説明

空圧ブースターを備える可変バルブアクチュエーター

長手方向の軸線を規定するハウジング、第1の長手方向への作動力を発生する作動機構、及び一端が作動機構の少なくとも一部に作用的に連結され、他端がエンジンバルブのような負荷に作用的に連結されているロッドを含む駆動装置、スプリング保持器アセンブリを介してロッドに作用的に連結され、該ロッドを第2の方向へ付勢する少なくとも1つの戻りスプリング、及び、空圧シリンダー、スプリング保持器アセンブリを介してロッドに作用的に連結された空圧ピストンをさらに含む空圧ブースター、空圧シリンダーと高圧のガス源との間の制御された流体連絡を提供する充填機構、及び空圧シリンダーと低圧のガスシンクとの間の制御された流体連絡を提供する流出機構を含むアクチュエーターが記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2007年4月16日に出願された米国特許出願第11/787,295号の優先権を主張し、その記載内容の全体は参照によりここに取り入れられている。
【0002】
この発明は、概して、アクチュエーター及びかかるアクチュエーターを制御する対応する方法及びシステムに関し、特に、大きな開き力で能率的、敏速、順応性ある制御を提供するアクチュエーターに関する。
【背景技術】
【0003】
分割4ストロークサイクル内燃機関は、特許文献1に記載されている。それは、少なくとも1つの動力ピストン及び対応する第1の、すなわち、動力シリンダー、及び少なくとも1つの圧縮ピストン及び対応する第2の、すなわち、圧縮シリンダーを含んでいる。動力ピストンは、4ストロークサイクルのうちの動力ストローク及び排気ストロークを通して往復動し、一方、圧縮ピストンは吸気ストローク及び圧縮ストロークを通して往復動する。圧力チャンバー、すなわち、クロスオーバー通路が圧縮シリンダー及び動力シリンダーを相互に連結し、当該クロスオーバー通路は、圧縮シリンダーからクロスオーバー通路への実質的に一方向のガスの流れをもたらす、入口のチェックバルブ、及びクロスオーバー通路と動力シリンダーとの間のガスの流れの連絡をもたらす、出口の、すなわち、クロスオーバーバルブを備えている。該エンジンはさらに、圧縮シリンダー及び動力シリンダーに、それぞれ、吸気バルブ及び排気バルブを含んでいる。参照された特許及び他の関連する開発による分割サイクルエンジンは、特に、クロスオーバー通路に相互に連結された追加の空気貯留タンクと一体化され、該エンジンを空気ハイブリッドエンジンとして作動させることを可能にするとき、燃料効率における多くの有利性を潜在的に提供する。電気式ハイブリッドエンジンと比べて空気ハイブリッドエンジンは、より低い生産及び廃棄処理コストで、少なくともより多くの燃料経済的利益をもたらすことが潜在的に可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,543,225号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この潜在的利益を得るために、クロスオーバー通路内の空気、又は空気−燃料の混合気は、全体の4ストロークサイクルの間に所定の着火条件圧力、例えば、ゲージ圧で約270psi、すなわち、18.6barに維持されねばならない。この圧力は、より良好な燃焼効率を得るためにもっと高くてもよい。また、クロスオーバーバルブが開く期間は、特に、エンジンの中・高速域で極めて狭い。クロスオーバーバルブは、動力ピストンが上死点(TDC)又はその近傍にあるとき開き、その後、短期間に閉じる。分割サイクルエンジンにおける全開成期間は、従来のエンジンでの最小期間、6ないし8msに比べて、1から2msの短期間であってもよい。クロスオーバー通路内の継続的に高い圧力に抗してシールするために、実際のクロスオーバーバルブは外方(すなわち、内方への替わりに、動力シリンダーから離れる方向)の開き運動を持つポペット又はディスクバルブとなりやすい。閉じられたとき、バルブのディスク、すなわち、ヘッドはクロスオーバー通路内の圧力の下に、バルブシートに対して加圧される。バルブを開くために、ヘッドへの圧力の力のみならず慣性に打ち勝つべく、アクチュエーターは極めて大きな初期の開き力を与えねばならない。クロスオーバーバルブが一旦開かれると、クロスオーバー通路と動力シリンダーとの間の実質的な圧力均衡のせいで、圧力による力は劇的に低下する。一旦燃焼が開始されると、燃焼のクロスオーバー通路への広がりを防止するために、バルブは、所望の早さで閉じられるべきである。このことはまた、ある燃焼の期間において、クロスオーバー通路の圧力よりも潜在的にいくらか高い動力シリンダーの圧力に対抗してバルブを着座させて保つ必要性をともなっている。加えて、クロスオーバーバルブは、動力ストロークが空気ハイブリッド運転のある状況で作動していないときに、不作動にされることを必要としている。従来のエンジンバルブと同様に、クロスオーバーバルブの着座速度は、騒音を低減し、適切な耐久性を維持するために、ある限界内に保たれねばならない。
【0006】
要するに、クロスオーバーバルブのアクチュエーターは、それ自体による最小のエネルギーを消費する一方、大きな初期開き力、実質的な着座力、合理的に低い着座速度、高い作動速度、及びタイミングの柔軟性を提供しなければならない。従来のエンジンバルブ作動システムの全てではないが大半は、これらの要求を満たすことができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡単に述べると、本発明の一様相において、アクチュエーターの好ましい一実施形態は、長手方向の軸線と第1の方向及び第2の方向とを規定するハウジング、少なくとも第1の方向への作動力を発生する作動機構、及び一端が作動機構の少なくとも一部に作用的に連結され、他端がエンジンバルブのような負荷に作用的に連結できるロッド、スプリング保持器アセンブリを介してロッドに作用的に連結され、ロッドを第2の方向に付勢する少なくとも1つの戻りスプリングをさらに含む駆動装置、及び、空圧シリンダー、スプリング保持器アセンブリを介してロッドに作用的に連結され、ロッドを第1の方向に付勢する空圧ピストン、空圧シリンダーと高圧のガス源との間の制御された流体の連絡をもたらす充填機構、及び、該空圧シリンダーと低圧のガスシンクとの間に制御された流体の連絡をもたらす流出機構をさらに含む空圧ブースターを含んでいる。
【0008】
運転中には、アクチュエーターは、第2の方向に付勢して、空圧ブースター及び負荷からの第1の方向への力を含む残りの力の合計に打ち勝っている少なくとも1つの戻りスプリングからの力でもって、作動機構からの第1の方向への作動力を発生することなく、且つ、空圧ブースターが、第2の方向への実質的な負荷の力に抗するために第1の方向への実質的な力を生み出すべく、充填機構を介して充填された状態で、負荷を第2の方向の端部位置に向けて保持する。
【0009】
アクチュエーターは、作動機構から第1の方向に作動力を発生することにより、作動力及び空圧ブースターからの力の組合せが少なくとも1つの戻りスプリング及び負荷からの力の合計に打ち勝ち、及び負荷を第1の方向に加速させる状態で、第1の方向への負荷の移動を開始させる。
