説明

液浸上層膜用重合体および液浸上層膜用樹脂組成物

【課題】 放射線の波長に対して十分な透過性をもち、フォトレジスト膜とインターミキシングを起こすことなくフォトレジスト膜上に保護膜を形成でき、更には十分な撥油性を有し高速スキャン時に膜上への液残りが少なく、高NA露光に対応する十分高い屈折率を有する上層膜を形成できる。
【解決手段】 trans−デカヒドロナフタレン、1,1−ビシクロヘキシル、exo−テトラヒドロジシクロペンタジエンとの接触角が65°以上、90°未満であり、193nmおける屈折率が1.6以上、1.8以下となる膜を形成することができ、重量平均分子量が2,000〜100,000であり、上層膜用重合体は、フッ素原子を含む基をその側鎖に有する繰返し単位と、硫黄原子を含む基をその側鎖に有する繰返し単位とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィの微細化のために使用される液浸露光時にフォトレジストの保護と、フォトレジスト成分の溶出を抑え投影露光装置のレンズを保護する上層膜を形成するのに有用な液浸用上層膜形成樹脂組成物、該上層膜に用いることができる液浸上層膜用重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等を製造するのに際し、フォトマスクとしてのレチクルのパターンを投影光学系を介して、フォトレジストが塗布されたウエハー上の各ショット領域に転写するステッパー型、またはステップアンドスキャン方式の投影露光装置が使用されている。
投影露光装置が備えられている投影光学系の解像度の理論限界値は、使用する露光波長が短く、投影光学系の開口数が大きいほど高くなる。そのため、集積回路の微細化に伴い投影露光装置で使用される放射線の波長である露光波長は年々短波長化しており、投影光学系の開口数も増大してきている。
このように、半導体素子の製造分野においては、従来、露光波長の短波長化、開口数の増大により集積回路の微細化要求に応えてきており、現在では露光光源としてArFエキシマレーザー(波長193.4nm)を用いた1L1S(1:1ラインアンドスペース)ハーフピッチ90nmノードの量産化が検討されている。しかしながら、更に微細化が進んだ次世代のハーフピッチ65nmノードあるいは45nmノードについてはArFエキシマレーザーの使用のみによる達成は困難であるといわれている。そこでこれらの次世代技術についてはF2エキシマレーザー(波長157nm)、EUV(波長13nm)等の短波長光源の使用が検討されている。しかしながら、これらの光源の使用については技術的難易度が高く、現状ではまだ使用が困難な状況にある。
【0003】
ところで上記の露光技術においては、露光されるウエハー表面にはフォトレジスト膜が形成されており、このフォトレジスト膜にパターンが転写される。従来の投影露光装置では、ウエハが配置される空間は屈折率が1の空気または窒素でみたされている。
しかしながら、屈折率nの液体を投影露光装置のレンズとウエハの間に満たし、適当な光学系を設定することにより、解像度の限界値および焦点深度をそれぞれn分の1、n倍にすることが理論的に可能である。例えばArFエキシマレーザーを露光光源とするプロセスで、レンズとウエハの間を満たす液体として水を使用すると波長193.4nmの光の水中での屈折率nは1.44であるから、空気または窒素を媒体とする露光時と比較し、解像度が69.4%、焦点深度が144%となる光学系の設計が理論上可能になる。
このように露光するための光の実効波長を短波長化し、より微細なパターンを転写できる投影露光方法を液浸露光といい、今後のリソグラフィーの微細化、特に10nm単位のリソグラフィーには必須の技術と考えられている。
【0004】
本願出願人は、液浸露光方法において従来の純水よりも屈折率が大きく、優れた透過性を有し、フォトレジスト膜あるいはその上層膜成分(とりわけ親水性成分)の溶出や溶解を防ぎ、レンズを浸食せず、液浸用液体として使用した場合、より解像度および焦点深度の優れたパターンを形成できる液浸露光用液体の提供を目的として、種々の化合物について検討を行なった結果、遠紫外領域における吸収が小さく、液浸露光用液体として好適な高屈折率を有するデカヒドロナフタレンなどの脂環式飽和炭化水素化合物を見出し特許出願している(特許文献1)。
また、液浸媒体として水を使用する場合に用いられる上層膜として、フッ素原子を含む基をその側鎖に有する繰返し単位を含み、水との接触角が90°以上となる膜を形成することができる重合体を本願出願人は特許出願している(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、脂環式飽和炭化水素化合物の液浸媒体は露光時にレジストと接触するためフォトレジスト膜に浸透しフォトレジストの解像度を劣化させたり、現像欠陥を生じさせたりする場合がある。とりわけ、レジストの撥油性が低い場合、スキャン後に液体がレジスト上に残留し、レジスト膜に浸透しやすくなるという問題がある。
これらの問題に対する対策としてはフォトレジスト膜上に上層膜を形成する方法があるが、この上層膜は放射線の波長に対して十分な透過性をもち、フォトレジスト膜とインターミキシングを起こさないことが必要である。更に、十分な撥油性を有し高速スキャン時に膜上への液残りのない膜であること、高NA露光に対応するため十分な屈折率を有することが必要であるが、これらの特性を満足する上層膜が得られないという問題がある。
【特許文献1】WO2005/114711
【特許文献2】特開2006−335916
