説明

磁気メモリ

【課題】磁気記録層の強磁性体膜が強い垂直磁気異方性を有する磁気メモリを提供する。
【解決手段】磁気メモリは、強磁性体の下地層51と、下地層51上にの第1非磁性52と、第1非磁性52上の垂直磁気異方性を有する強磁性体のデータ記憶層53と、第2非磁性層20を介してデータ記憶層53に接続された参照層30と、下地層51の下側に接した第1、第2磁化固定層41a、41bとを具備する。データ記憶層53は、反転可能な磁化を有し参照層30とオーバーラップする磁化自由領域13と、磁化自由領域13の端に接続され、第1磁化固定層41aに+z方向に磁化固定された第1磁化固定領域11aと、磁化自由領域13の他の端に接続され、第2磁化固定層41bに−z方向に磁化固定された第2磁化固定領域11bとを備える。磁化自由領域13下の第1非磁性52は、第1、第2磁化固定領域11a、11b下の第1非磁性52よりも厚い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気メモリに関する。特に本発明は、磁壁移動型の磁気メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気メモリ、特に磁気ランダムアクセスメモリ(Magnetic Random Access Memory;MRAM)は、高速動作および無限回の書き換えが可能な不揮発性メモリである。MRAMの実用化は一部で始まっており、また、より汎用性を高めるための開発が行われている。MRAMは、記憶素子として磁性体を用い、その磁性体の磁化の向きに対応させてデータを記憶する。記憶素子に所望のデータを書き込むためには、磁性体の磁化をそのデータに対応した向きにスイッチさせる。この磁化方向のスイッチング方法としていくつかの方式が提案されているが、いずれも電流(以下、「書き込み電流」と参照される)を使う点では共通している。MRAMを実用化する上では、この書き込み電流をどれだけ小さくできるかが非常に重要である。
【0003】
非特許文献1(N.Sakimura et al.,“MRAM Cell Technology for Over 500−MHz SoC”,IEEE JOURNAL OF SOLID−STATE CIRCUITS,VOL.42,NO.4,pp.830−838,2007.)によれば、書き込み電流を0.5mA以下へ低減することでセル面積が既存の混載SRAMと同等になることが示されている。
【0004】
MRAMへのデータ書き込み方法のうちで最も一般的なのは、磁性記憶素子の周辺に書き込みのための配線を配置し、この配線に書き込み電流を流すことで磁場を発生させ、その磁場によって磁性記憶素子の磁化方向をスイッチングさせる方法である。この方法によれば、原理的には1ナノ秒以下での書き込みが可能であり、高速MRAMを実現する上では好適である。しかしながら、熱安定性及び外乱磁場耐性が確保された磁性体の磁化をスイッチングするための磁場は、一般的には数10Oe(エールステッド)程度であり、このような磁場を発生させるためには数mA程度の書き込み電流が必要となる。この場合、チップ面積が大きくならざるを得ず、また書き込みに要する消費電力も増大するため、他のランダムアクセスメモリと比べて競争力で劣る。これに加えて、素子が微細化されると、書き込み電流はさらに増大してしまい、スケーリング性の点でも好ましくない。
【0005】
近年、このような問題を解決する手段として、以下の2つの方法が提案されている。
【0006】
1つ目は、スピン注入磁化反転(Spin Torque Transfer)方式である。スピン注入磁化反転方式によれば、反転可能な磁化を有する第1の磁性層と、それに電気的に接続され、磁化方向が固定された第2の磁性層から構成された積層膜において、第2の磁性層と第1の磁性層の間で書き込み電流が流される。このとき、スピン偏極した伝導電子と第1の磁性層中の局在電子との間の相互作用により、第1の磁性層の磁化を反転させることができる。読み出しの際には、第1の磁性層と第2の磁性層との間で発現する磁気抵抗効果が利用される。従って、スピン注入磁化反転を用いた磁性記憶素子は、2端子の素子となる。スピン注入磁化反転はある電流密度以上のときに起こるため、素子サイズが小さくなれば、書き込みに要する電流は低減される。すなわち、スピン注入磁化反転方式はスケーリング性に優れていると言うことができる。しかしながら、一般的に第1の磁性層と第2の磁性層の間には絶縁層が設けられ、書き込みの際には比較的大きな書き込み電流を、この絶縁層を貫通して流さなければならず、書き換え耐性や信頼性が課題となる。また、書き込み電流経路と読み出し電流経路が同じになることから、読み出しの際の誤書き込みも懸念される。このように、スピン注入磁化反転はスケーリング性には優れているものの、実用化にはいくつかの障壁がある。
【0007】
2つ目は、電流誘起磁壁移動(Current Driven Domain Wall Motion)方式である。電流誘起磁壁移動を利用したMRAMは、例えば特許文献1(特開2005−191032号公報)に開示されている。一般的な電流誘起磁壁移動型のMRAMでは、反転可能な磁化を有する磁性層(データを記憶するデータ記憶層)が設けられ、そのデータ記憶層の両端部の磁化が互いに略反平行となるように固定される。このような磁化配置により、データ記憶層内に磁壁が導入される。ここで、非特許文献2(A.Yamaguchi et al.,“Real−Space Observation of Current−Driven Domain Wall Motion in Submicron Magnetic Wires”,PHYSICAL REVIEW LETTERS,VOL.92,NO.7,077205,2004.)で報告されているように、磁壁を貫通する方向に電流を流したとき、その磁壁は伝導電子の方向に移動する。従って、データ記憶層に面内方向の書き込み電流を流すことにより、その電流方向に応じた向きに磁壁を移動させ、所望のデータを書き込むことが可能となる。読み出しの際には、磁壁が移動する領域を含む磁気トンネル接合が用いられ、磁気抵抗効果に基づいて読み出しが行われる。従って、電流誘起磁壁移動を利用した磁性記憶素子は、3端子の素子となる。また、スピン注入磁化反転と同様に、電流誘起磁壁移動もある電流密度以上のときに起こる。従って、電流誘起磁壁移動方式もスケーリング性に優れていると言える。それに加えて、電流誘起磁壁移動方式の場合、書き込み電流が絶縁層を流れることはなく、また、書き込み電流経路と読み出し電流経路とは別となる。従って、スピン注入磁化反転の場合の上述の問題点が解決される。尚、上述の非特許文献2では、電流誘起磁壁移動に必要な電流密度として1×10[A/cm]程度が報告されている。
【0008】
非特許文献3(S.Fukami et al.,“Micromagnetic analysis of current driven domain wall motion in nanostrips with perpendicular magnetic anisotropy”,JOURNAL OF APPLIED PHYSICS,VOL.103,07E718,2008.)には、電流誘起磁壁移動方式における垂直磁気異方性材料の有用性が述べられている。具体的には、磁壁移動が起こるデータ記憶層が垂直磁気異方性を有している場合に書き込み電流を十分小さく低減できることが、マイクロマグネティックシミュレーションを通して判明している。
【0009】
特許文献3(国際公開WO/2009/001706号公報)には、垂直磁気異方性を有する磁性体を用いた磁気抵抗効果素子、及びそれをメモリセルとして備えたMRAMが開示されている。図1は、国際公開WO/2009/001706号公報の磁気抵抗効果素子を模式的に示す断面図である。磁気抵抗効果素子は、磁気記憶層110と、スペーサ層120と、参照層130とを具備している。
【0010】
磁気記憶層110は、垂直磁気異方性を有する強磁性体で形成されている。磁気記憶層110は、第1磁化固定領域111a、第2磁化固定領域111b、及び磁化自由領域113を有している。磁化固定領域111a、111bは磁化自由領域113の両側に配置されている。磁化固定領域111a、111bの磁化は互いに逆方向(反平行)に固定されている。例えば、図1に示されるように、第1磁化固定領域111aの磁化方向は+z方向に固定され、第2磁化固定領域111bの磁化方向は−z方向に固定されている。一方、磁化自由領域113の磁化方向は、磁化固定領域111a、111bの一方から他方へ流れる書込み電流により反転可能であり、+z方向あるいは−z方向となる。従って、磁化自由領域113の磁化方向に応じて、磁気記憶層110内には磁壁112a又は磁壁112bが形成される。データは、磁化自由領域113の磁化の向きとして記憶される。磁壁112の位置(112a又は112b)として記憶されると見ることもできる。磁化方向が固定された強磁性体である参照層130、非磁性層(絶縁層)のスペーサ層120及び磁化自由領域113は磁気トンネル接合(MTJ)を形成している。データは、MTJの抵抗値の大小として読み出される。
【0011】
この特許文献3には、磁気記憶層110が垂直磁気異方性を有する場合、書き込み電流を低減することが可能であることが開示されている。
【0012】
垂直磁気異方性を有する材料の中で一般的に知られているものには、CoとNi、CoとPtおよびCoとPdの積層膜があり、CoとNiの積層膜の上下または層間にPtやPdを入れることが可能である。また、ハードディスク媒体に用いられる材料としてCoCr系合金および、CoCr系合金とSiO2やTiO2などの混合物などがある。また光磁気記録用の媒体に用いられる材料としてTbFeCoなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−191032号公報
【特許文献2】米国特許第6,834,005号公報
【特許文献3】国際公開WO/2009/001706号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】N.Sakimura et al.,“MRAM Cell Technology for Over 500−MHz SoC”,IEEE JOURNAL OF SOLID−STATE CIRCUITS,VOL.42,NO.4,pp.830−838,(2007).