【0010】
アクチュエーターは、第1の方向への作動力でもって、目標ストロークへ到達するまで、第1の方向への移動を保ち、そして、仮に負荷が目標ストロークに保たれるのが必要であるなら、第1の方向への作動力を保持する。アクチュエーターは、負荷が少なくとも戻りスプリングにより第2の方向に加速されるように、第1の方向の作動力を少なくともターンオフすることにより、第2の方向への負荷の戻りの移動を開始する。
【0011】
アクチュエーターは、上の段落で説明された期間の少なくとも一部の間に、空圧ブースターからの力を減少せるために、流出機構を介してブースターシリンダー内の過剰空気を流出させる。さもなければ、この力は負荷の戻り移動に対し余りにも過剰な抵抗となる。それは、戻りスプリングからの減少する力、及び負荷を速度低下させる助けとなる空圧ブースターからの増大する力でもって、戻り移動を完了する。
【0012】
もう1つの実施形態では、駆動装置は流体の駆動装置であり、作動機構は、作動ピストン、作動シリンダー、第1及び第2のポートに、それぞれ、流体連絡された第1及び第2の流体空間、及び、作動ピストンと負荷に作用的に連結されたピストンロッドを備えている。
【0013】
もう1つの実施形態では、駆動装置は電磁駆動装置であり、作動機構は、接極子室に配置された接極子、及び接極子室の第1の方向側の少なくとも1つの第1の電磁石であって、これにより、励磁されたとき接極子を第1の方向に引くことを可能にする第1の電磁石、及び、接極子及び負荷に作用的に連結された接極子ロッドであるロッドを備えている。
【0014】
もう1つの実施形態では、充填機構は、充填オリフィスであって、実質的に充填流速を制限する充填オリフィスを含んでいる。それはまた、少なくとも流出機構が過剰空気を能動的に流出させているときに充填の流れを実質的にせき止める制御機構を含んでもよい。
【0015】
本発明は、一般的な流体のアクチュエーター及びそれらの制御において、特に、大きな初期開き力、実質的な着座力、合理的に低い着座速度、高い作動速度、及びタイミングの柔軟性を必要とする一方、それ自体による最小のエネルギーを消費しなければならないクロスオーバー通路エンジンバルブに対し必要とされる、重大な利点を提供する。空圧ブースターは、クロスオーバー通路又は空気貯留タンクに直接的にタップ立てすることにより、過剰な構成の複雑さを加えたり、又は過剰なエネルギー消費を要求することなく、又は流体又は電磁式のアクチュエーターの能力及び機能の限界を伸ばし、その大きな初期力を提供することができる。充填機構によれば、ブースト力は、高度な能動制御なしに、クロスオーバー通路内の変動する運転圧力に対して直接に調節され得る。流出機構によれば、エンジンバルブの戻り力が、戻りストローク中にブースト力を実質的に低くすることによって、大きく低減され得る。
【0016】
空圧ブースターによれば、流体又は電磁式である駆動装置は、流体駆動装置のための大きな流量及びパッケージサイズと電磁駆動装置のための(不可能でなければ)高い磁力及び電力とを必然的に伴う大きな初期開き力に関連する、設計、機能、及びコスト上の負担なしに、多かれ少なかれ従来のバルブ作動に集中することができる。
【0017】
本発明は、さらなる目的及び利点と共に、添付図面に関係してなされる以下の詳細な説明を参照することにより、最良に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】閉鎖状態にあるエンジンバルブアクチュエーターの好ましい一実施形態の該略図である。
【図2】流体駆動装置における設計変更、スプリング保持器アセンブリ及び空圧ブースgaターを含む、別の好ましい実施形態の該略図である。
【図3】3‐ウエイ比例バルブ及び充填バルブを含む、別の好ましい実施形態の該略図である。
【図4】4ウエイ比例バルブ、両端終了 ピストンロッドを有する流体駆動装置、及び流出機構なしの空圧ブースターを含む、別の好ましい実施形態の該略図である。
【図5】電磁駆動装置を含む、別の好ましい実施形態の該略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
さて、図1を参照するに、本発明の好ましい一実施形態は、流体駆動装置30、作動3‐ウエイバルブ90、戻りスプリング72、及び空圧ブースター85を含むアクチュエーターを提供している。アクチュエーターの負荷、すなわち、制御の対象は、エンジンバルブ20である。
【0020】
作動3‐ウエイバルブ90は、流体駆動装置30の第2のポート62を介して流体駆動装置30に供給する。3‐ウエイバルブ90は、低圧力P_L流体ライン及び高圧力P_H流体ラインに接続されている、その3つのウエイのうちの2つと、第2のポート62に接続されている第3のウエイとを有している。流体駆動装置30の第1のポート60は、低圧力P_L流体ラインに直接に流体的に連絡されている。
【0021】
作動3‐ウエイバルブ90は、左の位置92又は右の位置94のいずれかに切替えられる。左の位置92及び右の位置94においては、第2のポート62がP_Hライン及びP_Lラインに、それぞれ、流体的に連絡される。
【0022】
圧力P_Hは、一定又は連続的に変化してもよい。変化するときには、システムの摩擦、エンジンバルブの開成、空気圧力、エンジンバルブの着座速度要求等における多様性に対応すること、及び/又は、可能であれば作動エネルギーをセーブすることである。圧力P_Lは、単に、流体タンクの圧力、大気の圧力、又は流体システムのバックアップ圧力であってもよい。流体システムのバックアップ圧力は、例えば、アキュムレーター付き又は無しの、スプリングで負荷されたチェックバルブによって、単に、支持又は制御されてもよい。圧力P_Lの値は、システムの効率を増大させるために可能な限り低いのが好ましく、そして流体のキャビテーションを防ぐのを助けるべく十分に高い。必要なときには、圧力P_Lはさらに厳密に制御されてもよい。必要、及び/又は許されるときには、2つのポート60及び62に接続された2つのP_Lラインが、2つの圧力値を維持してもよい。例えば、第1のポート60は、流体タンク(図1には示されていない)への漏洩流を捨てるべく、単に、用いられてもよい。この場合、第1の流体空間の大半は、(作動流体が空気でないと仮定すると)作動流体に換えて空気で、単に、満たされることになる。
【0023】
エンジンバルブ20は、エンジンバルブヘッド22及びエンジンバルブステム24を含んでいる。エンジンバルブヘッド22は、分割サイクルエンジンの場合に、クロスオーバー通路110及びエンジンシリンダー102に、それぞれ、露出される、第1の表面28及び第2の表面29を含んでいる。エンジンバルブ20は、エンジンバルブガイド120内に摺動可能に配置されたエンジンバルブステム24を通る長手方向軸線116に沿って、流体駆動装置30に作動可能に接続されている。説明の容易化のために、アセンブリ及び長手方向軸線116は、図1において、頂部及び底部の方向と同じである、第1及び第2の方向を有している。図1に図解されているようなエンジンバルブガイド120は、通常、制限された壁厚のスリーブである伝統的なエンジンバルブガイドのようには見えない。このガイド120は、組み立ての際に、エンジンバルブヘッド22を介して滑るのに十分な大きさのバルブアセンブリ開口83の上方のシリンダーヘッド82内に位置されるべく、設計されている。これは多くの潜在的なアセンブリの選択肢の中のただ一つである。これはガイド120の内側に伝統的な様相のスリーブを追加する可能性を排除するものではない。ガイド120は必要なエンジンの冷却液及び潤滑油の通路(図1には示されていない)を含んでいてもよい。
