説明

無線回路、集積回路装置及び電子機器

【課題】安定したデータ送信ができる無線回路、集積回路装置及び電子機器等を提供すること。
【解決手段】無線回路100は、電圧制御発振回路を有するPLL回路120を有し送信信号を生成して出力する送信信号生成回路110と、送信信号を増幅するパワーアンプ130と、周波数測定回路140とを含む。PLL回路120は、送信データ出力期間の前の期間ではクローズドループ動作に設定され、送信データ出力期間ではオープンループ動作に設定される。周波数測定回路140は、クローズドループ動作からオープンループ動作への切り換え時における送信信号の搬送波信号の周波数シフト量、及び送信データ出力期間における搬送波信号の周波数ドリフト量の少なくとも一方を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線回路、集積回路装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
Bluetooth(登録商標)などに代表される近距離無線通信システムでは、通信を行う端末の一方又は双方が移動しながら行う場合があり、その際には端末に内蔵された電源(乾電池等)を使用するために、電力消費の少ない通信方式が必要になる。そのための通信方式として、回路構成が単純で低消費電力化が見込める周波数変調方式が採用されている。このような周波数変調を行う回路として、電圧制御発振回路を送信データに基づいて直接制御して変調を行う回路が知られている。しかしこの回路は、送信データ出力期間ではPLL回路がオープンループ動作を行うため、トランジスターのリーク電流等の影響で送信周波数がドリフトするなどの問題があることが判明した。
【0003】
この課題に対して例えば特許文献1には、チャージポンプ回路のリーク電流を低減することで周波数ドリフトを抑える手法が開示されている。しかしながらこの手法では、回路構成が複雑になり、消費電力が増加するなどの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−312004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の幾つかの態様によれば、安定したデータ送信ができる無線回路、集積回路装置及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、電圧制御発振回路を有するPLL回路を有し、送信信号を生成して出力する送信信号生成回路と、前記送信信号を増幅するパワーアンプと、周波数測定回路とを含み、前記PLL回路は、送信データ出力期間の前の期間ではクローズドループ動作に設定され、前記送信データ出力期間ではオープンループ動作に設定され、前記周波数測定回路は、前記クローズドループ動作から前記オープンループ動作への切り換え時における前記送信信号の搬送波信号の周波数シフト量、及び前記送信データ出力期間における前記搬送波信号の周波数ドリフト量の少なくとも一方を測定する無線回路に関係する。
【0007】
本発明の一態様によれば、無線回路は、クローズドループ動作からオープンループ動作への切り換え時における送信信号の搬送波信号の周波数シフト量、及び送信データ出力期間における搬送波信号の周波数ドリフト量の少なくとも一方を測定することで、周波数シフト及び周波数ドリフトの少なくとも一方の情報を得ることが可能になる。これにより周波数シフト及び周波数ドリフトの少なくとも一方が発生した場合に、相手側の無線回路で受信周波数を補正することができるから、安定したデータ送信が可能になる。
【0008】
また本発明の一態様では、前記周波数測定回路は、前記送信信号から得られるクロック信号を用いて、前記PLL回路に入力される基準クロックの周期を計測することで、前記周波数シフト量及び前記周波数ドリフト量の少なくとも一方を測定してもよい。
【0009】
このようにすれば、周波数測定回路により、PLL回路に入力される基準クロックの周期を計測することで、周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報を得ることができる。
【0010】
また本発明の一態様では、前記周波数測定回路は、前記電圧制御発振回路の入力制御電圧を測定することで、前記周波数シフト量及び前記周波数ドリフト量の少なくとも一方を測定してもよい。
【0011】
このようにすれば、周波数測定回路により、電圧制御発振回路の入力制御電圧を測定することで、周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報を得ることができる。
【0012】
また本発明の一態様では、前記PLL回路は、フィードバックループに設けられ分周比が可変に設定される分周器を含み、前記周波数測定回路は、前記分周器の出力クロック信号と前記PLL回路に入力される基準クロックとの位相が一致した時の分周比に基づいて、前記周波数シフト量及び前記周波数ドリフト量の少なくとも一方を測定してもよい。
【0013】
このようにすれば、周波数測定回路により、分周器の出力クロック信号と基準クロックとの位相が一致した時の分周比に基づいて、周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報を得ることができる。
【0014】
また本発明の一態様では、前記PLL回路は、位相比較器と、ループフィルターと、前記位相比較器と前記ループフィルターとの間に設けられるスイッチ素子とを含み、前記スイッチ素子は、前記クローズドループ動作の期間ではオン状態であり、前記オープンループ動作の期間ではオフ状態であってもよい。
【0015】
このようにすれば、スイッチ素子のオン・オフを制御することで、PLL回路のクローズドループ動作とオープンループ動作とを切り換えることができる。
【0016】
また本発明の一態様では、前記周波数シフト量及び前記周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報を相手側の無線回路に送信してもよい。