【非特許文献2】A.Yamaguchi et al.,“Real−Space Observation of Current−Driven Domain Wall Motion in Submicron Magnetic Wires”,PHYSICAL REVIEW LETTERS,VOL.92,NO.7,077205,(2004).
【非特許文献3】S.Fukami et al.,“Micromagnetic analysis of current driven domain wall motion in nanostrips with perpendicular magnetic anisotropy”,JOURNAL OF APPLIED PHYSICS,VOL.103,07E718,(2008).
【非特許文献4】A. Thiaville et al., “Domain wall motion by spin−polarized current: a micromagnetic study”, JOURNAL OF APPLIED PHYSICS, VOL. 95, NO. 11, pp.7049−7051, (2004).
【非特許文献5】G.H.O.Daalderop et al.,“Prediction and Confirmation of Perpendicular Magnetic Anisotropy in Co/Ni Multilayers”,PHYSICAL REVIEW LETTERS,VOL.68,NO.5,pp.682−685,(1992).
【非特許文献6】T.Suzuki et al.,“Evaluation of Scalability for Current−Driven Domain Wall Motion in a Co/Ni Multilayer Strip for Memory Applications”,IEEE TRANS ACTIONS ON MAGNETICS,VOL.45,NO.10,pp.3776−3779,(2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述のように、強磁性体膜(例示:磁気記憶層110)が垂直磁気異方性を有することは、MRAMの低定電流化のために重要である。また、強磁性体膜が磁壁移動に対する適性(例示:スピン分極率の高さ)を有することは、磁壁移動によりデータを記憶するために重要である。強磁性体膜の垂直磁気異方性や磁壁移動に対する適正は、選択する材料だけでなく、成膜時の下地層の材料や構造によっても影響を受ける。従って、垂直磁気異方性が高く、磁壁移動に対する適正も高い膜を得るためには、強磁性体膜の材料の選択と共に下地層の材料や構造の選択も重要である。
【0016】
例えば、垂直磁気異方性を有する材料であって磁壁移動に適している材料として、Pt上に成膜したCoとNiの積層膜([Co/Ni]n/Pt膜)がある。ただし、nはCoとNiの積層回数であり自然数である。CoとNiの積層膜はスピン分極率が高いという点で有利である。その一方で、CoとNiの積層膜はCoとPtの積層膜やCoとPdの積層膜と比較して垂直磁気異方性が低いという点で不利である。しかし、CoとNiの積層膜をPt膜上に形成すれば、垂直磁気異方性が高くなり、上記不利な点が解消する。
【0017】
また、[Co/Ni]n/Pt膜は、Co/Niがfcc(111)に配向するとき垂直磁気異方性が高くなる。しかし、Co/Niの結晶配向性は、[Co/Ni]n/Pt膜の下地層の材料により変わり、それに対応して垂直磁気異方性の大きさも変わってくる。従って、[Co/Ni]n/Pt膜の下地層の材料の選定が重要である。
【0018】
また、図1の磁化固定領域111a、111bの磁化の固定を、それらの下方の磁化固定層(図示されず)との間の磁気的結合で行っている場合がある。その場合、磁気記憶層110(垂直磁気異方性を有する強磁性体膜)の下地層が磁化固定領域111a、111bと磁化固定層との間の磁気的結合に影響を及ぼさないことも重要である。例えば、磁気記憶層110の下地層の膜厚が厚過ぎる場合、磁気的結合が切れ磁壁移動によるデータ記録が機能しなくなるおそれがある。
【0019】
更に、強磁性体膜の成膜工程の後、他の工程において何らかの熱処理がなされる場合、その熱処理の温度により垂直磁気異方性が変化する場合がある。そのような熱処理による垂直磁気異方性の変化は、下地層の材料により異なる。そのため、この点に関しても、強磁性体膜の下地層の材料の選定が重要である。
【0020】
例えば、Cu配線工程では、熱処理の温度が350℃程度であり、更に将来的にはCu配線工程での熱処理温度が下がる可能性がある。したがって、350℃又はその温度以下の熱処理温度で、強磁性体膜の垂直磁気異方性が高くなるように、下地層の材料を選定する必要がある。
【0021】
磁気記録層の強磁性体膜の垂直磁気異方性や磁壁移動に対する適性が高くなるような下地層が望まれる。その強磁性体膜の磁化固定領域と磁化固定層との磁気的結合に悪影響を与えず、その強磁性体膜が熱処理に強くなるような下地層が望まれる。磁気メモリ製造過程を終了した後であっても、その強磁性体膜が強い垂直磁気異方性を有する磁気メモリが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係を明らかにするために括弧付きで付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0023】
本発明の磁気メモリは、下地層(51)と、第1非磁性(52、521)と、データ記憶層(53)と、参照層(30)と、第1磁化固定層(41a)及び第2磁化固定層(41b)とを具備している。下地層(51)は、強磁性体である。第1非磁性(52、521)は、下地層(51)上に設けられている。データ記憶層(53)は、第1非磁性(52、521)上に設けられ、垂直磁気異方性を有する強磁性体である。参照層(30)は、第2非磁性層(20)を介してデータ記憶層(53)に接続されている。第1磁化固定層(41a)及び第2磁化固定層(41b)は、下地層(51)の下側に接して設けられている。データ記憶層(53)は、磁化自由領域(13)と、第1磁化固定領域(11a)と、第2磁化固定領域(11b)とを備えている。磁化自由領域(13)は、反転可能な磁化を有し参照層(30)とオーバーラップする。第1磁化固定領域(11a)は、磁化自由領域(13)の第1境界に接続され、第1磁化固定層(41a)に磁化の向きを第1方向(+z)に固定されている。第2磁化固定領域(11b)は、磁化自由領域(13)の第2境界に接続され、第2磁化固定層(41b)に磁化の向きを第1方向(+z)と反平行な第2方向(−z)に固定されている。磁化自由領域(13)の下側の第1非磁性(52、521)は、第1磁化固定領域(11a)及び第2磁化固定領域(11b)の下側の第1非磁性(52、521)よりも厚い。
【0024】
本発明の磁気メモリの製造方法は、互いに離間して設けられた第1磁化固定層(41a)及び第2磁化固定層(41b)上に、下地層用の下地強磁性膜(51a)と第1非磁性層用の第1非磁性膜(52a、521a)とをこの順で積層する工程と、前記第1非磁性膜(52a、521a)のうち、前記第1磁化固定層(41a)上の少なくとも一部分及び前記第2磁化固定層(41b)上の少なくとも一部分を、他の部分と比較して薄くする工程と、前記第1非磁性膜(52a、521a)上に、垂直磁気異方性を有するデータ記憶層用の第1強磁性体膜(53a)と、第2非磁性層用の第2非磁性膜(20a)と、参照層用の第2強磁性体膜(30a)とをこの順で積層する工程と、前記第2強磁性体膜(30a)、前記第2非磁性膜(20a)、前記第1強磁性体膜(53a)、前記第1非磁性膜(52a、521a)及び前記下地強磁性膜(51a)を素子形状に加工して、前記下地層、前記第1非磁性層及び前記データ記憶層を形成する工程と、前記第2強磁性体膜(30a)及び前記第2非磁性膜(20a)層を前記参照層(30)の形状に加工して、前記第2非磁性層及び前記参照層を形成する工程とを具備している。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、磁壁移動を利用した磁気抵抗効果素子及びそれを用いた磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)に相応しい垂直磁気異方性を有するデータ記憶層を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、国際公開WO/2009/001706号公報の磁気抵抗効果素子を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る磁気メモリの主要部の概略構成を示す模式図である。
