説明

洗浄装置及び方法

【課題】カスケード方式の洗浄装置における菌体の繁殖を簡易な手段で防止することができ、被洗浄物の洗浄効率を向上させることができる洗浄装置及び方法を提供する。
【解決手段】ガラス基板1がローラー2で搬送され、ジェット洗浄ノズル3及び最終リンスノズル4で洗浄される。最終リンスノズル4に純水が供給される。最終リンスノズル4からの洗浄排水がタンク7に流入し、ポンプ9からノズル3に供給される。タンク7内の菌体数が増加した場合、タンク7内の水をオゾン水供給装置12に循環通水し、タンク7内にオゾン水を供給し、殺菌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板などの被洗浄物を洗浄水で洗浄する洗浄装置及び方法に係り、特に搬送方向下流側で洗浄に用いた洗浄水を搬送方向上流側での洗浄に用いる、いわゆるカスケード方式の洗浄装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶テレビなどに代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)を効率よく製造するためにFPD用ガラス基板は大型化が進み、それにともないガラス基板を洗浄する洗浄機も大型化している。また洗浄機が大型化したため、洗浄で用いる洗浄水の水量も増加している。洗浄機では、製造コストを抑制するために数々の節水策が講じられており、そのひとつに最終リンス水など比較的きれいな洗浄排水を貯槽に貯め、ポンプアップし簡単な純化処理(フィルターによるろ過など)を施して、その前段のシャワー洗浄水に再利用する、いわゆるカスケード洗浄が行われている(特許文献1〜3)。
【0003】
近年、製造コスト削減のため水の再利用率が上昇しているが、それにともない再利用水の系内での滞留時間が増大し、系内に菌体が増殖するといった課題が生じている。系内で繁殖した菌体は、シャワー洗浄時にガラス基板に付着し、製品良品率の低下を引き起こす。
【0004】
かかる菌体繁殖を防止し、また、繁殖した菌体を除去する方法として、菌体の繁殖が確認された場合に、洗浄ラインを長時間停止し、濃厚薬液で殺菌洗浄することが行われている。しかしながら、このような濃厚薬液による殺菌洗浄方法では、ライン停止による生産性低下、濃厚薬液を用いた非定常作業による安全性低下、廃液処理コスト増加、殺菌後のフラッシング立ち上がり不良などが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−71512
【特許文献2】特開平11−44877
【特許文献3】特開2011−200819
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、カスケード方式の洗浄装置における菌体の繁殖を簡易な手段で防止することができ、被洗浄物の洗浄効率を向上させることができる洗浄装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の洗浄装置は、被洗浄物の搬送方向下流側において、被洗浄物に対し洗浄水を噴出する下流側ノズルと、該下流側ノズルからの洗浄水を収容するタンクと、該タンクから供給される洗浄水を被洗浄物の搬送方向上流側において、被洗浄物に対して噴出する上流側ノズルとを有する洗浄装置において、該タンクにオゾンガス又はオゾン水を供給するオゾン供給手段を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の洗浄方法は、かかる本発明の洗浄装置を用いて被洗浄物を洗浄するものである。
【0009】
本発明では、タンクにオゾンガス又はオゾン水を間欠的に供給することが好ましく、特にオゾンガス又はオゾン水の供給頻度を3〜90日に1回とし、1回当り1〜20min間、タンク内のオゾン濃度が0.1〜1mg/Lとなるようにタンクにオゾンガス又はオゾン水を供給することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、濃厚な洗浄薬液を用いることなく、カスケード方式のタンク内を簡便に殺菌することができ、節水及び良品率の維持が可能となる。本発明では、タンク内のオゾン含有水を上流側ノズルに供給することにより、洗浄ラインを停止することなく、また、廃液処理コストを増加させることなく、タンクから上流側ノズルまでの系内の殺菌を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態に係るFDP用ガラス基板の洗浄装置及び方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1を参照して実施の形態について説明する。図1の洗浄装置は、平流し式ガラス基板洗浄機であり、ガラス基板1はローラー2で順送りに搬送され、種々の洗浄処理を経て、最終的に二流体ジェットや高圧ジェットなどのジェット洗浄がジェット洗浄ノズル3で行われ、清浄な純水での最終リンスが最終リンスノズル4にて行われて、エアカーテンなどの水きり・乾燥工程へ移行され、洗浄を終了する。
【0013】
各ノズル3,4から洗浄水がガラス基板1に向って噴射される。最終リンスノズル4に対しては、純水配管5から純水が供給される。
【0014】
この洗浄工程においては、最終リンスノズル4からガラス基板1に向って噴射されてガラス基板1を洗浄した洗浄排水は、比較的清浄度が高いものであり、再利用配管6からタンク(カスケード槽)7で受ける。このタンク7内の水を送水ポンプ9でポンプアップし、配管10を介して前段のジェット洗浄ノズル3へ供給してガラス基板1を洗浄する。タンク7には余剰水の排出配管8が接続されている。
【0015】
なお、ジェット洗浄ノズル3から前段側のガラス基板1に向けて噴射したときの洗浄排水の一部が配管11を介してタンク7内に回収され、残部は配管15を介して排出される。ただし、配管11からの回収を行わず、前段の洗浄排水をすべて配管15から排出してもよい。
【0016】
