磁気記憶素子及び不揮発性記憶装置
【課題】高密度化が可能な磁気記憶素子及び不揮発性記憶装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、積層体を備えた磁気記憶素子が提供される。積層体は第1積層部と第2積層部とを含む。第1積層部は、膜面に対して垂直成分を有する第1の方向に磁化が固定された第1強磁性層と、磁化の方向が膜面垂直な方向に可変である第2強磁性層と、第1強磁性層と第2強磁性層との間の第1非磁性層と、を含む。第2積層部は、積層方向に沿って第1積層部と積層される。第2積層部は、磁化の方向が膜面平行な方向に可変である第3強磁性層と、膜面に対して垂直成分を有する第2の方向に磁化が固定された第4強磁性層と、第3強磁性層と第4強磁性層との間の2非磁性層と、を含む。積層方向を法線とする平面で切断したとき、第3強磁性層の断面積は前記第1積層部よりも小さい。
【解決手段】実施形態によれば、積層体を備えた磁気記憶素子が提供される。積層体は第1積層部と第2積層部とを含む。第1積層部は、膜面に対して垂直成分を有する第1の方向に磁化が固定された第1強磁性層と、磁化の方向が膜面垂直な方向に可変である第2強磁性層と、第1強磁性層と第2強磁性層との間の第1非磁性層と、を含む。第2積層部は、積層方向に沿って第1積層部と積層される。第2積層部は、磁化の方向が膜面平行な方向に可変である第3強磁性層と、膜面に対して垂直成分を有する第2の方向に磁化が固定された第4強磁性層と、第3強磁性層と第4強磁性層との間の2非磁性層と、を含む。積層方向を法線とする平面で切断したとき、第3強磁性層の断面積は前記第1積層部よりも小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気記憶素子及び不揮発性記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM:Magnetic Random Access Memory)において、トンネル磁気抵抗(TMR:Tunneling Magnetoresistive)効果を示す強磁性トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)素子をデータ記憶部に用いる構成がある。この構成は、高速・大容量の不揮発メモリとして注目を集めている。MTJ素子の記憶層への書き込みは、例えば、スピントルク書き込み方式により行われる。この方式においては、例えば、MTJ素子に直接通電させ、MTJ素子の基準層から注入されるスピントルクで記憶層の磁化を反転させる。このような磁気記憶素子において、さらなる微細化を可能にし、高密度な不揮発性記憶装置を実現することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−21352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、高密度化が可能な磁気記憶素子及び不揮発性記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、積層体を備えた磁気記憶素子が提供される。前記積層体は、第1積層部と、第2積層部と、を含む。前記第1積層部は、膜面に対して垂直な成分を有する第1の方向に磁化が固定された第1強磁性層と、磁化の方向が膜面に対して垂直な方向に可変である第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間に設けられた第1非磁性層と、を含む。前記第2積層部は、前記第1強磁性層、前記第2強磁性層及び前記第1非磁性層が積層される積層方向に沿って前記第1積層部と積層される。前記第2積層部は、磁化の方向が膜面に対して平行な方向に可変である第3強磁性層と、前記第3強磁性層と前記積層方向に沿って積層され、膜面に対して垂直な成分を有する第2の方向に磁化が固定された第4強磁性層と、前記第3強磁性層と前記第4強磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、を含む。前記積層方向に対して垂直な平面で切断したときの前記第3強磁性層の断面積は、前記積層方向に対して垂直な平面で切断したときの前記第1積層部の断面積よりも小さい。前記積層方向に沿って前記積層体に電流を流すことによりスピン偏極した電子を前記第2強磁性層に作用させ、且つ、前記第3強磁性層の磁化を歳差運動させることにより発生する回転磁界を前記第2強磁性層に作用させることにより、前記第2強磁性層の磁化の方向を前記電流の向きに応じた方向に決定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1(a)〜図1(c)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子を示す模式図である。
【図2】図2(a)及び図2(b)は、磁化を示す模式図である。
【図3】図3(a)〜図3(d)は、実施形態に係る磁気記憶素子の動作を示す模式図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)は、実施形態に係る磁気記憶素子の動作を示す模式図である。
【図5】図5(a)〜図5(e)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子を示す模式的断面図である。
【図6】図6(a)〜図6(e)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子を示す模式的断面図である。
【図7】図7(a)及び図7(b)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子を示す模式的断面図である。
【図8】図8(a)〜図8(h)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子を示す模式的断面図である。
【図9】図9(a)〜図9(h)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子を示する模式的断面図である。
【図10】図10(a)〜図10(f)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子を示す模式的断面図である。
【図11】図11(a)〜図11(h)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子を示す模式的断面図である。
【図12】図12(a)〜図12(d)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子を示す模式的断面図である。
【図13】磁気記憶素子の特性のシミュレーション結果を示すグラフ図である。
【図14】磁気記憶素子における磁化の反転の特性のシミュレーション結果を示すグラフ図である。
【図15】磁気記憶素子における磁化の反転の特性を示すグラフ図である。
【図16】磁気記憶素子の特性を示すグラフ図である。
【図17】磁気記憶素子における発振特性を示すグラフ図である。
【図18】図18(a)及び図18(b)は、磁気記憶素子の特性を示すグラフ図である。
【図19】図19(a)〜図19(d)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子の製造方法を示す工程順模式的断面図である。
【図20】図20(a)〜図20(d)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子の別の製造方法を示す工程順模式的断面図である。
【図21】第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置を示す模式図である。
【図22】第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施の形態)
図1(a)〜図1(c)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子の構成を例示する模式図である。
図1(a)は、模式的斜視図である。図1(b)は、図1(a)のA1−A2線断面図である。図1(c)は、模式的平面図である。
【0009】
図1(a)〜図1(c)に表したように、実施形態に係る磁気記憶素子110は、積層体SB0を備える。積層体SB0は、第1積層部SB1と、第2積層部SB2と、を含む。
【0010】
第1積層部SB1は、第1強磁性層10と、第2強磁性層20と、第1非磁性層10nと、を含む。
【0011】
第1強磁性層10においては、膜面に対して垂直な成分を有する第1の方向に磁化(第1強磁性層10の磁化)が固定されている。第2強磁性層20においては、磁化(第2強磁性層20の磁化)の方向が膜面に対して垂直な方向に可変である。第1非磁性層10nは、第1強磁性層10と第2強磁性層20との間に設けられる。「膜面」は、層の主面に対して平行な面であり、「層面」に対応する。
【0012】
すなわち、第1強磁性層10、第2強磁性層20及び第1非磁性層10nは、積層される。第1強磁性層10、第2強磁性層20及び第1非磁性層10nが重ねられる方向を積層方向SD1とする。積層方向SD1は、例えば、第1強磁性層10の膜面に対して垂直な方向である。
【0013】
説明の便宜上、積層方向SD1に対して平行な軸をZ軸とする。Z軸に対して垂直な1つの軸をX軸とする。Z軸とX軸とに対して垂直な軸をY軸とする。
【0014】
本願明細書において、「積層」は、複数の層が互いに接して重ねられる場合に加え、間に別の要素が挿入されて複数の層が重ねられる場合を含む。
【0015】
第2積層部SB2は、積層方向SD1に沿って第1積層部SB1と積層される。第2積層部SB2は、第3強磁性層30と、第4強磁性層40と、第2非磁性層20nと、を含む。第3強磁性層30においては、磁化(第3強磁性層30の磁化)の方向が膜面に対して平行な方向に可変である。第4強磁性層40は、第3強磁性層30と積層方向SD1に沿って積層される。第4強磁性層40においては、膜面に対して垂直な成分を有する第2の方向に磁化(第4強磁性層40の磁化)が固定されている。第2非磁性層20nは、第3強磁性層30と第4強磁性層40との間に設けられる。
【0016】
すなわち、第3強磁性層30、第4強磁性層40及び第2非磁性層20nは、積層方向SD1に沿って、第1強磁性層10、第2強磁性層20及び第1非磁性層10nと積層される。後述するように、各層の順序は、種々の変形が可能である。
【0017】
図1(c)に表したように、積層方向SD1に対して垂直な平面で切断したときの第3強磁性層30の断面積S30は、積層方向SD1に対して垂直な平面で切断したときの第1積層部SB1の断面積S1よりも小さい。
【0018】
例えば、積層方向SD1を法線とする平面における第1積層部SB1の外縁(第1外縁SBP1)は、その平面における第3強磁性層30の外縁30pよりも外側の部分を有する。この例では、第3強磁性層30、第2非磁性層20n及び第4強磁性層40の幅(Z軸に対して垂直な軸に沿った長さ)は、互いに同じである。従って、積層方向SD1を法線とする平面における第3強磁性層30の外縁30pの位置は、積層方向SD1を法線とする平面における第2積層部SB2の外縁(第2外縁SBP2)の位置と同じである。
【0019】
この例では、第1強磁性層10、第1非磁性層10n及び第2強磁性層20の幅(Z軸に対して垂直な軸に沿った長さ)は、互いに同じである。従って、積層方向SD1を法線とする平面における第1強磁性層10の外縁の位置、第1非磁性層20nの外縁の位置及び第2強磁性層20の外縁の位置は、積層方向SD1を法線とする平面における第1積層部SB1の第1外縁SBP1の位置と同じである。
【0020】
後述するように、第2積層部SB2において、例えば、第3強磁性層30の幅(Z軸に対して垂直な軸に沿った長さ)が、第4強磁性層40の幅(Z軸に対して垂直な軸に沿った長さ)と異なっていても良い。この場合も、実施形態においては、第3強磁性層30の断面積S30は、第1積層部SB1の断面積S1よりも小さい。例えば、第1積層部SB1の第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30pよりも外側の部分を有する。
【0021】
以下では、説明を簡単にするために、第3強磁性層30、第2非磁性層20n及び第4強磁性層40の幅が互いに同じであり、第1強磁性層10、第1非磁性層10n及び第2強磁性層20の幅が互いに同じである場合について説明する。そして、第3強磁性層30の外縁30pとして、第2積層部SB2の第2外縁SBP2について説明する。
【0022】
この例では、積層方向SD1に対して垂直な平面で切断したときの第2積層部SB2の断面積は、積層方向SD1に対して垂直な平面で切断したときの第1積層部SB1の断面積S1よりも小さい。例えば、積層方向SD1に沿ってみたときに、第1積層部SB1の第1外縁SBP1は、第2積層部SB2の第2外縁SBP2よりも外側の部分を有する。すなわち、平面視において、第2外縁SBP2は、第1外縁SBP1よりも外側の部分を有する。
【0023】
この例では、第1外縁SBP1(積層方向SD1に沿ってみたときの第1積層部SB1の外縁)は、第2外縁SBP2(積層方向SD1に沿ってみたときの第2積層部SB2の外縁)よりも外側に位置する。具体的には、第1外縁SBP1の全てが、第2外縁SBP2よりも外側に位置する。
【0024】
例えば、X軸に沿った第3強磁性層30の幅D30は、X軸に沿った第1積層部SB1の幅(例えば第1径D1)よりも小さい。Y軸に沿った第3強磁性層30の幅は、Y軸に沿った第1積層部SB1の幅よりも小さい。
例えば、第3強磁性層30のサイズが第4強磁性層40及び第2非磁性層20nのサイズと同じときは、X軸に沿った第2積層部SB2の幅(例えば第2径D2)は、X軸に沿った第1積層部SB1の幅(第1径D1)よりも小さい。同様に、Y軸に沿った第2積層部SB2の幅は、Y軸に沿った第1積層部SB1の幅よりも小さい。
【0025】
例えば、第2積層部SB2の第2外縁SBP2と、第1積層部SB1の第1外縁SBP1と、の距離は、距離Ddである。距離Ddは、例えばX−Y平面内の任意の軸に沿った距離である。例えば、距離Ddの2倍と、第3強磁性層30の幅D30と、の合計が、第2径D2となる。
【0026】
例えば、第3強磁性層30をX−Y平面で切断したときの断面積(例えば第2積層部SB2をX−Y平面で切断したときの断面積)は、第1積層部SB1をX−Y平面で切断したときの断面積よりも小さい。
【0027】
磁気記憶素子110においては、積層方向SD1に沿って積層体SB0に電流を流すことによりスピン偏極した電子を第2強磁性層20に作用させ、且つ、第3強磁性層30の磁化を歳差運動させることにより発生する回転磁界を第2強磁性層20に作用させることにより、第2強磁性層20の磁化の方向を電流の向きに応じた方向に決定可能とする。上記の電流は、積層体SB0の各層の膜面に対して略垂直な方向に流れる。
【0028】
磁気記憶素子110において、第2積層部SB2は、磁界発生部として機能する。第1積層部SB1は、磁気記憶部として機能する。以下、第2積層部SB2を、適宜、磁界発生部と言い、第1積層部SB1を、適宜、磁気記憶部と言う。
【0029】
第1強磁性層10は、例えば、第1の磁化固定層である。第2強磁性層20においては、磁化容易軸が膜面に対して略垂直方向である。第2強磁性層20は、磁気記憶層として機能する。第1非磁性層10nは、第1のスペーサ層として機能する。第1強磁性層10と、第1非磁性層10nと、第2強磁性層20と、を含む第1積層部SB1は、例えば、MTJ(Magnetic Tunnel Junction)の構造を有する。
【0030】
第3強磁性層30は、磁化回転層として機能する。第4強磁性層40は、磁化が膜面に対して略垂直方向に固定された第2の磁化固定層として機能する。第2非磁性層20nは、第2のスペーサ層として機能する。
【0031】
このような構成を有する磁気記憶素子110においては、微細化したときも所定の動作が実現できる。これにより、不揮発性記憶装置の高密度化が可能になる。
【0032】
例えば、磁気記憶部(第1積層部SB1)においては、所定の動作を確実に得るために、Ku・Vを一定の値にする設計が採用される。ここで、Kuは、第2強磁性層20(メモリ膜)の磁気異方性定数(magnetic anisotropy energy)であり、Vは、第2強磁性層20の体積である。不揮発性記憶装置を高密度化し、磁気記憶素子を微細化する(Vを小さくする)と、大きいKuを用いることになる。
【0033】
発明者は、第2強磁性層20における共鳴周波数frが、以下の第1式で表されることを導き出した。
【0034】
【数1】
ここで、γはジャイロ定数(約17.6×106Hz/Oe:ヘルツ/エルステッド)、Ku(erg/cm3:エルグ/立方センチメートル)は第2強磁性層20の磁気異方性、Ms(emu/cc:イーエムユー/シーシー、emu/cc=emu/cm3)は第2強磁性層20の磁化、Nzは第2強磁性層20の反磁界係数である。Nzは、無次元の定数である。
【0035】
第1式から、Kuが大きいと、共鳴周波数frが大きくなることが分かる。実施形態において、磁界発生部(第2積層部SB2)で発生させる高周波磁界の発振周波数fsは、磁気記憶部における共鳴周波数frに実質的に一致させる。従って、微細化のためには、磁界発生部で発生させる高周波磁界の発振周波数fsを高めることが必要であることが分かった。
【0036】
実施形態に係る磁気記憶素子は、このような新たに見出された課題を解決することができる。
【0037】
すなわち、磁界発生部で発生させる高周波磁界の発振周波数fsは、以下の第2式で表される。
【0038】
【数2】
ここで、γはジャイロ定数である。αはダンピング定数であり、無次元の定数である。hはプランク定数であり、約6.626×10−27erg・s:エルグ・秒)である。なお、6.626×10−27erg・s(エルグ・秒)は、6.626×10−34J・s(ジュール・秒)に相当する。eは、電気素量を表し、約1.60218×10−19(A・s:アンペア・秒)である。Ms(emu/cc:イーエムユー/シーシー)は、第3強磁性層30の磁化である。t(cm:センチメートル)は、第3強磁性層30の厚さである。J(A/cm2:アンペア/平方センチメートル)は、第3強磁性層30における電流密度を表す。g(θ)は、スピン偏極率に依存するスピントランスファーの効率を表すパラメータである。ここで、θ(rad:ラジアン)は、第4強磁性層40を経由することでスピン偏極した電子のスピンの向きと、第3強磁性層30の磁化と、がなす角である。なお、単位系として、「°:度」から「rad:ラジアン」への変換は「rad=(2π/360)×度」である。
【0039】
第2式から、例えば、用いる材料のMsを小さくすることで、発振周波数fsが上昇できることが分かる。しかしながら、この手法は、用いる材料を制限することになり、全体としての特性を高めることの妨げになる。
【0040】
本実施形態においては、電流密度Jを上昇させる手法を採用する。これにより、材料の制限は解除される。電流密度Jを上昇させるために、第3強磁性層30のサイズ(幅D30:Z軸方向に対して垂直な軸に沿った長さ)を小さくする。
【0041】
換言すれば、積層方向SD1を法線とする平面における第1積層部SB1の外縁(第1外縁SBP1)が、その平面における第3強磁性層30の外縁30pよりも外側の部分を有する構成により、第3強磁性層30のサイズが小さくなる。すなわち、第3強磁性層30の断面積S30が、第1積層部SB1の断面積S1よりも小さくなる。これにより、第3強磁性層30における電流密度Jが上昇し、発振周波数fsが上昇できる。これにより、微細化したときに、所定の動作が実現でき、不揮発性記憶装置の高密度化が可能になる。
磁気記憶素子110の特性の例に関しては、後述する。
【0042】
図1(c)に例示したように、この例では、Z軸に沿ってみたときの第1積層部SB1及び第2積層部SB2の形状は、円形(扁平円を含む)である。ただし、実施形態において、Z軸に沿ってみたときの第1積層部SB1及び第2積層部SB2の形状は、任意である。
【0043】
磁気記憶素子110においては、積層体SB0は、第3非磁性層30nをさらに含む。第3非磁性層30nは、第1積層部SB1と第2積層部SB2との間に設けられる。すなわち、第3非磁性層30nは、第2強磁性層20と第3強磁性層30との間に設けられる。第3非磁性層30nは、必要に応じて設けられ、場合によっては省略可能である。
【0044】
第1強磁性層10、第2強磁性層20及び第4強磁性層40には、例えば、垂直磁化膜が用いられる。第3強磁性層には、例えば、面内磁化膜が用いられる。
【0045】
図2(a)及び図2(b)は、磁化を例示する模式図である。
図2(a)は、垂直磁化膜における磁化を例示している。図2(b)は、面内磁化膜における磁化を例示している。
【0046】
図2(a)及び図2(b)に表したように、積層方向SD1に対して垂直な1つの軸を面内軸SD2とする。面内軸SD2は、X−Y平面内の軸である。磁化72は、膜面に対して垂直な方向の磁化斜影成分(積層方向SD1に対して平行な磁化成分72a)と、膜面に対して平行な方向の磁化斜影成分(面内軸SD2に対して平行な磁化成分72b)と、を有する。
【0047】
図2(a)に表したように、垂直磁化膜は、膜面に対して垂直な磁化成分72aが、膜面に対して平行な磁化成分72bよりも大きい磁化状態を有する。垂直磁化膜において、磁化の方向が膜面に対して略垂直であることが動作特性上望ましい。
【0048】
図2(b)に表したように、面内磁化膜は、膜面に対して平行な磁化成分72bが、膜面に対して垂直な磁化成分72aよりも大きい磁化状態を有する。面内磁化膜において、磁化の方向が膜面に対して略平行であることが動作特性上望ましい。
【0049】
説明の便宜上、第1積層部SB1から第2積層部SB2に向かう方向を「上」または「上向き」と言う。第2積層部SB2から第1積層部SB1に向かう方向を「下」または「下向き」と言う。
【0050】
既に説明したように、第1強磁性層10の磁化は、第1の方向に実質的に固定される。第4強磁性層40の磁化は、第2の方向に実質的に固定されている。
【0051】
図1(b)に例示したように、磁気記憶素子110においては、第1の方向は上向きであり、第2の方向も上向きである。ただし、後述するように、第1の方向及び第2の方向は種々の変形が可能である。
【0052】
磁気記憶素子110において、例えば、積層体SB0を挟む一対の電極(図示しない)により、積層体SB0に電子電流を流すことができる。電子電流は電子の流れである。上向きに電流が流れるときには、電子電流は下向きに流れる。
【0053】
第2強磁性層20は、データを記憶する役割をもつ。第2強磁性層20の磁化は、比較的容易に反転可能である。第3強磁性層30は、書き込み時に高周波磁界を発生させる役割をもつ。
【0054】
膜面に対して垂直な方向に電子電流を流すと、磁界発生部の第3強磁性層30における磁化が歳差運動する。これにより、回転磁界(高周波磁界)が発生する。高周波磁界の周波数は、例えば約1GHz〜60GHz程度である。高周波磁界は、第2強磁性層20の磁化に対して垂直方向の成分(第2強磁性層20の磁化困難軸の方向の成分)を有する。したがって、第3強磁性層30から発生した高周波磁界の少なくとも一部は、第2強磁性層20の磁化困難軸の方向に印加される。第3強磁性層30から発生した高周波磁界が、第2強磁性層20の磁化困難軸の方向に印加されると、第2強磁性層の磁化は非常に反転し易くなる。
【0055】
磁気記憶素子110においては、電子電流を積層体SB0に流すことによって、第2強磁性層20の磁化の方向を制御することができる。具体的には、電子電流の流れる向き(極性)を変えることで第2強磁性層20の磁化の向きを反転させることができる。情報を記憶させる場合において、例えば、第2強磁性層20の磁化の方向に応じて、「0」と「1」とがそれぞれ割り当てられる。
【0056】
磁気記憶素子110における動作の具体例として、まず「書き込み」動作について説明する。
【0057】
図3(a)〜図3(d)は、実施形態に係る磁気記憶素子の動作を例示する模式図である。
これらの図は、磁気記憶素子110における「書き込み」動作の際の第1積層部SB1の状態を例示している。これらの図では、第2積層部SB2及び第3非磁性層30nは省略されている。
【0058】
図3(a)は、第1強磁性層10から第2強磁性層20に向かって電子電流60を流し始めた状態を例示している。図3(b)は、第1強磁性層10から第2強磁性層20に向かって電子電流60を流し終えた状態(磁化が反転した状態)を例示している。図3(c)は、第2強磁性層20から第1強磁性層10に向かって電子電流60を流し始めた状態を例示している。図3(d)は、第2強磁性層20から第1強磁性層10に向かって電子電流60を流し終えた状態(磁化が反転した状態)を例示している。図3(c)及び図3(d)は、図3(a)及び図3(b)に示した場合に対して、電子電流60の向きを反転させた場合に相当する。
【0059】
書き込み動作においては、第1強磁性層10の膜面及び第2強磁性層20の膜面を横切るように電子電流60を流して、第2強磁性層20に対して書き込み動作が実施される。ここでは、第1非磁性層10nを介した磁気抵抗効果が、ノーマルタイプである場合について説明する。
【0060】
「ノーマルタイプ」の磁気抵抗効果においては、非磁性層の両側の磁性層の磁化どうしが互いに平行である時の電気抵抗は、反平行である時の電気抵抗よりも低い。ノーマルタイプの場合、第1非磁性層10nを介した第1強磁性層10と第2強磁性層20との間の電気抵抗は、第1強磁性層10の磁化が第2強磁性層20の磁化に対して平行である時には、反平行である時よりも低い。
【0061】
図3(a)に表したように、膜面に対して略垂直方向の磁化12aを有する第1強磁性層10を通過した電子は、第1強磁性層10の磁化と同じ方向のスピンをもつようになる。この電子が、第2強磁性層20へ流れると、このスピンのもつ角運動量が第2強磁性層20へ伝達され、第2強磁性層20の磁化32に作用する。すなわち、いわゆるスピントランスファトルクが働く。
【0062】
これにより、図3(b)に表したように、第2強磁性層20の磁化32は、第1強磁性層10の磁化12aと同じ向きになる。この向きは、図3(b)において上向きであり、例えば積層方向SD1に対して平行な1つの方向である。この向き(図3(b)において上向き)の磁化32を有する第2強磁性層20の状態に、例えば「0」を割り当てる。
【0063】
図3(c)に表したように、第1非磁性層10nを通過した電子のうちで、第1強磁性層10の磁化12aと同じ向き(図3(c)において上向き)のスピンをもった電子は、第1強磁性層10を通過する。一方、第1強磁性層10の磁化12aに対して逆向き(図3(c)において下向き)のスピンをもった電子は、第1強磁性層10と第1非磁性層10nとの界面において反射される。この反射された電子のスピンの角運動量が第2強磁性層20へ伝達され、第2強磁性層20の磁化32に作用する。