【図3A】図3Aは、本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子の構成例を示す側面図である。
【図3B】図3Bは、本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子の磁気記録層の構成例を示す断面図ある。
【図3C】図3Cは、本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子の他の構成例を示す側面図である。
【図4】図4は、データ記憶層に外部磁場を印加した場合の磁化曲線の一例を示すグラフである。
【図5A】図5Aは、比較例の磁気抵抗効果素子の構成例を示す断面図である。
【図5B】図5Bは、比較例の磁気抵抗効果素子の構成例を示す側面図である。
【図6A】図6Aは、図5A及び図5Bの構成を有するデータ記憶層の膜に外部磁場を印加した場合の磁化曲線の一例を示すグラフである。
【図6B】図6Bは、図5A及び図5Bの構成を有するデータ記憶層の膜に外部磁場を印加した場合の磁化曲線の一例を示すグラフである。
【図7A】図7Aは、図5A及び図5Bの構成を有するデータ記憶層の膜に熱処理を施した後に外部磁場を印加した場合の磁化曲線の一例を示すグラフである。
【図7B】図7Bは、図5A及び図5Bの構成を有するデータ記憶層の膜に熱処理を施した後に外部磁場を印加した場合の磁化曲線の一例を示すグラフである。
【図8A】図8Aは、実施例の磁気抵抗効果素子の構成例を示す断面図である。
【図8B】図8Bは、実施例の磁気抵抗効果素子の構成例を示す側面図である。
【図9A】図9Aは、図8A〜図8Cの構成を有するデータ記憶層の膜に外部磁場を印加した場合の磁化曲線の一例を示すグラフである。
【図9B】図9Bは、図8A〜図8Cの構成を有するデータ記憶層の膜に外部磁場を印加した場合の磁化曲線の一例を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の第2の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子の構成例を示す側面図である。
【図11A】図11Aは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示す平面図である。
【図11B】図11Bは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示すxz断面図である。
【図11C】図11Cは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示すyz断面図である。
【図12A】図12Aは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示す平面図である。
【図12B】図12Bは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示すxz断面図である。
【図12C】図12Cは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示すyz断面図である。
【図13A】図13Aは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示す平面図である。
【図13B】図13Bは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示すxz断面図である。
【図13C】図13Cは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示すyz断面図である。
【図14A】図14Aは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示す平面図である。
【図14B】図14Bは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示すxz断面図である。
【図14C】図14Cは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示すyz断面図である。
【図15A】図15Aは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示す平面図である。
【図15B】図15Bは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示すxz断面図である。
【図15C】図15Cは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示すyz断面図である。
【図16A】図16Aは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示す平面図である。
【図16B】図16Bは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示すxz断面図である。
【図16C】図16Cは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示すyz断面図である。
【図17A】図17Aは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示す平面図である。
【図17B】図17Bは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示すxz断面図である。
【図17C】図17Cは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示すyz断面図である。
【図18A】図18Aは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示す平面図である。
【図18B】図18Bは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示すxz断面図である。
【図18C】図18Cは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示すyz断面図である。
【図19A】図19Aは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法の変形例を示す平面図である。
【図19B】図19Bは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法の変形例を示すxz断面図である。
【図19C】図19Cは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法の変形例を示すyz断面図である。
【図20A】図20Aは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法の変形例を示す平面図である。
【図20B】図20Bは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法の変形例を示すxz断面図である。
【図20C】図20Cは、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法の変形例を示すyz断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る磁気メモリについて添付図面を参照して説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態に係る磁気メモリの主要部の概略構成を示す模式図である。磁気メモリは、磁気ランダムアクセスメモリ(Magnetic Random Access Memory;MRAM)に例示され、行列状に配置された複数の磁気メモリセル80を具備している。
