説明

熱処理装置

【課題】基板に対する誘導電流の影響を排除して均一に熱処理を行うことができる、誘導加熱を利用した熱処理装置を提供すること。
【解決手段】熱処理が施される複数の基板Sを収容する処理容器2と、処理容器2内で複数の基板を保持する基板保持部材3と、処理容器2内に誘導磁界を形成して誘導加熱するための誘導加熱コイル15と、誘導加熱コイル15に高周波電力を印加する高周波電源16と処理容器2内に処理ガスを供給するガス供給手段8,9,10と、処理容器2内を排気する排気手段11,12,14と、処理容器2内で基板保持部材3を囲うように誘導加熱コイル15と基板保持部材3との間に設けられ、誘導磁界によって形成された誘導電流により加熱され、その輻射熱で基板保持部材3に保持された基板Sを加熱する誘導発熱体7とを具備し、誘導発熱体7により、基板Sへ誘導電流が流れることが阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱を利用して基板に熱処理を施す熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体ウエハ等の基板に対して成膜処理や酸化処理等の熱処理を行う場合には、石英製の処理容器内に、複数の基板を配置し、抵抗発熱型のヒーターや加熱ランプにより基板を加熱するバッチ式の熱処理装置が広く用いられている。
【0003】
最近では、バッチ式の熱処理装置にてSiCやGaN等の化合物を成膜することが検討されている。このような化合物の成膜には基板を1000℃を超える高温に加熱することが求められるが抵抗発熱型のヒーターや加熱ランプにより基板を加熱する熱処理装置の場合には、加熱温度が1000℃程度で限界であり、このような化合物の成膜の用途には対応が困難である。
【0004】
1000℃を超えるような高温に加熱することができる技術としては、容器の外側に高周波誘導加熱コイルを配置し、その内部に設けられたサセプタに保持された複数の基板を誘導加熱するものが知られている(例えば、特許文献1の図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−21359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような誘導加熱を利用して基板を加熱した場合には、基板にも誘導電流が流れて処理の均一性が悪化する等の悪影響を及ぼす。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、基板に対する誘導電流の影響を排除して均一に熱処理を行うことができる、誘導加熱を利用した熱処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の基板に熱処理を施す熱処理装置であって、熱処理が施される複数の基板を収容する処理容器と、前記処理容器内で複数の基板を保持する基板保持部材と、前記処理容器内に誘導磁界を形成して誘導加熱するための誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに高周波電力を印加する高周波電源と、前記処理容器内に処理ガスを供給するガス供給手段と、前記処理容器内を排気する排気手段と、前記処理容器内で前記基板保持部材を囲うように前記誘導加熱コイルと前記基板保持部材との間に設けられ、前記誘導磁界によって形成された誘導電流により加熱され、その輻射熱で前記基板保持部材に保持された基板を加熱する誘導発熱体とを具備し、前記誘導発熱体により、基板に誘導電流が流れることが阻止されることを特徴とする熱処理装置を提供する。
【0008】
本発明において、前記誘導発熱体により、基板へ誘導電流が流れることが阻止されるように、前記誘導発熱体の厚さ、前記高周波電力の周波数、および誘導加熱コイルと基板との距離のうち少なくとも一つが調整されることが好ましい。
【0009】
本発明において、前記処理容器は誘電体からなり、前記誘導加熱コイルは前記処理容器の外周に巻回される構成をとることができる。また、前記基板保持部材は、前記処理容器の上下方向に延在する多角柱をなし、その側面に基板が保持される構成をとることができる。さらに、前記誘導発熱体はグラファイトで構成されていることが好ましい。
【0010】
本発明において、前記ガス供給手段は、前記処理容器内にシャワー状に処理ガスを導入するシャワーヘッドを有する構成とすることができる。また、前記基板保持部材を回転させる回転機構をさらに具備することが好ましい。さらに、前記熱処理として、基板上で処理ガスを反応させて所定の膜を成膜する成膜処理が例示され、前記成膜処理としては、炭化珪素(SiC)膜または窒化ガリウム(GaN)膜の成膜を挙げることができる。
【0011】