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような課題を克服するためなされたもので、放射線の波長に対して十分な透過性をもち、フォトレジスト膜とインターミキシングを起こすことなくフォトレジスト膜上に保護膜を形成でき、更には十分な撥油性を有し高速スキャン時に膜上への液残りが少なく、高NA露光に対応する十分高い屈折率を有する上層膜を形成できる液浸上層膜用重合体および液浸上層膜用樹脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液浸上層膜用重合体は、飽和炭化水素化合物からなる液浸用液体との接触角が65°以上、90°未満であり、193nmおける屈折率が1.6以上、1.8以下となる膜を形成することができ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法により測定される重量平均分子量が2,000〜100,000であることを特徴とする。
また、上記飽和炭化水素化合物は、trans−デカヒドロナフタレン、1,1−ビシクロヘキシル、およびexo−テトラヒドロジシクロペンタジエンから選ばれる少なくとも1つの飽和炭化水素化合物であることを特徴とする。
【0008】
本発明の液浸上層膜用重合体は、フッ素原子を含む基をその側鎖に有する繰返し単位と、硫黄原子を含む基をその側鎖に有する繰返し単位とを含むことを特徴とする。
また、上記フッ素原子を含む基をその側鎖に有する繰返し単位は、下記の式(1)で表されることを特徴とする。
【化3】

1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、Rfは少なくとも一部の水素原子がフッ素原子で置換された1価のフッ素化炭化水素基を表す。
上記硫黄原子を含む基をその側鎖に有する繰返し単位は、下記の式(2)で表されることを特徴とする。
【化4】

4、R5、R6は、水素原子またはメチル基を表し、Rsは硫黄原子を含む1価の有機基を表す。
【0009】
本発明の液浸上層膜形成樹脂組成物は、液浸露光されるフォトレジスト膜に被覆される上層膜を形成するための液浸上層膜形成樹脂組成物であって、該樹脂組成物は、上記液浸上層膜用重合体がアルコール溶媒に溶解されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液浸上層膜用重合体は、飽和炭化水素化合物からなる液浸用液体との接触角が65°以上、90°未満であり、193nmおける屈折率が1.6以上、1.8以下となる膜を形成することができるので、撥油性を有し高速スキャン時に上層膜上への液浸用液体残りが少なく、高NA露光に対応する十分高い屈折率を有する上層膜を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の液浸用上層膜形成組成物を構成する重合体は、飽和炭化水素化合物からなる液浸用液体との接触角が65°以上、90°未満、好ましくは65°〜80°であり、193nmおける屈折率が1.6以上、1.8以下となる膜を形成することができる重合体である。
液浸用液体との接触角は、後述する各実施例での上層膜形成条件で上層膜を形成したときの該上層膜表面と飽和炭化水素化合物、特に、193nmおける透過率が95%以上である、trans−デカヒドロナフタレン、1,1−ビシクロヘキシル、またはexo−テトラヒドロジシクロペンタジエンとの接触角をいう。この接触角の測定はKRUS社製DSA−10を用いて行ない、塗膜を形成した基板上に0.05mlの供試飽和炭化水素化合物を滴下し、滴下後3〜10秒後の接触角を1秒おきに測定し、平均値を接触角として求めた。
接触角が65°未満であるとスキャン時に液残りが多くなる傾向があり、90°以上になるとレジストとの界面で気泡が発生し現像欠陥が生成する傾向がある。
【0012】
重合体の193nmおける屈折率は、高速分光エリプソメータM−2000(ジェー・エー・ウーラム社製)装置を用いて求めた。屈折率が1.6未満であると高NA時に解像度が低下するおそれがあり、1.8をこえると液体との界面で反射が起きスループットが低下する傾向がある。
【0013】
フッ素原子含む基をその側鎖に有する繰返し単位は、水との接触角を高めることができる繰返し単位であり、フッ素化アルキレン基を側鎖に有する繰返し単位であることが好ましい。
フッ素化アルキレン基を側鎖に有する繰返し単位を生成する単量体としては、下記の式(3)で表される単量体が挙げられる。
【化5】

1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、Aは、単結合、酸素原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基を表し、Bは、単結合、炭素数1〜20の2価の有機基を表し、Xは1価の有機基を表し、nは1〜20の整数を表す。
AおよびBで表される炭素数1〜20の2価の有機基としては、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基もしくは1,2−プロピレン基などのプロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、オクタデカメチレン基、ノナデカメチレン基、インサレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、または、2−プロピリデン基等の飽和鎖状炭化水素基、1,3−シクロブチレン基などのシクロブチレン基、1,3−シクロペンチレン基などのシクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基などのシクロヘキシレン基、1,5−シクロオクチレン基などのシクロオクチレン基等の炭素数3〜10のシクロアルキレン基などの単環式炭化水素環基、1,4−ノルボルニレン基もしくは2,5−ノルボルニレン基などのノルボルニレン基、1,5−アダマンチレン基、2,6−アダマンチレン基などのアダマンチレン基等の2〜4環式炭素数4〜20の炭化水素環基などの架橋環式炭化水素環基等が挙げられる。
