説明

気体を徐放するための溶融加工可能な相溶性ポリマーブレンド

本発明は一般に、水分との接触時に二酸化硫黄、二酸化炭素または二酸化塩素のような気体を生成かつ放出するフィルムまたは他の対象物に押出成形または射出成形できる、相溶性ポリマーブレンドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、水分との接触時に二酸化硫黄、二酸化炭素または二酸化塩素のような気体を放出するフィルムまたは他の対象物に押出成形または射出成形できる、ポリマーアロイ組成物に関する。本発明は特に、ヒドロニウムイオンと反応して二酸化塩素ガスを生成できる亜塩素酸アニオンを含有するポリマーブレンドに関する。そのようなイオンを含有するフィルムまたは対象物は、細菌、真菌、ウィルス、カビ胞子、藻類および原生動物からの微生物汚染を阻害、抑制、殺傷または防止するため、消臭するため、並びに走化性を阻害および/または抑制するために使用され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
従って、本発明の様々な観点の中でも、以下のものを挙げることができる:細菌、真菌、カビおよびウィルスを除去するのに十分な濃度の二酸化塩素または他の気体を放出する、光学的に透明または半透明な相溶性ポリマーブレンドの提供;溶融加工できるそのような組成物の提供;二酸化塩素または亜塩素酸塩と反応せず、水での膨潤後でさえ良好な機械的強度を有するフィルムに低温で容易に加工でき、水への暴露時、従って水がフィルムまたは成形対象物の内部に入り込むことができたときにIPN(相互貫入網目)を形成し、水への暴露が疎水性ポリマー中の酸基を動かす場合に長期間にわたって二酸化塩素または他の適切な気体を放出し、表面上へのイオン性塩沈澱を抑制する働きをする金属イオン封鎖剤と相溶性である、そのような組成物の提供。
【課題を解決するための手段】
【0003】
1つの態様では、本発明は、ヒドロニウムイオンと反応して気体を生成できるアニオン;100℃未満のガラス転位温度を有する親水性ポリマー;並びに疎水性ポリマーおよび酸放出剤、または酸放出疎水性ポリマーのいずれかを含んでなる、細菌汚染、真菌汚染およびウィルス汚染、並びにカビの生育を抑制するための相溶性ポリマーブレンドを対象とする。相溶性ポリマーブレンドは、水を実質上含有せず、酸放出剤または酸放出疎水性ポリマーの水和時に気体を生成かつ放出できる。
【0004】
本発明の別の態様は、ヒドロニウムイオンと反応して気体を生成できるアニオン;式:
【化1】

[ここで、Rは、1〜4個の炭素原子を含有する置換または未置換アルキレン基であり、Rは、置換または未置換アリール基、或いは1〜6個の炭素原子を含有する置換または未置換アルキル基から選択され、nは、ポリマーに約100,000ダルトン未満の分子量を与える整数である。]
で示される構造を有する親水性ポリマー;並びに疎水性ポリマーおよび酸放出剤、または酸放出疎水性ポリマーのいずれかを含んでなる、細菌汚染、真菌汚染およびウィルス汚染、並びにカビの生育を抑制するための相溶性ポリマーブレンドを対象とする。相溶性ポリマーブレンドは、水を実質上含有せず、酸放出剤または酸放出疎水性ポリマーの水和時に気体を生成かつ放出できる。
【0005】
本発明の更なる別の態様は、ヒドロニウムイオンと反応して気体を生成できるアニオン;約100℃未満のガラス転位温度を有する親水性ポリマー;並びに酸放出疎水性ポリマーを含んでなる、細菌汚染、真菌汚染およびウィルス汚染、並びにカビの生育を抑制するための相溶性ポリマーブレンドを対象とする。相溶性ポリマーブレンドは、酸放出疎水性ポリマーの水和時に、相分離して相互貫入網目を形成でき、気体を生成かつ放出できる。
【0006】
本発明の別の態様は、細菌汚染、真菌汚染およびウィルス汚染、並びにカビの生育を抑制するための相溶性ポリマーブレンド、相溶性ポリマーブレンドの上部表面と接触する上部水分調整層、および相溶性ポリマーブレンドの下部表面と接触する下部水分調整層を含んでなる、気体を徐放させるための多層複合物を対象とする。相溶性ポリマーブレンドは、ヒドロニウムイオンと反応して気体を生成できるアニオン;約100℃未満のガラス転位温度を有する親水性ポリマー;並びに疎水性ポリマーおよび酸放出剤、または酸放出疎水性ポリマーのいずれかを含んでなる。相溶性ポリマーブレンドは、水を実質上含有せず、酸放出剤または酸放出疎水性ポリマーの水和時に気体を生成かつ放出できる。相溶性ポリマーブレンドはまた、約130℃未満のガラス転位温度を有する。上部または下部水分調整層に浸透した水分が相溶性ポリマーブレンドを水和して、多層複合物から気体を生成かつ放出させる。
【0007】
本発明の別の態様は、液体、アニオン、および一般式:
【化2】

[式中、Rは、1〜4個の炭素原子を含有する置換または未置換アルキレン基であり、Rは、置換または未置換アリール基、或いは1〜6個の炭素原子を含有する置換または未置換アルキル基であり、nは、ポリマーに約100,000ダルトン未満の分子量を与える整数である。]
で示される親水性ポリオキサゾリンポリマーの混合物またはスラリーを生成し;
液体を除去してガラスを生成し;
疎水性ポリマーおよび酸放出剤、または酸放出疎水性ポリマーのいずれかと、ガラスとを溶融混合する
ことを含む、約150℃未満の溶融温度を有する相溶性ポリマーブレンドの製造方法を対象とする。
【0008】
本発明の更なる別の態様は、アニオンおよび親水性ポリオキサゾリンポリマーを含んでなる混合物を供給し;
混合物を溶融加工してガラスを生成し;
疎水性ポリマーおよび酸放出剤、または酸放出疎水性ポリマーのいずれかと、ガラスとを溶融混合する
ことを含む、約150℃未満の溶融温度を有する相溶性ポリマーブレンドの製造方法であって、親水性ポリオキサゾリンポリマーが、式:
【化3】

[式中、Rは、1〜4個の炭素原子を含有する置換または未置換アルキレン基であり、Rは、置換または未置換アリール基、或いは1〜6個の炭素原子を含有する置換または未置換アルキル基であり、nは、ポリマーに約100,000ダルトン未満の分子量を与える整数である。]
で示される、方法を対象とする。
【0009】
本発明の別の態様は、本発明の相溶性ポリマーブレンドを溶融加工して対象物またはフィルムを形成し;
対象物またはフィルムの表面を水分に暴露し、相溶性ポリマーブレンドから表面を取り巻く雰囲気中に気体を放出させて、表面上の細菌汚染、真菌汚染およびウィルス汚染、並びにカビの生育を抑制するおよび/または表面を消臭する
ことを含む、表面上の細菌汚染、真菌汚染およびウィルス汚染、並びにカビの生育を抑制するおよび/または表面を消臭する方法を対象とする。
【0010】
以下の詳細な説明から、本発明の他の要旨および利点を明らかにする。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によれば、親水性ポリマー、アニオン、並びに酸放出疎水性ポリマーおよび/または疎水性ポリマーと酸放出剤との組み合わせを含んでなる押出可能な相溶性ポリマーブレンドを水分に暴露すると、該相溶性ポリマーブレンドから気体を徐放させ得ることが見出された。気体放出組成物は知られているが、本発明の相溶性ポリマーブレンドは、光学的に透明または半透明であり、90℃程度の低い温度で溶融押出しでき、気体生成アニオン含有塩、疎水性ポリマーおよび親水性ポリマーの良好な分散混合物であるので、比類のないものである。更に、相溶性ポリマーブレンドの疎水性ポリマーは、加水分解よりはむしろ水和によってヒドロニウムイオンを放出できる。このことにより、ポリマー鎖分解および構造一体性の喪失を回避できる。本発明の組成物は、以下の理由により有利である:ポリマーブレンド全体が活性物質である(活性部が層に分けられている既知の組成物とは対照的);アニオン分解が禁止されている;水移動効率が改良されている;機能性ポリマーが生成される。
【0012】
溶媒を伴ったフィルム流延により形成された既知の光学的透明フィルムとは異なり、本発明の組成物は、90℃以上の温度で溶融加工できる。組成物を基材に適用すると、基材上に形成されたフィルムを通して基材がはっきりと見える。例えば、図柄が印刷された段ボール箱上に組成物を被覆するならば、被膜を通して図柄ははっきりと見えたままである。被膜は気体を放出するが、被膜は図柄を変えたり、図柄の色に作用したりしない。組成物を押出して製品貯蔵に使用される滅菌包装材または滅菌包装容器を成形する場合、製品の一体性は、包装によって明らかに決定され得る。製品の一体性は、腐敗しやすい消費財(例えば、食品、化粧品、医薬品またはパーソナルケア製品)を包装する場合、特に重要な特性である。組成物を、滅菌医療用チューブ、包帯、カテーテル、注射器、器具、医療廃棄物またはバイオ廃棄物の貯蔵媒体などに成形する場合、薬剤、医療機器または患者を視覚的にモニタリングすることができる。故に、組成物は、汚染から物質を滅菌、消臭および保護するために気体を放出すると同時に、含まれている物質の目視検査を可能にする。
【0013】
亜塩素酸イオンを包含する気体放出イオンは、結晶性ポリマー固体マトリックス内で通常不安定であり、例えば、約160℃超の温度では、不均化により塩素酸イオンおよび塩化物イオンを生成しやすい。高温での亜塩素酸イオンの分解は、不十分な二酸化塩素生成能を有する最終生成物をもたらし得る。従って、本発明のポリマーは、好ましくは、約160℃未満のガラス転位温度(T)および溶融温度(T)を有すべきである。加えて、水分が親水性ポリマーに吸収され得るように、疎水性ポリマーおよび親水性ポリマーは、相互貫入網目を形成できなければならない。そして、相互貫入網目形成により、分散された亜塩素酸イオン含有塩から亜塩素酸イオンが抽出され得、疎水性ポリマーまたは酸放出剤からの酸放出を開始できる。更に、コポリマーは、気体生成アニオンまたは気体と化学反応してはならない。最後に、組成物は、透明または半透明であるべきであり、水の吸収、IPN形成、並びに気体の生成および放出のときでさえ、光学的性質を維持すべきである。
【0014】
本発明において、用語「相溶性ポリマーブレンド」は、ブレンドがその体積全体にわたって少なくとも巨視的に均一な物理的性質を示すように、成分間の十分な相間混合および好ましい相互作用が存在する、ポリマーブレンドを意味する。
【0015】
本発明の1つの態様では、相溶性ポリマーブレンドは、親水性ポリマー、気体を生成できるアニオンを含有する塩、並びに酸放出疎水性ポリマーまたは疎水性ポリマーおよび酸放出剤のいずれかを含んでなる。周囲雰囲気から吸収された水が、親水性ポリマーおよび疎水性ポリマーを相互貫入網目に分離させるとき、気体が、相溶性ポリマーブレンドから生成かつ放出される。このとき、親水性ポリマーはアニオンを含んでなり、疎水性ポリマーは酸放出剤または酸放出基を含んでなる。本発明において、相互貫入網目(IPN)は、2つ以上の相からなる物質であり、少なくともその一相は、自由表面から他の自由表面に位相的に連続である。本発明の組成物は、まず、疎水性および親水性コポリマーを含んでなる相溶性ブレンドポリマーマトリックスとして生成されるので、本発明の組成物は、この分野で知られている二相組成物とは異なる。周囲水分への暴露時、相対湿度(RH)が閾値より高いならば、ポリマーマトリックスは水によって可塑化され、IPNを形成し、それによって、酸放出基から気体生成アニオンへのヒドロニウムイオンの移動が可能になる。網目構造は、効果的に、水分吸収、および酸放出剤または酸放出基からアニオンへの生成ヒドロニウムイオンの移行を可能にするので、そのような組成物は、アニオンの酸性化に好ましい。加えて、相互貫入疎水性ポリマーの存在は、水でよく可塑化された親水性ポリマーの存在下、複合物の機械的強度特性を維持するのに有用である。幾つかのケースでは、疎水性相に小さい結晶が生じることがある。これは、構造を物理的に架橋して、更に機械的強度を高め得る。逆に、RHが閾値より低いならば、ポリマーマトリックスは、相溶性ブレンドとして水を透過させる。例えば、アニオンが亜塩素酸アニオンである場合、吸収された水は拡散し、疎水性酸放出部から亜塩素酸アニオンへのヒドロニウムイオンの移動を可能にし、それによって、亜塩素酸を生成し、続いて二酸化塩素を放出する。被覆材料または形成対象物の上の細菌、カビ、真菌およびウィルスの増殖を防ぐため、気体は、相溶性ポリマーブレンドから周囲雰囲気に拡散する。
【0016】
本発明の組成物は、この分野で知られている非相溶性二相組成物より効率的な気体(例えば二酸化塩素)への転化を提供する。なぜなら、ある程度の相間混合を伴った初期相溶性ブレンドに由来するIPNは、より大きい表面積を体積接触面に与えるからである。少なくとも2週間、3週間、4週間、5週間または6週間の間、少なくとも約0.3×10−6〜約3.0×10−6mol二酸化塩素/cm表面積を放出する組成物が、様々な最終用途のために、本発明の方法によって調製され得る。
【0017】
1つの態様では、組成物は、約0.1〜約20重量%の気体生成可能アニオンおよび対イオン、0〜約5重量%の塩基、約15〜約60重量%の親水性ポリマー、並びに約30〜約80重量%の酸放出疎水性ポリマーおよび/または疎水性ポリマーと酸放出剤との組み合わせを含んでなる。別の態様では、組成物は、約1〜約10重量%のアニオンおよび対イオン、0〜約3重量%の塩基、約20〜50重量%の親水性ポリマー、並びに約30〜70重量%の酸放出疎水性ポリマーおよび/または疎水性ポリマーと酸放出剤との組み合わせを含んでなる。酸放出剤が存在する態様では、疎水性ポリマーの酸放出剤に対する重量比は、好ましくは、約1〜約25、約1〜約4、更には約1〜約1.5である。
【0018】
一般に、無機アニオンのような電解質を担持する親水性ポリマーのいずれも、本発明の組成物に適している。好ましくは、親水性ポリマーは、アニオンと化学的に相溶性であり、気体生成アニオンの不安定性または分解を有意に促進しない。親水性ポリマーは、好ましくは、本発明の疎水性ポリマーと相溶性ブレンドを形成し、該ブレンドは、約160℃未満または約150℃未満、例えば、約90〜約150℃、約90〜約140℃、約90〜約130℃、約90〜約120℃、または約90〜約110℃の溶融加工温度(T)を有する。溶融温度(T)は、結晶性ポリマーの構造が壊れて溶融加工可能な物質が得られる温度であり、典型的にはTより高い。一般に、上記した溶融加工温度は、十分に低いTおよびTを有する親水性ポリマーの使用によって達成される。本発明において、ガラス転位温度(T)は、非結晶性ポリマーが押出され得るか、または溶融加工され得る、最も低い温度と定義される。ポリマーは一般に、T未満の温度では、堅いガラス状の物質である。約100℃未満のTを有する親水性ポリマーが好ましい。1つの態様では、可塑剤を添加することによって、許容できる親水性ポリマーのTを、約100℃未満に低下することができる。代わりに、約160℃、150℃、140℃、130℃、120℃または110℃未満のT値を個々に有するポリマーを選択してもよい。
【0019】
1つの態様では、親水性ポリマーは、約1,000〜約1,000,000ダルトンの分子量を有し、所望のアニオンを含有する塩、および疎水性ポリマーを伴って高分散懸濁液を生成する。高分散懸濁液は、ポリマー技術でよく知られている顕微鏡法または光散乱法による測定で、約1,000Å以下、好ましくは約500Å以下、より好ましくは約100Å以下の粒度を各々有する成分の混合物と定義される。本発明の高分散懸濁液は、混合物の各成分の屈折率が同じまたは実質上類似している場合、2,000Å以下の粒度を各々有する成分を含んでなる混合物であってもよい。上記した粒度のいずれかを有する成分を含んでなる高分散懸濁液は、その相微細構造が可視光の波長をはるかに下回る直径を有するので、見かけ上は光学的に透明または半透明であり、視覚的には一相混合物であるように見える。適用にとって重要なフィルム厚さで、懸濁液を通して、光の少なくとも約80%、好ましくは約90%が透過する場合、高分散懸濁液は、本発明において光学的に透明である。高分散懸濁液は、光散乱せず、1000Å超の粒子を生成する結晶化に対して安定である。高分散懸濁液の粒度は、好ましくは、成分が均一に分散されるのに十分なほど小さい。
【0020】
親水性物質は、好ましくは、アニオンの安定性を高めるために水素結合密度が高く、アミン、アミド、ウレタン、アルコール、閉環アミド(例えばピロリジノン)を包含する基、或いはアミノ、アミド、無水物またはヒドロキシル基を含有する化合物を含有し得る。親水性ポリマーは、最も好ましくは、アミド、ウレタンおよび無水物基を含有する。アニオンは、一般的には親水性ポリマーと反応しないが、親水性ポリマー内の基によって与えられた水素結合によって囲まれ、安定化される。
【0021】
親水性ポリマーは、例えば、ポリオキサゾリン、ポリn−ビニルピロリドン(PNVP)、ポリアクリルアミド、ビニルメチルエーテルおよびN−ビニルアセトアミドを包含し得る。約1,000,000ダルトン未満、例えば約1,000〜約100,000ダルトン、または約25,000〜約75,000ダルトンの分子量を有する親水性ポリマーが好ましい。
【0022】
ポリオキサゾリンは、式:
【化4】

