説明

磁気抵抗効果素子およびその形成方法

【課題】低保磁力、低磁歪および低RA値を確保しつつ、高いTMR比を得る。
【解決手段】フリー層18は、トンネルバリア層17の側から第1の強磁性層、挿入層および第2の強磁性層が順に積層された複合構造を有する。第1の強磁性層は、CoFe合金、または、そのCoFe合金にNiなどを添加してなる合金を含み、かつ、正の磁歪定数を有する。挿入層は、Fe,CoおよびNiから選択される少なくとも一種の磁性元素と、Ta,Ti,W,Zr,Hf,Nb,Mo,V,MgおよびCrから選択される少なくとも一種の非磁性元素とを含む。第2の強磁性層は、CoFeやNiFeなどからなり、負の磁歪定数を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気再生ヘッド等に用いられるMR(magnetoresistive) 素子およびその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TMR(Tunneling Magnetoresistive)センサすなわち磁気トンネル素子(MTJ:Magnetic Tunneling Junction)は、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM:Magnetic Random Access Memory)や磁気再生ヘッド等の磁気デバイスにおける重要な構成要素(記憶素子)である。TMRセンサは、一般的に、薄い非磁性絶縁体層により2つの強磁性層が分離された積層構造を備えている。いわゆるボトムスピンバルブ構造を有するTMRセンサの積層構造は、基体上に順次形成された、シード(バッファ)層と、反強磁性(AFM:Anti-Ferromagnetic)層と、ピンド層と、トンネルバリア層と、フリー層と、キャップ層とによって構成されるのが一般的である。フリー層は、外部磁界(媒体からの信号磁界)に反応するセンス層として機能する。これに対し、ピンド層は相対的に固定され、フリー層に対する基準層として機能する。トンネルバリア層(絶縁体層)を介した電気抵抗は、フリー層の磁気モーメントの、基準層の磁気モーメントに対する相対的な方向に伴って変化し、これにより磁気信号が電気信号へと変換される。磁気再生ヘッドにおいて、TMRセンサは下部シールドと上部シールドとの間に形成されている。センス電流が、上部シールドから下部シールドに向かって(MRAMデバイスでは上部電極から下部電極に向かって)、TMRセンサの膜面に対して垂直方向に流れると(CPP(Current-Perpendicular-to Plane)構造)、フリー層およびピンド層(基準層)の磁化方向が平行(「1」記憶状態)である場合には低抵抗となり、フリー層およびピンド層の磁化方向が反平行(「0」記憶状態)である場合には高抵抗となる。なお、TMRセンサは、センス電流の方向を示す面内通電(CIP:Current In Plane)構造を含んで構成される場合もある。
【0003】
他の種類の記憶デバイスとしては、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magnetoresistive)ヘッドが挙げられる。この構造では、TMRセンサの積層構造におけるピンド層とフリー層との間の絶縁体層が、銅などの非磁性導電性スペーサによって置き換えられている。
【0004】
TMRセンサの積層構造におけるピンド層は、シンセティック反強磁性(SyAF:Synthetic Anti-Ferromagnetic)構造を有する場合がある。この構造では、外側ピンド層が、結合層を介してトンネルバリア層に接する内側ピンドと磁気的に結合している。外側ピンド層は、同一方向に磁化された隣接する反強磁性(AFM)層との交換結合によって特定の方向に固定された磁気モーメントを有している。トンネルバリア層の厚さは、このトンネルバリア層を通過する電流を、伝導電子の量子力学的トンネル効果によって得られるほど薄くなっている。
【0005】
現在のところ、TMRセンサは、次世代の磁気ヘッドにおいて、GMRセンサに取って代わる候補として最も有望である。先進のTMRセンサは、磁気ヘッドのエアベアリング面(ABS:Air-Bearing Surface)において、0.1μm×0.1μm程度の断面積を有している。TMRセンサの利点は、GMRセンサと比較して、大幅に高い抵抗変化率(MR比)を得ることができることにある。高性能のTMR素子に求められる特性としては、MR比が高いことに加え、RA値が低いこと、フリー層の磁歪定数(λ)および保磁力(Hc)が低いこと、ピンド層が強力であること、トンネルバリア層を通しての層間結合磁場(Hin)が弱いこと、等がある。MR比(TMR比とも呼ばれる)は、dR/Rで表され、RはTMRセンサの抵抗値の最小値であり、dRはフリー層の磁化状態の変化に応じて観測される抵抗変化量である。dR/Rが大きければ、読み出し速度(再生速度)が向上する。高記録密度用途または高周波用途に対しては、RA値を約1から3Ω・μm2 にまで減少させる必要がある。
【0006】
高周波記録用途においては、MgOを用いたTMRセンサが有望視されている。これは、そのTMR比が、アルミニウム酸化物(AlOx)またはチタン酸化物(TiOx)を用いたTMR素子のそれと比べて著しく高いことによる。非特許文献1および非特許文献2には、エピタキシャルなFe(001)/MgO(001)/Fe(001)と、多結晶構造のFeCo(001)/MgO(001)/(Fe70 Co30 80 20 を用いたトンネル接合構造によって、室温で約200%というMR比が達成され得ることが示されている。また、非特許文献3には、室温で最高410%というMR比を得ることができると報告されている。非特許文献4には、従来のスパッタリング法によって形成されたCoFeB/MgO(001)/CoFeBからなる構造を有するトンネル接合構造においても、柔軟性と均質性とを利点とする230%という非常に高いMR比を得ることができると報告されている。ただし、上記した技術では、RA値が所望のRA値よりも大きくなっている。
【0007】
非特許文献5には、CoFeBからなるピンド層と、高周波スパッタにより形成されたMgO層との間に、DCスパッタにより形成されたMg層を挿入することによりRA値を低減できることが示されている。また、この非特許文献5では、RA値が2.4Ω・μm2という条件下の場合には、CoFeB/Mg/MgO/CoFeBの構造を有するトンネル接合素子により、MR比は138%に達することが示されている。なお、非特許文献5においてMg層を挿入するという考えは、特許文献1において初めて提案されたが、その目的は、CoFe/MgO(反応性スパッタリング)/NiFe構造における下部電極(CoFe)の酸化を防ぐことであった。一方、非特許文献6には、高周波スパッタ法によるMgO層の形成に先立ち、タンタル(Ta)をゲッターとしたプレ・スパッタ処理を施すことにより、TMR比が55%に達すると共に、RA値を低減できることが報告されている。
【0008】
また、特許文献2および特許文献3は、CoFe/CoFeB/NiFeにより表される3層構造を有し、GMR−CPPセンサおよびTMRセンサのいずれに用いられた場合においても低保磁力および低磁歪が得られるフリー層を開示している。
【0009】
