画像処理方法及び画像処理装置
【課題】多層パターンに対してテンプレート・マッチングを短時間で且つ正確に行うことができる画像処理方法及び装置を提供する。
【解決手段】上層パターンと下層パターンをそれぞれSEM画像の間でパターン・マッチングを行ない、上層相関マップと下層相関マップを生成する。上層相関マップと下層相関マップを合成して合成相関マップを生成する。合成相関マップより、相関値が極大値を取る点を、マッチング位置とする。このような予備マッチングの結果を利用して、再度、高精度マッチングを行う。高精度マッチングでは、上層パターンと下層パターンを合成し、合成画像を生成する。この合成画像は層間ズレ情報が含まれている。この層間ズレ付き合成画像とSEM画像の間でテンプレート・マッチングを行う。
【解決手段】上層パターンと下層パターンをそれぞれSEM画像の間でパターン・マッチングを行ない、上層相関マップと下層相関マップを生成する。上層相関マップと下層相関マップを合成して合成相関マップを生成する。合成相関マップより、相関値が極大値を取る点を、マッチング位置とする。このような予備マッチングの結果を利用して、再度、高精度マッチングを行う。高精度マッチングでは、上層パターンと下層パターンを合成し、合成画像を生成する。この合成画像は層間ズレ情報が含まれている。この層間ズレ付き合成画像とSEM画像の間でテンプレート・マッチングを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テンプレート・マッチングを行うための画像処理技術に関し、特に多層パターンに対してテンプレート・マッチングを行うための画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
対象画像の中から、特定の形状(テンプレート)を探索する技術はテンプレート・マッチングとして広く用いられている。例えば、非特許文献1を参照されたい。
【0003】
走査式電子顕微鏡を用いた半導体ウェーハ上のパターンの計測では、計測位置を求める必要がある。計測位置の大まかな位置合わせはウェーハを載せたステージの移動によって行われる。しかしながら、ステージの位置決め精度では電子顕微鏡の高い倍率で撮影された画像上で大きなズレが生じる。このズレを補正して正確な位置での計測を行うためにテンプレート・マッチングが行われる。先ず、計測位置に近いユニークなパターンをテンプレートとして登録する。次に、テンプレートから計測位置までの相対座標を記憶する。電子顕微鏡画像においてテンプレート・マッチングを行う。即ち、画像内のパターンとテンプレートをマッチングさせる。こうして、マッチング位置が得られたら、そこから記憶しておいた相対座標分移動した位置が計測位置となる。こうして、テンプレート・マッチングによって、電子顕微鏡画像上における計測位置が正確に得られる。
【0004】
図1を参照して、従来の走査式電子顕微鏡(SEM)におけるテンプレート・マッチングを説明する。まず、ウェーハ101上の第1の対象物1011を撮影し、その計測位置を測定し、記憶する。こうして撮影した画像をテンプレート選択用画像1012という。テンプレート選択用画像1012の中から、ユニークなパターン1013を選択し、それを登録する。これを、テンプレート1014という。次に、第2の対象物1021を撮影する。第2の対象物1021は第1の対象物1011と同じウェーハ上の同一パターンを有する別の場所、例えば同じウェーハ上に繰り返し形成されているダイの同一部分であってもよいし、異なるウェーハ上の同一パターンを有する場所でもよい。
【0005】
第2の対象物1021を撮影した画像を探索画像1022という。次に、探索画像1022の中からテンプレート1014とマッチするパターン1023、1024を探す。テンプレート選択用画像1012と探索画像1022の間には、ステージの位置決め誤差分のズレがある。このズレをテンプレート・マッチングで補正する。テンプレート・マッチングの結果、テンプレート1014との類似度が高い箇所がマッチング位置の候補となるが、これらの候補の中から最もマッチング位置に相応しい箇所が最終的なマッチング位置となる。
【0006】
しかし、このような方法では、テンプレート1014を生成するために、テンプレート選択用画像1012を用意する必要がある。更に、撮影及び諸条件の登録を行うために一時的に走査式電子顕微鏡システムを占有しなければならない。そこで、特許文献1には、テンプレート1014を生成するために、設計(CAD、デザイン)データを用いる方法が開示されている。
【0007】
近年、半導体加工の微細化が進み、半導体ウェーハ上に、設計通りのパターンを形成することが難しくなってきている。半導体ウェーハ上のパターンに歪みがあると、テンプレートと探索画像中の目的のパターンの間にて、歪みに相当する差異が生じる。そのため、テンプレートとして、修正したデザインデータを使用する必要が生じている。しかしながら、この歪みが僅かであれば、テンプレート・マッチングにおいてそれを許容する必要がある。
【0008】
デザインデータは線分による閉図形の集合として構成されている。そのため、これらの閉図形の輪郭(エッジ)を描画したデザイン画像を、テンプレートとして使用することができる。半導体ウェーハ上のパターンを走査式電子顕微鏡で撮影することにより得た探索画像も、エッジによって構成されている。テンプレート・マッチングを行う前に、エッジ画像の膨張化及び平滑化処理を行うことによって、スケーリングなどの歪みを許容し安定したマッチングが図れることが例えば非特許文献2に開示されている。また、特許文献1には、CADデータを用いたマッチングにおいて、テンプレートと電子顕微鏡で撮影することにより得た探索画像のエッジの平滑化が開示されている。一方、特許文献2には、デザインデータから複数レベルの等高線画像を作り、夫々のレベルの等高線画像と走査式電子顕微鏡によるエッジ強調画像をマッチングさせ、最もよくマッチングしたレベルでマッチング位置を決定することで、歪みを許容する手法が開示されている。
【0009】
図2を参照して、従来の画像処理装置の例を説明する。この画像処理装置は、デザインデータ(設計データ)から等高線画像を生成するデザイン画像生成部21、探索画像としてSEM画像を入力し、エッジ処理を行うSEMエッジ画像生成部22、及び、等高線画像(テンプレート)とエッジ強調処理されたSEM画像のマッチングを行うマッチング実行部23を有する。
【0010】
デザイン画像生成部21は、第1〜第Nレベル(但し、Nは予め設定されている自然数)の等高線画像描画部211−1〜211−Nを有する。各等高線画像描画部は、デザインデータから等高線画像を生成する。等高線画像は、実際に生成されたパターンに生じる歪み(太り、細り、角の丸まり)を模倣して、デザインデータを修正したものである。特許文献2には、デザインデータから等高線画像を生成する手法の例が記載されている。この手法によると、デザインデータの塗潰し画像において、同一輝度値の画素を結んだ閉曲線群を生成する。この閉曲線を等高線画像と呼ぶ。こうして生成された各レベルの等高線画像の等高線は、適当な膨張や平滑化が施されている。
【0011】
SEMエッジ画像生成部22は、エッジ強調部221を有する。エッジ強調部221は、探索画像として、SEM画像を入力し、SEM画像に対してエッジ強調を行う。エッジ強調の手法としてはGaussフィルタを施した後にソーベルフィルタを施す方法などが一般的に知られている。
【0012】
マッチング実行部23は、画像探索部231、及び、候補テーブル232を有する。画像探索部231は、エッジ強調されたSEM画像と等高線画像をマッチングさせ、マッチング位置の候補を求める。候補テーブル232は、マッチングのスコアが高かった(より良くマッチした)位置などの情報をスコア順に記憶する。マッチング実行部は、最上位候補の位置をマッチング位置として出力する。
【0013】
図3を参照して、画像探索部231の例を説明する。画像探索部231は、第1〜第Nレベルの画像探索部2311−1〜2311−N、第1〜第Nレベルの相関マップ2312−1〜2312−N、及び、マッチング候補抽出部2313を有する。各レベルの画像探索部は、各レベルの等高線画像を入力し、エッジ強調処理されたSEM画像との間でマッチングを行う。マッチングの結果、マッチング位置毎のスコアからなる相関マップが得られる。相関マップは、各レベルの相関マップ2312−1〜2312−Nに格納される。マッチング候補抽出部2313は、各レベルの相関マップから候補テーブルを生成する。
【0014】
こうして、特許文献2に記載された例では、デザインデータとSEM画像の間にて、ある程度歪みを許容したテンプレート・マッチングを実現している。このように、エッジを太らせることで、或いは、予想される変形を予め施した画像を必要ならば複数使うことで、ある程度歪みを許容したテンプレート・マッチングが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−5818
【特許文献2】特開2007-079982
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Azriel Rosenfeld、Avinash C. Kak著Digital Picture Processing、8.3節
【非特許文献2】「輪郭点情報を用いた高速テンプレートマッチングアルゴリズム」電子情報通信学会論文誌Vol.J74-D2 No.10 pp.1419-1427、2.2節
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
近年、半導体パターンの微細化の傾向が更に進んでいる。それに伴い、半導体パターンとして、上層パターンと下層パターンを重ね合わせて1つのパターンを生成する多層パターンが利用されている。このような多層パターン型の配線パターンでは、SEM画像において、上層パターンと下層パターンの両者の像が表示され、しかも上層と下層でパターンの変形度合いが異なっていたり、上下層パターンの位置がズレているケースが頻発している。
【0018】
図4に、多層パターンのデザインデータ401と、このデザインデータ401に基づいて生成したウェーハ上の配線パターンのSEM像402の例を示す。デザインデータ401は、下層パターン4011と上層パターン4012を有する。同様に、SEM画像402は下層パターン4021と上層パターン4022を有する。上層パターン同士を比較すると、SEM画像402では、上層パターン4022の形状が膨らんでいるのが判る。一方、下層パターン同士を比較すると、SEM画像402では、下層パターン4021の形状が細っている。
【0019】
更に、上層パターンと下層パターンの間の相対的な位置関係は、デザインデータとSEM画像では異なる。デザインデータ401では、上層パターン4012の中央に下層パターン4011が配置され、下層パターン4011の中央に上層パターン4012が配置されている。一方、SEM画像502では、上層パターン4022は下層パターン4021の中央よりズレている。
【0020】
これらの変形及びズレを、全てエッジを太らせることで対処しようとすると、エッジの太さをかなり大きくする必要がある。エッジの太さを大きくすると、マッチングの位置精度が低下する。図2に示した従来の画像処理装置において、各層毎に、予想される変形を予め施したNレベルの等高線画像を用意する必要がある。例えば、1層の時はN回のマッチングを行って最終的に一番良くマッチした位置を決めればよいが、2層になると上層でNレベル、下層でNレベル、それに加え上層と下層のx方向のズレをNレベル、上層と下層のy方向のズレをNレベル考慮したとするとNの4乗回のマッチングを実行することなる。対象とする層数が増えるにつれ爆発的に処理時間が長くなる。
【0021】
このように従来の手法では多層のパターンにおいて正しく、精度よく、現実的な処理時間でマッチングを行うことはできない。
【0022】
本発明の目的は、多層パターンに対してテンプレート・マッチングを短時間で且つ正確に行うことができる画像処理方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明によると、上層パターンと下層パターンをそれぞれSEM画像の間でパターン・マッチングを行ない、上層相関マップと下層相関マップを生成する。上層相関マップと下層相関マップを合成して合成相関マップを生成する。合成相関マップより、相関値が極大値を取る点を、マッチング位置とする。
【0024】
本発明によると、このような予備マッチングの結果を利用して、再度、高精度マッチングを行う。高精度マッチングでは、上層パターンと下層パターンを合成し、合成画像を生成する。この合成画像は層間ズレ情報が含まれている。この層間ズレ付き合成画像とSEM画像の間でテンプレート・マッチングを行う。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、テンプレート・マッチングを用いて多層パターンの検査を短時間で且つ正確に行うことができる検査方法及び装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来の走査式電子顕微鏡(SEM)におけるテンプレート・マッチングを説明するための説明図である。
【図2】従来の画像処理装置の例を説明するための説明図である。
【図3】従来の画像処理装置の画像探索部の例を説明するための説明図である。
【図4】多層パターンのデザインデータと配線パターンのSEM像の例を示す図である。
【図5】本発明による画像処理装置の第1の例を説明する図である。
【図6】本発明による画像処理装置の第1の例の画像探索部の第m,nレベル画像探索セルの構成例を示す図である。
【図7】本発明による画像処理装置の第1の例の画像探索部が実行するテンプレート・マッチングの例を説明する図である。
【図8】本発明による画像処理装置の第1の例の画像探索部において、相関マップからマッチング位置を決定する方法の例を説明する図である。
【図9】本発明による画像処理装置の第1の例の画像探索部の構成例を示す図である。
【図10】本発明による画像処理装置の第1の例の画像探索部(図9)のマッチング候補抽出部の構成例を示す図である。
【図11】本発明による画像処理装置の第1の例の画像探索部のマッチング候補抽出部(図10)の上下層相関マップ合成部の動作の一例を示す図である
【図12】本発明による画像処理装置の第1の例の画像探索部のマッチング候補抽出部(図10)の上下層相関マップ合成部の動作の別の一例を示す図である。
【図13】図11に示した上下層相関マップの第1の合成方法と、図12に示した上下層相関マップの第2の合成方法を比較するための説明図である。
【図14】図11に示した上下層相関マップの第1の合成方法と、図12に示した上下層相関マップの第2の合成方法を比較するための説明図である。
【図15】本発明による画像処理装置の第2の例を説明する図である。
【図16】下層マスク付き上層パターンの等高線画像の例を示す図である。
【図17】上層マスク付き下層パターンの等高線画像の例を示す図である。
【図18】マッチング領域における輝度の平均値が、画像全体の輝度の平均値と異なる場合を説明する図である。
【図19】等高線に関する言葉の定義を説明する図である。
【図20】下層マスク付き上層パターンの等高線画像(図16)における各画素の画素値の決め方を表す図である。
【図21】下層マスク付き上層パターンの等高線画像(図16)の生成方法を説明する図である。
【図22】上層マスク付き上層パターンの等高線画像(図17)における各画素の画素値の決め方を表す図である。
【図23】上層マスク付き下層パターンの等高線画像(図17)の生成方法を説明する図である。
【図24】本発明による画像処理装置の第2の例の動作を視覚的に示した図である。
【図25】デザインデータのみから生成した上下層パターンの合成等高線画像の例を示す図である。
【図26】N×N枚の合成等高線画像の例を示す図である。
【図27】上下層合成等高線画像(図25)における各画素の画素値の決め方を表す図である。
【図28】上下層合成等高線画像(図25)の生成方法を説明する図である。
【図29】本発明による画像処理装置の第3の例を説明する図である。
【図30】本発明による画像処理装置の第3の例の層間ズレ付合成デザイン画像生成部(図29)の動作の例を説明する図である。
【図31】本発明による画像処理装置の第3の例のマッチング実行部の画像探索部(図29)の構成例を示す図である。
【図32】本発明による画像処理装置の第3の例の画像探索部のマッチング候補修正部(図31)の動作を説明する図である。
【図33】本発明による検査装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図33を参照して、本発明の検査装置の構成例を説明する。本例の検査装置は、走査型電子顕微鏡3301、画像処理装置3302、表示装置3303、制御用計算機3304、及び、入力装置3305を有する。走査型電子顕微鏡3301は、1次電子線を生成する電子銃33011、1次電子線33012を試料33014上にて走査させる偏向器33013、試料33014からの2次電子を検出する2次電子検出器33015、及び、2次電子検出器33015から検出信号を増幅する増幅器33016を有する。画像処理装置3302は、増幅器33016によって増幅された2次電子検出信号からSEM画像を生成し、それをテンプレートとマッチングさせる。表示装置3303は、各種の画像データを表示する。制御用電子計算機3304はこれらの装置を制御する。入力装置3305は、キーボード、マウス等を備える。
【0028】
画像処理装置3302は、増幅器33016からの信号をAD変換するAD変換回路、デジタル画像データを格納する画像メモリ、各種の画像処理を行う画像処理回路、表示制御を行う表示制御回路を備えた画像処理プロセッサによって構成されてよい。
【0029】
試料33014は、多層パターンが形成された半導体ウェーハである。画像処理装置3302は、テンプレート・マッチングを用いて多層パターンの検査/測定を行う。半導体ウェーハの多層パターンの線幅を計測する場合、SEM画像より、計測部分を見つけ出す必要がある。計測部分を見つけ出すのに、正規化相関法が使われる。正規化相関法では、テンプレートとSEM画像の相関マップを生成し、相関値が高い点を、マッチング位置とする。また、テンプレート・マッチングでは、最適なテンプレートを選択する必要がある。本発明によると、画像処理装置3302は、最適なテンプレートを選択し、正規化相関法によって、マッチング位置を検出する。
【0030】
図5を参照して、本発明による画像処理装置の第1の例を説明する。本例の画像処理装置は、デザインデータ(設計データ)から上層パターンデータと下層パターンデータを分離する層分離部51、上層パターンデータを入力し、上層パターンの等高線画像を生成する上層デザイン画像生成部52、下層パターンデータを入力し、下層パターンの等高線画像を生成する下層デザイン画像生成部53、探索画像としてSEM画像を入力し、エッジ処理を行うSEMエッジ画像生成部54、及び、テンプレートとSEM画像のマッチングを行うマッチング実行部55を有する。
【0031】
画像処理装置は、テンプレート・マッチングに用いるテンプレートとして、デザインデータ(設計データ)を入力する。デザインデータは、複数の積層した配線パターンのための多層パターンを含む。
【0032】
上層デザイン画像生成部52は、第1〜第Nレベルの等高線画像描画部521−1〜521−Nを有する。同様に、下層デザイン画像生成部53は、第1〜第Nレベルの等高線画像描画部531−1〜531−Nを有する。レベル数Nは自然数であるが、1でもよい。上層デザイン画像生成部52に含まれる等高線画像描画部のレベル数と下層デザイン画像生成部53に含まれる等高線画像描画部のレベル数は、本例では、同一であるが、異なってもよい。ここでは、上層デザイン画像生成部52と上層デザイン画像生成部53の2層のデザイン画像生成部を有するように構成されているが、上層、中層、及び、下層の3層のデザイン画像生成部を有するように構成してもよい。
【0033】
SEMエッジ画像生成部54は、エッジ強調部541、と、第1〜第Mレベルのエッジ膨張部542−1〜542−Mを有する。マッチング実行部55は、画像探索部551と候補テーブル552を有する。Mは自然数であるが、1でもよい。
【0034】
デザインデータは層分離部51によって、上層と下層のデザインデータ(上層パターン、下層パターン)に分離され、夫々上層デザイン画像生成部52と下層デザイン画像生成部53に供給される。上層のデザインデータ(上層パターン)は、第1〜第Nレベルの等高線画像描画部521−1〜521−Nにブロードキャストされる。下層のデザインデータ(下層パターン)は、第1〜第Nレベルの等高線画像描画部531−1〜531−Nにブロードキャストされる。
【0035】
第1〜第Nレベルの等高線画像描画部521−1〜521−Nによって、上層のデザインデータ(上層パターン)のN枚の等高線画像が生成される。第1〜第Nレベルの等高線画像描画部531−1〜531−Nによって、下層のデザインデータ(下層パターン)のN枚の等高線画像が生成される。合計2N枚の等高線画像はマッチング実行部55の画像探索部551に供給される。
【0036】
一方、探索画像であるSEM画像は、SEMエッジ画像生成部54のエッジ強調部541に供給される。エッジ強調部541はSEM画像からSEMエッジ強調画像を生成し、それを第1〜第Mレベルのエッジ膨張部542−1〜542−Mにブロードキャストする。第1〜第Mレベルのエッジ膨張部542−1〜542−Mは、そのレベルに応じてSEMエッジ強調画像を膨張させ、第1〜第Mレベルのエッジ膨張画像を、それぞれ生成する。第1〜第Mレベルのエッジ膨張画像は、マッチング実行部55の画像探索部551に供給される。ここで、エッジ膨張画像のレベルとは、膨張の度合いを示す。高いレベルのエッジ膨張画像ほどSEMエッジ強調画像に対して大きな膨張が施されている。膨張とは輝度の高い部分(ここではエッジ)を膨らませる処理である。例えば、第mレベルのエッジ膨張画像を生成する場合、最大値フィルタとGaussフィルタを交互にm回施す処理を行ってよい。