[式中、Rは、1〜4個の炭素原子を含有する置換または未置換アルキレン基であり、Rは、ポリマーの水溶性を有意に低下させない、炭化水素または置換炭化水素であり、nは、ポリマーに、約1,000,000ダルトン未満、好ましくは約1,000〜約100,000ダルトン、より好ましくは約25,000〜約75,000ダルトンの分子量を与える整数である。]
で示される。Rは、ヒドロキシ、アミドまたはポリエーテルで置換されていてよい。Rは、好ましくは、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレンまたはブチレンである。Rは、最も好ましくはエチレンである。Rは、好ましくは、アルキルまたはアリールである。Rは、ヒドロキシ、アミドまたはポリエーテルで置換されていてよい。好ましくは、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルまたはイソブチルである。最も好ましくは、Rはエチレンであり、Rはエチルである。
【0023】
ポリn−ビニルピロリドン(PNVP)ポリマーは、式:
【化5】

[式中、nは、好ましくは約10〜約1000、より好ましくは約100〜約900、最も好ましくは約200〜約800である。]
で示される。
【0024】
ポリアクリルアミドポリマーは、式:
【化6】

[式中、RおよびRは、独立して、ポリマーの水溶性を有意に低下させない、炭化水素または置換炭化水素、或いは水素であり、nは、ポリマーに、約1,000,000ダルトン未満、好ましくは約1,000〜約100,000ダルトン、より好ましくは約25,000〜約75,000ダルトンの分子量を与える整数である。]
で示される。例えば、RおよびRは、置換または未置換アリール基、或いは1〜6個の炭素原子を含有する置換または未置換アルキル基である。好ましくは、RおよびRは、独立して、水素、アリールまたはアルキルである。より好ましくは、RおよびRは、独立して、水素またはC1〜4アルキルである。更に好ましくは、RおよびRは、独立して、水素またはメチルである。
【0025】
親水性ポリマーと相溶性ブレンドを生成する疎水性ポリマーは、気体生成アニオンと相溶性であり、本発明の目的のために許容できるアニオンの存在下での溶融加工に適したT値およびT値を有する。一般に、親水性ポリマーと水素結合相互作用できる疎水性ポリマーは、相溶性ポリマーブレンドを生成する。いかなる理論にも拘束されはしないが、これまでの実験的証拠は、水素寄与親水性ポリマーが、閾値数の水素結合または相溶化基を有する疎水性ポリマーと結合する場合に、透明な相溶性ポリマーブレンドが生成することを示している。相溶化基は、ヒドロキシル、アミド、無水物、カルボン酸、ニトリル、エステル、酸塩、ウレタン、フルオリドおよびクロリドを包含するが、それらに限定されない。
【0026】
本発明の目的に許容できる疎水性ポリマーおよびコポリマーは、多数のアルキルまたは芳香族ベースポリマーを包含し、置換または未置換ポリアルキレンアクリル酸(例えばポリエチレンアクリル酸(PEAA))およびそれらの部分的中和塩、アルキレンメタクリル酸(例えばエチレンメタクリル酸(EMAA))およびそれらの部分的中和塩、フェノキシ樹脂、モノアルキルイタコン酸、アルキレンビニルアルコール(例えばエチレンビニルアルコール(EVA))、アルキレンアクリル酸(例えばエチレンアクリル酸(EAA))、アルキルビニルアルコールとポリアルキレンとのブレンド、アルキルビニルアルコールとビニルアルコールとのブレンド、酢酸ビニル(VAC)とビニルアルコールとのブレンド、酢酸セルロース、芳香族ポリイミド、フッ化ビニリジン、ポリアクリル酸、ポリ(ビニルスルホン酸)、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリアルキレンオキシド(例えばポリプロピレンオキシド)、ポリスチレン、塩化ビニル、酢酸ビニルおよびそれらの塩を包含し得る。好ましくは、疎水性ポリマーは、約1,000〜約1,000,000ダルトン、より好ましくは約10,000〜約100,000ダルトンの分子量を有する。
【0027】
1つの態様では、疎水性ポリマーは酸放出基を含有する。酸放出疎水性ポリマーは、水分への暴露時の水和機構によってヒドロニウムイオンを放出でき、それによってアニオンがプロトン化され、続いて気体が放出される。本発明の疎水性ポリマー酸放出基は、好ましくは、ポリマー主鎖の一体化された構成要素としてではなく側基として存在する。酸放出基がポリマー主鎖の一体化された構成要素として存在する場合、水和および酸放出が起こる前に、酸放出基の加水分解がまず起こらなければならない。加水分解された基の水和はポリマー鎖を分解し、ポリマーの構造一体性が損なわれる。本発明の疎水性ポリマーの酸放出基は側基として存在するので、ポリマー主鎖の加水分解は起こらず、ポリマーの構造一体性およびポリマーの機械的性質は維持される。カルボン酸基含有疎水性ポリマーが最も好ましい。このように、酸放出疎水性ポリマーは、独立した酸放出成分を含有することなく組成物を構成できる。そのような組成物は、追加の酸放出成分を含有する組成物より、複数の利点を与える。第一に、材料費を安くすることができる。第二に、独立した酸放出成分を除外すると、アニオン適用量をより多くすることができる。そして第三に、酸放出剤は、粉末として配合されるかまたはIPN形成時に沈澱し得るので、半透明または濁った組成物が生じ得る。
【0028】
好ましいアルキレン−メタクリル酸コポリマー、アルキレン−アクリル酸コポリマー、およびそれら各々のエステルのコポリマーは、式:
【化7】

[式中、Rは、独立して、水素、置換または未置換低級アルキルから選択され、Rは、独立して、水素、置換または未置換低級アルキルから選択され、Rは、エチレンまたはプロピレンである。mのnに対する比は、99:1〜1:99、50:1〜1:50、25:1〜1:25、25:1〜1:10、25:1〜1:1、20:1〜1:1、15:1〜1:1、20:1〜5:1、15:1〜5:1、10:1〜1:1、または8:1〜2:1である。]
で示される。好ましくは、Rは、独立して、水素、メチルまたはエチルから選択され、Rは、独立して、水素、メチル、エチル、n−プロピルまたはイソプロピルから選択され、Rはエチレンである。Rは、アルカリ金属、亜鉛またはアンモニアのような塩形成カチオンを含んでいてもよい。1つの態様では、Rは独立して水素またはメチルであり、Rは独立してメチルまたはエチルであり、Rはエチレンである。別の態様では、Rは水素であり、Rは水素であり、Rはエチレンである。
【0029】
好ましいモノアルキルイタコン酸コポリマーおよびモノアルキルイタコネートコポリマーは、式:
【化8】

