説明

表面のパターン処理および制御された析出成長物を用いたビアの製造

本発明は、表面のパターン処理の方法、および制御された析出成長物を用いたビアの製造、ならびにそのような本発明による方法によって調製されたパターン化された基板に関する。本発明による方法は、上部に材料をパターン化する必要のある、少なくとも一つの表面を有する基板を提供するステップであって、前記表面は、異なる表面特性を有する少なくとも第1および第2の表面領域を有し、前記第1の領域には、さらに保護析出成長物が設置されるステップと、少なくとも前記第2の表面領域に、少なくとも一つの材料を設置するステップであって、前記設置された材料は、前記第1の表面領域には実質的に設置されないか、前記第1の表面領域に設置される場合、前記設置された材料は、前記第1の表面領域から選択的に除去されるステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面のパターン処理の方法、および制御された析出成長物を用いたビアの製造、ならびにそのような本発明による方法によって調製されたパターン化された基板に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に材料をパターン化することは、一般的な要求であるとともに、現在の技術において重要な処理プロセスとなっており、そのような技術は、例えば、マイクロエレクトロニクスおよびディスプレイの製造において使用されている。通常、パターン処理には、基板の表面全体への材料の成膜と、写真リソグラフィー技術およびエッチング技術を用いた、その選択的な除去が必要となる。しかしながら、より簡単で安価な代替パターン処理方法に対する要望がある。
【0003】
ソフト写真リソグラフィー技術は、今日の印刷産業分野で使用されている技術と同様に、製造プロセスを簡単で直接的なものにする可能性を有する(ミッチェル(B. Michel)ら、リソグラフィー法に適合する印刷技術、高解像度パターン処理に対するソフトアプローチ、R&DのIBMジャーナル、45巻(5)、697-719ページ、およびシァら(Y. Xia、G. M. Whitesiders)、ソフトリソグラフィー、Angewandte Chmie、インターナショナルエディション、37、550-575ページ、1998年)。マイクロコンタクト印刷法(μCP)は、簡単で、構造化表面および媒体を有する電気回路の高速安価な複製が可能になるという固有の可能性を秘めたソフトリソグラフィーパターン処理技術であり、曲面状基板上においても、高解像度で(現在の特徴的寸法≧100nm)複製が可能である。この技術では、スタンプから基板に分子を印刷して、様々な種類のパターンを形成する際に、実験レベル的な単純化および自由度が提供される。
【0004】
μCPによる金属層のパターン処理は、直接的で、金、銀、銅、パラジウム、白金等の各種金属、ならびに酸化アルミニウム(不動態化酸化物表面)、酸化ケイ素、ITOおよびIZO等の各種金属酸化物に対して実証されている。従って、薄膜電子装置の伝導層および半伝導層は、μCPを用いて、非写真リソグラフィー的にパターン化することができる。しかしながら、装置全体を非写真リソグラフィー的に製作するためには、同様に高分子層のような絶縁層をパターン処理する技術が不可欠となる。
【0005】
ソフトリソグラフィー技術による高分子層のパターン処理は、各種ソフトリソグラフィー技術によって行うことができる。追加方式による方法では、改質表面上で高分子層がモノマーから成長し、例えば、パターン化された自己組織化単分子膜(SAM)のようなモノマーが金属基板に吸着され、または表面が高分子層で処理される(クロークス(R. M. Crooks)、ハイパー分岐高分子膜のパターン処理、ChemPhysChem、2巻、645-654ページ、2001年;ジョン(N. L. Jeon)ら、マイクロコンタクト印刷法および表面高分子化開始処理を用いたシリコン表面でのパターン処理高分子成長、アプライドフィジックスレターズ(Applied Physics Letteres)、75巻、4201-4203ページ、1999年)。しかしながら、この方法で得られる高分子は、極めてデンドライト状の高分子に限定される。
【0006】
欧州特許出願第EP1,192,505A号には、微細転写パターン処理法が示されており、この方法では、第1の基板に、高分子層を有するパターン化されたスタンプが接触され、高分子材料が、スタンプの突出素子に吸着する。次にスタンプは、第2の基板と接触し、これに高分子が、スタンプよりも強く吸着し、スタンプの除去後に、パターン処理された高分子層が転写される。この方法では、高分子、スタンプおよび基板材料のような異なる材料において、吸着特性に十分な差異が必要となるという、システムに対して厳しい要求が課される。
【0007】
