Rは単結合又は連結基を表し、Rは、1価の置換基を表し、Yは基材結合部位を表す。
【請求項3】
前記オキシムエステル化合物がポリマーまたはオリゴマーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の機能性支持体。
【請求項4】
前記オキシムエステル化合物が低分子化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の機能性支持体。
【請求項5】
さらに増感色素を含有することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の機能性支持体。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の該機能性支持体上に、重合性基を有する化合物を含有するグラフトポリマー前駆体層を備えるグラフトポリマー層形成用材料。
【請求項7】
前記グラフトポリマー前駆体層の膜厚が100〜2000nmであることを特徴とする請求項6に記載のグラフトポリマー層形成用材料。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載のグラフトポリマー層形成用材料上に形成されたグラフトポリマー前駆体層に露光を行うことで得られるグラフトポリマー層積層体。
【請求項9】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の該機能性支持体を、重合性基を有する化合物と接触させ、露光を行うことで得られるグラフトポリマー層積層体。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載のグラフトポリマー層積層体のグラフトポリマー層に金属イオンを付着させることで得られる金属イオン含有材料。
【請求項11】
請求項10に記載の金属イオン含有材料に含まれる金属イオンを還元することで得られる金属膜積層体。

【公開番号】特開2009−61766(P2009−61766A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319379(P2007−319379)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】