本発明において、前記熱処理は、複数の処理ガスを用いて化合物膜を成膜する成膜処理であり、前記基板保持部材を回転させる回転機構をさらに具備し、前記ガス供給手段は、前記各処理ガスを前記処理容器の異なる領域に供給し、前記回転機構により前記基板保持部材を回転させて、基板が前記各領域を順次通過するようにし、基板に前記複数の処理ガスを順次吸着させるようにすることができる。この場合に、前記ガス供給手段は、前記各処理ガスをそれぞれ前記処理容器の異なる領域にシャワー状に導入するための複数のシャワーヘッドを有することが好ましい。また、一例として、前記化合物膜はSiC膜であり、前記複数の処理ガスとしてSi源ガス、C源ガス、還元ガスを用いるものを挙げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、処理容器内で基板保持部材を囲うように誘導加熱コイルと基板保持部材との間に誘導発熱体を設け、処理容器内の誘導磁界によって形成された誘導電流により誘導発熱体を加熱し、その輻射熱で基板保持部材に保持された基板を加熱し、誘導発熱体により、基板へ誘導電流が流れることを阻止するので、基板に対する誘導電流の影響を排除して均一に熱処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る熱処理装置を示す断面図である。
【図2】図1の熱処理装置に用いるバレル型のサセプタの一例を示す模式図である。
【図3】図1の熱処理装置に用いるバレル型のサセプタの他の例を示す模式図である。
【図4】図1の熱処理装置について、処理容器内に処理ガスを導入するためのシャワーヘッドを設けたものの要部を示す断面図である。
【図5】図1の熱処理装置について、処理容器の高さ方向に3つのゾーンを設けてそれぞれに別個の加熱コイルを設け、それぞれのゾーンの高周波パワーを制御するようにしたものを示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る熱処理装置を示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る熱処理装置を用いてSiC膜を成膜する際の概念を示す模式図である。
【図8】サセプタの他の例を示す模式図である。
【図9】サセプタのさらに他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る熱処理装置を示す断面図である。図1に示すように、熱処理装置1は、上下方向に延びる円筒状をなす縦型の処理容器2を有している。処理容器2はその上端を塞ぐ天壁2aを有しており、下端は開放されている。この処理容器2は、耐熱性を有し、電磁波(高周波電力)を透過する誘電体材料、例えば石英で構成されている。
【0016】
この処理容器2内部には、その下方から、複数の基板Sを保持する基板保持部材としてのサセプタ3が挿入可能となっている。サセプタ3は、処理容器2の上下方向に延在する多角柱をなすバレル型であり、例えばグラファイトで構成されている。そして、サセプタ3の側面に基板Sが複数枚ずつ保持されている。サセプタ3の形状としては、図2のような六角柱や、図3のような三角柱が例示される。もちろん他の多角柱であってもよい。
【0017】
サセプタ3はその下に設けられた回転機構4により矢印方向に回転されるようになっている。回転機構4は蓋体5に支持されており、蓋体5と回転機構4とサセプタ3は、昇降機構(図示せず)により一体的に昇降されるようになっている。これにより、サセプタ3がロードおよびアンロードされる。サセプタ3を処理容器2内にロードした状態では蓋体5が処理容器2の下端開口部を塞ぎ、蓋体5と処理容器2の底部とはシールリング(図示せず)によりシールされる。蓋体5は、石英等の耐熱材料で構成されている。
【0018】
処理容器2の内部には、処理容器2の内壁に沿って、例えば高純度カーボンからなる円筒状の断熱材6が配置されている。断熱材6の内側には、ロードされたサセプタ3を囲うように円筒状の誘導発熱体7が設けられている。誘導発熱体7は、後述するように誘導電流が流れて発熱するようになっており、高輻射率の導電性材料、例えばグラファイトで構成されている。
【0019】
処理容器2の天壁2aには、処理ガスを導入するためのガス導入口8が形成されており、ガス導入口8にはガス供給配管9が接続され、ガス供給配管9にはガス供給部10が接続されている。そして、ガス供給部10からガス供給配管9およびガス導入口8を介して処理容器2内に1または複数の処理ガスが、流量制御器(図示せず)により流量を制御しつつ供給されるようになっている。
【0020】
処理容器2の底部には排気口11が形成されており、排気口11には排気配管12が接続されている。排気配管12には自動圧力制御バルブ(APC)13および真空ポンプを含む排気装置14が介装されており、自動圧力制御バルブ13の開度を調節しつつ排気装置14により排気することにより、処理容器2内を所定の真空度に制御することが可能となっている。
【0021】