特許文献4は、第1の強磁性層と第2の強磁性層との間に挟まれた感度増強層(Ta)を有するフリー層を開示している。第1の強磁性層は、正の磁歪定数を有し、CoFeB系合金またはCoFe系合金から構成されている。第2の強磁性層は、負の磁歪定数を有し、CoFe系合金,Ni系合金,またはNiFe系合金から構成されている。
【0010】
特許文献5は、トンネルバリア層の上に形成されたNiFeまたはCoFeを有する下部層と、Ta,Ru,Cu,またはWを有するスペーサ層と、CoFeB,CoFe,またはNiFeを有する上部層と、を含む3層のフリー層を開示している。
【0011】
特許文献6は、FeCo,ホイスラー合金,およびNiFeを有するフリー層を開示している。
【0012】
特許文献7は、CoFeB/Ru/CoFeTaB構造を有するフリー層を開示している。
【0013】
特許文献8および特許文献9は、NiFeと、CoFeと、CoFeBとが積層されたフリー層を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6841395号明細書
【特許文献2】米国特許第7333306号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0047159号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0139827号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0188942号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0242396号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2008/0061388号明細書
【特許文献8】米国特許第6982932号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2008/0152834号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】S. Yuasa等著、「Giant room-temperature magnetoresistance in single crystal Fe/MgO/Fe magnetic tunnel junctions」、Nature Materials、2004年、第3版、p.868−871
【非特許文献2】S. Yuasa 等著、「Giant tunneling magnetoresistance up to 410% at room temperature in fully epitaxial Co/MgO/Co magnetic tunnel junctions with bcc Co (001) electrodes」、Applied Physics Letters、2006年、第89巻、042505
【非特許文献3】S. Parkin 等著、「Giant tunneling magnetoresistance at room temperature with MgO (100) tunnel barriers」、Nature Materials、2004年、第3号、p.862−867
【非特許文献4】D. Djayaprawira等著、「230% room temperature magnetoresistance in CoFeB/MgO/CoFeB magnetic tunnel junctions」、Physics Letters、2005年、第86巻、092502
【非特許文献5】K. Tsunekawa等著、「Giant tunnel magnetoresistance effect in low resistance CoFeB/MgO(001)/CoFeB magnetic tunnel junctions for read head applications」、Applied Physics Letters、2005年、第87巻、072503
【非特許文献6】Y. Nagamine等著、「Ultralow resistance-area produce at 0.4 ohm-μm2 and high magnetoresistance above 50% in CoFeB/MgO/CoFeB magnetic junctions」、Applied Physics Letters、2006年、第89巻、162507
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
MgOからなるトンネルバリア層を有するTMR素子において低RA値を得るための他の方法としては、第1のMg層をDCスパッタなどにより形成したのち、その第1のMg層に対して自然酸化(NOX:Natural Oxidation)処理を行い、これにより得られたMgO層の上に第2のMg層をDCスパッタなどにより形成することが挙げられる。この方法によれば、より良好な工程管理が可能となるとともに、再生時におけるMR比のばらつきの改善が期待できる。
【0017】
現在、この技術分野では、MgOを有するトンネルバリア層を用いたTMR素子において、もっぱらCoFeBをフリー層に用いることにより、高TMR比を保ちつつ低Hcを得るようにしている。また、アニール温度が300℃未満の低温であっても高いMR比を得るために、MgOからなるトンネルバリア層とCoFeBからなるフリー層との間に薄いCoFe層を挿入することも行われている。しかしながら、CoFeBを用いたフリー層の磁歪定数(λ)は、高密度メモリ用途における最大許容値(約5×10-6)よりも格段に高くなってしまう。また、低い磁歪定数および軟磁性特性が得られるという理由により、CoFeBの代わりに、CoFe/NiFe複合体を有するフリー層も用いられている。ところが、CoFe/NiFeをフリー層に用いた場合、TMR比が低下する。他の方法としては、正の磁歪定数を有するCoFeB層と、負の磁歪定数を有するNiFe層とを有する複合フリー層を用いることにより、低磁歪および軟磁気特性を向上させる技術がある。しかし、CoFeBとNiFeとが直接接した場合、著しいMR(TMR)比の低下が生じることから、CoFeB/NiFe型のフリー層構造は実用的でない。したがって、高TMR比、低RA値、および低保磁力とともに、低磁歪が得られる、TMRセンサの改良型フリー層が望まれる。
【0018】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、低磁歪、低RA値および低保磁力を達成しつつ、高いMR比をも得ることが可能な複合フリー層を有する磁気抵抗効果素子およびその形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の磁気抵抗効果素子は、基体上に、シード層と反強磁性層とピンド層とを順に有する積層構造と、ピンド層の上に形成されたトンネルバリア層と、そのトンネルバリア層の上に、第1の強磁性層と挿入層と第2の強磁性層とを順に有する複合フリー層と、この複合フリー層の第2の強磁性層の上に設けられたキャップ層とを備えるものである。ここで、(1)第1の強磁性層は、トンネルバリア層と接し、CoW Fe(100-W) および[CoW Fe(100-W)(100-Y)Y のうちの少なくとも一方のコバルト鉄含有合金(但しWは0以上100以下、yは10以上40以下)、または、それらのコバルト鉄含有合金のうちの少なくとも一方にNi,Ta,Mn,Ti,W,Zr,Hf,TbおよびNbから選択される少なくとも一種の追加元素を添加してなる合金、を含み、かつ、正の磁歪定数を有するものであり、(2)挿入層は、第1の強磁性層の上に形成され、Fe,CoおよびNiから選択される少なくとも一種の磁性元素と、Ta,Ti,W,Zr,Hf,Nb,Mo,V,MgおよびCrから選択される少なくとも一種の非磁性元素とを含むものであり、(3)第2の強磁性層は、CoW Fe(100-W)(Wは0以上100以下)およびNiZ Fe(100-Z)(Zは70以上100以下)のうちの少なくとも一方の合金、または、CoW Fe(100-W)もしくはNiZ Fe(100-Z)とNi,Ta,Mn,Ti,W,Zr,Hf,Tb,NbおよびBから選択される少なくとも一種の元素とを組み合わせた合金、を含み、かつ、負の磁歪定数を有するものである。
