説明

機能性素子の製造方法およびその製造装置

【課題】本発明は、形成された機能層の中心部および端部の厚みの差が、色調ムラ等の不都合を発生させない程度の差の範囲内にある機能層を有する機能性素子の製造方法およびそのような機能性素子の製造に用いる装置を提供することを主目的とするものである。
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明は、溶媒を含む機能層形成用塗工液を基材上に塗布した後、乾燥させて固化させる乾燥工程を有する機能性素子の製造方法において、製造される機能層の平坦性を得るために、予め製造された機能層の形状を検査し、中心部が凸形状の場合は、前記乾燥工程における溶媒の揮発速度を速くし、中心部が凹形状の場合は、前記乾燥工程における溶媒の揮発速度を遅くするように制御することを特徴とする機能性素子の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に形成された機能層が、その中心部と端部における膜厚の差が不都合を生じさせない程度に平坦化された機能層を有する機能性素子の製造方法およびそのような機能性素子の製造に用いる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のパーソナルコンピューターの発達や携帯電話の普及に伴い、より高精細でかつ薄層軽量なディスプレイの製造競争が激化している。その中で、有機エレクトロルミネッセント(以下、エレクトロルミネッセントをELと略す場合がある。)素子、カラーフィルター(以下、カラーフィルターをCFと略す場合がある。)、色変換フィルター等は、そのような要求を満足し、次世代のディスプレイを担うものとして注目されている。
【0003】
これら有機EL素子、CF、色変換フィルターを構成する複数の機能層の中には、微細なパターニングを必要とするものが多く、そのような微細なパターニングを行う方法として吐出法が用いられている。吐出法は、パターニング精度に優れ、かつ製造効率に優れている等利点の多い方法である。
【0004】
さらに、吐出法は、吐出装置本体のノズル口から、粒状または霧状の塗工液を吐出し、目的箇所に着弾させ塗布する方法であるため、その塗工液としては、ノズル口から容易に吐出させることが可能な粘度、すなわち比較的希薄な濃度の塗工液であることが要求される。しかし、希薄な濃度の塗工液は粘度が低いため塗布後、過剰な濡れ広がりによりパターニング精度を低下させるおそれがある。このような塗工液の過剰な濡れ広がりを防止する手段として、隔壁等の設置や塗布する対象物に予め濡れ性の差を設けるなどの方法により、パターンの精度を向上させる方法が提案されている。
【0005】
上述のような方法を講じて形成された機能層の形状は、図2に示すような凸形状、または図3に示すような、凹形状の形状となることが多い。このような形状の機能層は、中心部と端部とで膜厚に差があり、この差が大きい場合は、この差を原因として不都合が生じる可能性がある。例えば、凸形状または凹形状の形状の機能層が有機EL素子の発光層、CFの着色層または色変換フィルターの色変換層等の用途に用いられた場合、中心部と端部との膜厚の差から色調ムラが生じ高精細な発色を妨げ、素子寿命を低下させるといった影響を及ぼす。
【0006】
なお、本発明に関する先行技術は発見されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、形成された機能層の中心部および端部の厚みの差が、色調ムラ等の不都合を発生させない程度の差の範囲内にある機能層を有する機能性素子の製造方法およびそのような機能性素子の製造に用いる装置を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載するように、溶媒を含む機能層形成用塗工液を基材上に塗布した後、乾燥させて固化させる乾燥工程を有する機能性素子の製造方法において、製造される機能層の平坦性を得るために、予め製造された機能層の形状を検査し、中心部が凸形状の場合は、上記乾燥工程における溶媒の揮発速度を速くし、中心部が凹形状の場合は、上記乾燥工程における溶媒の揮発速度を遅くするように制御することを特徴とする機能性素子の製造方法を提供する。
【0009】
本発明においては、上述するように塗布された塗工液を乾燥させる工程において、形成される機能層の形状に応じて溶媒の揮発速度を制御することを特徴とする。これにより、機能層の中心部と端部とにおける膜厚の差が小さくなり平坦化された機能層を形成することができ、このような平坦化された機能層を有する機能性素子は色調ムラ等の不都合を発生させる可能性を低下させる効果を奏する。
【0010】
上記請求項1に記載された発明においては、請求項2に記載するように、予め製造された機能層の中心の膜厚をD1とし、中心から端までの幅の中心から3/4の位置の膜厚をD2とした場合、上記中心部が凸形状の場合とは、
D1−D2>D1/10
の範囲内にある場合であり、また、上記中心部が凹形状の場合とは、
D2−D1>D1/10
の範囲内にある場合とした。
【0011】
上記範囲内にある機能層は、中心部と端部との膜厚の差が不具合が生じる程度に大きい場合であるといえる。本発明においては、前述の中心部と端部とにおける膜厚の差を要因とする不具合が生じない範囲を検討し、上述したような所定の範囲を設定し、このような範囲内の機能層を平坦であるとすることにより、素子特性に優れた機能性素子を提供することを目的とする。
【0012】
上記請求項1または請求項2に記載された発明においては、請求項3に記載するように、機能層形成用塗工液が、吐出法により塗布されることが好ましい。中でも、請求項4に記載するように、上記吐出法は、インクジェット法であることが好ましい。本発明は、凸形状または凹形状に形成される機能層の形状を平坦化することを目的とする発明であり、吐出法、さらにその中でもインクジェット法は、機能層を凸形状または凹形状に形成するおそれが大きいからである。
【0013】
上記請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項5に記載するように、上記溶媒の揮発速度を速くする方法が、基材上に塗布された機能層形成用塗工液に対して送風する方法であることが好ましい。
【0014】
送風することにより、塗工液から揮発した溶媒を雰囲気中に滞留させることなく拡散させる効果が得られる。これにより、揮発溶媒が雰囲気中に飽和することが防止され、溶媒の揮発速度が促進し、機能層の平坦化が可能となるからである。
【0015】
上記請求項5に記載された発明においては、請求項6に記載するように、上記溶媒の揮発速度を速くする方法が、さらに加熱を行う方法であることが好ましい。
【0016】
通常加熱は、基材の乾燥に一般的に用いられる方法であり、本発明においては、この加熱処理と同時に、揮発溶媒の飽和を防止する手段として送風を行うことにより、平坦化に効果的な溶媒の揮発速度をより一層促進させることができるからである。
【0017】
上記請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項7に記載するように、上記機能層は、有機EL素子の発光層、CFの着色層、または、色変換フィルターの色変換層であることが好ましい。
【0018】
