説明

物理量センサ

【課題】 特に、シリコン基板に作用する応力を緩和できる物理量センサを提供することを目的としている。
【解決手段】 シリコン基板2,3と、シリコン基板3に形成されたダイアフラムと、ピエゾ素子B〜Eと、シリコン基板3と接合されるインターポーザ15と、を有する。インターポーザ15は、支持基板17と、支持基板17の上面から下面にかけて形成される導通部18と、を有する。インターポーザ15とシリコン基板3間の接続領域47には、第1有機絶縁膜48と接続経路50が設けられる。接続経路50は平面方向に延びる延出部43と、延出部43と配線層10間を高さ方向に繋ぐ第1接続端部52と、延出部43と導通部18間を高さ方向に繋ぐ第2接続端部46とを有する。延出部43の導通部側接続位置αと、第1接続端部52の素子側接続位置βとが、平面方向にずらされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、MEMS技術を用いて形成された物理量センサ関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(微小電気機械システム:Micro Electro Mechanical System)技術を用いて形成された圧力センサSは、図12に示すようにシリコン基板100に形成されたダイアフラム101と、ダイアフラム101の変位量を検出するための検出素子102等を有して構成される。図12(a)は圧力センサの断面図、(b)はシリコン基板の平面図である。
【0003】
検出素子102に電気的に接続される接続パッド103はシリコン基板表面100aに形成されている。
【0004】
図12に示す構造では、シリコン基板100の接続パッド103側にインターポーザ105が取り付けられている。
【0005】
インターポーザ105は、支持基板106と、支持基板106の厚さ(高さ)方向に貫通する導通部107と、回路基板に接続する導通パッド108とを備えて構成される。
【0006】
図12(a)に示すように、接続パッド103と導通部107とが接続されることで、インターポーザ105がシリコン基板100と接合される。
【特許文献1】特開2007−198820号公報
【特許文献2】特開2007−194574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図12に示す構造のようにインターポーザ105を備えた構造では、インターポーザ105とシリコン基板100との材質の違いから、熱膨張差により、シリコン基板100に応力が作用する問題があった。
【0008】
このため、図12に示す従来構造では、圧力センサの検出精度が低下したり、ばらつきが生じた。
【0009】
特許文献1,2に記載された発明には上記した従来の課題についての認識はなく、当然に、上記課題を解決する手段が示されていない。
【0010】
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、特に、シリコン基板に作用する応力を緩和できる物理量センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明における物理量センサは、
シリコン基板と、前記シリコン基板に形成され、物理量の変化に応じて変位する変位部と、前記変位部の変位量を検出するための検出素子と、前記シリコン基板と接合されるインターポーザと、を有し、
前記インターポーザは、支持基板と、前記支持基板の上面から下面にかけて形成される導通部と、を有し、
前記検出素子側と、前記導通部との間が前記インターポーザと前記シリコン基板間の接続領域にて電気的に接続されており、
前記接続領域には、少なくとも、前記接続領域内を平面方向に向けて延出する延出部と、前記延出部と前記検出素子側間を高さ方向に繋ぐ第1接続端部とを有する接続経路と、前記接続経路に接する第1有機絶縁膜とが設けられ、前記延出部の導通部側接続位置αと、前記第1接続端部の素子側接続位置βとが、平面方向にずらされていることを特徴とするものである。
