説明

物の薄膜コーティング法

本発明は、放射線硬化によって物を薄膜コーティングするための単純化された方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化によって物を薄膜コーティングするための単純化された方法に関する。
【0002】
EP819520A2は、その塗料が放射線硬化によって硬化される、背面射出成形された深絞り加工された塗膜を記載する。
【0003】
開示されるのは、背面射出成形が行われた後の放射線硬化、すなわち背面射出成形および深絞り加工とは別個に行われる一工程での放射線硬化だけである。
【0004】
WO06/000349は、場合により不活性雰囲気下での放射線硬化のための装置を記載する。
【0005】
そこで示される装置の欠点は、該装置が深絞り加工機能を備えていないことである。
【0006】
WO00/63015(US6777089B)は、放射線硬化性の薄膜が製造される方法を開示する。その際、しかしながら、放射線硬化は、有利には深絞り加工後に、かつ特に有利には背面射出成形後に行われる。
【0007】
DaimlerChrysler HighTechReport 1/2005 (http://www.daimlerchrysler.com/Projects/c2c/channel/documents/682160_hightechreport_01_2005_filmcoating_g.pdf)は、放射線硬化性の薄膜が複数の別々の製造工程において製造されるコーティングステーションを記載する。そこで提示されるプロセスにとって決定的に重要なのは、乾燥および硬化が別々にされることである。その際、深絞り加工およびUV硬化が、同時に2つに分けられた作業工程において実施される。
【0008】
そのために2つの別々の装置が提供されなければならない結果となり、これは方法の煩雑性ならびにデバイスおよびスペースの需要を高める。
【0009】
本発明の課題は、デバイスコストを減少させて、放射線硬化性の薄膜を成形かつ硬化させることのできる単純化された製造法を提供することであった。
【0010】
該課題は、少なくとも以下の工程
1)場合により、さらに別の任意の中間層B)および/またはC)を含んでいてよい薄膜状の基材D)を、少なくとも1つの放射線硬化性のカバー層A)でコーティングすることによって複合体薄膜を製造する工程、
2)場合により、そのようにして得られる複合体薄膜を乾燥する工程、
3)1)または2)から得られる複合体薄膜を、深絞り加工または物体に張り付けることによって成形する工程、
4)3)で成形された複合体薄膜を放射線硬化する工程および
5)場合により、4)で硬化された、成形された複合体薄膜を背面射出成形する工程を包含し、その際、工程3)および4)は同一の装置中で実施する、薄膜コーティングされた物体の製造法によって解決された。
【0011】
工程の成形3)と放射線硬化4)とを一つの装置中でまとめることによって、本発明による方法は、従来技術と比べて単純化された装置的な措置により実施されえ、かつ必要とされるエネルギー需要量がより少ない。
【0012】
有利な一実施態様において、付加的に乾燥工程2)を少なくとも部分的に同一の装置中で実施してよい。
【0013】
有利な一実施態様において、付加的に工程5)を少なくとも部分的に同一の装置中で実施してよい。
【0014】
個々の工程は、以下でさらに詳しく説明される:
1)場合により、さらに別の任意の中間層B)および/またはC)でコーティングされていてよい薄膜状の基材D)を、少なくとも1つの放射線硬化性のカバー層A)でコーティングすることによって複合体薄膜を製造する工程。
【0015】
カバー層A)
カバー層は、本発明により放射線硬化性である。それゆえカバー層として、ラジカル硬化性またはイオン硬化性の基(略して硬化性基)を含有する放射線硬化性材料が使用される。有利なのはラジカル硬化性基である。
【0016】
放射線硬化性層は着色されていてよいか、または無色であってよい。
【0017】
有利には、該放射線硬化性材料は、硬化工程4)において使用される放射線に対して透過性である。硬化が行われた後も、該カバー層は有利には透明であり、すなわちそれはクリア塗料層である。
【0018】
放射線硬化性材料の本質的な構成成分は、塗膜形成によってカバー層を形成する結合剤である。
【0019】
好ましくは、放射線硬化性材料は、
i)2000g/モルより大きい平均モル質量Mを有するエチレン性不飽和基を有するポリマー
ii)i)と、i)とは異なる2000g/モル未満のモル質量を有するエチレン性不飽和低分子化合物との混合物
iii)飽和熱可塑性ポリマーと、エチレン性不飽和化合物との混合物
から成る群から選択された少なくとも1つの結合剤を含有する。
【0020】
化合物i)、ii)およびiii)の例は、WO00/63015(その中の特に第2頁,第27行目〜第6頁,第15行目)、WO2005/080484(その中の特に第2頁,第39行目〜第17頁,第22行目)、およびWO2005/118689(その中の特に第2頁,第40行目〜第20頁,第14行目)の中で見出され、それぞれ、これによって参照をもって引用したものとする。有利な結合剤は、WO2005/080484(その中の特に第2頁,第39行目〜第17頁,第22行目)の中で記載されているような結合剤である。
【0021】
有利には、該結合剤は、60℃より下の、好ましくは40℃より下の、特に有利には20℃より下のガラス転移温度(T)を有する。一般的に、Tは−60℃の値を下回らない。(記載値は、放射線硬化前の結合剤に関する)。
【0022】
結合剤のガラス転移温度Tは、ASTM3418/82に従う、10℃/分の加熱速度によるDSC法(示差走査熱量測定法)により測定される。
【0023】
硬化性、すなわちエチレン性の不飽和基の量は、有利な一実施態様において、結合剤(固体)、すなわち水またはその他の溶剤を含まない結合剤1kg当たり2モルより大きく、有利には2モルから8モル、特に有利には2.1モルから6モル、極めて有利には2.2から6モル、殊に2.3から5モル、および殊のほか2.5から5モルである。
【0024】
該放射線硬化性材料は、さらに別の構成成分を含有してよい。殊に光開始剤、均展剤および安定化剤が挙げられる。屋外領域中で、すなわち日光に直接曝されるコーティングのために適用される場合、該材料は、殊にUV吸収剤およびラジカル捕捉剤を含有する。
【0025】
熱による後硬化のための促進剤として、例えば、スズオクトエート、亜鉛オクトエート、ジブチルスズラウレートまたはジアザ[2.2.2]ビシクロオクタンが使用されうる。