高分子パターン処理の別のソフトリソグラフィー法は、成形可能な高分子組成物内での、モールドパターンまたはスタンプのインプリント法に基づくものである。そのような方法は、例えば、ソフト型押法、溶媒支援微細成型法(SAMIM)、微細転写成形法(μTM)、キャピラリ中での微細成形法(MIMIC)、および複製成形法(REM)である(Y.XiaおよびG. M. Whitesiders、ソフトリソグラフィー、Angewandte Chemie、インターナショナルエディション、37巻、550-575ページ、1998年;ホルドクロフト(S. Holdcroft)、B-共役高分子のパターン処理、アドバンストマテリアルズ(Advanced Materials)、13巻、1753-1765ページ、2001年;Y. Xia、J. A. Rogers、K. E. Paul、G. M. Whitesides、ナノ構造を製作およびパターン処理するための新しい方法、ケミカルレビュー(Chemical Reviews)、1823-1843ページ、1999年)。しかしながら、これらの技術に共通の問題は、しばしば、高分子のパターン化が不十分となることであり、この結果、図1に示すように、高分子パターンの凹部領域に高分子層が残留することになる。また、高分子は、成形可能な形態に設置され、あるいは変換される必要があり、利用可能な高分子の範囲は、著しく制限される。
【0008】
数年後には、低コストまたは自由度が実質的な要望となるエレクトロニクスの分野において、一部または全体に有機高分子材料が設置された電子回路(IC)は、大きな役割を果たすようになることが予想されている。従って、例えば米国特許第6,603,139号に記載されているように、非写真リソグラフィー技術による有機電気絶縁層内の相互接続部またはビアの製作は、柔軟性のある電子装置の完全な非写真リソグラフィー生産のために不可欠なものとなっている。
【0009】
米国特許第6,603,139号には、ビア形成のための写真リソグラフィー技術が示されており、この方法では、有機電気絶縁層として、感光性材料自身を使用するため、追加のフォトレジスト層は不要となる。しかしながら、この方法は、感光性高分子に対する依存性により制限され、通常、これらの材料の電子特性は、極めて劣るという問題がある。
【0010】
完全な非写真リソグラフィー法は、米国特許第6,400,024号に示されているが、この文献の提案では、精度の劣る機械的な微細ノッチ処理によって、ビアが形成される。
【0011】
前述の従来技術が有する別の問題は、金またはアルミニウムのような金属を有する金属層は、これらの厚さが数十ナノメートルを超えると、マイクロコンタクト印刷法によりパターン化することが難しくなることである。この問題は、厳しいエッチング条件の下では、設置される単層レジスト層の安定性が損なわれ、厚い金属層をエッチングするため、長時間のエッチング時間が必要となることである。従って、そのような厚い金属層をパターン処理する場合、削除方式によるパターン処理方法よりも追加方式によるパターン処理方法の方が好ましいといえる。
【特許文献1】欧州特許出願第EP1,192,505A号公報
【特許文献2】米国特許第6,603,139号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、前述の従来技術の問題を軽減するためには、追加方式のパターン処理方法であって、マイクロコンタクト印刷法による、数百ナノメートルの厚さの各種層をパターン処理することが可能な方法が必要となる。理想的には、この方法は、様々な異なる材料に適用することができることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従来技術の問題を軽減する方法は、本発明によって提供される。
【0014】
すなわち本発明では、パターン化された材料を有する基板を提供する方法であって、
上部に材料をパターン化する必要のある、少なくとも一つの表面を有する基板を提供するステップであって、前記表面は、異なる表面特性を有する少なくとも第1および第2の表面領域を有し、前記第1の領域には、さらに保護析出成長物が設置されるステップと、
少なくとも前記第2の表面領域に、少なくとも一つの材料を設置するステップであって、前記設置された材料は、前記第1の表面領域には実質的に設置されないか、前記第1の表面領域に設置される場合、前記設置された材料は、前記第1の表面領域から選択的に除去されるステップと、
を有する方法が提供される。
【0015】
特に好適な実施例では、本発明による処理方法は、少なくとも第1のコーティングを基板表面に設置して、第1の表面領域が、第1の表面特性を有する第1のコーティングを含むようにするステップを有することが好ましい。さらに本発明による処理プロセスは、少なくとも第2のコーティングを設置するステップを有し、第2の表面領域が、第2の表面特性を有する第2のコーティングを含むようにすることがより好ましく、この第2の表面特性は、第1のコーティングの第1の表面特性とは異なっている。あるいは、第2の表面領域は、第2の表面特性を示す下側の基板を含み、これは、第1のコーティングの第1の表面特性とは異なっても良い。さらに別の代替例では、第2の表面領域は、下側の表面を含み、それ以前に設置したコーティング、および適切な析出成長物は、下側の表面から選択的に除去され、露出された下側の基板表面は、第1のコーティングの第1の表面特性とは異なる、第2の表面特性を示す。
【0016】
