説明

機能液供給装置のメンテナンス方法、液滴吐出装置のメンテナンス方法、機能液供給装置、液滴吐出装置、電気光学装置の製造方法、電気光学装置、および電子機器

【課題】 機能液タンクからインクジェットヘッドに至る機能液流路に液漏れが生じているか否かを検出可能な機能液供給装置のメンテナンス方法等を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、加圧ポンプ112により機能液タンク81を加圧して、機能液タンク81から機能液滴を吐出する機能液滴吐出ヘッド41に機能液を加圧供給する機能液供給装置23のメンテナンス方法において、機能液タンク112から機能液滴吐出ヘッド41に至る機能液流路に機能液の液漏れが生じているか否かを検出する液漏れ検出工程と、液漏れが検出された場合に、液漏れを報知する液漏れ報知工程と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧ポンプにより機能液タンクを加圧して、機能液タンクから機能液滴を吐出する機能液滴吐出ヘッドに機能液の加圧供給を行う機能液供給装置のメンテナンス方法、液滴吐出装置のメンテナンス方法、機能液供給装置、液滴吐出装置、電気光学装置の製造方法、電気光学装置、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインク供給装置(機能液供給装置)は、エアーポンプを用いてインクタンク(機能液タンク)を加圧することにより、インクタンクに貯留されたインク(機能液)を、インクジェット記録ヘッド(機能液滴吐出ヘッド)に加圧供給している。
【特許文献1】特開2001−162834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、機能液供給装置では、機能液タンクからインクジェットヘッドに至る機能液流路において、機能液チューブと継手との接続不良や機能液チューブの劣化等に起因した機能液の液漏れが生じる可能性がある。液漏れを放置しておくと、装置内部の腐食を招くといった問題が生じると共に、加圧ポンプにより機能液タンクを加圧して機能液を加圧供給する構成の場合では、一見視認できないような僅かな液漏れが、大量の液漏れにつながる惧れがある。
【0004】
そこで、本発明は、機能液タンクからインクジェットヘッドに至る機能液流路に液漏れが生じているか否かを検出可能な機能液供給装置のメンテナンス方法、液滴吐出装置のメンテナンス方法、機能液供給装置、液滴吐出装置、電気光学装置の製造方法、電気光学装置、および電子機器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、加圧ポンプにより機能液タンクを加圧して、機能液タンクから機能液滴を吐出する機能液滴吐出ヘッドに機能液を加圧供給する機能液供給装置のメンテナンス方法において、機能液タンクから機能液滴吐出ヘッドに至る機能液流路に機能液の液漏れが生じているか否かを検出する液漏れ検出工程と、液漏れが検出された場合に、液漏れを報知する液漏れ報知工程と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、加圧ポンプにより機能液タンクを加圧して、機能液タンクから機能液滴を吐出する機能液滴吐出ヘッドに機能液を加圧供給する機能液供給装置において、機能液タンクから機能液滴吐出ヘッドに至る機能液流路に機能液の液漏れが生じているか否かを検出する液漏れ検出手段と、液漏れが検出された場合に、液漏れを報知する液漏れ報知手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
これらの構成によれば、機能液供給装置には、機能液流路に液漏れが生じているか否かを検出することができると共に、液漏れが検出された場合には、液漏れが生じていることをユーザに報知することができる。これにより、ユーザは、機能液流路の液漏れに対して迅速な対処を行うことができると共に、機能液流路の液漏れが放置されることを有効に防止することができ、機能液供給装置を適切な状態に維持することができる。
【0008】
この場合、機能液タンクの機能液供給口には、機能液流路から機能液タンクに機能液が逆流することを防止する逆止弁が設けられており、液漏れ検出工程は、機能液滴吐出ヘッドに機能液を送液していないときに、加圧ポンプの駆動を停止させるポンプ駆動停止工程と、加圧ポンプの駆動停止前または駆動停止後に機能液流路の流路内圧力を測定する第1圧力測定工程と、ポンプ駆動停止工程の後であり、かつ第1圧力測定工程による測定から所定時間経過後に、流路内圧力を検出する第2圧力測定工程と、第1圧力測定工程および第2圧力測定工程による測定結果を比較して、機能液流路に液漏れが生じているか否かを判断する液漏れ判断工程と、を有していることが好ましい。
【0009】
また、この場合、機能液タンクの機能液供給口には、機能液流路から機能液タンクに機能液が逆流することを防止する逆止弁が設けられており、液漏れ検出手段は、機能液滴吐出ヘッドに機能液を送液していないときに、加圧ポンプの駆動を停止させるポンプ駆動停止手段と、加圧ポンプの駆動停止前または駆動停止後に機能液流路の流路内圧力を測定する第1圧力測定手段と、ポンプ駆動停止工程の後であり、かつ第1圧力測定手段による測定から所定時間経過後に、流路内圧力を検出する第2圧力測定手段と、第1圧力測定手段および第2圧力測定手段による測定結果を比較して、機能液流路に液漏れが生じているか否かを判断する液漏れ判断手段と、を有していることが好ましい。
【0010】
これらの構成によれば、逆止弁により機能液タンクに機能液流路内の機能液が逆流することがないため、加圧ポンプの駆動停止状態で機能液滴吐出ヘッドに送液していないときに生じる流路内圧力の低下は、機能液流路からの液漏れが原因として想定される。したがって、機能液滴吐出ヘッドに機能液を送液していないときに、(第1圧力測定工程/手段により測定した)第1流路内圧力と、第1流路内圧力の測定から時間間隔をおいて(第2圧力測定工程/手段により測定した)第2流路内圧力と、を比較することにより、液漏れの有無を的確に判断することができる。
【0011】
この場合、第1流路内圧力の測定時の環境温度を測定する第1環境温度測定工程と、第2流路内圧力の測定時の環境温度を測定する第2環境温度測定工程と、をさらに備え、液漏れ判断工程は、第1流路内圧力および前記第2流路内圧力の測定時における温度変化を加味して、第1流路内圧力と第2流路内圧力との比較を行なうことが好ましい。
【0012】
また、この場合、第1流路内圧力の測定時の環境温度を測定する第1環境温度測定手段と、第2流路内圧力の測定時の環境温度を測定する第2環境温度測定手段と、をさらに備え、液漏れ判断手段は、第1流路内圧力および第2流路内圧力の測定時における温度変化を加味して、第1流路内圧力と第2流路内圧力との比較を行なうことが好ましい。
【0013】
これらの構成によれば、第1流路内圧力および第2流路内圧力の測定時における温度変化を加味して、第1流路内圧力と第2流路内圧力との比較を行ない、液漏れの判断が行われる。すなわち、温度変化による機能液の熱膨張を考慮して液漏れの判断が行われるため、異なる温度条件下で第1流路内圧力および第2流路内圧力が測定された場合であっても、正確な液漏れ判断を行うことが可能である。
【0014】
本発明は、加圧ポンプにより機能液タンクを加圧して、機能液タンクから機能液滴を吐出する機能液滴吐出ヘッドに機能液を加圧供給する機能液供給装置を備え、描画対象物に対して、機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、機能液滴吐出ヘッドを吐出駆動することにより機能液滴を吐出させて、描画を行う液滴吐出装置のメンテナンス方法において、上記のいずれかに記載の機能液供給装置のメンテナンス方法を用いて、前記機能液供給装置をメンテナンスすることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、加圧ポンプにより機能液タンクを加圧して、機能液タンクから機能液滴を吐出する機能液滴吐出ヘッドに機能液を加圧供給する機能液供給装置を備え、描画対象物に対して、機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、機能液滴吐出ヘッドを吐出駆動することにより機能液滴を吐出させて、描画を行う液滴吐出装置において、機能液供給装置は、上記のいずれかに記載の機能液供給装置であることを特徴とする。
【0016】
これらの構成によれば、機能液供給装置を構成する機能液流路に液漏れが生じているか否かを検出することができると共に、液漏れが生じている場合にはその旨報知されるため、機能液の液漏れに対して適切な対処を行うことが可能である。したがって、液漏れが放置されることを防止して、液漏れを起因とした装置内部の腐食を有効に防止することができると共に、装置のメンテナンスを効率よく行うことができ、結果的に効率的に描画対象物に対して描画を行うことができる。
【0017】
この場合、第1圧力測定工程は、機能液滴吐出ヘッドからの機能液消費が終了する毎に、機能液流路の流路内圧力を測定し、第2圧力測定工程は、装置の稼動開始直後かつ加圧ポンプの駆動開始前に、第2流路内圧力を測定しており、液漏れ判断工程は、装置の稼動開始直近に行われた第1圧力測定工程の測定結果を第1流路内圧力として、前第2流路内圧力と比較することが好ましい。
【0018】
また、この場合、第1圧力測定手段は、機能液滴吐出ヘッドからの機能液消費が終了する毎に、機能液流路の流路内圧力を測定し、第2圧力測定手段は、装置の稼動開始直後かつ加圧ポンプの駆動開始前に、第2流路内圧力を測定しており、液漏れ判断手段は、装置の稼動開始直近に行われた第1圧力測定手段の測定結果を第1流路内圧力として、第2流路内圧力と比較することが好ましい。
【0019】
これらの構成によれば、装置の稼動停止直前に行われた、機能液滴吐出ヘッドからの機能液消費後の流路内圧力を第1流路内圧力とし、この第1流路内圧力と、装置の稼動開始直後かつ加圧ポンプが駆動開始前に測定された第2流路内圧力と、を比較することにより、液漏れ検出を行うことができる。すなわち、装置の非稼動時に加圧ポンプが停止されることを利用して、液漏れ検出を行うことができる。また、装置の非稼動時間は比較的長いため、微少な液漏れであっても機能液流路の圧力変化として顕在し易く、より微少な液漏れを検出することが可能となる。
【0020】
この場合、液漏れ検出工程により、液漏れが検出された場合には、加圧ポンプの駆動開始をキャンセルする駆動キャンセル工程をさらに備えることが好ましい。
【0021】
また、この場合、液漏れが検出された場合には、加圧ポンプの駆動開始をキャンセルする駆動キャンセル手段をさらに備えることが好ましい。
【0022】
この場合、液漏れが検出された場合には、加圧ポンプの駆動が為されることがなく、機能液の加圧供給が為されないため、機能液の大量液漏れを有効に防止することができる。
【0023】
本発明の電気光学装置の製造方法は、上記した液滴吐出装置を用い、描画対象物となる基板上に機能液滴による成膜部を形成することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の電気光学装置は、上記した液滴吐出装置を用い、描画対象物となる基板上に機能液滴による成膜部を形成したことを特徴とする。
【0025】
これらの構成によれば、適切にメンテナンスを行うことができ、効率的に描画を行うことができる液滴吐出装置を用いて製造されるため、電気光学装置を効率的に製造することが可能となる。なお、電気光学装置(フラットパネルディスプレイ)としては、カラーフィルタ、液晶表示装置、有機EL装置、PDP装置、電子放出装置等が考えられる。なお、電子放出装置は、いわゆるFED(Field Emission Display)やSED(Surface-conduction Electron-Emitter Display)装置を含む概念である。さらに、電気光学装置としては、金属配線形成、レンズ形成、レジスト形成および光拡散体形成等を包含する装置が考えられる。
【0026】