【0012】
上記のように、接続領域には軟質な第1有機絶縁膜が設けられている。そして、導通部側接続位置αと、素子側接続位置βとが平面方向にずらされているため、効果的に、シリコン基板とインターポーザとの熱膨張差に起因した、シリコン基板に作用する応力を従来に比べて緩和できる。これにより、シリコン基板に設けられた検出素子に作用する応力が低減され、特性低下を抑制することが出来る。
【0013】
本発明では、前記接続経路は、前記延出部と、前記第1接続端部と、前記延出部と前記導通部間とを高さ方向に繋ぐ第2接続端部と、を有して形成され、前記導通部側接続位置αが、前記延出部と前記第2接続端部との接続位置で規定されることが好ましい。これにより、より効果的に、シリコン基板に作用する応力を緩和できる。
【0014】
または本発明では、前記接続経路は、前記第1接続端部と、前記導通部から高さ方向に形成された第2接続端部と、前記第1接続端部から屈曲して前記接続領域内を平面方向に向けて延出する第1延出部と、前記第2接続端部から屈曲して前記接続領域内を平面方向に向けて延出する第2延出部と、を有し、前記導通部側接続位置αが、前記第1延出部と前記第2延出部との接続位置で規定される形態を提示できる。これにより、従来に比べて、より効果的に、シリコン基板に作用する応力を緩和できる。
【0015】
また本発明では、前記変位部は、前記シリコン基板の中央領域に形成され、前記検出素子は、前記変位部の側縁部の略中央に配置されており、前記第1有機絶縁膜は、前記シリコン基板の隅領域にのみ設けられていることが好ましい。第1有機絶縁膜とシリコン基板との間でも熱膨張差により、多少、応力を生じる。よって、上記のように配置することで、第1有機絶縁膜を検出素子から効果的に離すことができ、検出素子に作用する応力を効果的に低減できる。
【0016】
また本発明では、前記導通部側接続位置αは、前記素子側接続位置βよりも、前記シリコン基板の外周側に位置しており、前記導通部が、前記インターポーザの隅部に形成されていることが好ましい。これにより、より簡単且つ適切に導通部側接続位置αと素子側接続位置βとを、ずらして配置できる。
【0017】
また本発明では、前記インターポーザの前記シリコン基板との反対面側に第2有機絶縁膜及び、前記導通部と前記第2有機絶縁膜の表面に現れて回路基板との間を電気的に接続するための接続経路が設けられており、導通部側接続位置Xと、回路側接続位置Yとが平面方向に、ずらされていることが好ましい。上記構成により、インターポーザを回路基板と電気的に接続したときに、インターポーザと回路基板間での熱膨張差に起因した応力を緩和でき、ひいては、シリコン基板に作用する応力を、より効果的に低減することができる。
【0018】
また本発明では、前記有機絶縁膜は、ポリイミド樹脂であることが好ましい。ポリイミド樹脂を用いることで、より効果的に応力緩和を図ることが出来る。
【発明の効果】
【0019】
本発明の物理量センサによれば、シリコン基板とインターポーザとの熱膨張差等に起因した、シリコン基板に作用する応力を従来に比べて効果的に緩和できる。これにより、シリコン基板に設けられた検出素子に作用する応力を低減でき、特性低下を抑制することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本実施形態における圧力センサ(物理量センサ)の斜視図、図2は、図1に示す圧力センサをA−A線に沿って高さ方向(厚さ方向)から切断した切断面を示す断面図、図3は、本実施形態の圧力センサと回路基板との実装構造を示す断面図、図4、図6、図7は、図2とは異なる本実施形態の圧力センサの断面図、図5は、図2とは異なる接続構造を示す部分拡大断面図、図8(a)及び図9(a)はシリコン基板表面の平面図、図8(b)及び図9(b)は、F−F線に沿って高さ方向(厚さ方向)から切断した切断面を示す部分断面図、である。
【0021】
