説明

絶縁材料形成用組成物および絶縁膜

【課題】 低い誘電率の絶縁材料を形成できる化合物、該化合物を含有する絶縁材料形成用組成物、該組成物より得られる絶縁材料を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物、その加水分解物および/または縮合物を含有することを特徴とする絶縁材料形成用組成物。
【化1】


一般式(1)中、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はシリルオキシ基を表わす。ただし、R1〜R8で表される基のうち少なくとも1つは、置換基として下記一般式(2)で表わされる基を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基又はシリルオキシ基を表わす。
【化2】


一般式(S2)中、Xは加水分解性基を表し、R9はアルキル基、アリール基又はヘテ
ロ環基を表す。mは1〜3の整数を表わす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は絶縁材料形成用組成物に関し、さらに該組成物を用いて得られる誘電率、機械強度等の特性が良好な絶縁材料に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、T8かご型構造のシロキサン(シルセスキオキサン)を含有する絶縁膜形成用塗布型組成物が記載されており、架橋による高分子化で低誘電率の絶縁膜を得られることが示されている。また、機械的強度の記載はない。一方、半導体などのさらなる高集積化や多層化に伴い、より優れた導体間の電気絶縁性が要求されており、より低誘電率でかつ耐熱性、機械的強度(化学的機械的研磨(CMP)耐性)に優れる層間絶縁材料が求められるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−40554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、誘電率が低い絶縁材料に用いる化合物、及び該化合物を用いた絶縁材料形成用組成物、当該組成物より得られる絶縁膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は具体的には、下記の構成により達成することができる。
(1)下記一般式(1)で表される化合物、その加水分解物および/または縮合物を含有することを特徴とする絶縁材料形成用組成物。
【0006】
【化1】

【0007】
一般式(1)中、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はシリルオキシ基を表わす。ただし、R1〜R8で表される基のうち少なくとも1つは、置換基として下記一般式(2)で表わされる基を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基又はシリルオキシ基を表わす。
【0008】
【化2】

【0009】
一般式(S2)中、Xは加水分解性基を表し、R9はアルキル基、アリール基又はヘテ
ロ環基を表わす。mは1〜3の整数を表わす。
(2)一般式(1)で表わされる化合物として、一般式(2)で表される化合物及び/または一般式(3)で表される化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の絶縁材料形成用組成物。
【0010】
【化3】

【0011】
【化4】

【0012】
一般式(2)及び(3)中、R10〜R17は、一般式(S2)で表わされる置換基を表わす。n1〜n8は、各々独立に、2または3を表わす。
【0013】
【化5】

【0014】
18〜R19は、独立に、アルキル基を表わす。mは1〜3の整数を表わす。
【0015】
(3)更に一般式(4)により表される化合物、その加水分解物および/または縮合物を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の絶縁材料形成用組成物。
nSiX(4-n) (4)
式中、nは1〜3の自然数を表す。Aは、置換基を有していてもよい、炭素原子11個以上で形成されるカゴ型構造を含有する基であり、Xは加水分解性基を表す。
【0016】
(4)一般式(4)において、Aがジアマンチル基を含有することを特徴とする上記(3)に記載の絶縁材料形成用組成物。
【0017】
(5)更に一般式(5)で表される化合物、その加水分解物および/または縮合物を含有することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の絶縁材料形成用組成物。
【0018】
【化6】

【0019】
一般式(5)中、X1は、加水分解性基を表し、R1は、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、n1は1〜3の整数を表し、m1は2以上の整数を表す。L1は、2価の
連結基を表し、Aは、炭素原子11個以上で形成されるかご型構造を含有する基を表す。
【0020】
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の組成物から形成された絶縁材料。
(7)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の組成物から形成された絶縁膜。
【0021】
(8)上記(2)に記載の一般式(2)又は(3)で表わされる化合物。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の絶縁材料形成用組成物は、下記一般式(1)で表される化合物、その加水分解物および/または縮合物を含有する。
【0023】
【化7】

