説明

磁気抵抗効果素子及び磁気抵抗効果メモリの製造方法

【課題】磁気抵抗効果素子間のばらつきを低減する。
【解決手段】本発明の例に関わる磁気抵抗効果素子は、少なくとも2つの方向に沿ってそれぞれ延びる延在部1A,1Bを有し、その延在部の延在方向に沿ったそれぞれ異なる複数の磁化容易軸を有する磁化固定層1と、磁化固定層1上に設けられるトンネルバリア層2と、トンネルバリア層2上に設けられ、磁化方向が可変となる磁化自由層3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果素子に係り、特に、磁化固定層の形状に関する。また、本発明は、磁気抵抗効果メモリの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新たな原理により情報を記憶する半導体メモリが、数多く提案されている。そのうちの1つに、磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM:Magnetoresistive Random Access Memory)がある。
【0003】
MRAMは、磁気トンネル接合(Magnetic Tunnel Junction)を利用した素子(以下、MTJ素子と呼ぶ)が記憶素子として用いられている。MRAMを構成する1つのメモリセルは、例えば、1つのMTJ素子と1つのMIS(Metal-Insulator-Semiconductor)トランジスタとからなる1Tr+1MTJ型の構成となっている。このメモリセルがメモリセルアレイ内に複数個配置されている。
【0004】
MTJ素子は、2つの強磁性層の間に絶縁膜が挟まれ、一方の強磁性層(磁化固定層)の磁化方向を固定し、他方の強磁性層(磁化自由層)の磁化方向を自由に反転可能とさせた構造が、基本的な構造となっている。MTJ素子は、磁化固定層と磁化自由層の相対的な磁化方向に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗効果を利用して、“1”又は“0”データを記憶する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
スピン注入型MRAMにおいて、偏極スピン電流注入による磁化反転を利用したスピン注入法が、MTJ素子に対するデータの書き込み方式として採用されている。この方式では、スピン注入磁化反転に必要な電流量(反転しきい値電流)は、MTJ素子を流れる電流密度で規定されている。これは、MTJ素子のスケーリングに伴って、反転しきい値電流もスケーリングできることを意味し、MRAMの記憶容量の増大のために、MTJ素子の微細化が推進されている要因となっている。
【0006】
その一方で、MTJ素子の微細化にともない、製造プロセスにおける近接効果に起因して、露光及び加工のばらつきが顕著になり、MTJ素子の特性がばらつくことが問題なっている。結晶系磁性材料を強磁性層に用いたMTJ素子においては、微細化が進むにつれて、素子サイズと結晶粒のサイズが同程度になり、1つの素子内に含まれる結晶の配向性、結晶粒の形状や個数に起因する素子特性のばらつきも、問題となっている。
【特許文献1】特表2005−535125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、磁気抵抗効果素子の特性ばらつきを低減する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の例に関わる磁気抵抗効果素子は、少なくとも2つの方向に沿ってそれぞれ延びる複数の延在部を有し、その延在部の延在方向に沿ったそれぞれ異なる複数の磁化容易軸を有している磁化固定層と、前記磁化固定層上に設けられるトンネルバリア層と、前記トンネルバリア層上に設けられ、磁化方向が可変となる磁化自由層と、を備える。
【0009】
本発明の例に関わる磁気抵抗効果メモリの製造方法は、複数の磁気抵抗効果素子を半導体基板上に形成する工程と、前記複数の磁気抵抗効果素子に対してテストを行い、特性の調整が必要な磁気抵抗効果素子を検出する工程と、前記テストを行った後、前記半導体基板に対して基板加熱処理を行う工程と、前記特性の調整が必要な磁気抵抗効果素子に電流を流し、この電流によって生じるジュール熱を、前記電流を流した磁気抵抗効果素子に与える工程と、前記特性の調整が必要な磁気抵抗効果素子に前記基板加熱処理による熱及び前記ジュール熱を加えた状態で、磁場を印加し、前記特性の調整が必要な磁気抵抗効果素子の磁化方向を変化させて、素子特性を調整する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、磁気抵抗効果素子の特性のばらつきを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の例を実施するためのいくつかの形態について詳細に説明する。
【0012】
1. 実施形態
(1) 第1の実施形態
図1乃至図6を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0013】
(a) MTJ素子