【0037】
マッチング実行部55の画像探索部551は、各レベルの上下層パターンの等高線画像とSEM画像から生成した各レベルのエッジ膨張画像を夫々組み合わせ、マッチングしてマッチング候補点群を生成し、それを候補テーブル552に登録する。画像探索部551は、各レベルの等高線画像と各レベルのエッジ膨張画像の組み合わせ数に対応した画像探索セルを有するが、これについては図6を参照して説明する。
【0038】
図6は、画像探索部551(図5)の第m,nレベル画像探索セル5511の構成例を示す。画像探索部551は、第1〜第Nレベルの上下層パターンの等高線画像と第1〜第Mレベルのエッジ膨張画像の組み合わせの個数に対応した画像探索セルを有する。画像探索セル5511は、等高線画像とエッジ膨張画像の組み合わせのうちの1つの組み合わせのマッチングを行う。
【0039】
第nレベルの等高線画像と第mレベルのエッジ膨張画像のテンプレート・マッチングを担当する画像探索セルを第m,nレベル画像探索セルと呼ぶことにする。第m,nレベル画像探索セル5511は第m,nレベル画像探索部55111と第m,nレベル相関マップ55112を有する。第m,nレベル画像探索部55111は第nレベルの等高線画像と第mレベルのエッジ膨張画像のテンプレート・マッチングを行い、その結果を第m,nレベル相関マップ55112に格納する。
【0040】
図7を参照して、画像探索部551(図5)が実行するテンプレート・マッチングを説明する。微小寸法測定走査電子顕微鏡(CD-SEM: Critical Dimension Scanning Electron Microscope)は、半導体ウェーハ上の特定箇所を、走査式電子顕微鏡を用いて測長する検査装置である。CD-SEMでは、測長すべきウェーハ上の箇所を特定するために、測長箇所の付近でユニークなパターンを持つ部分をテンプレートとして登録する。測長時は、テンプレートと探索画像のパターンの間でテンプレート・マッチングを行い、得られたマッチング位置の座標に基づいて、測長箇所を特定する。
【0041】
ここでは、探索画像701とテンプレート(参照画像)702が与えられているものとする。テンプレート・マッチングとは探索画像701の中でテンプレート702と同じパターンを検出する処理である。具体的には、例えば探索画像にテンプレートを重ね合わせて正規化相関を計算する。次に、探索画像に対してテンプレートをずらして、正規化相関を計算する。これを繰り返し、最も高い相関値が得られた位置をテンプレートと同じパターンが存在する位置、即ち、マッチング位置である判断する。ここで、例えば、テンプレート702の左上の点の位置を、便宜的に、テンプレート702の位置と称する。
【0042】
本例では、探索画像701上の位置aにて、テンプレート702と同じパターンが存在すると判断されたものとする。また、探索画像701上の4つの位置b、c、d、eでは、同じパターンは存在しないが、次に相関値が高い値となったとする。更に、2つの位置f、gでは、その次に相関値が高い値となったとする。これらの位置以外の場所では相関は殆どなく、相関値は0に近い値となったとする。
【0043】
正規化相関マップ703は、探索画像701上の各位置における相関値を画素値とする画像であるが、ここでは、便宜上、3次元空間上のグラフとして表示している。XY平面上の座標は、探索画像701上の位置を表し、Z軸は相関値を表す。図示のように、位置a、b、c、d、e、f、gにおける相関値を、a’、b’、c’、d’、e’、f’、g’とする。位置aにおける相関値、即ち、画素値は1に近い値となる。他の位置b、c、d、e、f、gにおける相関値、即ち、画素値b’、c’、d’、e’、f’、g’は、1よりかなり小さい。相関値をスコアとすると、位置aにおける相関値が最大スコアとなり、最上位候補となる。他の位置b、c、d、e、f、gの相関値は、それに次ぐ候補となる。これらの候補は後段の候補テーブルに登録される。
【0044】
図7に示した例では、探索画像701の寸法はテンプレート702の寸法より大きい。しかしながら、テンプレート・マッチングでは、探索画像上におけるテンプレートの相対位置が分かればよいだけであり、大きさは逆でも構わない。サーチ(探索)の処理はテンプレートと探索画像を入れ替えたのと同じである。
【0045】
相関マップは、探索画像の大きさからテンプレートの大きさを引いたもの(面積ではなく縦横夫々の長さにおいて)である。探索画像に対してテンプレートを1画素ずつずらしながら相関値を求めるので、相関マップも離散的な画素の空間となる。テンプレート・マッチングを行う前にテンプレートと探索画像の画素を間引いたり、平滑化又は縮小して画像ザイズを小さくすると相関マップもその分小さくなる。
【0046】
図8を参照して、相関マップからマッチング位置を決定する方法の例を説明する。図8のグラフの横軸はx-y座標、縦軸は相関値を表す。最も相関値が大きい位置が、探索画像とテンプレートが最もよくマッチングした位置である。相関値の最大値v1が所定の閾値th1よりも小さい領域では、探索画像とテンプレートが一致する場所はなかったと考えるのが妥当である。また、1番目に大きい相関値v1と2番目に大きい相関値v2の差v1-v2が所定の閾値th2よりも小さい場合は、ノイズなどの影響で最上位候補となるべき位置の相関値が次候補の位置の相関値と逆転している可能性が高いと考えられる。
【0047】
最終的なマッチング位置の候補となり得る位置は、相関値が周囲より高い極大値となり、且つ、閾値th1以上の値を持つ点である。更に、予め定められた半径の近傍に自分よりも相関値が高い極大点がないとの条件が付加されることもある。このような種々の条件を満たした点(マッチング位置の候補)を相関値順に格納したのが候補テーブルである。一般には、候補テーブルの最上位の候補をマッチング位置とする。しかしながら、同じパターンが複数存在する場合には、複数の候補の位置のうち中央に近い位置を選択してもよい。また、相関値が近い場合には別の観点(ローカルな信号強度など)でマッチング位置を選択してもよい。いずれにしても、最終的なマッチング位置の選択は後段の処理に委ねる場合も多い。
【0048】
図9は、画像探索部551(図5)の構成例を示す。画像探索部551は、上層画像探索グリッド5511と下層画像探索グリッド5512とマッチング候補抽出部5513とを有する。上層画像探索グリッドと下層画像探索グリッドは同様の構造を有するので、ここでは、上層画像探索グリッド5511について説明する。上層画像探索グリッド5511は、上層デザイン画像生成部52(図5)からの上層パターンの等高線画像群(全Nレベル)と、SEMエッジ画像生成部54(図5)からのエッジ膨張画像群(全Mレベル)を入力し、上層相関マップ群を出力する。上層画像探索グリッド5511は、M×N個の画像探索セル5511−m−nを含む。画像探索セル5511−m−nの構成及び動作は図6を参照して説明した。例えば、第m、nレベル画像探索セルは第nレベル等高線画像と第mレベルエッジ膨張画像のマッチングを行う。上層相関マップ群はM×N個の上層相関マップの出力を纏めたものである。
【0049】
下層画像探索グリッド5512は、上層パターンの等高線画像群の代わりに下層パターンの等高線画像群を入力としている以外は上層画像探索グリッドと同じ構造である。上層画像探索グリッドから出力された上層相関マップ群と下層画像探索グリッドから出力された下層相関マップ群は、共にマッチング候補抽出部5513に供給される。マッチング候補抽出部5513では、マッチング点候補群を選別し、それを候補テーブル552(図5)に格納する。
【0050】
図10は、マッチング候補抽出部5513(図9)の構成例を示す。マッチング候補抽出部5513は、上層相関マップ統合部55131、下層相関マップ統合部55132、上下層相関マップ合成部55133、及び、相関マップ極大点選別部55134を有する。上層相関マップ統合部55131は、上層相関マップ群を入力し、画素毎に各レベル(M×Nレベル)の上層相関マップの最大値を取り、それを統合して上層相関マップを生成する。下層相関マップ統合部55132は、下層相関マップ群を入力し、画素毎に各レベル(M×Nレベル)の下層相関マップの最大値を取り、それを統合して下層相関マップを生成する。上下層相関マップ合成部55133は、上層相関マップと下層相関マップを入力し、それを合成して一つの合成相関マップを生成する。上下層相関マップ合成部55133は、上層及び下層相関マップを合成するとき、外部から入力した層情報群(各層の層強度、層間ズレ許容量、マッチングの基準となる層など)を考慮する。それによって、テンプレート・マッチングを細やかにコントロールすることができる。上下層相関マップ合成部55133の動作の詳細は後に図11および図12を参照して説明する。相関マップ極大点選別部55134は、合成相関マップを入力し、相関値が極大点となる点をマッチング点候補として抽出し、それよりマッチング点候補群を生成する。
【0051】
図11は、上下層相関マップ合成部55133(図10)の動作の一例を示す。上下層相関マップ合成部55133は、上層相関マップ1101と下層相関マップ1102の画素値を合成して、合成相関マップ1103を生成する。本例では、上層相関マップ1101の注目画素1101aの画素値とその位置に対応する下層相関マップ1102の対応画素1102aの画素値の重み付け平均値を求めることにより、合成相関マップ1103の注目画素1103aの画素値を得る。重みは夫々の層の層強度である。層強度はどの層のパターン情報をより強力にマッチングに反映させたいかを示すもので、例えば上下層夫々の層パターンの写り込み強度などから求められる。上層相関マップ1101の全ての画素について同様の処理を行い、合成相関マップ1103が得られる。
【0052】
図12は、上下層相関マップ合成部55133(図10)の動作の別の一例を示す。本例では、上層相関マップ1201の注目画素(1画素)1201aに対して、その位置に対応する下層相関マップ1202の対応画素1202aの周囲領域1203の画素値を合成計算に使う。先ず、下層相関マップ1202の対応画素1202aの周囲領域1203を設定する。周囲領域1203の寸法は、層間ズレの許容量に対応する。ここでは周囲領域1203として、対応画素1202aを中心に5×5画素の領域を設定する。これは、マッチングを行う直前の画像サイズにおいて、下層相関マップ1202に対して上層相関マップ1201が上下左右2画素の範囲でズレていることを想定している。
【0053】
次に、周囲領域1203の各画素値と上層相関マップの注目画素1201aの画素値との重み付け平均値を算出する。それによって、5×5個の値からなる重み付け平均画像1204が得られる。ここで、重み付け平均値の算出に用いる重みは、夫々の層の層強度である。
【0054】
次に、周囲領域1203の各画素に対して重み係数を設定する。重み係数は、対応画素1202aに対する各画素の位置に対応して設定される。対応画素1202aの重み係数は1である。こうして、5×5個の値からなる重み係数テーブル1205が生成される。次に、重み付け平均画像1204の各値に、重み係数テーブル1205の対応する重み係数を乗算する。こうして、5×5個の値からなる周辺領域重み付けマップ1206が得られる。最後に、この周辺領域重み付けマップ1206を構成する5×5個の値から最大値を取り、それを、合成相関マップの注目画素の画素値とする。上層相関マップ1201の全ての画素について同様の処理を行い、合成相関マップ1103が得られる。
【0055】
周辺領域重み付けマップ1206において、中央の位置に対する最大値の位置の偏差は、上層相関マップ1201に対する下層相関マップ1202のズレを表す。この層間ズレ量は、X方向のずれとY方向のずれを含む。上層相関マップの画素毎にX方向のズレ量、及び、Y方向ズレ量を記憶したものを下層Xズレ量画像、下層Yズレ量画像という。
【0056】
図12を参照して説明した上下層相関マップの合成方法では、上層相関マップ1201を基準として、層間ズレを算出する。即ち、上層相関マップのピークから下層相関マップのピークまでの変位を層間ズレとする。しかしながら、上層と下層を入れ替え、層間ズレを下層基準とすることもできる。
【0057】
図13を参照して、図11に示した上下層相関マップの第1の合成方法と、図12に示した上下層相関マップの第2の合成方法を比較する。図13の折れ線グラフ1301は、上層相関マップの画素値、折れ線グラフ1302は下層相関マップの画素値、折れ線グラフ1303は第1の合成方法によって生成した合成相関マップの画素値の分布を示す。折れ線グラフ1304、1305は第2の合成方法によって生成した合成相関マップの画素値の分布である。
【0058】
但し、折れ線グラフ1304の場合、重み付け平均画像1204を生成したが、それに対する重み係数の乗算は行わなかった。従って、重み付け平均画像1204を構成する5×5個の値から最大値を取り、それを、合成相関マップの注目画素の画素値とした。一方、折れ線グラフ1305の場合、図12を参照して説明したように、重み付け平均画像1204を生成し、それに、重み係数を乗算することによって、周辺領域重み付けマップ1206を生成した。更に、周辺領域重み付けマップ1206を構成する5×5個の値から最大値を取り、それを、合成相関マップの注目画素の画素値とした。
【0059】
図13の折れ線グラフ1301〜1305において、縦軸は相関値、横軸は画素座標である。尚、画素座標は1次元とした。また、第2の合成方法において、重み付け平均値の算出に用いる重みは、上層、下層の相関マップとも0.5とした。即ち、重み付け平均値は、単なる平均値である。相関値は10000倍して表示している。
【0060】
本例では、折れ線グラフ1301にて示すように、上層相関マップにおいて座標値4の位置で相関値がピークとなる。折れ線グラフ1302にて示すように、下層相関マップにおいて座標値6の位置で相関値がピークとなる。即ち、上下層で層間ズレが発生している。折れ線グラフ1303にて示すように、第1の合成方法によって相関値の平均値を求めた場合には、平均値は4〜6となり大きな変化がない。従って、本例では、僅かなノイズがあると、その影響で、マッチング位置が変化する可能性がある。一方、折れ線グラフ1304、及び、1305に示すように、第2の合成方法によって合成相関マップを生成すると、マッチング位置は上層相関マップのピークであると明確に判定することができる。また、上層相関マップのピーク位置において、上層相関マップとのズレ量は2画素である。以上より、図11に示した上下層相関マップの第1の合成方法より、図12に示した上下層相関マップの第2の合成方法のほうが、マッチング位置は明確に、且つ、安定的に特定することができることが判る。更に、第2の合成方法において、重み係数を乗算する処理を実行したほうが、それを実行しない場合より、より明確に、マッチング位置を特定することができることが判る。
【0061】
図14を参照して、図11に示した上下層相関マップの第1の合成方法と、図12に示した上下層相関マップの第2の合成方法を比較する。図14の折れ線グラフ1401は、上層相関マップの画素値、折れ線グラフ1402は下層相関マップの画素値の分布を示す。折れ線グラフ1403、1404は第2の合成方法によって生成した合成相関マップの画素値の分布である。但し、折れ線グラフ1403の場合、重み付け平均画像1204を生成したが、それに対する重み係数の乗算は行わなかった。従って、重み付け平均画像1204を構成する5×5個の値から最大値を取り、それを、合成相関マップの注目画素の画素値とした。一方、折れ線グラフ1404の場合、図12を参照して説明したように、重み付け平均画像1204を生成し、それに、重み係数を乗算することによって、周辺領域重み付けマップ1206を生成した。更に、周辺領域重み付けマップ1206を構成する5×5個の値から最大値を取り、それを、合成相関マップの注目画素の画素値とした。
【0062】
図14の折れ線グラフ1401〜1404において、縦軸は相関値、横軸は画素座標である。尚、画素座標は1次元とした。また、第2の合成方法において、重み付け平均値の算出に用いる重みは、上層、下層の相関マップとも0.5とした。即ち、重み付け平均値は、単なる平均値である。相関値は10000倍して表示している。
【0063】
本例では、折れ線グラフ1401にて示すように、上層相関マップにおいて座標値4及び5の2つの位置で相関値が略等しい台形のピークとなる。折れ線グラフ1402にて示すように、下層相関マップにおいて座標値6の位置で相関値がピークとなる。このような場合、折れ線グラフ1403に示すように、重み係数の乗算を行わない場合、相関値は、2つの位置で略大きさが等しい台形のピークとなる。しかしながら、折れ線グラフ1404に示すように、重み係数の乗算を行う場合、座標値4における相関値よりも座標値5における相関値のほうが僅かに大きい。従って、座標値5をマッチング位置と判定する。本来は、このような相関値の僅かな差に影響されずに、下層相関マップのピーク位置に近い方の位置をマッチング位置とすべきである。しかしながら、本例では、相関値が大きいほうの位置を、マッチング位置と判定する。
【0064】
図15を参照して、本発明による画像処理装置の第2の例を説明する。本例の画像処理装置は、デザインデータ(設計データ)から上層パターンデータと下層パターンデータを分離する層分離部51、上層パターンデータを入力し、上層パターンの等高線画像を生成する上層デザイン画像生成部52、下層パターンデータを入力し、下層パターンの等高線画像を生成する下層デザイン画像生成部53、探索画像としてSEM画像を入力し、エッジ処理を行うSEMエッジ画像生成部54、テンプレートとSEM画像のマッチングを行うマッチング実行部55、上層パターンを入力し上層パターンの内部画像を生成する上層内部画像生成部56、上下層パターンの等高線画像を入力し、下層マスク付き上層パターンの等高線画像を生成する下層マスク付上層デザイン画像生成部57、及び、上層パターンの内部画像と上下層パターンの等高線画像を入力し、上層マスク付き下層パターンの等高線画像を生成する上層マスク付下層デザイン画像生成部58を有する。
【0065】
尚、下層マスク付き上層パターンの等高線画像とは、上層パターンの等高線を明るい輝度で表し、下層パターンの等高線をグレーの輝度で表した2層のパターンを含む画像のことである。グレーの輝度で表したパターンを、マスクと称する。上層マスク付き下層パターンの等高線画像とは、下層パターンの等高線を明るい輝度で表し、上層パターンの等高線をグレーの輝度で表した2層のパターンを含む画像のことである。尚、輝度は画素値として表される。これらの等高線画像の例は、後に図16及び図17を参照して説明する。
【0066】
本例の画像処理装置を、図5に示した第1の例と比較すると、本例の画像処理装置では、上層内部画像生成部56、下層マスク付上層デザイン画像生成部57、及び、上層マスク付下層デザイン画像生成部58を有する点が異なる。以下に、第1の例と異なる部分について詳細に説明する。
【0067】
下層マスク付上層デザイン画像生成部57は、第1〜第Nレベルのマスク等高線画像描画部571−1〜571−Nを有する。同様に、上層マスク付下層デザイン画像生成部58は、第1〜第Nレベルのマスク等高線画像描画部581−1〜581−Nを有する。レベル数Nは自然数であるが、1でもよい。下層マスク付上層デザイン画像生成部57に含まれるマスク等高線画像描画部のレベル数と上層マスク付下層デザイン画像生成部58に含まれるマスク等高線画像描画部のレベル数は、本例では、同一であるが、異なってもよい。
【0068】
上層内部画像生成部56は、上層パターンを入力し、上層パターンの内部画像を生成し、それを、上層マスク付下層デザイン画像生成部58に供給する。上層パターンの内部画像は、上層パターンの内部にある下層パターンの等高線の画像であり、詳細は図17を参照して説明する。
【0069】
下層マスク付上層デザイン画像生成部57の各レベルのマスク等高線画像描画部は、上層デザイン画像生成部52で生成された各レベルの上層パターンの等高線画像と、下層デザイン画像生成部53で生成された代表的なレベル(主に中央レベル)の下層パターンの等高線画像から、下層マスク付きの各レベルの上層パターンの等高線画像を生成する。下層マスク付き上層パターンの等高線画像の例は、後に図16を参照して説明する。
【0070】
同様に、上層マスク付下層デザイン画像生成部58の各レベルのマスク等高線画像描画部は、下層デザイン画像生成部53で生成された各レベルの下層パターンの等高線画像と、上層デザイン画像生成部52で生成された代表的なレベル(主に中央レベル)の上層パターンの等高線画像と、更に、上層内部画像生成部56で生成された代表的なレベル(主に中央レベル)の上層パターンの内部画像から上層マスク付きの各レベルの下層パターンの等高線画像を生成する。上層マスク付き下層パターンの等高線画像の例は、後に図17を参照して説明する。
【0071】
図16に、下層マスク付き各レベルの上層パターンの等高線画像の例を示す。上述のように、下層マスク付き各レベルの上層パターンの等高線画像1601は、各レベルの上層パターンの等高線画像と、代表的なレベル(主に中央レベル)の下層パターンの等高線画像から生成する。下層マスク付き各レベルの上層パターンの等高線画像では、上層パターンの等高線が明るい輝度で描かれているのに対して、下層パターンのマスクはグレーの輝度で描かれている。尚、下層パターンのマスクは、代表レベルの下層パターンの等高線をグレーの輝度で描いたものである。下層パターンのマスクの輝度は画像全体の平均輝度値に等しい。即ち、下層パターンのマスクの輝度は、下層マスク付き上層パターンの等高線画像の全体の輝度の平均値に等しく、一定値である。
