説明

湿式処理層の欠陥減少方法及びその装置

本発明は、脱ガスされた電気化学的析出溶液、脱ガスされた電気化学的研磨溶液、脱ガスされた無電解析出溶液、脱ガスされた洗浄液などの脱ガスされた処理溶液を用いることによって、導体層を湿式処理するための方法及び装置を提供する。この技術は、処理装置に脱ガスされた処理溶液を送る前に処理溶液を脱ガスすること又は処理装置においてイン−サイチュ(in−situ)で処理溶液を脱ガスすることを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路の製造に関し、さらに詳しくは、導体層の電気化学的析出法又は電気化学的研磨法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、従来の半導体装置は、シリコン基板などの半導体基板と、複数の連続的に形成された、シリコン二酸化物などの絶縁性中間層及び導電材料で構成された導電パスやインターコネクトとを備えている。銅及び銅合金は、エレクトロマイグレーション特性に優れ、電気抵抗が低いという特性を備えている。そのために、最近、これらの金属には、インターコネクト材料として強い関心が寄せられている。通常、インターコネクトは、絶縁層にエッチングにより形成されたフィーチャ又はキャビティ内に、メタライゼーションプロセスにより銅を埋め込むことによって形成される。銅のメタライゼーションに適した方法は、電気めっきである。集積回路の場合には、複数のレベルの配線網(interconnect network)が、基板面に対して横方向に広がっている。積層された層に形成されたそれぞれのインターコネクトは、ビアホールを用いることにより電気的に接続される。
【0003】
通常のプロセスの場合には、はじめに、半導体基板上に絶縁層を形成する。次に、パターニング及びエッチングを行うことにより、絶縁層にトレンチ、ビアホールなどのフィーチャ又はキャビティを形成する。次に、パターニングされた表面に、バリア層/接着層を形成し、さらに銅などを電気めっきすることにより、すべてのフィーチャを埋め込む。しかし、この電気めっき処理の際には、銅でフィーチャが埋め込まれるだけではなく、基板のトップ面よりさらに厚く、過剰の銅が析出する。この過剰の銅は、「オーバーバーデン(overburden)」と呼ばれ、その後の処理で除去しなければならない。標準的なめっき処理の場合には、電気化学的析出(Electrochemical Deposition: ECD)によって、ウェーハ上の大きなフィーチャが共形に被覆されるので、上記のオーバーバーデン銅は、大きなトポグラフィを有している。従来は、銅めっきの後に、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing: CMP)を行うことにより、トポグラフィックな表面全体を平坦化して、さらに、バリア層表面のレベルまで、オーバーバーデン銅層の厚さを薄くしている。なお、バリア層は後に除去され、導体がキャビティ内だけに残される。
【0004】
銅の電析処理では、特別に処方されためっき溶液又は電解液が使用される。例えば、電解液は、水、硫酸などの酸、銅のイオン種、塩化物イオン、及び析出させる物質の性質やめっき挙動に影響を及ぼす添加物を含んでいる。通常の電気めっき浴は、アクセラレータ、サプレッサ、レベラなどの商業的に利用可能な3つのタイプの添加物のうち、少なくとも2つを含んでいる。
【0005】
一般に、銅の膜の形成には銅の硫酸塩水溶液が用いられる。この電気めっき液は、空気に接触しているので、本質的に溶解空気を含んでいる。また、この電気めっき液は、めっきセルと電解液槽との間を何回も循環使用されるので、めっき装置内で利用される間に、電解液はさらに空気で飽和するようになる。電解液は、ワークピース面への銅めっきを行うめっきセル内で使用された後、主タンクに戻されて再生され、濾過及び化学組成調整の後、めっきセルにポンプで送り戻される。そのような再生により、電解液の無駄が最少にされる。しかし、同時に、電解液中へ溶解する空気が増加する。従来いくつかの対策が試みられており、例えば、電解液面が空気に曝されるのを極力防止するために、めっきシステムにおける電解液槽の上部及びその他の箇所に、窒素ガスシールが用いられた。また、溶液中の酸素の量を減らすために電解液中に窒素ガスのバブリングを行う方法も試みられた。そのような努力によって、電解液中の溶解酸素の含有量を低下させられることは理解できる。ただし、溶液中の全溶解ガス量は減少しない。実際、そのような試みは、窒素ガスなどのシールガスの電解液中への溶解を増加させると推定される。言い換えれば、電解液の化学組成は変わるが、電解液中のガス含有量は依然として高いはずである。すなわち、窒素ガス量はより多く、酸素ガス量はより少なくなるはずである。
【0006】
めっき電解液中の溶解ガスによって、いくつかの問題が生じる。まず、どのような液体中の溶解ガスであっても、その液体に接する面への気泡の発生と成長の原因になる。例えば、半導体ウェーハなどのワークピースが、空気が溶解した銅めっき液中に浸漬されると、ウェーハの表面に、ガスの微細な気泡が自然に発生することが多い。そのような微細な気泡の発生とその成長速度は、液体中のガスの飽和度、電解液の温度及び圧力の関数と推定される。空気などのガスの存在下で強く攪拌された電解液は、空気が飽和状態となり、そのような電解液に接触する面には、気泡が簡単に形成される。同様に、温度が高いほど、気泡の成長がより速く促進される。また、電解液が高い圧力ゾーンから低い圧力ゾーンへポンプ搬送されると、溶解ガスは、低い圧力ゾーンでより不安定になる。すなわち、フロー制限フィルタなどの流体圧が急激に低下するゾーンで、気泡の生成が促進される。図1A、1B、1C及び1Dは、上記の気泡が生成する経過と結果の1例を模式的に示す図である。
【0007】
図1Aには、シリコン基板10が示されており、その基板面の絶縁層14に、エッチングによってトレンチなどのサブミクロンサイズのフィーチャ12が形成されている。エッチングによって形成されたフィーチャ12及びトップ面13には、バリア層16及び銅のシード層17が被覆されている。図1Bに示されているように、次に、基板10は、銅めっきを行うために、銅のめっき液18に浸漬される。図1Bは、基板10が、空気によって飽和状態になっているか又は溶解ガスが高濃度のめっき液18に浸漬された瞬間を表している。このめっきは、導電性の基板面(バリア層16及び/又はシード層17)とめっき液18内の電極(図示されていない)との間に電圧を印加することによって開始される。気泡20は、ウェーハがめっき液18に浸漬された時に、直ちにシード層17面に発生するミクロ気泡を示している。これらの気泡は、サイズがミクロンかサブミクロンのオーダーであり、フィーチャ12内、トップ面13を覆うシード層上又は角部21に位置している。めっきが進むと、気泡20は、それらが付着している位置へのめっき材料の析出を遅らせる。その結果、図1Cに示されているように、ボイドなどの欠陥が生じる。また、図1Cに示したように、析出した銅の層26の表面24に、新たな気泡22の核生成が生じる可能性がある。図1Dは、銅の析出ステップが終了した後の基板10を示している。図1Dから分かるように、電析処理の初期又はその後の段階の間のいずれかに、基板の表面の気泡によって、様々な欠陥28が発生する。これらの欠陥は、インターコネクト構造を形成するために用いられるCMP及びその他の処理ステップの後にも残り、ストレスマイグレーションの不良、エレクトロマイグレーションの不良など、信頼性を低下させる問題の原因になる。気泡に関する同様の問題は、無電解めっき法により銅の層を析出させる場合にも存在することに注意しなければならない。