図1乃至図3を用いて、本発明の第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子の構造について、説明する。本実施形態に係る磁気抵抗効果素子は、MTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子である。
図1は、本実施形態に係るMTJ素子の斜視図を示している。図2は、図1に示すMTJ素子の平面構造を図示し、図3は、図2の第1方向に沿う断面構造を図示している。
【0014】
図1乃至図3に示すように、本実施形態に係るMTJ素子は、磁化固定層1と、磁化固定層1上に設けられたトンネルバリア層2と、トンネルバリア層2上に設けられた磁化自由層3から構成されている。即ち、磁化自由層3が、トンネルバリア層2を介して、磁化固定層1上に第3の方向に積層された構造となっている。尚、このMTJ素子は、交換バイアス層をさらに具備し、磁化固定層1が交換バイアス層とトンネルバリア層2に挟まれた構造となってもよい。
【0015】
また、図1乃至図3においては、例えば、下部電極7が磁化固定層1に接続され、上部電極8が磁化自由層3に接続された構造になっている。
【0016】
磁化固定層1及び磁化自由層3は、例えば、結晶系磁性材料を用いて形成されている。磁化固定層1及び磁化自由層3には、例えば、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)などの原子のうち、少なくとも1つを含む強磁性金属が用いられる。また、これらの強磁性金属に、ホウ素(B)が添加されたものでも良い。
【0017】
トンネルバリア層2には、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(AlOx)(xは自然数)などの絶縁体や、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)等の常磁性金属が用いられる。
【0018】
本発明の第1の実施形態に係るMTJ素子は、その磁化固定層1の平面形状が、それぞれ異なる方向に延在する複数の延在部1A,1Bを有する形状となっており、その延在部の延在方向に沿っている複数の磁化容易軸方向に磁気異方性を備えていることを特徴としている。尚、図1乃至図3に示す例では、磁化固定層1は2つの延在部を有し、その延在部がそれぞれ異なる2つの方向(第1及び第2方向)にそれぞれ延びている例を示している。これは、説明の簡単化のためであって、磁化固定層1は3つ以上の方向にそれぞれ延びる延在部を有し、その延在方向にそれぞれ磁化容易軸方向を有しても良いのは勿論である。
【0019】
図1乃至図3に示すような平面形状を有する磁化固定層1は、形状磁気異方性を有し、第1延在部1Aが延びる第1方向は第1磁化容易軸方向となり、第2延在部1Bが延びる第2方向は第2磁化容易軸方向となる。
【0020】
一方、磁化自由層3は、例えば、楕円形状をなしている。磁化自由層3は、その長軸方向が第1方向に沿い、その短軸方向が第1方向と直行する方向に沿うように、トンネルバリア層2を介して磁化固定層1上に積層されている。このように楕円形状を有する磁性層は、長軸方向が磁化容易軸方向となり、短軸方向が磁化困難軸となるため、磁化自由層3の磁化容易軸方向は第1方向となっている。また、磁化自由層3のサイズは、磁化固定層1のサイズよりも小さくなるように形成されている。
【0021】
磁化固定層1及び磁化自由層3が、例えば、結晶性磁性材料を用いて形成される場合、素子の微細化に伴い、素子内に含まれる結晶の配向性、結晶粒の形状及び個数の違いによって、各層1,3の磁化方向がばらつく傾向がある。
【0022】
MTJ素子の抵抗値は、磁化固定層1と磁化自由層3との相対的な磁化方向によって決まるため、磁化方向のばらつきが、素子毎の特性のばらつきの原因となってしまう。
【0023】
本実施形態では、MTJ素子の磁化固定層1が複数の磁化容易軸方向の形状磁気異方性を備えることで、磁化固定層1の磁化方向を、複数の磁化容易軸の中から選択された1つの磁化容易軸に沿った方向とすることができる。
【0024】
それゆえ、磁化固定層1と磁化自由層3との間の相対的な磁化方向で決まるMTJ素子の抵抗値が所定の範囲内、或いは、MTJ素子のMR比が所定と値となるように、例えば、外部磁場を印加することよって、磁化固定層1の磁化方向を変更できる。即ち、MTJ素子の特性を、所定の範囲内に収まる特性となるように、調整できる。
【0025】
このように、本実施形態では、磁化固定層又は磁化自由層が含む結晶のばらつきに起因した素子特性のばらつきを、磁化固定層に形状磁気異方性を持たせ、磁化方向を変更可能とすることによって、解消することができる。
【0026】
したがって、本発明の第1の実施形態によれば、MRAMに用いられる複数のMTJ素子の素子特性のばらつきを低減できる。
【0027】
(b) 製造方法
図4乃至図6を用いて、本発明の第1の実施形態に係るMRAM(磁気抵抗効果メモリ)の製造方法として、MTJ素子の素子特性調整方法について、説明する。
【0028】
