熱処理装置
【課題】誘導加熱を用いて基板を熱処理する熱処理装置において、基板の温度均一性を高くし、かつ効率を高くすること。
【解決手段】複数の基板Sに熱処理を施す熱処理装置1は、熱処理が施される複数の基板を収容する誘電体からなる処理容器22と、複数の基板Sを上下に配列した状態で保持し、処理容器22内へ挿脱される基板保持部材24と、処理容器22の外周に巻回される誘導加熱コイル104と、誘導加熱コイル104に高周波電力を印加する高周波電源110と、処理容器内22で、複数の基板Sにそれぞれ重ね合うように設けられ、誘導加熱コイル104に高周波電力を印加することにより発生した誘導電流が流れて発熱する、スパイラル状部を有する誘導発熱体Nとを具備する。
【解決手段】複数の基板Sに熱処理を施す熱処理装置1は、熱処理が施される複数の基板を収容する誘電体からなる処理容器22と、複数の基板Sを上下に配列した状態で保持し、処理容器22内へ挿脱される基板保持部材24と、処理容器22の外周に巻回される誘導加熱コイル104と、誘導加熱コイル104に高周波電力を印加する高周波電源110と、処理容器内22で、複数の基板Sにそれぞれ重ね合うように設けられ、誘導加熱コイル104に高周波電力を印加することにより発生した誘導電流が流れて発熱する、スパイラル状部を有する誘導発熱体Nとを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理容器内の基板に熱処理を施す熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体ウエハ等の基板に対して成膜処理や酸化処理等の熱処理を行う場合には、縦型の石英製の処理容器内に、複数の基板を垂直方向に多段に配置し、処理容器の周囲に設けられた円筒状の抵抗発熱型のヒーターにより基板を加熱するバッチ式の縦型熱処理装置が広く用いられている。
【0003】
しかしながら、従来の縦型熱処理装置は、抵抗発熱型のヒーターを用いて処理容器の外側から加熱する方式であるため、熱容量の大きい石英製の処理容器も加熱することになり、エネルギー効率が悪い。また、処理容器の壁部が基板と同程度の高温になるため、特に成膜処理の場合には、処理のための原料ガスによる生成物が処理容器の内壁にも堆積して、基板に供給される原料ガスが不足するおそれや処理容器の内壁面に堆積した堆積物がパーティクルとなって基板に付着するおそれがある。
【0004】
また、半導体素子の微細化にともない、ドーパントの不必要な拡散等を防止する必要性等から、高速昇温および高速降温が可能なことが求められており、また最近では、縦型熱処理装置にてGaN系半導体素子をエキタキシャル成長により形成することが検討されているが、やはり高速昇温および高速降温が求められ、加えて1000℃以上の高温に加熱できることが求められている。しかしながら、従来の縦型処理装置では、熱容量の大きい処理容器も加熱されることから、要求される高速昇温および高速降温には対応することが困難である。また、抵抗発熱型のヒーターでは1000℃以上の高温に対応することは困難である。
【0005】
このような問題を解決可能な技術として、誘導加熱を利用したものが考えられる。すなわち、誘導加熱を利用した処理装置として、誘電体からなる処理容器の外部に誘導加熱用コイルを設け、処理容器内部に配置された基板の下方に発熱体を設け、誘導加熱コイルに高周波電力を供給することにより発熱体を誘導加熱し、その熱により基板を加熱するものが考えられる。このように誘導加熱により発熱する誘導発熱体によって基板を加熱する場合には、熱容量の大きい処理容器自体は加熱されず、基板に対する加熱能力が大きいため、高速昇温および高速降温が可能であり、1000℃以上の加熱にも対応することができ、処理容器が加熱されることにともなう上記不都合も生じない。
【0006】
しかしながら、基板に対応する形状、例えば円板状の無垢の発熱体を設けた場合には、表皮効果により、誘導電流が発熱体の周縁部のみにしか流れず、発熱体の周縁部のみ発熱して中央部が発熱しないため、基板を均一に加熱することは困難である。
【0007】
このような不都合を防止する技術として、特許文献1には、誘導発熱体に切り込み状の溝部を形成して、誘導電流を発熱体の内部にも流れるようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−176841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発熱体に切り込み状の溝部を形成した場合には、中央部も発熱されるため、無垢の発熱体よりも温度均一性が高まるが、溝部の先端部にホットスポットが生じるため、十分な温度均一性を得ることが困難である。また、発熱体の内部に誘導電流が流れる際に、不可避的に逆起電力が生じ、トータルの発熱量が下がってしまい、効率が低いという問題がある。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、誘導加熱を用いて基板を熱処理する熱処理装置において、基板の温度均一性を高くし、かつ効率を高くすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、複数の基板に熱処理を施す熱処理装置であって、熱処理が施される複数の基板を収容する処理容器と、複数の基板を上下に配列した状態で保持し、前記処理容器内へ挿脱される基板保持部材と、前記処理容器内に誘導磁界を形成して誘導加熱するための誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波電力を印加する高周波電源と、前記処理容器内で、前記複数の基板にそれぞれ重ね合うように設けられ、前記誘導加熱コイルに前記高周波電力を印加することにより発生した誘導電流が流れて発熱する、スパイラル状部を有する誘導発熱体とを具備することを特徴とする熱処理装置を提供する。
【0012】
本発明の第2の観点では、基板に熱処理を施す熱処理装置であって、熱処理が施される基板を収容する処理容器と、前記処理容器内で1または2以上の基板を保持する基板保持部と、前記処理容器に誘導磁界を形成して誘導加熱するための誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波電力を印加する高周波電源と、前記処理容器内に基板と対応するように設けられ、前記誘導加熱コイルに前記高周波電力を印加することにより発生した誘導電流が流れて発熱する、スパイラル状部を有する誘導発熱体とを具備することを特徴とする熱処理装置を提供する。
【0013】
本発明の第3の観点では、基板に熱処理を施す熱処理装置であって、熱処理が施される基板を収容する処理容器と、前記処理容器内で1または2以上の基板を保持する基板保持部と、前記処理容器に誘導磁界を形成して誘導加熱するための誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波電力を印加する高周波電源と、前記処理容器内に基板と対応するように設けられ、前記誘導加熱コイルに前記高周波電力を印加することにより発生した誘導電流が流れて発熱する、スパイラル状部を有する誘導発熱体とを具備し、前記誘導発熱体は、前記基板保持部の内側部分に対応する位置に設けられた第1の発熱体と、その外側に設けられた第2の発熱体とを有し、前記第1の発熱体と前記第2の発熱体は、いずれもスパイラル状体を2枚重ねて、それらの一方の端部同士および他方の端部同士を接続し、これらスパイラル状体を一筆書きで同じ方向に誘導電流が流れるように構成されており、前記誘導加熱コイルは、前記第1の発熱体に対応した位置に設けられた第1の誘導加熱コイルと、前記第2の発熱体に対応した位置に設けられた第2の誘導加熱コイルとを有し、前記第1の誘導加熱コイルと前記第2の誘導加熱コイルの電流分配を制御することにより、前記第1の発熱体と前記第2の発熱体の発熱量が独立して調整されることを特徴とする熱処理装置を提供する。
【0014】
上記第1の観点において、前記処理容器は誘電体からなり、前記誘導加熱コイルは前記処理容器の外周に巻回される構成とすることができる。また、前記基板保持部材は、前記複数の基板をそれぞれ保持する複数の基板保持部を有している構成とすることができる。この場合に、前記基板保持部材は、前記誘導発熱体と前記複数の基板とが交互に保持されるように、それぞれが前記誘導発熱体を保持するようにすることができる。さらに、前記基板保持部材は、前記誘導発熱体を保持し、前記誘導発熱体が基板保持部として機能するようにしてもよい。
【0015】
上記第2の観点において、前記処理容器は誘電体からなり、前記誘導加熱コイルは前記処理容器の外側に設けられる構成とすることができる。また、前記基板保持部は1または2以上の基板を一つの平面上に載置する基板載置台を有する構成とすることができる。また、前記基板載置台に載置された基板に対応する前記基板載置台の下方の位置に設けられている構成とすることができる。前記誘導加熱コイルは、前記処理容器の天壁の上に平面状に巻回されている構成とすることができる。
【0016】
上記第1および第2の観点において、前記誘導発熱体は、スパイラル状をなす本体と、前記本体の中央端と外周端とをつなぐリターン部とを有している構成とすることができる。この場合に、前記リターン部は、導電率もしくは断面積、またはその両方が前記本体よりも大きいことが好ましい。
【0017】
また、前記誘導発熱体は、2つのスパイラル状体を有し、これらの中央端同士および外周端同士を接続した際に、これら2つのスパイラル状体に同じ方向に誘導電流が流れるように、これら2つのスパイラル状体を重ねて配置してなるものとすることができる。この場合に、2つのスパイラル状体は同形をなし、互いに裏返しになるように重ね合わされていることが好ましい。
【0018】
上記第3の観点において、前記第1の発熱体および前記第2の発熱体をそれぞれ構成する2つのスパイラル状体は同形をなし、互いに裏返しになるように重ね合わされていることが好ましい。また、前記誘導加熱コイルは、前記処理容器内の前記誘導発熱体の上方位置または下方位置に設けられていることが好ましい。
【0019】
上記第1〜第3の観点において、前記基板保持部材に保持された基板と前記誘導発熱体との間に設けられた均熱部材をさらに具備することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、処理容器内に基板に対応してスパイラル状部を有する誘導発熱体を設け、この誘導発熱体に誘導電流を流すようにしたので、誘導発熱体のスパイラル部を構成する線に沿って誘導電流が中心から外周、または外周から中心に流れ、誘導発熱体を全体的に発熱させることができる。また、スパイラルを滑らかな形状とすることにより、ホットスポットの発生を防止して基板を均一に加熱することができる。また、逆起電力の分布を形成させないようにすることができるので、効率的な加熱を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る熱処理装置を示す縦断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る熱処理装置を示す横断面図である。
【図3】誘導発熱体を示す平面図である。
【図4】誘導発熱体を示す断面図である。
【図5】誘導発熱体の他の例を示す平面図である。
【図6】誘導発熱体の他の例を示す断面図である。
【図7】図5、6の誘導発熱体の誘導電流の流れを示す図である。
【図8】誘導発熱体と基板との間に均熱部材を設けた例を示す模式図である。
【図9】基板の中央から外側に行くにつれて誘導発熱体と基板との距離が離れるように配置した例を示す断面図である。
【図10】誘導発熱体のスパイラル線の密度を外側に行くにつれて密にした例を示す断面図である。
【図11】誘導発熱体のスパイラル線の径が内側に行くに従って大きくなる例を示す断面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る熱処理装置を示す断面図である。
【図13】図12の熱処理装置の変形例を示す断面図である。
【図14】図12の熱処理装置の他の変形例を示す断面図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る熱処理装置を示す断面図である。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る熱処理装置の基板載置台を示す平面図である。
【図17】本発明の第4の実施形態に係る熱処理装置を示す断面図である。
【図18】本発明の第4の実施形態に用いた誘導発熱体の第1の発熱体と第2の発熱体の配置を説明するための図である。
【図19】本発明の第4の実施形態に用いた誘導発熱体の断面図である。
【図20】第2の発熱体を示す平面図である。
【図21】本発明の第4の実施形態に用いた誘導加熱コイルの電流分配方式を説明するための図である。
【図22】図17の熱処理装置の変形例を示す断面図である。
【図23】図17の熱処理装置における誘導加熱コイルの他の電流分配方式を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。ここでは、複数の基板を処理容器内に上下方向に配列して熱処理を行う縦型熱処理装置の例について示す。
図1は本発明の第1の実施形態に係る熱処理装置を示す縦断面図、図2はその横断面図、図3は誘導発熱体を示す平面図、図4は誘導発熱体を示す断面図である。図1に示すように、熱処理装置1は、下端が開放され、上下方向に延びる円筒状をなす縦型の処理容器22を有している。この処理容器22は、耐熱性を有し、電磁波(高周波電力)を透過する誘電体材料、例えば石英で構成されている。
【0023】
この処理容器22内には、その下方から、複数の誘導発熱体Nを所定のピッチで上下方向に保持して、各誘導発熱体Nの上に基板Sを載置した状態で基板Sを保持する基板保持部材24が挿入可能となっている。各基板Sは主にその直下の誘導発熱体Nにより加熱されるようになっている。この基板保持部材24が挿入された際には、処理容器22の下端の開口部は、例えば石英やステンレス板よりなる蓋部26により塞がれて密閉されるようになっている。処理容器22の下端部と蓋部26との間には、気密性を維持するために例えばOリング等のシール部材28が介在される。この蓋部26および基板保持部材24の全体は、ボートエレベータのような昇降機構30に設けられたアーム32の先端に支持されており、基板保持部材24および蓋部26を一体的に昇降できるように構成されている。
【0024】
基板保持部材24は、全体が絶縁性の耐熱材料、例えば石英からなり、保持ボートとして構成されており、図2にも示すように、円形リング状になされた天板38と円形リング状になされた底板40と、その間に掛け渡された3本(図1では2本のみ図示)の支柱42a、42b、42cとで構成されている。3本の支柱42a〜42cは、平面内の半円弧の領域内に沿って等間隔で配置されており(図2参照)、その反対の半円弧側より誘導発熱体Nと基板Sを搬出入させるようになっている。各支柱42a〜42cの内側には、誘導発熱体Nの周縁部を保持するための溝部44が等ピッチで長手方向に沿って形成されており、この各溝部44に誘導発熱体Nの周縁部を支持させて複数個、例えば10〜55個枚程度の誘導発熱体Nを多段に等ピッチで支持できるようになっている。
【0025】
