説明

液状封止樹脂組成物および液状封止樹脂組成物を用いた半導体装置

【課題】高熱伝導率と低誘電率、高隙間流入性とを兼備した液状封止樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】半導体素子と基板とをバンプ接続した後、半導体素子と基板との隙間を封止する際に用いる液状封止樹脂組成物であって、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材を含有し、(C)無機充填材が球状アルミナと球状シリカとの混合物を含み、且つ(D)塩基性化合物を含有することを特徴とする液状封止樹脂組成物であり、好ましくはpH値が7以上である液状封止樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高熱伝導率と低誘電率、高隙間流入性とを兼備した液状封止樹脂組成物、及びその液状封止樹脂組成物を用いたバンプ接続方式の半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年様々な電子情報処理機器には、狭い面積に高密度実装することが可能なバンプ接続方式の半導体装置が広く用いられるようになってきている。バンプ接続方式の半導体装置では、半導体素子と基板とをバンプによって電気的に接続したのち、半導体装置の接続信頼性を向上するために、半導体素子と基板との隙間にアンダーフィル材と呼ばれる液状封止樹脂を充填して硬化させ、接続バンプの周辺を補強するのが一般的である。
【0003】
また一方で高度情報化社会進展の一端として、あらゆる情報が電子データ化され、それを瞬時に処理して伝達する必要にも迫られてきており、さらに低炭素社会の実現など環境問題への対応も必須とされていることから、大容量の電子データを高速且つ低消費電力で処理できる安価な電子情報処理機器が求められてきている。それに伴って機器に組み入れられる半導体装置にも、より低消費電力で安定した高速動作の可能なことが求められており、そのため半導体装置の発熱対策や電磁ノイズ対策が重要になってきたことから、バンプ接続方式の半導体装置に用いられる液状封止樹脂に対しても高い熱伝導率や低い誘電率が求められてきた。さらに、電子情報処理機器の低価格化を実現するために、半導体装置は小型・薄型化が進んできており、近年ではバンプ接続方式の半導体装置における半導体素子と基板との隙間や、接続バンプの間隔は100μm未満のものがほとんどで、今後もますます微細化が進むとみられるため、用いられる液状封止樹脂にはいっそう高い隙間流入性が求められてきている。このように、高熱伝導率で低誘電率、高い隙間流入性を兼備した液状封止樹脂が求められてきた。
【0004】
従来、半導体装置用液状封止樹脂には熱時寸法の安定性や強度保持のためシリカフィラーを含有するのが一般的であったが、熱伝導性を改善するためには比較的熱伝導性の低いシリカフィラーに替えて、より高い熱伝導性のフィラーをできるだけ多く含有するのが一般的であり、窒化ケイ素や窒化アルミニウム、アルミナ、酸化マグネシウムなどの高熱伝導性フィラーを使用できることは広く知られている。そのようなものとしては、例えば表面に酸化アルミニウム被覆層を有する窒化アルミニウムを含有したものや(例えば、特許文献1)、アルミナを含有したもの(例えば、特許文献2及び特許文献3)があった。
しかし、前述のような高熱伝導性フィラーの多くはシリカフィラーに比べて一般的に誘電率が高く、これらを一定量以上含有した場合には液状封止樹脂自体の誘電率も高くなるため、電磁ノイズの発生によって半導体装置の動作安定性に問題を生じる可能性が高くなる。そのため、高熱伝導率と低誘電率とはトレードオフの関係にあるという問題があった。
一方、熱伝導性は低いけれども比較的誘電率の低いシリカフィラーと、誘電率は高いけれども高熱伝導性のアルミナフィラーとを併用することで誘電率と熱伝導率との両立を図ることも考えられるが、低い誘電率を維持しながら高い熱伝導性を有する液状封止樹脂を得るには、結果的に誘電率の低いシリカフィラーの含有率を高くする必要があるため、封止樹脂の粘度が著しく上昇し、隙間流入性が低下する恐れがある。
さらにそのような場合、封止樹脂の脱泡性や破泡性も低下する傾向にあるため、硬化物内部に熱の伝導を妨げるボイドが発生し易く、熱伝導率の低下を招くという問題もある。
シリカフィラーを用いた液状封止樹脂の隙間流入性向上を図るものとしては、塩基性物質を用いて特殊な方法でシリカフィラーの表面を処理し、且つ所定値以上の粗粒をカットした表面微塩基性シリカフィラーを用いたもの(例えば、特許文献4)など、種々の隙間流入性向上技術が提案されているが、これらはシリカとアルミナとの混合フィラーを用いた液状封止樹脂において高熱伝導率と低誘電率、高隙間流入性とを兼備させ得るものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−265794公報