【0020】
本発明の第2の磁気抵抗効果素子は、基体上に、シード層と反強磁性層とピンド層とを順に有する積層構造と、ピンド層の上に形成された非磁性スペーサ層と、その非磁性スペーサ層の上に、第1の強磁性層と挿入層と第2の強磁性層とを順に有する複合フリー層と、この複合フリー層の第2の強磁性層の上に設けられたキャップ層とを備えるものである。ここで、(1)第1の強磁性層は、トンネルバリア層と接し、CoW Fe(100-W) および[CoW Fe(100-W)(100-Y)Y のうちの少なくとも一方のコバルト鉄含有合金(但しWは0以上100以下、yは10以上40以下)、または、それらのコバルト鉄含有合金のうちの少なくとも一方にNi,Ta,Mn,Ti,W,Zr,Hf,TbおよびNbから選択される少なくとも一種の追加元素を添加してなる合金、を含み、かつ、正の磁歪定数を有するものであり、(2)挿入層は、第1の強磁性層の上に形成され、Fe,CoおよびNiから選択される少なくとも一種の磁性元素と、Ta,Ti,W,Zr,Hf,Nb,Mo,V,MgおよびCrから選択される少なくとも一種の非磁性元素とを含むものであり、(3)第2の強磁性層は、CoW Fe(100-W)(Wは0以上100以下)およびNiZ Fe(100-Z)(Zは70以上100以下)のうちの少なくとも一方の合金、または、CoW Fe(100-W)もしくはNiZ Fe(100-Z)とNi,Ta,Mn,Ti,W,Zr,Hf,Tb,NbおよびBから選択される少なくとも一種の元素とを組み合わせた合金、を含み、かつ、負の磁歪定数を有するものである。
【0021】
本発明の磁気抵抗効果素子の形成方法は、TMRセンサに用いられる磁気抵抗効果素子の形成方法であって、(a)基体上に、シード層と反強磁性層とピンド層とを順に積層することにより積層構造を形成する工程と、(b)ピンド層の上にトンネルバリア層を形成する工程と、(c)トンネルバリア層の上に第1の強磁性層と挿入層と第2の強磁性層とを有する複合フリー層を形成する工程と、複合フリー層の上にキャップ層を形成する工程とを含むものである。ここでは、(1)第1の強磁性層を、トンネルバリア層と接し、CoW Fe(100-W) および[CoW Fe(100-W)(100-Y)Y のうちの少なくとも一方のコバルト鉄含有合金(但しWは0以上100以下、yは10以上40以下)、または、それらのコバルト鉄含有合金のうちの少なくとも一方にNi,Ta,Mn,Ti,W,Zr,Hf,TbおよびNbから選択される少なくとも一種の追加元素を添加してなる合金、を用いて正の磁歪定数を有するように形成し、(2)挿入層を、第1の強磁性層の上に、Fe,CoおよびNiから選択される少なくとも一種の磁性元素と、Ta,Ti,W,Zr,Hf,Nb,Mo,V,MgおよびCrから選択される少なくとも一種の非磁性元素とを含むように形成し、(3)第2の強磁性層を、CoW Fe(100-W)(Wは0以上100以下)およびNiZ Fe(100-Z)(Zは70以上100以下)のうちの少なくとも一方の合金、または、CoW Fe(100-W)もしくはNiZ Fe(100-Z)とNi,Ta,Mn,Ti,W,Zr,Hf,Tb,NbおよびBから選択される少なくとも一種の元素とを組み合わせた合金、を用いて負の磁歪定数を有するように形成する。
【0022】
本発明の磁気抵抗効果素子およびその形成方法では、例えば第1の強磁性層が、0.2nm以上4nm以下の厚さを有し、CoFeBからなる単層構造、CoFe/CoFeBで表わされる2層構造、またはCoFe/CoFeB/CoFeで表わされる3層構造を有するようにするとよい。また、挿入層が、0.2nm以上1.0nm以下の厚さを有し、CoTaにより表される組成(但し、CoとTaとの比率は1:1から4:1である)もしくはCoFeBTaにより表される組成(但し、CoFeBとTaとの比率は1:1から4:1である)を有するようにするとよい。さらに、第2の強磁性層が、0.2nm以上5nm以下の厚さを有し、CoFeもしくはNiFeからなる単層構造、またはCoFe/NiFe/CoFeで表わされる3層構造を有するようにするとよい。また、トンネルバリア層については、MgO,MgZnO,ZnO,Al2 3 ,TiOx ,AlTiO,HfOx およびZrOx のうちの少なくとも一種からなるようにするとよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の磁気抵抗効果素子および形成方法によれば、それぞれ所定の材料からなる第1の強磁性層、挿入層および第2の強磁性層を有する複合フリー層を備えるようにしたので、低磁歪定数、低RA値および低保磁力を達成しつつ、例えば60%を超える高いTMR比を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態としてのTMRセンサの構成を表す断面図である。
【図2】図1に示したTMRセンサの要部構成を表す断面図である。
【図3】図1に示したTMRセンサの形成方法における一工程を表すエアベアリング面に平行な断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態としてのGMRセンサの構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、少なくとも一つの磁性元素と、少なくとも一つの非磁性元素とを有する挿入層を含む複合フリー層を備えた高性能磁気抵抗効果センサ、およびその形成方法である。以下に説明する例示的な実施の形態は、再生ヘッドのTMRセンサを示しているが、本発明は、CMR−CPPセンサまたはGMR−CIPセンサ等の磁気抵抗素子を有する他のデバイスに用いることもできる。TMRセンサまたはGMRセンサは、ボトムスピンバルブ構造、トップスピンバルブ構造、または多層スピンバルブ構造を有し得ることは、当業者により理解されることである。MR比は、TMRセンサを参照する際にはTMR比と同義として用いられる場合がある。なお、図面はあくまでも一例であり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0026】
[第1の実施の形態]
以下、図1〜図3を参照して、本発明の第1の実施の形態におけるTMRセンサ1の構成について説明する。図1は、TMRセンサ1における、エアベアリング面と平行な断面の構成を表しており、図2は、図1に示した積層体S1の断面構成を拡大して表している。
【0027】