基板保持部材24は、下端の蓋部26に設けられた回転機構54により回転可能となっている。具体的には、回転機構54は、蓋部26の中央部より下方へ伸びる円筒状の固定スリーブ56を有しており、この固定スリーブ56内は処理容器22内に連通されている。この固定スリーブ56の外周には、軸受58を介して円筒状の回転部材60が回転可能に設けられており、この回転部材60には図示しない駆動源により走行駆動される駆動ベルト62が掛け渡されて、駆動ベルト62が駆動されることにより回転部材60が回転されるようになっている。
【0026】
また軸受58の下部において、固定スリーブ56と回転部材60との間には磁性流体シール59が設けられており、回転部材60が回転しても、上記処理容器22内の気密性を保持されるようになっている。
【0027】
固定スリーブ56内には、回転軸64が、挿通されている。この回転軸64の上端には、中央部が開口された回転テーブル66が取り付け固定されている。そして、この回転テーブル66上に円筒状をなす例えば石英からなる保温筒48が載置され、この保温筒48の上に基板保持部材24が載置されるようになっている。
【0028】
回転部材60および回転軸64は、ベース板70に固定されており、図示しない駆動源により駆動ベルト62を介して回転部材60が回転されることにより、回転軸64を介して基板保持部材24が回転される。
【0029】
図1に示すように、処理容器22の下部には、この処理容器22内へ熱処理、例えば成膜処理に必要なガスを導入するガス供給機構90が設けられている。ガス供給機構90は、処理容器22の外部から処理容器22の側壁を貫通してその内部に至る、例えば石英からなる第1のガスノズル92および第2のガスノズル94を有している。第1のガスノズル92および第2のガスノズル94には、それぞれガス供給配管96およびガス供給配管98が接続されており、これらには、それぞれ開閉弁96b、98bおよびマスフローコントローラのような流量制御器96a、98aが順次設けられており、熱処理に必要な第1のガスおよび第2のガスをそれぞれ流量制御しつつ導入できるようになっている。なお、熱処理に応じて、ガス種およびガスノズルをさらに増加してもよい。また、熱処理の種類によっては、使用するガスは1種類でもよく、その場合にはガス供給配管は1つでよい。熱処理である成膜処理としては、シリコン、窒化シリコン、酸化シリコン等のCVD成膜、GaN等のエピタキシャル成長が例示される。また、熱処理としては成膜処理に限らず、酸化処理、アニール処理等、種々のものを挙げることができる。これらの処理に応じて、基板Sも半導体基板、サファイア基板、ZnO基板、ガラス基板等、種々のものを用いることができる。
【0030】
処理容器22の天井部には、横方向へL字状に屈曲させた排気口100が設けられる。この排気口100には処理容器22内を排気する排気系102が設けられている。排気系102は、排気口100に接続された排気通路102aと、排気通路102aに設けられた圧力制御弁102bと、排気通路102aに接続されて、排気通路102aを介して処理容器22内を排気する排気ポンプ102cとを有している。なお、処理の種類によっては、低圧の真空状態から大気圧程度の圧力で処理を行う場合があり、これに対応して、排気系102によって高真空から大気圧の近傍まで処理容器22内の圧力を制御できるようになっている。
【0031】
処理容器22の外側には、誘導加熱コイル104が設けられている。誘導加熱コイル104は、金属製パイプを処理容器22の外周に上下方向に沿って螺旋状に巻回してなっており、上下方向におけるその巻回領域は基板Sの収容領域よりも広くなっている。
【0032】
誘導加熱コイル104は、金属製パイプを隙間を開けて巻回したものであっても、隙間を設けないで密に巻回したものであってもよい。誘導加熱コイル104を構成する金属製パイプの材料としては銅を好適に用いることができる。
【0033】
そして、この誘導加熱コイル104の上下の両端には、高周波電源110から延びる給電ライン108が接続されており、高周波電源110から誘導加熱コイル104に高周波電力が印加されるようになっている。この給電ライン108の途中には、インピーダンス整合を行うマッチング回路112が設けられている。
【0034】
誘導加熱コイル104に高周波電力を印加することにより、処理容器22の内部に誘導磁界が形成され、その誘導磁界によって生じる誘導電流が基板保持部材24に保持されている誘導発熱体Nに流れて誘導発熱体Nが発熱するようになっている。この高周波電源110の高周波の周波数は、例えば0.5〜50kHzの範囲内、好ましくは1〜5kHzの範囲内に設定される。
【0035】
また誘導加熱コイル104を構成する金属製パイプの両端には、冷媒流路114が接続されており、この冷媒流路114には冷却器116が接続され、冷却器116から冷媒流路114を介して誘導加熱コイル104を構成する金属製パイプ内に冷媒を流して誘導加熱コイル104を冷却するようになっている。冷媒としては、例えば冷却水を用いることができる。
【0036】
誘導発熱体Nは、発熱可能な導体からなっており、図3の平面図および図4の断面図に示すように、スパイラル状をなす、基板Sよりも大きな直径を有する本体131と、その中央端131aと外周端131bとを連結するリターン部132とを有する。リターン部132により中央端131aと外周端131bとを接続することにより、閉ループが形成され、誘導発熱体Nに誘導電流が流れるようになる。そして、誘導電流が流れることにより誘導発熱体Nが発熱する。
【0037】
本体131を構成する材料としては、熱伝導率が良好であり、高周波電力によって誘導加熱され得る非磁性の導電性材料を用いることができる。誘導発熱体Nを構成する材料は熱伝導率は大きい方がよく、例えば5W/mk以上、好ましくは100W/mk以上である。この熱伝導率が5W/mkよりも小さい場合には、誘導発熱体Nの面内温度の均一性が低下する傾向があり基板自体の面内温度の均一性も不十分になるおそれがある。このような材料としては、例えばカーボングラファイトやSiC等があり、誘導発熱体Nとしてこれらを好適に用いることができる。
【0038】
誘導発熱体Nに誘導電流が流れる際に、逆起電力を小さくして良好な効率を得る観点から、リターン部132の断面積および/または電気伝導度を本体131よりも大きくすることが好ましい。断面積を同じにした場合には、リターン部132の電気伝導度を本体131よりも1オーダー以上高くすることが好ましい。本体131をカーボングラファイトで構成した場合には、電気伝導度が1×103〜1×106(S/m)程度の範囲であるから、リターン部132としては電気伝導度が1×104〜1×107(S/m)の材料を用いることが好ましい。本体131をカーボングラファイトで構成した場合に、リターン部132を本体131よりも電気伝導度が高いカーボングラファイトで構成してもよい。
【0039】
熱処理装置1における各構成部は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えた制御部120により制御されるようになっている。制御部120には、オペレータによる熱処理装置1を管理するためのコマンド入力等の入力操作を行うキーボードや、熱処理装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース121が接続されている。さらに、制御部120には、熱処理装置1で実行される各種処理を制御部120の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて熱処理装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわち処理レシピが格納された記憶部122が接続されている。処理レシピは記憶部122の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、コンピュータに内蔵されたハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース121からの指示等にて任意の処理レシピを記憶部122から呼び出して制御部120に実行させることで、制御部120の制御下で、熱処理装置1での所望の処理が行われる。
【0040】
次に、以上のように構成された熱処理装置1を用いて行なわれる熱処理について説明する。
【0041】
基板保持部材24には、複数の誘導発熱体Nが、図示しないフォークを用いて予め搭載されており、この基板保持部材24を処理容器22内から下方へ降下させてアンロードした状態で、図示しない移載フォークを用いて基板Sを誘導発熱体Nの上に移載し、保持させる。この誘導発熱体Nは、複数バッチ処理に亘って連続使用してもよく、その場合には、処理容器22内のドライクリーニングと一緒にクリーニングすることができる。
【0042】
このようにして、基板Sの移載が完了したならば、昇降機構30を駆動することにより、基板保持部材24を上昇させて、これを処理容器22の下端開口部より処理容器22内へロードする。そして、この処理容器22の下端開口部を蓋部26により気密にシールし、処理容器22内を密閉状態とする。
【0043】
次に、高周波電源110をオンにして金属製パイプを巻回してなる誘導加熱コイル104に高周波電力を印加することにより、処理容器22内に誘導磁界が形成され、その誘導磁界によって基板保持部材24に保持されている誘導発熱体Nに誘導電流が流れることにより誘導発熱体Nが発熱する。このように、誘導発熱体Nが発熱すると、これに接近して配置されている基板Sが誘導発熱体Nからの放射熱によって加熱されて昇温する。
【0044】
これと同時に、回転機構54により基板保持部材24を所定の回転数で回転させつつ、ガス供給機構90の第1および第2のガスノズル92、94から熱処理に必要な第1および第2のガス、例えば成膜ガスを流量制御しつつ供給し、この処理容器22内の雰囲気を天井部の排気口100から排気系102により真空引きして処理容器22内の雰囲気を所定のプロセス圧力に維持する。このとき、基板Sの温度を処理容器22内に設けた図示しない熱電対により測定し、その温度に基づいて高周波電力のパワーを制御することにより基板Sの温度を所定のプロセス温度に制御しつつ、例えば成膜処理を行う。処理中には、誘導加熱コイル104が昇温するので、これを冷却するために冷却器116からは冷却水などの冷媒を誘導加熱コイル104内に流すようにする。この場合、成膜ガスの反応条件にもよるが、処理容器22の内壁面への膜付着を防止するためには、壁面を冷却するのが望ましい。
【0045】
本実施形態のように誘導加熱により誘導発熱体Nを発熱させ、その熱で基板Sを加熱する方式の場合には、誘電体でかつ熱容量の大きい処理容器22自体はほとんど加熱されず、かつ加熱能力が大きいため、高速昇温および高速降温が可能であり、かつ、1000℃以上の高温の加熱にも十分に対応することができる。
【0046】
また、このように熱容量の大きな処理容器22自体はほとんど加熱されないため、その分、消費エネルギーを少なくすることができる。そして、このように処理容器22が加熱されないことにより、処理容器22は低温に維持されることから、特に成膜処理の場合には処理容器22の内壁面に不要な付着膜が堆積することを抑制することができ、その分、パーティクルの発生を低くすることができる。また、クリーニング処理を行う頻度を少なくすることができる。
【0047】
ところで、このように高周波電力により誘導加熱する場合、表皮効果により誘導電流は被加熱体の主に表面部分にしか流れない。すなわち、誘導電流は被加熱体の表面から急激に低下し、誘導電流の強さが表面の1/e(≒0.368)倍に減少した点までの深さがスキンデプスδと定義され、このδは以下の(1)式で与えられる。
δ=(2/ωμ0σ)1/2 ・・・(1)
ここで、
ω:角周波数(=2πf:fは周波数)
μ0:透磁率
σ:電気伝導度(S/m)
【0048】
被加熱体である誘導発熱体NをカーボングラファイトまたはSiC等の非磁性材料で構成した場合はμ0=1であり、電気伝導度および周波数として上記範囲を考慮すると、δは数mm〜数十mmの範囲となる。
【0049】
したがって、誘導発熱体Nを基板Sと重なる円板状のものとすると、誘導電流は円板の周囲部分にしか流れず、したがって、誘導発熱体の周囲部分しか発熱しないこととなって、均一に基板Sを加熱することは困難である。
【0050】
このような不都合を防止するために、特許文献1に示すように、誘導発熱体に切り込み状の溝部を形成して、誘導電流が発熱体の内部にも流れるようにした場合には、誘導体の中央部にも誘導電流が流れて発熱するため、多少温度均一性が高まる。しかしながら、溝部の先端部にホットスポットが生じるため、十分な温度均一性を得ることが困難であり、また、発熱体の内部に誘導電流が流れる際に、不可避的に逆起電力が生じ、トータルの発熱量が下がってしまい、効率が低いという問題がある。
【0051】
これに対して、本実施形態のように、誘導発熱体Nをスパイラル状とすることにより、スパイラルを構成する線に沿って誘導電流が中心から外周、または外周から中心に流れるので、誘導発熱体Nを全体的に発熱させることができる。また、スパイラルを滑らかな形状とすることによりホットスポットの発生を防止することができるので、基板Sを均一に加熱することができる。また、リターン部132の抵抗を低下させることにより逆起電力の分布を形成させないようにすることができ、効率的な加熱を行うことができる。具体的には、リターン部132の断面積を大きくする、および/またはリターン部132としてスパイラル状の本体131よりも大きくすることにより、リターン部132の抵抗を本体131の抵抗よりも小さくすることが好ましい。断面積を同じにした場合には、リターン部132の電気伝導度を本体131よりも1オーダー以上高くすることが好ましい。
【0052】
逆起電力をより小さくしてより均一に基板Sを加熱するためには、本体131のようなスパイラル状体を2枚重ねて、それらの中央端同士および外周端同士を接続し、これらスパイラル状体を一筆書きで同じ方向に誘導電流が流れるように構成した誘導発熱体を設けることが好ましい。具体例としては、図5の平面図および図6の断面図に示すように、一方のスパイラル状体133に対し、他方の同形のスパイラル状体134を裏返した状態で重ね、中央端133aおよび134a同士ならびに外周端133bおよび134b同士をそれぞれ接続した誘導発熱体N′を挙げることができる。このときの誘導電流の流れを図7にわかりやすく示すが、例えば、スパイラル状体133の中央端133aから時計回りに誘導電流が外周端133bまで流れ、次いで、そこに接続されているスパイラル状体134の外周端134bから再び時計回りに誘導電流が流れ、中央端134aに達すると、再びスパイラル状体133の中央端133aから同じ方向に誘導電流が流れるというように、エンドレスで同じ方向に流れる。このため、逆起電力が発生せずに極めて効率がよく均一性の高い加熱を実現することができる。
【0053】