【0072】
下層パターンのマスクの輝度を、下層マスク付き上層パターンの等高線画像の全体の輝度の平均値に等しくする理由を説明する。SEMエッジ強調画像から生成したエッジ膨張画像との間で、正規化相関値を計算するとき、マッチング領域の全ての画素の輝度に対して、平均輝度値からの偏差を計算し、この偏差を用いて相関値を算出する。下層パターンのマスクの輝度を画像全体の輝度の平均値に設定すると、下層パターンのマスクの領域では偏差がゼロとなり、相関値に寄与しない。即ち、下層パターンのマスクは、相関値に影響を与えない。
【0073】
ここで、マッチング領域を説明する。下層マスク付き上層パターンの等高線画像(テンプレート)の寸法が、エッジ膨張画像(探索画像)の寸法より小さい場合には、下層マスク付き上層パターンの等高線画像(テンプレート)の全体がマッチング領域となる。従って、探索画像に対するテンプレートの相対的位置が変化しても、マッチング領域におけるパターンは常に同一であり、マッチング領域における輝度の平均値は一定であり、画像全体の輝度の平均値と等しい。従って、上述のように、下層パターンのマスクは、相関値に影響を与えない。
【0074】
しかしながら下層マスク付き上層パターンの等高線画像(テンプレート)の寸法が、エッジ膨張画像(探索画像)の寸法より大きい場合には、下層マスク付き上層パターンの等高線画像(テンプレート)の全体がマッチング領域となるのではなく、エッジ膨張画像(探索画像)に対応する領域がマッチング領域となる。探索画像に対するテンプレートの相対的位置が変化すると、マッチング領域におけるパターンは変化する。この場合には、マッチング領域における輝度の平均値は一定ではなく、マッチング領域が移動する毎に、変化する。マッチング領域における輝度の平均値は画像全体の輝度の平均値と等しくなるとは限らない。従って、マッチング領域の全ての画素の輝度に対して、平均輝度値からの偏差を計算すると、下層パターンのマスクの領域では偏差がゼロとならない。しかしながら、下層パターンのマスクの領域の輝度が、画像全体の輝度の平均値に近い値であれば、下層パターンのマスクが相関値に与える影響は小さい。
【0075】
下層マスク付き各レベルの上層パターンの等高線画像は、各レベルの上層パターンの等高線画像と、代表的なレベル(主に中央レベル)の下層パターンの等高線画像から生成する。即ち、各レベルの下層パターンの等高線画像ではなく、代表的なレベル(主に中央レベル)の下層パターンの等高線画像を用いる。これについて説明する。
【0076】
上層相関マップは、本来、上層パターンに関する情報のみを使用して生成すべきである。しかしながら、SEM画像には、上層パターンと下層パターンが共に現れている可能性がある。SEM画像に下層パターンが現れているときに、上層パターンに関する情報のみを用いてマッチングを行うと、エッジ膨張画像の下層パターン由来のエッジに対応した位置における相関値が本来の値より低くなる。そのため、マッチング位置の検出において誤差が生じる可能性がある。そこで、本発明では、上層相関マップを生成するとき、上層パターンばかりでなく下層パターンに関する情報を使用する。しかしながら、全レベルの上層パターンの等高線画像と全レベルの下層パターンを生成し、両者を組合せると、N×N個の下層マスク付き上層パターンの等高線画像が生成される。これをSEM画像から生成した全レベルのエッジ膨張画像とマッチングさせるのは困難である。そこで、本例では、全レベルではなく、代表的なレベル(主に中央レベル)の下層パターンの等高線画像を用いる。そのため、下層マスク付き上層パターンの等高線画像は、必ずしも正しい下層パターンのエッジの位置を含んでいる保障はない。しかしながら、上層パターンの等高線と同様に下層パターンは所定の幅の線によって描かれている。そのため、下層マスク付き上層パターンの等高線画像は、SEM画像から得たエッジ膨脹画像の下層パターンのエッジと完全に一致しなくても、ある程度の範囲で重なる。そのため、マッチング位置における相関値の低下を防止する効果が期待できる。
【0077】
図17に、上層マスク付き各レベルの下層パターンの等高線画像の例を示す。上述のように、上層マスク付き各レベルの下層パターンの等高線画像1701は、各レベルの下層パターンの等高線画像と、代表的なレベル(主に中央レベル)の上層パターンの等高線画像と、更に、代表的なレベル(主に中央レベル)の上層パターンの内部画像から生成する。上層マスク付き各レベルの下層パターンの等高線画像1701では、下層パターンの等高線が明るい輝度で描かれているのに対して、上層パターンのマスクはグレーの輝度で描かれている。尚、上層パターンのマスクは、代表レベルの上層パターンの等高線をグレーの輝度で描いたものである。上層パターンのマスクの輝度は画像全体の平均輝度値に等しい。
【0078】
上層パターンのマスクの輝度を画像全体の輝度の平均値に等しくする理由は、上述のように、下層パターンのマスクの輝度を画像全体の輝度の平均値に等しくする理由と同様である。但し、上層マスク付きの下層パターンの等高線画像では、上層パターンの内部にある下層パターンの等高線はグレーの輝度で描かれている。これはSEM画像では、上層パターンの内部にて下層パターンのエッジが現れていないことが多いためである。まったく現れていないと分かっていれば、上層パターンの内部にある下層パターンの等高線は描かなければよい。しかしながら、上層パターンの内部でも下層パターンのエッジが現れることもある。そのため、図17では上層パターンの内部にある下層パターンの等高線がグレーの輝度で描かれている。以上の理由より、上層パターンの内部を認識するために上層パターンの内部画像が必要となる。
【0079】
上述のように上層マスク及び下層マスクは、画像全体の平均輝度値で描かれるが、等高線画像(テンプレート)の寸法が、エッジ膨張画像(探索画像)の寸法より大きい場合には、等高線画像(テンプレート)のうち、エッジ膨張画像(探索画像)に対応する領域がマッチング領域となる。この場合には、マッチング領域における輝度の平均値は、画像全体の輝度の平均値と等しくなるとは限らない。この差は、マッチング領域における画素値の合計値に比べて十分小さい値ならば、マッチング位置における相関値の低下を招くことにはならないが、大きい場合は相関値の低下を招く。
【0080】
図18を参照して、探索画像の寸法がテンプレートの寸法より小さい場合について説明する。上層のデザインデータ1801は線状の上層パターン1801aを含む。下層のデザインデータ1802は線状の下層パターン1802aを含む。黒色の線は上層パターン1801a、及び、下層パターン1802aを示し、左側の白色の領域は、パターンの内部を示す。下層マスク付きの上層パターンの等高線画像1803では、上層パターン1803aと下層パターン1803bが現れているが、下層パターン1803bはグレーの輝度のマスクとなっている。
【0081】
一方、SEMエッジ膨脹画像(探索画像)1804の寸法は、下層マスク付きの上層パターンの等高線画像(テンプレート)1803の寸法より小さい。SEMエッジ膨脹画像1804には、上層パターンのエッジが現れているが、下層パターンのエッジは上層パターンの内部にあるため消えている。正規化相関値が最大となるマッチング位置を探すと、画像1805に示す正しいマッチング位置ではなく、画像1806に示すように誤ったマッチング位置が得られる。画像1805に示す正しいマッチング位置では、SEMエッジ膨脹画像1804の上層パターン1804aのエッジが下層マスク付きの上層パターンの等高線画像1803における上層パターン1803aのエッジに整合する。しかしながら、画像1806にて示すように誤ったマッチング位置では、SEMエッジ膨脹画像1804の上層パターン1804aのエッジが下層マスク付きの上層パターンの等高線画像1803における下層パターン1803aのエッジに整合している。
【0082】
この理由は、下層マスク付きの上層パターンの等高線画像1803上のマッチング領域の全画素の輝度平均値は、マッチング位置が異なると、変化するためである。例えば、正しいマッチング位置にある画像1805では、マッチング領域には、下層パターンの等高線と上層マスクの両者を含む。誤ったマッチング位置にある画像1806では、マッチング領域には、上層マスクのみが含まれる。従って、マッチング領域における輝度平均値は、両者において異なる。一方、SEMエッジ膨脹画像1804には、上層パターンのエッジのみが現れている。相関値を計算すると、画像1806に示すように誤ったマッチング位置において最大値となったものである。このようなマッチング位置の誤検出を回避するには、マッチング領域における輝度値のシグマが小さくなりすぎないようにする必要がある。正規化相関の計算では、テンプレートとそれに対応する探索画像上のマッチング領域の共分散をテンプレートのシグマとマッチング領域のシグマで割っている。例えば、このマッチング領域のシグマに対して画像全体のシグマを一定割合でブレンドすることでこの弊害はかなり抑制できる。
【0083】
図19を参照して、等高線に関する言葉の定義を説明する。等高線1901は、一般に、細い線とは限らず、所定の幅を有する帯状の領域である。従って、等高線を表す帯状の領域内では、画素値が一定とは限らない。画素値が1以上(0より大きい)であれば等高線を表す領域、即ち、等高線であるとする。等高線の中央の線を等高線中央線1902という。各層のパターンの等高線の内部とは、等高線中央線より(デザイン上)内側の領域を指す。
【0084】
図20は、下層マスク付き上層パターンの等高線画像(図16)における各画素の画素値の決め方を表す。二分木のノードは画素の条件を表し、矢印の先にその条件に該当する画素の画素値が記述されている。先ず、ステップS2001にて、上層パターンの等高線であるか否かを判定する。上層パターンの等高線である場合には、上層パターンの等高線画像の対応画素値とする。上層パターンの等高線でない場合には、ステップS2002にて、下層パターンの等高線であるか否かを判定する。下層パターンの等高線でない場合には、画素値を0(ゼロ)とする。下層パターンの等高線である場合には、グレー領域とする。グレー領域の画素値は、画像全体の平均輝度値であり、グレー領域以外の画素値が全て決まらなければ求められない。そこで、グレー領域である場合には、グレー領域であることのみを記憶しておき、その画素値は最後に計算する。
【0085】
図21を参照して、下層マスク付き上層パターンの等高線画像(図16)の生成方法を説明する。ステップS2101にて、注目画素が上層パターンの等高線ではなく、下層パターンの(中央レベル)の等高線である場合では、Gray画像を1、上層Mask画像を0で描画する。ステップS2102にて、ステップS2101の場合以外では、Gray画像を0、上層Mask画像を、上層パターンの等高線画像における画素値で描画する。
【0086】
ステップS2103にて、Gray画像における画素値の合計(即ち、Gray領域の画素数)Gを算出する。ステップS2104にて、上層Mask画像における画素値の合計Mを算出する。ステップS2105にて、上層Mask画像のシグマGS_tを算出する。ステップS2106にて、Gray画像における画素値1のとき(即ち、Gray領域)、上層Mask画像をM/(全画素数−G)で描画する。
【0087】
上層Mask画像が最終的に下層マスク付き上層パターンの等高線画像となる。Gray画像は処理過程で使用するテンポラリーな画像である。途中のステップS2105にて画像全体のシグマを求めている。この値は画像探索部に入力され正規化相関値を計算する際にテンプレート対応領域のシグマに対して一定割合でブレンドされる。
【0088】
図22は、上層マスク付き下層パターンの等高線画像(図17)における各画素の画素値の決め方を表す。二分木のノードは画素の条件を表し、矢印の先にその条件に該当する画素の画素値が記述されている。先ず、ステップS2201にて、下層パターンの等高線であるか否かを判定する。下層パターンの等高線である場合には、ステップS2202にて、上層パターンの等高線であるか否かを判定する。上層パターンの等高線でない場合には、ステップS2203にて、上層パターンの内部であるか外部であるかを判定する。
【0089】
下層パターンの等高線であり、且つ、上層パターンの等高線である場合には、下層パターンの等高線画像の対応画素値とする。下層パターンの等高線であるが、上層パターンの等高線でない場合であって、上層パターンの外部である場合には、下層パターンの等高線画像の対応画素値とする。下層パターンの等高線であるが、上層パターンの等高線でない場合であって、上層パターンの内部である場合には、グレー領域とする。
【0090】
ステップS2201にて、下層パターンの等高線でないと判定した場合には、ステップS2204にて、上層パターンの等高線であるか否かを判定する。上層パターンの等高線である場合には、グレー領域とする。上層パターンの等高線でない場合には、画素値を0(ゼロ)とする。
【0091】
図23を参照して、上層マスク付き下層パターンの等高線画像(図17)の生成方法を説明する。ステップS2301にて、注目画素が下層パターンの等高線ではなく、上層パターン(中央レベル)の等高線である場合、又は、下層パターンの等高線であるが、上層パターン(中央レベル)の内部の場合では、Gray画像を1、下層Mask画像を0で描画する。ステップS2302にて、ステップS2101の場合以外では、Gray画像を0、下層Mask画像を、下層デザインまるめ画像における画素値で描画する。
【0092】
ステップS2303にて、Gray画像における画素値の合計(即ち、Gray領域の画素数)Gを算出する。ステップS2304にて、下層Mask画像における画素値の合計Mを算出する。ステップS2305にて、下層Mask画像のシグマGS_lを算出する。ステップS2306にて、Gray画像における画素値1のとき(即ち、Gray領域)、下層Mask画像をM/(全画素数−G)で描画する。
【0093】
下層Mask画像が最終的に上層マスク付き下層パターンの等高線画像となる。Gray画像は処理過程で使用するテンポラリーな画像である。途中のステップS2305にて画像全体のシグマを求めている。この値は画像探索部に入力され正規化相関値を計算する際にテンプレート対応領域のシグマに対して一定割合でブレンドされる。
【0094】
図24は、図15に示した本発明による画像処理装置の第2の例の動作を視覚的に表している。デザインデータ2401から、下層マスク付きの第1〜第Nレベルの上層パターンの等高線画像2402と上層マスク付きの第1〜第Nレベルの下層パターンの等高線画像2403を生成する。また、探索画像として入力したSEM画像から第1〜第Mレベルのエッジ膨張画像2404を生成する。下層マスク付きの第1〜第Nレベルの上層パターンの等高線画像2402と第1〜第Mレベルのエッジ膨張画像2404から、M×N個の上層相関マップ2405が得られる。上層マスク付きの第1〜第Nレベルの下層パターンの等高線画像2403と第1〜第Mレベルのエッジ膨張画像2404から、M×N個の下層相関マップ2406が得られる。
【0095】
M×N個の上層相関マップ2405から、3次元上層相関マップ2407が得られる。M×N個の下層相関マップ2406から、3次元下層相関マップ2408が得られる。上層相関マップ2405と下層相関マップ2406を合成すると、3次元合成相関マップ2409が得られる。この3次元合成相関マップ2409より、相関値が高い点を候補点とする。
【0096】
図24にて説明したように、本例の画像処理装置では、図16及び図17に示したマスク付きの等高線画像を、上下層別々にマッチングしてから相関マップベースで上下層を合成した。しかしながら、この方法では、下層の影響を抑えた上層相関マップと上層の影響を抑えた下層相関マップを合成するため、合成相関マップにおける正解マッチング位置における相関値は低くなる。また、上下層パターンのマスクは代表的なレベルの等高線から作っているので正確ではない。
【0097】
図25はデザインデータ(設計データ)のみから生成した理想に近い上下層パターンの合成等高線画像の例を示す。ここで、上層パターンの等高線のレベル数をN、下層パターンの等高線のレベル数をN、下層パターンのx方向ズレのレベル数をNx、下層パターンのy方向ズレのレベル数をNyとする。N×N×Nx×Ny枚の合成等高線画像を用意し、その各々とエッジ膨張画像をマッチングする必要がある。しかしながら、これらのレベル数は、通常既知ではない。従って、N×N×Nx×Ny枚の合成等高線画像を生成して、マッチングを行うと、現実的な時間では処理できない可能性がある。
【0098】
そこで、本発明によると以下に説明するように、予備マッチング行い、その後に高精度マッチングを行う。予備マッチングは、図5を参照して説明したマッチングと同様な手法を用いる。最終的に、探索画像におけるテンプレートのマッチング位置の複数の候補を求める。即ち、エッジ膨張画像における上層パターンのマッチング位置の候補の座標、各候補を得た際の上層パターンの等高線のレベル、及び、下層パターンの等高線のレベルを求める。
【0099】
図26は、N×N枚の合成等高線画像の例を示す。即ち、デザインデータ2601から、上層パターンの第1〜第Nレベルの等高線画像2602と下層パターンの第1〜第Nレベルの等高線画像2603を生成する。上層パターンの等高線画像2602と下層パターンの等高線画像2603を合成すると、N×N枚の合成等高線画像2604が生成される。しかしながら、予備マッチングを行うことによって、上層パターンの等高線のレベルと下層パターンの等高線のレベルが知られる。従って、N×N枚の合成等高線画像から、1枚の合成等高線画像を決めることができる。
【0100】
図27は、上下層合成等高線画像(図25)における各画素の画素値の決め方を表す。二分木のノードは画素の条件を表し、矢印の先にその条件に該当する画素の画素値が記述されている。先ず、ステップS2701にて、上層パターンの内部であるか外部であるかを判定する。上層パターンの内部である場合には、ステップS2702にて、上層パターンの等高線であるか否かを判定する。ここで、上層パターンの等高線でない場合には、更に、ステップS2703にて、下層パターンの等高線であるか否かを判定する。
【0101】
以上の判定にて、上層パターンの内部であり、且つ、上層パターンの等高線である場合には、上層パターンの等高線画像の画素値で描画する。上層パターンの内部であるが、上層パターンの等高線でなく、更に、下層パターンの等高線である場合には、グレー領域とする。上層パターンの内部であるが、上層パターンの等高線でなく、下層パターンの等高線でない場合には、画素値0で描画する。
【0102】
ステップS2702の判定にて、上層パターンの外部である場合には、ステップS2704にて、更に、2つに分岐する。即ち、上層パターンの等高線であるか場合、又は、下層パターンの等高線である場合、上下層エッジのMAX画素値で描画する。上層パターンの等高線でなく、且つ、下層パターンの等高線でない場合に、画素値0で描画する。また、層強度を反映させたい場合は上層パターンの等高線画像、下層パターンの等高線画像の全画素値に予め層強度をかけておけばよい。
【0103】
図28を参照して、上下層合成等高線画像(図27)の生成方法を説明する。ステップS2801にて、上層パターンの等高線画像を合成エッジ画像にコピーする。ステップS2802にて、Gray画像の0をクリアする。ステップS2803にて、注目画素が上層パターンの内部であり、且つ、上層パターンの等高線ではなく、下層パターンの等高線である場合、Gray画像を1で描画する。ステップS2804にて、注目画素が上層パターンの外部であり、下層パターンの等高線である場合、上下層パターンの等高線画像の対応の画素の最大値(2つのうち大きいほう)で、合成等高線画像を描画する。
【0104】
ステップS2805にて、Gray画像における画素値の合計(即ち、Gray領域の画素数)Gを算出する。ステップS2806にて、下層Mask画像における画素値の合計Mを算出する。ステップS2807にて、下層Mask画像のシグマGS_cを算出する。ステップS2808にて、Gray画像における画素値1のとき(即ち、Gray領域)、下層Mask画像をM/(全画素数−G)で描画する。
【0105】
図29は本発明による画像処理装置の第3の例を説明する。本例の画像処理装置は、予備マッチングを行い、その後に、限定高精度マッチングを行うように構成されている。予備マッチングは、図1に示した本発明による画像処理装置の第1の例の動作で説明したテンプレート・マッチングと同様の動作によって行なわれる。即ち、図24を参照して説明したように、予備マッチングでは、上層及び下層のデータの各々とSEM画像の間でテンプレート・マッチングを行い、上層及び下層の相関マップを生成し、両者を合成して合成相関マップを生成する。
【0106】
一方、限定高精度マッチングでは、上層データと下層データを合成して、上下層合成データを生成し、この上下層合成データとSEM画像の間でテンプレート・マッチングを行い、マッチング位置の候補を得る。
【0107】
本例の画像処理装置は、予備マッチング行うために、図1に示した本発明の画像処理装置の第1の例の構成を含む。ここでは、第1の例の構成と異なる部分を説明する。本例の画像処理装置は、上層等高線画像選択部59、上層内部画像選択部60、下層等高線画像選択部61、層間ズレ付合成デザイン画像生成部62、SEMエッジ画像選択部63及びマッチング実行部55を有する。層間ズレ付合成デザイン画像生成部62は、X方向及びY方向のズレ付合成等高線画像描画部621〜624を有する。
【0108】