図1に示したように、このTMRセンサ1は、対向配置された下部シールド層10と上部シールド層25との間に、磁気トンネル接合構造を有する積層体S1が狭持されたものである。下部シールド層10は、例えば2μmの厚さを有するNiFe層であり、例えば、アルティック(Al・TiC)からなる基板上に形成される。積層体S1の両側には、下部シールド層10の上面および積層体S1の端面(側面)を連続して覆う絶縁層22と、この絶縁層22の上に位置するバイアス層23と、このバイアス層23を覆うキャップ層24とが、積層体S1をトラック幅方向(X軸方向)に挟むように設けられている。
【0028】
積層体S1は、例えば、シード層14と、AFM層15と、ピンド層16と、トンネルバリア層17と、フリー層18と、キャップ層19とが下部シールド層10の上に順次積層されたボトムスピンバルブ構造を有している。
【0029】
シード層14は、例えば1.0nm以上10nm以下の厚さを有する。シード層14は、Ta/Ruからなる2層構造であることが好ましいが、単一のTa層であってもよいし、あるいはTa/NiCr,Ta/Cu,Ta/Crなどの他の2層構造を採用してもよい。シード層14は、その上に形成される層において滑らかで均質な粒状構造を促進する役割を果たすものである。
【0030】
シード層14の上に形成されたAFM層15は、その上のピンド層16(その中でも特に外側層であるAP2層(後述))の磁化方向を固定するように機能するものであり、例えば4nm(40Å)以上30nm(300Å)以下の厚さを有する。AFM層15は、4nm以上7nm以下の厚さを有すると共にIrMnからなることが望ましいが、必要に応じてPtMn,NiMn,OsMn,RuMn,RhMn,PdMn,RuRhMn,またはMnPtPdを用いてもよい。
【0031】
ピンド層16は、強磁性材料からなるAP2層(図示せず)と、ルテニウムなどからなる非磁性の結合層(図示せず)と、強磁性材料からなるAP1層(図示せず)とがAFM層15の側から順に積層されたシンセティック反平行(SyAP:Synthetic Anti-Parallel)構造(AP2/Ru/AP1)を有している。結合層は、ルテニウムのほか、例えばRhまたはIrなどによって形成することができる。AP2層は、外側ピンド層とも称され、AFM層15に接している。AP2層は、例えば、Feが約10原子%含まれるCoFeからなり、例えば1nm以上5nm以下の厚さを有する。AP2層の磁気モーメントは、AP1層の磁気モーメントとは反平行の方向に固定されている。例えば、AP1層が「−X」方向の磁気モーメントを有している場合、AP2層は「+X」方向に配向した磁気モーメントを有している。また、AP2層とAP1層との厚さは、わずかに異なっている。これにより、ピンド層16は、全体として、後工程においてパターニングされるTMRセンサ1の容易軸方向に沿って小さな正味磁気モーメントを発現するようになっている。結合層は、AP2層とAP1層との間の交換結合を促進させるためのもので、例えば0.3nm以上0.9nm以下の膜厚のRuにより形成するのが好ましい。AP1層は、内側ピンド層とも呼ばれ、単層または複合層からなるが、その表面(後にトンネルバリア層17が形成される面)がより均一になるようにするために、アモルファス構造が採用される。
【0032】
ボトム型スピンバルブ構造の例において、トンネルバリア層17は、例えば酸化マグネシウム(MgOx)により構成することが好ましい。MgOxからなるトンネルバリア層17は、酸化アルミニウム(AlOx)や酸化チタン(TiOx)をトンネルバリア層として用いたTMR積層構造に比べて高いTMR比を得ることができるからである。但し、必要に応じて、MgOのほかに他の材料(例えば、MgZnO,ZnO,Al2 3 ,TiOx ,AlTiO,HfOx およびZrOx のいずれか、またはこれらを2種以上混合した材料)により形成するトンネルバリア層17を構成するようにしてもよい。
【0033】
MgOxからなるトンネルバリア層17は、ピンド層16の上に例えば0.4nm以上1.4nm以下の膜厚の第1のMg層(図示せず)を形成したのち、この第1のMg層に対して自然酸化(NOX)処理を行い、さらにその上に例えば0.2nm以上0.8nm以下の膜厚の第2のMg層を設けることにより形成することが好ましい。この場合のトンネルバリア層17はMgOx/Mgという2層構造を有するものと考えられる。ここで、第2のMg層は、その後に成膜されるフリー層の酸化を防止するように機能する。上記の自然酸化の結果、過剰な酸素はMgOx層の上面に蓄積されるので、仮にトンネルバリア層のMgOx層のすぐ上にフリー層を形成した場合には、そのフリー層が酸化されてしまうと考えられる。これに対して、第2のMg層を成膜するようにした場合には、そのようなフリー層の酸化を防止できるのである。このような構造のTMRセンサ1では、その面積抵抗(RA)値およびMR比は、2つのMg層(第1および第2のMg層)の膜厚を変化させることにより、あるいは自然酸化の時間と圧力を変化させることにより、調整することができる。具体的には、酸化時間をより長くしたり、圧力をより高くしたりすることによりMgOx層が厚くなると、RA値がより増加することになる。
【0034】
積層体S1のすべての層は、例えばAnelva社製C−7100等のスパッタリングシステムにおける直流スパッタリングチャンバ内で成膜可能である。このシステムは、複数のターゲットが設けられた超高真空直流マグネトロンスパッタチャンバと、少なくとも1つの酸化チャンバとを備えている。そのようなスパッタ成膜プロセスは、通常、アルゴンスパッタガスを用いて5×133×10-8〜5×133×10-9[Pa]程度のベース圧力下で行われる。この圧力が低いほど、形成される膜の均一性が向上する。
【0035】
自然酸化は、スパッタ成膜システムにおける酸化チャンバ内において、0.1×133.3×10-3〜133.3[Pa]程度の酸素圧力の下で15〜300秒程度にわたって行われる。本実施の形態では、自然酸化プロセスの間は加熱も冷却も行わない。0.5〜5[Ω・μm2 ]程度のRA値を得るためには、酸素圧力を10-4×133×10-6〜133[Pa]程度に設定して上記の時間にわたって自然酸化処理を行うのが好ましい。酸素ガスとAr,KrまたはXe等の不活性ガスとの混合ガスを用いると、酸化プロセスをよりよくコントロールすることができる。
【0036】
MgOxからなるトンネルバリア層17はまた、RFスパッタリング法または反応性スパッタリング法によってピンド層の上にMgOx層を成膜することによっても形成可能であろう。しかしながら、このようなスパッタ成膜によるMgOx膜厚は、本実施の形態の方法(自然酸化法)に比べると、あまり望ましい方法とはいえない。本発明者らが、0.6μmというサイズの円形素子を作製し、その最終的なRA値のばらつき(1σ)を測定したところ、RFスパッタリング法では10%を越えるものであったのに対し、本実施の形態の方法(直流スパッタ成膜+自然酸化法)では3%未満であった。
【0037】
なお、トンネルバリア層17として、TiOx,AlTiO,MgZnO,Al23,ZnO,ZrOx,もしくはHfOx等の他の材料、またはMgOを含めたこれらの他の材料の任意の組み合わせを適宜用いてもよい。
【0038】
このTMRセンサ1において最も重要な特徴をなすのは、トンネルバリア層17の上のフリー層18である。フリー層18は、図2に示したように3層構造を有している。具体的には、フリー層18は、トンネルバリア層17の側から順に第1の強磁性層18aと、挿入層18bと、第2の強磁性層18cとが順に積層されたものである。
【0039】