【0064】
これにより、図3(d)に表したように、第2強磁性層20の磁化32は、第1強磁性層10の磁化12aに対して逆向き(図3(d)において下向き)になる。すなわち、スピントランスファトルクが働く。この向き(図3(d)おいて下向き)の磁化32を有する第2強磁性層20の状態に、例えば「1」を割り当てる。
【0065】
このような作用に基づいて、第2強磁性層20の異なる状態に、「0」または「1」が適宜割り当てられる。これにより、磁気記憶素子110における「書き込み」が実施される。
【0066】
一方、磁気抵抗効果が「リバースタイプ」の場合は、第1非磁性層10nを介した第1強磁性層10と第2強磁性層20との間の電気抵抗は、第1強磁性層10の磁化が第2強磁性層20の磁化に対して平行である時には、反平行である時よりも高い。リバースタイプにおける「書き込み」動作は、ノーマルタイプの場合と同様である。
【0067】
次に、「読み出し」動作について説明する。
磁気記憶素子110における第2強磁性層20の磁化の方向の検出は、例えば、磁気抵抗効果を利用して実施される。磁気抵抗効果においては、各層の磁化の相対的な向きにより電気抵抗が変わる。磁気抵抗効果を利用する場合、第1強磁性層10と第2強磁性層20との間にセンス電流を流し、磁気抵抗が測定される。センス電流の電流値は、記憶時に流す電子電流60に対応する電流値よりも小さい。
【0068】
図4(a)及び図4(b)は、実施形態に係る磁気記憶素子の動作を例示する模式図である。
これらの図は、磁気記憶素子110における「読み出し」動作の際の第1積層部SB1の状態を例示している。これらの図では、第2積層部SB2及び第3非磁性層30nは省略されている。
【0069】
図4(a)は、第1強磁性層10の磁化の方向が、第2強磁性層20の磁化の方向と同じ場合を例示している。図4(b)は、第1強磁性層10の磁化の方向が、第2強磁性層20の磁化の方と反平行(逆向き)である場合を例示している。
【0070】
図4(a)及び図4(b)に表したように、第1積層部SB1にセンス電流61を流し、電気抵抗を検出する。
ノーマルタイプの磁気抵抗効果においては、図4(a)の状態の抵抗は、図4(b)の状態の抵抗よりも低い。リバースタイプの磁気抵抗効果においては、図4(a)の状態の抵抗は、図4(b)の状態の抵抗よりも高い。
【0071】
これらの抵抗が互いに異なる状態に、それぞれ「0」と「1」とを対応づけることにより、2値データの記憶の読み出しが可能となる。なお、センス電流61の向きは、図4(a)及び図4(b)に例示した方向に対して逆向きでも良い。
【0072】
第1強磁性層10及び第2強磁性層20には、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びクロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む金属材料を用いることが好ましい。さらに、上記の群から選択された少なくともいずれかと、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)及びロジウム(Rh)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素と、の組み合わせによる合金を用いることができる。
【0073】
第1強磁性層10及び第2強磁性層20において、含まれる磁性材料の組成や熱処理により特性を調整することができる。また、第1強磁性層10及び第2強磁性層20には、TbFeCo及びGdFeCoなどの希土類−遷移金属のアモルファス合金を用いることができる。第1強磁性層10及び第2強磁性層20には、Co/Pt、Co/Pd及びCo/Niなどの積層構造を用いることができる。Co/Ru、Fe/Au、Ni/Cu等は、下地層との組み合わせで垂直磁化膜となる。膜の結晶配向方向を制御することで、Co/Ru、Fe/Au、Ni/Cu等を、第1強磁性層10及び第2強磁性層20に用いることができる。第1強磁性層10及び第2強磁性層20には、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、窒素(N)、リン(P)、砒素(As)、ボロン(B)、及び、シリコン(Si)のような添加物が含まれていても良い。
【0074】
第1非磁性層10nには、非磁性トンネルバリア層として機能する絶縁材料を用いることができる。具体的には、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)及び鉄(Fe)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む、酸化物、窒化物又は弗化物を用いることができる。
【0075】
第1非磁性層10nには、例えば、Al2O3、SiO2、MgO、AlN、Ta−O、Al−Zr−O、Bi2O3、MgF2、CaF2、SrTiO3、AlLaO3、Al−N−O、Si−N−O等を用いることができる。第1非磁性層10nには、例えば、非磁性半導体(ZnOx、InMn、GaN、GaAs、TiOx、Zn、Te、または、それらに遷移金属がドープされたもの)などを用いることができる。
【0076】
第1非磁性層10nの厚さは、約0.2ナノメートル(nm)以上2.0nm程度の範囲の値とすることが望ましい。これにより、例えば、絶縁膜の均一性を確保しつつ、抵抗が過度に高くなることが抑制される。
【0077】
第2非磁性層20nには、例えば、非磁性トンネルバリア層及び非磁性金属層のうちのいずれかを用いることができる。
【0078】
非磁性トンネルバリア層には、例えば、絶縁材料が用いられる。具体的には、非磁性トンネルバリア層には、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)及び鉄(Fe)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む、酸化物、窒化物又は弗化物を用いることができる。非磁性トンネルバリア層としては、例えば、Al2O3、SiO2、MgO、AlN、Ta−O、Al−Zr−O、Bi2O3、MgF2、CaF2、SrTiO3、AlLaO3、Al−N−O、及び、Si−N−Oなどを用いることができる。
【0079】
非磁性トンネルバリア層として、非磁性半導体(ZnOx、InMn、GaN、GaAs、TiOx、Zn、Te、または、それらに遷移金属がドープされたもの)などを用いることができる。
【0080】
第2非磁性層20nとして、非磁性トンネルバリア層が用いられる場合、第2非磁性層20nの厚さは、約0.2nm以上2.0nm程度の範囲の値とすることが望ましい。
【0081】
第2非磁性層20nに用いられる非磁性金属層には、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)及びビスマス(Bi)よりなる群から選択されたいずれかの非磁性金属、または、上記の群から選択された少なくともいずれか2つ以上の元素を含む合金を用いることができる。第2非磁性層20nの厚さは、1.5nm以上、20nm以下とすることが望ましい。これにより、磁性層間で層間結合せず、かつ、伝導電子のスピン偏極状態が非磁性金属層を通過する際に失われることが抑制される。
【0082】
第3強磁性層30には、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びクロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む磁性金属を用いることができる。さらに、上記の群から選択された少なくともいずれかと、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)及びロジウム(Rh)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素と、の組み合わせによる合金を用いることができる。
【0083】
第3強磁性層3において、含まれる磁性材料の組成や熱処理により特性を調整することができる。また、第3強磁性層30には、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、窒素(N)、リン(P),砒素(As)、ボロン(B)、及び、シリコン(Si)のような添加物が含まれていても良い。第3強磁性層30には、Co/Pt、Co/Pd及びCo/Niなどの積層構造を用いることができる。膜の結晶配向方向を制御することで、Co/Ru、Fe/Au、Ni/Cu等を、第3強磁性層30に用いることができる。
【0084】
第4強磁性層40には、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びクロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む金属材料を用いることが好ましい。さらに、これらと、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)及びロジウム(Rh)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素と、の組み合わせによる合金を用いることができる。
【0085】
第4強磁性層40において、含まれる磁性材料の組成や熱処理により特性を調整することができる。第4強磁性層40には、TbFeCo、GdFeCoなどの希土類−遷移金属のアモルファス合金を用いることができる。第4強磁性層40には、Co/Pt、Co/Pd及びCo/Niなどの積層構造を用いることができる。Co/Ru、Fe/Au、Ni/Cu等は、下地層との組み合わせで垂直磁化膜となる。膜の結晶配向方向を制御することで、Co/Ru、Fe/Au及びNi/Cu等を第4強磁性層40に用いることができる。第4強磁性層40には、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、窒素(N)、リン(P),砒素(As)、ボロン(B)、及び、シリコン(Si)のような添加物が含まれていても良い。
【0086】
第3非磁性層30nには、非磁性金属層が用いられる。
第3非磁性層30nに用いられる非磁性金属層には、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、ビスマス(Bi)、イリジウム(Ir)、チタン(Ti)及びオスミウム(Os)よりなる群から選択された少なくともいずれかの非磁性金属、または、上記の群から選択された2つ以上の元素を含む合金を用いることができる。
【0087】
第3非磁性層30nには、銅(Cu)などのスピン拡散長が長い材料、または、ルテニウム(Ru)などのスピン拡散長が短い材料を用いることができる。スピン偏極した電子が挿入される効果を消去したい場合には、ルテニウム(Ru)などのスピン拡散長が短い材料を、第3非磁性層30nに用いることが望ましい。
【0088】
既に説明したように、磁気記憶素子110において、積層体SB0に電子電流を流すための一対の電極(導電層)が設けられる。
電極には、導電性の磁性材料または導電性の非磁性材料が用いられる。導電性の磁性材料の例としては、第3強磁性層30及び第4強磁性層40に用いられる材料と同様の材料を挙げることができる。
【0089】
導電性の非磁性材料の具体例としては、金(Au)、銅(Cu)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、ビスマス(Bi)、チタン(Ti)及びアルミニウム(Al)よりなる群から選択されたいずれかの金属、または、上記の群から選択された2つ以上を含む合金を用いることができる。
【0090】
さらに、電極に用いられる導電性の非磁性材料として、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤ及びグラフェン等の材料が挙げられる。
【0091】
電極に付与される導電性の保護膜には、タンタル(Ta)、ルテニウム(Ru)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、チタン(Ti)及びアルミニウム(Al)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む合金、または、グラフェンなどの材料を用いることができる。エレクトロマグレーション耐性及び低抵抗であることを考慮すると、保護膜には、銅(Cu)及びアルミニウム(Al)よりなる群から選択されたいずれかの元素、または、これらを含む合金を用いることが望ましい。
【0092】
既に説明したように、Z軸に沿ってみたときの第1積層部SB1及び第2積層部SB2の形状は任意である。例えば、Z軸に沿ってみたときの第1積層部SB1及び第2積層部SB2の形状(膜面に対して平行な面で切断した形状)は、円形、楕円形、扁平円、並びに、四角形及六角形などの3つ以上の角を有する多角形の形状を有することができる。
【0093】
Z軸に対して平行な平面で切断したときの第1積層部SB1及び第2積層部SB2の形状は任意である。Z軸に対して平行な平面で切断したときの第1積層部SB1及び第2積層部SB2の形状(膜面に対して垂直な面で切断した形状)は、例えば、テーパ形状または逆テーパ形状を有することができる。
【0094】
以下、実施形態に係る磁気記憶素子の構成の種々の例について説明する。以下において、説明されない構成、及び、各要素の材料などは、磁気記憶素子110に関して説明した構造及び各要素の材料と同様である。
【0095】
図5(a)〜図5(e)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子の構成を例示する模式的断面図である。
図5(a)は、既に説明した磁気記憶素子110に対応する。図5(a)〜図5(e)に表したように本実施形態に係る磁気記憶素子110〜114においては、第2強磁性層20、第1非磁性層10n、第1強磁性層10、第3非磁性層30n、第4強磁性層40、第2非磁性層20n及び第3強磁性層30が、この順に積層される。この積層順を、便宜的に第1積層構成と呼ぶことにする。
【0096】
第1積層構成においては、第1強磁性層10は、第2強磁性層20と第4強磁性層40との間に配置され、第4強磁性層40は、第1強磁性層10と第3強磁性層30との間に配置される。第3非磁性層30nは、第1強磁性層10と第4強磁性層40との間に配置される。
【0097】
これらの磁気記憶素子においては、第1の方向に固定された磁化(第1強磁性層10の磁化)の垂直斜影成分の向きは、第2の方向に固定された磁化(第4強磁性層10の磁化)の垂直斜影成分の向きと同じ向きである。この例では、第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは上向きであり、第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは、上向きである。ただし、これらの向きが下向きでも良い。
【0098】
図5(a)に表したように、磁気記憶素子110においては、第3強磁性層30の断面積S30は、第1積層部SB1の断面積S1よりも小さい。例えば、第1積層部SB1の第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30pよりも外側の部分を有している。第4強磁性層40の外縁の位置及び第2非磁性層20nの外縁の位置は、第1外縁SBP1の位置と一致する。
【0099】
図5(b)に表したように、磁気記憶素子111においては、第1積層部SB1の第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30p及び第2非磁性層20nの外縁よりも外側の部分を有している。第4強磁性層40の外縁の位置は、第1外縁SBP1の位置と一致する。
【0100】
図5(c)に表したように、磁気記憶素子112においては、第1積層部SB1の第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30p、第2非磁性層20nの外縁及び第4強磁性層40の外縁よりも外側の部分を有している。磁気記憶素子110、111及び112においては、第3非磁性層30nの外縁の位置は、第1外縁SBP1の位置と一致している。
【0101】
図5(d)に表したように、磁気記憶素子113においては、第1積層部SB1の第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30p、第2非磁性層20nの外縁、第4強磁性層40の外縁及び第3非磁性層30nの外縁よりも外側の部分を有している。
【0102】
図5(e)に表したように、磁気記憶素子114においては、Z軸に対して垂直な平面内において、第3強磁性層30、第2非磁性層20n及び第4強磁性層40のそれぞれの周囲に、第3強磁性層周囲部30j、第2非磁性層周囲部20nj及び第4強磁性層周囲部40jが設けられている。例えば、第3強磁性層30及び第3強磁性層周囲部30jは、第3強磁性層用膜から形成され、第3強磁性層周囲部30jは、第3強磁性層用膜を磁気的に不活性にすることで得られる。また、第3強磁性層周囲部30jは、第3強磁性層用膜を電気的に実質的に絶縁性にすることで得られる。第3強磁性層周囲部30jにおけるBs(飽和磁束密度)は、第3強磁性層30におけるBsの10%以下である。第3強磁性層周囲部30jにおける導電率は、第3強磁性層30における導電率の10%以下である。
【0103】
磁気記憶素子114においては、第3強磁性層30の断面積S30が第1積層部SB1の断面積S1よりも小さい構成が実現されている。例えば、第1積層部SB1の第1外縁SBP1は、実質的に、第3強磁性層30の外縁30p、第2非磁性層20nの外縁及び第4強磁性層40の外縁よりも外側の部分を有する。
また、磁気記憶素子110、111及び113において、第3強磁性層周囲部30j、第2非磁性層周囲部20nj及び第4強磁性層周囲部40jの少なくともいずれかが設けられても良い。
【0104】
図6(a)〜図6(e)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子の構成を例示する模式的断面図である。
図6(a)〜図6(e)に表したように、磁気記憶素子110a〜114aにおける各層の積層順は、磁気記憶素子110〜114とそれぞれ同じである。磁気記憶素子110a〜114aにおいては、第1の方向に固定された磁化(第1強磁性層10の磁化)の垂直斜影成分の向きは、第2の方向に固定された磁化(第4強磁性層10の磁化)の垂直斜影成分の向きに対して逆向きである。
【0105】
磁気記憶素子110a〜114の構成において、第3強磁性層30において発生する回転磁界の向きは、第2強磁性層20の磁化が歳差運動する向きと、一致する。第3強磁性層30において発生した回転磁界は、第2強磁性層20に、より効果的に作用する。第2強磁性層20の磁化反転を、より効率的にアシストすることができる。これにより、第2強磁性層20への書き込みに必要な電流を、より低減させることができる。
【0106】
磁気記憶素子110a〜114aにおける各層の幅の相対的な関係は、磁気記憶素子110〜114におけるそれと同様なので説明を省略する。また、磁気記憶素子114aに例示したように、この場合も、第3強磁性層周囲部30j、第2非磁性層周囲部20nj及び第4強磁性層周囲部40jの少なくともいずれかが設けられても良い。
【0107】
図7(a)及び図7(b)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子の構成を例示する模式的断面図である。
図7(a)及び図7(b)に表したように磁気記憶素子110r及び110sにおいては、第1強磁性層10の磁化の向き及び第4強磁性層40の磁化の向きが膜面に対して斜めである。
【0108】
この場合も、第1の方向に固定された磁化(第1強磁性層10の磁化)の垂直斜影成分の向きは、第2の方向に固定された磁化(第4強磁性層40の磁化)の垂直斜影成分の向きに対して逆向きである。
【0109】
第1の方向に固定された磁化の垂直斜影成分の向きが、第2の方向に固定された磁化の垂直斜影成分の向きに対して逆向きである場合には、第2強磁性層20の位置において膜面に対して垂直な方向にかかる漏洩磁界を低減させることができる。すなわち、第2強磁性層20の位置において膜面に対して垂直な方向にかかる漏洩磁界を打ち消すことができる。一方、第3強磁性層30の位置において膜面に対して垂直な方向にかかる漏洩磁界を残留させ、作用させることができる。
【0110】
これにより、第3強磁性層30において発生する回転磁界の向きは、第2強磁性層20の磁化が歳差運動する向きと一致する。第3強磁性層30において発生した回転磁界により、第2強磁性層20の磁化反転を効率的にアシストすることができる。その結果、第2強磁性層20への情報の記憶(書き込み)に必要な電流を低減させることができる。
【0111】
第1強磁性層10の磁化の向き及び第4強磁性層40の磁化の向きが膜面に対して斜めである構成は、磁気記憶素子110〜114、110a〜114a及びそれらの変形、並びに、後述する、本実施形態に係る磁気記憶素子のいずれにも適用できる。
【0112】
磁気記憶素子110a〜114a、110r及び110sにおいて、第1強磁性層10と第4強磁性層40とは、第3非磁性層30nを介して反強磁性結合していても良い。このように、非磁性層を介して互いの磁化の方向が反強磁性結合し反平行となる構造は、シンセティックアンチフェロ(SAF:Synthetic Anti-Ferromagnet)構造と呼ばれる。この例では、「第1の磁性層(例えば第1強磁性層10)/非磁性層(例えば第3非磁性層30n)/第2の磁性層(例えば第4強磁性層40)」の積層構造が、SAF構造に対応する。
【0113】
SAF構造を用いることにより、互いの磁化固定力が増強され、外部磁界に対する耐性、及び、熱的な安定性を向上させることができる。この構造では、磁気記憶層(例えば第2強磁性層20)の位置において膜面に対して垂直な方向にかかる漏洩磁界をほぼゼロにすることができる。
【0114】
SAF構造における非磁性層(中間層)には、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)やオスミウム(Os)などの金属材料が用いられる。非磁性層の厚さは、3nm以下に設定される。これにより、非磁性層を介して十分強い反強磁性結合が得られる。
【0115】
すなわち、第3非磁性層30nは、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、及び、イリジウム(Ir)よりなる群から選択されたいずれかの金属、または、前記群から選択された少なくとも2つ以上を含む合金を含み、第3非磁性層30nの厚さは、3nm以下であることが望ましい。
【0116】
上記では、第1積層部SB1の側面、及び、第2積層部SB2の側面は、Z軸に対して平行である例を示したが、実施形態はこれに限らない。
図8(a)〜図8(h)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子の構成を例示する模式的断面図である。
図8(a)〜図8(d)に表したように、磁気記憶素子110b〜113bにおいては、第2積層部SB2に含まれる層の側面が、Z軸に対して傾斜している。この例では、第1積層部SB1の側面は、Z軸に対して実質的に垂直である。
【0117】
磁気記憶素子110bにおいては、第3強磁性層30の側面が、Z軸に対して傾斜している。磁気記憶素子111bにおいては、第3強磁性層30の側面及び第2非磁性層20nの側面が、Z軸に対して傾斜している。磁気記憶素子112bにおいては、第3強磁性層30の側面、第2非磁性層20nの側面及び第4強磁性層40の側面が、Z軸に対して傾斜している。磁気記憶素子113bにおいては、第3強磁性層30の側面、第2非磁性層20nの側面、第4強磁性層40の側面及び第3非磁性層30nの側面が、Z軸に対して傾斜している。
【0118】
これらの例では、第2積層部SB2のうちの、第1積層部SB1に近い第1部分の幅(Z軸に対して垂直な軸に沿った長さ)が、第2積層部SB2のうちの、第1部分よりも第1積層部SB1から遠い第2部分の幅(Z軸に対して垂直な軸に沿った長さ)よりも大きくなるように、上記の側面が傾斜している。ただし、実施形態は、これに限らず、第1部分の幅が第2部分の幅よりも小さくなるように、上記の側面が傾斜しても良い。
【0119】
図8(e)〜図8(h)に表したように、磁気記憶素子110c〜113cにおいては、第1積層部SB1の側面は、Z軸に対して傾斜している。これを除き、磁気記憶素子110c〜113cのそれぞれの構成は、磁気記憶素子110b〜113bのそれぞれの構成と同様である。
【0120】
これらの例では、第1積層部SB1のうちの、第2積層部SB2に近い第3部分の幅(Z軸に対して垂直な軸に沿った長さ)が、第1積層部SB1のうちの、第3部分よりも第2積層部SB2から遠い第4部分の幅(Z軸に対して垂直な軸に沿った長さ)よりも小さくなるように、上記の側面が傾斜している。ただし、実施形態は、これに限らず、第3部分の幅が第4部分の幅よりも大きくなるように、上記の側面が傾斜しても良い。
【0121】
このように、第1積層部SB1の側面がZ軸に対して傾斜している場合(テーパ形状の場合)は、第1積層部SB1の幅(例えば第1径D1)は、第1強磁性層10の幅(径)と第2強磁性層20の幅(径)との平均値とする。同様に、第2積層部SB2の側面がZ軸に対して傾斜している場合は、第2積層部SB2の幅は、第3強磁性層30の幅D30(径)と第4強磁性層40の幅(径)との平均値とする。第3強磁性層30の側面がZ軸に対して傾斜している場合は、第3強磁性層30の幅D30は、第3強磁性層30の、Z軸に対して垂直な軸に沿った長さを、Z軸に沿って平均した値とする。
【0122】
図9(a)〜図9(h)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子の構成を例示する模式的断面図である。
図9(a)〜図9(h)に表したように本実施形態に係る磁気記憶素子120〜127においては、第1強磁性層10、第1非磁性層10n、第2強磁性層20、第3非磁性層30n、第3強磁性層30、第2非磁性層20n及び第4強磁性層40が、この順に積層される。この積層順を、便宜的に第2積層構成と呼ぶことにする。
【0123】
第2積層構成においては、第2強磁性層20は、第1強磁性層10と第3強磁性層30との間に配置され、第3強磁性層30は、第2強磁性層20と第4強磁性層40との間に配置される。第3非磁性層30nは、第2強磁性層20と第3強磁性層30との間に配置される。
【0124】
図9(a)及び図9(h)に表したように、磁気記憶素子120及び127においては、第3強磁性層30の断面積S30は、第1積層部SB1の断面積S1よりも小さい。例えば、第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30pよりも外側の部分を有している。第4強磁性層40の外縁の位置及び第2非磁性層20nの外縁の位置は、第1外縁SBP1の位置と一致する。磁気記憶素子127における第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向き及び第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは、磁気記憶素子120におけるそれらの向きに対してそれぞれ逆向きである。