予備マッチングによって、前段候補の上層レベル情報2905、前段候補の下層レベル情報2906、前段候補の膨張レベル情報2907、及び、前段候補の位置情報2908を得る。前段候補の上層レベル情報2905は、テンプレート候補として得られた上層パターンの等高線画像のレベルに関する情報を含む。前段候補の下層レベル情報2906は、テンプレート候補として得られた下層パターンの等高線画像のレベルに関する情報を含む。前段候補の膨張レベル情報2907は、探索画像として得られたエッジ膨張画像のレベルに関する情報を含む。前段候補の位置情報2908はマッチング位置の候補の情報を含む。
【0109】
各レベルの上層パターンの等高線画像2901、各レベルの上層パターンの内部画像2902、各レベルの下層パターンの等高線画像2903、及び、各レベルのエッジ膨張画像2904は、予備マッチングを行う際に生成したものである。
【0110】
上層等高線画像選択部59は、前段候補の上層レベル情報2905を用いて、所定レベルの上層パターンの等高線画像を選択し、それを層間ズレ付合成デザイン画像生成部62に供給する。上層内部画像選択部60は、前段候補の上層レベル情報2905を用いて、所定レベルの上層パターンの内部画像を選択し、それを層間ズレ付合成デザイン画像生成部62に供給する。下層等高線画像選択部61は、前段候補の下層レベル情報2906を用いて、所定レベルの下層パターンの等高線画像を選択し、それを、層間ズレ付合成デザイン画像生成部62に供給する。層間ズレ付合成デザイン画像生成部62は、各層間ズレ付きの合成等高線画像を生成し、それをマッチング実行部55の画像探索部551に供給する。各層間ズレ付きの合成等高線画像の例は、後に図30を参照して説明する。
【0111】
SEMエッジ画像選択部63は、前段候補の膨張レベル情報2907を用いて、所定レベルのエッジ膨張画像を選択し、それをマッチング実行部55の画像探索部551に供給する。マッチング実行部55の画像探索部551は、前段候補の位置情報2908用いて、各層間ズレ付きの合成等高線画像と所定レベルのエッジ膨張画像の間のマッチングを行う。このマッチングは、前段候補の位置情報2908から得られた位置の周辺に限定される。これによりマッチングの高速化が可能となる。
【0112】
図30を参照して、層間ズレ付合成デザイン画像生成部(図29)の動作の例を説明する。層間ズレ付合成デザイン画像生成部62は、上述のように、上層等高線画像選択部59によって選択された所定レベルの上層パターンの等高線画像3002と、下層等高線画像選択部61によって選択された所定レベルの下層パターンの等高線画像を入力する。層間ズレ付合成デザイン画像生成部62は、層間ズレを考慮して、両者を合成する。上層パターンに対する下層パターンのズレの例が示されている。下層パターンのX方向のズレは、正の方向、負の方向、及び、ゼロの場合が可能である。下層パターンのY方向のズレは、正の方向、負の方向、及び、ゼロの場合が可能である。上層パターンに対する下層パターンのズレは、これらのズレを組み合せたものである。
【0113】
図31はマッチング実行部の画像探索部551(図29)の構成例を示す。本例の画像探索部551は、画像探索グリッド5515とマッチング候補修正部5516を有する。画像探索グリッド5515はX×Y個の第(x,y)ズレ画像探索セル5511を有する。第(x,y)ズレ画像探索セル5515は、層間ズレ合成等高線画像群とエッジ膨張画像群を入力し、両者のマッチングを行い、層間ズレ相関マップ群を生成する。このマッチングの範囲は、前段候補の位置情報から得られた位置の周辺に限定される。尚、層間ズレ合成等高線画像群はX×Y個の層間ズレ合成等高線画像を纏めたものである。エッジ膨張画像群はM個のエッジ膨張画像を纏めたものである。層間ズレ相関マップ群は、マッチング候補修正部5516に供給される。マッチング候補修正部5516の動作は、後に、図32を参照して説明する。
【0114】
図32を参照して、マッチング候補修正部5516(図31)の動作を説明する。マッチング候補修正部5516は、画像探索グリッド5515から供給された層間ズレ相関マップ群を用いて、マッチング候補を修正する。ここでは前段候補の位置情報から得られた位置の周囲の9画素の範囲が、マッチングの範囲として設定されている。層間ズレの種類として、(-1,-1), (0,-1), (+1,-1), (-1,0), (0,0), (+1,0), (-1, +1), (0, +1), (+1, +1)ズレの9種類が示されている。このような層間ズレを有する合成等高線画像の相関マップが得られた場合を考える。
【0115】
本例のマッチング候補修正部5516は、マッチング位置方向の2次元、層間ズレ方向の2次元の計4次元の方向性を持つ81個(=3×3×3×3個)のデータを補間する。それによって、予備マッチング直後のマッチング候補を高精度なマッチング位置、層間ズレ量、信頼性の高いスコアで修正することができる。
【0116】
ここまで本発明による画像処理装置のテンプレート・マッチングの動作を説明した。本発明の範囲は、このような画像処理装置を備えた検査装置及び検査方法も包含する。検査/計測システムの例は、特開2007-5818に開示されている。
【0117】
以上本発明の例を説明したが本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは、当業者によって容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0118】
21…デザイン画像生成部、22…SEMエッジ画像生成部、23…マッチング実行部、51…層分離部、52…上層デザイン画像生成部、53…下層デザイン画像生成部、54…SEMエッジ画像生成部、55…マッチング実行部、59…上層等高線画像選択部、60…上層内部画像選択部、61…下層等高線画像選択部、62…層間ズレ付合成デザイン画像生成部、63…SEMエッジ画像選択部、
101…ウェーハ、211−1〜211−N…等高線画像描画部、221…エッジ強調部、231…画像探索部、232…候補テーブル、521−1〜521−N…等高線画像描画部、531−1〜531−N…等高線画像描画部、541…エッジ強調部、542−1〜542−M…エッジ膨張部、551…画像探索部、552…候補テーブル、
1011…対象物、1012…テンプレート選択用画像、1013…パターン、1014…テンプレート、1021…対象物、1022…探索画像、1023、1024…パターン、2311−1〜2311−N…画像探索部、2312−1〜2312−N…相関マップ、2313…マッチング候補抽出部、5511…第m,nレベル画像探索セル、55111…第m,nレベル画像探索部、55112…第m,nレベル相関マップ、
【技術分野】
【0001】
本発明は、テンプレート・マッチングを行うための画像処理技術に関し、特に多層パターンに対してテンプレート・マッチングを行うための画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
対象画像の中から、特定の形状(テンプレート)を探索する技術はテンプレート・マッチングとして広く用いられている。例えば、非特許文献1を参照されたい。
【0003】
走査式電子顕微鏡を用いた半導体ウェーハ上のパターンの計測では、計測位置を求める必要がある。計測位置の大まかな位置合わせはウェーハを載せたステージの移動によって行われる。しかしながら、ステージの位置決め精度では電子顕微鏡の高い倍率で撮影された画像上で大きなズレが生じる。このズレを補正して正確な位置での計測を行うためにテンプレート・マッチングが行われる。先ず、計測位置に近いユニークなパターンをテンプレートとして登録する。次に、テンプレートから計測位置までの相対座標を記憶する。電子顕微鏡画像においてテンプレート・マッチングを行う。即ち、画像内のパターンとテンプレートをマッチングさせる。こうして、マッチング位置が得られたら、そこから記憶しておいた相対座標分移動した位置が計測位置となる。こうして、テンプレート・マッチングによって、電子顕微鏡画像上における計測位置が正確に得られる。
【0004】
図1を参照して、従来の走査式電子顕微鏡(SEM)におけるテンプレート・マッチングを説明する。まず、ウェーハ101上の第1の対象物1011を撮影し、その計測位置を測定し、記憶する。こうして撮影した画像をテンプレート選択用画像1012という。テンプレート選択用画像1012の中から、ユニークなパターン1013を選択し、それを登録する。これを、テンプレート1014という。次に、第2の対象物1021を撮影する。第2の対象物1021は第1の対象物1011と同じウェーハ上の同一パターンを有する別の場所、例えば同じウェーハ上に繰り返し形成されているダイの同一部分であってもよいし、異なるウェーハ上の同一パターンを有する場所でもよい。
【0005】
第2の対象物1021を撮影した画像を探索画像1022という。次に、探索画像1022の中からテンプレート1014とマッチするパターン1023、1024を探す。テンプレート選択用画像1012と探索画像1022の間には、ステージの位置決め誤差分のズレがある。このズレをテンプレート・マッチングで補正する。テンプレート・マッチングの結果、テンプレート1014との類似度が高い箇所がマッチング位置の候補となるが、これらの候補の中から最もマッチング位置に相応しい箇所が最終的なマッチング位置となる。
【0006】
しかし、このような方法では、テンプレート1014を生成するために、テンプレート選択用画像1012を用意する必要がある。更に、撮影及び諸条件の登録を行うために一時的に走査式電子顕微鏡システムを占有しなければならない。そこで、特許文献1には、テンプレート1014を生成するために、設計(CAD、デザイン)データを用いる方法が開示されている。
【0007】
近年、半導体加工の微細化が進み、半導体ウェーハ上に、設計通りのパターンを形成することが難しくなってきている。半導体ウェーハ上のパターンに歪みがあると、テンプレートと探索画像中の目的のパターンの間にて、歪みに相当する差異が生じる。そのため、テンプレートとして、修正したデザインデータを使用する必要が生じている。しかしながら、この歪みが僅かであれば、テンプレート・マッチングにおいてそれを許容する必要がある。
【0008】
デザインデータは線分による閉図形の集合として構成されている。そのため、これらの閉図形の輪郭(エッジ)を描画したデザイン画像を、テンプレートとして使用することができる。半導体ウェーハ上のパターンを走査式電子顕微鏡で撮影することにより得た探索画像も、エッジによって構成されている。テンプレート・マッチングを行う前に、エッジ画像の膨張化及び平滑化処理を行うことによって、スケーリングなどの歪みを許容し安定したマッチングが図れることが例えば非特許文献2に開示されている。また、特許文献1には、CADデータを用いたマッチングにおいて、テンプレートと電子顕微鏡で撮影することにより得た探索画像のエッジの平滑化が開示されている。一方、特許文献2には、デザインデータから複数レベルの等高線画像を作り、夫々のレベルの等高線画像と走査式電子顕微鏡によるエッジ強調画像をマッチングさせ、最もよくマッチングしたレベルでマッチング位置を決定することで、歪みを許容する手法が開示されている。
【0009】
図2を参照して、従来の画像処理装置の例を説明する。この画像処理装置は、デザインデータ(設計データ)から等高線画像を生成するデザイン画像生成部21、探索画像としてSEM画像を入力し、エッジ処理を行うSEMエッジ画像生成部22、及び、等高線画像(テンプレート)とエッジ強調処理されたSEM画像のマッチングを行うマッチング実行部23を有する。
【0010】
デザイン画像生成部21は、第1〜第Nレベル(但し、Nは予め設定されている自然数)の等高線画像描画部211−1〜211−Nを有する。各等高線画像描画部は、デザインデータから等高線画像を生成する。等高線画像は、実際に生成されたパターンに生じる歪み(太り、細り、角の丸まり)を模倣して、デザインデータを修正したものである。特許文献2には、デザインデータから等高線画像を生成する手法の例が記載されている。この手法によると、デザインデータの塗潰し画像において、同一輝度値の画素を結んだ閉曲線群を生成する。この閉曲線を等高線画像と呼ぶ。こうして生成された各レベルの等高線画像の等高線は、適当な膨張や平滑化が施されている。
【0011】
SEMエッジ画像生成部22は、エッジ強調部221を有する。エッジ強調部221は、探索画像として、SEM画像を入力し、SEM画像に対してエッジ強調を行う。エッジ強調の手法としてはGaussフィルタを施した後にソーベルフィルタを施す方法などが一般的に知られている。
【0012】
マッチング実行部23は、画像探索部231、及び、候補テーブル232を有する。画像探索部231は、エッジ強調されたSEM画像と等高線画像をマッチングさせ、マッチング位置の候補を求める。候補テーブル232は、マッチングのスコアが高かった(より良くマッチした)位置などの情報をスコア順に記憶する。マッチング実行部は、最上位候補の位置をマッチング位置として出力する。
【0013】
図3を参照して、画像探索部231の例を説明する。画像探索部231は、第1〜第Nレベルの画像探索部2311−1〜2311−N、第1〜第Nレベルの相関マップ2312−1〜2312−N、及び、マッチング候補抽出部2313を有する。各レベルの画像探索部は、各レベルの等高線画像を入力し、エッジ強調処理されたSEM画像との間でマッチングを行う。マッチングの結果、マッチング位置毎のスコアからなる相関マップが得られる。相関マップは、各レベルの相関マップ2312−1〜2312−Nに格納される。マッチング候補抽出部2313は、各レベルの相関マップから候補テーブルを生成する。
【0014】
こうして、特許文献2に記載された例では、デザインデータとSEM画像の間にて、ある程度歪みを許容したテンプレート・マッチングを実現している。このように、エッジを太らせることで、或いは、予想される変形を予め施した画像を必要ならば複数使うことで、ある程度歪みを許容したテンプレート・マッチングが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−5818
【特許文献2】特開2007-079982
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Azriel Rosenfeld、Avinash C. Kak著Digital Picture Processing、8.3節
【非特許文献2】「輪郭点情報を用いた高速テンプレートマッチングアルゴリズム」電子情報通信学会論文誌Vol.J74-D2 No.10 pp.1419-1427、2.2節
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
近年、半導体パターンの微細化の傾向が更に進んでいる。それに伴い、半導体パターンとして、上層パターンと下層パターンを重ね合わせて1つのパターンを生成する多層パターンが利用されている。このような多層パターン型の配線パターンでは、SEM画像において、上層パターンと下層パターンの両者の像が表示され、しかも上層と下層でパターンの変形度合いが異なっていたり、上下層パターンの位置がズレているケースが頻発している。
【0018】
図4に、多層パターンのデザインデータ401と、このデザインデータ401に基づいて生成したウェーハ上の配線パターンのSEM像402の例を示す。デザインデータ401は、下層パターン4011と上層パターン4012を有する。同様に、SEM画像402は下層パターン4021と上層パターン4022を有する。上層パターン同士を比較すると、SEM画像402では、上層パターン4022の形状が膨らんでいるのが判る。一方、下層パターン同士を比較すると、SEM画像402では、下層パターン4021の形状が細っている。
【0019】
更に、上層パターンと下層パターンの間の相対的な位置関係は、デザインデータとSEM画像では異なる。デザインデータ401では、上層パターン4012の中央に下層パターン4011が配置され、下層パターン4011の中央に上層パターン4012が配置されている。一方、SEM画像502では、上層パターン4022は下層パターン4021の中央よりズレている。
【0020】
これらの変形及びズレを、全てエッジを太らせることで対処しようとすると、エッジの太さをかなり大きくする必要がある。エッジの太さを大きくすると、マッチングの位置精度が低下する。図2に示した従来の画像処理装置において、各層毎に、予想される変形を予め施したNレベルの等高線画像を用意する必要がある。例えば、1層の時はN回のマッチングを行って最終的に一番良くマッチした位置を決めればよいが、2層になると上層でNレベル、下層でNレベル、それに加え上層と下層のx方向のズレをNレベル、上層と下層のy方向のズレをNレベル考慮したとするとNの4乗回のマッチングを実行することなる。対象とする層数が増えるにつれ爆発的に処理時間が長くなる。
【0021】
このように従来の手法では多層のパターンにおいて正しく、精度よく、現実的な処理時間でマッチングを行うことはできない。
【0022】
本発明の目的は、多層パターンに対してテンプレート・マッチングを短時間で且つ正確に行うことができる画像処理方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明によると、上層パターンと下層パターンをそれぞれSEM画像の間でパターン・マッチングを行ない、上層相関マップと下層相関マップを生成する。上層相関マップと下層相関マップを合成して合成相関マップを生成する。合成相関マップより、相関値が極大値を取る点を、マッチング位置とする。
【0024】
本発明によると、このような予備マッチングの結果を利用して、再度、高精度マッチングを行う。高精度マッチングでは、上層パターンと下層パターンを合成し、合成画像を生成する。この合成画像は層間ズレ情報が含まれている。この層間ズレ付き合成画像とSEM画像の間でテンプレート・マッチングを行う。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、テンプレート・マッチングを用いて多層パターンの検査を短時間で且つ正確に行うことができる検査方法及び装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来の走査式電子顕微鏡(SEM)におけるテンプレート・マッチングを説明するための説明図である。
【図2】従来の画像処理装置の例を説明するための説明図である。
【図3】従来の画像処理装置の画像探索部の例を説明するための説明図である。
【図4】多層パターンのデザインデータと配線パターンのSEM像の例を示す図である。
【図5】本発明による画像処理装置の第1の例を説明する図である。
【図6】本発明による画像処理装置の第1の例の画像探索部の第m,nレベル画像探索セルの構成例を示す図である。
【図7】本発明による画像処理装置の第1の例の画像探索部が実行するテンプレート・マッチングの例を説明する図である。
【図8】本発明による画像処理装置の第1の例の画像探索部において、相関マップからマッチング位置を決定する方法の例を説明する図である。
【図9】本発明による画像処理装置の第1の例の画像探索部の構成例を示す図である。
【図10】本発明による画像処理装置の第1の例の画像探索部(図9)のマッチング候補抽出部の構成例を示す図である。
【図11】本発明による画像処理装置の第1の例の画像探索部のマッチング候補抽出部(図10)の上下層相関マップ合成部の動作の一例を示す図である
【図12】本発明による画像処理装置の第1の例の画像探索部のマッチング候補抽出部(図10)の上下層相関マップ合成部の動作の別の一例を示す図である。
【図13】図11に示した上下層相関マップの第1の合成方法と、図12に示した上下層相関マップの第2の合成方法を比較するための説明図である。
【図14】図11に示した上下層相関マップの第1の合成方法と、図12に示した上下層相関マップの第2の合成方法を比較するための説明図である。
【図15】本発明による画像処理装置の第2の例を説明する図である。
【図16】下層マスク付き上層パターンの等高線画像の例を示す図である。
【図17】上層マスク付き下層パターンの等高線画像の例を示す図である。
【図18】マッチング領域における輝度の平均値が、画像全体の輝度の平均値と異なる場合を説明する図である。
【図19】等高線に関する言葉の定義を説明する図である。
【図20】下層マスク付き上層パターンの等高線画像(図16)における各画素の画素値の決め方を表す図である。
【図21】下層マスク付き上層パターンの等高線画像(図16)の生成方法を説明する図である。
【図22】上層マスク付き上層パターンの等高線画像(図17)における各画素の画素値の決め方を表す図である。
【図23】上層マスク付き下層パターンの等高線画像(図17)の生成方法を説明する図である。
【図24】本発明による画像処理装置の第2の例の動作を視覚的に示した図である。
【図25】デザインデータのみから生成した上下層パターンの合成等高線画像の例を示す図である。
【図26】N×N枚の合成等高線画像の例を示す図である。
【図27】上下層合成等高線画像(図25)における各画素の画素値の決め方を表す図である。
【図28】上下層合成等高線画像(図25)の生成方法を説明する図である。
【図29】本発明による画像処理装置の第3の例を説明する図である。
【図30】本発明による画像処理装置の第3の例の層間ズレ付合成デザイン画像生成部(図29)の動作の例を説明する図である。
【図31】本発明による画像処理装置の第3の例のマッチング実行部の画像探索部(図29)の構成例を示す図である。
【図32】本発明による画像処理装置の第3の例の画像探索部のマッチング候補修正部(図31)の動作を説明する図である。