【0014】
Xは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子が水との接触角を向上させることができるので好ましい。
nは1〜20の整数である。nが20をこえるとアルカリ現像液で現像した際にスカムや現像欠陥が残りやすくなる。また、(CF2nで表されるパーフルオロアルキレン基は、直鎖状または分岐状であってもよい。好ましくは水との接触角を向上させることができる直鎖状のパーフルオロアルキレン基である。
【0015】
好ましい単量体の例としては、下記式(1a)で表されるパーフルオロアルキレン基を側鎖に有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【化6】

1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、Rfは少なくとも一部の水素原子がフッ素原子で置換された1価のフッ素化炭化水素基を表す。
好ましいRfは炭素数1〜20のフッ素置換炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基の一部の水素をフッ素置換した基が挙げられる。
より好ましいRfとしてはパーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、パーフルオロウンデシル基、パーフルオロドデシル基、パーフルオロトリデシル基、パーフルオロテトラデシル基、パーフルオロペンタデシル基、パーフルオロヘキサデシル基、パーフルオロヘプタデシル基、パーフルオロオクタデシル基、パーフルオロノナデシル基、パーフルオロイコシル基、パーフルオロメチルメチル基、パーフルオロエチルメチル基、パーフルオロプロピルメチル基、パーフルオロブチルメチル基、パーフルオロペンチルメチル基、パーフルオロヘキシルメチル基、パーフルオロヘプチルメチル基、パーフルオロオクチルメチル基、パーフルオロノニルメチル基、パーフルオロウンデシルメチル基、パーフルオロドデシルメチル基、パーフルオロトリデシルメチル基、パーフルオロテトラデシルメチル基、パーフルオロペンタデシルメチル基、パーフルオロヘキサデシルメチル基、パーフルオロヘプタデシルメチル基、パーフルオロオクタデシルメチル基、パーフルオロノナデシルメチル基、パーフルオロメチルエチル基、パーフルオロエチルエチル基、パーフルオロプロピルエチル基、パーフルオロブチルエチル基、パーフルオロペンチルエチル基、パーフルオロヘキシルエチル基、パーフルオロヘプチルエチル基、パーフルオロオクチルエチル基、パーフルオロノニルエチル基、パーフルオロウンデシルエチル基、パーフルオロドデシルエチル基、パーフルオロトリデシルエチル基、パーフルオロテトラデシルエチル基、パーフルオロペンタデシルエチル基、パーフルオロヘキサデシルエチル基、パーフルオロヘプタデシルエチル基、パーフルオロオクタデシルエチル基、パーフルオロメチルプロピル基、パーフルオロエチルプロピル基、パーフルオロプロピルプロピル基、パーフルオロブチルプロピル基、パーフルオロペンチルプロピル基、パーフルオロヘキシルプロピル基、パーフルオロヘプチルプロピル基、パーフルオロオクチルプロピル基、パーフルオロノニルプロピル基、パーフルオロウンデシルプロピル基、パーフルオロドデシルプロピル基、パーフルオロトリデシルプロピル基、パーフルオロテトラデシルプロピル基、パーフルオロペンタデシルプロピル基、パーフルオロヘキサデシルプロピル基、パーフルオロヘプタデシルプロピル基が挙げられる。
【0016】
硫黄原子を含む基をその側鎖に有する繰返し単位は、現像性を向上させる繰返し単位であり、式(2)で表される。
【化7】

4、R5、R6は水素原子またはメチル基を表す。また、Rsは硫黄原子を含む1価の有機基を表し、Rsとしては式(2)のカルボニル基の炭素原子が硫黄原子で連結される下記の環式または複素環式硫黄含有基が挙げられる。
【化8】


上記Rs基を有する式(2)で表される繰返し単位を生成するラジカル重合性単量体は、(メタ)アクリル酸クロリドと環構造を有するチオールとを塩基性条件にて反応させチオエステル化することにより合成できる。
【0017】
本発明の重合体は、式(1)で表される繰返し単位および式(2)で表される繰返し単位と共に、カルボキシル基を側鎖に有する繰返し単位、式(2)で表される繰返し単位を除いてスルホ基を側鎖に有する繰返し単位、またはα位にフルオロアルキル基を有するアルコール性水酸基を側鎖に有する繰返し単位を含むことができる。
【0018】
