説明

測定システム及び測定方法

【課題】測定対象の特性を簡易に測定可能な測定システムを提供する。
【解決手段】蛍光を発する蛍光体2と、蛍光体2から発せられた後に測定対象である膜100の特性に依存する変調を波長選択的に与えられた蛍光を受光する光学系10と、変調を与えられた蛍光の減衰特性を測定する減衰特性測定部301と、減衰特性に基づいて、測定対象である膜100の特性を特定する特定部302と、を備える測定システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定技術に係り、測定システム及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油プラント等を制御する場合、石油プラント内の流体の圧力を測定することが必要な場合がある。従来、可動感圧膜を蛍光体で形成した圧力センサが提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4752141号明細書
【特許文献2】米国特許第4883354号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、可動感圧膜を蛍光体で形成した圧力センサは感度が低く、計測が困難になる場合がある等の問題がある。また、圧力以外に、測定対象の様々な物理量等の特性を計測可能な手法が求められている。そこで、本発明は、測定対象の特性を簡易に測定可能な測定システム及び測定方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様は、(a)蛍光を発する蛍光体と、(b)蛍光体から発せられた後に測定対象の特性に依存する変調を波長選択的に与えられた蛍光を受光する光学系と、(c)変調を与えられた蛍光の減衰特性を測定する減衰特性測定部と、(d)減衰特性に基づいて、測定対象の特性を特定する特定部と、を備える測定システムであることを要旨とする。
【0006】
本発明の他の態様は、(a)蛍光体から蛍光を発することと、(b)蛍光体から発せられた後に測定対象の特性に依存する変調を波長選択的に与えられた蛍光を受光することと、(c)変調を与えられた蛍光の減衰特性を測定することと、(d)減衰特性に基づいて、測定対象の特性を特定することと、を含む測定方法であることを要旨とする。
【0007】
本発明のさらに他の態様は、(a)測定対象の特性に依存する変調を波長選択的に与えられた光で蛍光を励起する光学系と、(b)蛍光の減衰特性を測定する減衰特性測定部と、(c)減衰特性に基づいて、測定対象の特性を特定する特定部と、を備える測定システムであることを要旨とする。
【0008】
本発明のさらに他の態様は、(a)測定対象の特性に依存する変調を波長選択的に与えられた光で蛍光を励起することと、(b)蛍光の減衰特性を測定することと、減衰特性に基づいて、前記測定対象の特性を特定することと、を含む測定方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測定対象の特性を簡易に測定可能な測定システム及び測定方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る測定システムの第1の模式図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る蛍光の分光スペクトルの一例である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る反射スペクトルの一例である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る蛍光の分光スペクトルの変化の一例である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る蛍光強度の時間変化の例を示すグラフである。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る測定方法のフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る測定システムの第2の模式図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る測定システムの第3の模式図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態の第1の変形例に係る蛍光寿命と、膜の積層数と、の関係を示すグラフである。
【図10】本発明の第1の実施の形態の第3の変形例に係る測定システムの一部の第1の拡大断面図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態の第3の変形例に係る測定システムの一部の第2の拡大断面図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態の第4の変形例に係る測定システムの一部の第1の拡大断面図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態の第4の変形例に係る測定システムの一部の第2の拡大断面図である。
【図14】本発明の第1の実施の形態の第4の変形例に係る測定システムの一部の第3の拡大断面図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態の第4の変形例に係る測定システムの一部の第4の拡大断面図である。
【図16】本発明の第1の実施の形態の第4の変形例に係る測定システムの一部の第5の拡大断面図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る測定システムの模式図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態に係る蛍光体の蛍光強度の雰囲気温度に依存する減衰特性の例を示すグラフである。
【図19】本発明の第3の実施の形態に係る測定システムの模式図である。
【図20】本発明の第4の実施の形態に係る測定システムの模式図である。
【図21】本発明の第4の実施の形態に係る測定方法のフローチャートである。
【図22】本発明の第5の実施の形態に係る測定システムの模式図である。
【図23】本発明の第5の実施の形態に係る測定方法のフローチャートである。
【図24】本発明の第6の実施の形態に係る測定システムの模式図である。
【図25】本発明の第7の実施の形態に係る測定システムの第1の模式図である。
【図26】本発明の第7の実施の形態に係る受圧素子の上面図である。
【図27】本発明の第7の実施の形態に係る受圧素子の第1の断面図である。
【図28】本発明の第7の実施の形態に係る受圧素子の第2の断面図である。
【図29】本発明の第7の実施の形態に係る受圧素子の第3の断面図である。
【図30】本発明の第7の実施の形態に係る感圧膜に関する第1のグラフである。
【図31】本発明の第7の実施の形態に係る感圧膜に関する第2のグラフである。
【図32】本発明の第7の実施の形態に係る減衰波長を示す第1のグラフである。
【図33】本発明の第7の実施の形態に係る減衰波長を示す第2のグラフである。
【図34】本発明の第7の実施の形態に係る測定システムの第1の模式図である。
【図35】本発明の第7の実施の形態の第1の変形例に係る測定システムの模式図である。
【図36】本発明の第7の実施の形態の第1の変形例に係る受圧素子の模式図である。
【図37】本発明の第7の実施の形態の第2の変形例に係る測定システムの模式図である。
【図38】本発明の第7の実施の形態の第2の変形例に係る測定システムの一部の拡大断面図である。
【図39】本発明の第8の実施の形態に係る測定システムの第1の模式図である。
【図40】本発明の第8の実施の形態に係る受圧素子の上面図である。
【図41】本発明の第8の実施の形態に係る受圧素子の第1の断面図である。
【図42】本発明の第8の実施の形態に係る受圧素子の第2の断面図である。
【図43】本発明の第8の実施の形態に係る受圧素子の第3の断面図である。
【図44】本発明の第8の実施の形態に係る測定システムの第2の模式図である。
【図45】本発明の第8の実施の形態に係る測定システムの第3の模式図である。
【図46】本発明の第8の実施の形態に係る測定システムの第4の模式図である。
【図47】本発明の第8の実施の形態の第1の変形例に係る測定システムの模式図である。
【図48】本発明の第8の実施の形態の第1の変形例に係る測定システムの一部の拡大断面図である。
【図49】本発明の第8の実施の形態の第2の変形例に係る測定システムの一部の第1の拡大断面図である。
【図50】本発明の第8の実施の形態の第2の変形例に係る測定システムの一部の第2の拡大断面図である。
【図51】本発明の第8の実施の形態の第3の変形例に係る測定システムの一部の第1の拡大断面図である。