図4は、MRAMを構成しているMTJ素子の素子特性の調整方法、具体的には、MTJ素子の磁化固定層の磁化方向の調整方法の各工程を図示している。また、図5は、本実施形態に係るMRAMのメモリセルアレイ領域の断面構造を模式的に示し、並びに、図5中には、各MTJ素子の磁化固定層の平面形状及び磁化方向も図示している。尚、図5では、半導体基板上に形成される層間絶縁膜は、説明の簡略化のため、図示を省略している。また、図5では、図1乃至図3と同一の部材については類似する同じ符号を付し、詳細な説明は必要に応じて行う。
【0029】
はじめに、図5に示すような構成のMRAMが、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法やスパッタ法といった薄膜堆積技術や、フォトリソグラフィー技術及びRIE(Reactive Ion Etching)法などを用いて、半導体基板上に作製される(ST1)。
【0030】
図5に示す例では、MRAM内に含まれる各メモリセルMC1〜MC4は、例えば、1つのMTJ素子MTJ1〜MTJ4と、このMTJ素子に対して選択スイッチ素子として機能する1つのMISトランジスタTr1〜Tr4(以下、選択トランジスタと呼ぶ)とから構成される、いわゆる、1Tr+1MTJの構成で形成される。複数のメモリセルMC1〜MC4にそれぞれ接続されるように、複数のワード線及び複数のビット線が形成される。この構成のMRAMの具体的な形成順序は、以下ようになっている。
【0031】
尚、第1乃至第4の選択トランジスタTr1〜Tr4は、ほぼ同様の構成を有しているため、以下では、第1の選択トランジスタTr1を例に、その構造及び形成方法について説明する。また、第1乃至第4のMTJ素子MTJ1〜MTJ4は、ほぼ同様の構成を有しているため、以下では、第1のMTJ素子MTJ1を例に、その構造及び形成方法について説明する。
【0032】
まず、半導体基板10内に、素子分離絶縁膜15が形成され、この素子分離絶縁膜15に取り囲まれた1つの島状のアクティブ領域が形成される。1つのアクティブ領域内には、第1のMTJ素子MTJ1と第1の選択トランジスタTr1からなる第1のメモリセルMC1と、第2のMTJ素子MTJ2と第2の選択トランジスタTr2からなる第2のメモリセルMC2が、形成される。同様に、第3及び第4のメモリセルMC3,MC4は、1つの島状のアクティブ領域内に形成される。
【0033】
第1の選択トランジスタTr1のゲート電極12は、半導体基板10上のゲート絶縁膜11上に形成される。選択トランジスタTr1のゲート電極12は、例えば、ワード線となる。そして、形成された選択トランジスタTr1のゲート電極12をマスクとして、ソース/ドレイン領域となる拡散層(以下、ソース/ドレイン拡散層と呼ぶ)13,13が、例えば、イオン注入法を用いて、半導体基板1内に形成される。これによって、MTJ素子に対して、選択スイッチ素子として機能する選択トランジスタが、形成される。
【0034】
ソース/ドレイン拡散層13,13上に、MTJ素子の下部電極7とコンタクトC1とが、それぞれ形成される。コンタクトC1が接続されているソース/ドレイン拡散層13は、第2の選択トランジスタTr2のソース/ドレイン拡散層と共有され、2つのメモリセルMC1,MC2の共有ノードとなる。
【0035】
第1のMTJ素子MTJ1は、第1の選択トランジスタTr1の一方のソース/ドレイン拡散層13上に位置するように形成される。第1のMTJ素子MTJ1は、その磁化固定層1が下部電極7を介して選択トランジスタTr1の一方のソース/ドレイン拡散層13に接続されるように、磁化固定層1、トンネルバリア層2及び磁化自由層3が順次積層されて、形成される。
【0036】
この際、磁化固定層1は、第1方向及び第2方向にそれぞれ延在する2つの延在部を有するように、パターニングされて形成される。これによって、磁化固定層1は形状磁気異方性を備え、その延在部の延在方向(第1及び第2方向)に磁化容易軸を有する。
また、磁化自由層3は、例えば、楕円形状となるように、パターンニングされて形成される。この楕円形状の磁化自由層3は、第1方向が長軸となるように形成される。また、磁化自由層3は、磁化固定層1よりも小さいサイズで形成される。
【0037】
磁化固定層1及び磁化自由層3には、例えば、Co、Fe、Ni、Ruなどの結晶性磁性材料が用いられている。尚、図5において、磁化固定層1〜1の延在部は2つの方向に延びているが、それぞれ異なった方向に延在する3つ以上の延在部を設けて、3つ以上の磁化容易軸を備えたMTJ素子となってもよい。
【0038】
メモリセルに接続される1組のビット線対BL1,BL2は、第1のビット線BL1と、第1のビット線BL1よりも半導体基板10側に位置する第2のビット線BL2とからなっている。尚、図5においては、第2のビット線BL2は、図5中の断面に対して手前方向又は奥行き方向に形成されるため、破線で示している。
【0039】
第2のビット線BL2は、ビアV1、中間配線層M1及びコンタクトC1を介して、2つの選択トランジスタTr1,Tr2の共有ノード(ソース/ドレイン拡散層13)に接続される。
【0040】
第1のビット線BL1は、第2のビット線BL2よりも上方に形成され、上部電極8を介して、MTJ素子MTJ1の磁化自由層3と接続されている。
【0041】