カルボキシル基を側鎖に有する繰返し単位を生成するラジカル重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、アトロパ酸、3−アセチルオキシ(メタ)アクリル酸、3−ベンゾイルオキシ(メタ)アクリル酸、α−メトキシアクリル酸、3−シクロヘキシル(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和ポリカルボン酸類;該不飽和ポリカルボン酸のモノメチルエステル、モノエチルエステル、モノn−プロピルエステル、モノn−ブチルエステル等のモノエステル類;2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、2−α−カルボキシアクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、2−α−カルボキシメチルアクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、2−α−メトキシカルボニルアクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、2−α−アセチルオキシアクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、2−α−フェニルアクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、2−α−ベンジルアクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、2−α−メトキシアクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、2−α−シクロヘキシルアクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、2−α−シアノアクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸等を挙げることができる。
上記の内、(メタ)アクリル酸、クロトン酸が好ましい。
【0019】
スルホ基を側鎖に有する繰返し単位を生成するラジカル重合性単量体としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、4−ビニル−1−ベンゼンスルホン酸が挙げられる。これらのスルホン酸単量体で、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸が特に好ましい。
【0020】
本発明の重合体には、樹脂の分子量、ガラス転移点などを制御する目的で、他のラジカル重合性単量体を共重合することができる。「他の」とは、前出のラジカル重合性単量体以外のラジカル重合性単量体の意味である。また、酸解離性基含有単量体を共重合することができる。
他のラジカル重合性単量体または酸解離性基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、(メタ)アクリル酸アリールエステル類、ジカルボン酸ジエステル類、ニトリル基含有ラジカル重合性単量体、アミド結合含有ラジカル重合性単量体、脂肪酸ビニル類、塩素含有ラジカル重合性単量体、共役ジオレフィン、水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル類等を挙げることができる。
具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシ−ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリルレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリルレート、2−プロピル−2−アダマンチル(メタ)アクリルレート、2−ブチル−2−アダマンチル(メタ)アクリルレート、1−メチル−1−シクロヘキシル(メタ)アクリルレート、1−エチル−1−シクロヘキシル(メタ)アクリルレート、1−プロピル−1−シクロヘキシル(メタ)アクリルレート、1−ブチル−1−シクロヘキシル(メタ)アクリルレート、1−メチル−1−シクロペンチル(メタ)アクリルレート、1−エチル−1−シクロペンチル(メタ)アクリルレート、1−プロピル−1−シクロペンチル(メタ)アクリルレート、1−ブチル−1−シクロペンチル(メタ)アクリルレート、1−アダマンチル−1−メチルエチル(メタ)アクリルレート、1−ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−1−メチルエチル(メタ)アクリルレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルなどのジカルボン酸ジエステル;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル;スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニ−ルトルエン、p−メトキシスチレン等の芳香族ビニル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有ラジカル重合性単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、トリフルオロメタンスルホニルアミノエチル(メタ)アクリルレートなどのアミド結合含有ラジカル重合性単量体;酢酸ビニルなどの脂肪酸ビニル類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩素含有ラジカル重合性単量体;1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ジメチルブタジエン等の共役ジオレフィン類を用いることができる。