【0125】
図9(b)に表したように、磁気記憶素子121においては、第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30p及び第3非磁性層30nの外縁よりも外側の部分を有している。第2非磁性層20nの外縁の位置及び第4強磁性層40の外縁の位置は、第1外縁SBP1の位置と一致する。
【0126】
図9(c)に表したように、磁気記憶素子122においては、第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30p及び第2非磁性層20nの外縁よりも外側の部分を有している。
【0127】
図9(d)に表したように、磁気記憶素子123においては、第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30p、第2非磁性層20nの外縁及び第3非磁性層30nの外縁よりも外側の部分を有している。第4強磁性層40の外縁の位置は、第1外縁SBP1の位置と一致する。
【0128】
図9(e)に表したように、磁気記憶素子124においては、第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30p、第2非磁性層20nの外縁及び第4強磁性層40の外縁よりも外側の部分を有している。
【0129】
図9(f)に表したように、磁気記憶素子125においては、第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30p、第2非磁性層20nの外縁、第4強磁性層40の外縁及び第3非磁性層30nの外縁よりも外側の部分を有している。
【0130】
図9(g)に表したように、磁気記憶素子126においては、第3強磁性層周囲部30j、第2非磁性層周囲部20nj及び第4強磁性層周囲部40jが設けられている。
磁気記憶素子120〜125及び127において、第3強磁性層周囲部30j、第2非磁性層周囲部20nj及び第4強磁性層周囲部40jの少なくともいずれかが設けられても良い。
【0131】
図10(a)〜図10(f)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子の構成を例示する模式的断面図である。
図10(a)〜図10(f)に表したように本実施形態に係る磁気記憶素子130〜135においては、第1強磁性層10、第1非磁性層10n、第2強磁性層20、第3非磁性層30n、第4強磁性層40、第2非磁性層20n及び第3強磁性層30が、この順に積層される。この積層順を、便宜的に第3積層構成と呼ぶことにする。
【0132】
第3積層構成においては、第2強磁性層20は、第1強磁性層10と第4強磁性層40との間に配置され、第4強磁性層40は、第2強磁性層20と第3強磁性層30との間に配置される。第3非磁性層30nは、第2強磁性層20と第4強磁性層40との間に配置される。
【0133】
図10(a)〜図10(e)に表したように、磁気記憶素子130〜134における各層の幅の関係は、磁気記憶素子110〜114(及び磁気記憶素子110a〜114a)における各層の幅の関係とそれぞれ同じである。図10(e)に表したように、磁気記憶素子144においては、第3強磁性層周囲部30j、第2非磁性層周囲部20nj及び第4強磁性層周囲部40jが設けられている。磁気記憶素子110〜133及び135においても、第3強磁性層周囲部30j、第2非磁性層周囲部20nj及び第4強磁性層周囲部40jの少なくともいずれかが設けられても良い。
【0134】
図10(f)に表したように、磁気記憶素子135における第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向き及び第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは、磁気記憶素子130におけるそれらの向きに対してそれぞれ逆向きである。
【0135】
図11(a)〜図11(h)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子の構成を例示する模式的断面図である。
図11(a)〜図11(h)に表したように本実施形態に係る磁気記憶素子140〜147においては、第2強磁性層20、第1非磁性層10n、第1強磁性層10、第3非磁性層30n、第3強磁性層30、第2非磁性層20n及び第4強磁性層30が、この順に積層される。この積層順を、便宜的に第4積層構成と呼ぶことにする。
【0136】
第4積層構成においては、第1強磁性層10は、第2強磁性層20と第3強磁性層30との間に配置され、第3強磁性層30は、第1強磁性層10と第4強磁性層40との間に配置される。第3非磁性層30nは、第1強磁性層10と第3強磁性層30との間に配置される。
【0137】
図11(a)〜図11(g)に表したように、磁気記憶素子140〜146における各層の幅の関係は、磁気記憶素子120〜126における各層の幅の関係とそれぞれ同じである。
【0138】
図11(g)に表したように、磁気記憶素子146においては、第3強磁性層周囲部30j、第2非磁性層周囲部20nj及び第4強磁性層周囲部40jが設けられている。磁気記憶素子141〜145及び147においても、第3強磁性層周囲部30j、第2非磁性層周囲部20nj及び第4強磁性層周囲部40jの少なくともいずれかが設けられても良い。
【0139】
図11(h)に表したように、磁気記憶素子147における第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向き及び第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは、磁気記憶素子140におけるそれらの向きに対してそれぞれ逆向きである。
【0140】
上記の磁気記憶素子120〜126(第2積層構成の例)、磁気記憶素子130〜143(第3積層構成の例)及び磁気記憶素子140〜146(第4積層構成の例)においては、第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは、第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向き対して逆向きである。すなわち、これらの例では、第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは上向きであり、第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは、下向きである。
【0141】
また、磁気記憶素子127(第2積層構成の例)、磁気記憶素子135(第3積層構成の例)及び磁気記憶素子147(第4積層構成の例)においては、第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは下向きであり、第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは、上向きである。第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きが下向きで、第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きが上向きである構成において、磁気記憶素子121〜126、磁気記憶素子131〜134及び磁気記憶素子140〜146における各層の幅の相対的な関係を適用しても良い。
【0142】
第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きが第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向き対して逆向きであるこれらの構成において、第3強磁性層30において発生する回転磁界の向きは、第2強磁性層20の磁化が歳差運動する向きと、一致することができる。第3強磁性層30において発生した回転磁界は、第2強磁性層20に、より効果的に作用し、第2強磁性層20の磁化反転をより効率的にアシストし、これにより、書き込みに必要な電流を、より低減させることができる。
【0143】
また、第2積層構成、第3積層構成及び第4積層構成において、第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きが、第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きと同じでも良い。例えば、これらの向きが上向き、または、下向きでも良い。
【0144】
また、上記の第2積層構成、第3積層構成及び第4積層構成において、第1強磁性層10の磁化及び第4強磁性層40の磁化の向きは、膜面に対して斜めでも良い。
【0145】
第2積層構成(例えば、磁気記憶素子120〜127及びそれらの変形)における第2強磁性層20と第3強磁性層30との間の距離は、第1積層構成(例えば、磁気記憶素子110〜114、及び、110a〜114a及びそれらの変形)におけるその距離よりも短い。これにより、第3強磁性層30において発生した回転磁界は、第2強磁性層20に、より大きく作用し、第2強磁性層20の磁化反転をより効率的にアシストすることができる。これにより、第2強磁性層への書き込みに必要な電流を、より低減させることができる。
【0146】
第2積層構成において、第3非磁性層30nにおいてスピン情報が保たれると、第3強磁性層30は、第2強磁性層20からのスピントランスファトルクの影響を受ける。このため、第3強磁性層30の磁化回転の制御性が低下する場合がある。
【0147】
このとき、第3非磁性層30nとして、例えばルテニウム(Ru)などのようなスピン拡散長の短い膜(スピン消失の機能を持つ材料)、または、スピン拡散長の短い構造を有する層を用いることが望ましい。これにより、第3強磁性層30の磁化回転の制御性の低下を抑制できる。
【0148】
すなわち、第3強磁性層30の磁化が歳差運動をするためのスピントランスファトルクの大きさは、第4強磁性層40でのスピン偏極で決まる。この構成においては、他の電子のスピンの影響(スピントランスファトルク)を受けることなく、第3強磁性層30の磁化を独立に制御することが可能となる。
【0149】
第3非磁性層30nのための、このようなスピン消失効果が得られる材料としては、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)及びバナジウム(V)よりなる群から選択された金属、または、これらの群から選択された2つ以上を含む合金を挙げることができる。
【0150】
第3非磁性層30nの厚さは、第2強磁性層20と第3強磁性層30とが層間磁気結合しない値に設定されることが望ましい。具体的には、第3非磁性層30nの厚さは、1.4nm以上に設定することが望ましい。
【0151】
第3非磁性層30nの厚さが1.4nm以上であると、第2強磁性層20と第3強磁性層30とが層間結合せず、かつ、第3非磁性層30nにおいて、伝導電子が第3非磁性層30nの内部及び界面を通過する際にスピン偏極度を消失させることができる。さらに、第2強磁性層20の磁化の向きにより第3強磁性層30の歳差運動が変化することを、第3非磁性層30nにより防ぐことができる。
【0152】
一方、第3非磁性層30nの厚さが20nmを超えると、多層膜のピラー形成が困難となる。さらに、第3強磁性層30から発生する回転磁界の強度が、第2強磁性層20の位置で減衰する。そのため、第3非磁性層30nの厚さは、20nm以下に設定されることが望ましい。
【0153】
第3非磁性層30nとして、前述した単層膜の他に、積層膜を用いることができる。この積層膜は、例えば、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)及びバナジウム(V)よりなる群から選択された金属、または、その群から選択された2つ以上を含む合金を含む層と、その層の少なくとも片側に積層された銅(Cu)層と、の積層構成を有することができる。
【0154】
さらに、第3非磁性層30nに用いられる積層膜は、例えば、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)及びバナジウム(V)よりなる群から選択された金属、または、その群から選択された2つ以上を含む合金を含む第1層と、第1層の少なくとも片側に積層され、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、タングステン(W)及びルテニウム(Ru)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む酸化物を含む第2層と、を含む積層構成を有することができる。
【0155】
第4積層構成(例えば、磁気記憶素子140〜147及びそれらの変形)においても、第2強磁性層20と第3強磁性層30との間の距離は、第1積層構成におけるその距離よりも短い。距離が短い分、磁界が大きくなるためアシスト効果が高まり、第2強磁性層20への書き込みに必要な電流を、より低減させることができる。
【0156】
第4積層構成においては、第3強磁性層30へ入射される電子のスピン偏極の向きが、第4強磁性層40でのスピン偏極の向き、及び、第1強磁性層10でのスピン偏極の向きと同じである。これにより、例えば、第3強磁性層30において発生する回転磁界の発生効率が向上する。
【0157】
第3非磁性層30n及び第2非磁性層20nには、金属導体、絶縁体及び半導体のいずれを用いても良い。第3非磁性層30nと第2非磁性層20nとにおいて、異なる材料に基づく層を用いても良い。
【0158】
第3非磁性層30nとして絶縁体または半導体を用いた場合には、抵抗値が上昇する。このため、この場合には、第2非磁性層20nとして金属導体を用いることが好ましい。金属導体として、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)及び金(Au)などを用いることが好ましい。
【0159】
第3積層構成(磁気記憶素子130〜135及びそれらの変形)においては、第2強磁性層20と第3強磁性層30との間の距離は、第1積層構成におけるその距離よりも短い。距離が短い分、磁界が大きくなるためアシスト効果が高まり、第2強磁性層20への書き込みに必要な電流を、より低減させることができる。
【0160】
第3積層構成においては、第2強磁性層20へ入射される電子のスピン偏極の向きが、第4強磁性層40でのスピン偏極の向き、及び、第1強磁性層10でのスピン偏極の向きと同じである。これにより、第2強磁性層20の磁化反転の効率が高められる。
【0161】
第3積層構成において、第3非磁性層30n及び第2非磁性層20nとして、第4積層構成に関して説明した材料と同様の材料を用いることができる。
【0162】
上記の第2〜第4積層構成において、図8(a)〜図8(h)に関して説明したように、各層の側面は、Z軸に対して傾斜していても良い。
【0163】
本実施形態に係る磁気記憶素子において、磁気シールドをさらに設けることができる。 以下、磁気シールドの構成の例について説明する。
【0164】
図12(c)〜図12(d)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子の構成を例示する模式的断面図である。
図12(a)及び図12(b)に表したように、実施形態に係る磁気記憶素子122k及び122lにおいては、第2積層部SB2の側面に対向する磁気シールド51が設けられる。磁気記憶素子122lにおいては、磁気シールド51は、さらに、第1積層部SB1の側面、及び、第3非磁性層30nの側面に対向している。
【0165】
すなわち、磁気記憶素子122k及び122lは、積層体SB0の側面の少なくとも一部に対向する磁気シールド51をさらに備える。磁気シールド51は、積層体SB0の側面の上記の少なくとも一部を覆う。
【0166】
さらに、磁気記憶素子122k及び122lは、積層体SB0の側面の上記の少なくとも一部と、磁気シールド51との間に設けられた保護層52をさらに備える。
【0167】
磁気記憶素子122kにおいては、磁気シールド51は、第2積層部SB2の側面を覆う。磁気記憶素子122lにおいては、磁気シールド51は、第2積層部SB2の側面、第1積層部SB1の側面、及び、第3非磁性層30nの側面を覆う。
【0168】
図12(c)及び図12(d)に表したように、実施形態に係る磁気記憶素子124k及び124lにおいても、第2積層部SB2の側面に対向する磁気シールド51が設けられる。磁気シールド51は、さらに、第1積層部SB1の側面に対向している。さらに、磁気記憶素子124k及び124lは、積層体SB0の側面の少なくとも一部と、磁気シールド51との間に設けられた保護層52をさらに備える。さらに、磁気記憶素子124k及び124lは、保護層52と第3強磁性層30との間(この例では、保護層52と第2積層部SB2との間)に設けられた絶縁層53(埋め込み絶縁層)をさらに備える。磁気記憶素子124lにおいては、絶縁層53は、第1積層部SB1と保護層52との間にも設けられている。絶縁層53には、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコンなどの絶縁材料が用いられる。絶縁層53を設けることで、第2積層部SB2と磁気シールド51との距離が離れ、第2積層部SB2から発生する磁界が第1積層部SB1に印加され易くなり、高周波アシストの効果を得易くなる。
【0169】
例えば、第1積層部SB1の側面及び第2積層部SB2の側面は、例えばSiNやAl2O3などの保護層52を介してパーマロイ(Py)などの磁気シールド51により覆われる。
【0170】
これにより、複数の磁気記憶素子が並べられた場合において、隣の磁気記憶素子からの漏洩磁界が、第1積層部SB1及び第2積層部SB2の動作に影響を与えることが抑制される。これにより、回転磁界を発生させるために必要となる電流注入量を抑えることができる。また、第1積層部SB1及び第2積層部SB2からの漏洩磁界が、隣の磁気記憶素子に作用することを抑制することができる。その結果、複数の磁気記憶素子どうしを近接して配置することができ、集積度を向上することができる。
【0171】
保護層52には、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)及び鉄(Fe)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む、酸化物、窒化物または弗化物を用いることができる。
【0172】
磁気シールド51には、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びクロム(Cr)よりなる群から選択されたいずれかの元素、または、この群から選択された2つ以上を含む合金を用いることができる。
【0173】
磁気シールド51には、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びクロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素と、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)及びロジウム(Rh)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素と、の組み合わせによる合金を用いることができる。
【0174】
磁気シールド51に含まれる磁性材料の組成や熱処理により、磁気シールド51の特性を調整することができる。また、磁気シールド51には、TbFeCo及びGdFeCoなどの希土類−遷移金属のアモルファス合金を用いることができる。また、磁気シールド51には、Co/Pt、Co/Pd及びCo/Niなどの積層構造を用いることができる。
【0175】
上記の磁気シールド51(及び保護層52)は、実施形態に係る磁気記憶素子及びその変形の磁気記憶素子(第1〜第4積層構成のいずれかを有する磁気記憶素子)においても設けることができる。
【0176】
以下、実施形態に係る磁気記憶素子の特性について説明する。
発明者は、磁界発生部(第2積層部SB2)の特性についてマイクロマグネティクスを用いたシミュレーションを実施した。このシミュレーションにおいては、以下のモデルを採用した。第4強磁性層40(厚さ10nm)は、Ms(磁化:saturated magnetization)=1000emu/ccで、Ku=8Merg/cm3の垂直磁化膜とした。第2非磁性層20nは、Cu層(厚さ2nm)とした。第3強磁性層30(厚さ2nm)は、Ms=800emu/ccで、Ku=5000erg/cm3の面内磁化膜とした。スピン偏極度は0.4とし、ダンピング定数は0.01とした。
【0177】
磁化固定層(第4強磁性層40)とスペーサ層(第2非磁性層20n)との形状は、直径(Z軸に対して垂直な幅)が24nmのピラー型形状とした。そして、第3強磁性層30の直径(幅D30)が24nmの場合と、12nmの場合の2通りのモデルを想定した。
【0178】
このシミュレーションでは、第3強磁性層30のサイズの違いによって電流密度が変化して発振周波数が向上する特性に着目する。このため、磁化記憶部(磁気記憶部)の構造を設けず、磁界発生部の構造が設けられているモデルに関して計算を行った。
【0179】
図13は、磁気記憶素子の特性のシミュレーション結果を例示するグラフ図である。
同図は、磁界発生部の特性のマイクロマグネティクスを用いたシミュレーション結果を例示している。横軸は、電流I(マイクロアンペア:μA)である。縦軸は、第3強磁性層30の膜面内方向(例えばX軸方向)の磁化が発振した時の発振周波数fs(ギガヘルツ:GHz)である。
【0180】
図13から分かるように、第3強磁性層30の大きさ(幅D30)が12nmである場合は、24nmの場合に比べて、高い周波数での発振が得られている。これは、第3強磁性層30における電流密度が大きくなることで、より高い周波数で発振するためと考えられる。
【0181】
このように、第3強磁性層30の幅D30を小さくすることによって電流密度が高まるため、より高い周波数の磁界を発生させ、これを磁気記憶部の磁気記憶層へ作用させることが可能となる。
【0182】
なお、磁気記憶部の構造が付与された場合は、第3強磁性層30に加わる漏洩磁界が変化することで、発振周波数と電流の関係は、磁気記憶部の構造を設けた場合の特性と比べてシフトする。しかしながら、電流密度に対する発振周波数の変化の挙動は、このシミュレーションで採用したモデル(磁気記憶部の構造を付与されていない構成)で得られた結果で十分に把握できる。磁気記憶部部の構造が付与された場合においても、上記と同様に、第3強磁性層30の幅D30を小さくすることによって電流密度が高まり、その結果、より高い周波数の磁界を発生させることができる。
【0183】
以下、磁気記憶部の構造が付与された磁気記憶素子の特性の例として、以下の構成をそれぞれ有する磁気記憶素子161〜165について説明する。これらの磁気記憶素子は、それぞれ、第1〜第5実施例に対応する。
【0184】
磁気記憶素子161(図5(c)参照)は、第1積層構成を有し、具体的には、磁気記憶素子112と同様の構成を有する。磁気記憶素子162(図6(c)参照)は、第1積層構成を有し、具体的には、磁気記憶素子112aと同様の構成を有する。磁気記憶素子163(図9(e)参照)は、第2積層構成を有し、具体的には、磁気記憶素子124と同様の構成を有する。磁気記憶素子164(図10(c)参照)は、第3積層構成を有し、具体的には、磁気記憶素子132と同様の構成を有する。磁気記憶素子165(図11(e)参照)は、第4積層構成を有し、具体的には、磁気記憶素子144と同様の構成を有する。
【0185】
磁気記憶素子161においては、第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは、第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きと同じである。磁気記憶素子162〜165においては、第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは、第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きに対して逆向きである。
【0186】
磁気記憶素子161においては、第1強磁性層10、第1非磁性層10n及び第2強磁性層20の形状は、直径24nmのピラー型形状とした。第1強磁性層10(厚さ6nm)は、Ms=400emu/ccで、Ku=10Merg/cm3の垂直磁化膜とした。第1非磁性層10nは、MgO層(厚さ1nm)とした。第2強磁性層20(厚さ2nm)は、Ms=600emu/ccで、Ku=2.7Merg/cm3の垂直磁化膜とした。第4強磁性層40(厚さ10nm)は、Ms=1000emu/ccで、Ku=8Merg/cm3の垂直磁化膜とした。第2非磁性層20nは、Cu層(厚さ2nm)とした。第3強磁性層30(厚さ2nm)は、Ms=800emu/ccで、Ku=5000erg/cm3の面内磁化膜とした。第3強磁性層30、第2非磁性層20n及び第4強磁性層40の直径は、12nmとした。第3非磁性層30nは、厚さが2nmのCu膜とした。第1積層部SB1におけるスピン偏極度は、0.6とし、第2積層部SB2におけるスピン偏極度は、0.4とした。
【0187】
磁気記憶素子162においては、第3非磁性層30nは、厚さが2nmのRu膜とした。第4強磁性層40と第1強磁性層10とが、互いに反強磁性結合する構造が採用された。これ以外の条件は、磁気記憶素子161と同様とした。
【0188】
磁気記憶素子163においては、第2積層構成を採用し、さらに、第3非磁性層30nは、厚さが3nmのRu膜とした。第3強磁性層30と第2強磁性層20との間でスピントルクが伝達しない構造が採用された。これ以外の条件は、磁気記憶素子161と同様とした。
【0189】
磁気記憶素子164においては、第3積層構成を採用した以外は、磁気記憶素子161と同様とした。磁気記憶素子165においては、第4積層構成を採用した以外は、磁気記憶素子161と同様とした。
【0190】
さらに、参考例の磁気記憶素子191(図示せず)に関しても検討した。磁気記憶素子191においては、第2積層部SB2及び第3非磁性層30nを設けず、第1積層部SB1だけが設けられるモデルを採用した。すなわち、磁気記憶素子191は、共鳴アシストを用いない構成を有する。磁気記憶素子191における第1積層部SB1の構成は、磁気記憶素子161と同様とした。
【0191】
これらの磁気記憶素子において、第2強磁性層20における磁化の反転に関してシミュレーションを行った。
【0192】