第2乃至第4のMTJ素子MTJ2〜MTJ4、第2乃至第4の選択トランジスタTr1〜Tr4も、第1のMTJ素子MTJ1及び第1の選択トランジスタTr1とそれぞれ同時工程で、半導体基板1上に形成される。
【0042】
また、メモリセルの形成とほぼ同時の工程で、メモリセルアレイ領域に隣接する周辺回路領域内に、メモリセルを制御するための制御回路が形成される。
【0043】
作製されたMRAMは、例えば、スピン注入型MRAMである。即ち、書き込み動作時には、MTJ素子MTJ1〜MTJ4を流れる書き込み電流の方向を変えることによって、“0”又は“1”データがMTJ素子MTJ1〜MTJ4に書き込まれる。読み出し動作時には、MTJ素子MTJ1〜MTJ4の抵抗値によって、“0”又は“1”データの判別が行われる。
【0044】
次に、作製されたMRAMに対して、テスト工程が実行され、MTJ素子MTJ1〜MTJ4の特性が調べられる(ST2)。このテスト工程において、例えば、形成された各MTJ素子の“0”又は“1”データにそれぞれ対応する抵抗値が検査され、その抵抗値が基準値を中心とした所定の範囲内に収まっているか否かが調べられる。
【0045】
抵抗値が所定の範囲内に収まっていないMTJ素子は、素子特性の調整が必要なMTJ素子として、検出される。以下では、特性の調整が必要なMTJ素子のことを、調整MTJ素子と呼ぶ。この調整MTJ素子に対し、抵抗値が所定の範囲内に収まるように、以下の工程で、素子特性が調整される。本実施形態では、磁化固定層の磁化方向が変更されることで、素子特性が調整される。
【0046】
まず、MRAMが作製された半導体基板に加熱処理が施され、MTJ素子に熱が与えられる(ST3)。続いて、電流が、調整MTJ素子に対して流される(ST4)。以下、図5中に示される第2のMTJ素子MTJ2を調整MTJ素子として、素子特性の調整方法の具体的な説明を行う。図5中において、調整MTJ素子MTJ2に流される電流は、白抜きの矢印で示している。
【0047】
図5に示すように、第2のMTJ素子MTJ2は、磁化固定層1が含む結晶の配向性或いは結晶粒の形状に起因して、その素子の抵抗値が所定の抵抗値の範囲内に収まらず、テスト工程(ST2)によって、第2のMTJ素子MTJ2は調整MTJ素子として検出されている。
【0048】
半導体基板10に対して加熱処理(ST3)が実行された後、第2の選択トランジスタTr2が接続されているワード線(ゲート電極12)の電位が高電位に設定され、選択トランジスタTr2がオン状態“ON”になる。
一方で、他のMTJ素子MTJ1,MTJ3,MTJ4は、素子の抵抗値が所定の範囲内に収まっているため、磁化方向の調整は必要ない。それらのMTJ素子MTJ1,MTJ3,MTJ4と共にメモリセルを構成している各選択トランジスタTr1,Tr3,Tr4は、それらが接続されているワード線が低電位に設定され、オフ状態“OFF”にされる。
【0049】
調整MTJ素子MTJ2が接続されている選択トランジスタTr2がオン状態とされた後、電流Iが調整MTJ素子MTJ2に流される。図5では、電流Iは、選択トランジスタTr2の電流経路(チャネル)を経由して、MTJ素子MTJ2の磁化固定層1から磁化自由層3へと流れる。この場合、第2のビット線BL2が高電位に設定され、第1のビット線BL1が低電位に設定される。
【0050】
調整MTJ素子MTJ2に電流Iが流されることによって、調整MTJ素子MTJ2の磁化固定層1は、電流Iによるジュール熱によって加熱される。それゆえ、調整MTJ素子MTJ2には、基板加熱による熱量と電流Iのジュール熱による熱量が与えられる。これに対し、磁化方向の調整が不要なMTJ素子MTJ1,MTJ3,MTJ4には、基板加熱による熱量のみが与えられている。
【0051】
通常、磁性体材料の保磁力は、温度上昇とともに低減する傾向にある。本実施形態では、電流Iは調整MTJ素子MTJ2のみに流されているため、調整MTJ素子に加わる熱量は、調整が不要なMTJ素子MTJ1,MTJ3,MTJ4に加わる熱量よりも十分大きくなっている。それゆえ、調整MTJ素子MTJ2の磁化固定層1の保磁力は、他のMTJ素子MTJ1,MTJ3,MTJ4の磁化固定層1,1,1の保磁力よりも低減され、磁化固定層1の磁化方向のみを選択的に変更できる。
このように、基板加熱と電流の印加により磁化固定層の磁化方向が可変となる熱量を、調整が必要なMTJ素子に選択的に加えることによって、調整MTJ素子MTJ2の磁化方向のみを調整できるようになる。
【0052】
尚、基板加熱による加熱温度は、磁化方向の調整が不要なMTJ素子の磁化固定層の保磁力が、十分維持される温度であることが好ましい。そのような基板加熱温度を鑑みれば、調整MTJ素子に注入される電流の値及びその通電時間によって、磁化固定層の磁化方向が可変となるように、電流Iの電流値及び通電時間が設定されることが好ましい。また、基板加熱温度は、例えば、MTJ素子を構成している磁性体材料やトンネルバリア材の相互拡散など、素子特性の劣化が生じる温度(例えば、400℃〜500℃)より低いことが好ましい。