【図52】本発明の第8の実施の形態の第3の変形例に係る測定システムの一部の第2の拡大断面図である。
【図53】本発明のその他の実施の形態に係る蛍光強度の時間変化の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る測定システムは、図1に示すように、蛍光を発する蛍光体2と、蛍光体2から発せられた後に測定対象である膜100の特性(物理量)に依存する変調を波長選択的に与えられた蛍光を受光する光学系10と、変調を与えられた蛍光の減衰特性を測定する減衰特性測定部301と、減衰特性に基づいて、測定対象である膜100の特性を特定する特定部302と、を備える。
【0013】
測定システムは、蛍光体2に励起光を照射する発光素子1をさらに備える。発光素子1には、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)及び半導体レーザ(LD:Laser Diode)等の半導体発光素子が使用可能である。より具体的には、発光素子1には、AlGaInPをチップ材料とする四元素系発光素子、及びInGaNをチップ材料とする三元素系発光素子が使用可能である。例えば、発光素子1には、通電制御部21が接続される。通電制御部21は、発光素子1を点滅するように通電(ON/OFF)を制御し、発光素子1から蛍光体2の励起光を断続的に放射させる。
【0014】
蛍光体2は、蛍光物質、又は遷移金属がドープされた蛍光物質からなる。遷移金属がドープされた蛍光物質としては、ルビー等のCr3+系材料、Mn2+系材料、Mn4+系材料、及びFe2+系材料が使用可能である。あるいは、蛍光体2は、ユウロピウム(Eu)がドープされたアルミン酸ストロンチウム(SrAl24系)、アレクサンドライト(BeAl24の変種)、クロム・ドープ・イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Cr4+:YAG)、チタニウム・ドープ・サファイア(Ti:Sapphire)、クロム添加フッ化リチウム・ストロンチウム・アルミニウム(Cr:LiSAF)、又はイッテルビウム・ドープ・イットリウム・アルミニウム(Yb:YAG)等からなるが、これらに限定されない。なお、蛍光体2は、保持部材等に格納されていてもよい。例えば、蛍光体2がルビーからなる場合、蛍光体2が発する蛍光のスペクトルは、図2に示すように、波長693乃至694nmにかけて輝線スペクトルを有する。
【0015】
図1に示す蛍光体2が発した蛍光は、光学系10に含まれる光導波路11で伝搬される。光導波路11の端部から放射した蛍光は、膜100に到達する。膜100は、反射鏡22に保持されている。光導波路11に対する膜100の位置は、適宜移動してもよい。膜100を透過した蛍光の少なくとも一部は、反射鏡22で反射され、膜100を再び透過して、膜100表面から光学系10に含まれる光導波路12に侵入する。光導波路11,12の材料としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA:Poly(methyl methacrylate))等のプラスチック、石英、及び多成分ガラス等が使用可能である。また、光導波路11,12は、コア及びクラッドを含む光ファイバと、光ファイバを覆う保護管と、を備えていてもよい。ただし、光が伝搬可能であれば、光導波路11,12はこれらに限定されない。
【0016】
ここで、膜100の透過率が低下すると、膜100及び反射鏡22の複合体の反射率も、図3に示すように低下する。また、反射率の低下は、波長が短くなるほど大きくなる。そのため、膜100の透過率が低下すると、膜100から出射し光導波路12に入射する蛍光の蛍光強度も、図4に示すように、長波長帯域よりも短波長帯域で顕著に低下する。このように、図1に示す光導波路11から光導波路12に伝播する蛍光の蛍光強度は、膜100の透過率等の特性によって、波長ごとに異なる変調を与えられる。光導波路12に入射した蛍光は、光学系10に含まれる受光素子3に伝搬される。受光素子3には、フォトダイオード等が使用可能である。受光素子3には、受光素子3の出力信号を増幅する処理部4が接続されている。処理部4には、中央演算処理装置(CPU)300が接続されている。
【0017】
減衰特性測定部301は、CPU300に含まれる。減衰特性測定部301は、発光素子1が消灯した瞬間又は直後から受光素子3で測定される蛍光の蛍光強度の時間変化を観測し、蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性の測定値を取得する。なお、図5に示すように、発光素子1が消灯した瞬間又は直後と比較して、蛍光強度が1/eに低下するまでに要する時間が、蛍光寿命τとして定義される。なお、eは自然対数である。
【0018】
ここで、蛍光寿命τは、波長が短いほど長くなり、波長が長いほど短くなる傾向にある。そのため、図1に示す膜100の透過率が低下し、短波長帯域の蛍光強度が低下すると、受光素子3が受光する蛍光の蛍光寿命τは短くなる傾向にある。したがって、受光素子3が受光する蛍光の蛍光寿命τが短くなった場合、膜100の透過率は低下している。また、膜100の透過率が上昇し、短波長帯域の蛍光強度が上昇すると、受光素子3が受光する蛍光の蛍光寿命τは長くなる傾向にある。したがって、受光素子3が受光する蛍光の蛍光寿命τが長くなった場合、膜100の透過率は上昇している。
【0019】
以上説明したように、蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性と、膜100の透過率と、は相関関係を有する。特定部302は、蛍光の減衰特性及び膜100の透過率の予め取得された相関関係と、蛍光の減衰特性の測定値と、に基づいて、膜100の特性として、膜100の透過率の測定値を算出する。CPU300には、関係記憶部401を含むデータ記憶装置400が接続されている。関係記憶部401は、特定部302によって利用される、蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性と、膜100の透過率と、の予め取得された相関関係を保存する。なお、相関関係は、関数で表現されていてもよいし、表形式で表現されていてもよい。
【0020】
CPU300には、入力装置321、出力装置322、プログラム記憶装置323、及び一時記憶装置324がさらに接続されている。入力装置321としては、スイッチ及びキーボード等が使用可能である。出力装置322としては、光インジケータ、デジタルインジケータ、及び液晶表示装置等が使用可能である。出力装置322は、特定部302で算出された膜100の透過率の測定値を出力する。プログラム記憶装置323は、CPU300に接続された装置間のデータ送受信等をCPU300に実行させるためのプログラムを保存している。一時記憶装置324は、CPU300の演算過程でのデータを一時的に保存する。
【0021】
次に図6に示すフローチャートを用いて第1の実施の形態に係る測定方法について説明する。
(a)ステップS101で、図1に示す通電制御部21から発光素子1に通電し、発光素子1から蛍光体2に励起光を照射させる。励起光を照射された蛍光体2は、蛍光を発する。ステップS102で、蛍光体2が発した蛍光が光導波路11で膜100の近傍に伝搬される。ステップS103で、膜100を透過した蛍光は、膜100の透過率に応じて変調を与えられる。膜100の透過率に依存する変調を与えられた蛍光は、光導波路12で受光素子3に伝搬される。受光素子3で受光した蛍光の蛍光強度は、処理部4を経て、CPU300の減衰特性測定部301に伝送される。
【0022】
(b)ステップS104で、通電制御部21から発光素子1への通電を切断し、発光素子1を消灯する。減衰特性測定部301は、発光素子1を消灯した瞬間又は直後からの蛍光の蛍光強度の時間変化を観測し、蛍光の蛍光寿命τ等の減衰特性の測定値を取得する。減衰特性測定部301は、取得した減衰特性の測定値を、特定部302に伝送する。
【0023】
(c)ステップS105で、特定部302は、関係記憶部401から、蛍光の減衰特性と、膜100の透過率と、の予め取得された相関関係を読み出す。さらに特定部302は、読み出した相関関係と、減衰特性の測定値と、に基づいて、膜100の透過率の測定値を算出する。その後、特定部302は、算出した膜100の透過率の測定値を出力装置322に出力させ、第1の実施の形態に係る測定方法を終了する。
【0024】
以上説明した第1の実施の形態に係る測定システム及び測定方法によれば、蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性に基づいて、膜100の透過率を簡易かつ正確に算出することが可能となる。なお、図7に示すように、励起光を光導波路11で伝搬し、蛍光体2を膜100の近傍に配置してもよい。また、図8に示すように、光導波路11の端部から放射した蛍光を膜100に透過し、膜100を透過した蛍光を光導波路12に入射させてもよい。