【図33】本発明による検査装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図33を参照して、本発明の検査装置の構成例を説明する。本例の検査装置は、走査型電子顕微鏡3301、画像処理装置3302、表示装置3303、制御用計算機3304、及び、入力装置3305を有する。走査型電子顕微鏡3301は、1次電子線を生成する電子銃33011、1次電子線33012を試料33014上にて走査させる偏向器33013、試料33014からの2次電子を検出する2次電子検出器33015、及び、2次電子検出器33015から検出信号を増幅する増幅器33016を有する。画像処理装置3302は、増幅器33016によって増幅された2次電子検出信号からSEM画像を生成し、それをテンプレートとマッチングさせる。表示装置3303は、各種の画像データを表示する。制御用電子計算機3304はこれらの装置を制御する。入力装置3305は、キーボード、マウス等を備える。
【0028】
画像処理装置3302は、増幅器33016からの信号をAD変換するAD変換回路、デジタル画像データを格納する画像メモリ、各種の画像処理を行う画像処理回路、表示制御を行う表示制御回路を備えた画像処理プロセッサによって構成されてよい。
【0029】
試料33014は、多層パターンが形成された半導体ウェーハである。画像処理装置3302は、テンプレート・マッチングを用いて多層パターンの検査/測定を行う。半導体ウェーハの多層パターンの線幅を計測する場合、SEM画像より、計測部分を見つけ出す必要がある。計測部分を見つけ出すのに、正規化相関法が使われる。正規化相関法では、テンプレートとSEM画像の相関マップを生成し、相関値が高い点を、マッチング位置とする。また、テンプレート・マッチングでは、最適なテンプレートを選択する必要がある。本発明によると、画像処理装置3302は、最適なテンプレートを選択し、正規化相関法によって、マッチング位置を検出する。
【0030】
図5を参照して、本発明による画像処理装置の第1の例を説明する。本例の画像処理装置は、デザインデータ(設計データ)から上層パターンデータと下層パターンデータを分離する層分離部51、上層パターンデータを入力し、上層パターンの等高線画像を生成する上層デザイン画像生成部52、下層パターンデータを入力し、下層パターンの等高線画像を生成する下層デザイン画像生成部53、探索画像としてSEM画像を入力し、エッジ処理を行うSEMエッジ画像生成部54、及び、テンプレートとSEM画像のマッチングを行うマッチング実行部55を有する。
【0031】
画像処理装置は、テンプレート・マッチングに用いるテンプレートとして、デザインデータ(設計データ)を入力する。デザインデータは、複数の積層した配線パターンのための多層パターンを含む。
【0032】
上層デザイン画像生成部52は、第1〜第Nレベルの等高線画像描画部521−1〜521−Nを有する。同様に、下層デザイン画像生成部53は、第1〜第Nレベルの等高線画像描画部531−1〜531−Nを有する。レベル数Nは自然数であるが、1でもよい。上層デザイン画像生成部52に含まれる等高線画像描画部のレベル数と下層デザイン画像生成部53に含まれる等高線画像描画部のレベル数は、本例では、同一であるが、異なってもよい。ここでは、上層デザイン画像生成部52と上層デザイン画像生成部53の2層のデザイン画像生成部を有するように構成されているが、上層、中層、及び、下層の3層のデザイン画像生成部を有するように構成してもよい。
【0033】
SEMエッジ画像生成部54は、エッジ強調部541、と、第1〜第Mレベルのエッジ膨張部542−1〜542−Mを有する。マッチング実行部55は、画像探索部551と候補テーブル552を有する。Mは自然数であるが、1でもよい。
【0034】
デザインデータは層分離部51によって、上層と下層のデザインデータ(上層パターン、下層パターン)に分離され、夫々上層デザイン画像生成部52と下層デザイン画像生成部53に供給される。上層のデザインデータ(上層パターン)は、第1〜第Nレベルの等高線画像描画部521−1〜521−Nにブロードキャストされる。下層のデザインデータ(下層パターン)は、第1〜第Nレベルの等高線画像描画部531−1〜531−Nにブロードキャストされる。
【0035】
第1〜第Nレベルの等高線画像描画部521−1〜521−Nによって、上層のデザインデータ(上層パターン)のN枚の等高線画像が生成される。第1〜第Nレベルの等高線画像描画部531−1〜531−Nによって、下層のデザインデータ(下層パターン)のN枚の等高線画像が生成される。合計2N枚の等高線画像はマッチング実行部55の画像探索部551に供給される。
【0036】
一方、探索画像であるSEM画像は、SEMエッジ画像生成部54のエッジ強調部541に供給される。エッジ強調部541はSEM画像からSEMエッジ強調画像を生成し、それを第1〜第Mレベルのエッジ膨張部542−1〜542−Mにブロードキャストする。第1〜第Mレベルのエッジ膨張部542−1〜542−Mは、そのレベルに応じてSEMエッジ強調画像を膨張させ、第1〜第Mレベルのエッジ膨張画像を、それぞれ生成する。第1〜第Mレベルのエッジ膨張画像は、マッチング実行部55の画像探索部551に供給される。ここで、エッジ膨張画像のレベルとは、膨張の度合いを示す。高いレベルのエッジ膨張画像ほどSEMエッジ強調画像に対して大きな膨張が施されている。膨張とは輝度の高い部分(ここではエッジ)を膨らませる処理である。例えば、第mレベルのエッジ膨張画像を生成する場合、最大値フィルタとGaussフィルタを交互にm回施す処理を行ってよい。
【0037】
マッチング実行部55の画像探索部551は、各レベルの上下層パターンの等高線画像とSEM画像から生成した各レベルのエッジ膨張画像を夫々組み合わせ、マッチングしてマッチング候補点群を生成し、それを候補テーブル552に登録する。画像探索部551は、各レベルの等高線画像と各レベルのエッジ膨張画像の組み合わせ数に対応した画像探索セルを有するが、これについては図6を参照して説明する。
【0038】
図6は、画像探索部551(図5)の第m,nレベル画像探索セル5511の構成例を示す。画像探索部551は、第1〜第Nレベルの上下層パターンの等高線画像と第1〜第Mレベルのエッジ膨張画像の組み合わせの個数に対応した画像探索セルを有する。画像探索セル5511は、等高線画像とエッジ膨張画像の組み合わせのうちの1つの組み合わせのマッチングを行う。
【0039】
第nレベルの等高線画像と第mレベルのエッジ膨張画像のテンプレート・マッチングを担当する画像探索セルを第m,nレベル画像探索セルと呼ぶことにする。第m,nレベル画像探索セル5511は第m,nレベル画像探索部55111と第m,nレベル相関マップ55112を有する。第m,nレベル画像探索部55111は第nレベルの等高線画像と第mレベルのエッジ膨張画像のテンプレート・マッチングを行い、その結果を第m,nレベル相関マップ55112に格納する。
【0040】
図7を参照して、画像探索部551(図5)が実行するテンプレート・マッチングを説明する。微小寸法測定走査電子顕微鏡(CD-SEM: Critical Dimension Scanning Electron Microscope)は、半導体ウェーハ上の特定箇所を、走査式電子顕微鏡を用いて測長する検査装置である。CD-SEMでは、測長すべきウェーハ上の箇所を特定するために、測長箇所の付近でユニークなパターンを持つ部分をテンプレートとして登録する。測長時は、テンプレートと探索画像のパターンの間でテンプレート・マッチングを行い、得られたマッチング位置の座標に基づいて、測長箇所を特定する。
【0041】
ここでは、探索画像701とテンプレート(参照画像)702が与えられているものとする。テンプレート・マッチングとは探索画像701の中でテンプレート702と同じパターンを検出する処理である。具体的には、例えば探索画像にテンプレートを重ね合わせて正規化相関を計算する。次に、探索画像に対してテンプレートをずらして、正規化相関を計算する。これを繰り返し、最も高い相関値が得られた位置をテンプレートと同じパターンが存在する位置、即ち、マッチング位置である判断する。ここで、例えば、テンプレート702の左上の点の位置を、便宜的に、テンプレート702の位置と称する。
【0042】
本例では、探索画像701上の位置aにて、テンプレート702と同じパターンが存在すると判断されたものとする。また、探索画像701上の4つの位置b、c、d、eでは、同じパターンは存在しないが、次に相関値が高い値となったとする。更に、2つの位置f、gでは、その次に相関値が高い値となったとする。これらの位置以外の場所では相関は殆どなく、相関値は0に近い値となったとする。
【0043】
正規化相関マップ703は、探索画像701上の各位置における相関値を画素値とする画像であるが、ここでは、便宜上、3次元空間上のグラフとして表示している。XY平面上の座標は、探索画像701上の位置を表し、Z軸は相関値を表す。図示のように、位置a、b、c、d、e、f、gにおける相関値を、a’、b’、c’、d’、e’、f’、g’とする。位置aにおける相関値、即ち、画素値は1に近い値となる。他の位置b、c、d、e、f、gにおける相関値、即ち、画素値b’、c’、d’、e’、f’、g’は、1よりかなり小さい。相関値をスコアとすると、位置aにおける相関値が最大スコアとなり、最上位候補となる。他の位置b、c、d、e、f、gの相関値は、それに次ぐ候補となる。これらの候補は後段の候補テーブルに登録される。
【0044】
図7に示した例では、探索画像701の寸法はテンプレート702の寸法より大きい。しかしながら、テンプレート・マッチングでは、探索画像上におけるテンプレートの相対位置が分かればよいだけであり、大きさは逆でも構わない。サーチ(探索)の処理はテンプレートと探索画像を入れ替えたのと同じである。
【0045】
相関マップは、探索画像の大きさからテンプレートの大きさを引いたもの(面積ではなく縦横夫々の長さにおいて)である。探索画像に対してテンプレートを1画素ずつずらしながら相関値を求めるので、相関マップも離散的な画素の空間となる。テンプレート・マッチングを行う前にテンプレートと探索画像の画素を間引いたり、平滑化又は縮小して画像ザイズを小さくすると相関マップもその分小さくなる。
【0046】
図8を参照して、相関マップからマッチング位置を決定する方法の例を説明する。図8のグラフの横軸はx-y座標、縦軸は相関値を表す。最も相関値が大きい位置が、探索画像とテンプレートが最もよくマッチングした位置である。相関値の最大値v1が所定の閾値th1よりも小さい領域では、探索画像とテンプレートが一致する場所はなかったと考えるのが妥当である。また、1番目に大きい相関値v1と2番目に大きい相関値v2の差v1-v2が所定の閾値th2よりも小さい場合は、ノイズなどの影響で最上位候補となるべき位置の相関値が次候補の位置の相関値と逆転している可能性が高いと考えられる。
【0047】
最終的なマッチング位置の候補となり得る位置は、相関値が周囲より高い極大値となり、且つ、閾値th1以上の値を持つ点である。更に、予め定められた半径の近傍に自分よりも相関値が高い極大点がないとの条件が付加されることもある。このような種々の条件を満たした点(マッチング位置の候補)を相関値順に格納したのが候補テーブルである。一般には、候補テーブルの最上位の候補をマッチング位置とする。しかしながら、同じパターンが複数存在する場合には、複数の候補の位置のうち中央に近い位置を選択してもよい。また、相関値が近い場合には別の観点(ローカルな信号強度など)でマッチング位置を選択してもよい。いずれにしても、最終的なマッチング位置の選択は後段の処理に委ねる場合も多い。
【0048】
図9は、画像探索部551(図5)の構成例を示す。画像探索部551は、上層画像探索グリッド5511と下層画像探索グリッド5512とマッチング候補抽出部5513とを有する。上層画像探索グリッドと下層画像探索グリッドは同様の構造を有するので、ここでは、上層画像探索グリッド5511について説明する。上層画像探索グリッド5511は、上層デザイン画像生成部52(図5)からの上層パターンの等高線画像群(全Nレベル)と、SEMエッジ画像生成部54(図5)からのエッジ膨張画像群(全Mレベル)を入力し、上層相関マップ群を出力する。上層画像探索グリッド5511は、M×N個の画像探索セル5511−m−nを含む。画像探索セル5511−m−nの構成及び動作は図6を参照して説明した。例えば、第m、nレベル画像探索セルは第nレベル等高線画像と第mレベルエッジ膨張画像のマッチングを行う。上層相関マップ群はM×N個の上層相関マップの出力を纏めたものである。
【0049】
下層画像探索グリッド5512は、上層パターンの等高線画像群の代わりに下層パターンの等高線画像群を入力としている以外は上層画像探索グリッドと同じ構造である。上層画像探索グリッドから出力された上層相関マップ群と下層画像探索グリッドから出力された下層相関マップ群は、共にマッチング候補抽出部5513に供給される。マッチング候補抽出部5513では、マッチング点候補群を選別し、それを候補テーブル552(図5)に格納する。
【0050】
図10は、マッチング候補抽出部5513(図9)の構成例を示す。マッチング候補抽出部5513は、上層相関マップ統合部55131、下層相関マップ統合部55132、上下層相関マップ合成部55133、及び、相関マップ極大点選別部55134を有する。上層相関マップ統合部55131は、上層相関マップ群を入力し、画素毎に各レベル(M×Nレベル)の上層相関マップの最大値を取り、それを統合して上層相関マップを生成する。下層相関マップ統合部55132は、下層相関マップ群を入力し、画素毎に各レベル(M×Nレベル)の下層相関マップの最大値を取り、それを統合して下層相関マップを生成する。上下層相関マップ合成部55133は、上層相関マップと下層相関マップを入力し、それを合成して一つの合成相関マップを生成する。上下層相関マップ合成部55133は、上層及び下層相関マップを合成するとき、外部から入力した層情報群(各層の層強度、層間ズレ許容量、マッチングの基準となる層など)を考慮する。それによって、テンプレート・マッチングを細やかにコントロールすることができる。上下層相関マップ合成部55133の動作の詳細は後に図11および図12を参照して説明する。相関マップ極大点選別部55134は、合成相関マップを入力し、相関値が極大点となる点をマッチング点候補として抽出し、それよりマッチング点候補群を生成する。
【0051】
図11は、上下層相関マップ合成部55133(図10)の動作の一例を示す。上下層相関マップ合成部55133は、上層相関マップ1101と下層相関マップ1102の画素値を合成して、合成相関マップ1103を生成する。本例では、上層相関マップ1101の注目画素1101aの画素値とその位置に対応する下層相関マップ1102の対応画素1102aの画素値の重み付け平均値を求めることにより、合成相関マップ1103の注目画素1103aの画素値を得る。重みは夫々の層の層強度である。層強度はどの層のパターン情報をより強力にマッチングに反映させたいかを示すもので、例えば上下層夫々の層パターンの写り込み強度などから求められる。上層相関マップ1101の全ての画素について同様の処理を行い、合成相関マップ1103が得られる。
【0052】
図12は、上下層相関マップ合成部55133(図10)の動作の別の一例を示す。本例では、上層相関マップ1201の注目画素(1画素)1201aに対して、その位置に対応する下層相関マップ1202の対応画素1202aの周囲領域1203の画素値を合成計算に使う。先ず、下層相関マップ1202の対応画素1202aの周囲領域1203を設定する。周囲領域1203の寸法は、層間ズレの許容量に対応する。ここでは周囲領域1203として、対応画素1202aを中心に5×5画素の領域を設定する。これは、マッチングを行う直前の画像サイズにおいて、下層相関マップ1202に対して上層相関マップ1201が上下左右2画素の範囲でズレていることを想定している。
【0053】
次に、周囲領域1203の各画素値と上層相関マップの注目画素1201aの画素値との重み付け平均値を算出する。それによって、5×5個の値からなる重み付け平均画像1204が得られる。ここで、重み付け平均値の算出に用いる重みは、夫々の層の層強度である。
【0054】
次に、周囲領域1203の各画素に対して重み係数を設定する。重み係数は、対応画素1202aに対する各画素の位置に対応して設定される。対応画素1202aの重み係数は1である。こうして、5×5個の値からなる重み係数テーブル1205が生成される。次に、重み付け平均画像1204の各値に、重み係数テーブル1205の対応する重み係数を乗算する。こうして、5×5個の値からなる周辺領域重み付けマップ1206が得られる。最後に、この周辺領域重み付けマップ1206を構成する5×5個の値から最大値を取り、それを、合成相関マップの注目画素の画素値とする。上層相関マップ1201の全ての画素について同様の処理を行い、合成相関マップ1103が得られる。
【0055】
周辺領域重み付けマップ1206において、中央の位置に対する最大値の位置の偏差は、上層相関マップ1201に対する下層相関マップ1202のズレを表す。この層間ズレ量は、X方向のずれとY方向のずれを含む。上層相関マップの画素毎にX方向のズレ量、及び、Y方向ズレ量を記憶したものを下層Xズレ量画像、下層Yズレ量画像という。
【0056】
図12を参照して説明した上下層相関マップの合成方法では、上層相関マップ1201を基準として、層間ズレを算出する。即ち、上層相関マップのピークから下層相関マップのピークまでの変位を層間ズレとする。しかしながら、上層と下層を入れ替え、層間ズレを下層基準とすることもできる。
【0057】
図13を参照して、図11に示した上下層相関マップの第1の合成方法と、図12に示した上下層相関マップの第2の合成方法を比較する。図13の折れ線グラフ1301は、上層相関マップの画素値、折れ線グラフ1302は下層相関マップの画素値、折れ線グラフ1303は第1の合成方法によって生成した合成相関マップの画素値の分布を示す。折れ線グラフ1304、1305は第2の合成方法によって生成した合成相関マップの画素値の分布である。
【0058】
但し、折れ線グラフ1304の場合、重み付け平均画像1204を生成したが、それに対する重み係数の乗算は行わなかった。従って、重み付け平均画像1204を構成する5×5個の値から最大値を取り、それを、合成相関マップの注目画素の画素値とした。一方、折れ線グラフ1305の場合、図12を参照して説明したように、重み付け平均画像1204を生成し、それに、重み係数を乗算することによって、周辺領域重み付けマップ1206を生成した。更に、周辺領域重み付けマップ1206を構成する5×5個の値から最大値を取り、それを、合成相関マップの注目画素の画素値とした。
【0059】
図13の折れ線グラフ1301〜1305において、縦軸は相関値、横軸は画素座標である。尚、画素座標は1次元とした。また、第2の合成方法において、重み付け平均値の算出に用いる重みは、上層、下層の相関マップとも0.5とした。即ち、重み付け平均値は、単なる平均値である。相関値は10000倍して表示している。
【0060】
本例では、折れ線グラフ1301にて示すように、上層相関マップにおいて座標値4の位置で相関値がピークとなる。折れ線グラフ1302にて示すように、下層相関マップにおいて座標値6の位置で相関値がピークとなる。即ち、上下層で層間ズレが発生している。折れ線グラフ1303にて示すように、第1の合成方法によって相関値の平均値を求めた場合には、平均値は4〜6となり大きな変化がない。従って、本例では、僅かなノイズがあると、その影響で、マッチング位置が変化する可能性がある。一方、折れ線グラフ1304、及び、1305に示すように、第2の合成方法によって合成相関マップを生成すると、マッチング位置は上層相関マップのピークであると明確に判定することができる。また、上層相関マップのピーク位置において、上層相関マップとのズレ量は2画素である。以上より、図11に示した上下層相関マップの第1の合成方法より、図12に示した上下層相関マップの第2の合成方法のほうが、マッチング位置は明確に、且つ、安定的に特定することができることが判る。更に、第2の合成方法において、重み係数を乗算する処理を実行したほうが、それを実行しない場合より、より明確に、マッチング位置を特定することができることが判る。
【0061】
図14を参照して、図11に示した上下層相関マップの第1の合成方法と、図12に示した上下層相関マップの第2の合成方法を比較する。図14の折れ線グラフ1401は、上層相関マップの画素値、折れ線グラフ1402は下層相関マップの画素値の分布を示す。折れ線グラフ1403、1404は第2の合成方法によって生成した合成相関マップの画素値の分布である。但し、折れ線グラフ1403の場合、重み付け平均画像1204を生成したが、それに対する重み係数の乗算は行わなかった。従って、重み付け平均画像1204を構成する5×5個の値から最大値を取り、それを、合成相関マップの注目画素の画素値とした。一方、折れ線グラフ1404の場合、図12を参照して説明したように、重み付け平均画像1204を生成し、それに、重み係数を乗算することによって、周辺領域重み付けマップ1206を生成した。更に、周辺領域重み付けマップ1206を構成する5×5個の値から最大値を取り、それを、合成相関マップの注目画素の画素値とした。
【0062】
図14の折れ線グラフ1401〜1404において、縦軸は相関値、横軸は画素座標である。尚、画素座標は1次元とした。また、第2の合成方法において、重み付け平均値の算出に用いる重みは、上層、下層の相関マップとも0.5とした。即ち、重み付け平均値は、単なる平均値である。相関値は10000倍して表示している。
【0063】
