説明

燃料電池搭載電動車両

【課題】燃料電池システムの熱交換ユニットをコンパクトに形成して、当該システムを含む電力ユニットをコンパクト化できること。
【解決手段】車両の前端部と後端部に一対の前輪と後輪12を備え、車両前部に足載せフロアが、車両後部に運転シートがそれぞれ設けられ、この運転シートの下方に、車体カバー15で覆われ電力ユニット16を収容した動力室17が配置され、電力ユニットは燃料電池システム18を有し、電動モータへ電力を供給して後輪を駆動するハンドル型電動車椅子車両10において、電力ユニットでは、車両進行方向前側に燃料電池システムが配置され、この燃料電池システムでは、動力室の前側下部にセルスタック32が配置され、動力室の前側上部に、熱交換器42、48、冷却ファン43、49及びこれらを連結する冷却風ダクトからなり、電気エネルギー生成時に発生する熱を冷却して除去する熱交換ユニット54、55が配置されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムからの電力で電動モータを駆動して走行する燃料電池搭載電動車両に係り、特に、燃料電池システムを構成する構成部品のレイアウトを好適にした燃料電池搭載電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
現在販売されているハンドル型電動車椅子車両は、電動モータを駆動するための動力がバッテリから供給されるものがほとんどであるが、近年、燃料電池にて発生した電力を電動モータへ供給するものが開発されている。
【0003】
このような燃料電池からの電力で駆動される燃料電池搭載電動車両では、バッテリ搭載電動車両がバッテリを単体で搭載すれば足りるのに対し、燃料電池のほかに、この燃料電池に燃料や空気を供給したり、燃料電池を冷却するシステムが必要となる。そのため、燃料電池搭載電動車両では、ポンプやコンプレッサ、ファンなどのように、バッテリ搭載電動車両には存在しなかった機器を搭載する必要がある。
【0004】
特許文献1に記載の電動車両にあっては、燃料電池(セルスタック)のほかに、ポンプやフィルタ、ファンなどの燃料電池システムの構成部品が搭載され、これらの構成部品のレイアウトが開示されている。
【特許文献1】特開2002−362470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、燃料電池システムの構成部品の設置場所によっては、雨水や跳ね水などが上記構成部品に付着して、この構成部品が水により故障し、燃料電池システムの信頼性が低下する恐れがある。特に、特許文献1の電動車両のように、車輪外径の最上部よりも下方に存在する構成部品にあっては、上述のように水による故障が発生しやすい。
【0006】
また、特許文献1に記載の電動車両では、走行風導入口が車両前方に、走行風排出口が車両後方にそれぞれ設けられているため、走行風導入口から走行風排出口へ向かって流れて、燃料電池(セルスタック)にて発生した熱を冷却する走行風の経路が長くなり、燃料電池システムのコンパクト化を実現することができない。
【0007】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、燃料電池システムの熱交換ユニットをコンパクトに形成して、当該システムを含む電力ユニットをコンパクト化できる燃料電池搭載電動車両を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、燃料電池システムを構成する構成部品の水による故障を未然に防止して、当該システムの信頼性を向上できる燃料電池搭載電動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車両の前端部と後端部にそれぞれ一対の前輪と後輪を備え、車両前部に低床の足載せフロアが、車両後部に運転シートがそれぞれ設けられ、この運転シートの下方に、車体カバーで覆われ電力ユニットを収容した動力室が配置され、上記電力ユニットは、燃料電池システム及び二次電池を有してなり、電動モータへ電力を供給して前記後輪を駆動する燃料電池搭載電動車両において、前記電力ユニットでは、車両進行方向の前側に前記燃料電池システムが、後側に前記二次電池がそれぞれ配置され、前記燃料電池システムでは、前記動力室の前側下部に、電気化学反応を行って発電するセルスタックが配置され、前記動力室の前側上部に、熱交換器、冷却ファン及びこれらを連結する冷却風ダクトからなり、電気エネルギー生成時に発生する熱を冷却して除去する熱交換ユニットが配置されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、動力室の前側上部に熱交換ユニットが配置されたので、この熱交換ユニットをコンパクトに形成でき、燃料電池システムを含む電力ユニットをコンパクト化できる。また、熱交換ユニットが動力室の前側上部に配置されたので、この熱交換ユニットの冷却ファンを含む燃料電池システムの構成部品に対して水による故障を未然に防止でき、当該システムの信頼性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る燃料電池搭載電動車両の一実施形態が適用されたハンドル型電動車椅子車両を示す全体側面図である。図2は、図1のハンドル型電動車椅子車両の運転シートと共に、動力室の内部の電力ユニットを示す側面図である。