処理容器2の外側には誘導加熱コイル15が設けられている。誘導加熱コイル15は、金属製パイプを処理容器2の外周に上下方向に沿って螺旋状に巻回してなっており、上下方向におけるその巻回領域は基板Sの載置領域よりも広くなっている。誘導加熱コイル15を構成する金属製パイプとしては銅を好適に用いることができる。この誘導加熱コイル15には、高周波電源16から給電ライン18を介して高周波源力が供給されるようになっている。また、給電ライン18の途中には、インピーダンス整合を行うためのマッチング回路17が設けられている。
【0022】
誘導加熱コイル15に高周波電力を印加することにより、誘導加熱コイル15から高周波が放射され、それが処理容器2の壁部を透過してその内部に至り、誘導磁界が形成される。そして、その誘導磁界によって生じる誘導電流が誘導発熱体7に流れて誘導発熱体7が発熱し、その輻射熱により基板Sを加熱するようになっている。この高周波電源16の高周波の周波数は、例えば17kHz以上の範囲内に設定される。
【0023】
誘導発熱体7が誘導加熱されることにより誘導電流が消費されるため、誘導発熱体7を透過して基板Sに到達する誘導電流の量が減少し、誘導発熱体7により基板Sに誘導電流が流れることが阻止される。誘導発熱体7を透過する誘導電流の大きさは、誘導発熱体7の厚さ、高周波電力の周波数、および誘導加熱コイル15と基板Sとの距離によって変化するから、本実施形態では、基板Sへ誘導電流が流れることを阻止するように、これらの少なくとも一つを調整する。例えば、高周波電力の周波数および誘導加熱コイル15と基板Sとの距離が固定されている場合には、誘導発熱体7の厚さのみを調整する。誘導加熱コイル15と基板Sとの距離のみが固定されている場合には、高周波電力の周波数および誘導発熱体7の厚さを調整する。誘導発熱体の厚さおよび誘導加熱コイル15と基板Sとの距離が固定されている場合には、高周波電力の周波数のみを調整する。このとき、基板Sに誘導電流が流れないように条件を調整することが好ましい。誘導電流は、処理の均一性に影響を与えない程度の僅かな値であれば許容される。
【0024】
熱処理装置1の各構成部は、制御部(コンピュータ)20により制御される。制御部20はマイクロプロセッサを備えたコントローラと、オペレータが熱処理装置1を管理するためのコマンドの入力操作等を行うキーボードや、熱処理装置1の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェースと、熱処理装置1で実行される各種処理をコントローラの制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて熱処理装置1に所定の処理を実行させるための処理レシピが格納された記憶部とを有している。処理レシピ等は記憶媒体に記憶されおり、記憶部において記憶媒体から読み出して実行される。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。レシピ等は、必要に応じてユーザーインターフェースからの指示等にて記憶部から読み出し、コントローラに実行させることで、コントローラの制御下で、熱処理装置1での所望の処理が行われる。
【0025】
次に、以上のように構成された熱処理装置1を用いて行なわれる熱処理について説明する。
【0026】
サセプタ3を下降させた状態で、サセプタ3上に複数の基板Sを搭載し、基板Sが搭載されたサセプタを昇降機構により上昇させて、処理容器2内へロードする。このとき、蓋体5が上昇して処理容器2の下端開口部を塞ぎ、蓋体5と処理容器2の底部とはシールリング(図示せず)によりシールされて処理容器2内は密閉された状態となる。
【0027】
このとき、高周波電源16をオンにして誘導加熱コイル15に高周波電力を印加することによりサセプタ上の基板Sが加熱される。具体的には、誘導加熱コイル15に高周波電力を印加することにより処理容器2内に誘導磁界が形成され、その誘導磁界によって誘導発熱体7に誘導電流が流れ、誘導発熱体7が発熱する。そして、誘導発熱体7の輻射熱によりサセプタ3上の基板Sが加熱される。
【0028】
このようにして基板Sが加熱されるのと同時に、ガス供給部10から処理容器2内に熱処理に必要な処理ガスを流量制御しつつ供給し、自動圧力制御バルブ(APC)13を制御しながら排気装置14により排気口11から排気して、処理容器2内を所定の圧力に維持するとともに、回転機構4によりサセプタ3を回転させる。このとき、基板Sの温度を処理容器2内に設けた図示しない熱電対により測定し、その温度に基づいて高周波電力のパワーを制御する。これにより、基板Sの温度を所定のプロセス温度に制御しつつ所定の処理ガスにより基板Sに対して所定の熱処理を行う。
【0029】