図14は、磁気記憶素子における磁化の反転の特性のシミュレーション結果を例示するグラフ図である。
横軸は、時間tt(ナノ秒:ns)である。時間ttは、積層体SB0に電流を通電してから経過する時間である。縦軸は、第2強磁性層20における磁化Mzの向きを表している。ここでは、磁化Mzが、反平行状態から平行状態へ遷移する様子を計算している。第1強磁性層10(磁化固定層)の磁化は下向きである。通電前において、第2強磁性層20(記憶層)の磁化Mzは、上向き(”1”)とした。そして、通電することにより、第2強磁性層20の磁化Mzは下向き(”−1”)に変化する。ここで、供給する電流は、15μAとした。
【0193】
図14に表したように、参考例の磁気記憶素子191(磁界発生部を用いない)においては、磁化Mzの反転時間は、4.4nsであった。これに対して、第1〜第5実施例の磁気記憶素子161〜165のいずれにおいても、磁化反転が高速化している。
【0194】
図15は、磁気記憶素子における磁化の反転の特性を例示するグラフ図である。
同図は、図14の結果を基に導出されたものである。すなわち、磁化Mzが−0.5になるときの時間ttを、反転時間trとして求め、その結果を比較して示している。図14の縦軸は、反転時間tr(ns)である。
図15から分かるように、実施例の磁気記憶素子161〜165においては、参考例の磁気記憶素子191に比べて、反転時間trが短い。特に、磁気記憶素子163においては、反転の高速化の効果が顕著である。これは、第2積層構成においては、発振層(第3強磁性層30)と記憶層(第2強磁性層20)との間の距離が近いため、より大きな磁界が作用することに起因している。
【0195】
図16は、磁気記憶素子の特性を例示するグラフ図である。
図16は、発振層(第3強磁性層30)から発生し、記憶層(第2強磁性層20)に印加される磁界強度H30のシミュレーション結果を例示している。横軸は、磁界強度H30(エルステッド:Oe)であり、縦軸は、反転時間trである。この図には、参考例の磁気記憶素子191が三角印で表示され、実施形態に係る磁気記憶素子(磁気記憶素子161〜165を含む)が丸印で表示されている。
図16からわかるように、磁界強度H30が大きいと反転時間trは短くなる。
【0196】
第1〜第4積層構成のなかでは、第3強磁性層30と第2強磁性層20とが近接する第2積層構成において、反転時間trが短くなる。
【0197】
また、磁気記憶素子161と磁気記憶素子162とを比較すると、第1強磁性層10と第4強磁性層40とが互いに反強磁性結合できる磁気記憶素子162においては、第2強磁性層20における漏洩磁界を小さくできる。このため、磁気記憶素子162の構成は、望ましい構成の1つである。
【0198】
発明者は、発振層(第3強磁性層30)の幅D30(例えば直径)の、記憶層(第2強磁性層20)の幅(例えば直径)に対する比を変えた時の、第3強磁性層30の発振周波数fsをシミュレーションにより求めた。
【0199】
図17は、磁気記憶素子における発振特性を例示するグラフ図である。
横軸は、第3強磁性層30の幅D30の、第2強磁性層20の幅に対する比Rwを示す。縦軸は、比Rwが1であるときの第3強磁性層30の発振周波数fsに対する、第3強磁性層30の発振周波数fsの比Rfを示す。
【0200】
図17に表したように、幅の比Rwが小さいときに、発振周波数の比Rfが大きくなり、高い発振周波数が得られる。例えば、比Rwが1のとき(第3強磁性層30が第1積層部SB1と同じサイズのとき)の2倍以上の発振周波数を得るためには、比Rwは0.7以下に設定すれば良い。すなわち、第3強磁性層30の幅D30を、第1積層部SB1の幅(例えば第1径D1)の0.7倍以下にすることで、第3強磁性層30が第1積層部SB1と同じサイズのときの発振周波数fsの2倍以上の発振周波数fsが得られる。
【0201】
図18(a)及び図18(b)は、磁気記憶素子の特性を例示するグラフ図である。
図18(a)は、実施形態に係る磁気記憶素子(例えば磁気記憶素子110など)の特性を例示している。図18(b)は、参考例の磁気記憶素子192(図示せず)の特性を例示している。磁気記憶素子192においては、第3強磁性層30の幅D30(具体的には、第2積層部SB2の幅)が、第1積層部SB1の幅と同じである。
【0202】
これらの図(グラフ)の横軸は、積層体SB0に供給される電流Iを表している。縦軸は、第3強磁性層30(第2積層部SB2)で発生する磁界の発振周波数fsを表している。また、縦軸に沿って、第2強磁性層20における共鳴周波数frの特性が模式的に描かれている。
【0203】
図18(b)に表したように、参考例の磁気記憶素子192においては、書き込み動作における電流(書き込み電流Iwrite)によって得られる発振周波数fsが低い。ここで、読み出し電流の値は、磁界発生部にとって発振に至らない大きさの値に設定されるが、読み出し電流によって仮に発振した場合の周波数帯域は磁気記憶部の共鳴周波数の帯域に近くなる。すなわち、読み出し動作における電流(読み出し電流Iread)に対応する発振周波数fsと、書き込み電流Iwriteによって得られる発振周波数fsと、の間の差(書き込み動作と読み出し動作との間のマージンMrw)が小さい。このような場合においても、読み出し時に誤書き込みが起こることを避けるため、読み出し電流で発振が起きてしまった場合の周波数帯域は、記憶部の共鳴周波数から±1GHz程度離すことが望ましい。
【0204】
これに対して、図18(a)に表したように、実施形態に係る磁気記憶素子(例えば磁気記憶素子110)においては、書き込み電流Iwriteによって得られる発振周波数fsが高い。このため、書き込み動作と読み出し動作との間のマージンMrwが大きく、誤書き込みが発生することを十分に抑制することが可能である。
【0205】
すなわち、実施形態によれば、書き込み電流Iwriteと読み出し電流Ireadのマージンを拡大できる。
【0206】
このように、上記で説明した、本実施形態に係る磁気記憶素子においては、積層方向SD1に対して垂直な平面で切断したときの第3強磁性層30の断面積S30は、積層方向SD1に対して垂直な平面で切断したときの第1積層部SB1の断面積S1よりも小さい。すなわち、実施形態においては、第3強磁性層30のサイズ(例えば幅D30)を小さくする。このとき、磁歪によって異方性が発現し、安定した発振を得るための電流マージンが狭くなる場合がある。このとき、第3強磁性層30を非晶質(アモルファス)とすることで、この電流マージンが狭くなることを抑制できる。なお、実施形態において、第3強磁性層30が非晶質である状態は、第3強磁性層30の中に多結晶の粒子が含まれる状態も含むものとする。この状態においても、電流マージンが狭くなることが抑制される。
【0207】
本実施形態に係る磁気記憶素子に含まれる各層の寸法(幅及び厚さなど)は、例えば電子顕微鏡写真像などにより求められる。
【0208】
以下、実施形態に係る磁気記憶素子の製造方法の例について説明する。
以下の説明において、「材料A\材料B」は、材料Aの上に材料Bが積層されていることを指す。
【0209】
ウェーハ上に下部電極(図示せず)を形成した後、そのウェーハを超高真空スパッタ装置内に配置する。下部電極上に、Ta(電極とのコンタクト層,兼ストッパ層、下地層)、CoFeB層(第2強磁性層20)、MgO(第1非磁性層10n)、CoFeB\FePt層(第1強磁性層10)、及び、その上にTa(電極とのコンタクト層)の層を、この順に積層させる。ここで、磁界中でアニールすることによって、CoFeB層とCoFeB\FePt層との膜面垂直方向の磁気異方性の強さを調節することもできる。これにより、加工体が形成される。
【0210】
次に、EB(electron beam:電子線)リソグラフィを行い、直径100nmのレジストマスクを形成する。加工体のうちで、レジストで被覆されていない部分を、下部電極が露出するまで、イオンミリングによって削る。
【0211】
次に、埋め込み絶縁層となるSiO2膜を成膜した後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等で平坦化した後、RIE(Reactive Ion Etching)等で全面をエッチングすることで電極とのコンタクト層のTaを露出させる。
【0212】
続いて、Ta\Ru層(電極とのコンタクト層、兼ストッパ層)、FePt\CoFeB\Cu\Py層(磁界発生部)、及び、Ta(電極とのコンタクト層)をこの順に積層する。
【0213】
次に、EB(electron beam:電子線)レジストを塗布してEB露光を行い、直径20nmのレジストマスクを形成する。加工体のうちで、レジストで被覆されていない部分を、ストッパ層のTa層が露出するまで、イオンミリングによって削る。
【0214】
次に、埋め込み絶縁層となるSiO2膜を成膜した後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等で平坦化した後、RIE(Reactive Ion Etching)等で全面をエッチングすることで電極とのコンタクト層を露出させる。
【0215】
さらに全面にレジストを塗布し、レジストの開口部が上部電極の位置に対応するように、ステッパ露光装置を用いてレジストをパターニングする。上部電極に対応する開口を埋め込むように、Cu膜を形成し、リフトオフ法により上部電極が形成される。さらに、上部電極に電気的に接続される配線(図示しない)が設けられる。
【0216】
磁気記憶素子124kの製造方法の例を説明する。
上記で説明した製造方法と同様に、下部電極上に、Ta\Ru層(電極とのコンタクト層、兼ストッパ層)、磁気記憶部、及び、Ta(ストッパ層)をこの順に積層し、直径100nmのサイズに加工する。そして、第3非磁性層30n、第4強磁性層40、第2非磁性層20n、第3強磁性層30、及び、電極とのコンタクト層をこの順に積層し、直径20nmのサイズに加工する。そして、保護層52となるSiN層を形成した後、磁気シールド51となるPy層を形成する。エッチバックにより、Py層を積層体SB0の側壁に残す。さらに、埋め込み絶縁層となるSiO2膜を形成し、加工し、上部電極を形成する。これにより、磁気記憶素子124kが作製される。また、埋め込み絶縁層の形状を変えることで磁気記憶素子124lが作製される。
【0217】
実施形態に係る磁気記憶素子において、第1積層部SB1と第3強磁性層30(例えば第2積層部SB2)との互いの関係(形状及び位置)をセルフアラインにより設定することができる。以下、セルフアライン方式の製造方法の例について説明する。
【0218】
図19(a)〜図19(d)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図19(a)に表したように、基体5(例えば電極層など)の上に、下地層等を形成した後、第2強磁性層20となる第2強磁性層膜20f、第1非磁性層10nとなる第1非磁性層膜10nf、第1強磁性層10となる第1強磁性層膜10f、第3非磁性層30nとなる第3非磁性層膜30nf、第4強磁性層40となる第4強磁性層膜40f、第2非磁性層20nとなる第2非磁性層膜20nf、及び、第3強磁性層30となる第3強磁性層膜30fを、この順で形成する。さらに、この上に、上側膜6(例えば電極層など)を形成し、加工体が形成される。加工体の上に、所定の形状を有するマスク材M1を形成する。マスク材M1の加工には例えばフォトリソグラフィとエッチングが用いられる。マスク材M1のZ軸に沿ってみたときの形状は、第1積層部SB1の形状に対応する。
【0219】
図19(b)に表したように、マスク材M1をマスクとして用い、基体5が露出するまで第1のエッチングを行い、加工体を加工する。これにより、第3非磁性層30n、第1強磁性層10、第1非磁性層10n及び第2強磁性層20の形状が得られる。
【0220】
図19(c)に表したように、マスク材M1をスリミングする。これにより、マスク材M1の幅(Z軸に対して垂直な軸に沿った長さ)は、小さくなる。スリミング後のマスク材M1のZ軸に沿ってみたときの形状は、第3強磁性層30の形状(この例では第2積層部SB2の形状)に対応する。
【0221】
図19(d)に表したように、スリミング後のマスク材M1をマスクとして用い、第3非磁性層30nが露出するまで第2のエッチングを行い、加工体を加工する。これにより、第4強磁性層40、第2非磁性層20n及び第3強磁性層30の形状が得られる。なお、第2のエッチングの条件は、第1のエッチングの条件とは異なる。
このようにして、例えば、磁気記憶素子110(または磁気記憶素子110aなど)が得られる。
【0222】
図20(a)〜図20(d)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子の別の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図20(a)に表したように、基体5の上に、下地層等を形成した後、第2強磁性層膜20f、第1非磁性層膜10nf、第1強磁性層膜10f、第3非磁性層膜30nf、第4強磁性層膜40f、第2非磁性層膜20nf及び第3強磁性層膜30fをこの順で形成する。さらに、上側膜6を形成し、加工体が形成される。加工体の上に、所定の形状を有するマスク材M1を形成する。マスク材M1のZ軸に沿ってみたときの形状は、例えば、第3強磁性層30の形状(この例では第2積層部SB2の形状)に対応する。
【0223】
図20(b)に表したように、マスク材M1をマスクとして用い、第3非磁性層30nが露出するまで第1のエッチングを行い、加工体を加工する。これにより、第2積層部SB2(第4強磁性層40、第2非磁性層20n及び第3強磁性層30)の形状が得られる。
【0224】
図20(c)に表したように、加工体を覆うように加工用犠牲層を形成し、その後全面をエッチングすることで、マスク材M1及び第2積層部SB2の側壁に側壁材M2を形成する。マスク材M1及び側壁材M2によるマスク部のZ軸に沿ってみたときの形状は、第1積層部SB1の形状に対応する。
【0225】
図20(d)に表したように、マスク材M1及び側壁材M2によるマスク部をマスクとして用い、基体5が露出するまで第2のエッチングを行い、加工体を加工する。これにより、第3非磁性層30n、第1強磁性層10、第1非磁性層10n及び第2強磁性層20の形状が得られる。なお、第2のエッチングの条件は、第1のエッチングの条件とは異なる。
このようにして、例えば、磁気記憶素子110(または磁気記憶素子110aなど)が得られる。
【0226】
上記のように、スリミングを用いる方法及び側壁材M2を用いる方法の少なくともいずれかを用いることで、実施形態に係る任意の磁気記憶素子(第1〜第4積層構成を有する任意の磁気記憶素子)を作製することができる。
【0227】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、不揮発性記憶装置に係る。この不揮発性記憶装置は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子を備える。
【0228】
図21は、第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する模式図である。
図21に表したように、本実施形態に係る不揮発性記憶装置340は、メモリセルアレイMCAを備える。メモリセルアレイMCAは、マトリクス状に配列された複数のメモリセルMCを有する。
【0229】
各メモリセルMCは、実施形態に係る磁気記憶素子のいずれかを、MTJ素子として有する。
【0230】
メモリセルアレイMCAには、それぞれが列(カラム)方向に延在するように、複数のビット線対(ビット線BL及びビット線/BL)が配置されている。メモリセルアレイMCAには、それぞれが行(ロウ)方向に延在するように、複数のワード線WLが配置されている。
【0231】
ビット線BLとワード線WLとの交差部分に、メモリセルMCが配置される。各メモリセルMCは、MTJ素子と選択トランジスタTRとを有する。MTJ素子の一端は、ビット線BLに接続されている。MTJ素子の他端は、選択トランジスタTRのドレイン端子に接続されている。選択トランジスタTRのゲート端子は、ワード線WLに接続されている。選択トランジスタTRのソース端子は、ビット線/BLに接続されている。
【0232】
ワード線WLには、ロウデコーダ341が接続されている。ビット線対(ビット線BL及びビット線/BL)には、書き込み回路342a及び読み出し回路342bが接続されている。書き込み回路342a及び読み出し回路342bには、カラムデコーダ343が接続されている。
【0233】
各メモリセルMCは、ロウデコーダ341及びカラムデコーダ343により選択される。メモリセルMCへのデータ書き込みの例は、以下である。まず、データ書き込みを行うメモリセルMCを選択するために、このメモリセルMCに接続されたワード線WLが活性化される。これにより、選択トランジスタTRがオンする。
【0234】
ここで、MTJ素子には、双方向の書き込み電流が供給される。具体的には、MTJ素子に左から右へ書き込み電流を供給する場合、書き込み回路342aは、ビット線BLに正の電位を印加し、ビット線/BLに接地電位を印加する。また、MTJ素子に右から左へ書き込み電流を供給する場合、書き込み回路342aは、ビット線/BLに正の電位を印加し、ビット線BLに接地電位を印加する。このようにして、メモリセルMCに、データ「0」、または、データ「1」を書き込むことができる。
【0235】
メモリセルMCからのデータ読み出しの例は、以下である。まず、メモリセルMCが選択される。読み出し回路342bは、MTJ素子に、例えば右から左へ流れる読み出し電流を供給する。そして、読み出し回路342bは、この読み出し電流に基づいて、MTJ素子の抵抗値を検出する。このようにして、MTJ素子に記憶された情報を読み出すことができる。
【0236】
図22は、第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する模式図である。
図22は、1つのメモリセルMCの構成を例示している。この例では、磁気記憶素子110が用いられているが、実施形態に係る任意の磁気記憶素子を用いることができる。
【0237】
図22に表したように、本実施形態に係る不揮発性記憶装置340は、実施形態に係る磁気記憶素子(例えば磁気記憶素子110)と、第1配線81と、第2配線82と、を備える。第1配線81は、磁気記憶素子110の一端(例えば第1積層部SB1の端)に、直接または間接に接続される。第2配線82は、磁気記憶素子110の他端(例えば第2積層部SB2の端)に直接または間接に接続される。
【0238】
ここで、「直接に接続される」は、間に他の導電性の部材(例えばビア電極や配線など)が挿入されないで電気的に接続される状態を含む。「間接に接続される」は、間に他の導電性の部材(例えばビア電極や配線など)が挿入されて電気的に接続される状態、及び、間にスイッチ(例えばトランジスタなど)が挿入されて、導通と非導通とが可変の状態で接続される状態を含む。
【0239】
第1配線81及び第2配線82のいずれか一方は、例えば、ワード線WLに対応する。 第1配線81及び第2配線82のいずれか他方は、例えば、ビット線BLまたはビット線/BLに対応する。
【0240】
図22に表したように、不揮発性記憶装置340は、選択トランジスタTRをさらに備えることができる。選択トランジスタTRは、磁気記憶素子110と第1配線81との間(第1の位置)、及び、磁気記憶素子110と第2配線82の間(第2の位置)の少なくともいずれかの間に設けられる。これにより、図21に関して説明した動作が実現できる。
【0241】
実施形態によれば、高密度化が可能な磁気記憶素子及び不揮発性記憶装置が提供される。
【0242】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0243】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気記憶素子に含まれる強磁性層、非磁性層、電極など、並びに、不揮発性記憶装置に含まれる配線及びトランジスタなどの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0244】
その他、本発明の実施の形態として上述した磁気記憶素子及び不揮発性記憶装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての磁気記憶素子及び不揮発性記憶装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0245】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0246】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0247】
5…基体、 6…上側膜、 10…第1強磁性層、 10f…第1強磁性層膜、 10n…第1非磁性層、 10nf…第1非磁性層膜、 12a…磁化、 20…第2強磁性層、 20f…第2強磁性層膜、 20n…第2非磁性層、 20nf…第2非磁性層膜、 20nj…第2非磁性層周囲部、 30…第3強磁性層、 30f…第3強磁性層膜、 30j…第3強磁性層周囲部、 30n…第3非磁性層、 30nf…第3非磁性層膜、 30p…外縁、 32…磁化、 40…第4強磁性層、 40f…第4強磁性層膜、 40j…第4強磁性層周囲部、 51…磁気シールド、 52…保護層、 53…絶縁層、 60…電子電流、 61…センス電流、 72…磁化、 72a、72b…磁化成分、 81…第1配線、 82…第2配線、 110〜114、110a〜114a、110b〜113b、110c〜113c、110r、110s、120〜127、122k、122l、124k、124l、130〜135、140〜147、161〜165、191、192…磁気記憶素子、 340…不揮発性記憶装置、 341…ロウデコーダ、 342a…書き込み回路、 342b…読み出し回路、 343…カラムデコーダ、 /BL…ビット線、 BL…ビット線、 D1…第1径、 D2…第2径、 D30…幅、 Dd…距離、 H30…磁界強度、 I…電流、 Iread…読み出し電流、 Iwrite…書き込み電流、 M1…マスク材、 M2…側壁材、 MC…メモリセル、 MCA…メモリセルアレイ、 Mrw…マージン、 Mz…磁化、 Rf…比、 Rw…比、 S1…断面積、 S30…断面積、 SB0…積層体、 SB1…第1積層部、 SB2…第2積層部、 SBP1…第1外縁、 SBP2…第2外縁、 SD1…積層方向、 SD2…面内軸、 TR…選択トランジスタ、 WL…ワード線、 fr…共鳴周波数、 fs…発振周波数、 t…厚さ、 tt…時間、 tr…時間反転時間
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気記憶素子及び不揮発性記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM:Magnetic Random Access Memory)において、トンネル磁気抵抗(TMR:Tunneling Magnetoresistive)効果を示す強磁性トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)素子をデータ記憶部に用いる構成がある。この構成は、高速・大容量の不揮発メモリとして注目を集めている。MTJ素子の記憶層への書き込みは、例えば、スピントルク書き込み方式により行われる。この方式においては、例えば、MTJ素子に直接通電させ、MTJ素子の基準層から注入されるスピントルクで記憶層の磁化を反転させる。このような磁気記憶素子において、さらなる微細化を可能にし、高密度な不揮発性記憶装置を実現することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−21352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、高密度化が可能な磁気記憶素子及び不揮発性記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、積層体を備えた磁気記憶素子が提供される。前記積層体は、第1積層部と、第2積層部と、を含む。前記第1積層部は、膜面に対して垂直な成分を有する第1の方向に磁化が固定された第1強磁性層と、磁化の方向が膜面に対して垂直な方向に可変である第2強磁性層と、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間に設けられた第1非磁性層と、を含む。前記第2積層部は、前記第1強磁性層、前記第2強磁性層及び前記第1非磁性層が積層される積層方向に沿って前記第1積層部と積層される。前記第2積層部は、磁化の方向が膜面に対して平行な方向に可変である第3強磁性層と、前記第3強磁性層と前記積層方向に沿って積層され、膜面に対して垂直な成分を有する第2の方向に磁化が固定された第4強磁性層と、前記第3強磁性層と前記第4強磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、を含む。前記積層方向に対して垂直な平面で切断したときの前記第3強磁性層の断面積は、前記積層方向に対して垂直な平面で切断したときの前記第1積層部の断面積よりも小さい。前記積層方向に沿って前記積層体に電流を流すことによりスピン偏極した電子を前記第2強磁性層に作用させ、且つ、前記第3強磁性層の磁化を歳差運動させることにより発生する回転磁界を前記第2強磁性層に作用させることにより、前記第2強磁性層の磁化の方向を前記電流の向きに応じた方向に決定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1(a)〜図1(c)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子を示す模式図である。
【図2】図2(a)及び図2(b)は、磁化を示す模式図である。
【図3】図3(a)〜図3(d)は、実施形態に係る磁気記憶素子の動作を示す模式図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)は、実施形態に係る磁気記憶素子の動作を示す模式図である。
【図5】図5(a)〜図5(e)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子を示す模式的断面図である。
【図6】図6(a)〜図6(e)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子を示す模式的断面図である。
【図7】図7(a)及び図7(b)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子を示す模式的断面図である。
【図8】図8(a)〜図8(h)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子を示す模式的断面図である。