【0013】
図1に示す燃料電池搭載電動車両としてのハンドル型電動車椅子車両10は、車両の前端部に左右一対の前輪11が、車両の後端部に左右一対の後輪12がそれぞれ設けられ、車両前部に低床の足載せフロア13が、車両後部に運転シート14がそれぞれ設置され、この運転シート14の下方に、車体カバー15で覆われ電力ユニット16(図2)を収容した動力室17が配置されて構成される。
【0014】
図1に示す足載せフロア13は、運転シート14に着座した乗員が足を揃えて置くことが可能になるようにフラット形状に形成されている。また、運転シート14は、背もたれ付きの椅子型に構成される。
【0015】
電力ユニット16は、図2に示すように、燃料電池システム18及び二次電池19を供給するハイブリッド型に構成される。この電力ユニット16は、燃料電池システム18にて発生した電力(電気エネルギー)、及びこの電力を蓄電した二次電池19からの電力を、電動モータを具備した駆動ユニット20(図1)へ供給して後輪12を駆動する。
【0016】
上述のハンドル型電動車椅子車両10の車体フレーム21はプラットフォーム型の車体フレームであり、車幅方向に左右一対配置されたメインフレーム22と、このメインフレーム22間に架設される複数本のビーム部材23(図3及び図7)とを有して構成される。また、メインフレーム22の中央前側には、足載せフロア13用のフロア部材24が、この一対のメインフレーム22間に架設される。更に、メインフレーム22の後部には、湾曲形状に形成されたシートパイプ25が跨設され、このシートパイプ25の中央頂部に、運転シート14を支持するシートポスト26が取り付けられている。
【0017】
このように構成された車体フレーム21の前端部に前輪11が、図1に示すように、前輪懸架装置(不図示)、及びステアリングポスト27を備えるステアリング機構によって左右に操舵可能に枢支される。ステアリングポスト27は、乗員の足元を覆うレッグシールド28内を上方へ向かって立設し、その上端部に操向ハンドル29が回転一体に設けられる。前輪11は、ステアリングポスト27を介して操向ハンドル29により左右に操舵される。
【0018】
車体フレーム21の後端部に設けられたピポットブラケット30に、駆動ユニット20の前端部が上下方向にスイング自在に枢着されると共に、この駆動ユニット20は、クッションユニット31によって車体フレーム21のシートパイプ25に弾性的に支持される。この駆動ユニット20は、電動モータ及びギアケース(共に図示せず)を備える。
【0019】
さて、運転シート14の下方に配置された動力室17の電力ユニット16(図2)は燃料電池システム18を有するが、この燃料電池システム18はダイレクトメタノール型燃料電池システムである。ダイレクトメタノール型燃料電池は、メタノールを燃料として燃料電池(セルスタック)の負極へ直接投入して電気エネルギーを発生させる燃料電池である。
【0020】
このダイレクトメタノール型燃料電池システムを、図11を用いて説明する。セルスタック32の負極に燃料を、正極に空気(酸素)をそれぞれ供給することにより、当該セルスタック32において電気化学反応が行われて電力が発生すると共に、負極に二酸化炭素が、正極に水が生ずる。
【0021】
燃料系については、燃料タンク33に貯溜された燃料(例えばメタノール54%水溶液)は、燃料ポンプ34によって希釈タンク35へ搬送され、この希釈タンク35内で水により最適濃度(例えばメタノール3%水溶液)まで希釈される。この希釈された燃料は、燃料フィルタ36にて不純物が除去された後に、循環ポンプ37によってセルスタック32の負極へ送り込まれる。
【0022】
セルスタック32の出力特性は、燃料濃度に大きく影響されるため、希釈タンク35内の燃料濃度(メタノール水溶液濃度)はメタノール濃度センサ38によって監視されている。このメタノール濃度センサ38からの濃度情報に基づき水ポンプ39及び燃料ポンプ34の駆動が制御されて、水タンク41から水が、燃料タンク33から燃料が希釈タンク35内へそれぞれ供給されて、この希釈タンク35内の燃料濃度が最適濃度になるように調整される。