本例では、折れ線グラフ1401にて示すように、上層相関マップにおいて座標値4及び5の2つの位置で相関値が略等しい台形のピークとなる。折れ線グラフ1402にて示すように、下層相関マップにおいて座標値6の位置で相関値がピークとなる。このような場合、折れ線グラフ1403に示すように、重み係数の乗算を行わない場合、相関値は、2つの位置で略大きさが等しい台形のピークとなる。しかしながら、折れ線グラフ1404に示すように、重み係数の乗算を行う場合、座標値4における相関値よりも座標値5における相関値のほうが僅かに大きい。従って、座標値5をマッチング位置と判定する。本来は、このような相関値の僅かな差に影響されずに、下層相関マップのピーク位置に近い方の位置をマッチング位置とすべきである。しかしながら、本例では、相関値が大きいほうの位置を、マッチング位置と判定する。
【0064】
図15を参照して、本発明による画像処理装置の第2の例を説明する。本例の画像処理装置は、デザインデータ(設計データ)から上層パターンデータと下層パターンデータを分離する層分離部51、上層パターンデータを入力し、上層パターンの等高線画像を生成する上層デザイン画像生成部52、下層パターンデータを入力し、下層パターンの等高線画像を生成する下層デザイン画像生成部53、探索画像としてSEM画像を入力し、エッジ処理を行うSEMエッジ画像生成部54、テンプレートとSEM画像のマッチングを行うマッチング実行部55、上層パターンを入力し上層パターンの内部画像を生成する上層内部画像生成部56、上下層パターンの等高線画像を入力し、下層マスク付き上層パターンの等高線画像を生成する下層マスク付上層デザイン画像生成部57、及び、上層パターンの内部画像と上下層パターンの等高線画像を入力し、上層マスク付き下層パターンの等高線画像を生成する上層マスク付下層デザイン画像生成部58を有する。
【0065】
尚、下層マスク付き上層パターンの等高線画像とは、上層パターンの等高線を明るい輝度で表し、下層パターンの等高線をグレーの輝度で表した2層のパターンを含む画像のことである。グレーの輝度で表したパターンを、マスクと称する。上層マスク付き下層パターンの等高線画像とは、下層パターンの等高線を明るい輝度で表し、上層パターンの等高線をグレーの輝度で表した2層のパターンを含む画像のことである。尚、輝度は画素値として表される。これらの等高線画像の例は、後に図16及び図17を参照して説明する。
【0066】
本例の画像処理装置を、図5に示した第1の例と比較すると、本例の画像処理装置では、上層内部画像生成部56、下層マスク付上層デザイン画像生成部57、及び、上層マスク付下層デザイン画像生成部58を有する点が異なる。以下に、第1の例と異なる部分について詳細に説明する。
【0067】
下層マスク付上層デザイン画像生成部57は、第1〜第Nレベルのマスク等高線画像描画部571−1〜571−Nを有する。同様に、上層マスク付下層デザイン画像生成部58は、第1〜第Nレベルのマスク等高線画像描画部581−1〜581−Nを有する。レベル数Nは自然数であるが、1でもよい。下層マスク付上層デザイン画像生成部57に含まれるマスク等高線画像描画部のレベル数と上層マスク付下層デザイン画像生成部58に含まれるマスク等高線画像描画部のレベル数は、本例では、同一であるが、異なってもよい。
【0068】
上層内部画像生成部56は、上層パターンを入力し、上層パターンの内部画像を生成し、それを、上層マスク付下層デザイン画像生成部58に供給する。上層パターンの内部画像は、上層パターンの内部にある下層パターンの等高線の画像であり、詳細は図17を参照して説明する。
【0069】
下層マスク付上層デザイン画像生成部57の各レベルのマスク等高線画像描画部は、上層デザイン画像生成部52で生成された各レベルの上層パターンの等高線画像と、下層デザイン画像生成部53で生成された代表的なレベル(主に中央レベル)の下層パターンの等高線画像から、下層マスク付きの各レベルの上層パターンの等高線画像を生成する。下層マスク付き上層パターンの等高線画像の例は、後に図16を参照して説明する。
【0070】
同様に、上層マスク付下層デザイン画像生成部58の各レベルのマスク等高線画像描画部は、下層デザイン画像生成部53で生成された各レベルの下層パターンの等高線画像と、上層デザイン画像生成部52で生成された代表的なレベル(主に中央レベル)の上層パターンの等高線画像と、更に、上層内部画像生成部56で生成された代表的なレベル(主に中央レベル)の上層パターンの内部画像から上層マスク付きの各レベルの下層パターンの等高線画像を生成する。上層マスク付き下層パターンの等高線画像の例は、後に図17を参照して説明する。
【0071】
図16に、下層マスク付き各レベルの上層パターンの等高線画像の例を示す。上述のように、下層マスク付き各レベルの上層パターンの等高線画像1601は、各レベルの上層パターンの等高線画像と、代表的なレベル(主に中央レベル)の下層パターンの等高線画像から生成する。下層マスク付き各レベルの上層パターンの等高線画像では、上層パターンの等高線が明るい輝度で描かれているのに対して、下層パターンのマスクはグレーの輝度で描かれている。尚、下層パターンのマスクは、代表レベルの下層パターンの等高線をグレーの輝度で描いたものである。下層パターンのマスクの輝度は画像全体の平均輝度値に等しい。即ち、下層パターンのマスクの輝度は、下層マスク付き上層パターンの等高線画像の全体の輝度の平均値に等しく、一定値である。
【0072】
下層パターンのマスクの輝度を、下層マスク付き上層パターンの等高線画像の全体の輝度の平均値に等しくする理由を説明する。SEMエッジ強調画像から生成したエッジ膨張画像との間で、正規化相関値を計算するとき、マッチング領域の全ての画素の輝度に対して、平均輝度値からの偏差を計算し、この偏差を用いて相関値を算出する。下層パターンのマスクの輝度を画像全体の輝度の平均値に設定すると、下層パターンのマスクの領域では偏差がゼロとなり、相関値に寄与しない。即ち、下層パターンのマスクは、相関値に影響を与えない。
【0073】
ここで、マッチング領域を説明する。下層マスク付き上層パターンの等高線画像(テンプレート)の寸法が、エッジ膨張画像(探索画像)の寸法より小さい場合には、下層マスク付き上層パターンの等高線画像(テンプレート)の全体がマッチング領域となる。従って、探索画像に対するテンプレートの相対的位置が変化しても、マッチング領域におけるパターンは常に同一であり、マッチング領域における輝度の平均値は一定であり、画像全体の輝度の平均値と等しい。従って、上述のように、下層パターンのマスクは、相関値に影響を与えない。
【0074】
しかしながら下層マスク付き上層パターンの等高線画像(テンプレート)の寸法が、エッジ膨張画像(探索画像)の寸法より大きい場合には、下層マスク付き上層パターンの等高線画像(テンプレート)の全体がマッチング領域となるのではなく、エッジ膨張画像(探索画像)に対応する領域がマッチング領域となる。探索画像に対するテンプレートの相対的位置が変化すると、マッチング領域におけるパターンは変化する。この場合には、マッチング領域における輝度の平均値は一定ではなく、マッチング領域が移動する毎に、変化する。マッチング領域における輝度の平均値は画像全体の輝度の平均値と等しくなるとは限らない。従って、マッチング領域の全ての画素の輝度に対して、平均輝度値からの偏差を計算すると、下層パターンのマスクの領域では偏差がゼロとならない。しかしながら、下層パターンのマスクの領域の輝度が、画像全体の輝度の平均値に近い値であれば、下層パターンのマスクが相関値に与える影響は小さい。
【0075】
下層マスク付き各レベルの上層パターンの等高線画像は、各レベルの上層パターンの等高線画像と、代表的なレベル(主に中央レベル)の下層パターンの等高線画像から生成する。即ち、各レベルの下層パターンの等高線画像ではなく、代表的なレベル(主に中央レベル)の下層パターンの等高線画像を用いる。これについて説明する。
【0076】
上層相関マップは、本来、上層パターンに関する情報のみを使用して生成すべきである。しかしながら、SEM画像には、上層パターンと下層パターンが共に現れている可能性がある。SEM画像に下層パターンが現れているときに、上層パターンに関する情報のみを用いてマッチングを行うと、エッジ膨張画像の下層パターン由来のエッジに対応した位置における相関値が本来の値より低くなる。そのため、マッチング位置の検出において誤差が生じる可能性がある。そこで、本発明では、上層相関マップを生成するとき、上層パターンばかりでなく下層パターンに関する情報を使用する。しかしながら、全レベルの上層パターンの等高線画像と全レベルの下層パターンを生成し、両者を組合せると、N×N個の下層マスク付き上層パターンの等高線画像が生成される。これをSEM画像から生成した全レベルのエッジ膨張画像とマッチングさせるのは困難である。そこで、本例では、全レベルではなく、代表的なレベル(主に中央レベル)の下層パターンの等高線画像を用いる。そのため、下層マスク付き上層パターンの等高線画像は、必ずしも正しい下層パターンのエッジの位置を含んでいる保障はない。しかしながら、上層パターンの等高線と同様に下層パターンは所定の幅の線によって描かれている。そのため、下層マスク付き上層パターンの等高線画像は、SEM画像から得たエッジ膨脹画像の下層パターンのエッジと完全に一致しなくても、ある程度の範囲で重なる。そのため、マッチング位置における相関値の低下を防止する効果が期待できる。
【0077】
図17に、上層マスク付き各レベルの下層パターンの等高線画像の例を示す。上述のように、上層マスク付き各レベルの下層パターンの等高線画像1701は、各レベルの下層パターンの等高線画像と、代表的なレベル(主に中央レベル)の上層パターンの等高線画像と、更に、代表的なレベル(主に中央レベル)の上層パターンの内部画像から生成する。上層マスク付き各レベルの下層パターンの等高線画像1701では、下層パターンの等高線が明るい輝度で描かれているのに対して、上層パターンのマスクはグレーの輝度で描かれている。尚、上層パターンのマスクは、代表レベルの上層パターンの等高線をグレーの輝度で描いたものである。上層パターンのマスクの輝度は画像全体の平均輝度値に等しい。
【0078】
上層パターンのマスクの輝度を画像全体の輝度の平均値に等しくする理由は、上述のように、下層パターンのマスクの輝度を画像全体の輝度の平均値に等しくする理由と同様である。但し、上層マスク付きの下層パターンの等高線画像では、上層パターンの内部にある下層パターンの等高線はグレーの輝度で描かれている。これはSEM画像では、上層パターンの内部にて下層パターンのエッジが現れていないことが多いためである。まったく現れていないと分かっていれば、上層パターンの内部にある下層パターンの等高線は描かなければよい。しかしながら、上層パターンの内部でも下層パターンのエッジが現れることもある。そのため、図17では上層パターンの内部にある下層パターンの等高線がグレーの輝度で描かれている。以上の理由より、上層パターンの内部を認識するために上層パターンの内部画像が必要となる。
【0079】
上述のように上層マスク及び下層マスクは、画像全体の平均輝度値で描かれるが、等高線画像(テンプレート)の寸法が、エッジ膨張画像(探索画像)の寸法より大きい場合には、等高線画像(テンプレート)のうち、エッジ膨張画像(探索画像)に対応する領域がマッチング領域となる。この場合には、マッチング領域における輝度の平均値は、画像全体の輝度の平均値と等しくなるとは限らない。この差は、マッチング領域における画素値の合計値に比べて十分小さい値ならば、マッチング位置における相関値の低下を招くことにはならないが、大きい場合は相関値の低下を招く。
【0080】
図18を参照して、探索画像の寸法がテンプレートの寸法より小さい場合について説明する。上層のデザインデータ1801は線状の上層パターン1801aを含む。下層のデザインデータ1802は線状の下層パターン1802aを含む。黒色の線は上層パターン1801a、及び、下層パターン1802aを示し、左側の白色の領域は、パターンの内部を示す。下層マスク付きの上層パターンの等高線画像1803では、上層パターン1803aと下層パターン1803bが現れているが、下層パターン1803bはグレーの輝度のマスクとなっている。
【0081】
一方、SEMエッジ膨脹画像(探索画像)1804の寸法は、下層マスク付きの上層パターンの等高線画像(テンプレート)1803の寸法より小さい。SEMエッジ膨脹画像1804には、上層パターンのエッジが現れているが、下層パターンのエッジは上層パターンの内部にあるため消えている。正規化相関値が最大となるマッチング位置を探すと、画像1805に示す正しいマッチング位置ではなく、画像1806に示すように誤ったマッチング位置が得られる。画像1805に示す正しいマッチング位置では、SEMエッジ膨脹画像1804の上層パターン1804aのエッジが下層マスク付きの上層パターンの等高線画像1803における上層パターン1803aのエッジに整合する。しかしながら、画像1806にて示すように誤ったマッチング位置では、SEMエッジ膨脹画像1804の上層パターン1804aのエッジが下層マスク付きの上層パターンの等高線画像1803における下層パターン1803aのエッジに整合している。
【0082】
この理由は、下層マスク付きの上層パターンの等高線画像1803上のマッチング領域の全画素の輝度平均値は、マッチング位置が異なると、変化するためである。例えば、正しいマッチング位置にある画像1805では、マッチング領域には、下層パターンの等高線と上層マスクの両者を含む。誤ったマッチング位置にある画像1806では、マッチング領域には、上層マスクのみが含まれる。従って、マッチング領域における輝度平均値は、両者において異なる。一方、SEMエッジ膨脹画像1804には、上層パターンのエッジのみが現れている。相関値を計算すると、画像1806に示すように誤ったマッチング位置において最大値となったものである。このようなマッチング位置の誤検出を回避するには、マッチング領域における輝度値のシグマが小さくなりすぎないようにする必要がある。正規化相関の計算では、テンプレートとそれに対応する探索画像上のマッチング領域の共分散をテンプレートのシグマとマッチング領域のシグマで割っている。例えば、このマッチング領域のシグマに対して画像全体のシグマを一定割合でブレンドすることでこの弊害はかなり抑制できる。
【0083】
図19を参照して、等高線に関する言葉の定義を説明する。等高線1901は、一般に、細い線とは限らず、所定の幅を有する帯状の領域である。従って、等高線を表す帯状の領域内では、画素値が一定とは限らない。画素値が1以上(0より大きい)であれば等高線を表す領域、即ち、等高線であるとする。等高線の中央の線を等高線中央線1902という。各層のパターンの等高線の内部とは、等高線中央線より(デザイン上)内側の領域を指す。
【0084】
図20は、下層マスク付き上層パターンの等高線画像(図16)における各画素の画素値の決め方を表す。二分木のノードは画素の条件を表し、矢印の先にその条件に該当する画素の画素値が記述されている。先ず、ステップS2001にて、上層パターンの等高線であるか否かを判定する。上層パターンの等高線である場合には、上層パターンの等高線画像の対応画素値とする。上層パターンの等高線でない場合には、ステップS2002にて、下層パターンの等高線であるか否かを判定する。下層パターンの等高線でない場合には、画素値を0(ゼロ)とする。下層パターンの等高線である場合には、グレー領域とする。グレー領域の画素値は、画像全体の平均輝度値であり、グレー領域以外の画素値が全て決まらなければ求められない。そこで、グレー領域である場合には、グレー領域であることのみを記憶しておき、その画素値は最後に計算する。
【0085】
図21を参照して、下層マスク付き上層パターンの等高線画像(図16)の生成方法を説明する。ステップS2101にて、注目画素が上層パターンの等高線ではなく、下層パターンの(中央レベル)の等高線である場合では、Gray画像を1、上層Mask画像を0で描画する。ステップS2102にて、ステップS2101の場合以外では、Gray画像を0、上層Mask画像を、上層パターンの等高線画像における画素値で描画する。
【0086】
ステップS2103にて、Gray画像における画素値の合計(即ち、Gray領域の画素数)Gを算出する。ステップS2104にて、上層Mask画像における画素値の合計Mを算出する。ステップS2105にて、上層Mask画像のシグマGS_tを算出する。ステップS2106にて、Gray画像における画素値1のとき(即ち、Gray領域)、上層Mask画像をM/(全画素数−G)で描画する。
【0087】
上層Mask画像が最終的に下層マスク付き上層パターンの等高線画像となる。Gray画像は処理過程で使用するテンポラリーな画像である。途中のステップS2105にて画像全体のシグマを求めている。この値は画像探索部に入力され正規化相関値を計算する際にテンプレート対応領域のシグマに対して一定割合でブレンドされる。
【0088】
図22は、上層マスク付き下層パターンの等高線画像(図17)における各画素の画素値の決め方を表す。二分木のノードは画素の条件を表し、矢印の先にその条件に該当する画素の画素値が記述されている。先ず、ステップS2201にて、下層パターンの等高線であるか否かを判定する。下層パターンの等高線である場合には、ステップS2202にて、上層パターンの等高線であるか否かを判定する。上層パターンの等高線でない場合には、ステップS2203にて、上層パターンの内部であるか外部であるかを判定する。
【0089】
下層パターンの等高線であり、且つ、上層パターンの等高線である場合には、下層パターンの等高線画像の対応画素値とする。下層パターンの等高線であるが、上層パターンの等高線でない場合であって、上層パターンの外部である場合には、下層パターンの等高線画像の対応画素値とする。下層パターンの等高線であるが、上層パターンの等高線でない場合であって、上層パターンの内部である場合には、グレー領域とする。
【0090】
ステップS2201にて、下層パターンの等高線でないと判定した場合には、ステップS2204にて、上層パターンの等高線であるか否かを判定する。上層パターンの等高線である場合には、グレー領域とする。上層パターンの等高線でない場合には、画素値を0(ゼロ)とする。
【0091】
図23を参照して、上層マスク付き下層パターンの等高線画像(図17)の生成方法を説明する。ステップS2301にて、注目画素が下層パターンの等高線ではなく、上層パターン(中央レベル)の等高線である場合、又は、下層パターンの等高線であるが、上層パターン(中央レベル)の内部の場合では、Gray画像を1、下層Mask画像を0で描画する。ステップS2302にて、ステップS2101の場合以外では、Gray画像を0、下層Mask画像を、下層デザインまるめ画像における画素値で描画する。
【0092】
ステップS2303にて、Gray画像における画素値の合計(即ち、Gray領域の画素数)Gを算出する。ステップS2304にて、下層Mask画像における画素値の合計Mを算出する。ステップS2305にて、下層Mask画像のシグマGS_lを算出する。ステップS2306にて、Gray画像における画素値1のとき(即ち、Gray領域)、下層Mask画像をM/(全画素数−G)で描画する。
【0093】
下層Mask画像が最終的に上層マスク付き下層パターンの等高線画像となる。Gray画像は処理過程で使用するテンポラリーな画像である。途中のステップS2305にて画像全体のシグマを求めている。この値は画像探索部に入力され正規化相関値を計算する際にテンプレート対応領域のシグマに対して一定割合でブレンドされる。
【0094】
図24は、図15に示した本発明による画像処理装置の第2の例の動作を視覚的に表している。デザインデータ2401から、下層マスク付きの第1〜第Nレベルの上層パターンの等高線画像2402と上層マスク付きの第1〜第Nレベルの下層パターンの等高線画像2403を生成する。また、探索画像として入力したSEM画像から第1〜第Mレベルのエッジ膨張画像2404を生成する。下層マスク付きの第1〜第Nレベルの上層パターンの等高線画像2402と第1〜第Mレベルのエッジ膨張画像2404から、M×N個の上層相関マップ2405が得られる。上層マスク付きの第1〜第Nレベルの下層パターンの等高線画像2403と第1〜第Mレベルのエッジ膨張画像2404から、M×N個の下層相関マップ2406が得られる。
【0095】
M×N個の上層相関マップ2405から、3次元上層相関マップ2407が得られる。M×N個の下層相関マップ2406から、3次元下層相関マップ2408が得られる。上層相関マップ2405と下層相関マップ2406を合成すると、3次元合成相関マップ2409が得られる。この3次元合成相関マップ2409より、相関値が高い点を候補点とする。
【0096】
図24にて説明したように、本例の画像処理装置では、図16及び図17に示したマスク付きの等高線画像を、上下層別々にマッチングしてから相関マップベースで上下層を合成した。しかしながら、この方法では、下層の影響を抑えた上層相関マップと上層の影響を抑えた下層相関マップを合成するため、合成相関マップにおける正解マッチング位置における相関値は低くなる。また、上下層パターンのマスクは代表的なレベルの等高線から作っているので正確ではない。
【0097】
図25はデザインデータ(設計データ)のみから生成した理想に近い上下層パターンの合成等高線画像の例を示す。ここで、上層パターンの等高線のレベル数をN、下層パターンの等高線のレベル数をN、下層パターンのx方向ズレのレベル数をNx、下層パターンのy方向ズレのレベル数をNyとする。N×N×Nx×Ny枚の合成等高線画像を用意し、その各々とエッジ膨張画像をマッチングする必要がある。しかしながら、これらのレベル数は、通常既知ではない。従って、N×N×Nx×Ny枚の合成等高線画像を生成して、マッチングを行うと、現実的な時間では処理できない可能性がある。
【0098】