【0026】
光開始剤は、例えば当業者に公知の光開始剤であってよく、例えば"Advanced in Polymer Science",Volume 14,Springer Berlin 1974の中の、またはK.K.Dietliker,Chemistry and Technology of UV− and EB−Formulation for Coatings,links and Paints,Volume 3; Photoinitiators for Free Radical and Cationic Polymerization,P.K.T.Oldring(Eds),SITA Technology Ltd,Londonの中の光開始剤が挙げられる。
【0027】
例えば、WO2005/080484A1,第18頁,第22行目〜第19頁,第10行目の中で記載されているような光開始剤が考慮に入れられ、それぞれ、これによって参照をもって引用したものとする。
【0028】
特に有利には、光開始剤は、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF AGのLucirin(R)TPO)、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート(BASF AGのLucirin(R)TPO L)、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(Ciba Spezialitaetenchemie社のIrgacure(R))およびビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドを含有する混合物、例えば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(Ciba Spezialitaetenchemie社のIrgacure(R)1700)または1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(Ciba Spezialitaetenchemie社のIrgacure(R)1800)との混合物から成る群から選択されている。
【0029】
UV吸収剤は、UV放射を熱エネルギーに変換する。公知のUV吸収剤は、ヒドロキシベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ケイ皮酸エステルおよびオキサルアニリドである。
【0030】
ラジカル捕捉剤は、中間体として形成されるラジカルと結合する。重要なラジカル捕捉剤は、HALS(ヒンダードアミン系光安定剤 Hindered Amine Light Stabilizers)として公知である立体障害アミンである。
【0031】
屋外適用において、UV吸収剤およびラジカル捕捉剤の含有量は、放射線硬化性化合物100質量部に対して、好ましくは計0.1〜5質量部、特に有利には0.5〜4質量部である。
【0032】
その他の点では、該放射線硬化性材料は、放射線硬化性化合物以外になお、その他の化学反応によって硬化に寄与する化合物も含有してよい。例えば、ヒドロキシル基またはアミン基と架橋するポリイソシアネートが考慮に入れられる。
【0033】
該放射線硬化性材料は、水不含および溶剤不含で溶液としてまたは分散液として存在してよい。
【0034】
有利なのは、水不含および溶剤不含の放射線硬化性材料または水溶液または水性分散液である。
【0035】
特に有利なのは、水不含および溶剤不含の放射線硬化性材料である。
【0036】
しかし一方で、該放射線硬化性材料を、例えば押出可能にするために、熱可塑性的に成形可能な状態にすることも有効でありうる。
【0037】
上述の放射線硬化性材料はカバー層を形成する。該カバー層(乾燥および硬化後)は、例えば1〜1000μm、有利には10〜100μmである。
【0038】
基層D)
基層は担体として用いられ、かつ複合体全体の高い靭性を持続的に保証するものである。
【0039】
該基層は、好ましくは、熱可塑性ポリマー、殊にポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリロニトリルエチレンプロピレンジエンスチレンコポリマー(A−EPDM)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテルまたはそれらの混合物から成る。
【0040】
さらに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシド樹脂またはポリウレタン、それらのブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーおよびそのブレンドが挙げられる。
【0041】
有利には、ABS、AES、AMMA、ASA、EP、EPS、EVA、EVAL、HDPE、LDPE、MABS、MBS、MF、PA、PA6、PA66、PAN、PB、PBT、PBTP、PC、PE、PEC、PEEK、PEI、PEK、PEP、PES、PET、PETP、PF、PI、PIB、PMMA、POM、PP、PPS、PS、PSU、PUR、PVAC、PVAL、PVC、PVDC、PVP、SAN、SB、SMS、UF、UP−プラスチック(DIN7728に従う略号)および脂肪族ポリケトンが挙げられる。
【0042】
特に有利な基材は、ポリオレフィン、例えば、選択的にアイソタクチック、シンジオタクチックまたはアタクチックであり、かつ選択的に非配向性、または一軸あるいは二軸延伸によって配向されていてよいPP(ポリプロピレン)、SAN(スチレン−アクリロニトリル−コポリマー)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PBT(ポリ(ブチレンテレフタレート))、PA(ポリアミド)、ASA(アクリロニトリル−スチレン−アクリルエステル−コポリマー)およびABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−コポリマー)、ならびにそれらの物理的混合物(ブレンド)である。特に有利なのは、PP、SAN、ABS、ASAならびにABSまたはASAとPAまたはPBTまたはPCとのブレンドである。
【0043】
極めて有利なのは、殊にDE19651350に記載のASA、およびASA/PCブレンドならびにSANである。同様に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)または耐衝撃性改良PMMAが有利である。