本発明の電子機器は、上記した電気光学装置を搭載したことを特徴とする。
【0027】
この場合、電子機器としては、いわゆるフラットパネルディスプレイを搭載した携帯電話、パーソナルコンピュータのほか、各種の電気製品がこれに該当する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照して、本発明の第1実施形態にかかり、液滴吐出装置の一種であるインクジェットプリンタについて説明する。このインクジェットプリンタは、パソコン等のホストコンピュータに接続して用いる大型カラープリンタであり、ホストコンピュータから転送された印刷データに基づいて、インクジェット方式により印刷対象物となるロール紙に印刷を行うものである。
【0029】
図1および図2に示すように、インクジェットプリンタ1は、インクジェットヘッド41(後述する)を有するプリンタ本体2と、プリンタ本体2を支持する支持スタンド3と、を備えている。
【0030】
プリンタ本体2は、装置ケース11で外郭を覆われており、その上部後方には、ロール紙Rを着脱させるためのロール紙カバー12が開閉自在に設けられていると共に、ロール紙カバー12の前方からプリンタ本体2の正面にかけては、内部を大きく開放する開閉カバー13が着脱自在に設けられている。また、装置ケース11には、インクカートリッジ81を着脱するためのカートリッジカバー17も形成されている。さらに、プリンタ本体2の正面には、印刷済みのロール紙Rを排紙させる排紙口14が、開閉カバー13の下側に位置して形成されている。
ロール紙カバー12の内側には、ロール紙Rを着脱自在に収容するロール紙収容部15が形成され、ロール紙Rを装填してこれを繰出す繰出しリール16が設けられている。
一方、開閉カバー13の内側には、繰出されたロール紙Rを排紙口14まで送る送り経路(図示省略)が形成されており、この送り経路に沿って、ロール紙Rに印刷を行うための印刷手段21が設けられている。
【0031】
このインクジェットプリンタ1は、基本的な構成として、インクジェットヘッド41を有し、ロール紙Rに印刷を行うための印刷手段21と、ロール紙Rを送り経路に沿って送る送り手段22と、インクカートリッジ81を有し、インクジェットヘッド41にインクを供給するインク供給手段23と、インクジェットヘッド41のメンテナンスに供するメンテナンス手段24と、これら各手段を相互に関連させながら制御することにより、インクジェットプリンタ1全体を制御する制御手段25と、を備えている(図7参照)。そして、インク供給手段23によりインクジェットヘッド41にインクを供給しながら、印刷手段21および送り手段22を同期して駆動させることにより、ロール紙Rに画像を印刷するようになっている。
【0032】
印刷手段21は、インクジェットヘッド41を搭載したヘッドユニット31と、ヘッドユニット31を移動自在に支持し、ヘッドユニット31を移動させるヘッド移動機構32と、を備えている。
【0033】
ヘッドユニット31は、インク(滴)を吐出する複数のインクジェットヘッド41をキャリッジ42に搭載して構成されている。図3に示すように、インクジェットヘッド41は、インク供給手段23からインクの供給を受ける接続針52が設けられたインク導入部51と、インク導入部51の下方に連なり、供給されたインクを吐出させるためのヘッド本体53と、を備えている。ヘッド本体53は、多数(360個)の吐出ノズル57が開口したノズル面56を有するノズルプレート54およびピエゾ圧電素子が組み込まれたケース55から構成されており、インクジェットヘッド41では、ケース55内のピエゾ圧電素子の収縮により吐出ノズル57からインク滴を吐出するようになっている。
【0034】
なお、図3に示した本実施形態のインクジェットヘッド41は、いわゆる2連のものであり、インク導入部51には、個別にインクが供給される2つの接続針52が設けられていると共に、ノズルプレート54(ノズル面56)には、各接続針52からインクが個別に供給されるノズル列が2列形成されている。各ノズル列は、多数(180個)の吐出ノズル57を等ピッチに配置させたものであり、相互に半ピッチ(約70μm)分位置ずれして形成されている。したがって、インクジェットヘッド41では、各ノズル列に異なる種類のインクを供給して、2種類のインクを吐出させることも可能であるし、2列のノズル列を合わせ、半ピッチ間隔でインクを吐出させる(高解像度の描画を行わせる)ことも可能である。
【0035】
キャリッジ42は、複数のインクジェットヘッド41を位置決めした状態で保持しており、複数のインクジェットヘッド41をキャリッジ42に位置決め固定すると、キャリッジ42には、各インクジェットヘッド41のノズル列から成る所定の描画ラインが形成される。描画ラインとは、ロール紙Rの送り方向(Y軸方向)に連続し、かつ同一色のインクが供給されるノズル列(吐出ノズル57)の並びであり、本実施形態では、インク供給手段23で供給される4色(4個)のインクに対応して、キャリッジ42上に4本の描画ラインが形成されるようになっている。
【0036】
ヘッド移動機構32は、ヘッドユニット31(キャリッジ42)をロール紙Rの送り方向(Y軸方向)に直交するX軸方向(主走査方向)に移動させるためのものであり、キャリッジモータ(図示省略)と、キャリッジモータの動力を伝達してヘッドユニット31をX軸方向に移動させる動力伝達機構(図示省略)と、ヘッドユニット31をX軸方向に対してスライド自在に支持すると共に、X軸方向に延在してその移動をガイドするガイド部材62と、を備えている。
【0037】
キャリッジモータは、正逆回転可能なDCサーボモータで構成されている。動力伝達機構は、一対のプーリと、一対のプーリ間に架け渡され、送り経路に対してインクジェットヘッド41のノズル面56が平行となるようにキャリッジ42の基部を固定したタイミングベルトと、を有している(いずれも図示省略)。一方のプーリにはキャリッジモータが接続されており、キャリッジモータが正逆回転すると、タイミングベルトを介してヘッドユニット31に動力が伝達され、ガイド部材62を案内にして、キャリッジ42がX軸方向に往復動する。
【0038】
なお、ヘッド移動機構32は、予め設定されたヘッド移動領域64内でヘッドユニット31を往復動させるように構成されている。本実施形態では、ヘッド移動領域64の図示右側の端に当たる位置が、ヘッドユニット31のホーム位置に設定されており、この位置を基準位置として、ヘッドユニット31の移動位置が把握される。
【0039】
具体的には、インクジェットプリンタ1には、ヘッドユニット31のホーム位置を検出するホーム位置検出センサ65が設けられていると共に、キャリッジ42に搭載されたフォトセンサと、ガイド部材62に並設され、X軸方向に延在するリニアスケールと、から成るX軸リニアエンコーダー66が設けられており、ホーム位置検出センサでヘッドユニット31のホーム位置を検出してから、フォトセンサでリニアスケールに設けられた多数の検出線を順次検出していくことにより、ヘッド移動領域64内を移動するヘッドユニット31の移動位置を把握するようになっている。
【0040】
送り手段22は、ロール紙収容部15に収容されたロール紙Rを繰り出すと共に、繰出したロール紙Rを送り経路に沿って送るためのものであり、ロール紙Rを繰出し送りするための駆動源となる送りモータ(図示省略)と、送り経路に臨んで配設されると共に、動力伝達機構(図示省略)を介して送りモータに接続され、ロール紙Rを繰出し送りする送りローラ(図示省略)と、を備えている。なお、ヘッド移動領域64内には、セットされたロール紙Rの幅に対応して印刷領域が設定されており、ロール紙Rは、送り手段22によりこの印刷領域を通過するように送られてゆく。
【0041】
このインクジェットプリンタ1では、ヘッド移動機構32を駆動してヘッドユニット31をX軸方向に移動させながら、複数のインクジェットヘッド41を選択的に駆動することにより、ロール紙Rにインク滴を吐出させる主走査と、送り手段22を駆動して行われるロール紙Rの送りである副走査と、を繰り返し行うことにより、ロール紙Rに所望の画像を描画させてゆく。
【0042】
図4に示すように、インク供給手段23は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(B)のインクをそれぞれ貯留した4個のインクカートリッジ81と、4個のインクカートリッジ81を収容するカートリッジホルダ82と、各インクカートリッジ81にエアーを供給することによりインクカートリッジ81を加圧して、各インクカートリッジ81のインクを加圧送液させる加圧手段83と、(4個の)インクカートリッジ81と(複数の)インクジェットヘッド41とを配管接続するチューブユニット84と、を備えている。
【0043】
図5に示すように、各インクカートリッジ81は、インクを貯留したインクパック91と、インクパック91を収容したカートリッジケース93と、を有している。インクパック91は、2枚の長方形の(可撓性の)フィルムシートを重ね合わせて熱溶着した袋状のものに、インクを供給する樹脂製の供給口92を取り付けたものであり、変形可能に構成されている。カートリッジケース93は、インクパック91を密閉状態で収容していると共に、加圧手段83のエアー配管113(後述する)に連通するエアー供給口(図示省略)が設けられている。すなわち、エアー供給口がカートリッジケース93内にエアーを供給すると、インクパック91の周囲にエアーが供給され、インクパックを外側から加圧する。
【0044】
カートリッジホルダ82は、インクジェットヘッド41のノズル面よりも低い位置に固定的に設置されている。カートリッジホルダ82は、所定の色のインクカートリッジ81を装着するための4個のカートリッジ装着部101を有している。各カートリッジ装着部101には、接続アダプタ(図示省略)が設けられており、カートリッジ装着部101にインクカートリッジ81を装着すると、接続アダプタを介して、エアー配管113とカートリッジケース93とが気密状態に接続される。
【0045】
加圧手段83は、各インクカートリッジ81(カートリッジケース93)にエアーを供給するエアー供給機構111を備えている。エアー供給機構111は、エアーを各インクカートリッジ81に供給して、これを加圧する単一の加圧ポンプ112と、加圧ポンプ112および各インクカートリッジ81を接続するエアー配管113(エアー流路)と、エアー配管113に介設したレギュレータ114と、レギュレータ114の下流側に位置するエアー配管113に介設され、エアー流路内の圧力を検出することにより、インクパック91に作用する加圧力を検出する圧力センサ115と、を備えている。
【0046】
加圧ポンプ112は、ダイヤフラム式のものが用いられており、ポンプ室の一部を構成するダイヤフラムに対して、動力伝達機構を介してポンプモータ(ステッピングモータ)の動力を伝達することにより、ポンプ室の容積を増減させて、エアーの吸い込み・供給を行っている(いずれも図示省略)。加圧ポンプ112を駆動すると、エアー配管113を介してエアーが供給され、カートリッジケース93内が加圧される。これにより、インクカートリッジ81に収容されたインクパック91が加圧され、インクパック91に貯留するインクが加圧供給される。
【0047】
エアー配管113は、一端を加圧ポンプ112に接続されていると共に、他端は各カートリッジ装着部101に配設された4個の接続アダプタを直列に接続しており、単一の加圧ポンプ112から供給されるエアーを、接続アダプタを介して4個の各インクカートリッジ81(カートリッジケース93)に供給する。
【0048】
レギュレータ114は、加圧ポンプ112のエアー供給に起因して、エアー流路内の圧力(カートリッジケース93の加圧力)が予め設定した所定の上限圧力を超えないようにするための安全弁(逃がし弁)である。なお、レギュレータ114には、ソレノイド114aが設けられており、インクジェットプリンタ1の非稼動時等には、エアー流路内を大気開放するように構成されている。
【0049】