【0023】
また、ダイレクトメタノール型燃料電池の場合、燃料が液体であるため燃料自体がセルスタック32の冷却機能を有する。そこで、セルスタック32の負極出口から排出された未反応燃料と、電気化学反応により発生した二酸化炭素等を燃料冷却系熱交換器42へ導入し、この燃料冷却系熱交換器42に冷却ファン43から冷却風を導くことで上記未反応燃料等を冷却し、これにより負極出口の燃料温度を最適温度まで低下させて、セルスタック32の温度を制御する。ここで、燃料冷却系熱交換器42の設置場所は、セルスタック32通過後のみならず、セルスタック32通過前の燃料配管中に設置してもかまわない。
【0024】
燃料冷却系熱交換器42にて冷却された未反応燃料及び二酸化炭素等は希釈タンク35へ導かれ、未反応燃料は燃料として再利用され、二酸化炭素は二酸化炭素配管44を通って水タンク41へ導入される。この二酸化炭素配管44には、希釈タンク35側への逆流を防ぐために逆止弁45が設けられている。
【0025】
空気系については、エアフィルタ46にて空気中の不純物が除去され、コンプレッサ47にてセルスタック32の正極へ空気(酸素)が圧送される。セルスタック32の正極出口からは、未反応の空気と、電気化学反応により生成された水とが排出される。
【0026】
ここで、セルスタック32の最適運転温度は70℃〜80℃程度と比較的高温であるため、生成水の多くは水蒸気の状態となっている。希釈タンク35にて燃料を希釈するためには、生成水を水の状態にして水タンク41に貯溜する必要がある。そこで、セルスタック32の正極出口の未反応空気と水蒸気を排気冷却系熱交換器48へ導入し、この排気冷却系熱交換器48へ冷却ファン49から冷却風を導くことで、これらの未反応空気および水蒸気を冷却し、水蒸気を凝集させて生成水の回収率を高めている。
【0027】
排気冷却系熱交換器48により冷却された未反応空気及び水蒸気と、二酸化炭素配管44を通って水タンク41に排出された二酸化炭素は、水タンク41内で混合され、排ガス浄化器50(例えば触媒)により有害成分が除去されて浄化された後、排ガス排出管51を経て大気中へ排出される。
【0028】
上述のような構成の燃料電池システム18を含む電力ユニット16の構成部品のレイアウトを以下に説明する。
【0029】
図2〜図4及び図7に示すように、電力ユニット16では、動力室17において、シートパイプ25を境にして車両進行方向の前側に上述の燃料電池システム18が配置され、後側に二次電池19と、車両を制御する車両コントローラ52と、燃料電池システム18を制御する燃料電池システムコントローラ53とが配置されている。
【0030】
燃料電池システム18では、動力室17の前側下部にセルスタック32、希釈タンク35、燃料フィルタ36及び水タンク41等が配置される。更に、燃料電池システム18では、動力室17の前側上部に、燃料冷却系熱交換ユニット54と排気冷却系熱交換ユニット55が、車両左右方向の両側にそれぞれ対称に配置されると共に、エアフィルタ46、コンプレッサ47、排ガス浄化器50、循環ポンプ37、水ポンプ39及びメタノール濃度センサ38等が配置されている。また、排ガス排出管51は、動力室17における最上部に位置し、排ガス浄化器50から車両後方へ向かって延在して設けられる。
【0031】
ここで、動力室17における上下の境界は、例えば図1に示す前輪11及び後輪12の外径最上部を結ぶ直線Aを基準としている。従って、動力室17において、直線Aよりも上方が上部、下方が下部としてそれぞれ定義される。
【0032】
一方、図1に示すように、燃料タンク33は、レッグシールド28内のステアリングポスト27の前方空間に配置され、車両前後方向の寸法が小さく、車両上下及び左右方向の寸法が大きな板形状に構成されている。符号64は、この燃料タンク33への燃料供給口である。
【0033】
前記燃料冷却系熱交換ユニット54は、図3、図6及び図7に示すように、燃料冷却系熱交換器42、冷却ファン43、及びこれらの燃料冷却系熱交換器42と冷却ファン43とを連結する冷却風ダクト56を有して構成される。この燃料冷却系熱交換ユニット54は、前述のごとく、セルスタック32の負極から排出される未反応燃料及び二酸化炭素を冷却し、電気エネルギー生成時に発生する熱を除去する。また、排気冷却系熱交換ユニット55は、排気冷却系熱交換器48、冷却ファン49、及びこれらの排気冷却系熱交換器48と冷却ファン49とを連結する冷却風ダクト57を有して構成される。この排気冷却系熱交換ユニット55は、前述のごとく、セルスタック32の正極から排出された空気及び水蒸気を冷却し、電気エネルギー生成時に発生する熱を除去する。