【0044】
層厚は、好ましくは50μmから5mmまでである。特に有利なのは、なかでも基層が背面射出成形される場合、100〜1000μm、殊に100〜500μmである。
【0045】
該基層のポリマーは添加剤を含有してよい。殊に充填剤または繊維が考慮に入れられる。該基層は着色されていてもよく、その場合、同時に呈色層として用いられる。
【0046】
さらに別の層
薄膜は、カバー層A)および基層D)以外に、さらに別の層を含有してよい。
【0047】
例えば呈色中間層C)または熱可塑性材料からのさらに別の層(熱可塑性中間層)B)が考慮に入れられ、該層は、例えばWO2004/009251から公知であるように、薄膜を強化するかまたは剥離層として用いられる。
【0048】
熱可塑性中間層は、"基層"の箇所で列挙されたポリマーから成っていてよい。
【0049】
有利なのは、殊にポリメチルメタクリレート(PMMA)、好ましくは耐衝撃性改良PMMAである。ポリウレタンも挙げられる。
【0050】
同様に呈色層も、挙げられたポリマーから成っていてよい。それらは、ポリマー層中に分布されている着色剤および/または顔料を含有する。
【0051】
基材の上に重なる層の数は20までであってよい。有利には6つまで、特に有利には4つまでである。
【0052】
該層は、例えば面全体に塗布されていてもよく、かつイメージどおりに、例えば画像として、または層厚レリーフとして、すなわち様々に表面湿潤性、吸光性、光屈折性、導光性、導電性または導熱性のレリーフ構造として塗布されていてもよい。これらの層は、UV硬化性トップコートによって保護されていてよい。
【0053】
有利な薄膜は、例えば以下の層構造を有し、その際、このアルファベット順が空間的な配置に相当する:
A)カバー層
B)熱可塑性中間層(任意)
C)呈色中間層(任意)
D)基層
E)接着剤層(任意)。
【0054】
さらに別の有利な薄膜は、例えば以下の層構造を有し、その際、このアルファベット順が空間的な配置に相当する:
A)カバー層
B)一重または多重プリント(任意)
C)呈色中間層(任意)
D)基層
E)接着剤層(任意)。
【0055】
薄膜が物体に接着されるべきケースにおいては、基層(すなわち、コーティングされるべき物体の方を向いた面)の裏側の面(略して裏面)上に接着剤層が塗布されていてよい。
【0056】
透明なカバー層上に、保護層、例えば非意図的な硬化を防止する剥離性薄膜が塗布されていてよい。厚さは、例えば50〜100μmであってよい。保護層は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン、シリコーン、ポリフルオロ炭化水素またはポリテレフタレートから成っていてよい。剥離性薄膜は、成形工程前に剥離されうる。該剥離性薄膜は、保護薄膜自体が十分に成形可能でない場合、取り除かれなければならない。
【0057】
保護薄膜は滑らかであってよいか、または構造化されていてよい。後者の場合、例えばトップコート層に構造を型押するのに役立つ。
【0058】
しかし一方で、放射線照射は保護層を通して行ってもよく、そのために、該保護層は放射線照射の波長範囲内で透過性でなければならない。
【0059】
複合体薄膜の全厚は、好ましくは50〜1000μmである。
【0060】
複合体薄膜の製造
層B)〜D)からの複合体の製造は、例えば、これらの層の全てのまたは幾つかの同時押出によって行うことがきる。
【0061】
同時押出のために、個々の成分は押出機中で流動化され、かつ特別な装置を介して、上述の連続した層を有する薄膜が生じるように互いに接触させられる。例えば、この成分はスロットダイによって同時押出されうる。この方法は、EP−A2−0225500の中で説明されている。その中で記載された方法を補う形で、いわゆるアダプター同時押出も使用してよい。
【0062】
複合体は、慣例の方法、例えば上述のような同時押出によって、または、例えば加熱可能なギャップ中での層の積層形成によって製造されうる。まず、そのようにして、カバー層を除く層からの複合体を製造し、その後、該カバー層が慣例の方法に従って施与されうる。
【0063】
放射線硬化性材料の押出(同時押出を含む)に際して、構成成分の混合による放射線硬化性材料の製造と、カバー層の製造とは1つの作業工程において実施されうる。
【0064】
このために、熱可塑性構成成分、例えば上述の不飽和ポリマーi)または飽和ポリマーiii)(上記参照のこと)を押出機中でまず溶融させてよい。必要とされる溶融温度は、それぞれのポリマーに依存する。好ましくは溶融作業後に、さらに別の構成成分、殊に放射線硬化性の低分子化合物ii)(上記参照のこと)を供給してよい。該化合物は可塑剤として作用し、その結果、材料が溶融物として存在する温度は低下する。放射線硬化性化合物の添加に際しての温度は、殊に、放射線硬化性化合物の熱硬化が行われる、いわゆる臨界温度より下でなければならない。
【0065】
該臨界温度は、熱量測定、すなわち温度の上昇を伴う熱吸収によって、上で記載されたガラス転移温度の決定に応じて容易に調べることができる。
【0066】
次いで、放射線硬化性材料は、直接的にカバー層として既存の複合体上に押出されるか、または同時押出の場合には、複合体の層と一緒に押出される。押出によって複合体層薄膜が直接得られる。
【0067】
放射線硬化性材料は、有利には、例えば吹き付け、噴霧、刷毛塗り、ヘラ塗り、ブレード塗布、ブラシ塗り、ローラー塗り、圧延、注型、成層等による簡単な方法で、基層もしくは複合体上に塗布かつ場合により乾燥されうる。
【0068】
さらに別の一実施態様において、結合剤および/または放射線硬化性材料は、溶融された形でも施与されうる。
【0069】
コーティング剤は、非常に多岐にわたる噴霧法、例えば、1成分または2成分噴霧ユニットの使用下での空気圧噴霧法、無気噴霧法または静電噴霧法に従って施与されうるが、しかし一方で、噴霧、ヘラ塗り、ブレード塗布、ブラシ塗り、ローラー塗り、圧延、注型、成層、背面射出成形または同時押出によって一度または数度施与してもよい。
【0070】
コーティング厚さは、一般に、約3〜約1000g/mおよび好ましくは10〜200g/mの範囲内である。
【0071】
カバー層は放射線架橋性である。複合体薄膜は、熱可塑性的に成形可能である。所望される場合、複合体薄膜の製造直後に保護層(保護薄膜、剥離性薄膜)をカバー層上に設置してよい。保護薄膜は、機械的および汚染的な影響から、または早期露光から保護する以外に、耐粘着性でないトップコート層を、積み上げ可能にまたは巻き取り可能に仕上げ加工できるようにする。さらに、それを平滑化のために、または逆に構造を表面上に型押するのに用いてよい。
