説明

炭化珪素基板、半導体装置、炭化珪素基板の製造方法

【課題】炭化珪素基板を用いた半導体装置の製造コストの低減を実現可能な炭化珪素基板、半導体装置および炭化珪素基板の製造方法を提供する。
【解決手段】炭化珪素基板1は、炭化珪素からなるベース層10と、単結晶炭化珪素からなり、ベース層10上に配置され、ベース層10よりも不可避不純物の濃度が低いSiC層20と、炭化珪素からなり、ベース層10の、SiC層20とは反対側の主面10D上に形成され、ベース層10よりも不可避不純物の濃度が低い被覆層90とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭化珪素基板、半導体装置、炭化珪素基板の製造方法に関し、より特定的には、炭化珪素基板を用いた半導体装置の製造コストの低減を実現可能な炭化珪素基板、半導体装置、炭化珪素基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高耐圧化、低損失化、高温環境下での使用などを可能とするため、半導体装置を構成する材料として炭化珪素(SiC)の採用が進められつつある。炭化珪素は、従来から半導体装置を構成する材料として広く使用されている珪素に比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体である。そのため、半導体装置を構成する材料として炭化珪素を採用することにより、半導体装置の高耐圧化、オン抵抗の低減などを達成することができる。また、炭化珪素を材料として採用した半導体装置は、珪素を材料として採用した半導体装置に比べて、高温環境下で使用された場合の特性の低下が小さいという利点も有している。
【0003】
このような状況の下、半導体装置の製造に用いられる炭化珪素結晶および炭化珪素基板の製造方法については、種々の検討がなされ、様々なアイデアが提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】M.Nakabayashi, et al.、“Growth of Crack‐free 100mm−diameter 4H‐SiC Crystals with Low Micropipe Densities、Mater. Sci. Forum,vols.600‐603、2009年、p.3−6.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、炭化珪素は常圧で液相を持たない。また、結晶成長温度が2000℃以上と非常に高く、成長条件の制御や、その安定化が困難である。そのため、炭化珪素単結晶は、高品質を維持しつつ大口径化することが困難であり、大口径の高品質な炭化珪素基板を得ることは容易ではない。そして、大口径の炭化珪素基板の作製が困難であることに起因して、炭化珪素基板の製造コストが上昇するだけでなく、当該炭化珪素基板を用いて半導体装置を製造するに際しては、1バッチあたりの生産個数が少なくなり、半導体装置の製造コストが高くなるという問題があった。また、製造コストの高い炭化珪素単結晶を基板として有効に利用することにより、半導体装置の製造コストを低減できるものと考えられる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、炭化珪素基板を用いた半導体装置の製造コストの低減を実現可能な炭化珪素基板、半導体装置および炭化珪素基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従った炭化珪素基板は、炭化珪素からなるベース層と、単結晶炭化珪素からなり、ベース層上に配置され、ベース層よりも不可避不純物の濃度が低いSiC層と、炭化珪素からなり、ベース層の、SiC層とは反対側の主面上に形成され、ベース層よりも不可避不純物の濃度が低い被覆層とを備えている。なお、本願において不可避不純物とは、意図的に導入された不純物ではなく、採用された原料や製造方法に起因して必然的に導入される不純物をいう。
【0008】
上述のように、高品質な炭化珪素単結晶は、大口径化が困難である。一方、炭化珪素基板を用いた半導体装置の製造プロセスにおいて効率よく製造を行なうためには、所定の形状および大きさに統一された基板が必要である。そのため、高品質な炭化珪素単結晶(たとえば不可避不純物の濃度および欠陥密度が小さい炭化珪素単結晶)が得られた場合でも、切断等によって所定の形状等に加工できない領域は、有効に利用されない可能性がある。
【0009】
これに対し、本発明の炭化珪素基板においては、炭化珪素からなるベース層上に、ベース層よりも不可避不純物の濃度が低い単結晶炭化珪素からなるSiC層が配置されている。そのため、たとえば不可避不純物の濃度および欠陥密度が大きく、低品質な炭化珪素結晶からなるベース層を上記所定の形状および大きさに形成する一方、当該ベース層上に高品質であるものの所望の形状等が実現されていない炭化珪素単結晶をSiC層として配置することができる。このような炭化珪素基板は、全体として所定の形状および大きさに統一されているため半導体装置の製造を効率化できる。また、このような炭化珪素基板の高品質なSiC層を使用して半導体装置を製造することが可能であるため、炭化珪素単結晶を有効に利用することができる。その結果、本発明の炭化珪素基板によれば、炭化珪素基板を用いた半導体装置の製造コストの低減を実現可能な炭化珪素基板を提供することができる。
【0010】
ここで、上記SiC層は、ベース層とは別の単結晶炭化珪素からなっていてもよい。SiC層がベース層とは別の単結晶炭化珪素からなる状態とは、ベース層が多結晶、非晶質、焼結体など単結晶以外の炭化珪素からなる場合を含むとともに、ベース層が単結晶炭化珪素からなる場合であってSiC層とは別の結晶からなっている場合を含む。ベース層とSiC層とが別の結晶からなっている状態とは、ベース層とSiC層との間に境界が存在し、たとえば当該境界の一方側と他方側とで欠陥密度が異なっている状態を意味する。このとき、欠陥密度が当該境界において不連続となっていてもよい。
【0011】
さらに、ベース層の原料の純度を低くすることにより、ベース層、ひいては炭化珪素基板の製造コストを低減することができる。しかし、この場合、ベース層の不可避不純物の濃度は高くなる。そして、ベース層に導入された不可避不純物は、炭化珪素基板を用いて製造される半導体装置に混入し、特性低下などの不具合が発生するおそれがある。具体的には、たとえば炭化珪素基板を用いたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の製造において、ゲート酸化膜の作製時に当該酸化膜中に不可避不純物が混入するおそれがある。
【0012】
これに対し、本発明の炭化珪素基板においては、炭化珪素からなり、ベース層の、SiC層とは反対側の主面上に、ベース層よりも不可避不純物の濃度が低い被覆層が形成されている。そのため、不可避不純物の濃度が高いベース層が採用された場合でも、当該ベース層の主面が被覆層により被覆される。その結果、上記ベース層の主面からの不可避不純物の離脱に起因した半導体装置への不可避不純物の混入が抑制され、上記不具合の発生が抑えられる。
【0013】
上記炭化珪素基板においては、上記ベース層と被覆層とは導電型が同じであってもよい。また、上記炭化珪素基板においては、上記被覆層の導電型決定不純物の濃度は1×1018cm−3よりも高くてもよい。また、上記炭化珪素基板においては、上記ベース層の厚みは被覆層の厚みよりも大きくてもよい。
【0014】
このようにすることにより、基板の厚み方向に電流が流れる縦型半導体装置の製造に適した炭化珪素基板を提供することができる。なお、本願において「導電型決定不純物」とは、炭化珪素の導電型を制御するために炭化珪素に意図的に導入される不純物をいう。
【0015】
上記炭化珪素基板においては、ベース層の導電型決定不純物の濃度は2×1019cm−3よりも大きく、SiC層の導電型決定不純物の濃度は5×1018cm−3よりも大きく2×1019cm−3よりも小さいものとすることができる。
【0016】
本発明者は、炭化珪素基板において、熱処理による積層欠陥の発生を抑制しつつ、厚み方向の抵抗率を低減する方策について詳細な検討を行なった。その結果、導電型決定不純物の濃度が2×1019cm−3未満であれば熱処理による積層欠陥の発生を抑制可能である一方、2×1019cm−3を超えると積層欠陥の抑制が困難であることを見出した。したがって、炭化珪素基板に導電型決定不純物の濃度が2×1019cm−3よりも大きく、抵抗率の小さい層(ベース層)を設けるとともに、導電型決定不純物の濃度が2×1019cm−3よりも小さい層(SiC層)をベース層上に配置することにより、その後にデバイスプロセスにおける熱処理が実施された場合でも、少なくともSiC層においては積層欠陥の発生を抑制することができる。そして、当該SiC層上に炭化珪素からなる半導体層をエピタキシャル成長により形成して半導体装置を作製することにより、ベース層の存在による炭化珪素基板の抵抗率の低減を達成しつつ、ベース層に発生し得る積層欠陥の影響が半導体装置の特性に及ぶことを抑制することができる。一方、SiC層の導電型決定不純物の濃度が5×1018cm−3以下の場合、当該SiC層の抵抗率が大きくなりすぎるという問題が生じ得る。
【0017】
このように、上記構成によれば、熱処理による積層欠陥の発生を抑制しつつ、厚み方向の抵抗率を低減することが可能な炭化珪素基板を提供することができる。
【0018】
上記炭化珪素基板においては、SiC層上に形成され、単結晶炭化珪素からなるエピタキシャル成長層をさらに備えており、当該エピタキシャル成長層における積層欠陥密度は、ベース層における積層欠陥密度よりも小さくなっていてもよい。
【0019】
SiC層上にエピタキシャル成長層を形成するに際しては、たとえば炭化珪素基板のサーマルクリーニングやエピタキシャル成長における基板の加熱が必要となる。そして、この加熱によりベース層に積層欠陥が発生した場合でも、ベース層の導電型決定不純物の濃度を2×1019cm−3よりも大きく、SiC層の導電型決定不純物の濃度を5×1018cm−3よりも大きく2×1019cm−3よりも小さいものとすることにより、上述のように少なくともSiC層においては積層欠陥の発生を抑制することができる。そのため、SiC層上に形成されるエピタキシャル成長層においても積層欠陥の発生が抑制される。その結果、この炭化珪素基板は、抵抗率が低減されつつ、エピタキシャル成長層における積層欠陥の発生が抑えられることによって耐圧の低下、リーク電流の増大が抑制された半導体装置を作製可能な炭化珪素基板となっている。なお、このエピタキシャル成長層は、たとえば半導体装置のバッファ層、耐圧保持層(ドリフト層)として用いることができる。