【0017】
このようにすれば、受信側である相手側の無線回路は、送信側の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報を得ることができる。
【0018】
また本発明の一態様では、局所信号生成回路とミキサーとを有する受信回路を含み、前記局所信号生成回路は、相手側の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づいて周波数が設定される局所信号を出力してもよい。
【0019】
このようにすれば、受信回路は、相手側の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づいて局所信号の周波数を設定することができる。その結果、相手側の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づいて受信周波数を設定することができる。
【0020】
また本発明の一態様では、前記送信信号生成回路は、変調用制御電圧生成回路を含み、前記局所信号生成回路は、第2の電圧制御発振回路を有する第2のPLL回路を含み、前記変調用制御電圧生成回路は、送信信号生成時には、周波数変調用の制御電圧信号を、前記送信信号生成回路が有する前記PLL回路の前記電圧制御発振回路に出力し、前記受信回路の受信時には、相手側の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づく制御電圧信号を、前記局所信号生成回路が有する前記第2のPLL回路の前記第2の電圧制御発振回路に出力してもよい。
【0021】
このようにすれば、送信信号生成時には変調用制御電圧生成回路が出力する制御電圧信号を用いて周波数変調を行い、受信回路の受信時には相手側の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づいて出力される制御電圧信号を用いて局所信号の周波数を設定することができる。その結果、相手側の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づいて受信周波数を設定することができる。
【0022】
また本発明の一態様では、前記局所信号生成回路は、第2のPLL回路を含み、前記第2のPLL回路は、前記第2のPLL回路のフィードバックループに設けられ、分周比が可変に設定される第2の分周器を含み、前記第2の分周器の分周比が相手側の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づいて設定されてもよい。
【0023】
このようにすれば、第2のPLL回路の発振周波数が相手側の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づいて設定されるから、相手側の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づいて局所信号の周波数を設定することができる。その結果、相手側の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づいて受信周波数を設定することができる。
【0024】
また本発明の一態様では、前記送信信号生成回路は、前記電圧制御発振回路に出力する周波数変調用の制御電圧信号を生成する変調用制御電圧生成回路を含み、前記変調用制御電圧生成回路は、前記送信データ出力期間の前の期間において、擬似制御電圧信号を出力してもよい。
【0025】
このようにすれば、送信データ出力期間の前の期間において、不定の制御電圧信号などによらずに、擬似制御電圧信号による周波数変調を行うことができる。
【0026】
本発明の他の態様は、無線の受信信号を受信する受信回路を含み、前記受信回路は、前記受信信号を増幅する低雑音増幅器と、局所信号を出力する局所信号生成回路と、前記低雑音増幅器の出力信号と前記局所信号とをミキシングするミキサーとを含み、前記局所信号生成回路は、相手側の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づく周波数が設定される局所信号を出力することを特徴とする無線回路に関係する。
【0027】
このようにすれば、受信回路は、相手側の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づいて局所信号の周波数を設定することができる。その結果、相手側の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づいて受信周波数を設定することができる。
【0028】
本発明の他の態様は、上記に記載の無線回路を含む集積回路装置及び電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】無線回路の基本的な構成例。
【図2】PLL回路及び変調用制御電圧生成回路の構成例。
【図3】電圧制御発振回路の詳細な構成例。
【図4】図4(A)、図4(B)は制御電圧と発振周波数との関係の一例。
【図5】ループフィルターの構成例。
【図6】図6(A)、図6(B)は送信周波数の時間的変化を説明する図。
【図7】周波数測定回路の第1の構成例。
【図8】周波数測定回路の第2の構成例。
【図9】周波数測定回路の第3の構成例。
【図10】受信周波数を補正する動作の一例。
【図11】受信周波数を補正する動作の別の例。
【図12】集積回路装置の一例。
【図13】電子機器の一例。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0031】
1.無線回路