[式中、Rは置換または未置換低級アルキレンであり、RおよびRは、独立して、水素或いは置換または未置換低級アルキルであり;より好ましくは、Rはエチレンまたはプロピレンであり、RおよびRは、独立して、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルである。mのnに対する比は、99:1〜1:99、50:1〜1:50、25:1〜1:25、25:1〜1:10、25:1〜1:1、20:1〜1:1、15:1〜1:1、20:1〜5:1、15:1〜5:1、10:1〜1:1、または8:1〜2:1である。RまたはRは、独立して、アルカリ金属、亜鉛またはアンモニアのような塩形成カチオンを含んでいてもよい。]
で示される。
【0030】
全親水性ポリマーの疎水性ポリマーに対する重量比は、好ましくは、本発明の組成物中の親水性ポリマーおよび疎水性ポリマーの合計重量に基づいて、約85:15、約80:20、約75:25、約70:30、約65:35、約60:40、約55:45、約50:50、約45:55、約40:60、約35:65、約30:70、約25:75、約20:80、または約15:85であり得る。
【0031】
組成物は、ヒドロニウムイオンと反応して気体を生成するアニオンを含有する。アニオンは一般に、アニオンおよび対イオンの塩によって供給される。適当な塩は以下を包含する:アルカリ金属亜塩素酸塩、アルカリ土類金属亜塩素酸塩、遷移金属イオン、プロトン化された第一級、第二級または第三級アミン或いは四級化アミンの亜塩素酸塩、アルカリ金属重亜硫酸塩、アルカリ土類金属重亜硫酸塩、遷移金属イオン、プロトン化された第一級、第二級または第三級アミン或いは四級化アミンの重亜硫酸塩、アルカリ金属亜硫酸塩、アルカリ土類金属亜硫酸塩、遷移金属イオン、プロトン化された第一級、第二級または第三級アミン或いは四級化アミンの亜硫酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ土類金属重炭酸塩、遷移金属イオン、プロトン化された第一級、第二級または第三級アミン或いは四級化アミンの重炭酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、遷移金属イオン、プロトン化された第一級、第二級または第三級アミン或いは四級化アミンの炭酸塩。好ましい塩は、亜塩素酸、重亜硫酸、亜硫酸、重炭酸または炭酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩またはアンモニウム塩を包含する。使用に適した亜塩素酸塩および他の塩の市販品(例えばVulcan Corp.製Textone(登録商標))は、気体への転化を触媒するために、更なる塩および添加物(例えば錫化合物)を含有し得る。
【0032】
他の形状の亜塩素酸塩、例えばMicrosphere(登録商標)粉末、または例えばUS 6,605,304および6,277,408(共にWellinghoff)に開示されているようなケイ酸塩−亜塩素酸塩固溶体を、本発明の組成物に配合でき、これら特許を引用してここに組み込む。Microsphere(登録商標)粉末は、比較的少ない亜塩素酸塩適用量を有するので、二酸化塩素をゆっくり放出する組成物に適している。Microsphere(登録商標)粉末およびケイ酸塩−亜塩素酸塩粒子の粒度は、好ましくは、約1〜約10μmである。
【0033】
本発明の組成物を、US 09/448,927およびWO 00/69775に記載されているような電磁エネルギー活性化気体放出組成物とブレンドするか、或いは多層フィルムに一体化して、本発明に記載されているような用途に有効な水分および/または電磁エネルギー活性化組成物を供給できる。これら特許を引用してここに組み込む。
【0034】
一般に約100℃超の加工温度で安定であり、それによって、比較的高温で加工できる、亜塩素酸塩源が好ましい。本発明の組成物に配合できる好ましい亜塩素酸塩源は、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸カルシウム、Microsphere(登録商標)粉末、および商標名Texton(登録商標)で市販されているような亜塩素酸ナトリウム粉末を包含する。このような粉末の亜塩素酸塩含有量は高いので、そのような粉末を含有する本発明の組成物は、活性二酸化塩素エミッターである。更に、幾つかの用途では、微粉化亜塩素酸ナトリウムベースガラスが、可溶化またはナノ粒子亜塩素酸ナトリウムガラスより好ましい。なぜなら、微粉化亜塩素酸塩粒子の低い表面積対体積比が、溶融加工中の疎水性酸放出基との反応を抑制するからである。しかしながら、より大きい粒度の亜塩素酸塩の利点は、大きい粒子の配合に由来する増加された光散乱とフィルム半透明性とのバランスが保たれることである。
【0035】
組成物からの二酸化塩素の最大放出は、亜塩素酸アニオンを安定化することによって達成できる。亜塩素酸塩の水溶液は通常かなり塩基性であり、水溶液中での亜塩素酸アニオンの長期安定性は塩基性に保ったpHに依存する。低濃度のプロトンでさえ、不均化により二酸化塩素を生成する亜塩素酸を少量生成する。本発明の1つの態様では、亜塩素酸アニオン源、親水性ポリマーおよび塩基を調製し、その溶液から、分子的に分散されたまたはナノ粒子としての無機成分を含有する透明な脆いガラスを(例えば流延によって)製造する。いかなる理論にも拘束されはしないが、これまでの実験的証拠に基づくと、製造方法の蒸発工程中、水性溶媒または有機溶媒によるClOの強い錯体形成が、より弱いアミドキレート化に取って代わられるにつれて、不安定なHClOの量が増加すると考えられる。塩基によって与えられた水酸化物イオンは、亜塩素酸の生成には有利ではなく、従って、生成されるガラスの安定性を高める。好ましくは、亜塩素酸アニオンの水酸化物アニオンに対するモル比は、約1:2〜約10:1、より好ましくは約2:1〜約10:1である。
【0036】
一般に、いかなる塩基も組成物に配合できる。適当な塩基は以下を包含するが、それらに限定されない:アルカリ金属重炭酸塩、例えば、重炭酸リチウム、重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウム、アルカリ金属炭酸塩、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウム、アルカリ土類金属重炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、例えば炭酸マグネシウムまたは炭酸カルシウム、遷移金属イオン、プロトン化された第一級、第二級または第三級アミン或いは四級化アミンの重炭酸塩、例えば重炭酸アンモニウム、遷移金属イオン、プロトン化された第一級、第二級または第三級アミン或いは四級化アミンの炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、アルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化カルシウムまたは水酸化マグネシウム、遷移金属イオン、プロトン化された第一級、第二級または第三級アミン或いは四級化アミンの水酸化物塩、例えば水酸化アンモニウム、アルカリ金属リン酸塩、例えば第二リン酸塩または第三リン酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩、例えばリン酸二カルシウムまたはリン酸三カルシウム、遷移金属イオン、プロトン化された第一級、第二級または第三級アミン或いは四級化アミンのリン酸塩。好ましい塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化アンモニウムを包含する。水酸化ナトリウムが最も好ましい。
【0037】
ヒドロニウムイオンは、組成物中に配合される酸放出基含有疎水性ポリマーによってまたは酸放出剤によって供給され得る。例えばUS 6,277,408および6,046,243(共にWellinghoff)に開示されているような水分活性化酸放出剤は、後の気体放出を伴ったアニオンのプロトン化を可能にするため、任意に、ポリマーブレンドに添加され得、これら特許を引用してここに組み込む。親水性ポリマー、疎水性ポリマーおよびアニオンを含んでなる本発明の組成物に配合できる酸放出剤はいずれも、本発明の目的にとって許容できる。好ましくは、酸放出剤は、水分の存在下で組成物成分と反応せず、周囲に滲出したりまたは抽出されたりしない。適当な酸放出剤は以下を包含する:無機塩、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、ハロゲン化アシル、リン酸、リン酸エステル、トリアルキルシリルホスフェートエステル、リン酸ジアルキル、スルホン酸、スルホン酸エステル、スルホン酸クロリド、ホスホケイ酸塩、無水ホスホケイ酸、ポリα−ヒドロキシアルコールのカルボキシレート、例えば、ソルビタンモノステアレートまたはソルビトールモノステアレート、およびホスホシロキサン。
【0038】
好ましい酸無水物放出剤は、有機酸無水物、混合有機酸無水物、有機酸無水物または混合無機酸無水物のホモポリマー、および有機酸無水物または混合無機酸無水物と二重結合含有モノマーとのコポリマーを包含する。無水物の存在は、組成物の酸性度および金属イオン封鎖能を高める。金属イオン封鎖能は、組成物が水和されるときに起こる可能性がある、表面への金属塩の沈澱を解消する。好ましい混合無機酸無水物は、リン−酸素−ケイ素結合を有する。好ましい無水物は、無水マレイン酸、無水メタクリル酸、無水酢酸、無水プロピオン酸または無水コハク酸を含有するコポリマーを包含する。乳酸またはグリコール酸の酸無水物およびエステルのコポリマーは、急速な初期気体放出速度、それに続く緩慢な放出速度を与えることができる。
【0039】
ポリリン酸塩のような無機酸放出剤は一般に、有機酸放出剤含有粉末と比べると気体放出効率が高い無臭粉末を形成するので、それらもまた、好ましい酸放出剤である。適当な無機酸放出剤は、ポリリン酸テトラアルキルアンモニウム、リン酸二水素カリウム、ポリメタリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、ホウリン酸塩、アルミノリン酸塩、ケイリン酸塩、トリポリリン酸ナトリウムのようなポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、リン酸ナトリウムカリウム、および亜鉛のような加水分解性金属カチオンを含有する塩を包含する。
【0040】
〜C27有機化合物のリン酸エステルとケイ酸エステルとの反応生成物である無水ホスホケイ酸のような、線状または星状オリゴマー(例えば、脂質シェルおよびP−O−Siコアを有するミセル状分子)は、フィルム安定性を与えるために加工後に架橋するというオプションを伴って溶融加工され得るので、好ましい酸放出剤である。好ましいエステルの無水ホスホケイ酸は、ヒドロキシ、アルキル、アルケニルまたはそれらのエステルで一置換または多置換されたC〜C27炭化水素および多価アルコールのカルボン酸エステルを含有する。好ましいポリオールベースエステルの無水ホスホケイ酸は、プロピレングリコールモノステアレート酸放出ワックスのような、アルキレングリコール脂肪酸エステル酸放出ワックスを包含する。グリセロールベースエステルの好ましい無水ホスホケイ酸は、LPOSIまたはグリセロールモノステアレート酸放出ワックスである。US 5,631,300(Wellinghoff)を参照でき、同特許を引用してここに組み込む。
【0041】
例えば、エチレン−メタクリレート、エチレン−アクリレートおよびエチレン−酢酸ビニルのようなエステル変性コポリマーを、希釈剤として添加できる。エステル基は、親水性ポリマーのアミド基と水素結合し、相溶性ブレンドの生成を促進する。これらの添加剤は、より広範な親水性ポリマーの使用を可能にし、相溶性ポリマーブレンドの生成を促進し、気体生成アニオンの適用量増加を可能にする。
【0042】
を抑え、Tを抑え、粘度を低下し、酸放出剤を分散させるための界面活性剤として作用し、水分吸収速度に影響を与え、および/または柔軟かつ可撓性のあるフィルムを形成するために、本発明の組成物に可塑剤を添加できる。可塑剤は、好ましくは、親水性ポリマーおよび疎水性ポリマーと共に相溶性ブレンドを生成する。アルキレングリコール(例えばPEG)のような可塑剤は、本発明の親水性ポリマーおよび疎水性ポリマーと共に相溶性ブレンドを生成せず、通常は好ましくない。1つの態様では、組成物の溶融加工特性は、低分子量PEOXまたは他の低分子量アミドの添加によって変えることができる。添加剤は、組成物のT、水溶性、機械的性質、粘度および流動性を含む流動学的性質を変えて、低温加工を可能にし、脆化およびクラッキングを防ぐ。一般に、約30重量%までの可塑剤を添加してよい。反応温度未満にガラス転位温度を低下するために、少なくとも約10重量%、好ましくは約10〜約30重量%の可塑剤を添加することによって、ガラス状ポリマーを軟化し、流動度を高めることができる。一般に、ポリアミドを可塑化し、容易には酸化しない可塑剤を許容することができる。好ましいフタル酸エステル可塑剤は、フタル酸ジブチルおよびフタル酸ジオクチルを包含する。好ましいPEOXおよびアミド可塑剤は、好ましくは、約5000ダルトンの分子量を有する。適当な低分子量アミド可塑剤は、ポリマー技術分野でよく知られており、以下を包含する:コハク酸アミド、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、イソプロピルアクリルアミド−アクリルアミドおよびアミド置換アルキレンオキシドのような、モノマーアミドまたはオリゴマーアミド。ホルムアミドおよびN−メチルホルムアミドは有毒であり、人体への接触を伴う用途には好ましくない。本発明の酸放出ポリマーのための可塑剤として使用できる他のアミドは、以下を包含する:H2NC(O)(CH2CH2O)nCH2CH2C(O)NH2[ここで、nは1〜10である。]、H2NC(O)(CH2CH2O)nCH((OCH2CH2)mC(O)NH2)2[ここで、nは1〜5であり、mは1〜5である。]、およびN((CH2CH2O)nCH2CH2(O)NH2)3[ここで、nは1〜10である。]。
【0043】
例えば、強度、靱性、柔軟性および/または気体放出特性のような性質を改良または最適化するために、組成物に別のポリマーを添加できる。1つの態様において、ブレンドに配合できるアルキレン−ビニルアルコールコポリマーは、式:
【化9】

[式中、Rは、置換または未置換低級アルキレン、好ましくはエチレンまたはプロピレンである。mのnに対する比は、99:1〜1:99、50:1〜1:50、25:1〜1:25、25:1〜1:10、25:1〜1:1、20:1〜1:1、15:1〜1:1、20:1〜5:1、15:1〜5:1、10:1〜1:1または8:1〜2:1である。]
で示される。
【0044】
別の態様において、ブレンドに配合できる芳香族ポリイミド添加剤は、式:
【化10】