尚、図5に示すMTJ素子MTJ1〜MTJ4は、磁化固定層1〜1が半導体基板側に設けられ、磁化自由層がビット線側に設けられた構成となっている。この場合、電流により発生するジュール熱を磁化固定層1〜1に効率よく与えるため、電流Iを半導体基板10側(ビット線BL2側)からビット線BL1側へ流すことが好ましい。それとは反対に、磁化固定層1〜1がビット線側に設けられた構成となった場合には、ビット線BL1側から半導体基板10側(ビット線BL2側)へ流すことが好ましい。
【0053】
続いて、基板加熱処理による熱と通電によるジュール熱が調整MTJ素子MTJ2に加わっている状態で、外部磁場が半導体基板10(MRAMチップ)に対して印加される(ST5)。この外部磁場は、例えば、第2方向(第2磁化容易軸方向)に沿うように印加される。
【0054】
上記のように、調整MTJ素子MTJ2には、磁化固定層1の保磁力が十分弱くなる熱量が加わっているため、磁化固定層の磁化方向は、第1方向と一致した方向に調整される。一方で、他のMTJ素子MTJ1,MTJ3,MTJ4は、外部磁場の影響を受けない。これは、それらMTJ素子MTJ1,MTJ3,MTJ4に与えられる熱量が磁化固定層の磁化方向を変化し得る熱量に達しておらず、外部磁場に対して十分な保磁力を有しているためである。
【0055】
第2方向に沿う外部磁場の印加によって、調整MTJ素子MTJ2の磁化固定層1の磁化方向は、第1磁化容易軸方向から第2磁化容易軸方向へと変化される。
【0056】
磁化固定層1の磁化方向が第2磁化容易軸方向と一致する方向にされた後、ビット線対BL1,BL2及びワード線に対する電圧の供給が停止される。調整MTJ素子MTJ2への電流の注入が停止されるため、電流によるジュール熱は発生しなくなる。これと同時に、半導体基板10に対する基板加熱処理も停止される。
それゆえ、調整MTJ素子MTJMTJ2に加えられていた熱量がなくなるので、磁化固定層1の保磁力は元の状態に戻り、磁化固定層1の磁化方向は第2方向(第2磁化容易軸方向)となる。この後、外部磁場の印加が停止される。尚、調整MTJ素子に対する通電の停止、基板加熱処理の停止の順序は上記の順序に限定されるものではなく、その順序は適宜変更可能である。
以上によって、磁化方向が調整されたMTJ素子は、所定の抵抗値を得ることができる。
【0057】
この後、MRAMが形成された半導体基板(MRAMチップ)に、磁気シールドが形成され、MRAMに対するパッケージ工程が実行される(ST6)。これによって、MRAMは外部磁場からの影響を受けなくなる。
【0058】
尚、上述の工程では、調整MTJ素子の磁化固定層の磁化方向を第1方向から第2方向になるように外部磁場を印加したが、それに限定されず、素子特性が所定の範囲内となるのであれば、第2方向から第1方向になるように、第1方向に沿う外部磁場を印加して素子特性を調整してもよい。
また、上述のMTJ素子の素子特性の調整方法は、“0”又は“1”に対応した抵抗値が他の素子と比較して小さいなど、特性が劣化した素子に対して、磁化方向の調整を行うことに限定されるものではない。即ち、磁化固定層及び磁化自由層の結晶性に起因して、素子特性が他の素子と比較して高すぎる素子や反転電流密度が低すぎる素子など、特性が良すぎるMTJ素子に対しても、磁化固定層の磁化方向が、例えば、第1磁化容易軸方向(第1方向)から第2磁化容易軸方向(第2方向)になるように、選択的に磁化方向を調整し、他の素子と特性がばらつかないようにすることも可能である。
【0059】
以上の工程によって、本発明の実施形態に係るMRAMが完成する。
【0060】
図6は、図4に示す本実施形態のMRAMの製造方法によって、磁化固定層の磁化方向の調整前後における、MTJ素子の抵抗値に対するその頻度を示している。
【0061】
図6に示すように、磁化方向が調整された後のMTJ素子は、“0”データに対応する抵抗値及び“1”データに対応する抵抗値のそれぞれにおいて、頻度のもっとも高い抵抗値を基準値とした抵抗値の分布範囲が、磁化方向が調整される前のMTJ素子に比べ、狭くなっている。つまり、MRAMが含む複数のMTJ素子の特性のばらつきが低減されている。
【0062】
このように、磁化固定層が複数の磁化容易軸に磁気異方性を有することによって、MTJ素子の抵抗値が所定の範囲内に収まるように、磁化固定層の磁化方向を段階的に変更することができる。
【0063】
また、本実施形態で述べたMTJ素子の素子特性調整方法は、1つの調整MTJ素子に対して、磁化方向を調整する場合について説明したが、同一の磁化方向の外部磁場で調整される複数のMTJ素子に対して、ワード線及びビット線対を適宜選択することで、同時に磁化特性を調整できる。つまり、本実施形態では、MRAMの製造期間を短縮できる。
【0064】
以上のように、本発明の第1の実施形態によれば、MRAMに用いられる複数のMTJ素子の素子特性のばらつきを低減できる。
【0065】
(2) 第2の実施形態
図7を参照して、本発明の第2の実施形態について、説明する。尚、第1の実施形態と同一部材に関しては、同一符号を付し、詳細な説明は必要に応じて行う。
【0066】
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態の構成に加え、書き込みワード線WWL1〜WWL4が、複数のメモリセルMC1〜MC4内にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0067】