このタンク7にオゾン水供給装置12から配管13を介してオゾン水が供給される。配管14は、タンク7からの水をオゾン水供給装置12に導入するためのものである。即ち、オゾン水供給装置12に対しタンク7から配管14によって水が導入され、オゾンガスを溶け込ませることによりオゾン水とされ、このオゾン水が配管13を介してタンク7に供給される。
【0017】
オゾン水供給装置12からタンク7に向って供給されるオゾン水のオゾン濃度は0.1〜5mg/L特に0.1〜3mg/L程度が好適である。オゾン水を添加することにより、タンク7内の水のオゾン濃度が0.1〜1mg/L程度となるようにすることが好ましく、また、タンク7内のオゾン濃度が1〜20min特に1〜10min程度の間、0.1〜1mg/Lの範囲に維持されることが好ましい。
【0018】
タンク7内のオゾン含有水を、ポンプ9及び配管10を介してジェット洗浄ノズル3に供給され、ポンプ9からジェット洗浄ノズル3に至る系内の殺菌を行う。オゾン水供給装置12からタンク7にオゾン水を供給してタンク7内の殺菌を行う場合、ポンプ9を停止してもよく、ポンプ9を連続的に作動させた状態でオゾン水供給装置12からオゾン水を供給してもよい。
【0019】
タンク7内のオゾン含有水をポンプ9及び配管10からジェット洗浄ノズル3へ送水する場合、タンク7内の上記濃度のオゾン水を1min以上例えば1〜20min特に1〜10min間にわたってジェット洗浄ノズル3に供給することが好ましい。この場合、タンク7内のオゾン濃度が0.1mg/L以上となるまでポンプ9を停止し、タンク7内のオゾン濃度が0.1mg/L以上となった後、ポンプ9を作動させてもよい。また、ポンプ9を連続的に作動させたまま、オゾン水供給装置12を作動させてもよい。
【0020】
ジェット洗浄ノズル3からの噴射水が常にオゾンを含んでいてもよいときには、オゾン水供給装置12を連続的に作動させ、ジェット洗浄ノズル3に常にオゾンを0.1〜5mg/L特に0.1〜3mg/L程度含んだ水を供給して系内を常時殺菌するようにしてもよい。
【0021】
オゾン水と接する部材はフッ素樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などオゾン耐性を有することが好ましい。
【0022】
図1では、ノズル3とノズル4の2段洗浄となっているが、ノズルが3段以上に配置されてもよい。この場合、最も下流側のタンクにオゾン水を供給してもよく、最上流側以外の各段のタンクにオゾン水を供給してもよい。
【0023】
本発明はFDP用などのガラス基板以外の被洗浄物の洗浄にも適用することができ、例えばフォトマスク用ガラス基板、めっき工程のめっき浴殺菌などの洗浄にも適用できる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例及び比較例について説明する。
【0025】
<実施例1>
図1に示すガラス基板洗浄装置において、洗浄条件を次の通りとした。なお、配管11による前段洗浄排水の回収は行わなかった。
配管5からの純水供給量 20L/min
タンク7の容量 400L
タンク7からジェット洗浄ノズル3への送水量 100L/min
配管15からの排水量 20L/min
【0026】
この条件で、10日間洗浄を行い、タンク7内の水中の菌体数が150個/mL、ジェット洗浄ノズル3の吐出水中の菌体数が100個/mLとなった時点で純水供給及びポンプ9を停止し、タンク7内の水を配管14,13により100L/minでオゾン水供給装置12に循環させ、オゾン濃度1mg/Lのオゾン水を配管13からタンク7に導入し、5min間にわたってタンク7内のオゾン内のオゾン濃度を0.5mg/L以上(平均値0.7mg/L)とした。
【0027】
次いで、タンク7内のオゾン含有水を100L/minでジェット洗浄ノズル3に3min間供給した。この3min経過後のタンク7内の菌体数及びジェット洗浄ノズル3吐出水の菌体数はいずれも0.5個/mLであり、十分に殺菌されたことが認められた。
【0028】
<比較例1>
図1の洗浄装置において、配管5に20L/minで純水を供給し、この洗浄排水を回収することなく廃棄した。また、ジェット洗浄ノズル3に対して純水を100L/minにて供給し、洗浄排水を回収せずに廃棄した。これにより、洗浄は良好に行われたが、純水消費量は合計120L/minとなり、実施例1の6倍となった。
【符号の説明】
【0029】
1 ガラス基板
2 ローラー
3 ジェット洗浄ノズル
4 最終リンスノズル
7 タンク
12 オゾン水供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物の搬送方向下流側において、被洗浄物に対し洗浄水を噴出する下流側ノズルと、
該下流側ノズルからの洗浄水を収容するタンクと、
該タンクから供給される洗浄水を被洗浄物の搬送方向上流側において、被洗浄物に対して噴出する上流側ノズルと
を有する洗浄装置において、
該タンクにオゾンガス又はオゾン水を供給するオゾン供給手段を備えたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
請求項1において、前記オゾン供給手段は、前記タンクのオゾン濃度が0.1〜3mg/Lとなるように前記タンクにオゾンガス又はオゾン水を間欠的に供給することを特徴とする洗浄装置。
【請求項3】
請求項1の洗浄装置によって被洗浄物を洗浄する洗浄方法。
【請求項4】
請求項3において、間欠的にオゾンガス又はオゾン水を前記タンクに供給することを特徴とする洗浄方法。
【請求項5】
請求項4において、前記被洗浄物はガラス基板であり、3〜90日毎に、1回当り1〜20min間、該タンク内の水のオゾン濃度が0.1〜1mg/Lとなるように前記タンクにオゾンを供給することを特徴とする洗浄方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−111536(P2013−111536A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260553(P2011−260553)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】