[式中、RおよびRは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルカノイル、カルボキシアルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノアルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキル、アリール、アルキルスルフィニル、アリール、アシル、カルボキシ、カルボニル、シクロアルケニル、シクロアルキル、エステル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロ、ヒドロキシアルキル、スルファミル、スルホンアミジル、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニルまたはオキソであり;Rは、独立して、アルキレン、アルケニレン、アルカノイレン、カルボキシアルキレン、アルケノキシ、アルケノキシカルボニル、アルケニルアミノアルキル、アルケニルカルボニル、アルケニルカルボニルアルキル、アルケニルスルフィニル、アリール、アシル、カルボキシ、カルボニル、シクロアルケニル、シクロアルキル、エステル、ハロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロシクロ、ヒドロキシアルケニル、スルファミル、スルホンアミジル、スルホニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニルまたはオキソであり;RおよびRは、独立して、シクロヘキシル、アリール、シクロアルケニル、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクロであり;好ましくは、Rは、アリーレンまたはアルケンであり、Rはアリールを含んでなり、Rはアルケンであり、Rはアリールであり、Rはアリーレンまたはアルケンであり;最も好ましくは、Rはアルケンであり、Rはフェニルであり、Rはメチレンであり、Rはフェニルであり、Rはアルケンである。]
で示される。
【0045】
酸放出疎水性ポリマーまたは酸放出剤の尚早の加水分解を防ぐために、水分掃去剤、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、シリカゲル、アルミナ、ゼオライトおよび塩化カルシウムを組成物に添加できる。逆に、組成物をより親水性にするため、および酸放出疎水性ポリマーまたは酸放出剤の加水分解速度を増すために、保湿剤を添加することもできる。必要に応じて、常套のフィルム形成添加剤を組成物に添加してもよい。そのような添加剤は、架橋剤、難燃剤、乳化剤、紫外線安定剤、スリップ剤、ブロッキング剤および相溶化剤、滑剤、酸化防止剤、着色剤および染料を包含する。組成物を光学的に透明または半透明にするならば、これらの添加剤は親水性であり、組成物に溶解できなければならない。
【0046】
本発明の押出された相溶性ポリマーブレンドは、吸湿性であり、水によって著しく可塑化され、水への暴露時にIPNを形成する。一般に、本発明のIPNは連続であり、気体を生成するためのアニオンの酸性化に適した形態である、豊水相および貧水相を含んでなる。その後、水が組成物内部に拡散し、疎水性ポリマー酸放出基または酸放出剤から気体生成アニオンへのプロトン移動が可能になる。
【0047】
特定の理論に拘束されるものではないが、1つの理論に基づくと、IPNは水への暴露によって形成され、疎水性ポリマーリッチな連続または半連続相内に、水および親水性ポリマーリッチな連続相を生じると考えられる。形成される水チャンネルは、部分的には、親水性ポリマー官能基と疎水性ポリマー官能基の間の結合力によって釣り合った、親水性ポリマーの膨潤能に依存する。従って、チャンネルが大きい組成物は一般に、形成された相の間の結合力が弱い高度に膨潤した親水性相を含んでなる。逆に、小さいチャンネルサイズは一般に、疎水性相と強く結合し最小限に膨潤した親水性相の組み合わせに由来する。溶媒系、アニオン含有量、押出温度および周囲湿度を含む他の因子が、形成されるチャンネル形態に影響を及ぼし得る。
【0048】
IPN形成の別の理論によれば、ポリマー混合物の混和性は、混合の熱力学によって決定される。所定温度での混合のギブズ自由エネルギーが負であれば、分子レベルでのポリマーブレンドは各成分の巨視的混合物より安定であり、均一な混合物が得られる。本発明の2種のポリマー成分からなる安定な均一混合物を水に暴露するならば、自由エネルギーに変化が生じ得る。自由エネルギーの変化が不安定な系をもたらすならば、ブレンドは、その全自由エネルギーを下げ、スピノーダル分解と称される工程で2相に分離することによって安定な状態に達することができる。そのような相分離は、ポリマーの相互貫入構造を形成し得る。
【0049】
IPN形成の更に別の理論では、水は、貧ポリマー層の核形成および成長を誘起する。水の相溶性ポリマーブレンドへの導入は、系の自由エネルギーを変える。ブレンドは、貧ポリマー層の核形成および成長により2相に分離することによって新たな熱力学的安定に達し、その結果、IPNが形成される。臨界ポリマー濃度で、ポリマーは、新たな相の初期部となり得るコア構造周囲の不連続ミクロドメインに堆積すると考えられる。その後、核形成部位がより大きい粒子に成長し、それが結合してIPNになり得る。ポリマー濃度、RHまたは温度のような因子により、ミクロドメイン核形成が異なった時間で開始し、異なった速度で進行し得、その結果、形成されるIPNは、様々な形状および大きさを示す親水性チャンネルを有するようになる。
【0050】
本発明において、水の供給源が周囲水蒸気ならば、IPNを形成するために閾値の相対湿度(RH)が必要であることが分かっている。RH閾値は、限定されるわけではないが以下を含む複数の変動因子によって変化する:モノマーまたはコポリマーの構造および分子量並びにそれら各々の濃度を含む、疎水性ポリマー成分および親水性ポリマー成分の組成;温度;アニオン、安定化塩基、可塑剤、水分掃去剤、保湿剤の組成および適用量。更に、形成される相互貫入網目の有孔性は、それら変動因子に影響される。例えば、H. Chae Parkらは、ポリスルホンおよび1−メチル−2−ピロリドンからなる膜を水蒸気に暴露することによって形成される親水性相チャンネルのサイズが、RHとポリマー濃度の両方に影響されることを見出した。孔サイズおよびポリマー濃度と同様に、チャンネルサイズとRHとが反比例することが見出された。例えば、チャンネルサイズは、所定のポリマー濃度ではRHの低下に伴って上昇し、所定のRHではポリマー濃度の上昇に伴って低下する。H. Chae Parkら、Journal of Membrane Science 156(1999)169〜178を参照されたい。
【0051】
周囲RHに依存して、ポリマーマトリックスは、相溶性ブレンドとして水を透過するか、または疎水性ポリマーおよび親水性ポリマーを含んでなるIPNを形成する。閾値より高いRHに暴露すると、ポリマーブレンドは水によって可塑化され、IPNを形成し、それによって、酸放出基から気体生成アニオンへのヒドロニウムイオンの移動が可能になる。気体は、数日から数週間にわたってブレンドから放出される。逆に、閾値より低いRHへ暴露すると、相溶性ブレンドは水を透過し、続いての気体放出は抑制される。水透過速度、従って気体放出プロフィルは、組成および周囲湿度の両方を変えることによって、広範な条件に合わせて調整できる。
【0052】
相互貫入疎水性ポリマーの存在は、水により高度に可塑化された親水性ポリマーおよび可塑剤のような他の添加剤の存在下、機械的性質を維持するのに有用である。疎水性ポリマーは、意図した用途において、本発明の対象物の構造一体性を維持し、分解を防ぐためのマトリックス構造を供給する。これは、例えば、圧力がかかるチューブ、精密許容差が求められる医療機器、生物学的物質または危険物質を収容する、バイアル、チューブ、ボトルなどのような対象物にとって重要な性質である。
【0053】
組成物の成分は、組成物の使用前の気体の著しい放出を回避するために、水を実質上含有しない。本発明の目的のために、組成物中の水の量が、酸放出疎水性ポリマーまたは酸放出剤から気体生成アニオンへのヒドロニウムイオンの伝送のための経路を与えないならば、組成物は水を実質上含有しないことになる。一般に、組成物成分は、そのようなヒドロニウムイオンの伝送のための経路を与えずに、合計で約1.0重量%までの水を含有し得る。好ましくは、各成分が約0.1重量%未満の水、より好ましくは約0.01〜約0.1重量%の水を含有する。微量の水は、酸放出疎水性ポリマーまたは酸放出剤の一部を加水分解して、組成物中に酸およびヒドロニウムイオンを生成できる。しかしながら、ヒドロニウムイオンの移動に十分な遊離水が存在するようになるまで、ヒドロニウムイオンが気体生成アニオンに拡散することはない。
【0054】
本発明の相溶性ポリマーブレンドは、様々な方法によって調製できる。本発明の1つの態様では、アニオン源、塩基、相溶性親水性ポリマーを含有する溶液を調製し、次いで、水、メタノールまたはエタノールのような溶媒を除去して、透明な相溶性相ガラス、または塩のナノサイズ結晶を含有するガラスを製造する。ガラスは、後に、適当な疎水性ポリマーおよび添加剤(例えば酸放出剤)と一緒に溶融混合され得る、濃縮物質に基づいた有機物である。1つのそのような態様では、アニオン源は亜塩素酸塩の商業的供給源(例えばTextone)であり、塩基は水酸化ナトリウムであり、親水性ポリマーはポリオキサゾリンまたはポリn−ビニルピロリドンである。好ましくは、活性塩の約20重量%まで、より好ましくは約15重量%まで、最も好ましくは約10重量%まで、亜塩素酸塩を用いる。気体放出アニオンを安定化し、アニオンが溶媒からの流延工程で残留することを確実にするため、閾値の塩基が好ましい。好ましくは、塩基の気体放出アニオン(例えば亜塩素酸イオン)に対する重量パーセント比は、約1:2〜約1:10、最も好ましくは約1:4である。ガラスは、親水性ポリマー中のアニオン性物質の真の固溶体であるか、またはナノ粒子の微細分散体であり得る。アニオン性物質の粒度が小さいので、ガラスベース組成物は、有利には光学的透明度を最大にし、光学的に澄明なフィルムおよび溶融加工ブレンド得るために使用され得る。
【0055】
1つの態様では、アニオン源、塩基および親水性ポリマーを含有する溶液の急速な蒸発によって、濃縮物質が生成する。別の態様では、噴霧乾燥機で、噴霧乾燥機の出口温度を粉末のTより低い温度に制限することによって、ブレンドに適した乾燥粉末を製造できる。更に別の態様では、水溶液または溶媒溶液を大面積の槽に流延し、約50〜約80℃の温度で真空乾燥して、後に粉末化できる脆い澄明なガラスを製造できる。好ましくは、アニオン、塩基および親水性ポリマー(例えば、亜塩素酸ナトリウム、水酸化ナトリウムおよびPEOXポリマー)の水可塑化混合物を溶融し、スリットダイを通して約50〜約80℃の温度で押出し、次いで、移動している剥離フィルム基材上で延伸することによって、フィルムを薄くする。続いて、フィルム延性および高い水拡散速度の維持を確実にするため、未可塑化親水性ポリマー(例えばPEOX)のTより高い温度でフィルムを空気乾燥し、その後、ローラー上でTより低い温度まで冷却する。続いて、脆い固体を、下にある剥離フィルムから外し、粉砕して濃縮粉末にする。
【0056】
ガラスまたは濃縮粉末を疎水性ポリマーと溶融混合して、気体を徐放できる溶融加工可能な相溶性ポリマーブレンドを調製できる。1つの態様では、ガラスまたは濃縮粉末を疎水性ポリマー(例えばポリエチレンアクリル酸ポリマー(PEAA))と、約35:65〜約45:55の親水性ポリマー(例えばPEOX)の疎水性ポリマーに対する比で、溶融混合する。別の態様では、約50,000ダルトンの平均分子量を有するPEOX含有ガラスを、約20,000ダルトンの平均分子量を有するPEAAと溶融混合し、制限された光散乱、熱力学安定性、および二酸化塩素ガス徐放性能を特徴とする相溶性ポリマーブレンドを調製する。押出される相溶性ポリマーブレンドは、吸湿性であり、水によって著しく可塑化され、水への暴露時にIPNを形成できる。従って、水は、組成物内部に拡散でき、PEAAのカルボキシレート基から亜塩素酸アニオンへのプロトン移動を可能にし、亜塩素酸を生成し、それによって二酸化塩素を放出する。
【0057】
別の態様では、酸放出剤は、アニオン含有親水性ポリマーに溶解でき、次いで、疎水性ポリマーと溶融混合して透明なガラスを生成できる。この態様に適した酸放出剤の例は、
ポリリン酸ナトリウム(NaPO)、ポリリン酸テトラアルキルアンモニウム、リン酸二水素カリウム(KHPO)、ポリメタリン酸カリウム((KPO[ここで、xは3〜50の範囲である。])、メタリン酸ナトリウム、ホウリン酸塩、アルミノリン酸塩、ケイリン酸塩、トリポリリン酸ナトリウムのようなポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム(K10)、リン酸ナトリウムカリウム(NaKHPO・7HO)、並びに加水分解性金属カチオン(例えば亜鉛)含有塩を包含する無機化合物である。適当なメタリン酸ナトリムは、式:(NaPO[ここで、環状分子に対してnは3〜10であり、ポリホスフェート鎖に対してnは3〜50である。]で示される。一般に無機酸放出剤は、約15重量%までの固体重量パーセントで配合され得る。
【0058】
更なる態様では、疎水性ポリマーは、溶融粘度を低下し、複合物の機械的性質を改善するために、アニオン塩配合親水性ポリマーと共押出できる。疎水性ポリマーが酸放出しないならば、溶融混合前に酸放出剤を添加できる。任意に、安定剤、可塑剤、界面活性剤、保湿剤または乾燥剤を添加できる。好ましい安定剤は水酸化アルカリを包含し、好ましい可塑剤はポリエチレンである。オクタデシル無水コハク酸のような活性な界面活性剤の含有により、ポリエチレンのような可塑剤の濃度を高めて有効に配合できるようになる。
【0059】
別の態様では、微粉末化アニオン塩源を、1種以上の親水性ポリマーおよび1種以上の疎水性ポリマーと混合し、約90〜約150℃の温度で溶融加工する。1つの方法の選択肢では、アニオン塩源、1種以上の親水性ポリマーおよび1種以上の疎水性ポリマーを含んでなる乾燥ブレンドを生成し、次いで、溶融、例えば溶融押出によって加工する。疎水性ポリマーが酸放出しないならば、溶融加工前に酸放出剤を添加できる。任意に、安定剤、可塑剤、界面活性剤、保湿剤または乾燥剤を添加できる。好ましい安定剤は水酸化アルカリを包含し、好ましい可塑剤はポリエチレンである。亜塩素酸塩は、好ましいアニオン源であり、純粋な形態またはTextone(登録商標)のような源からの純粋な亜塩素酸塩のいずれかであり得る。
【0060】
機能性の溶融加工可能な相溶性ポリマーブレンドの生成に加えて、本発明の組成物は、ホットメルト、浸漬被覆、吹付被覆、流し塗、ドライワックス、ウェットワックス、共押出、および当業者に既知のラミネート法を用いることによってフィルムとして適用され得る。
【0061】
本発明の相溶性ポリマーブレンドからポリマー物品およびフィルムを工業規模で製造することに関する一態様では、熱溶融されたポリマーを、ポリマーを凝固させる冷却水槽にストランドとして押出す。次いで、凝固されたポリオレフィンストランドを典型的にはペレット化し、規格外ペレットを除去するために分粒し、集め、例えば水蒸気バリア包装材により包装する。続いて、この技術分野で知られている方法(例えば押出)によって、ペレットを更に加工し、本発明のポリマー物品およびフィルムを製造できる。
【0062】
本発明の相溶性ポリマーブレンドは水和によって活性化される。それ故に好ましくは、水冷の間、水から保護される。1つの態様では、ワックスを表面に被覆することによって、ポリマーブレンドを水和から保護する。この態様では、押出前に不相溶性ワックスを相溶性ポリマーブレンドと混合する。ここで「不相溶性」とは、ワックスがポリマーブレンドとの制限された溶解性しか有さないことを意味する。フィルムを押出す際、ワックスは、ポリマーブレンド全体においてその表面に徐々に移動し(即ち、ワックスはポリマーブレンド表面で「ブルーム」し)、それによって、続く水冷の際の水分バリアが供給される。特定の理論に拘束されるものではないが、1つの理論によれば、ポリマーと比べて低いワックスの分子量、ワックスとポリマーとの極性の差、ワックスの炭化水素鎖の飽和レベル、ポリマー分子の配座および空間的構造、或いはそれらの組み合わせの故に、ワックス分子は溶融状態(即ち押出中)の混合物中をポリマー分子よりも自由に移動すると考えられる。形成されたポリマーフィルムまたは物品の表面へのワックス拡散速度を、「ブルーム速度」と称する。ワックスは、水とポリマー表面との間の物理的接触を遮蔽または部分的に遮蔽するバリアとして作用する。生成された相溶性ポリマーブレンド表面の平滑さは摩擦係数を低下するので、ワックスは、主にペレット表面に留まって、更なる加工時にスリップ剤および剥離剤として作用する。
【0063】
天然ワックスおよび合成ワックスの両方を使用でき、それらは以下を包含する:石油ワックス、例えばオレフィンワックス(主に直鎖飽和炭化水素)および微晶質ワックス(主にイソパラフィン含有環状飽和炭化水素)、植物蝋(例えばカルナウバ)、鉱蝋、および動物蝋(例えば鯨蝋)。オレフィンワックスおよびオレフィン油が好ましい。「オレフィンワックスまたはオレフィン油」は、一般式:C2n+2で示される炭化水素または炭化水素混合物を意味する。オレフィンワックスまたはオレフィン油の例は、パラフィンワックス、未酸化ポリエチレンワックス、並びに液体状および固体状炭化水素(例えばパラフィン油)を包含する。適当なワックスの例は、Sasol Wax(南アフリカ)から入手可能な約1000ダルトンの分子量を有するSasol Enhance 1585 waxである。
【0064】
ワックスは、ポリマーより低い分子量、好ましくは約500〜約9000ダルトン、より好ましくは約500〜約6000ダルトン、最も好ましくは約500〜約3000ダルトンの分子量を有する。ワックスの融点は、鎖長に依存して約50〜約150℃である。ワックスは好ましくは、140℃で約50〜約700cpsの範囲にブルックフィールド粘度を有し、約0.85〜約0.95の範囲に密度を有する。ワックスは典型的には、相溶性ポリマーブレンドの総重量に基づいて、約0.1〜約8重量%、好ましくは約1〜約6重量%、最も好ましくは約3.5〜約5重量%の量で本発明の相溶性ポリマーブレンドと混合される。
【0065】
ワックスおよび相溶性ポリマーブレンドは、様々な方法で混合できる。第一の態様では、これら二成分を、押出機の供給口に2つの流れで別々に供給できる。別の態様では、ワックス、アニオン、疎水性ポリマー、および親水性ポリマーを予備混合して溶融混合物を生成できる。適当な混合装置は、二軸スクリュー押出機、ニーダーまたはブレンダー(例えばヘンシェルミキサー)を包含する。別の態様では、溶媒(例えば、水、メタノールまたはエタノール)、アニオン源および相溶性疎水性ポリマーを含有する溶液にワックスを添加し、該溶液から溶媒を蒸発することによってガラスを生成できる。1つの態様では、低湿度環境を提供するために、混合装置および包装容器を窒素パージする。