【0024】
1〜R8は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はシリルオキシ基を表わす。
1〜R8で表されるアルキル基の好ましい例としては、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基(例えば炭素数1〜20のアルキル基、好ましくはメチル基やエチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等)が挙げられる。
1〜R8で表されるアリール基の好ましい例としては、炭素数6〜20の置換又は無置換のフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
1〜R8で表されるアルコキシ基の好ましい例としては、炭素数1〜10の置換または無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基など)等が挙げられる。
1〜R8で表されるシリルオキシ基の好ましい例としては、炭素数1〜10の置換または無置換のシリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ基、エチルジメチルシリルオキシ基、ジメチルプロピルシリルオキシ基等)が挙げられる。
【0025】
ただし、R1〜R8で表される基のうち少なくとも1つは、置換基として下記一般式(S1)で表わされる基を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基又はシリルオキシ基を表わす。
【0026】
【化8】

【0027】
一般式(S1)中、Xで表わされる加水分解性基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シリルオキシ基、水酸基などが挙げられる。
Xとして好ましいのは、置換もしくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基など)、ハロゲン原子である。特に好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、塩素原子である。
【0028】
9で表されるアルキル基の好ましい例としては、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基
(例えば炭素数1〜20のアルキル基、好ましくはメチル基やエチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等)が挙げられる。
9で表されるアリール基の好ましい例としては、炭素数6〜20の置換又は無置換の
フェニル基、ナフチル基等が挙げらる。
9で表されるヘテロ環基の好ましい例としては、置換又は無置換のへテロ6員環(ピ
リジル、モルホリノ基、テトラヒドロピラニル等)、置換又は無置換のヘテロ5員環(フリル、チオフェン基、1,3−ジオキソラン−2−イル基等)等が挙げられる。
【0029】
一般式(1)で表される化合物として、一般式(2)または(3)で表される化合物が好ましい。
【0030】
【化9】

【0031】
【化10】

【0032】
一般式(2)及び(3)中、R10〜R17は、一般式(S2)で表わされる置換基を表わす。n1〜n8は、各々独立に、2または3を表わす。
【0033】
【化11】

【0034】
18〜R19で表わされるアルキル基は、R9で表わされるアルキル基と同様であり、m
は1〜3の整数を表わす。
【0035】
一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。
【0036】
【化12】