【0024】
エンジンバルブ20が完全に閉じられているときは、エンジンバルブヘッド22がエンジンバルブシート26に接触しており、クロスオーバー通路110とエンジンシリンダー102との間の流体連絡を封鎖している。
【0025】
流体駆動装置30は、アクチュエーターハウジング70、作動ピストン40及び作動シリンダー50を備えている。作動ピストン40は、作動シリンダー50内に摺動可能に配置されている。作動ピストン40は、締結要素45と肩部49との間でピストンロッド46に固定されている。作動ピストン40は、第1の表面42及び第2の表面44を含み、作動シリンダー50を第1の流体空間52(作動シリンダーの第1の端部56と作動ピストンの第1の表面42との間)、及び第2の流体空間54(作動ピストンの第2の表面44と作動シリンダーの第2の端部58との間)に長手方向に分割している。作動ピストン40及びピストンロッド46の周りの半径方向の隙間は、実質的に緊密であり、実質的な流体シールをもたらし、そして、相対運動に対して許容できる抵抗を提供している。
【0026】
第2の流体空間54は、ピストンロッドのネック部48の周りの第2流れ通路64を介して第2のポート62に流体連絡している。第2流れ通路64は、肩部49が第2流れ通路64に長手方向で接近及び/又は重なる状態で、作動ピストン40が作動シリンダーの第2端部58に近づいたとき、実質的により絞られるようになる。もしも、第2の流れ機構が第2流れ通路64、ネック部48及び肩部49を含んで形成されるなら、それで、第2の流れ機構は第2の流体空間と第2ポートとの間に、実質的に開かれた流体の連絡をもたらす。それは、作動ピストン40が作動シリンダーの第2端部58に近づいたとき、緩衝機能をもたらす。望むなら、第2の流れ機構はまた、一方向、すなわち、チェックバルブ(図1には示されていない)を含み、並行な、第2のポート62から第2の流体空間54に実質的に開いた流体の連絡をもたらしてもよい。
【0027】
第1の流体空間52は、大きな流れの制約無しで第1のポート60に流体連絡している。
【0028】
ピストンロッド46は、エンジンバルブステム24に作用的に連結され、そして、この実施形態では(図1に示されるように)、ロッド46及びステム24は構造的に同一部品である。これは設計の唯一の選択肢ではない。
【0029】
スプリング保持器アセンブリ74は、戻りスプリング72を保持するのを助け、且つその力をエンジンバルブステム24に移送すべく設計されている。戻りスプリング72は、図1に示されるように、単一の機械式圧縮スプリングである。これは、並列な一対の圧縮スプリングのような他の設計の選択肢を排除するものではない。スプリング72はまた、皿ばねタイプ又は空圧的性質の形態であってもよい。
【0030】
スプリング保持器アセンブリ74は、第1及び第2のスプリング保持器78及び80、及び一組のバルブキーパー76を含でいる。第1スプリング保持器78はまた、空圧シリンダー84、エンジンバルブガイド120の頂部のキャビティの内部に摺動可能に配置され、空圧ブースター85を形成している空圧ピストンとして機能している、すなわち、二役である。側部、すなわち、第1スプリング保持器78及び空圧シリンダー84の摺動壁は、空気-密封シール、及び必要な潤滑及びシール用機構(詳細は図1にはない)でもって合理的なレベルの摩擦を維持している。戻りスプリング72及び空圧ブースター85は、第1保持器78、そして、かくてエンジンバルブステム24に、第2及び第1の方向に、それぞれ、力を加える。戻りスプリング72からの力は第1スプリング保持器78に加えられ、そして、バルブキーパー76を介してエンジンバルブステム24に伝達される。空圧シリンダー84からの空圧力は、主に第1スプリング保持器78に加えられ、そして、スプリング-保持器締結手段81(その詳細は図1に図解されていない)、第2スプリング保持器80及びバルブキーパー76を介して、バルブステム24に伝達される。
【0031】
空圧シリンダー84には、加圧ガス又は空気が、充填通路112及び充填オリフィス86を含む充填機構を介して、クロスオーバー通路110、すなわち、高圧ガス源から充填ないしは供給される。充填オリフィス86は、充填通路112よりも制限されて設計されている。当該通路112及びオリフィス86は単一の制限的な長いオリフィス(図1には示されていない)へと組み合わされてもよい。別々の構造、すなわち、充填オリフィス86が存在するということは製造工程を容易にする。空圧シリンダー84はまた、その頂部分に延長部118を有するように意図的に設計されており、その結果、第1保持器78と空圧シリンダー84との間の実質的な気密シールは、エンジンバルブ20が着座され、及び第1の方向へのエンジンバルブ移動の予め定められた距離L1内にあるときのみ保たれる。これを越えると、空圧シリンダー84と第1保持器78との間に実質的な間隙、すなわち、流出通路が存在し、そして、空圧シリンダー84は、大気又は低圧力のガスシンクと実質的な流体連絡状態にあり、及びクロスオーバー通路110とは制限された流体連絡状態にある。
【0032】
作動シリンダー50は、負荷、すなわち、エンジンバルブ20がその第1の方向及び第2の方向の端部位置にそれぞれあるときに、作動ピストン40がシリンダー50の第1及び第2の端部56及び58に接触しないように、長手方向に実質的な余裕代を提供している。エンジンバルブ20が、図1に示されるように、着座され、すなわち、その第2の方向の端部位置にあるとき、作動ピストンの第2の表面44と作動シリンダーの第2端部58との間には、エンジンバルブのラッシュ(隙間)調節を可能とする距離がまだ存在している。エンジンバルブ20が完全に開き、すなわち、その第1の方向の端部位置にあるときは、戻りスプリング72からの十分な力、及び/又は作動ピストンの第1の表面42と作動シリンダーの第1端部56との間での直接な接触を防止するのに十分な長手方向の空間が存在する。
【0033】
代わりに、エンジンバルブの開き移動が、作動ピストンの第1の表面42と作動シリンダーの第1端部56との間、又はそれらの均等な表面の物理的な接触により制限されるか、又は定められるべく、必要な緩衝用又は制御用の対策を備えて、後述の図2及び図5に示されるもののように、設計されてもよい。
【0034】
エンジンバルブヘッド22は、一般に、第1の表面28においてクロスオーバー通路110の圧力に、及び第2の表面29においてエンジンシリンダー102の圧力に曝されている。
【0035】