【0072】
複合体層薄膜は、高い光沢および良好な機械的特性を有している。亀裂形成は、ほとんど観察されえない。
【0073】
複合体層薄膜の延伸性は、非延伸状態(140℃で、50μmの厚さで)に対して、好ましくは少なくとも100%である。延伸は、250℃までの様々な温度で行われえ、好ましくは20℃〜200℃である。
【0074】
2)場合により、そのようにして得られる種々の層を乾燥する工程
コーティングの乾燥は、所望される場合、一般的に通常の温度条件下で、すなわちコーティングの加熱なしに行われる。コーティング材料が溶剤を含有する場合、施与後に、高められた温度で、例えば40〜250℃で、好ましくは40〜150℃で、かつ殊に40〜100℃で乾燥させてよい。これは薄膜の熱安定性によって制限されている。
【0075】
乾燥および/または熱処理は、該熱処理に加えてか、またはその代わりにNIR放射線によって行ってもよく、その際、NIR放射線と呼ばれるのは、この場合、760nm〜2,5μm、有利には900〜1500nmの波長範囲における電磁放射線のことを指す。
【0076】
3)1)または2)から得られる複合体薄膜を、深絞り加工または物体への張り付けによって成形する工程
該薄膜は、部分硬化(EP−A2819516の中で記載されている)なしに、後で使用するまで貯蔵されうる。
【0077】
後で使用するまでの接着性または応用技術特性の悪化は観察されないか、またはほとんど観察されない。
【0078】
成形工程3)において、
−平面の薄膜を、前もって適した平面物体に施与、例えば被覆することにより得られる複合体が、深絞り加工によって形作られうる;
−該薄膜は、その相応する成形加工に従って、三次元に形作られた基材上に施与されうる;
−この三次元に形作られた基材は、変形されていない、すなわち平面の薄膜と接合されえ、その際、該薄膜は基材上に相応して形作られる(張り付け);または
−この平面の薄膜は、適した方法で、例えば、プラスチック、木材、紙、金属、セラミック等をベースとする種々の素材の背面射出成形、背面発泡成形、背面充填成形または背面圧縮成形によって形作られえ;それによってコンポーネントが結果生じる。
【0079】
この場合、例えばアメリカ特許US4,810,540A、US4,931,324AまたはUS5,114,789Aまたはヨーロッパ特許EP266109B1、EP285071B1(その中の特に第13頁,第41行目〜第14頁,第31行目(熱成形のためのプロセスに関して)および第14頁,第35行目〜第15頁,第19行目(背面射出成形のためのプロセスに関して)、EP352298B1またはEP449982B1から公知であるような慣例の方法および装置が使用されうる。その際、EP285071B1の中で記載された方法が有利である。
【0080】
深絞り加工作業のために、塗膜は、好ましくは該塗膜のガラス転移温度の範囲内の温度に加熱される。成形の有利な処理温度は、20℃〜250℃の範囲内、特に有利には80〜190℃である。次いで、そのようにして加熱された薄膜は、ダイス型としての深絞り加工ツールを介して真空によってまたは裏面に掛けられた圧力で、しわなしに、かつ持続的に深絞り加工される。次いで、深絞り加工された塗膜は、所望された環状の輪郭どおりに打ち抜かれうるか、または切り抜かれうる。
【0081】
本発明により、この塗膜は、深絞り加工後または工程5)による背面射出成形後に放射線硬化される。
【0082】
物体へ張り付けるために、これは塗膜の下面の方を向いたツール面にて成形金型に導入される。その際、該物体は、殊に成形パンチの方法において、それ自体が成形金型の成形品を形成する。物体は、任意の二次元および特に三次元の製品、殊にモジュール、アセンブリの部品または複合部品のためのコンポーネントと理解されえ、それらはその目的に適った幾何学的形状において存在する。物体の材料に属するのは、木質材料、セラミック材料、金属、プラスチック、発泡材および複合材料、殊にボディー領域における自動車構造において通常の材料、ならびに建築物材料に関して、または一般的にプラスチックハウジングまたはガラスハウジングまたはプラスチック窓またはガラス窓である。
【0083】
本質的な方法工程の後に続けて該塗膜は、塑性的に成形可能に加熱される。場合により、これによって、相応する接着剤も活性化される。本方法のために適した塗膜は、少なくとも部分的には熱可塑性ポリマーまたはプラスチックから成る。方法に従って、該塗膜は、そのポリマー構成成分のガラス転移温度を超えて加熱され、その結果、該塗膜は容易に成形可能となる。成形の有利な処理温度は、20℃〜250℃の範囲内、特に有利には80〜190℃であり、かつ実際の成形前または成形の間に初めて調整してよい。金型の一部を形成する物体は、薄膜の基材複合体の最適な接着強度に応じて予熱されていてよく、または予熱されていなくてよい。その次の成形に際して、該塗膜は、少なくとも該物体の視野面に張り付けられる。この処理工程は、熱成形とも称される。
【0084】
第一の実施形態において、物体は成形金型として、例えば成形パンチとして利用され、かつ張って固定される塗膜の薄膜平面内または薄膜平面を通して走らされる。その際、塗膜は均一に物体に張り付けられる。
【0085】
第二の実施形態において、物体はその位置にとどまり、かつ塗膜はプレス圧力の付与によって少なくとも物体の可視面にプレスされる。プレス圧力は公知のように、空気圧によって、または該物体に補完的に形作られた成形金型によって行われうる。
【0086】
同様に、これらの2つの方法変法を、非常に多岐にわたる時間的なオーバーラップで連続的に、または同時に実施することも可能である。
【0087】
本発明により、物体に張り付けられた薄膜が同一の装置内で放射線硬化される。
【0088】