【0037】
【化13】

【0038】
【化14】

【0039】
【化15】

【0040】
一般式(1)で表わされる化合物は、例えば、対応する不飽和基を有するカゴ型シルセ
スキオキサン化合物に遷移金属錯体触媒の共存下で対応するシラン化合物を付加するヒドロシリル化反応あるいはハロゲン化されたカゴ型シルセスキオキサン化合物と対応するグリニアール(Grignard)試薬との反応により容易に合成できる。
【0041】
また、一般式(1)で表される有機ケイ素化合物とともに、他の公知のシリコン化合物(例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなど)を併用し、加水分解・縮合し、ケイ素酸素架橋化合物を得てもよい。
【0042】
材料の膜特性を向上させるため、必要に応じて、上記の一般式(1)で表される有機ケイ素化合物にさらに他の有機ケイ素化合物を添加してもよい。
【0043】
他の有機ケイ素化合物としては、下記一般式(4)で表される有機ケイ素化合物、その加水分解物および/または縮合物を添加するのが好ましい。
nSiX(4-n) (4)
式中、nは1〜3の自然数を表す。Aは、置換基を有していてもよい、炭素原子11個以上で形成されるカゴ型構造を含有する基であり、Xは加水分解性基を表す。
【0044】
一般式(4)において、Aは炭素原子11個以上で形成されるカゴ型構造を含有する基(カゴ型構造含有基)である。なお、カゴ型構造含有基は、カゴ型構造自体の一価の基であってもよい。
「カゴ構造」とは、共有結合した原子で形成された複数の環によって容積が定まり、容積内に位置する点は環を通過せずには容積から離れることができなような構造である。
【0045】
例えば、アダマンタン構造はカゴ型構造と考えられる。対照的にノルボルナン(ビシクロ[2,2,1]ヘプタン)などの単一架橋を有する環状構造は、単一架橋した環状化合物の環が容積を定めないことから、カゴ型構造とは考えられない。
【0046】
本発明のカゴ型構造は少なくとも11個以上の炭素原子で構成されることが特徴である。カゴ型構造は、好ましくは11〜30個、より好ましくは12〜20個、さらに好ましくは12〜14個の炭素原子で構成される。炭素原子数が11個以上であることで、充分な誘電率特性が得られる。
ここでいう炭素原子にはカゴ型構造に置換した連結基や置換基の炭素原子を含めない。例えば、1−メチルアダマンタンは10個の炭素原子で構成されるものとする。
【0047】
本発明のカゴ型構造を有する化合物は飽和の脂肪族炭化水素であることが好ましく、例えば、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、ドデカヘドラン等が挙げられ、特に低誘電率、塗布溶剤への良好な溶解性さらには絶縁膜中のブツ発生抑制の点でジアマンタンが好ましい。
【0048】
本発明におけるカゴ型構造は1つ以上の置換基を有していても良く、置換基の例としては、−Si(Am)(X)(3-m)(mは0〜2の整数を表す。A及びXは式(4)におけるものと同義である。)、ハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状のアルキル基(メチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル、プロペニル等)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル、フェニルエチニル等)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等)、炭素数2〜10のアシル基(ベンゾイル等)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(フェノキシ等)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基(フェニルスルホニル等)、ニトロ基、シアノ基、シリル基(トリエトキシシリル、メチルジエトキシシリル、トリビニルシリル等)等である。さらに好ましい置換基はフッ素原子、臭素原子、炭素数1〜5の直鎖、分岐、環状のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数2〜5のアルキニル基、シリル基である。これらの置換基はさらに別の置換基で置換されていてもよい。
【0049】
本発明におけるカゴ型構造は2〜4価であることが好ましい。より好ましくは、2または3価であり、特に好ましくは2価である。
【0050】
Aとしてのカゴ型構造含有基とケイ素原子の結合は、本発明の効果に悪影響を及ぼさない限り、そのカゴ型構造含有基の任意の位置で行うことができる。
好ましくは、カゴ型構造とケイ素原子とを連結する基を構成する原子数(置換基を含まない最短経路上に存在する原子数)が6以下であり、カゴ型構造とケイ素原子とが直結していることが特に好ましい。
【0051】
Xとしての加水分解性基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シリルオキシ基などが挙げられる。Xとして好ましいのは、置換もしくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基など)である。
【0052】
n=2または3の場合、複数のRは互いに同じ基であってもよいし、異なっていてもよい。n=1または2の場合、複数のXは互いに同じ基であってもよいし、異なっていてもよい。
【0053】
式(4)で表される化合物として、下記式により表される化合物が好ましい。なお、下記式におけるXはアルコキシ基である。
【0054】
【化16】