なお、本出願人は、先の出願において、それ以前のものと比較して高いTMR比、低い保磁力、低い磁歪、および低いRA値を有するTMRセンサまたはGMRセンサに用いられる複合フリー層構造を開示した。例えば、本願関連出願としての米国特許出願第11/983718号には、CoFeB層/非磁性層/NiFe層よりなる3層構造を有し、そのうちの非磁性層がHf,V,Zr,Nb,Ta,Mo,またはCrを有するフリー層が開示されている。このフリー層では、例えば、CoFeB層とNiFe層とが、Taを有する挿入層により分離されているため、高いTMR比が得られる。また、CoFeB層とNiFe層とは、互いの磁気モーメントを平行配置に配列させる傾向を有するオレンジピール型の結合を介して、磁気的に結合している。一方で、このオレンジピール結合は比較的弱く、実デバイスとしては、CoFeB層とNiFe層との互いの磁気モーメントを反平行に配列させる傾向を有する、2つの強磁性フリー層の境界部からの静磁結合を備える必要がある。さらに、互いに異なる符号の磁歪に起因して、応力誘導異方性が、CoFeB層とNiFe層との磁気モーメントを互いに垂直に配列させ易い。その結果、このフリー層構造の磁気ノイズは、やや高くなっている。したがって、信号の振幅は高いものの、信号対雑音比(SNR:Signal to Noise Ratio)についての改善は限定的であることから、SNRのさらなる向上が望ましい。
【0040】
本願関連出願である米国特許出願第11/983329号では、プラス(+)の磁歪値を有する少なくとも一つのCoFe層と、少なくとも一つの負の磁歪層(CoBまたはFeB等)とを含む3層構造を有するフリー層により、高性能なセンサが得られることが実証されている。一方で、本出願人は、フリー層の磁気特性を調整する際の柔軟性をさらに高めることを可能とすべく、上述した複合フリー層をさらに改変することを動機付けられた。そして、本出願人は、今回、第1の強磁性層18a/挿入層18b/第2の強磁性層18cにより表される3層構造において、その中間層である挿入層18bが少なくとも一つの磁性元素と、少なくとも一つの非磁性元素とを含むようにし、かつ、その厚さおよび非磁性元素の含有量の双方を変化させることにより、TMR比、磁歪、および第1の強磁性層18aと第2の強磁性層18cとの間の結合強度を調整することが可能なことを見出した。
【0041】
第1の強磁性層18aは、トンネルバリア層17と接し、例えば、CoW Fe(100-W) および[CoW Fe(100-W)(100-Y)Y のうちの少なくとも一方のコバルト鉄含有合金(但しWは0以上100以下、yは10以上40以下)によって構成される。あるいは、上記のコバルト鉄含有合金のうちの少なくとも一方に、Ni,Ta,Mn,Ti,W,Zr,Hf,TbおよびNbから選択される少なくとも一種の追加元素を添加してなる合金によって構成されてもよい。
【0042】
第1の強磁性層18aは、特に、0.2nm以上4nm以下の厚さを有し、CoFeBからなる単層構造、CoFe/CoFeBで表わされる2層構造、またはCoFe/CoFeB/CoFeで表わされる3層構造を有することが望ましい。dR/R(TMR比)の向上に有利となるからである。強磁性層18aが、CoFeBを含む2つ以上の層の多層構造である場合、そのCoFeB層の厚さは、dR/Rを最大限に高めるために、多層構造における他の層よりも厚いことが好ましい。ただし、CoFeB層は、基本的に大きなプラス(+)の磁歪値を有しており、高性能を達成すべく約5×10-6未満の磁歪を得るためには、フリー層18の一つ以上の他の層におけるマイナス(−)の磁歪値を用いてこれを相殺する必要がある。また、第1の強磁性層18aは、全体として正の磁歪定数を有するものである。
【0043】
挿入層18bの厚さを一定としつつ、磁性元素の含有量を増加させた場合、第1の強磁性層18aと第2の強磁性層18cとの間の結合強度は増加する一方で、TMR比は低下する。挿入層18bの磁性元素の含有量を低下させた場合、逆の効果が現れる。センサ中のノイズを最小限に抑制し、信号対雑音比(SNR)を改善する上では、第1の強磁性層18aと第2の強磁性層18cとの間の結合(Hcp)が強力であることが望ましい。さらに、このHcpの値が増加すると、磁気的安定性が向上することにもなる。
【0044】
挿入層18bは、第1の強磁性層18aの上に形成され、Fe,CoおよびNiから選択される少なくとも一種の磁性元素と、Ta,Ti,W,Zr,Hf,Nb,Mo,V,MgおよびCrから選択される少なくとも一種の非磁性元素とを含むものである。
【0045】
挿入層18bが四元合金から構成される場合、そのうちの非磁性元素として、Bを用いてもよい。挿入層18bは、好ましくは全体的に非磁性を示し、例えば0.2nm以上1.0nm以下の厚さを有する。
【0046】
挿入層18bは、例えばCoTaにより表される組成を有するとよい。但し、CoとTaとの比率は1:1から4:1であり、特に2:1であることが望ましい。適宜、Coの含有量を50〜80原子%の間で変化させることにより、全体的な非磁性特性を得るようにしてもよい。上述したように、磁性元素(ここでは、Co)の含有量を増加させた場合、第1の強磁性層18aと第2の強磁性層18cとの間の結合強度が増大する一方で、TMR比が低下する。Coの含有量を50原子%付近にまで減少させた場合、結合強度は低下するものの、TMR比は増加する。
【0047】
あるいは挿入層18bは、CoFeBTaにより表される組成を有するようにしてもよい。但し、CoFeBとTaとの比率は1:1から4:1であり、特に2:1であることが望ましい。CoFeBTa合金中のCoFeBの組成は、Coが40から70原子%、Feが20から40原子%、Bが10から30原子%であることが好ましい。
【0048】
挿入層18bは、スパッタ成膜装置内で各元素のターゲットを同時スパッタすることにより形成され得る。CoFeBTa合金からなる挿入層18bのように複数の元素を含む場合、例えば、CoFeBターゲットとTaターゲットとを同時スパッタすることにより、所望の組成が得られる。
【0049】
第2の強磁性層18cは、CoW Fe(100-W)(Wは0以上100以下)およびNiZ Fe(100-Z)(Zは70以上100以下)のうちの少なくとも一方の合金によって構成される。あるいは、上記のCoW Fe(100-W)もしくはNiZ Fe(100-Z)とNi,Ta,Mn,Ti,W,Zr,Hf,Tb,NbおよびBから選択される少なくとも一種の元素とを組み合わせた合金によって構成されてもよい。第2の強磁性層18cは、例えば、0.2nm以上5nm以下の厚さを有し、CoFeもしくはNiFeからなる単層構造、またはCoFe/NiFe/CoFeで表わされる3層構造を有する。
【0050】
第2の強磁性層18cがCoFe/NiFe/CoFeで表わされる3層構造を有する場合、NiFe層は、他の2つのCoFe層よりも実質的に厚いことが好ましい。NiFeの軟磁性特性を活用するとともに、NiFe材料より得られるマイナス(−)の磁歪値の寄与を活用して第1の強磁性層18aにおけるプラス(+)の磁歪値を相殺するためである。NiFe層を、2つのCoFe層間に挟むことにより、NiFe層とTaを含む挿入層18bとの接触を防止することもできる。TaとNiFe層とが接触すると、dR/Rを悪化させるいわゆる「デッドゾーン」が形成されるが、上記の3層構造によってこれを回避することができる。
【0051】