【0025】
なお、蛍光の減衰特性と、膜100の透過率と、の相関関係を予め取得する際には、透過率が既知の複数の膜100を用意し、それぞれの蛍光の減衰特性を第1の実施の形態に係る測定システムで測定すればよい。
【0026】
(第1の実施の形態の第1の変形例)
第1の実施の形態では、測定対象の特性として、膜100の透過率を測定する例を示した。これに対して、膜100の屈折率、反射率、密度、及び膜厚等も、波長ごとに異なる変調を蛍光に与え得る。よって、膜100のこれらの特性と、蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性と、の相関関係を予め取得することにより、蛍光の減衰特性の測定値から膜100の種々の特性を測定することが可能である。また、図9は、ゼラチン膜の積層数と、蛍光寿命τと、の相関関係の一例を示すグラフである。このように、多層膜の積層数と、蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性とは、相関関係を有する。したがって、測定対象の特性として、多層膜の積層数を測定することも可能である。以下説明する、第2乃至第6の実施の形態についても同様である。
【0027】
(第1の実施の形態の第2の変形例)
第1の実施の形態及び第1の実施の形態の第1の変形例では、測定対象として、膜100を例示した。しかし、測定対象は膜100に限定されず、膜100以外の固体物を測定対象としてもよい。また、固体物の特性として、透過率、反射率、屈折率、及び密度等を測定してもよい。固体物は、例えば有機溶媒とフォトレジストとの混合物等、吸収波長が異なる物質が2つ以上混ざった混合物からなると、蛍光に波長選択的な変調を与え得る。以下説明する、第2乃至第6の実施の形態についても同様である。
【0028】
(第1の実施の形態の第3の変形例)
第1の実施の形態の第3の変形例に係る測定システムは、図10に示すように、光導波路11及び光導波路12の端部に対向して配置された透明な筺体107と、筺体107の表面に配置された複数の吸着材33と、を備える。筺体107は、透明樹脂又はガラス等からなる。吸着材33は、化学物質が吸着すると、化学物質の濃度又は酸性度に応じて発色又は変色する。吸着材33は、例えば粒子であり、金、銀、銅又はリトマス等を含む。例えば測定対象の化学物質が糖である場合、吸着材33は金を含む。また、測定対象の化学物質が酸素である場合、吸着材33は銅を含む。
【0029】
吸着材33が発色又は変色すると、吸着材33表面で反射する蛍光の波長成分が選択的に吸収される。そのため、吸着材33が発色又は変色すると、光導波路11から光導波路12に伝播する蛍光の蛍光強度が、波長選択的に変調を与えられる。なお、図11に示すように、光導波路11及び光導波路12の端部に対向して反射鏡108を配置し、光導波路11及び光導波路12の端部と、反射鏡108と、の間に、吸着材33を配置してもよい。この場合、吸着材33が発色又は変色すると、吸着材33を透過する蛍光の波長成分が選択的に吸収される。
【0030】
第1の実施の形態の第3の変形例において、特定部302は、蛍光の減衰特性及び吸着材33に吸着した化学物質の濃度の予め取得された相関関係と、蛍光の減衰特性の測定値と、に基づいて、測定対象である化学物質の特性である濃度の測定値を算出する。あるいは特定部302は、蛍光の減衰特性及び吸着材33に吸着した化学物質の酸性度の予め取得された相関関係と、蛍光の減衰特性の測定値と、に基づいて、測定対象である化学物質の特性である酸性度の測定値を算出する。また、関係記憶部401は、特定部302によって利用される、蛍光の減衰特性及び化学物質の濃度の相関関係、又は蛍光の減衰特性及び化学物質の酸性度の相関関係を保存する。
【0031】
なお、測定対象である化学物質は、さらに核酸及びタンパク質等の生体物質であってもよい。また、生体物質の特性として、濃度、核酸配列、及びアミノ酸配列等を測定してもよい。この場合、測定システムは、生体物質を捕捉し、蛍光を照射されるプローブをさらに備えていてもよい。プローブとしては、核酸、リガンド、受容体、及び抗体等が使用可能である。以下説明する、第2乃至第6の実施の形態についても同様である。
【0032】
(第1の実施の形態の第4の変形例)
第1の実施の形態の第4の変形例においては、図12に示すように、光導波路11及び光導波路12の端部に対向して反射鏡22が配置される。また、光導波路11及び光導波路12の端部と、反射鏡22と、の間に、液体62を格納する透明容器61が配置される。液体62は、例えば、光の吸収波長が異なる複数の物質を含有する。液体62の例としては、水と有溶媒の混合液が挙げられる。
【0033】
光導波路11の端部から放射された蛍光は、レンズ80を経て、液体62と気体との界面63を含む空間を進行し、反射鏡22で反射される。反射鏡22で反射された蛍光は、液体62と気体との界面63を含む空間を進行し、レンズ80を経て、光導波路12に進入する。
【0034】
ここで、液体62によって、蛍光は波長選択的に変調を受ける。また、蛍光が変調を受ける程度は、液体62の液面である界面63の高さに依存する。第1の実施の形態の第4の変形例において、特定部302は、蛍光の減衰特性及び界面の高さ等の位置の予め取得された相関関係と、蛍光の減衰特性の測定値と、に基づいて、測定対象である界面の特性である位置の測定値を算出する。
【0035】
なお、図13に示すように、光導波路11の端部から放射された蛍光が、レンズ80を経て、液体62と気体との界面63を含む空間を進行し、さらにレンズ81を経て光導波路12に進入するようにしてもよい。
【0036】
また、液体62が蛍光に波長選択的な変調を与えない物質からなる場合は、図14に示すように、第1の波長帯域の蛍光を反射する反射鏡22Aと、第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の蛍光を反射する反射鏡22Bと、を配置してもよい。ここで、例えば第1の波長帯域は第2の波長帯域より短波長側であり、第2の波長帯域は第1の波長帯域より長波長側である。
【0037】
例えば、第1の波長帯域と、第2の波長帯域とは、その重心波長が互いに異なっている。ここで、「重心波長」とは、スペクトル領域において、重心となる波長を指す。あるいは、第1の波長帯域と、第2の波長帯域とは、それぞれの積算光量が等しくなるよう、設定してもよい。この場合、第1の波長帯域と、第2の波長帯域とは、それぞれの帯域幅が異なっていてもよい。また、重心波長は互いに異なっていても、同じであってもよい。なお、第1の波長帯域と、第2の波長帯域とは、互いに異なる波長帯域であるが、部分的に重なっていてもよい。
【0038】
例えば界面63が上昇してくると、反射鏡22Aで反射される第1の波長帯域の蛍光の光強度に対して、反射鏡22Bで反射される第2の波長帯域の蛍光の光強度が相対的に低下する。結果として、光導波路12に進入する蛍光の第2の波長帯域が選択的に変調を受け得る。なお、光吸収損失を起こしやすい波長帯域の蛍光を液体に通すことにより、より高分解能な界面測定が可能となる。
【0039】
あるいは、図15に示すように、反射鏡22の表面に、第1の波長帯域を透過させる波長フィルタ123と、第2の波長帯域を透過させる波長フィルタ124と、を配置してもよい。さらに、図16に示すように、反射鏡を用いない場合は、光導波路11と、光導波路12と、の間に、第1の波長帯域を透過させる波長フィルタ123と、第2の波長帯域を透過させる波長フィルタ124と、を配置してもよい。
【0040】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る測定システムは、図17に示すように、発光素子1が放射した励起光を検出する発光検出器91と、検出された励起光の光強度の変動を補正する装置である発光強度補正部92と、をさらに備える。発光検出器91には、フォトダイオード等が使用可能である。発光検出器91は、検出した励起光の光強度の測定値Imを発光強度補正部92に伝送する。発光強度補正部92は、励起光の光強度の所定値Icと、測定値Imと、の差をとり、光強度の変動量ΔIを算出する。さらに発光強度補正部92は、通
電制御部21に、励起光の光強度の変動量ΔIが0となるよう、発光素子1への通電量を
制御させる。
【0041】
発光素子1が発する励起光の光強度の揺らぎは、特定部302で特定される膜100の特性の測定値に影響を与え得る。これに対し、第2の実施の形態に係る測定システムは、フィードバック制御により、励起光の光強度の変動量ΔIを抑制するため、膜100の特
性を正確に測定することが可能となる。
【0042】
(第3の実施の形態)