熱処理としては、処理ガスを基板上で反応させて所定の膜を成膜する成膜処理や基板表面を酸化させる酸化処理等を挙げることができる。特に、抵抗加熱やランプ加熱では適用が困難である1000℃を超える加熱が必要な熱処理に好適であり、このような熱処理として炭化珪素(SiC)膜や窒化ガリウム(GaN)膜等の化合物膜の成膜を典型的な例として挙げることができる。SiCの場合には、基板SとしてSiまたはSiCを用いてエキタキシャル成長により単結晶のSiCを形成してもよいし、CVDにより多結晶のSiCを形成してもよい。また、GaNの場合には、基板SとしてサファイアまたはGaNを用いてエピタキシャル成長により単結晶のGaNを形成してもよいし、CVDにより多結晶のGaNを形成してもよい。
【0030】
SiC膜を成膜する場合には、処理ガスとして、Si源として例えばSiHのようなシラン系ガス、C源として例えばCガスのような炭化水素ガス、還元ガスとして例えばHガスを用いることができる。
【0031】
また、GaN膜を成膜する場合には、Ga源として例えばトリメチルガリウム(TMGa)のような有機ガリウム化合物、N源および還元ガスとして例えばNHを挙げることができる。
【0032】
誘導加熱により基板Sを加熱する場合には、従来、誘導電流をサセプタ3に作用させてその熱で基板Sを加熱していたが、このような場合には基板Sにも誘導電流が流れ、均一な処理を行うことが困難であった。特に、化合物膜の成膜の場合には、膜厚や膜組成等の不均一につながる。
【0033】
そこで、本実施形態では、誘導加熱コイル15と基板Sとの間に誘導発熱体7を設け、誘導電流を誘導発熱体7に作用させて発熱させ、その際の誘導発熱体7の輻射熱により基板Sを加熱するようにする。これにより、誘導電流は誘導発熱体7で消費され、誘導発熱体7を透過して基板Sに流れる誘導電流を著しく減少させることができ、誘導発熱体7により基板Sに誘導電流が流れることを阻止することができる。誘導発熱体7で消費されずに透過する誘導電流の大きさは、誘導発熱体7の厚さ、高周波電力の周波数、および誘導加熱コイル15と基板Sとの距離によって変化するから、本実施形態では、基板Sへ到達する誘導電流が十分に阻止されるように、これらのうち少なくとも一つを調整する。このとき、基板Sに誘導電流が流れないように条件を規定することが好ましいが、誘導電流は、処理の均一性に影響を与えない程度の僅かな値であれば許容される。
【0034】
このように、本実施形態では処理容器2の内部に発生する誘導電流がほとんど基板Sに流れないようにされるため、誘導電流が流れることによる処理の均一性の悪化を生じさせずに均一な熱処理を実現することができる。
【0035】
熱処理が成膜処理の場合には、処理ガスを均一性よく基板Sに供給する観点から、図4に示すように、天壁2aの代わりにシャワーヘッド30を設けてもよい。シャワーヘッド30は、本体31と、本体31の上部に設けられ、ガス供給配管9が接続されたガス導入口32と、本体31の内部に水平に形成されたガス拡散空間33と、ガス拡散空間33から本体31の下面に貫通する複数のガス吐出孔34とを有する。そして、処理ガスがこれら複数のガス吐出孔34から処理容器2内にシャワー状に吐出される。これにより、処理容器2内に処理ガスが均一に供給される。
【0036】
また、処理容器2内の高さ方向の温度均一性を向上させる観点から、図5に示すように、誘導加熱コイルを複数のゾーンに分けて、それぞれ高周波パワーを制御するようにしてもよい。図5の例では、高さ方向にA,B,Cの3つのゾーンに分けて、ゾーンAには誘導加熱コイル15aを巻回し、高周波電源16aから高周波電力を供給するようにし、ゾーンBには誘導加熱コイル15bを巻回し、高周波電源16bから高周波電力を供給するようにし、ゾーンCには誘導加熱コイル15cを巻回し、高周波電源16cから高周波電力を供給するようにし、各ゾーンの高周波パワーを制御するようにしている。ゾーンの数は3つに限らず、2つでも4つ以上でもよい。なお、17a,17b,17cは各ゾーンのマッチング回路であり、18a,18b,18cは各ゾーンの給電ラインである。
【0037】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
本実施形態は、化合物膜の成膜に好適な熱処理装置について示す。
図6は本発明の第2の実施形態に係る熱処理装置を示す断面図、図7は本発明の第2の実施形態に係る熱処理装置を用いてSiC膜を成膜する際の概念を示す模式図である。
【0038】
図6、7において、第1の実施形態と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。これらの図に示すように、本実施形態の熱処理装置1′では、処理容器2の天壁を分割タイプの円板状をなすシャワーヘッド40で構成する。この例では、シャワーヘッド40は、周方向に、第1シャワーヘッド40a、第2シャワーヘッド40b、第3シャワーヘッド40cに3分割されている(図7参照)。第1シャワーヘッド40aは、本体41aと、本体41aの上部に設けられたガス導入口42aと、本体41aの内部に水平に形成されたガス拡散空間43aと、ガス拡散空間43aから本体41aの下面に貫通する複数のガス吐出孔44aとを有する。