また、水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリルレート、2−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリルレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリルレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリルレート、3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリルレート、等が挙げられ、これらのうち、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリルレートが好ましい。
これらの単量体は単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
本発明の重合体は、重合体を構成する全繰り返し単位に対して、上記の式(1)で表される繰り返し単位を10〜80モル%、好ましくは20〜75モル%含む。10モル%未満であると水との接触角が65°以上とすることが困難になる。また80モル%をこえると現像液であるアルカリ水溶液への溶解性が低くなり該上層膜の除去ができずに現像後のレジストパターン上に残渣が発生してしまうおそれがある。
式(2)で表される繰返し単位は、重合体を構成する全繰り返し単位に対して、10〜70モル%、好ましくは20〜60モル%含む。10モル%未満であると193nmにおける屈折率が低くなり、70モル%をこえると塗膜の液浸液への接触角が充分に大きくならない。
更にカルボキシル基、スルホ基、またはα位にフルオロアルキル基を有するアルコール性水酸基を側鎖に有する繰返し単位を含む場合は、カルボキシル基含有繰返し単位を5〜40モル%、スルホ基含有繰返し単位を5〜40モル%、α位にフルオロアルキル基を有するアルコール性水酸基含有繰返し単位を5〜40モル%含むことが好ましい。上記繰り返し単位が上記範囲以外となると現像液であるアルカリ水溶液への溶解性が低くなる。上記他のラジカル重合性単量体由来の繰返し単位は30モル%以下である。
【0022】
本発明の重合体を製造するときに用いられる重合溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類が挙げられる。これらのうち、環状エーテル類、多価アルコールのアルキルエーテル類、多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類、ケトン類、エステル類などが好ましい。
【0023】
また、ラジカル重合における重合触媒としては、通常のラジカル重合開始剤が使用でき、例えば2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−(2−メチルプロピオン酸メチル)、2,2'−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス−(4−メトキシ−2−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート、1,1'−ビス−(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどの有機過酸化物および過酸化水素などを挙げることができる。過酸化物をラジカル重合開始剤に使用する場合、還元剤を組み合わせてレドックス型の開始剤としてもよい。
【0024】
上記方法で得られる重合体の重量平均分子量(以下、Mwと略称する)はゲルパーミエーションクロマトグラフィ法ポリスチレン換算で通常2,000〜100,000であり、好ましくは2,500〜50,000、より好ましくは3,000〜20,000である。この場合、重合体のMwが2,000未満では、上層膜としての耐水性および機械的特性が著しく低く、一方100,000をこえると、後述する溶媒に対する溶解性が著しく悪い。また、樹脂のMwとゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算数平均分子量(以下、Mnと略称する)との比(Mw/Mn)は、通常、1〜5、好ましくは1〜3である。
なお、重合体は、ハロゲン、金属等の不純物が少ないほど好ましく、それにより、上層膜としての塗布性とアルカリ現像液への均一な溶解性を更に改善することができる。重合体の精製法としては、例えば、水洗、液々抽出等の化学的精製法や、これらの化学的精製法と限外ろ過、遠心分離等の物理的精製法との組み合わせ等を挙げることができる。本発明において、重合体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0025】
本発明の液浸用上層膜形成樹脂組成物は、上記重合体を樹脂成分としてアルコール溶媒に溶解して得られる。このアルコール溶媒は、該重合体を溶解させると共に、フォトレジスト膜上に塗布するに際し、そのフォトレジスト膜とインターミキシングを起こすなどしてリソグラフィの性能を劣化させることがない溶媒が使用できる。