第1スプリング保持器、すなわち、空圧ピストン78の断面積は、エンジンバルブヘッドの断面積と実質的に等しいので、空圧シリンダー84の圧力が充填オリフィス86を介しての流体連絡のせいでクロスオーバー通路の圧力に実質的に等しいとき、空圧ピストン78での空圧力は、実質的にエンジンバルブの第1の表面28での圧力の力を相殺する。代わりに、空圧ピストン78の断面積は、エンジンバルブヘッド22の断面積より、大きいか小さいで、実質的である必要はないが、かなりな程度相違してもよい。例えば、空圧ピストンの断面積がより大きければ、特別なエンジンバルブの開き力を提供するので、比較的小さな流体駆動装置30でも十分である。
【0036】
このシステムはまた、種々の摩擦力、安定状態の流れの力、過渡時の流れの力、及び他の慣性力を経験する。安定状態の流れの力は、流れに誘起される速度変動、すなわち、ベルヌーイ効果による流体静力学的圧力の再配分によって生じる。過渡時の流れの力は流体の慣性力である。他の慣性力は、ここでは流体を含み、慣性を有する対象物の加速から生じ、そして、それらは、大きな加速度又は敏速なタイミングの故に、エンジンバルブアセンブリにおいて実質的である。
【0037】
出力停止状態
出力停止状態では、全ての流体供給源P_H及びP_Lは、低い、又はゼロのゲージ圧力である。作動ピストン40の総計の流体力は実質的にゼロに等しい。エンジンバルブは、戻りスプリング72による単独で、着座、すなわち、閉鎖される。この着座は、仮に空圧ピストン78がエンジンバルブヘッド22よりも小さな直径を有し、及びクロスオーバー通路110がなお十分に加圧されているなら、特に空気貯留タンクを備える空気-ハイブリッドへの適用例において、より確実である。
【0038】
出力停止状態では、作動3‐ウエイバルブ90の標準位置は、必然性はないが、好ましくは図1に示されたようなその右側位置94であり、その結果、確実なエンジンバルブの着座が重要すなわちクリティカルであるときも、第2の流体空間54が、低圧力P_L流体ラインに流体連絡し、且つ、確実に低い又はゼロのゲージ圧力にある。エンジンが停止された直後は、高圧力P_H流体ラインがまだ加圧されているかもしれない。エンジンのスタート時には、エンジンバルブ20は、バルブ90を能動的に切り替えることなく、閉じられた位置に保持されてもよい。
【0039】
始動
出力停止状態からシステムを始動するためには、全ての流体供給源が加圧され、そして、作動3‐ウエイバルブ90が標準又は能動制御により、図1に示されるように、その右位置に固定される。エンジンバルブ20は、少なくとも戻りスプリング72により、図1に示されるように、閉鎖すなわち着座位置に固定されている。
【0040】
バルブの開き及び閉じ
エンジンバルブ20を開くために、作動3‐ウエイバルブ90がその左位置92に切替えられる。第2の流体空間54は高圧力P_H供給源に第2の流れ機構を介して開かれ、一方、第1の流体空間52は低圧力P_L供給源に露出されたまま残る。結果として生じる作動ピストン40への差動圧力による力は、第1の方向(すなわち、図1で上方向)であり、スプリング力に主に打ち勝ち、エンジンバルブ20を開き駆動する。同時に、エンジンバルブ20への下向きの差動空気圧による力は、空圧シリンダー84がクロスオーバー通路110の圧力と同じ圧力下にあることを考慮すると、空圧ピストン78への上向きの差動空気圧による力により実質的に釣り合わされる。分割サイクルエンジンでは、エンジンバルブへの支配的な力はクロスオーバー通路110からの空気圧力による力である。空圧ピストン78を組み込むことにより、この大きな力に釣り合い且つ対抗するのを助ける。さもなければ、極めて大きな、エネルギー重視のアクチュエーターが要求される。
【0041】
エンジンバルブ20が開くやいなや、エンジンシリンダー102は急速に充填され、エンジンバルブ20がその開きストローク中間点を通過するよりも十分前に、その圧力は短時間内にクロスオーバー通路の圧力に到達し、結果として、エンジンバルブの表面28及び29での差動圧力の急速な消滅が生じる。同じ短時間中に、空圧シリンダー84内の圧力、及び空圧ピストン78への差動圧は、その制限され、予め定められた初期容積、エンジンバルブの運動に関連付けられたその急速な容積拡張、充填オリフィス86を介しての制限された空気流入量、及び空圧ピストン78が、図1に示される、予め定められた距離L1だけ空圧シリンダー84の拡張された頂部分118へ上方に移動するときの空気の流出の故に、急速に低下する。
【0042】
開きストロークの残り、すなわち、距離L1を越えた期間は、空圧ピストン78及びエンジンバルブ20への空気圧力の力は最小であり、そして、作動ピストン40は、エンジンバルブ20を第1の方向(すなわち、図1で上方向)に、戻りスプリング72からの増大するスプリング力に抗して、構成のスプリング質量の性質を考慮すると、-幾らかのオーバーシュート及び減衰された振動を伴い動的であると期待される、スプリング力及び作動ピストン40を横切る流体の差動力が釣り合わされた、エンジンバルブがその全開位置に到達するまで、駆動し続ける。しかしながら、より明確なリフト、すなわち、全開位置を有するために、他の好ましい実施形態(図2及び4)に示されるように、対策がある。
【0043】
エンジンバルブ20は、作動3‐ウエイバルブ90がその左位置92に留まる限り開いたまま残る。この期間中、空圧シリンダー84は、充填オリフィス86から空気の小さな流れを受け入れ続け、及び空圧ピストン78とその頂部の延長されたシリンダー壁118との間の実質的な隙間を介しての空気の流出を続ける。このエネルギー損失は、空圧ピストン78が空圧シリンダー84の低い部分に戻るまで続くであろう。しかしながら、このエネルギー損失は、充填オリフィス86の制限的性質、及び全体の熱サイクルに対する制限されたエンジンバルブ開き期間によって最小にされている。
【0044】
エンジンバルブを閉じ始めるためには、作動3‐ウエイバルブ90がその右位置94に切替えられ、及び第2の流体空間54が低圧力P_L流体供給源に開き戻され、結果として作動ピストン40を横切る差動圧力を実質的にゼロに帰させる。戻りスプリング72はエンジンバルブ20を下向きに駆動することができる。空圧ピストン78が空圧シリンダー84の延長された部分118を通過するとき、空圧ピストン18と空圧シリンダー84の壁との間に、再度、実質的に気密シールが確立され、そして、エンジンバルブ20、かくて空圧ピストン18が下向きに移動するにつれて、主にシリンダー容積の縮小の故に、空圧シリンダー内の圧力が上昇し始める。積み増される圧力はまた、充填オリフィス86からの流れでも助けられる。空圧シリンダー84は空圧スプリングのように機能し、エンジンバルブ20の前進を遅くする。そして、結局、エンジンバルブ20がエンジンバルブシート26に到達するとき、軟着座の達成を助ける。
【0045】
エンジンバルブの着座ないしは着地、及びその直後のあたりでは、燃焼の効果の故に、エンジンシリンダーの圧力はすぐにクロスオーバー通路の圧力を超え、第1の方向、すなわち、上向きの過渡的な差動圧力による力となる。戻りスプリング72の予荷重は、エンジンバルブについてのこの過渡的な上向きの差動の力、及びまた、空圧シリンダー84からの圧力による力に抗して、エンジンバルブ20を着座位置に保持することができるように設計されるべきである。しかしながら、空圧シリンダーの圧力は、この瞬間、全クロスオーバーの圧力と等しくない。それは、空圧シリンダー84の延長部分118を介しての早期の流出、及び充填オリフィス86の制限的な性質により、意図的にそうされている。