これらの層は、多くの機能層の中でも特に平坦性が要求される層であり、このような層に本発明における製造方法により形成された機能層を用いることにより、従来のインクジェット法により形成された機能層では得ることが困難であった、色調ムラの改善やさらなる長寿命化等の効果を得ることができるからである。
【0019】
本発明においてはまた、請求項8に記載するように、吐出法により塗工液を塗布する塗布手段と、上記塗布手段により塗布された塗工液を送風しながら乾燥させる乾燥手段とを有することを特徴とする機能性素子の製造装置を提供する。
【0020】
本発明は、溶媒の揮発速度を制御することにより、機能層の平坦化を可能とする機能層の製造方法を提供する。このような製造方法を容易に可能とする装置が上記機能性素子の製造装置であり、乾燥手段に、送風装置を付加することにより、揮発溶媒の雰囲気を制御しながら乾燥させることを可能とする。このことから、平坦化に繋がる溶媒の揮発速度の制御が容易に可能となり良好な平坦化が実現される。
【0021】
上記請求項8に記載された発明においては、請求項9に記載するように、上記送風しながら乾燥させる乾燥手段が、薄く平面状に噴出させた空気を一定方向に移動させながら送風するエアナイフ方式であることが好ましい。エアナイフ方式は、装置の移動速度の調製や風量の調節により状況に応じた制御が可能であり、機能層全体に均一な平坦化を可能とするからである。
【0022】
上記請求項8に記載された発明のおいては、請求項10に記載するように、上記送風しながら乾燥させる乾燥手段が、上面から空気を吹き付けるダウンフロー方式であることが好ましい。基材の全面に空気を吹き降ろすダウンフロー方式であれば、基材表面に滞留する揮発溶媒を拡散させ、容易に揮発溶媒の飽和を防止することができ、これにより溶媒の揮発を効果的に促進することが可能となるからである。
【0023】
上記請求項8から請求項10までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項11に記載するように、基材側から熱を加える加熱手段を有することが好ましい。加熱し、かつ送風しながら乾燥工程を行うことにより、より一層溶媒の揮発速度が促進され、好適な平坦化を実施することが可能となるからである。
【0024】
上記請求項11に記載された発明においては、請求項12に記載するように、上記加熱手段が、ホットプレートまたは遠赤外線ヒーターであることが好ましい。ホットプレートは、汎用されている加熱手段であり、基材の下側から直接熱を伝導させることから熱効率に優れ、加熱ムラを少なくすることができるからである。また、遠赤外線ヒーターは深達力が高く、機能層の内部まで均一に熱を加えることが可能だからである。
【0025】
上記請求項8から請求項12までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項13に記載するように、上記塗布手段はインクジェット装置であることが好ましい。本発明は、吐出法の中でも特にインクジェット法を用いて形成された機能層の形状を改善することを目的として提案される発明だからである。
【0026】
上記請求項8から請求項13までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項14に記載するように、上記機能性素子が、有機EL素子、CF、または、色変換フィルターであることが好ましい。これらの用途に本発明の機能性素子を用いることにより、色調ムラが抑制され、また、長寿命化の実現といった効果を奏するからである。
【0027】
本発明においてはまた、請求項15に記載するように、基材と、上記基材上に形成された、塗工液との接触角が小さい濡れ性を呈する親液性領域および塗工液との接触角が上記親液性領域よりも大きい濡れ性を呈する撥液性領域を有するパターン形成層と、上記パターン形成層の親液性領域上に形成された機能層とを少なくとも有する機能性素子において、上記機能層は、機能層の中心の膜厚をD1とし、中心から端までの幅の中心から3/4の位置の膜厚をD2とした場合、
|D1−D2|≦D1/10
の範囲内の平坦性を有することを特徴とする機能性素子を提供する。
【0028】
上記式を満足する範囲内にある機能層を吐出法により形成することは難しく、上記式の範囲外の形状に形成された機能層は不都合を生じさせることが多い。そこで、本発明においては、上述の式の範囲内にある場合を平坦化として表し、この範囲内にある機能層を有する機能性素子を提供することにより、吐出法により形成された機能性素子をより素子特性に優れたものとするようにしたものである。
【0029】
上記請求項15に記載された発明においては、請求項16に記載するように、上記パターン形成層は、エネルギー照射により表面の濡れ性が変化する濡れ性変化層からなることが好ましい。パターン形成層に濡れ性変化層を用いることにより、その性質を利用しエネルギーをパターン照射するのみで、容易に濡れ性の差によるパターンを濡れ性変化層上に形成することができるからである。
【0030】
上記請求項16に記載された発明においては、請求項17に記載するように、上記濡れ性変化層は、光触媒を有するものであってもよい。濡れ性変化層を光触媒を含有する構成とすることにより、濡れ性変化層に直接エネルギーをパターン照射することにより、濡れ性に差を有するパターンを濡れ性変化層表面に容易に形成することが可能だからである。
【0031】
上記請求項15から請求項17までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項18に記載するように、上記機能層はインクジェット法により形成されていることが好ましい。本発明は、吐出法の中でも特に、インクジェット法により形成された機能層の平坦化を実現することを主目的とするからである。
【0032】
上記請求項15から請求項18までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項19に記載するように、上記機能性素子には、機能層の平均膜厚よりも高い隔壁が形成されていないことが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、塗布された塗工液を乾燥させる工程において、形成された機能層の形状に応じて溶媒の揮発速度を制御することにより、機能層の中心部と端部とにおける膜厚の差が小さくなり平坦化された機能層を形成することができ、このような平坦化された機能層を有する機能性素子は色調ムラ等の不都合を発生させる可能性を低下させる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明における機能性素子の製造方法、およびその製造方法に用いる装置について詳しく説明する。
【0035】
本発明は、図2または図3に示すような、凸形状または凹形状の形状に形成されるおそれが大きい機能層を平坦化することを目的とする。このような形状は、中心部と端部とでその膜厚に差があるため、この膜厚の差が要因となり、機能性素子を実際に機能させた場合に、色調ムラ等の不都合が生じる可能性が高い。そこで、本発明においては、この両者の差を容易に縮小することが可能な平坦化の方法を提供する。
【0036】