【0008】
めっき用の電解液に浸漬された面への気泡の生成は、その他の問題の原因にもなる。また、気泡がウェーハの表面に形成されないとしても、気泡はめっきセルの別の面に形成され、つぎにウェーハの表面に移動し、上記の欠陥を生成させる。電気化学的機械的析出、電気化学的機械的研磨などの湿式処理法には、パッド構造又はWSID(workpiece surface influencing device)構造があり、これらの構造は、ウェーハの表面に近接して設けられ、ウェーハ表面を平坦化するか、又は研磨するために、電気化学的機械的処理の間、ウェーハ表面をスウィープするのに使用される。すべてのこれらの構造物は、処理溶液に浸漬され、ウェーハの表面に近接して位置する。また、構造物の表面は、気泡を生成して成長させ、その気泡をウェーハ表面へ移動させるサイトとなり、その結果、ウェーハの表面に欠陥を生じさせることになる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題点は、本発明に係る脱ガスされた処理溶液又は処理電解液を使用することによって解決することができる。脱ガスによって、処理溶液中に溶解したガス成分の含有量が減少し、脱ガスされた電解液に曝された面における気泡の生成が抑制される。
【0010】
本発明に係る1つの方法では、ワークピース面上の層に対する湿式処理方法が提供される。その方法は、処理溶液の脱ガスを行うことにより、脱ガスされた処理溶液を得るステップと、前記脱ガスされた処理溶液を用いて、前記層の表面を処理するステップとを含んでいる。上記湿式処理方法には、洗浄処理、電気化学的処理、電気化学的機械的処理、化学的処理、化学的機械的処理又はそれらの処理の様々な組合せが含まれる。
【0011】
本発明に係る別の方法は、前記脱ガスが、イン−サイチュ(in−situ)脱ガスであり、該脱ガスが処理ステーション内で行われる。
【0012】
また、本発明に係る別の方法では、脱ガスによって、前記処理溶液中の溶解ガス含有量を減少させる。前記脱ガスによって、溶解酸素含有量を減少させ、処理の間における有機添加物の消費を減少させる。
【0013】
本発明に係るさらに別の方法では、ワークピース表面に層を析出させる方法が提供される。その方法は、脱ガス装置に処理溶液を供給するステップと、前記脱ガス装置を用いて前記処理溶液の脱ガスを行うことにより、脱ガスされた処理溶液を得るステップと、前記脱ガスされた処理溶液を処理装置へ送るステップと、前記脱ガスされた処理溶液でワークピースの表面を濡らすステップと、前記層を析出させるステップとを含んでいる。前記層を析出させるステップは、電気化学的析出、電気化学的機械的析出及び無電解析出のうちの少なくとも1つを含んでいる。
【0014】
また、本発明に係る別の方法では、ワークピースの表面が厚さ1000Å未満のシード層を備え、前記処理溶液を脱ガスするステップにより、前記処理溶液中の溶解ガス含有量を低下させ、前記濡らすステップの後及び析出させるステップの前における、前記脱ガスされた処理溶液と前記シード層との間の化学的相互作用を抑制する。
【0015】
本発明に係る装置では、脱ガスされた処理溶液を用いて、ワークピースの表面を処理するための装置が提供される。この装置は、前記処理溶液を貯蔵可能に構成された溶液槽と、該溶液槽に接続され、前記処理溶液を脱ガスするように構成された脱ガス装置と、該脱ガス装置に接続され、前記脱ガスされた処理溶液を受け取り、前記ワークピースの表面を処理するように構成された少なくとも1つの処理ステーションとを備えている。
【0016】
本発明に係る別の装置は、前記脱ガス装置に接続され、前記脱ガスされた処理溶液中の溶解ガスを、所定の含有量以下に維持可能に構成された監視装置を備えている。前記監視装置は、溶解ガス含有量を測定するための溶解ガスメータとすることができる。
【0017】
本発明に係る方法又は装置によれば、添加物を含む電気化学的処理溶液又は無電解析出処理溶液に対して適用される脱ガスにより、溶液中の酸素含有量が減少し、その結果、添加物の寿命を延ばすことができる。
【0018】
本発明に係る別の方法又は装置によれば、析出溶液に対して適用される脱ガスにより、脱ガスされた溶液から析出する膜の電気抵抗を低くすることができる。
【0019】
本発明に係るさらに別の方法又は装置によれば、脱ガスされた処理溶液を用いることにより、処理溶液と、処理溶液中に浸漬されたワークピースの表面の薄い層との間の化学反応を抑制することができる。
【0020】
ワークピース上の層の表面を処理するための装置及び方法は、脱ガスされた処理溶液を得るために処理溶液を脱ガスし、脱ガスされた処理溶液を使用して、層の表面を処理することによって提供される。脱ガスされた処理溶液の使用により、気泡の生成及び層の表面の欠陥が減少し、処理の間に使われる添加物の寿命が長くなり、処理の間に発生する追加的な気泡が取り除かれる。
【0021】
本発明に係るその他の形態及び利点は、特許請求の範囲に記載された事項及び以下に示す図面、詳細な説明における記載を基に明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図6は、本発明に係る様々な態様に用いることができる湿式処理法を定義して示すリストである。図6に示されているように、湿式処理法(Wet Processes: WP)は、ワークピース表面への物質の析出又はワークピース表面からの物質の除去に利用することができる。湿式処理法には、電気化学的処理法(Electrochemical Process: ECPR)、電気化学的機械的処理法(Electrochemical Mechanical Process: ECMPR)、化学的処理法(Chemical Process: CPR)及び化学的機械的処理法(Chemical Mechanical Process: CMPR)がある。ECPRには、物質の析出に用いられる電気化学的析出(Electrochemical Deposition: ECD)及び物質の除去に用いられる電気化学的エッチング(Electrochemical Etching: ECE)/電気化学的研磨(Electrochemical Polishing: ECP)があり、これらの技術はいずれも電気化学的手段によっている。ECMPRには、析出面に物理的に接触している間に物質を析出させるのに用いられる電気化学的機械的析出(Electrochemical Mechanical Deposition: ECMD)及び表面が物理的に接触している間にその面から物質を除去するのに用いられる電気化学的機械的エッチング(Electrochemical Mechanical Etching: ECME)/電気化学的機械的研磨(Electrochemical Mechanical Polishing: ECMP)がある。