【0066】
本発明の組成物からフィルム、チューブまたは他の対象物を成形するために使用される適当な溶融押出法は、押出成形、射出成形、圧縮成形、吹込成形およびこの技術分野で知られている他の溶融加工法を包含する。押出成形では、TおよびTより高い温度まで加熱するために発熱体を介してポリマーペレットを供給し、次いで、得られた可塑化ポリマーをダイに通して、所望の形状および大きさの対象物を製造する。押出成形は一般に、縫合糸、チューブおよびカテーテルを製造するために使用される。しかしながら、場合により、気体を押出機に吹き込み、可塑化ポリマーからポリマー袋およびフィルムを形成することもできる。射出成形は、T、場合によりTより高い温度までポリマーの粉末またはペレットを加熱し、金型に加圧移動し、TまたはTより低い温度まで金型内で成形ポリマーを冷却することを含む。圧縮成形では、固体状ポリマーを金型部分に入れ、金型室をもう1つの金型部分で封じ、圧力および熱を適用し、金型を満たすために軟化ポリマーを流動させる。次いで、成形ポリマー対象物を冷却し、金型から取り出す。射出成形および圧縮成形は一般に、注射器、医療機器部品および医療装置部品、食品用器物などを製造するために使用される。最後に、吹込成形は、可塑化ポリマーチューブの金型への押出、および金型を満たすためのチューブの吹込みを含む。この方法は一般に、比較的大きい容器、例えば瓶、ジャグ、カーボイおよびドラムを製造するために使用される。
【0067】
本発明の組成物は、本発明の気体生成相溶性ポリマーブレンド(第二層)が、気体放出に必要である水蒸気の浸透を制御するフィルム(第一層および第三層)の間に挟まれている、多層複合物の形成にも使用できる。そうすると、水分による活性化の際に多層複合物からの気体放出を制御するため、水溶性層への水分浸透速度を制御することによって、相溶性ポリマーブレンドが異なった放出プロフィルを示すようにすることができる。更に、周囲フィルムは、相溶性ポリマーブレンド層単独では達成できない機械的強度を複合物に与えることもできる。袋、シリンダーまたはチューブのようなカバーに成形できる多層フィルムを製造するために、本発明の複合物を、独立して押出して貼り合わせるか、または溶融体として共押出し、共凝固させることができる。この組み合わせは、数日間、数週間または数ヶ月にわたって気体(例えば二酸化塩素)雰囲気が供給されることを可能にする。適当な不水溶性透水性フィルムは、ポリ(エチレン−プロピレン)またはポリ(アクリル酸−エステルアクリレート)コポリマーまたはそれらのモノマー、例えばポリ(エチレン−プロピレン)のスルホン化塩からなり得る。ヒドロキシエチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレートのポリマーおよびコポリマー、並びにこの技術分野でよく知られている不水溶性透水性フィルムを形成する他のポリマーも適している。
【0068】
別の態様では、本発明の組成物は、本発明の相溶性ポリマーブレンドが露出層を形成し、この活性層と一緒に1層以上の非活性層が共押出される、多層複合物(例えばフィルム)の形成に使用され得る。非活性層は、相溶性ポリマーブレンド層では達成できなかった機械的強度を複合物に与え得る。多層フィルムを製造するために、本発明の複合物を、独立して押出して貼り合わせるか、または溶融体として共押出し、共凝固させることができる。その後、複合物を、チューブ、袋または包装材のようなカバーに成形できる。そこでは、活性層は内部層であり、カバーの内容物に直接露出される。
【0069】
別の態様では、第一層および/または第三層が酸放出化合物を含有でき、第二層がアニオンを含有する(即ち、アニオンと酸放出疎水性ポリマーまたは酸放出剤とは、混合されていない)。一般に、本発明の複合物との相溶性を示す温度で溶融押出して、所望の機械的性質および流動学的性質を有する透明または半透明の層を与えることができる、あらゆる酸放出ポリマーまたは酸放出剤含有ポリマーを使用してよい。
【0070】
本発明の層状複合物は、気体が表面に吸収されて細菌または他の微生物的汚染物質を死滅させるのに必要な期間、表面で、大気中水分の存在下、所望のガス放出速度(mol/秒/フィルムのcm)を維持することを目的としている。放出速度が与えられれば、選択期間にフィルムから放出される気体濃度を計算できる。例えば、放出速度を測定した後、所望の徐放期間、十分な速度で反応する気体生成アニオンの十分大きな貯留部を有するように、複合物を製造できる。
【0071】
本発明の組成物の用途は非常に多い。組成物は、後の気体(例えば二酸化塩素)の放出を伴った水分への暴露が生じ得る環境のほとんどで使用できる。組成物は、フィルム、繊維、ラミネート被膜、タブレット、チューブ、ペレット、粉末、膜、工学的材料、接着剤、および広範な最終用途のためのマルチフィルム結合層に溶融加工できる。組成物は特に、射出成形品、圧縮成形品、熱成形品、押出成形品または吹込成形品の製造に有用である。この技術分野で知られているホットメルト浸漬法またはラミネート法を用いることにより、溶融体を表面にフィルムとして適用できる。
【0072】
水活性化組成物は、水分への暴露が生じるほとんどの環境で使用できる。水分の不存在下で気体を放出しない組成物で基材表面を処理し、処理した表面を水分に暴露して組成物から表面を取り巻く雰囲気中に気体を放出させることによって、材料表面上のカビ、真菌、ウィルスおよび細菌の増殖を防ぐため、材料を消臭するため、或いは繁殖を阻害するために、組成物を使用できる。気体の放出は、表面上の細菌汚染、真菌汚染およびウィルス汚染並びにカビ増殖を抑制し、表面を消臭し、繁殖を阻害する。
【0073】
本発明の組成物は、機器、容器またはフィルム包装材の製造に特に有用である。例えば、ブルーベリー、ラズベリー、イチゴおよび他の農産物、牛挽肉パティ、鶏の笹身および他の肉、強化食品、ペットフード、乾燥食品、シリアル、穀物、或いは細菌汚染またはカビ増殖、藻または真菌に曝されるほとんどの食物を含む食品の貯蔵および陳列のための殺菌性雰囲気を生じるために、成形された容器またはフィルムを使用できる。加えて、石鹸、洗濯洗剤、書類、布地、塗料、種子、医療機器、食品容器、パーソナルケア製品、バイオ廃棄物または医療廃棄物、廃物、或いは他の医療品、家庭用品および商品も、本発明の組成物によって貯蔵および殺菌され得る。カテーテル、縫合糸、気管切開管、注射器のような用具、或いは一般にポリマーベースの医療機器または医療品を、本発明の組成物で製造できる。更に、包帯材料、手袋または衣服のような身体を覆う物品、シャワーカーテン、或いは一般にフィルム組成物を必要とするあらゆる応用物を、本発明の組成物で製造できる。組成物は特に、最大透明性が必要とされる用途、例えば、治癒を観察できる外科用包帯、または食品の品質を観察できる食品用ラップに有用である。更なる用途は、水または水ベース飲料のための汚染除去添加剤として使用するための、押出成形二酸化塩素放出ロッドの製造を含む。発泡組成物製品は、殺菌性雰囲気を生じ、機械的衝撃から保護する包装材として使用できる。
【0074】
この技術分野でよく知られている常套の被覆法、押出法、ラミネート法および含浸法によって、本発明の組成物で表面を処理できる。処理表面は一般に、容器の一部、容器内に設置される基材の一部、或いは包装フィルムまたは他の種類の包装材になる。本発明の光学的に透明な組成物を基材に適用した場合、表面に形成されたフィルムを通して、基材表面がはっきりと見える。例えば、図柄が印刷された段ボール箱上に組成物を被覆するならば、図柄ははっきりと見えたままである。組成物は透明であり、消費者はほとんど気づかないが、容器または基材は、殺菌性組成物の皮膜で保護され得る。
【0075】
定義
本発明の目的のため、用語「相溶性ポリマーブレンド」とは、ブレンドが体積全体にわたって少なくとも巨視的に均一な物理的性質を示すように、成分間に十分な相間混合および好ましい相互作用が存在する、ポリマーブレンドを意味する。
【0076】
本発明で使用されている用語「炭化水素」は、炭素元素および水素元素のみからなる有機化合物または有機基を示す。これらの部分は、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール部分を包含する。これらの部分はまた、他の脂肪族または環状炭化水素基(例えば、アルカリール基、アルケンアリール基およびアルキンアリール基)で置換された、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール部分を包含する。特に記載のない限り、これらの部分は、好ましくは1〜20個の炭素原子を含有する。
【0077】
本発明で記載されている「置換炭化水素」基とは、少なくとも1個の炭素以外の原子で置換されている炭化水素基であり、炭素鎖原子がヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、ケイ素、リン、ホウ素、イオウまたはハロゲン原子)で置換されている基を包含する。これらの置換基は、ハロゲン、ヘテロシクロ、アルコキシ、アルケンオキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテルを包含する。
【0078】
用語「アルキル」を単独で、または「ハロアルキル」および「アルキルスルホニル」のように他の用語と共に使用する場合、「アルキル」は、1〜約20個の炭素原子、好ましくは1〜約12個の炭素原子を含有する直鎖基または分枝基を包含する。より好ましいアルキル基は、1〜約10個の炭素原子を含有する「低級アルキル」基である。1〜約6個の炭素原子を含有する低級アルキル基が最も好ましい。そのような基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシルなどを包含する。
【0079】
用語「アルケニル」は、2〜約20個の炭素原子、好ましくは2〜約12個の炭素原子を含有する、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する直鎖基または分枝基を包含する。より好ましいアルケニル基は、2〜約6個の炭素原子を含有する「低級アルケニル」基である。そのような基の例は、エテニル、プロペニル、ブテニルなどを包含する。
【0080】
用語「アルカノイル」または「カルボキシアルキル」は、先に定義したようなアルキル基と結合したカルボキシ基を含有する基を包含する。アルカノイル基は置換または未置換であり得、その例は、ホルミル、アセチル、プロピオニル(プロパノイル)、ブタノイル(ブチリル)、イソブタノイル(イソブチリル)、バレリル(ペンタノイル)、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイルなどである。
【0081】
用語「アルコキシ」は、各々が1〜約10個の炭素原子のアルキル部を有する、直鎖または分枝の酸素含有基を包含する。より好ましいアルコキシ基は、1〜6個の炭素原子を含有する「低級アルコキシ」基である。そのような基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシおよびtert−ブトキシを包含する。「アルコキシ」基は、1つ以上のハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素または臭素)で更に置換され、「ハロアルコキシ」基を与え得る。そのような基の例は、フルオロメトキシ、クロロメトキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ、フルオロエトキシおよびフルオロプロポキシを包含する。
【0082】
用語「アルコキシカルボニル」は、酸素原子を介してカルボニル基と結合した、先に定義したようなアルコキシ基を含有する基を意味する。好ましくは、「低級アルコキシカルボニル」は、1〜6個の炭素原子を含有するアルコキシ基を包含する。そのような「低級アルコキシカルボニル」エステル基の例は、置換または未置換の、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニルおよびヘキシルオキシカルボニルを包含する。
【0083】
用語「アルキルアミノアルキル」は、アルキル基で置換された窒素原子を含有するアミノアルキル基を包含する。
【0084】
用語「アルキルカルボニル」は、アルキル基で置換されたカルボニル基を含有する基を包含する。より好ましいアルキルカルボニル基は、1〜6個の炭素原子を含有する「低級アルキルカルボニル」基である。そのような基の例は、メチルカルボニルおよびエチルカルボニルを包含する。
【0085】
用語「アルキルカルボニルアルキル」は、「アルキルカルボニル」基で置換されたアルキル基を意味する。
【0086】
用語「アミノカルボニル」は、式:−C(=O)NHで示されるアミド基を意味する。
【0087】
用語「アミノアルキル」は、アミノ基で置換されたアルキル基を包含する。
【0088】
用語「アラルキル」は、アリール置換アルキル基を包含する。好ましいアラルキル基は、1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基と結合したアリール基を有する「低級アラルキル」基である。そのような基の例は、ベンジル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、フェニルエチルおよびジフェニルエチルを包含する。アラルキル中のアリールは、ハロ、アルキル、アルコキシ、ハロアルキルおよびハロアルコキシで更に置換されていてよい。
【0089】
用語「スルフィニル」は、−S(=O)−で示される二価の基を包含する。
【0090】
単独でまたは連結して用いられる用語「アリール」は、1、2または3個の環を含有する炭素環式芳香族系を意味する。そのような環は、ペンダント状に互いに結合していてもよいし、または縮合していてもよい。用語「アリール」は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダンおよびビフェニルのような芳香族基を包含する。
【0091】
用語「アリールアミノ」は、1つまたは2つのアリール基で置換されたアミノ基、例えばN−フェニルアミノを意味する。アリールアミノ基は、基のアリール環部が更に置換され得る。
【0092】
用語「アシル」は、単独または「アシルアミノ」のように用語内で使用されるが、有機酸からヒドロキシルを除去した後の基によって与えられる基を意味する。
【0093】
用語「カルボキシ」または「カルボキシル」は、単独でまたは「カルボキシアルキル」のように他の用語を伴って使用されるが、−COHを意味する。
【0094】
用語「カルボニル」は、単独でまたは「アルキルカルボニル」のように他の用語を伴って使用されるが、−(C=O)−を意味する。
【0095】
用語「シクロアルケニル」は、3〜10個の炭素原子を含有する不飽和環状基を包含し、その例は、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロへキセニルおよびシクロヘプテニルである。
【0096】
用語「シクロアルキル」は、3〜10個の炭素原子を含有する基を包含する。より好ましいシクロアルキル基は、3〜7個の炭素原子を含有する「低級シクロアルキル」基である。その例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルのような基を包含する。
【0097】
用語「エステル」は、アルキル化カルボン酸またはそれらと同等のもの、例えば(RCO−イミダゾール)を包含する。
【0098】
用語「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子のようなハロゲンを意味する。
【0099】
用語「ヘテロアリール」は、窒素、酸素またはイオウ原子を含有する不飽和3〜6員ヘテロ単環式基を含む不飽和複素環式基を包含する。ヘテロアリールは、複素環式基がアリール基と縮合している基も包含する。そのような縮合二環式基の例は、ベンゾフラン、ベンゾチオフェンなどを包含する。
【0100】
用語「ヘテロシクロ」は、飽和、部分的飽和、および不飽和のヘテロ原子含有環状基を包含する。ヘテロ原子は、窒素、イオウおよび酸素から選択され得る。
【0101】
用語「水和」は、水の取り込みに関する。用語「加水分解」は、2種以上の新規な物質を生成する、水と他の物質との反応、例えば、ヒドロニウムイオン(H)を生成する、酸放出物質または酸放出基と水との反応である。
【0102】
用語「ヒドロニウム」または「ヒドロニウムイオン」は、Hである。
【0103】
用語「ヒドロキシアルキル」は、1〜約10個の炭素原子を含有し、それらのうちのいずれかが1つ以上のヒドロキシル基で置換されていてよい、直鎖または分枝アルキル基を包含する。より好ましいヒドロキシアルキル基は、1〜6個の炭素原子および1つ以上のヒドロキシル基を含有する「低級ヒドロキシアルキル」基である。そのような基の例は、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチルおよびヒドロキシヘキシルを包含する。
【0104】
用語「スルファミル」、「アミノスルホニル」および「スルホンアミジル」は、アミン基で置換されたスルホニル基を意味し、アミン基で置換されたスルホンアミドであり、スルホンアミド(−SONH)である。
【0105】
用語「スルホニル」は、単独またはアルキルスルホニルのように他の用語と連結して使用されるが、各々、二価の基−SO−を意味する。「アルキルスルホニル」は、スルホニル基に結合したアルキル基を包含する。ここで、アルキル基は先に定義されている。より好ましいアルキルスルホニル基は、メチルスルホニル、エチルスルホニルおよびプロピルスルホニルを包含する。用語「アリールスルホニル」は、スルホニル基に結合した、先に定義したようなアリール基を包含する。そのような基の例は、フェニルスルホニルを包含する。
【0106】
以下の実施例は、本発明の好ましい態様および有用性を説明するために示したものであって、特許請求の範囲に記載がある場合を除き、本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0107】
共押出された三層フィルムおよび二層フィルムのClO放出特性を評価した。フィルムは、水分活性化ClO活性層および二層のバリア層からなっていた。第一の態様では、活性層をバリア層間に共押出した(即ち、活性層は中間層であった)。第二の態様では、活性層を、チューブまたは袋の内層を形成することを目的とした露出層として共押出した(即ち、活性層は内層であった。)。外層は、同じ材料(Lupolen(登録商標)1806H)からなっていた。試験に用いた成分を表1に示す。典型的な押出パラメーターを表2に示す。表2は、各層を別々の押出機で押出した試験フィルム番号006を製造するために用いたパラメーターを示す。通例、1種以上のポリマー、亜塩素酸ナトリウムおよび可塑剤の乾燥混合物を溶融押出することによって、活性層を製造した。この実施例で評価したフィルム全ての組成を、表3に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【0110】
【表3】