圧力センサ115は、フォトカプラ等で構成されたON/OFFセンサであり、エアー流路内の圧力が設定圧力に達しているか否かを検出する。詳細は後述するが、圧力センサ115は、制御手段25に接続されており、圧力センサ115の検出結果に基づいて、制御手段25が加圧ポンプ112を駆動することにより、インクカートリッジ81から供給されるインクのインク供給圧力が所定の作動圧力内に保たれる。
【0050】
チューブユニット84は、その一端がインクジェットヘッド41の接続針52に接続され、他端がインクカートリッジ81の供給口92に接続されて、インク流路を形成した複数本(本実施形態では4本)の給液チューブ84aと、給液チューブ84a同士を連結(接続)させるための継手(図示省略)と、を有している。4本の給液チューブ84aは、図外のケーブル担持体(ケーブルベア:登録商標)にまとめて収容されており、ヘッドユニット31(キャリッジ42)の移動に追従にして移動する。
【0051】
なお、チューブユニット84の近傍には、サーミス等で構成され、環境温度を測定する温度センサ85が配設されている。また、各給液チューブ84aには、インクカートリッジ81の供給口92の直近に位置して給液チューブ84a(インク流路)からインクカートリッジ81にインクが逆流することを防止する逆止弁86が介設されていると共に、当該給液チューブ84aを送液されるインクの圧力(流路内圧力)を測定する液圧測定センサ87が介設されている(図4参照)。
【0052】
なお、図4に示すように、インクジェットヘッド41を搭載したキャリッジ42には、インクカートリッジ81から供給されるインクの圧力を調整するための複数の圧力調整弁121が搭載されており、給液チューブ84aには、圧力調整弁121が介設されている。
【0053】
図6に示すように、圧力調整弁121は、バルブハウジング122内に、インクカートリッジ81に連なる1次室123と、インクジェットヘッド41に連なる2次室124と、1次室123および2次室124を連通する連通流路125とを形成したものであり、2次室124の1の面には外部に面してダイヤフラム126(樹脂フィルム)が設けられ、連通流路125にはダイヤフラム126により開閉動作する弁体127が設けられている。
【0054】
インクカートリッジ81から1次室123に導入された機能液は、2次室124を介してインクジェットヘッド41に供給されるが、このとき、ダイヤフラム126に作用する大気圧が調整基準圧力として、連通流路125に設けられた弁体127を開閉させることにより、2次室124内の圧力調整が行われる。この場合、弁座となる2次室124側の連通流路の開口縁に離接する弁体本体127aと、ダイヤフラム126と、の面積比に応じて、インクパック91側(1次側)のインクの圧力変動を抑えることができるため、インクジェットヘッド41には、圧力変動の極めて少ない安定した圧力のインクを供給可能である。すなわち、インクカートリッジ81から供給されるインクの供給圧は、所定の作動圧力に保たれているが、この圧力調整弁121により、さらにその圧力変動量を小さくすることが可能である。また、インクパック91側で発生するインクの脈動等も、弁体127で縁切りされるため、これを吸収することが可能である(ダンパー機能)。
【0055】
メンテナンス手段24は、インクジェットヘッド41を吸引する吸引手段131と、インクジェットヘッド41からの吐出を受けるためのフラッシング手段132と、を備えている。
【0056】
吸引手段131は、インクジェットヘッド41のノズル面に密着可能に構成したキャップ141を介して、インクジェットヘッド41に吸引ポンプ等からの吸引力を作用させることにより、吐出ノズル57からインクを強制的に排出させるものであり、吐出ノズル57の目詰まりを解消/防止するために用いられる。また、吸引手段131(のキャップ141)は、インクジェットヘッド41を保管するためにも用いられ、インクジェットプリンタ1の非稼動時には、キャップ141をインクジェットヘッド41のノズル面56に密着させて、吐出ノズル57の乾燥を防止する。なお、吸引手段131は、ホーム位置に臨んで配設されており、ホーム位置に臨んだヘッドユニット31のインクジェットヘッド41に対してキャップ141を密着させることができるようになっている(図4参照)。
【0057】
フラッシング手段132は、インクジェットヘッド41からの吐出を受けるフラッシング受け部151を有している。フラッシング受け部151は、吸引手段131の設置領域を除いた上記のヘッド移動領域64に亘り、インクジェットヘッド41の移動軌跡を包含するように設けられた凹溝であり、ヘッドユニット31がいずれの位置に臨んでも、インクジェットヘッド41からの吐出を受けるように構成されている。これにより、インクジェットヘッド41から捨て吐出されたインク滴はもちろんのこと、ロール紙Rの端からはみ出したインク滴もフラッシング受け部151で受けられるようになっている(図4参照)。
【0058】
なお、ここにいう「捨て吐出」とは、インクジェットヘッド41の吐出ノズル57内で(気化等により)粘度が増したインクを排出すると共に、吐出ノズル57に状態の良い新たなインクを供給するために、インクジェットヘッド41の(全)吐出ノズル57からインクを吐出させるものであり、捨て吐出を行うことにより、インクジェットヘッド41を適切な状態に維持することができるようになっている。
【0059】
制御手段25は、インクジェットプリンタ1の各手段に接続されており、インクジェットプリンタ1全体を統括的に制御している。また、制御手段25には、ユーザとのインタフェースとして、ディスプレイ(図示省略)や各種インジケータ等が備えられている。
【0060】
次に、図7を参照して、インクジェットプリンタ1の主制御系について説明する。同図に示すように、インクジェットプリンタ1は、プリンタインタフェース161を有し、ホストコンピュータから送信された印刷データ(画像データや印刷制御データ)および各種指令を入力すると共に、インクジェットプリンタ1内部における各種データをホストコンピュータに出力するためのデータ入出力部162と、上記したX軸リニアエンコーダー66やホーム位置検出センサ65、圧力センサ115、温度センサ85、液圧測定センサ87等を有し、各種検出を行う検出部163と、印刷手段21および送り手段22を有し、ロール紙Rに印刷を行うための印刷部164と、インク供給手段23を有し、インクを加圧供給するためのインク供給部165と、メンテナンス手段24を有し、インクジェットヘッド41を保守するためのメンテナンス部168と、インクジェットヘッド41を駆動するヘッドドライバ171や、キャリッジモータを駆動するキャリッジモータドライバ172、送りモータを駆動する送りモータドライバ173、加圧ポンプ112を駆動するためのポンプ駆動ドライバ174等、各部を駆動する各種ドライバを有する駆動部166と、これら各部に接続され、インクジェットプリンタ1全体の制御を行う制御部167と、を備えている。
【0061】
制御部167は、一時的に記憶可能な記憶領域を有する他、制御処理のための作業領域として使用されるRAM181と、各種記憶領域を有し、制御プログラムや制御データ(色変換テーブルや文字修飾テーブル等)を記憶するROM182と、各種データを演算処理するCPU183、周辺回路とのインタフェース信号を取り扱うための論理回路が組み込まれると共に、時間制御を行うためのタイマー185が組み込まれた周辺制御回路(P−CON)184、これらを互いに接続するバス186、が備えられている。
【0062】
なお、RAM181には、後述の追い加圧算出方法で用いられる各種データ(例えば、カートリッジケース93の加圧可能容積、単位インク滴数あたりのインク体積等)が記憶されていると共に、各吐出ノズル57から吐出されたインク滴数をカウントするインク滴カウンタ(図示省略)が設けられている。また、ROM182には、加圧ポンプ112を駆動制御するための駆動制御プログラムが記憶されており、追い加圧時間の算出も、この駆動制御プログラムに従って行われる。
【0063】
制御部167では、P−CON184を介して各部から入力された各種データやRAM181内の各種データを、ROM182に記憶された制御プログラム等に従ってCPU183に演算処理させ、その処理結果をP−CON184を介して各部に出力することにより、各部を制御している。
【0064】
例えば、制御部167には、加圧手段83の圧力センサ115が接続されており、制御部167は、圧力センサ115の検出結果に基づいて、エアー供給機構111(加圧ポンプ112)を間欠的に駆動することにより、インクカートリッジ81の加圧力、すなわちインクカートリッジ81から供給するインクの供給圧力を、予め設定した作動圧力(Pmin〜Pmax)内に調整している。
【0065】
より具体的には、圧力センサ115は、作動圧力の下限圧力Pminを検出するように設定されており、初期加圧時も含めて、制御部167は、圧力センサ115が下限圧力Pminを検出した後、加圧ポンプ112の駆動により、加圧力(インクの供給圧力)が作動圧力の下限圧力Pminから作動圧力の上限圧力Pmaxに到達するまでの時間を追い加圧時間T(sec)として算出するようになっている。そして、算出した追い加圧時間、加圧ポンプ112を駆動させることにより、インクカートリッジ81の加圧力を作動圧力に調整している(図8参照)。
【0066】
なお、インクジェットヘッド41には、所定量(体積)の機能液滴の吐出が補償される機能液の圧力として、補償圧力範囲が予め設定されており、上記作動圧力は、この補償圧力範囲を満たすように設定されている。
【0067】
ここで、追い加圧時間算出方法について説明する。本実施形態では、加圧ポンプ112の単位時間当たりのエアー供給量A(ml/sec)と、下限圧力Pminを上限圧力Pmaxに到達させるのに必要な必要エアー量B(ml)と、の商として、追い加圧時間Tを算出するようになっており、追い加圧時間算出方法は、単位時間当たりのエアー供給量Aを測定するエアー供給量測定工程と、必要エアー量Bを算出する必要エアー量算出工程と、測定した単位時間当たりのエアー供給量Aおよび算出した必要エアー量Bに基づいて、追い加圧時間Tを算出する追い加圧時間算出工程と、を備えている。
【0068】
エアー供給量測定工程は、インクジェットプリンタ1の電源をОNしたときなどのように、加圧ポンプ112で大気開放状態のカートリッジケース93を上限圧力Pmaxまで加圧する初期加圧において、カートリッジケース93の加圧力が初期加圧を開始してから下限圧力Pminに到達するまでの到達時間t(sec)と、到達時間tの間に加圧ポンプ112が供給したエアー供給量a(ml)と、を除算して、単位時間当たりのエアー供給量Aを算出する。
【0069】
到達時間tは、制御部167(P−CON184)に組み込まれたタイマー185を用いて、初期加圧のために加圧ポンプ112の駆動を開始してから、圧力センサ115が下限圧力Pminを検出するまでの時間を時間tとして計測する。
【0070】
エアー供給量aは、ボイル・シャルルの法則に従い、初期加圧開始時におけるカートリッジケース93の加圧容積と、到達時間t内における加圧力の圧力変化量と、に基づいて算出する。加圧容積は、カートリッジケース93の加圧可能容積(ml)(すなわちカートリッジケース93の容積からインクエンド時のインクパック91の容積を減算したもの)から初期加圧開始時にインクパック91に残留するインク体積(ml)を減算することにより算出する。この場合、インクパック91に残留するインク体積は、予め設定(記憶)されているインクフル時のインク体積、単位インク滴数あたりのインク体積、およびインクカウンタのカウンタ値に基づいた演算処理により算出される。
【0071】
なお、本実施形態において、エアー供給量測定工程は、インクジェットプリンタ1の電源をОNする毎に行われる。
【0072】
必要エアー量算出工程は、エアー供給量aの算出方法と同様であり、下限圧力Pminが検出されたときのカートリッジケース93の加圧容積Vを算出すると共に、算出した加圧容積Vにおいて、下限圧力が上限圧力Pmaxに到達するのに必要な必要エアー量Bを、ボイル・シャルルの法則に基づいて算出する。
【0073】