そのようなアルコール溶媒としては、1価アルコールを含む溶媒が挙げられる。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、n−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−メチルー2−ブタノール、3−メチルー2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール等の炭素数1〜6の1価アルコール、2,2−ジメチル−3−ペンタノール、2,3−ジメチル−3−ペンタノール、2,4−ジメチル−3−ペンタノール、4,4−ジメチル−2−ペンタノール、3−エチル−3−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−メチル−2−ヘキサノール、2−メチル−3−ヘキサノール、5−メチル−1−ヘキサノール、5−メチル−2−ヘキサノール等の炭素数7の1価アルコール;2−エチル−1−ヘキサノール、4−メチル−3−ヘプタノール、6−メチル−2−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、2−プロピル−1−ペンタノール、2,4,4−トリメチル−1−ペンタノール等の炭素数8の1価アルコール;2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、3−エチル−2,2−ジメチル−ペンタノール、1−ノナノール、2−ノナノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール等の炭素数9の1価アルコール;1−デカノール、2−デカノール、4−デカノール、3,7−ジメチル−1−オクタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、等の炭素数10の1価アルコール等が挙げられる。これらのアルコールは、単独でも、2種以上の組み合わせても使用することができる。
これらのアルコールの中で1−ブタノール、3−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノールが沸点、引火点が使用環境、作業環境に適しているため好ましい。
【0026】
また、該上層膜をフォトレジスト膜上に塗布するに際し、塗布性を調整する目的で、他の溶媒を混合することもできる。他の溶媒は、フォトレジスト膜を浸食せずに、かつ上層膜を均一に塗布する作用がある。
他の溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類、水が挙げられる。これらのうち、環状エーテル類、多価アルコールのアルキルエーテル類、多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類、ケトン類、エステル類、水が好ましい。
【0027】
上記、他の溶媒の配合割合は、溶媒成分中の30重量%以下であり、好ましくは20重量%以下である。30重量%をこえると、フォトレジスト膜を浸食し、上層膜との間にインターミキシングを起こすなどの不具合を発生し、フォトレジストの解像性能を著しく劣化させる。
【0028】
本発明の液浸用上層膜形成樹脂組成物には、塗布性、消泡性、レベリング性などを向上させる目的で界面活性剤を配合することもできる。
界面活性剤としては、例えばBM−1000、BM−1100(以上、BMケミー社製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−135、同FC−170C、同FC−430、同FC−431(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141、同S−145(以上、旭硝子(株)製)、SH−28PA、同−190、同−193、SZ−6032、SF−8428(以上、東レダウコーニングシリコーン(株)製)などの商品名で市販されているフッ素系界面活性剤を使用することができる。
これらの界面活性剤の配合量は、重合体100重量部に対して好ましくは5重量部以下である。
【0029】
本発明の液浸用上層膜形成樹脂組成物は、シリコンウエハ上に形成されたフォトレジスト膜上に上層膜を形成するために用いられる。使用されるフォトレジストは、特に限定されるものではなく、レジストの使用目的に応じて適時選定することができる。レジストの例としては、酸発生剤を含有する化学増幅型のポジ型またはネガ型レジスト等を挙げることができる。
フォトレジスト膜上に本発明の上層膜形成樹脂組成物を塗布し、焼成することにより、上層膜が形成できる。上層膜はフォトレジスト膜を保護することと、フォトレジスト膜に含有する成分が液浸用液体へ溶出することにより生じる投影露光装置のレンズの汚染等を防止するためになされる。
本発明の上層膜形成樹脂組成物より得られる上層膜は、液浸用液体としてtrans−デカヒドロナフタレン、1,1−ビシクロヘキシル、およびexo−テトラヒドロジシクロペンタジエンから選ばれる少なくとも1つの飽和炭化水素化合物を用いる場合に、該液体との接触角が65°以上、90°未満となる分子構造を有する。また、193nmおける屈折率が1.6以上、1.8以下である。
上層膜の厚さはλ/4m(λは放射線の波長、mは上層膜の屈折率)の奇数倍に近いほど、レジスト膜の上側界面における反射抑制効果が大きくなる。このため、上層膜の厚さをこの値に近づけることが好ましい。
上層膜が形成されたフォトレジスト膜に上記液浸用液体を通して放射線を照射し、次いで現像することにより、レジストパターンが形成される。
液浸露光に用いられる放射線は、例えば可視光線;g線、i線等の紫外線;エキシマレーザ等の遠紫外線;シンクロトロン放射線等のX線;電子線等の荷電粒子線の如き各種放射線を選択使用することができる。特にArFエキシマレーザ(波長193nm)あるいはKrFエキシマレーザ(波長248nm)が好ましい。