図18は、蛍光体2の雰囲気温度Tを変えた場合における、励起光消光後の蛍光体2の蛍光強度の例を示している。なお、蛍光体2の雰囲気温度Tとは、例えば、蛍光体2又は蛍光体2を格納する熱伝導性の保持部材に接する気体の温度である。ここで、第1の温度条件下で、蛍光体2の雰囲気温度Tは最も低く、第2乃至第5の温度条件下で、蛍光体2の雰囲気温度Tは順次高くなる。図18に示すように、蛍光体2の蛍光寿命τは、蛍光体2の雰囲気温度Tが上昇するとともに、短くなる傾向にある。
【0043】
したがって、図17等に示す蛍光体2の雰囲気温度Tが変動すると、膜100の特性を正確に特定することが困難になり得る。これに対し、第3の実施の形態に係る測定システムは、図19に示すように、蛍光体2の雰囲気温度Tを一定に保つ温度調節器101を備える。第3の実施の形態に係る測定システムのその他の構成要素は、図17に示す第2の実施の形態に係る測定システムと同様であるので、説明は省略する。
【0044】
図19に示す第3の実施の形態に係る測定システムは、温度調節器101が蛍光体2の雰囲気温度Tを一定に保つため、雰囲気温度Tの変動に基づく蛍光の減衰特性の変動が抑制される。そのため、第3の実施の形態に係る測定システムは、膜100の特性をより正確に得ることを可能にする。
【0045】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態に係る測定システムは、図20に示すように、蛍光体2の雰囲気温度Tの測定値Tmを測定する温度計102と、膜100で変調される前の蛍光の蛍光寿命τ等の減衰特性の雰囲気温度Tの変動による変動を補正する減衰特性補正部303と、をさらに備える。温度計102には、例えば、サーミスタ及び白金温度センサ等が使用可能である。
【0046】
ここで、関係記憶部401に保存されている蛍光寿命τと、膜100の特性と、の相関関係を取得した際の蛍光体2の雰囲気温度Tを基準温度Tsとする。第4の実施の形態に係る測定システムは、基準温度Tsからの雰囲気温度の変動量ΔTと、膜100で変調さ
れる前の蛍光の蛍光寿命の変動量Δτと、の予め取得された関係を保存する補正情報記憶
部402をさらに備える。
【0047】
雰囲気温度の変動量ΔTと、蛍光寿命の変動量Δτと、の関係は、下記(1)式に示す
ように、雰囲気温度の変動量ΔTを独立変数とし、蛍光寿命の変動量Δτを従属変数とす
る、関数で表現されていてもよい。
Δτ= f(ΔT) ・・・(1)
減衰特性補正部303は、下記(2)式に従って、蛍光体2の雰囲気温度の測定値Tmと、基準温度Tsと、の差をとり、雰囲気温度の変動量の値ΔTcを算出する。
ΔTc = Tm - Ts ・・・(2)
【0048】
また、減衰特性補正部303は、雰囲気温度の変動量の算出値ΔTcを、(1)式の雰
囲気温度の変動量の変数ΔTに代入し、蛍光寿命の変動量の値Δτc1を算出する。さら
に減衰特性補正部303は、下記(3)式に従って、減衰特性測定部301が取得した蛍光寿命の測定値τmと、蛍光寿命の変動量の算出値Δτc1と、の差をとり、蛍光寿命の
補正値τc1を算出する。これにより、測定された雰囲気温度Tmにおける蛍光寿命τmが、基準温度Tsにおける蛍光寿命τc1に換算される。
τc1=τm-Δτc1 ・・・(3)
【0049】
第4の実施の形態において、特定部302は、減衰特性補正部303が算出した蛍光寿命の補正値τc1と、関係記憶部401に保存されている蛍光寿命τ及び膜100の特性の相関関係と、に基づいて、膜100の特性を特定する。
【0050】
次に図21に示すフローチャートを用いて第4の実施の形態に係る測定方法について説明する。
(a)まず、図6に示した第1の実施の形態に係る測定方法と同様に、ステップS101乃至ステップS103を実施する。次に、図21のステップS104で、図20に示す減衰特性測定部301は、発光素子1を消灯した瞬間又は直後からの結合光の蛍光強度の時間変化を観測し、受光素子3で受光した蛍光の蛍光寿命の測定値τmを取得する。減衰特性測定部301は、取得した減衰特性の測定値τmを、減衰特性補正部303に伝送する。
【0051】
(b)ステップS201で、温度計102は、蛍光体2の雰囲気温度の測定値Tmを測定する。さらに温度計102は、蛍光体2の雰囲気温度の測定値Tmを、減衰特性補正部303に伝送する。なお、ステップS201は、ステップS101乃至ステップS104と並行して実施してもよい。
【0052】
(c)ステップS202で、減衰特性補正部303は、蛍光体2の雰囲気温度の測定値Tmと、基準温度Tsと、の差である雰囲気温度の変動量の値ΔTcを算出する。また、
減衰特性補正部303は、補正情報記憶部402から、雰囲気温度の変動量ΔTと、蛍光
寿命の変動量Δτと、の関係を読み出す。その後、減衰特性補正部303は、雰囲気温度
の変動量の算出値ΔTcと、雰囲気温度の変動量ΔT及び蛍光寿命の変動量Δτの関係と
、に基づいて、蛍光寿命の変動量の算出値Δτc1を算出する。
【0053】
(d)ステップS203で、減衰特性補正部303は、蛍光寿命の測定値τmと、蛍光寿命の変動量の算出値Δτc1と、の差をとり、蛍光寿命の補正値τc1を算出する。そ
の後、減衰特性補正部303は、算出した蛍光寿命の補正値τc1を特定部302に伝送する。ステップS204で、特定部302は、蛍光寿命τと、膜100の特性と、の予め取得された相関関係を読み出す。次に、特定部302は、蛍光寿命τ及び膜100の特性の相関関係と、蛍光寿命の補正値τc1と、に基づいて、膜100の特性の測定値を算出する。
【0054】
以上説明した第4の実施の形態に係る測定システムは、蛍光体2の雰囲気温度Tの変動による蛍光寿命τ等の減衰特性の変動を補正可能である。そのため、第4の実施の形態に係る測定システムは、膜100の特性の測定値をより正確に得ることを可能にする。
【0055】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態に係る測定システムは、図22に示すように、膜100で変調される前の蛍光の未変調蛍光寿命の測定値τnmを測定する未変調蛍光寿命測定器103をさらに備える。未変調蛍光寿命測定器103は、例えば、フォトダイオード及び増幅器等を含む。ここで、蛍光体2の雰囲気温度Tが基準温度Tsである場合の、膜100で変調される前の蛍光の蛍光寿命τを基準蛍光寿命τnsとする。
【0056】
第5の実施の形態において、減衰特性補正部303は、下記(4)式に示すように、未変調蛍光寿命の測定値τnmと、基準蛍光寿命τnsと、の差をとり、蛍光寿命の補正量Δτc2を算出する。
Δτc2=τnm-τns ・・・(4)
さらに減衰特性補正部303は、下記(5)式に従って、減衰特性測定部301が取得した蛍光寿命の測定値τmと、蛍光寿命の補正量Δτc2と、の差をとり、蛍光寿命の補
正値τc2を算出する。
τc2=τm-Δτc2 ・・・(5)
【0057】
第5の実施の形態において、特定部302は、減衰特性補正部303が算出した蛍光寿命の補正値τc2と、関係記憶部401に保存されている蛍光寿命τ及び膜100の特性の相関関係と、に基づいて、膜100の特性の測定値を算出する。
【0058】
次に図23に示すフローチャートを用いて第5の実施の形態に係る測定方法について説明する。
(a)まず、図21に示した第4の実施の形態に係る測定方法と同様に、ステップS101乃至ステップS104を実施する。また、ステップS104と並行して、図23のステップS301で、図22に示す未変調蛍光寿命測定器103が、膜100で変調される前の蛍光の未変調蛍光寿命の測定値τnmを測定する。さらに未変調蛍光寿命測定器103は、未変調蛍光寿命の測定値τnmを、減衰特性補正部303に伝送する。
【0059】
(b)ステップS302で、減衰特性補正部303は、未変調蛍光寿命の測定値τnmと、基準蛍光寿命τnsと、の差である、蛍光寿命の補正量Δτc2を算出する。ステッ
プS303で、減衰特性補正部303は、蛍光寿命の測定値τmと、蛍光寿命の補正量Δ
τc2と、の差をとり、蛍光寿命の補正値τc2を算出する。その後、減衰特性補正部303は、算出した蛍光寿命の補正値τc2を特定部302に伝送する。ステップS304で、特定部302は、関係記憶部401から、蛍光寿命τと、膜100の特性と、の予め取得された相関関係を読み出す。次に、特定部302は、蛍光寿命τ及び膜100の特性の相関関係と、蛍光寿命の補正値τc2と、に基づいて、膜100の特性の測定値を算出する。
【0060】
以上説明した第5の実施の形態に係る測定システムも、蛍光体2の雰囲気温度Tの変動による蛍光寿命τ等の減衰特性の変動を補正可能である。そのため、第5の実施の形態に係る測定システムも膜100の特性の測定値をより正確に得ることを可能にする。
【0061】
(第6の実施の形態)
図24に示す第6の実施の形態に係る測定システムは、図1に示した第1の実施の形態に係る測定システムと異なり、発光素子1が発した励起光が蛍光に変換されずに、光導波路11を介して、膜100に伝搬される。膜100は、特性に応じて、光導波路12に伝播する励起光の光強度を波長選択的に変調する。