また、CPRには、ワークピースの表面に外部から電圧を印加することなく、ワークピースの表面に物質を析出させる化学的析出(Chemical Deposition: CD)/無電解析出(Electroless Deposition: ELSD)及び外部から電圧を印加することなく、ワークピースの表面から化学的に物質を除去するのに用いられる化学的エッチング(Chemical Etching: CE)/化学的研磨(Chemical Polishing: CP)がある。CMPRは、物質の除去と平坦化処理法としてよく知られており、CMPRには、化学的機械的エッチング(Chemical Mechanical Etching: CME)/化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing: CMP)がある。新しい方法である化学的機械的析出(Chemical Mechanical Deposition: CMD)/無電解機械的析出(Electroless Mechanical Deposition: ELSMD)には、析出面に物理的に接触している間に、CD/ELSDのように外部から電圧を印加することなく物質を析出させることが含まれる。
【0023】
上記のプロセスは、以下に示すように、多くの代表的な特許及び文献に記載されている。例えば、ECDに関する詳しい説明は、「Modern Electroplating:現代の電気めっき」というタイトルの技術書(Schlesinger, M. et al., eds., 2000, 4th Ed., John Wiley & Sons, New York)に記載されている。また、ECE/ECPに関する詳しい説明は、「Copper Electropolishing in Concentrated Phosphoric Acid:高濃度のリン酸液による銅の電解研磨」というタイトルの文献(Vidal, R. and West, A. C., J. Electrochem Soc., Vol. 142, No. 8, August 1995, page 2682)に記載されている。
【0024】
ECMDの説明に関しては、米国特許第6,126,992号「Method and Apparatus for Electrochemical Mechanical Deposition:電気化学的機械的析出方法及び装置」、米国特許第6,534、116号「Plating Method and Apparatus that Creates a Differential Between Additive Disposed on a Top Surface and a Cavity Surface of a Workpiece Using an External Influence:外的影響を用いてワークピースのトップ面とキャビティ表面とに析出した添加物間に差異を発生させるめっき方法及び装置」、及び「Electrochemical Mechanical Deposition (ECMD) technique for Semiconductor Interconnect Applications:半導体のインターコネクトアプリケーションのための電気化学的機械的析出技術」というタイトルの文献(Basol, B. M., Uzoh, C. E., Talieh, H., Young, D. Lindquist, P., Wang, T and Cornejo, M., Microelectronic Engineering, vol. 64 (2002), pp.43-51)に記載されている。ECME/ECMPの説明に関しては、上記米国特許第6,126、992号に記載されている。
【0025】
CDBLSDに関しては、「Electroless Metal Plating:無電解金属めっき」というタイトルの技術書(McDonald, I., April 1988, Van Nostrand Reinhold)に記載されている。また、CE/CPに関しては、米国特許第5,486,234号「Removal of Field and Embedded Metal by Spin Spray Etching:スピンスプレーエッチングによる表面及び埋込み金属の除去」)に記載されている。CMD/ELSMDに関しては、上記米国特許第6,534、116号に記載されており、CME/CMPに関しては、「Chemical Mechanical Polishing 2001-Advances and Future Challenges:化学的機械的研磨2001−進展と今後のチャレンジ」というタイトルの文献(Babu, S. V et al., eds., 2001, Materials Research Society Symposium Proceedings, Vol. 671)に記載されている。
【0026】
処理溶液に溶解したガスに関する問題、特にそのような処理液内で発生する気泡に関する問題は、脱ガスされた処理溶液又は処理電解液を使用することによって解決することができる。脱ガス処理によって、溶液に溶解したガス含有量が減少し、脱ガスされた電解液に曝された面における気泡の生成が著しく抑制される。電気化学的析出(ECD)、電気化学的機械的析出(ECMD)、化学的析出(CD)、化学的機械的析出(CMD)など湿式析出システムにおける脱ガスされた電解液の使用によって、ワークピース又はウェーハ表面におけるミクロンサイズ又はナノサイズの気泡の発生が減少し、それに伴って、欠陥が減少する。同様に、そのような電解液を使用することによって、電解液に接触している他の表面における気泡の発生が最少化され、防止される。その結果、ウェーハの表面に移動し、問題を生じさせるような気泡の発生の可能性が著しく低くなる。また、微小な気泡の生成が防止されることに加えて、脱ガスされた電解液には、そのような溶液によって濡らされた面に核生成した微小な気泡の成長速度を遅くする作用がある。湿式析出処理における脱ガスされた電解液の使用には、さらに別の利点がある。これらの利点に関しては、電気化学的機械的析出システムの例を用いて以下に説明する。しかし、これらの利点は、電気化学的析出及び化学的析出にも当てはまることが理解されなければならない。それらの利点は、さらに化学的研磨、電気化学的機械的研磨、電気化学的研磨及び化学的機械的研磨などの湿式除去技術にも適用できる。すなわち、本発明は、処理溶液を用いる湿式処理に適用可能ということができる。
【0027】
ECD、ECMD、CD又はCMD法で使用されるめっき電解液を脱ガスすることにより、めっき電解液に溶解したガスの1つは酸素であるので、めっき電解液の酸素含有量が減少する。一方、電解液の酸素含有量が減少すると、通常電解液の処方上含まれる、光沢剤、促進剤、抑制剤、レベラなどの有機添加物の酸化が抑制される。酸化が抑制されると、それに伴って、有機添加物の寿命が延び、全体の製造コストが安くなる。有機添加物がいったん酸化すると、析出層に良好な特性を与える能力がなくなるので、補充する必要があることに注意しなければならない。