【実施例】
【0030】
液浸上層膜用重合体(A−1)および(A−2)を以下に示す方法により合成した。なお、各重合体のMwおよびMnは、東ソー(株)製高速GPC装置(型式「HLC−8120」)に東ソー(株)製のGPCカラム(商品名「G2000HXL」;2本、「G3000HXL」;1本、「G4000HXL」;1本)を用い、流量1.0ml/分、溶出溶剤テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。また、重合体中の各繰返し単位の割合は、13C NMRにより測定した。
各重合体合成に用いた単量体を式(M−1)〜(M−4)として以下に表す。
【化9】

【0031】
実施例1
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデシルアクリレート(M−1)8.36g、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート(M−2)4.73g、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(M−3)1.67g、2-メタクリル酸-S-(2-テトラヒドロピラン−2−イル)エステル(M−4)5.24g、2-プロパノール60gをフラスコに投入し、70℃に加温し均一な溶液とした。その後、溶液の温度を65℃まで下げAIBN(アゾイソブチロニトリル)0.8gを投入した。その後65℃で6時間反応させた。反応後、反応混合物をヘキサン300gに投入しデカンテーションで溶剤を除くことにより白色固体を得た。得られた固体を60℃で4時間真空乾燥することにより液浸上層膜用重合体(A−1)を得た(収率60重量%)。
得られた重合体(A−1)は、13C−NMR測定の結果、単量体(M−1)由来の繰り返し単位/同(M−2)由来の繰り返し単位/同(M−3)由来の繰り返し単位/同(M−4)由来の繰り返し単位=20/35/10/35(モル比)からなる重合体であった。また、Mw17000、Mw/Mn1.7であった。
【0032】
実施例2
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデシルアクリレート(M−1)8.27g、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート(M−2)2.67g、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(M−3)1.65g、2-メタクリル酸-S-(2-テトラヒドロフラン-2-イル)エステル(M−4)7.41g、2-プロパノール60gをフラスコに投入し65℃に加温して均一な溶液とした。その後、AIBN(アゾイソブチロニトリル)0.8gを投入した。その後65℃で6時間反応させた。反応後、反応混合物をヘキサン300gに投入しデカンテーションで溶剤を除くことにより白色固体を得た。得られた固体を60℃で4時間真空乾燥することにより液浸上層膜用重合体(A−2)を得た(収率58重量%)。
得られた重合体(A−2)は、13C−NMR測定の結果、単量体(M−1)由来の繰り返し単位/同(M−2)由来の繰り返し単位/同(M−3)由来の繰り返し単位/同(M−4)由来の繰り返し単位=20/20/10/50(モル比)からなる重合体であった。また、Mw16000、Mw/Mn1.8であった。
【0033】
実施例3
重合体(A−1)5gを4-メチル-2-ペンタノール95gに溶解し液浸上層膜形成樹脂組成物(B−1)を得た。
樹脂組成物(B−1)をあらかじめArFレジストAR1244J(JSR社製)を塗布したシリコンウエハー上にスピンコート(2500rpm)し、150℃で5分間ベークすることにより上層膜(C−1)を得た。
上層膜(C−1)の接触角、193nmにおける屈折率、現像性を測定した。結果を表1に示す。
接触角は、trans−デカヒドロナフタレン、1,1−ビシクロヘキシル、およびexo−テトラヒドロジシクロペンタジエンとの接触角をKRUS社製DSA−10を用いて測定した。上層膜(C−1)上に0.05mlの液体を滴下し、滴下後3〜10秒後の接触角を1秒おきに測定し、平均値を接触角として求めた。
193nmにおける屈折率は分光エリプソメータを用いて25℃で測定した。
現像性は、上層膜(C−1)を塗布したシリコンウエハーを2.38%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液に浸漬させ上層膜が完全に除けた場合、現像性が○、除けなかった場合、現像性が×とした。
【0034】
実施例4
重合体(A−2)5gを4-メチル-2-ペンタノール95gに溶解し液浸上層膜形成樹脂組成物(B−2)を得た。
この液浸上層膜形成樹脂組成物(B−2)を用いる以外は実施例3と同一の方法で上層膜(C−2)を得て、実施例3と同一の方法で上層膜(C−2)の接触角、193nmにおける屈折率、現像性を測定した。結果を表1に示す。
【0035】
比較例1
シクロヘキシルアクリレート10.0g、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(M−3)2.41g、2-メタクリル酸-S-(2-テトラヒドロピラン−2−イル)エステル(M−4)7.588g、2-プロパノール60gをフラスコに投入し、65℃に加温し均一な溶液とした。その後、AIBN(アゾイソブチロニトリル)0.8gを投入した。その後65℃で6時間反応させた。反応後、反応混合物をヘキサン300gに投入しデカンテーションで溶剤を除くことにより白色固体を得た。得られた固体を60℃で4時間真空乾燥することにより重合体(H−1)を得た(収率55重量%)。