また、加熱の均一性を高める観点からは、図8に示すように、誘導発熱体N(N′)と基板Sの間に均熱部材141を設けることが好ましい。スパイラル状の誘導発熱体Nが基板Sに直接面していると、基板Sに誘導発熱体Nのパターンに対応した温度分布が生じて不均一に加熱されるおそれがあるが、このように誘導発熱体N(N′)と基板Sの間に均熱部材141を設けることにより、温度分布が均されて均一な温度分布を実現することが可能となる。この均熱部材としては熱伝導性の高い誘電体であることが好ましい。このような材料としてはAlN、Al2O3、Si3N4等を用いることができる。その中では熱伝導性が特に高いAlNが好適である。均熱部材141は、図8では、基板Sと接触するように設けられているが、基板Sとわずかに離隔して設けてもよい。
【0054】
また、必ずしも均一に加熱する必要はなく、加熱の効果が基板Sの部位によって異なることを考慮して、基板Sの加熱に分布をつけるようにすることもできる。例えば、基板Sの部位によって誘導発熱体Nとの距離を異ならせることにより、加熱に分布を形成することができる。図9の例では、中央では誘導発熱体Nと基板Sとの距離が離れており、外側に行くにつれて誘導発熱体Nと基板Sとの距離が近づく例である。この場合には、中央で加熱の効果が小さく、外周ほど加熱の効果が大きくなる。
【0055】
また、誘導発熱体Nのスパイラルを均一に形成するのではなくスパイラル線の密度を変えることによっても加熱に分布を形成することができる。図10の例では、中央では誘導発熱体Nのスパイラル線の密度が疎であるのに対し、外側に行くにつれてスパイラル線の密度が密になって行く例である。この場合も、中央で加熱の効果が小さく、外周ほど加熱の効果が大きくなる。
【0056】
さらに、誘導発熱体Nのスパイラル線の径を部位により変えることによっても加熱に分布を形成することができる。図11の例では、外周側ではスパイラル線の径が小さく、内側に行くに従ってスパイラル線の径が大きくなる例である。この場合も中央で加熱の効果が小さく、外周ほど加熱の効果が大きくなる。
【0057】
なお、上記実施形態では誘導加熱コイル104を処理容器22の外側に巻回したが、処理容器22の内部に設けてもよい。この場合には誘導加熱コイル104を誘電体の内部に設ければ、処理容器22を金属で構成することもできる。
【0058】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。ここでは一枚の基板を処理する枚葉式の熱処理装置の例について示す。
図12は本発明の第2の実施形態に係る熱処理装置を示す断面図である。図12に示すように、熱処理装置201は、円筒状をなす処理容器202を有している。この処理容器202は、耐熱性を有し、電磁波(高周波電力)を透過する誘電体材料、例えば石英で構成されている。処理容器202内には、基板Sを載置する基板載置台203が、処理容器202の底部から延びる脚部204に支持された状態で配置されている。基板載置台203としては熱伝導性の高い誘電体であることが好ましい。このような材料としてはAlN、Al2O3、Si3N4等を用いることができる。その中では熱伝導性が特に高いAlNが好適である。図12では基板Sを基板載置台203に直接載置しているが、基板Sと基板載置台203を僅かに離隔するようにしてもよい。
【0059】
処理容器202にはゲートバルブで開閉可能な基板搬入出口(いずれも図示せず)が設けられており、また、載置台203にはその上面に対して突没可能に基板昇降ピン(図示せず)が設けられており、基板搬送アーム(図示せず)により基板搬入出口を介して基板Sを搬入出し、基板載置台203に対して基板Sの授受を行う際には、基板昇降ピンが載置台203の上方へ突出される。
【0060】
基板載置台203の下方には、支持台205に支持された状態で誘導発熱体Nが、基板載置台203に載置された基板Sと対応する位置(上下に重なる位置)に配置されている。誘導発熱体Nは第1の実施形態と同様に構成される。もちろん図5、6に示した誘導発熱体N′を用いることもできる。
【0061】
処理容器202の側壁には、処理容器202内へ処理ガスを導入するための処理ガス導入孔206が形成されており、この処理ガス導入孔206には処理ガス供給配管207が接続され、熱処理、例えば成膜処理に必要な処理ガスを処理容器202内に導入するようになっている。図示はしていないが、処理ガス供給配管207には、処理ガスの数に応じたガス配管が接続されており、これらガス配管には開閉弁やマスフローコントローラのような流量制御器が設けられている。ガスの種類やガスの数は熱処理に応じて適宜決定される。第1の実施形態と同様、熱処理である成膜処理としては、シリコン、窒化シリコン、酸化シリコン等のCVD成膜、GaN等のエピタキシャル成長が例示される。また熱処理としては、成膜処理に限らず、酸化処理、アニール処理等、種々のものを挙げることができる。これらの処理に応じて、基板Sも半導体基板、サファイア基板、ZnO基板、ガラス基板等種々のものを用いることができる。
【0062】
処理容器202の側壁の処理ガス導入孔206と対向する位置には、排気孔208が形成されており、この排気孔208には処理容器202内を排気する排気系210が設けられている。排気系210は、排気孔208に接続された排気通路210aと、排気通路210aに設けられた圧力制御弁210bと、排気通路210aに接続されて、排気通路210aを介して処理容器202内を排気する排気ポンプ210cとを有している。なお、処理の種類によっては、低圧の真空状態から大気圧程度の圧力で処理を行う場合があり、これに対応して、排気系210によって高真空から大気圧の近傍まで処理容器202内の圧力を制御できるようになっている。
【0063】
処理容器202の上方には、処理容器202の天壁202aに面するように、誘導加熱コイル212が設けられている。誘導加熱コイルは、金属製パイプを平面スパイラル状に巻回してなっており、基板載置台203状の基板Sよりも広い領域をカバーしている。誘導加熱コイル212を構成する金属製パイプの材料としては銅を好適に用いることができる。この誘導加熱コイル212の中央端と外周端には、高周波電源214から延びる給電ライン213が接続されており、高周波電源214から誘導加熱コイル212に高周波電力が印加されるようになっている。この給電ライン213の途中には、インピーダンス整合を行うマッチング回路216が設けられている。
【0064】
誘導加熱コイル212に高周波電力を印加することにより、処理容器202の内部に誘導磁界が形成され、その誘導磁界によって生じる誘導電流が、処理容器202内の誘導発熱体Nに流れ、誘導発熱体Nが発熱するようになっている。この高周波電源214の高周波の周波数は、例えば0.5〜50kHzの範囲内、好ましくは1〜5kHzの範囲内に設定される。なお、処理容器202の壁部の温度が上昇しないように、図示しない冷却ガス供給機構により、処理容器202の内壁に冷却ガスが供給されるようになっている。
【0065】
図示はしていないが、この熱処理装置201にも、第1の実施形態の熱処理装置1と同様の、制御部、記憶部、ユーザーインターフェースを有している。
【0066】
次に、以上のように構成された熱処理装置201を用いて行われる熱処理について説明する。
【0067】
まず、ゲートバルブを開けて搬入出口から搬送装置の搬送アームによって基板Sを処理容器202内に搬入し、基板載置台203上に載置する。そして、ゲートバルブを閉じて処理容器202内を密閉状態とする。
【0068】
次いで、高周波電源214をオンにして誘導加熱コイル212に高周波電力を印加し、この誘導加熱コイル212から高周波電力を放射させる。誘導加熱コイル212から放射された高周波電力は処理容器202の天壁202aを透過して内部に至り、それによって処理容器202の内部に誘導磁界が形成され、その誘導磁界によって生じる誘導電流が誘導発熱体Nに流れ、誘導発熱体Nが発熱する。これにより誘導発熱体Nからの放射熱によって、基板載置台203を介して基板Sが加熱されて昇温する。
【0069】
これと同時に、処理ガス供給配管207および処理ガス導入孔206を介して熱処理、例えば成膜処理に必要な成膜ガスを流量制御しつつ供給し、排気孔208から排気系210により真空引きして処理容器202内の雰囲気を所定のプロセス圧力に維持する。このとき、基板Sの温度を処理容器202内に設けた図示しない熱電対により測定し、その温度に基づいて高周波電力のパワーを制御することにより基板Sの温度を所定のプロセス温度に制御しつつ、例えば成膜処理を行う。処理中には、処理容器202内に冷却ガスを流して処理容器202の内壁を冷却する。この際に、成膜ガスの反応条件にもよるが、処理容器202の内壁面への膜付着を防止するためには、壁面を冷却するのが望ましい。
【0070】
このようにして、第1の実施形態と同様、誘導加熱により誘導発熱体を発熱させ、その熱で基板Sを加熱するので、熱容量の大きい処理容器202自体はほとんど加熱されず、かつ加熱能力が大きいため、高速昇温および高速降温が可能であり、かつ、1000℃以上の高温の加熱にも十分に対応することができる。また、このように熱容量の大きな処理容器202自体はほとんど加熱されないため、その分、消費エネルギーを少なくすることができる。そして、このように処理容器202が加熱されないことにより、処理容器202の内壁面は低温に維持されることから、特に成膜処理の場合には処理容器202の内壁面に不要な付着膜が堆積することを抑制することができ、その分、パーティクルの発生を低くすることができる。また、クリーニング処理を行う頻度を少なくすることができる。
【0071】
また、第1の実施形態と同様、誘導発熱体Nがスパイラル状であるので、スパイラルを構成する線に沿って誘導電流が中心から外周、または外周から中心に流れ、誘導発熱体Nを全体的に発熱させることができ、また、スパイラルを滑らかな形状とすることによりホットスポットの発生を防止することができ、基板Sを均一に加熱することができる。また、リターン部132の抵抗を低下させることにより逆起電力の分布を形成させないようにすることができ、効率的な加熱を行うことができる。
【0072】
なお、第2の実施形態においては、誘導加熱コイル212は、処理容器202の上方に限らず、図13に示すように処理容器202の下方に設けても、図14に示すように処理容器202の側面に巻回してもよい。また、誘導加熱コイル212は処理容器202の外側に限らず処理容器202の内部に設けてもよい。ただし、この場合には、発熱させたくない金属部材が発熱しないように、誘電体の内部に設けることが好ましい。誘導加熱コイル212を誘電体内に設けた場合には、処理容器202は金属製であってもよい。
【0073】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。ここでは第2の実施形態における枚葉式の熱処理装置をベースにして複数枚の基板を処理可能にした熱処理装置の例について示す。
図15は本発明の第3の実施形態に係る熱処理装置を示す断面図であり、図16はその基板載置台を示す平面図である。本実施形態では第2の実施形態の図12の装置をベースとしているので、図12と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0074】
本実施形態の熱処理装置301は、複数枚の基板Sを載置する円板状の基板載置台303が処理容器202内に水平に設けられている。基板載置台303はその中心から下方に延びる筒状の回転軸304により支持されており、回転軸304は処理容器202の底部を突き抜けてその下方に至り、図示しない回転駆動機構により回転され、回転軸304の回転にともなって基板載置台303が回転するようになっている。回転軸304と処理容器202の底部との間は流体シール305により気密にシールされている。
【0075】
基板載置台303の上面には基板載置台303よりも小径の円板状をなす基板搬送板306が昇降可能に設けられており、この基板搬送板306に複数の基板Sが載置される。本例では8枚の基板Sが周方向に等間隔に配列されている。この基板搬送板306は昇降部材307に支持されており、昇降部材307の下面から回転軸304の内を昇降軸308が下方に延びている。そして、図示しない昇降機構により昇降軸308、昇降部材307を介して基板搬送板306が昇降され、複数の基板Sを基板搬送板306ごと搬送できるようになっている。
【0076】
基板載置台303および基板搬送板306としては熱伝導性の高い誘電体であることが好ましい。このような材料としてはAlN、Al2O3、Si3N4等を用いることができる。その中では熱伝導性が特に高いAlNが好適である。
【0077】
基板載置台303の下面には、複数の誘導発熱体Nが基板載置台303に載置された複数の基板Sとそれぞれ対応する位置(上下に重なる位置)に設けられている。複数の誘導発熱体Nは、円環状の保持部材310により保持されている。誘導発熱体Nは、基板載置台303の下面に接触していてもよいし、離隔していてもよい。誘導発熱体Nは第1の実施形態と同様に構成される。もちろん図5、6に示した誘導発熱体N′を用いることもできる。
【0078】
図示はしていないが、この熱処理装置301にも、第1の実施形態の熱処理装置1と同様の、制御部、記憶部、ユーザーインターフェースを有している。
【0079】
次に、以上のように構成された熱処理装置301を用いて行われる熱処理について説明する。
【0080】
まず、ゲートバルブを開けて搬入出口から搬送装置の搬送アームによって複数の基板Sを載置した基板搬送板306を処理容器202内に搬入し、基板載置台303上に載置する。そして、ゲートバルブを閉じて処理容器202内を密閉状態とする。
【0081】
次いで、図示しない回転駆動機構により基板載置台303を回転しながら、高周波電源214をオンにして誘導加熱コイル212に高周波電力を印加し、この誘導加熱コイル212から高周波電力を放射させる。誘導加熱コイル212から放射された高周波電力は処理容器202の天壁202aを透過して内部に至り、それによって処理容器202の内部に誘導磁界が形成され、その誘導磁界によって誘導発熱体Nに誘導電流が流れ、誘導発熱体Nが発熱する。これにより誘導発熱体Nからの放射熱によって、基板載置台303および基板搬送板306を介して基板Sが加熱されて昇温する。
【0082】
これと同時に、処理ガス供給配管207および処理ガス導入孔206を介して熱処理、例えば成膜処理に必要な成膜ガスを流量制御しつつ供給し、排気孔208から排気系210により真空引きして処理容器202内の雰囲気を所定のプロセス圧力に維持する。このとき、基板Sの温度を処理容器202内に設けた図示しない熱電対により測定し、その温度に基づいて高周波電力のパワーを制御することにより基板Sの温度を所定のプロセス温度に制御しつつ、例えば成膜処理を行う。処理中には、処理容器202内に冷却ガスを流して処理容器202の内壁を冷却する。この際に、成膜ガスの反応条件にもよるが、処理容器202の内壁面への膜付着を防止するためには、壁面を冷却するのが望ましい。第1および第2の実施形態と同様、熱処理である成膜処理としては、シリコン、窒化シリコン、酸化シリコン等のCVD成膜、GaN等のエピタキシャル成長が例示される。また熱処理としては、成膜処理に限らず、酸化処理、アニール処理等、種々のものを挙げることができる。これらの処理に応じて、基板Sも半導体基板、サファイア基板、ZnO基板、ガラス基板等種々のものを用いることができる。
【0083】
この実施形態では、第2の実施形態と同様の効果を有する他、枚葉式の熱処理装置をベースにしながら一度に複数枚の基板を処理することができるので、処理効率を極めて高いものとすることができる。
【0084】