【0055】
他の有機ケイ素化合物としては、また、下記一般式(5)で表される化合物が好ましい。
【0056】
【化17】

【0057】
一般式(5)中、X1は、加水分解性基を表し、R1は、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、n1は1〜3の整数を表し、m1は2以上の整数を表す。L1は、2価の
連結基を表し、Aは、炭素原子11個以上で形成されるかご型構造を含有する基を表す。
1としての加水分解性基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基
、アシルオキシ基、シリルオキシ基、水酸基などが挙げられる。X1として好ましいのは
、置換もしくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基など)である。
【0058】
1は、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。R1で表されるアルキル基の好ましい例としては、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基(例えば炭素数1〜20のアルキル基、好ましくはメチル基やエチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等)が挙げられ、R1で表されるアリール基の好ましい例としては、炭素数6〜20の置換又は無置換のフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、R1で表されるヘテロ環基の好ましい例としては、置換又は無置換のへテロ6員環(ピリジル、モルホリノ基、テトラヒドロピラニル等)、置換又は無置換のヘテロ5員環(フリル、チオフェン基、1,3−ジオキソラン−2−イル基等)等が挙げられる。
【0059】
n1=2または3の場合、複数のX1は互いに同じ基であっても、異なっていてもよい。n1=1の場合、複数のR1は互いに同じ基であっても、異なっていてもよい。
【0060】
1は2価の連結基を表す。連結基の例としては、アルキレン基、アルケニレン基、ア
リーレン基、−O−、−S−、−CO−、−NR'−(R'は水素原子、アルキル基またはアリール基)、又はこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基等が挙げられる。上記連結基のうち、好ましくは、アルキレン基、アルケニレン基であり、特に好ましくはエチレン基、ビニレン基である。
【0061】
Aがジアマンタンのときm1は2〜4が好ましく、トリアマンタンのときm1は2〜6が好ましい。
【0062】
一般式(5)で表される化合物として、一般式(6)で表される化合物が好ましい。
【0063】
【化18】

【0064】
一般式(6)中、X31〜X34はそれぞれ、加水分解性基を表し、R3〜R34はそれぞれ
、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、n31〜n34は1〜3の整数を表し、m31+m32+m33+m34は、1〜4の整数を表す。L31〜L34はそれぞれアルキレン、ビニレン、アリーレン、−O−、−S−、−CO−、−NR'−(R'は水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)又はこれらの基を組み合わせた2価の連結基を表す。
31〜X34で表される加水分解性基は、X1で表されるそれと同義であり、好ましい態
様も同様である。
31〜R34で表されるアルキル基、アリール基又はヘテロ環基は、R1で表されるそれ
と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0065】
一般式(5)で表される化合物の具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。
【0066】
【化19】

【0067】
【化20】

【0068】
一般式(4)あるいは(5)で表される化合物を併用する場合、一般式(1)で表わされる化合物に対して、1〜1000モル%の範囲で用いるのが好ましく、10〜800モル%の範囲で用いるのがより好ましい。
【0069】
一般式(4)で表される化合物の分子量は、一般的には250〜1000、好ましくは280〜700である。
一般式(5)で表される化合物の分子量は、一般的には400〜2000、好ましくは450〜1500である。
【0070】
一般式(4)又は(5)で表わされる化合物は、シリコンの化学において広く知られた技法を使用して容易に調製することができ、例えば、対応する不飽和基を有する化合物に遷移金属錯体触媒の共存下で対応するシラン化合物を付加するヒドロシリル化反応あるいはハロゲン化されたカゴ型構造含有化合物とGrignard試薬との反応により容易に合成できる。
【0071】
併用する場合のさらに他の有機ケイ素化合物の例としては、下記一般式(A)で表される有機ケイ素化合物又はそれらをモノマーとするポリマーが挙げられる。
【0072】
【化21】

【0073】
一般式(A)中、Raはアルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Rbは、水素原子、アルキル基、アリール基又はシリル基を表わす。これらの基は更に置換基を有していてもよい。
qは0〜4の整数を表し、q又は4−qが2以上のとき、Ra又はRbはそれぞれ同一でも異なってもよい。また、該化合物同士は、Ra又はRbの置換基により互いに連結し、多量体を形成してもよい。
【0074】
一般式(A)のqは0〜2が好ましく、Rbはアルキル基が好ましい。さらにqが0の
ときの好ましい化合物の例としては、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)等が挙げられ、qが1又は2のときの好ましい化合物の例としては以下の化合物が挙げられる。
【0075】
【化22】