通常、凸形状または凹形状の形状に形成されるおそれが大きい塗布法としては、吐出法が挙げられる。吐出法は、その塗布方法から用いられる塗工液が粘性が低く、希薄であり、かつ高沸点であることが好ましいからである。つまり、吐出法は、ノズル口から塗工液を液滴状または霧状の状態で吐出させて目的対象物へ塗工液を着弾させ塗布する方法であり、ノズル口から速やかに吐出させることを可能とするため、かつノズル口への付着を防止するため上述のような性質を有する塗工液を用いることが好ましいのである。
【0037】
そこで、以下、吐出法により機能層を形成する場合に、図2に示すような形状に形成される理由および図3に示すような形状となる理由を説明する。まず、吐出法に塗布された直後の塗工液の形状は凸形状を呈している。この状態は、図2に示すように中心部と端部とで膜厚に差を有する。この膜厚の差から、溶媒の存在量に場所依存性が生じる。つまり、中央部に存在する溶媒の絶対量と、端部に存在する溶媒の絶対量は、膜厚の差に比例し、全体的に濃度は同一であるが、存在する溶媒の量は両者では異なる。さらに、溶媒の乾燥は、膜厚の薄い端部から進行するため、溶媒の減少度は、端部のほうが大きくなる。このため、塗工液の内部では、溶媒の減少度の差による溶媒の濃度勾配が形成され、この濃度勾配を減少させる方向に塗工液の内部では溶媒が移動する。もし、この場合、溶媒の揮発速度が速いことから大きな濃度勾配が形成される場合は、端部への溶媒の移動量が多くなり、これに伴い溶質の移動量も多くなり、結果的に凹形状に塗工液は乾燥する。しかし、粘性が低く、高沸点の塗工液の場合は、溶媒の揮発速度が遅く緩やかに乾燥が進行するため、濃度勾配が形成されにくく凸形状を保持したまま乾燥することが多い。このことから、凸形状および凹形状に形成される要因は、塗工液の溶媒の揮発速度の違いに依存していることが示唆される。そこで、本発明においては、溶媒の揮発速度を状況に応じて制御することにより吐出法により形成された機能層の平坦化を実現する。
【0038】
ここで、本発明で用いている平坦化とは、以下の式により表される場合をいうこととする。図1、図2および図3に示すように、形成された機能層の中心の膜厚をD1とし、中心から端までの幅の中心から3/4の位置の膜厚をD2とした場合、両者の関係が、
|D1−D2|≦D1/10
の範囲内にある場合を平坦と定義する。
【0039】
図2および図3においては、上記式の範囲外にある場合を図示したものであり、図2の凸形状の場合は、D1>D2であることより、両者の関係は、
D1−D2>D1/10
の範囲内にある。一方、図3に示す凹形状の場合は、D1<D2であるため、両者の関係は、
D2−D1>D1/10
の範囲内にあるといえる。
【0040】
本発明においては、上記凸形状または凹形状の両方の場合に、平坦化を可能とする機能性素子の製造方法およびその製造に用いる製造装置について以下、詳細に説明する。
【0041】
(機能性素子の製造方法)
まず、平坦化を実現する本発明の機能性素子の製造方法について説明する。本発明の機能性素子の製造方法は、溶媒を含む機能層形成用塗工液を基材上に塗布した後、乾燥させて固化させる乾燥工程を有する機能性素子の製造方法において、製造される機能層の平坦性を得るために、予め製造された機能層の形状を検査し、中心部が凸形状の場合は、前記乾燥工程における溶媒の揮発速度を速くし、中心部が凹形状の場合は、前記乾燥工程における溶媒の揮発速度を遅くするように制御することを特徴とする。
【0042】
このような特徴を有する本発明の機能性素子の製造方法は、形成された形状が上述のような凸形状または、凹形状である場合にそれらの形状を平坦化するものである。このような平坦化を実現する本発明の製造方法においては、一般的には、まず、基材上の所定の位置に機能層形成用塗工液を塗布する塗布工程が行われる。ここで、この工程における塗布法が吐出法である場合には、吐出させた塗工液の過剰な濡れ広がりを防止するため、予め、基材上に隔壁または、濡れ性の差によるパターン等を形成し、基材を調製する基材調製工程を塗布工程の前に行う場合がある。次いで、塗布工程後に塗布された機能層形成用塗工液を乾燥させて固化させる乾燥工程が行われる。本発明の特徴である機能層の平坦化は、この乾燥工程の際に行われ、この平坦化を伴う乾燥工程を経ることにより平坦化された機能層を得ることができる。
【0043】
本発明においては、上述した平坦化を伴う乾燥工程が本発明における特徴部分であるため、まずは乾燥工程について説明し、その後、他の工程について説明することとする。
【0044】
1.乾燥工程
本工程は、基材上に塗布された機能層形成用塗工液を乾燥、固化させることにより機能層を形成する工程である。本工程においては、凸形状および凹形状の両方の形状を平坦化の対象とし、各々の形状によりその平坦化の方法が異なるため、以下、各形状ごとに平坦化を伴う乾燥工程について説明する。
【0045】
A. 凸形状の場合
本発明において凸形状とは、特に限定されるものではないが、機能層の中心の膜厚をD1とし、中心から端までの幅の中心から3/4の位置の膜厚をD2とした場合、D1>D2から、両者の関係が、
D1−D2>D1/10
の範囲内にある場合をいう。
【0046】
形成された機能層が上記式の範囲内にある凸形状に形成される理由は、上述するように溶媒の揮発速度が遅いことに起因する。そこで、凸形状に形成されるおそれがある機能層を平坦化する方法としては、溶媒の揮発速度を速くすることにより平坦化を実施する。
【0047】
本発明において揮発速度を速くする方法としては、溶媒の蒸気圧が平衡状態に到達することを回避することが可能な方法であれば特に限定されるものではない。例えば、揮発溶媒の飽和を防止する方法、圧力を降下させる方法、熱を加える方法等が挙げられる。これらの方法はいずれも溶媒の蒸気圧に影響を与え溶媒の揮発速度を促進させることを可能とする。また、この中でも特に、揮発溶媒の飽和を防止する方法であることが好ましい。具体的に揮発溶媒の飽和を防止する方法としては、送風により塗工液表面から揮発する溶媒を拡散させる方法や、塗布法により塗布する際に塗布基材の移動速度を速める等の方法が挙げられる。中でも、送風により揮発溶媒を拡散させ溶媒の飽和を防止する方法であることが好ましい。この方法が最も効果が高く、緻密なパターンを有する場合であっても、いずれのパターンにもムラの少ない均一な平坦性を保持させることができるからである。
【0048】
さらに、本発明においては、上記揮発速度を速くする方法を単独または組み合わせることにより、より一層溶媒の揮発速度を促進することができる。種々の組合せの中でも、前記送風に加え、加熱を同時に行う方法が好ましい。これは、塗布法の中でも吐出法を用いて機能層を形成する場合には、ノズル口への塗工液の付着を防止するため高沸点の塗工液が用いられることから、ある程度加熱を行わなければ溶媒の揮発を促進することは難しいからである。さらに、加熱により揮発した溶媒が雰囲気中で飽和状態に達し揮発速度が停滞することを防止するため、上記送風を組合せることにより、揮発速度をより一層促進させることが可能となるからである。
【0049】
B. 凹形状の場合
本発明において凹形状とは、特に限定されるものではないが、機能層の中心の膜厚をD1とし、中心から端までの幅の中心から3/4の位置の膜厚をD2とした場合、D1<D2から、両者の関係が、
D2−D1>D1/10
の範囲内にある場合をいう。
【0050】