なお、本実施形態においても第2の実施形態と同様、誘導加熱コイル212は、処理容器202の上方に限らず、処理容器202の下方に設けても、処理容器202の側面に巻回してもよい。また、誘導加熱コイル212は処理容器202の外側に限らず処理容器202の内部に設けてもよい。ただし、この場合には、発熱させたくない金属部材が発熱しないように、誘電体の内部に設けることが好ましい。誘導加熱コイル212を誘電体内に設けた場合には、処理容器202は金属製であってもよい。
【0085】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について説明する。ここでは第2の実施形態における枚葉式の熱処理装置において、上述したような、スパイラル状体を2枚重ねて、それらの中央端同士および外周端同士を接続し、これらスパイラル状体を一筆書きで同じ方向に誘導電流が流れるように構成した誘導発熱体を内側と外側とに分割して設け、これらをそれぞれ独立して誘導加熱する例について説明する。
【0086】
図17は本発明の第4の実施形態に係る熱処理装置を示す断面図である。図17において、第2の実施形態の図12と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0087】
図17に示すように、熱処理装置401は、円筒状をなす処理容器402を有している。この処理容器402は、金属であっても誘電体であってもよい。
【0088】
処理容器402内には、基板Sを載置する基板載置台403が水平に設けられている。基板載置台403はその中心から下方に延びる筒状の回転軸404により支持されており、回転軸404は処理容器402の底部を突き抜けてその下方に至り、図示しない回転駆動機構により回転され、回転軸404の回転にともなって基板載置台403が回転するようになっている。回転軸404と処理容器402の底部との間は流体シール405により気密にシールされている。
【0089】
基板載置台403としては熱伝導性の高い誘電体であることが好ましい。このような材料としてはAlN、Al2O3、Si3N4等を用いることができる。その中では熱伝導性が特に高いAlNが好適である。図17では基板Sを基板載置台403に直接載置しているが、基板Sと基板載置台403を僅かに離隔するようにしてもよい。
【0090】
処理容器402にはゲートバルブで開閉可能な基板搬入出口(いずれも図示せず)が設けられており、また、載置台403にはその上面に対して突没可能に基板昇降ピン(図示せず)が設けられており、基板搬送アーム(図示せず)により基板搬入出口を介して基板Sを搬入出し、基板載置台403に対して基板Sの授受を行う際には、基板昇降ピンが載置台403の上方へ突出される。
【0091】
基板載置台403の内部には、誘導発熱体N″が設けられている。誘導発熱体N″は、上述したように、スパイラル状体を2枚重ねて、それらの内側端同士および外周端同士を接続し、これらスパイラル状体を一筆書きで同じ方向に誘導電流が流れるように構成した誘導発熱体を内側(中央側)と外側とに設けたものである。具体的には、図18の平面図にも示すように、誘導発熱体N″は、内側に設けられた第1の発熱体N1と外側に設けられた第2の発熱体N2とからなっている。第1の発熱体N1は、上記図5および図6で説明したN′と同様の構成を有している。すなわち、図19に示すように、第1の発熱体N1は、スパイラル状体133と同様のスパイラル状体433に対し、同形のスパイラル状体434を裏返した状態で重ね、内側端(中央端)433aおよび434a同士ならびに外周端433bおよび434b同士をそれぞれ接続したものである。また、第2の発熱体N2も同様であり、図19および図20に示すように、スパイラル状体433の外側に設けられたスパイラル状体443に対し、同形のスパイラル状体444を裏返した状態で重ね内側端443aおよび444a同士ならびに外周端443bおよび444b同士をそれぞれ接続したものである。
【0092】
処理容器402内の基板載置台403(誘導発熱体N″)の下方位置には、誘導加熱部450が設けられている。誘導加熱部450は、円環状をなす石英等の誘電体からなる誘電体部材452とその内部に設けられた誘導加熱コイル453とからなる誘導加熱コイルユニット451を有している。誘導加熱コイルユニット451は、処理容器402の底部から上方へ延びる脚部455に支持された円環状の保持部材454に保持されている。
【0093】
図21に示すように、誘導加熱コイル453は、内側の第1の発熱体N1に対応した位置に設けられた第1の誘導加熱コイル456と、その外側の第2の発熱体N2に対応した位置に設けられた第2の誘導加熱コイル457とを有している。第1の誘導加熱コイル456と第2の誘導加熱コイル457には、共通の高周波電源460から高周波電力が供給されるようになっている。また、第1の誘導加熱コイル456と第2の誘導加熱コイル457との間には可変コンデンサ461が介在されており、この可変コンデンサ461により第1の誘導加熱コイル456と第2の誘導加熱コイル457の電流分配を調整することができるようになっている。
【0094】
図示はしていないが、この熱処理装置401にも、第1の実施形態の熱処理装置1と同様の、制御部、記憶部、ユーザーインターフェースを有している。
【0095】
なお、ガス供給系および排気系については、図12と同様であるので同じ符号を付して説明は省略する。
【0096】
このように構成される第4の実施形態の熱処理装置においては、内側(中央側)の第1の発熱体N1と外側の第2の発熱体N2に分割された誘導発熱体N″を用い、誘導加熱コイル453を第1の誘導加熱コイル456と第2の誘導加熱コイル457とを有するものとして、可変コンデンサ461を調整することにより第1の誘導加熱コイル456と第2の誘導加熱コイル457の電流分配を調整することができるようにしたので、制御部により可変コンデンサ461を制御することにより第1の発熱体N1および第2の発熱体N2の発熱量を独立して調整して基板Sの中央部と外周部で加熱を独立に制御することができる。このため、基板Sの温度分布を微調整することが可能である。
【0097】
また、誘導発熱体N″を構成する第1の発熱体N1と第2の発熱体N2は、いずれもスパイラル状体を2枚重ねて、それらの中央端同士および外周端同士を接続し、これらスパイラル状体を一筆書きで同じ方向に誘導電流が流れるように構成されているため、逆起電力が発生せずに極めて効率がよく均一性の高い加熱を実現することができる。
【0098】
したがって、本実施形態の熱処理装置によれば、基板Sが大型のものであっても均一な加熱を実現することができ、また、プロセス条件に応じて所望の温度分布を実現することも可能である。
【0099】
なお、図17においては、誘導加熱コイルユニット451を誘導発熱体N″の下方位置に設けたが、第1の発熱体N1と第2の発熱体N2の発熱量を調整可能な位置であればこれに限定されず、図22に示すように誘導発熱体N″の上方に設けてもよい。また、可変コンデンサ461を調整することにより第1の誘導加熱コイル456と第2の誘導加熱コイル457の電流分配を調整するようにしたが、図23に示すように、第1の誘導加熱コイル456と第2の誘導加熱コイル457にそれぞれ別個に高周波電源460aおよび460bを設け、これらの出力を調整することにより電流分配を調整するようにしてもよい。さらに、第3の実施形態のように、基板載置台403に複数枚の基板を載置して複数枚の基板を処理するようにしてもよい。この場合には、複数の基板の間で均一な処理を行うことが可能となる。さらにまた、図17の装置では基板載置台403を回転可能としたが、必ずしも回転させる必要はない。さらにまた、誘導発熱体として内側の第1の発熱体と外側の第2の発熱体とに分割したものを用いたが、3つ以上に分割されたものであってもよい。
【0100】
<他の適用>
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、熱処理としては、成膜処理、酸化処理、アニール処理を挙げたが、その他、拡散処理、改質処理、エッチング処理等、基板の加熱をともなう処理であれば本発明の熱処理に含まれる。また、本発明の熱処理においては、ガスの供給は必須ではない。また、基板についても、上述したように、処理に応じて半導体基板、サファイア基板、ZnO基板、ガラス基板等種々のものを用いることができ、特に限定されるものではない。また、本実施形態では、誘導発熱体の材料として、カーボングラファイトおよびSiCを例示したが、これに限定されず、ガラス質の炭素やSiC以外の導電性セラミックス(導電性SiN等)を用いることもできる。
【符号の説明】
【0101】
1,201,301,401:熱処理装置
22,202,402;処理容器
24;保持部材
30;昇降機構
42a〜42c;支柱
54;回転機構
90:ガス供給機構
102,210;排気系
104,212;誘導加熱コイル
110,214;高周波電源
131;本体
131a;中央端
131b;外周端
132;リターン部
133,134;スパイラル状体
133a,134a;中央端
133b,134b;外周端
141;均熱部材
203,303,403;基板載置台
207;処理ガス供給配管
306;基板搬送板
433,434,443,444;スパイラル状体
433a,434a;内側端(中央端)
433b,434b;外周端
443a,444a;内側端
443b,444b;外周端
450;誘導加熱部
451;誘導加熱コイルユニット
452;誘電体部材
453;誘導加熱コイル
456;第1の誘導加熱コイル
457;第2の誘導加熱コイル
460,460a,460b;高周波電源
461;可変コンデンサ
N,N′,N″;誘導発熱体
N1;第1の発熱体
N2;第2の発熱体
S;基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理容器内の基板に熱処理を施す熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体ウエハ等の基板に対して成膜処理や酸化処理等の熱処理を行う場合には、縦型の石英製の処理容器内に、複数の基板を垂直方向に多段に配置し、処理容器の周囲に設けられた円筒状の抵抗発熱型のヒーターにより基板を加熱するバッチ式の縦型熱処理装置が広く用いられている。
【0003】
しかしながら、従来の縦型熱処理装置は、抵抗発熱型のヒーターを用いて処理容器の外側から加熱する方式であるため、熱容量の大きい石英製の処理容器も加熱することになり、エネルギー効率が悪い。また、処理容器の壁部が基板と同程度の高温になるため、特に成膜処理の場合には、処理のための原料ガスによる生成物が処理容器の内壁にも堆積して、基板に供給される原料ガスが不足するおそれや処理容器の内壁面に堆積した堆積物がパーティクルとなって基板に付着するおそれがある。
【0004】
また、半導体素子の微細化にともない、ドーパントの不必要な拡散等を防止する必要性等から、高速昇温および高速降温が可能なことが求められており、また最近では、縦型熱処理装置にてGaN系半導体素子をエキタキシャル成長により形成することが検討されているが、やはり高速昇温および高速降温が求められ、加えて1000℃以上の高温に加熱できることが求められている。しかしながら、従来の縦型処理装置では、熱容量の大きい処理容器も加熱されることから、要求される高速昇温および高速降温には対応することが困難である。また、抵抗発熱型のヒーターでは1000℃以上の高温に対応することは困難である。
【0005】
このような問題を解決可能な技術として、誘導加熱を利用したものが考えられる。すなわち、誘導加熱を利用した処理装置として、誘電体からなる処理容器の外部に誘導加熱用コイルを設け、処理容器内部に配置された基板の下方に発熱体を設け、誘導加熱コイルに高周波電力を供給することにより発熱体を誘導加熱し、その熱により基板を加熱するものが考えられる。このように誘導加熱により発熱する誘導発熱体によって基板を加熱する場合には、熱容量の大きい処理容器自体は加熱されず、基板に対する加熱能力が大きいため、高速昇温および高速降温が可能であり、1000℃以上の加熱にも対応することができ、処理容器が加熱されることにともなう上記不都合も生じない。
【0006】
しかしながら、基板に対応する形状、例えば円板状の無垢の発熱体を設けた場合には、表皮効果により、誘導電流が発熱体の周縁部のみにしか流れず、発熱体の周縁部のみ発熱して中央部が発熱しないため、基板を均一に加熱することは困難である。
【0007】
このような不都合を防止する技術として、特許文献1には、誘導発熱体に切り込み状の溝部を形成して、誘導電流を発熱体の内部にも流れるようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−176841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発熱体に切り込み状の溝部を形成した場合には、中央部も発熱されるため、無垢の発熱体よりも温度均一性が高まるが、溝部の先端部にホットスポットが生じるため、十分な温度均一性を得ることが困難である。また、発熱体の内部に誘導電流が流れる際に、不可避的に逆起電力が生じ、トータルの発熱量が下がってしまい、効率が低いという問題がある。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、誘導加熱を用いて基板を熱処理する熱処理装置において、基板の温度均一性を高くし、かつ効率を高くすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、複数の基板に熱処理を施す熱処理装置であって、熱処理が施される複数の基板を収容する処理容器と、複数の基板を上下に配列した状態で保持し、前記処理容器内へ挿脱される基板保持部材と、前記処理容器内に誘導磁界を形成して誘導加熱するための誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波電力を印加する高周波電源と、前記処理容器内で、前記複数の基板にそれぞれ重ね合うように設けられ、前記誘導加熱コイルに前記高周波電力を印加することにより発生した誘導電流が流れて発熱する、スパイラル状部を有する誘導発熱体とを具備することを特徴とする熱処理装置を提供する。
【0012】
本発明の第2の観点では、基板に熱処理を施す熱処理装置であって、熱処理が施される基板を収容する処理容器と、前記処理容器内で1または2以上の基板を保持する基板保持部と、前記処理容器に誘導磁界を形成して誘導加熱するための誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波電力を印加する高周波電源と、前記処理容器内に基板と対応するように設けられ、前記誘導加熱コイルに前記高周波電力を印加することにより発生した誘導電流が流れて発熱する、スパイラル状部を有する誘導発熱体とを具備することを特徴とする熱処理装置を提供する。
【0013】