第2シャワーヘッド40bは、本体41bと、本体41bの上部に設けられたガス導入口42bと、本体41bの内部に水平に形成されたガス拡散空間43bと、ガス拡散空間43bから本体41bの下面に貫通する複数のガス吐出孔44bとを有する。第3シャワーヘッド40cは、本体41cと、本体41cの上部に設けられたガス導入口42cと、本体41cの内部に水平に形成されたガス拡散空間43cと、ガス拡散空間43cから本体41cの下面に貫通する複数のガス吐出孔44cとを有する。ガス導入口42a,42b,42cには、ガス供給配管9a,9b,9cが接続されており、これらガス供給配管9a,9b,9cは、それぞれ、ガス供給部10の第1ガス源10a、第2ガス源10b、第3ガス源10cに接続されている。そして、第1ガス源10aから第1シャワーヘッド40aへは第1のガスが供給され、第2ガス源10bから第2シャワーヘッド40bには第2のガスが供給され、第3ガス源10cから第3シャワーヘッド40cは第3のガスが供給されて、第1シャワーヘッド40aから第1ガスが、第2シャワーヘッド40bから第2ガスが、第3シャワーヘッド40cから第3ガスが、それぞれ吐出されるようになっている。図示はしていないが、ガス供給配管9a,9b,9cにはバルブおよび流量制御器が設けられており、第1のガス、第2のガス、第3のガスの供給および停止、ならびにこれらの流量制御が可能となっている。
【0039】
このように構成される第2の実施形態の熱処理装置においては、第1の実施形態と同様、サセプタ3を下降させた状態で、サセプタ3上に複数の基板Sを搭載し、基板Sが搭載されたサセプタを昇降機構により上昇させて、処理容器2内へロードし、蓋体5により処理容器2の下端開口部を塞いで処理容器2内を密閉状態とする。
【0040】
このとき、高周波電源16をオンにして誘導加熱コイル15に高周波電力を印加して、処理容器2内に誘導磁界を形成し、その誘導磁界によって誘導発熱体7に誘導電流を流すことにより、誘導発熱体7を発熱させ、その輻射熱によりサセプタ3上の基板Sを加熱する。
【0041】
このようにして基板Sを加熱するのと同時に、ガス供給部10の第1ガス源10a、第2ガス源10b、第3ガス源10cから、それぞれ第1のガス、第2のガス、第3のガスを第1シャワーヘッド40a、第2シャワーヘッド40b、第3シャワーヘッド40cへ供給し、これらからそれぞれ第1のガス、第2のガスおよび第3のガスを処理容器2内に吐出させる。このとき、これら第1のガス、第2のガス、第3のガスを流量制御しつつ供給し、自動圧力制御バルブ(APC)13を制御しながら排気装置14により排気口11から排気して、処理容器2内を所定の圧力に維持する。基板Sの温度を処理容器2内に設けた図示しない熱電対により測定し、その温度に基づいて高周波電力のパワーを制御して、基板Sの温度を所定のプロセス温度に制御する。
【0042】
このとき、処理容器2内の第1シャワーヘッド40aに対応する領域(図7の領域I)は第1のガスの雰囲気となり、処理容器2内の第1シャワーヘッド40bに対応する領域(図7の領域II)は第2のガスの雰囲気となり、処理容器2内の第3シャワーヘッド40cに対応する領域(図7の領域III)は第3のガスの雰囲気となる。この状態で、回転機構4によりサセプタ3を回転させることにより、基板Sは各領域を通過し、第1のガス、第2のガス、第3のガスが繰り返し吸着され、ALD(Atomic Layer Deposition)的な形態で、所定の化合物膜が形成される。
【0043】
典型的な具体例としては、C源としてCガス、Si源としてSiHガス、還元ガスとしてHガスを用い、第1シャワーヘッド40aから第1のガスとしてCガスを吐出させ、第2シャワーヘッド40bから第2のガスとしてSiHガスを吐出させ、第3シャワーヘッド40cから第3のガスとしてHを吐出させることにより、処理容器2内の領域IをCガス供給領域としてCガス雰囲気を形成し、領域IIをSiHガス供給領域としてSiHガス雰囲気を形成し、領域IIIをHガス供給領域としてHガス雰囲気を形成し、サセプタ3を回転させることにより、基板Sがこれら領域を順次通過するようにして、ALD的な手法によりSiC膜を形成する(図7参照)。
【0044】
このようなALD的な手法を用いることにより、各ガスの反応性が高まり、より低温で純度の高い化合物膜を成膜することができる。
【0045】
このとき、ガス導入部分の数および領域の数は3つに限らず、化合物膜を成膜するための処理ガスの数で決定される。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、サセプタ3として多角柱のバレル型のものを示したが、これに限らず、図8に示すような断面星形のものや、図9に示すような断面十字型のもの等、種々のものを用いることができる。
【0047】
また、熱処理としては、成膜処理、特に化合物膜の成膜処理が好適であるが、酸化処理、アニール処理、拡散処理、改質処理等、処理ガスを供給しつつ基板を加熱する処理であれば本発明の熱処理に含まれる。