【0028】
磁気メモリセル80は、磁気抵抗効果素子70と、選択トランジスタTra、Trbとを備えている。選択トランジスタTraは、ゲートをワード線WLに、ソース/ドレインの一方をビット線BLに、ソース/ドレインの他方を磁気抵抗効果素子70の第1磁化固定層41a(後述)に第1電極層42aを介してそれぞれ接続されている。選択トランジスタTrbは、ゲートをワード線WLに、ソース/ドレインの一方をビット線/BLに、ソース/ドレインの他方を磁気抵抗効果素子70の第2磁化固定層41b(後述)に第2電極層42bを介してそれぞれ接続されている。
【0029】
磁気抵抗効果素子70は、磁気記憶層10と、スペーサ層20と、参照層30とを備えている。更に、第1磁化固定層41aと第2磁化固定層41bを備えていても良い。
【0030】
磁気記憶層10は、磁化自由領域13と、第1磁化固定領域11aと、第2磁化固定領域11bとを含んでいる。磁化自由領域13は、垂直磁気異方性を有する強磁性体である。磁化自由領域13は磁化反転が可能であり、その磁化状態に応じてデータを記憶する。また、磁化自由領域13の両側には、それぞれ第1磁化固定領域11a及び第2磁化固定領域11bが設けられている。磁化自由領域13は、スペーサ層20を介して参照層30とオーバーラップしている。第1磁化固定領域11aの磁化と第2磁化固定領域11bの磁化とは互いに逆方向(反平行)に固定されている。図2の例では、第1磁化固定領域11aの磁化方向は第1磁化固定層41aにより+z方向に固定され、第2磁化固定領域11bの磁化方向は第2磁化固定層41bにより−z方向に固定されている。第1磁化固定層41aと第2磁化固定層41bは垂直磁気異方性を有する強磁性膜であり、磁気記録層10と比べ高い保磁力を有する膜で構成される。
【0031】
磁化自由領域13の磁化方向は反転可能であり、+z方向及び−z方向のいずれかになり得る。従って、磁化自由領域13の磁化方向に応じて、磁気記憶層10内には磁壁12(12a又は12b)が形成される。図2の例では、磁化自由領域13の磁化方向が+z方向の場合、磁化自由領域13と第2磁化固定領域11bとの間に磁壁12bが形成される。一方、磁化自由領域13の磁化方向が−z方向の場合、磁化自由領域13と第1磁化固定領域11aとの間に磁壁12aが形成される。すなわち、磁気記憶層10は少なくとも一つの磁壁12(12a又は12b)を有し、その磁壁12の位置は磁化自由領域13の磁化方向に対応している。
【0032】
スペーサ層20は、磁気記憶層10に隣接して設けられている。特に、スペーサ層20は、少なくとも磁気記憶層10の磁化自由領域13に隣接するように設けられている。このスペーサ層20は非磁性体で形成されている。より好適には絶縁体(例示:アルミナ酸化膜(Al−Ox)、酸化マグネシウム(MgO))で形成されている。
【0033】
参照層30は、スペーサ層20に隣接して、磁気記憶層10とは反対側に設けられている。つまり、参照層30は、スペーサ層20を介して磁気記憶層10(磁化自由領域13)に接続されている。この参照層30は強磁性体で形成され、その磁化方向は一方向に固定されている。好適には、磁気記憶層10と同様に、参照層30も垂直磁気異方性を有する強磁性体で形成される。この場合、参照層30の磁化方向は、+z方向あるいは−z方向に固定される。図2の例では、参照層30の磁化方向は、+z方向に固定されている。ただし、参照層30は面内磁気異方性を有する強磁性体であってもよい。その場合、参照層30は、磁化自由領域13の真上ではなく、いずれかの方向にずれた(xy面内での重心が磁化自由領域30の重心からずれた)位置に配置される。参照層30の強磁性体の保磁力を大きくするために、反強磁性層を積層しても良い。反強磁性層としては、鉄・マンガン(FeMn)、白金・マンガン(PtMn)、ニッケル・マンガン(NiMn)などのマンガン合金反強磁性膜、或いは、コバルト酸化物(CoO)、ニッケル酸化物(NiO)などの酸化物反強磁性膜が用いられる。
【0034】
以上に説明された磁化自由領域13、スペーサ層20、及び参照層30は、磁気トンネル接合(Magnetic Tunnel Junction;MTJ)を形成している。すなわち、磁化自由領域13、スペーサ層20、及び参照層30は、MTJにおけるフリー層、バリア層、及びピン層に相当する。
【0035】
なお、電極層が磁気記憶層10の両端にそれぞれ電気的に接続されている。特に、第1、第2磁化固定領域11a、11bのそれぞれに接続されるように、2つの電極層が設けられている。これら電極層は、磁気記憶層10に書き込み電流を導入するために用いられる。これら電極層は、上述した第1、第2磁化固定層41a、41bを介して磁気記憶層10の両端に接続することができる。図2の例では、第1磁化固定層41aには第1電極層42aが設けられ、第2磁化固定層41bには第2電極層42bが設けられている。また、他の電極層が参照層30に電気的に接続されている。
【0036】
参照層30及び磁気記録層10は、垂直磁気異方性を有する強磁性膜であり、磁気記録層10及び参照層30の磁化に向きは、膜厚方向に向けられている。磁気記録層10及び参照層30は、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)或いはこれらのいずれかを含む合金から構成されている。磁気記録層10及び参照層30が、PtやPdを含むことで垂直磁気異方性を安定化することができる。これに加えて、B、C、N、O、Al、Si、P、Ti、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Au、Smなどを添加することによって所望の磁気特性が発現されるように調整することができる。具体的には磁気記録層10及び参照層30として使用可能な材料としては、Co、Co−Pt、Co−Pd、Co−Cr、Co−Pt−Cr、Co−Cr−Ta、Co−Cr−B、Co−Cr−Pt−B、Co−Cr−Ta−B、Co−V、Co−Mo、Co−W、Co−Ti、Co−Ru、Co−Rh、Fe−Pt、Fe−Pd、Fe−Co−Pt、Fe−Co−Pd、Sm−Coなどが例示される。この他、Fe、Co、Niのうちから選択されるいずれか一つの材料を含む層が、異なる層と積層されることにより垂直方向の磁気異方性を発現させることもできる。具体的にはCo/Pd、Co/Pt、Fe/Auの積層膜などが例示される。
【0037】
更に、そのような積層膜におけるFe、Co、Niを含む層が、更に積層膜であっても良い。すなわち、その層が、Fe、Co、Niのうちから選択される少なくとも一つの材料を含む単相又は合金であり、上述された種々の材料のうちのいずれか一つである第1層と、Fe、Co、Niのうちから選択される少なくとも一つの材料を含む単相又は合金であり、上述された種々の材料のうちのいずれか一つであって第1層と異なる第2層とが、一回又は複数回、積層された層であっても良い。それにより垂直方向の磁気異方性を発現させることもできる。具体的には、例えば、Pt膜上に成膜したCoとNiの積層膜([Co/Ni]n/Pt膜)である。
【0038】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子のデータの記憶状態について、図2の例を用いて説明する。
【0039】
図2の例において、磁化自由領域13の磁化方向が+z方向の場合、磁化自由領域13と第2磁化固定領域11bとの境界に、磁壁12bが形成される。また、磁化自由領域13の磁化方向と参照層30の磁化方向は、互いに平行である。従って、MTJの抵抗値は比較的小さくなる。このような磁化状態は、例えばデータ“0”の記憶状態に対応付けられる。一方、図2において、磁化自由領域13の磁化方向が−z方向の場合、磁化自由領域13と第1磁化固定領域11aとの境界に、磁壁12aが形成される。また、磁化自由領域13の磁化方向と参照層30の磁化方向は、互いに反平行である。従って、MTJの抵抗値は比較的大きくなる。このような磁化状態は、例えばデータ“1”の記憶状態に対応付けられる。このように、磁化自由領域13の磁化状態、すなわち、磁気記憶層10中の磁壁の位置に対応して、2つの記憶状態が実現される。磁化自由領域13は、その磁壁12の位置に対応してデータを記憶している。