本発明の第3の観点では、基板に熱処理を施す熱処理装置であって、熱処理が施される基板を収容する処理容器と、前記処理容器内で1または2以上の基板を保持する基板保持部と、前記処理容器に誘導磁界を形成して誘導加熱するための誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波電力を印加する高周波電源と、前記処理容器内に基板と対応するように設けられ、前記誘導加熱コイルに前記高周波電力を印加することにより発生した誘導電流が流れて発熱する、スパイラル状部を有する誘導発熱体とを具備し、前記誘導発熱体は、前記基板保持部の内側部分に対応する位置に設けられた第1の発熱体と、その外側に設けられた第2の発熱体とを有し、前記第1の発熱体と前記第2の発熱体は、いずれもスパイラル状体を2枚重ねて、それらの一方の端部同士および他方の端部同士を接続し、これらスパイラル状体を一筆書きで同じ方向に誘導電流が流れるように構成されており、前記誘導加熱コイルは、前記第1の発熱体に対応した位置に設けられた第1の誘導加熱コイルと、前記第2の発熱体に対応した位置に設けられた第2の誘導加熱コイルとを有し、前記第1の誘導加熱コイルと前記第2の誘導加熱コイルの電流分配を制御することにより、前記第1の発熱体と前記第2の発熱体の発熱量が独立して調整されることを特徴とする熱処理装置を提供する。
【0014】
上記第1の観点において、前記処理容器は誘電体からなり、前記誘導加熱コイルは前記処理容器の外周に巻回される構成とすることができる。また、前記基板保持部材は、前記複数の基板をそれぞれ保持する複数の基板保持部を有している構成とすることができる。この場合に、前記基板保持部材は、前記誘導発熱体と前記複数の基板とが交互に保持されるように、それぞれが前記誘導発熱体を保持するようにすることができる。さらに、前記基板保持部材は、前記誘導発熱体を保持し、前記誘導発熱体が基板保持部として機能するようにしてもよい。
【0015】
上記第2の観点において、前記処理容器は誘電体からなり、前記誘導加熱コイルは前記処理容器の外側に設けられる構成とすることができる。また、前記基板保持部は1または2以上の基板を一つの平面上に載置する基板載置台を有する構成とすることができる。また、前記基板載置台に載置された基板に対応する前記基板載置台の下方の位置に設けられている構成とすることができる。前記誘導加熱コイルは、前記処理容器の天壁の上に平面状に巻回されている構成とすることができる。
【0016】
上記第1および第2の観点において、前記誘導発熱体は、スパイラル状をなす本体と、前記本体の中央端と外周端とをつなぐリターン部とを有している構成とすることができる。この場合に、前記リターン部は、導電率もしくは断面積、またはその両方が前記本体よりも大きいことが好ましい。
【0017】
また、前記誘導発熱体は、2つのスパイラル状体を有し、これらの中央端同士および外周端同士を接続した際に、これら2つのスパイラル状体に同じ方向に誘導電流が流れるように、これら2つのスパイラル状体を重ねて配置してなるものとすることができる。この場合に、2つのスパイラル状体は同形をなし、互いに裏返しになるように重ね合わされていることが好ましい。
【0018】
上記第3の観点において、前記第1の発熱体および前記第2の発熱体をそれぞれ構成する2つのスパイラル状体は同形をなし、互いに裏返しになるように重ね合わされていることが好ましい。また、前記誘導加熱コイルは、前記処理容器内の前記誘導発熱体の上方位置または下方位置に設けられていることが好ましい。
【0019】
上記第1〜第3の観点において、前記基板保持部材に保持された基板と前記誘導発熱体との間に設けられた均熱部材をさらに具備することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、処理容器内に基板に対応してスパイラル状部を有する誘導発熱体を設け、この誘導発熱体に誘導電流を流すようにしたので、誘導発熱体のスパイラル部を構成する線に沿って誘導電流が中心から外周、または外周から中心に流れ、誘導発熱体を全体的に発熱させることができる。また、スパイラルを滑らかな形状とすることにより、ホットスポットの発生を防止して基板を均一に加熱することができる。また、逆起電力の分布を形成させないようにすることができるので、効率的な加熱を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る熱処理装置を示す縦断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る熱処理装置を示す横断面図である。
【図3】誘導発熱体を示す平面図である。
【図4】誘導発熱体を示す断面図である。
【図5】誘導発熱体の他の例を示す平面図である。
【図6】誘導発熱体の他の例を示す断面図である。
【図7】図5、6の誘導発熱体の誘導電流の流れを示す図である。
【図8】誘導発熱体と基板との間に均熱部材を設けた例を示す模式図である。
【図9】基板の中央から外側に行くにつれて誘導発熱体と基板との距離が離れるように配置した例を示す断面図である。
【図10】誘導発熱体のスパイラル線の密度を外側に行くにつれて密にした例を示す断面図である。
【図11】誘導発熱体のスパイラル線の径が内側に行くに従って大きくなる例を示す断面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る熱処理装置を示す断面図である。
【図13】図12の熱処理装置の変形例を示す断面図である。
【図14】図12の熱処理装置の他の変形例を示す断面図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る熱処理装置を示す断面図である。
【図16】本発明の第3の実施形態に係る熱処理装置の基板載置台を示す平面図である。
【図17】本発明の第4の実施形態に係る熱処理装置を示す断面図である。
【図18】本発明の第4の実施形態に用いた誘導発熱体の第1の発熱体と第2の発熱体の配置を説明するための図である。
【図19】本発明の第4の実施形態に用いた誘導発熱体の断面図である。
【図20】第2の発熱体を示す平面図である。
【図21】本発明の第4の実施形態に用いた誘導加熱コイルの電流分配方式を説明するための図である。
【図22】図17の熱処理装置の変形例を示す断面図である。
【図23】図17の熱処理装置における誘導加熱コイルの他の電流分配方式を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。ここでは、複数の基板を処理容器内に上下方向に配列して熱処理を行う縦型熱処理装置の例について示す。
図1は本発明の第1の実施形態に係る熱処理装置を示す縦断面図、図2はその横断面図、図3は誘導発熱体を示す平面図、図4は誘導発熱体を示す断面図である。図1に示すように、熱処理装置1は、下端が開放され、上下方向に延びる円筒状をなす縦型の処理容器22を有している。この処理容器22は、耐熱性を有し、電磁波(高周波電力)を透過する誘電体材料、例えば石英で構成されている。
【0023】
この処理容器22内には、その下方から、複数の誘導発熱体Nを所定のピッチで上下方向に保持して、各誘導発熱体Nの上に基板Sを載置した状態で基板Sを保持する基板保持部材24が挿入可能となっている。各基板Sは主にその直下の誘導発熱体Nにより加熱されるようになっている。この基板保持部材24が挿入された際には、処理容器22の下端の開口部は、例えば石英やステンレス板よりなる蓋部26により塞がれて密閉されるようになっている。処理容器22の下端部と蓋部26との間には、気密性を維持するために例えばOリング等のシール部材28が介在される。この蓋部26および基板保持部材24の全体は、ボートエレベータのような昇降機構30に設けられたアーム32の先端に支持されており、基板保持部材24および蓋部26を一体的に昇降できるように構成されている。
【0024】
基板保持部材24は、全体が絶縁性の耐熱材料、例えば石英からなり、保持ボートとして構成されており、図2にも示すように、円形リング状になされた天板38と円形リング状になされた底板40と、その間に掛け渡された3本(図1では2本のみ図示)の支柱42a、42b、42cとで構成されている。3本の支柱42a〜42cは、平面内の半円弧の領域内に沿って等間隔で配置されており(図2参照)、その反対の半円弧側より誘導発熱体Nと基板Sを搬出入させるようになっている。各支柱42a〜42cの内側には、誘導発熱体Nの周縁部を保持するための溝部44が等ピッチで長手方向に沿って形成されており、この各溝部44に誘導発熱体Nの周縁部を支持させて複数個、例えば10〜55個枚程度の誘導発熱体Nを多段に等ピッチで支持できるようになっている。
【0025】
基板保持部材24は、下端の蓋部26に設けられた回転機構54により回転可能となっている。具体的には、回転機構54は、蓋部26の中央部より下方へ伸びる円筒状の固定スリーブ56を有しており、この固定スリーブ56内は処理容器22内に連通されている。この固定スリーブ56の外周には、軸受58を介して円筒状の回転部材60が回転可能に設けられており、この回転部材60には図示しない駆動源により走行駆動される駆動ベルト62が掛け渡されて、駆動ベルト62が駆動されることにより回転部材60が回転されるようになっている。
【0026】
また軸受58の下部において、固定スリーブ56と回転部材60との間には磁性流体シール59が設けられており、回転部材60が回転しても、上記処理容器22内の気密性を保持されるようになっている。
【0027】
固定スリーブ56内には、回転軸64が、挿通されている。この回転軸64の上端には、中央部が開口された回転テーブル66が取り付け固定されている。そして、この回転テーブル66上に円筒状をなす例えば石英からなる保温筒48が載置され、この保温筒48の上に基板保持部材24が載置されるようになっている。
【0028】
回転部材60および回転軸64は、ベース板70に固定されており、図示しない駆動源により駆動ベルト62を介して回転部材60が回転されることにより、回転軸64を介して基板保持部材24が回転される。
【0029】
図1に示すように、処理容器22の下部には、この処理容器22内へ熱処理、例えば成膜処理に必要なガスを導入するガス供給機構90が設けられている。ガス供給機構90は、処理容器22の外部から処理容器22の側壁を貫通してその内部に至る、例えば石英からなる第1のガスノズル92および第2のガスノズル94を有している。第1のガスノズル92および第2のガスノズル94には、それぞれガス供給配管96およびガス供給配管98が接続されており、これらには、それぞれ開閉弁96b、98bおよびマスフローコントローラのような流量制御器96a、98aが順次設けられており、熱処理に必要な第1のガスおよび第2のガスをそれぞれ流量制御しつつ導入できるようになっている。なお、熱処理に応じて、ガス種およびガスノズルをさらに増加してもよい。また、熱処理の種類によっては、使用するガスは1種類でもよく、その場合にはガス供給配管は1つでよい。熱処理である成膜処理としては、シリコン、窒化シリコン、酸化シリコン等のCVD成膜、GaN等のエピタキシャル成長が例示される。また、熱処理としては成膜処理に限らず、酸化処理、アニール処理等、種々のものを挙げることができる。これらの処理に応じて、基板Sも半導体基板、サファイア基板、ZnO基板、ガラス基板等、種々のものを用いることができる。
【0030】
処理容器22の天井部には、横方向へL字状に屈曲させた排気口100が設けられる。この排気口100には処理容器22内を排気する排気系102が設けられている。排気系102は、排気口100に接続された排気通路102aと、排気通路102aに設けられた圧力制御弁102bと、排気通路102aに接続されて、排気通路102aを介して処理容器22内を排気する排気ポンプ102cとを有している。なお、処理の種類によっては、低圧の真空状態から大気圧程度の圧力で処理を行う場合があり、これに対応して、排気系102によって高真空から大気圧の近傍まで処理容器22内の圧力を制御できるようになっている。
【0031】
処理容器22の外側には、誘導加熱コイル104が設けられている。誘導加熱コイル104は、金属製パイプを処理容器22の外周に上下方向に沿って螺旋状に巻回してなっており、上下方向におけるその巻回領域は基板Sの収容領域よりも広くなっている。
【0032】
誘導加熱コイル104は、金属製パイプを隙間を開けて巻回したものであっても、隙間を設けないで密に巻回したものであってもよい。誘導加熱コイル104を構成する金属製パイプの材料としては銅を好適に用いることができる。
【0033】
そして、この誘導加熱コイル104の上下の両端には、高周波電源110から延びる給電ライン108が接続されており、高周波電源110から誘導加熱コイル104に高周波電力が印加されるようになっている。この給電ライン108の途中には、インピーダンス整合を行うマッチング回路112が設けられている。
【0034】
誘導加熱コイル104に高周波電力を印加することにより、処理容器22の内部に誘導磁界が形成され、その誘導磁界によって生じる誘導電流が基板保持部材24に保持されている誘導発熱体Nに流れて誘導発熱体Nが発熱するようになっている。この高周波電源110の高周波の周波数は、例えば0.5〜50kHzの範囲内、好ましくは1〜5kHzの範囲内に設定される。
【0035】
また誘導加熱コイル104を構成する金属製パイプの両端には、冷媒流路114が接続されており、この冷媒流路114には冷却器116が接続され、冷却器116から冷媒流路114を介して誘導加熱コイル104を構成する金属製パイプ内に冷媒を流して誘導加熱コイル104を冷却するようになっている。冷媒としては、例えば冷却水を用いることができる。
【0036】
誘導発熱体Nは、発熱可能な導体からなっており、図3の平面図および図4の断面図に示すように、スパイラル状をなす、基板Sよりも大きな直径を有する本体131と、その中央端131aと外周端131bとを連結するリターン部132とを有する。リターン部132により中央端131aと外周端131bとを接続することにより、閉ループが形成され、誘導発熱体Nに誘導電流が流れるようになる。そして、誘導電流が流れることにより誘導発熱体Nが発熱する。
【0037】
本体131を構成する材料としては、熱伝導率が良好であり、高周波電力によって誘導加熱され得る非磁性の導電性材料を用いることができる。誘導発熱体Nを構成する材料は熱伝導率は大きい方がよく、例えば5W/mk以上、好ましくは100W/mk以上である。この熱伝導率が5W/mkよりも小さい場合には、誘導発熱体Nの面内温度の均一性が低下する傾向があり基板自体の面内温度の均一性も不十分になるおそれがある。このような材料としては、例えばカーボングラファイトやSiC等があり、誘導発熱体Nとしてこれらを好適に用いることができる。
【0038】
誘導発熱体Nに誘導電流が流れる際に、逆起電力を小さくして良好な効率を得る観点から、リターン部132の断面積および/または電気伝導度を本体131よりも大きくすることが好ましい。断面積を同じにした場合には、リターン部132の電気伝導度を本体131よりも1オーダー以上高くすることが好ましい。本体131をカーボングラファイトで構成した場合には、電気伝導度が1×103〜1×106(S/m)程度の範囲であるから、リターン部132としては電気伝導度が1×104〜1×107(S/m)の材料を用いることが好ましい。本体131をカーボングラファイトで構成した場合に、リターン部132を本体131よりも電気伝導度が高いカーボングラファイトで構成してもよい。
【0039】