【0020】
上記炭化珪素基板においては、ベース層に含まれる導電型決定不純物と、SiC層に含まれる導電型決定不純物とは異なっていてもよい。これにより、使用目的に応じた適切な導電型決定不純物を含む炭化珪素基板を提供することができる。
【0021】
上記炭化珪素基板においては、ベース層に含まれる導電型決定不純物は窒素またはリンであり、SiC層に含まれる導電型決定不純物は窒素またはリンとすることができる。窒素およびリンは、炭化珪素に多数キャリアとしての電子を供給する導電型決定不純物として、好適である。
【0022】
上記炭化珪素基板においては、上記SiC層は、平面的に見て複数並べて配置されていてもよい。別の観点から説明すると、SiC層は、ベース層の主面に沿って複数並べて配置されていてもよい。
【0023】
上述のように、単結晶炭化珪素からなる基板は、高品質を維持しつつ大口径化することが困難である。これに対し、大口径のベース層上に高品質な炭化珪素単結晶から採取したSiC層を平面的に複数並べて配置することにより、高品質なSiC層を有する大口径基板として取り扱うことが可能な炭化珪素基板を得ることができる。そして、この炭化珪素基板を用いることにより、半導体装置の製造プロセスを効率化することができる。なお、半導体装置の製造プロセスを効率化するためには、上記複数のSiC層のうち互いに隣り合うSiC層は、互いに接触して配置されていることが好ましい。より具体的には、たとえば上記複数のSiC層は、平面的に見てマトリックス状に敷き詰められていることが好ましい。また、隣り合うSiC層の端面は、当該SiC層の主面に対し実質的に垂直であることが好ましい。これにより、炭化珪素基板を容易に製造することができる。ここで、たとえば上記端面と主面とのなす角が85°以上95°以下であれば、上記端面と主面とは実質的に垂直であると判断することができる。
【0024】
上記炭化珪素基板においては、ベース層は単結晶炭化珪素からなり、SiC層のX線ロッキングカーブの半値幅は、ベース層のX線ロッキングカーブの半値幅よりも小さくなっていてもよい。
【0025】
このようにすることにより、上記本発明の炭化珪素基板においては、半導体装置の製造に適した形状および大きさに加工されたベース層上に、当該ベース層よりもX線ロッキングカーブの半値幅が小さい、すなわち結晶性が高いものの所望の形状等が実現されていないSiC層を配置することができる。このような炭化珪素基板は、全体として所定の形状および大きさに統一されているため半導体装置の製造を効率化できる。また、このような炭化珪素基板の高品質なSiC層を使用して半導体装置を製造することが可能であるため、高品質な単結晶炭化珪素を有効に利用することができる。その結果、炭化珪素基板を用いた半導体装置の製造コストの低減を実現することができる。
【0026】
上記炭化珪素基板においては、ベース層は単結晶炭化珪素からなり、SiC層のマイクロパイプ密度は、ベース層のマイクロパイプ密度よりも低くなっていてもよい。
【0027】
また、上記炭化珪素基板においては、ベース層は単結晶炭化珪素からなり、SiC層の転位密度は、ベース層の転位密度よりも低くなっていてもよい。
【0028】
また、上記炭化珪素基板においては、ベース層は単結晶炭化珪素からなり、SiC層の貫通らせん転位密度は、ベース層の貫通らせん転位密度よりも小さくなっていてもよい。
【0029】
また、上記炭化珪素基板においては、ベース層は単結晶炭化珪素からなり、SiC層の貫通刃状転位密度は、ベース層の貫通刃状転位密度よりも小さくなっていてもよい。
【0030】
また、上記炭化珪素基板においては、ベース層は単結晶炭化珪素からなり、SiC層の基底面転位密度は、ベース層の基底面転位密度よりも小さくなっていてもよい。
【0031】
また、上記炭化珪素基板においては、ベース層は単結晶炭化珪素からなり、SiC層の混合転位密度は、ベース層の混合転位密度よりも小さくなっていてもよい。
【0032】
また、上記炭化珪素基板においては、ベース層は単結晶炭化珪素からなり、SiC層の積層欠陥密度は、ベース層の積層欠陥密度よりも小さくなっていてもよい。
【0033】
また、上記炭化珪素基板においては、ベース層は単結晶炭化珪素からなり、SiC層の点欠陥密度は、ベース層の点欠陥密度よりも小さくなっていてもよい。
【0034】
これにより、半導体装置の製造に適した所定の形状および大きさに加工され、比較的低品質であるものの低コストが実現されたベース層上に、当該ベース層よりもマイクロパイプ密度や転位密度など(貫通らせん転位密度、貫通刃状転位密度、基底面転位密度、混合転位密度、積層欠陥密度、点欠陥密度など)が小さい、すなわち高品質であるものの所定の形状および大きさが実現されていないSiC層を配置することができる。このような炭化珪素基板は、全体として半導体装置の製造に適した所定の形状および大きさに統一されているため半導体装置の製造を効率化できる。また、このような炭化珪素基板の高品質なSiC層を使用して半導体装置を製造することが可能であるため、高品質な単結晶炭化珪素を有効に利用することができる。その結果、炭化珪素基板を用いた半導体装置の製造コストの低減を実現することができる。
【0035】
上記炭化珪素基板においては、ベース層は、SiC層に対向する側の主面を含むように単結晶炭化珪素からなる単結晶層を含んでいてもよい。このようにすることにより、炭化珪素基板を用いて半導体装置を製造するに際し、製造プロセスの初期においては厚みの大きい取り扱い容易な状態を維持し、製造プロセスの途中で単結晶層以外のベース層の領域を除去してベース層のうち単結晶層のみを半導体装置の内部に残存させることができる。これにより、製造プロセスにおける炭化珪素基板の取り扱いを容易にしつつ高品質な半導体装置を製造することができる。
【0036】
上記炭化珪素基板においては、SiC層のX線ロッキングカーブの半値幅は、単結晶層のX線ロッキングカーブの半値幅よりも小さくなっていてもよい。このように、ベース層の単結晶層に比べてX線ロッキングカーブの半値幅が小さい、すなわち結晶性の高いSiC層を配置することにより、高品質な半導体装置を製造可能な炭化珪素基板を得ることができる。
【0037】
上記炭化珪素基板においては、SiC層のマイクロパイプ密度は、単結晶層のマイクロパイプ密度よりも低くなっていてもよい。
【0038】
また、上記炭化珪素基板においては、SiC層の転位密度は、単結晶層の転位密度よりも低くなっていてもよい。
【0039】
また、上記炭化珪素基板においては、SiC層の貫通らせん転位密度は、単結晶層の貫通らせん転位密度よりも小さくなっていてもよい。
【0040】
また、上記炭化珪素基板においては、SiC層の貫通刃状転位密度は、単結晶層の貫通刃状転位密度よりも小さくなっていてもよい。
【0041】
また、上記炭化珪素基板においては、SiC層の基底面転位密度は、単結晶層の基底面転位密度よりも小さくなっていてもよい。
【0042】
また、上記炭化珪素基板においては、SiC層の混合転位密度は、単結晶層の混合転位密度よりも小さくなっていてもよい。
【0043】
また、上記炭化珪素基板においては、SiC層の積層欠陥密度は、単結晶層の積層欠陥密度よりも小さくなっていてもよい。
【0044】
また、上記炭化珪素基板においては、SiC層の点欠陥密度は、単結晶層の点欠陥密度よりも小さくなっていてもよい。
【0045】
このように、マイクロパイプ密度、転位密度(貫通らせん転位密度、貫通刃状転位密度、基底面転位密度、混合転位密度、積層欠陥密度、点欠陥密度など)などの欠陥密度をベース層の単結晶層に比べて低減したSiC層を配置することにより、高品質な半導体装置を製造可能な炭化珪素基板を得ることができる。
【0046】
上記炭化珪素基板においては、SiC層の、ベース層とは反対側の主面は、{0001}面に対するオフ角が50°以上65°以下となっていてもよい。
【0047】
六方晶の単結晶炭化珪素は、<0001>方向に成長させることにより、高品質な単結晶を効率よく作製することができる。そして、<0001>方向に成長させた炭化珪素単結晶からは、{0001}面を主面とする炭化珪素基板を効率よく採取することができる。一方、面方位{0001}に対するオフ角が50°以上65°以下である主面を有する炭化珪素基板を用いることにより、高性能な半導体装置を製造できる場合がある。
【0048】
具体的には、たとえばMOSFETの作製に用いられる炭化珪素基板は、面方位{0001}に対するオフ角が8°程度以下である主面を有していることが一般的である。そして、当該主面上にエピタキシャル成長により半導体層が形成されるとともに、当該半導体層上に酸化膜、電極などが形成され、MOSFETが得られる。このMOSFETにおいては、半導体層と酸化膜との界面を含む領域にチャネル領域が形成される。しかし、このような構造を有するMOSFETにおいては、基板の主面の面方位{0001}に対するオフ角が8°程度以下であることに起因して、チャネル領域が形成される半導体層と酸化膜との界面付近において多くの界面準位が形成され、キャリアの走行の妨げとなって、チャネル移動度が低下する。
【0049】
これに対し、炭化珪素基板において、SiC層におけるベース層とは反対側の主面の、{0001}面に対するオフ角を50°以上65°以下とすることにより、上記界面準位の形成が低減され、オン抵抗が低減されたMOSFETを作製することができる。
【0050】
上記炭化珪素基板においては、上記SiC層におけるベース層とは反対側の主面のオフ方位と<1−100>方向とのなす角は5°以下となっていてもよい。
【0051】
<1−100>方向は、炭化珪素基板における代表的なオフ方位である。そして、基板の製造工程におけるスライス加工のばらつき等に起因したオフ方位のばらつきを5°以下とすることにより、炭化珪素基板上への半導体層のエピタキシャル成長などを容易にすることができる。
【0052】
上記炭化珪素基板においては、上記SiC層におけるベース層とは反対側の主面の、<1−100>方向における{03−38}面に対するオフ角は−3°以上5°以下であってもよい。これにより、炭化珪素基板を用いてMOSFETを作製した場合におけるチャネル移動度を、より一層向上させることができる。ここで、面方位{03−38}に対するオフ角を−3°以上+5°以下としたのは、チャネル移動度と当該オフ角との関係を調査した結果、この範囲内で特に高いチャネル移動度が得られたことに基づいている。