図1,図2に示すピエゾ抵抗型圧力センサ1は、例えば、絶対圧検知用(すなわちキャビティ内が真空である)である。
【0022】
図1,図2に示すピエゾ抵抗型圧力センサ1は、第1シリコン基板2と、第2シリコン基板3とを有して構成される。例えば第1シリコン基板2及び第2シリコン基板3の間には、酸化絶縁層(SiO2層)が介在し、3層のSOI基板を構成している。
【0023】
図2に示すように、第1シリコン基板2の上面には、キャビティ(凹部)7が形成される。図2及び図8(a)に示すように、キャビティ7の上側に位置する第2シリコン基板3によりダイアフラム8が形成されている。図8(a)に示すように、キャビティ7及びダイアフラム8は平面視にてピエゾ抵抗型圧力センサ1の略中央位置に形成され、キャビティ7及びダイアフラム8の平面視形状は略矩形状である。
【0024】
図8(a)に示すように、ダイアフラム8の周囲は第2シリコン基板3に圧力が作用しても歪みが生じない固定領域9である。
【0025】
図8(a)に示すように、ダイアフラム8の4辺の各側縁部の略中央には、ピエゾ素子B〜Eが夫々形成される。第1ピエゾ素子Bと第2ピエゾ素子Cとが第1の出力パッド11を介して直列接続される。また、第3ピエゾ素子Dと第4ピエゾ素子Eとが第2の出力パッド12を介して直列接続される。
【0026】
第1ピエゾ素子Bと第3ピエゾ素子Dは入力パッド13を介して、及び、第2ピエゾ素子Cと第4ピエゾ素子Eはグランドパッド14を介して、夫々接続される。以下、出力パッド11,12、入力パッド13及びグランドパッド14をまとめて、接続パッド11〜14と記載する。各ピエゾ素子B〜Eに接続される配線層10(図8(b)参照)は固定領域9上に延出形成され、各接続パッド11〜14は固定領域9の四隅近傍に設けられている。配線層10や各接続パッド11〜14はスパッタやメッキによりAuやAl等の良導体で形成される。
【0027】
ダイアフラム8が圧力を受けて歪んだときに、第2ピエゾ素子C及び前記第3ピエゾ素子Dの抵抗値の増減傾向と、第1ピエゾ素子B及び前記第4ピエゾ素子Eの抵抗値の増減傾向とが逆傾向となるように、各ピエゾ素子B〜Eが配置されている。図8(a)では各ピエゾ素子B〜Eの平面視形状が略矩形状となっているが実際には、ミアンダ形状で形成される。
【0028】
図1,図2に示すように、第2シリコン基板3側に、インターポーザ15が接合されている。例えば、インターポーザ15の略中央部には、上面から下面に向けて貫通する通気口(図示せず)が形成されている。
【0029】
インターポーザ15は、支持基板17と、支持基板17に支持された導通部18とを有して構成される。支持基板17は例えばガラス(例えばパイレックス(登録商標))で形成される、また導通部18は例えばシリコンで形成される。
【0030】
図1に示すように支持基板17は、所定の厚みがあり、平面が略矩形状の(直方体状の)基板の四隅を上面17eから下面17fに向けて凹形状に切り欠いた形状である。
【0031】
支持基板17に形成された凹部26内にそれぞれ、導通部18が設けられる。
よって、各導通部18は、支持基板17の上面17eから下面17fにかけて形成され、上面17e及び下面17fで露出している。またこの実施形態では、インターポーザ15の四隅に形成された各凹部26内に各導通部18が設けられるため、各導通部18の側面の一部も外周に露出している。この実施形態では、各導通部18は直方体状であり、各導通部18の露出した側面は、支持基板17の側面17gと同一面で形成されている。ただし導通部18の形状は直方体に限定されない。例えば、導通部18は、円柱形状を1/4にカットした形状であってもよい。
【0032】
ここで、導通部18の形成位置は、後述する変形例にも示すようにインターポーザ15の隅部に限定されない。例えば、支持基板17の側面17gの略中央位置に凹形状に切欠いて、その凹部内に導通部18が形成される形態でもよい。特に、インターポーザ15が円形等の多角形状でない場合、インターポーザ15の任意の側面位置に導通部18を設けるようにすることが好適である。ただしインターポーザ15が多角形状である場合、導通部18をインターポーザ15の隅部に形成することが好適である。