【0046】
その後、エンジンシリンダーの圧力は、容積がさらに膨張するにつれ、クロスオーバー通路の圧力よりも低く下がる。空圧シリンダーの圧力は、エンジンの熱サイクルの残りの間に充填オリフィス86からの制限された流れを通じてさらに上昇する。これはゆっくりであるが、次のエンジンバルブの開き事象に対して用意するには十分に確実である。
【0047】
図2は、流体駆動装置30の設計においてある変形を特徴とする本発明の代替的な実施形態を描写している。第1のポート60と第1の流体空間52との間の流体連絡の手段である、第1の流れ機構は、第1のアンダーカット32及び少なくとも1つの第1の緩衝用溝33を含んでいる。作動ピストンの第1の表面42が、開きストロークの間に、第1のアンダーカット32を長手方向で第1の方向に通過するとき、少なくとも1つの第1の緩衝用溝33を介しての制限された出口のみを有して、作動流体は第1の流体空間52内に実質的に捕捉され、結果として移動速度を低下させ、及び潜在的振動を低減させる助けとなる緩衝作用を生じさせる。そのように望まれるときは、作動シリンダーの第1の端部が、作動ピストンの第1の表面42に対する固定のストッパー、かくて良好に規定されたエンジンバルブリフトを提供すべく、長手方向に配列されてもよい。仮にそのように望まれるときは、チェックバルブ(図2には示されていない)が、キャビテーションを避けるためエンジンバルブの閉じストロークの始めの間に、第1のポート60から第1の流体空間52の端部への一方向の流れを許容すべく配列されてもよい。
【0048】
同様に、第2のポート62と第2の流体空間58との間の流体連絡の手段である、第2の流れ機構は、第2のアンダーカット34及び少なくとも1つの第2の緩衝用溝35を含んでいる。作動ピストンの第2の表面44が、閉じストロークの間に、第2のアンダーカット34を長手方向で第2の方向に通過するとき、少なくとも1つの第2の緩衝用溝35を介しての制限された出口のみを有して、作動流体は第2の流体空間58内に実質的に捕捉され、結果として移動速度を低下させ、及びエンジンバルブ20が軟着座する助けとなる緩衝作用を生じさせる。全てのエンジンの運転条件で、及びエンジンの寿命に亘り適応されねばならない、エンジンバルブ20が着座されるときに、エンジンバルブヘッド22とバルブシート26との間での固体接触及び緊密なシールを保証するために、作動シリンダーの第2の端部と作動ピストンの第2の表面44との間に、予め定められた長手方向の距離を残すことが望ましい。必要であるときは、追加のエンジンバルブラッシュ(隙間)調節装置(図2には示されていない)が、この及び他の実施形態に組み込まれるべきである。
【0049】
図2の実施形態はさらに、スプリング保持器アセンブリ74の設計における変更を特徴としている。第1のスプリング保持器78の代わりの第2のスプリング保持器80は、空圧ピストン80として機能する、すなわち、二役をする。それはまた、二組のバルブキーパー76b及び76cを含んでいる。この実施形態は、エンジンバルブステム24及びピストンロッド46が物理的に2つの別々の部品であり、必要な締結手段106又はその均等物を備えたスプリング保持器アセンブリ74により、作用的に一体化されることを許容している。
【0050】
この実施形態はまた、空圧ブースター85のための充填及び流出機構における変形例を示している。それは、空圧ピストン80bが、図2に示されるように、予め定められた距離L1だけ上方に移動したときに、空圧シリンダー84がその余分なガスを排出するための流出通路として、図1の延長壁118の代わりに、少なくとも1つの流出孔87を採用している。流出孔87には、流出工程に伴う騒音を低減するために、多孔質材料又はフィルター(不図示)が取り付けられてもよい。流出孔87の穿孔又は鋳造の労力及びコストを節約するために、エンジンバルブガイド120、及びかくて空圧シリンダー84を、一旦、空圧ピストン80bがその点まで上方に移動すると、結果として、広く開放された流出工程になり、空圧ピストン80bが空圧シリンダー84から係合解除されるのを生じさせる高さにまで、単に設計してもよい。
【0051】
また、空圧ピストン80bと空圧シリンダー84との間の半径方向の間隙において、いくつかの予め定められた変形例(図2には不図示)を用いてもよい。逆のアプローチを選ぶなら、いくつかのダイアフラム(図2では不図示)が、空気又はガスの質量排出を制御するために、少なくとも1つの流出孔87又はその均等物に全体的に依存しつつ、半径方向の間隙を通しての漏れを完全にシールするために用いられてもよい。また、望まれるときは、そのオン/オフの状態を制御するために、制御バルブ(図2には不図示)を用いてもよい。
【0052】
図2における充填オリフィス86bは、エンジンバルブ20が(図2に示されるように)予め定められた距離L2だけ上方に移動するとき、互いに対し開くことのない、オリフィスゲート89及びステムアンダーカット104を含んでいる制御機構によって、規制されてもよい。距離L2は、好ましくは、距離L1に等しいか、又はより短く、その結果、流出孔87又はその均等物が作用しているときは、充填オリフィス86bを介しての流れ、及びかくて充填工程は実質的に妨害される。充填機構におけるこの変形例は、不必要な、しかしながら小さいエネルギー損失を低減するのを助けるであろう。
【0053】
さて、本発明のもう1つの代替的実施形態の図面である、図3を参照する。この流体駆動装置30では、第2の流体空間54への流体供給を制御するために、比例又はサーボ3‐ウエイバルブ90cが用いられている。エンジンバルブ又はアクチュエーターの位置信号は、位置センサー(図3では不図示)を経由して集められてもよい。フィードバック制御は、エンジンバルブのリフト及び着座速度に亘る、より精確な制御を達成するのを助けるであろう。比例又はサーボバルブ90c自体は、ソレノイド、すなわち、他の電磁手段、電気水力学的パイロットバルブ、及び圧電式アクチュエーターを含む、種々の手段(図3には不図示)によって、直接に作動されてもよい。
【0054】
この実施形態はさらに、空圧シリンダー84のために充填工程に亘ってよりよい制御を達成することを助ける、充填通路112に沿う制御機構としての、充填バルブ108を特徴としている。充填バルブ108は、2つの主要な機能、(1)充填通路112を開き、エンジンバルブの開きストロークの前に、空圧シリンダー84が充填されるのを許容し、及び、空圧シリンダー84が流出されているとき、充填通路112を閉じ、特に、制限的な充填オリフィス86が用いられていないなら、漏れの流れを排除又は低減すること、(2)エンジン、又は、空気ハイブリッド車両のように、その特定のエンジンシリンダーが出力停止されたとき、充填通路112を完全にせき止め、クロスオーバー通路及び/又は空気貯留タンク内の加圧された空気の漏洩を最小化し、且つ、保持すること、のうちの少なくとも1つの機能を有している。第1の機能については、1つの充填バルブ108が分割4ストロークサイクルエンジンの各々の動力シリンダーに対して必要である。何故ならば、各動力シリンダーは、それの特異なタイミングを有しているからである。もしも、第2の機能のみが必要とされるなら、充填バルブ108が個々の動力シリンダー(図3では不図示)のための支流の充填通路(図3では不図示)へ結局は分岐する共通の充填通路(図3では不図示)を制御する状態で、選択肢としてエンジン全体について唯一の充填バルブ108を用いてもよい。さらに、第1の機能のためには、充填バルブ108は、オン/オフバルブの代わりに、選択肢として比例バルブであってもよい。比例バルブであることによって、充填バルブ108は、種々の機能、耐久性、及びNVHの必要性のために、例えば、空圧シリンダー84内の空気圧力を能動的に制御することができる。