【0053】
また、「<1−100>方向における{03−38}面に対するオフ角」とは、<1−100>方向および<0001>方向の張る平面への上記主面の法線の正射影と、{03−38}面の法線とのなす角度であり、その符号は、上記正射影が<1−100>方向に対して平行に近づく場合が正であり、上記正射影が<0001>方向に対して平行に近づく場合が負である。
【0054】
なお、上記主面の面方位は、実質的に{03−38}であることがより好ましく、上記主面の面方位は{03−38}であることがさらに好ましい。ここで、主面の面方位が実質的に{03−38}であるとは、基板の加工精度などを考慮して実質的に面方位が{03−38}とみなせるオフ角の範囲に基板の主面の面方位が含まれていることを意味し、この場合のオフ角の範囲としてはたとえば{03−38}に対してオフ角が±2°の範囲である。これにより、上述したチャネル移動度をより一層向上させることができる。
【0055】
上記炭化珪素基板においては、上記SiC層におけるベース層とは反対側の主面のオフ方位と<11−20>方向とのなす角は5°以下となっていてもよい。
【0056】
<11−20>は、上記<1−100>方向と同様に、炭化珪素基板における代表的なオフ方位である。そして、基板の製造工程におけるスライス加工のばらつき等に起因したオフ方位のばらつきを±5°とすることにより、SiC層上への半導体層のエピタキシャル成長などを容易にすることができる。
【0057】
本発明に従った半導体装置は、炭化珪素基板と、炭化珪素基板上にエピタキシャル成長により形成された半導体層と、半導体層上に形成された電極とを備えている。そして、当該炭化珪素基板は、上記本発明の炭化珪素基板である。
【0058】
本発明の半導体装置によれば、上記本発明の炭化珪素基板を備えていることにより、炭化珪素基板を用いた半導体装置の製造コストの低減を実現可能な半導体装置を提供することができる。
【0059】
本発明に従った炭化珪素基板の製造方法は、単結晶炭化珪素からなるSiC基板を準備する工程と、SiC基板の一方の主面に面するように炭化珪素源を配置する工程と、炭化珪素源を加熱することにより、SiC基板の一方の主面に接触するように炭化珪素からなり、SiC基板よりも不可避不純物の濃度が高いベース層を形成する工程と、ベース層のSiC基板とは反対側の主面上に、炭化珪素からなり、ベース層よりも不可避不純物の濃度が低い被覆層を形成する工程とを備えている。本発明の炭化珪素基板の製造方法によれば、上記本発明の炭化珪素基板を容易に製造することができる。
【0060】
上記炭化珪素基板の製造方法においては、上記被覆層はCVDエピタキシャル成長により形成されてもよい。CVD(Chemical Vapor Deposition)エピタキシャル成長は、ベース層との密着性に優れた被覆層を形成する方法として好適である。
【0061】
上記炭化珪素基板の製造方法においては、被覆層を形成する工程よりも前に、ベース層のSiC基板とは反対側の主面を研磨する工程をさらに備えていてもよい。このようにすることにより、後工程における被覆層の形成が容易となる。
【発明の効果】
【0062】
以上の説明から明らかなように、本発明の炭化珪素基板、半導体装置、炭化珪素基板の製造方法によれば、炭化珪素基板を用いた半導体装置の製造コストの低減を実現可能な炭化珪素基板、半導体装置および炭化珪素基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】炭化珪素基板の構造を示す概略断面図である。
【図2】エピタキシャル成長層が形成された炭化珪素基板の構造を示す概略断面図である。
【図3】炭化珪素基板の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【図4】炭化珪素基板の他の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【図5】炭化珪素基板の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図6】炭化珪素基板の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図7】炭化珪素基板の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図8】炭化珪素基板の他の構造を示す概略断面図である。
【図9】炭化珪素基板のさらに他の構造を示す概略断面図である。
【図10】図9の炭化珪素基板の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【図11】炭化珪素基板のさらに他の構造を示す概略断面図である。
【図12】図11の炭化珪素基板の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【図13】炭化珪素基板のさらに他の構造を示す概略断面図である。
【図14】図13の炭化珪素基板の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【図15】図13の炭化珪素基板の製造方法を説明するための概略断面図である。
【図16】縦型MOSFETの構造を示す概略断面図である。
【図17】縦型MOSFETの製造方法の概略を示すフローチャートである。
【図18】縦型MOSFETの製造方法を説明するための概略断面図である。
【図19】縦型MOSFETの製造方法を説明するための概略断面図である。
【図20】縦型MOSFETの製造方法を説明するための概略断面図である。
【図21】縦型MOSFETの製造方法を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0065】
(実施の形態1)
まず、本発明の一実施の形態である実施の形態1について説明する。図1を参照して、本実施の形態における炭化珪素基板1は、炭化珪素からなるベース層10と、単結晶炭化珪素からなり、ベース層10の主面10A上に配置され、ベース層10よりも不可避不純物の濃度が低いSiC層20と、炭化珪素からなり、ベース層10の、SiC層20とは反対側の主面10D上に形成され、ベース層10よりも不可避不純物の濃度が低い被覆層90とを備えている。
【0066】
本実施の形態における炭化珪素基板1においては、炭化珪素からなるベース層10の主面10A上に、ベース層10よりも不可避不純物の濃度が低い単結晶炭化珪素からなるSiC層20が配置されている。そのため、たとえば不可避不純物の濃度および欠陥密度が大きく、低品質な炭化珪素結晶からなるベース層10を半導体装置の製造に適した形状および大きさに形成する一方、ベース層10上に高品質であるものの所望の形状等が実現されていない炭化珪素単結晶をSiC層20として配置することができる。その結果、本実施の形態の炭化珪素基板1は、炭化珪素基板を用いた半導体装置の製造コストの低減を実現可能な炭化珪素基板となっている。なお、SiC層20は、ベース層10とは別の単結晶炭化珪素からなっていてもよい。
【0067】
さらに、本実施の形態の炭化珪素基板1においては、炭化珪素からなり、ベース層10の、SiC層20とは反対側の主面10D上に、ベース層10よりも不可避不純物の濃度が低い被覆層90が形成されている。そのため、不可避不純物の濃度が高いベース層10が採用された場合でも、当該ベース層10の主面が被覆層90およびSiC層20により被覆されている。その結果、炭化珪素基板1を用いて半導体装置を製造するに際し、上記ベース層10の主面10A,10Dからの不可避不純物の離脱に起因した半導体装置への不可避不純物の混入が抑制される。
【0068】
ここで、ベース層10と被覆層90とは導電型が同じであってもよい。また、被覆層90の導電型決定不純物の濃度は1×1018cm−3よりも高くてもよい。また、ベース層10の厚みは被覆層90の厚みよりも大きくてもよい。このような構造のうち少なくとも1つを採用することにより、炭化珪素基板1を基板の厚み方向に電流が流れる縦型半導体装置の製造に適したものとすることができる。
【0069】
また、ベース層10の導電型決定不純物の濃度は2×1019cm−3よりも大きく、SiC層20の導電型決定不純物の濃度は5×1018cm−3よりも大きく2×1019cm−3よりも小さいものとすることができる。これにより、炭化珪素基板1を、熱処理による積層欠陥の発生を抑制しつつ、厚み方向の抵抗率を低減することが可能なものとすることができる。この場合、図2に示すように、SiC層20においてベース層10とは反対側の主面20A上に単結晶炭化珪素からなるエピタキシャル成長層30を形成しても、ベース層10に発生し得る積層欠陥はエピタキシャル成長層30には伝播しない。そのため、エピタキシャル成長層30における積層欠陥密度を、ベース層10における積層欠陥密度より小さくすることができる。
【0070】
さらに、炭化珪素基板1においては、ベース層10に含まれる導電型決定不純物と、SiC層20に含まれる導電型決定不純物とは異なっていてもよい。これにより、使用目的に応じた適切な導電型決定不純物を含む炭化珪素基板を得ることができる。また、ベース層10に含まれる導電型決定不純物は窒素またはリンとすることができ、SiC層20に含まれる導電型決定不純物も窒素またはリンとすることができる。
【0071】
さらに、炭化珪素基板1においては、ベース層10は単結晶炭化珪素からなっており、かつSiC層20のX線ロッキングカーブの半値幅は、ベース層10のX線ロッキングカーブの半値幅よりも小さくなっていてもよい。
【0072】
これにより、所定の形状および大きさに統一されているものの、比較的結晶性の低い単結晶炭化珪素を炭化珪素基板1のベース層10として利用するとともに、SiC層20として、結晶性が高いものの所望の形状等が実現されていない単結晶炭化珪素を有効に利用することができる。その結果、このような炭化珪素基板1を用いて半導体装置を作製することにより、当該半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0073】