【0040】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子のデータの書き込み方法について図2を参照して説明する。
【0041】
データ“0”状態(磁化自由領域13の磁化方向と参照層30の磁化方向は互いに平行)において、データ“1”状態(互いに反平行)を書き込む場合、第1磁化固定領域11aから第2磁化固定領域11bへ書き込み電流IWを流す。伝導電子は、第2磁化固定領域11bから第1磁化固定領域11aへと流れる。このとき、第2磁化固定領域11bと磁化自由領域13の境界近傍に位置している磁壁12bにはスピントランスファートルク(Spin Transfer Torque; STT)が働き、磁壁12bは、第1磁化固定領域11aに向けて移動する。すなわち、電流誘起磁壁移動が起こる。書き込み電流(密度)は、第1磁化固定領域11aと磁化自由領域13との境界よりも第1磁化固定領域11a側で減少するため、磁壁12の移動はその境界近傍で停止する。このようにして、磁壁12bが第1磁化固定領域11aと磁化自由領域13の境界近傍に移動し、データ“1”の書き込みが実現される。
【0042】
次に、データ“1”状態(磁化自由領域13の磁化方向と参照層30の磁化方向は互いに反平行)において、データ“0”状態(互いに平行)を書き込む場合、第2磁化固定領域11bから第1磁化固定領域11aへ書き込み電流IWを流す。伝導電子は、第1磁化固定領域11aから第2磁化固定領域11bへと流れる。このとき、第1磁化固定領域11aと磁化自由領域13の境界近傍に位置している磁壁12aにはスピントランスファートルクが働き、磁壁12aは、第2磁化固定領域11bに向けて移動する。すなわち、電流誘起磁壁移動が起こる。書き込み電流(密度)は、第2磁化固定領域11bと磁化自由領域13との境界よりも第2磁化固定領域11b側で減少するため、磁壁12の移動はその境界近傍で停止する。このようにして、磁壁12aが第2磁化固定領域11bと磁化自由領域13の境界近傍に移動し、データ“0”の書き込みが実現される。
【0043】
なお、データ“0”状態におけるデータ“0”書き込み、及びデータ“1”状態におけるデータ“1”書き込みを行った場合には状態変化は起こらない。すなわちオーバーライトが可能である。
【0044】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子のデータの読み出し方法について図2を参照して説明する。
【0045】
本実施の形態では、トンネル磁気抵抗効果(Tunneling Magnetoresistive effect; TMR effect)を利用することにより、データ読み出しが行われる。そのために、MTJ(磁化自由領域13、スペーサ層20、参照層30)を貫通する方向に、読み出し電流IRが流される。なお、読み出し電流方向は任意である。このとき、磁気抵抗効果素子70がデータ“0”状態の場合、MTJの抵抗値は比較的小さくなる。データ”1”状態の場合、MTJの抵抗値は比較的大きくなる。従って、この抵抗値の値を検出することで、データを読み出すことができる。
【0046】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子70の磁気記録層10の詳細構成について更に説明する。図3Aは、本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子の構成例を示す側面図である。図3Bは、本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子の磁気記録層の構成例を示す断面図ある。ただし、図3Bは図3Aにおける磁気記録層10のSS’断面図である。
【0047】
図3A及び図3Bの例では、磁気抵抗効果素子70は、磁気記憶層10と、スペーサ層20と、参照層30とを備え、更に、第1磁化固定層41aと第2磁化固定層41bとを備えている。磁気記録層10は、下地層51と、中間層52と、データ記憶層53とを含んでいる。
【0048】
データ記憶層53は、垂直磁気異方性を有し、第1磁化固定領域11a、第2磁化固定領域11b及び磁化自由領域13が形成される。すなわち、データを記憶する機能を有している。中間層52及び下地層51は、データ記憶層53の下に設けられ、データ記憶層53の磁気特性を所望の特性を有するように調整する機能を有している。本実施の形態では、データ記憶層53の磁気特性が、その下地(下地層51、中間層52など)の材料に影響されることに鑑みて、その下地の材料の影響を詳細に検討した。特に、下地の材料によりデータ記憶層53の結晶配向性が変わり、それに伴い垂直磁気異方性の大きさも変動する場合である。更に、その後の熱処理温度による垂直磁気異方性の変化も下地の材料により異なるため下地材料の選定が重要である。
【0049】
下地層51は、その下側(−z側)の両端部(x方向)で第1磁化固定層41a及び第2磁化固定層41bの上部に接している。下地層51は、磁性体であり、強磁性体であることが好ましい。後述されるように、下地層51が強磁性体であることは、第1、第2磁化固定層41a、41bとデータ記憶層53との磁気的結合を補助するために好ましい。
【0050】
下地層51は、アモルファス又は微結晶構造であることが好ましい。下地層51の表面の平坦性が高くなるからである。ただし、微結晶構造は、例えば、数nm〜20nm程度の粒径の結晶を有する結晶相を含み、アモルファス相との混相であっても良い。下地層51の表面が平坦であることは、その上に中間層52を介して積層されるデータ記憶層53を所望の結晶性を有する膜にするために好ましい。例えば、データ記憶層53が[Co/Ni]n/Pt膜の場合、Co/Niを、垂直磁気異方性が高くなるfcc(111)に配向させるために好ましい。
【0051】
下地層51は、材料として、Ni、Fe及びCoの少なくとも一つを主成分として含み、Zr、Hf、Ti、V、Nb、Ta,W、B、Nからなる群から選択された少なくとも一種類の非磁性元素を含む。ただし、主成分とは、最も多い成分を意味する。例えば、下地層51として、NiFeZr、CoFeB、CoZrMo、CoZrNb、CoZr、CoZrTa、CoHf、CoTa、CoTaHf、CoNbHf,CoZrNb、CoHfPd、CoTaZrNb、CoZrMoNi、CoTiがある。
【0052】
その一方で中間層52を厚くすると下地層51の結晶性の影響をある程度は排除できる。そのため、中間層52を厚くする場合、下地層51は多結晶構造を有していても良い。また、磁化固定層41a、41bと磁化固定領域11a、11bとの間の磁気結合を高めるためには、下地層51は垂直磁気異方性を有することが好ましい。それらを満たす下地層51としては、特にCoCrPt、CoCrTa、CoCrTaPt、CoCr系合金、及び、CoCr系合金とSiOやTiOなどとの混合物などが好ましい。
【0053】
中間層52は、下地層51の上側(+z側)の略中央部(x方向)に設けられている。すなわち、中間層52は、磁化自由領域13の下側に設けられているが、第1、第2磁化固定領域11a、11bの下側には設けられていない。中間層52は、非磁性体である。中間層52は、その上に積層される磁化自由領域13の垂直磁気異方性を高めるべく、結晶配向しやすいように表面エネルギの小さい材料で形成することが好ましい。例えば、中間層52は、Ta膜に例示される。中間層52は、Ta膜の場合、後述されるように、膜厚2.0nm以上であることが好ましい。膜厚がそれより薄い場合には、出来上がりのTa膜厚のウェハ内ばらつきが大きくなるため、磁化自由領域13の特性ばらつきを生む可能性があるからである。また、この磁気記憶層10の構造では、中間層52の端部(x方向)によるデータ記憶層53の段差により、磁化自由領域13の端にある磁壁が移動し難くなる可能性がある。そのため、その段差が与える影響を小さくするために中間層52の端部(x方向)をテーパー形状にすることが好ましい。
【0054】