以下、第1のメモリセルMC1を例に、説明を行う。第1のMTJ素子MTJ1の磁化自由層3上には、上部電極8が形成され、これによって、MTJ素子MTJ1の一端が第1のビット線BL1に接続されている。
【0068】
第1のMTJ素子MTJ1の磁化固定層1は、中間配線層M3上に形成されている。また、第1の選択トランジスタTr1のソース/ドレイン拡散層13上には、MTJ素子MTJ1下部電極として機能するコンタクトC2、中間配線層M2及びビア9が設けられ、それらを介して、第1のMTJ素子MTJ1の磁化固定層1と第1の選択トランジスタTr1のソース/ドレイン拡散層13とが、接続されている。
【0069】
そして、第1の書き込みワード線WWL1が、第1のMTJ素子MTJ1下に設けられている。書き込みワード線WWL1は、例えば、ワード線と同じ方向に延在している。紙面の手前側から奥行き側へ、又は、奥行き側から手前側へ、書き込みワード線WWL1に電流を流すことによって、その書き込みワード線WWL1を備えるメモリセルMC1内に磁場が発生する。
【0070】
このように、書き込みワード線WWL1〜WWL4を備えた場合、選択された書き込みワード線WWL1〜WWL4に電流を流すことによって、磁化固定層1の磁化方向の調整のための磁場を、各MTJ素子に対して個別に印加できる。
【0071】
即ち、本実施形態によれば、書き込みワード線に選択的に電流を流すことで、調整MTJ素子(例えば、第2のMTJ素子MTJ2)にのみ磁場を印加することができる。それゆえ、調整が不要なMTJ素子に対して磁場の影響を無くすことができる。
したがって、本発明の第2の実施形態によれば、MRAMに用いられる複数のMTJ素子の素子特性のばらつきを低減できるとともに、メモリセル毎に書き込みワード線WWL1〜WWL4を備えることによって、MTJ素子の磁化方向の調整を精度良く行うことができる。
【0072】
(3) 第3実施形態
図8を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。尚、第1及び第2の実施形態と同一部材に関しては、同一符号を付し、詳細な説明は省略する。図8は、ビット線の延在方向に沿った断面構造を示すとともに、各MTJ素子MTJa〜MTJdの磁化固定層5〜5の平面構造を図示している。
【0073】
第1の実施形態で述べたMTJ素子の素子特性調整方法(製造方法)は、図1乃至3に示すような複数の磁化容易軸方向に形状磁気異方性を有するMTJ素子にのみ適用されるものではなく、他の構造のMTJ素子に対して用いることも可能である。
【0074】
例えば、図8に示す例のように、磁化固定層5〜5下に、交換バイアス層4〜4を設けたMTJ素子に対しても、素子特性の調整が可能である。以下、図8に示されるMTJ素子MTJa〜MTJdの構造について説明する。尚、各MTJ素子MTJa〜MTJdは、同一構成を有しているため、以下では、第1のMTJ素子MTJaを例に、その構造について説明する。
【0075】
MTJ素子MTJaにおいて、磁化固定層5は、交換バイアス層4上に設けられている。磁化自由層3は、トンネルバリア層2を介して、磁化固定層5上に設けられている。
図8に示すように、本実施形態におけるMTJ素子MTJa〜MTJdの磁化固定層5の平面形状は、楕円形状となっている。この形状の場合、楕円の長軸方向が磁化容易軸方向となり、楕円の短軸方向が磁化困難軸となる。
【0076】
磁化自由層3の平面形状は、例えば、楕円形状となっており、その楕円の長軸が、磁化固定層5の長軸(磁化容易軸方向)と同じ方向となるように、磁化固定層5上に積層されている。また、磁化自由層3の寸法は、例えば、磁化固定層5の寸法よりも小さくなるように形成されている。
【0077】
磁化固定層5及び磁化自由層3は、例えば、結晶系磁性材料であり、Co、Fe、Ni、Ru、のいずれかを含む強磁性金属が用いられている。
【0078】
交換バイアス層4は反強磁性材料からなり、例えば、Fe−Mn、Pt−Mn、Pt−Cr−Mn、Ni−Mn、Ir−Mn、NiO、Feなどのうち、いずれか1つが用いられる。
【0079】
トンネルバリア層2は、例えば、MgO、AlOx(xは自然数)等の絶縁材料、又は、Au、Ag、Cu等の常磁性金属のいずれかが用いられる。
【0080】
以上のような構成のMTJ素子MTJaでは、磁化固定層5の磁化方向は、磁化固定層5と交換バイアス層4との間に発生する交換バイアスによって固着されている。
交換バイアスは、交換バイアス層4の温度がブロッキング温度Tb以上になると消失することが知られている。また、交換バイアスの消失状態で、磁化固定層51に磁場を印加し、その磁化印加中にブロッキング温度Tb以下に冷却すると、磁化固定層51の磁化方向が印加した磁場の方向に固着されることも知られている。
この原理を利用することによって、本実施形態のように交換バイアス層4を備えるMTJ素子MTJaにおいても、磁化固定層5の磁化方向を調整することが可能となる。
【0081】