【特許文献2】特開2008−274083公報
【特許文献3】特開2010−118649公報
【特許文献4】特開2005−170771公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来は実現が困難であった高熱伝導率と低誘電率、高隙間流入性とを兼備した液状封止樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の通りである。
(1)半導体素子と基板とをバンプ接続した後、半導体素子と基板との隙間を封止する際に用いる液状封止樹脂組成物であって、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材を含有し、(C)無機充填材が球状アルミナと球状シリカとの混合物を含み、且つ(D)塩基性化合物を含有することを特徴とする液状封止樹脂組成物。
(2)pH値が7以上である、(1)記載の液状封止樹脂組成物。
(3)(D)塩基性化合物が、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5、およびそれらの塩のうち少なくとも1種類である(1)又は(2)の液状封止樹脂組成物。
(4)(C)無機充填材の含有量が70質量%以上80質量%以下であって、そのうち球状アルミナの含有量が30質量%以上45質量%以下である(1)〜(3)いずれかの液状封止樹脂組成物。
(5)前記球状アルミナが平均径0.5μm以上3μm以下であり、且つ前記球状シリカが平均径0.25μm以上2μm以下である(1)〜(4)いずれかの液状封止樹脂組成物。
(6)前記半導体素子と前記基板との間が、(1)〜(5)いずれかの液状封止樹脂組成物の硬化物で封止されていることを特徴とする半導体装置。
(7)前記半導体素子と前記基板との間に、(1)〜(5)いずれかの液状封止樹脂組成物を充填する充填工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高熱伝導率と低誘電率、高隙間流入性とを兼備した液状封止樹脂組成物の提供を可能にし、その液状封止樹脂組成物を用いて組み立てられたバンプ接続方式の半導体装置の発熱対策や電磁ノイズ対策、及び小型・薄型化を可能にすることで、低消費電力で安定した高速動作が可能な半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の液状封止樹脂組成物および半導体装置について説明する。
本発明は、半導体素子と基板とをバンプ接続した後、半導体素子と基板との隙間を封止する際に用いる液状封止樹脂組成物であって、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材を含有し、(C)無機充填材が球状アルミナと球状シリカとの混合物を含み、且つ(D)塩基性化合物を含有することを特徴とする液状封止樹脂組成物、及び該液状封止樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置である。
【0010】
まず、液状封止樹脂組成物について説明する。
本発明の液状封止樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)を含む。これにより、硬化後の封止樹脂脂組成物が耐熱性、耐湿性、機械的強度に優れ、且つ半導体素子と基板とを強固に接着することができる。そのため、信頼性に優れた半導体装置を得ることができる。
エポキシ樹脂(A)としては、一分子中にエポキシ基を2個以上有するものであれば特に分子量や構造は限定されるものではないが、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミンなどの芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ−アジペイドなどの脂環式エポキシなどの脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0011】
さらに本発明の場合、芳香族環にグリシジル構造またはグリシジルアミン構造が結合した構造を含むものが耐熱性、機械特性、耐湿性という観点からより好ましく、脂肪族または脂環式エポキシ樹脂は信頼性、特に接着性という観点から使用する量を制限するほうがさらに好ましい。これらは単独でも2種以上混合して使用してもよい。また本発明では液状封止樹脂組成物の態様のため、エポキシ樹脂(A)として最終的に常温(25℃)で液状であることが好ましいが、常温で固体のエポキシ樹脂であっても常温で液状のエポキシ樹脂に溶解させ、結果的に液状の状態であればよい。