中間層52を設けることで、磁化自由領域13と下地層51との磁気結合を切ることができる。磁化自由領域13と下地層51とが磁気結合すると磁壁移動がし難くなる場合があるからである。一方、磁化固定領域11a、11bについては、その下側に中間層52が無く下地層51と接している。そのため、磁化固定領域11a、11bの磁化が下地層51及び磁化固定層41a、41bにより固定され易くなる。以上のように下地層51を有する構造の場合、中間層52は磁化自由領域13の下側にあり、磁化固定領域11a、11bの下側には無いことが好ましい。
【0055】
データ記憶層53は、中間層52及びその両側(x方向)の下地層51を覆うように積層されている。データ記憶層53は、垂直磁気異方性を有する強磁性体である。磁気記憶層10の第1磁化固定領域11a、第2磁化固定領域11b及び磁化自由領域13は、このデータ記憶層53に形成される。すなわち、データ記憶層53は、磁壁が形成され、磁化自由領域13の磁化方向又は磁壁の位置でデータが記憶される領域である。データ記憶層53は、上述された磁気記録層10に適する垂直磁気異方性を有する強磁性体材料を用いることができる。このとき、第1、第2磁化固定領域11a、11bは、その下側(−z側)に中間層52は無く、その下側で下地層51に接している。一方、磁化自由領域13は、その下側(−z側)に中間層53が有り、その下側で中間層53に接している。
【0056】
基板部50(主に磁化自由領域13の下方(−z方向)の下地層51の下側(−z側))は、半導体基板と、その上に形成され、層間絶縁層(例示:SiO、SiNx)に埋設された素子(例示:選択トンランジスタTra、Trb)や配線(例示:ワード線WL及びビット線BL、/BL)を含んでいる。
【0057】
なお、本実施の形態において、磁気抵抗効果素子70の製造の都合から、中間層52と下地層51との間に、薄い保護層521を更に備えていてもよい。図3Cは、本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子の他の構成例を示す側面図である。この磁気抵抗効果素子70は、下地層51の上に薄膜の保護層521を備えている点で、図3Aの場合と異なっている。この保護層521は、中間層52をエッチング加工するとき、エッチングストッパ膜として使用される。保護膜521は、非磁性体の導電性の薄膜である。そのため、中間層52やデータ記憶層53の膜質に影響を与えない。また、データ記憶層53と下地層51や磁化固定層41a、41bとの磁気的結合にも影響を与えない。保護膜521は、ルテニウム(Ru)膜に例示される。
【0058】
以下、本発明の第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子の実施例について、比較例と比較しながら説明する。なお、ここでは、磁気抵抗効果素子におけるデータ記憶層の磁気特性について以下のように、垂直磁気異方性の大きさの指標として飽和磁界を定義し、比較評価するものとする。図4は、データ記憶層に外部磁場を印加した場合の磁化曲線の一例を示すグラフである。縦軸は磁化M×膜厚t(任意単位)、横軸は印加磁場H(Oe)である。垂直磁気異方性の大きさの指標として飽和磁界Hsは、面内に平行に外部磁場Hを印加し、磁化Mが外部磁界Hの方向に揃った時点での外部磁場の大きさに相当する。図中の磁化曲線AではHが、磁化曲線BではHがその飽和磁場Hsに相当する。以下、比較例及び実施例について説明する。
【0059】
[比較例1](下地層51をNiFeZr膜とし、中間層52を挿入しない場合の磁気特性)
図5A及び図5Bは、比較例の磁気抵抗効果素子の構成例を示す断面図及び側面図である。ただし、スペーサ層20及び参照層30は省略している。基板部50は、一例としてSiOを用いた。また、データ記憶層53としては、一例として、垂直磁気異方性を有する材料の中で磁壁移動に適している材料である、Pt膜53bと、CoとNiの積層膜[Co/Ni]n膜53aとを積層した[Co/Ni]n/Pt膜を用いた。なお、ここでは、更にキャップ層としてPt膜53cを積層した。
【0060】
[Co/Ni]n/Pt膜は、Co/Niがfcc(111)に配向するとき垂直磁気異方性が高くなる。しかし、下地膜の材料により結晶配向性が変わり、垂直磁気異方性の大きさも異なる。比較例1では、中間層52を用いず、下地層51の上に直接データ記憶層53を積層した。すなわち、磁気記録層10としては、下地層51+データ記憶層53である。下地層51としては、NiFeZr膜を用いた。膜厚は、2.0nmとした。ここでは、膜本来の磁気特性を評価するために、膜にはパターニングを施していない。すなわち、as−deopsoted膜(Pt/[Co/Ni]n/Pt膜53/NiFeZr膜51)の状態で、データ記憶層53の膜の磁気特性を評価した。磁気特性の評価は、VSM(Vibrating Sample Magnetometer)を用いた(以下、同様)。
【0061】
まず、成膜後に処理を施していないデータ記憶層53の膜の磁気特性について説明する。
図6A及び図6Bは、図5A及び図5Bの構成を有するデータ記憶層の膜に外部磁場を印加した場合の磁化曲線の一例を示すグラフである。縦軸は磁化M×膜厚t(任意単位)、横軸は印加磁場H(Oe)である。ここで、図6Aは、膜面に対し垂直に外部磁場Hを印加した場合の磁化曲線を示している。図6Bは、面内に対し平行に外部磁場Hを印加した場合の磁化曲線を示している。垂直磁場を印加したときの磁化曲線(垂直ループ:図6A)が立っていて、且つそのヒステリシスが大きく、一方で、面内磁場を印加したときの磁化曲線(面内ループ:図6B)が寝ていることがわかる。このことから、このデータ記憶層53の膜は垂直磁気異方性を有する。すなわち、NiFeZr膜上の[Co/Ni]n/Pt膜は垂直磁気異方性を有し、磁壁移動に適している可能性がある。
【0062】
次に、磁気記録層10を300℃、2時間、不活性ガス中で熱処理した後のデータ記憶層53の膜の磁気特性について説明する。図7A及び図7Bは、図5A及び図5Bの構成を有するデータ記憶層の膜に熱処理を施した後に外部磁場を印加した場合の磁化曲線の一例を示すグラフである。縦軸は磁化M×膜厚t(任意単位)、横軸は印加磁場H(Oe)である。ここで、図7Aは、膜面に対し垂直に外部磁場Hを印加した場合の磁化曲線(垂直ループ)を示している。図7Bは、面内に対し平行に外部磁場Hを印加した場合の磁化曲線(面内ループ)を示している。図6A及び図6Bと比較すると、垂直ループ(図7A)がやや倒れて斜めになり、面内ループ(図7B)が更に立って傾きが急になることがわかる。このことは、300℃の熱処理によりこのデータ記憶層53の膜の垂直磁気異方性が低下したことを示している。更に、図6Aと図7Aとを比較すると、図7Aの方がグラフの縦軸の値、すなわち飽和磁化と膜厚との積(Ms×t)が大きくなっている。これは、300℃の熱処理により面内磁気異方性を有するNiFeZr膜と[Co/Ni]n/Pt膜とが磁気的に結合することで磁化が増大したためである。また、磁気結合により垂直磁気異方性が低下したためと考えられる。
【0063】
[比較例2](Ta下地の磁気結合の懸念点:下地層51をTa膜とし、中間層52を挿入しない場合の磁気特性)
比較例2では、磁気記録層10の構成は比較例1と同様であるが、下地層51としてTa膜を用いた点で、比較例1(下地層51:NiFeZr膜)と異なっている。この場合、Co/Niがfcc(111)に配向する(垂直磁気異方性を有する)ために、Ta膜を用いた場合、膜厚として4.0nm以上が必要であった。この膜厚は、比較例1のNiFeZr膜の膜厚2.0nmと比較して2倍程度であり非常に厚い。このように非磁性体であるTa膜の膜厚が厚いため、比較例2では、第1、第2磁化固定層41a、41bとデータ記憶層53との間で磁気結合が困難となった。そうなると、第1、第2磁化固定領域11a、11bの磁化が固定されず、データ記憶層53でデータを記憶できなくなってしまう。
【0064】
以上の比較例1や比較2から、熱処理後にNiFeZr膜と[Co/Ni]n/Pt膜とが不必要に磁気的に結合しないことや、第1、第2磁化固定層41a、41bとデータ記憶層53との間での磁気的結合が切れないこと等を考慮して、以下のような実施例を見出した。
【0065】
[実施例1](下地層51をNiFeZr膜とし、中間層52のTa膜を挿入した場合の磁気特性)