【0055】
この、及び他の図で、充填通路112はクロスオーバー通路110に接続されている。選択肢として、それは、空気貯留タンク(空気ハイブリッド車両の場合)、又は別の貯留器(不図示)に接続されてもよい。別の貯留器は、空圧シリンダー84のための最適な充填工程を達成するのを助けるべく調節され得るそれ自体の圧力を有してもよい。
【0056】
さて、本発明のもう1つの代替的実施形態の図である、図4を参照する。この場合、第1及び第2の流体空間52及び54の両者への流体供給を制御するために、比例ないしはサーボ4ウエイバルブ90dが用いられている。この実施形態は、第1及び第2の方向の両方に能動的に制御された作動力を提供することができる。選択肢として、第1の流体空間52を通って長手方向に延在し、両端部を有するピストンロッドとなっている。偏倚された、すなわち、非対称な差動の流体力を有するために、ピストンロッドの2つの端部は、より小さなロッド直径を有する側がより大きな有効流体圧力表面積を有する状態で、2つの異なる直径を有してもよい。
【0057】
さらにもう1つの変形例ないしは選択肢は、その流出機構の欠如である。第2の方向への作動力は、エンジンバルブが閉じている際に、空圧ブースター85からの高い空気圧力での力に打ち勝つのを容易に助ける。流出機構の排除は、空圧ブースター85の構成を単純化する助けとなる。流出機構又は実質的な漏洩がなくても、充填オリフィス86を含む充填機構は、クロスオーバー通路又は空気貯留タンクの圧力レベルの変動を吸収すべく空圧ブースター85内の圧力及び空気質量レベルを調整するために必要とされている。アクチュエーターは、例えば、クロスオーバー通路の圧力が低いとき、低いブースト力を必要とする。この意味で、充填機構はまた釣り合わせ機能を有しており、このことは、流出機構を備える空圧ブースターについても該当する。
【0058】
用途に依存して、図4の実施形態の残りは、低い空気圧力での力がエンジンバルブの着座工程に対して理想的であるなら、(図1ないし3に図解された)以前の実施形態で特徴とされた流出機構の1つと一体化されてもよい。
【0059】
さて、本発明のさらにもう1つの代替的実施形態の図である、図5を参照する。この実施形態では、電磁駆動装置130が、図1ないし図4の流体駆動装置に置き換わっている。電磁駆動装置130は、ハウジング132、その内部の頂部から底部までに、第1の電磁石134、接極子室146、及び第2の電磁石136を含んでいる。第1及び第2の電磁石134及び136は、詳細は図5に示されていない、それらの電気巻き線及び積層スタックをさらに含んでいる。接極子138は、接極子室46内で、且つ、第1及び第2の電磁石34及び36の間に配置され、そして接極子ロッド140に固く接続されている。接極子ロッド140は、第2の電磁石136及びハウジング132を通って摺動可能に配置され、そしてエンジンバルブステム24に作用的に連結されている。
【0060】
励磁されると、第1及び第2の電磁石134及び136は、接極子138を第1(頂)の方及び第2(底)の方向へ、それぞれ、引きつける。第1の電磁石134は、接極子138を捕らえ、及びエンジンバルブ20を全リフトで開き保持できる。エンジンバルブ20、及び空圧ピストン80への空気圧力での力が実質的に釣り合わされたときに、エンジンバルブ20を急に開くためには、第1の電磁石134のみが戻りスプリング72からの予荷重に打ち勝つ必要がある。それは、クロスオーバーエンジンバルブのための全リフト、及び接極子138と電磁石134との間の空隙は小さいので、電磁力の高い非線形の性質にもかかわらず、達成可能である。このことは、必要であれば、空圧ピストン80をエンジンバルブヘッド22よりもかなりの程度大きく設計し、かくて第1の方向に差動の空気圧力での力を導入することにより、さらに助長される。
【0061】
全開位置からエンジンバルブ20を閉じるためには、第1の電磁石134が消磁され、そして、エンジンバルブ20が、必要ならば、励磁された第2の電磁石136からの引きの助けを伴う、戻りスプリング72の戻り力により押し下げられる。閉じの後半局面の間には、空圧シリンダー86が容積の縮小及び選択肢としての充填オリフィス86bを介しての充填作用でもって加圧され、そして、それが、軟着座を達成すべくエンジンバルブ20を速度低下させる助けとなる。さらなる遅延作用は、運転上の必要性又はフィードバック信号に依存して、第1の方向に所望の引張り力を生じさせることになる、第1の電磁石134を制御された方法で再励磁することにより達成される。
【0062】
第2の電磁石136からの第2の方向への引張り力はまた、低いスプリングの予荷重が望まれる、さもなければ、動力シリンダー102の圧力がクロスオーバー通路110の圧力をかなりの程度超えるときに、少なくとも燃焼の一部の間に、エンジンバルブ20を着座した状態に保持する際、戻りスプリング72を補助し得る。
【0063】
仮に、空圧ブースター85が、図5の流出孔87のような流出機構を含むなら、第2の電磁石136は、仮に戻りスプリング72及び他の関連する構成部品が種々の機能のために十分であるなら排除し得る、選択肢としての構成要素である。
【0064】
しかしながら、図4に示されるような、流出機構なしの、空圧ブースターの設計を選ぶのであれば、第2の電磁石136は必須である。この場合、第2の電磁石136は、空圧ブースターからの力に釣り合わせるための、エンジンバルブへの高い差動空気圧力での力がないときは、エンジンバルブが閉じている間、空圧ブースターからの高い空気圧力での力に打ち勝つのを助けるために、第2の方向への作動力を発生することが必要である。
【0065】
図1ないし図5において、空圧ブースター85の種々の実施形態は、エンジンバルブを急に開くために、エンジンバルブの第1の表面28への初期圧力での力に打ち勝つべく、特に開発されている。さらに、空圧ブースター85は、その流出機構を介して、エンジンバルブヘッドに掛かる差動圧力の力が実質的により小さいとき、バルブの閉じに対するその圧力の力の大きさを縮小することができる。この空圧ブースター85によれば、図1ないし図4の流体駆動装置30、及び図5の電磁駆動装置130は、エンジンバルブの開き及び閉じにおいて、より力ずくでない部分を取り扱うことができる。空圧ブースター85の種々の実施形態の効果的な一体化は、上述の流体及び電磁の駆動装置30及び130の一体化に限定されない。実際、エンジンバルブの加速、減速、及び着座制御のための十分な力及び制御を備える全ての駆動装置は、大きい初期開き力が空圧ブースター85によって面倒を見られる状態で、なすであろう。