【0034】
図1に示すように、動力室17の車体カバー15には、車両進行方向前方の足載せフロア13に面する前壁58に、冷却風取入口60または冷却風排出口61(本実施の形態では冷却風取入口60)が、車両の左右両側に一つずつ開口して設けられる。更に、車体カバー15には、車両進行方向側方の車両外側に面する両横壁59に、冷却風排出口61または冷却風取入口60(本実施の形態では冷却風排出口61)がそれぞれ開口して設けられる。これらの冷却風取入口60及び冷却風排出口61は、前記直線Aの上方にそれぞれ設けられる。
【0035】
そして、図6及び図8に示すように、燃料冷却系熱交換ユニット54の燃料冷却系熱交換器42と排気冷却系熱交換ユニット55の排気冷却系熱交換器48が、車体カバー15の前壁58のそれぞれの冷却風取入口60近傍に配置される。また、図6及び図9に示すように、燃料冷却系熱交換ユニット54の冷却ファン43と排気冷却系熱交換ユニット55の冷却ファン49が、車体カバー15の横壁59のそれぞれの冷却風排出口61近傍に配置される。従って、前壁58のそれぞれの冷却風取入口60から取り込まれた冷却風(空気)によって燃料冷却系熱交換器42、排気冷却系熱交換器48がそれぞれ直接冷却され、この燃料冷却系熱交換器42、排気冷却系熱交換器48にて熱交換されて高温になった冷却風は、冷却ファン43、49の作用で冷却風ダクト56、57内を流れ、横壁59のそれぞれの冷却風排出口61から車外へ排出される。
【0036】
上記冷却風取入口60及び冷却風排出口61には、図8及び図9に示すようにガイド板62が複数枚整列して設けられている。これらのガイド部材62は、車両外方へ向かって斜め下方に傾斜して設置される。また、図10に示すように、排ガス排出管51の先端の排出口63は、水平方向によりも下向きに設けられる。また、冷却ファン43及び49は軸流ファンにて構成され、図示しない切替回路からの指令により、正転または逆転が任意に変更可能に構成されている。
【0037】
以上のように構成されたことから、本実施の形態によれば、次の効果(1)〜(11)を奏する。
【0038】
(1)図3及び図6に示すように、動力室17の前方上部に、燃料冷却系熱交換器42、冷却ファン43及び冷却風ダクト56からなる燃料冷却系熱交換ユニット54と、排気冷却系熱交換器48、冷却ファン49及び冷却風ダクト57からなる排気冷却系熱交換ユニット55とが配置されたことから、これらの冷却風ダクト56、57の占有体積を最小限に抑えることができるので、燃料冷却系熱交換ユニット54、排気冷却系熱交換ユニット55のそれぞれの占有体積をコンパクトに形成できる。このため、燃料冷却系熱交換ユニット54及び排気冷却系熱交換ユニット55の構造を簡素化できると共に、燃料電池システム18を含む電力ユニット16をコンパクト化でき、更に燃料電池システム18を構成する構成部品のレイアウトの自由度を増大できる。
【0039】
また、燃料冷却系熱交換ユニット54、排気冷却系熱交換ユニット55のそれぞれがコンパクトに形成されたことで、これらの熱交換ユニット54、55から動力室17内への放熱量が減少して、燃料電池システム18の構成部品の熱による故障を未然に防止でき、燃料電池システム18の信頼性及び安全性を向上させることができる。
【0040】
(2)図3、図6及び図7に示すように、動力室17の前側上部に燃料冷却系熱交換ユニット54及び排気冷却系熱交換ユニット55が配置されたので、冷却ファン43及び49に雨水や跳ね水が付着することが抑制される。その他の電気部品(コンプレッサ47、循環ポンプ37、水ポンプ39、メタノール濃度センサ38、二次電池19、車両コントローラ52、燃料電池システムコントローラ53等)も動力室17の上部に配置されたので、同様に雨水や跳ね水などの付着を抑制できる。この結果、冷却ファン43及び49を含めた電気部品の水による故障を未然に防止でき、燃料電池システム18を含めた電力ユニット16の信頼性及び安全性を向上させることができる。
【0041】
(3)エアフィルタ46及び排ガス排出管51が動力室17の上部に配置されたので、エアフィルタ46およびコンプレッサ47の水の吸引による故障を防止できる。同様に、排ガス排出管51を経た水タンク41への外部の不純物を含んだ水の侵入を抑制できるので、燃料電池システム18中への不純物の浸入によるセルスタック32の特性低下を防止できる。この結果、燃料電池システム18の性能低下を抑制でき、当該システムの信頼性及び安全性を向上させることができる。
【0042】