熱処理装置1における各構成部は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えた制御部120により制御されるようになっている。制御部120には、オペレータによる熱処理装置1を管理するためのコマンド入力等の入力操作を行うキーボードや、熱処理装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース121が接続されている。さらに、制御部120には、熱処理装置1で実行される各種処理を制御部120の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて熱処理装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわち処理レシピが格納された記憶部122が接続されている。処理レシピは記憶部122の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、コンピュータに内蔵されたハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース121からの指示等にて任意の処理レシピを記憶部122から呼び出して制御部120に実行させることで、制御部120の制御下で、熱処理装置1での所望の処理が行われる。
【0040】
次に、以上のように構成された熱処理装置1を用いて行なわれる熱処理について説明する。
【0041】
基板保持部材24には、複数の誘導発熱体Nが、図示しないフォークを用いて予め搭載されており、この基板保持部材24を処理容器22内から下方へ降下させてアンロードした状態で、図示しない移載フォークを用いて基板Sを誘導発熱体Nの上に移載し、保持させる。この誘導発熱体Nは、複数バッチ処理に亘って連続使用してもよく、その場合には、処理容器22内のドライクリーニングと一緒にクリーニングすることができる。
【0042】
このようにして、基板Sの移載が完了したならば、昇降機構30を駆動することにより、基板保持部材24を上昇させて、これを処理容器22の下端開口部より処理容器22内へロードする。そして、この処理容器22の下端開口部を蓋部26により気密にシールし、処理容器22内を密閉状態とする。
【0043】
次に、高周波電源110をオンにして金属製パイプを巻回してなる誘導加熱コイル104に高周波電力を印加することにより、処理容器22内に誘導磁界が形成され、その誘導磁界によって基板保持部材24に保持されている誘導発熱体Nに誘導電流が流れることにより誘導発熱体Nが発熱する。このように、誘導発熱体Nが発熱すると、これに接近して配置されている基板Sが誘導発熱体Nからの放射熱によって加熱されて昇温する。
【0044】
これと同時に、回転機構54により基板保持部材24を所定の回転数で回転させつつ、ガス供給機構90の第1および第2のガスノズル92、94から熱処理に必要な第1および第2のガス、例えば成膜ガスを流量制御しつつ供給し、この処理容器22内の雰囲気を天井部の排気口100から排気系102により真空引きして処理容器22内の雰囲気を所定のプロセス圧力に維持する。このとき、基板Sの温度を処理容器22内に設けた図示しない熱電対により測定し、その温度に基づいて高周波電力のパワーを制御することにより基板Sの温度を所定のプロセス温度に制御しつつ、例えば成膜処理を行う。処理中には、誘導加熱コイル104が昇温するので、これを冷却するために冷却器116からは冷却水などの冷媒を誘導加熱コイル104内に流すようにする。この場合、成膜ガスの反応条件にもよるが、処理容器22の内壁面への膜付着を防止するためには、壁面を冷却するのが望ましい。
【0045】
本実施形態のように誘導加熱により誘導発熱体Nを発熱させ、その熱で基板Sを加熱する方式の場合には、誘電体でかつ熱容量の大きい処理容器22自体はほとんど加熱されず、かつ加熱能力が大きいため、高速昇温および高速降温が可能であり、かつ、1000℃以上の高温の加熱にも十分に対応することができる。
【0046】
また、このように熱容量の大きな処理容器22自体はほとんど加熱されないため、その分、消費エネルギーを少なくすることができる。そして、このように処理容器22が加熱されないことにより、処理容器22は低温に維持されることから、特に成膜処理の場合には処理容器22の内壁面に不要な付着膜が堆積することを抑制することができ、その分、パーティクルの発生を低くすることができる。また、クリーニング処理を行う頻度を少なくすることができる。
【0047】
ところで、このように高周波電力により誘導加熱する場合、表皮効果により誘導電流は被加熱体の主に表面部分にしか流れない。すなわち、誘導電流は被加熱体の表面から急激に低下し、誘導電流の強さが表面の1/e(≒0.368)倍に減少した点までの深さがスキンデプスδと定義され、このδは以下の(1)式で与えられる。
δ=(2/ωμ0σ)1/2 ・・・(1)
ここで、
ω:角周波数(=2πf:fは周波数)
μ0:透磁率
σ:電気伝導度(S/m)
【0048】
被加熱体である誘導発熱体NをカーボングラファイトまたはSiC等の非磁性材料で構成した場合はμ0=1であり、電気伝導度および周波数として上記範囲を考慮すると、δは数mm〜数十mmの範囲となる。
【0049】
したがって、誘導発熱体Nを基板Sと重なる円板状のものとすると、誘導電流は円板の周囲部分にしか流れず、したがって、誘導発熱体の周囲部分しか発熱しないこととなって、均一に基板Sを加熱することは困難である。
【0050】
このような不都合を防止するために、特許文献1に示すように、誘導発熱体に切り込み状の溝部を形成して、誘導電流が発熱体の内部にも流れるようにした場合には、誘導体の中央部にも誘導電流が流れて発熱するため、多少温度均一性が高まる。しかしながら、溝部の先端部にホットスポットが生じるため、十分な温度均一性を得ることが困難であり、また、発熱体の内部に誘導電流が流れる際に、不可避的に逆起電力が生じ、トータルの発熱量が下がってしまい、効率が低いという問題がある。
【0051】
これに対して、本実施形態のように、誘導発熱体Nをスパイラル状とすることにより、スパイラルを構成する線に沿って誘導電流が中心から外周、または外周から中心に流れるので、誘導発熱体Nを全体的に発熱させることができる。また、スパイラルを滑らかな形状とすることによりホットスポットの発生を防止することができるので、基板Sを均一に加熱することができる。また、リターン部132の抵抗を低下させることにより逆起電力の分布を形成させないようにすることができ、効率的な加熱を行うことができる。具体的には、リターン部132の断面積を大きくする、および/またはリターン部132としてスパイラル状の本体131よりも大きくすることにより、リターン部132の抵抗を本体131の抵抗よりも小さくすることが好ましい。断面積を同じにした場合には、リターン部132の電気伝導度を本体131よりも1オーダー以上高くすることが好ましい。
【0052】
逆起電力をより小さくしてより均一に基板Sを加熱するためには、本体131のようなスパイラル状体を2枚重ねて、それらの中央端同士および外周端同士を接続し、これらスパイラル状体を一筆書きで同じ方向に誘導電流が流れるように構成した誘導発熱体を設けることが好ましい。具体例としては、図5の平面図および図6の断面図に示すように、一方のスパイラル状体133に対し、他方の同形のスパイラル状体134を裏返した状態で重ね、中央端133aおよび134a同士ならびに外周端133bおよび134b同士をそれぞれ接続した誘導発熱体N′を挙げることができる。このときの誘導電流の流れを図7にわかりやすく示すが、例えば、スパイラル状体133の中央端133aから時計回りに誘導電流が外周端133bまで流れ、次いで、そこに接続されているスパイラル状体134の外周端134bから再び時計回りに誘導電流が流れ、中央端134aに達すると、再びスパイラル状体133の中央端133aから同じ方向に誘導電流が流れるというように、エンドレスで同じ方向に流れる。このため、逆起電力が発生せずに極めて効率がよく均一性の高い加熱を実現することができる。
【0053】
また、加熱の均一性を高める観点からは、図8に示すように、誘導発熱体N(N′)と基板Sの間に均熱部材141を設けることが好ましい。スパイラル状の誘導発熱体Nが基板Sに直接面していると、基板Sに誘導発熱体Nのパターンに対応した温度分布が生じて不均一に加熱されるおそれがあるが、このように誘導発熱体N(N′)と基板Sの間に均熱部材141を設けることにより、温度分布が均されて均一な温度分布を実現することが可能となる。この均熱部材としては熱伝導性の高い誘電体であることが好ましい。このような材料としてはAlN、Al2O3、Si3N4等を用いることができる。その中では熱伝導性が特に高いAlNが好適である。均熱部材141は、図8では、基板Sと接触するように設けられているが、基板Sとわずかに離隔して設けてもよい。
【0054】
また、必ずしも均一に加熱する必要はなく、加熱の効果が基板Sの部位によって異なることを考慮して、基板Sの加熱に分布をつけるようにすることもできる。例えば、基板Sの部位によって誘導発熱体Nとの距離を異ならせることにより、加熱に分布を形成することができる。図9の例では、中央では誘導発熱体Nと基板Sとの距離が離れており、外側に行くにつれて誘導発熱体Nと基板Sとの距離が近づく例である。この場合には、中央で加熱の効果が小さく、外周ほど加熱の効果が大きくなる。
【0055】
また、誘導発熱体Nのスパイラルを均一に形成するのではなくスパイラル線の密度を変えることによっても加熱に分布を形成することができる。図10の例では、中央では誘導発熱体Nのスパイラル線の密度が疎であるのに対し、外側に行くにつれてスパイラル線の密度が密になって行く例である。この場合も、中央で加熱の効果が小さく、外周ほど加熱の効果が大きくなる。
【0056】
さらに、誘導発熱体Nのスパイラル線の径を部位により変えることによっても加熱に分布を形成することができる。図11の例では、外周側ではスパイラル線の径が小さく、内側に行くに従ってスパイラル線の径が大きくなる例である。この場合も中央で加熱の効果が小さく、外周ほど加熱の効果が大きくなる。
【0057】
なお、上記実施形態では誘導加熱コイル104を処理容器22の外側に巻回したが、処理容器22の内部に設けてもよい。この場合には誘導加熱コイル104を誘電体の内部に設ければ、処理容器22を金属で構成することもできる。
【0058】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。ここでは一枚の基板を処理する枚葉式の熱処理装置の例について示す。
図12は本発明の第2の実施形態に係る熱処理装置を示す断面図である。図12に示すように、熱処理装置201は、円筒状をなす処理容器202を有している。この処理容器202は、耐熱性を有し、電磁波(高周波電力)を透過する誘電体材料、例えば石英で構成されている。処理容器202内には、基板Sを載置する基板載置台203が、処理容器202の底部から延びる脚部204に支持された状態で配置されている。基板載置台203としては熱伝導性の高い誘電体であることが好ましい。このような材料としてはAlN、Al2O3、Si3N4等を用いることができる。その中では熱伝導性が特に高いAlNが好適である。図12では基板Sを基板載置台203に直接載置しているが、基板Sと基板載置台203を僅かに離隔するようにしてもよい。
【0059】
処理容器202にはゲートバルブで開閉可能な基板搬入出口(いずれも図示せず)が設けられており、また、載置台203にはその上面に対して突没可能に基板昇降ピン(図示せず)が設けられており、基板搬送アーム(図示せず)により基板搬入出口を介して基板Sを搬入出し、基板載置台203に対して基板Sの授受を行う際には、基板昇降ピンが載置台203の上方へ突出される。
【0060】
基板載置台203の下方には、支持台205に支持された状態で誘導発熱体Nが、基板載置台203に載置された基板Sと対応する位置(上下に重なる位置)に配置されている。誘導発熱体Nは第1の実施形態と同様に構成される。もちろん図5、6に示した誘導発熱体N′を用いることもできる。
【0061】
処理容器202の側壁には、処理容器202内へ処理ガスを導入するための処理ガス導入孔206が形成されており、この処理ガス導入孔206には処理ガス供給配管207が接続され、熱処理、例えば成膜処理に必要な処理ガスを処理容器202内に導入するようになっている。図示はしていないが、処理ガス供給配管207には、処理ガスの数に応じたガス配管が接続されており、これらガス配管には開閉弁やマスフローコントローラのような流量制御器が設けられている。ガスの種類やガスの数は熱処理に応じて適宜決定される。第1の実施形態と同様、熱処理である成膜処理としては、シリコン、窒化シリコン、酸化シリコン等のCVD成膜、GaN等のエピタキシャル成長が例示される。また熱処理としては、成膜処理に限らず、酸化処理、アニール処理等、種々のものを挙げることができる。これらの処理に応じて、基板Sも半導体基板、サファイア基板、ZnO基板、ガラス基板等種々のものを用いることができる。
【0062】
処理容器202の側壁の処理ガス導入孔206と対向する位置には、排気孔208が形成されており、この排気孔208には処理容器202内を排気する排気系210が設けられている。排気系210は、排気孔208に接続された排気通路210aと、排気通路210aに設けられた圧力制御弁210bと、排気通路210aに接続されて、排気通路210aを介して処理容器202内を排気する排気ポンプ210cとを有している。なお、処理の種類によっては、低圧の真空状態から大気圧程度の圧力で処理を行う場合があり、これに対応して、排気系210によって高真空から大気圧の近傍まで処理容器202内の圧力を制御できるようになっている。
【0063】
処理容器202の上方には、処理容器202の天壁202aに面するように、誘導加熱コイル212が設けられている。誘導加熱コイルは、金属製パイプを平面スパイラル状に巻回してなっており、基板載置台203状の基板Sよりも広い領域をカバーしている。誘導加熱コイル212を構成する金属製パイプの材料としては銅を好適に用いることができる。この誘導加熱コイル212の中央端と外周端には、高周波電源214から延びる給電ライン213が接続されており、高周波電源214から誘導加熱コイル212に高周波電力が印加されるようになっている。この給電ライン213の途中には、インピーダンス整合を行うマッチング回路216が設けられている。
【0064】
誘導加熱コイル212に高周波電力を印加することにより、処理容器202の内部に誘導磁界が形成され、その誘導磁界によって生じる誘導電流が、処理容器202内の誘導発熱体Nに流れ、誘導発熱体Nが発熱するようになっている。この高周波電源214の高周波の周波数は、例えば0.5〜50kHzの範囲内、好ましくは1〜5kHzの範囲内に設定される。なお、処理容器202の壁部の温度が上昇しないように、図示しない冷却ガス供給機構により、処理容器202の内壁に冷却ガスが供給されるようになっている。
【0065】
図示はしていないが、この熱処理装置201にも、第1の実施形態の熱処理装置1と同様の、制御部、記憶部、ユーザーインターフェースを有している。
【0066】
次に、以上のように構成された熱処理装置201を用いて行われる熱処理について説明する。
【0067】
まず、ゲートバルブを開けて搬入出口から搬送装置の搬送アームによって基板Sを処理容器202内に搬入し、基板載置台203上に載置する。そして、ゲートバルブを閉じて処理容器202内を密閉状態とする。