【0111】
試験番号002、006、007および010の破断力および破断点伸びを、50mm×15mm寸法の試料を用いて標準的な引張試験機(Zwick(登録商標)1425)で測定した。引張速度は500mm/分に固定した。結果を表4に示す。表4において、MDは縦方向であり、TDは横断方向である。
【0112】
【表4】

【0113】
機械的性質は、35リットルまでの容積を有する標準的な廃棄物用袋の製造に十分であった。
【0114】
様々な湿度水準での表3に示したフィルムのClO放出特性を、表5〜10に示す。ClO濃度は、電気化学(EC)ガスセンサー(Citicel 3MCLH)を用いて測定した。濃度を100万分の1(ppmまたはμL/L)の範囲で測定するために、各センサーを調整した。8個のセンサーからの濃度データを、データ収集モジュール(Iotech)および制御ソフトウェア(Labview)を用いて、指示した期間、コンピューターによって連続的に記録した。適当な一定湿度源を保持する小さいプラスチック製コップが入った250ml容のガラス製瓶の蓋に、ECセンサーを取り付けた。例えば、瓶内部に約80%の相対湿度を生じるために飽和硫酸アンモニウム溶液を使用した。
【0115】
約1gの重量および約18cm×12〜14cmの寸法を有する長方形フィルム試料を、大きな共押出フィルムから切り出した。フィルム試料を瓶の中に置き、次いで、蓋/センサー一式を瓶に固定し、続いて、これを21℃にサーモスタット制御された閉鎖容器の中に置いた。そして、データ収集システムを作動させ、その後5分毎に、ClO濃度を測定して記録した。結果を以下の表5〜10に示す。
【0116】
【表5】

【0117】
【表6】

【0118】
【表7】

【0119】
【表8】

【0120】
【表9】

【0121】
【表10】

【実施例2】
【0122】
PEAA−PEOX親水性ポリマーブレンドの目視検査および光学顕微鏡検査
PEOXと、エチレン−アクリル酸およびエチレン−メタクリル酸コポリマーであるPEAA 15、PEAA 20(Dow Primacor製低分子量エチレンアクリル酸コポリマー(20重量%のアクリル酸コモノマー))並びにポリ(ランダム−エチレン−メタクリル酸)(PEMAA)各々との相溶性を試験するために、5,000および50,000ダルトンMWのPEOX(Polymer Chemistry Innovationsから入手可能)および上記コポリマー(Aldrichから入手可能)のTHF溶液各々を正確な割合で混合し、流延溶液を調製した。PEOXは室温でTHFに迅速に溶解したが、PEAA 15およびPEAA 20は室温でTHFに比較的溶けにくく、完全溶解のためにTHFを沸騰させる必要があった。
【0123】
まず、THF溶液をスライドガラス上に流延することによってフィルムを製造した。表11に示したように、温風で急速に乾燥したフィルムは光学的に透明であり、ゆっくりと乾燥したフィルムは幾分半透明であった。この半透明は、真空下、80℃で12時間加熱することによって除去できた。この温度は、各成分のTおよびアクリレートコポリマーのエチレン成分のTより高い。
【0124】
透明であることに加えて、少なくとも50重量%のコポリマーを含有するフィルムは強靱で弾性があり、破断する前に数百パーセント伸ばすことができた。ブレンドされていない未可塑化PEOXは、室温で脆かった。
【0125】
【表11】

【0126】
表11において、PEOX 5およびPEOX 50は、各々、5,000MWのポリ(エチルオキサゾリン)および50,000MWのポリ(エチルオキサゾリン)である。PEAA 15およびPEAA 20は、各々、15重量%のアクリル酸および85重量%のエチレンを含有するポリ(ランダム−エチレン−アクリル酸)、並びに20重量%のアクリル酸および80重量%のエチレンを含有するポリ(ランダム−エチレン−アクリル酸)である。PEMAA 15は、15重量%のメタクリル酸および85重量%のエチレンを含有するポリ(ランダム−エチレン−メタクリル酸)である。
【実施例3】
【0127】
圧縮成形PEOX−PEAAフィルムの水での膨潤
0.3690gの重量および0.3mmの平均厚さを有する圧縮成形した60%PEAA 20−40%PEOX 50フィルムを、脱イオン水に室温で1時間浸した。フィルムは、0.4985gまで35%重量増加し、0.325mmまで8.3%厚さ増加し、ゴム弾性を維持していた。水で膨潤したフィルムは、IPN形態を示唆する僅かな曇りを伴っていたが、概ね透明であった。
【実施例4】
【0128】
酸性二酸化塩素溶液に対するPEOXの安定性
亜塩素酸ナトリウムおよびPEOX 50の酸性水溶液を、UV−可視分光法によって25℃で数時間にわたってモニタリングした。この間、PEOX 50の分解は観察されなかった。加えて、過剰PEOX水溶液中二酸化塩素の試料は、25℃で2週間にわたって変色しなかった。このことは、たとえあったとしても二酸化塩素とPEOXとの反応が僅かにすぎないことを示している。
【実施例5】
【0129】
塩基性溶液中でのPEOXの安定性
Textone(即ち亜塩素酸ナトリウム)の水溶液は、典型的には塩基性であり、溶液中での亜塩素酸アニオンの長期安定性は、塩基性pHに依存すると考えられる。更に、低濃度のプロトンでさえ不安定な亜塩素酸を少量生成でき、不均化により二酸化塩素が生成しやすいと考えられる。
【0130】
水から流延されたPEOXとTextoneとのブレンドでは、ある程度の亜塩素酸塩分解が見られた。特定の理論に拘束されるものではないが、1つの理論およびこれまでの知見に基づくと、水が蒸発するにつれて、亜塩素酸塩がPEOXアミド基によって錯化され、それによってプロトンとの反応が促進されて亜塩素酸が生成できると考えられる。更に、混合物に水酸化物アニオンを添加すると、亜塩素酸塩を安定化できるが、PEOXのアミド部を潜在的に切断することもできると考えられる。そのメカニズムを調べるため、水酸化ナトリウム含有PEOX水溶液(pH>11)を一晩撹拌し、プロトン核磁気共鳴(HNMR)によって分析した。暴露物質のスペクトルは、本質的に、PEOX標準のものと一致した。このことは、PEOXを伴った塩基性溶液中で亜塩素酸塩が安定であることを示している。PEOX結合のアミド部の切断から生じるプロピオン酸の痕跡は見られなかったので、HNMRは更に、塩基性溶液中でのPEOXの安定性を示した。
【実施例6】
【0131】
PEOX、NaOHおよびTextoneまたはポリリン酸ナトリウムの溶媒流延ブレンドの調製
約0.25g/mlのメタノール中PEOX 50、並びに約0.33g/mlのNaOHおよびTextone(合計で)を、様々な混合比で混合した。混合溶液は、一時的に曇った後に澄明になった。溶液を約0.5インチ深さのステンレス製の槽に直ちに移し、次いで、約50℃の温度で約10時間真空乾燥した。乾燥工程中、物質は発泡して脆い透明なガラスになり、このガラスは容易に微粉末に粉砕できた。
【0132】
70℃で真空蒸発を実施した以外は同様に、Textone、ポリリン酸ナトリウム(NaPO−Calgon)またはリン酸二水素ナトリウムを添加して、PEOX 50およびNaOHの水溶液を調製した。水から流延したPEOX−ポリリン酸塩ガラスは、無機成分15重量%まで透明であった。表12は流延組成物を示す。
【0133】
【表12】

【実施例7】
【0134】
水およびメタノールからのPEOX 50、TextoneおよびNaOHブレンドの流延中の亜塩素酸塩の安定性
PEOX 50、TextoneおよびNaOHを含有する透明なガラスは、水溶液またはメタノール溶液のいずれかを、各々50℃および70℃で、一晩真空蒸発することによって製造できる。酸性条件下での亜塩素酸アニオンによるヨウ素の転化、それに続く既知の濃度のチオ硫酸ナトリウムでのヨウ素のヨウ化物への逆滴定によって、粉末および押出フィルム中の残留亜塩素酸塩(Textone)の割合(%)を測定した。結果を、残留亜塩素酸塩のパーセントとして報告する。
【0135】
室温まで冷却した直後に、0〜6重量%濃度の水酸化ナトリウムを含有する真空乾燥粉末を滴定したところ、流延中の亜塩素酸ナトリウムの残留は水酸化ナトリウム濃度に依存することが示された。亜塩素酸アニオンの分解は、メタノールおよび水の各々から流延された2重量%未満の水酸化ナトリウムを含有するガラスにおいて明らかであった(表13)。水から流延したガラスは黄色であり、二酸化塩素臭を有していた。
【0136】
メタノールから流延したガラスでは、3重量%NaOHで流延した後、約87%まで亜塩素酸塩収率が上昇した。この収率は、より高い塩基濃度では向上しなかった。得られた亜塩素酸塩回収率の副極大は、約2重量%水酸化ナトリウムで水から流延したガラスにおいて現れ、亜塩素酸塩回収率は、より高い塩基濃度で徐々に上昇した。
【0137】
【表13】

【実施例8】
【0138】
PEOX、水酸化ナトリウムおよびTextoneを含有するガラスの熱安定性
高温での分散(溶解)亜塩素酸塩の熱安定性を測定するため、89重量%のPEOX、8重量%のTextoneおよび3重量%の水酸化ナトリウムを含有するガラスを、様々な温度で30分間加熱した。その後、残留亜塩素酸塩濃度を測定するため、粉末を実施例7に記載した方法に従って滴定した(表14)。
【0139】
【表14】