追い加圧時間算出工程は、算出した単位時間当たりのエアー供給量Aと算出した必要エアー量Bとを除算して、追い加圧時間Tを算出する。なお、エアー供給量測定工程で算出された単位時間当たりのエアー供給量Aは、RAM181に記憶されるようになっており、初期加圧後は、RAM181に記憶されたエアー供給量Aを用いて追い加圧時間Tを算出するようになっている。この場合、RAM181に記憶されたエアー供給量Aは、エアー供給量測定工程が行われる度に更新される。
【0074】
ところで、インクカートリッジ81からインクジェットヘッド41に至るインク流路には、給液チューブ84の劣化や給液チューブ84と継手との接続不良に起因して液漏れが生じることがある。この場合、本実施形態のインクジェットプリンタ1のように、加圧ポンプ112を用いてインクを加圧供給する構成であると、液漏れの視認が困難なごく微少量の液漏れであっても、大量の液漏れにつながる惧れがあり問題となる。そこで、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、温度センサ85および液圧測定センサ87の測定結果に基づいて液漏れ検出を行う液漏れ検出処理が制御部167で行われ、ここで液漏れが検出された場合に液漏れが生じている旨、報知されるようになっている。
【0075】
本実施形態で行われる液漏れ検出処理について説明する。上述したように、本実施形態のインクジェットプリンタ1には、インクカートリッジ81の供給口92直近に逆止弁86が設けられており、加圧ポンプ112を停止させても、描画および捨て吐出に伴うインクジェットヘッド41の駆動や吸引手段131によるインクジェットヘッド41の吸引(以下、描画、捨て吐出、およびインクジェットヘッド41の吸引をまとめてインク消費動作と称する)により、インクジェットヘッド41からインクが消費されることが無く(すなわち、インクジェットヘッド41にインクを送液しない状態で)、かつインク流路に液漏れが生じていなければ、インク流路内の圧力低下は生じない。このことを利用して、液漏れ検出処理では、インクジェットヘッド41からインクが消費されないときに加圧ポンプ112の駆動を停止させ、その停止中に生じるインク流路の圧力変化を検出することにより、液漏れの有無を検出するようになっている。
【0076】
図9を参照して、本実施形態の液漏れ検出処理について具体的に説明する。制御部167は、インク消費動作(S11)が終了する毎に、各インク流路に介設された液圧測定センサ87を用いて、第1流路内圧力となる(4本の)各インク流路の流路内圧力をそれぞれ測定する(第1圧力測定工程)と共に、温度センサ85を用いて、第1環境温度となる流路内圧力測定時の環境温度を測定する(第1環境温度測定工程)(S12)。そして、RAM181の第1流路内圧力データ記憶領域(図示省略)に測定した各流路内圧力を第1流路内圧力P1として記憶させると共に、RAM181の第1環境温度データ記憶領域(図示省略)に測定した環境温度を第1環境温度として記憶させる(S13)。この場合、インク流路の流路内圧力および環境温度が測定される毎に、第1流路内圧力データ記憶領域および第1環境温度データ記憶領域のデータが書き換えられるように構成されており、流路内圧力データ記憶領域および第1環境温度データ記憶領域には、常に最新の測定結果が記憶されている。これらの動作は、インクジェットプリンタ1の電源がOFFされ、装置の稼動が停止するまで繰り返し行われる。
【0077】
インクジェットプリンタ1の使用終了等により、インクジェットプリンタ1の電源がOFF(ポンプ駆動停止工程)(S14)された後、次にインクジェットプリンタ1の電源がONされる(S15)とこれがトリガとして以下の動作を行う。すなわち、上述の初期加圧に先立ち、各インク流路に介設された液圧測定センサ87を用いて、各インク流路の流路内圧力を第2流路内圧力P2として測定する(第2圧力測定工程)と共に、温度センサ85を用いて、第2流路内圧力測定時における環境温度を第2環境温度として測定する(第2環境温度測定工程)(S16)。そして、これらを、RAM181の第2流路内圧力データ記憶領域(図示省略)、および第2環境温度データ記憶領域(図示省略)にそれぞれ記憶させる(S17)。
【0078】
続いて、第1流路内圧力データ記憶領域および第1環境温度データ記憶領域から第1流路内圧力P1および第1環境温度を読み出すと共に、予め設定された所定の演算式にこれらを当てはめ、第1流路内圧力P1を所定の換算温度tc(例えば20℃)下における圧力P1´に換算する。同様に、第2流路内圧力データ記憶領域および第2環境温度データ記憶領域から第2流路内圧力P2および第2環境温度を読み出し、第2流路内圧力P2を(第1流路内圧力換算時と同一の)換算温度tc下における圧力P2´に換算する(S18)。
【0079】
次に、換算後の第1流路内圧力P1´と換算後の第2流路内圧力P2´とを比較し、これに基づいてインク流路における液漏れ有無の判断を行う(液漏れ判断工程)(S19)。例えば、換算後の第1流路内圧力P1´>換算後の第2流路内圧力P2´である場合には、液漏れ有りと判断し、それ以外の場合には、液漏れなしと判断するようにする。
【0080】
そして、液漏れ無しと判断された場合(S20:No)、加圧ポンプ112を駆動して上述の初期加圧を開始させる(S21)。一方、液漏れ有りと判断された場合(S20:Yes)、インク流路に液漏れが生じていることをディスプレイ表示および/またはインジケータ表示により報知し(S22)、初期加圧が行われないよう、加圧ポンプ112の駆動開始をキャンセルさせる(駆動キャンセル工程)(S23)。
【0081】
なお、液漏れ検出処理は、ROM182に記憶されている液漏れ検出処理を実行させるための制御プログラムに従って行われ、請求項にいう「液漏れ検出手段」、「液漏れ報知手段」、「ポンプ駆動停止手段」、「第1圧力測定手段」、「第2圧力測定手段」、「液漏れ判断手段」、「第1環境温度測定手段」、「第2環境温度測定手段」、「駆動キャンセル手段」は、制御部167の各手段が、制御プログラムに従って協働することにより機能している。
【0082】
このように、本実施形態の液漏れ検出処理では、インクジェットプリンタ1の電源をOFFする前に行われた最後のインク消費動作が終了してから、次の電源がONされるまでの時間内に生じる、流路内圧力の圧力変化に基づいて、インク流路の液漏れを検出するようになっている。この場合、電源がOFFされている期間は比較的長く、微量な液漏れであっても流路内圧力の圧力変化として現れるので、視認困難な液漏れも検出可能である。また、液漏れ有無の判断は、電源がONされた後、初期加圧前に行われており、ここで液漏れ有りと判断されれば、初期加圧が行われることがない。したがって、液漏れが生じている状態で、インクカートリッジ81が加圧されることが無く、インクの大量漏れを有効に防止することが可能である。
【0083】
なお、本実施形態では、温度センサ85を設け、環境温度による流路内圧力の圧力変化を加味して、液漏れの有無を判断するようにしたが、温度センサ85は必ずしも必要ではなく、実情に応じて設けるようにすれば良い。例えば、インクの熱膨張率が小さくその影響が無視できる場合や、一定の温度に温度管理された場所にインクジェットプリンタ1が配設される場合等には不要である。
【0084】
また、本実施形態では、電源OFF時に加圧ポンプ112が駆動停止することを利用してインクの液漏れを検出するものであるが、これと略同様の方法でインクの液漏れを検出する液漏れ検出モードを設けることも可能である。この場合、ユーザが所定の操作を行うと、ROM182に記憶された制御プログラムに従い、印刷処理を実行可能な通常モードから、液漏れ検出モードに移行し、液漏れ検出処理を開始させるようにする。ここでの液漏れ検出処理では、例えば、先ず、インク流路の流路内圧力を第1流路内圧力として測定すると共に、第1流路内圧力測定時における環境温度を第1環境温度として測定する。続いて、作動圧力維持のために駆動されていた加圧ポンプ112の駆動を停止させる。加圧ポンプ112の駆動から所定時間が経過した後、インク流路の流路内圧力を第2流路内圧力として測定すると共に、第2流路内圧力測定時における環境温度を第2環境温度として測定する。そして、上述のS18以下と同様の動作を行うようにする。
【0085】
なお、当然のことながら、第1流路内圧力および第1環境温度を測定した後には、(上述の場合と同様に)インク消費動作は行われないようになっている。また、ここでは、加圧ポンプ112の駆動停止前に第1流路内圧力および第1環境温度を測定するようにしているが、加圧ポンプ112の駆動停止後に第1流路内圧力および第1環境温度を測定することも可能である。
【0086】
次に、本発明の第2実施形態にかかる液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、いわゆるフラットディスプレイの製造ラインに組み込まれるものであり、機能材料を溶剤に溶解させた機能液を機能液滴吐出ヘッドに導入し、液滴吐出法(インクジェット法を応用した)により、R(赤)・G(緑)・B(青)の3色から成る液晶表示装置のカラーフィルタの着色層や、有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成するものである。
【0087】
図10に示すように、液滴吐出装置201は、機台202と、機台202上の全域に広く載置され、機能液滴吐出ヘッド252を有する描画装置203と、機台202上で描画装置203に添設させたヘッド保守装置204と、機能液滴吐出ヘッド252に機能液を供給する機能液供給装置205と、各装置を制御する図外の制御装置206と、を備えている。そして、液滴吐出装置201では、制御装置206による制御に基づいて、描画装置203が、図外のワーク移載ロボットから導入されたワークに対して、描画処理を行うと共に、ヘッド保守装置204が機能液滴吐出ヘッド252に対して適宜保守処理(メンテナンス)を行うようになっている。
【0088】
描画装置203は、主走査方向(X軸方向)に延在するX軸テーブル211と、X軸テーブル211に直交するY軸テーブル212と、Y軸テーブル212に移動自在に取り付けられたメインキャリッジ213と、メインキャリッジ213に支持され、(複数の)機能液滴吐出ヘッド252を搭載したヘッドユニット214と、を備えている。
【0089】
X軸テーブル211は、X軸方向の駆動系を構成するX軸モータ(図示省略)駆動のX軸スライダ221に、ワークWをセットするセットテーブル222を移動自在に搭載して構成されている。セットテーブル222は、ワークWを吸着セットする吸着テーブル223と、吸着テーブル223にセットしたワークWの位置をθ軸方向に補正するθテーブル224と、を有している。なお、機台202には、X軸方向を移動するセットテーブル222の移動位置を把握するためのX軸リニアセンサ225が設けられている。
【0090】
Y軸テーブル212は、X軸テーブル211と略同様に構成されており、Y軸方向の駆動系を構成するY軸モータ(図示省略)駆動のY軸スライダ231を有し、メインキャリッジ213をY軸方向に移動自在に搭載している。また、Y軸テーブル212に並設するように、Y軸方向を移動するヘッドユニット214の移動位置を把握するためのY軸リニアセンサ232が設けられている。なお、Y軸テーブル212は、機台202上に立設した左右の支柱235を介して、機台202上に配設されたX軸テーブル211およびヘッド保守装置204を跨ぐように配設されており、X軸テーブル211およびY軸テーブル212が交わるエリアがワークWの描画を行う描画エリア、Y軸テーブル212およびヘッド保守装置204が交わるエリアが機能液滴吐出ヘッド252に対する保守動作を行う保守エリアとなっている。
【0091】
メインキャリッジ213は、ヘッドユニット214を支持するキャリッジ本体241と、キャリッジ本体241を介して、ヘッドユニット214のθ方向に対する位置補正を行うためのθ回転機構242と、θ回転機構242を介して、キャリッジ本体241(ヘッドユニット214)をY軸テーブル212に支持させる略I字状の吊設部材(図示省略)と、で構成されている。
【0092】
ヘッドユニット214は、ヘッドプレート251にヘッド保持部材(図示省略)を介して機能液滴吐出ヘッド252を搭載させて構成されている。機能液滴吐出ヘッド252は、上記したインクジェットヘッド41と同様の方式で構成されているため、ここでの説明は省述する。