【0066】
上の説明の全てにおいて、スイッチ及び/又は制御バルブの各々は、単段タイプ又は複段タイプのいずれであってもよい。各バルブは、(スプールバルブのような)リニアータイプ又はロータリータイプのいずれであってもよい。各バルブは、電気的、電磁的、機械的、圧電的、又は流体手段によって、駆動、すなわち、案内されてもよい。
【0067】
いくつかの図解及び説明において、流体媒体は油圧又は液圧の形態であり得、又は意味し得る。多くの場合、同じ概念が、適切なスケーリングで、空圧のブースター及びシステムに対し適用し得る。このように、ここに用いられる、用語、「流体」は、液体及び気体の両者を含むべく意味されている。また、ここまでの図解及び説明において、本発明の用途は、分割4ストロークサイクル内燃機関のバルブ制御に予め設定されており、及びそのようには限定されない。本発明は、動作の敏速及び/又は高い初期力制御が必要とされる他の状況に適用されてもよい。
【0068】
本発明が好ましい実施形態を参照して説明されたが、当業者は本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく形態及び細部で変更がなされ得ることを認識するであろう。このように、以上の詳細な説明は限定するよりもむしろ例示とみなされることが意図され、及び本発明の範囲を規定すべく意図されているのは添付の請求項(その全ての均等物を含む)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の軸線と第1の方向及び第2の方向とを規定するハウジング、及び少なくとも第1の方向への作動力を発生する作動機構を含む駆動装置、
該作動機構に作用的に連結され、該作動機構を第2の方向へ付勢する少なくとも1つの戻りスプリング、及び
該作動機構に作用的に連結され、該作動機構を第1の方向へ付勢する空圧ブースターであって、駆動装置に第1の方向でブースト力を与える空圧ブースター、
を備えることを特徴とするアクチュエーター。
【請求項2】
該空圧ブースターは、
空圧シリンダー、
移動範囲の少なくとも一部について空圧シリンダーに摺動可能に配置された空圧ピストン、及び
充填機構であって、エンジンの熱サイクルの少なくとも一部の間に、高圧のガス源からの加圧空気でもって該空圧シリンダーを充填し、その圧力を均衡させる充填機構、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエーター。
【請求項3】
該空圧ブースターは、流出機構であって、エンジンの熱サイクルの少なくとも一部の間に、該空圧シリンダーから過剰の空気を低圧のガスシンクに流出させる流出機構をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のアクチュエーター。
【請求項4】
該充填機構は、充填オリフィスであって、実質的に充填流速を制限する充填オリフィスを含むことを特徴とする請求項2に記載のアクチュエーター。
【請求項5】
該充填機構は、制御機構であって、該空圧シリンダーがその最小容積でないときの期間の実質的な部分の間に充填流れを実質的に 閉じ 0ff する制御機構を含むことを特徴とする請求項2に記載のアクチュエーター。
【請求項6】
該作動機構は、ステムを介して該アクチュエーターの負荷に作用的に連結されており、
該充填機構の該制御機構は、オリフィスgate及びステムのアンダーカットを含み、及び
充填の流れは、該オリフィスゲート及びステムのアンダーカットが長手方向でオーバーラップしたときに開き、アンダーラップしたときに閉じる、
ことを特徴とする請求項5に記載のアクチュエーター。
【請求項7】
該流出機構は、空圧シリンダーの壁上の少なくとも1つの流出通路であり、該流出通路は空圧ピストンが初期位置から予め定められた距離以上に移動したときに、加圧された空気に曝されるようになり、かくて過剰の空気を流出させることを特徴とする請求項3に記載のアクチュエーター。
【請求項8】
該少なくとも1つの戻りスプリング及び作動機構を作用的に連結し、且つまた空圧ピストンとして機能するスプリング保持器を備えることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエーター。
【請求項9】
駆動装置は流体の駆動装置であり、
該作動機構は、作動シリンダー、該作動シリンダー内に摺動可能に配置され、該作動シリンダーの内部容積を第1及び第2の流体空間に分割する作動ピストン、
作動ピストンに作用的に連結されたピストンロッド、及び
第1及び第2の流体空間に、それぞれ、流体連絡された第1及び第2のポート、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエーター。
【請求項10】
該第2のポートには、作動3‐ウエイバルブを介して高圧力及び低圧力の流体ラインが交互に供給されることを特徴とする請求項9に記載のアクチュエーター。
【請求項11】
該第2のポートには、比例3‐ウエイバルブを介して供給されることを特徴とする請求項9に記載のアクチュエーター。
【請求項12】
第1及び第2のポートには、4‐ウエイバルブを介して供給されることを特徴とする請求項9に記載のアクチュエーター。
【請求項13】
少なくとも1つの緩衝器をさらに含み、かくて、第2の方向への移動の終了近くで速度を実質的に遅らすことを特徴とする請求項9に記載のアクチュエーター。
【請求項14】
駆動装置は電磁駆動装置であり、
該作動機構は、接極子室、該接極子室に配置された接極子、該接極子に作用的に連結された接極子ロッド、及び接極子室の第1の方向側の少なくとも1つの第1の電磁石であって、これにより、励磁されたとき接極子を第1の方向に引くことを可能にする第1の電磁石を備えることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエーター。
【請求項15】
接極子室の第2の方向側の第2の電磁石であって、これにより、励磁されたとき接極子を第2の方向に引くことを可能にする第2の電磁石をさらに備えることを特徴とする請求項14に記載のアクチュエーター。
【請求項16】
長手方向の軸線と第1の方向及び第2の方向とを規定するハウジング、少なくとも第1の方向への作動力を発生する作動機構、及び作動機構の少なくとも一部に作用的に連結され長手方向の軸線に沿って移動可能なロッドを含む駆動装置、
エンジンバルブステムを介して該ロッドに作用的に連結されたエンジンバルブ、
該エンジンバルブステムに作用的に連結され、該エンジンバルブを第2の方向へ付勢する少なくとも1つの戻りスプリング、及び
該エンジンバルブステムに作用的に連結され、該エンジンバルブを第1の方向へ付勢する空圧ブースターであって、エンジンバルブに第1の方向でブースト力を与える空圧ブースター、
を備えることを特徴とするアクチュエーター。
【請求項17】
該空圧ブースターは、
空圧シリンダー、