【0140】
実施例9〜17
PEOX−PEAAブレンドの押出
実施例9〜17では、様々な押出相溶性ポリマーブレンドを、下記物質を用いて調製した:(1)亜塩素酸塩含有物質、例えば、Textone(登録商標)粒子(80%の亜塩素酸ナトリウム、18%の塩化ナトリウムおよび2%の炭酸ナトリウム)、コア(Textone(登録商標)含有ポリケイ酸ナトリウムガラス)、Microsphere(登録商標)(アルカリ金属ポリリン酸塩およびアルカリ土類金属ポリリン酸塩を伴った噴霧乾燥コア材料)、並びにそれらの微分散ブレンド、(2)水分活性化酸放出化合物、例えば、ポリリン酸ナトリウム(SPP)、リン酸二水素ナトリウム(SPMB)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、および(3)機械的性質を向上させる働きをするポリエチレン(Exceed PEおよびExxon Mi 20)。
【0141】
相溶性ポリマーブレンドフィルムは一般に、所望の割合でPEAA(ペレット)およびPEOX(フレーク)を用いて押出を開始し、次いで、予め混合した無機成分を押出機ホッパーに添加することによって製造した。無機−有機混合物が押出機に入った時点で、PEAA 20-PEOX 50の最終添加量を、押出機から無機物質を除去するための初期適用に見られたのと同じ割合で添加した。この方法は、押出機スクリューがポリマーで予備被覆された場合に、混合を向上させるために用いた。しかしながら、無機適用物質を急速に導入した場合でさえ、適用された初期および最終PEAA 20-PEOX 50について、ある程度の相互拡散が予想された。このように、フィルム中の無機物質の濃度は、押出時間とともに、上昇し、安定し、下降したが、理論値には達しなかった。
【0142】
形成されたポリマーフィルムからの二酸化塩素放出を、0.5〜1gの押出フィルム試料を用いて評価し、それから押出物の最も活性な範囲を予想した。測定装置は実施例1に記載したが、幾つかの場合では、ECセルを通して有意量の二酸化塩素が漏出した。漏出量は、瓶の蓋、蓋を介したECの接続、およびECセル内部のシールの組み合わせによって形成されたシールの質に依存して、瓶毎に異なっていた。測定は全て、28℃でサーモスタット炉内で実施した。
【実施例9】
【0143】
純粋なポリマーおよびそれらのブレンド
50/50、60/40および70/30(PEAA 20-PEOX 50)の透明な10milフィルムを、スロット付混合スクリューを備えた二軸スクリュー押出機を用いて、100℃で、押出時間約9分で製造した。その高透明度は、相の十分な相溶性を示していた。これらのフィルムを、直交偏光子を用いて光学顕微鏡で観察したところ、復屈折であることが分かった。特定の理論に拘束されるものではないが、復屈折は、おそらく装置方向への高配向度を示しており、配向は、押出機出口に設置された冷却ローラーの速い巻取り速度によってもたらされ得ると考えられる。
【0144】
PEOX 50は100℃より高い温度で容易に押出され、37℃では延性があるが、それより低い温度では極めて脆い透明フィルムになった。100℃より低い温度では、スクリューの運転に高いトルクを要するので、PEOX 50の押出しは事実上不可能であった。一方、PEAA 20、並びにPEAAとPEOXとの混合物は、90℃以上の温度で澄明なフィルムに押出すことができた。
【実施例10】
【0145】
Microsphere(登録商標)ブレンド
亜塩素酸ナトリウム含有ポリケイ酸ナトリウムガラス(Microsphere(登録商標)G71およびProchem MS)を含んでなる二酸化塩素放出組成物20重量%を含有する60/40PEAA 20-PEOX 50ブレンドを、様々な温度(90〜120℃)で押出した。光学顕微鏡での観察により、高復屈折フィルムにおいて、長軸が押出方向を向いた多量の楕円状気泡が明らかになった。フィルムは、これらの気泡の応力集中効果の故に、押出方向に容易に破砕した。ただし、この傾向は湿った空気に暴露すると小さくなった。50℃まで加熱することによって復屈折を排除し、気泡が球状になるようにした。気泡の原因は正確には知られておらず、特定の理論に拘束されるものではないが、気泡は、フィルム製造工程中にMicrosphere(登録商標)によって放出されたClOであると考えられる。押出温度が90℃であり、十分乾燥したMicrosphere(登録商標)を用いた場合でさえ、気泡は観察された。Microsphere(登録商標)が不完全に分散する傾向も見られた。
【実施例11】
【0146】
コアブレンド
実施例10のコア物質20重量%を含有する60/40PEAA 20-PEOX 50ブレンドを、90℃で押出した。第1のケースでは、PEAAが酸放出剤であった。第2のケースでは、ポリリン酸塩粉末(フードプロセッサーで乾燥粉砕)も、同じ温度での押出し中に、酸放出剤として添加した。曇った脆いフィルムを得た。
【実施例12】
【0147】
Textone粉末(粗)ブレンド
Textone(8重量%のブレンダー粉砕粉末)並びに酸放出化合物であるポリリン酸ナトリウムおよびリン酸二水素ナトリウムを含有するTextone(5重量%)を伴った60/40PEAA 20-PEOX 50ブレンドを、90℃で押出した。全てのケースにおいて、機械方向に沿って引き裂かれて広がった、細長い気泡がかなり多数見られた。
【実施例13】
【0148】
PEOX相溶性のTextoneおよびリン酸塩のブレンド
この試験では、メタノールまたは水のいずれかからPEOX 50と共に溶媒流延されるTextone(様々な量の水酸化ナトリウムを含有)またはリン酸塩を、粉砕粉末として利用し、これを適当な量のPEAAと押出前に混合した。幾つかのケースでは、フィルム靱性を改善するために、20〜約70重量%のポリエチレン(Exceed PEおよびExxon MI 20 PE)を混合物に添加した。最後に、3〜15重量%のアルケニル無水コハク酸(ASA)を、酸放出剤、可塑剤およびポリエチレン相溶化剤として幾つかのブレンドに添加した。
【0149】
予備溶解したTextoneまたはポリリン酸塩を含有する押出フィルムは、極めて透明であり、気泡を含有せず、Textone粒子含有物質より実質上良好な機械的強度を有した。ポリエチレン含有フィルムは、半透明ないし透明であり、向上した靱性を示した。ASAはフィルムを更に可塑化した。
【0150】
これらのフィルムの高い光学的透明性および向上した靱性は、無機粒子がPEOX 50-PEAAブレンド内で500Åより小さい直径を有することを示している。
【0151】
【表15】

【0152】
【表16】

【0153】
押出物は全て、スクリュー速度20rpmで、円錐形二軸スクリュー押出機を用いて処理した(スクリュー反復距離/スクリュー長さ=1/20)。押出物全てについて、供給ホッパーを窒素ガスパージした。
【実施例14】
【0154】
押出ポリマーフィルムの亜塩素酸塩含有量
実施例13の試験番号4および5の、20重量%のMicrosphere(登録商標)(100℃で12時間更に真空乾燥されたProchem MS)を含有する押出フィルムを、ポリマー成分を除去するために、乾燥過酸化物不含有THFで2回抽出し、無機粉末を分離した。滴定法を用いたところ、PEOX 50ベースフィルム(試験番号5)中の亜塩素酸塩の約100%が120℃での押出工程に耐えたのに対し、同じ温度でPEAAフィルム(試験番号4)を押出した後は50%の亜塩素酸塩しか存在しなかったことが分かった。このことは、PEAAのカルボン酸基が、120℃である程度Microsphere(登録商標)中の亜塩素酸塩と反応することを示している。
【実施例15】
【0155】
表17および18は、ポリリン酸ナトリウムを含まない(実施例13の試験番号8)または含んだ(実施例13の試験番号9)Textone粉末含有ブレンドフィルムの試料0.5gを、80%RHおよび58%RHで各々試験した結果を示す。これらのフィルムは、コア含有フィルムより多量の亜塩素酸塩を含有していたので、80%RHで試験した場合に30倍以上の放出最大量を示した。80%RHでは、全てのケースにおいて、約20時間で最大放出が起こった。58%RHで試験した物質では、20時間で少ない放出最大量になり、続いて、100〜200時間の間でより大きくよりブロードな最大量が現れた。実験は9日間で停止したが、物質は数週間、二酸化塩素を生成し続けると考えられる。
【0156】
【表17】

【0157】
【表18】

【実施例16】
【0158】
表19では、粉末化Textone含有ブレンドに粉末化リン酸塩を添加した効果を調べた。ポリリン酸ナトリウム含有ブレンド(実施例13、試験番号9)は、おそらくはポリリン酸塩の含水性の故に、Textoneのみを含有するブレンド(実施例13、試験番号8)またはリン酸二水素ナトリウムを含有するブレンド(実施例13、試験番号10)より活性であることが分かった。しかしながら、この比較は定性的なものにすぎない。水酸化ナトリウムによって安定化されていない予備溶解Textoneを含有する物質(実施例13、試験番号11)は、ほとんどまたは全く活性ではないことが分かった。
【0159】
【表19】

【実施例17】
【0160】
PEOX 50、および3重量%NaOHにより安定化したTextoneを含有する透明な60/40PEAA−PEOXブレンドの二酸化塩素放出特性を、58%および80%の相対湿度で試験した。かなり強靱な透明フィルムから十分な二酸化塩素放出量(37ppm)が見られたという点で、実施例13試験番号18は、フィルムの中で最良の特性を示した(表20)。80%RHでは、大きな放出ピークが見られ、放出が数日間続いた。58%RHでは、放出レベルは、1ppmに達するまで4日間かけて徐々に増加した。放出レベルは2週間この一定値を維持し、その後、急速に低下してゼロになった。
【0161】
【表20】

【実施例18】
【0162】
工業規模でのペレット化操作で、本発明の組成物を評価した。
完全混合マスターバッチを、(i)Aquazol-50エチルオキサゾリン親水性ポリマー(PEOX)およびフタル酸ジブチル(DBP)を混合し、(ii)公称粒度20μmの亜塩素酸ナトリウム粉末とPEOX−DBP混合物とを混合し、並びに(iii)約1000ダルトンの分子量を有するSasol Enhance 1585ワックス(Sasol Wax(南アフリカ)から入手可能)およびDuPont Elvax 3170親水性エチレンビニルアルコール疎水性ポリマー(EVA)とPEOX−DBP−亜塩素酸ナトリウム混合物とを混合することによって調製した。最終マスターバッチは、約40重量%のPEOX、約6重量%の粉末化亜塩素酸ナトリウム、約4重量%のDBP、約45重量%のEVA、および約5重量%のワックスを含有していた。マスターバッチを、窒素雰囲気下で供給ホッパーに添加し、二軸スクリュー30mm押出機(Coperion Werner Pfleiderer GmbH & Co. model ZSK-30 compounder)で押出した。供給ホッパーと押出機ダイとの間の4つのゾーン、並びに押出機ダイで、温度を測定した。供給ホッパーに一番近いゾーン(ゾーン1)での温度は約82〜88℃、ゾーン2での温度は約82〜88℃、ゾーン3での温度は約82〜88℃、ゾーン4での温度は約71〜82℃、押出機ダイでの温度は約107〜121℃であった。押出中、押出しされたポリマー表面でワックスのブルームが見られた。
【0163】
ダイから押出されたマスターバッチを、水槽に浸し、約27℃未満の温度へ、約3〜5秒間の滞留時間で冷却した。ワックス被膜は、水分活性ポリマーと冷却水との間のバリアを供給した。冷却に続いて、押出されたストランドの表面から、エアナイフで過剰な水を除去した。次いで、押出されたマスターバッチを、ペレタイザーで断片に切断した。約90%の亜塩素酸塩回収率で、395kgのペレット化材料を製造した。
【0164】
マスターバッチ(以下ではパートAとして記載)からフィルムを製造した。マスターバッチペレットをエチレンメタクリル酸(DuPont Nucrel(登録商標))(以下ではパートBとして記載)と1:1の比で混合し、シングルリップエアリングおよび0.064cmに設定したダイギャップを伴って2.5cm吹込ダイを有するKillion Lab Lineを用いて、3〜5milの単層フィルムを吹込成形した。膨張比は1.2:1〜4:1に変化させ、コロナ処理は用いなかった。フィルム製造条件を表21に示す。チューブと一巻きシートの両方の形状でフィルムを製造し、密封袋に保存した。
【0165】
NaClO、NaClOおよびNaClの含有量について、フィルムを分析し、その結果を表21に重量パーセントで示した。ClO放出量についてフィルムを分析し、2回のランの結果の平均を表22に示す。
【0166】
【表21】

【0167】
【表22】

【0168】
本発明は、様々な変形および代替形態をとることが可能であると同時に、その特定の態様は、実施例によって示され、本明細書で詳細に説明されている。しかしながら、本発明が記載した特定の形態に制限されることは意図されておらず、それどころか、本発明の趣旨が、特許請求の範囲に定義したような本発明の意図および範囲内で、変形、同等および代替の全てをカバーすることを理解すべきである。
【0169】
上記したことを考慮すると、本発明の複数の目的が達成され、他の有利な結果が得られたことが分かる。
【0170】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記方法では様々な変更が実施できるので、上記説明に含まれるかまたは添付図面に示されたことは全て、説明であって制限するものではないと解釈されるべきであることを意図する。
【0171】
本発明の要素または本発明の好ましい態様を開示する場合、冠詞「a」、「an」、「the」および「said」は、1つ以上の要素が存在することを意味すると解釈される。用語「comprising」、「including」および「having」は、列挙した要素以外の更なる要素が存在し得ることを包含し、意味すると解釈される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロニウムイオンと反応して気体を生成できるアニオン;
100℃未満のガラス転位温度を有する親水性ポリマー;並びに
疎水性ポリマーおよび酸放出剤、または酸放出疎水性ポリマーのいずれか
を含んでなる、細菌汚染、真菌汚染およびウィルス汚染、並びにカビの生育を抑制するための相溶性ポリマーブレンドであって、水を実質上含有せず、酸放出剤または酸放出疎水性ポリマーの水和時に気体を生成かつ放出できる、相溶性ポリマーブレンド。
【請求項2】
光学的に透明である請求項1に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項3】
疎水性ポリマーおよび親水性ポリマーが、水和時に相互貫入網目を形成する、請求項1または2に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項4】
押出成形、圧縮成形、吹込成形または射出成形によって、約90℃〜約150℃の温度で溶融加工できる、請求項1〜3のいずれかに記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項5】
温度が約90℃〜約140℃である請求項4に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項6】
温度が約90℃〜約130℃である請求項5に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項7】
温度が約90℃〜約120℃である請求項6に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項8】
疎水性ポリマーが約10,000〜約30,000ダルトンの分子量を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項9】
疎水性ポリマーが、メチレン、エチレン、ポリプロピレン、イミド、塩化ビニルまたはビニルアルコールおよび少なくとも1種の酸放出モノマーから生成されたコポリマーまたはターポリマーである、請求項1〜8のいずれかに記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項10】
酸放出モノマーが、酢酸ビニル、ビニル酸、メタクリル酸、メタクリル酸アセテート、イタコン酸またはイタコン酸アセテートを含んでなる、請求項9に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項11】
酸放出剤が、リン酸水素アルカリ、ポリリン酸水素アルカリ、無水ホスホケイ酸、無水ホスホケイ酸脂肪酸エステルまたはアルケニル無水コハク酸を含んでなる、請求項1に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項12】
親水性ポリマーがポリオキサゾリンを含んでなる、請求項1〜11のいずれかに記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項13】
ポリオキサゾリンが式:
【化1】