また、炭化珪素基板1においては、ベース層10は単結晶炭化珪素からなっており、かつSiC層20のマイクロパイプ密度は、ベース層10のマイクロパイプ密度よりも低くなっていてもよい。また、炭化珪素基板1においては、ベース層10は単結晶炭化珪素からなり、かつSiC層20の転位密度は、ベース層10の転位密度よりも低くなっていてもよい。また、炭化珪素基板1においては、ベース層10は単結晶炭化珪素からなり、かつSiC層20の貫通らせん転位密度は、ベース層10の貫通らせん転位密度よりも小さくなっていてもよい。また、炭化珪素基板1においては、ベース層10は単結晶炭化珪素からなり、かつSiC層20の貫通刃状転位密度は、ベース層10の貫通刃状転位密度よりも小さくなっていてもよい。また、炭化珪素基板1においては、ベース層10は単結晶炭化珪素からなり、かつSiC層20の基底面転位密度は、ベース層10の基底面転位密度よりも小さくなっていてもよい。また、炭化珪素基板1においては、ベース層10は単結晶炭化珪素からなり、かつSiC層20の混合転位密度は、ベース層10の混合転位密度よりも小さくなっていてもよい。また、炭化珪素基板1においては、ベース層10は単結晶炭化珪素からなり、SiC層20の積層欠陥密度は、ベース層10の積層欠陥密度よりも小さくなっていてもよい。また、炭化珪素基板1においては、ベース層10は単結晶炭化珪素からなり、SiC層20の点欠陥密度は、ベース層10の点欠陥密度よりも小さくなっていてもよい。
【0074】
これにより、所定の形状および大きさに統一されているものの、比較的マイクロパイプ密度や欠陥密度が高く品質の低い単結晶炭化珪素を炭化珪素基板1のベース層10として利用するとともに、マイクロパイプ密度や欠陥密度が低く高品質であるものの所望の形状等が実現されていない単結晶炭化珪素をSiC層20として有効に利用することができる。その結果、このような炭化珪素基板1を用いて半導体装置を作製することにより、当該半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0075】
また、炭化珪素基板1においては、ベース層10は、SiC層20に対向する側の主面10Aを含むように単結晶炭化珪素からなる単結晶層10Bを含んでいてもよい。このようにすることにより、炭化珪素基板1を用いて半導体装置を製造するに際し、製造プロセスの初期においては厚みの大きい取り扱い容易な状態を維持し、製造プロセスの途中で単結晶層以外のベース層10の領域である非単結晶領域10Cを除去してベース層10のうち単結晶層10Bのみを半導体装置の内部に残存させることができる。これにより、製造プロセスにおける炭化珪素基板1の取り扱いを容易にしつつ高品質な半導体装置を製造することができる。
【0076】
さらに、炭化珪素基板1においては、SiC層20のX線ロッキングカーブの半値幅は、単結晶層10BのX線ロッキングカーブの半値幅よりも小さくなっていてもよい。このように、ベース層10の単結晶層10Bに比べてX線ロッキングカーブの半値幅が小さい、すなわち結晶性の高いSiC層20を配置することにより、高品質な半導体装置を製造可能な炭化珪素基板1を得ることができる。また、炭化珪素基板1においては、SiC層20のマイクロパイプ密度は、単結晶層10Bのマイクロパイプ密度よりも低くなっていてもよい。また、炭化珪素基板1においては、SiC層20の転位密度は、単結晶層10Bの転位密度よりも低くなっていてもよい。また、炭化珪素基板1においては、SiC層20の貫通らせん転位密度は、単結晶層10Bの貫通らせん転位密度よりも小さくなっていてもよい。また、炭化珪素基板1においては、SiC層20の貫通刃状転位密度は、単結晶層10Bの貫通刃状転位密度よりも小さくなっていてもよい。また、炭化珪素基板1においては、SiC層20の基底面転位密度は、単結晶層10Bの基底面転位密度よりも小さくなっていてもよい。また、炭化珪素基板1においては、SiC層20の混合転位密度は、単結晶層10Bの混合転位密度よりも小さくなっていてもよい。また、炭化珪素基板1においては、SiC層20の積層欠陥密度は、単結晶層10Bの積層欠陥密度よりも小さくなっていてもよい。また、炭化珪素基板1においては、SiC層20の点欠陥密度は、単結晶層10Bの点欠陥密度よりも小さくなっていてもよい。
【0077】
このように、マイクロパイプ密度、貫通らせん転位密度、貫通刃状転位密度、基底面転位密度、混合転位密度、積層欠陥密度、点欠陥密度などの欠陥密度をベース層10の単結晶層10Bに比べて低減したSiC層20を配置することにより、高品質な半導体装置を製造可能な炭化珪素基板1を得ることができる。
【0078】
また、上記炭化珪素基板1においては、SiC層20の主面20Aは、{0001}面に対するオフ角が50°以上65°以下となっていてもよい。このような炭化珪素基板1を用いてMOSFETを作製することにより、チャネル領域における界面準位の形成が低減され、オン抵抗が低減されたMOSFETを得ることができる。一方、製造の容易性を考慮して、SiC層20の主面20Aは、{0001}面であってもよい。
【0079】
また、SiC層20の主面20Aのオフ方位と<1−100>方向とのなす角は5°以下となっていてもよい。<1−100>方向は、炭化珪素基板における代表的なオフ方位である。そして、基板の製造工程におけるスライス加工のばらつき等に起因したオフ方位のばらつきを5°以下とすることにより、炭化珪素基板1上への半導体層のエピタキシャル成長などを容易にすることができる。
【0080】
さらに、上記炭化珪素基板1においては、SiC層20の主面20Aの、<1−100>方向における{03−38}面に対するオフ角は−3°以上5°以下とすることが好ましい。これにより、炭化珪素基板1を用いてMOSFETを作製した場合におけるチャネル移動度を、より一層向上させることができる。
【0081】
上記炭化珪素基板1においては、SiC層20の主面20Aのオフ方位と<11−20>方向とのなす角は5°以下となっていてもよい。
【0082】
<11−20>も、炭化珪素基板における代表的なオフ方位である。そして、基板の製造工程におけるスライス加工のばらつき等に起因したオフ方位のばらつきを±5°とすることにより、炭化珪素基板1上への半導体層のエピタキシャル成長などを容易にすることができる。
【0083】
また、炭化珪素基板1においては、SiC層20はベース層10とは別の単結晶炭化珪素からなっていてもよい。
【0084】
次に、上記炭化珪素基板1の製造方法の一例について説明する。図3を参照して、本実施の形態における炭化珪素基板の製造方法においては、まず、工程(S10)として基板準備工程が実施される。この工程(S10)では、図1を参照して、たとえば単結晶炭化珪素からなるベース基板10およびSiC基板20が準備される。ベース基板10は、本実施の形態における炭化珪素源である。また、SiC基板20に含まれる不可避不純物の濃度は、ベース基板10に含まれる不可避不純物の濃度よりも低い。
【0085】
このとき、SiC基板20の主面は、この製造方法により得られるSiC層20の主面20Aとなることから(図1参照)、所望の主面20Aの面方位に合わせて、SiC基板20の主面の面方位を選択する。ここでは、たとえば主面が{03−38}面であるSiC基板20が準備される。また、ベース基板10には、たとえば導電型決定不純物の濃度が2×1019cm−3よりも大きい基板を採用することができる。そして、SiC基板20には、導電型決定不純物の濃度が5×1018cm−3よりも大きく2×1019cm−3よりも小さい基板を採用することができる。
【0086】
次に、工程(S20)として基板平坦化工程が実施される。この工程(S20)では、後述する工程(S30)において互いに接触すべきベース基板10およびSiC基板20の主面(接合面)が、たとえば研磨により平坦化される。なお、この工程(S20)は必須の工程ではないが、これを実施しておくことにより、互いに対向するベース基板10とSiC基板20との間の隙間が小さくなってベース基板10とSiC基板20との間隔が均一となるため、後述する工程(S40)において接合面内での反応(接合)の均一性が向上する。その結果、ベース基板10とSiC基板20とをより確実に接合することができる。また、一層確実にベース基板10とSiC基板20とを接合するためには、上記接合面の面粗さRaは100nm未満であることが好ましく、50nm未満であることが好ましい。さらに、接合面の面粗さRaを10nm未満とすることにより、さらに確実な接合を達成することができる。
【0087】
一方、工程(S20)を省略し、互いに接触すべきベース基板10およびSiC基板20の主面を研磨することなく工程(S30)が実施されてもよい。これにより、炭化珪素基板1の製造コストを低減することができる。また、ベース基板10およびSiC基板20の作製時におけるスライスなどにより形成された表面付近のダメージ層を除去する観点から、たとえばエッチングによって当該ダメージ層が除去される工程が上記工程(S20)に代えて、あるいは上記工程(S20)の後に実施された上で、後述する工程(S30)が実施されてもよい。
【0088】
次に、工程(S30)として、積層工程が実施される。この工程(S30)では、ベース基板10の主面上に接触するようにSiC基板20が載置されて、積層基板が作製される。つまり、SiC基板20の一方の主面20Bに接触して面するように炭化珪素源としてのベース基板10が配置される(図1参照)。
【0089】
次に、工程(S40)として、接合工程が実施される。この工程(S40)では、上記積層基板が加熱されることにより、ベース基板10とSiC基板20とが接合される。これにより、SiC基板20の一方の主面20Bに接触するように、炭化珪素からなり、SiC基板20よりも不可避不純物の濃度が高いベース層10が形成される。また、SiC基板20は、本実施の形態におけるSiC層20となる(図1参照)。
【0090】
次に、工程(S91)として裏面研磨工程が実施される。この工程(S91)では、ベース層10のSiC基板20とは反対側の主面10Dが研磨される。この工程(S91)は必須の工程ではないが、これを実施することにより、後工程である工程(S92)における被覆層の形成が容易となる。
【0091】
次に、工程(S92)として被覆層形成工程が実施される。この工程(S92)では、ベース層10のSiC層20とは反対側の主面10D上に、炭化珪素からなり、ベース層10よりも不可避不純物の濃度が低い被覆層90が形成される。以上のプロセスにより、実施の形態1における炭化珪素基板1を容易に製造することができる。また、必要に応じて工程(S93)として表面研磨工程が実施されてもよい。この工程(S93)では、SiC層20のベース層10とは反対側の主面20Aが研磨される。この工程(S93)は必須の工程ではないが、これを実施することによりSiC層20の主面20A上へのエピタキシャル成長層の形成が容易となる。
【0092】