そこで、本発明によると以下に説明するように、予備マッチング行い、その後に高精度マッチングを行う。予備マッチングは、図5を参照して説明したマッチングと同様な手法を用いる。最終的に、探索画像におけるテンプレートのマッチング位置の複数の候補を求める。即ち、エッジ膨張画像における上層パターンのマッチング位置の候補の座標、各候補を得た際の上層パターンの等高線のレベル、及び、下層パターンの等高線のレベルを求める。
【0099】
図26は、N×N枚の合成等高線画像の例を示す。即ち、デザインデータ2601から、上層パターンの第1〜第Nレベルの等高線画像2602と下層パターンの第1〜第Nレベルの等高線画像2603を生成する。上層パターンの等高線画像2602と下層パターンの等高線画像2603を合成すると、N×N枚の合成等高線画像2604が生成される。しかしながら、予備マッチングを行うことによって、上層パターンの等高線のレベルと下層パターンの等高線のレベルが知られる。従って、N×N枚の合成等高線画像から、1枚の合成等高線画像を決めることができる。
【0100】
図27は、上下層合成等高線画像(図25)における各画素の画素値の決め方を表す。二分木のノードは画素の条件を表し、矢印の先にその条件に該当する画素の画素値が記述されている。先ず、ステップS2701にて、上層パターンの内部であるか外部であるかを判定する。上層パターンの内部である場合には、ステップS2702にて、上層パターンの等高線であるか否かを判定する。ここで、上層パターンの等高線でない場合には、更に、ステップS2703にて、下層パターンの等高線であるか否かを判定する。
【0101】
以上の判定にて、上層パターンの内部であり、且つ、上層パターンの等高線である場合には、上層パターンの等高線画像の画素値で描画する。上層パターンの内部であるが、上層パターンの等高線でなく、更に、下層パターンの等高線である場合には、グレー領域とする。上層パターンの内部であるが、上層パターンの等高線でなく、下層パターンの等高線でない場合には、画素値0で描画する。
【0102】
ステップS2702の判定にて、上層パターンの外部である場合には、ステップS2704にて、更に、2つに分岐する。即ち、上層パターンの等高線であるか場合、又は、下層パターンの等高線である場合、上下層エッジのMAX画素値で描画する。上層パターンの等高線でなく、且つ、下層パターンの等高線でない場合に、画素値0で描画する。また、層強度を反映させたい場合は上層パターンの等高線画像、下層パターンの等高線画像の全画素値に予め層強度をかけておけばよい。
【0103】
図28を参照して、上下層合成等高線画像(図27)の生成方法を説明する。ステップS2801にて、上層パターンの等高線画像を合成エッジ画像にコピーする。ステップS2802にて、Gray画像の0をクリアする。ステップS2803にて、注目画素が上層パターンの内部であり、且つ、上層パターンの等高線ではなく、下層パターンの等高線である場合、Gray画像を1で描画する。ステップS2804にて、注目画素が上層パターンの外部であり、下層パターンの等高線である場合、上下層パターンの等高線画像の対応の画素の最大値(2つのうち大きいほう)で、合成等高線画像を描画する。
【0104】
ステップS2805にて、Gray画像における画素値の合計(即ち、Gray領域の画素数)Gを算出する。ステップS2806にて、下層Mask画像における画素値の合計Mを算出する。ステップS2807にて、下層Mask画像のシグマGS_cを算出する。ステップS2808にて、Gray画像における画素値1のとき(即ち、Gray領域)、下層Mask画像をM/(全画素数−G)で描画する。
【0105】
図29は本発明による画像処理装置の第3の例を説明する。本例の画像処理装置は、予備マッチングを行い、その後に、限定高精度マッチングを行うように構成されている。予備マッチングは、図1に示した本発明による画像処理装置の第1の例の動作で説明したテンプレート・マッチングと同様の動作によって行なわれる。即ち、図24を参照して説明したように、予備マッチングでは、上層及び下層のデータの各々とSEM画像の間でテンプレート・マッチングを行い、上層及び下層の相関マップを生成し、両者を合成して合成相関マップを生成する。
【0106】
一方、限定高精度マッチングでは、上層データと下層データを合成して、上下層合成データを生成し、この上下層合成データとSEM画像の間でテンプレート・マッチングを行い、マッチング位置の候補を得る。
【0107】
本例の画像処理装置は、予備マッチング行うために、図1に示した本発明の画像処理装置の第1の例の構成を含む。ここでは、第1の例の構成と異なる部分を説明する。本例の画像処理装置は、上層等高線画像選択部59、上層内部画像選択部60、下層等高線画像選択部61、層間ズレ付合成デザイン画像生成部62、SEMエッジ画像選択部63及びマッチング実行部55を有する。層間ズレ付合成デザイン画像生成部62は、X方向及びY方向のズレ付合成等高線画像描画部621〜624を有する。
【0108】
予備マッチングによって、前段候補の上層レベル情報2905、前段候補の下層レベル情報2906、前段候補の膨張レベル情報2907、及び、前段候補の位置情報2908を得る。前段候補の上層レベル情報2905は、テンプレート候補として得られた上層パターンの等高線画像のレベルに関する情報を含む。前段候補の下層レベル情報2906は、テンプレート候補として得られた下層パターンの等高線画像のレベルに関する情報を含む。前段候補の膨張レベル情報2907は、探索画像として得られたエッジ膨張画像のレベルに関する情報を含む。前段候補の位置情報2908はマッチング位置の候補の情報を含む。
【0109】
各レベルの上層パターンの等高線画像2901、各レベルの上層パターンの内部画像2902、各レベルの下層パターンの等高線画像2903、及び、各レベルのエッジ膨張画像2904は、予備マッチングを行う際に生成したものである。
【0110】
上層等高線画像選択部59は、前段候補の上層レベル情報2905を用いて、所定レベルの上層パターンの等高線画像を選択し、それを層間ズレ付合成デザイン画像生成部62に供給する。上層内部画像選択部60は、前段候補の上層レベル情報2905を用いて、所定レベルの上層パターンの内部画像を選択し、それを層間ズレ付合成デザイン画像生成部62に供給する。下層等高線画像選択部61は、前段候補の下層レベル情報2906を用いて、所定レベルの下層パターンの等高線画像を選択し、それを、層間ズレ付合成デザイン画像生成部62に供給する。層間ズレ付合成デザイン画像生成部62は、各層間ズレ付きの合成等高線画像を生成し、それをマッチング実行部55の画像探索部551に供給する。各層間ズレ付きの合成等高線画像の例は、後に図30を参照して説明する。
【0111】
SEMエッジ画像選択部63は、前段候補の膨張レベル情報2907を用いて、所定レベルのエッジ膨張画像を選択し、それをマッチング実行部55の画像探索部551に供給する。マッチング実行部55の画像探索部551は、前段候補の位置情報2908用いて、各層間ズレ付きの合成等高線画像と所定レベルのエッジ膨張画像の間のマッチングを行う。このマッチングは、前段候補の位置情報2908から得られた位置の周辺に限定される。これによりマッチングの高速化が可能となる。
【0112】
図30を参照して、層間ズレ付合成デザイン画像生成部(図29)の動作の例を説明する。層間ズレ付合成デザイン画像生成部62は、上述のように、上層等高線画像選択部59によって選択された所定レベルの上層パターンの等高線画像3002と、下層等高線画像選択部61によって選択された所定レベルの下層パターンの等高線画像を入力する。層間ズレ付合成デザイン画像生成部62は、層間ズレを考慮して、両者を合成する。上層パターンに対する下層パターンのズレの例が示されている。下層パターンのX方向のズレは、正の方向、負の方向、及び、ゼロの場合が可能である。下層パターンのY方向のズレは、正の方向、負の方向、及び、ゼロの場合が可能である。上層パターンに対する下層パターンのズレは、これらのズレを組み合せたものである。
【0113】
図31はマッチング実行部の画像探索部551(図29)の構成例を示す。本例の画像探索部551は、画像探索グリッド5515とマッチング候補修正部5516を有する。画像探索グリッド5515はX×Y個の第(x,y)ズレ画像探索セル5511を有する。第(x,y)ズレ画像探索セル5515は、層間ズレ合成等高線画像群とエッジ膨張画像群を入力し、両者のマッチングを行い、層間ズレ相関マップ群を生成する。このマッチングの範囲は、前段候補の位置情報から得られた位置の周辺に限定される。尚、層間ズレ合成等高線画像群はX×Y個の層間ズレ合成等高線画像を纏めたものである。エッジ膨張画像群はM個のエッジ膨張画像を纏めたものである。層間ズレ相関マップ群は、マッチング候補修正部5516に供給される。マッチング候補修正部5516の動作は、後に、図32を参照して説明する。
【0114】
図32を参照して、マッチング候補修正部5516(図31)の動作を説明する。マッチング候補修正部5516は、画像探索グリッド5515から供給された層間ズレ相関マップ群を用いて、マッチング候補を修正する。ここでは前段候補の位置情報から得られた位置の周囲の9画素の範囲が、マッチングの範囲として設定されている。層間ズレの種類として、(-1,-1), (0,-1), (+1,-1), (-1,0), (0,0), (+1,0), (-1, +1), (0, +1), (+1, +1)ズレの9種類が示されている。このような層間ズレを有する合成等高線画像の相関マップが得られた場合を考える。
【0115】
本例のマッチング候補修正部5516は、マッチング位置方向の2次元、層間ズレ方向の2次元の計4次元の方向性を持つ81個(=3×3×3×3個)のデータを補間する。それによって、予備マッチング直後のマッチング候補を高精度なマッチング位置、層間ズレ量、信頼性の高いスコアで修正することができる。
【0116】
ここまで本発明による画像処理装置のテンプレート・マッチングの動作を説明した。本発明の範囲は、このような画像処理装置を備えた検査装置及び検査方法も包含する。検査/計測システムの例は、特開2007-5818に開示されている。
【0117】
以上本発明の例を説明したが本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは、当業者によって容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0118】
21…デザイン画像生成部、22…SEMエッジ画像生成部、23…マッチング実行部、51…層分離部、52…上層デザイン画像生成部、53…下層デザイン画像生成部、54…SEMエッジ画像生成部、55…マッチング実行部、59…上層等高線画像選択部、60…上層内部画像選択部、61…下層等高線画像選択部、62…層間ズレ付合成デザイン画像生成部、63…SEMエッジ画像選択部、
101…ウェーハ、211−1〜211−N…等高線画像描画部、221…エッジ強調部、231…画像探索部、232…候補テーブル、521−1〜521−N…等高線画像描画部、531−1〜531−N…等高線画像描画部、541…エッジ強調部、542−1〜542−M…エッジ膨張部、551…画像探索部、552…候補テーブル、
1011…対象物、1012…テンプレート選択用画像、1013…パターン、1014…テンプレート、1021…対象物、1022…探索画像、1023、1024…パターン、2311−1〜2311−N…画像探索部、2312−1〜2312−N…相関マップ、2313…マッチング候補抽出部、5511…第m,nレベル画像探索セル、55111…第m,nレベル画像探索部、55112…第m,nレベル相関マップ、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置を用いてテンプレート・マッチングを行う画像処理方法において、
走査型電子顕微鏡によって得られた走査画像を入力する走査画像入力ステップと、
テンプレートとして、多層パターンを含む設計データを入力する設計データ入力ステップと、
前記設計データから上層パターンデータと下層パターンデータを分離する層分離ステップと、
前記上層パターンデータから、前記上層パターン画像を生成する上層パターン画像生成ステップと、
前記上層パターン画像と前記走査画像より正規化相関法によって上層相関マップを生成する上層相関マップ生成ステップと、
前記下層パターンデータから、前記下層パターン画像を生成する下層パターン画像生成ステップと、
前記下層パターン画像と前記走査画像より正規化相関法によって下層相関マップを生成する下層相関マップ生成ステップと、
前記上層相関マップと前記下層相関マップを合成して合成相関マップを生成する合成相関マップ生成ステップと、
前記合成相関マップより、前記走査画像における前記テンプレートのマッチング位置を決定するマッチング位置決定ステップと、
を有する画像処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の画像処理方法において、
前記上層パターン画像生成ステップは、
前記上層パターンデータの塗潰し画像から、同一輝度値の画素を結んだ閉曲線群によって構成される、複数レベルの上層パターンの等高線画像を生成する上層パターン画像生成ステップを有し、
前記上層相関マップ生成ステップは、
前記複数レベルの上層パターンの等高線画像と前記走査画像より正規化相関法によって複数レベルの上層相関マップを生成するステップと、
前記複数レベルの上層相関マップを合成して1つの上層相関マップを生成するステップと、を有し、
前記下層パターン画像生成ステップは、
前記下層パターンデータの塗潰し画像から、同一輝度値の画素を結んだ閉曲線群によって構成される、複数レベルの下層パターンの等高線画像を生成する下層パターン画像生成ステップを有し、
前記下層相関マップ生成ステップは、
前記複数レベルの下層パターンの等高線画像と前記走査画像より正規化相関法によって複数レベルの下層相関マップを生成するステップと、
前記複数レベルの下層相関マップを合成して1つの下層相関マップを生成するステップと、を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項3】
請求項2記載の画像処理方法において、
前記1つの上層相関マップを生成するステップは、前記複数レベルの上層相関マップより、画素毎に、対応する画素の画素値の最大値を取り、それを統合して1つの上層相関マップを生成し、
前記1つの下層相関マップを生成するステップは、前記複数レベルの下層相関マップより、画素毎に、対応する画素の画素値の最大値を取り、それを統合して1つの下層相関マップを生成することを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
請求項1記載の画像処理方法において、
前記合成相関マップ生成ステップは、
前記上層相関マップの各画素の画素値とそれに対応する前記下層相関マップの画素の画素値の重み付け平均値を求めるステップと、該重み付け平均値を、前記合成相関マップの対応する画素の画素値とするステップと、を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
請求項1記載の画像処理方法において、
前記合成相関マップ生成ステップは、
前記上層相関マップの1つの画素に対して、前記下層相関マップの対応する画素を含む周囲領域を設定するステップと、
前記上層相関マップの前記1つの画素とそれに対応する前記周囲領域の各画素値との重み付け平均値を算出することによって、前記周辺領域と同一寸法の重み付け平均画像を生成するステップと、
前記周囲領域の各画素に対して重み係数を設定するステップと、
前記重み付け平均画像の各画素に、対応する前記重み係数をそれぞれ乗算して、前記周辺領域と同一寸法の周辺領域重み付けマップを生成するステップと、
前記周辺領域重み付けマップを構成する全ての画素より画素値の最大値を抽出し、該最大値を前記合成相関マップの1つの画素の画素値とするステップと、
を有し、
前記合成相関マップ生成ステップに含まれる前記5つのステップを前記上層相関マップの全ての画素に適用することによって、前記合成相関マップを生成することを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
請求項5記載の画像処理方法において、
前記周囲領域の寸法は、前記上層相関マップに対する前記下層相関マップのズレの予想量に対応して設定されていることを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
請求項5記載の画像処理方法において、
前記周辺領域重み付けマップの中央の画素に対する前記画素値が最大値となる画素の位置のX方向を偏差量およびY方向の偏差量を演算するステップと、
前記上層相関マップの全ての画素毎にX方向のズレ量を記憶した下層Xズレ量画像を生成するステップと、
前記上層相関マップの全ての画素毎にY方向のズレ量を記憶した下層Yズレ量画像を生成するステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
請求項1記載の画像処理方法において、
更に、前記走査画像に対してエッジ強調処理を行い、エッジ強調画像を生成するステップを有し、
前記上層相関マップ生成ステップは、前記上層パターン画像と前記走査画像のエッジ強調画像の間でマッチングを行い、
前記下層相関マップ生成ステップは、前記下層パターン画像と前記走査画像のエッジ強調画像の間でマッチングを行うことを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
請求項1記載の画像処理方法において、
前記上層パターン画像生成ステップは、
前記上層パターンデータ及び前記下層パターンデータを入力し、前記上層パターンを明るい輝度で表し前記下層パターンをグレーの輝度で表した2層のパターンを含む下層マスク付き上層パターン画像を生成する下層マスク付上層デザイン画像生成ステップを有し、
前記下層パターン画像生成ステップは、
前記上層パターンの内部画像と前記上層パターンデータ及び前記下層パターンデータを入力し、前記下層パターンを明るい輝度で表し前記上層パターンをグレーの輝度で表した2層のパターンを含む上層マスク付き下層パターン画像を生成する上層マスク付下層デザイン画像生成ステップと、
を有し、
前記上層相関マップ生成ステップは、
前記下層マスク付き上層パターン画像と前記走査画像より正規化相関法によって前記上層相関マップを生成し、
前記下層相関マップ生成ステップは、
前記上層マスク付き下層パターン画像と前記走査画像より正規化相関法によって前記下層相関マップを生成することを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
請求項9記載の画像処理方法において、
前記下層マスク付き上層パターン画像の前記下層パターンのグレーの輝度は、前記下層マスク付き上層パターン画像の全体の平均輝度値に等しく、
前記上層マスク付き下層パターン画像の前記上層パターンのグレーの輝度は、前記上層マスク付き下層パターン画像の全体の平均輝度値に等しいことを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
画像処理装置を用いてテンプレート・マッチングを行う画像処理方法において、
走査型電子顕微鏡によって得られた走査画像を入力する走査画像入力ステップと、
テンプレートとして、多層パターンを含む設計データを入力する設計データ入力ステップと、
前記設計データから上層パターンデータと下層パターンデータを分離する層分離ステップと、
前記上層パターンデータの塗潰し画像から、同一輝度値の画素を結んだ閉曲線群によって構成される、複数レベルの上層パターンの等高線画像を生成する上層パターン画像生成ステップと、
前記複数レベルの上層パターンの等高線画像と前記走査画像より正規化相関法によって複数レベルの上層相関マップを生成するステップと、
前記複数レベルの上層相関マップを合成して1つの上層相関マップを生成する上層相関マップ生成ステップと、
前記下層パターンデータの塗潰し画像から、同一輝度値の画素を結んだ閉曲線群によって構成される、複数レベルの下層パターンの等高線画像を生成する下層パターン画像生成ステップと、
前記複数レベルの下層パターンの等高線画像と前記走査画像より正規化相関法によって複数レベルの下層相関マップを生成するステップと、
前記複数レベルの下層相関マップを合成して1つの下層相関マップを生成する下層相関マップ生成ステップと、
前記1つの上層相関マップと前記1つの下層相関マップを合成して合成相関マップを生成する合成相関マップ生成ステップと、
前記合成相関マップより、前記走査画像における前記テンプレートのマッチング位置を決定するマッチング位置決定ステップと、
を有する画像処理方法。
【請求項12】
請求項11記載の画像処理方法において、
前記上層相関マップ生成ステップと前記下層パターン画像生成ステップと前記下層相関マップ生成ステップと前記合成相関マップ生成ステップと前記マッチング位置決定ステップとを含む予備マッチングを行うステップと、
前記予備マッチングにて得た情報より所定レベルの上層パターンの等高線画像を選択するステップと、
前記予備マッチングにて得た情報より所定レベルの上層パターンの内部画像を選択するステップと、
前記予備マッチングにて得た情報より所定レベルの下層パターンの等高線画像を選択するステップと、
前記所定レベルの上層パターンの等高線画像、前記所定レベルの上層パターンの内部画像、及び、前記所定レベルの下層パターンの等高線画像より上層パターンの等高線画像と下層パターンの等高線画像を合成した合成等高線画像を生成するステップと、
前記合成等高線画像と前記所定レベルのエッジ強調画像の間のマッチングを行うステップと、
を有する画像処理方法。
【請求項13】