【0062】
第6の実施の形態において、光導波路12の端部に、蛍光体2が配置されている。膜100の特性に依存する励起光の変調に応じて、蛍光体2が発する蛍光も変調する。蛍光体2が発した蛍光は、受光素子3に受光される。第6の実施の形態に係る測定システムのその他の構成要素は、第1の実施の形態と同様である。なお、第2の実施の形態と同様に、第6の実施の形態においても、発光素子1の発光強度の揺らぎを補正してもよい。さらに、第3乃至第5の実施の形態と同様に、第6の実施の形態においても、蛍光体2の雰囲気温度Tの変動を補正してもよい。
【0063】
(第7の実施の形態)
図25に示す第7の実施の形態に係る測定システムは、図1に示した第1の実施の形態に係る測定システムと異なり、蛍光体2が発した蛍光は、圧力POを受け、圧力POに依存する変調を蛍光に与える受圧素子6に伝搬される。受圧素子6で変調された蛍光は、光導波路12で受光素子3に伝搬される。
【0064】
受圧素子6は、図26及びXXVII−XXVII方向からの断面図である図27に示すように、光導波路11及び光導波路12が挿入されるホルダ60、及び挿入された光導波路11及び光導波路12の端面に配置された半透鏡26を備える。光導波路11を伝播してきた蛍光の一部は、半透鏡26を透過する。受圧素子6はさらに、半透鏡26と平行に配置され、外部の気体及び液体を含む流体からの圧力POを受ける感圧膜50と、感圧膜50の半透鏡26と対向する表面に配置され、半透鏡26を透過した蛍光を反射する反射膜27と、半透鏡26及び反射膜27の間隔Laを規定する筐体43と、を備えるファブリペロ干渉計である。
【0065】
例えば、半透鏡26の反射率は10〜30%であり、反射膜27の反射率は30〜60%である。なお、ファブリペロ干渉計と類似の構造を有するファブリペロ共振器があるが、ここでは干渉信号が正弦波状になるものを「ファブリペロ干渉計」、干渉信号がローレンツ型信号になるものを「ファブリペロ共振器」とする。受圧素子6は、感圧膜50、筐体43、及びホルダ60で囲まれた領域の内圧PIを調節するためにホルダ60に設けられた通気孔160、及び通気孔160の開閉を制御する開放弁70を備える。さらに感圧膜50の外部には、表出する感圧膜50の図26に示した半径aを規定する基底部40が配置される。なお、感圧膜50、筐体43、及びホルダ60で囲まれた領域の屈折率をnaとする。
【0066】
受圧素子6の感圧膜50は、内圧PIと圧力POが等しい「定常状態」では撓みは生じない。しかし図28に示すように、内圧PIと比較して圧力POが大きくなったときは、感圧膜50は内部方向に撓む。そのため、定常状態と比較して、感圧膜50の中心位置が、光導波路11及び光導波路12の端部に近づく。また図29に示すように、内圧PIと比較して圧力POが小さくなったときは、感圧膜50は外部方向に撓む。そのため、定常状態と比較して、感圧膜50の中心位置が、光導波路11及び光導波路12の端部から離れる。反射膜27の裏面に感圧膜50が配置されているため、感圧膜50にあわせて反射膜27も撓む。なお、感圧膜50の最も撓む部分は感圧膜50の構造や物性に依存し、必ずしも中心に限定されない。
感圧膜50の撓みをw1として、図28及び図29に示した半透鏡26と反射膜27との間を往復する間に蛍光が進む光路長F1は、下記(6)式で与えられる。
F1 = 2na(La + w1) ・・・(6)
【0067】
図28に示すように圧力POが加わったときの感圧膜50の撓みw1は、感圧膜50が図26に示すように半径aである場合、下記(7)式で表される。
w 1 = (PO- PI)× (a2 - r2)2 / (64 ×Z) ・・・(7)
ここでr(r:0≦r≦a)は感圧膜50の中心位置Mから測定位置までの距離である。Zは下記(8)式で与えられる。
Z = Y ×t3 / [12 × (1 - υ2)] ・・・(8)
(8)式において、Yは感圧膜50のヤング率、tは感圧膜50の厚さ、υは感圧膜50のポアッソン比である。
【0068】
図27乃至図29に示した感圧膜50の厚さtが50μmの場合における外部からの圧力POと、撓みw1と、の関係をプロットしたグラフが図30である。図30においては、図40に示した感圧膜50の半径aが0.01mm、0.10mm、及び1.00mmの場合のそれぞれについてプロットされている。また感圧膜50の厚さtが1μmの場合における外部からの圧力POと、撓みw1と、の関係をプロットしたグラフが図31である。図31においては、感圧膜50の半径aが0.01mm、0.10mm、及び1.00mmの場合のそれぞれについてプロットされている。図30及び図31に示すように、感圧膜50の半径a及び厚さtを適宜選択することにより、外部からの圧力POに対する受圧素子5の圧力感度を調整することが可能である。
【0069】
図27に示す半透鏡26を透過した蛍光は感圧膜50上の反射膜27表面で反射し、反射した蛍光は半透鏡26方向に進行する。この場合、蛍光の一部は半透鏡26を透過し、光導波路12に進入する。一方、半透鏡26を透過しなかった蛍光は半透鏡26表面で再び反射膜27に向かって反射される。このとき、反射膜27から半透鏡26に進行する波長成分と、半透鏡26表面で反射し反射膜27に進行する波長成分との位相が揃う場合、光強度は減衰しない。しかし、反射膜27から半透鏡26に進行する波長成分と、半透鏡26表面で反射し反射膜27に進行する波長成分との位相が揃わない場合、光強度は減衰する。したがって、受圧素子6が出力する蛍光は、内部の多重反射で波長成分の位相が揃わない波長帯域の光強度が減衰している。
【0070】
図32は、変位w1が0であり、半透鏡26及び反射膜27の両方の反射率が30%である場合の、蛍光の波長λと光強度との関係を示している。図32に示すように、蛍光のうち波長λが0.85μmの波長成分は、受圧素子6内部の多重反射により逆転する位相の光どうしで干渉しあい、光強度が0となる。ここで、図28及び図29に示すように圧力POによって感圧膜50が撓んだ場合、光強度が減衰する波長成分は、図33に示すように感圧膜50の変位w1に応じてシフトする。このように、受圧素子6において、蛍光の光強度が減衰する波長成分が、圧力POに応じてシフトする。
【0071】
上述したように、蛍光寿命τは、波長が短いほど長くなり、波長が長いほど短くなる傾向にある。圧力POに応じて蛍光の光強度が減衰する波長成分がシフトすると、蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性も変動する。このように、蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性と、圧力POと、は相関関係を有する。第7の実施の形態において、特定部302は、蛍光の減衰特性及び圧力POの予め取得された相関関係と、蛍光の減衰特性の測定値と、に基づいて、測定対象である流体の特性である圧力POの測定値を算出する。また、第7の実施の形態において、関係記憶部401は、特定部302によって利用される、蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性と、圧力POと、の予め取得された相関関係を保存する。
【0072】
なお、第2の実施の形態と同様に、第7の実施の形態においても、発光素子1の発光強度の揺らぎを補正してもよい。さらに、第3乃至第5の実施の形態と同様に、第7の実施の形態においても、蛍光体2の雰囲気温度Tの変動を補正してもよい。また、図34に示すように、蛍光体2を光導波路12の端部に配置し、励起光の減衰波長を受圧素子5で変調してもよい。
【0073】
(第7の実施の形態の第1の変形例)
図25においては、光反射型の受圧素子6を示した。これに対し、図35に示すように、光透過型の受圧素子83を使用してもよい。光透過型の受圧素子83は、例えば図36に示すように、光導波路11及び光導波路12の間に挿入された回折素子127と、回折素子127を保持する筺体143と、外部からの圧力POを受ける感圧膜150と、を備える。
【0074】
回折素子127は、それぞれ屈折率が異なる第1屈折率部及び第2屈折率部が交互に配置された周期構造を有するファイバブラッググレーティングである。回折素子127に入射した蛍光は、第1屈折率部及び第2屈折率部の周期構造により、特定の波長成分のみが選択的に減衰される。ここで、第1屈折率部及び第2屈折率部の周期構造における平均屈折率をnDとし、周期構造の間隔をΛm1とすると、下記(9)式で表されるブラッグ波長λBが減衰した蛍光が光導波路12に伝播する。
λB = 2 ×nD ×Λm1 ・・・(9)
【0075】
ここで、外部から第1の圧力PO1が感圧膜150に加わると、回折素子127も撓むため、周期構造の間隔Λm1が大きくなる。そのため、ブラッグ波長λBも長波長側にシフトする。このように、光透過型の受圧素子83においても、圧力POに応じて、光導波路12に伝播する蛍光の分光スペクトルが変調される。