【0068】
次いで、高周波電源214をオンにして誘導加熱コイル212に高周波電力を印加し、この誘導加熱コイル212から高周波電力を放射させる。誘導加熱コイル212から放射された高周波電力は処理容器202の天壁202aを透過して内部に至り、それによって処理容器202の内部に誘導磁界が形成され、その誘導磁界によって生じる誘導電流が誘導発熱体Nに流れ、誘導発熱体Nが発熱する。これにより誘導発熱体Nからの放射熱によって、基板載置台203を介して基板Sが加熱されて昇温する。
【0069】
これと同時に、処理ガス供給配管207および処理ガス導入孔206を介して熱処理、例えば成膜処理に必要な成膜ガスを流量制御しつつ供給し、排気孔208から排気系210により真空引きして処理容器202内の雰囲気を所定のプロセス圧力に維持する。このとき、基板Sの温度を処理容器202内に設けた図示しない熱電対により測定し、その温度に基づいて高周波電力のパワーを制御することにより基板Sの温度を所定のプロセス温度に制御しつつ、例えば成膜処理を行う。処理中には、処理容器202内に冷却ガスを流して処理容器202の内壁を冷却する。この際に、成膜ガスの反応条件にもよるが、処理容器202の内壁面への膜付着を防止するためには、壁面を冷却するのが望ましい。
【0070】
このようにして、第1の実施形態と同様、誘導加熱により誘導発熱体を発熱させ、その熱で基板Sを加熱するので、熱容量の大きい処理容器202自体はほとんど加熱されず、かつ加熱能力が大きいため、高速昇温および高速降温が可能であり、かつ、1000℃以上の高温の加熱にも十分に対応することができる。また、このように熱容量の大きな処理容器202自体はほとんど加熱されないため、その分、消費エネルギーを少なくすることができる。そして、このように処理容器202が加熱されないことにより、処理容器202の内壁面は低温に維持されることから、特に成膜処理の場合には処理容器202の内壁面に不要な付着膜が堆積することを抑制することができ、その分、パーティクルの発生を低くすることができる。また、クリーニング処理を行う頻度を少なくすることができる。
【0071】
また、第1の実施形態と同様、誘導発熱体Nがスパイラル状であるので、スパイラルを構成する線に沿って誘導電流が中心から外周、または外周から中心に流れ、誘導発熱体Nを全体的に発熱させることができ、また、スパイラルを滑らかな形状とすることによりホットスポットの発生を防止することができ、基板Sを均一に加熱することができる。また、リターン部132の抵抗を低下させることにより逆起電力の分布を形成させないようにすることができ、効率的な加熱を行うことができる。
【0072】
なお、第2の実施形態においては、誘導加熱コイル212は、処理容器202の上方に限らず、図13に示すように処理容器202の下方に設けても、図14に示すように処理容器202の側面に巻回してもよい。また、誘導加熱コイル212は処理容器202の外側に限らず処理容器202の内部に設けてもよい。ただし、この場合には、発熱させたくない金属部材が発熱しないように、誘電体の内部に設けることが好ましい。誘導加熱コイル212を誘電体内に設けた場合には、処理容器202は金属製であってもよい。
【0073】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。ここでは第2の実施形態における枚葉式の熱処理装置をベースにして複数枚の基板を処理可能にした熱処理装置の例について示す。
図15は本発明の第3の実施形態に係る熱処理装置を示す断面図であり、図16はその基板載置台を示す平面図である。本実施形態では第2の実施形態の図12の装置をベースとしているので、図12と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0074】
本実施形態の熱処理装置301は、複数枚の基板Sを載置する円板状の基板載置台303が処理容器202内に水平に設けられている。基板載置台303はその中心から下方に延びる筒状の回転軸304により支持されており、回転軸304は処理容器202の底部を突き抜けてその下方に至り、図示しない回転駆動機構により回転され、回転軸304の回転にともなって基板載置台303が回転するようになっている。回転軸304と処理容器202の底部との間は流体シール305により気密にシールされている。
【0075】
基板載置台303の上面には基板載置台303よりも小径の円板状をなす基板搬送板306が昇降可能に設けられており、この基板搬送板306に複数の基板Sが載置される。本例では8枚の基板Sが周方向に等間隔に配列されている。この基板搬送板306は昇降部材307に支持されており、昇降部材307の下面から回転軸304の内を昇降軸308が下方に延びている。そして、図示しない昇降機構により昇降軸308、昇降部材307を介して基板搬送板306が昇降され、複数の基板Sを基板搬送板306ごと搬送できるようになっている。
【0076】
基板載置台303および基板搬送板306としては熱伝導性の高い誘電体であることが好ましい。このような材料としてはAlN、Al2O3、Si3N4等を用いることができる。その中では熱伝導性が特に高いAlNが好適である。
【0077】
基板載置台303の下面には、複数の誘導発熱体Nが基板載置台303に載置された複数の基板Sとそれぞれ対応する位置(上下に重なる位置)に設けられている。複数の誘導発熱体Nは、円環状の保持部材310により保持されている。誘導発熱体Nは、基板載置台303の下面に接触していてもよいし、離隔していてもよい。誘導発熱体Nは第1の実施形態と同様に構成される。もちろん図5、6に示した誘導発熱体N′を用いることもできる。
【0078】
図示はしていないが、この熱処理装置301にも、第1の実施形態の熱処理装置1と同様の、制御部、記憶部、ユーザーインターフェースを有している。
【0079】
次に、以上のように構成された熱処理装置301を用いて行われる熱処理について説明する。
【0080】
まず、ゲートバルブを開けて搬入出口から搬送装置の搬送アームによって複数の基板Sを載置した基板搬送板306を処理容器202内に搬入し、基板載置台303上に載置する。そして、ゲートバルブを閉じて処理容器202内を密閉状態とする。
【0081】
次いで、図示しない回転駆動機構により基板載置台303を回転しながら、高周波電源214をオンにして誘導加熱コイル212に高周波電力を印加し、この誘導加熱コイル212から高周波電力を放射させる。誘導加熱コイル212から放射された高周波電力は処理容器202の天壁202aを透過して内部に至り、それによって処理容器202の内部に誘導磁界が形成され、その誘導磁界によって誘導発熱体Nに誘導電流が流れ、誘導発熱体Nが発熱する。これにより誘導発熱体Nからの放射熱によって、基板載置台303および基板搬送板306を介して基板Sが加熱されて昇温する。
【0082】
これと同時に、処理ガス供給配管207および処理ガス導入孔206を介して熱処理、例えば成膜処理に必要な成膜ガスを流量制御しつつ供給し、排気孔208から排気系210により真空引きして処理容器202内の雰囲気を所定のプロセス圧力に維持する。このとき、基板Sの温度を処理容器202内に設けた図示しない熱電対により測定し、その温度に基づいて高周波電力のパワーを制御することにより基板Sの温度を所定のプロセス温度に制御しつつ、例えば成膜処理を行う。処理中には、処理容器202内に冷却ガスを流して処理容器202の内壁を冷却する。この際に、成膜ガスの反応条件にもよるが、処理容器202の内壁面への膜付着を防止するためには、壁面を冷却するのが望ましい。第1および第2の実施形態と同様、熱処理である成膜処理としては、シリコン、窒化シリコン、酸化シリコン等のCVD成膜、GaN等のエピタキシャル成長が例示される。また熱処理としては、成膜処理に限らず、酸化処理、アニール処理等、種々のものを挙げることができる。これらの処理に応じて、基板Sも半導体基板、サファイア基板、ZnO基板、ガラス基板等種々のものを用いることができる。
【0083】
この実施形態では、第2の実施形態と同様の効果を有する他、枚葉式の熱処理装置をベースにしながら一度に複数枚の基板を処理することができるので、処理効率を極めて高いものとすることができる。
【0084】
なお、本実施形態においても第2の実施形態と同様、誘導加熱コイル212は、処理容器202の上方に限らず、処理容器202の下方に設けても、処理容器202の側面に巻回してもよい。また、誘導加熱コイル212は処理容器202の外側に限らず処理容器202の内部に設けてもよい。ただし、この場合には、発熱させたくない金属部材が発熱しないように、誘電体の内部に設けることが好ましい。誘導加熱コイル212を誘電体内に設けた場合には、処理容器202は金属製であってもよい。
【0085】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について説明する。ここでは第2の実施形態における枚葉式の熱処理装置において、上述したような、スパイラル状体を2枚重ねて、それらの中央端同士および外周端同士を接続し、これらスパイラル状体を一筆書きで同じ方向に誘導電流が流れるように構成した誘導発熱体を内側と外側とに分割して設け、これらをそれぞれ独立して誘導加熱する例について説明する。
【0086】
図17は本発明の第4の実施形態に係る熱処理装置を示す断面図である。図17において、第2の実施形態の図12と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0087】
図17に示すように、熱処理装置401は、円筒状をなす処理容器402を有している。この処理容器402は、金属であっても誘電体であってもよい。
【0088】
処理容器402内には、基板Sを載置する基板載置台403が水平に設けられている。基板載置台403はその中心から下方に延びる筒状の回転軸404により支持されており、回転軸404は処理容器402の底部を突き抜けてその下方に至り、図示しない回転駆動機構により回転され、回転軸404の回転にともなって基板載置台403が回転するようになっている。回転軸404と処理容器402の底部との間は流体シール405により気密にシールされている。
【0089】
基板載置台403としては熱伝導性の高い誘電体であることが好ましい。このような材料としてはAlN、Al2O3、Si3N4等を用いることができる。その中では熱伝導性が特に高いAlNが好適である。図17では基板Sを基板載置台403に直接載置しているが、基板Sと基板載置台403を僅かに離隔するようにしてもよい。
【0090】
処理容器402にはゲートバルブで開閉可能な基板搬入出口(いずれも図示せず)が設けられており、また、載置台403にはその上面に対して突没可能に基板昇降ピン(図示せず)が設けられており、基板搬送アーム(図示せず)により基板搬入出口を介して基板Sを搬入出し、基板載置台403に対して基板Sの授受を行う際には、基板昇降ピンが載置台403の上方へ突出される。
【0091】
基板載置台403の内部には、誘導発熱体N″が設けられている。誘導発熱体N″は、上述したように、スパイラル状体を2枚重ねて、それらの内側端同士および外周端同士を接続し、これらスパイラル状体を一筆書きで同じ方向に誘導電流が流れるように構成した誘導発熱体を内側(中央側)と外側とに設けたものである。具体的には、図18の平面図にも示すように、誘導発熱体N″は、内側に設けられた第1の発熱体N1と外側に設けられた第2の発熱体N2とからなっている。第1の発熱体N1は、上記図5および図6で説明したN′と同様の構成を有している。すなわち、図19に示すように、第1の発熱体N1は、スパイラル状体133と同様のスパイラル状体433に対し、同形のスパイラル状体434を裏返した状態で重ね、内側端(中央端)433aおよび434a同士ならびに外周端433bおよび434b同士をそれぞれ接続したものである。また、第2の発熱体N2も同様であり、図19および図20に示すように、スパイラル状体433の外側に設けられたスパイラル状体443に対し、同形のスパイラル状体444を裏返した状態で重ね内側端443aおよび444a同士ならびに外周端443bおよび444b同士をそれぞれ接続したものである。
【0092】
処理容器402内の基板載置台403(誘導発熱体N″)の下方位置には、誘導加熱部450が設けられている。誘導加熱部450は、円環状をなす石英等の誘電体からなる誘電体部材452とその内部に設けられた誘導加熱コイル453とからなる誘導加熱コイルユニット451を有している。誘導加熱コイルユニット451は、処理容器402の底部から上方へ延びる脚部455に支持された円環状の保持部材454に保持されている。
【0093】
図21に示すように、誘導加熱コイル453は、内側の第1の発熱体N1に対応した位置に設けられた第1の誘導加熱コイル456と、その外側の第2の発熱体N2に対応した位置に設けられた第2の誘導加熱コイル457とを有している。第1の誘導加熱コイル456と第2の誘導加熱コイル457には、共通の高周波電源460から高周波電力が供給されるようになっている。また、第1の誘導加熱コイル456と第2の誘導加熱コイル457との間には可変コンデンサ461が介在されており、この可変コンデンサ461により第1の誘導加熱コイル456と第2の誘導加熱コイル457の電流分配を調整することができるようになっている。
【0094】
図示はしていないが、この熱処理装置401にも、第1の実施形態の熱処理装置1と同様の、制御部、記憶部、ユーザーインターフェースを有している。
【0095】
なお、ガス供給系および排気系については、図12と同様であるので同じ符号を付して説明は省略する。
【0096】
このように構成される第4の実施形態の熱処理装置においては、内側(中央側)の第1の発熱体N1と外側の第2の発熱体N2に分割された誘導発熱体N″を用い、誘導加熱コイル453を第1の誘導加熱コイル456と第2の誘導加熱コイル457とを有するものとして、可変コンデンサ461を調整することにより第1の誘導加熱コイル456と第2の誘導加熱コイル457の電流分配を調整することができるようにしたので、制御部により可変コンデンサ461を制御することにより第1の発熱体N1および第2の発熱体N2の発熱量を独立して調整して基板Sの中央部と外周部で加熱を独立に制御することができる。このため、基板Sの温度分布を微調整することが可能である。
【0097】
また、誘導発熱体N″を構成する第1の発熱体N1と第2の発熱体N2は、いずれもスパイラル状体を2枚重ねて、それらの中央端同士および外周端同士を接続し、これらスパイラル状体を一筆書きで同じ方向に誘導電流が流れるように構成されているため、逆起電力が発生せずに極めて効率がよく均一性の高い加熱を実現することができる。
【0098】
したがって、本実施形態の熱処理装置によれば、基板Sが大型のものであっても均一な加熱を実現することができ、また、プロセス条件に応じて所望の温度分布を実現することも可能である。
【0099】