【0028】
上記のように、脱ガス処理により、処理溶液中の酸素含有量が減少する。処理溶液が、銅の電気化学的析出溶液又は銅の無電解析出溶液などの析出溶液である場合には、脱ガスされた電解液を用いることによって形成された膜は、酸素含有量が少ないと期待される。一方、銅の層などの析出層における酸素の不純物が少ない場合には、その層の結晶粒が大きくなり、特に焼鈍後の結晶粒が大きい。銅の層の酸素が少なく結晶粒が大きい場合には、銅の層は、インターコネクトの用途など、エレクトロニクス分野の用途で非常に重要である電気抵抗が低くなる。析出層の焼鈍は、高い温度又は室温(自己焼鈍)で実施できることに注目する必要がある。
【0029】
結晶粒が大きく、電気抵抗が低い膜は、より信頼性が高く、より安定性があり、回路の時間遅れがより少ないので、インターコネクトの用途に使用される銅の膜の性質として優れている。さらに、脱ガスされた溶液から成長した膜では、微細なボイドの密度がより低いので、インターコネクトの用途として、より魅力的なものとなる。微細なボイドの密度が低いために、より優れたストレスマイグレーション性及びエレクトロマイグレーション性が得られ、この特性はインターコネクト材料として極めて重要である。
【0030】
さらに、処理溶液は、電気化学的析出法などの湿式析出処理の開始時に、シード層と化学的な相互作用を起こすことがよく知られている。例えば、ワークピースがはじめに処理溶液中に浸漬された時に、薄い銅のシード層は、処理溶液によって化学的にアタックされ、ダメージを受ける。ホットエントリは、1000Å未満というように非常に薄いシ−ド層を備えたウェーハに電気めっきを行うために、ウェーハが処理溶液中に浸漬された時に、処理溶液とシード層との間の好ましくない相互作用を回避する1つの方法である。ホットエントリの際、シード層が処理溶液によって濡らされる前に、シード層に電圧が印加される。この陰極電圧によって、シード層は化学的な溶解から保護される。しかし、ホットエントリには、ホットスポットの生成など、いくつかの欠点がある。これらのホットスポットは、溶液がはじめにシード層と物理的に接触する位置である、ウェーハ上の電流密度が高い位置(すなわち、析出量が多い位置)に発生する。この観点から、コールドエントリ、すなわち、印加電圧がゼロの溶液へ基板を入れることが好ましい。しかし、上記のように、弱いシード層、すなわち、薄いシード層又は酸化されたシード層は、コールドエントリでは、処理溶液による化学的なアタックを受ける。脱ガスされた電解液は、酸素含有量が低く、酸化性が弱い。したがって、その溶液の化学的エッチング強さも弱くなっている。脱ガスされた電解液へのコールドエントリは、シード層にダメージを与えることがないので、弱いシード層に対しても適用することができる。また、脱ガスされた無電解析出溶液の場合にも、ワークピース表面の薄い層との化学反応が抑制されるので、銅などの材料に関する無電解析出処理も、本発明に関する上記の観点からの利益を得ることができる。本発明に係るいくつかの利点は、湿式処理法に関する例を用いて、さらに詳細に説明する。
【0031】
図2Aは、電気化学的機械的処理システム50を示す図であり、ウェーハキャリア53によって保持されたウェーハ52の表面51を処理する間の状態を示している。システム50は、電気化学的析出、電気化学的機械的析出、電気化学的研磨又は電気化学的機械的研磨に用いられる。
【0032】
それぞれの湿式処理に使用される処理溶液は、同じか又は異なった溶液である。例えば、電気化学的析出溶液は、電気化学的機械的処理にも使用することができる。また、電気化学的研磨溶液は、電気化学的機械的研磨にも使用することができる。化学的機械的研磨(CMP)溶液は、電気化学的機械的研磨にも使用することができる。さらに、本技術分野における通常の知識を有するものであれば、これらのすべての処理溶液は、それぞれのタイプの処理による結果が最適化されるように、変更可能なことを理解できるであろう。
【0033】
図2Aに示したキャリアヘッドは、垂直方向(z方向)の動き、水平方向(x又はy方向の動きと回転が可能となっている。また、システム50は、開口部56を有するパッド54を備えている。このパッド54は、開口部59を有する支持構造58によって支持されている。フィルタ60は、支持構造58の下側又は支持構造58とパッド54との間に配置される。図2Aに示したように、パッド54の幅及び長さは、パッドの幅がウェーハの直径より短いように設計されている。一方、パッド54の長さは、ウェーハの直径より長くてもよい。電気コンタクト62は、ウェーハの端部に接触し、その表面51と電源63の端子とが接続されている。チャンバ66に収納された処理溶液64は、フィルタ60と電極68との間のスペースに供給される。電極68は、電源63の端子に接続されている。析出処理の際には、電極は陽極で、電源のプラス端子に接続され、ウェーハの表面は、電源の他方の端子に接続されて陰極となっている。一方、物質の除去処理の際には、電極は陰極であり、ウェーハの表面は陽極である。溶液は、フィルタ60、支持構造58内の開口部59、パッド54を通り、ウェーハの表面を濡らす。処理溶液は、処理溶液槽(図示されていない)から溶液導入部64を介してチャンバ66に導入される。使用された処理溶液70は、再生するために、チャンバ66の上端部から取り出される。処理溶液は、電気化学的析出又は電気化学的機械的析出用の電気めっき液、及び電気化学的研磨又は電気化学的機械的研磨用の電解研磨又は電解エッチング液である。
【0034】
図2Bの部分拡大図に示されているように、このようなシステムでは、フィルタ60の下側、支持構造58内及びパッド54の上側に、気泡74が集積している。これらの気泡74は、電解液中の溶解ガスから発生し、循環システム内の別の発生源から生じる可能性もある。例えば、フィルタ60の下側の気泡74は、電解液を処理セルに送り込むポンプ及びそのラインで発生する可能性がある。ガスが飽和した電解液中では、発生した気泡は安定であり、電解液に溶解したガスによって、それらの気泡面に核生成が継続して起こるので、それらの気泡は成長し続けることもできる。このようなことが続いた結果、フィルタ60が気泡によって局部的にブロックされる。そのために、処理溶液の流れが妨げられ、その位置のウェーハ表面に対する電場の分布が歪められることにもなる。同様に、パッド又は支持構造の開口部内に気泡が存在すると、電気化学的析出又は電気化学的研磨の間、電場のフローを妨げ、その位置における析出速度又は除去速度が歪められる。その結果、処理面の均一性が低下する。
【0035】