特に有利には、塗膜は物体の視野領域にわたってのみならず、境界をなすマージンおよびエッジにも引かれる。殊に、この場合、金属の物体の切断エッジを覆い隠すことが予定されている。これは、例えばボディー構造において通常の、腐食防止剤または別のコーティングで前処理された帯状の金属シートが物体の製造のために使用される場合、特に好ましい。通常、帯状の金属シートは切断エッジおよびマージンの箇所でそのコーティングを失い、このことは使用に際して腐食の問題につながる。着色塗料または効果塗料による最終的なコーティングは、その時、適した腐食保護をもはや提供しない。それに対して、記載された方法で施与された塗膜は、エッジおよびマージンの際立って優れた保護を示す。殊に該塗膜は、部材の露出領域が、衝撃、衝突または摩砕による機械的負荷を受ける場合にも利点を有する。その際、例えば耐チッピング性の保護薄膜が想定されうる。薄膜コーティングされた帯状の金属シートの公知の加工に対して、記載された方法においては、薄膜および帯状の金属シートは別々に切断され、かつ異なる方法段階において変形される。物体の表面と塗膜とのしっかりとした接合は、一時的に軟化された下部のポリマー層の接着作用によって、および/または有利には付加的な接着剤層または接着促進剤層E)によってもたらされる。接着剤または接着促進剤は、その際、塗膜上にも物体上にも施与されていてよい。
【0089】
該コーティングは、基材上への薄膜の接着によって行われうる。そのために、該薄膜の基層の裏面には、好ましくは接着剤層Eが設けられている。物体として特に、木材、プラスチック、発泡材、金属、ガラス、セラミックからのものが適している。
【0090】
4)成形された複合体薄膜の3)における放射線硬化
本発明により、成形された薄膜は、成形が実施される同一の装置中で放射線硬化される。
【0091】
カバー層の放射線硬化は、その際、好ましくは、3)で記載されるように、深絞り加工もしくは張り付け作業後に行われ、かつ深絞り加工の場合、5)で記載されるように、薄膜の背面射出成形の前または後に行われうる。
【0092】
そのようにして得られた表面は、表面品質における利点を有する。例えば、埃の発生による表面の欠陥はより僅かなものでしかなく、かつ表面の機械的および化学的安定性は一般的により良好なものとなる。
【0093】
放射線硬化は、高エネルギーの光、例えばUV光または電子線により行われる。該放射線硬化は、比較的高温で行われうる。その際、放射線硬化性結合剤のガラス転移温度Tより大きい温度が有利である。
【0094】
有利には、薄膜のカバー層側の面上に放射される。基材の薄膜D)を貫通して、一般に、基材の薄膜D)および場合により存在する中間層B)および/またはC)が、放射線硬化において使用される放射線に対して透過性である場合にのみ放射されうる。
【0095】
放射線硬化が(深絞り加工−)金型を通して行われる場合、これは当然の事ながら、前述の放射線に対して透過性であるように構成されており、例えばガラスまたはプラスチックから成る。
【0096】
薄膜が工程3)で深絞りされた場合、カバー層A)の放射線硬化は、有利には深絞り加工ツールからのカバー層面の剥離後に初めて、特に有利には、5)で記載されるようにさらに背面射出成形が行われた後に、かつ深絞り加工ツールからの背面射出成形された薄膜の剥離後に行われる。
【0097】
薄膜が工程3)で物体に張り付けられた後、カバー層A)の放射線硬化はカバー層面から行われる。
【0098】
ここでの放射線硬化は、λ=200nmより大きい波長範囲の電磁放射線および/または粒子放射線、有利には光および/または150〜300keVの範囲の電子線および特に有利には250〜700nmの波長の光によって、かつ少なくとも80mJ/cm、有利には80〜3000mJ/cmの放射線量により重合可能な化合物のラジカル重合のことを指す。
【0099】
放射線硬化以外になお、さらに別の硬化機構、例えば熱硬化、湿分硬化、化学硬化および/または酸化硬化(いわゆる二重硬化)が含まれていてよい。
【0100】
付加的な熱硬化の場合、該硬化は、物体への薄膜の施与後に、迅速な前硬化を達成するために、160℃までの温度で、有利には60〜160℃で熱処理され、引き続き電子線またはUV露光により酸素下または有利には不活性ガス下で最終的に硬化されるように実施してもよい。
【0101】
放射線硬化のための放射線源として、例えば、光開始剤なしに放射線硬化が可能である、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプならびに蛍光灯、パルスランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、LEDランプ、フラッシュランプおよびフラッシュ装置、またはエキシマーランプが適している。放射線硬化は、高エネルギー放射線、つまりUV放射線または日光、好ましくはλ=200nmからの波長範囲、特に有利にはλ=250〜700nmの波長範囲および極めて有利にはλ=250〜500nmの波長範囲の光の作用によって、または高エネルギー電子(電子線;150〜300keV)による放射線放射によって行われる。放射線源として、例えば、高圧水銀蒸気灯、レーザー、パルスランプ(フラッシュライト)、ハロゲンランプまたはエキシマーランプが用いられる。UV硬化に際して架橋に通常十分である放射線量は、80〜3000mJ/cmの範囲内にある。
【0102】
有利な一実施態様において、放射線源は、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、ハロゲンランプおよびフラッシュランプから成る群から選択されており、特に有利なのはフラッシュランプである。
【0103】
有利な高圧水銀ランプは、ランプ長さ1cm当たり400Wまでの発光体の出力密度を有し、かつ例えば300℃までの比較的高い温度でも使用されえ、このことは本発明による使用のために特に適している。これらのランプは、点火電極を用いた実施態様において、完全に能力を発揮するのに数分の、頻繁に約3分の始動時間を要するので、かつ度重なるスイッチングサイクルがこれらのランプの寿命を短くするので、高圧水銀ランプは、この発明の範囲内で、有利にはシールドで密封可能な、ひいてはスイッチング可能な、かつ、それにも関わらず長時間燃焼性のランプとして使用される。短縮された始動時間を持つのはマイクロ波無電極ランプであり、これらは密封シールドなしでも使用されうる。
【0104】
有利な低圧水銀ランプは、およそ秒範囲内でスイッチング可能である。ランプ長さに対するその出力密度は、高圧水銀ランプの出力密度よりずっと低く、より高いランプ長さと個数ならびに場合により照射時間が顧慮されなければならない。100℃を超える温度の場合、これらのランプは能力が急激に落ちるため適していない。
【0105】