【0048】
さらに、基板についても、処理に応じて半導体基板、サファイア基板、ZnO基板、ガラス基板等種々のものを用いることができ、特に限定されるものではない。
【0049】
また、本実施形態では、誘導発熱体の材料として、グラファイトを例示したが、これに限定されず、SiC等の導電性セラミックスを用いることもできる。
【符号の説明】
【0050】
1;熱処理装置
2;処理容器
3;サセプタ
4;回転機構
5;蓋体
7;誘導発熱体
8,32,42a,42b,42c;ガス導入口
9,9a,9b,9c;ガス供給配管
10;ガス供給部
11;排気口
12;排気配管
14;排気装置
15;誘導加熱コイル
16;高周波電源
20;制御部
30,40;シャワーヘッド
40a;第1シャワーヘッド
40b;第2シャワーヘッド
40c;第3シャワーヘッド
S;基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板に熱処理を施す熱処理装置であって、
熱処理が施される複数の基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内で複数の基板を保持する基板保持部材と、
前記処理容器内に誘導磁界を形成して誘導加熱するための誘導加熱コイルと、
前記誘導加熱コイルに高周波電力を印加する高周波電源と、
前記処理容器内に処理ガスを供給するガス供給手段と、
前記処理容器内を排気する排気手段と、
前記処理容器内で前記基板保持部材を囲うように前記誘導加熱コイルと前記基板保持部材との間に設けられ、前記誘導磁界によって形成された誘導電流により加熱され、その輻射熱で前記基板保持部材に保持された基板を加熱する誘導発熱体と
を具備し、
前記誘導発熱体により、基板に誘導電流が流れることが阻止されることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記誘導発熱体により、基板へ誘導電流が流れることが阻止されるように、前記誘導発熱体の厚さ、前記高周波電力の周波数、および誘導加熱コイルと基板との距離のうち少なくとも一つが調整されることを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記処理容器は誘電体からなり、前記誘導加熱コイルは前記処理容器の外周に巻回されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記基板保持部材は、前記処理容器の上下方向に延在する多角柱をなし、その側面に基板が保持されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記誘導発熱体はグラファイトで構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記ガス供給手段は、前記処理容器内にシャワー状に処理ガスを導入するシャワーヘッドを有していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項7】
前記基板保持部材を回転させる回転機構をさらに具備することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記熱処理は、基板上で処理ガスを反応させて所定の膜を成膜する成膜処理であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項9】
前記成膜処理は、炭化珪素(SiC)膜または窒化ガリウム(GaN)膜を成膜するものであることを特徴とする請求項8に記載の熱処理装置。
【請求項10】
前記熱処理は、複数の処理ガスを用いて化合物膜を成膜する成膜処理であり、前記基板保持部材を回転させる回転機構をさらに具備し、前記ガス供給手段は、前記各処理ガスを前記処理容器の異なる領域に供給し、前記回転機構により前記基板保持部材を回転させて、基板が前記各領域を順次通過するようにし、基板に前記複数の処理ガスを順次吸着させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項11】
前記ガス供給手段は、前記各処理ガスをそれぞれ前記処理容器の異なる領域にシャワー状に導入するための複数のシャワーヘッドを有することを特徴とする請求項10に記載の熱処理装置。
【請求項12】
前記化合物膜はSiC膜であり、前記複数のガスとしてSi源ガス、C源ガス、還元ガスを用いることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−55201(P2013−55201A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191900(P2011−191900)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】