【図9】図9(a)〜図9(h)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子を示する模式的断面図である。
【図10】図10(a)〜図10(f)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子を示す模式的断面図である。
【図11】図11(a)〜図11(h)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子を示す模式的断面図である。
【図12】図12(a)〜図12(d)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子を示す模式的断面図である。
【図13】磁気記憶素子の特性のシミュレーション結果を示すグラフ図である。
【図14】磁気記憶素子における磁化の反転の特性のシミュレーション結果を示すグラフ図である。
【図15】磁気記憶素子における磁化の反転の特性を示すグラフ図である。
【図16】磁気記憶素子の特性を示すグラフ図である。
【図17】磁気記憶素子における発振特性を示すグラフ図である。
【図18】図18(a)及び図18(b)は、磁気記憶素子の特性を示すグラフ図である。
【図19】図19(a)〜図19(d)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子の製造方法を示す工程順模式的断面図である。
【図20】図20(a)〜図20(d)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子の別の製造方法を示す工程順模式的断面図である。
【図21】第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置を示す模式図である。
【図22】第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施の形態)
図1(a)〜図1(c)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子の構成を例示する模式図である。
図1(a)は、模式的斜視図である。図1(b)は、図1(a)のA1−A2線断面図である。図1(c)は、模式的平面図である。
【0009】
図1(a)〜図1(c)に表したように、実施形態に係る磁気記憶素子110は、積層体SB0を備える。積層体SB0は、第1積層部SB1と、第2積層部SB2と、を含む。
【0010】
第1積層部SB1は、第1強磁性層10と、第2強磁性層20と、第1非磁性層10nと、を含む。
【0011】
第1強磁性層10においては、膜面に対して垂直な成分を有する第1の方向に磁化(第1強磁性層10の磁化)が固定されている。第2強磁性層20においては、磁化(第2強磁性層20の磁化)の方向が膜面に対して垂直な方向に可変である。第1非磁性層10nは、第1強磁性層10と第2強磁性層20との間に設けられる。「膜面」は、層の主面に対して平行な面であり、「層面」に対応する。
【0012】
すなわち、第1強磁性層10、第2強磁性層20及び第1非磁性層10nは、積層される。第1強磁性層10、第2強磁性層20及び第1非磁性層10nが重ねられる方向を積層方向SD1とする。積層方向SD1は、例えば、第1強磁性層10の膜面に対して垂直な方向である。
【0013】
説明の便宜上、積層方向SD1に対して平行な軸をZ軸とする。Z軸に対して垂直な1つの軸をX軸とする。Z軸とX軸とに対して垂直な軸をY軸とする。
【0014】
本願明細書において、「積層」は、複数の層が互いに接して重ねられる場合に加え、間に別の要素が挿入されて複数の層が重ねられる場合を含む。
【0015】
第2積層部SB2は、積層方向SD1に沿って第1積層部SB1と積層される。第2積層部SB2は、第3強磁性層30と、第4強磁性層40と、第2非磁性層20nと、を含む。第3強磁性層30においては、磁化(第3強磁性層30の磁化)の方向が膜面に対して平行な方向に可変である。第4強磁性層40は、第3強磁性層30と積層方向SD1に沿って積層される。第4強磁性層40においては、膜面に対して垂直な成分を有する第2の方向に磁化(第4強磁性層40の磁化)が固定されている。第2非磁性層20nは、第3強磁性層30と第4強磁性層40との間に設けられる。
【0016】
すなわち、第3強磁性層30、第4強磁性層40及び第2非磁性層20nは、積層方向SD1に沿って、第1強磁性層10、第2強磁性層20及び第1非磁性層10nと積層される。後述するように、各層の順序は、種々の変形が可能である。
【0017】
図1(c)に表したように、積層方向SD1に対して垂直な平面で切断したときの第3強磁性層30の断面積S30は、積層方向SD1に対して垂直な平面で切断したときの第1積層部SB1の断面積S1よりも小さい。
【0018】
例えば、積層方向SD1を法線とする平面における第1積層部SB1の外縁(第1外縁SBP1)は、その平面における第3強磁性層30の外縁30pよりも外側の部分を有する。この例では、第3強磁性層30、第2非磁性層20n及び第4強磁性層40の幅(Z軸に対して垂直な軸に沿った長さ)は、互いに同じである。従って、積層方向SD1を法線とする平面における第3強磁性層30の外縁30pの位置は、積層方向SD1を法線とする平面における第2積層部SB2の外縁(第2外縁SBP2)の位置と同じである。
【0019】
この例では、第1強磁性層10、第1非磁性層10n及び第2強磁性層20の幅(Z軸に対して垂直な軸に沿った長さ)は、互いに同じである。従って、積層方向SD1を法線とする平面における第1強磁性層10の外縁の位置、第1非磁性層20nの外縁の位置及び第2強磁性層20の外縁の位置は、積層方向SD1を法線とする平面における第1積層部SB1の第1外縁SBP1の位置と同じである。
【0020】
後述するように、第2積層部SB2において、例えば、第3強磁性層30の幅(Z軸に対して垂直な軸に沿った長さ)が、第4強磁性層40の幅(Z軸に対して垂直な軸に沿った長さ)と異なっていても良い。この場合も、実施形態においては、第3強磁性層30の断面積S30は、第1積層部SB1の断面積S1よりも小さい。例えば、第1積層部SB1の第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30pよりも外側の部分を有する。
【0021】
以下では、説明を簡単にするために、第3強磁性層30、第2非磁性層20n及び第4強磁性層40の幅が互いに同じであり、第1強磁性層10、第1非磁性層10n及び第2強磁性層20の幅が互いに同じである場合について説明する。そして、第3強磁性層30の外縁30pとして、第2積層部SB2の第2外縁SBP2について説明する。
【0022】
この例では、積層方向SD1に対して垂直な平面で切断したときの第2積層部SB2の断面積は、積層方向SD1に対して垂直な平面で切断したときの第1積層部SB1の断面積S1よりも小さい。例えば、積層方向SD1に沿ってみたときに、第1積層部SB1の第1外縁SBP1は、第2積層部SB2の第2外縁SBP2よりも外側の部分を有する。すなわち、平面視において、第2外縁SBP2は、第1外縁SBP1よりも外側の部分を有する。
【0023】
この例では、第1外縁SBP1(積層方向SD1に沿ってみたときの第1積層部SB1の外縁)は、第2外縁SBP2(積層方向SD1に沿ってみたときの第2積層部SB2の外縁)よりも外側に位置する。具体的には、第1外縁SBP1の全てが、第2外縁SBP2よりも外側に位置する。
【0024】
例えば、X軸に沿った第3強磁性層30の幅D30は、X軸に沿った第1積層部SB1の幅(例えば第1径D1)よりも小さい。Y軸に沿った第3強磁性層30の幅は、Y軸に沿った第1積層部SB1の幅よりも小さい。
例えば、第3強磁性層30のサイズが第4強磁性層40及び第2非磁性層20nのサイズと同じときは、X軸に沿った第2積層部SB2の幅(例えば第2径D2)は、X軸に沿った第1積層部SB1の幅(第1径D1)よりも小さい。同様に、Y軸に沿った第2積層部SB2の幅は、Y軸に沿った第1積層部SB1の幅よりも小さい。
【0025】
例えば、第2積層部SB2の第2外縁SBP2と、第1積層部SB1の第1外縁SBP1と、の距離は、距離Ddである。距離Ddは、例えばX−Y平面内の任意の軸に沿った距離である。例えば、距離Ddの2倍と、第3強磁性層30の幅D30と、の合計が、第2径D2となる。
【0026】
例えば、第3強磁性層30をX−Y平面で切断したときの断面積(例えば第2積層部SB2をX−Y平面で切断したときの断面積)は、第1積層部SB1をX−Y平面で切断したときの断面積よりも小さい。
【0027】
磁気記憶素子110においては、積層方向SD1に沿って積層体SB0に電流を流すことによりスピン偏極した電子を第2強磁性層20に作用させ、且つ、第3強磁性層30の磁化を歳差運動させることにより発生する回転磁界を第2強磁性層20に作用させることにより、第2強磁性層20の磁化の方向を電流の向きに応じた方向に決定可能とする。上記の電流は、積層体SB0の各層の膜面に対して略垂直な方向に流れる。
【0028】
磁気記憶素子110において、第2積層部SB2は、磁界発生部として機能する。第1積層部SB1は、磁気記憶部として機能する。以下、第2積層部SB2を、適宜、磁界発生部と言い、第1積層部SB1を、適宜、磁気記憶部と言う。
【0029】
第1強磁性層10は、例えば、第1の磁化固定層である。第2強磁性層20においては、磁化容易軸が膜面に対して略垂直方向である。第2強磁性層20は、磁気記憶層として機能する。第1非磁性層10nは、第1のスペーサ層として機能する。第1強磁性層10と、第1非磁性層10nと、第2強磁性層20と、を含む第1積層部SB1は、例えば、MTJ(Magnetic Tunnel Junction)の構造を有する。
【0030】
第3強磁性層30は、磁化回転層として機能する。第4強磁性層40は、磁化が膜面に対して略垂直方向に固定された第2の磁化固定層として機能する。第2非磁性層20nは、第2のスペーサ層として機能する。
【0031】
このような構成を有する磁気記憶素子110においては、微細化したときも所定の動作が実現できる。これにより、不揮発性記憶装置の高密度化が可能になる。
【0032】
例えば、磁気記憶部(第1積層部SB1)においては、所定の動作を確実に得るために、Ku・Vを一定の値にする設計が採用される。ここで、Kuは、第2強磁性層20(メモリ膜)の磁気異方性定数(magnetic anisotropy energy)であり、Vは、第2強磁性層20の体積である。不揮発性記憶装置を高密度化し、磁気記憶素子を微細化する(Vを小さくする)と、大きいKuを用いることになる。
【0033】
発明者は、第2強磁性層20における共鳴周波数frが、以下の第1式で表されることを導き出した。
【0034】
【数1】
ここで、γはジャイロ定数(約17.6×106Hz/Oe:ヘルツ/エルステッド)、Ku(erg/cm3:エルグ/立方センチメートル)は第2強磁性層20の磁気異方性、Ms(emu/cc:イーエムユー/シーシー、emu/cc=emu/cm3)は第2強磁性層20の磁化、Nzは第2強磁性層20の反磁界係数である。Nzは、無次元の定数である。
【0035】
第1式から、Kuが大きいと、共鳴周波数frが大きくなることが分かる。実施形態において、磁界発生部(第2積層部SB2)で発生させる高周波磁界の発振周波数fsは、磁気記憶部における共鳴周波数frに実質的に一致させる。従って、微細化のためには、磁界発生部で発生させる高周波磁界の発振周波数fsを高めることが必要であることが分かった。
【0036】
実施形態に係る磁気記憶素子は、このような新たに見出された課題を解決することができる。
【0037】
すなわち、磁界発生部で発生させる高周波磁界の発振周波数fsは、以下の第2式で表される。
【0038】
【数2】
ここで、γはジャイロ定数である。αはダンピング定数であり、無次元の定数である。hはプランク定数であり、約6.626×10−27erg・s:エルグ・秒)である。なお、6.626×10−27erg・s(エルグ・秒)は、6.626×10−34J・s(ジュール・秒)に相当する。eは、電気素量を表し、約1.60218×10−19(A・s:アンペア・秒)である。Ms(emu/cc:イーエムユー/シーシー)は、第3強磁性層30の磁化である。t(cm:センチメートル)は、第3強磁性層30の厚さである。J(A/cm2:アンペア/平方センチメートル)は、第3強磁性層30における電流密度を表す。g(θ)は、スピン偏極率に依存するスピントランスファーの効率を表すパラメータである。ここで、θ(rad:ラジアン)は、第4強磁性層40を経由することでスピン偏極した電子のスピンの向きと、第3強磁性層30の磁化と、がなす角である。なお、単位系として、「°:度」から「rad:ラジアン」への変換は「rad=(2π/360)×度」である。
【0039】
第2式から、例えば、用いる材料のMsを小さくすることで、発振周波数fsが上昇できることが分かる。しかしながら、この手法は、用いる材料を制限することになり、全体としての特性を高めることの妨げになる。
【0040】
本実施形態においては、電流密度Jを上昇させる手法を採用する。これにより、材料の制限は解除される。電流密度Jを上昇させるために、第3強磁性層30のサイズ(幅D30:Z軸方向に対して垂直な軸に沿った長さ)を小さくする。
【0041】
換言すれば、積層方向SD1を法線とする平面における第1積層部SB1の外縁(第1外縁SBP1)が、その平面における第3強磁性層30の外縁30pよりも外側の部分を有する構成により、第3強磁性層30のサイズが小さくなる。すなわち、第3強磁性層30の断面積S30が、第1積層部SB1の断面積S1よりも小さくなる。これにより、第3強磁性層30における電流密度Jが上昇し、発振周波数fsが上昇できる。これにより、微細化したときに、所定の動作が実現でき、不揮発性記憶装置の高密度化が可能になる。
磁気記憶素子110の特性の例に関しては、後述する。
【0042】
図1(c)に例示したように、この例では、Z軸に沿ってみたときの第1積層部SB1及び第2積層部SB2の形状は、円形(扁平円を含む)である。ただし、実施形態において、Z軸に沿ってみたときの第1積層部SB1及び第2積層部SB2の形状は、任意である。
【0043】
磁気記憶素子110においては、積層体SB0は、第3非磁性層30nをさらに含む。第3非磁性層30nは、第1積層部SB1と第2積層部SB2との間に設けられる。すなわち、第3非磁性層30nは、第2強磁性層20と第3強磁性層30との間に設けられる。第3非磁性層30nは、必要に応じて設けられ、場合によっては省略可能である。
【0044】
第1強磁性層10、第2強磁性層20及び第4強磁性層40には、例えば、垂直磁化膜が用いられる。第3強磁性層には、例えば、面内磁化膜が用いられる。
【0045】
図2(a)及び図2(b)は、磁化を例示する模式図である。
図2(a)は、垂直磁化膜における磁化を例示している。図2(b)は、面内磁化膜における磁化を例示している。
【0046】
図2(a)及び図2(b)に表したように、積層方向SD1に対して垂直な1つの軸を面内軸SD2とする。面内軸SD2は、X−Y平面内の軸である。磁化72は、膜面に対して垂直な方向の磁化斜影成分(積層方向SD1に対して平行な磁化成分72a)と、膜面に対して平行な方向の磁化斜影成分(面内軸SD2に対して平行な磁化成分72b)と、を有する。
【0047】
図2(a)に表したように、垂直磁化膜は、膜面に対して垂直な磁化成分72aが、膜面に対して平行な磁化成分72bよりも大きい磁化状態を有する。垂直磁化膜において、磁化の方向が膜面に対して略垂直であることが動作特性上望ましい。
【0048】
図2(b)に表したように、面内磁化膜は、膜面に対して平行な磁化成分72bが、膜面に対して垂直な磁化成分72aよりも大きい磁化状態を有する。面内磁化膜において、磁化の方向が膜面に対して略平行であることが動作特性上望ましい。
【0049】
説明の便宜上、第1積層部SB1から第2積層部SB2に向かう方向を「上」または「上向き」と言う。第2積層部SB2から第1積層部SB1に向かう方向を「下」または「下向き」と言う。
【0050】
既に説明したように、第1強磁性層10の磁化は、第1の方向に実質的に固定される。第4強磁性層40の磁化は、第2の方向に実質的に固定されている。
【0051】
図1(b)に例示したように、磁気記憶素子110においては、第1の方向は上向きであり、第2の方向も上向きである。ただし、後述するように、第1の方向及び第2の方向は種々の変形が可能である。
【0052】
磁気記憶素子110において、例えば、積層体SB0を挟む一対の電極(図示しない)により、積層体SB0に電子電流を流すことができる。電子電流は電子の流れである。上向きに電流が流れるときには、電子電流は下向きに流れる。
【0053】
第2強磁性層20は、データを記憶する役割をもつ。第2強磁性層20の磁化は、比較的容易に反転可能である。第3強磁性層30は、書き込み時に高周波磁界を発生させる役割をもつ。
【0054】
膜面に対して垂直な方向に電子電流を流すと、磁界発生部の第3強磁性層30における磁化が歳差運動する。これにより、回転磁界(高周波磁界)が発生する。高周波磁界の周波数は、例えば約1GHz〜60GHz程度である。高周波磁界は、第2強磁性層20の磁化に対して垂直方向の成分(第2強磁性層20の磁化困難軸の方向の成分)を有する。したがって、第3強磁性層30から発生した高周波磁界の少なくとも一部は、第2強磁性層20の磁化困難軸の方向に印加される。第3強磁性層30から発生した高周波磁界が、第2強磁性層20の磁化困難軸の方向に印加されると、第2強磁性層の磁化は非常に反転し易くなる。
【0055】
磁気記憶素子110においては、電子電流を積層体SB0に流すことによって、第2強磁性層20の磁化の方向を制御することができる。具体的には、電子電流の流れる向き(極性)を変えることで第2強磁性層20の磁化の向きを反転させることができる。情報を記憶させる場合において、例えば、第2強磁性層20の磁化の方向に応じて、「0」と「1」とがそれぞれ割り当てられる。
【0056】
磁気記憶素子110における動作の具体例として、まず「書き込み」動作について説明する。
【0057】
図3(a)〜図3(d)は、実施形態に係る磁気記憶素子の動作を例示する模式図である。
これらの図は、磁気記憶素子110における「書き込み」動作の際の第1積層部SB1の状態を例示している。これらの図では、第2積層部SB2及び第3非磁性層30nは省略されている。
【0058】
図3(a)は、第1強磁性層10から第2強磁性層20に向かって電子電流60を流し始めた状態を例示している。図3(b)は、第1強磁性層10から第2強磁性層20に向かって電子電流60を流し終えた状態(磁化が反転した状態)を例示している。図3(c)は、第2強磁性層20から第1強磁性層10に向かって電子電流60を流し始めた状態を例示している。図3(d)は、第2強磁性層20から第1強磁性層10に向かって電子電流60を流し終えた状態(磁化が反転した状態)を例示している。図3(c)及び図3(d)は、図3(a)及び図3(b)に示した場合に対して、電子電流60の向きを反転させた場合に相当する。
【0059】
書き込み動作においては、第1強磁性層10の膜面及び第2強磁性層20の膜面を横切るように電子電流60を流して、第2強磁性層20に対して書き込み動作が実施される。ここでは、第1非磁性層10nを介した磁気抵抗効果が、ノーマルタイプである場合について説明する。
【0060】
「ノーマルタイプ」の磁気抵抗効果においては、非磁性層の両側の磁性層の磁化どうしが互いに平行である時の電気抵抗は、反平行である時の電気抵抗よりも低い。ノーマルタイプの場合、第1非磁性層10nを介した第1強磁性層10と第2強磁性層20との間の電気抵抗は、第1強磁性層10の磁化が第2強磁性層20の磁化に対して平行である時には、反平行である時よりも低い。
【0061】
図3(a)に表したように、膜面に対して略垂直方向の磁化12aを有する第1強磁性層10を通過した電子は、第1強磁性層10の磁化と同じ方向のスピンをもつようになる。この電子が、第2強磁性層20へ流れると、このスピンのもつ角運動量が第2強磁性層20へ伝達され、第2強磁性層20の磁化32に作用する。すなわち、いわゆるスピントランスファトルクが働く。
【0062】
これにより、図3(b)に表したように、第2強磁性層20の磁化32は、第1強磁性層10の磁化12aと同じ向きになる。この向きは、図3(b)において上向きであり、例えば積層方向SD1に対して平行な1つの方向である。この向き(図3(b)において上向き)の磁化32を有する第2強磁性層20の状態に、例えば「0」を割り当てる。
【0063】
図3(c)に表したように、第1非磁性層10nを通過した電子のうちで、第1強磁性層10の磁化12aと同じ向き(図3(c)において上向き)のスピンをもった電子は、第1強磁性層10を通過する。一方、第1強磁性層10の磁化12aに対して逆向き(図3(c)において下向き)のスピンをもった電子は、第1強磁性層10と第1非磁性層10nとの界面において反射される。この反射された電子のスピンの角運動量が第2強磁性層20へ伝達され、第2強磁性層20の磁化32に作用する。
【0064】
これにより、図3(d)に表したように、第2強磁性層20の磁化32は、第1強磁性層10の磁化12aに対して逆向き(図3(d)において下向き)になる。すなわち、スピントランスファトルクが働く。この向き(図3(d)おいて下向き)の磁化32を有する第2強磁性層20の状態に、例えば「1」を割り当てる。
【0065】
このような作用に基づいて、第2強磁性層20の異なる状態に、「0」または「1」が適宜割り当てられる。これにより、磁気記憶素子110における「書き込み」が実施される。
【0066】
一方、磁気抵抗効果が「リバースタイプ」の場合は、第1非磁性層10nを介した第1強磁性層10と第2強磁性層20との間の電気抵抗は、第1強磁性層10の磁化が第2強磁性層20の磁化に対して平行である時には、反平行である時よりも高い。リバースタイプにおける「書き込み」動作は、ノーマルタイプの場合と同様である。
【0067】
次に、「読み出し」動作について説明する。
磁気記憶素子110における第2強磁性層20の磁化の方向の検出は、例えば、磁気抵抗効果を利用して実施される。磁気抵抗効果においては、各層の磁化の相対的な向きにより電気抵抗が変わる。磁気抵抗効果を利用する場合、第1強磁性層10と第2強磁性層20との間にセンス電流を流し、磁気抵抗が測定される。センス電流の電流値は、記憶時に流す電子電流60に対応する電流値よりも小さい。
【0068】
図4(a)及び図4(b)は、実施形態に係る磁気記憶素子の動作を例示する模式図である。
これらの図は、磁気記憶素子110における「読み出し」動作の際の第1積層部SB1の状態を例示している。これらの図では、第2積層部SB2及び第3非磁性層30nは省略されている。
【0069】
図4(a)は、第1強磁性層10の磁化の方向が、第2強磁性層20の磁化の方向と同じ場合を例示している。図4(b)は、第1強磁性層10の磁化の方向が、第2強磁性層20の磁化の方と反平行(逆向き)である場合を例示している。
【0070】
図4(a)及び図4(b)に表したように、第1積層部SB1にセンス電流61を流し、電気抵抗を検出する。
ノーマルタイプの磁気抵抗効果においては、図4(a)の状態の抵抗は、図4(b)の状態の抵抗よりも低い。リバースタイプの磁気抵抗効果においては、図4(a)の状態の抵抗は、図4(b)の状態の抵抗よりも高い。
【0071】
これらの抵抗が互いに異なる状態に、それぞれ「0」と「1」とを対応づけることにより、2値データの記憶の読み出しが可能となる。なお、センス電流61の向きは、図4(a)及び図4(b)に例示した方向に対して逆向きでも良い。
【0072】
第1強磁性層10及び第2強磁性層20には、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びクロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む金属材料を用いることが好ましい。さらに、上記の群から選択された少なくともいずれかと、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)及びロジウム(Rh)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素と、の組み合わせによる合金を用いることができる。
【0073】
第1強磁性層10及び第2強磁性層20において、含まれる磁性材料の組成や熱処理により特性を調整することができる。また、第1強磁性層10及び第2強磁性層20には、TbFeCo及びGdFeCoなどの希土類−遷移金属のアモルファス合金を用いることができる。第1強磁性層10及び第2強磁性層20には、Co/Pt、Co/Pd及びCo/Niなどの積層構造を用いることができる。Co/Ru、Fe/Au、Ni/Cu等は、下地層との組み合わせで垂直磁化膜となる。膜の結晶配向方向を制御することで、Co/Ru、Fe/Au、Ni/Cu等を、第1強磁性層10及び第2強磁性層20に用いることができる。第1強磁性層10及び第2強磁性層20には、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、窒素(N)、リン(P)、砒素(As)、ボロン(B)、及び、シリコン(Si)のような添加物が含まれていても良い。
【0074】
第1非磁性層10nには、非磁性トンネルバリア層として機能する絶縁材料を用いることができる。具体的には、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)及び鉄(Fe)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む、酸化物、窒化物又は弗化物を用いることができる。
【0075】
第1非磁性層10nには、例えば、Al2O3、SiO2、MgO、AlN、Ta−O、Al−Zr−O、Bi2O3、MgF2、CaF2、SrTiO3、AlLaO3、Al−N−O、Si−N−O等を用いることができる。第1非磁性層10nには、例えば、非磁性半導体(ZnOx、InMn、GaN、GaAs、TiOx、Zn、Te、または、それらに遷移金属がドープされたもの)などを用いることができる。
【0076】
第1非磁性層10nの厚さは、約0.2ナノメートル(nm)以上2.0nm程度の範囲の値とすることが望ましい。これにより、例えば、絶縁膜の均一性を確保しつつ、抵抗が過度に高くなることが抑制される。
【0077】
第2非磁性層20nには、例えば、非磁性トンネルバリア層及び非磁性金属層のうちのいずれかを用いることができる。
【0078】
非磁性トンネルバリア層には、例えば、絶縁材料が用いられる。具体的には、非磁性トンネルバリア層には、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)及び鉄(Fe)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む、酸化物、窒化物又は弗化物を用いることができる。非磁性トンネルバリア層としては、例えば、Al2O3、SiO2、MgO、AlN、Ta−O、Al−Zr−O、Bi2O3、MgF2、CaF2、SrTiO3、AlLaO3、Al−N−O、及び、Si−N−Oなどを用いることができる。