図1に本実施形態の無線回路100の基本的な構成例を示す。本実施形態の無線回路100は、送信信号生成回路110、パワーアンプ(PA)130、周波数測定回路140、受信回路200、基準クロック生成回路160及び制御回路170を含む。なお、本実施形態の無線回路は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えば図1の無線回路100には受信回路200が設けられているが、受信回路200を設けない構成とすることもできる。
【0032】
送信信号生成回路110は、PLL(Phase-Locked Loop)回路120及び変調用制御電圧生成回路150を含み、送信信号VTXを生成してパワーアンプ130に出力する。変調用制御電圧生成回路150は、周波数変調用の制御電圧信号VMを生成する。パワーアンプ130は、送信信号VTXを増幅してアンテナ180へ供給する。
【0033】
PLL回路120は、電圧制御発振回路123を有し、基準クロック生成回路160からの基準クロックRCKに基づいて所望の搬送周波数の信号を生成し、さらに変調用制御電圧生成回路150からの変調用制御電圧信号VMにより周波数変調を行う。PLL回路120は、送信データ出力期間の前の期間(搬送周波数設定期間)ではクローズドループ動作に設定され、送信データ出力期間ではオープンループ動作に設定される。
【0034】
周波数測定回路140は、クローズドループ動作からオープンループ動作への切り換え時の送信信号VTXの搬送波信号の周波数シフト量及び送信データ出力期間における搬送波信号の周波数ドリフト量の少なくとも一方を測定する。測定された周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報は、制御回路170の送信処理により相手側の無線回路に送信される。そして相手側の無線回路は、その情報に基づいて受信周波数を補正する。このようにすることで、送信側の無線回路において搬送波信号の周波数シフト又は周波数ドリフトが生じた場合に、受信側の無線回路において受信周波数を搬送周波数の変化に追随するよう補正することが可能になる。
【0035】
受信回路200は、低雑音増幅器(LNA)210、ミキサー220、局所信号生成回路230、フィルター240、検出回路250、復調回路260を含む。低雑音増幅器(LNA)210は、アンテナ180から入力される受信信号を増幅する。ミキサー220は、増幅された受信信号と局所信号生成回路230からの局所信号とのミキシング処理を行って、受信周波数から中間周波数への周波数変換を行う。局所信号生成回路230は、相手側の無線回路から受信した周波数シフト量又は周波数ドリフト量の情報に基づいて、局所信号の周波数を可変に設定する。フィルター240は、不要な周波数成分を除去して所望の信号を出力する。検出回路250は、フィルター240の出力信号を受けて所望波の信号強度を検出する。検出された信号強度に基づいて、低雑音増幅器(LNA)210の利得(ゲイン)が制御される。復調回路260は、所望波の信号を復調して必要なデータを取り出す。
【0036】
制御回路170は、基本的な送受信処理の制御などの他、周波数測定回路140により測定された周波数シフト量又は周波数ドリフト量を取得して相手側の無線回路へ送信する処理や、相手側の無線回路から受信した周波数シフト量又は周波数ドリフト量に基づいて受信周波数を補正する処理などの制御を行う。
【0037】
図2に、本実施形態のPLL回路120及び変調用制御電圧生成回路150の構成例を示す。PLL回路120は、位相比較器121、ループフィルター122、電圧制御発振回路123、分周器124、スイッチ素子SWAを含む。スイッチ素子SWAは、位相比較器121とループフィルター122との間に設けられ、クローズドループの期間ではオン状態であり、オープンループの期間ではオフ状態である。
【0038】
変調用制御電圧生成回路150は、D/A変換器151及びフィルター部152を含み、送信データDTXに基づいて、電圧制御発振回路123の変調用制御電圧信号入力ノードNBに対して、変調用制御電圧信号VMを出力する。また変調用制御電圧生成回路150は、送信データ出力期間の前の期間において、擬似制御電圧信号を出力する。
【0039】
D/A変換器151は、送信データDTXをデジタル値からアナログ値に変換し、フィルター部152はD/A変換器151の出力に対してフィルター処理を行う。
【0040】
図3に、本実施形態の電圧制御発振回路123の詳細な構成例を示す。本構成例の電圧制御発振回路123は、搬送周波数制御用のバラクター及び周波数変調用のバラクターを含むLCタンク型電圧制御発振回路(LC−VCO:Voltage Controlled Oscillator)である。具体的には、2つのN型トランジスターT1、T2と、2つのP型トランジスターT3、T4と、2つのインダクター(コイル)L1、L2と、搬送周波数制御用バラクターC1、C2と、周波数変調用バラクターC3、C4と、電流源ISとを含む。
【0041】
インダクターL1、L2及び搬送周波数制御用バラクターC1、C2は、LC共振回路XRCを構成し、バラクターC1、C2に印加される電圧を変化させることでC1、C2の容量値を変化させ、発振周波数(搬送波の周波数)を制御する。搬送周波数制御電圧信号入力ノードNAには、ループフィルター122から搬送周波数を制御するための搬送周波数制御電圧信号VFが入力され、この電圧がバラクターC1、C2に印加される。
【0042】
周波数変調用バラクターC3、C4は、搬送周波数制御用バラクターC1、C2より小さい容量値を持ち、変調回路XMCを構成する。バラクターC3、C4に印加される電圧を変化させることでC3、C4の容量値を変化させ、その結果発振周波数が変化することで周波数変調を行う。変調用制御電圧信号入力ノードNBには、変調用制御電圧生成回路150から変調用制御電圧信号VMが入力され、この電圧がバラクターC3、C4に印加される。出力ノードNQからは、出力信号が分周器124及びパワーアンプ130に出力される。
【0043】