また、上記炭化珪素基板上に単結晶炭化珪素をエピタキシャル成長させて、SiC層20の主面20A上にエピタキシャル成長層30を形成してもよい。これにより、図2に示す炭化珪素基板2を製造することができる。
【0093】
ここで、工程(S30)において作製された積層基板においては、ベース基板10とSiC基板20との間に形成される隙間が100μm以下となっていることが好ましい。ベース基板10およびSiC基板20には、その平坦性が高い場合でも、わずかな反り、うねりなどが存在する。そのため、積層基板においては、ベース基板10とSiC基板20との間に隙間が形成される。そして、この隙間が100μmを超えると、ベース基板10とSiC基板20との接合状態が不均一となるおそれがある。したがって、ベース基板10とSiC基板20との間に形成される隙間を100μm以下とすることにより、ベース基板10とSiC基板20との均一な接合をより確実に達成することができる。
【0094】
また、工程(S40)では、大気雰囲気を減圧することにより得られた雰囲気中において上記積層基板が加熱されてもよい。これにより、炭化珪素基板1の製造コストを低減することができる。さらに、工程(S40)においては、炭化珪素の昇華温度以上の温度域に上記積層基板が加熱されることが好ましい。これにより、ベース基板10とSiC基板20とをより確実に接合することができる。特に、積層基板におけるベース基板10とSiC基板20との間に形成される隙間を100μm以下としておくことにより、炭化珪素の昇華による均質な接合を達成することができる。この場合、工程(S20)を省略し、互いに接触すべきベース基板10およびSiC基板20の主面を研磨することなく工程(S30)が実施された場合でも、ベース基板10とSiC基板20とを容易に接合することができる。
【0095】
また、工程(S40)における積層基板の加熱温度は1800℃以上2500℃以下であることが好ましい。加熱温度が1800℃よりも低い場合、ベース基板10とSiC基板20との接合に長時間を要し、炭化珪素基板1の製造効率が低下する。一方、加熱温度が2500℃を超えると、ベース基板10およびSiC基板20の表面が荒れ、作製される炭化珪素基板1における結晶欠陥の発生が多くなるおそれがある。炭化珪素基板1における欠陥の発生を一層抑制しつつ製造効率を向上させるためには、工程(S40)における積層基板の加熱温度は1900℃以上2100℃以下であることが好ましい。また、この工程(S40)では、10−1Paよりも高く10Paよりも低い圧力下において上記積層基板が加熱されてもよい。これにより、簡素な装置により上記接合を実施することが可能になるとともに比較的短時間で接合を実施するための雰囲気を得ることが可能となり、炭化珪素基板1の製造コストを低減することができる。また、工程(S40)における加熱時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気であってもよい。そして、不活性ガス雰囲気を採用する場合、当該雰囲気は、アルゴン、ヘリウムおよび窒素からなる群から選択される少なくとも1つを含む不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
【0096】
また、工程(S92)においては、被覆層90はCVDエピタキシャル成長により形成されてもよい。これにより、ベース層10との密着性に優れた被覆層90を形成することができる。なお、被覆層90の形成方法は、CVDエピタキシャル成長法に限られず、たとえば昇華法、分子線ビームエピタキシー(Molecular Beam Epitaxy;MBE)法、スパッタリング法などを採用することができる。
【0097】
(実施の形態2)
次に、本発明の他の実施の形態である実施の形態2について説明する。図1を参照して、実施の形態2における炭化珪素基板1は、実施の形態1における炭化珪素基板1と基本的には同様の構造を有し、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態2における炭化珪素基板1は、その製造方法において実施の形態1の場合とは異なっている。
【0098】
図4を参照して、実施の形態2における炭化珪素基板1の製造方法においては、まず、工程(S10)として基板準備工程が実施される。この工程(S10)では、実施の形態1の場合と同様にSiC基板が準備されるとともに、炭化珪素からなる原料基板が準備される。
【0099】
次に、図4を参照して、工程(S50)として近接配置工程が実施される。この工程(S50)では、図5を参照して、互いに対向するように配置された第1ヒータ81および第2ヒータ82により、それぞれSiC基板20および原料基板11が保持される。すなわち、SiC基板20の一方の主面20Bに面するように炭化珪素源である原料基板11が配置される。
【0100】
ここで、SiC基板20と原料基板11との間隔の適正な値は、後述する工程(S60)における加熱時の昇華ガスの平均自由行程に関係していると考えられる。具体的には、SiC基板20と原料基板11との間隔の平均値は、後述する工程(S60)における加熱時の昇華ガスの平均自由行程よりも小さくなるように設定することができる。たとえば圧力1Pa、温度2000℃の下では、原子、分子の平均自由行程は、厳密には原子半径、分子半径に依存するが、おおよそ数〜数十cm程度であり、よって現実的には上記間隔を数cm以下とすることが好ましい。より具体的には、SiC基板20と原料基板11とは、1μm以上1cm以下の間隔をおいて互いにその主面が対向するように近接して配置される。さらに、上記間隔の平均値が1cm以下とされることにより、後述する工程(S60)において形成されるベース層10の膜厚分布を小さくすることができる。さらに、上記間隔の平均値が1mm以下とされることにより、後述する工程(S60)において形成されるベース層10の膜厚分布を一層小さくすることができる。また、上記間隔の平均値が1μm以上とされることにより、炭化珪素が昇華する空間を十分に確保することができる。なお、上記昇華ガスは、固体炭化珪素が昇華することによって形成されるガスであって、たとえばSi、SiCおよびSiCを含む。
【0101】
次に、工程(S60)として昇華工程が実施される。この工程(S60)では、第1ヒータ81によってSiC基板20が所定の基板温度まで加熱される。また、第2ヒータ82によって原料基板11が所定の原料温度まで加熱される。このとき、原料基板11が原料温度まで加熱されることによって、原料基板11の表面から炭化珪素が昇華する。一方、基板温度は原料温度よりも低く設定される。具体的には、たとえば基板温度は原料温度よりも1℃以上100℃以下程度低く設定される。基板温度は、たとえば1800℃以上2500℃以下である。これにより、図6に示すように、原料基板11から昇華して気体となった炭化珪素は、SiC基板20の表面に到達して固体となり、ベース層10を形成する。そして、この状態を維持することにより、図7に示すように原料基板11を構成する炭化珪素が全て昇華してSiC基板20の表面上に移動する。これにより、工程(S60)が完了する。その後、ベース層10が形成されたSiC基板20が第1ヒータ81から取り外され、実施の形態1の場合と同様に必要に応じて工程(S91)が実施された上で、工程(S92)が実施される。以上のプロセスにより、SiC基板20をSiC層20として備えた図1に示す炭化珪素基板1が完成する。また、実施の形態1の場合と同様に、必要に応じて工程(S93)が実施されてもよい。
【0102】
(実施の形態3)
次に、本発明のさらに他の実施の形態である実施の形態3について説明する。図8を参照して、実施の形態3における炭化珪素基板1は、基本的には実施の形態1における炭化珪素基板1と同様の構成を有し、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態3における炭化珪素基板1は、SiC層20が平面的に見て複数並べて配置されている点において、実施の形態1の場合とは異なっている。
【0103】
すなわち、図8を参照して、実施の形態3の炭化珪素基板1においては、SiC層20は、平面的に見て複数個並べて配置されている。すなわち、SiC層20は、ベース層10の主面10Aに沿って複数並べて配置されている。より具体的には、複数のSiC層20は、ベース基板10上において隣接するSiC層20同士が互いに接触するように、マトリックス状に配置されている。これにより、本実施の形態における炭化珪素基板1は、高品質なSiC層20を有する大口径な基板として取り扱うことが可能な炭化珪素基板1となっている。そして、この炭化珪素基板1を用いることにより、半導体装置の製造プロセスを効率化することができる。また、図8を参照して、隣り合うSiC層20の端面20Cは、当該SiC層20の主面20Aに対し実質的に垂直となっている。これにより、本実施の形態の炭化珪素基板1は容易に製造可能となっている。なお、実施の形態3における炭化珪素基板1は、実施の形態1における工程(S30)において、端面20Cが主面20Aに対して実質的に垂直な複数個のSiC基板20をベース基板10上に平面的に並べて配置することにより、もしくは実施の形態2における工程(S50)において、第1ヒータ81に端面20Cが主面20Aに対して実質的に垂直な複数個のSiC基板20を平面的に並べた状態で保持させることにより、実施の形態1もしくは実施の形態2の場合と同様に製造することができる。
【0104】
(実施の形態4)
次に、本発明のさらに他の実施の形態である実施の形態4について説明する。図9を参照して、実施の形態4における炭化珪素基板1は、基本的には実施の形態1における炭化珪素基板1と同様の構成を有し、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態4における炭化珪素基板1は、ベース層10とSiC層20との間に中間層としてのアモルファスSiC層40が形成されている点において、実施の形態1の場合とは異なっている。
【0105】
すなわち、実施の形態4における炭化珪素基板1においては、ベース層10とSiC層20との間に、非晶質炭化珪素からなる中間層としてのアモルファスSiC層40が配置されている。そして、ベース層10とSiC層20とは、このアモルファスSiC層40により接続されている。このアモルファスSiC層40の存在により、不可避不純物や導電型決定不純物の濃度の異なるベース層10とSiC層20とを積層した炭化珪素基板1を容易に提供することができる。
【0106】