【0076】
(第7の実施の形態の第2の変形例)
第7の実施の形態の第2の変形例においては、図37及び図38に示すように、光導波路11及び光導波路12の端部に対向して、測定対象となる固体物106が配置される。なお、第7の実施の形態の第2の変形例において、光導波路11,12の端部と、固体物106と、の間隔は、光導波路11,12の端部と、固体物106と、の間を往復する蛍光に干渉が生じるよう設定される。
【0077】
固体物106の膨張又は歪みによって、光導波路11,12の端部と、固体物106と、の間隔が狭くなり得る。また、固体物106の収縮又は歪みによって、光導波路11,12の端部と、固体物106と、の間隔が広くなり得る。よって、固体物106の膨張、収縮、又は歪によって、蛍光の光強度が減衰する波長成分がシフトする。
【0078】
第7の実施の形態の第2の変形例において、図37に示す特定部302は、蛍光の減衰特性及び固体物106の膨張率の予め取得された相関関係と、蛍光の減衰特性の測定値と、に基づいて、測定対象である固体物106の特性である膨張率の測定値を算出する。あるいは特定部302は、蛍光の減衰特性及び固体物106の収縮率の予め取得された相関関係と、蛍光の減衰特性の測定値と、に基づいて、測定対象である固体物106の特性である収縮膨張率の測定値を算出する。あるいはまた特定部302は、蛍光の減衰特性及び固体物106の歪みの予め取得された相関関係と、蛍光の減衰特性の測定値と、に基づいて、測定対象である固体物106の特性である歪みの測定値を算出する。
【0079】
第7の実施の形態の第2の変形例において、関係記憶部401は、特定部302によって利用される、蛍光の減衰特性及び固体物106の膨張率の相関関係、蛍光の減衰特性及び固体物106の収縮率の相関関係、又は蛍光の減衰特性及び固体物106の歪みの相関関係を保存する。
【0080】
(第8の実施の形態)
図39に示す第8の実施の形態に係る測定システムは、図1に示した第1の実施の形態に係る測定システムと異なり、蛍光体2が発した第1の波長帯域の蛍光を透過させる第1の波長フィルタ23と、蛍光体2が発した第1の波長帯域とは異なる第2の波長帯域の蛍光を透過させる第2の波長フィルタ24と、を備える。ここで、例えば第1の波長帯域は第2の波長帯域より短波長側であり、第2の波長帯域は第1の波長帯域より長波長側である。
【0081】
第1の実施の形態の第4の変形例で説明したように、例えば、第1の波長帯域と、第2の波長帯域とは、その重心波長が互いに異なっている。ここで、「重心波長」とは、スペクトル領域において、重心となる波長を指す。あるいは、第1の波長帯域と、第2の波長帯域とは、それぞれの積算光量が等しくなるよう、設定してもよい。この場合、第1の波長帯域と、第2の波長帯域とは、それぞれの帯域幅が異なっていてもよい。また、重心波長は互いに異なっていても、同じであってもよい。なお、第1の波長帯域と、第2の波長帯域とは、互いに異なる波長帯域であるが、部分的に重なっていてもよい。
【0082】
第1の波長フィルタ23を透過した第1の波長帯域の蛍光は、圧力POを受け、第1の波長帯域の蛍光に変調を与える受圧素子5に光導波路11で伝搬される。受圧素子5で変調された第1の波長帯域の蛍光は、光導波路12で受光素子3に伝搬される。また、第2の波長フィルタ24を透過した第2の波長帯域の蛍光は、受圧素子5で変調されることなく、光導波路13で受光素子3に伝搬される。
【0083】
ここで、受圧素子5は、図40及びXLI−XLI方向からの断面図である図41に示すように、光導波路11及び光導波路12が挿入されるホルダ60を備える。受圧素子5はさらに、外部の気体及び液体を含む流体からの圧力POを受ける感圧膜50と、感圧膜50の光導波路11,12の端部と対向する表面に配置され、光導波路11の端部から放射された蛍光を反射する反射膜27と、光導波路11,12の端部及び反射膜27の間隔を規定する筐体44と、を備える。
【0084】
ホルダ60には、感圧膜50、筐体44、及びホルダ60で囲まれた領域の内圧PIを調節するための通気孔160が設けられている。通気孔160の開閉は、開放弁70で制御される。また、感圧膜50の外部には、表出する感圧膜50の図40に示した半径aを規定する基底部40が配置されている。図41に示す光導波路11の端部から放射された蛍光は、反射膜27の表面で反射されて、光導波路12に入射する。なお、第8の実施の形態において、光導波路11,12の端部と、反射膜27と、の間隔は、蛍光に干渉が生じないよう設定される。
【0085】
ここで、受圧素子5の感圧膜50は、内圧PIと、外部からの圧力POと、が等しい「定常状態」では撓みは生じない。しかし図42に示すように、内圧PIと比較して外部からの圧力POが大きくなったとき、感圧膜50は内部方向に撓む。反射膜27の裏面に感圧膜50が配置されているため、感圧膜50にあわせて反射膜27も撓む。このとき、定常状態と比較して、光導波路11,12の端部と、反射膜27と、の間隔が狭まる。そのため、反射膜27の表面で反射されて、光導波路12に入射する蛍光の光強度が、定常状態と比較して、強くなる。
【0086】
また図43に示すように、内圧PIと比較して外部からの圧力POが小さくなったときは、感圧膜50は外部方向に撓む。このとき、定常状態と比較して、光導波路11,12の端部と、反射膜27と、の間隔が広まる。そのため、反射膜27の表面で反射されて、光導波路12に入射する蛍光の光強度が、定常状態と比較して、弱くなる。このように、受圧素子5は、圧力POに応じて、光導波路11から光導波路12に伝播する第1の波長帯域の蛍光の光強度を変調する。
【0087】
ここで、圧力POが小さくなると、図39に示す光導波路13を伝播する第2の波長帯域の蛍光の光量に対する、受圧素子5から光導波路12に伝播する第1の波長帯域の蛍光の光量の光量比が小さくなる。また、圧力POが大きくなると、光導波路13を伝播する第2の波長帯域の蛍光の光量に対する、受圧素子5から光導波路12に伝播する第1の波長帯域の蛍光の光量の光量比が大きくなる。
【0088】
光導波路12の端部から放射される第1の波長帯域の蛍光と、光導波路13の端部から放射される第2の波長帯域の蛍光とは重ねあわされ、結合光として受光素子3に受光される。ここで、蛍光寿命τは、波長が短いほど長くなり、波長が長いほど短くなる傾向にある。そのため、光導波路13の端部から放射される第2の波長帯域の蛍光の光量に対する光導波路12の端部から放射される第1の波長帯域の蛍光の光量の光量比が小さくなると、受光素子3が受光する結合光の蛍光寿命τは短くなる傾向にある。したがって、受光素子3が受光する結合光の蛍光寿命τが短くなった場合、圧力POが相対的に小さくなっている。
【0089】
また、光導波路13の端部から放射される第2の波長帯域の蛍光の光量に対する光導波路12の端部から放射される第1の波長帯域の蛍光の光量の光量比が大きくなると、受光素子3が受光する結合光の蛍光寿命τは長くなる傾向にある。したがって、受光素子3が受光する結合光の蛍光寿命τが長くなった場合、圧力POが相対的に大きくなっている。
【0090】
以上説明したように、蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性と、圧力POと、は相関関係を有する。第8の実施の形態において、特定部302は、蛍光の減衰特性及び圧力POの予め取得された相関関係と、蛍光の減衰特性の測定値と、に基づいて、測定対象である流体の特性である圧力POの測定値を算出する。また、第8の実施の形態において、関係記憶部401は、特定部302によって利用される、蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性と、圧力POと、の予め取得された相関関係を保存する。
【0091】
なお、第2の実施の形態と同様に、第8の実施の形態においても、発光素子1の発光強度の揺らぎを補正してもよい。さらに、第3乃至第5の実施の形態と同様に、第8の実施の形態においても、蛍光体2の雰囲気温度Tの変動を補正してもよい。なお、図44に示すように、第1の波長フィルタ23及び第2の波長フィルタ24は、光導波路12及び光導波路13の端部に各々配置してもよい。また、図45に示すように、第1の波長帯域の蛍光を発する第1の蛍光体2Aと、第2の波長帯域の蛍光を発する第2の蛍光体2Bとを用いてもよい。この場合、例えば発光素子1には紫外線発光ダイオードが使用可能である。また、第1の蛍光体2Aには青色蛍光体が使用可能であり、第2の蛍光体2Bには緑色又は赤色蛍光体が使用可能である。さらに、図46に示すように、第1の波長帯域の蛍光を発する第1の蛍光体2A及び第2の波長帯域の蛍光を発する第2の蛍光体2Bを光導波路12及び光導波路13の端部に各々配置し、励起光を受圧素子5で変調してもよい。