本発明の特に有利な一実施態様において、工程4)でパルスランプ、有利にはキセノンフラッシュランプが使用される。工業的用途または写真用途におけるパルスランプは、短時間でフラッシュ当たりの非常に高い出力密度(100kWまで)を有する。通常の出力範囲は30W〜20kWである。放射スペクトルは、可視スペクトルおよび紫外線スペクトルにおける幅広いスペクトル領域を包含する。適したフラッシュランプは、例えばWO−A−94/11123およびEP−A−525340の中で記載されている。特に有利なのは、200〜900nmの波長範囲の光の放射および500nmの最大値を有するフラッシュランプである。薄膜の表面では、フラッシュ放電1回当たり少なくとも5メガルクス、好ましくは10〜70メガルクスが達成されるべきである。このために、複数のフラッシュランプを連結することも有利である。そのためさらに、写真領域において使用されるような領域でのより低出力なランプも、有利なフラッシュランプである。
【0106】
塗膜の硬化は、数回のフラッシュ放電によって、好ましくは1〜20回、極めて有利には1〜5回のフラッシュによって行われうる。
【0107】
パルスランプの使用による特別な利点は、他の発光体と比較して短い露光時間であり、その結果、深絞り加工および加熱−、冷却−および真空−および通気プロセスを伴うコーティングにおけるコーティングされた部分当たりのサイクル時間が、引き続く光硬化によって遅延されないか、または単に非本質的におよそ0〜30秒遅延される。エネルギー消費量は硬化の時間に制限される。中圧水銀ランプまたは高圧水銀ランプにより、殊に電極を含有する発光体の場合に、そのつどランプの寿命も、もしくは殊にマイクロ波励起ランプの場合に、ランプの始動電気装置を損ねる、数分間続くスイッチオン−またはスイッチオフ段階が回避されなければならない。
【0108】
フラッシュランプと薄膜表面との間隔は1〜100cm、好ましくは5〜50cmである。
【0109】
頻繁に、ランプガラスまたはリフレクターガラスにおけるフィルターによってUV Bおよび/またはUV C部分ならびにそれ以外のUV部分がフィルターアウトされる。この場合、上述の有利な光開始剤を使用することが特に有利である。
【0110】
当然の事ながら、最適な硬化のために必要とされる放射線量を達成するために、複数の放射線源も硬化のために使用可能である。
【0111】
これらはまた様々に、かつ、それぞれ異なった波長範囲内で照射させてもよい。
【0112】
該照射は、有利な一実施態様において、酸素の排除下または酸素減損雰囲気下、例えば18kPa未満の、有利には0.5〜18kPa、特に有利には1〜15kPa、極めて有利には1〜10kPaおよび殊に1〜5kPaの酸素分圧で、または不活性ガス雰囲気下で実施されうる。不活性ガスとして、好ましくは、窒素、希ガス、二酸化炭素、水蒸気または燃焼ガスが適している。酸素分圧の減少は、周囲圧力を低下させることによっても行われうる。さらに該放射は、コーティング材料を透明媒質で覆うことによって実施してよい。透明媒質は、例えばプラスチック薄膜、ガラスまたは液体、例えば水である。特に有利なのは、DE−A19957900の中で記載されているような方法での照射である。
【0113】
さらなるバリヤー層が、空気酸素に対してバリヤー効果を持つ、疎水性または親水性のワックスまたは液体から成っていてよい。
【0114】
そのため本発明の有利な一実施態様が表すのは、剥離可能な保護薄膜が、カバー層を酸素の影響から保護する、硬化されるべきカバー層のためのバリヤー層となることである。
【0115】
さらに、この薄膜を用いて、物に特定の表面特性、例えば
−流れ抵抗、殊に空気抵抗を減らすための"ゴルフボール表面"、
−気体のみならず液体の流れ抵抗を減らすための、抵抗を減らす溝付き表面(リブレット)を有する"シャークスキン"(抵抗抑制)、
−ロータス効果、
−艶消効果
が生み出されうるか、または強められえ、
−しかし一方で、表面の構造化のために(平滑、構造化、艶消、モチーフ構造、例えば図柄構造、木材表面プロフィール、グレインレザーの外観等)
使用されうる。
【0116】
付加的な熱架橋をもたらす架橋剤、例えばイソシアネートも含有されている限り、例えば放射線硬化と同時にまたは放射線硬化の後に、熱架橋を、場合により湿度の作用下で、温度が150℃になるまで、好ましくは130℃になるまで高めることによって実施してよい。熱架橋は、付加的に加熱せずとも、数時間〜数日の後硬化時間にわたって行われうる。
【0117】
5)4)において硬化、成形された複合体薄膜の場合による背面射出成形
工程3)で深絞り加工された薄膜は、有利には背面射出成形されえ、または平面の薄膜は適した方法で、例えば、プラスチック、木材、紙、金属、セラミック等をベースとする種々の素材の背面射出成形、背面発泡成形、背面充填成形または背面圧縮成形によって形作られえ;それによって部品が結果生じる。
【0118】
この場合、例えばアメリカ特許US4,810,540A、US4,931,324AまたはUS5,114,789Aまたはヨーロッパ特許EP266109B1、EP285071B1(その中の特に第13頁,第41行目〜第14頁,第31行目(熱成形のためのプロセスに関して)および第14頁,第35行目〜第15頁,第19行目(背面射出成形のためのプロセスに関して)、EP352298B1またはEP449982B1から公知であるような慣例の方法および装置が使用されうる。
【0119】
深絞り加工された薄膜は、このために有利には以下のように処理される:このために該薄膜は、好ましくは深絞り加工ツールにおいて深絞り加工され、かつ基層の裏面がプラスチック材料により背面射出成形される。プラスチック材料は、例えば、上述の基層の記載箇所で挙げられたポリマー、または、例えばポリウレタン、殊にポリウレタンフォームである。該ポリマーは、添加剤、殊に例えばガラス繊維、植物繊維といった繊維または充填剤を含有してよい。
【0120】
スタンピング加工および深絞り加工された塗膜は、このために射出成形金型に挿入され、かつプラスチックが背面射出成形、背面発泡成形または背面充填される。背面射出成形して製造されるべき、かつ装飾が仕上がった物体を形状どおりに形成するために、弾性の塗膜は、背面射出成形に際して、物の所望される形状とは反対方向に加工される射出成形金型の境界に対して同時に圧縮されうる。背面射出成形されたプラスチックの硬化後、装飾が仕上がった物体が射出成形金型から取り出される。
【0121】
有利には、この取り出された物体は、次いでカバー層A)への放射によって硬化される。
【0122】
使用分野および利点