なお、本実施形態の電圧制御発振回路123は図3の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えばN型トランジスターT1、T2を省略したり、逆にP型トランジスターT3、T4を省略したり、或いは電流源ISを高電位側電源ノードVDDとT3、T4のソースとの間に設けてもよい。
【0044】
図4(A)、図4(B)に電圧制御発振回路123の制御電圧と発振周波数との関係の一例を示す。図4(A)は、搬送周波数制御電圧VFと発振周波数との関係を示したものであって、例えば制御電圧が0.8Vの場合に発振周波数は2430MHzになる(図4(A)のA1)から、所望の搬送周波数が2430MHzである場合には、搬送周波数制御電圧を0.8Vに設定すればよい。
【0045】
図4(B)は、変調用制御電圧VMと発振周波数との関係を示したものである。例えば変調用制御電圧VMが0.68Vの場合に発振周波数は2429.5MHzであり(図4(B)のA2)、また変調用制御電圧VMが0.96Vの場合に発振周波数は2430.5MHzである(図4(B)のA3)。したがって、変調用制御電圧VMを0.68Vから0.96Vまでの間で変化させることで、搬送周波数である2430MHzを中心周波数として上側に500kHz、下側に500kHzだけシフトする周波数変調(FSK変調)が実現される。すなわち搬送周波数2430MHzに対して変調周波数偏差fmを1MHzとする周波数変調が行われる。
【0046】
なお、図4(A)、図4(B)に示した制御電圧と発振周波数との関係は一例であって、バラクターC1〜C4の特性、インダクターL1、L2のインダクタンス値などに依存する。
【0047】
図5にループフィルター122の構成例を示す。ループフィルター122は、キャパシターCA、CB、抵抗素子RB、スイッチ素子SWB及びオペアンプOPAを含む。スイッチ素子SWBは、スイッチ素子SWAと同様の動作をする。すなわちクローズドループ動作の期間ではオン状態であり、オープンループ動作の期間ではオフ状態である。クローズドループ動作の期間では、ループフィルター122はキャパシターCA、CB及び抵抗素子RBから成るローパスフィルターとして動作し、オープンループ動作の期間では、キャパシターCAにより搬送周波数制御電圧信号VFの電圧が保持される。オペアンプOPAはボルテージフォロワーとして動作し、入力電圧と等しい電圧を出力する。
【0048】
2.無線回路の動作
以下では、始めに送信信号生成回路110の基本的な動作を説明し、次に周波数シフト及び周波数ドリフトについて説明し、その後に周波数測定回路140について説明する。
【0049】
本実施形態の送信信号生成回路110は、2つの動作(モード)を有する。第1の動作(第1のモード)はクローズドループ動作(モード)であって、搬送周波数設定期間(広義には送信データ出力期間の前の期間)ではこの動作が行われる。この動作の期間に、電圧制御発振回路123の発振周波数が、所望の搬送周波数(例えば2430MHz)に設定される。第2の動作(第2のモード)はオープンループ動作(モード)であって、送信データ出力期間ではこの動作が行われる。この動作の期間に、変調用制御電圧生成回路150が出力する変調用制御電圧VMに基づいて周波数変調が行われる。
【0050】
まず、第1の動作について図2を用いて説明する。この動作の期間では、スイッチ素子SWAはオン状態である。第1の動作の始めに、電圧制御発振回路123の搬送周波数制御電圧信号入力ノードNAに初期電圧値が設定され、電圧制御発振回路123はこの初期電圧値により定まる発振周波数で発振を開始する。電圧制御発振回路123の出力信号VTXは分周器124で分周され、分周された信号VDは位相比較器121に入力される。
【0051】
位相比較器121では、基準クロック生成回路160から入力される基準クロック信号RCKと分周された信号VDとの位相が比較される。具体的には、VDの周波数がRCKの周波数よりも高い場合には、VDの位相はRCKの位相より速くなり、位相比較器121は出力信号VPとして初期電圧値よりも低い電圧を出力する。ループフィルター122は、位相比較器121の出力信号VPに含まれる高周波成分を除去して低周波成分のみを搬送周波数制御電圧信号VFとして電圧制御発振回路123に供給する。VFが始めに設定された初期電圧値からより低い電圧値に変化したことにより、電圧制御発振回路123の発振周波数は始めに設定された発振周波数よりも低い周波数に変化する。
【0052】
一方、VDの周波数がRCKの周波数よりも低い場合には、VDの位相はRCKの位相より遅くなり、位相比較器121は出力信号VPとして初期電圧値よりも高い電圧を出力する。その結果、ループフィルター122を通過して電圧制御発振回路123に供給される搬送周波数制御電圧信号VFは、始めに設定された初期電圧値からより高い電圧値に変化し、発振周波数は始めに設定された発振周波数よりも高い周波数に変化する。
【0053】
以上の動作を繰り返すことにより、最終的に発振周波数は基準クロックRCKの周波数のN倍(Nは分周器124の分周比)の周波数に設定される。この最終的に設定された周波数が所望の搬送周波数となる。温度や電源電圧の変動により発振周波数が所望の搬送周波数からシフトした場合には、位相比較器121がそのシフトに応じた電圧を出力することで、再び所望の搬送周波数に設定される。
【0054】
以上説明したように、搬送周波数設定期間(広義には送信データ出力期間の前の期間)では、送信信号生成回路110の第1の動作(クローズドループ動作)によって電圧制御発振回路123の発振周波数(送信信号VTXの周波数)が所望の搬送周波数に設定される。
【0055】
次に第2の動作について図2を用いて説明する。第2の動作はオープンループ動作であって、この動作の期間では、スイッチ素子SWAはオフ状態である。第1の動作で設定された搬送周波数制御電圧信号VFの電圧(搬送周波数に対応する制御電圧)は、ループフィルター122により保持されて、電圧制御発振回路123に入力される。したがって第2の動作の期間においても、変調を行わない場合には、すなわち変調用制御電圧信号VMの電圧が一定である場合には、送信信号VTXの周波数は設定された搬送周波数を保持する。