【0092】
第1の実施の形態で説明した図1の膜100の透過率の変動は、蛍光の光強度を波長選択的に変調する。これに対し、図39に示す受圧素子5は、第1の波長帯域全般にわたって均一に蛍光の光強度を変調する。そのため、受圧素子5で変調を受けた第1の波長帯域の蛍光の蛍光寿命τのみを測定しても、圧力POに依存する蛍光寿命τの変動は観察されない。しかし、受圧素子5で変調を受けた第1の波長帯域の蛍光と、受圧素子5で変調を受けない第2の波長帯域の蛍光と、を結合することにより、結合光の第1の波長帯域が選択的に変調を受けることとなる。そのため、結合光においては、圧力POに依存する蛍光寿命τの変動を観察することが可能となる。
【0093】
(第8の実施の形態の第1の変形例)
第8の実施の形態の第1の変形例においては、図47及び図48に示すように、光導波路11及び光導波路12の端部に対向して、測定対象となる固体物106が配置される。なお、第8の実施の形態の第1の変形例において、光導波路11,12の端部と、固体物106と、の間隔は、光導波路11,12の端部と、固体物106と、の間を往復する蛍光に干渉が生じないよう設定される。
【0094】
固体物106の膨張又は歪みによって、光導波路11,12の端部と、固体物106と、の間隔が狭くなると、固体物106の表面で反射されて、光導波路12に入射する蛍光の光強度が、強くなる。また、固体物106の収縮又は歪みによって、光導波路11,12の端部と、固体物106と、の間隔が広くなると、固体物106の表面で反射されて、光導波路12に入射する蛍光の光強度が、弱くなる。
【0095】
第8の実施の形態の第1の変形例において、特定部302は、蛍光の減衰特性及び固体物106の膨張率の予め取得された相関関係と、蛍光の減衰特性の測定値と、に基づいて、測定対象である固体物106の特性である膨張率の測定値を算出する。あるいは特定部302は、蛍光の減衰特性及び固体物106の収縮率の予め取得された相関関係と、蛍光の減衰特性の測定値と、に基づいて、測定対象である固体物106の特性である収縮膨張率の測定値を算出する。あるいはまた特定部302は、蛍光の減衰特性及び固体物106の歪みの予め取得された相関関係と、蛍光の減衰特性の測定値と、に基づいて、測定対象である固体物106の特性である歪みの測定値を算出する。
【0096】
第8の実施の形態の第1の変形例において、関係記憶部401は、特定部302によって利用される、蛍光の減衰特性及び固体物106の膨張率の相関関係、蛍光の減衰特性及び固体物106の収縮率の相関関係、又は蛍光の減衰特性及び固体物106の歪みの相関関係を保存する。
【0097】
(第8の実施の形態の第2の変形例)
図49に示すように、光導波路11及び光導波路12の端部に対向して配置された反射性の固体物104の表面に吸光性の汚れ31が堆積すると、光導波路12に伝播する蛍光の光強度が弱くなる。第8の実施の形態の第2の変形例において、特定部302は、蛍光の減衰特性及び固体物106表面に堆積した汚れの厚みの予め取得された相関関係と、蛍光の減衰特性の測定値と、に基づいて、測定対象である固体物106の特性である表面汚れの厚みの測定値を算出する。また、関係記憶部401は、特定部302によって利用される、蛍光の減衰特性及び固体物106の表面汚れの厚みの相関関係を保存する。なお、図50に示すように、固体物105が透過性であれば、固体物105の裏面に堆積した汚れ31の厚みも測定可能である。
【0098】
(第8の実施の形態の第3の変形例)
図51に示すように、光導波路11及び光導波路12の端部に対向して配置された反射性の固体物104の表面に結露又は着氷32が生じると、結露又は着氷32の表面で蛍光が散乱し、光導波路12に伝播する蛍光の光強度が弱くなる。第8の実施の形態の第3の変形例において、特定部302は、蛍光の減衰特性及び固体物104表面に生じた結露の程度の予め取得された相関関係と、蛍光の減衰特性の測定値と、に基づいて、測定対象である固体物104の特性である結露の程度の測定値を算出する。あるいは特定部302は、蛍光の減衰特性及び固体物104表面に生じた着氷の程度の予め取得された相関関係と、蛍光の減衰特性の測定値と、に基づいて、測定対象である固体物104の特性である着氷の程度の測定値を算出する。
【0099】
また、関係記憶部401は、特定部302によって利用される、蛍光の減衰特性及び固体物106の表面の結露の程度の相関関係、又は蛍光の減衰特性及び固体物106の表面の着氷の程度の相関関係を保存する。なお、図52に示すように、固体物105が透過性であれば、固体物105の裏面に生じた結露又は着氷32の程度も測定可能である。
【0100】
(その他の実施の形態)
以上、本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、図1等に示した受光素子3には、応答遅れ(励起光等の入力光が無くなっても、すぐには出力が無くならない現象)が生じ得る。したがって、図53に示すように、励起光を発する発光素子1を消灯した直後から、予め測定した(センサ全体の)応答遅れの時間よりも長い時間が経過した後に測定された蛍光強度と比較して1/e又は所定比率の蛍光強度に低下するまでに要する時間を、蛍光体2の蛍光寿命τとして定義してもよい。また、蛍光強度を測定する際に、図1等に示す処理部4における信号増幅で生じたオフセットを補正してもよい。さらに、蛍光体2の雰囲気温度Tの変動を抑制するため、蛍光体2を恒温槽に格納してもよい。この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0101】
1 発光素子
2,2A,2B 蛍光体
3 受光素子
4 処理部
5,6 受圧素子
6 受圧素子
10 光学系
11,12,13 光導波路
21 通電制御部
22,22A,22B 反射鏡
23,24 波長フィルタ
26 半透鏡
27 反射膜
32 着氷
33 吸着材
40 基底部
43,44 筐体
50 感圧膜
60 ホルダ
61 透明容器
62 液体
63 界面
70 開放弁
80,81 レンズ
83 受圧素子
91 発光検出器
92 発光強度補正部
100 膜
101 温度調節器
102 温度計
103 未変調蛍光寿命測定器
104,105,106 固体物
107 筺体
108 反射鏡
123,124 波長フィルタ
127 回折素子
143 筺体
150 感圧膜
160 通気孔
301 減衰特性測定部
302 特定部
303 減衰特性補正部
321 入力装置
322 出力装置
323 プログラム記憶装置
324 一時記憶装置
400 データ記憶装置
401 関係記憶部
402 補正情報記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光を発する蛍光体と、
前記蛍光体から発せられた後に測定対象の特性に依存する変調を波長選択的に与えられた蛍光を受光する光学系と、
前記変調を与えられた蛍光の減衰特性を測定する減衰特性測定部と、
前記減衰特性に基づいて、前記測定対象の特性を特定する特定部と、
を備える測定システム。
【請求項2】
前記測定対象が少なくとも一層の膜である、請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記特性が透過率、反射率、屈折率、密度、膜厚、位置、及び膜の積層数からなる群から選ばれる、請求項2に記載の測定システム。
【請求項4】
前記測定対象が固体物である、請求項1に記載の測定システム。
【請求項5】
前記特性が透過率、反射率、屈折率、密度、汚れ、結露、着氷、歪み、膨張及び収縮からなる群から選ばれる、請求項4に記載の測定システム。
【請求項6】
前記測定対象が化学物質である、請求項1に記載の測定システム。
【請求項7】
前記特性が濃度又は酸性度である、請求項6に記載の測定システム。
【請求項8】
前記化学物質を吸着し、前記蛍光を照射される吸着材を更に備える、請求項6又は7に記載の測定システム。
【請求項9】
前記測定対象が生体物質である、請求項1に記載の測定システム。
【請求項10】
前記特性が濃度、核酸配列、及びアミノ酸配列からなる群から選ばれる、請求項9に記載の測定システム。
【請求項11】
前記生体物質を捕捉し、前記蛍光を照射されるプローブを更に備える、請求項9又は10に記載の測定システム。
【請求項12】
前記測定対象が界面である、請求項1に記載の測定システム。
【請求項13】
前記特性が位置である、請求項12に記載の測定システム。
【請求項14】
前記測定対象の特性が流体の圧力である、請求項1に記載の測定システム。
【請求項15】
前記蛍光が、前記測定対象で反射される、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項16】
前記蛍光が、前記測定対象を透過する、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項17】