【0079】
非磁性トンネルバリア層として、非磁性半導体(ZnOx、InMn、GaN、GaAs、TiOx、Zn、Te、または、それらに遷移金属がドープされたもの)などを用いることができる。
【0080】
第2非磁性層20nとして、非磁性トンネルバリア層が用いられる場合、第2非磁性層20nの厚さは、約0.2nm以上2.0nm程度の範囲の値とすることが望ましい。
【0081】
第2非磁性層20nに用いられる非磁性金属層には、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)及びビスマス(Bi)よりなる群から選択されたいずれかの非磁性金属、または、上記の群から選択された少なくともいずれか2つ以上の元素を含む合金を用いることができる。第2非磁性層20nの厚さは、1.5nm以上、20nm以下とすることが望ましい。これにより、磁性層間で層間結合せず、かつ、伝導電子のスピン偏極状態が非磁性金属層を通過する際に失われることが抑制される。
【0082】
第3強磁性層30には、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びクロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む磁性金属を用いることができる。さらに、上記の群から選択された少なくともいずれかと、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)及びロジウム(Rh)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素と、の組み合わせによる合金を用いることができる。
【0083】
第3強磁性層3において、含まれる磁性材料の組成や熱処理により特性を調整することができる。また、第3強磁性層30には、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、窒素(N)、リン(P),砒素(As)、ボロン(B)、及び、シリコン(Si)のような添加物が含まれていても良い。第3強磁性層30には、Co/Pt、Co/Pd及びCo/Niなどの積層構造を用いることができる。膜の結晶配向方向を制御することで、Co/Ru、Fe/Au、Ni/Cu等を、第3強磁性層30に用いることができる。
【0084】
第4強磁性層40には、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びクロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む金属材料を用いることが好ましい。さらに、これらと、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)及びロジウム(Rh)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素と、の組み合わせによる合金を用いることができる。
【0085】
第4強磁性層40において、含まれる磁性材料の組成や熱処理により特性を調整することができる。第4強磁性層40には、TbFeCo、GdFeCoなどの希土類−遷移金属のアモルファス合金を用いることができる。第4強磁性層40には、Co/Pt、Co/Pd及びCo/Niなどの積層構造を用いることができる。Co/Ru、Fe/Au、Ni/Cu等は、下地層との組み合わせで垂直磁化膜となる。膜の結晶配向方向を制御することで、Co/Ru、Fe/Au及びNi/Cu等を第4強磁性層40に用いることができる。第4強磁性層40には、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、窒素(N)、リン(P),砒素(As)、ボロン(B)、及び、シリコン(Si)のような添加物が含まれていても良い。
【0086】
第3非磁性層30nには、非磁性金属層が用いられる。
第3非磁性層30nに用いられる非磁性金属層には、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、ビスマス(Bi)、イリジウム(Ir)、チタン(Ti)及びオスミウム(Os)よりなる群から選択された少なくともいずれかの非磁性金属、または、上記の群から選択された2つ以上の元素を含む合金を用いることができる。
【0087】
第3非磁性層30nには、銅(Cu)などのスピン拡散長が長い材料、または、ルテニウム(Ru)などのスピン拡散長が短い材料を用いることができる。スピン偏極した電子が挿入される効果を消去したい場合には、ルテニウム(Ru)などのスピン拡散長が短い材料を、第3非磁性層30nに用いることが望ましい。
【0088】
既に説明したように、磁気記憶素子110において、積層体SB0に電子電流を流すための一対の電極(導電層)が設けられる。
電極には、導電性の磁性材料または導電性の非磁性材料が用いられる。導電性の磁性材料の例としては、第3強磁性層30及び第4強磁性層40に用いられる材料と同様の材料を挙げることができる。
【0089】
導電性の非磁性材料の具体例としては、金(Au)、銅(Cu)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、ビスマス(Bi)、チタン(Ti)及びアルミニウム(Al)よりなる群から選択されたいずれかの金属、または、上記の群から選択された2つ以上を含む合金を用いることができる。
【0090】
さらに、電極に用いられる導電性の非磁性材料として、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤ及びグラフェン等の材料が挙げられる。
【0091】
電極に付与される導電性の保護膜には、タンタル(Ta)、ルテニウム(Ru)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、チタン(Ti)及びアルミニウム(Al)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む合金、または、グラフェンなどの材料を用いることができる。エレクトロマグレーション耐性及び低抵抗であることを考慮すると、保護膜には、銅(Cu)及びアルミニウム(Al)よりなる群から選択されたいずれかの元素、または、これらを含む合金を用いることが望ましい。
【0092】
既に説明したように、Z軸に沿ってみたときの第1積層部SB1及び第2積層部SB2の形状は任意である。例えば、Z軸に沿ってみたときの第1積層部SB1及び第2積層部SB2の形状(膜面に対して平行な面で切断した形状)は、円形、楕円形、扁平円、並びに、四角形及六角形などの3つ以上の角を有する多角形の形状を有することができる。
【0093】
Z軸に対して平行な平面で切断したときの第1積層部SB1及び第2積層部SB2の形状は任意である。Z軸に対して平行な平面で切断したときの第1積層部SB1及び第2積層部SB2の形状(膜面に対して垂直な面で切断した形状)は、例えば、テーパ形状または逆テーパ形状を有することができる。
【0094】
以下、実施形態に係る磁気記憶素子の構成の種々の例について説明する。以下において、説明されない構成、及び、各要素の材料などは、磁気記憶素子110に関して説明した構造及び各要素の材料と同様である。
【0095】
図5(a)〜図5(e)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子の構成を例示する模式的断面図である。
図5(a)は、既に説明した磁気記憶素子110に対応する。図5(a)〜図5(e)に表したように本実施形態に係る磁気記憶素子110〜114においては、第2強磁性層20、第1非磁性層10n、第1強磁性層10、第3非磁性層30n、第4強磁性層40、第2非磁性層20n及び第3強磁性層30が、この順に積層される。この積層順を、便宜的に第1積層構成と呼ぶことにする。
【0096】
第1積層構成においては、第1強磁性層10は、第2強磁性層20と第4強磁性層40との間に配置され、第4強磁性層40は、第1強磁性層10と第3強磁性層30との間に配置される。第3非磁性層30nは、第1強磁性層10と第4強磁性層40との間に配置される。
【0097】
これらの磁気記憶素子においては、第1の方向に固定された磁化(第1強磁性層10の磁化)の垂直斜影成分の向きは、第2の方向に固定された磁化(第4強磁性層10の磁化)の垂直斜影成分の向きと同じ向きである。この例では、第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは上向きであり、第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは、上向きである。ただし、これらの向きが下向きでも良い。
【0098】
図5(a)に表したように、磁気記憶素子110においては、第3強磁性層30の断面積S30は、第1積層部SB1の断面積S1よりも小さい。例えば、第1積層部SB1の第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30pよりも外側の部分を有している。第4強磁性層40の外縁の位置及び第2非磁性層20nの外縁の位置は、第1外縁SBP1の位置と一致する。
【0099】
図5(b)に表したように、磁気記憶素子111においては、第1積層部SB1の第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30p及び第2非磁性層20nの外縁よりも外側の部分を有している。第4強磁性層40の外縁の位置は、第1外縁SBP1の位置と一致する。
【0100】
図5(c)に表したように、磁気記憶素子112においては、第1積層部SB1の第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30p、第2非磁性層20nの外縁及び第4強磁性層40の外縁よりも外側の部分を有している。磁気記憶素子110、111及び112においては、第3非磁性層30nの外縁の位置は、第1外縁SBP1の位置と一致している。
【0101】
図5(d)に表したように、磁気記憶素子113においては、第1積層部SB1の第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30p、第2非磁性層20nの外縁、第4強磁性層40の外縁及び第3非磁性層30nの外縁よりも外側の部分を有している。
【0102】
図5(e)に表したように、磁気記憶素子114においては、Z軸に対して垂直な平面内において、第3強磁性層30、第2非磁性層20n及び第4強磁性層40のそれぞれの周囲に、第3強磁性層周囲部30j、第2非磁性層周囲部20nj及び第4強磁性層周囲部40jが設けられている。例えば、第3強磁性層30及び第3強磁性層周囲部30jは、第3強磁性層用膜から形成され、第3強磁性層周囲部30jは、第3強磁性層用膜を磁気的に不活性にすることで得られる。また、第3強磁性層周囲部30jは、第3強磁性層用膜を電気的に実質的に絶縁性にすることで得られる。第3強磁性層周囲部30jにおけるBs(飽和磁束密度)は、第3強磁性層30におけるBsの10%以下である。第3強磁性層周囲部30jにおける導電率は、第3強磁性層30における導電率の10%以下である。
【0103】
磁気記憶素子114においては、第3強磁性層30の断面積S30が第1積層部SB1の断面積S1よりも小さい構成が実現されている。例えば、第1積層部SB1の第1外縁SBP1は、実質的に、第3強磁性層30の外縁30p、第2非磁性層20nの外縁及び第4強磁性層40の外縁よりも外側の部分を有する。
また、磁気記憶素子110、111及び113において、第3強磁性層周囲部30j、第2非磁性層周囲部20nj及び第4強磁性層周囲部40jの少なくともいずれかが設けられても良い。
【0104】
図6(a)〜図6(e)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子の構成を例示する模式的断面図である。
図6(a)〜図6(e)に表したように、磁気記憶素子110a〜114aにおける各層の積層順は、磁気記憶素子110〜114とそれぞれ同じである。磁気記憶素子110a〜114aにおいては、第1の方向に固定された磁化(第1強磁性層10の磁化)の垂直斜影成分の向きは、第2の方向に固定された磁化(第4強磁性層10の磁化)の垂直斜影成分の向きに対して逆向きである。
【0105】
磁気記憶素子110a〜114の構成において、第3強磁性層30において発生する回転磁界の向きは、第2強磁性層20の磁化が歳差運動する向きと、一致する。第3強磁性層30において発生した回転磁界は、第2強磁性層20に、より効果的に作用する。第2強磁性層20の磁化反転を、より効率的にアシストすることができる。これにより、第2強磁性層20への書き込みに必要な電流を、より低減させることができる。
【0106】
磁気記憶素子110a〜114aにおける各層の幅の相対的な関係は、磁気記憶素子110〜114におけるそれと同様なので説明を省略する。また、磁気記憶素子114aに例示したように、この場合も、第3強磁性層周囲部30j、第2非磁性層周囲部20nj及び第4強磁性層周囲部40jの少なくともいずれかが設けられても良い。
【0107】
図7(a)及び図7(b)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子の構成を例示する模式的断面図である。
図7(a)及び図7(b)に表したように磁気記憶素子110r及び110sにおいては、第1強磁性層10の磁化の向き及び第4強磁性層40の磁化の向きが膜面に対して斜めである。
【0108】
この場合も、第1の方向に固定された磁化(第1強磁性層10の磁化)の垂直斜影成分の向きは、第2の方向に固定された磁化(第4強磁性層40の磁化)の垂直斜影成分の向きに対して逆向きである。
【0109】
第1の方向に固定された磁化の垂直斜影成分の向きが、第2の方向に固定された磁化の垂直斜影成分の向きに対して逆向きである場合には、第2強磁性層20の位置において膜面に対して垂直な方向にかかる漏洩磁界を低減させることができる。すなわち、第2強磁性層20の位置において膜面に対して垂直な方向にかかる漏洩磁界を打ち消すことができる。一方、第3強磁性層30の位置において膜面に対して垂直な方向にかかる漏洩磁界を残留させ、作用させることができる。
【0110】
これにより、第3強磁性層30において発生する回転磁界の向きは、第2強磁性層20の磁化が歳差運動する向きと一致する。第3強磁性層30において発生した回転磁界により、第2強磁性層20の磁化反転を効率的にアシストすることができる。その結果、第2強磁性層20への情報の記憶(書き込み)に必要な電流を低減させることができる。
【0111】
第1強磁性層10の磁化の向き及び第4強磁性層40の磁化の向きが膜面に対して斜めである構成は、磁気記憶素子110〜114、110a〜114a及びそれらの変形、並びに、後述する、本実施形態に係る磁気記憶素子のいずれにも適用できる。
【0112】
磁気記憶素子110a〜114a、110r及び110sにおいて、第1強磁性層10と第4強磁性層40とは、第3非磁性層30nを介して反強磁性結合していても良い。このように、非磁性層を介して互いの磁化の方向が反強磁性結合し反平行となる構造は、シンセティックアンチフェロ(SAF:Synthetic Anti-Ferromagnet)構造と呼ばれる。この例では、「第1の磁性層(例えば第1強磁性層10)/非磁性層(例えば第3非磁性層30n)/第2の磁性層(例えば第4強磁性層40)」の積層構造が、SAF構造に対応する。
【0113】
SAF構造を用いることにより、互いの磁化固定力が増強され、外部磁界に対する耐性、及び、熱的な安定性を向上させることができる。この構造では、磁気記憶層(例えば第2強磁性層20)の位置において膜面に対して垂直な方向にかかる漏洩磁界をほぼゼロにすることができる。
【0114】
SAF構造における非磁性層(中間層)には、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)やオスミウム(Os)などの金属材料が用いられる。非磁性層の厚さは、3nm以下に設定される。これにより、非磁性層を介して十分強い反強磁性結合が得られる。
【0115】
すなわち、第3非磁性層30nは、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、及び、イリジウム(Ir)よりなる群から選択されたいずれかの金属、または、前記群から選択された少なくとも2つ以上を含む合金を含み、第3非磁性層30nの厚さは、3nm以下であることが望ましい。
【0116】
上記では、第1積層部SB1の側面、及び、第2積層部SB2の側面は、Z軸に対して平行である例を示したが、実施形態はこれに限らない。
図8(a)〜図8(h)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子の構成を例示する模式的断面図である。
図8(a)〜図8(d)に表したように、磁気記憶素子110b〜113bにおいては、第2積層部SB2に含まれる層の側面が、Z軸に対して傾斜している。この例では、第1積層部SB1の側面は、Z軸に対して実質的に垂直である。
【0117】
磁気記憶素子110bにおいては、第3強磁性層30の側面が、Z軸に対して傾斜している。磁気記憶素子111bにおいては、第3強磁性層30の側面及び第2非磁性層20nの側面が、Z軸に対して傾斜している。磁気記憶素子112bにおいては、第3強磁性層30の側面、第2非磁性層20nの側面及び第4強磁性層40の側面が、Z軸に対して傾斜している。磁気記憶素子113bにおいては、第3強磁性層30の側面、第2非磁性層20nの側面、第4強磁性層40の側面及び第3非磁性層30nの側面が、Z軸に対して傾斜している。
【0118】
これらの例では、第2積層部SB2のうちの、第1積層部SB1に近い第1部分の幅(Z軸に対して垂直な軸に沿った長さ)が、第2積層部SB2のうちの、第1部分よりも第1積層部SB1から遠い第2部分の幅(Z軸に対して垂直な軸に沿った長さ)よりも大きくなるように、上記の側面が傾斜している。ただし、実施形態は、これに限らず、第1部分の幅が第2部分の幅よりも小さくなるように、上記の側面が傾斜しても良い。
【0119】
図8(e)〜図8(h)に表したように、磁気記憶素子110c〜113cにおいては、第1積層部SB1の側面は、Z軸に対して傾斜している。これを除き、磁気記憶素子110c〜113cのそれぞれの構成は、磁気記憶素子110b〜113bのそれぞれの構成と同様である。
【0120】
これらの例では、第1積層部SB1のうちの、第2積層部SB2に近い第3部分の幅(Z軸に対して垂直な軸に沿った長さ)が、第1積層部SB1のうちの、第3部分よりも第2積層部SB2から遠い第4部分の幅(Z軸に対して垂直な軸に沿った長さ)よりも小さくなるように、上記の側面が傾斜している。ただし、実施形態は、これに限らず、第3部分の幅が第4部分の幅よりも大きくなるように、上記の側面が傾斜しても良い。
【0121】
このように、第1積層部SB1の側面がZ軸に対して傾斜している場合(テーパ形状の場合)は、第1積層部SB1の幅(例えば第1径D1)は、第1強磁性層10の幅(径)と第2強磁性層20の幅(径)との平均値とする。同様に、第2積層部SB2の側面がZ軸に対して傾斜している場合は、第2積層部SB2の幅は、第3強磁性層30の幅D30(径)と第4強磁性層40の幅(径)との平均値とする。第3強磁性層30の側面がZ軸に対して傾斜している場合は、第3強磁性層30の幅D30は、第3強磁性層30の、Z軸に対して垂直な軸に沿った長さを、Z軸に沿って平均した値とする。
【0122】
図9(a)〜図9(h)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子の構成を例示する模式的断面図である。
図9(a)〜図9(h)に表したように本実施形態に係る磁気記憶素子120〜127においては、第1強磁性層10、第1非磁性層10n、第2強磁性層20、第3非磁性層30n、第3強磁性層30、第2非磁性層20n及び第4強磁性層40が、この順に積層される。この積層順を、便宜的に第2積層構成と呼ぶことにする。
【0123】
第2積層構成においては、第2強磁性層20は、第1強磁性層10と第3強磁性層30との間に配置され、第3強磁性層30は、第2強磁性層20と第4強磁性層40との間に配置される。第3非磁性層30nは、第2強磁性層20と第3強磁性層30との間に配置される。
【0124】
図9(a)及び図9(h)に表したように、磁気記憶素子120及び127においては、第3強磁性層30の断面積S30は、第1積層部SB1の断面積S1よりも小さい。例えば、第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30pよりも外側の部分を有している。第4強磁性層40の外縁の位置及び第2非磁性層20nの外縁の位置は、第1外縁SBP1の位置と一致する。磁気記憶素子127における第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向き及び第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは、磁気記憶素子120におけるそれらの向きに対してそれぞれ逆向きである。
【0125】
図9(b)に表したように、磁気記憶素子121においては、第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30p及び第3非磁性層30nの外縁よりも外側の部分を有している。第2非磁性層20nの外縁の位置及び第4強磁性層40の外縁の位置は、第1外縁SBP1の位置と一致する。
【0126】
図9(c)に表したように、磁気記憶素子122においては、第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30p及び第2非磁性層20nの外縁よりも外側の部分を有している。
【0127】
図9(d)に表したように、磁気記憶素子123においては、第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30p、第2非磁性層20nの外縁及び第3非磁性層30nの外縁よりも外側の部分を有している。第4強磁性層40の外縁の位置は、第1外縁SBP1の位置と一致する。
【0128】
図9(e)に表したように、磁気記憶素子124においては、第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30p、第2非磁性層20nの外縁及び第4強磁性層40の外縁よりも外側の部分を有している。
【0129】
図9(f)に表したように、磁気記憶素子125においては、第1外縁SBP1は、第3強磁性層30の外縁30p、第2非磁性層20nの外縁、第4強磁性層40の外縁及び第3非磁性層30nの外縁よりも外側の部分を有している。
【0130】
図9(g)に表したように、磁気記憶素子126においては、第3強磁性層周囲部30j、第2非磁性層周囲部20nj及び第4強磁性層周囲部40jが設けられている。
磁気記憶素子120〜125及び127において、第3強磁性層周囲部30j、第2非磁性層周囲部20nj及び第4強磁性層周囲部40jの少なくともいずれかが設けられても良い。
【0131】
図10(a)〜図10(f)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子の構成を例示する模式的断面図である。
図10(a)〜図10(f)に表したように本実施形態に係る磁気記憶素子130〜135においては、第1強磁性層10、第1非磁性層10n、第2強磁性層20、第3非磁性層30n、第4強磁性層40、第2非磁性層20n及び第3強磁性層30が、この順に積層される。この積層順を、便宜的に第3積層構成と呼ぶことにする。
【0132】
第3積層構成においては、第2強磁性層20は、第1強磁性層10と第4強磁性層40との間に配置され、第4強磁性層40は、第2強磁性層20と第3強磁性層30との間に配置される。第3非磁性層30nは、第2強磁性層20と第4強磁性層40との間に配置される。
【0133】
図10(a)〜図10(e)に表したように、磁気記憶素子130〜134における各層の幅の関係は、磁気記憶素子110〜114(及び磁気記憶素子110a〜114a)における各層の幅の関係とそれぞれ同じである。図10(e)に表したように、磁気記憶素子144においては、第3強磁性層周囲部30j、第2非磁性層周囲部20nj及び第4強磁性層周囲部40jが設けられている。磁気記憶素子110〜133及び135においても、第3強磁性層周囲部30j、第2非磁性層周囲部20nj及び第4強磁性層周囲部40jの少なくともいずれかが設けられても良い。
【0134】
図10(f)に表したように、磁気記憶素子135における第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向き及び第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは、磁気記憶素子130におけるそれらの向きに対してそれぞれ逆向きである。
【0135】
図11(a)〜図11(h)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子の構成を例示する模式的断面図である。
図11(a)〜図11(h)に表したように本実施形態に係る磁気記憶素子140〜147においては、第2強磁性層20、第1非磁性層10n、第1強磁性層10、第3非磁性層30n、第3強磁性層30、第2非磁性層20n及び第4強磁性層30が、この順に積層される。この積層順を、便宜的に第4積層構成と呼ぶことにする。
【0136】
第4積層構成においては、第1強磁性層10は、第2強磁性層20と第3強磁性層30との間に配置され、第3強磁性層30は、第1強磁性層10と第4強磁性層40との間に配置される。第3非磁性層30nは、第1強磁性層10と第3強磁性層30との間に配置される。
【0137】
図11(a)〜図11(g)に表したように、磁気記憶素子140〜146における各層の幅の関係は、磁気記憶素子120〜126における各層の幅の関係とそれぞれ同じである。
【0138】
図11(g)に表したように、磁気記憶素子146においては、第3強磁性層周囲部30j、第2非磁性層周囲部20nj及び第4強磁性層周囲部40jが設けられている。磁気記憶素子141〜145及び147においても、第3強磁性層周囲部30j、第2非磁性層周囲部20nj及び第4強磁性層周囲部40jの少なくともいずれかが設けられても良い。
【0139】
図11(h)に表したように、磁気記憶素子147における第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向き及び第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは、磁気記憶素子140におけるそれらの向きに対してそれぞれ逆向きである。