次に、実施の形態4における炭化珪素基板1の製造方法について説明する。図10を参照して、実施の形態4における炭化珪素基板1の製造方法では、まず、工程(S10)として基板準備工程が実施の形態1の場合と同様に実施され、ベース基板10とSiC基板20とが準備される。ベース基板10としては、たとえば不可避不純物および導電型決定不純物の濃度がSiC基板20よりも高い基板が準備される。
【0107】
次に、工程(S11)としてSi層形成工程が実施される。この工程(S11)では、工程(S10)において準備されたベース基板10の一方の主面上に、たとえば厚み100nm程度のSi層が形成される。このSi層の形成は、たとえばスパッタリング法により実施することができる。
【0108】
次に、工程(S30)として積層工程が実施される。この工程(S30)では、工程(S11)において形成されたSi層上に、工程(S10)において準備されたSiC基板20が載置される。これにより、ベース基板10上にSi層を挟んでSiC基板20が積層された積層基板が得られる。
【0109】
次に、工程(S70)として加熱工程が実施される。この工程(S70)では、工程(S30)において作製された積層基板が、たとえば圧力1×10Paの水素ガスとプロパンガスとの混合ガス雰囲気中で、1500℃程度に加熱され、3時間程度保持される。これにより、上記Si層に、主にベース基板10およびSiC基板20からの拡散によって炭素が供給され、図9に示すようにアモルファスSiC層40が形成される。これにより、工程(S70)が完了する。その後、実施の形態1の場合と同様に必要に応じて工程(S91)が実施された上で、工程(S92)が実施される。以上のプロセスにより、SiC基板20をSiC層20として備えた図9に示す炭化珪素基板1が完成する。また、実施の形態1の場合と同様に、必要に応じて工程(S93)が実施されてもよい。以上の手順により、不可避不純物や導電型決定不純物の濃度の異なるベース層10とSiC層20とをアモルファスSiC層40により接続した実施の形態4における炭化珪素基板1を容易に製造することができる。
【0110】
(実施の形態5)
次に、本発明のさらに他の実施の形態である実施の形態5について説明する。図11を参照して、実施の形態5における炭化珪素基板1は、基本的には実施の形態1における炭化珪素基板1と同様の構成を有し、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態5における炭化珪素基板1は、ベース層10とSiC層20との間に中間層としてのオーミックコンタクト層50が形成されている点において、実施の形態1の場合とは異なっている。
【0111】
すなわち、実施の形態5における炭化珪素基板1においては、ベース層10とSiC層20との間に、金属層の少なくとも一部がシリサイド化されて形成された中間層としてのオーミックコンタクト層50が配置されている。そして、ベース層10とSiC層20とは、このオーミックコンタクト層50により接続されている。このオーミックコンタクト層50の存在により、不可避不純物や導電型決定不純物の濃度の異なるベース層10とSiC層20とを積層した炭化珪素基板1を容易に提供することができる。
【0112】
次に、実施の形態5における炭化珪素基板1の製造方法について説明する。図12を参照して、実施の形態5における炭化珪素基板1の製造方法では、まず、工程(S10)として基板準備工程が実施の形態1の場合と同様に実施され、ベース基板10とSiC基板20とが準備される。ベース基板10としては、たとえば不可避不純物および導電型決定不純物の濃度がSiC基板20よりも高い基板が準備される。
【0113】
次に、工程(S12)として金属層形成工程が実施される。この工程(S12)では、工程(S10)において準備されたベース基板10の一方の主面上に、たとえば金属を蒸着することにより、金属層が形成される。この金属層は、加熱されることによりシリサイドを形成する金属、たとえばニッケル、モリブデン、チタン、アルミニウム、タングステンから選択される少なくとも1種以上を含んでいる。
【0114】
次に、工程(S30)として積層工程が実施される。この工程(S30)では、工程(S12)において形成された金属層上に、工程(S10)において準備されたSiC基板20が載置される。これにより、ベース基板10上に金属層を挟んでSiC基板20が積層された積層基板が得られる。
【0115】
次に、工程(S70)として加熱工程が実施される。この工程(S70)では、工程(S30)において作製された積層基板が、たとえばアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中において1000℃程度に加熱される。これにより、上記金属層の少なくとも一部(ベース基板10と接触する領域およびSiC基板と接触する領域)がシリサイド化され、オーミックコンタクト層50が形成される。これにより、工程(S70)が完了する。その後、実施の形態1の場合と同様に必要に応じて工程(S91)が実施された上で、工程(S92)が実施される。以上のプロセスにより、SiC基板20をSiC層20として備えた図11に示す炭化珪素基板1が完成する。また、実施の形態1の場合と同様に、必要に応じて工程(S93)が実施されてもよい。以上の手順により、不可避不純物や導電型決定不純物の濃度の異なるベース層10とSiC層20とをオーミックコンタクト層50により接続した実施の形態5における炭化珪素基板1を容易に製造することができる。
【0116】
(実施の形態6)
次に、本発明のさらに他の実施の形態である実施の形態6について説明する。図13を参照して、実施の形態6における炭化珪素基板1は、基本的には実施の形態1における炭化珪素基板1と同様の構成を有し、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態6における炭化珪素基板1は、ベース層10とSiC層20との間に中間層としてのカーボン層60が形成されている点において、実施の形態1の場合とは異なっている。
【0117】
すなわち、図13を参照して、実施の形態6における炭化珪素基板1においては、ベース層10とSiC層20との間に中間層としてのカーボン層60が形成されている点において、実施の形態1の場合とは異なっている。そして、ベース層10とSiC層20とは、このカーボン層60により接続されている。このカーボン層60の存在により、不可避不純物や導電型決定不純物の濃度の異なるベース層10とSiC層20とを積層した炭化珪素基板1を容易に作製することができる。
【0118】
次に、実施の形態6における炭化珪素基板1の製造方法について説明する。図14を参照して、まず工程(S10)が実施の形態1と同様に実施された後、必要に応じて工程(S20)が実施の形態1と同様に実施される。
【0119】
次に、工程(S25)として接着剤塗布工程が実施される。この工程(S25)では、図15を参照して、たとえばベース基板10の主面上にカーボン接着剤が塗布されることにより、前駆体層61が形成される。カーボン接着剤として、たとえば樹脂と、黒鉛微粒子と、溶剤とからなるものを採用することができる。ここで、樹脂としては、加熱されることにより難黒鉛化炭素となる樹脂、たとえばフェノール樹脂などを採用することができる。また、溶剤としては、たとえばフェノール、ホルムアルデヒド、エタノールなどを採用することができる。さらに、カーボン接着剤の塗布量は、10mg/cm以上40mg/cm以下とすることが好ましく、20mg/cm以上30mg/cm以下とすることがより好ましい。また、塗布されるカーボン接着剤の厚みは100μm以下とすることが好ましく、50μm以下とすることがより好ましい。
【0120】
次に、工程(S30)として、積層工程が実施される。この工程(S30)では、図15を参照して、ベース基板10の主面上に接触して形成された前駆体層61上に接触するようにSiC基板20が載置されて、積層基板が作製される。
【0121】
次に、工程(S80)として、プリベーク工程が実施される。この工程(S80)では、上記積層基板が加熱されることにより、前駆体層61を構成するカーボン接着剤から溶剤成分が除去される。具体的には、たとえば上記積層基板に対して厚み方向に荷重を負荷しつつ、積層基板を溶剤成分の沸点を超える温度域まで徐々に加熱する。この加熱は、クランプなどを用いてベース基板10とSiC基板20とが圧着されつつ実施されることが好ましい。また、できるだけ時間をかけてプリベーク(加熱)が実施されることにより、接着剤からの脱ガスが進行し、接着の強度を向上させることができる。
【0122】
次に、工程(S90)として、焼成工程が実施される。この工程(S90)では、工程(S80)において加熱されて前駆体層61がプリベークされた積層基板が高温、好ましくは900℃以上1100℃以下、たとえば1000℃に加熱され、好ましくは10分以上10時間以下、たとえば1時間保持されることにより前駆体層61が焼成される。焼成時の雰囲気としては、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気が採用され、雰囲気の圧力はたとえば大気圧とすることができる。これにより、前駆体層61が炭素からなるカーボン層60となり、工程(S90)が完了する。その後、実施の形態1の場合と同様に必要に応じて工程(S91)が実施された上で、工程(S92)が実施される。以上のプロセスにより、ベース基板10をベース層10として備え、SiC基板20をSiC層20として備えた図13に示す炭化珪素基板1が完成する。また、実施の形態1の場合と同様に、必要に応じて工程(S93)が実施されてもよい。以上の手順により、不可避不純物や導電型決定不純物の濃度の異なるベース層10とSiC層20とをカーボン層60により接続した実施の形態6における炭化珪素基板1を容易に製造することができる。
【0123】
なお、上記実施の形態4〜6においては、中間層としてアモルファスSiC層40、オーミックコンタクト層50、カーボン層60を採用する場合について説明したが、上記中間層はこれに限られず、ベース層10とSiC層20とを接続可能な他の中間層を採用することができる。
【0124】
また、上記炭化珪素基板1においては、SiC層20を構成する炭化珪素の結晶構造は六方晶系であることが好ましく、4H−SiCであることがより好ましい。また、ベース層10とSiC層20とは(複数のSiC層20を有する場合、隣接するSiC層20同士についても)、同一の結晶構造を有する炭化珪素単結晶からなっていることが好ましい。このように、同一の結晶構造の炭化珪素単結晶をベース層10およびSiC層20に採用することにより、熱膨張係数などの物理的性質が統一され、炭化珪素基板1および当該炭化珪素基板1を用いた半導体装置の製造プロセスにおいて、炭化珪素基板1の反りや、ベース層10とSiC層20との分離、あるいはSiC層20同士の分離の発生を抑制することができる。