なお、図17においては、誘導加熱コイルユニット451を誘導発熱体N″の下方位置に設けたが、第1の発熱体N1と第2の発熱体N2の発熱量を調整可能な位置であればこれに限定されず、図22に示すように誘導発熱体N″の上方に設けてもよい。また、可変コンデンサ461を調整することにより第1の誘導加熱コイル456と第2の誘導加熱コイル457の電流分配を調整するようにしたが、図23に示すように、第1の誘導加熱コイル456と第2の誘導加熱コイル457にそれぞれ別個に高周波電源460aおよび460bを設け、これらの出力を調整することにより電流分配を調整するようにしてもよい。さらに、第3の実施形態のように、基板載置台403に複数枚の基板を載置して複数枚の基板を処理するようにしてもよい。この場合には、複数の基板の間で均一な処理を行うことが可能となる。さらにまた、図17の装置では基板載置台403を回転可能としたが、必ずしも回転させる必要はない。さらにまた、誘導発熱体として内側の第1の発熱体と外側の第2の発熱体とに分割したものを用いたが、3つ以上に分割されたものであってもよい。
【0100】
<他の適用>
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、熱処理としては、成膜処理、酸化処理、アニール処理を挙げたが、その他、拡散処理、改質処理、エッチング処理等、基板の加熱をともなう処理であれば本発明の熱処理に含まれる。また、本発明の熱処理においては、ガスの供給は必須ではない。また、基板についても、上述したように、処理に応じて半導体基板、サファイア基板、ZnO基板、ガラス基板等種々のものを用いることができ、特に限定されるものではない。また、本実施形態では、誘導発熱体の材料として、カーボングラファイトおよびSiCを例示したが、これに限定されず、ガラス質の炭素やSiC以外の導電性セラミックス(導電性SiN等)を用いることもできる。
【符号の説明】
【0101】
1,201,301,401:熱処理装置
22,202,402;処理容器
24;保持部材
30;昇降機構
42a〜42c;支柱
54;回転機構
90:ガス供給機構
102,210;排気系
104,212;誘導加熱コイル
110,214;高周波電源
131;本体
131a;中央端
131b;外周端
132;リターン部
133,134;スパイラル状体
133a,134a;中央端
133b,134b;外周端
141;均熱部材
203,303,403;基板載置台
207;処理ガス供給配管
306;基板搬送板
433,434,443,444;スパイラル状体
433a,434a;内側端(中央端)
433b,434b;外周端
443a,444a;内側端
443b,444b;外周端
450;誘導加熱部
451;誘導加熱コイルユニット
452;誘電体部材
453;誘導加熱コイル
456;第1の誘導加熱コイル
457;第2の誘導加熱コイル
460,460a,460b;高周波電源
461;可変コンデンサ
N,N′,N″;誘導発熱体
N1;第1の発熱体
N2;第2の発熱体
S;基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板に熱処理を施す熱処理装置であって、
熱処理が施される複数の基板を収容する処理容器と、
複数の基板を上下に配列した状態で保持し、前記処理容器内へ挿脱される基板保持部材と、
前記処理容器内に誘導磁界を形成して誘導加熱するための誘導加熱コイルと、
前記誘導加熱コイルに高周波電力を印加する高周波電源と、
前記処理容器内で、前記複数の基板にそれぞれ重ね合うように設けられ、前記誘導加熱コイルに前記高周波電力を印加することにより発生した誘導電流が流れて発熱する、スパイラル状部を有する誘導発熱体と
を具備することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記処理容器は誘電体からなり、前記誘導加熱コイルは前記処理容器の外周に巻回されることを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記基板保持部材は、前記複数の基板をそれぞれ保持する複数の基板保持部を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記基板保持部材は、前記誘導発熱体と前記複数の基板とが交互に保持されるように、それぞれが前記誘導発熱体を保持することを特徴とする請求項3に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記基板保持部材は、前記誘導発熱体を保持し、前記誘導発熱体が基板保持部として機能することを特徴とする請求項3に記載の熱処理装置。
【請求項6】
基板に熱処理を施す熱処理装置であって、
熱処理が施される基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内で1または2以上の基板を保持する基板保持部と、
前記処理容器に誘導磁界を形成して誘導加熱するための誘導加熱コイルと、
前記誘導加熱コイルに高周波電力を印加する高周波電源と、
前記処理容器内に基板と対応するように設けられ、前記誘導加熱コイルに前記高周波電力を印加することにより発生した誘導電流が流れて発熱する、スパイラル状部を有する誘導発熱体と
を具備することを特徴とする熱処理装置。
【請求項7】
前記処理容器は誘電体からなり、前記誘導加熱コイルは前記処理容器の外側に設けられることを特徴とする請求項6に記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記基板保持部は1または2以上の基板を一つの平面上に載置する基板載置台を有することを特徴とする請求項7に記載の熱処理装置。
【請求項9】
前記誘導発熱体は、前記基板載置台に載置された基板に対応する前記基板載置台の下方の位置に設けられていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の熱処理装置。
【請求項10】
前記誘導加熱コイルは、前記処理容器の天壁の上に平面状に巻回されていることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項11】
前記誘導発熱体は、スパイラル状をなす本体と、前記本体の中央端と外周端とをつなぐリターン部とを有していることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項12】
前記リターン部は、導電率もしくは断面積、またはその両方が前記本体よりも大きいことを特徴とする請求項11に記載の処理装置。
【請求項13】
前記誘導発熱体は、2つのスパイラル状体を有し、これらの中央端同士および外周端同士を接続した際に、これら2つのスパイラル状体に同じ方向に誘導電流が流れるように、これら2つのスパイラル状体を重ねて配置してなることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項14】
2つのスパイラル状体は同形をなし、互いに裏返しになるように重ね合わされていることを特徴とする請求項13に記載の熱処理装置。
【請求項15】
基板に熱処理を施す熱処理装置であって、
熱処理が施される基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内で1または2以上の基板を保持する基板保持部と、
前記処理容器に誘導磁界を形成して誘導加熱するための誘導加熱コイルと、
前記誘導加熱コイルに高周波電力を印加する高周波電源と、
前記処理容器内に基板と対応するように設けられ、前記誘導加熱コイルに前記高周波電力を印加することにより発生した誘導電流が流れて発熱する、スパイラル状部を有する誘導発熱体と
を具備し、
前記誘導発熱体は、前記基板保持部の内側部分に対応する位置に設けられた第1の発熱体と、その外側に設けられた第2の発熱体とを有し、前記第1の発熱体と前記第2の発熱体は、いずれもスパイラル状体を2枚重ねて、それらの一方の端部同士および他方の端部同士を接続し、これらスパイラル状体を一筆書きで同じ方向に誘導電流が流れるように構成されており、
前記誘導加熱コイルは、前記第1の発熱体に対応した位置に設けられた第1の誘導加熱コイルと、前記第2の発熱体に対応した位置に設けられた第2の誘導加熱コイルとを有し、前記第1の誘導加熱コイルと前記第2の誘導加熱コイルの電流分配を制御することにより、前記第1の発熱体と前記第2の発熱体の発熱量が独立して調整されることを特徴とする熱処理装置。
【請求項16】
前記第1の発熱体および前記第2の発熱体をそれぞれ構成する2つのスパイラル状体は同形をなし、互いに裏返しになるように重ね合わされていることを特徴とする請求項15に記載の熱処理装置。
【請求項17】
前記誘導加熱コイルは、前記処理容器内の前記誘導発熱体の上方位置または下方位置に設けられていることを特徴とする請求項15または請求項16に記載の熱処理装置。
【請求項18】
前記基板保持部材に保持された基板と前記誘導発熱体との間に設けられた均熱部材をさらに具備することを特徴とする請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項1】
複数の基板に熱処理を施す熱処理装置であって、
熱処理が施される複数の基板を収容する処理容器と、
複数の基板を上下に配列した状態で保持し、前記処理容器内へ挿脱される基板保持部材と、
前記処理容器内に誘導磁界を形成して誘導加熱するための誘導加熱コイルと、
前記誘導加熱コイルに高周波電力を印加する高周波電源と、
前記処理容器内で、前記複数の基板にそれぞれ重ね合うように設けられ、前記誘導加熱コイルに前記高周波電力を印加することにより発生した誘導電流が流れて発熱する、スパイラル状部を有する誘導発熱体と
を具備することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記処理容器は誘電体からなり、前記誘導加熱コイルは前記処理容器の外周に巻回されることを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記基板保持部材は、前記複数の基板をそれぞれ保持する複数の基板保持部を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記基板保持部材は、前記誘導発熱体と前記複数の基板とが交互に保持されるように、それぞれが前記誘導発熱体を保持することを特徴とする請求項3に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記基板保持部材は、前記誘導発熱体を保持し、前記誘導発熱体が基板保持部として機能することを特徴とする請求項3に記載の熱処理装置。
【請求項6】
基板に熱処理を施す熱処理装置であって、
熱処理が施される基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内で1または2以上の基板を保持する基板保持部と、
前記処理容器に誘導磁界を形成して誘導加熱するための誘導加熱コイルと、
前記誘導加熱コイルに高周波電力を印加する高周波電源と、
前記処理容器内に基板と対応するように設けられ、前記誘導加熱コイルに前記高周波電力を印加することにより発生した誘導電流が流れて発熱する、スパイラル状部を有する誘導発熱体と
を具備することを特徴とする熱処理装置。
【請求項7】
前記処理容器は誘電体からなり、前記誘導加熱コイルは前記処理容器の外側に設けられることを特徴とする請求項6に記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記基板保持部は1または2以上の基板を一つの平面上に載置する基板載置台を有することを特徴とする請求項7に記載の熱処理装置。
【請求項9】
前記誘導発熱体は、前記基板載置台に載置された基板に対応する前記基板載置台の下方の位置に設けられていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の熱処理装置。
【請求項10】
前記誘導加熱コイルは、前記処理容器の天壁の上に平面状に巻回されていることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項11】
前記誘導発熱体は、スパイラル状をなす本体と、前記本体の中央端と外周端とをつなぐリターン部とを有していることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項12】
前記リターン部は、導電率もしくは断面積、またはその両方が前記本体よりも大きいことを特徴とする請求項11に記載の処理装置。
【請求項13】
前記誘導発熱体は、2つのスパイラル状体を有し、これらの中央端同士および外周端同士を接続した際に、これら2つのスパイラル状体に同じ方向に誘導電流が流れるように、これら2つのスパイラル状体を重ねて配置してなることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項14】
2つのスパイラル状体は同形をなし、互いに裏返しになるように重ね合わされていることを特徴とする請求項13に記載の熱処理装置。
【請求項15】
基板に熱処理を施す熱処理装置であって、
熱処理が施される基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内で1または2以上の基板を保持する基板保持部と、
前記処理容器に誘導磁界を形成して誘導加熱するための誘導加熱コイルと、
前記誘導加熱コイルに高周波電力を印加する高周波電源と、
前記処理容器内に基板と対応するように設けられ、前記誘導加熱コイルに前記高周波電力を印加することにより発生した誘導電流が流れて発熱する、スパイラル状部を有する誘導発熱体と
を具備し、
前記誘導発熱体は、前記基板保持部の内側部分に対応する位置に設けられた第1の発熱体と、その外側に設けられた第2の発熱体とを有し、前記第1の発熱体と前記第2の発熱体は、いずれもスパイラル状体を2枚重ねて、それらの一方の端部同士および他方の端部同士を接続し、これらスパイラル状体を一筆書きで同じ方向に誘導電流が流れるように構成されており、
前記誘導加熱コイルは、前記第1の発熱体に対応した位置に設けられた第1の誘導加熱コイルと、前記第2の発熱体に対応した位置に設けられた第2の誘導加熱コイルとを有し、前記第1の誘導加熱コイルと前記第2の誘導加熱コイルの電流分配を制御することにより、前記第1の発熱体と前記第2の発熱体の発熱量が独立して調整されることを特徴とする熱処理装置。
【請求項16】
前記第1の発熱体および前記第2の発熱体をそれぞれ構成する2つのスパイラル状体は同形をなし、互いに裏返しになるように重ね合わされていることを特徴とする請求項15に記載の熱処理装置。
【請求項17】
前記誘導加熱コイルは、前記処理容器内の前記誘導発熱体の上方位置または下方位置に設けられていることを特徴とする請求項15または請求項16に記載の熱処理装置。
【請求項18】
前記基板保持部材に保持された基板と前記誘導発熱体との間に設けられた均熱部材をさらに具備することを特徴とする請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−151433(P2012−151433A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158647(P2011−158647)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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