上記式の範囲内にある凹形状の機能層は、溶媒の揮発速度が不適当に高速であるために乾燥途中に、周辺部へ溶媒が集中し、これに伴い溶質も周辺部へ移動することにより凹形状に機能層形成用塗工液が乾燥することにより形成される。
【0051】
このような凹形状の場合においては、溶媒の揮発速度を遅くすることにより平坦化を可能とする。揮発速度を遅くする方法としては、揮発溶媒を雰囲気中に過度に充満させ溶媒の揮発を抑制する方法や、加圧、冷却等が挙げられる。具体的な方法として、密閉状態の中で多少の隙間を調製しながら乾燥させる方法や、圧力を付加する方法等が挙げられる。
【0052】
このような方法により形成された機能層の平坦化を実現することができる。
【0053】
2.その他の工程
本発明においては、上記乾燥工程の前工程として、一般的には、基材調製工程、塗布工程等が行われる。以下、これらの工程について簡単に説明する。
【0054】
A. 基材調製工程
本発明においては、塗布法の中でも特に吐出法により機能層を形成することが好ましい。また、吐出法により機能層を形成した場合には、粘性が低い塗工液が用いられる。従って、このような塗工液が基材上に塗布されると、塗工液の粘性の低さから過剰に濡れ広がることがある。そこで、このような塗工液の過剰な濡れ広がりを防止する方法を予め基材に施すことが好ましい。このような方法としては、隔壁を設置し塗工液の進行を防止する方法や親液性および撥液性の濡れ性の差によるパターンが形成されたパターン形成層を基材上に設ける方法等がある。本発明における基材調製工程においては、このような隔壁や濡れ性の差を有するパターン形成層が基材上に形成される。
【0055】
以下、上記隔壁および濡れ性の差を有するパターン形成層について説明する。
【0056】
(1) 隔壁
本発明における隔壁とは、機能層形成用塗工液の濡れ広がりを、隔壁側面または表面にて食い止めることができるものである。このような隔壁としては、例えば、断面形状が四角形状、T字形状、逆テーパ形状等のものを挙げることができる。さらに、より効果的に塗工液の濡れ広がりを防止するために、撥液性を保持させた隔壁としてもよい。このような隔壁は、隔壁自体を撥液性を保持する材料から形成する方法や、表面に撥液性処理を施し隔壁表面に撥液性を保持させる方法等により形成することが可能である。
【0057】
(2) パターン形成層
本発明においては、上記隔壁を設置し塗工液の過剰な濡れ広がりを防止する方法の他に、基材表面に塗工液と良好な濡れ性を有する親液性領域と、塗工液との濡れ性が悪い撥液性領域とのパターンが形成されたパターン形成層を設けることにより、撥液性領域への塗工液の濡れ広がりを防止し、パターニング精度を向上させる方法がある。このようなパターン形成層の形成方法としては、親液性が要求される領域に親液性の表面処理を施す方法や、エネルギー照射により表面の濡れ性が変化する濡れ性変化層を基材上に形成し、エネルギーのパターン照射により濡れ性の差によるパターンを形成する方法等が挙げられる。
【0058】
B.塗布工程
本発明においては、上記基材調製工程の後に塗布工程が行われる。この塗布工程とは、基材上の所定の位置に、塗布法により機能層形成用塗工液をパターン状に塗布する工程である。以下、本工程について説明する。
【0059】
(1) 塗布法
本発明は、凸形状または凹形状に形成されるおそれがある機能層を平坦化することを主目的とする発明である。従って、塗布法としては、機能層を凸形状または凹形状に形成する場合がある塗布法であれば特に限定されない。具体的には、印刷法、ディッピング法、吐出法を挙げることができる。中でも、吐出法であることが好ましい。吐出法は、その塗布方法から機能層が上記形状に形成されるおそれが大きいからである。さらに、吐出法の中でも、インクジェット法であることが好ましい。インクジェット法は、一般的に汎用されている吐出法であり、材料効率に優れ、製造工程が短い等製造効率上有利であるからである。
【0060】
(2) 機能層形成用塗工液
本発明における機能層とは、発光層、着色層および色変換層等を挙げることができ、これら各層を形成する際の塗工液が本発明で言う機能層形成用塗工液となる。
【0061】
また、インクジェット法により機能層を形成する場合には、機能層形成用塗工液としては、インクジェット法に適したものが用いられる。このようなインクジェット法に用いる塗工液の性質としては、溶媒を含み、粘性が低く、高沸点であること等が挙げられる。上記性質を有する機能層形成用塗工液とすることにより、ノズル口から速やかに滞りなく塗工液を吐出させることができ、かつノズル内壁への塗工液の残存を防止し、塗工液の側面からインクジェット法の塗布精度を向上させることができるからである。
【0062】
3.機能層
本発明の機能性素子の製造方法により形成される機能層としては、EL素子の発光層、CFの着色層または色変換フィルターの色変換層等が挙げられる。ここで、色変換フィルターとは、例えば、発光部から青色または白色の発光を受けた際に、多数色、例えば赤色、緑色、および青色の3原色に色を変換することができる色変換層を有するフィルターを示すものであり、必要に応じて色補正用のCFを有するものであってもよい。
【0063】
上記各素子は、中心部と端部との膜厚の差が上述の範囲内に形成された各機能層を有することにより、素子特性が向上し、高精細な発色を可能とし、また、EL素子においては素子寿命を伸長させる効果を得ることができる。
【0064】
(機能性素子の製造装置)
次に、本発明の機能性素子の製造装置について説明する。本発明の機能性素子の製造装置は、吐出法により塗工液を塗布する塗布手段と、前記塗布手段により塗布された塗工液を送風しながら乾燥させる乾燥手段とを有することを特徴とする。
【0065】
上記製造装置により、送風を伴いながら機能層を乾燥させることができ機能層の平坦化を実現することが可能となる。これは、送風により揮発する溶媒が雰囲気中に拡散されるため、溶媒の蒸気圧が平衡状態に到達することが抑制され、溶媒の揮発速度が向上する作用が及ぼされるからである。以下、本発明の製造装置の各手段について説明する。
【0066】
1.塗布手段
本発明における塗布手段としては、機能層形成用塗工液を吐出させて塗布する吐出装置であれば特に限定はされない。その中でも、インクジェット装置であることが好ましい。インクジェット装置は、吐出装置の中でも最も汎用されている装置であり、塗布手段として製造効率に優れ、短い製造工程で塗布することを可能とするからである。
【0067】
2.乾燥手段
本発明における乾燥手段は、送風しながら乾燥させる乾燥手段である。このような乾燥手段に用いる送風装置としては、揮発溶媒の飽和を抑制させるものであれば特に限定はされない。このような送風装置としては、例えば、薄く平板状に噴出させた空気を一定方向に移動させながら送風するエアナイフ方式、上面から空気を吹き付けるダウンフロー方式、揮発溶媒を吸引するバキューム方式等が挙げられる。その中でもエアナイフ方式またはダウンフロー方式による送風装置であることが好ましい。これらは、風量の強度調節が可能なため、要求される平坦性の度合いに応じて柔軟に対応することができるからである。さらに、空気を基材に吹き付け揮発溶媒の拡散を図る方法であることから、基材の隅々にまで空気が行き渡り、入り組んだ緻密なパターンを有する機能層の場合においても、パターンごとのムラが少なく、均一な平坦化を可能とするからである。
【0068】