【0056】
変調用制御電圧生成回路150は、制御回路170からの送信データDTXに基づいて、電圧制御発振回路123の変調用制御電圧信号入力ノードNBに対して、変調用制御電圧信号VMを出力する。具体的には、例えば送信データDTXは3bitのデジタル値であって、このデジタル値をD/A変換器151により8レベルのアナログ値(電圧値)に変換し、さらにフィルター部152で不要な高周波成分を除去して、変調用制御電圧信号VMとして出力する。
【0057】
電圧制御発振回路123の発振周波数は、変調用制御電圧信号VMの電圧変化に応じて変化する。したがって、例えばVMの電圧変化の下限値を図4(B)のA2に示すように設定し、またVMの電圧変化の上限値を図4(B)のA3に示すように設定することで、所望の変調周波数偏差fmで周波数変調を行うことができる。なお、この第2の動作はオープンループ動作であって搬送周波数制御電圧信号VFの電圧は変化しないから、PLL回路120は上記の変調動作に影響を与えない。
【0058】
以上説明したように、送信データ出力期間では、送信信号生成回路110の第2の動作(オープンループ動作)により、変調用制御電圧信号VMに基づいて周波数変調が行われる。
【0059】
図6(A)、図6(B)は、上述した搬送周波数設定期間TSF及び送信データ出力期間TDXにおける送信周波数の時間的変化を説明する図である。送信の開始の際には図6(A)に示すように、搬送周波数設定期間TSFにおいて、送信周波数は所望の搬送周波数f0に設定される。そして搬送周波数設定期間TSFの後に続く送信データ出力期間TDXにおいて、変調周波数偏差fmで周波数変調された送信信号が出力される。
【0060】
図6(A)に、送信データ出力期間TDXの開始時における搬送波信号の周波数シフトfsの一例を示す。周波数シフトfsは、搬送周波数設定期間TSFにおけるクローズドループ動作から送信データ出力期間TDXにおけるオープンループ動作への切り換え時に生じる搬送周波数の変化である。この周波数シフトが生じる原因は、送信データ出力期間TDXの開始時、すなわちクローズドループ動作からオープンループ動作へ切り換えて変調用制御電圧VMによる制御が開始された時に、電圧制御発振回路123の発振周波数が変化するためである。
【0061】
図6(B)に、送信データ出力期間TDXにおける搬送波信号の周波数ドリフトの一例を示す。周波数ドリフトは、送信データ出力期間TDX開始後に生じる搬送周波数の時間的変化である。例えば図6(B)では、送信データ出力期間TDX開始時には搬送周波数は所望の周波数f0であるが、その後の時刻t1には搬送周波数はf1に変化し、さらに時刻t2には搬送周波数はf2に変化している。この周波数ドリフトが生じる原因は、トランジスターのリーク電流などにより、ループフィルター122のキャパシターCAに保持された搬送周波数制御電圧VFが時間の経過と共に低下するためである。また、電圧制御発振回路123のバラクターの特性が温度により変化することも原因になる。
【0062】
このような周波数シフト及び周波数ドリフトが発生した場合には、所望の搬送周波数でデータが送信されないため、受信機がデータを復調することができなくなるおそれがある。また、周波数シフトが大きくなった場合には、他の周波数チャンネルまで影響を及ぼし、そのチャンネルを使用して通信を行っている機器も正常な通信ができなくなるおそれがある。
【0063】
送信データ出力期間TDXの開始時における搬送波信号の周波数シフトを低減する手段として、本実施形態の無線回路100では、送信データ出力期間TDXの前の期間、すなわち搬送周波数設定期間TSFにおいて、擬似信号出力期間をさらに設けることができる。具体的には、変調用制御電圧生成回路150が、送信データ出力期間TDXの前の期間において擬似制御電圧信号を出力する。この擬似制御電圧信号は、制御回路170が擬似信号出力期間において出力する擬似データに基づいて、変調用制御電圧生成回路150が生成する。この擬似データは、論理レベルを連続的にトグルしたデータである。また、フィルター部152のゲインは、擬似信号出力期間におけるゲインが送信データ出力期間TDXにおけるゲインよりも小さく設定される。なお、フィルター部152のゲインの設定動作は、制御回路170により行うことができる。
【0064】
擬似信号出力期間では、電圧値が高レベルと低レベルとの間を交互に遷移し、すなわち論理レベルが連続的にトグルし、且つ送信データ出力期間TDXよりも小さい振幅を有する変調用制御電圧VMにより変調動作が行われる。つまり擬似信号出力期間では、送信データ出力期間TDXよりも小さい周波数偏差で、上側周波数と下側周波数との間を交互に遷移する周波数変調が行われる。変調周波数偏差が十分小さい場合には、PLL回路120のクローズループ動作に与える影響は無視できるから、最終的に送信周波数は所望の搬送周波数f0に設定される。そして送信データ出力期間TDXの開始時には、擬似信号出力期間で設定された搬送周波数を中心として周波数変調が開始されるから、搬送波信号の周波数シフトは低減される。
【0065】
上述した擬似データによる周波数変調を行うのではなく、D/A変換器151から中心電圧信号を出力し、これを擬似制御電圧信号として用いることもできる。すなわちD/A変換器151は、擬似信号出力期間において、送信データ出力期間TDXには出力されない擬似信号出力用の中心電圧信号を出力する。変調用制御電圧生成回路150は、擬似信号出力期間において、中心電圧信号を擬似制御電圧信号として出力する。このようにすることで、擬似信号出力期間において設定された搬送周波数を中心周波数として周波数変調が行われるから、送信データ出力期間TDXの開始時の周波数シフトを低減することができる。
【0066】