【0140】
上記の磁気記憶素子120〜126(第2積層構成の例)、磁気記憶素子130〜143(第3積層構成の例)及び磁気記憶素子140〜146(第4積層構成の例)においては、第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは、第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向き対して逆向きである。すなわち、これらの例では、第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは上向きであり、第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは、下向きである。
【0141】
また、磁気記憶素子127(第2積層構成の例)、磁気記憶素子135(第3積層構成の例)及び磁気記憶素子147(第4積層構成の例)においては、第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは下向きであり、第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは、上向きである。第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きが下向きで、第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きが上向きである構成において、磁気記憶素子121〜126、磁気記憶素子131〜134及び磁気記憶素子140〜146における各層の幅の相対的な関係を適用しても良い。
【0142】
第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きが第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向き対して逆向きであるこれらの構成において、第3強磁性層30において発生する回転磁界の向きは、第2強磁性層20の磁化が歳差運動する向きと、一致することができる。第3強磁性層30において発生した回転磁界は、第2強磁性層20に、より効果的に作用し、第2強磁性層20の磁化反転をより効率的にアシストし、これにより、書き込みに必要な電流を、より低減させることができる。
【0143】
また、第2積層構成、第3積層構成及び第4積層構成において、第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きが、第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きと同じでも良い。例えば、これらの向きが上向き、または、下向きでも良い。
【0144】
また、上記の第2積層構成、第3積層構成及び第4積層構成において、第1強磁性層10の磁化及び第4強磁性層40の磁化の向きは、膜面に対して斜めでも良い。
【0145】
第2積層構成(例えば、磁気記憶素子120〜127及びそれらの変形)における第2強磁性層20と第3強磁性層30との間の距離は、第1積層構成(例えば、磁気記憶素子110〜114、及び、110a〜114a及びそれらの変形)におけるその距離よりも短い。これにより、第3強磁性層30において発生した回転磁界は、第2強磁性層20に、より大きく作用し、第2強磁性層20の磁化反転をより効率的にアシストすることができる。これにより、第2強磁性層への書き込みに必要な電流を、より低減させることができる。
【0146】
第2積層構成において、第3非磁性層30nにおいてスピン情報が保たれると、第3強磁性層30は、第2強磁性層20からのスピントランスファトルクの影響を受ける。このため、第3強磁性層30の磁化回転の制御性が低下する場合がある。
【0147】
このとき、第3非磁性層30nとして、例えばルテニウム(Ru)などのようなスピン拡散長の短い膜(スピン消失の機能を持つ材料)、または、スピン拡散長の短い構造を有する層を用いることが望ましい。これにより、第3強磁性層30の磁化回転の制御性の低下を抑制できる。
【0148】
すなわち、第3強磁性層30の磁化が歳差運動をするためのスピントランスファトルクの大きさは、第4強磁性層40でのスピン偏極で決まる。この構成においては、他の電子のスピンの影響(スピントランスファトルク)を受けることなく、第3強磁性層30の磁化を独立に制御することが可能となる。
【0149】
第3非磁性層30nのための、このようなスピン消失効果が得られる材料としては、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)及びバナジウム(V)よりなる群から選択された金属、または、これらの群から選択された2つ以上を含む合金を挙げることができる。
【0150】
第3非磁性層30nの厚さは、第2強磁性層20と第3強磁性層30とが層間磁気結合しない値に設定されることが望ましい。具体的には、第3非磁性層30nの厚さは、1.4nm以上に設定することが望ましい。
【0151】
第3非磁性層30nの厚さが1.4nm以上であると、第2強磁性層20と第3強磁性層30とが層間結合せず、かつ、第3非磁性層30nにおいて、伝導電子が第3非磁性層30nの内部及び界面を通過する際にスピン偏極度を消失させることができる。さらに、第2強磁性層20の磁化の向きにより第3強磁性層30の歳差運動が変化することを、第3非磁性層30nにより防ぐことができる。
【0152】
一方、第3非磁性層30nの厚さが20nmを超えると、多層膜のピラー形成が困難となる。さらに、第3強磁性層30から発生する回転磁界の強度が、第2強磁性層20の位置で減衰する。そのため、第3非磁性層30nの厚さは、20nm以下に設定されることが望ましい。
【0153】
第3非磁性層30nとして、前述した単層膜の他に、積層膜を用いることができる。この積層膜は、例えば、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)及びバナジウム(V)よりなる群から選択された金属、または、その群から選択された2つ以上を含む合金を含む層と、その層の少なくとも片側に積層された銅(Cu)層と、の積層構成を有することができる。
【0154】
さらに、第3非磁性層30nに用いられる積層膜は、例えば、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)及びバナジウム(V)よりなる群から選択された金属、または、その群から選択された2つ以上を含む合金を含む第1層と、第1層の少なくとも片側に積層され、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、タングステン(W)及びルテニウム(Ru)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む酸化物を含む第2層と、を含む積層構成を有することができる。
【0155】
第4積層構成(例えば、磁気記憶素子140〜147及びそれらの変形)においても、第2強磁性層20と第3強磁性層30との間の距離は、第1積層構成におけるその距離よりも短い。距離が短い分、磁界が大きくなるためアシスト効果が高まり、第2強磁性層20への書き込みに必要な電流を、より低減させることができる。
【0156】
第4積層構成においては、第3強磁性層30へ入射される電子のスピン偏極の向きが、第4強磁性層40でのスピン偏極の向き、及び、第1強磁性層10でのスピン偏極の向きと同じである。これにより、例えば、第3強磁性層30において発生する回転磁界の発生効率が向上する。
【0157】
第3非磁性層30n及び第2非磁性層20nには、金属導体、絶縁体及び半導体のいずれを用いても良い。第3非磁性層30nと第2非磁性層20nとにおいて、異なる材料に基づく層を用いても良い。
【0158】
第3非磁性層30nとして絶縁体または半導体を用いた場合には、抵抗値が上昇する。このため、この場合には、第2非磁性層20nとして金属導体を用いることが好ましい。金属導体として、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)及び金(Au)などを用いることが好ましい。
【0159】
第3積層構成(磁気記憶素子130〜135及びそれらの変形)においては、第2強磁性層20と第3強磁性層30との間の距離は、第1積層構成におけるその距離よりも短い。距離が短い分、磁界が大きくなるためアシスト効果が高まり、第2強磁性層20への書き込みに必要な電流を、より低減させることができる。
【0160】
第3積層構成においては、第2強磁性層20へ入射される電子のスピン偏極の向きが、第4強磁性層40でのスピン偏極の向き、及び、第1強磁性層10でのスピン偏極の向きと同じである。これにより、第2強磁性層20の磁化反転の効率が高められる。
【0161】
第3積層構成において、第3非磁性層30n及び第2非磁性層20nとして、第4積層構成に関して説明した材料と同様の材料を用いることができる。
【0162】
上記の第2〜第4積層構成において、図8(a)〜図8(h)に関して説明したように、各層の側面は、Z軸に対して傾斜していても良い。
【0163】
本実施形態に係る磁気記憶素子において、磁気シールドをさらに設けることができる。 以下、磁気シールドの構成の例について説明する。
【0164】
図12(c)〜図12(d)は、第1の実施形態に係る別の磁気記憶素子の構成を例示する模式的断面図である。
図12(a)及び図12(b)に表したように、実施形態に係る磁気記憶素子122k及び122lにおいては、第2積層部SB2の側面に対向する磁気シールド51が設けられる。磁気記憶素子122lにおいては、磁気シールド51は、さらに、第1積層部SB1の側面、及び、第3非磁性層30nの側面に対向している。
【0165】
すなわち、磁気記憶素子122k及び122lは、積層体SB0の側面の少なくとも一部に対向する磁気シールド51をさらに備える。磁気シールド51は、積層体SB0の側面の上記の少なくとも一部を覆う。
【0166】
さらに、磁気記憶素子122k及び122lは、積層体SB0の側面の上記の少なくとも一部と、磁気シールド51との間に設けられた保護層52をさらに備える。
【0167】
磁気記憶素子122kにおいては、磁気シールド51は、第2積層部SB2の側面を覆う。磁気記憶素子122lにおいては、磁気シールド51は、第2積層部SB2の側面、第1積層部SB1の側面、及び、第3非磁性層30nの側面を覆う。
【0168】
図12(c)及び図12(d)に表したように、実施形態に係る磁気記憶素子124k及び124lにおいても、第2積層部SB2の側面に対向する磁気シールド51が設けられる。磁気シールド51は、さらに、第1積層部SB1の側面に対向している。さらに、磁気記憶素子124k及び124lは、積層体SB0の側面の少なくとも一部と、磁気シールド51との間に設けられた保護層52をさらに備える。さらに、磁気記憶素子124k及び124lは、保護層52と第3強磁性層30との間(この例では、保護層52と第2積層部SB2との間)に設けられた絶縁層53(埋め込み絶縁層)をさらに備える。磁気記憶素子124lにおいては、絶縁層53は、第1積層部SB1と保護層52との間にも設けられている。絶縁層53には、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコンなどの絶縁材料が用いられる。絶縁層53を設けることで、第2積層部SB2と磁気シールド51との距離が離れ、第2積層部SB2から発生する磁界が第1積層部SB1に印加され易くなり、高周波アシストの効果を得易くなる。
【0169】
例えば、第1積層部SB1の側面及び第2積層部SB2の側面は、例えばSiNやAl2O3などの保護層52を介してパーマロイ(Py)などの磁気シールド51により覆われる。
【0170】
これにより、複数の磁気記憶素子が並べられた場合において、隣の磁気記憶素子からの漏洩磁界が、第1積層部SB1及び第2積層部SB2の動作に影響を与えることが抑制される。これにより、回転磁界を発生させるために必要となる電流注入量を抑えることができる。また、第1積層部SB1及び第2積層部SB2からの漏洩磁界が、隣の磁気記憶素子に作用することを抑制することができる。その結果、複数の磁気記憶素子どうしを近接して配置することができ、集積度を向上することができる。
【0171】
保護層52には、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)及び鉄(Fe)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素を含む、酸化物、窒化物または弗化物を用いることができる。
【0172】
磁気シールド51には、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びクロム(Cr)よりなる群から選択されたいずれかの元素、または、この群から選択された2つ以上を含む合金を用いることができる。
【0173】
磁気シールド51には、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びクロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素と、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)及びロジウム(Rh)よりなる群から選択された少なくともいずれかの元素と、の組み合わせによる合金を用いることができる。
【0174】
磁気シールド51に含まれる磁性材料の組成や熱処理により、磁気シールド51の特性を調整することができる。また、磁気シールド51には、TbFeCo及びGdFeCoなどの希土類−遷移金属のアモルファス合金を用いることができる。また、磁気シールド51には、Co/Pt、Co/Pd及びCo/Niなどの積層構造を用いることができる。
【0175】
上記の磁気シールド51(及び保護層52)は、実施形態に係る磁気記憶素子及びその変形の磁気記憶素子(第1〜第4積層構成のいずれかを有する磁気記憶素子)においても設けることができる。
【0176】
以下、実施形態に係る磁気記憶素子の特性について説明する。
発明者は、磁界発生部(第2積層部SB2)の特性についてマイクロマグネティクスを用いたシミュレーションを実施した。このシミュレーションにおいては、以下のモデルを採用した。第4強磁性層40(厚さ10nm)は、Ms(磁化:saturated magnetization)=1000emu/ccで、Ku=8Merg/cm3の垂直磁化膜とした。第2非磁性層20nは、Cu層(厚さ2nm)とした。第3強磁性層30(厚さ2nm)は、Ms=800emu/ccで、Ku=5000erg/cm3の面内磁化膜とした。スピン偏極度は0.4とし、ダンピング定数は0.01とした。
【0177】
磁化固定層(第4強磁性層40)とスペーサ層(第2非磁性層20n)との形状は、直径(Z軸に対して垂直な幅)が24nmのピラー型形状とした。そして、第3強磁性層30の直径(幅D30)が24nmの場合と、12nmの場合の2通りのモデルを想定した。
【0178】
このシミュレーションでは、第3強磁性層30のサイズの違いによって電流密度が変化して発振周波数が向上する特性に着目する。このため、磁化記憶部(磁気記憶部)の構造を設けず、磁界発生部の構造が設けられているモデルに関して計算を行った。
【0179】
図13は、磁気記憶素子の特性のシミュレーション結果を例示するグラフ図である。
同図は、磁界発生部の特性のマイクロマグネティクスを用いたシミュレーション結果を例示している。横軸は、電流I(マイクロアンペア:μA)である。縦軸は、第3強磁性層30の膜面内方向(例えばX軸方向)の磁化が発振した時の発振周波数fs(ギガヘルツ:GHz)である。
【0180】
図13から分かるように、第3強磁性層30の大きさ(幅D30)が12nmである場合は、24nmの場合に比べて、高い周波数での発振が得られている。これは、第3強磁性層30における電流密度が大きくなることで、より高い周波数で発振するためと考えられる。
【0181】
このように、第3強磁性層30の幅D30を小さくすることによって電流密度が高まるため、より高い周波数の磁界を発生させ、これを磁気記憶部の磁気記憶層へ作用させることが可能となる。
【0182】
なお、磁気記憶部の構造が付与された場合は、第3強磁性層30に加わる漏洩磁界が変化することで、発振周波数と電流の関係は、磁気記憶部の構造を設けた場合の特性と比べてシフトする。しかしながら、電流密度に対する発振周波数の変化の挙動は、このシミュレーションで採用したモデル(磁気記憶部の構造を付与されていない構成)で得られた結果で十分に把握できる。磁気記憶部部の構造が付与された場合においても、上記と同様に、第3強磁性層30の幅D30を小さくすることによって電流密度が高まり、その結果、より高い周波数の磁界を発生させることができる。
【0183】
以下、磁気記憶部の構造が付与された磁気記憶素子の特性の例として、以下の構成をそれぞれ有する磁気記憶素子161〜165について説明する。これらの磁気記憶素子は、それぞれ、第1〜第5実施例に対応する。
【0184】
磁気記憶素子161(図5(c)参照)は、第1積層構成を有し、具体的には、磁気記憶素子112と同様の構成を有する。磁気記憶素子162(図6(c)参照)は、第1積層構成を有し、具体的には、磁気記憶素子112aと同様の構成を有する。磁気記憶素子163(図9(e)参照)は、第2積層構成を有し、具体的には、磁気記憶素子124と同様の構成を有する。磁気記憶素子164(図10(c)参照)は、第3積層構成を有し、具体的には、磁気記憶素子132と同様の構成を有する。磁気記憶素子165(図11(e)参照)は、第4積層構成を有し、具体的には、磁気記憶素子144と同様の構成を有する。
【0185】
磁気記憶素子161においては、第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは、第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きと同じである。磁気記憶素子162〜165においては、第1強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きは、第4強磁性層10の磁化の垂直斜影成分の向きに対して逆向きである。
【0186】
磁気記憶素子161においては、第1強磁性層10、第1非磁性層10n及び第2強磁性層20の形状は、直径24nmのピラー型形状とした。第1強磁性層10(厚さ6nm)は、Ms=400emu/ccで、Ku=10Merg/cm3の垂直磁化膜とした。第1非磁性層10nは、MgO層(厚さ1nm)とした。第2強磁性層20(厚さ2nm)は、Ms=600emu/ccで、Ku=2.7Merg/cm3の垂直磁化膜とした。第4強磁性層40(厚さ10nm)は、Ms=1000emu/ccで、Ku=8Merg/cm3の垂直磁化膜とした。第2非磁性層20nは、Cu層(厚さ2nm)とした。第3強磁性層30(厚さ2nm)は、Ms=800emu/ccで、Ku=5000erg/cm3の面内磁化膜とした。第3強磁性層30、第2非磁性層20n及び第4強磁性層40の直径は、12nmとした。第3非磁性層30nは、厚さが2nmのCu膜とした。第1積層部SB1におけるスピン偏極度は、0.6とし、第2積層部SB2におけるスピン偏極度は、0.4とした。
【0187】
磁気記憶素子162においては、第3非磁性層30nは、厚さが2nmのRu膜とした。第4強磁性層40と第1強磁性層10とが、互いに反強磁性結合する構造が採用された。これ以外の条件は、磁気記憶素子161と同様とした。
【0188】
磁気記憶素子163においては、第2積層構成を採用し、さらに、第3非磁性層30nは、厚さが3nmのRu膜とした。第3強磁性層30と第2強磁性層20との間でスピントルクが伝達しない構造が採用された。これ以外の条件は、磁気記憶素子161と同様とした。
【0189】
磁気記憶素子164においては、第3積層構成を採用した以外は、磁気記憶素子161と同様とした。磁気記憶素子165においては、第4積層構成を採用した以外は、磁気記憶素子161と同様とした。
【0190】
さらに、参考例の磁気記憶素子191(図示せず)に関しても検討した。磁気記憶素子191においては、第2積層部SB2及び第3非磁性層30nを設けず、第1積層部SB1だけが設けられるモデルを採用した。すなわち、磁気記憶素子191は、共鳴アシストを用いない構成を有する。磁気記憶素子191における第1積層部SB1の構成は、磁気記憶素子161と同様とした。
【0191】
これらの磁気記憶素子において、第2強磁性層20における磁化の反転に関してシミュレーションを行った。
【0192】
図14は、磁気記憶素子における磁化の反転の特性のシミュレーション結果を例示するグラフ図である。
横軸は、時間tt(ナノ秒:ns)である。時間ttは、積層体SB0に電流を通電してから経過する時間である。縦軸は、第2強磁性層20における磁化Mzの向きを表している。ここでは、磁化Mzが、反平行状態から平行状態へ遷移する様子を計算している。第1強磁性層10(磁化固定層)の磁化は下向きである。通電前において、第2強磁性層20(記憶層)の磁化Mzは、上向き(”1”)とした。そして、通電することにより、第2強磁性層20の磁化Mzは下向き(”−1”)に変化する。ここで、供給する電流は、15μAとした。
【0193】
図14に表したように、参考例の磁気記憶素子191(磁界発生部を用いない)においては、磁化Mzの反転時間は、4.4nsであった。これに対して、第1〜第5実施例の磁気記憶素子161〜165のいずれにおいても、磁化反転が高速化している。
【0194】
図15は、磁気記憶素子における磁化の反転の特性を例示するグラフ図である。
同図は、図14の結果を基に導出されたものである。すなわち、磁化Mzが−0.5になるときの時間ttを、反転時間trとして求め、その結果を比較して示している。図14の縦軸は、反転時間tr(ns)である。
図15から分かるように、実施例の磁気記憶素子161〜165においては、参考例の磁気記憶素子191に比べて、反転時間trが短い。特に、磁気記憶素子163においては、反転の高速化の効果が顕著である。これは、第2積層構成においては、発振層(第3強磁性層30)と記憶層(第2強磁性層20)との間の距離が近いため、より大きな磁界が作用することに起因している。
【0195】
図16は、磁気記憶素子の特性を例示するグラフ図である。
図16は、発振層(第3強磁性層30)から発生し、記憶層(第2強磁性層20)に印加される磁界強度H30のシミュレーション結果を例示している。横軸は、磁界強度H30(エルステッド:Oe)であり、縦軸は、反転時間trである。この図には、参考例の磁気記憶素子191が三角印で表示され、実施形態に係る磁気記憶素子(磁気記憶素子161〜165を含む)が丸印で表示されている。
図16からわかるように、磁界強度H30が大きいと反転時間trは短くなる。
【0196】
第1〜第4積層構成のなかでは、第3強磁性層30と第2強磁性層20とが近接する第2積層構成において、反転時間trが短くなる。
【0197】
また、磁気記憶素子161と磁気記憶素子162とを比較すると、第1強磁性層10と第4強磁性層40とが互いに反強磁性結合できる磁気記憶素子162においては、第2強磁性層20における漏洩磁界を小さくできる。このため、磁気記憶素子162の構成は、望ましい構成の1つである。
【0198】
発明者は、発振層(第3強磁性層30)の幅D30(例えば直径)の、記憶層(第2強磁性層20)の幅(例えば直径)に対する比を変えた時の、第3強磁性層30の発振周波数fsをシミュレーションにより求めた。
【0199】
図17は、磁気記憶素子における発振特性を例示するグラフ図である。
横軸は、第3強磁性層30の幅D30の、第2強磁性層20の幅に対する比Rwを示す。縦軸は、比Rwが1であるときの第3強磁性層30の発振周波数fsに対する、第3強磁性層30の発振周波数fsの比Rfを示す。
【0200】
図17に表したように、幅の比Rwが小さいときに、発振周波数の比Rfが大きくなり、高い発振周波数が得られる。例えば、比Rwが1のとき(第3強磁性層30が第1積層部SB1と同じサイズのとき)の2倍以上の発振周波数を得るためには、比Rwは0.7以下に設定すれば良い。すなわち、第3強磁性層30の幅D30を、第1積層部SB1の幅(例えば第1径D1)の0.7倍以下にすることで、第3強磁性層30が第1積層部SB1と同じサイズのときの発振周波数fsの2倍以上の発振周波数fsが得られる。
【0201】
図18(a)及び図18(b)は、磁気記憶素子の特性を例示するグラフ図である。
図18(a)は、実施形態に係る磁気記憶素子(例えば磁気記憶素子110など)の特性を例示している。図18(b)は、参考例の磁気記憶素子192(図示せず)の特性を例示している。磁気記憶素子192においては、第3強磁性層30の幅D30(具体的には、第2積層部SB2の幅)が、第1積層部SB1の幅と同じである。
【0202】
これらの図(グラフ)の横軸は、積層体SB0に供給される電流Iを表している。縦軸は、第3強磁性層30(第2積層部SB2)で発生する磁界の発振周波数fsを表している。また、縦軸に沿って、第2強磁性層20における共鳴周波数frの特性が模式的に描かれている。
【0203】
図18(b)に表したように、参考例の磁気記憶素子192においては、書き込み動作における電流(書き込み電流Iwrite)によって得られる発振周波数fsが低い。ここで、読み出し電流の値は、磁界発生部にとって発振に至らない大きさの値に設定されるが、読み出し電流によって仮に発振した場合の周波数帯域は磁気記憶部の共鳴周波数の帯域に近くなる。すなわち、読み出し動作における電流(読み出し電流Iread)に対応する発振周波数fsと、書き込み電流Iwriteによって得られる発振周波数fsと、の間の差(書き込み動作と読み出し動作との間のマージンMrw)が小さい。このような場合においても、読み出し時に誤書き込みが起こることを避けるため、読み出し電流で発振が起きてしまった場合の周波数帯域は、記憶部の共鳴周波数から±1GHz程度離すことが望ましい。
【0204】
これに対して、図18(a)に表したように、実施形態に係る磁気記憶素子(例えば磁気記憶素子110)においては、書き込み電流Iwriteによって得られる発振周波数fsが高い。このため、書き込み動作と読み出し動作との間のマージンMrwが大きく、誤書き込みが発生することを十分に抑制することが可能である。
【0205】
すなわち、実施形態によれば、書き込み電流Iwriteと読み出し電流Ireadのマージンを拡大できる。
【0206】