【0076】
一般式(A)で表される化合物を併用する場合、一般式(1)で表されるシラン化合物に対して、1〜200モル%の範囲で用いるのが好ましく、1〜100モル%の範囲で用いるのがより好ましい。
【0077】
上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物、必要により他の有機ケイ素化合物を併用して、加水分解・縮合してケイ素酸素架橋構造を有する化合物を得る方法は以下のとおりである。ケイ素酸素架橋構造とは、縮合により自ずと形成されるシロキサン結合(−(Si−O)n−)からなる架橋構造を指す。
シラン化合物を加水分解、縮合させる際に、上記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物、必要により他の有機ケイ素化合物を含む有機ケイ素化合物の総量1モル当たり0.5〜150モルの水を用いることが好ましく、1〜100モルの水を加えることが特に好ましい。添加する水の量は、膜の耐クラック性の点から0.5モル以上が好ましく、加水分解および縮合反応中のポリマーの析出やゲル化防止の点から150モル以下が好ましい。
【0078】
有機ケイ素化合物を加水分解、縮合させる際に、アルカリ触媒、酸触媒、又は金属キレート化合物を使用することが好ましい。
【0079】
アルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム
、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、
【0080】
ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ペンチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリメチルイミジン、1−アミノ−3−メチルブタン、ジメチルグリシン、3−アミノ−3−メチルアミンなどを挙げることができ、アミンあるいはアミン塩が好ましく、有機アミンあるいは有機アミン塩が特に好ましく、アルキルアミン、テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイドが最も好ましい。これらのアルカリ触媒は1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。
【0081】
酸触媒としては、無機あるいは有機のプロトン酸が好ましい。
無機プロトン酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸類(H3PO4、H3PO3、H427、H5310、メタリン酸、ヘキサフルオロリン酸など)、硼酸、硝酸、過
塩素酸、、テトラフルオロ硼酸、ヘキサフルオロ砒素酸、臭化水素酸など、あるいはタングストリン酸、タングテンペルオキソ錯体などの固体酸等が挙げられる。
【0082】
有機プロトン酸としては、カルボン酸類(シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、マレイン酸、メチルマレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メロット酸、アラキドン酸、シキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、サリチル酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、p−アミノ安息香
酸、ギ酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、リンゴ酸、グルタル酸の加水分解物、無水マレイン酸の加水分解物、無水マレイン酸の加水分解物、トリフルオロ酢酸、安息香酸、置換安息香酸など)、リン酸エステル類(例えば炭素数1〜30、リン酸メチルエステル、リン酸プロピルエステル、リン酸ドデシルエステル、リン酸フェニルエステル、リン酸ジメチルエステル、リン酸ジドデシルエステルなど)、亜リン酸エステル類(例えば炭素数1〜30、亜リン酸メチルエステル、亜リン酸ドデシルエステル、亜リン酸ジエチルエステル、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸ジドデシルエステルなど)、スルホン酸類(例えば炭素数1〜15、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ヘキサフルオロベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸など)、イミド類(例えばビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸、トリフルオロメタンスルホニルトリフルオロアセトアミドなど)、ホスホン酸類(例えば炭素数1〜30、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジフェニルホスホン酸、1,5−ナフタレンビスホスホン酸など)などの低分子化合物、あるいは、ナフィオンに代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー、側鎖にリン酸基を有するポリ(メタ)アクリレート(特開2001−114834号)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(特開平6−93111号)、スルホン化ポリエーテルスルホン(特開平10−45913号)、スルホン化ポリスルホン(特開平9−245818号)などのプトロン酸部位を有する高分子化合物が挙げられる。
【0083】
金属キレート化合物としては、例えば、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)
チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、
【0084】
モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、
【0085】
モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタンなどのチタンキレート化合物;トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、
【0086】
トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトア
セテート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、
【0087】
トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、