(4)燃料冷却系熱交換ユニット54が動力室17の前側上部左側に、排気冷却系熱交換ユニット55が動力室17の前側上部右側に離間して配置されたので、燃料冷却系熱交換ユニット54及び排気冷却系熱交換ユニット55以外の燃料電池システム18の構成部品のレイアウトの自由度を増大させることができると共に、車体カバー15内の温度上昇を最小限に抑制して、燃料電池システム18の構成部品の熱による故障を未然に防止できる。
【0043】
(5)図1及び図6に示すように、車体カバー15の前壁58に冷却風取入口60が、横壁59に冷却風排出口61がそれぞれ形成されたので、冷却風取入口60と冷却風排出口61とが異なる方向の壁面に設けられることになる。このため、冷却風排出口61から排出された排熱風が冷却風取入口60へ回り込んで冷却風として取り込まれることを防止できるので、燃料冷却系熱交換ユニット54、排気冷却系熱交換ユニット55による冷却効率を向上させることができる。
【0044】
(6)車体カバー15の前壁58に冷却風取入口60が形成されたので、車体の走行によって生ずる走行風を冷却風として冷却風取入口60から積極的に取り込むことができる。この結果、燃料冷却系熱交換ユニット54及び排気冷却系熱交換ユニット55による冷却効率を向上させることができる。
【0045】
(7)図6及び図8に示すように、燃料冷却系熱交換器42、排気冷却系熱交換器48が冷却風取入口60近傍に配置されたことから、これらの熱交換器42及び48が外気温に最も近い冷却風によって冷却されることになるので、これら燃料冷却系熱交換器42及び排気冷却系熱交換器48の冷却効率を向上させることができる。
【0046】
(8)図1に示すように、車体カバー15の横壁59に冷却風排出口61が形成されたので、この冷却風排出口61から排出される排熱風が、運転シート14に着座した乗員に当たることを防止できる。
【0047】
(9)図8及び図9に示すように、冷却風取入口60、冷却風排出口61にそれぞれ設けられた複数枚のガイド板62が、車両外方へ向かって斜め下方に傾斜して設けられたので、これらの冷却風取入口60及び冷却風排出口61への水の侵入を抑制でき、冷却ファン43、49の水による故障を防止できる。また、車両付近にいる歩行者等へ、冷却風排出口61から排出される排熱風が直接当たることを防止できる。
【0048】
(10)図4及び図10に示すように、排ガス排出管51の先端の排出口63が、水平方向よりも斜め下方に設けられたので、この排ガス排出管51へ水の侵入を防止でき、排ガス浄化器50の水による故障を未然に防止できる。また、車両付近にいる歩行者等へ排ガス排出管51から排ガスが直接当たることを防止できる。
【0049】
(11)図1及び図6に示すように、燃料冷却系熱交換ユニット54の冷却ファン43と排気冷却系熱交換ユニット55の冷却ファン49とが軸流ファンにて構成され、正転または逆転可能に構成されている。このため、例えば冬季において、冷却ファン43、49を逆転させて、車体カバー15の横壁59の冷却風排出口61を空気取入口とし、車体カバー15の前壁58の空気取入口60を空気排出口として、この空気排出口から、燃料冷却系熱交換器42及び排気冷却系熱交換器48にて熱交換されて加熱された冷却風を、暖房用の温風として、運転シート14に着座した乗員の足元へ導くことができる。
【0050】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
例えば、車体カバー15の冷却風取入口60近傍に、燃料冷却系熱交換器42、排気冷却系熱交換器48ではなく冷却ファン43、49が設置され、冷却風排出口61近傍に、冷却ファン43、49ではなく燃料冷却系熱交換器42、排気冷却系熱交換器48が設置されてもよい。この場合には、冷却風取入口60から取り込まれた冷却風が冷却風ダクト56、57を流れた後に燃料冷却系熱交換器42、排気冷却系熱交換器48へ導かれる。これによって、燃料冷却系熱交換器42、排気冷却系熱交換器48によりそれぞれ熱交換されて高温になった冷却風(熱風)が冷却風ダクト56、57内を通過しないので、これらの冷却風ダクト56、57からの輻射熱による動力室17内の温度上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る燃料電池搭載電動車両の一実施形態が適用されたハンドル型電動車椅子車両を示す全体側面図。
【図2】図1のハンドル型電動車椅子車両の運転シートと共に、動力室の内部の電力ユニットを示す側面図。
【図3】図2の電力ユニットを示す正面図。
【図4】図3の電力ユニットを示す右側面図。
【図5】図3の電力ユニットを示す左側面図。
【図6】図3の電力ユニットを示す平面図。
【図7】図3の電力ユニットを示す斜視図。
【図8】図5の電力ユニットの前側部分を、車体カバーの前壁部分と共に示す部分拡大図。