以上説明したように、擬似信号出力期間を設けることで搬送波信号の周波数シフトをある程度防止することが可能になるが、完全に防止することは困難である。また、上述した手段では送信データ出力期間における周波数ドリフトを防止することはできない。周波数ドリフトの原因であるトランジスター等のリーク電流やバラクターの特性の温度依存性などの影響を補償するための特別の回路を設ける方法もあるが、回路構成が複雑になり、機器のサイズやコストの増大、また消費電力の増加という問題がある。
【0067】
本実施形態の無線回路100では、周波数測定回路140が周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方を測定して、その情報を相手側の無線回路に送信することで、相手側の無線回路がその情報に基づいて受信周波数を補正することができる。以下では、本実施形態の周波数測定回路140の3つの構成例について説明する。
【0068】
図7に、周波数測定回路140の第1の構成例を示す。本構成例の周波数測定回路140は、周波数測定用分周器141及び周波数カウンター142を含む。周波数測定用分周器141は送信信号VTXを分周して適当な周波数に変換し、周波数カウンター142は分周された信号の周波数を基準クロックRCKにより計測する。具体的には、周波数測定回路140は、送信信号VTXから得られるクロック信号を用いて、PLL回路120に入力される基準クロックRCKの周期を計測することで、周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方を測定することができる。なお、周波数測定回路140は、周波数測定用分周器141を含まない構成とすることもできる。
【0069】
測定された周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報は、制御回路170の送信処理により、相手側の無線回路に送信される。例えば送信データ出力期間TDXにおいて、所定の時間間隔で上記の情報が相手側に送信される。
【0070】
図8に、周波数測定回路140の第2の構成例を示す。第2の構成例の周波数測定回路140は、A/D変換器143を含み、電圧制御発振回路123の入力制御電圧(搬送周波数制御電圧)VFを測定する。図4(A)に示したように、電圧制御発振回路123の発振周波数は入力制御電圧VFに依存するから、VFを測定することで周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方を測定することができる。A/D変換器143は、アナログ量である入力制御電圧VFをデジタルデータに変換して制御回路170に出力する。
【0071】
図9に、周波数測定回路140の第3の構成例を示す。第3の構成例の周波数測定回路140は、分周器124の出力クロック信号VDとPLL回路120に入力される基準クロックRCKとの位相が一致した時の分周比に基づいて、周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方を測定する。具体的には、分周器124はPLL回路120のフィードバックループに設けられ、分周比が可変に設定される。周波数測定回路140は、位相比較器121の出力信号VPをモニターしながら分周器124の分周比を変化させる。そして出力クロック信号VDと基準クロックRCKとの位相が一致することを検出した時に、その時の分周比に基づいて周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方を測定することができる。
【0072】
上記の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報は、制御回路170の送信処理により、相手側(受信側)の無線回路に送信される。例えば送信データ出力期間TDXにおいて、所定の時間間隔で上記の情報が相手側の無線回路に送信される。相手側の無線回路は、その情報に基づいて受信周波数を補正することができる。
【0073】
なお、本実施形態の周波数測定回路140は図7〜図9の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0074】
図10に、相手側の受信回路200が、周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づいて、受信周波数を補正する動作の一例を示す。受信回路200の局所信号生成回路230は、第2のPLL回路270を含む。第2のPLL回路270は、第2の位相比較器271、第2のループフィルター272、第2の電圧制御発振回路273及び第2の分周器274を含む。
【0075】
局所信号生成回路230は、相手側(送信側)の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づいて周波数が設定される局所信号を出力する。具体的には、変調用制御電圧生成回路150は、受信回路の受信時には、第2の電圧制御発振回路273に対して、相手側の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づいて制御電圧信号VCNを出力する。この制御電圧信号VCNにより第2の電圧制御発振回路273の発振周波数が変化することで、局所信号の周波数が変化し、その結果受信周波数が相手側の無線回路の周波数シフト又は周波数ドリフトに追随するように補正される。制御電圧信号VCNは、制御回路170が出力する局所信号制御データDCNに基づいて生成される。
【0076】
上述した受信周波数を補正する動作時においては、第2のPLL回路270のクローズドループ動作によって上記の補正動作が抑えられないようにする必要がある。そのために第2のループフィルター272の帯域を狭める、すなわち第2のループフィルター272のカットオフ周波数を下げる。こうすることで、第2の位相比較器271の出力信号が第2の電圧制御発振回路273に入力することを防止できる。或いは第2の位相比較器271と第2のループフィルター272との間にスイッチ素子を設けて、上記の補正動作時にはスイッチ素子をオフ状態としてもよい。こうすることで、第2の位相比較器271の出力信号が第2の電圧制御発振回路273に入力することを防止できる。