脱ガスされた電解液の使用により、上記のような気泡の生成は抑制又は防止される。また、システム内のポンプ、その他の構成要素など別の発生源により、別の位置にいくつかの気泡が発生し、フィルタ59の下部領域に送られたとしても、脱ガスされた溶液中では、気泡は不安定であり、成長することもない。さらに、脱ガスされた電解液はガス含有量が低いので、電解液自身が気泡を捕捉し、気泡のゲッターとして機能する。言い換えれば、本発明の実施の形態に係る脱ガスされた電解液などの液体が、その液体内にガスを溶解させる駆動力は、電解液のガス含有量の減少とともに増加する。したがって、システム内でどのような発生源によって生成したどのような気泡でも、ガス含有量が高い通常の電解液に比べて、より容易に、脱ガスされた電解液に溶解する傾向がある。脱ガスされた溶液中では、気泡は、成長するのではなく大きさが小さくなり、最終的には消滅する。一方、これらの気泡の溶解により生じた電解液中の溶解ガスは、脱ガス装置を用いることによって電解液から除去することができる。この原理の適用に関しては、脱ガスされた処理溶液を用いる、以下の実施の形態に係るシステムによって説明する。
【0036】
図3に示されているように、処理システム100は、多くの湿式処理ステーション104で構成された湿式処理装置を備え、さらに湿式処理装置に接続された溶液槽102を備えている。図3及び図4に示した湿式処理ステーションは、電気化学的処理ステーション、電気化学的機械的処理ステーション、化学的処理ステーション、化学的機械的処理ステーション又はそれらのいずれかの組合せで構成されている。また、溶液槽102には、ポンプ106及び脱ガス装置108が接続されている。この実施の形態に係るシステムの場合には、溶液槽102内の処理溶液110は、2つの循環流動を受ける。第1の循環流動では、溶液槽内の溶液110が、第1溶液流111Aが流れる第1ライン112を介して、ポンプ106によって脱ガス装置へ送られる。処理溶液110は、脱ガス装置108で脱ガスされ、第2溶液流111Bが流れる第2ライン114へ送り出される。脱ガスされた第2溶液流111Bの処理溶液は、第2ライン114により溶液槽102に戻される。この循環は、連続的でもよく、断続的でもよい。言い換えれば、連続的でも、部分的な時間でも脱ガスを実施することができる。
【0037】
第2の循環流動では、第3ライン116を介して、処理溶液110が、第3溶液流111Cとして、湿式処理ステーション104へ送られる。この搬送は、各処理ステーション104にライン116を接続するインテークマニホールド118を介して行われる。インテークマニホールド118は、各処理ステーションへの第3溶液流111Cを断続するバルブ(図示省略)を備えていてもよい。各処理ステーションからの使用後の処理溶液は、溶液出口マニホールド120によって集められて、第4溶液流111Dとして第4ライン122へ送り出される。使用後の処理溶液である第4溶液流111Dは、第4ライン122によって処理溶液槽102に戻される。処理溶液槽102では、処理溶液の補給及びその後の脱ガスに合わせて添加剤が追加される。他の方法として、補給槽(図示省略)を用いて補給するようにしてもよい。その場合、はじめに第4溶液流を補給槽へ送り込み、補給槽で溶液の濾過及び添加物の添加を行い、その後、処理溶液を溶液槽102へ送る。上記の一連の処理によって、処理溶液中のガス含有量は低く維持される。なお、図3及び図4には、上位概念のシステムだけが示されていることに注意されなければならない。すなわち、そのシステムに用いられるバルブ、ポンプ、濾過装置など、必要なものすべては示されていない。また、処理システム100では、1つの脱ガス装置108の代わりに、複数の脱ガス装置を用いることができる。
【0038】
図4に示されているように、本発明の実施の形態に係る別の処理システム200でも、脱ガスされた処理溶液が用いられる。処理システム200は、多くの湿式処理ステーション204に接続された溶液槽202を備えている。この実施の形態に係るシステムの場合、脱ガス装置208は、溶液槽202と処理ステーション204との間に接続されている。操業時には、溶液槽内の処理溶液210は、第1溶液流211Aとして、第1ライン212を介して、脱ガス装置208へ送られる。処理溶液は、脱ガス装置208で脱ガスされ、第2溶液流211Bとして第2ライン214へ送り出される。脱ガスされた処理溶液である第2溶液流211Bは、第2ライン214によって、処理ステーション204へ送られる。この処理溶液の搬送は、各処理ステーション204に接続されたインテークマニホールド216を介して行われる。インテークマニホールド216は、各ステーションへ送る第2溶液流211Bを断続するバルブ(図示省略)を備えていてもよい。各ステーションからの使用後の処理溶液は、第3溶液流211Cとして溶液出口マニホールド218によって集められ、再利用するために、第3ライン220へ送られる。さらに、使用後の処理溶液である第3溶液流211Cは、第3ライン220によって溶液槽202に戻され、補給及びその後の脱ガス処理が行われる。溶液の補給は、補給槽(図示省略)を用いて行うことができる。その場合、はじめに第3溶液流を補給槽に送り、その後溶液槽へ送る。補給槽で溶液を濾過し、添加物を添加した後、溶液槽へ処理溶液を送る。処理システム200の場合には、処理ステーション204に接続されたマニホールドそれぞれに脱ガス装置を接続することによって、1つの脱ガス装置に代えて、複数の脱ガス装置を用いるようにすることができる。
【0039】
図3及び図4に示した処理システムには、さらに別の槽及び脱ガス装置を追加することができる。さらに追加されるこれらの構成要素及び変更も、本発明の技術的範囲に属する。例えば、処理装置からの使用後の処理溶液を、はじめに別の槽で脱ガスし調整した後、調整された溶液を処理装置へ供給する別の貯蔵槽へ送るようにしてもよい。脱ガスに関しては、処理ステーションの外部ではなく、図3及び図4に示した処理ステーション104、204内で行うようにすることができる。脱ガスは、処理中に、処理チャンバ内においてin−situで行うこともできる。例えば、通常のウェーハ面に施される実施の形態に係る電気化学的析出又は無電解析出の場合、析出セル自体が真空に吸引され、そこでウェーハは処理溶液に浸漬される。したがって、脱ガス及び脱泡(de-bubbling)が、in−situで達成される。この方法は、成長界面における気泡の生成が日常的な問題である無電解析出では、特に利用価値が高い。例えば、銅の無電解めっきの場合、めっき液中のガスによって、気泡が基板の表面に形成され、無電解析出反応がその界面で発生する。in−situで脱ガスを行うことによって、そのような気泡が除去され、無電解めっきにより析出した銅の層の品質が著しく向上する。
【0040】