[式中、Rは、1〜4個の炭素原子を含有する置換または未置換アルキレン基であり、Rは、置換または未置換アリール基、或いは1〜6個の炭素原子を含有する置換または未置換アルキル基であり、nは、ポリマーに約100,000ダルトン未満の分子量を与える整数である。]
で示される、請求項12に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項14】
が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルおよびイソブチルからなる群から選択される、請求項13に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項15】
アニオン安定化剤を更に含んでなる、請求項1〜14のいずれかに記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項16】
アニオン安定化剤が金属水酸化物を含んでなる、請求項15に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項17】
アニオンが、亜塩素酸イオン、塩化物イオン、重亜硫酸イオン、亜硫酸イオン、重炭酸イオン、亜硝酸イオン、シアン化物イオン、硫化物イオン、水硫化物イオンおよび次亜塩素酸イオンからなる群から選択される、請求項1〜16のいずれかに記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項18】
亜塩素酸イオンが亜塩素酸ナトリウムまたはケイ酸塩−亜塩素酸塩混合物として存在する、請求項17に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項19】
可塑剤を更に含んでなる、請求項1〜18のいずれかに記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項20】
ヒドロニウムイオンと反応して気体を生成できるアニオン;
式:
【化2】

[ここで、Rは、1〜4個の炭素原子を含有する置換または未置換アルキレン基であり、Rは、置換または未置換アリール基、或いは1〜6個の炭素原子を含有する置換または未置換アルキル基であり、nは、ポリマーに約100,000ダルトン未満の分子量を与える整数である。]
で示される構造を有する親水性ポリマー;並びに
疎水性ポリマーおよび酸放出剤、または酸放出疎水性ポリマーのいずれか
を含んでなる、細菌汚染、真菌汚染およびウィルス汚染、並びにカビの生育を抑制するための相溶性ポリマーブレンドであって、水を実質上含有せず、酸放出剤または酸放出疎水性ポリマーの水和時に気体を生成かつ放出できる、相溶性ポリマーブレンド。
【請求項21】
光学的に透明である請求項20に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項22】
親水性ポリマーおよび疎水性ポリマーが、水和時に相互貫入網目を形成する、請求項20または21に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項23】
押出成形、圧縮成形、吹込成形または射出成形によって、約90℃〜約150℃の温度で加工される、請求項20〜22のいずれかに記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項24】
温度が約90℃〜約140℃である請求項23に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項25】
温度が約90℃〜約130℃である請求項24に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項26】
温度が約90℃〜約120℃である請求項25に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項27】
疎水性ポリマーが約10,000〜約30,000ダルトンの分子量を有する、請求項20に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項28】
親水性ポリマーが約100℃未満のガラス転位温度を有する、請求項20に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項29】
酸放出疎水性ポリマーが、メチレン、エチレン、ポリプロピレン、イミド、塩化ビニルまたはビニルアルコールおよび少なくとも1種の酸放出モノマーを含んでなるコポリマーまたはターポリマーである、請求項20に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項30】
酸放出モノマーが、酢酸ビニル、ビニル酸、メタクリル酸、メタクリル酸アセテート、イタコン酸またはイタコン酸アセテートを含んでなる、請求項29に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項31】
酸放出剤が、リン酸水素アルカリ、ポリリン酸水素アルカリ、無水ホスホケイ酸、無水ホスホケイ酸脂肪酸エステルまたはアルケニル無水コハク酸を含んでなる、請求項20に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項32】
アニオン安定化剤を更に含んでなる、請求項20〜31のいずれかに記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項33】
アニオン安定化剤が金属水酸化物を含んでなる、請求項32に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項34】
アニオンが、亜塩素酸イオン、塩化物イオン、重亜硫酸イオン、亜硫酸イオンおよび重炭酸イオンからなる群から選択される、請求項20〜33のいずれかに記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項35】
亜塩素酸イオンが亜塩素酸ナトリウムまたはケイ酸塩−亜塩素酸塩混合物として存在する、請求項34に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項36】
可塑剤を更に含んでなる、請求項20〜35のいずれかに記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項37】
ヒドロニウムイオンと反応して気体を生成できるアニオン;
約100℃未満のガラス転位温度を有する親水性ポリマー;並びに
酸放出疎水性ポリマー
を含んでなる、細菌汚染、真菌汚染およびウィルス汚染、並びにカビの生育を抑制するための相溶性ポリマーブレンドであって、酸放出疎水性ポリマーの水和時に、相分離して相互貫入網目を形成でき、気体を生成かつ放出できる、相溶性ポリマーブレンド。
【請求項38】
光学的に透明である請求項37に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項39】
押出成形、圧縮成形、吹込成形または射出成形によって、約90℃〜約150℃の温度で加工される、請求項37または38に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項40】
温度が約90℃〜約140℃である請求項39に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項41】
温度が約90℃〜約130℃である請求項40に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項42】
温度が約90℃〜約120℃である請求項40に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項43】
酸放出疎水性ポリマーが約10,000〜約30,000ダルトンの分子量を有する、請求項37に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項44】
酸放出疎水性ポリマーが、メチレン、エチレン、ポリプロピレン、イミド、塩化ビニルまたはビニルアルコールおよび少なくとも1種の酸放出モノマーを含んでなるコポリマーまたはターポリマーである、請求項43に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項45】
酸放出モノマーが、酢酸ビニル、ビニル酸、メタクリル酸、メタクリル酸アセテート、イタコン酸およびイタコン酸アセテートを含んでなる、請求項44に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項46】
親水性ポリマーがポリオキサゾリンである、請求項37〜45のいずれかに記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項47】
ポリオキサゾリンが式:
【化3】

[式中、Rは、1〜4個の炭素原子を含有する置換または未置換アルキレン基であり、Rは、置換または未置換アリール基、或いは1〜6個の炭素原子を含有する置換または未置換アルキル基であり、nは、ポリマーに約100,000ダルトン未満の分子量を与える整数である。]
で示される、請求項46に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項48】
が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルおよびイソブチルからなる群から選択される、請求項47に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項49】
アニオン安定化剤を更に含んでなる、請求項37〜48のいずれかに記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項50】
アニオン安定化剤が金属水酸化物を含んでなる、請求項49に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項51】
アニオン源が、亜塩素酸イオン、塩化物イオン、重亜硫酸イオン、亜硫酸イオン、重炭酸イオン、亜硝酸イオン、シアン化物イオン、硫化物イオン、水硫化物イオンおよび次亜塩素酸イオンからなる群から選択される、請求項37〜50のいずれかに記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項52】
亜塩素酸イオンが亜塩素酸ナトリウムまたはケイ酸塩−亜塩素酸塩混合物として存在する、請求項51に記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項53】
可塑剤を更に含んでなる、請求項37〜52のいずれかに記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項54】
酸放出剤または酸放出疎水性ポリマーの加水分解を伴わずに気体を生成かつ放出できる、請求項1〜53のいずれかに記載の相溶性ポリマーブレンド。
【請求項55】
ヒドロニウムイオンと反応して気体を生成できるアニオン;約100℃未満のガラス転位温度を有する親水性ポリマー;並びに疎水性ポリマーおよび酸放出剤、または酸放出疎水性ポリマーのいずれかを含んでなる、細菌汚染、真菌汚染およびウィルス汚染、並びにカビの生育を抑制するための相溶性ポリマーブレンドであって、水を実質上含有せず、酸放出剤または酸放出疎水性ポリマーの水和時に気体を生成かつ放出できる、相溶性ポリマーブレンド;並びに
相溶性ポリマーブレンドの上部表面と接触する上部水分調整層、および相溶性ポリマーブレンドの下部表面と接触する下部水分調整層
を含んでなる、気体を徐放させるための多層複合物であって、上部または下部水分調整層に浸透した水分が相溶性ポリマーブレンドを水和して、多層複合物から気体を生成かつ放出させる、多層複合物。
【請求項56】
上部または下部水分調整層がポリ塩化ビニルポリマーを含んでなる、請求項55に記載の複合物。
【請求項57】
液体、ヒドロニウムイオンと反応して気体を生成できるアニオン、および一般式:
【化4】

[式中、Rは、1〜4個の炭素原子を含有する置換または未置換アルキレン基であり、Rは、置換または未置換アリール基、或いは1〜6個の炭素原子を含有する置換または未置換アルキル基であり、nは、ポリマーに約100,000ダルトン未満の分子量を与える整数である。]
で示される親水性ポリオキサゾリンポリマーの混合物またはスラリーを生成し;
液体を除去してガラスを生成し;
疎水性ポリマーおよび酸放出剤、または酸放出疎水性ポリマーのいずれかと、ガラスとを溶融混合して相溶性ポリマーブレンドを生成する
ことを含む、約150℃未満の溶融温度を有する相溶性ポリマーブレンドの製造方法。
【請求項58】
液体が水またはメタノールを含んでなる請求項57に記載の方法。
【請求項59】
アニオンが亜塩素酸イオンを含んでなる請求項57または58に記載の方法。
【請求項60】
混合物が水酸化アルカリを更に含んでなる請求項57〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
水酸化アルカリが水酸化ナトリウムを含んでなる請求項60に記載の方法。
【請求項62】
ポリオキサゾリンポリマーがポリエチルオキサゾリンを含んでなる請求項57〜61のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
酸放出剤が、リン酸水素アルカリ、ポリリン酸水素アルカリ、無水ホスホケイ酸、無水ホスホケイ酸脂肪酸エステルまたはアルケニル無水コハク酸を含んでなる、請求項57に記載の方法。
【請求項64】
酸放出疎水性ポリマーが、メチレン、エチレン、ポリプロピレン、イミド、塩化ビニルまたはビニルアルコールおよび少なくとも1種の酸放出モノマーを含んでなるコポリマーまたはターポリマーである、請求項57に記載の方法。
【請求項65】
酸放出モノマーが、酢酸ビニル、ビニル酸、メタクリル酸、メタクリル酸アセテート、イタコン酸またはイタコン酸アセテートを含んでなる、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
混合物が可塑剤を更に含んでなる請求項57〜65のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
相溶性ポリマーブレンドがオレフィンワックスまたはパラフィンワックスを更に含んでなり、溶融加工されて対象物またはフィルムを形成する、請求項57〜66のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
ヒドロニウムイオンと反応して気体を生成できるアニオン、親水性ポリオキサゾリンポリマー、並びに疎水性ポリマーおよび酸放出剤、または酸放出疎水性ポリマーのいずれかを含んでなる混合物を供給し;
混合物を溶融加工して相溶性ポリマーブレンドを生成する
ことを含む、約150℃未満の溶融温度を有する相溶性ポリマーブレンドの製造方法であって、親水性ポリオキサゾリンポリマーが、式:
【化5】

[式中、Rは、1〜4個の炭素原子を含有する置換または未置換アルキレン基であり、Rは、置換または未置換アリール基、或いは1〜6個の炭素原子を含有する置換または未置換アルキル基であり、nは、ポリマーに約100,000ダルトン未満の分子量を与える整数である。]
で示される、方法。
【請求項69】
アニオンが亜塩素酸イオンを含んでなる請求項68に記載の方法。
【請求項70】
混合物が水酸化アルカリを更に含んでなる請求項68または69に記載の方法。
【請求項71】
水酸化アルカリが水酸化ナトリウムを含んでなる請求項70に記載の方法。
【請求項72】
ポリオキサゾリンポリマーがポリエチルオキサゾリンである請求項68〜71のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
酸放出剤が、リン酸水素アルカリ、ポリリン酸水素アルカリ、無水ホスホケイ酸、無水ホスホケイ酸脂肪酸エステルまたはアルケニル無水コハク酸を含んでなる、請求項68に記載の方法。
【請求項74】
酸放出疎水性ポリマーが、メチレン、エチレン、ポリプロピレン、イミド、塩化ビニルまたはビニルアルコールおよび少なくとも1種の酸放出モノマーを含んでなるコポリマーまたはターポリマーである、請求項68に記載の方法。
【請求項75】
酸放出モノマーが、酢酸ビニル、ビニル酸、メタクリル酸、メタクリル酸アセテート、イタコン酸またはイタコン酸アセテートを含んでなる、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
混合物が可塑剤を更に含んでなる請求項68〜75のいずれかに記載の方法。
【請求項77】
相溶性ポリマーブレンドがオレフィンワックスまたはパラフィンワックスを更に含んでなり、溶融加工されて対象物またはフィルムを形成する、請求項68〜76のいずれかに記載の方法。
【請求項78】
請求項1〜54のいずれかに記載の相溶性ポリマーブレンドを溶融加工して対象物またはフィルムを形成し;
対象物またはフィルムの表面を水分に暴露し、相溶性ポリマーブレンドから表面を取り巻く雰囲気中に気体を放出させて、表面上の細菌汚染、真菌汚染およびウィルス汚染、並びにカビの生育を抑制するおよび/または表面を消臭する
ことを含む、表面上の細菌汚染、真菌汚染およびウィルス汚染、並びにカビの生育を抑制するおよび/または表面を消臭する方法。
【請求項79】
相溶性ポリマーブレンドが光学的に透明である請求項78に記載の方法。
【請求項80】
対象物またはフィルムを、押出成形、圧縮成形、吹込成形または射出成形によって、約90℃〜約150℃の温度で溶融加工する、請求項77に記載の方法。

【公表番号】特表2010−511097(P2010−511097A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539431(P2009−539431)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/085559
【国際公開番号】WO2008/127435
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(509149079)マイクロアクティブ・コーポレイション (1)
【氏名又は名称原語表記】MICROACTIVE CORP.
【出願人】(595081275)サウスウエスト・リサーチ・インスティチュート (2)
【Fターム(参考)】