【0033】
図2、図8(b)に示すように、第2シリコン基板3の上面3aに各ピエゾ素子B〜Eと接続される配線層10が形成され、配線層10上から第2シリコン基板3の上面3aにかけて無機絶縁材料による保護膜36が形成される。保護膜36はTiN、Al23、SiO2等で形成される。保護膜36の平均膜厚は、0.8〜1.8μm程度である。
【0034】
図2に示すように、インターポーザ15と、第2シリコン基板3の間には、ダイアフラム8やピエゾ素子B〜Eを除く位置に、接続領域47が設けられる。接続領域47は、第1有機絶縁膜48と第1有機絶縁膜48に埋設された接続経路50を備えて構成される。
【0035】
以下、接続領域47の構造について説明する。この実施形態では、第1有機絶縁膜48は、下側有機絶縁膜37と上側有機絶縁膜44の積層構造である。
【0036】
図2に示すように、保護膜36上には下側有機絶縁膜37が形成されている。下側有機絶縁膜37の平均膜厚は、4.0〜10.0μm程度である。この下側有機絶縁膜37は、ダイアフラム8やピエゾ素子B〜Eと重ならないように第2シリコン基板3の固定領域9の上方に形成されている。図8(a)に示すように、下側有機絶縁膜37は、第2シリコン基板3の四隅のみに形成されることが好適である。
【0037】
図2、図8(a)に示すように、下側有機絶縁膜37及び保護膜36には貫通孔38が形成され、この貫通孔38の底面に配線層10の表面が露出している。
【0038】
図2、図8(a)に示すように、貫通孔38から下側有機絶縁膜37の表面37aにかけて各接続パッド11〜14が形成される。各接続パッド11〜14は、下側有機絶縁膜37の表面に延出する延出部43を備える。
【0039】
図2に示すようにインターポーザ15と、下側有機絶縁膜37及び各接続パッド11〜14の間には上側有機絶縁膜44が設けられる。上側有機絶縁膜44は下側有機絶縁膜37と同領域に形成される。よって上側有機絶縁膜44は、インターポーザ15の下面17fの四隅領域のみに設けられることが好適である。
【0040】
図2に示すように、各上側有機絶縁膜44には貫通孔45が形成され、接続部(第2接続端部)46が、各貫通孔45内に形成される。各第2接続端部46は各導通部18及び各接続パッド11〜14の延出部43と電気的に接続されている。
【0041】
図2に示すように、各接続パッド11〜14から第2接続端部46に至る接続経路50は、平面方向に向けて延出する延出部43と、延出部43の内周側の端部にて配線層10に至る第1接続端部52と、延出部43の外周側の端部にて導通部18に至る第2接続端部46とを有して形成される。
【0042】
したがって図2に示すように、第1有機絶縁膜48内に埋設された延出部43の導通部側接続位置αと、第1接続端部52の素子側接続位置βとは、面方向にずれて配置されている。
【0043】
図1,図2に示すようにインターポーザ15の上面17eには、第2有機絶縁膜49が設けられる。第2有機絶縁膜49は次に説明する貫通孔65の形成位置や上記した通気口を形成する場合には、その部分も除いて、インターポーザ15の上面17e全域に形成できる。
【0044】
図2に示すように、第2有機絶縁膜49には各導通部18と対向する位置に夫々、貫通孔65が形成される。そして、各導通部18が各貫通孔65の底面に露出している。図2に示すように、各導通パッド(接続経路)66が各貫通孔65から第2有機絶縁膜49の表面49aにかけて形成される。図2に示すように、各導通パッド66は第2有機絶縁膜49の表面49aに延出した延出部67を備える。導通パッド66は、半田濡れ性に優れたNi,Cu等を有する材質で形成されることが好適である。
【0045】