前記蛍光体の雰囲気温度の変動に基づく前記減衰特性の変動を補正する減衰特性補正部を更に備える、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項18】
前記蛍光体の雰囲気温度を一定にする温度調節器を更に備える、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項19】
前記蛍光体を格納する恒温槽を更に備える、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項20】
蛍光体から蛍光を発することと、
前記蛍光体から発せられた後に測定対象の特性に依存する変調を波長選択的に与えられた蛍光を受光することと、
前記変調を与えられた蛍光の減衰特性を測定することと、
前記減衰特性に基づいて、前記測定対象の特性を特定することと、
を含む測定方法。
【請求項21】
前記測定対象が少なくとも一層の膜である、請求項20に記載の測定方法。
【請求項22】
前記特性が透過率、反射率、屈折率、密度、膜厚、位置、及び膜の積層数からなる群から選ばれる、請求項21に記載の測定方法。
【請求項23】
前記測定対象が固体物である、請求項20に記載の測定方法。
【請求項24】
前記特性が透過率、反射率、屈折率、密度、汚れ、結露、着氷、歪み、膨張及び収縮からなる群から選ばれる、請求項23に記載の測定方法。
【請求項25】
前記測定対象が化学物質である、請求項20に記載の測定方法。
【請求項26】
前記特性が濃度又は酸性度である、請求項25に記載の測定方法。
【請求項27】
前記化学物質を吸着し、前記蛍光を照射される吸着材を更に含む、請求項25又は26に記載の測定方法。
【請求項28】
前記測定対象が生体物質である、請求項20に記載の測定方法。
【請求項29】
前記特性が濃度、核酸配列、及びアミノ酸配列からなる群から選ばれる、請求項28に記載の測定方法。
【請求項30】
前記生体物質を捕捉し、前記蛍光を照射されるプローブを更に含む、請求項28又は29に記載の測定方法。
【請求項31】
前記測定対象が界面である、請求項20に記載の測定方法。
【請求項32】
前記特性が位置である、請求項31に記載の測定方法。
【請求項33】
前記測定対象の特性が流体の圧力である、請求項20に記載の測定方法。
【請求項34】
前記蛍光が、前記測定対象で反射される、請求項20乃至32のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項35】
前記蛍光が、前記測定対象を透過する、請求項20乃至32のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項36】
前記蛍光体の雰囲気温度の変動に基づく前記減衰特性の変動を補正することを更に含む、請求項20乃至35のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項37】
前記蛍光体の雰囲気温度を一定にすることを更に含む、請求項20乃至35のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項38】
測定対象の特性に依存する変調を波長選択的に与えられた光で蛍光を励起する光学系と、
前記蛍光の減衰特性を測定する減衰特性測定部と、
前記減衰特性に基づいて、前記測定対象の特性を特定する特定部と、
を備える測定システム。
【請求項39】
前記測定対象が少なくとも一層の膜である、請求項38に記載の測定システム。
【請求項40】
前記特性が透過率、反射率、屈折率、密度、膜厚、位置、及び膜の積層数からなる群から選ばれる、請求項39に記載の測定システム。
【請求項41】
前記測定対象が固体物である、請求項38に記載の測定システム。
【請求項42】
前記特性が透過率、反射率、屈折率、密度、汚れ、結露、着氷、歪み、膨張及び収縮からなる群から選ばれる、請求項41に記載の測定システム。
【請求項43】
前記測定対象が化学物質である、請求項38に記載の測定システム。
【請求項44】
前記特性が濃度又は酸性度である、請求項43に記載の測定システム。
【請求項45】
前記化学物質を吸着し、前記蛍光を照射される吸着材を更に備える、請求項43又は44に記載の測定システム。
【請求項46】
前記測定対象が生体物質である、請求項38に記載の測定システム。
【請求項47】
前記特性が濃度、核酸配列、及びアミノ酸配列からなる群から選ばれる、請求項46に記載の測定システム。
【請求項48】
前記生体物質を捕捉し、前記蛍光を照射されるプローブを更に備える、請求項46又は45に記載の測定システム。
【請求項49】
前記測定対象が界面である、請求項38に記載の測定システム。
【請求項50】
前記特性が位置である、請求項49に記載の測定システム。
【請求項51】
前記測定対象の特性が流体の圧力である、請求項38に記載の測定システム。
【請求項52】
前記光が、前記測定対象で反射される、請求項38乃至50のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項53】
前記光が、前記測定対象を透過する、請求項38乃至50のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項54】
前記蛍光を発する蛍光体の雰囲気温度の変動に基づく前記減衰特性の変動を補正する減衰特性補正部を更に備える、請求項38乃至53のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項55】
前記蛍光を発する蛍光体の雰囲気温度を一定にする温度調節器を更に備える、請求項38乃至53のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項56】
前記蛍光を発する蛍光体を格納する恒温槽を更に備える、請求項38乃至53のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項57】
測定対象の特性に依存する変調を波長選択的に与えられた光で蛍光を励起することと、
前記蛍光の減衰特性を測定することと、
前記減衰特性に基づいて、前記測定対象の特性を特定することと、
を含む測定方法。
【請求項58】
前記測定対象が少なくとも一層の膜である、請求項57に記載の測定方法。
【請求項59】
前記特性が透過率、反射率、屈折率、密度、膜厚、位置、及び膜の積層数からなる群から選ばれる、請求項58に記載の測定方法。
【請求項60】
前記測定対象が固体物である、請求項57に記載の測定方法。
【請求項61】
前記特性が透過率、反射率、屈折率、密度、汚れ、結露、着氷、歪み、膨張及び収縮からなる群から選ばれる、請求項60に記載の測定方法。
【請求項62】
前記測定対象が化学物質である、請求項57に記載の測定方法。
【請求項63】
前記特性が濃度又は酸性度である、請求項62に記載の測定方法。
【請求項64】
前記化学物質を吸着し、前記蛍光を照射される吸着材を更に含む、請求項62又は63に記載の測定方法。
【請求項65】
前記測定対象が生体物質である、請求項57に記載の測定方法。
【請求項66】
前記特性が濃度、核酸配列、及びアミノ酸配列からなる群から選ばれる、請求項65に記載の測定方法。
【請求項67】
前記生体物質を捕捉し、前記蛍光を照射されるプローブを更に含む、請求項65又は66に記載の測定方法。
【請求項68】
前記測定対象が界面である、請求項57に記載の測定方法。
【請求項69】
前記特性が位置である、請求項68に記載の測定方法。
【請求項70】
前記測定対象の特性が流体の圧力である、請求項57に記載の測定方法。
【請求項71】
前記光が、前記測定対象で反射される、請求項57乃至69のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項72】
前記光が、前記測定対象を透過する、請求項57乃至69のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項73】
前記蛍光を発する蛍光体の雰囲気温度の変動に基づく前記減衰特性の変動を補正することを更に含む、請求項57乃至72のいずれか1項に記載の測定方法。
【請求項74】
前記蛍光を発する蛍光体の雰囲気温度を一定にすることを更に含む、請求項57乃至72のいずれか1項に記載の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【公開番号】特開2011−169688(P2011−169688A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32523(P2010−32523)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】