図8A及び図8Bは、実施例の磁気抵抗効果素子の構成例を示す断面図及び側面図である。ただし、いずれの場合にも、スペーサ層20及び参照層30は省略している。また、図8Bは、膜本来の磁気特性を評価するために、中間層52は、下地層51上の全面に設けられている。基板部50は、一例としてSiOを用いた。また、データ記憶層53としては、比較例1と同様に、垂直磁気異方性を有する材料の中で磁壁移動に適している材料である、Pt膜53bと、CoとNiの積層膜[Co/Ni]n膜53aとを積層した[Co/Ni]n/Pt膜を用いた。なお、ここでも、更にキャップ層としてPt膜53cを積層した。
【0066】
実施例1では、比較例1の構成に対して、下地層51(NiFeZr膜)とデータ記憶層53([Co/Ni]n/Pt膜)とが磁気的に結合をしないように、両層の間に中間層52を挿入した。すなわち、磁気記録層10としては、下地層51+中間層52+データ記憶層53である。中間層52としては、Ta膜を用いた。膜厚は、2.0nmとした。各層が形成されたPt/[Co/Ni]n/Pt膜53/Ta膜52/NiFeZr膜51の状態で、300℃、2時間、不活性ガス中で熱処理を施した。
【0067】
(磁気特性)
次に、300℃、2時間、不活性ガス中での熱処理後のデータ記憶層の磁気特性について説明する。
図9A及び図9Bは、図8A及び図8Bの構成を有するデータ記憶層の膜に外部磁場を印加した場合の磁化曲線の一例を示すグラフである。縦軸は磁化M×膜厚t(任意単位)、横軸は印加磁場H(Oe)である。ここで、図9Aは、膜面に対し垂直に外部磁場Hを印加した場合の磁化曲線(垂直ループ)を示している。図9Bは、面内に対し平行に外部磁場Hを印加した場合の磁化曲線(面内ループ)を示している。
図6A、図6B、図7A及び図7Bと比較すると、面内ループが寝ていることから350℃熱処理後にも垂直磁気異方性が大きいことがわかる。また、図7Bと比較すると、図9Bの方が、飽和磁界Hs(図4参照)が高いことが分かる。すなわち、図9Bの方が、磁化の向きを外部磁界の方向に向けるのに必要な磁界が高い。従って、中間層52であるTa膜を挿入した図8A及び図8Bの磁気記録層10の方が、中間層52のない図5A及び図5Bの磁気記録層10と比較して、データ記憶層53の垂直磁気異方性が大きいことが分かる。
【0068】
更に、中間層52として、Ta膜を5nmに厚膜化した試料についても同様の評価を行った。その結果、上述したTa膜の膜厚2nmの試料と同等の飽和磁界Hsの値を得ることができた。すなわち中間層52としてTa膜の膜厚を2nmより厚くすることによっても、飽和磁界Hsが低下することは無いことが確認された。
【0069】
以上のように、中間層52(例示:Ta膜)の挿入により350℃という高温での熱処理後においても、図8A及び図8Bの磁気記録層10は、中間層52を有さない(Ta膜の膜厚0nm)場合と比較して、高い垂直磁気異方性を有していることが分かる。これは、面内磁気異方性を持つNiFeZr膜(下地層51)と[Co/Ni]n/Pt膜(データ記憶層53)との磁気結合が、Ta膜(中間層52)により抑制されているためと考えられる。
【0070】
以上の比較例1、2及び実施例1、2の結果に示されるように、中間層52であるTa膜を膜厚2.0nm以上で下地層51と磁化自由領域13との間に挿入することにより、データ記憶層53の垂直磁気異方性や磁壁移動に対する適性を高くすることができる。また、実デバイスでは、図3Aや図3Cのように、第1、第2磁化固定領域11a、11bと下地層51との間には中間層52が無い。そのため、実デバイスの中間層52は、第1、第2磁化固定層41a、41bとデータ記憶層53の第1、第2磁化固定領域11a、11bとの間の磁気的結合に悪影響を与えることなく、データ記憶層53を熱処理に強くすることができる。その結果、磁気メモリ製造過程を終了した後であっても、データ記憶層53が強い垂直磁気異方性を有する磁気メモリを得ることができる。
【0071】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリについて添付図面を参照して説明する。本実施の形態については、第1の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法の一例について説明する。図10は、本発明の第2の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子の構成例を示す側面図である。この磁気抵抗効果素子70aは、第1の実施の形態に係る磁気抵抗効果素子70(図3Aなど)と比較すると、中間層52の端部がテーパー形状に加工されていない点で異なっている。しかし、その相違点はエッチング条件によるもので、製造方法としては大きな相違は無い。したがって以下では磁気抵抗効果素子70aについて説明する。
【0072】
磁気抵抗効果素子70aは、磁気記憶層10と、スペーサ層20と、参照層30とを備え、更に、第1磁化固定層41aと第2磁化固定層41bと、を備えている。磁気記録層10は、下地層51と、中間層52と、データ記憶層53とを含んでいる。磁気メモリ及び磁気メモリセル80の構成を含めて、これらは、第1の実施の形態の磁気抵抗効果素子70と同様であるのでその説明を省略する。
【0073】
次に、本実施の形態に係る磁気メモリの製造方法(作製プロセス)について説明する。図11A、図11B及び図11C〜図18A、図18B及び図18Cは、それぞれ本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法を示す平面図、xz断面図及びyz断面図である。ここでは、第1、第2電極層42a、42b(Cuコンタクトビア)から上の層における磁気抵抗効果素子の部分の作製プロセスを図示し、CMOS基板及びCu配線層は省略する。
【0074】
まず、半導体基板上にCMOSなどの電子素子及びCu配線などの配線を作製し、それらを層間絶縁膜61で覆う(図示されず)。続いて、図11A、図11B及び図11Cに示すように、層間絶縁膜61を貫通し、他の配線と接続するように、第1、第2電極層42a、42bとしてのCuコンタクトビアを形成する。なお、本実施の形態では、第1、第2電極層42a、42bが直方体形状であるが、第1の実施の形態の場合と同様に円筒形状であっても良い。
【0075】
次に、図12A、図12B及び図12Cに示すように、基板全面に、第1磁化固定層41a用の膜をスパッタ法で成膜する。そして、その膜を、PR(photoresist)工程及びエッチング工程により、所定の位置において、第1磁化固定層41a形状にパターニングする。それにより、第1電極層42a上に第1磁化固定層41aが形成される。続いて、第2磁化固定層41b用の膜をスパッタ法で成膜する。そして、その膜を、PR工程及びエッチング工程により、所定の位置において、第2磁化固定層41b形状にパターニングする。それにより、第2電極層42a上に第2磁化固定層41bが形成される。このとき、磁気メモリセルの初期化を容易化するために、第1磁化固定層41aと第2磁化固定層41bとに対しては、互いに磁気特性の異なる膜が使用される。
【0076】
その後、図13A、図13B及び図13Cに示すように、基板全面に層間絶縁膜62を成膜し、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法でその平坦化を行い、第1磁化固定層41a及び第2磁化固定層41bの頭出しを行う。
【0077】
次に、図14A、図14B及び図14Cに示すように、基板全面に下地層51用の膜51a及び中間層52用の膜52aをスパッタ法で成膜する。続いて、その上に更にハードマスク71(SiOx/SiNx)をCVD(Chemical Vapor Deposition)法で成膜する。
【0078】
次に、図15A、図15B及び図15Cに示すように、PR工程及びエッチング工程により、ハードバスク71をパターニングする。そして、そのハードマスク71をマスクとして、中間層52用の膜52aをエッチング加工する。その後、ハードマスク71を除去する。このとき、下地層51用の膜51aはエッチングせずに残す。それにより、中間層52用の膜52aは、その両端部と第1磁化固定層41aの一端部及びそれと向かい合う第2磁化固定層41bの一端部とがオーバーラップするように成形される。