【図9】図3の電力ユニットの左側部分を、車体カバーの横壁部分と共に示す部分拡大図。
【図10】図4の電力ユニットの後側部分を、車体カバーの後壁部分と共に示す部分拡大図。
【図11】燃料電池システムのシステム構成を示す構成図。
【符号の説明】
【0053】
10 ハンドル型電動車椅子車両(燃料電池搭載電動車両)
11 前輪
12 後輪
13 足載せフロア
14 運転シート
15 車体カバー
16 電力ユニット
17 動力室
18 燃料電池システム
19 二次電池
20 駆動ユニット(電動モータ)
32 セルスタック
42 燃料冷却系熱交換器
43 冷却ファン
46 エアフィルタ
48 排気冷却系熱交換器
49 冷却ファン
50 排ガス浄化器
51 排ガス排出管
54 燃料冷却系熱交換ユニット
55 排気冷却系熱交換ユニット
56、57 冷却風ダクト
58 前壁
59 横壁
60 冷却風取入口
61 冷却風排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前端部と後端部にそれぞれ一対の前輪と後輪を備え、車両前部に低床の足載せフロアが、車両後部に運転シートがそれぞれ設けられ、この運転シートの下方に、車体カバーで覆われ電力ユニットを収容した動力室が配置され、
上記電力ユニットは、燃料電池システム及び二次電池を有してなり、電動モータへ電力を供給して前記後輪を駆動する燃料電池搭載電動車両において、
前記電力ユニットでは、車両進行方向の前側に前記燃料電池システムが、後側に前記二次電池がそれぞれ配置され、
前記燃料電池システムでは、前記動力室の前側下部に、電気化学反応を行って発電するセルスタックが配置され、前記動力室の前側上部に、熱交換器、冷却ファン及びこれらを連結する冷却風ダクトからなり、電気エネルギー生成時に発生する熱を冷却して除去する熱交換ユニットが配置されたことを特徴とする燃料電池搭載電動車両。
【請求項2】
前記熱交換ユニットは、動力室の車体カバーにおける車両進行方向前方の前壁と車両進行方向側方の横壁に、冷却風取入口または冷却風排出口の開口が設けられ、これらの開口の一方側に熱交換器が、他方側に冷却ファンがそれぞれ配置されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池搭載電動車両。
【請求項3】
前記冷却風取入口が、動力室における車体カバーの前壁に設けられると共に、冷却風排出口が、前記車体カバーの横壁に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池搭載電動車両。
【請求項4】
前記熱交換ユニットでは、冷却風取入口の近傍に熱交換器が、冷却風排出口の近傍に冷却ファンがそれぞれ配置されたこと特徴とする請求項2に記載の燃料電池搭載電動車両。
【請求項5】
前記熱交換ユニットでは、冷却風取入口の近傍に冷却ファンが、冷却風排出口の近傍に熱交換器がそれぞれ配置されたこと特徴とする請求項2に記載の燃料電池搭載電動車両。
【請求項6】
前記燃料電池システムは、ダイレクトメタノール型燃料電池システムであり、熱交換器ユニットは、セルスタック通過前、あるいは通過後の燃料等を冷却する燃料冷却系熱交換ユニットと、上記セルスタックにて発生する水蒸気を凝縮して回収する排気系熱交換ユニットを備え、これらの熱交換器ユニットが、動力室において車両の左右にそれぞれ配置されたこと特徴とする請求項1に記載の燃料電池搭載電動車両。
【請求項7】
前記熱交換器ユニットの冷却ファンは軸流ファンにて構成され、切替回路からの指令により正転または逆転が任意に変更可能に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池搭載電動車両。
【請求項8】
前記燃料電池システムでは、セルスタックへ供給する空気を浄化するエアフィルタが、動力室の前側上部に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池搭載電動車両。
【請求項9】
前記燃料電池システムでは、セルスタックにて生成され排ガス浄化器にて浄化された排ガスを排出する排ガス排出管が、動力室の上部に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池搭載電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−87859(P2009−87859A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258833(P2007−258833)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】