前記基板に設置された第1のコーティング、および存在する場合には、第2のコーティングは、それぞれ、第1および第2のSAM形成分子種を有し、この表面特性は、本発明による処理方法による析出成長速度に対して、十分に異なる析出成長速度を示すことが好ましい。3以上の異なるSAM形成分子種が設置される場合、これらの分子種は、これらが、成長析出物中に含まれる異なる結晶種の成長を促進するように選択されても良く、これは、それぞれ、異なる化学的および物理的特性を有しても良い。SAM形成分子種の少なくとも1つ、または好ましくは2以上は、マイクロコンタクト印刷法で設置されても良い。設置されたSAMによって定形されるパターン化領域の寸法は、基板上の析出成長物の量によって定められるとともに、これは、本発明による処理方法でパターン化される設置材料の厚さを定める。実質的に析出促進SAMの全領域は、析出成長物によって実質的に被覆されることが好ましい。
【0017】
前述のようにSAMおよびSAM形成分子種が設置される下側の基板表面は、SAM形成分子種がともに、表面に結合された官能基の一つの端部を終端化するように選択されることが好ましい。また、本発明の原理では、SAM形成分子種は、析出物の成長の促進に関して、十分に異なる表面特性を示すように選択されることが好ましい。
【0018】
従って、下側の基板およびSAM形成分子種は、分子種が、所望の表面(基板、またはその上に設置された表面膜もしくはコーティング)に結合した官能基の第1の端部を終端化させるように選定される。本願において、分子種の「端部」および「終端化」という用語は、分子種の物理的な末端の他、分子種によってSAMが形成されるような方法で、表面との結合の形成に利用され得る分子のいかなる位置、あるいは分子がSAM形成に利用された際に、露出状態のままの分子種のいかなる部分をも意味する。通常のSAM形成分子種は、スペーサ部によって分離された、第1および第2の終端部を有する分子を有し、第1の終端部は、表面(基板、または基板上に設置された表面膜もしくはコーティング)と結合するように選定された官能基を有し、第2の終端基は、必要に応じて、所望の露出された官能基(functionality)を有する表面に、SAMを提供するように選定された官能基を有する。分子のスペーサ部分は、得られるSAMが特定の厚さを有し、SAM形成が容易となるように選定される。本発明では、SAMの厚さは変化しても良いが、以下に示すように、通常の場合、厚さが約100Å未満のSAMが好ましく、厚さが約50Å未満であることがより好ましく、厚さが約30Å未満であることがさらに好ましい。通常これらの寸法は、選定されたSAM形成分子種によって定められ、特に、そのスペーサ部分によって定められる。
【0019】
様々な下側の表面(上部にSAMが形成される露出基板表面)およびSAM形成分子種が、本発明の使用に適している。基板表面材料(基板自身であっても、その上に設置された膜もしくはコーティングであっても良い)と、SAM形成分子種を含む官能基との組み合わせの非限定的な一例を、以下に示す。好適な基板表面材料は、金、銀、銅、カドミウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、パラジウム、白金、水銀、鉛、鉄、クロム、マンガン、タングステンのような金属、およびSAM形成分子種の中で、通常、チオール、硫化物、二硫化物等の硫黄含有官能基とともに使用される前述のいかなる合金;シランおよびクロロシランでドープされたまたはされないシリコン;SAM形成分子種の中で、通常、カルボキシル酸、またはホスホン酸、スルホン酸、またはヒドロキサム酸のようなヘテロ有機酸、アルコキキシルシリル基、ハロシリル基とともに使用される、金属を形成する表面酸化物、またはシリカ、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アルミナ、石英、ガラス等の金属酸化物;SAM形成分子種の中で、通常、ニトリルおよびイソニトリルとともに使用される白金およびパラジウム、を含む。
【0020】
SAM形成分子種の中の追加の好適な官能基は、酸塩化物、無水物、ヒドロキシル基およびアミノ酸基を含む。追加の基板表面材料には、ゲルマニウム、ガリウム、ヒ素、およびガリウムヒ素が含まれる。
【0021】
しかしながら、通常の場合、本発明による処理方法を用いてSAMが形成される場合、下側の露出基板表面は、金属基板を有し、または少なくともパターンが印刷される基板の表面、または基板上の膜もしくはコーティングは、金属を有し、これは、金、銀、銅、カドミウム、亜鉛、ニッケル、コバルト、パラジウム、白金、水銀、鉛、鉄、クロム、マンガン、タングステン、および前述のあらゆる合金からなる群から適切に選択される。基板、または少なくともパターンが印刷される基板の表面は、金を有することが好ましい。すなわち、SAMがコーティングされる露出基板表面は、基板自身を有しても良く、あるいは基板上に設置された薄膜もしくはコーティングであっても良く、あるいは導電性もしくは絶縁性材料のパターン化層を有しても良い。別の基板が使用される場合、この別の基板は、伝導性、非伝導性または半伝導性の材料等であっても良い。
【0022】
本発明の好適実施例では、上部にSAMが形成される下側の基板表面材料としての金と、チオール、硫化物、または二硫化物のような、少なくとも一つの硫黄含有官能基を有するSAM形成分子種との組み合わせが選択される。金とそのような硫黄含有官能基の間の相互作用は、従来からよく知られている。