本発明において、常温とは25℃を指し、また、液状とは樹脂又は樹脂組成物が流動性を有していることを指す。
本発明において、上記液状樹脂組成物は、常温(25℃)において流動性を有している。
【0012】
本発明の液状封止樹脂組成物は、硬化剤(B)を含む。これによりエポキシ樹脂(A)を硬化させることができるものであれば特に限定はされないが、そのようなものとしては例えば、アミン類、フェノール類、酸無水物、ポリアミド樹脂、ポリスルフィド樹脂などが挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
なかでも、硬化性と保存性、物性のバランスから、アミン類を硬化剤として用いるのが好ましく、そのようなものとしては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ポリアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンなどのピペラジン型のポリアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−P−アミノベンゾエートなどの芳香族ポリアミン類が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上の硬化剤を配合して用いてもよい。さらに半導体装置の封止用途を考慮すると、耐熱性、電気的特性、機械的特性、密着性、耐湿性の観点から芳香族ポリアミン型硬化剤が一層好ましい。性状としては、熱硬化性液状封止樹脂組成物の流動性を確保するため液状の硬化剤が好ましいが、結果的に常温で液状の状態であれば固形の硬化剤を溶解させて用いることもできる。
【0013】
本発明の液状封止樹脂組成物は、無機充填材(C)として球状アルミナと球状シリカとの混合物を含む。高熱伝導と低誘電率、高隙間流入性とを兼備しており半導体装置の信頼性を十分保持可能で、且つ半導体素子と基板との隙間への流入が可能であれば含有量やサイズに制限はないが、無機充填材の含有量が70質量%以上80質量%以下であって、そのうち球状アルミナの含有量が30質量%以上45質量%以下であることが好ましい。特に無機充填材の含有量が73質量%以上77質量%以下であって、そのうち球状アルミナの含有量が33.5質量%以上39.5質量%以下であることが、高熱伝導と低誘電率、隙間流入性とを兼備させる観点から、さらに好ましい。無機充填材の含有量が下限値以上だと熱伝導率を上昇する効果が高くなり、上限値以下だと隙間流入性が良好である。球状アルミナの含有量が下限値以上だと熱伝導率をさらに上昇する効果が高く、上限値以下であると誘電率を低下させる効果が高くなる。
【0014】
球状アルミナと球状シリカのサイズについては、球状アルミナが平均径0.5μm以上3μm以下であり、且つ球状シリカが平均径0.25μm以上2μm以下であることが、特に半導体素子と基板との隙間が10〜100μmの比較的狭い半導体装置への流入性の観点から、さらに望ましい。球状アルミナの平均径が下限値以上で、且つ球状シリカの平均径が下限値以上であると、隙間流入速度を上昇させる効果が高くなり、球状アルミナの平均径が上限値以下で、且つ球状シリカの平均径が上限値以下であると、隙間入口でのフィラー詰まり防止効果が高くなる。
【0015】
球状アルミナと球状シリカ以外の無機充填材も、本発明の効果である高熱伝導と低誘電率、高隙間流入性とが得られる範囲で加えることができ、そのようなものとしては窒化ケイ素や窒化アルミニウム、酸化マグネシウムなどを適宜併用することができる。その場合、熱伝導率と誘電率、隙間流入性とのバランスを最適化するため、球状アルミナと球状シリカの配合量やサイズ、塩基性化合物(D)の配合量を適宜調整できることは当然である。
【0016】
本発明の液状封止樹脂組成物は塩基性化合物(D)を含有する。塩基性化合物とは、液状封止樹脂組成物に加えることで封止樹脂系全体のpH値を塩基性方向へ移行させるように働き、そのことによって球状アルミナと球状シリカの表面電位をマイナス方向へ変位させることで各々の封止樹脂系への分散性を改善し、粘度を低下できるので隙間流入性を向上させることができる。それと同時に、球状アルミナと球状シリカとの静電気的相互作用を弱められるので、未充填ボイドや巻き込みボイド、揮発ボイドなど熱伝導を妨げる各種ボイドの発生を抑制できることから、高い熱伝導率を得ることができる。
【0017】