【0077】
このように変調用制御電圧生成回路150を受信周波数の補正にも使用することで、受信周波数を補正するための回路の素子数を低減し、消費電力を抑えることが可能になる。
【0078】
図11に、相手側の受信回路200が、周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づいて、受信周波数を補正する動作の別の例を示す。第2の分周器274は、第2のPLL回路270のフィードバックループに設けられ、分周比が可変に設定される。第2の分周器274の分周比は、相手側(送信側)の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づいて設定される。具体的には、制御回路170が、相手側(送信側)の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づいて分周比制御信号DIVを出力する。第2の分周器274の分周比が分周比制御信号DIVにより可変に設定されることで、局所信号の周波数が変化し、その結果受信周波数が相手側の無線回路の周波数シフト又は周波数ドリフトに追随するように補正される。
【0079】
このように第2の分周器274の分周比を可変に設定することで、受信周波数を補正するための回路の素子数を低減し、消費電力を抑えることが可能になる。
【0080】
以上説明したように、本実施形態の無線回路100によれば、送信側の無線回路で生じる搬送波信号の周波数シフト及び周波数ドリフトの少なくとも一方の情報を相手側(受信側)の無線回路に送信することができる。そして受信側の無線回路では、その情報に基づいて受信周波数を補正することができるから、受信周波数を搬送周波数の変化に追随させることができる。その結果、安定したデータ通信が可能になるから、送受信全体に要する時間を短縮することができ、また消費電力も低減することができる。さらに通信効率の向上により電波の有効活用に寄与することができる。
【0081】
3.集積回路装置
図12に、本実施形態の無線回路100を含む集積回路装置300(無線通信用LSI)の一例を示す。集積回路装置300は、送信信号生成回路110、パワーアンプ(PA)130、周波数測定回路140、受信回路200、基準クロック生成回路160、制御回路170、ホストインターフェース310及び電源部320を含む。
【0082】
ホストインターフェース310は、集積回路装置300の外部に設けられるホストとのインターフェース処理を行う。電源部320は、外部電源からの電源供給を受けて、集積回路装置300に含まれる各回路に適応する電圧レベルを供給する。
【0083】
本実施形態の無線回路100によれば、送信側の無線回路で生じる搬送波信号の周波数シフト及び周波数ドリフトの少なくとも一方の情報を相手側(受信側)の無線回路に送信することができる。そして受信側の無線回路では、その情報に基づいて受信周波数を補正することができるから、受信周波数を搬送周波数の変化に追随させることができる。その結果、本実施形態の無線回路100を含む集積回路装置300によれば、安定したデータ通信が可能になるから、送受信全体に要する時間を短縮することができ、また消費電力も低減することができる。さらに通信効率の向上により電波の有効活用に寄与することができる。
【0084】
4.電子機器
図13に、本実施形態の集積回路装置300を含む電子機器400の一例を示す。本実施形態の電子機器400は、集積回路装置300、センサー部410、A/D変換器420、記憶部430、ホスト440、操作部450を含む。
【0085】
電子機器400は、例えば温度・湿度計、脈拍計、歩数計等であって、検出したデータを無線により送信することができる。センサー部410は、温度センサー、湿度センサー、ジャイロセンサー、加速度センサー、フォトセンサー、圧力センサー等を含み、電子機器400の用途に応じたセンサーが用いられる。センサー部410は、センサーの出力信号(センサー信号)を増幅し、フィルターによりノイズを除去する。A/D変換器420は、増幅された信号をデジタル信号に変換して集積回路装置300へ出力する。ホスト440は、例えばマイクロコンピューター等で構成され、デジタル信号処理を行ったり、記憶部430に記憶された設定情報や操作部450からの信号に基づいて電子機器400の制御処理を行う。記憶部430は、例えばフラッシュメモリーなどで構成され、設定情報や検出したデータ等を記憶する。操作部450は、例えばキーパッド等で構成され、使用者が電子機器400を操作するために用いられる。
【0086】
本実施形態の無線回路100を含む電子機器400によれば、送信側の無線回路で搬送波信号の周波数シフト及び周波数ドリフトが生じた場合でも、安定したデータ通信が可能になるから、送受信全体に要する時間を短縮することが可能になる。これにより消費電力を低減することができるから、電池駆動の電子機器を長時間動作させることが可能になる。
【0087】
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また無線回路、集積回路装置及び電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0088】
100 無線回路、110 送信信号生成回路、120 PLL回路、
121 位相比較器、122 ループフィルター、123 電圧制御発振回路、
124 分周器、130 パワーアンプ、140 周波数測定回路、
141 周波数測定用分周器、142 周波数カウンター、143 A/D変換器、
150 変調用制御電圧生成回路、151 D/A変換器、152 フィルター部、
160 基準クロック生成回路、170 制御回路、180 アンテナ、
200 受信回路、210 低雑音増幅器、220 ミキサー、
230 局所信号生成回路、240 フィルター、250 検出回路、