即ち、図4に示す工程とほぼ同様の工程によって、MTJ素子の磁化固定層の磁化方向を調整できる。本実施形態におけるMTJ素子の素子特性の調整方法は、具体的には以下の通りである。
【0082】
はじめに、図4に示す工程と同様に、CVD法やスパッタ法などを用いて、磁性層、導電層及び絶縁層がそれぞれ堆積され、フォトリソグラフィー技術及びRIE法などを用いて、堆積された層が加工される。この工程(ST1)によって、図8に示す構造のMRAMが、半導体基板10上に作製される。そして、作製されたMRAMに対してテスト工程が実行され、MTJ素子の素子特性(抵抗値)が調べられる。これによって、素子特性の調整が必要なMTJ素子(調整MTJ素子)が検出される(ST2)。
【0083】
テスト工程の後、MRAMが作製された半導体基板に対して、基板加熱処理が施される(ST3)。この基板加熱処理は、交換バイアス層4〜4のブロッキング温度より低い加熱温度を用いて、行われる。
【0084】
続いて、基板加熱処理中に、調整MTJ素子(例えば、第2のMTJ素子MTJb)に電流Iを流すため、調整MTJ素子MTJbが含まれるメモリセルMC2に接続されているビット線対及びワード線の電位が制御される。これによって、メモリセルMC2を構成している選択トランジスタTr2はオン状態となり、電流Iが調整MTJ素子MTJbに流れる(ST4)。電流Iが調整MTJ素子MTJbに流されることによって、交換バイアス層4にジュール熱が発生する。電流Iの値及びその通電時間は、そのジュール熱と加熱処理による熱量との和によって、交換バイアス層4の温度がブロッキング温度以上となるように、それぞれ設定される。尚、ブロッキング温度は、交換バイアス層及び磁化固定層(強磁性層)に用いられた材料に依存して決定される。また、本実施形態においても、調整MTJ素子に加えられる熱量は、素子の劣化温度よりも低い温度である。
【0085】
調整MTJ素子MTJbは、加熱処理による熱量と電流Iに起因したジュール熱による熱量とによって、ブロッキング温度以上の熱量が与えられる。それゆえ、磁化固定層5と交換バイアス層4との間に作用していた交換バイアスは消失し、磁化固定層5の磁化固着力は低減する。その一方で、調整が不要なMTJ素子MTJa,MTJc,MTJdに対しては、電流が流されていない。そのため、それらのMTJ素子MTJa,MTJc,MTJdには、基板加熱による熱量が与えられるのみで、電流Iによるジュール熱は与えられない。それゆえ、調整が不要なMTJ素子MTJa,MTJc,MTJdの交換バイアス層4,4,4の温度はブロッキング温度より低いため、磁化固定層5,5,5と交換バイアス層4,4,4との間に作用している交換バイアスは消失しない。したがって、磁化固定層5,5,5の磁化固着力は、調整MTJ素子MTJbの磁化固定層の磁化固着力よりも高くなっている。
【0086】
続いて、基板加熱処理と調整MTJ素子に対する通電状態が保持された状態で、作製されたMRAMに対して、外部磁場が印加される(ST5)。この外部磁場の磁化方向は、例えば、MTJ素子の磁化容易軸方向となっている。
調整MTJ素子MTJbの磁化固定層5は、交換バイアスによる磁化固着力が低減しているため、磁化困難軸方向に傾いていた磁化固定層5の磁化方向は、外部磁場の磁化方向と一致した方向、即ち、磁化容易軸方向に変化する。これに対し、調整が不要なMTJ素子MTJa,MTJc,MTJdの交換バイアスは消失しておらず、磁化固定層5,5,5の磁化固着力は十分大きい。よって、調整が不要なMTJ素子MTJa,MTJc,MTJdは、外部磁場の影響は受けず、磁化固定層5,5,5の磁化方向は変化しない。
【0087】
そして、例えば、外部磁場を印加した状態で、半導体基板10に対する加熱処理及び調整MTJ素子MTJbへの通電が終了され、調整MTJ素子の交換バイアス層4は冷却される。すると、交換バイアス層4と磁化固定層5との間に交換バイアスが回復するため、調整MTJ素子MTJbの磁化固定層5の磁化方向は、外部磁場の磁界方向(磁化容易軸方向)に固着される。この後、外部磁場の印加が終了される。
【0088】
以上の工程によって、調整MTJ素子MTJbの磁化方向が調整され、このMTJ素子MTJbの素子特性(例えば、抵抗値)が所定の範囲内に収まる。
【0089】
尚、本実施形態においては、調整MTJ素子MTJbの磁化固定層5の磁化方向が、磁化容易軸方向と一致するように、外部磁場を印加した。しかし、それに限定されず、調整MTJ素子の素子特性を所定の範囲に収めるためであれば、磁化固定層5の磁化方向が、磁化容易軸方向から磁化困難軸方向へ変化する方向の外部磁場を印加してもよい。
【0090】
尚、本実施形態において、第2の実施形態と同様に、各メモリセルMC1〜MC4内に書き込みワード線をさらに具備し、その書き込みワード線に電流を流すことで磁場を発生させ、この磁場によって、磁化固定層5〜5の磁化方向を調整しても良い。
【0091】
また、本実施形態のMTJ素子MTJa〜MTJdは、楕円形状の平面形状を有する構造を用いたが、それに限定されず正方形状、長方形状、楕円状、円状、六角形状、菱型状、平行四辺形状、十字型状、ビーンズ型(凹型)状などでもよい。このような平面形状を有するMTJ素子でも、同様の効果が得られるのは、もちろんである。