従って、塩基性化合物(D)として、封止樹脂物全体のpH値を塩基性方向へ移行し得るものであれば特に制限はないが、そのようなものとしては、例えばヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミンなどの1級アミン類、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、イソプロピルベンジルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、ジデシルアミンなどの2級アミン類、イミノジエタノール、エチルアミノエタノール、イソプロピルアミノエタノール、ベンジルエタノールアミン、ジブチルアミノエタノール、アニリノエタノール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、イソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、エタノールアミン、アミノプロパノール、ヘキサノールアミン、アミノエトキシエタノール、トリスヒドロキシメチルアミノメタンなどの1級,2級,3級アミノアルコール類、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミンとその部分加水分解物、3-トリメトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミンとその部分加水分解物、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどの各種塩基性カップリング剤や、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)あるいはその塩、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)あるいはその塩などの塩基性物質などを挙げる事ができる。
なかでも、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)あるいはその塩、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)あるいはその塩が封止樹脂系のpH値を塩基性に移行させる効果がより高く好ましい。
【0018】
塩基性化合物(D)の配合量は、封止樹脂物全体のpH値を塩基性方向へ移行し得るものであれば特に制限はないが、0.005質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。
【0019】
特に封止樹脂系のpH値は、7より大きいことが好ましく、そのことによってシリカフィラーとアルミナフィラーそれぞれの樹脂系への分散性がいっそう向上し、粘度が低下して隙間流入性が向上する。それと同時にアルミナとシリカとの静電気的相互作用がいっそう弱まるので、未充填ボイドや巻き込みボイド、揮発ボイドなど熱伝導を妨げる各種ボイドの発生が抑制され、高い熱伝導率を得ることができる。さらに好ましくは、pH値8より大きいことが、シリカの等電点とアルミナの双方の等電点を上回るので、前記効果がいっそう高くなる。
ここでpH値とは、水素イオン指数または水素イオン濃度指数を指す。pH値の決定方法は特に限定されないが、例えばリトマス試験紙などのpH試験紙、pH指示薬、pH電極やpHセンサーなどを用いた一般的なものを使用することができる。なお、pH値の決定に際しては、液状封止樹脂組成物のpH値を変動させない範囲で前処理を施したり、添加剤を加えたり、加熱や冷却などの操作も加えることができる。
本願では、液状封止樹脂組成物0.01〜0.1mlを、pHメーターのセンサー部に乗せ、その上から純水を0.02〜0.2ml加えて検体とした。さらに、センサー部を傾けるなどして全体が検体で覆われるようにし、pH値が安定するまで静置し、表示されたpH値を液状樹脂組成物のpH値とした。
【0020】
本発明の液状封止樹脂組成物には、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、無機充填材(C)として球状アルミナと球状シリカとの混合物、塩基性化合物(D)を含有する以外に、必要に応じて密着助剤、分散剤、ブリード防止剤、着色剤、消泡剤、希釈剤、顔料、難燃剤、レベリング剤などの各種添加剤を用いることができる。ただし、それらの添加物によって塩基性化合物の働きが抑えられる場合は、適宜塩基性化合物(D)の配合量を増やすことで本発明の効果を維持できる。
【0021】
本発明の液状封止樹脂組成物は、上述した各成分、添加剤などをプラネタリーミキサー、三本ロール、二本熱ロール、ライカイ機などの装置を用いて分散混練したのち、真空下で脱泡処理して製造することができる。
【0022】