【0093】
描画処理時における描画装置203の一連の動作について説明すると、先ず、θ回転機構242を介してヘッドユニット214の位置補正が行われると共に、θテーブル224を介してセットテーブル222にセットされたワークWの位置補正が行われる。次に、X軸テーブル211が駆動して、ワークWを主走査(X軸)方向に往復動させる。ワークWの往動と同期して、複数の機能液滴吐出ヘッド252が駆動し、ワークWに対する機能液滴の選択的な吐出動作が行われる。ワークWの往動が終了すると、Y軸テーブル212が駆動して、ヘッドユニット214を副走査(Y軸)方向に移動させる。そして、ワークWの主走査方向へ復動と機能液滴吐出ヘッド252の駆動が再び行われる。このように、描画処理では、ワークWのX軸方向への移動とこれに同期した機能液滴吐出ヘッド252の吐出駆動(主走査)と、ヘッドユニット214のY軸方向への移動(副走査)と、を交互に繰り返すことにより、ワークWに対して所定の描画パターンを描画してゆく。
【0094】
ヘッド保守装置204は、機台202上に載置された移動テーブル261と、フラッシングユニット262と、吸引ユニット263と、ワイピングユニット264と、を備えている。移動テーブル261は、X軸方向に移動可能に構成されている。吸引ユニット263およびワイピングユニット264は、X軸方向に並んで移動テーブル261上に設置されており、機能液滴吐出ヘッド252の保守時には、移動テーブル261が駆動され、吸引ユニット263およびワイピングユニット264が適宜保守エリアに臨む構成となっている。
【0095】
フラッシングユニット262は、(1枚の)ワークWに対する一連の描画処理中において、ヘッドユニット214の全機能液滴吐出ヘッド252から捨て吐出(フラッシング)される機能液と、描画処理中にワークWからはみ出した機能液を受けるためのものであり、吸着テーブル223のY軸方向に平行な一対の辺(周縁)に沿うように設けられた一対の描画フラッシングボックス271を有している。したがって、吸着テーブル223を介してワークWをX軸方向に往復動させると、(1回の主走査により、ヘッドユニット214がワークWに臨む直前およびヘッドユニット214がワークWから離間した直後のいずれの場合においても)ヘッドユニット214の全機能液滴吐出ヘッド252を順次描画フラッシングボックス271に臨ませることができ、ワークWに対する描画動作の直前・直後に行われる捨て吐出の機能液を適切に受けることができる。
【0096】
吸引ユニット263は、上述の吸引手段131に相当するものであり、機能液滴吐出ヘッド252のノズル面に密着させるキャップ281と、キャップ281を介して機能液滴吐出ヘッド252を吸引可能な単一の吸引ポンプ等を備えている。
【0097】
ワイピングユニット264は、洗浄液を噴霧したワイピングシート291で機能液滴吐出ヘッド252のノズル面に付着した汚れを払拭するためのものであり、ロール状に巻回したワイピングシート291を繰り出しながら巻き取ってゆく巻取りユニット292と、繰り出したワイピングシート291に洗浄液を散布する洗浄液供給ユニット293と、洗浄液が散布されたワイピングシート291でノズル面を拭取る拭取りユニット294と、を備えている。
【0098】
機能液供給装置205は、R・G・B3色の機能液に対応する3個の機能液タンク301と、3個の機能液タンク301を収容するタンクホルダ302と、機能液タンク301の機能液を機能液滴吐出ヘッド252に加圧送液する加圧手段303と3個の機能液タンク301と機能液滴吐出ヘッド252とを配管接続するチューブユニット304と、を備えている。
【0099】
機能液供給装置205は、上述のインク供給手段と略同様に構成されており、機能液タンク301はカートリッジ形式のものが採用されている。タンクホルダ302には、各機能液タンク301を収容する機能液収容部(図示省略)が設けられ、各機能液収容部には、機能液タンク301とエアー配管323とを接続する接続アダプタ(図示省略)が配設されている。チューブユニット304は、能液流路を構成するものであり、機複数本(本実施形態では3本)の給液チューブ304aと、給液チューブ304aを連結するための継手(図示省略)を有している。各給液チューブ304aには、インクジェットプリンタ1と同様に、機能液の逆流防止用の逆止弁311、各給液チューブ304a内の機能液の圧力(流路内圧力)を測定する液圧測定センサ312、機能液滴吐出ヘッド252に供給する機能液の圧力を調整する圧力調整弁313が介設されている。また、チューブユニット304近傍には、環境温度を測定し、液漏れ検出に用いられる温度センサ314が設けられている。加圧手段303は、接続アダプタを介して各機能液タンク301にエアーを供給するエアー供給機構321を有し、エアー供給機構321を構成する単一の加圧ポンプ322を駆動すると、エアー配管323を介して各機能液タンク301にエアーが供給される。この場合も、エアー配管323には、ソレノイド付きレギュレータ324および圧力センサ325が介設されており、エアー配管323内が所定の作動圧力に維持されるように構成されている。
【0100】
制御装置206は、パソコン等で構成され、データ入力、各種設定を行うための入力手段(キーボード等)や、入力データ・各種設定状態等を視認するためのディスプレイ等を備えている(いずれも図示省略)。
【0101】
図11を参照しながら液滴吐出装置201の主制御系について説明する。液滴吐出装置201は、描画装置203を有する描画部331と、ヘッド保守装置204を有するヘッド保守部332と、機能液供給装置205を有する機能液供給部333と、描画装置203、液圧測定センサ312や温度センサ314を含むヘッド保守装置204および機能液供給装置205の各種センサを有し、各種検出を行う検出部334と、各部を駆動する各種ドライバ(描画装置203を駆動するための描画ドライバ341、ヘッド保守装置204を駆動するためのヘッド保守ドライバ342、機能液供給装置を駆動するための機能液供給ドライバ343等)を有する駆動部335と、各部に接続され、液滴吐出装置201全体の制御を行う制御部336(制御装置206)と、を備えている。
【0102】
制御部336は、描画装置203およびヘッド保守装置204等を接続するためのインタフェース351、および描画装置203、ヘッド保守装置204、機能液供給装置205からの各種データ等を記憶すると共に、各種データを処理するためのプログラム等を記憶するハードディスク352が備えられている以外は、上述のインクジェットプリンタ1の制御部336と略同様に構成され、RAM353、ROM354、CPU355、タイマー356、内部バス357と、を備えている。
【0103】
この液滴吐出装置201も、上述のインクジェットプリンタ1と同様の方法で機能液の液漏れを検出する液漏れ検出処理が制御部336で行われ、温度センサ314および液圧測定センサ312の測定結果に基づいて、電源がONされたときに液漏れの有無を判断している。そして、液漏れが生じていると判断された場合には、液漏れが生じていることを報知すると共に、以降の初期加圧をキャンセルし、液漏れ状態で装置が稼動することを防止するようになっている。
【0104】
次に、本実施形態の液滴吐出装置201を用いて製造される電気光学装置(フラットパネルディスプレイ)として、カラーフィルタ、液晶表示装置、有機EL装置、プラズマディスプレイ(PDP装置)、電子放出装置(FED装置、SED装置)、更にこれら表示装置に形成されてなるアクティブマトリクス基板等を例に、これらの構造およびその製造方法について説明する。なお、アクティブマトリクス基板とは、薄膜トランジスタ、及び薄膜トランジスタに電気的に接続するソース線、データ線が形成された基板を言う。
【0105】
先ず、液晶表示装置や有機EL装置等に組み込まれるカラーフィルタの製造方法について説明する。図12は、カラーフィルタの製造工程を示すフローチャート、図13は、製造工程順に示した本実施形態のカラーフィルタ600(フィルタ基体600A)の模式断面図である。
まず、ブラックマトリクス形成工程(S101)では、図13(a)に示すように、基板(W)601上にブラックマトリクス602を形成する。ブラックマトリクス602は、金属クロム、金属クロムと酸化クロムの積層体、または樹脂ブラック等により形成される。金属薄膜からなるブラックマトリクス602を形成するには、スパッタ法や蒸着法等を用いることができる。また、樹脂薄膜からなるブラックマトリクス602を形成する場合には、グラビア印刷法、フォトレジスト法、熱転写法等を用いることができる。
【0106】
続いて、バンク形成工程(S102)において、ブラックマトリクス602上に重畳する状態でバンク603を形成する。即ち、まず図13(b)に示すように、基板601及びブラックマトリクス602を覆うようにネガ型の透明な感光性樹脂からなるレジスト層604を形成する。そして、その上面をマトリクスパターン形状に形成されたマスクフィルム605で被覆した状態で露光処理を行う。
さらに、図13(c)に示すように、レジスト層604の未露光部分をエッチング処理することによりレジスト層604をパターニングして、バンク603を形成する。なお、樹脂ブラックによりブラックマトリクスを形成する場合は、ブラックマトリクスとバンクとを兼用することが可能となる。
このバンク603とその下のブラックマトリクス602は、各画素領域607aを区画する区画壁部607bとなり、後の着色層形成工程において機能液滴吐出ヘッド252により着色層(成膜部)608R、608G、608Bを形成する際に機能液滴の着弾領域を規定する。
【0107】
以上のブラックマトリクス形成工程及びバンク形成工程を経ることにより、上記フィルタ基体600Aが得られる。
なお、本実施形態においては、バンク603の材料として、塗膜表面が疎液(疎水)性となる樹脂材料を用いている。そして、基板(ガラス基板)601の表面が親液(親水)性であるので、後述する着色層形成工程においてバンク603(区画壁部607b)に囲まれた各画素領域607a内への液滴の着弾位置精度が向上する。
【0108】
次に、着色層形成工程(S103)では、図13(d)に示すように、機能液滴吐出ヘッド252によって機能液滴を吐出して区画壁部607bで囲まれた各画素領域607a内に着弾させる。この場合、機能液滴吐出ヘッド252を用いて、R・G・Bの3色の機能液(フィルタ材料)を導入して、機能液滴の吐出を行う。なお、R・G・Bの3色の配列パターンとしては、ストライプ配列、モザイク配列およびデルタ配列等がある。
【0109】
その後、乾燥処理(加熱等の処理)を経て機能液を定着させ、3色の着色層608R、608G、608Bを形成する。着色層608R、608G、608Bを形成したならば、保護膜形成工程(S104)に移り、図13(e)に示すように、基板601、区画壁部607b、および着色層608R、608G、608Bの上面を覆うように保護膜609を形成する。
即ち、基板601の着色層608R、608G、608Bが形成されている面全体に保護膜用塗布液が吐出された後、乾燥処理を経て保護膜609が形成される。
そして、保護膜609を形成した後、カラーフィルタ600は、次工程の透明電極となるITO(Indium Tin Oxide)などの膜付け工程に移行する。
【0110】
図14は、上記のカラーフィルタ600を用いた液晶表示装置の一例としてのパッシブマトリックス型液晶装置(液晶装置)の概略構成を示す要部断面図である。この液晶装置620に、液晶駆動用IC、バックライト、支持体などの付帯要素を装着することによって、最終製品としての透過型液晶表示装置が得られる。なお、カラーフィルタ600は図13に示したものと同一であるので、対応する部位には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0111】
この液晶装置620は、カラーフィルタ600、ガラス基板等からなる対向基板621、及び、これらの間に挟持されたSTN(Super Twisted Nematic)液晶組成物からなる液晶層622により概略構成されており、カラーフィルタ600を図中上側(観測者側)に配置している。