好ましい実施の形態に係る脱ガス装置108、208は、溶液が、多孔質で半透過性の壁を備えた開口部を通り抜けるように構成されている。また、これらの壁は、多量の液体は通らないが、ガスは通り抜けるようになっている。真空吸引は、壁の外側で行われ、それによって脱ガス速度が速くなる。そのような脱ガス装置の1つは、Charlotte, North Carolinaにある、Celgard Incorporatedによって提供されている。脱ガス装置の処理能力は広範囲であり、数ml/min〜多gallon/minの範囲である。限定されるものではないが、その他の脱ガス方法に、電解液に超音波エネルギ又はメガ音波(megasonic)エネルギを供給することを含む超音波又はメガ音波の適用がある。また、電解液は、電解液のパスにおける電解液の表面を真空吸引することによって、脱ガスすることができることに注目する必要がある。例えば、図3に示した溶液槽102及び図4に示した溶液槽202を気密に構成し、それらの槽内の溶液を所定の真空度に保持するようにしてもよい。通常の大気圧空気/溶液界面を真空/溶液界面に置き換えることにより、溶液の脱ガスが速やかに行われる。同様に、そのような真空/溶液界面は、溶液の搬送及び再利用を行う経路におけるいずれの箇所でも形成することができる。効率的な脱ガスを行うための真空度は、大気圧760torr(10Pa)未満であることに注意しなければならない。例えば、真空度は、10〜500torr(1.3×10〜6.7×10Pa)、特に50〜150torr(6.7×10〜2.0×10Pa)の範囲が好ましい。脱ガスを行うために真空吸引される容器内には、窒素、酸素、炭酸ガスなどの空気中のガスなど、いくつかのガスの分圧が存在する。また、ガスの組成を調整するために、その容器に特定のガスがゆっくりと流し込まれる。例えば、容器が真空吸引され、小さな供給部から、容器内に純粋な窒素ガスがリークされる。リークがあったとしても、適切なポンプを使用することによって、容器内の分圧を低く維持することが可能である。この場合、容器内のガスの組成はほぼ窒素であり、極めて少量の窒素が、溶液から容器内に取り除かれる。このように、溶液から取り除かれるガス種をある程度制御することが可能である。
【0041】
所定量の脱ガスは、ガスは通り液体は通らない多孔質の壁を備えた、チューブの一部分のようなコンテナ内の溶液を加圧することによって達成することもできる。この場合、溶液中のガスは、圧力差によって多孔質の壁を通って拡散し、その時に、溶液は脱ガスされる。一方、多孔質の壁の外側におけるガス雰囲気の化学組成を制御することによって、溶液から所定のガス種を取り除く効率を制御することができる。ガスに対して高い透過性を有する多孔質チュ−ブの例には、デュポン社によって提供されているTeflon AF2400で作られたものがある。この素材のガス透過係数は、窒素、水素、酸素及び炭酸ガスの場合、49,000〜280,000センチバーラ(centiBarrer:cB)である。
【0042】
実験により、電気めっき装置で用いられる、硫酸塩ベースの銅めっき電解液100リットルの溶解酸素含有量が、溶解酸素プローブによって測定された。空気中でプローブを100%に較正した後、電解液中の溶解酸素含有量が、約60%と測定された。脱ガス装置を用いて、電解液を3時間脱ガスした後、プローブによる測定値は約20%に低下した。さらに脱ガスを行った後には、測定値が約10%まで低下した。上記のデータから明らかなように、この処理によって、電解液中のガス含有量は80%以上減少した。最初、電解液中に置かれたパッド構造上には気泡が認められたが、電解液が脱ガスされた後には、パッド構造上に気泡がまったく認められなかった。上記の例により、溶解酸素の減少(プローブは酸素プローブであったため)が測定され、確認されたが、電解液中に溶解した窒素及びその他のガスに関しても、脱ガスにより同様の減少が期待されることに注目する必要がある。脱ガス装置で使用される多孔質の壁(フィルタとも呼ばれる)のタイプ及び気孔率(porosity)の選択によって、あるタイプのガスは、除去速度が改善されることもあり、低下することもある。例えば、脱ガス装置で用いられるあるフィルタ材料の場合には、他の材料では除去されない炭酸ガスが効果的に除去される。
【0043】
本発明に関して、主として電気化学的及び電気化学的機械的処理の例を基に説明したが、化学的処理及び化学的機械的処理などのあらゆる湿式処理にも適用可能なことに注意しなければならない。電気化学的研磨などの化学的エッチングは、半導体ウェーハ面などのワークピース表面から、銅などの過剰の物質を取り除く方法として魅力的である。従来技術で用いられる溶解ガスを含む溶液の代わりに、脱ガスされたエッチング溶液を用いることにより、前述の気泡及び欠陥の生成が回避される。物質除去処理では、除去される層の表面に形成された気泡は、それらの気泡の直下に位置する物質の除去速度を遅らせるか、妨げるように作用するので、欠陥の原因になることに注意しなければならない。銅、ニッケル、パラジウム及びそれらの合金など、電子材料の析出に用いられる無電解析出法では、脱ガスされた電解液を使用することにより、ワークピース表面における気泡の生成を回避し、欠陥の生成を防止することができる。
【0044】
図3及び図4に示したように、例えば溶解酸素プローブ又は炭酸ガスプローブなどのガス検出器が、処理システム100及び200で使用される。また、光学、超音波、質量分光などの手段を用いる別の検出手段も、脱ガス処理の監視用に使用することができる。また、溶液を監視する代わりに、脱ガス装置の真空雰囲気のガス含有量を監視することにより、溶液からガスが除去される効率に関する情報を得るようにすることもできる。
【0045】
検出装置は、処理システム100及び200における様々な位置に配置することができる。例えば、処理システム100の場合には、検出装置を第1ライン112に配置し、第1溶液流111A内の酸素、炭酸ガス又は他のガス種などのガスを監視する。または、第2ライン114に配置し、第2ガス流111B中に残留している可能性のあるガスを監視するようにしてもよい。第2ガス流から得られる結果は、脱ガス処理の効率を決定するのに用いることができる。オプションで、処理ステーション104又は204内に溶解ガス検出用の監視装置を配置することにより、金属のめっき又は除去処理の間における処理溶液中のガスを監視することができる。また、ガス監視回路の一部として警報システムを配置することにより、処理溶液中の溶解ガス量が過剰であると検出された時に、オペレータに警報を出し、溶解ガス濃度が安全な操業限界値に減少するまで、処理を停止させるようにすることができる。一方、脱ガス処理が効果的に行われている場合には、断続的な操作だけで、溶解ガス含有量が所定のレベルに維持される。この場合、溶解ガスセンサは、脱ガス装置の電源をオン又はオフすることに用いられ、このオン/オフは、電解液中の溶解ガスの含有量に依存している。
【0046】
前述のように、本発明の原理は、半導体ICの製造に使用される他のタイプの処理溶液の脱ガスに適用することができる。代表的な処理溶液の類は、パターニングされた絶縁層の洗浄に使用することができる。そのような溶液中の溶解ガスは、精細にパターニングされた構造上に核生成し、その面に微細な気泡を形成するので、洗浄効率を低下させる。これらの顕微鏡的なサイズ又はナノサイズの気泡が存在すると、それらの気泡が位置する部分の効果的な洗浄が妨げられ、その後析出する層の欠陥になる。例えば、銅ダマシン配線構造の製造又はその他の配線では、反応性イオンエッチング(RIE)などのドライエッチ法が絶縁層のエッチングに用いられ、絶縁層におけるビアホール、トレンチなどのフィーチャが形成される。また、これらの処理は、次に説明されるように、洗浄ステップを含んでいる。
【0047】