図1,図2に示すように、各半田ボール20が各延出部67上に設けられる。ここで、図2に示すように、導通パッド(接続経路)66の導通部側接続位置Xと、回路基板(図3に図示する)との接続位置(回路側接続位置)Yとが、平面(X−Y面)方向に、ずれて配置されている。ここで回路側接続位置Yは、延出部67、あるいは半田ボール20の設置位置である。
【0046】
図1,図2に示す圧力センサ1を回路基板30上に実装した図が図3である。図3に示すように圧力センサ1を図1,図2の状態から反転させて、インターポーザ15を回路基板30上に対向させる。そして、インターポーザ15に形成された各導通パッド66(の延出部67)と回路基板30の各半田ランド部31との間が半田層21にて接合される。
【0047】
本実施形態の圧力センサ1では、図2を用いて説明したように、第2シリコン基板3とインターポーザ15との間の接続領域47には軟質な第1有機絶縁膜48が介在している。また配線層10と導通部18の間を電気的に接続する接続経路50が第1有機絶縁膜48に埋設される。そして本実施形態では、延出部43の導通部側接続位置αと、第1接続端部52の素子側接続位置βとが、平面方向に、ずれて配置されている。このため応力が作用したときに接続経路50が変形し、またこのとき、第1有機絶縁膜48がクッション的役割を果している。したがって、シリコン基板2,3とインターポーザ15との熱膨張差等に起因した、シリコン基板2,3に作用する応力を第1有機絶縁膜48と接続位置をずらした接続経路50を備える接続領域47の部分で、効果的に緩和できる。これにより、第2シリコン基板3に設けられたピエゾ素子B〜Eに作用する応力が低減され、特性低下を抑制することが出来る。
【0048】
本実施形態では、第1有機絶縁膜48は接続経路50に接していることが必要であるが、好ましくは図2等に示すように、接続経路50が第1有機絶縁膜48に埋設された形態である。ただし埋設される形態であっても、接続経路50の一部が第1有機絶縁膜48から露出した状態であってもよい。
【0049】
次に、図8に示すように、ダイアフラム(変位部)8は、第2シリコン基板3の中央領域に形成され、ピエゾ素子B〜Eは、ダイアフラム8の側縁部の略中央に設けられる。そして、各接続パッド11〜14及び各下側有機絶縁膜37は、第2シリコン基板3の四隅領域にのみ設けられる。なお上側有機絶縁膜44は、下側有機絶縁膜37とほぼ同じ領域に形成されるので、上側有機絶縁膜44も四隅領域にのみ設けられる。これに対して図9に示す形態では、下側有機絶縁膜37が第2シリコン基板3の四隅領域のみならず、各隅領域から第2シリコン基板3の側部領域に沿って延出して形成される。図9では下側有機絶縁膜37が第2シリコン基板3の固定領域9のほぼ全域に形成されている。また下側有機絶縁膜37上に形成される各接続パッド11〜14には、下側有機絶縁膜37上に長く延出する2本の腕部(メタル接合部)70が形成されている。腕部70は、その下側に形成されている配線層10とほぼ同様のパターンで形成されている。
【0050】
図9に示す構造では、腕部70の部分をインターポーザ15とのメタル接合領域に使用でき、インターポーザ15と第2シリコン基板3間の接合強度を向上できるといった利点がある。その一方で、各下側有機絶縁膜37が各ピエゾ素子B〜Eに近接配置される。下側有機絶縁膜37とシリコン基板3の間でも熱膨張差により多少、応力が生じるので、図9の配置であると、ピエゾ素子B〜Eに対する応力の影響が大きくなってしまう。したがって、図8に示すように、下側有機絶縁膜37を第2シリコン基板3の四隅領域のみに設けることで、下側有機絶縁膜37を、ピエゾ素子B〜Eから遠ざけることができ、ピエゾ素子B〜Eに対する応力の影響を小さくできる。したがって、より効果的に、特性劣化を抑制することが出来る。
【0051】
本実施形態では、導通部側接続位置αと、素子側接続位置βとを、平面方向に、ずらして配置するが、このとき、中央領域に形成されたダイアフラム8を避けるように第1有機絶縁膜48及び接続経路50を設けないといけない。