このような液状封止樹脂組成物は、半導体装置の製造プロセスにおける時間の短縮や半導体デバイスへの熱応力低減の観点から、150℃以下2時間以下の硬化条件でエポキシ樹脂の反応率が95%以上であることが好ましい。その理由としては、反応率が95%以上になると、高温保管などによる後硬化により、ガラス転移温度(Tg)や破壊靱性値などの物性が変化することが少なく、反りや剥離など半導体装置へ悪影響が低減されるからである。ここで硬化とは、エポキシ樹脂の熱硬化反応によって3次元網状構造を形成することを指し、その反応率(Y)はDSC(示差走査熱量測定)により測定し、未硬化のサンプルの発熱量A(mJ/mg)と硬化後のサンプルの発熱量B(mJ/mg)を測定し、Y(%)=(1−B/A)×100の計算式を用いて算出する。DSCによる発熱量測定はアルミパンにサンプルを20mg秤量し蓋をした後、Seiko Instruments社製DSC220を用い30−300℃の温度範囲を10℃/minの昇温条件で測定し、横軸に温度(℃)縦軸にDSC(mJ/mg)をとったグラフにおけるベースラインを底辺とした反応ピークの面積として求めることができる。
【0023】
次に、半導体装置について説明する。
本発明の半導体装置は、上述した液状封止樹脂組成物を用いて製造される。
例えばフリップチップ接続の場合について説明すると、まず半田バンプを有する半導体素子と基板とを、リフロー装置を通して半田接続を行う。次に、半導体素子と基板との間隙に液状封止樹脂組成物を充填する。充填する方法としては、毛細管現象を利用する方法が一般的である。具体的には、半導体素子の一辺に上記液状封止樹脂組成物を塗布した後、半導体素子と基板との間隙に毛細管現象で流し込む方法、半導体素子の2辺に上記液状封止樹脂組成物を塗布した後、半導体素子と基板との間隙に毛細管現象で流し込む方法、半導体素子の中央部にスルーホールを開けておき、半導体素子の周囲に上記液状封止樹脂組成物を塗布した後、半導体素子と基板との間隙に毛細管現象で流し込む方法などが挙げられる。また、一度に全量を塗布するのではなく、2度に分けて塗布する方法なども行われる。次に、充填した上記液状封止樹脂組成物を硬化させる。硬化条件は、特に限定されないが、例えば100℃〜170℃の温度範囲で1〜12時間加熱を行うことにより硬化できる。さらに、例えば100℃で1時間加熱した後、引き続き150℃で2時間加熱するような、段階的に温度を変化させながら加熱硬化を行っても良い。
このようにして、半導体素子と基板との間が、液状封止樹脂組成物の硬化物で封止されている半導体装置を得ることができる。
【0024】
このような半導体装置には、フリップチップ方式の半導体装置、キャビティーダウン型BGA(Ball Grid Array)、POP(Package on Package)型BGA(Ball Grid Array)、TAB(Tape Automated Bonding)型BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Scale Package)等が挙げられる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1〜7)(比較例1〜3)
下記に示すエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)、無機充填剤(C)として球状アルミナと球状シリカとの混合物、塩基性化合物(D)、その他に希釈溶剤、密着助剤を表1に示した組成で配合、それを3本ロールにて十分に混練分散した後、真空脱泡して液状封止樹脂組成物を得た。なお、塩基性化合物と希釈溶剤とは予め室温混合したものを用いた。
【0026】
○エポキシ樹脂(A)
大日本インキ化学工業(株)製 (EXA−830LVP)
ジャパンエポキシレジン(株)製(JER−630)
○硬化剤(B)
日本化薬(株)製 (カヤハードAA)
○無機充填材(C)
・球状アルミナフィラー
アドマテクス(株)製 (AO−502:平均径0.7μm)
昭和電工(株)製 (CB−P02:平均径2.0μm)
・球状シリカフィラー
アドマテクス(株)製 (SO−E3:平均径1μm)
アドマテクス(株)製 (SO−E5:平均径1.5μm)
○塩基性化合物(D)
1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)
DBU−フェノール塩 サンアプロ(株)製U−CAT (SA−1)
1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5 (DBN)
○希釈溶剤
ブチルセロソルブアセテート(BCSA)
○密着助剤
信越化学(株)製 (KBM−403)
【0027】
【表1】

【0028】
(測定及び評価)
得られた液状封止樹脂組成物および半導体装置について、以下の測定及び評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0029】
1.pHの測定