なお、図示していないが、対向基板621およびカラーフィルタ600の外面(液晶層622側とは反対側の面)には偏光板がそれぞれ配設され、また対向基板621側に位置する偏光板の外側には、バックライトが配設されている。
【0112】
カラーフィルタ600の保護膜609上(液晶層側)には、図14において左右方向に長尺な短冊状の第1電極623が所定の間隔で複数形成されており、この第1電極623のカラーフィルタ600側とは反対側の面を覆うように第1配向膜624が形成されている。
一方、対向基板621におけるカラーフィルタ600と対向する面には、カラーフィルタ600の第1電極623と直交する方向に長尺な短冊状の第2電極626が所定の間隔で複数形成され、この第2電極626の液晶層622側の面を覆うように第2配向膜627が形成されている。これらの第1電極623および第2電極626は、ITOなどの透明導電材料により形成されている。
【0113】
液晶層622内に設けられたスペーサ628は、液晶層622の厚さ(セルギャップ)を一定に保持するための部材である。また、シール材629は液晶層622内の液晶組成物が外部へ漏出するのを防止するための部材である。なお、第1電極623の一端部は引き回し配線623aとしてシール材629の外側まで延在している。
そして、第1電極623と第2電極626とが交差する部分が画素であり、この画素となる部分に、カラーフィルタ600の着色層608R、608G、608Bが位置するように構成されている。
【0114】
通常の製造工程では、カラーフィルタ600に、第1電極623のパターニングおよび第1配向膜624の塗布を行ってカラーフィルタ600側の部分を作成すると共に、これとは別に対向基板621に、第2電極626のパターニングおよび第2配向膜627の塗布を行って対向基板621側の部分を作成する。その後、対向基板621側の部分にスペーサ628およびシール材629を作り込み、この状態でカラーフィルタ600側の部分を貼り合わせる。次いで、シール材629の注入口から液晶層622を構成する液晶を注入し、注入口を閉止する。その後、両偏光板およびバックライトを積層する。
【0115】
実施形態の液滴吐出装置201は、例えば上記のセルギャップを構成するスペーサ材料(機能液)を塗布すると共に、対向基板621側の部分にカラーフィルタ600側の部分を貼り合わせる前に、シール材629で囲んだ領域に液晶(機能液)を均一に塗布することが可能である。また、上記のシール材629の印刷を、機能液滴吐出ヘッド252で行うことも可能である。さらに、第1・第2両配向膜624,627の塗布を機能液滴吐出ヘッド252で行うことも可能である。
【0116】
図15は、本実施形態において製造したカラーフィルタ600を用いた液晶装置の第2の例の概略構成を示す要部断面図である。
この液晶装置630が上記液晶装置620と大きく異なる点は、カラーフィルタ600を図中下側(観測者側とは反対側)に配置した点である。
この液晶装置630は、カラーフィルタ600とガラス基板等からなる対向基板631との間にSTN液晶からなる液晶層632が挟持されて概略構成されている。なお、図示していないが、対向基板631およびカラーフィルタ600の外面には偏光板等がそれぞれ配設されている。
【0117】
カラーフィルタ600の保護膜609上(液晶層632側)には、図中奥行き方向に長尺な短冊状の第1電極633が所定の間隔で複数形成されており、この第1電極633の液晶層632側の面を覆うように第1配向膜634が形成されている。
対向基板631のカラーフィルタ600と対向する面上には、カラーフィルタ600側の第1電極633と直交する方向に延在する複数の短冊状の第2電極636が所定の間隔で形成され、この第2電極636の液晶層632側の面を覆うように第2配向膜637が形成されている。
【0118】
液晶層632には、この液晶層632の厚さを一定に保持するためのスペーサ638と、液晶層632内の液晶組成物が外部へ漏出するのを防止するためのシール材639が設けられている。
そして、上記した液晶装置620と同様に、第1電極633と第2電極636との交差する部分が画素であり、この画素となる部位に、カラーフィルタ600の着色層608R、608G、608Bが位置するように構成されている。
【0119】
図16は、本発明を適用したカラーフィルタ600を用いて液晶装置を構成した第3の例を示したもので、透過型のTFT(Thin Film Transistor)型液晶装置の概略構成を示す分解斜視図である。
この液晶装置650は、カラーフィルタ600を図中上側(観測者側)に配置したものである。
【0120】
この液晶装置650は、カラーフィルタ600と、これに対向するように配置された対向基板651と、これらの間に挟持された図示しない液晶層と、カラーフィルタ600の上面側(観測者側)に配置された偏光板655と、対向基板651の下面側に配設された偏光板(図示せず)とにより概略構成されている。
カラーフィルタ600の保護膜609の表面(対向基板651側の面)には液晶駆動用の電極656が形成されている。この電極656は、ITO等の透明導電材料からなり、後述の画素電極660が形成される領域全体を覆う全面電極となっている。また、この電極656の画素電極660とは反対側の面を覆った状態で配向膜657が設けられている。
【0121】
対向基板651のカラーフィルタ600と対向する面には絶縁層658が形成されており、この絶縁層658上には、走査線661及び信号線662が互いに直交する状態で形成されている。そして、これらの走査線661と信号線662とに囲まれた領域内には画素電極660が形成されている。なお、実際の液晶装置では、画素電極660上に配向膜が設けられるが、図示を省略している。
【0122】
また、画素電極660の切欠部と走査線661と信号線662とに囲まれた部分には、ソース電極、ドレイン電極、半導体、およびゲート電極とを具備する薄膜トランジスタ663が組み込まれて構成されている。そして、走査線661と信号線662に対する信号の印加によって薄膜トランジスタ663をオン・オフして画素電極660への通電制御を行うことができるように構成されている。
【0123】
なお、上記の各例の液晶装置620,630,650は、透過型の構成としたが、反射層あるいは半透過反射層を設けて、反射型の液晶装置あるいは半透過反射型の液晶装置とすることもできる。
【0124】
次に、図17は、有機EL装置の表示領域(以下、単に表示装置700と称する)の要部断面図である。
【0125】
この表示装置700は、基板(W)701上に、回路素子部702、発光素子部703及び陰極704が積層された状態で概略構成されている。
この表示装置700においては、発光素子部703から基板701側に発した光が、回路素子部702及び基板701を透過して観測者側に出射されるとともに、発光素子部703から基板701の反対側に発した光が陰極704により反射された後、回路素子部702及び基板701を透過して観測者側に出射されるようになっている。
【0126】
回路素子部702と基板701との間にはシリコン酸化膜からなる下地保護膜706が形成され、この下地保護膜706上(発光素子部703側)に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜707が形成されている。この半導体膜707の左右の領域には、ソース領域707a及びドレイン領域707bが高濃度陽イオン打ち込みによりそれぞれ形成されている。そして陽イオンが打ち込まれない中央部がチャネル領域707cとなっている。
【0127】
また、回路素子部702には、下地保護膜706及び半導体膜707を覆う透明なゲート絶縁膜708が形成され、このゲート絶縁膜708上の半導体膜707のチャネル領域707cに対応する位置には、例えばAl、Mo、Ta、Ti、W等から構成されるゲート電極709が形成されている。このゲート電極709及びゲート絶縁膜708上には、透明な第1層間絶縁膜711aと第2層間絶縁膜711bが形成されている。また、第1、第2層間絶縁膜711a、711bを貫通して、半導体膜707のソース領域707a、ドレイン領域707bにそれぞれ連通するコンタクトホール712a,712bが形成されている。
【0128】
そして、第2層間絶縁膜711b上には、ITO等からなる透明な画素電極713が所定の形状にパターニングされて形成され、この画素電極713は、コンタクトホール712aを通じてソース領域707aに接続されている。
また、第1層間絶縁膜711a上には電源線714が配設されており、この電源線714は、コンタクトホール712bを通じてドレイン領域707bに接続されている。
【0129】
このように、回路素子部702には、各画素電極713に接続された駆動用の薄膜トランジスタ715がそれぞれ形成されている。
【0130】
上記発光素子部703は、複数の画素電極713上の各々に積層された機能層717と、各画素電極713及び機能層717の間に備えられて各機能層717を区画するバンク部718とにより概略構成されている。
これら画素電極713、機能層717、及び、機能層717上に配設された陰極704によって発光素子が構成されている。なお、画素電極713は、平面視略矩形状にパターニングされて形成されており、各画素電極713の間にバンク部718が形成されている。
【0131】
バンク部718は、例えばSiO、SiO2、TiO2等の無機材料により形成される無機物バンク層718a(第1バンク層)と、この無機物バンク層718a上に積層され、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶媒性に優れたレジストにより形成される断面台形状の有機物バンク層718b(第2バンク層)とにより構成されている。このバンク部718の一部は、画素電極713の周縁部上に乗上げた状態で形成されている。
そして、各バンク部718の間には、画素電極713に対して上方に向けて次第に拡開した開口部719が形成されている。
【0132】
上記機能層717は、開口部719内において画素電極713上に積層状態で形成された正孔注入/輸送層717aと、この正孔注入/輸送層717a上に形成された発光層717bとにより構成されている。なお、この発光層717bに隣接してその他の機能を有する他の機能層を更に形成しても良い。例えば、電子輸送層を形成する事も可能である。
正孔注入/輸送層717aは、画素電極713側から正孔を輸送して発光層717bに注入する機能を有する。この正孔注入/輸送層717aは、正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物(機能液)を吐出することで形成される。正孔注入/輸送層形成材料としては、公知の材料を用いる。
【0133】
発光層717bは、赤色(R)、緑色(G)、又は青色(B)の何れかに発光するもので、発光層形成材料(発光材料)を含む第2組成物(機能液)を吐出することで形成される。第2組成物の溶媒(非極性溶媒)としては、正孔注入/輸送層717aに対して不溶な公知の材料を用いることが好ましく、このような非極性溶媒を発光層717bの第2組成物に用いることにより、正孔注入/輸送層717aを再溶解させることなく発光層717bを形成することができる。
【0134】
そして、発光層717bでは、正孔注入/輸送層717aから注入された正孔と、陰極704から注入される電子が発光層で再結合して発光するように構成されている。
【0135】
陰極704は、発光素子部703の全面を覆う状態で形成されており、画素電極713と対になって機能層717に電流を流す役割を果たす。なお、この陰極704の上部には図示しない封止部材が配置される。
【0136】
次に、上記の表示装置700の製造工程を図18〜図26を参照して説明する。
この表示装置700は、図18に示すように、バンク部形成工程(S111)、表面処理工程(S112)、正孔注入/輸送層形成工程(S113)、発光層形成工程(S114)、及び対向電極形成工程(S115)を経て製造される。なお、製造工程は例示するものに限られるものではなく必要に応じてその他の工程が除かれる場合、また追加される場合もある。