基本的に、第2の強磁性層18cは、全体として負の磁歪定数を有するものであり、挿入層18bを介した第1の強磁性層18aとの強力な結合を促進するものであることが好ましい。ただし、第2の強磁性層18cを、プラス(+)の小さな磁歪値を有する第1の強磁性層18aと組み合わせて用いる場合、第2の強磁性層18cが小さいプラス(+)の磁歪値を有するようにしてもよい。
【0052】
キャップ層19は、第2の強磁性層18cの上に形成され、Ru,Ta,またはRuとTaとの組み合わせより構成される。なお、キャップ層19は、この技術分野において用いられる他の材料より構成してもよい。
【0053】
このように、本実施の形態のTMRセンサ1は、それぞれ所定の材料からなる第1の強磁性層、挿入層および第2の強磁性層を有する複合フリー層を備えるようにしたので、低磁歪定数、低RA値および低保磁力を達成しつつ、例えば60%を超える高い抵抗変化率(TMR比)を実現することができる。
【0054】
次に、図1および図2に加え、図3を参照して本実施の形態におけるTMRセンサ1の形成方法について説明する。図3は、TMRセンサの形成方法における一工程を表す断面図である。
【0055】
まず、所定の基板上に下部シールド層10を形成する。そののち、その下部シールド層10の上にシード層14、AFM層15、ピンド層16、トンネルバリア層17、フリー層18、キャップ層19をそれぞれ上記の所定材料を用いて所定の構造となるように順次積層することにより積層膜を形成する。積層膜の形成は、所定のスパッタ蒸着装置を用いて行う。なお、積層膜における全ての層を同じスパッタリングチャンバ内で成膜するようにしてもよい。
【0056】
トンネルバリア層17を形成するにあたっては、例えば、ピンド層16の上に第1のMg層を成膜したのち、第1のMg層に対して自然酸化処理を行うことによりMgO層を形成し、さらにそのMgO層の上に第2のMg層を成膜することにより形成する。第1のMg層の酸化工程は、例えばスパッタ装置の酸素チャンバ内で行われる。
【0057】
次いで、この積層膜を真空オーブン内に入れ、その積層膜に対するアニール処理を行う。アニール処理は、240℃以上340℃以下の温度範囲、好ましくは250℃以上270℃以下の温度範囲において、少なくとも2000×103/4π[A/m]、好ましくは8000×103/4π[A/m]の強度の磁界を印加しつつ、2〜10時間に亘って行う。アニール処理における時間や温度等の条件を適切に設定することにより、未反応の酸素が、隣接する第1および第2のMg層中に拡散し、その結果、トンネルバリア層17は均質なMgOx層になる。また、ピンド層16およびフリー層18の磁化方向が設定される。
【0058】
次に、図3に示したように、従来のシーケンスにより、アニール処理がなされた積層膜をパターニングすることにより積層体S1を得る。具体的には、例えばキャップ層19の上面19aを覆うようにフォトレジスト層20を形成し、これを所定形状にパターニングしたのち、反応性イオンエッチング(RIE)やイオンビームエッチング(IBE)等を用いて、積層膜のうち、フォトレジスト層20によって覆われていない露出部分を除去する。エッチングプロセスは、下部シールド層10に達したところで、または、下部シールド層10とバリア層(図示せず)との間で停止する。これにより、上面19aおよび側壁21を有する積層体S1が得られる。
【0059】
次に、図1に示したように、下部シールド層10の露出した上面から積層体S1の側壁21まで連続して覆うように絶縁層22を形成したのち、その上にバイアス層23およびキャップ層24を形成し、その後、フォトレジスト層20をリフトオフプロセスにより除去する。続いて、キャップ層24および積層体S1の上面19aの上に上部リードとしての上部シールド層25を形成する。下部シールド層10と同様に、上部シールド層25もまた、膜厚が約2μmのNiFe層として形成する。これによりTMRセンサ1が完成する。なお、上部シールド層25の上にさらに第2のギャップ層(図示せず)を備えるようにしてもよい。
【0060】
本実施の形態のTMRセンサ1におけるフリー層18を形成するにあたっては、取り立てて新規なスパッタリングターゲットや新規なスパッタチャンバ等を必要としないので、従来に比べてコストアップを伴うことなく形成することが可能である。さらに、通常のGMRセンサの製造工程において採用されているプロセスと互換性のある低温アニールプロセスを適用することができる。したがって、現行のプロセスフローや、これに関連するプロセスを何ら改変する必要がなく、製造が容易である。
【0061】
[第2の実施の形態]
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る複合フリー層を有するGMRセンサ1Aを表わす断面図である。このGMRセンサ1AはCIP構造またはCPP構造を有し、GMR−CPPヘッドまたはGMR−CIPヘッドに適用可能なものである。GMRセンサ1Aは、上記第1の実施の形態のTMRセンサ1におけるトンネルバリア層17を、例えばCuなどからなる非磁性スペーサ層27に置き換えたものである。それ以外の構成要素は、上述したTMRセンサ1と同様である。第1の強磁性層18aは、非磁性スペーサ層27の上面に接している。GMRセンサ1Aは、上述したTMRセンサ1と同様にして作製される。
【0062】
このようなGMRセンサ1Aにおいても、TMRセンサ1と同様に、低磁歪定数、低RA値および低保磁力を達成しつつ、例えば60%を超える高い抵抗変化率(GMR比)を実現することができる。
【実施例】
【0063】
次に、本発明に関する実施例(実験例)について説明する。
【0064】
本発明のTMRセンサにより、その性能改善が実現されることを確認するために、以下のような比較実験を行った。
【0065】
表1は、図1に示したTMRセンサ1において、フリー層18のうちの挿入層18bの構成を種々に変えたときに得られる磁気特性(抵抗変化率dR/Rおよび結合磁界Hcp(×103/4π[A/m]))を表すものである(サンプルA〜D)。
【0066】
ここでのTMRセンサ1の積層構造は以下の通りである。
「シード層/反強磁性(AFM)層/ピンド層/トンネルバリア層/フリー層/キャップ層」
ここで、シード層はTa(2)/Ru(2)の2層構造であり、反強磁性(AFM)層はIrMn(7)である。 ピンド層はAP2層/Ru層/AP1層の3層構造であり、詳細にはFe30 Co70 層(2.5)/Ru(0.75)/Fe30 Co70 層(2.5)である。トンネルバリア層はMgOxで表わされ、より詳細にはMg(0.7)/NOX/Mg(0.3)である。フリー層は第1の強磁性層(FL1)/挿入層/第2の強磁性層(FL2)の3層構造である。そのうちFL1層はCo90 Fe10 (0.3)/Co60 Fe20 20 (2)/Co90 Fe10(0.3)の3層構造であり、FL2層は、Co90 Fe10 (0.3)/Ni90 Fe10 (4)/Co90 Fe10 (0.3)の3層構造である。また、挿入層は、各々表1に示した通りである。キャップ層はRu(1)/Ta(6)の2層構造である。なお、括弧内の数値は膜厚(nm)を表す。以下、同様である。本実験では、上記の積層構造をNiFeからなる下部シールド層の上に形成し、8000×103 /4π[A/m]の磁界を印加しながら真空中で280℃の温度下において5時間に亘ってアニール処理を行った。なお、いずれもサンプルにおいても、RA値は1.2となるように作製した。
【0067】
【表1】

【0068】