【0088】
テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物;などを挙げることができ、好ましくはチタンまたはアルミニウムのキレート化合物、特に好ましくはチタンのキレート化合物を挙げることができる。これらの金属キレート化合物は、1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。
【0089】
上記触媒及びキレート化合物の使用量は、総量として、有機ケイ素化合物の1モルに対して、通常0.00001〜10モル、好ましくは0.00005〜5モルである。触媒の使用量が上記範囲内であれば、反応中のポリマーの析出やゲル化の恐れが少ない。
【0090】
有機ケイ素化合物の縮合及び加水分解を行うときの温度は通常0〜100℃、好ましくは10〜90℃である。時間は通常5分〜200時間、好ましくは15分〜40時間である。
このようにして、一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の加水分解物、縮合物を調製することができる。
【0091】
なお、上記反応に用いる溶媒は、溶質である有機ケイ素化合物を溶解するものであれば特に制限はないが、好ましくはケトン類(シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン等)、カーボネート化合物(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、複素環化合物(3−メチル−2−オキサゾリジノン、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等)、環状エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、鎖状エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、
プロピオニトリル、ベンゾニトリル等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、2−メトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、γ-ブチロラクトン、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等)、非プロトン極性物質(ジメチルスルホキシド、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、非極性溶媒(トルエン、キシレン、メシチレン等)、塩素系溶媒(メチレンジクロリド、エチレンジクロリド等)、ジイソプロピルベンゼン、水等を用いることができる。
【0092】
上記の中でも、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、γ-ブチロラクトンなどのエステル類、エチレンカーボネートなどのカーボネート類、シクロヘキサノンなどのケトン類、非プロトン性極性物質、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類、非極性溶媒、水が好ましい。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0093】
上記の中でも、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレンカーボネート、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、キシレン、メシチレン、ジイソプロピルベンゼンを挙げることができる。
【0094】
〔組成物〕
本発明のケイ素酸素架橋化合物を含有する組成物は、通常、一般式(1)で表される有機ケイ素化合物自体、上記で調製された該有機ケイ素化合物の加水分解物及び縮合物の少なくともいずれかを、必要により、加水分解、縮合に用いる溶媒として例示したような有機溶剤、水などに溶媒に溶解して調製される。
【0095】
本発明の組成物の全固形分濃度は、好ましくは、2〜30質量%であり、使用目的に応じて適宜調整される。組成物の全固形分濃度が2〜30質量%であると、塗膜の膜厚が適当な範囲となり、また組成物の保存安定性もより優れるものである。
【0096】
本発明の組成物を塗布、乾燥、好ましくは加熱することにより、良好な絶縁材料を形成することができる。特に、良好な絶縁膜を提供することができる。
【0097】
本発明の組成物を、シリコンウエハ、SiO2 ウエハ、SiNウエハなどの基材に塗布する際には、スピンコート、浸漬法、ロールコート法、スプレー法などの塗装手段が用いられる。
【0098】
この際の膜厚は、乾燥膜厚として、1回塗りで厚さ0.05〜1.5μm程度、2回塗りでは厚さ0.1〜3μm程度の塗膜を形成することができる。その後、常温で乾燥するか、あるいは80〜600℃程度の温度で、通常、5〜240分程度加熱することにより、ガラス質または巨大高分子、またはその混合物の絶縁膜を形成することができる。この際の加熱方法としては、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用することが出来、加熱雰囲気としては、大気下、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、真空下、酸素濃度をコントロールした減圧下などで行うことができる。
【0099】
より具体的には、本発明の組成物を、例えばスピンコート法により、基板(通常は金属配線を有する基板)上に塗布し、300℃以下の温度で第一の熱処理を行うことにより溶媒を乾燥させるとともに、組成物に含まれるシロキサンを架橋させ、次いで300℃より高く450℃以下の温度(好ましくは330〜400℃)で、一般的には1分〜10時間、第二の熱処理(アニール)を行うことにより低誘電率の絶縁膜を形成できる。
【0100】
本発明の組成物に、熱分解性化合物などの空孔形成剤をくわえてもよい。空孔形成剤としては、例えば、特表2002−530505号に記載されている気孔発生体が挙げられる。
【0101】
本発明の組成物により形成した絶縁膜の上には、シリコン酸化膜等の別の絶縁膜を、例えば気相成長法等により、形成してもよい。これは、本発明により形成した絶縁膜を外気と遮断し、膜中に残留している水素やフッ素の減少を抑制するのに効果があるからである。また、この別の絶縁膜は、その後の工程での処理(例えばCMPによる平坦化等の処理)で本発明による絶縁膜が損傷を被るのを防止するのにも有効である。
【実施例】
【0102】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
【0103】
〔合成例1:化合物1−1の合成〕
【0104】
【化23】