【0125】
さらに、SiC層20とベース層10とは(複数のSiC層20を有する場合、隣接するSiC層20同士についても)、それぞれを構成する炭化珪素単結晶のc軸のなす角が1°未満であることが好ましく、0.1°未満であることがより好ましい。さらに、当該炭化珪素単結晶のc面が面内において回転していないことが好ましい。
【0126】
また、ベース層(ベース基板)10の口径は、2インチ以上であることが好ましく、6インチ以上であることがより好ましい。さらに、炭化珪素基板1の厚みは、200μm以上1000μm以下であることが好ましく、300μm以上700μm以下であることがより好ましい。また、SiC層20の抵抗率は50mΩcm以下であることが好ましく、20mΩcm以下であることがより好ましい。
【0127】
(実施の形態7)
次に、上記本発明の炭化珪素基板を用いて作製される半導体装置の一例を実施の形態7として説明する。図16を参照して、本発明による半導体装置101は、縦型DiMOSFET(Double Implanted MOSFET)であって、基板102、バッファ層121、耐圧保持層122、p領域123、n領域124、p領域125、酸化膜126、ソース電極111および上部ソース電極127、ゲート電極110および基板102の裏面側に形成されたドレイン電極112を備える。具体的には、導電型がn型の炭化珪素からなる基板102の表面上に、炭化珪素からなるバッファ層121が形成されている。基板102としては、上記実施の形態1〜6において説明した炭化珪素基板1を含む本発明の炭化珪素基板が採用される。そして、上記実施の形態1〜6の炭化珪素基板1が採用される場合、バッファ層121は、炭化珪素基板1のSiC層20上に形成される。バッファ層121は導電型がn型であり、その厚みはたとえば0.5μmである。また、バッファ層121におけるn型の導電型決定不純物の濃度はたとえば5×1017cm−3とすることができる。このバッファ層121上には耐圧保持層122が形成されている。この耐圧保持層122は、導電型がn型の炭化珪素からなり、たとえばその厚みは10μmである。また、耐圧保持層122におけるn型の導電型決定不純物の濃度としては、たとえば5×1015cm−3という値を用いることができる。
【0128】
この耐圧保持層122の表面には、導電型がp型であるp領域123が互いに間隔を隔てて形成されている。p領域123の内部においては、p領域123の表面層にn領域124が形成されている。また、このn領域124に隣接する位置には、p領域125が形成されている。一方のp領域123におけるn領域124上から、p領域123、2つのp領域123の間において露出する耐圧保持層122、他方のp領域123および当該他方のp領域123におけるn領域124上にまで延在するように、酸化膜126が形成されている。酸化膜126上にはゲート電極110が形成されている。また、n領域124およびp領域125上にはソース電極111が形成されている。このソース電極111上には上部ソース電極127が形成されている。そして、基板102において、バッファ層121が形成された側の表面とは反対側の面である裏面にドレイン電極112が形成されている。
【0129】
本実施の形態における半導体装置101においては、基板102として上記実施の形態1〜6において説明した炭化珪素基板1などの本発明の炭化珪素基板が採用される。すなわち、半導体装置101は、炭化珪素基板としての基板102と、基板102上にエピタキシャル成長により形成された半導体層としてのバッファ層121および耐圧保持層122と、耐圧保持層122上に形成されたソース電極111とを備えている。そして、当該基板102は、炭化珪素基板1などの本発明の炭化珪素基板である。ここで、上述のように、本発明の炭化珪素基板は、炭化珪素基板を用いた半導体装置の製造コストの低減を実現可能な炭化珪素基板である。そのため、そのため、半導体装置101は、製造コストが低減された半導体装置となっている。
【0130】
次に、図17〜図21を参照して、図16に示した半導体装置101の製造方法を説明する。図17を参照して、まず、炭化珪素基板準備工程(S110)を実施する。ここでは、たとえば(03−38)面が主面となった炭化珪素からなる基板102(図18参照)を準備する。この基板102としては、上記実施の形態1〜6において説明した製造方法により製造された炭化珪素基板1を含む上記本発明の炭化珪素基板が準備される。
【0131】
また、この基板102(図18参照)としては、たとえば導電型がn型であり、基板抵抗が0.02Ωcmといった基板を用いてもよい。
【0132】
次に、図17に示すように、エピタキシャル層形成工程(S120)を実施する。具体的には、基板102の表面上にバッファ層121を形成する。このバッファ層121は、基板102として採用される炭化珪素基板1のSiC層20の主面20A上(図1、図8、図9、図11、図13参照)に形成される。バッファ層121としては、導電型がn型の炭化珪素からなり、たとえばその厚みが0.5μmのエピタキシャル層を形成する。バッファ層121における導電型決定不純物の濃度は、たとえば5×1017cm−3といった値を用いることができる。そして、このバッファ層121上に、図18に示すように耐圧保持層122を形成する。この耐圧保持層122としては、導電型がn型の炭化珪素からなる層をエピタキシャル成長法によって形成する。この耐圧保持層122の厚みとしては、たとえば10μmといった値を用いることができる。また、この耐圧保持層122におけるn型の導電型決定不純物の濃度としては、たとえば5×1015cm−3といった値を用いることができる。
【0133】
次に、図17に示すように注入工程(S130)を実施する。具体的には、フォトリソグラフィおよびエッチングを用いて形成した酸化膜をマスクとして用いて、導電型がp型の導電型決定不純物を耐圧保持層122に注入することにより、図19に示すようにp領域123を形成する。また、用いた酸化膜を除去した後、再度新たなパターンを有する酸化膜を、フォトリソグラフィおよびエッチングを用いて形成する。そして、当該酸化膜をマスクとして、n型の導電型決定不純物を所定の領域に注入することにより、n領域124を形成する。また、同様の手法により、導電型がp型の導電型決定不純物を注入することにより、p領域125を形成する。その結果、図19に示すような構造を得る。
【0134】
このような注入工程の後、活性化アニール処理を行なう。この活性化アニール処理としては、たとえばアルゴンガスを雰囲気ガスとして用いて、加熱温度1700℃、加熱時間30分といった条件を用いることができる。
【0135】
次に、図17に示すようにゲート絶縁膜形成工程(S140)を実施する。具体的には、図20に示すように、耐圧保持層122、p領域123、n領域124、p領域125上を覆うように酸化膜126を形成する。この酸化膜126を形成するための条件としては、たとえばドライ酸化(熱酸化)を行なってもよい。このドライ酸化の条件としては、加熱温度を1200℃、加熱時間を30分といった条件を用いることができる。このとき、基板102として用いられる本発明の炭化珪素基板には被覆層が形成されているため、ベース層における不可避不純物の濃度が高い場合でも、当該不可避不純物がベース層から離脱して酸化膜126に混入することが抑制される。その結果、酸化膜126中の固定電荷あるいは可動イオンの増加が抑制され、製造される半導体装置101(MOSFET)の閾値電圧が安定する。
【0136】
その後、図17に示すように窒素アニール工程(S150)を実施する。具体的には、雰囲気ガスを一酸化窒素(NO)として、アニール処理を行なう。アニール処理の温度条件としては、たとえば加熱温度を1100℃、加熱時間を120分とする。この結果、酸化膜126と下層の耐圧保持層122、p領域123、n領域124、p領域125との間の界面近傍に窒素原子が導入される。また、この一酸化窒素を雰囲気ガスとして用いたアニール工程の後、さらに不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスを用いたアニールを行なってもよい。具体的には、アルゴンガスを雰囲気ガスとして用いて、加熱温度を1100℃、加熱時間を60分といった条件を用いてもよい。
【0137】
次に、図17に示すように電極形成工程(S160)を実施する。具体的には、酸化膜126上にフォトリソグラフィ法を用いてパターンを有するレジスト膜を形成する。当該レジスト膜をマスクとして用いて、n領域124およびp領域125上に位置する酸化膜の部分をエッチングにより除去する。この後、レジスト膜上および当該酸化膜126において形成された開口部内部においてn領域124およびp領域125と接触するように、金属などの導電体膜を形成する。その後、レジスト膜を除去することにより、当該レジスト膜上に位置していた導電体膜を除去(リフトオフ)する。ここで、導電体としては、たとえばニッケル(Ni)を用いることができる。この結果、図21に示すように、ソース電極111およびドレイン電極112を得ることができる。なお、ここでアロイ化のための熱処理を行なうことが好ましい。具体的には、たとえば雰囲気ガスとして不活性ガスであるアルゴン(Ar)ガスを用い、加熱温度を950℃、加熱時間を2分といった熱処理(アロイ化処理)を行なう。
【0138】
その後、ソース電極111上に上部ソース電極127(図16参照)を形成する。また、酸化膜126上にゲート電極110(図16参照)を形成する。このようにして、図16に示す半導体装置101を得ることができる。つまり、半導体装置101は、炭化珪素基板1のSiC層20上にエピタキシャル層および電極を形成することにより作製される。
【0139】
なお、上記実施の形態7においては、本発明の炭化珪素基板を用いて作製可能な半導体装置の一例として、縦型MOSFETに関して説明したが、作製可能な半導体装置はこれに限られない。たとえばJFET(Junction Field Effect Transistor;接合型電界効果トランジスタ)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、ショットキーバリアダイオードなど、種々の半導体装置が本発明の炭化珪素基板を用いて作製可能である。また、上記実施の形態7においては、(03−38)面を主面とする炭化珪素基板上に動作層として機能するエピタキシャル層を形成して半導体装置が作製される場合について説明したが、上記主面として採用可能な結晶面はこれに限られず、(0001)面を含めて用途に応じた任意の結晶面を上記主面として採用することができる。