表1に示したように、サンプルAでは、挿入層を、Taからなる厚さ0.1nmの単層構造とした。サンプルBでは、挿入層をTaからなる厚さ0.3nmの単層構造とした。サンプルCでは、挿入層を、CoFeBTaまたはCoTaからなる厚さ0.6nm厚の単層構造とした。さらに、サンプルDでは、挿入層を、CoFeBTaまたはCoTaからなる厚さ0.4nm厚の単層構造とした。
【0069】
表1からわかるように、複合フリー層の2つの強磁性層間に、Taを有する挿入層を設けた場合、Taの厚さを、サンプルAにおける0.1nmから、サンプルBにおける0.3nmに増加させると、抵抗変化率dR/Rは、57%から60%に増加した。これは、より厚さを有するTa層は、CoFeB層と接するNiFe層による影響を遮断する上で、好ましいからである。一方で、Ta層の厚さの増加に伴い、2つの強磁性層間の結合磁界(Hcp)は急激に低下した。これは、デバイス安定性に対して悪影響を与えるため、好ましくない。
【0070】
これに対し、サンプルCおよびDは、本発明に係る挿入層が、第1の強磁性層(FL1)と第2の強磁性層(FL2)との間に挿入されるようにしたので、比較的高い抵抗変化率dR/Rおよび低いRA値と共に、高い結合磁界Hcpを実現可能であることを示している。例えば、0.6nm厚のCoFeBTa膜またはCoTa膜を挿入層として選択することにより(サンプルC)、抵抗変化率dR/Rについて格段に高い63%が得られており、かつ、結合磁界Hcpも780Oeという高い値を示している。ここで、CoFeBとTaとの比率、またはCoとTaとの比率は2:1であり、CoFeBTaまたはCoTaからなる単一構造は非磁性である。前述したように、挿入層の厚さを減少させた場合(サンプルD)には、抵抗変化率dR/Rが低下するが、結合磁界Hcpは増加する。一方で、挿入層の厚さを6Å(=0.6nm)を超える程度まで増加させた場合、抵抗変化率dR/Rが増加するが、結合磁界Hcpは低下することが考えられる。挿入層における磁性元素と非磁性元素との比率を調整することにより、抵抗変化率dR/Rおよび結合磁界Hcpをさらに最適化することが可能である。さらに、NiFe層の組成または厚さを変化させることにより、抵抗変化率dR/Rに対する影響を最小限に抑えつつ、複合フリー層の磁歪を調整し得る。
【0071】
表1に示したサンプルC,Dは、いずれも適度に良好な磁気的柔軟性を有しており、保磁力(Hc)は4から5Oe前後、磁歪定数は約1×10-6となった。磁気特性は、0.8μmの円形素子から得た。なお、抵抗変化率dR/R値は、TMRセンサ1の寸法が減少するにつれて増加する傾向が見られた。
【0072】
本発明の利点は、60%を超える高いTMR比を、低RA値(2Ω×μm2未満)および低磁歪と共に得ることができることにある。これは、FeCo/NiFeを有するフリー層(低dR/R比)またはFeCo/CoFeBを有するフリー層(高磁歪)より構成された従来のTMRセンサと比べ、大幅に改善された点である。さらに、本実施の形態で開示したように、FL1/挿入層/FL2の組成を有する複合フリーにより、軟磁性特性(低Hc)が実現されている。
【0073】
以上、特定の実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、本発明の趣旨から外れることがない限りにおいて、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態等においては、ピンド層がトンネルバリア層の下側に位置するボトム型スピンバルブ構造のTMRセンサを例にとって説明したが、ピンド層がトンネルバリア層の上側に位置するトップ型スピンバルブ構造のTMRセンサにも適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
S1…積層体、1…TMRセンサ、1A…GMRセンサ、10…下部シールド層、14…シード層、15…AFM層、16…ピンド層、17…トンネルバリア層、18…フリー層、18a…第1の強磁性層、18b…挿入層、18c…第2の強磁性層、19,24…キャップ層、22…絶縁層、23…バイアス層、25…上部シールド層、20…フォトレジスト層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基体上に、シード層と反強磁性(AFM)層とピンド層とを順に有する積層構造と、
(b)前記ピンド層の上に形成されたトンネルバリア層と、
(c)前記トンネルバリア層の上に、第1の強磁性層と挿入層と第2の強磁性層とを順に有する複合フリー層と、
(d)前記複合フリー層の前記第2の強磁性層の上に設けられたキャップ層と
を備え、
(1)前記第1の強磁性層は、前記トンネルバリア層と接し、CoW Fe(100-W) および[CoW Fe(100-W)(100-Y)Y のうちの少なくとも一方のコバルト鉄含有合金(但しWは0以上100以下、yは10以上40以下)、または、それらのコバルト鉄含有合金のうちの少なくとも一方にNi,Ta,Mn,Ti,W,Zr,Hf,TbおよびNbから選択される少なくとも一種の追加元素を添加してなる合金、を含み、かつ、正の磁歪定数を有するものであり、
(2)前記挿入層は、前記第1の強磁性層の上に形成され、Fe,CoおよびNiから選択される少なくとも一種の磁性元素と、Ta,Ti,W,Zr,Hf,Nb,Mo,V,MgおよびCrから選択される少なくとも一種の非磁性元素とを含むものであり、
(3)前記第2の強磁性層は、CoW Fe(100-W)(Wは0以上100以下)およびNiZ Fe(100-Z)(Zは70以上100以下)のうちの少なくとも一方の合金、または、CoW Fe(100-W)もしくはNiZ Fe(100-Z)とNi,Ta,Mn,Ti,W,Zr,Hf,Tb,NbおよびBから選択される少なくとも一種の元素とを組み合わせた合金、を含み、かつ、負の磁歪定数を有するものである
磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
前記第1の強磁性層は、0.2nm以上4nm以下の厚さを有し、CoFeBからなる単層構造、CoFe/CoFeBで表わされる2層構造、またはCoFe/CoFeB/CoFeで表わされる3層構造を有する
請求項1記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
前記挿入層は、0.2nm以上1.0nm以下の厚さを有し、CoTaにより表される組成(但し、CoとTaとの比率は1:1から4:1である)を有する
請求項1記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項4】
前記挿入層は、0.2nm以上1.0nm以下の厚さを有し、CoFeBTaにより表される組成(但し、CoFeBとTaとの比率は1:1から4:1である)を有する
請求項1記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項5】
前記第2の強磁性層は、0.2nm以上5nm以下の厚さを有し、CoFeもしくはNiFeからなる単層構造、またはCoFe/NiFe/CoFeで表わされる3層構造を有する
請求項1記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項6】
前記トンネルバリア層は、MgO,MgZnO,ZnO,Al2 3 ,TiOx ,AlTiO,HfOx およびZrOx のうちの少なくとも一種からなる