該薄膜は、二次元および三次元の成形体のコーティングに使用されうる。その際、任意の成形体を自由に用いることができる。特に有利には、該薄膜は、非常に良好な表面特性、高い耐候性ならびに良好な耐UV性が重要である成形体のコーティングに使用される。得られた表面は、そのうえ非常に引掻性に強く、耐化学薬品性、耐候性および付着性を示し、その結果、耐候試験、表面の引掻または剥離による該表面の破壊が確実に防止される。従って、建物の外側の屋外領域において使用するための成形体が、有利な適用分野である。殊に該薄膜は、自動車部品のコーティングに使用され、例えばフェンダー、ドアトリム、バンパー、スポイラー、スカート、同様にサイドミラーが考慮に入れられる。
【0123】
該薄膜は、移動手段、例えば航空機、船舶、レール車両、筋力により駆動される乗り物、自動車、およびこの部品、屋内領域および屋外領域における建築物およびこの部材、ドア、窓および家具ならびにガラス中空体の工業的塗装の範囲内で、コイル、コンテナ、パッケージ、工業用小部品、例えばボルト、ナットまたはハブキャップ、光学部品、電気部品、例えば、コイル、電気モータ用のステータおよびロータを含む巻き線、機械部品および白物製品用の部品、例えば家庭用器具、暖房用ボイラーおよび放熱器の装飾的および/または保護的なコーティングの製造に際立って優れている。殊に該薄膜は、三次元の部品、殊に自動車ボディーの製造のための取り付け部品のコーティングに用いられる。それゆえ好ましくは、自動車ボディーに適した塗料が該薄膜の製造のために使用されるが、とは言ってもそれは本発明の目的に不可欠な柔軟性を有していなければならない。
【0124】
特に有利には、その物体は車体のコンポーネントを表す。これには、殊により大きいボディー面にはめ込まれる小部品、例えばタンクキャップ、トランクルーム内張り、横ピラーまたは縦ピラーもしくはビーム、ドアグリップ等が属する。これらの使用のために殊に、物体には、それらを取り囲むボディーと異なっていてはならない色および効果の正確かつ一様な品質が必要不可欠である。ここでは、該塗膜および本発明による施与法は、慣例の塗装と比べて特別な利点を示す。
【0125】
好ましくはさらに、自動車室内部品、例えばダッシュボードライニングまたは自動車ドア内張りが、フィルムの背面発泡成形および上述のような硬化によって製造されうる。それに加えて、該薄膜には、有利には構造化された保護薄膜が、例えば革の外観を得るために掛けられ、かつ、これを通して硬化される。
【0126】
自動車領域における乗り物の他にも、同様に一般的に輸送用車両、飛行機、船舶、ボートおよびレール車両も考えられる。
【0127】
ドア、窓、壁材、フロアライニング材、ファサード材および屋根材、ならびに家具面のコーティングも特に有利である。同様に有利なのは、殊に家庭領域における器具、例えば冷蔵庫、洗濯機および自動食器洗い機、コーヒーメーカー、電子レンジ、コンピュータ、電話機、PDA機器、玩具、娯楽用電子機器、楽器、スポーツ用具または営利的に使用される器具用のケーシングシェルの製造である。
【0128】
本明細書の中で使用されるppmデータおよびパーセントデータは、他に記載がない場合、質量パーセントおよび質量ppmに関する。
【0129】
以下の実施例は本発明を説明するものであるが、しかし本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0130】
実施例
実施例1
深絞り性のPERMASkinfolie(BASF Aktiengesellschaft,Ludwigshafen)を、Laromer(R)UA9047V(ヘキサメチレンジイソシアネートをベースとする放射線硬化性の一成分系ウレタンアクリレート,BASF Aktiengesellschaft,Ludwigshafen)と、不揮発性割合に対して光開始剤混合物として1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン3%および2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin(R)TPO,BASF Aktiengesellschaft,Ludwigshafen)0.5%とから成るUV硬化性クリア塗料でブレード塗布により50g/mの乾燥層厚のためにコーティングする。乾燥は50℃で15分にわたって行う。
【0131】
該薄膜を、幅59cmおよび長さ69cmのフレームにはめ込み、かつ基板を収容するための下部、上で挙げた挿入可能なフレームおよび約45cmの高さのカバーから成る深絞り加工装置中に導入する;全ての装置コンポーネントは互いに真空密封可能である。底部およびカバー部を介して、それぞれ独立して排気かつガスパージすることができる。カバー中には、加熱のためのIRランプと温度測定のためのIR温度検出器および調節器とが存在する。カバーをフレームと結合して、該薄膜を約180℃に加熱し、かつ減圧によってカバーの中に引き込み、そうして基板のためのスペースを得る。引き続き装置全体を、基板を含有する下部で閉じる。薄膜と基材との間の領域中で真空引きすることによって、薄膜を気泡なしに基材上に張り付ける。基材として、1.9cmの最大高さと、50cm*60cmの面積を有する成形されたMDF板を用いる。該装置は、アルミニウムで被覆されたカバー中に、さらにIRランプの他になお30個のフラッシュランプ(光源の長さ46mm、ランプの間隔10cm(例えばMECABLITZ 45 CL 1(Metz GmbH,Zirndorf)に用いられる、市販の写真フラッシュランプ)をUV照射のために含有する。木材基材上への薄膜の張り付け後、施与した薄膜にわたって窒素を導通する。木材板に張り付けた薄膜の冷却およびガスパージの間に達する100℃の室内温度にて、次いで3回のフラッシュにより5秒間隔で露光する。全体のサイクル時間は70秒であり、かつ、それは露光によって遅延されない。
【0132】
実施例2
張り付けおよび施与を、実施例1と同様に行う。写真フラッシュランプの代わりに、工業的なUVフラッシュランプ(光源の長さ約190mm、最大出力4000J)を、Visit GmbH & CO KG社(Wuerzburg)のUV発生装置 3000 Wsと一緒にフラッドヘッド式フラッシュヘッド(Flood Head Blitzkopf)において使用した。約30cmのランプ−基材間隔で2mの表面を硬化するのに5個のフラッシュランプを使用する。
【0133】
2つの実施例から、耐引掻性、耐久性の表面が生じる。
【0134】
比較例3および4:
実施例1および2を繰り返し、その際、それぞれ深絞り加工装置の外側で露光を行う。それに加えて、アルミニウム表面で被覆された、90cm*110cmの面積と100cmの深さを有する容器に3kgのドライアイスを充填する。その際、約1体積パーセントの残留酸素含有率が得られる。依然として約100℃の熱を持つ基材を、試験1および2からのフラッシュランプを含有するカバーが、30cmの比較が可能な間隔をランプと薄膜表面との間に有するように吊す。