このように、上記で説明した、本実施形態に係る磁気記憶素子においては、積層方向SD1に対して垂直な平面で切断したときの第3強磁性層30の断面積S30は、積層方向SD1に対して垂直な平面で切断したときの第1積層部SB1の断面積S1よりも小さい。すなわち、実施形態においては、第3強磁性層30のサイズ(例えば幅D30)を小さくする。このとき、磁歪によって異方性が発現し、安定した発振を得るための電流マージンが狭くなる場合がある。このとき、第3強磁性層30を非晶質(アモルファス)とすることで、この電流マージンが狭くなることを抑制できる。なお、実施形態において、第3強磁性層30が非晶質である状態は、第3強磁性層30の中に多結晶の粒子が含まれる状態も含むものとする。この状態においても、電流マージンが狭くなることが抑制される。
【0207】
本実施形態に係る磁気記憶素子に含まれる各層の寸法(幅及び厚さなど)は、例えば電子顕微鏡写真像などにより求められる。
【0208】
以下、実施形態に係る磁気記憶素子の製造方法の例について説明する。
以下の説明において、「材料A\材料B」は、材料Aの上に材料Bが積層されていることを指す。
【0209】
ウェーハ上に下部電極(図示せず)を形成した後、そのウェーハを超高真空スパッタ装置内に配置する。下部電極上に、Ta(電極とのコンタクト層,兼ストッパ層、下地層)、CoFeB層(第2強磁性層20)、MgO(第1非磁性層10n)、CoFeB\FePt層(第1強磁性層10)、及び、その上にTa(電極とのコンタクト層)の層を、この順に積層させる。ここで、磁界中でアニールすることによって、CoFeB層とCoFeB\FePt層との膜面垂直方向の磁気異方性の強さを調節することもできる。これにより、加工体が形成される。
【0210】
次に、EB(electron beam:電子線)リソグラフィを行い、直径100nmのレジストマスクを形成する。加工体のうちで、レジストで被覆されていない部分を、下部電極が露出するまで、イオンミリングによって削る。
【0211】
次に、埋め込み絶縁層となるSiO2膜を成膜した後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等で平坦化した後、RIE(Reactive Ion Etching)等で全面をエッチングすることで電極とのコンタクト層のTaを露出させる。
【0212】
続いて、Ta\Ru層(電極とのコンタクト層、兼ストッパ層)、FePt\CoFeB\Cu\Py層(磁界発生部)、及び、Ta(電極とのコンタクト層)をこの順に積層する。
【0213】
次に、EB(electron beam:電子線)レジストを塗布してEB露光を行い、直径20nmのレジストマスクを形成する。加工体のうちで、レジストで被覆されていない部分を、ストッパ層のTa層が露出するまで、イオンミリングによって削る。
【0214】
次に、埋め込み絶縁層となるSiO2膜を成膜した後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等で平坦化した後、RIE(Reactive Ion Etching)等で全面をエッチングすることで電極とのコンタクト層を露出させる。
【0215】
さらに全面にレジストを塗布し、レジストの開口部が上部電極の位置に対応するように、ステッパ露光装置を用いてレジストをパターニングする。上部電極に対応する開口を埋め込むように、Cu膜を形成し、リフトオフ法により上部電極が形成される。さらに、上部電極に電気的に接続される配線(図示しない)が設けられる。
【0216】
磁気記憶素子124kの製造方法の例を説明する。
上記で説明した製造方法と同様に、下部電極上に、Ta\Ru層(電極とのコンタクト層、兼ストッパ層)、磁気記憶部、及び、Ta(ストッパ層)をこの順に積層し、直径100nmのサイズに加工する。そして、第3非磁性層30n、第4強磁性層40、第2非磁性層20n、第3強磁性層30、及び、電極とのコンタクト層をこの順に積層し、直径20nmのサイズに加工する。そして、保護層52となるSiN層を形成した後、磁気シールド51となるPy層を形成する。エッチバックにより、Py層を積層体SB0の側壁に残す。さらに、埋め込み絶縁層となるSiO2膜を形成し、加工し、上部電極を形成する。これにより、磁気記憶素子124kが作製される。また、埋め込み絶縁層の形状を変えることで磁気記憶素子124lが作製される。
【0217】
実施形態に係る磁気記憶素子において、第1積層部SB1と第3強磁性層30(例えば第2積層部SB2)との互いの関係(形状及び位置)をセルフアラインにより設定することができる。以下、セルフアライン方式の製造方法の例について説明する。
【0218】
図19(a)〜図19(d)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図19(a)に表したように、基体5(例えば電極層など)の上に、下地層等を形成した後、第2強磁性層20となる第2強磁性層膜20f、第1非磁性層10nとなる第1非磁性層膜10nf、第1強磁性層10となる第1強磁性層膜10f、第3非磁性層30nとなる第3非磁性層膜30nf、第4強磁性層40となる第4強磁性層膜40f、第2非磁性層20nとなる第2非磁性層膜20nf、及び、第3強磁性層30となる第3強磁性層膜30fを、この順で形成する。さらに、この上に、上側膜6(例えば電極層など)を形成し、加工体が形成される。加工体の上に、所定の形状を有するマスク材M1を形成する。マスク材M1の加工には例えばフォトリソグラフィとエッチングが用いられる。マスク材M1のZ軸に沿ってみたときの形状は、第1積層部SB1の形状に対応する。
【0219】
図19(b)に表したように、マスク材M1をマスクとして用い、基体5が露出するまで第1のエッチングを行い、加工体を加工する。これにより、第3非磁性層30n、第1強磁性層10、第1非磁性層10n及び第2強磁性層20の形状が得られる。
【0220】
図19(c)に表したように、マスク材M1をスリミングする。これにより、マスク材M1の幅(Z軸に対して垂直な軸に沿った長さ)は、小さくなる。スリミング後のマスク材M1のZ軸に沿ってみたときの形状は、第3強磁性層30の形状(この例では第2積層部SB2の形状)に対応する。
【0221】
図19(d)に表したように、スリミング後のマスク材M1をマスクとして用い、第3非磁性層30nが露出するまで第2のエッチングを行い、加工体を加工する。これにより、第4強磁性層40、第2非磁性層20n及び第3強磁性層30の形状が得られる。なお、第2のエッチングの条件は、第1のエッチングの条件とは異なる。
このようにして、例えば、磁気記憶素子110(または磁気記憶素子110aなど)が得られる。
【0222】
図20(a)〜図20(d)は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子の別の製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
図20(a)に表したように、基体5の上に、下地層等を形成した後、第2強磁性層膜20f、第1非磁性層膜10nf、第1強磁性層膜10f、第3非磁性層膜30nf、第4強磁性層膜40f、第2非磁性層膜20nf及び第3強磁性層膜30fをこの順で形成する。さらに、上側膜6を形成し、加工体が形成される。加工体の上に、所定の形状を有するマスク材M1を形成する。マスク材M1のZ軸に沿ってみたときの形状は、例えば、第3強磁性層30の形状(この例では第2積層部SB2の形状)に対応する。
【0223】
図20(b)に表したように、マスク材M1をマスクとして用い、第3非磁性層30nが露出するまで第1のエッチングを行い、加工体を加工する。これにより、第2積層部SB2(第4強磁性層40、第2非磁性層20n及び第3強磁性層30)の形状が得られる。
【0224】
図20(c)に表したように、加工体を覆うように加工用犠牲層を形成し、その後全面をエッチングすることで、マスク材M1及び第2積層部SB2の側壁に側壁材M2を形成する。マスク材M1及び側壁材M2によるマスク部のZ軸に沿ってみたときの形状は、第1積層部SB1の形状に対応する。
【0225】
図20(d)に表したように、マスク材M1及び側壁材M2によるマスク部をマスクとして用い、基体5が露出するまで第2のエッチングを行い、加工体を加工する。これにより、第3非磁性層30n、第1強磁性層10、第1非磁性層10n及び第2強磁性層20の形状が得られる。なお、第2のエッチングの条件は、第1のエッチングの条件とは異なる。
このようにして、例えば、磁気記憶素子110(または磁気記憶素子110aなど)が得られる。
【0226】
上記のように、スリミングを用いる方法及び側壁材M2を用いる方法の少なくともいずれかを用いることで、実施形態に係る任意の磁気記憶素子(第1〜第4積層構成を有する任意の磁気記憶素子)を作製することができる。
【0227】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、不揮発性記憶装置に係る。この不揮発性記憶装置は、第1の実施形態に係る磁気記憶素子を備える。
【0228】
図21は、第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する模式図である。
図21に表したように、本実施形態に係る不揮発性記憶装置340は、メモリセルアレイMCAを備える。メモリセルアレイMCAは、マトリクス状に配列された複数のメモリセルMCを有する。
【0229】
各メモリセルMCは、実施形態に係る磁気記憶素子のいずれかを、MTJ素子として有する。
【0230】
メモリセルアレイMCAには、それぞれが列(カラム)方向に延在するように、複数のビット線対(ビット線BL及びビット線/BL)が配置されている。メモリセルアレイMCAには、それぞれが行(ロウ)方向に延在するように、複数のワード線WLが配置されている。
【0231】
ビット線BLとワード線WLとの交差部分に、メモリセルMCが配置される。各メモリセルMCは、MTJ素子と選択トランジスタTRとを有する。MTJ素子の一端は、ビット線BLに接続されている。MTJ素子の他端は、選択トランジスタTRのドレイン端子に接続されている。選択トランジスタTRのゲート端子は、ワード線WLに接続されている。選択トランジスタTRのソース端子は、ビット線/BLに接続されている。
【0232】
ワード線WLには、ロウデコーダ341が接続されている。ビット線対(ビット線BL及びビット線/BL)には、書き込み回路342a及び読み出し回路342bが接続されている。書き込み回路342a及び読み出し回路342bには、カラムデコーダ343が接続されている。
【0233】
各メモリセルMCは、ロウデコーダ341及びカラムデコーダ343により選択される。メモリセルMCへのデータ書き込みの例は、以下である。まず、データ書き込みを行うメモリセルMCを選択するために、このメモリセルMCに接続されたワード線WLが活性化される。これにより、選択トランジスタTRがオンする。
【0234】
ここで、MTJ素子には、双方向の書き込み電流が供給される。具体的には、MTJ素子に左から右へ書き込み電流を供給する場合、書き込み回路342aは、ビット線BLに正の電位を印加し、ビット線/BLに接地電位を印加する。また、MTJ素子に右から左へ書き込み電流を供給する場合、書き込み回路342aは、ビット線/BLに正の電位を印加し、ビット線BLに接地電位を印加する。このようにして、メモリセルMCに、データ「0」、または、データ「1」を書き込むことができる。
【0235】
メモリセルMCからのデータ読み出しの例は、以下である。まず、メモリセルMCが選択される。読み出し回路342bは、MTJ素子に、例えば右から左へ流れる読み出し電流を供給する。そして、読み出し回路342bは、この読み出し電流に基づいて、MTJ素子の抵抗値を検出する。このようにして、MTJ素子に記憶された情報を読み出すことができる。
【0236】
図22は、第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する模式図である。
図22は、1つのメモリセルMCの構成を例示している。この例では、磁気記憶素子110が用いられているが、実施形態に係る任意の磁気記憶素子を用いることができる。
【0237】
図22に表したように、本実施形態に係る不揮発性記憶装置340は、実施形態に係る磁気記憶素子(例えば磁気記憶素子110)と、第1配線81と、第2配線82と、を備える。第1配線81は、磁気記憶素子110の一端(例えば第1積層部SB1の端)に、直接または間接に接続される。第2配線82は、磁気記憶素子110の他端(例えば第2積層部SB2の端)に直接または間接に接続される。
【0238】
ここで、「直接に接続される」は、間に他の導電性の部材(例えばビア電極や配線など)が挿入されないで電気的に接続される状態を含む。「間接に接続される」は、間に他の導電性の部材(例えばビア電極や配線など)が挿入されて電気的に接続される状態、及び、間にスイッチ(例えばトランジスタなど)が挿入されて、導通と非導通とが可変の状態で接続される状態を含む。
【0239】
第1配線81及び第2配線82のいずれか一方は、例えば、ワード線WLに対応する。 第1配線81及び第2配線82のいずれか他方は、例えば、ビット線BLまたはビット線/BLに対応する。
【0240】
図22に表したように、不揮発性記憶装置340は、選択トランジスタTRをさらに備えることができる。選択トランジスタTRは、磁気記憶素子110と第1配線81との間(第1の位置)、及び、磁気記憶素子110と第2配線82の間(第2の位置)の少なくともいずれかの間に設けられる。これにより、図21に関して説明した動作が実現できる。
【0241】
実施形態によれば、高密度化が可能な磁気記憶素子及び不揮発性記憶装置が提供される。
【0242】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0243】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気記憶素子に含まれる強磁性層、非磁性層、電極など、並びに、不揮発性記憶装置に含まれる配線及びトランジスタなどの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0244】
その他、本発明の実施の形態として上述した磁気記憶素子及び不揮発性記憶装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての磁気記憶素子及び不揮発性記憶装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0245】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0246】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0247】
5…基体、 6…上側膜、 10…第1強磁性層、 10f…第1強磁性層膜、 10n…第1非磁性層、 10nf…第1非磁性層膜、 12a…磁化、 20…第2強磁性層、 20f…第2強磁性層膜、 20n…第2非磁性層、 20nf…第2非磁性層膜、 20nj…第2非磁性層周囲部、 30…第3強磁性層、 30f…第3強磁性層膜、 30j…第3強磁性層周囲部、 30n…第3非磁性層、 30nf…第3非磁性層膜、 30p…外縁、 32…磁化、 40…第4強磁性層、 40f…第4強磁性層膜、 40j…第4強磁性層周囲部、 51…磁気シールド、 52…保護層、 53…絶縁層、 60…電子電流、 61…センス電流、 72…磁化、 72a、72b…磁化成分、 81…第1配線、 82…第2配線、 110〜114、110a〜114a、110b〜113b、110c〜113c、110r、110s、120〜127、122k、122l、124k、124l、130〜135、140〜147、161〜165、191、192…磁気記憶素子、 340…不揮発性記憶装置、 341…ロウデコーダ、 342a…書き込み回路、 342b…読み出し回路、 343…カラムデコーダ、 /BL…ビット線、 BL…ビット線、 D1…第1径、 D2…第2径、 D30…幅、 Dd…距離、 H30…磁界強度、 I…電流、 Iread…読み出し電流、 Iwrite…書き込み電流、 M1…マスク材、 M2…側壁材、 MC…メモリセル、 MCA…メモリセルアレイ、 Mrw…マージン、 Mz…磁化、 Rf…比、 Rw…比、 S1…断面積、 S30…断面積、 SB0…積層体、 SB1…第1積層部、 SB2…第2積層部、 SBP1…第1外縁、 SBP2…第2外縁、 SD1…積層方向、 SD2…面内軸、 TR…選択トランジスタ、 WL…ワード線、 fr…共鳴周波数、 fs…発振周波数、 t…厚さ、 tt…時間、 tr…時間反転時間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜面に対して垂直な成分を有する第1の方向に磁化が固定された第1強磁性層と、
磁化の方向が膜面に対して垂直な方向に可変である第2強磁性層と、
前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間に設けられた第1非磁性層と、
を含む第1積層部と、
前記第1強磁性層、前記第2強磁性層及び前記第1非磁性層が積層される積層方向に沿って前記第1積層部と積層され、
磁化の方向が膜面に対して平行な方向に可変である第3強磁性層と、
前記第3強磁性層と前記積層方向に沿って積層され、膜面に対して垂直な成分を有する第2の方向に磁化が固定された第4強磁性層と、
前記第3強磁性層と前記第4強磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、
を含む第2積層部と、
を含む積層体を備え、
前記積層方向に対して垂直な平面で切断したときの前記第3強磁性層の断面積は、前記積層方向に対して垂直な平面で切断したときの前記第1積層部の断面積よりも小さく、
前記積層方向に沿って前記積層体に電流を流すことによりスピン偏極した電子を前記第2強磁性層に作用させ、且つ、前記第3強磁性層の磁化を歳差運動させることにより発生する回転磁界を前記第2強磁性層に作用させることにより、前記第2強磁性層の磁化の方向を前記電流の向きに応じた方向に決定可能としたことを特徴とする磁気記憶素子。
【請求項2】
前記平面における前記第2強磁性層及び前記第1非磁性層の外縁は、前記平面における前記第2積層部の外縁よりも外側の部分を有することを特徴とする請求項1記載の磁気記憶素子。
【請求項3】
前記第1の方向は、前記第2の方向に対して逆向きであることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記憶素子。
【請求項4】
前記積層体は、前記第1積層部と前記第2積層部との間に設けられた第3非磁性層をさらに含み、
前記第3非磁性層は、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、ビスマス(Bi)、イリジウム(Ir)、チタン(Ti)及びオスミウム(Os)よりなる群から選択された少なくともいずれかの非磁性金属、または、前記群から選択された2つ以上を含む合金を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の磁気記憶素子。
【請求項5】
前記積層体は、前記第1積層部と前記第2積層部との間に設けられた第3非磁性層をさらに含み、
前記第3非磁性層は、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、及び、バナジウム(V)よりなる群から選択されたいずれかの金属、または、前記群から選択された少なくとも2つ以上を含む合金を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の磁気記憶素子。
【請求項6】
前記積層体は、前記第1積層部と前記第2積層部との間に設けられた第3非磁性層をさらに含み、
前記第3非磁性層は、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、及び、イリジウム(Ir)よりなる群から選択されたいずれかの金属、または、前記群から選択された少なくとも2つ以上を含む合金を含み、
前記第3非磁性層の厚さは、3ナノメートル以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の磁気記憶素子。
【請求項7】
前記第1積層部の前記外縁は、前記第2積層部の前記外縁よりも外側であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の磁気記憶素子。
【請求項8】
前記積層方向に対して垂直な方向に沿った前記第3強磁性層の幅は、
前記積層方向に対して垂直な前記方向に沿った前記第1積層部の幅の0.7倍以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の磁気記憶素子。
【請求項9】
前記第3強磁性層は、非晶質であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の磁気記憶素子。
【請求項10】
前記積層体の少なくとも一部の側面に対向する磁気シールドをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の磁気記憶素子。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の磁気記憶素子と、
前記磁気記憶素子の一端に直接または間接に接続された第1配線と、
前記磁気記憶素子の他端に直接または間接に接続された第2配線と、
を備えたことを特徴とする不揮発性記憶装置。
【請求項12】
前記磁気記憶素子と前記第1配線との間、及び、前記磁気記憶素子と前記第2配線の間の少なくともいずれかの間に設けられた選択トランジスタをさらに備えたことを特徴とする請求項11記載の不揮発性記憶装置。
【請求項1】
膜面に対して垂直な成分を有する第1の方向に磁化が固定された第1強磁性層と、
磁化の方向が膜面に対して垂直な方向に可変である第2強磁性層と、
前記第1強磁性層と前記第2強磁性層との間に設けられた第1非磁性層と、
を含む第1積層部と、
前記第1強磁性層、前記第2強磁性層及び前記第1非磁性層が積層される積層方向に沿って前記第1積層部と積層され、
磁化の方向が膜面に対して平行な方向に可変である第3強磁性層と、
前記第3強磁性層と前記積層方向に沿って積層され、膜面に対して垂直な成分を有する第2の方向に磁化が固定された第4強磁性層と、
前記第3強磁性層と前記第4強磁性層との間に設けられた第2非磁性層と、
を含む第2積層部と、
を含む積層体を備え、
前記積層方向に対して垂直な平面で切断したときの前記第3強磁性層の断面積は、前記積層方向に対して垂直な平面で切断したときの前記第1積層部の断面積よりも小さく、
前記積層方向に沿って前記積層体に電流を流すことによりスピン偏極した電子を前記第2強磁性層に作用させ、且つ、前記第3強磁性層の磁化を歳差運動させることにより発生する回転磁界を前記第2強磁性層に作用させることにより、前記第2強磁性層の磁化の方向を前記電流の向きに応じた方向に決定可能としたことを特徴とする磁気記憶素子。
【請求項2】
前記平面における前記第2強磁性層及び前記第1非磁性層の外縁は、前記平面における前記第2積層部の外縁よりも外側の部分を有することを特徴とする請求項1記載の磁気記憶素子。
【請求項3】
前記第1の方向は、前記第2の方向に対して逆向きであることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記憶素子。
【請求項4】
前記積層体は、前記第1積層部と前記第2積層部との間に設けられた第3非磁性層をさらに含み、
前記第3非磁性層は、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、ビスマス(Bi)、イリジウム(Ir)、チタン(Ti)及びオスミウム(Os)よりなる群から選択された少なくともいずれかの非磁性金属、または、前記群から選択された2つ以上を含む合金を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の磁気記憶素子。
【請求項5】
前記積層体は、前記第1積層部と前記第2積層部との間に設けられた第3非磁性層をさらに含み、
前記第3非磁性層は、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、及び、バナジウム(V)よりなる群から選択されたいずれかの金属、または、前記群から選択された少なくとも2つ以上を含む合金を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の磁気記憶素子。
【請求項6】
前記積層体は、前記第1積層部と前記第2積層部との間に設けられた第3非磁性層をさらに含み、
前記第3非磁性層は、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、及び、イリジウム(Ir)よりなる群から選択されたいずれかの金属、または、前記群から選択された少なくとも2つ以上を含む合金を含み、
前記第3非磁性層の厚さは、3ナノメートル以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の磁気記憶素子。
【請求項7】
前記第1積層部の前記外縁は、前記第2積層部の前記外縁よりも外側であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の磁気記憶素子。
【請求項8】
前記積層方向に対して垂直な方向に沿った前記第3強磁性層の幅は、
前記積層方向に対して垂直な前記方向に沿った前記第1積層部の幅の0.7倍以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の磁気記憶素子。
【請求項9】
前記第3強磁性層は、非晶質であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の磁気記憶素子。
【請求項10】
前記積層体の少なくとも一部の側面に対向する磁気シールドをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の磁気記憶素子。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の磁気記憶素子と、
前記磁気記憶素子の一端に直接または間接に接続された第1配線と、
前記磁気記憶素子の他端に直接または間接に接続された第2配線と、
を備えたことを特徴とする不揮発性記憶装置。
【請求項12】
前記磁気記憶素子と前記第1配線との間、及び、前記磁気記憶素子と前記第2配線の間の少なくともいずれかの間に設けられた選択トランジスタをさらに備えたことを特徴とする請求項11記載の不揮発性記憶装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2013−69820(P2013−69820A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206662(P2011−206662)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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