さらに、本発明においては、上記送風装置に加え加熱装置を組み合わせた乾燥手段とすることが好ましい。これは、加熱装置により送風および加熱を同時に行うことにより、吐出法特有に用いられる高沸点な塗工液の溶媒の揮発速度を効果的に促進することができるからである。このような加熱装置としては、機能層形成用塗工液の温度を容易に上昇させ、乾燥、固化させることが可能であるものならば特に限定されない。従って、一般的に用いられている加熱装置等を使用することができ、具体的には、オーブン、遠赤外線ヒーター、ホットプレート等が挙げられる。その中でも、ホットプレートまたは遠赤外線ヒーターによる加熱装置が好ましい。ホットプレートは、基材の下側から直接熱を伝導させて乾燥させる装置であるため、熱効率に優れ、かつ加熱ムラの少ない装置であるからである。また、遠赤外線ヒーターは深達力が高く、機能層内部まで均一に加熱することが可能であるからである。
【0069】
このような送風をしながら乾燥させる乾燥手段の製造装置の例を図示したものが図4および図5である。以下、両図について具体的に説明する。
【0070】
図4は、前記送風しながら乾燥させる乾燥手段における送風装置がエアナイフ方式である一例の概略斜視図である。具体的には、薄く平面状の空気1を噴出させるエアナイフ2と、前記エアナイフ2が一定方向に移動しながら揮発溶媒の拡散を行う際に、その移動を支持するスライダー3と、吐出法により機能層形成用塗工液が塗布された基材4を下側から加熱する熱源5とを示している。少なくともこれらの構成を有する装置により、溶媒の揮発速度を制御しながら乾燥工程を行うことができ、容易に機能層の平坦化を可能とする。
【0071】
さらに、図5には製造装置の他の例としてダウンフロー方式による製造装置を図示している。具体的には、上面から目的対象物の全面に空気を吹き付けるダウンフロー発生装置11と、前記ダウンフロー発生装置11から発生させた空気12が、吐出法により機能層形成用塗工液が塗布された状態の基材4に吹き付けられ、さらに前記基材4を加熱する熱源5とを図示している。
【0072】
3.機能性素子
上記本発明の機能性素子の製造装置は、種々の機能性素子の製造に用いることが可能である。しかしながら、中でもEL素子の発光層、CFの着色層または色変換フィルターの色変換層を製造する際に用いられる製造装置であることが好ましい。これは当該製造装置により上記各機能層を形成することにより、機能層の中心部および端部の膜厚の差が好適に小さい平坦化された機能層を得ることができ、EL素子、CFまたは色変換フィルターとして用いることにより、素子特性が向上し、高精細な発色が可能となるからである。
【0073】
(機能性素子)
本発明の機能性素子は、基材と、前記基材上に形成された、塗工液との接触角が小さい濡れ性を呈する親液性領域および塗工液との接触角が上記親液性領域よりも大きい濡れ性を呈する撥液性領域を有するパターン形成層と、前記パターン形成層の親液性領域上に形成された機能層とを少なくとも有する機能性素子において、前記機能層は、機能層の中心の膜厚をD1とし、中心から端までの幅の中心から3/4の位置の膜厚をD2とした場合、
|D1−D2|≦D1/10
の範囲内の平坦性を有することを特徴とする。
【0074】
以下、本発明の機能性素子の各構成について説明する。
【0075】
1.機能層
本発明の機能層は、上述したように中心の膜厚D1と、中心から端までの幅の3/4の位置の膜厚D2とが、上記式の範囲内にあることを特徴とする。このように機能層の中心部と端部との膜厚の差が小さい機能層とすると、例えばEL素子の発光層、CFの着色層または色変換フィルターの色変換層として本発明の機能層を用いた際、高精細な発色を可能とする等の利点が得られる。
【0076】
2.パターン形成層
本発明におけるパターン形成層とは、塗工液との接触角が小さい濡れ性を呈する親液性領域および塗工液との接触角が上記親液性領域よりも大きい濡れ性を呈する撥液性領域とを有する層である。このようなパターン形成層としては、濡れ性の差によるパターンが形成されているものであれば特に限定はされないが、本発明においては、光触媒の作用からエネルギー照射により濡れ性が変化する性質を有する濡れ性変化層を用いて形成されていることが好ましい。このような濡れ性変化層は、親液性および撥液性のパターンに応じてエネルギーをパターン照射するのみで、濡れ性変化層上に濡れ性に差を有するパターンを容易に形成することができるからである。
【0077】
さらに、濡れ性変化層の態様として、濡れ性変化層自体に光触媒が含有されている光触媒含有層の場合と、光触媒が含有されていない場合とがある。いずれもパターン形成層に用いることが可能であるが、光触媒含有層を用いた場合は、光触媒含有層に直接エネルギーをパターン照射するのみで、光触媒含有層に濡れ性の差によるパターンを形成することができることから製造効率上有利である。一方、光触媒を含有しない場合は、機能性素子として用いた場合に、光触媒の半永久的な作用による経時劣化が回避できることを利点とする。以下、パターン形成層として使用可能な光触媒を含有しない濡れ性変化層と、光触媒を含有する光触媒含有層とについて詳細に説明する。
【0078】
A. 濡れ性変化層
パターン形成層を構成する濡れ性変化層は、光触媒の作用により表面の濡れ性が変化する層であれば特に限定されるものではないが、一般的にはエネルギーの照射に伴う光触媒の作用により、その濡れ性変化層表面における液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する層であることが好ましい。また、光触媒を活性化させるエネルギーを透過させる材料である必要がある。
【0079】
このように、露光(本発明においては、光が照射されたことのみならず、エネルギーが照射されたことをも意味するものとする。)により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する濡れ性変化層とすることにより、エネルギーのパターン照射を行うことにより容易に濡れ性をパターン状に変化させ、液体との接触角の小さい親液性領域のパターンを形成することが可能となり、この親液性領域に機能層形成用塗工液を付着させることにより、機能層を容易に形成することができる。
【0080】
ここで、親液性領域とは、液体との接触角が小さい領域であり、機能層形成用塗工液、例えば、機能性素子がEL素子であれば発光層を形成する発光層形成用塗工液、機能性素子がCFであれば、画素部(着色層)着色用の塗工液等に対する濡れ性の良好な領域をいうこととする。また、撥液性領域とは、液体との接触角が大きい領域であり、上述の機能層形成用塗工液に対する濡れ性が悪い領域をいうこととする。
【0081】
上記濡れ性変化層は、露光していない部分、すなわち撥液性領域においては、塗布される機能層形成用塗工液に対する接触角が30°以上、好ましくは40°以上、特に50°以上の濡れ性を示すことが好ましい。これは、露光していない部分は、本発明においては撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、上記機能層形成用塗工液が残存する可能性が生じるため好ましくないからである。
【0082】