請求項1記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項7】
(a)基体上に、シード層と反強磁性(AFM)層とピンド層とを順に有する積層構造と、
(b)前記ピンド層の上に形成された非磁性スペーサ層と、
(c)前記非磁性スペーサ層の上に、第1の強磁性層と挿入層と第2の強磁性層とを順に有する複合フリー層と、
(d)前記複合フリー層の前記第2の強磁性層の上に設けられたキャップ層と
を備え、
(1)前記第1の強磁性層は、前記トンネルバリア層と接し、CoW Fe(100-W) および[CoW Fe(100-W)(100-Y)Y のうちの少なくとも一方のコバルト鉄含有合金(但しWは0以上100以下、yは10以上40以下)、または、それらのコバルト鉄含有合金のうちの少なくとも一方にNi,Ta,Mn,Ti,W,Zr,Hf,TbおよびNbから選択される少なくとも一種の追加元素を添加してなる合金、を含み、かつ、正の磁歪定数を有するものであり、
(2)前記挿入層は、前記第1の強磁性層の上に形成され、Fe,CoおよびNiから選択される少なくとも一種の磁性元素と、Ta,Ti,W,Zr,Hf,Nb,Mo,V,MgおよびCrから選択される少なくとも一種の非磁性元素とを含むものであり、
(3)前記第2の強磁性層は、CoW Fe(100-W)(Wは0以上100以下)およびNiZ Fe(100-Z)(Zは70以上100以下)のうちの少なくとも一方の合金、または、CoW Fe(100-W)もしくはNiZ Fe(100-Z)とNi,Ta,Mn,Ti,W,Zr,Hf,Tb,NbおよびBから選択される少なくとも一種の元素とを組み合わせた合金、を含み、かつ、負の磁歪定数を有するものである
磁気抵抗効果素子。
【請求項8】
GMR−CPPセンサまたはGMR−CIPセンサに搭載される請求項7記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項9】
前記第1の強磁性層は、0.2nm以上4nm以下の厚さを有し、CoFeBからなる単層構造、CoFe/CoFeBで表わされる2層構造、またはCoFe/CoFeB/CoFeで表わされる3層構造を有する
請求項7記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項10】
前記挿入層は、0.2nm以上1.0nm以下の厚さを有し、CoTaにより表される組成(但し、CoとTaとの比率は1:1から4:1である)を有する
請求項7記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項11】
前記挿入層は、0.2nm以上1.0nm以下の厚さを有し、CoFeBTaにより表される組成(但し、CoFeBとTaとの比率は1:1から4:1である)を有する
請求項7記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項12】
前記第2の強磁性層は、0.2nm以上5nm以下の厚さを有し、CoFeもしくはNiFeからなる単層構造、またはCoFe/NiFe/CoFeで表わされる3層構造を有する
請求項7記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項13】
TMRセンサに用いられる磁気抵抗効果素子の形成方法であって、
(a)基体上に、シード層と、反強磁性(AFM)層と、ピンド層とを順に積層することにより積層構造を形成する工程と、
(b)前記ピンド層の上に、トンネルバリア層を形成する工程と、
(c)前記トンネルバリア層の上に、第1の強磁性層と、挿入層と、第2の強磁性層とを有する複合フリー層を形成する工程と、
(d)前記複合フリー層の上に、キャップ層を形成する工程と
を含み、
(1)前記第1の強磁性層を、前記トンネルバリア層と接し、CoW Fe(100-W) および[CoW Fe(100-W)(100-Y)Y のうちの少なくとも一方のコバルト鉄含有合金(但しWは0以上100以下、yは10以上40以下)、または、それらのコバルト鉄含有合金のうちの少なくとも一方にNi,Ta,Mn,Ti,W,Zr,Hf,TbおよびNbから選択される少なくとも一種の追加元素を添加してなる合金、を用いて正の磁歪定数を有するように形成し、
(2)前記挿入層を、前記第1の強磁性層の上に、Fe,CoおよびNiから選択される少なくとも一種の磁性元素と、Ta,Ti,W,Zr,Hf,Nb,Mo,V,MgおよびCrから選択される少なくとも一種の非磁性元素とを含むように形成し、
(3)前記第2の強磁性層を、CoW Fe(100-W)(Wは0以上100以下)およびNiZ Fe(100-Z)(Zは70以上100以下)のうちの少なくとも一方の合金、または、CoW Fe(100-W)もしくはNiZ Fe(100-Z)とNi,Ta,Mn,Ti,W,Zr,Hf,Tb,NbおよびBから選択される少なくとも一種の元素とを組み合わせた合金、を用いて負の磁歪定数を有するように形成する
磁気抵抗効果素子の形成方法。
【請求項14】
前記トンネルバリア層を、MgO,MgZnO,ZnO,Al2 3 ,TiOx ,AlTiO,HfOx およびZrOx のうちの少なくとも一種を用いて形成する
請求項13記載の磁気抵抗効果素子の形成方法。
【請求項15】
前記トンネルバリア層を、
前記ピンド層の上に第1のMg層を成膜したのち、前記第1のMg層に対して自然酸化処理を行うことによりMgO層を形成し、さらに前記MgO層の上に第2のMg層を成膜することにより形成する
請求項14記載の磁気抵抗効果素子の形成方法。
【請求項16】
前記基体上に設けられた積層構造、トンネルバリア層、複合フリー層の全体に対してアニール処理を行う工程を含む
請求項15記載の磁気抵抗効果素子の形成方法。
【請求項17】
前記第1の強磁性層を、CoFeBからなる単層構造、CoFe/CoFeBで表わされる2層構造、またはCoFe/CoFeB/CoFeで表わされる3層構造とし、0.2nm以上4nm以下の厚さとなるように形成する
請求項13記載の磁気抵抗効果素子の形成方法。
【請求項18】
前記挿入層を、0.2nm以上1.0nm以下の厚さとなるように、かつ、CoTaにより表される組成(但し、CoとTaとの比率は1:1から4:1である)を有するように形成する
請求項13記載の磁気抵抗効果素子の形成方法。
【請求項19】
前記挿入層を、0.2nm以上1.0nm以下の厚さとなるように、かつ、CoFeBTaにより表される組成(但し、CoFeBとTaとの比率は1:1から4:1である)を有するように形成する
請求項13記載の磁気抵抗効果素子の形成方法。
【請求項20】
前記第2の強磁性層を、0.2nm以上5nm以下の厚さとなるように、かつ、CoFeもしくはNiFeからなる単層構造、またはCoFe/NiFe/CoFeで表わされる3層構造を有するように形成する
請求項13記載の磁気抵抗効果素子の形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−166051(P2010−166051A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4623(P2010−4623)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(500475649)ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド (251)
【Fターム(参考)】