【0105】
窒素気流中で、M−1(アルドリッチ社製)(3.2g)と白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(アルドリッチ社製)20μlをトルエン25mlに溶解し、70℃に加熱した。そこへ、トリエトキシシラン(10.0g)を発熱に注意しながら徐々に滴下した。滴下終了後、さらに90℃で3時間反応させた後、反応混合物を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、5.3gの1−1(白色結晶)を得た。1H-NMR(CDCl3)δ3.8(48H,q)1.2(7
2H,t)0.6(32H,m)
【0106】
〔合成例2:化合物1−4の合成〕
【化24】

【0107】
窒素気流中で、M−2(アルドリッチ社製)(2.0g)と白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(アルドリッチ社製)20μlをトルエン15mlに溶解し、70℃に加熱した。そこへ、ジエトキシメチルビニルシラン(3.0g)を発熱に注意しながら徐々に滴下した。滴下終了後、さらに同温度で1時間反応させた後、反応混合物を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、3.5gの1−4(油状)を得た。1H-NMR(CDCl3)δ3.7(32H,q)1.2(48H,t)0.54(32H,broad s)0.14-0.10(72H,m)
【0108】
〔合成例3:化合物1−5の合成〕
【0109】
【化25】

【0110】
窒素気流中で、M−3(アルドリッチ社製)(2.0g)と白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(アルドリッチ社製)20μlをトルエン15mlに溶解し、70℃に加熱した。そこへ、トリエトキシビニルシラン(3.6g)を発熱に注意しながら徐々に滴下した。滴下終了後、さらに同温度で1時間反応させた後、反応混合物を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、4gの1−5(油状)を得た。1H-NMR(CDCl3)δ3.8(48H,q)1.2(72H,t)0.5-0.6(32H,m)0.14 (48H,s)
【0111】
〔実施例1:塗布液の作製〕
7ミリモルの化合物1−1をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)に溶解して10質量%の溶液を調製した。
【0112】
〔実施例2〜3:塗布液の作製〕
表1に示した化合物、および溶媒を用いて、実施例1と同様な操作にて、塗布液を調製した。
【0113】
【表1】

【0114】
〔実施例4:塗布液の調製〕
7ミリモルの化合物1−1をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)に溶解して10質量%の溶液を調整した。42ミリモルの硝酸水溶液(濃度200ppm)を滴下し、反応液を室温で5時間撹拌した。その後、撹拌を停止し、減圧濃縮して低沸点物質、水を除き、さらにろ過を行った。
【0115】
〔実施例5〜7:塗布液の作製〕
使用した化合物、および溶媒を表2に記載したものに替えたことを除いて、実施例4を繰り返し、塗布液を調製した。
【0116】
【表2】

【0117】
化合物Aは以下の化合物である。
【化26】

【0118】
〔比較例:塗布液の作製〕
化合物Aを用いて実施例4と同様の条件で塗布液を調製した。
【0119】
〔絶縁膜の作製〕
上記のようにして調製した塗布溶液をシリコン基板上に膜厚4000Åになるようにスピンコートし、ホットプレート上で150℃1分間にわたって乾燥を行い、溶剤を除去した。次いで,乾燥後のシリコン基板をクリーンオーブンに移し、酸素濃度10ppm以下の窒素中400℃で30分間にわたって熱処理を行った。目的とする絶縁膜が得られた。
【0120】
〔誘電率の測定〕
温度24℃湿度50%の条件で24時間放置した後、フォーディメンジョンズ社製水銀プローブとヒューレットパッカード社製HP4285A LCRメーターを用い1MHz
で誘電率(測定温度:25℃)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0121】
〔弾性率(ヤング率)の測定〕
膜厚の1/10深度における弾性率(測定温度25℃)を、ナノインデンターSA2(MTS社製)を用いて測定した。測定結果を表2に示す。
【0122】
【表3】