得られた重合体(H−1)は、13C−NMR測定の結果、シクロヘキシルアクリレート由来の繰り返し単位/単量体(M−3)由来の繰り返し単位/同(M−4)由来の繰り返し単位=55/10/35(モル比)からなる重合体であった。また、Mw18000、Mw/Mn1.9であった。
重合体(H−1)5gを4-メチル-2-ペンタノール95gに溶解し液浸上層膜形成樹脂組成物を得た。この液浸上層膜形成樹脂組成物を用いる以外は実施例3と同一の方法で上層膜(D−1)を得て、実施例3と同一の方法で上層膜(D−1)の接触角、193nmにおける屈折率、現像性を測定した。結果を表1に示す。
【0036】
比較例2
3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデシルアクリレート(M−1)9.296g、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート(M−2)10.518g、2-アクリルアミド-2-メチルメタクリル酸1.71g、2-プロパノール60gをフラスコに投入し、65℃に加温し均一な溶液とした。その後、AIBN(アゾイソブチロニトリル)0.8gを投入した。その後65℃で6時間反応させた。反応後、反応混合物をヘキサン300gに投入しデカンテーションで溶剤を除くことにより白色固体を得た。得られた固体を60℃で4時間真空乾燥することにより重合体(H−2)を得た(収率57重量%)。
得られた重合体(H−2)は、13C−NMR測定の結果、単量体(M−1)由来の繰り返し単位/同(M−2)由来の繰り返し単位/2-アクリルアミド-2-メチルメタクリル酸由来の繰り返し単位=20/70/10(モル比)からなる重合体であった。また、Mw15000、Mw/Mn1.8であった。
重合体(H−2)5gを4-メチル-2-ペンタノール95gに溶解し液浸上層膜形成樹脂組成物を得た。この液浸上層膜形成樹脂組成物を用いる以外は実施例3と同一の方法で上層膜(D−2)を得て、実施例3と同一の方法で上層膜(D−2)の接触角、193nmにおける屈折率、現像性を測定した。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0038】
上述した本発明の重合体は、撥油性を有し高速スキャン時に上層膜上への液浸用液体残りが少なく、高NA露光に対応する十分高い屈折率を有する上層膜を形成できるので、液浸露光時に、高速でスキャン露光しても液浸用液体の切れがよいことで「しみ」が残り難くなる。また、その上層膜は液浸露光時に、レンズおよびレジストを保護し、解像度、現像性等にも優れたレジストパターンを形成することができる。そのため、今後更に微細化が進行すると予想される半導体デバイスの製造に極めて好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飽和炭化水素化合物からなる液浸用液体との接触角が65°以上、90°未満であり、193nmおける屈折率が1.6以上、1.8以下となる膜を形成することができ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法により測定される重量平均分子量が2,000〜100,000であることを特徴とする液浸上層膜用重合体。
【請求項2】
前記飽和炭化水素化合物は、trans−デカヒドロナフタレン、1,1−ビシクロヘキシル、およびexo−テトラヒドロジシクロペンタジエンから選ばれる少なくとも1つの飽和炭化水素化合物であることを特徴とする請求項1記載の液浸上層膜用重合体。
【請求項3】
前記重合体はフッ素原子を含む基をその側鎖に有する繰返し単位と、硫黄原子を含む基をその側鎖に有する繰返し単位とを含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の液浸上層膜用重合体。
【請求項4】
前記フッ素原子を含む基をその側鎖に有する繰返し単位は、下記の式(1)で表されることを特徴とする請求項3記載の液浸上層膜用重合体。
【化1】

(R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、Rfは少なくとも一部の水素原子がフッ素原子で置換された1価のフッ素化炭化水素基を表す。)
【請求項5】
前記硫黄原子を含む基をその側鎖に有する繰返し単位は、下記の式(2)で表されることを特徴とする請求項3記載の液浸上層膜用重合体。
【化2】

(R4、R5、R6は、水素原子またはメチル基を表し、Rsは硫黄原子を含む1価の有機基を表す。)
【請求項6】
液浸露光されるフォトレジスト膜に被覆される上層膜を形成するための液浸上層膜形成樹脂組成物であって、
該樹脂組成物は、樹脂がアルコール溶媒に溶解されてなり、その樹脂が請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の重合体であることを特徴とする液浸上層膜形成樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−285540(P2008−285540A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130087(P2007−130087)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】