また、上記濡れ性変化層は、露光すると液体との接触角が低下して、塗布される機能層形成用塗工液に対する接触角が20°以下、特に、10°以下となるような層であることが好ましい。露光した部分、すなわち親液性領域における液体との接触角が高いと、この部分での機能層形成用塗工液の広がりが劣る可能性があり、機能層の欠け等の問題が生じる可能性があるからである。
【0083】
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。
【0084】
また、本発明において上述したような濡れ性変化層を用いた場合、この濡れ性変化層中にフッ素が含有され、さらにこの濡れ性変化層表面のフッ素含有量が、濡れ性変化層に対しエネルギーを照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記濡れ性変化層が形成されていてもよい。
【0085】
このような特徴を有する濡れ性変化層であれば、エネルギーをパターン照射することにより、容易にフッ素の含有量の少ない部分からなるパターンを形成することができる。ここで、フッ素は極めて低い表面エネルギーを有するものであり、このためフッ素を多く含有する物質の表面は、臨界表面張力がより小さくなる。したがって、フッ素の含有量の多い部分の表面の臨界表面張力に比較してフッ素の含有量の少ない部分の臨界表面張力は大きくなる。これはすなわち、フッ素含有量の少ない部分はフッ素含有量の多い部分に比較して親液性領域となっていることを意味する。よって、周囲の表面に比較してフッ素含有量の少ない部分からなるパターンを形成することは、撥液性域内に親液性領域のパターンを形成することとなる。
【0086】
したがって、このような濡れ性変化層を用いた場合は、エネルギーをパターン照射することにより、撥液性領域内に親液性領域のパターンを容易に形成することができるので、この親液性領域のみに機能層を形成することが容易に可能となり、低コストで品質の良好な機能性素子とすることができる。
【0087】
このような濡れ性変化層に用いられる材料としては、上述した濡れ性変化層の特性、すなわち光触媒の作用により濡れ性が変化する材料で、かつ光触媒の作用により劣化、分解しにくい主鎖を有するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥液牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンを挙げることができる。
【0088】
上記の(1)の場合、一般式:
SiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
【0089】
また、バインダとして、特にフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンが好ましく用いることができ、具体的には、フルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
【0090】
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
【0091】
【化1】

【0092】
ただし、nは2以上の整数であり、R,Rはそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R、Rがメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
【0093】
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコーン化合物を混合してもよい。
【0094】
本発明における濡れ性変化層には、さらに界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることかでき、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0095】
また、濡れ性変化層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0096】
このような濡れ性変化層は、上述した成分を必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。また、紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより濡れ性変化層を形成することかできる。
【0097】
本発明において、この濡れ性変化層の厚みは、光触媒による濡れ性の変化速度等の関係より、0.001μmから1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmの範囲内である。
【0098】
本発明において上述した成分の濡れ性変化層を用いることにより、光触媒の作用による上記成分の一部である有機基や添加剤の酸化、分解等の作用を用いて、露光部の濡れ性を変化させて親液性とし、未露光部との濡れ性に大きな差を生じさせることができる。よって、機能層形成用塗工液との受容性(親液性)および反撥性(撥液性)を高めることによって、品質の良好でかつコスト的にも有利な機能性素子を得ることができる。
【0099】
本発明において上述のような濡れ性変化層をパターン形成層に用いた場合の親液性および撥液性のパターンの形成方法としては、少なくとも光触媒を有する層を別個に準備し、この光触媒を有する層と濡れ性変化層とを接触またはある程度の間隔を置いて配置させた状態でパターン露光し、次いで、光触媒を有する層を濡れ性変化層から剥離することにより親液性および撥液性のパターンを有する濡れ性変化層を得ることができる。
【0100】
B. 光触媒含有層
本発明に用いられる光触媒含有層は、少なくとも光触媒とバインダとからなり、エネルギー照射により塗工液との接触角が低下する方向に濡れ性が変化するものである。このような光触媒含有層としては、上記濡れ性変化層に光触媒を含有させることにより得ることできる。そこで、バインダ等の濡れ性変化層と同様の構成のものについては、ここでの説明を省略し、以下、光触媒に関することについて説明する。
【0101】
本発明で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、および酸化鉄(Fe)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0102】
本発明においては、特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0103】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0104】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径か50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
【0105】
また、バインダを用いる場合は、バインダの主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えば上述する濡れ性変化層で詳しく説明するオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0106】