【0135】
塗面の耐引掻性を、500gの重さのハンマーによって負荷をかけたScotch BriteTM Vlies(3M)を用いての10回および50回の往復行程(DH)による引掻後の光沢損失の測定(測定角20゜)によって調べた。その際、実施例1および2からの面は、埃の発生によりもたらされる欠陥が比較的少なく、かつ引掻抵抗性である:
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも次の工程
1)場合により、さらに別の任意の中間層B)および/またはC)を含んでいてよい薄膜状の基材D)を、少なくとも1つの放射線硬化性のカバー層A)でコーティングすることによって複合体薄膜を製造する工程、
2)場合により、そのようにして得られる複合体薄膜を乾燥する工程、
3)1)または2)から得られる複合体薄膜を、深絞り加工または物体への張り付けによって成形する工程、
4)成形された複合体薄膜を3)において放射線硬化する工程および
5)場合により、4)において硬化された成形された複合体薄膜を背面射出成形する工程
を包含する、薄膜コーティングされた物体の製造法において、工程3)および4)を同一の装置中で実施することを特徴とする製造法。
【請求項2】
付加的に乾燥工程2)を少なくとも部分的に同一の装置中で実施することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
付加的に工程5)を少なくとも部分的に同一の装置中で実施することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
放射線硬化性のカバー層A)が、
i)2000g/モルより大きい平均モル質量Mを有するエチレン性不飽和基を有するポリマー
ii)i)と、i)とは異なる2000g/モル未満のモル質量を有するエチレン性不飽和低分子化合物との混合物
iii)飽和熱可塑性ポリマーと、エチレン性不飽和化合物との混合物
から成る群から選択される少なくとも1つの結合剤を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
放射線硬化性のカバー層A)が、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドおよびビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドを含有する、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンまたは1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの光開始剤を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
構造化された塗膜が以下:
A)カバー層
B)熱可塑性中間層(任意)
C)呈色中間層(任意)
D)基層
E)接着剤層(任意)
のように構造化されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
構造化された塗膜が以下:
A)カバー層
B)一重または多重プリント(任意)
C)呈色中間層(任意)
D)基層
E)接着剤層(任意)
のように構造化されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記塗膜が付加的に、カバー層A)上に施与された保護薄膜を包含することを特徴とする、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
工程4)における放射線硬化のために、放射線源を、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプおよびフラッシュランプから成る群から選択することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
工程4)における放射線硬化のための放射線源がフラッシュランプであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
200〜900nmの波長範囲内での光放射を有するフラッシュランプであることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
フラッシュランプの光度を、前記薄膜の表面上でフラッシュ放電1回当たり少なくとも5メガルクスを達成すべきように選択することを特徴とする、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
工程4)における放射線硬化を、酸素の排除下または酸素減損雰囲気下で実施することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記薄膜を、工程4)における放射線硬化のために、剥離可能な保護薄膜を用いて酸素の影響から保護することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
移動手段、航空機、船舶、レール車両、筋力により駆動される乗り物、自動車、およびこの部品、屋内領域および屋外領域における建築物およびこの部材、ドア、窓および家具、ガラス中空体、コイル、コンテナ、パッケージ、工業用小部品、ボルト、ナット、ハブキャップ、光学部品、電気部品、巻き線、コイル、電気モータ用のステータおよびロータ、機械部品、白物家電品のための部品、家庭用器具、暖房用ボイラーおよび放熱器の製造のための、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
三次元部品の製造のための、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2010−505619(P2010−505619A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531846(P2009−531846)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060831
【国際公開番号】WO2008/043812
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】