【0079】
続いて、図16A、図16B及び図16Cに示すように、下地層51用の膜51a及び中間層52用の膜52a上に、データ記憶層53用の膜53a、スペーサ層20用の膜20a及び参照層30用の膜30aをスパッタ法で成膜する。
【0080】
その後、図17A、図17B及び図17Cに示すように、データ記憶層53及び下地層51の形状となるように、PR工程及びエッチング工程により、参照層30用の膜30a、スペーサ層20用の膜20a、データ記憶層53用の膜53a、中間層52用の膜52a及び下地層51用の膜51aを加工する。それにより、データ記憶層53、中間層52及び下地層51が形成される。
【0081】
続いて、図18A、図18B及び図18Cに示すように、参照層30の形状となるように、PR工程及びエッチング工程により、参照層30用の膜30a及びスペーサ層20用の膜20aを加工する。それにより、参照層30及びスペーサ層20が形成される。以上のようにして、磁気抵抗効果素子70aが形成された後、磁気メモリセルの上部配線を形成する。
【0082】
以上のようにして、本実施の形態に係る磁気メモリが製造される。
【0083】
なお、図14A、図14B及び図14Cに示す工程において、下地層51用の膜51a及び中間層52用の膜52aとの間に、更に保護膜521用の膜521aをスパッタ法で成膜してもよい。図19A、図19B及び図19C〜図20A、図20B及び図20Cは、それぞれ本発明の第2の実施の形態に係る磁気メモリの製造方法の変形例を示す平面図、xz断面図及びyz断面図である。この場合、図14A、図14B及び図14Cと、図15A、図15B及び図15Cに示す工程が、図19A、図19B及び図19Cと、図20A、図20B及び図20Cに示す工程に置き換えられる。その前後の工程は上述のとおりである。
【0084】
図19A、図19B及び図19Cに示すように、下地層51用の膜51a、保護膜521用の膜521a及び中間層52用の膜52aをスパッタ法で成膜する。続いて、ハードマスク71(SiOx/SiNx)をCVD法で成膜する。
【0085】
次に、図20A、図20B及び図20Cに示すように、PR工程及びエッチング工程により、ハードバスク71をパターニングする。そして、そのハードマスク71をマスクとして、中間層52用の膜52aをエッチング加工する。その際、保護膜521用の膜521aがエッチングストッパ膜として機能する。それにより、下地層51用の膜51aの表面を、エッチングダメージから保護することができる。その結果、下地層51の磁気特性をより安定的に確保できる。すなわち、データ記憶層53と下地層51と第1、第2磁化固定層41a、41bとの間の磁気的結合をより安定的に得ることができる。その後、ハードマスク71を除去する。以降の工程において、保護膜521用の膜521aは、下地層51と同様に加工される。
【0086】
本実施の形態により製造された磁気メモリについても、第1の実施の形態で示された磁気メモリと同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0087】
10、110 磁気記憶層
11a、111a 第1磁化固定領域
11b、111b 第2磁化固定領域
12、12a、12b、112、112a、112b 磁壁
13、113 磁化自由領域
20、120 スペーサ層
30、130 参照層
41 磁化固定層
41a 第1磁化固定層
41b 第2磁化固定層
42a 第1電極層
42b 第2電極層
50 基板
51 下地層
52 中間層
521 保護層
53 データ記憶層
51a、52a、521a、53a、30a、20a 膜
61 層間絶縁膜
62 層間絶縁膜
70、70a 磁気抵抗効果素子
80 磁気メモリセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性体の下地層と、
前記下地層上に設けられた第1非磁性層と、
前記第1非磁性層上に設けられ、垂直磁気異方性を有する強磁性体のデータ記憶層と、
第2非磁性層を介して前記データ記憶層に接続された参照層と、
前記下地層の下側に接して設けられた第1磁化固定層a及び第2磁化固定層とを具備し、
前記データ記憶層は、
反転可能な磁化を有し前記参照層とオーバーラップする磁化自由領域と、
前記磁化自由領域の第1境界に接続され、前記第1磁化固定層で磁化の向きが第1方向に固定された第1磁化固定領域と、
前記磁化自由領域の第2境界に接続され、前記第2磁化固定層で磁化の向きが前記第1方向と反平行な第2方向に固定された第2磁化固定領域とを備え、
前記磁化自由領域の下側の前記第1非磁性層は、前記第1磁化固定領域及び前記第2磁化固定領域の下側の前記第1非磁性層よりも厚い
磁気メモリ。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気メモリにおいて、
前記第1磁化固定領域及び前記第2磁化固定領域の下側の前記第1非磁性層の膜厚はゼロであり、
前記磁化自由領域の下側は前記第1非磁性層と接し、
前記第1磁化固定領域及び前記第2磁化固定領域の下側は前記下地層に接する
磁気メモリ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の磁気メモリにおいて、
前記第1非磁性層は、前記磁化自由領域の下側の端部がテーパー形状に加工された構造を有する
磁気メモリ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁気メモリにおいて、
前記第1非磁性層は、膜厚2.0nm以上のTa膜を含む
磁気メモリ。
【請求項5】
請求項1に記載の磁気メモリにおいて、
前記第1非磁性層は、前記下地層上に設けられたエッチングストッパ膜を含む
磁気メモリ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の磁気メモリにおいて、
前記下地層は垂直磁気異方性を有する強磁性体を含む
磁気メモリ。
【請求項7】
互いに離間して設けられた第1磁化固定層及び第2磁化固定層上に、下地層用の下地強磁性膜と第1非磁性層用の第1非磁性膜とをこの順で積層する工程と、
前記第1非磁性膜のうち、前記第1磁化固定層上の少なくとも一部分及び前記第2磁化固定層上の少なくとも一部分を、他の部分と比較して薄くする工程と、
前記第1非磁性膜上に、垂直磁気異方性を有するデータ記憶層用の第1強磁性体膜と、第2非磁性層用の第2非磁性膜と、参照層用の第2強磁性体膜とをこの順で積層する工程と、
前記第2強磁性体膜、前記第2非磁性膜、前記第1強磁性体膜、前記第1非磁性膜及び前記下地強磁性膜を素子形状に加工して、前記下地層、前記第1非磁性層及び前記データ記憶層を形成する工程と、
前記第2強磁性体膜及び前記第2非磁性膜層を前記参照層の形状に加工して、前記第2非磁性層及び前記参照層を形成する工程と
を具備する
磁気メモリの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の磁気メモリの製造方法において、
前記第1非磁性膜の部分を薄くする工程は、
前記第1非磁性膜のうち、前記第1磁化固定層上の少なくとも一部分及び前記第2磁化固定層上の少なくとも一部分の膜厚をゼロにする工程を更に具備する
磁気メモリの製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の磁気メモリの製造方法において、
前記第1非磁性膜は、前記下地層上に設けられたエッチングストッパ膜を含み、
前記第1非磁性膜の部分を薄くする工程は、
前記第1非磁性膜のうち、前記第1磁化固定層上の少なくとも一部分及び前記第2磁化固定層上の少なくとも一部分において、前記エッチングストッパ膜のみを残す工程を備える
磁気メモリの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【公開番号】特開2013−69906(P2013−69906A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207927(P2011−207927)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】