【0123】
本発明の組成物により形成した絶縁膜は、低誘電率を示し、かつ機械的強度も高く、優れた性能を有することがわかる。
【0124】
〔実施例8:塗布液の作製〕
7ミリモルの化合物1−1および1.75ミリモルの化合物2−1をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)に溶解して10質量%の溶液を調製した。55ミリモルの硝酸水溶液(濃度200ppm)を滴下し、反応液を室温で5時間撹拌した。その後、撹拌を停止し、減圧濃縮して低沸点物質、水を除き、さらにろ過を行った。
【0125】
〔実施例9〜12:塗布液の作製〕
表4に示した化合物、および溶媒を用いて、実施例8と同様な操作にて、塗布液を調製した。表4における有機珪素化合物は、先に例示したものである。
【0126】
【表4】

【0127】
実施例8〜12の塗布液を用いて、実施例1〜7の塗布液の場合と同様にして、絶縁膜を作製し、評価した。結果を表5に示す。
【0128】
【表5】

【0129】
本発明に従った他の有機ケイ素化合物を併用した組成物により形成した絶縁膜は、低誘電率を示し、かつ機械的強度がより高く、優れた性能を有することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物、その加水分解物および/または縮合物を含有することを特徴とする絶縁材料形成用組成物。
【化1】

一般式(1)中、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はシリルオキシ基を表わす。ただし、R1〜R8で表される基のうち少なくとも1つは、置換基として下記一般式(S1)で表わされる基を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基又はシリルオキシ基を表わす。
【化2】

一般式(S1)中、Xは加水分解性基を表し、R9はアルキル基、アリール基又はヘテ
ロ環基を表す。nは1〜3の整数を表わす。
【請求項2】
一般式(1)で表わされる化合物として、一般式(2)で表される化合物及び/または一般式(3)で表される化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の絶縁材料
形成用組成物。
【化3】

【化4】

一般式(2)及び(3)中、R10〜R17は、一般式(S2)で表わされる置換基を表わす。n1〜n8は、各々独立に、2または3を表わす。
【化5】

18〜R19は、独立に、アルキル基を表わす。mは1〜3の整数を表わす。
【請求項3】
更に一般式(4)により表される化合物、その加水分解物および/または縮合物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁材料形成用組成物。
nSiX(4-n) (4)
式中、nは1〜3の自然数を表す。Aは、置換基を有していてもよい、炭素原子11個以上で形成されるカゴ型構造を含有する基であり、Xは加水分解性基を表す。
【請求項4】
一般式(4)において、Aがジアマンチル基を含有することを特徴とする請求項3に記載の絶縁材料形成用組成物。
【請求項5】
更に一般式(5)で表される化合物、その加水分解物および/または縮合物を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の絶縁材料形成用組成物。
【化6】

一般式(5)中、X1は、加水分解性基を表し、R1は、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、n1は1〜3の整数を表し、m1は2以上の整数を表す。L1は、2価の
連結基を表し、Aは、炭素原子11個以上で形成されるかご型構造を含有する基を表す。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の組成物から形成された絶縁材料。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の組成物から形成された絶縁膜。
【請求項8】
一般式(2)で表わされる化合物。
【化7】

一般式(2)中、R10〜R17は、各々独立に、一般式(S2)で表わされる置換基を表わす。n1〜n8は、各々独立に、2または3を表わす。
【化8】

一般式(S2)中、R18〜R19は、独立に、アルキル基を表わす。mは1〜3の整数を表わす。
【請求項9】
一般式(3)で表わされる化合物。
【化9】

一般式(3)中、R10〜R17は、一般式(S2)で表わされる置換基を表わす。n1〜n8は、各々独立に、2または3を表わす。
【化10】

18〜R19は、独立に、アルキル基を表わす。mは1〜3の整数を表わす。

【公開番号】特開2006−269402(P2006−269402A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276397(P2005−276397)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】