【0137】
まず、バンク部形成工程(S111)では、図19に示すように、第2層間絶縁膜711b上に無機物バンク層718aを形成する。この無機物バンク層718aは、形成位置に無機物膜を形成した後、この無機物膜をフォトリソグラフィ技術等によりパターニングすることにより形成される。このとき、無機物バンク層718aの一部は画素電極713の周縁部と重なるように形成される。
無機物バンク層718aを形成したならば、図20に示すように、無機物バンク層718a上に有機物バンク層718bを形成する。この有機物バンク層718bも無機物バンク層718aと同様にフォトリソグラフィ技術等によりパターニングして形成される。
このようにしてバンク部718が形成される。また、これに伴い、各バンク部718間には、画素電極713に対して上方に開口した開口部719が形成される。この開口部719は、画素領域を規定する。
【0138】
表面処理工程(S112)では、親液化処理及び撥液化処理が行われる。親液化処理を施す領域は、無機物バンク層718aの第1積層部718aa及び画素電極713の電極面713aであり、これらの領域は、例えば酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって親液性に表面処理される。このプラズマ処理は、画素電極713であるITOの洗浄等も兼ねている。
また、撥液化処理は、有機物バンク層718bの壁面718s及び有機物バンク層718bの上面718tに施され、例えば4フッ化メタンを処理ガスとするプラズマ処理によって表面がフッ化処理(撥液性に処理)される。
この表面処理工程を行うことにより、機能液滴吐出ヘッド252を用いて機能層717を形成する際に、機能液滴を画素領域に、より確実に着弾させることができ、また、画素領域に着弾した機能液滴が開口部719から溢れ出るのを防止することが可能となる。
【0139】
そして、以上の工程を経ることにより、表示装置基体700Aが得られる。この表示装置基体700Aは、図10に示した液滴吐出装置201のセットテーブル222に載置され、以下の正孔注入/輸送層形成工程(S113)及び発光層形成工程(S114)が行われる。
【0140】
図21に示すように、正孔注入/輸送層形成工程(S113)では、機能液滴吐出ヘッド252から正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物を画素領域である各開口部719内に吐出する。その後、図22に示すように、乾燥処理及び熱処理を行い、第1組成物に含まれる極性溶媒を蒸発させ、画素電極(電極面713a)713上に正孔注入/輸送層717aを形成する。
【0141】
次に発光層形成工程(S114)について説明する。この発光層形成工程では、上述したように、正孔注入/輸送層717aの再溶解を防止するために、発光層形成の際に用いる第2組成物の溶媒として、正孔注入/輸送層717aに対して不溶な非極性溶媒を用いる。
しかしその一方で、正孔注入/輸送層717aは、非極性溶媒に対する親和性が低いため、非極性溶媒を含む第2組成物を正孔注入/輸送層717a上に吐出しても、正孔注入/輸送層717aと発光層717bとを密着させることができなくなるか、あるいは発光層717bを均一に塗布できない虞がある。
そこで、非極性溶媒ならびに発光層形成材料に対する正孔注入/輸送層717aの表面の親和性を高めるために、発光層形成の前に表面処理(表面改質処理)を行うことが好ましい。この表面処理は、発光層形成の際に用いる第2組成物の非極性溶媒と同一溶媒またはこれに類する溶媒である表面改質材を、正孔注入/輸送層717a上に塗布し、これを乾燥させることにより行う。
このような処理を施すことで、正孔注入/輸送層717aの表面が非極性溶媒になじみやすくなり、この後の工程で、発光層形成材料を含む第2組成物を正孔注入/輸送層717aに均一に塗布することができる。
【0142】
そして次に、図23に示すように、各色のうちの何れか(図23の例では青色(B))に対応する発光層形成材料を含有する第2組成物を機能液滴として画素領域(開口部719)内に所定量打ち込む。画素領域内に打ち込まれた第2組成物は、正孔注入/輸送層717a上に広がって開口部719内に満たされる。なお、万一、第2組成物が画素領域から外れてバンク部718の上面718t上に着弾した場合でも、この上面718tは、上述したように撥液処理が施されているので、第2組成物が開口部719内に転がり込み易くなっている。
【0143】
その後、乾燥工程等を行う事により、吐出後の第2組成物を乾燥処理し、第2組成物に含まれる非極性溶媒を蒸発させ、図24に示すように、正孔注入/輸送層717a上に発光層717bが形成される。この図の場合、青色(B)に対応する発光層717bが形成されている。
【0144】
同様に、機能液滴吐出ヘッド252を用い、図25に示すように、上記した青色(B)に対応する発光層717bの場合と同様の工程を順次行い、他の色(赤色(R)及び緑色(G))に対応する発光層717bを形成する。なお、発光層717bの形成順序は、例示した順序に限られるものではなく、どのような順番で形成しても良い。例えば、発光層形成材料に応じて形成する順番を決める事も可能である。また、R・G・Bの3色の配列パターンとしては、ストライブ配列、モザイク配列およびデルタ配列等がある。
【0145】
以上のようにして、画素電極713上に機能層717、即ち、正孔注入/輸送層717a及び発光層717bが形成される。そして、対向電極形成工程(S115)に移行する。
【0146】
対向電極形成工程(S115)では、図26に示すように、発光層717b及び有機物バンク層718bの全面に陰極704(対向電極)を、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等によって形成する。この陰極704は、本実施形態においては、例えば、カルシウム層とアルミニウム層とが積層されて構成されている。
この陰極704の上部には、電極としてのAl膜、Ag膜や、その酸化防止のためのSiO2、SiN等の保護層が適宜設けられる。
【0147】
このようにして陰極704を形成した後、この陰極704の上部を封止部材により封止する封止処理や配線処理等のその他処理等を施すことにより、表示装置700が得られる。
【0148】
次に、図27は、プラズマ型表示装置(PDP装置:以下、単に表示装置800と称する)の要部分解斜視図である。なお、同図では表示装置800を、その一部を切り欠いた状態で示してある。
この表示装置800は、互いに対向して配置された第1基板801、第2基板802、及びこれらの間に形成される放電表示部803を含んで概略構成される。放電表示部803は、複数の放電室805により構成されている。これらの複数の放電室805のうち、赤色放電室805R、緑色放電室805G、青色放電室805Bの3つの放電室805が組になって1つの画素を構成するように配置されている。
【0149】
第1基板801の上面には所定の間隔で縞状にアドレス電極806が形成され、このアドレス電極806と第1基板801の上面とを覆うように誘電体層807が形成されている。誘電体層807上には、各アドレス電極806の間に位置し、且つ各アドレス電極806に沿うように隔壁808が立設されている。この隔壁808は、図示するようにアドレス電極806の幅方向両側に延在するものと、アドレス電極806と直交する方向に延設された図示しないものを含む。
そして、この隔壁808によって仕切られた領域が放電室805となっている。
【0150】
放電室805内には蛍光体809が配置されている。蛍光体809は、赤(R)、緑(G)、青(B)の何れかの色の蛍光を発光するもので、赤色放電室805Rの底部には赤色蛍光体809Rが、緑色放電室805Gの底部には緑色蛍光体809Gが、青色放電室805Bの底部には青色蛍光体809Bが各々配置されている。
【0151】
第2基板802の図中下側の面には、上記アドレス電極806と直交する方向に複数の表示電極811が所定の間隔で縞状に形成されている。そして、これらを覆うように誘電体層812、及びMgOなどからなる保護膜813が形成されている。
第1基板801と第2基板802とは、アドレス電極806と表示電極811が互いに直交する状態で対向させて貼り合わされている。なお、上記アドレス電極806と表示電極811は図示しない交流電源に接続されている。
そして、各電極806,811に通電することにより、放電表示部803において蛍光体809が励起発光し、カラー表示が可能となる。
【0152】
本実施形態においては、上記アドレス電極806、表示電極811、及び蛍光体809を、図10に示した液滴吐出装置201を用いて形成することができる。以下、第1基板801におけるアドレス電極806の形成工程を例示する。
この場合、第1基板801を液滴吐出装置201のセットテーブル222に載置された状態で以下の工程が行われる。
まず、機能液滴吐出ヘッド252により、導電膜配線形成用材料を含有する液体材料(機能液)を機能液滴としてアドレス電極形成領域に着弾させる。この液体材料は、導電膜配線形成用材料として、金属等の導電性微粒子を分散媒に分散したものである。この導電性微粒子としては、金、銀、銅、パラジウム、又はニッケル等を含有する金属微粒子や、導電性ポリマー等が用いられる。
【0153】
補充対象となる全てのアドレス電極形成領域について液体材料の補充が終了したならば、吐出後の液体材料を乾燥処理し、液体材料に含まれる分散媒を蒸発させることによりアドレス電極806が形成される。
【0154】
ところで、上記においてはアドレス電極806の形成を例示したが、上記表示電極811及び蛍光体809についても上記各工程を経ることにより形成することができる。
表示電極811の形成の場合、アドレス電極806の場合と同様に、導電膜配線形成用材料を含有する液体材料(機能液)を機能液滴として表示電極形成領域に着弾させる。
また、蛍光体809の形成の場合には、各色(R,G,B)に対応する蛍光材料を含んだ液体材料(機能液)を機能液滴吐出ヘッド252から液滴として吐出し、対応する色の放電室805内に着弾させる。
【0155】
次に、図28は、電子放出装置(FED装置あるいはSED装置ともいう:以下、単に表示装置900と称する)の要部断面図である。なお、同図では表示装置900を、その一部を断面として示してある。
この表示装置900は、互いに対向して配置された第1基板901、第2基板902、及びこれらの間に形成される電界放出表示部903を含んで概略構成される。電界放出表示部903は、マトリクス状に配置した複数の電子放出部905により構成されている。
【0156】
第1基板901の上面には、カソード電極906を構成する第1素子電極906aおよび第2素子電極906bが相互に直交するように形成されている。また、第1素子電極906aおよび第2素子電極906bで仕切られた部分には、ギャップ908を形成した導電性膜907が形成されている。すなわち、第1素子電極906a、第2素子電極906bおよび導電性膜907により複数の電子放出部905が構成されている。導電性膜907は、例えば酸化パラジウム(PdO)等で構成され、またギャップ908は、導電性膜907を成膜した後、フォーミング等で形成される。
【0157】
第2基板902の下面には、カソード電極906に対峙するアノード電極909が形成されている。アノード電極909の下面には、格子状のバンク部911が形成され、このバンク部911で囲まれた下向きの各開口部912に、電子放出部905に対応するように蛍光体913が配置されている。蛍光体913は、赤(R)、緑(G)、青(B)の何れかの色の蛍光を発光するもので、各開口部912には、赤色蛍光体913R、緑色蛍光体913Gおよび青色蛍光体913Bが、上記した所定のパターンで配置されている。
【0158】
そして、このように構成した第1基板901と第2基板902とは、微小な間隙を存して貼り合わされている。この表示装置900では、導電性膜(ギャップ908)907を介して、陰極である第1素子電極906aまたは第2素子電極906bから飛び出す電子を、陽極であるアノード電極909に形成した蛍光体913に当てて励起発光し、カラー表示が可能となる。