260 復調回路、270 第2のPLL回路、271 第2の位相比較器、
272 第2のループフィルター、273 第2の電圧制御発振回路、
274 第2の分周器、300 集積回路装置、310 ホストインターフェース、
320 電源部、400 電子機器、410 センサー部、420 A/D変換器、
430 記憶部、440 ホスト、450 操作部、
DTX 送信データ、RCK 基準クロック、VM 変調用制御電圧信号、
VTX 送信信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧制御発振回路を有するPLL回路を有し、送信信号を生成して出力する送信信号生成回路と、
前記送信信号を増幅するパワーアンプと、
周波数測定回路とを含み、
前記PLL回路は、送信データ出力期間の前の期間ではクローズドループ動作に設定され、前記送信データ出力期間ではオープンループ動作に設定され、
前記周波数測定回路は、前記クローズドループ動作から前記オープンループ動作への切り換え時における前記送信信号の搬送波信号の周波数シフト量、及び前記送信データ出力期間における前記搬送波信号の周波数ドリフト量の少なくとも一方を測定することを特徴とする無線回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記周波数測定回路は、前記送信信号から得られるクロック信号を用いて、前記PLL回路に入力される基準クロックの周期を計測することで、前記周波数シフト量及び前記周波数ドリフト量の少なくとも一方を測定することを特徴とする無線回路。
【請求項3】
請求項1において、
前記周波数測定回路は、前記電圧制御発振回路の入力制御電圧を測定することで、前記周波数シフト量及び前記周波数ドリフト量の少なくとも一方を測定することを特徴とする無線回路。
【請求項4】
請求項1において、
前記PLL回路は、フィードバックループに設けられ分周比が可変に設定される分周器を含み、
前記周波数測定回路は、前記分周器の出力クロック信号と前記PLL回路に入力される基準クロックとの位相が一致した時の分周比に基づいて、前記周波数シフト量及び前記周波数ドリフト量の少なくとも一方を測定することを特徴とする無線回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記PLL回路は、
位相比較器と、
ループフィルターと、
前記位相比較器と前記ループフィルターとの間に設けられるスイッチ素子とを含み、
前記スイッチ素子は、前記クローズドループ動作の期間ではオン状態であり、前記オープンループ動作の期間ではオフ状態であることを特徴とする無線回路。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記周波数シフト量及び前記周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報を相手側の無線回路に送信することを特徴とする無線回路。
【請求項7】
請求項1乃至6において、
局所信号生成回路とミキサーとを有する受信回路を含み、
前記局所信号生成回路は、相手側の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づいて周波数が設定される局所信号を出力することを特徴とする無線回路。
【請求項8】
請求項7において、
前記送信信号生成回路は、変調用制御電圧生成回路を含み、
前記局所信号生成回路は、第2の電圧制御発振回路を有する第2のPLL回路を含み、
前記変調用制御電圧生成回路は、
送信信号生成時には、周波数変調用の制御電圧信号を、前記送信信号生成回路が有する前記PLL回路の前記電圧制御発振回路に出力し、
前記受信回路の受信時には、相手側の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づく制御電圧信号を、前記局所信号生成回路が有する前記第2のPLL回路の前記第2の電圧制御発振回路に出力することを特徴とする無線回路。
【請求項9】
請求項7において、
前記局所信号生成回路は、第2のPLL回路を含み、
前記第2のPLL回路は、前記第2のPLL回路のフィードバックループに設けられ、分周比が可変に設定される第2の分周器を含み、
前記第2の分周器の分周比が相手側の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づいて設定されることを特徴とする無線回路。
【請求項10】
請求項1乃至7において、
前記送信信号生成回路は、前記電圧制御発振回路に出力する周波数変調用の制御電圧信号を生成する変調用制御電圧生成回路を含み、
前記変調用制御電圧生成回路は、前記送信データ出力期間の前の期間において、擬似制御電圧信号を出力することを特徴とする無線回路。
【請求項11】
無線の受信信号を受信する受信回路を含み、
前記受信回路は、
前記受信信号を増幅する低雑音増幅器と、
局所信号を出力する局所信号生成回路と、
前記低雑音増幅器の出力信号と前記局所信号とをミキシングするミキサーとを含み、
前記局所信号生成回路は、相手側の無線回路の周波数シフト量及び周波数ドリフト量の少なくとも一方の情報に基づき周波数が設定される局所信号を出力することを特徴とする無線回路。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の無線回路を含むことを特徴とする集積回路装置。
【請求項13】
請求項12に記載の集積回路装置を含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−109163(P2011−109163A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258838(P2009−258838)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】