図5は、好ましくはドライエッチングによって、絶縁層302に形成された代表的な構造300を示す図である。構造300は、デュアルダマシン構造である。構造300では、幅の狭いトレンチ、ビアホールなどの幅の狭いフィーチャ306によって、金属ライン304への接続が行われている。通常、金属ライン304は銅であり、バリア層305によって内張りされている。幅の狭いフィーチャ306は、大きなフィーチャ308又はトレンチに延びている。従来の処理手順の場合、構造300を形成した後、通常バリア層で内面を内張りし、次に、銅を埋め込み、金属ライン304に電気的に接続するためのインタコネクトラインを形成する。ただし、バリア層を形成する前に、構造物の内面310及びトップ面312を洗浄し、大部分が有機物の残留物でその他の残留物を含む、エッチング液種の残留物を除去しなければならない。この洗浄には、主に洗浄液及び溶剤が用いられ、表面から残留物が洗い落とされる。しかし、そのような溶液は脱ガスされていないので、気泡314が、金属ライン304の表面316、内面310及びトップ面312に核生成する。洗浄の間、洗浄液は、気泡によって覆われるか又はマスクされた表面部には効果的に作用しないので、その部分から残留物を洗浄することができない。そのような洗浄が不十分なスポットでは、後に析出する膜(図示されていないバリア層であることが多い)と、表面316、内面310及びトップ面312との間の接合が弱くなる。表面316とバリア層との間の接合が弱い場合には、ライン304と次に析出される銅との間の接触抵抗が高くなる。このようなことを避けるために、洗浄前に、洗浄液の脱ガスを行うことが好ましい。処理システム100と200と同様なシステム及び同様な脱ガスの原理は、洗浄液の脱ガス及び使用後の洗浄液の再生に適用することができる。
【0048】
また、同様の脱ガス法は、腐食性のガスで基板上の金属をエッチした後、基板の洗浄に用いる洗浄液として利用することができる。例えば、塩素ガスを使用してアルミニウムをエッチングした後の洗浄に適用することができる。基板上の残留物が、脱ガスされた洗浄液で洗浄されると、洗浄された面における気泡の生成が最少化され、腐食性ガスの残留物が効果的に除去される。
【0049】
以上、様々な好ましい実施の形態及び最良の態様を詳細に説明したが、当業者であれば、本発明に係る新規な教示及び利点から実質的に逸脱することなく、好ましい実施の形態に対する多くの改良・変更を行い得ることが、容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1A】銅の層が埋め込まれるフィーチャを有する半導体基板を模式的に示す図である。
【図1B】図1Aに示した基板のシード層上における微細な気泡の生成を模式的に示す図である。
【図1C】トップ面に銅の電気めっきを行う間における図1Bに示した基板を模式的に示す図であって、気泡によって銅の層に欠陥が発生した状態を示している。
【図1D】平坦な銅の層が形成された後における図1Cに示した基板を模式的に示す図である。
【図2A】電気化学的機械的処理システムを模式的に示す図である。
【図2B】図2Aに示したシステムにおいて、トラップされた様々な気泡を模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る脱ガス装置を備えたシステムを模式的に示す図である。
【図4】本発明の別の実施の形態に係る脱ガス装置を備えたシステムを模式的に示す図である。
【図5】絶縁層に形成されたデュアルダマシン構造の洗浄の間に、気泡が生成する可能性のある位置を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るプロセスのリストを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース上の層の表面を処理する方法であって、処理溶液の脱ガスを行うことにより、脱ガスされた処理溶液を得るステップと、
前記処理溶液を用いて前記層の表面を処理するステップとを含むことを特徴とする処理方法。
【請求項2】
前記層の表面から物質を除去するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記層の表面から物質を除去するステップが、化学的エッチング、化学的機械的研磨、電気化学的研磨及び電気化学的機械的研磨のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2に記載の処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載の処理方法によって製造された集積回路。
【請求項5】
前記表面を処理するステップが、前記層の表面に物質を析出させるステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の処理方法。
【請求項6】
前記物質を析出させるステップが、電気化学的析出、電気化学的機械的析出、化学的析出及び化学的機械的析出のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の処理方法。
【請求項7】
前記物質を析出させるステップによって、電気抵抗が低い導電性膜を形成することを特徴とする請求項5又は6に記載の処理方法。
【請求項8】
前記物質を析出させるステップによって、結晶粒径の大きい導電性膜を形成することを特徴とする請求項5〜7のいずれかの項に記載の処理方法。
【請求項9】
前記脱ガスされた処理溶液により、前記ワークピースの表面を洗浄するステップを含むことを特徴とする請求項1〜3及び5〜8のいずれかの項に記載の処理方法。
【請求項10】
前記処理溶液を脱ガスするステップにより、前記処理溶液中の溶解ガス含有量を減少させることを特徴とする請求項1〜3及び5〜8のいずれかの項に記載の処理方法。
【請求項11】
前記処理溶液中の溶解酸素含有量を減少させ、処理の間における有機添加物の消費を減少させることを特徴とする請求項1〜3及び5〜10のいずれかの項に記載の処理方法。
【請求項12】
溶解ガス成分が、酸素、窒素、炭酸ガス及び水素を含むことを特徴とする請求項10に記載の処理方法。
【請求項13】
前記脱ガスされた処理溶液を用いて前記層の表面を処理するステップによって、気泡の生成を減少させることを特徴とする請求項1〜3及び5〜12のいずれかの項に記載の処理方法。
【請求項14】
前記層の表面上における前記気泡の生成が減少することを特徴とする請求項13に記載の処理方法。
【請求項15】
前記脱ガスされた処理溶液を用いて前記層の表面を処理するステップにより、前記層の表面上の欠陥を最少にすることを特徴とする請求項1〜3及び5〜12のいずれかの項に記載の処理方法。
【請求項16】
前記脱ガスされた処理溶液を用いる前記層の表面を処理するステップにより、前記処理溶液と前記層との間の化学反応を最少にすることを特徴とする請求項1〜3及び5〜15のいずれかの項に記載の処理方法。
【請求項17】
前記層が銅で構成されていることを特徴とする請求項1〜3及び5〜16のいずれかの項に記載の処理方法。
【請求項18】