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記光触媒含有層は、光触媒とバインダであるオルガノポリシロキサンを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することかできる。
【0107】
このような光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0108】
また、光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤としては、上述の濡れ性変化層における場合と同様であるためここでの説明は省略する。
【0109】
本発明において光触媒含有層はその内部に光触媒を含有するため、直接光触媒含有層層にパターン露光を行うことにより光触媒の作用から親液性および撥液性のパターンを形成することが可能である。
【0110】
3.その他
A.隔壁
本発明においては、機能層形成用塗工液の過剰な濡れ広がりを防止する手段として、上記機能層の平均膜厚よりも高い隔壁が設けられていないことが好ましい。
【0111】
なお、上記パターン形成層により濡れ性のパターンが基材上に設けられている場合は、パターン形成層により、機能層形成用塗工液の過剰な濡れ広がりを防止することができるため、この場合は、隔壁を設けなくてもよい。
【0112】
B.基材
本発明に用いる基材は、特に限定されるものではないが、この基材面側に通常発光させるものであることから、透明性が高いものが好ましく、ガラス等の無機材料や、透明樹脂等を用いることができる。
【0113】
上記透明樹脂としては、フィルム状に成形が可能であれば特に限定されるものではないが、透明性が高く、耐溶媒性、耐熱性の比較的高い高分子材料が好ましい。具体的には、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニル(PFV)、ポリアクリレート(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、非晶質ポリオレフィン、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリミクロイキシレンジメチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、ABS樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、および非晶質ポリオレフィン等が挙げられる。
【0114】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0115】
以下に実施例を示し、本発明をさらに説明する。
【0116】
(実施例1)
1.光触媒含有層用塗布液の合成
酸化チタンゾル(商品名:ST-K03、石原産業(株)製)100g、2N塩酸90g、蒸留水110g、イソプロピルアルコール150g、フルオロアルキルシラン(商品名:MF-160E)トーケムプロダクツ社製、N−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−Nエチルパーフルオロオクタンスルホンアミドのイソプロピルエーテル50重量%溶液)0.36gを混合し、75℃で1時間攪拌した。室温に冷却後イソプロピルアルコールで1.25倍に希釈して光触媒含有層用塗布液を得た。
【0117】
2.透明基板上への親液性パターン形成
300×400×0.7mmの無アルカリガラス基板に上記光触媒含有層用塗布液をスピンコーティングし、光触媒含有層を形成した。この状態で、濡れ性変化層は發液性(40mN/mの濡れ指数標準液での接触角:74°)を示した。紫外線を開口部90μm×200,000μm、100μmピッチで1024本のライン状のマスクパターンを介して照射したところ、光触媒含有層上に同ピッチの親液性(40mN/mの濡れ指数標準液での接触角:0°)のラインパターンが形成された。
【0118】
3.カラーフィルター層形成用塗工液
固形分20%(バインダー:顔料=1:1)、溶剤がジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートからなるカラーフィルター層形成用塗工液を調整した。
【0119】
4.インクジェット塗布
128個の吐出穴を有するピエゾ駆動型ヘッドを用意し、上記カラーフィルター層形成用塗工液を吐出させ、上記親液性パターンを有する透明基板の親液性パターン部分に吐出させた。塗工液は親液性部分に均一に濡れ広がった。
【0120】
5.塗膜の乾燥
上記インクジェット法により親液性部分に塗工液を吐出させた基板を130℃のホットプレート上に置き、カラーフィルターの上面から20mmのギャップを設けた位置から、0.45m/secの風速の空気を基板全面に3分間吹き付けた。次いで、紫外線で硬化させた後、230℃のオーブンで1時間焼成しカラーフィルターを作製した。
【0121】
6.塗膜の表面形状
このようにして形成されたカラーフィルター層の表面は平坦であり、膜厚を測定した結果、カラーフィルター1画素内の中心の膜厚0.53μm(D1)に対して、中心から端までの幅の中心から3/4の位置の膜厚は0.51μm(D2)であり、
D1−D2(=0.02)<D1/10(=0.053)
の範囲内にあるものであった。
【0122】
(実施例2)
実施例1と同様に、透明基板上へ親液性パターンを形成し、この親液性パターン親液部にピエゾ型ヘッドからカラーフィルター層形成用塗工液を吐出した。
【0123】
1.塗膜の乾燥
上記インクジェット法により親液性部分に塗工液を吐出させた基板を130℃のホットプレート上に置き、カラーフィルターの上面から10mmのギャップを設けた位置から、エアナイフを10mm/secの速さでカラーフィルター塗布方向に沿って基板面内を往復させながら1.5mm/secの風速の空気を吹き付けた。紫外線で硬化させた後、230℃のオーブンで1時間焼成しカラーフィルターを作製した。
【0124】
2.塗膜の表面形状
このようにして形成されたカラーフィルター層の表面は平坦であり、膜厚を測定した結果、カラーフィルター1画素内の中心の膜厚0.50μm(D1)に対して、中心から端までの幅の中心から3/4の位置の膜厚は0.49μm(D2)であり、
D1−D2(=0.01)<D1/10(=0.05)
の範囲内にあるものであった。
【0125】
(比較例1)
塗膜の乾燥を130℃ホットプレートのみで行い、揮発した溶媒の拡散速度を実施例1と比較して遅くした以外は実施例1と同様にパターンの形成を行った。膜厚を測定した結果、形成されたカラーフィルター層の表面は凸形状であり、カラーフィルター1画素内の膜厚0.55μm(D1)に対して、中心から端までの幅の中心から3/4の位置の膜厚は0.48μm(D2)であり、
D1−D2(=0.07)>D1/10(=0.055)
の範囲内にあるものであった。
【0126】
(比較例2)
塗膜の乾燥時のホットプレート温度を150℃とし、実施例1と同様にパターンの形成を行った。膜厚を測定した結果、形成されたカラーフィルター層の表面は沿って凹形状であり、カラーフィルター1画素内の膜厚0.50μm(D1)に対して、中心から端までの幅の中心から3/4の位置の膜厚は0.56μm(D2)であり、
D2−D1(=0.06)>D1/10(=0.05)