移動範囲の少なくとも一部について空圧シリンダーに摺動可能に配置された空圧ピストン、及び
充填機構であって、高圧源からの加圧空気でもって該空圧シリンダーを充填し、その圧力を均衡させる充填機構、
を含むことを特徴とする請求項16に記載のエンジンバルブアクチュエーター。
【請求項18】
流出機構であって、エンジンの熱サイクルの少なくとも一部の間に、該空圧シリンダーから過剰の空気を低圧のガスシンクに流出させる流出機構をさらに含むことを特徴とする請求項17に記載のエンジンバルブアクチュエーター。
【請求項19】
該駆動装置は流体の駆動装置であり、
該作動機構は、作動シリンダー、該作動シリンダー内に摺動可能に配置され、該作動シリンダーの内部容積を第1及び第2の流体空間に分割する作動ピストン、該作動ピストンに作用的に連結されたピストンロッド、及び第1及び第2の流体空間に、それぞれ、流体連絡された第1及び第2のポートを備えることを特徴とする請求項16に記載のエンジンバルブアクチュエーター
【請求項20】
該駆動装置は電磁駆動装置であり、
該作動機構は、接極子室、該接極子室に配置された接極子、該接極子に作用的に連結された接極子ロッド、及び接極子室の第1の方向側の少なくとも1つの第1の電磁石であって、これにより、励磁されたとき、接極子を第1の方向に引くことを可能にする第1の電磁石を備えることを特徴とする請求項16に記載のエンジンバルブアクチュエーター。
【請求項21】
接極子室の第2の方向側の第2の電磁石であって、これにより、励磁されたとき、接極子を第2の方向に引くことを可能にする第2の電磁石をさらに備えることを特徴とする請求項20に記載ノエンジンバルブアクチュエーター。
【請求項22】
アクチュエーターを制御する方法であって、
(a) 長手方向の軸線、及び第1及び第2の方向を規定するハウジングと、少なくとも第1の方向の作動力を発生することができる作動機構と、一端部が作動機構の少なくとも一部に作用的に連結され、他端部がアクチュエーターの負荷に作用的に連結するために利用可能であるロッドとを備える駆動装置、
該ロッドに作用的に連結され、該ロッドを第2の方向に付勢する少なくとも1つの戻りスプリング、及び
空圧シリンダーと、ロッドに作用的に連結され、及び該ロッドを第1の方向に付勢する空圧ピストンと、該空圧シリンダーと高圧のガス源との間の制御された流体連絡を提供する充填機構とをさらに含む空圧ブースター、
の構成部品を含むアクチュエーターを提供すること、
(b) 作動機構から第1の方向への作動力を発生させることなく、及び第2の方向への実質的な負荷の力に対抗すべく第1の方向への実質的な力を生み出すために、空圧ブースターが充填機構を介して充填された状態で、アクチュエーターの負荷を、第2の方向に付勢する少なくとも1つの戻りスプリングからの力でもって、第2の方向の端部位置に保持し、そして空圧ブースター及び負荷からの力を含む残りの力の合計に打ち勝つこと、
(c) 少なくとも1つの戻りスプリング及び負荷からの力を含む残りの力の合計に打ち勝ち、及び負荷を第1の方向に加速させることができる状態で、作動機構から第1の方向への作動力を発生させることにより、アクチュエーターの負荷の第1の方向への移動を開始させること、
(d) 第1の方向への作動力でもって、目標ストロークに少なくとも到達するまで、第1の方向への移動を継続すること、
(e) 負荷が少なくとも戻りスプリングにより第2の方向へ加速されるように、第1の方向への作動力を少なくとも切ることによって、アクチュエーターの負荷の第2の方向への戻り移動を開始させること、
(f) 戻りスプリングからの力の減少、及び空圧ブースターからの力の増大でもって、負荷の速度を低下させて、戻り移動を完了させること、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
空圧ブースターは、流出機構をさらに含み、これにより空圧シリンダーから低圧のガスシンクとの間に制御された流体連絡を提供していることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
第1の方向への初期の移動の後、及び第2の方向への移動の終了の直前の期間の少なくとも一部の間、空圧ブースターからの力を低減するために、ブースターシリンダー内の過剰空気を、流出機構を介して流出させることをさらに含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
充填機構は、充填オリフィスを含み、これにより充填物の流速を実質的に制限することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項26】
充填機構は、制御機構を含み、これにより空圧シリンダーがその最小容積にないときの期間の実質的な部分の間、充填物の流れを実質的に閉じることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項27】
流出機構は、空圧ピストンが初期位置から予め定められた距離、又は越えて移動するとき、空圧シリンダー内の加圧された空気に曝されるようになる、空圧シリンダーの壁の少なくとも1つの通路であり、これにより過剰空気を流出させることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項28】
駆動装置は、流体式駆動装置であり、
作動機構は、作動シリンダー、作動シリンダーに摺動可能に配置され、作動シリンダーの内部容積を第1及び第2の流体空間に分割する作動ピストン、及び該第1及び第2の流体空間に、それぞれ、流体連絡する第1及び第2のポートを備え、及び
ロッドは、作動ピストンに作用的に連結されたピストンロッドであることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項29】
駆動装置は、電磁式駆動装置であり、
作動機構は、接極子室、接極子室に配置された接極子、及び接極子室の第1の方向側の少なくとも第1の電磁石を備え、これにより、励磁されたとき、接極子を第1の方向に吸引することができ、及び
ロッドは、接極子に作用的に連結された接極子ロッドであることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項30】
接極子室の第2の方向側に第2の電磁石をさらに含み、これにより、励磁されたとき、接極子を第2の方向に吸引することができることを特徴とする請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−525215(P2010−525215A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504028(P2010−504028)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/021339
【国際公開番号】WO2008/130374
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(504023903)スクデリ グループ リミテッド ライアビリティ カンパニー (30)
【Fターム(参考)】