請求項12記載の画像処理方法において、前記合成等高線画像を生成するステップでは、前記合成等高線画像として、各層間ズレ量を有する各層間ズレ付きの合成等高線画像を生成することを特徴とする画像処理方法。
【請求項14】
設計データから上層パターンデータと下層パターンデータを分離する層分離部と、上層パターンデータを入力し上層パターン画像を生成する上層デザイン画像生成部と、下層パターンデータを入力し下層パターン画像を生成する下層デザイン画像生成部と、走査型電子顕微鏡からのSEM画像を入力しエッジ強調処理を行いそれによりSEMエッジ画像を生成するSEMエッジ画像生成部と、前記SEMエッジ画像とテンプレートの間でテンプレート・マッチングを行うマッチング実行部と、を有し、
前記マッチング実行部は、前記上層パターン画像と前記SEM強調画像の間のテンプレート・マッチングにより上層相関マップを生成し、前記下層パターン画像と前記SEM強調画像の間のテンプレート・マッチングにより下層相関マップを生成し、前記上層相関マップと前記下層相関マップを合成して合成相関マップを生成し、前記合成相関マップより、前記SEM強調画像における前記設計データのマッチング位置を求めることを特徴とする画像処理装置。
【請求項15】
請求項14記載の画像処理装置において、
前記上層デザイン画像生成部は、前記上層パターンデータから複数レベルの上層パターンの等高線画像を生成し、前記下層デザイン画像生成部は、前記下層パターンデータから複数レベルの下層パターンの等高線画像を生成し、
前記SEMエッジ画像生成部は、前記SEMエッジ画像に対してエッジ膨張処理を行いそれにより複数レベルのエッジ膨張画像を生成し、
前記マッチング実行部は、前記複数レベルの上層パターンの等高線画像と前記複数レベルのエッジ膨張画像の間のテンプレート・マッチングにより複数レベルの上層相関マップを生成し、該複数レベルの上層相関マップから1つの上層相関マップを生成し、前記複数レベルの下層パターンの等高線画像と前記複数レベルのエッジ膨張画像の間のテンプレート・マッチングにより複数レベルの下層相関マップを生成し、該複数レベルの下層相関マップから1つの下層相関マップを生成し、前記1つの上層相関マップと前記1つの下層相関マップを合成して合成相関マップを生成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項16】
設計データから上層パターンデータと下層パターンデータを分離する層分離部と、上層パターンデータを入力し複数レベルの上層パターンの等高線画像を生成する上層デザイン画像生成部と、下層パターンデータを入力し複数レベルの下層パターンの等高線画像を生成する下層デザイン画像生成部と、上層パターンデータを入力し上層パターンの内部画像を生成する上層内部画像生成部と、前記複数レベルの上層パターンの等高線画像と前記複数レベルの下層パターンの等高線画像を入力し前記上層パターンを明るい輝度で表し前記下層パターンをグレーの輝度で表した2層のパターンを含む下層マスク付きの複数レベルの上層パターン画像を生成する下層マスク付上層デザイン画像生成部と、前記複数レベルの上層パターンの等高線画像及び前記複数レベルの下層パターンの等高線画像と前記上層パターンの内部画像を入力し前記下層パターンを明るい輝度で表し前記上層パターンをグレーの輝度で表した2層のパターンを含む上層マスク付きの複数レベルの下層パターン画像を生成する上層マスク付下層デザイン画像生成部と、走査型電子顕微鏡からのSEM画像を入力しエッジ強調処理を行いそれによりSEMエッジ画像を生成するSEMエッジ画像生成部と、前記SEMエッジ画像とテンプレートの間でテンプレート・マッチングを行うマッチング実行部と、を有し、
前記マッチング実行部は、前記下層マスク付きの複数レベルの上層パターン画像と前記SEMエッジ画像の間のテンプレート・マッチングにより複数レベルの上層相関マップを生成し、前記上層マスク付きの複数レベルの下層パターン画像と前記SEMエッジ画像の間のテンプレート・マッチングにより複数レベルの下層相関マップを生成し、前記複数レベルの上層相関マップから1つの上層相関マップを生成し、前記複数レベルの下層相関マップから1つの下層相関マップを生成し、前記1つの上層相関マップと前記1つの下層相関マップを合成して合成相関マップを生成し、前記合成相関マップより、前記SEM画像における前記設計データのマッチング位置を求めることを特徴とする画像処理装置。
【請求項17】
請求項16に記載の画像処理装置において、
前記マッチング実行部は、前記SEM画像における前記設計データのマッチング位置の候補を求める予備マッチングを行い、予備マッチングの結果として、所定のレベルの上層パターンの等高線画像、所定レベルの上層パターンの内部画像、所定のレベルの下層パターンの等高線画像、及び、前記等高線画像のマッチング位置を得ることを特徴とする画像処理装置。
【請求項18】
請求項17に記載の画像処理装置において、
前記マッチング実行部は、
前記予備マッチングの結果として得られた、前記所定のレベルの上層パターンの等高線画像、前記所定レベルの上層パターンの内部画像、及び、前記所定のレベルの下層パターンの等高線画像より、X方向及びY方向の各層間ズレ付きの合成等高線画像を生成し、前記各層間ズレ付きの合成等高線画像と前記SEMエッジの間でパターン・マッチングを行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項19】
請求項14〜18のいずれか1項記載の画像処理装置と走査型電子顕微鏡を備えた検査装置。
【請求項1】
画像処理装置を用いてテンプレート・マッチングを行う画像処理方法において、
走査型電子顕微鏡によって得られた走査画像を入力する走査画像入力ステップと、
テンプレートとして、多層パターンを含む設計データを入力する設計データ入力ステップと、
前記設計データから上層パターンデータと下層パターンデータを分離する層分離ステップと、
前記上層パターンデータから、前記上層パターン画像を生成する上層パターン画像生成ステップと、
前記上層パターン画像と前記走査画像より正規化相関法によって上層相関マップを生成する上層相関マップ生成ステップと、
前記下層パターンデータから、前記下層パターン画像を生成する下層パターン画像生成ステップと、
前記下層パターン画像と前記走査画像より正規化相関法によって下層相関マップを生成する下層相関マップ生成ステップと、
前記上層相関マップと前記下層相関マップを合成して合成相関マップを生成する合成相関マップ生成ステップと、
前記合成相関マップより、前記走査画像における前記テンプレートのマッチング位置を決定するマッチング位置決定ステップと、
を有する画像処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の画像処理方法において、
前記上層パターン画像生成ステップは、
前記上層パターンデータの塗潰し画像から、同一輝度値の画素を結んだ閉曲線群によって構成される、複数レベルの上層パターンの等高線画像を生成する上層パターン画像生成ステップを有し、
前記上層相関マップ生成ステップは、
前記複数レベルの上層パターンの等高線画像と前記走査画像より正規化相関法によって複数レベルの上層相関マップを生成するステップと、
前記複数レベルの上層相関マップを合成して1つの上層相関マップを生成するステップと、を有し、
前記下層パターン画像生成ステップは、
前記下層パターンデータの塗潰し画像から、同一輝度値の画素を結んだ閉曲線群によって構成される、複数レベルの下層パターンの等高線画像を生成する下層パターン画像生成ステップを有し、
前記下層相関マップ生成ステップは、
前記複数レベルの下層パターンの等高線画像と前記走査画像より正規化相関法によって複数レベルの下層相関マップを生成するステップと、
前記複数レベルの下層相関マップを合成して1つの下層相関マップを生成するステップと、を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項3】
請求項2記載の画像処理方法において、
前記1つの上層相関マップを生成するステップは、前記複数レベルの上層相関マップより、画素毎に、対応する画素の画素値の最大値を取り、それを統合して1つの上層相関マップを生成し、
前記1つの下層相関マップを生成するステップは、前記複数レベルの下層相関マップより、画素毎に、対応する画素の画素値の最大値を取り、それを統合して1つの下層相関マップを生成することを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
請求項1記載の画像処理方法において、
前記合成相関マップ生成ステップは、
前記上層相関マップの各画素の画素値とそれに対応する前記下層相関マップの画素の画素値の重み付け平均値を求めるステップと、該重み付け平均値を、前記合成相関マップの対応する画素の画素値とするステップと、を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
請求項1記載の画像処理方法において、
前記合成相関マップ生成ステップは、
前記上層相関マップの1つの画素に対して、前記下層相関マップの対応する画素を含む周囲領域を設定するステップと、
前記上層相関マップの前記1つの画素とそれに対応する前記周囲領域の各画素値との重み付け平均値を算出することによって、前記周辺領域と同一寸法の重み付け平均画像を生成するステップと、
前記周囲領域の各画素に対して重み係数を設定するステップと、
前記重み付け平均画像の各画素に、対応する前記重み係数をそれぞれ乗算して、前記周辺領域と同一寸法の周辺領域重み付けマップを生成するステップと、
前記周辺領域重み付けマップを構成する全ての画素より画素値の最大値を抽出し、該最大値を前記合成相関マップの1つの画素の画素値とするステップと、
を有し、
前記合成相関マップ生成ステップに含まれる前記5つのステップを前記上層相関マップの全ての画素に適用することによって、前記合成相関マップを生成することを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
請求項5記載の画像処理方法において、
前記周囲領域の寸法は、前記上層相関マップに対する前記下層相関マップのズレの予想量に対応して設定されていることを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
請求項5記載の画像処理方法において、
前記周辺領域重み付けマップの中央の画素に対する前記画素値が最大値となる画素の位置のX方向を偏差量およびY方向の偏差量を演算するステップと、
前記上層相関マップの全ての画素毎にX方向のズレ量を記憶した下層Xズレ量画像を生成するステップと、
前記上層相関マップの全ての画素毎にY方向のズレ量を記憶した下層Yズレ量画像を生成するステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
請求項1記載の画像処理方法において、
更に、前記走査画像に対してエッジ強調処理を行い、エッジ強調画像を生成するステップを有し、
前記上層相関マップ生成ステップは、前記上層パターン画像と前記走査画像のエッジ強調画像の間でマッチングを行い、
前記下層相関マップ生成ステップは、前記下層パターン画像と前記走査画像のエッジ強調画像の間でマッチングを行うことを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
請求項1記載の画像処理方法において、
前記上層パターン画像生成ステップは、
前記上層パターンデータ及び前記下層パターンデータを入力し、前記上層パターンを明るい輝度で表し前記下層パターンをグレーの輝度で表した2層のパターンを含む下層マスク付き上層パターン画像を生成する下層マスク付上層デザイン画像生成ステップを有し、
前記下層パターン画像生成ステップは、
前記上層パターンの内部画像と前記上層パターンデータ及び前記下層パターンデータを入力し、前記下層パターンを明るい輝度で表し前記上層パターンをグレーの輝度で表した2層のパターンを含む上層マスク付き下層パターン画像を生成する上層マスク付下層デザイン画像生成ステップと、
を有し、
前記上層相関マップ生成ステップは、
前記下層マスク付き上層パターン画像と前記走査画像より正規化相関法によって前記上層相関マップを生成し、
前記下層相関マップ生成ステップは、
前記上層マスク付き下層パターン画像と前記走査画像より正規化相関法によって前記下層相関マップを生成することを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
請求項9記載の画像処理方法において、
前記下層マスク付き上層パターン画像の前記下層パターンのグレーの輝度は、前記下層マスク付き上層パターン画像の全体の平均輝度値に等しく、
前記上層マスク付き下層パターン画像の前記上層パターンのグレーの輝度は、前記上層マスク付き下層パターン画像の全体の平均輝度値に等しいことを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
画像処理装置を用いてテンプレート・マッチングを行う画像処理方法において、
走査型電子顕微鏡によって得られた走査画像を入力する走査画像入力ステップと、
テンプレートとして、多層パターンを含む設計データを入力する設計データ入力ステップと、
前記設計データから上層パターンデータと下層パターンデータを分離する層分離ステップと、
前記上層パターンデータの塗潰し画像から、同一輝度値の画素を結んだ閉曲線群によって構成される、複数レベルの上層パターンの等高線画像を生成する上層パターン画像生成ステップと、
前記複数レベルの上層パターンの等高線画像と前記走査画像より正規化相関法によって複数レベルの上層相関マップを生成するステップと、
前記複数レベルの上層相関マップを合成して1つの上層相関マップを生成する上層相関マップ生成ステップと、
前記下層パターンデータの塗潰し画像から、同一輝度値の画素を結んだ閉曲線群によって構成される、複数レベルの下層パターンの等高線画像を生成する下層パターン画像生成ステップと、
前記複数レベルの下層パターンの等高線画像と前記走査画像より正規化相関法によって複数レベルの下層相関マップを生成するステップと、
前記複数レベルの下層相関マップを合成して1つの下層相関マップを生成する下層相関マップ生成ステップと、
前記1つの上層相関マップと前記1つの下層相関マップを合成して合成相関マップを生成する合成相関マップ生成ステップと、
前記合成相関マップより、前記走査画像における前記テンプレートのマッチング位置を決定するマッチング位置決定ステップと、
を有する画像処理方法。
【請求項12】
請求項11記載の画像処理方法において、
前記上層相関マップ生成ステップと前記下層パターン画像生成ステップと前記下層相関マップ生成ステップと前記合成相関マップ生成ステップと前記マッチング位置決定ステップとを含む予備マッチングを行うステップと、
前記予備マッチングにて得た情報より所定レベルの上層パターンの等高線画像を選択するステップと、
前記予備マッチングにて得た情報より所定レベルの上層パターンの内部画像を選択するステップと、
前記予備マッチングにて得た情報より所定レベルの下層パターンの等高線画像を選択するステップと、
前記所定レベルの上層パターンの等高線画像、前記所定レベルの上層パターンの内部画像、及び、前記所定レベルの下層パターンの等高線画像より上層パターンの等高線画像と下層パターンの等高線画像を合成した合成等高線画像を生成するステップと、
前記合成等高線画像と前記所定レベルのエッジ強調画像の間のマッチングを行うステップと、
を有する画像処理方法。
【請求項13】
請求項12記載の画像処理方法において、前記合成等高線画像を生成するステップでは、前記合成等高線画像として、各層間ズレ量を有する各層間ズレ付きの合成等高線画像を生成することを特徴とする画像処理方法。
【請求項14】
設計データから上層パターンデータと下層パターンデータを分離する層分離部と、上層パターンデータを入力し上層パターン画像を生成する上層デザイン画像生成部と、下層パターンデータを入力し下層パターン画像を生成する下層デザイン画像生成部と、走査型電子顕微鏡からのSEM画像を入力しエッジ強調処理を行いそれによりSEMエッジ画像を生成するSEMエッジ画像生成部と、前記SEMエッジ画像とテンプレートの間でテンプレート・マッチングを行うマッチング実行部と、を有し、
前記マッチング実行部は、前記上層パターン画像と前記SEM強調画像の間のテンプレート・マッチングにより上層相関マップを生成し、前記下層パターン画像と前記SEM強調画像の間のテンプレート・マッチングにより下層相関マップを生成し、前記上層相関マップと前記下層相関マップを合成して合成相関マップを生成し、前記合成相関マップより、前記SEM強調画像における前記設計データのマッチング位置を求めることを特徴とする画像処理装置。
【請求項15】
請求項14記載の画像処理装置において、
前記上層デザイン画像生成部は、前記上層パターンデータから複数レベルの上層パターンの等高線画像を生成し、前記下層デザイン画像生成部は、前記下層パターンデータから複数レベルの下層パターンの等高線画像を生成し、
前記SEMエッジ画像生成部は、前記SEMエッジ画像に対してエッジ膨張処理を行いそれにより複数レベルのエッジ膨張画像を生成し、
前記マッチング実行部は、前記複数レベルの上層パターンの等高線画像と前記複数レベルのエッジ膨張画像の間のテンプレート・マッチングにより複数レベルの上層相関マップを生成し、該複数レベルの上層相関マップから1つの上層相関マップを生成し、前記複数レベルの下層パターンの等高線画像と前記複数レベルのエッジ膨張画像の間のテンプレート・マッチングにより複数レベルの下層相関マップを生成し、該複数レベルの下層相関マップから1つの下層相関マップを生成し、前記1つの上層相関マップと前記1つの下層相関マップを合成して合成相関マップを生成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項16】
設計データから上層パターンデータと下層パターンデータを分離する層分離部と、上層パターンデータを入力し複数レベルの上層パターンの等高線画像を生成する上層デザイン画像生成部と、下層パターンデータを入力し複数レベルの下層パターンの等高線画像を生成する下層デザイン画像生成部と、上層パターンデータを入力し上層パターンの内部画像を生成する上層内部画像生成部と、前記複数レベルの上層パターンの等高線画像と前記複数レベルの下層パターンの等高線画像を入力し前記上層パターンを明るい輝度で表し前記下層パターンをグレーの輝度で表した2層のパターンを含む下層マスク付きの複数レベルの上層パターン画像を生成する下層マスク付上層デザイン画像生成部と、前記複数レベルの上層パターンの等高線画像及び前記複数レベルの下層パターンの等高線画像と前記上層パターンの内部画像を入力し前記下層パターンを明るい輝度で表し前記上層パターンをグレーの輝度で表した2層のパターンを含む上層マスク付きの複数レベルの下層パターン画像を生成する上層マスク付下層デザイン画像生成部と、走査型電子顕微鏡からのSEM画像を入力しエッジ強調処理を行いそれによりSEMエッジ画像を生成するSEMエッジ画像生成部と、前記SEMエッジ画像とテンプレートの間でテンプレート・マッチングを行うマッチング実行部と、を有し、
前記マッチング実行部は、前記下層マスク付きの複数レベルの上層パターン画像と前記SEMエッジ画像の間のテンプレート・マッチングにより複数レベルの上層相関マップを生成し、前記上層マスク付きの複数レベルの下層パターン画像と前記SEMエッジ画像の間のテンプレート・マッチングにより複数レベルの下層相関マップを生成し、前記複数レベルの上層相関マップから1つの上層相関マップを生成し、前記複数レベルの下層相関マップから1つの下層相関マップを生成し、前記1つの上層相関マップと前記1つの下層相関マップを合成して合成相関マップを生成し、前記合成相関マップより、前記SEM画像における前記設計データのマッチング位置を求めることを特徴とする画像処理装置。
【請求項17】
請求項16に記載の画像処理装置において、
前記マッチング実行部は、前記SEM画像における前記設計データのマッチング位置の候補を求める予備マッチングを行い、予備マッチングの結果として、所定のレベルの上層パターンの等高線画像、所定レベルの上層パターンの内部画像、所定のレベルの下層パターンの等高線画像、及び、前記等高線画像のマッチング位置を得ることを特徴とする画像処理装置。
【請求項18】
請求項17に記載の画像処理装置において、
前記マッチング実行部は、
前記予備マッチングの結果として得られた、前記所定のレベルの上層パターンの等高線画像、前記所定レベルの上層パターンの内部画像、及び、前記所定のレベルの下層パターンの等高線画像より、X方向及びY方向の各層間ズレ付きの合成等高線画像を生成し、前記各層間ズレ付きの合成等高線画像と前記SEMエッジの間でパターン・マッチングを行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項19】
請求項14〜18のいずれか1項記載の画像処理装置と走査型電子顕微鏡を備えた検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
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【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2011−33398(P2011−33398A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177896(P2009−177896)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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