【0159】
この場合も、他の実施形態と同様に、第1素子電極906a、第2素子電極906b、導電性膜907およびアノード電極909を、液滴吐出装置201を用いて形成することができると共に、各色の蛍光体913R,913G,913Bを、液滴吐出装置201を用いて形成することができる。
【0160】
第1素子電極906a、第2素子電極906bおよび導電性膜907は、図29(a)に示す平面形状を有しており、これらを成膜する場合には、図29(b)に示すように、予め第1素子電極906a、第2素子電極906bおよび導電性膜907を作り込む部分を残して、バンク部BBを形成(フォトリソグラフィ法)する。次に、バンク部BBにより構成された溝部分に、第1素子電極906aおよび第2素子電極906bを形成(液滴吐出装置201によるインクジェット法)し、その溶剤を乾燥させて成膜を行った後、導電性膜907を形成(液滴吐出装置201によるインクジェット法)する。そして、導電性膜907を成膜後、バンク部BBを取り除き(アッシング剥離処理)、上記のフォーミング処理に移行する。なお、上記の有機EL装置の場合と同様に、第1基板901および第2基板902に対する親液化処理や、バンク部911,BBに対する撥液化処理を行うことが、好ましい。
【0161】
また、他の電気光学装置としては、金属配線形成、レンズ形成、レジスト形成および光拡散体形成等の装置が考えられる。上記した液滴吐出装置201を各種の電気光学装置(デバイス)の製造に用いることにより、各種の電気光学装置を効率的に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるインクジェットプリンタの外観斜視図である。
【図2】ロール紙カバー、開閉カバー、カートリッジカバーを開放したときの、本発明の第1実施形態にかかるインクジェットプリンタの外観斜視図である。
【図3】インクジェットヘッド(機能液滴吐出ヘッド)の外観斜視図である。
【図4】インクジェットプリンタの模式説明図である。
【図5】インクカートリッジの説明図である。
【図6】圧力調整弁の模式説明図である。
【図7】インクジェットプリンタの制御ブロック図である。
【図8】加圧ポンプの駆動方法についての説明図である。
【図9】液漏れ検出処理のフローを説明した図である。
【図10】本発明の第2実施形態にかかる液滴吐出装置を模式的に示した模式平面図である。である。
【図11】液滴吐出装置の主制御系について説明したブロック図である。
【図12】カラーフィルタ製造工程を説明するフローチャートである。
【図13】(a)〜(e)は、製造工程順に示したカラーフィルタの模式断面図である。
【図14】本発明を適用したカラーフィルタを用いた液晶装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図15】本発明を適用したカラーフィルタを用いた第2の例の液晶装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図16】本発明を適用したカラーフィルタを用いた第3の例の液晶装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図17】有機EL装置である表示装置の要部断面図である。
【図18】有機EL装置である表示装置の製造工程を説明するフローチャートである。
【図19】無機物バンク層の形成を説明する工程図である。
【図20】有機物バンク層の形成を説明する工程図である。
【図21】正孔注入/輸送層を形成する過程を説明する工程図である。
【図22】正孔注入/輸送層が形成された状態を説明する工程図である。
【図23】青色の発光層を形成する過程を説明する工程図である。
【図24】青色の発光層が形成された状態を説明する工程図である。
【図25】各色の発光層が形成された状態を説明する工程図である。
【図26】陰極の形成を説明する工程図である。
【図27】プラズマ型表示装置(PDP装置)である表示装置の要部分解斜視図である。
【図28】電子放出装置(FED装置)である表示装置の要部断面図である。
【図29】表示装置の電子放出部廻りの平面図(a)およびその形成方法を示す平面図(b)である。
【符号の説明】
【0163】
1 インクジェットプリンタ 23 インク供給手段
25 制御手段 41 インクジェットヘッド
81 インクカートリッジ 84a 給液チューブ
85 温度センサ 87 液圧測定センサ
112 加圧ポンプ R ロール紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧ポンプにより機能液タンクを加圧して、前記機能液タンクから機能液滴を吐出する機能液滴吐出ヘッドに機能液を加圧供給する機能液供給装置のメンテナンス方法において、
前記機能液タンクから前記機能液滴吐出ヘッドに至る機能液流路に前記機能液の液漏れが生じているか否かを検出する液漏れ検出工程と、
前記液漏れが検出された場合に、前記液漏れを報知する液漏れ報知工程と、を備えたことを特徴とする機能液供給装置のメンテナンス方法。
【請求項2】
前記機能液タンクの機能液供給口には、前記機能液流路から前記機能液タンクに前記機能液が逆流することを防止する逆止弁が設けられており、
前記液漏れ検出工程は、前記機能液滴吐出ヘッドに前記機能液を送液していないときに、前記加圧ポンプの駆動を停止させるポンプ駆動停止工程と、
前記加圧ポンプの駆動停止前または駆動停止後に前記機能液流路の流路内圧力を第1流路内圧力として測定する第1圧力測定工程と、
前記ポンプ駆動停止工程の後であり、かつ前記第1圧力測定工程による前記測定から所定時間経過後に、前記流路内圧力を第2流路内圧力として検出する第2圧力測定工程と、
前記第1流路内圧力と前記第2流路内圧力を比較して、前記機能液流路に前記液漏れが生じているか否かを判断する液漏れ判断工程と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の機能液供給装置のメンテナンス方法。
【請求項3】
前記第1流路内圧力の測定時の環境温度を測定する第1環境温度測定工程と、
前記第2流路内圧力の測定時の環境温度を測定する第2環境温度測定工程と、をさらに備え、
前記液漏れ判断工程は、前記第1流路内圧力および前記第2流路内圧力の測定時における温度変化を加味して、前記第1流路内圧力と第2流路内圧力との比較を行なうことを特徴とする請求項2に記載の機能液供給装置のメンテナンス方法。
【請求項4】
加圧ポンプにより機能液タンクを加圧して、前記機能液タンクから機能液滴を吐出する機能液滴吐出ヘッドに機能液を加圧供給する機能液供給装置を備え、描画対象物に対して、前記機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、前記機能液滴吐出ヘッドを吐出駆動することにより前記機能液滴を吐出させて、描画を行う液滴吐出装置のメンテナンス方法において、
請求項2または3に記載の機能液供給装置のメンテナンス方法を用いて、前記機能液供給装置をメンテナンスすることを特徴とする液滴吐出装置のメンテナンス方法。
【請求項5】
前記第1圧力測定工程は、前記機能液滴吐出ヘッドからの機能液消費が終了する毎に、前記機能液流路の流路内圧力を測定し、
前記第2圧力測定工程は、装置の稼動開始直後かつ前記加圧ポンプの駆動開始前に、前記第2流路内圧力を測定しており、
前記液漏れ判断工程は、前記装置の稼動開始直近に行われた前記第1圧力測定工程の測定結果を前記第1流路内圧力として、前記第2流路内圧力と比較すること特徴とする請求項4に記載の液滴吐出装置のメンテナンス方法。
【請求項6】
前記液漏れ検出工程により、前記液漏れが検出された場合には、前記加圧ポンプの駆動開始をキャンセルする駆動キャンセル工程をさらに備えたことを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出装置のメンテナンス方法。
【請求項7】
加圧ポンプにより機能液タンクを加圧して、前記機能液タンクから機能液滴を吐出する機能液滴吐出ヘッドに機能液を加圧供給する機能液供給装置において、
前記機能液タンクから前記機能液滴吐出ヘッドに至る機能液流路に前記機能液の液漏れが生じているか否かを検出する液漏れ検出手段と、
前記液漏れが検出された場合に、前記液漏れを報知する液漏れ報知手段と、を備えたことを特徴とする機能液供給装置。
【請求項8】
前記機能液タンクの機能液供給口には、前記機能液流路から前記機能液タンクに前記機能液が逆流することを防止する逆止弁が設けられており、
前記液漏れ検出手段は、前記機能液滴吐出ヘッドに前記機能液を送液していないときに、前記加圧ポンプの駆動を停止させるポンプ駆動停止手段と、
前記加圧ポンプの駆動停止前または駆動停止後に前記機能液流路の流路内圧力を第1流路内圧力として測定する第1圧力測定手段と、
前記ポンプ駆動停止の後であり、かつ前記第1圧力測定手段による前記測定から所定時間経過後に、前記流路内圧力を第2流路内圧力として測定する第2圧力測定手段と、
前記第1流路内圧力と前記第2流路内圧力を比較して、前記機能液流路に前記液漏れが生じているか否かを判断する液漏れ判断手段と、を有していることを特徴とする請求項7に記載の機能液供給装置。
【請求項9】
前記第1流路内圧力の測定時の環境温度を測定する第1環境温度測定手段と、
前記第2流路内圧力の測定時の環境温度を測定する第2環境温度測定手段と、をさらに備え、
前記液漏れ判断手段は、前記第1流路内圧力および前記第2流路内圧力の測定時における温度変化を加味して、前記第1流路内圧力と第2流路内圧力との比較を行なうことを特徴とする請求項8に記載の機能液供給装置。
【請求項10】
加圧ポンプにより機能液タンクを加圧して、前記機能液タンクから機能液滴を吐出する機能液滴吐出ヘッドに機能液を加圧供給する機能液供給装置を備え、描画対象物に対して、前記機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、前記機能液滴吐出ヘッドを吐出駆動することにより前記機能液滴を吐出させて、描画を行う液滴吐出装置において、
前記機能液供給装置は、請求項8または9に記載の機能液供給装置であることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項11】
前記第1圧力測定手段は、前記機能液滴吐出ヘッドからの機能液消費が終了する毎に、前記機能液流路の流路内圧力を測定し、
前記第2圧力測定手段は、装置の稼動開始直後かつ前記加圧ポンプの駆動開始前に、前記第2流路内圧力を測定しており、
前記液漏れ判断手段は、前記装置の稼動開始直近に行われた前記第1圧力測定手段の測定結果を前記第1流路内圧力として、前記第2流路内圧力と比較すること特徴とする請求項10に記載の液滴吐出装置。
【請求項12】
前記液漏れ検出手段により、前記液漏れが検出された場合には、前記加圧ポンプの駆動開始をキャンセルする駆動キャンセル手段をさらに備えたことを特徴とする請求項11に記載の液滴吐出装置。
【請求項13】
請求項10ないし12のいずれかに記載の液滴吐出装置を用い、前記描画対象物となる基板上に前記機能液滴による成膜部を形成することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項14】
請求項10ないし12のいずれかに記載の液滴吐出装置を用い、前記描画対象物となる基板上に前記機能液滴による成膜部を形成したことを特徴とする電気光学装置。
【請求項15】
請求項13に記載の電気光学装置の製造方法により製造した電気光学装置または請求項14に記載の電気光学装置を搭載したことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2006−231131(P2006−231131A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−46055(P2005−46055)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】