【0052】
そこで、図2に示すように、導通部側接続位置αを、素子側接続位置βよりもシリコン基板2,3の外周側に位置させ、しかも、図1,図2に示すように、導通部18を、インターポーザ15の四隅に形成した。導通部18をインターポーザ15の隅部に形成することで、各導通部18をインターポーザ15の2つの側面に露出する位置まで最大限に大きく形成できる。これにより、ダイアフラム8の周囲の固定領域9(図8参照)の幅が狭くても、ダイアフラム8を避けた位置で、より簡単且つ適切に、導通部側接続位置αと、素子側接続位置βとをずらして配置できる。また、導通部18の平面方向での断面を大きくでき、導通部18の電気抵抗値を低減できる。
【0053】
導通部18を、インターポーザ15の四隅に形成するには、例えば図10に示すように、1つの基板から多数の圧力センサに切り出す際、縦横方向(X方向及びY方向)に所定間隔で並んだ各導通部51の中央位置で、ダイシング方向を直交させて導通部51を分断する。これにより、インターポーザ15の4隅に導通部18が形成された図1に示す圧力センサを複数個、同じ基板から得ることが出来る。図10に示す導通部51を円柱状で形成して図10に示すように切断すれば、圧力センサのインターポーザ15の四隅に円柱を1/4にカットした導通部18を形成することができる。
【0054】
本実施形態では、接続経路50は、第1有機絶縁膜48の内部にて、平面方向に向けて延出する延出部43と、延出部43の一方の端部側と、導通部18との間を高さ方向(厚さ方向)に向けて繋ぐ第2接続端部46と、延出部43の他方の端部側と、配線層10間を高さ方向(厚さ方向)に向けて繋ぐ第1接続端部52とを有して構成される。このような構成により、応力が作用したときに接続経路50をより変形させやすく、シリコン基板2,3に作用する応力を、より効果的に緩和することが出来る。
【0055】
また接続領域47の構造としては、図2の形態に限定されない。例えば図2に示す上側有機絶縁膜44及び第2接続端部46を除き、第1有機絶縁膜48を下側有機絶縁膜37の1層で構成し、接続経路を接続パッド11〜14のみで構成し、接続パッド11〜14と導通部18とを直接接続した構造であってもよい。このとき、導通部側接続位置αは、導通部18と延出部43との接続位置で規定される。
【0056】
次に、図1,図2に示す実施形態では、インターポーザ15の上面17eに第2有機絶縁膜49が形成されている。そして導通パッド(接続経路)66が第2有機絶縁膜49の表面49aにまで延出しており、導通パッド66の導通部側接続位置Xと、回路基板30との回路側接続位置Yとが、平面方向に、ずれて配置されている。これにより、図3のように、インターポーザ15の導通パッド66(の延出部67)と、回路基板30の半田ランド部31間を半田層21にて半田接合したとき、インターポーザ15と回路基板30との間での熱膨張差に起因する応力を効果的に緩和でき、ひいては、シリコン基板2,3に作用する応力をより効果的に緩和できる。したがって、より効果的に特性劣化を抑えることが出来る。
【0057】
本実施形態では、下側有機絶縁膜37、上側有機絶縁膜44、及び第2有機絶縁膜49は、夫々、ポリイミド樹脂で形成されることが好適である。ポリイミド樹脂を用いることで、より効果的に、応力緩和を図ることが可能になる。
【0058】
図4に示す実施形態では、導通部18が、支持基板17の四隅に形成されず、支持基板17の内部位置に形成される。よって導通部18は、上面と下面だけが支持基板17から露出している。
【0059】
図5に示す実施形態では、導通部18と、検出側接続位置βとが膜厚方向に対向している。図5では、配線層10に電気的に接続される第1接続端部70から屈曲して第1延出部71が平面方向に延出して形成される。また導通部18に電気的に接続される第2接続端部72から屈曲して第2延出部73が平面方向に延出して形成される。そして第1延出部71と第2延出部73とが接続されている。