【0140】
さらに、上記主面(炭化珪素基板1のSiC基板(SiC層)20の主面20A)として、<01−10>方向における(0−33−8)面に対するオフ角が−3°以上+5°以下である主面を採用することにより、炭化珪素基板を用いてMOSFET等を作製した場合におけるチャネル移動度を、より一層向上させることができる。ここで、六方晶の単結晶炭化珪素の(0001)面はシリコン面、(000−1)面はカーボン面と定義される。また、「<01−10>方向における(0−33−8)面に対するオフ角」とは、<000−1>方向およびオフ方位の基準としての<01−10>方向の張る平面への上記主面の法線の正射影と、(0−33−8)面の法線とのなす角度であり、その符号は、上記正射影が<01−10>方向に対して平行に近づく場合が正であり、上記正射影が<000−1>方向に対して平行に近づく場合が負である。そして、上記<01−10>方向における(0−33−8)面に対するオフ角が−3°以上+5°以下である主面とは、当該主面が炭化珪素結晶において上記条件を満たすカーボン面側の面を意味する。なお、本願において(0−33−8)面は、結晶面を規定するための軸の設定により表現が異なる等価なカーボン面側の面を含むとともに、シリコン面側の面を含まない。
【実施例】
【0141】
本発明の炭化珪素基板を実際に作製し、ベース層および被覆層における代表的な不可避不純物の濃度を確認する実験を行なった。まず、実施の形態1と同様の手順により図1に示す炭化珪素基板1と同様の構造を有する炭化珪素基板を作製した。被覆層90は、CVDエピタキシャル成長により形成した。そして、図1を参照して、ベース層10の主面10Dおよび被覆層90の主面90Aにおける不可避不純物の濃度をSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometer)を用いて分析した。分析結果を表1に示す。
【0142】
【表1】

【0143】
表1においては、ベース層10の主面10Dおよび被覆層90の主面90AのそれぞれにおけるFe(鉄)、Al(アルミニウム)、Ca(カルシウム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)およびB(硼素)の濃度が示されている。濃度の単位はcm−3である。また、表1中における「N.D.」との表示は、濃度が検出限界以下であったことを示している。
【0144】
表1に示すように、ベース層の不可避不純物の濃度が高い場合でも、被覆層の表面における不可避不純物の濃度は、炭化珪素基板が半導体装置の製造に用いられても半導体装置の特性に影響を与えない程度にまで大幅に低下していることが分かる。このことから、本発明の炭化珪素基板によれば、被覆層が形成されていることにより、ベース層の主面からの不可避不純物の離脱に起因した半導体装置への不可避不純物の混入が十分に抑制可能であることが確認される。
【0145】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明の炭化珪素基板、半導体装置、炭化珪素基板の製造方法は、製造コストの低減が求められる炭化珪素基板、半導体装置、炭化珪素基板の製造方法に、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0147】
1,2 炭化珪素基板、10 ベース層(ベース基板)、10A,10D 主面、10B 単結晶層、10C 非単結晶領域、11 原料基板、20 SiC層(SiC基板)、20A,20B 主面、20C 端面、30 エピタキシャル成長層、40 アモルファスSiC層、50 オーミックコンタクト層、60 カーボン層、61 前駆体層、81 第1ヒータ、82 第2ヒータ、90 被覆層、90A 主面、101 半導体装置、102 基板、110 ゲート電極、111 ソース電極、112 ドレイン電極、121 バッファ層、122 耐圧保持層、123 p領域、124 n領域、125 p領域、126 酸化膜、127 上部ソース電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素からなるベース層と、
単結晶炭化珪素からなり、前記ベース層上に配置され、前記ベース層よりも不可避不純物の濃度が低いSiC層と、
炭化珪素からなり、前記ベース層の、前記SiC層とは反対側の主面上に形成され、前記ベース層よりも不可避不純物の濃度が低い被覆層とを備えた、炭化珪素基板。
【請求項2】
前記ベース層と前記被覆層とは導電型が同じである、請求項1に記載の炭化珪素基板。
【請求項3】
前記被覆層の導電型決定不純物の濃度は1×1018cm−3よりも高い、請求項1または2に記載の炭化珪素基板。
【請求項4】
前記ベース層の厚みは前記被覆層の厚みよりも大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化珪素基板。
【請求項5】
前記ベース層の導電型決定不純物の濃度は2×1019cm−3よりも大きく、
前記SiC層の導電型決定不純物の濃度は5×1018cm−3よりも大きく2×1019cm−3よりも小さい、請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭化珪素基板。
【請求項6】
前記SiC層上に形成され、単結晶炭化珪素からなるエピタキシャル成長層をさらに備え、
前記エピタキシャル成長層における積層欠陥密度は、前記ベース層における積層欠陥密度よりも小さくなっている、請求項5に記載の炭化珪素基板。
【請求項7】
前記ベース層に含まれる導電型決定不純物と、前記SiC層に含まれる導電型決定不純物とは異なっている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の炭化珪素基板。
【請求項8】
前記ベース層に含まれる導電型決定不純物は窒素またはリンであり、
前記SiC層に含まれる導電型決定不純物は窒素またはリンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の炭化珪素基板。
【請求項9】
前記SiC層は、平面的に見て複数並べて配置されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の炭化珪素基板。
【請求項10】
前記ベース層は単結晶炭化珪素からなり、
前記SiC層のX線ロッキングカーブの半値幅は、前記ベース層のX線ロッキングカーブの半値幅よりも小さくなっている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の炭化珪素基板。
【請求項11】
前記ベース層は単結晶炭化珪素からなり、
前記SiC層のマイクロパイプ密度は、前記ベース層のマイクロパイプ密度よりも低い、請求項1〜10のいずれか1項に記載の炭化珪素基板。
【請求項12】
前記ベース層は単結晶炭化珪素からなり、
前記SiC層の転位密度は、前記ベース層の転位密度よりも低い、請求項1〜11のいずれか1項に記載の炭化珪素基板。
【請求項13】
前記ベース層は、前記SiC層に対向する側の主面を含むように単結晶炭化珪素からなる単結晶層を含んでいる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の炭化珪素基板。
【請求項14】
前記SiC層のX線ロッキングカーブの半値幅は、前記単結晶層のX線ロッキングカーブの半値幅よりも小さくなっている、請求項13に記載の炭化珪素基板。
【請求項15】
前記SiC層のマイクロパイプ密度は、前記単結晶層のマイクロパイプ密度よりも低い、請求項13または14に記載の炭化珪素基板。
【請求項16】
前記SiC層の転位密度は、前記単結晶層の転位密度よりも低い、請求項13〜15のいずれか1項に記載の炭化珪素基板。
【請求項17】
前記SiC層の、前記ベース層とは反対側の主面は、{0001}面に対するオフ角が50°以上65°以下となっている、請求項1〜16のいずれか1項に記載の炭化珪素基板。
【請求項18】
前記SiC層における前記ベース層とは反対側の主面のオフ方位と<1−100>方向とのなす角は5°以下となっている、請求項17に記載の炭化珪素基板。
【請求項19】
前記SiC層における前記ベース層とは反対側の主面の、<1−100>方向における{03−38}面に対するオフ角は−3°以上5°以下である、請求項18に記載の炭化珪素基板。
【請求項20】
前記SiC層における前記ベース層とは反対側の主面のオフ方位と<11−20>方向とのなす角は5°以下となっている、請求項17に記載の炭化珪素基板。
【請求項21】
炭化珪素基板と、
前記炭化珪素基板上にエピタキシャル成長により形成された半導体層と、
前記半導体層上に形成された電極とを備え、
前記炭化珪素基板は、請求項1〜20のいずれか1項に記載の炭化珪素基板である、半導体装置。
【請求項22】
単結晶炭化珪素からなるSiC基板を準備する工程と、
前記SiC基板の一方の主面に面するように炭化珪素源を配置する工程と、
前記炭化珪素源を加熱することにより、前記SiC基板の一方の主面に接触するように炭化珪素からなり、前記SiC基板よりも不可避不純物の濃度が高いベース層を形成する工程と、
前記ベース層の前記SiC基板とは反対側の主面上に、炭化珪素からなり、前記ベース層よりも不可避不純物の濃度が低い被覆層を形成する工程とを備えた、炭化珪素基板の製造方法。
【請求項23】
前記被覆層はCVDエピタキシャル成長により形成される、請求項22に記載の炭化珪素基板の製造方法。
【請求項24】
前記被覆層を形成する工程よりも前に、前記ベース層の前記SiC基板とは反対側の主面を研磨する工程をさらに備えた、請求項22または23に記載の炭化珪素基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−243770(P2011−243770A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115027(P2010−115027)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】