脱ガスを行うステップが、イン−サイチュ(in−situ)脱ガスであることを特徴とする請求項1〜3及び5〜17のいずれかの項に記載の処理方法。
【請求項19】
前記脱ガスされた処理溶液によって、気泡を除去することを特徴とする請求項1〜3及び5〜18のいずれかの項に記載の処理方法。
【請求項20】
ワークピースの表面に層を析出させる処理方法であって、
脱ガス装置に処理溶液を供給するステップと、
前記脱ガス装置を用いて前記処理溶液の脱ガスを行うことにより、脱ガスされた処理溶液を得るステップと、
前記脱ガスされた処理溶液を処理装置に送るステップと、
前記脱ガスされた処理溶液で前記ワークピースの表面を濡らすステップと、
前記ワークピースの表面に前記層を析出させるステップとを含むことを特徴とする処理方法。
【請求項21】
前記層を析出させるステップが、電気化学的析出、電気化学的機械的析出及び無電解析出のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項20に記載の処理方法。
【請求項22】
前記処理溶液が、電気めっき溶液及び無電解析出溶液のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項20又は21に記載の処理方法。
【請求項23】
さらに、脱ガスされた処理溶液を再利用するステップを含むことを特徴とする請求項20〜22のいずれかの項に記載の処理方法。
【請求項24】
前記ワークピースの表面が、厚さ1000Å未満のシード層を備え、前記処理溶液を脱ガスするステップにより、前記処理溶液中の溶解ガス含有量を減少させ、前記濡らすステップの後及び前記析出させるステップの前における、前記脱ガスされた処理溶液と前記シード層との間の化学的相互作用を抑制することを特徴とする請求項20〜23のいずれかの項に記載の処理方法。
【請求項25】
請求項20〜24のいずれかの項に記載の処理方法によって製造された集積回路。
【請求項26】
ワークピース上の層を処理する少なくとも1つの処理装置に、脱ガスされた処理溶液を送るシステムであって、
前記処理溶液を貯蔵する貯蔵槽と、
該貯蔵槽に接続され、該貯蔵槽から前記処理溶液を受け取り、脱ガスされた処理溶液を前記貯蔵槽へ供給するように構成された脱ガス装置と、
前記貯蔵槽に接続され、該貯蔵槽から前記脱ガスされた処理溶液を受け取るように構成された少なくとも1つの処理装置とを備えていることを特徴とするシステム。
【請求項27】
さらに、前記脱ガス装置に接続され、前記脱ガスされた処理溶液中の溶解ガスを所定の含有量以下に維持するように構成された監視装置を備えていることを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記監視装置が、溶解ガスメータであることを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
少なくとも1つの前記処理装置が、使用された処理溶液を前記貯蔵槽へリサイクルするように構成されていることを特徴とする請求項26〜28のいずれかの項に記載のシステム。
【請求項30】
さらに、前記処理溶液を循環させるために、前記脱ガス装置と前記貯蔵槽との間に接続されたポンプを備えていることを特徴とする請求項26〜29のいずれかの項に記載のシステム。
【請求項31】
少なくとも1つの前記処理装置が、電気化学的処理ステーション、電気化学的機械的処理ステーション、化学的処理ステーション及び化学的機械的処理ステーションのうちの少なくとも1つを備えていることを特徴とする請求項26〜31のいずれかの項に記載のシステム。
【請求項32】
少なくとも1つの前記処理装置が、前記ワークピースを洗浄するために、前記脱ガスされた処理溶液を用いる洗浄ステーションを備えていることを特徴とする請求項26〜31のいずれかの項に記載のシステム。
【請求項33】
脱ガスされた処理溶液を用いることにより、ワークピースの表面を処理する装置であって、前記処理溶液を貯蔵可能に構成された溶液槽と、
該溶液槽に接続され、前記処理溶液を脱ガスするように構成された脱ガス装置と、
該脱ガス装置に接続され、前記脱ガスされた処理溶液を受け取り、前記ワークピースの表面を処理するように構成された少なくとも1つの処理ステーションとを備えていることを特徴とする装置。
【請求項34】
さらに、前記脱ガス装置に接続され、前記脱ガスされた処理溶液中の溶解ガスを、所定の含有量以下に維持可能に構成された監視装置を備えていることを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項35】
少なくとも1つの前記処理ステーションが、前記処理溶液の溶液槽に接続され、該溶液槽に前記処理溶液を戻すように構成されていることを特徴とする請求項33又は34に記載の装置。
【請求項36】
少なくとも1つの前記処理ステーションが、
電気化学的処理ステーション、電気化学的機械的処理ステーション、化学的処理ステーション及び化学的機械的処理ステーションのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項33〜35のいずれかに記載の装置。
【請求項37】
電気化学的析出法を用いて銅のシード層を有するワークピース上に銅の膜を形成する方法であって、
前記銅のシード層を脱ガスされた処理溶液中に浸漬するステップと、
前記銅のシード層と、前記脱ガスされた処理溶液に電気的に接続された電極との間に電圧を印加するステップとを含むことを特徴とする銅の膜の形成方法。
【請求項38】
前記銅のシード層の厚さが、1000Å未満であることを特徴とする請求項37に記載の銅の膜の形成方法。
【請求項39】
請求項37に記載の銅の膜の形成方法によって製造された集積回路。
【請求項40】
無電解析出法を用いて、ワークピースの表面に銅の膜を形成する方法であって、
脱ガスされた処理溶液に表面を浸漬するステップと、
前記脱ガスされた処理溶液から前記銅の膜を析出させるステップとを含むことを特徴とする銅の膜の形成方法。
【請求項41】
さらに、前記銅の膜を析出させるステップの前に、前記ワークピース表面にバリア層を形成するステップを含むことを特徴とする請求項40に記載の銅の膜の形成方法。
【請求項42】
さらに、前記銅の膜を析出させるステップの前に、前記バリア層上にシード層を形成するステップを含むことを特徴とする請求項41に記載の銅の膜の形成方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−525429(P2006−525429A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506167(P2006−506167)
【出願日】平成16年4月23日(2004.4.23)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001739
【国際公開番号】WO2004/097929
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(505330310)エーエスエム ナトゥール インク. (2)
【Fターム(参考)】