【0060】
導通部側接続位置αは、第1延出部71と第2延出部73との接続位置で規定される。
この実施形態でも、導通部側接続位置αと、素子側接続位置βとが平面方向にずれている。
【0061】
特に、この実施形態では、第1延出部71と第2延出部73との接続位置(導通部側接続位置α)が、第1接続端部70及び第2接続端部72の双方に対して平面方向にずれているので、より効果的に、シリコン基板2,3に作用するインターポーザ15との熱膨張差等に起因した応力を緩和できる。
【0062】
上記したようにインターポーザ15を構成する支持基板17はガラス、導通部18はシリコンで形成されるが、本実施形態では、他の材質でも適用できる。例えば支持基板17はガラス以外の絶縁材料で形成できる。また導通部18は、AuやCuといった金属材料で形成できる。
【0063】
また図6のように、導通部18と支持基板17の間が絶縁層33により絶縁された形態でもよい。
【0064】
次に図7に示す実施形態では、図2等と異なって、インターポーザ15の上面(第2面)17eに第2有機絶縁膜49が形成されていない。しかしながら図7の形態でも、インターポーザ15と第2シリコン基板3の接続領域47には、第1有機絶縁膜48と、第1有機絶縁膜48に埋設された接続経路50とが設けられる。そして接続経路50の導通部側接続位置αと、素子側接続位置βとが、平面方向に、ずれて配置されている。これにより、シリコン基板2,3とインターポーザ15との熱膨張差に起因した、シリコン基板2,3に作用する応力を従来に比べて効果的に緩和できる。したがって、第2シリコン基板3に設けられたピエゾ素子B〜Eに作用する応力を低減でき、特性低下を抑制することが出来る。
【0065】
本実施形態では、圧力センサを用いて説明したが、圧力センサに限定されるものではない。本実施形態は、加速度センサや角速度センサ等の「物理量センサ」に適用できる。
【実施例】
【0066】
次の圧力センサを作製した。
(サンプル1)
図12の形態
(サンプル2)
図7の形態
(サンプル3)
図2の形態
【0067】
有機絶縁膜をポリイミドで形成した。またインターポーザ15を構成する支持基板17をガラスで形成し、導通部18をシリコンで形成した。また、接続経路50及び接続パッド103をAlで形成し、導通パッド66,108をAuで形成した。
【0068】
実験では図3のように圧力センサを回路基板上に半田付けし、各試料における25℃の時の出力を基準にして、温度を変化させたときの出力変化を調べた。その実験結果が図11に示されている。
【0069】
図11に示すように、サンプル1、すなわち従来構造では、温度変化による出力変化が他のサンプルに比して大きくなった。
【0070】
この実験結果により、シリコン基板3とインターポーザ15の間の接続領域47に、第1有機絶縁膜(ポリイミド樹脂)48と、接続経路50を設け、接続経路50を構成する延出部43の導通部側接続位置αと、第1接続端部52の素子側接続位置βとを平面方向にずらして配置した、サンプル2,サンプル3を本実施例とした。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本実施形態における圧力センサ(物理量センサ)の斜視図、
【図2】図1に示す圧力センサをA−A線に沿って高さ方向(厚さ方向)から切断した切断面を示す断面図、
【図3】本実施形態の圧力センサと回路基板との実装構造を示す断面図、
【図4】図2とは異なる本実施形態の圧力センサの断面図、
【図5】図2とは異なる接続構造を示す部分拡大断面図、
【図6】図2とは異なる本実施形態の圧力センサの断面図、
【図7】図2とは異なる本実施形態の圧力センサの断面図、
【図8】(a)はシリコン基板表面の平面図、(b)は、F−F線に沿って高さ方向(厚さ方向)から切断した切断面を示す部分断面図、
【図9】図8と異なる形態であり、(a)はシリコン基板表面の平面図、(b)は、F−F線に沿って高さ方向(厚さ方向)から切断した切断面を示す部分断面図、