各液状封止樹脂組成物0.05mlを、予め校正液を用いて校正されたHORIBA製コンパクトpHメーター「B−211」のセンサー部に乗せ、その上から純水約0.1ml加えて検体とした。さらに、センサー部を傾けるなどして全体が検体で覆われるようにし、センサー部の蓋を閉めてpH値が安定したとの表示が出るまで静置した。表示されたpH値を液状樹脂組成物のpH値とした。
【0030】
2.熱伝導率の測定と評価
各液状封止樹脂組成物について、150℃雰囲気下で2時間加熱して得られる硬化物の熱拡散率α、密度ρおよび比熱Cpを下記方法によってそれぞれ測定して求め、式(1)により熱伝導率λを算出した。
熱拡散率αは、熱拡散率測定装置LFA447 Nanoflash(NETZSCH社製)を用い、JIS R 1611:2011(最小二乗法)に準拠したレーザーフラッシュ法によって測定、密度ρはJIS K 7112A法に準拠した水中置換法によって測定、また比熱Cpについては示差走査熱量計 DSC7(PERKIN−ELMER社製)を用い、JIS K 7123に準拠した方法によって測定した。
熱伝導率の評価については、熱伝導率値が0.8W/m・K以上のものは良好、0.8W/m・K未満のものは不可と判定した。
λ=α×ρ×Cp ・・・・・・・・・・・式(1)
λ:熱伝導率(W/m・K)
α:熱拡散率(m/sec)
ρ:密度(kg/m
Cp:比熱(J/kg・K)
【0031】
3.誘電率の測定と評価
各液状封止樹脂組成物について、150℃雰囲気下で2時間加熱して得られる硬化物(直径50mm、厚さ3mm)の測定周波数1MHzにおける誘電率を、JIS K 6911に準拠した方法によって測定した。
誘電率の評価の評価については、誘電率値が5以下のものは良好、誘電率値が5を超えるものは不可と判定した。
【0032】
4.隙間流入性
バンプサイズ100μm、バンプ数3872個の半田バンプが設けられた15mm角の半導体素子と、BT基板(ビスマレイミドトリアジン基板、接続パッド:金メッキ表面)とを、ロジン系フラックス剤(タルチンケスター社製 Kester6502)を使用し、260℃で加熱して半田を溶融接合して得られた、半導体素子とBT基板との隙間が80μmの半導体装置を、110℃に加熱した熱板上に乗せ、半導体素子とBT基板との隙間に前記の液状封止樹脂組成物を半導体素子の一辺から毛細管現象を利用して充填した後、150℃で2時間硬化封止して半導体装置を得た。得られた半導体装置を、超音波深傷装置を用いて検査し、未充填部の無かったものを良好、未充填部のあったものを不可と判定した。
【0033】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、高熱伝導率と低誘電率、高隙間流入性とを兼備した液状封止樹脂組成物、およびそれを用いた半導体装置を得ることに利用することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と基板とをバンプ接続した後、半導体素子と基板との隙間を封止する際に用いる液状封止樹脂組成物であって、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材を含有し、(C)無機充填材が球状アルミナと球状シリカとの混合物を含み、且つ(D)塩基性化合物を含有することを特徴とする液状封止樹脂組成物。
【請求項2】
pH値が7以上である、請求項1記載の液状封止樹脂組成物。
【請求項3】
(D)塩基性化合物が、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5、およびそれらの塩のうち少なくとも1種類である請求項1又は2記載の液状封止樹脂組成物。
【請求項4】
(C)無機充填材の含有量が70質量%以上80質量%以下であって、そのうち球状アルミナの含有量が30質量%以上45質量%以下である請求項1〜3いずれか一項に記載の液状封止樹脂組成物。
【請求項5】
前記球状アルミナが平均径0.5μm以上3μm以下であり、且つ前記球状シリカが平均径0.25μm以上2μm以下である請求項1〜4いずれか一項に記載の液状封止樹脂組成物。
【請求項6】
前記半導体素子と前記基板との間が、請求項1〜5いずれか一項に記載の液状封止樹脂組成物の硬化物で封止されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
前記半導体素子と前記基板との間に、請求項1〜5いずれか一項に記載の液状封止樹脂組成物を充填する充填工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。


【公開番号】特開2012−167162(P2012−167162A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28338(P2011−28338)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】