の範囲内にあるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】平坦化された機能層の一例を示す概略断面図である。
【図2】凸形状に形成された機能層の一例を示す概略断面図である。
【図3】凹形状に形成された機能層の一例を示す概略断面図である。
【図4】機能性素子の製造装置の一例を示す概略斜視図である。
【図5】機能性素子の製造装置の他の例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0128】
D1 … 機能層の中心の膜厚
D2 … 機能層の中心から端までの幅の中心から3/4の位置の膜厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒を含む機能層形成用塗工液を基材上に塗布した後、乾燥させて固化させる乾燥工程を有する機能性素子の製造方法において、製造される機能層の平坦性を得るために、予め製造された機能層の形状を検査し、中心部が凸形状の場合は、前記乾燥工程における溶媒の揮発速度を速くし、中心部が凹形状の場合は、前記乾燥工程における溶媒の揮発速度を遅くするように制御することを特徴とする機能性素子の製造方法。
【請求項2】
予め製造された機能層の中心の膜厚をD1とし、中心から端までの幅の中心から3/4の位置の膜厚をD2とした場合、前記中心部が凸形状の場合とは、
D1−D2>D1/10
の範囲内にある場合であり、また、前記中心部が凹形状の場合とは、
D2−D1>D1/10
の範囲内にある場合であることを特徴とする請求項1に記載の機能性素子の製造方法。
【請求項3】
前記機能層形成用塗工液が、吐出法により塗布されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の機能性素子の製造方法。
【請求項4】
前記吐出法は、インクジェット法であることを特徴とする請求項3に記載の機能性素子の製造方法。
【請求項5】
前記溶媒の揮発速度を速くする方法が、基材上に塗布された機能層形成用塗工液に対して送風する方法であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の機能性素子の製造方法。
【請求項6】
前記溶媒の揮発速度を速くする方法が、さらに加熱を行う方法であることを特徴とする請求項5に記載の機能性素子の製造方法。
【請求項7】
前記機能層は、有機エレクトロルミネッセント素子の発光層、カラーフィルターの着色層、または、色変換フィルターの色変換層であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の機能性素子の製造方法。
【請求項8】
吐出法により塗工液を塗布する塗布手段と、前記塗布手段により塗布された塗工液を送風しながら乾燥させる乾燥手段とを有することを特徴とする機能性素子の製造装置。
【請求項9】
前記送風しながら乾燥させる乾燥手段が、薄く平面状に噴出させた空気を一定方向に移動させながら送風するエアナイフ方式であることを特徴とする請求項8に記載の機能性素子の製造装置。
【請求項10】
前記送風しながら乾燥させる乾燥手段が、上面から空気を吹き付けるダウンフロー方式であることを特徴とする請求項8に記載の機能性素子の製造装置。
【請求項11】
基材側から熱を加える加熱手段を有することを特徴とする請求項8から請求項10までのいずれかの請求項に記載の機能性素子の製造装置。
【請求項12】
前記加熱手段が、ホットプレートまたは遠赤外線ヒーターであることを特徴とする請求項11に記載の機能性素子の製造装置。
【請求項13】
前記塗布手段はインクジェット装置であることを特徴とする請求項8から請求項12までのいずれかの請求項に記載の機能性素子の製造装置。
【請求項14】
前記機能性素子が、有機エレクトロルミネッセント素子、カラーフィルター、または、色変換フィルターであることを特徴とする請求項8から請求項13までのいずれかの請求項に記載の機能性素子の製造装置。
【請求項15】
基材と、前記基材上に形成された、塗工液との接触角が小さい濡れ性を呈する親液性領域および塗工液との接触角が前記親液性領域よりも大きい濡れ性を呈する撥液性領域を有するパターン形成層と、前記パターン形成層の親液性領域上に形成された機能層とを少なくとも有する機能性素子において、前記機能層は、機能層の中心の膜厚をD1とし、中心から端までの幅の中心から3/4の位置の膜厚をD2とした場合、
|D1−D2|≦D1/10
の範囲内の平坦性を有することを特徴とする機能性素子。
【請求項16】
前記パターン形成層は、エネルギー照射により表面の濡れ性が変化する濡れ性変化層からなることを特徴とする請求項15に記載の機能性素子。
【請求項17】
前記濡れ性変化層は、光触媒を有することを特徴とする請求項16に記載の機能性素子。
【請求項18】
前記機能層はインクジェット法により形成されていることを特徴とする請求項15から請求項17までのいずれかの請求項に記載の機能性素子。
【請求項19】
前記機能性素子には、機能層の平均膜厚よりも高い隔壁が形成されていないことを特徴とする請求項15から請求項18までのいずれかの請求項に記載の機能性素子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出法により塗工液を塗布する塗布手段と、前記塗布手段により塗布された塗工液を送風しながら乾燥させる乾燥手段とを有することを特徴とする機能性素子の製造装置。
【請求項2】
前記送風しながら乾燥させる乾燥手段が、薄く平面状に噴出させた空気を一定方向に移動させながら送風するエアナイフ方式であることを特徴とする請求項1に記載の機能性素子の製造装置。
【請求項3】
前記送風しながら乾燥させる乾燥手段が、上面から空気を吹き付けるダウンフロー方式であることを特徴とする請求項1に記載の機能性素子の製造装置。
【請求項4】
基材側から熱を加える加熱手段を有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の機能性素子の製造装置。
【請求項5】
前記加熱手段が、ホットプレートまたは遠赤外線ヒーターであることを特徴とする請求項4に記載の機能性素子の製造装置。
【請求項6】
前記塗布手段はインクジェット装置であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の機能性素子の製造装置。
【請求項7】
前記機能性素子が、有機エレクトロルミネッセント素子、カラーフィルター、または、色変換フィルターであることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の機能性素子の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−341251(P2006−341251A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194059(P2006−194059)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【分割の表示】特願2002−69671(P2002−69671)の分割
【原出願日】平成14年3月14日(2002.3.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】