【図10】圧力センサの製造工程を示す一工程図(部分斜視図)、
【図11】図2、図7及び図12の各形態の圧力センサを用いて行った温度と出力との関係を示すグラフ、
【図12】従来例における圧力センサ(物理量センサ)の斜視図、
【符号の説明】
【0072】
B〜E ピエゾ素子
1 圧力センサ
2、3 シリコン基板
8 ダイアフラム
9 固定領域
10 配線層
11〜14 接続パッド
15 インターポーザ
17 支持基板
18、51 導通部
30 回路基板
36 保護膜
37 下側有機絶縁膜
43、67、71、73 延出部
44 上側有機絶縁膜
46、72 第2接続端部
47 接続領域
48 第1有機絶縁膜
49 第2有機絶縁膜
50 接続経路
52、70 第1接続端部
66 導通パッド(接続経路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板と、前記シリコン基板に形成され、物理量の変化に応じて変位する変位部と、前記変位部の変位量を検出するための検出素子と、前記シリコン基板と接合されるインターポーザと、を有し、
前記インターポーザは、支持基板と、前記支持基板の上面から下面にかけて形成される導通部と、を有し、
前記検出素子側と、前記導通部との間が前記インターポーザと前記シリコン基板間の接続領域にて電気的に接続されており、
前記接続領域には、少なくとも、前記接続領域内を平面方向に向けて延出する延出部と、前記延出部と前記検出素子側間を高さ方向に繋ぐ第1接続端部とを有する接続経路と、前記接続経路に接する第1有機絶縁膜とが設けられ、前記延出部の導通部側接続位置αと、前記第1接続端部の素子側接続位置βとが、平面方向にずらされていることを特徴とする物理量センサ。
【請求項2】
前記接続経路は、前記延出部と、前記第1接続端部と、前記延出部と前記導通部間とを高さ方向に繋ぐ第2接続端部と、を有して形成され、前記導通部側接続位置αが、前記延出部と前記第2接続端部との接続位置で規定される請求項1記載の物理量センサ。
【請求項3】
前記接続経路は、前記第1接続端部と、前記導通部から高さ方向に形成された第2接続端部と、前記第1接続端部から屈曲して前記接続領域内を平面方向に向けて延出する第1延出部と、前記第2接続端部から屈曲して前記接続領域内を平面方向に向けて延出する第2延出部と、を有し、前記導通部側接続位置αが、前記第1延出部と前記第2延出部との接続位置で規定される請求項1記載の物理量センサ。
【請求項4】
前記変位部は、前記シリコン基板の中央領域に形成され、前記検出素子は、前記変位部の側縁部の略中央に配置されており、前記第1有機絶縁膜は前記シリコン基板の隅領域にのみ設けられている請求項1ないし3のいずれかに記載の物理量センサ。
【請求項5】
前記導通部側接続位置αは、前記素子側接続位置βよりも、前記シリコン基板の外周側に位置しており、前記導通部が、前記インターポーザの隅部に形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の物理量センサ。
【請求項6】
前記インターポーザの前記シリコン基板との反対面側に第2有機絶縁膜及び、前記導通部と前記第2有機絶縁膜の表面に現れて回路基板との間を電気的に接続するための接続経路が設けられており、導通部側接続位置Xと、回路側接続位置Yとが平面方向に、ずらされている請求項1ないし5のいずれかに記載の物理量センサ。
【請求項7】
前記有機絶縁膜は、ポリイミド樹脂である請求項1ないし6のいずれかに記載の物理量センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−60464(P2010−60464A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227441(P2008−227441)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】