【0092】
以上のように、本発明の第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、MRAMに用いられる複数のMTJ素子の素子特性がばらつくのを低減できる。
【0093】
2. その他
本発明の各実施形態によれば、磁気抵抗効果素子(MTJ素子)の素子特性のばらつきを低減できる。
【0094】
本発明の例は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、各構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を構成できる。例えば、上述の実施形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子の構造を示す斜視図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子の構造を示す平面図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子の構造を示す断面図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るMRAMの素子特性調整方法を示すステップ図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るMRAMの構造を模式的に示す図。
【図6】本発明の第1の実施形態の効果を説明するための図。
【図7】本発明の第2の実施形態を説明するためのMRAMの構造を示すための模式図。
【図8】本発明の第3の実施形態を説明するためのMRAMの構造を示すための模式図。
【符号の説明】
【0096】
1,1〜1:磁化固定層、2,2〜2::トンネルバリア層、3,3〜3:磁化自由層、4〜4:交換バイアス層(反強磁性層)、5〜5:磁化固定層、7,7〜7:下部電極、8,8〜8:上部電極、10:半導体基板、11〜11:ゲート絶縁膜、12〜12:ゲート電極(ワード線)、13〜13:ソース/ドレイン拡散層、15:素子分離絶縁膜、MTJ1〜MTJ4:MTJ素子、Tr1〜Tr4:選択トランジスタ、BL1,BL2:ビット線、WWL1〜WWL4:書き込みワード線、C1:コンタクト、V1:ビア、M1〜M3:中間配線層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの方向に沿ってそれぞれ延びる複数の延在部を有し、その延在部の延在方向に沿ったそれぞれ異なる複数の磁化容易軸を有している磁化固定層と、
前記磁化固定層上に設けられるトンネルバリア層と、
前記トンネルバリア層上に設けられ、磁化方向が可変となる磁化自由層と、
を具備することを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
複数の磁気抵抗効果素子を半導体基板上に形成する工程と、
前記複数の磁気抵抗効果素子に対してテストを行い、特性の調整が必要な磁気抵抗効果素子を検出する工程と、
前記テストを行った後、前記半導体基板に対して基板加熱処理を行う工程と、
前記特性の調整が必要な磁気抵抗効果素子に電流を流し、この電流によって生じるジュール熱を、前記電流を流した磁気抵抗効果素子に与える工程と、
前記特性の調整が必要な磁気抵抗効果素子に前記基板加熱処理による熱及び前記ジュール熱を加えた状態で、磁場を印加し、前記特性の調整が必要な磁気抵抗効果素子の磁化方向を変化させて、素子特性を調整する工程と、
を具備することを特徴とする磁気抵抗効果メモリの製造方法。
【請求項3】
前記半導体基板上に形成される磁気抵抗効果素子は、請求項1に記載の磁気抵抗記憶素子であり、
前記磁場によって、前記磁化固定層の磁化方向を、前記磁化固定層の有する複数の磁化容易軸方向のうちいずれか1つに変化させる、ことを特徴とする請求項2に記載の磁気抵抗効果メモリの製造方法。
【請求項4】
前記半導体基板上に形成される磁気抵抗効果素子は、交換バイアス層と、前記交換バイアス層上に形成される磁化固定層と、前記磁化固定層上に形成されるトンネルバリア層と、前記トンネルバリア層上に形成される磁化自由層とを有する磁気抵抗効果素子であって、
前記基板加熱処理の加熱温度は、前記交換バイアス層のブロッキング温度より低く、
前記特性の調整が必要な磁気抵抗素子の前記交換バイアス層には、前記ジュール熱と前記基板加熱処理の熱とによって、ブロッキング温度以上となる熱量が加えられる、
ことを特徴とする請求項2に記載の磁気抵抗効果メモリの製造方法。
【請求項5】
前記磁場は、前記半導体基板上に形成された書き込みワード線によって、発生されることを特徴とする請求項2乃至4のうちいずれか1項に記載の磁気抵抗効果メモリの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−295642(P2009−295642A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145177(P2008−145177)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】