【0023】
SAM形成分子種は、各種官能基の中から特定の基板材料に結合するように選定された官能基を有する端部とは反対側の、第2の端部を終端化しても良く、本発明により基板表面に形成された第1のおよび別のSAMは、第1のおよび別の表面特性を示し、表面特性によって、前述のように、実質的に析出成長が選択的に促進され、または可能となり、あるいは抑制される。すなわち、分子種は、分子種が基板の第1の表面領域でSAMを形成した際に露出される官能基(functionality)であって、本発明により必要とされる、選択された析出成長を促進しまたは可能にする官能基(functionality)を有する。あるいは、分子種は、分子種が基板の第2の表面領域にSAMを形成した際に露出される官能基(functionality)であって、本発明により必要とされる、選択された析出成長を抑制する官能基(functionality)を有しても良い。ただし、以降に詳細を示す本発明のある実施例では、第1の領域におけるSAM上で生じる選択された析出物成長が抑制される一方で、基板の第2の表面領域でのSAMの露出された官能基(functionality)によって、第2の表面領域におけるSAM上で、異なる析出物の成長が可能となり、あるいはこれが促進される。ある実施例では、官能基によって、事実上、分子種の終端が定められるのに対して、他の実施例では、官能基によって、事実上、分子種の終端が定められず、分子種の終端が露出される。
【0024】
SAM形成分子種を有する分子の中央部分は、通常、表面に結合するように選択された官能基を接続するスペーサ官能基と、露出された官能基とを有する。あるいは、スペーサ以外の特定の官能基が選択されない場合、スペーサは、実質的に露出官能基を有しても良い。SAMの設置を妨害しない、いかなるスペーサを適用しても良い。スペーサは、極性を有しても、無極性であっても良く、正に帯電していても、負に帯電していても良く、または帯電していなくても良い。例えば、飽和もしくは非飽和、直線もしくは分岐炭化水素、またはハロゲン化炭化水素含有基が使用される。本願において、炭化水素という用語は、直線鎖、分岐鎖または環状脂肪族または芳香族の反応基を意味し、通常の場合、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、およびアリールアルキニルを含む。「炭化水素含有基」という用語は、炭素および水素以外の原子が存在する場合も含み、通常、例えば、酸素および/または窒素を含む。例えば、1または2以上のメチレン酸化物もしくはエチレン酸化物の部分は、炭化水素含有基内に存在しても良い;アルキレートアミノ基は、有益である。炭化水素基は、最大35個の炭素原子を含むことが好ましく、通常最大30個の炭素原子を含み、より一般的には、最大20個の炭素原子を含む。また、対応するハロゲン化炭化水素を使用しても良く、特にフッ素化炭化水素が使用される。好適な場合、フッ素化炭化水素は、一般式がF(CF2)k(CH2)lで表され、ここで通常kは、1から30までの間の整数であり、lは、0から6の間の整数である。より好ましくは、kは、5から20までの間の整数であり、特に、8から18の間の整数である。前述の記載では、kおよびlについての好適な範囲が示されているが、kおよびlの特定の選択は、本発明の原理に応じて変化させても良いことは当然のことである。また、「炭化水素含有基」という用語は、炭素と水素以外の原子の存在を否定するものではなく、通常、前述のように、酸素または窒素が含まれる。
【0025】
さらに前述の炭化水素スペーサ基は、従来からよく知られている置換基と置換されても良く、例えばC1-6アルキル、フェニル、C1-6ハロアルキル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、C1-6アルコキシアルキル、C1-6アルコキシC1-6アルコキシ、アリールオキシ、ケト、C2-6アルコキシカルボニル、C2-6アルコキシカルボニルC1-6アルキル、C2-6アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アリールカルボニル、アミノ、モノ、もしくはジ(C1-6)アルキルアミノ、または他の従来のいかなる好適な置換物であっても良い。
【0026】
従って、通常SAM形成分子種は、一般式がR’-A-R”で表される化学種を有し、ここでR’は、材料の特定の表面に結合するように選択され、Aは、スペーサ、R”は、化学種がSAMを形成する際に露出される反応基であり、本発明による析出成長に関して、必要な表面特性を示すように選択される。また、分子種は、A’を、第2のスペーサまたはAと同じスペーサとしたとき、一般式がR”-A’-R’-A-R”で表される化学種を有しても良く、またはR”’をR”と同一のまたは異なる露出官能基としたとき、R”’-A’-R’-A-R”で表される化学種を有しても良い。
【0027】
従って、SAM形成分子種は、アルキルもしくはアリールチオール、二硫化物、ジチオレン等のような硫黄含有分子、カルボキシル酸、スルホン酸、ホスホン酸、ヒドロキシアミン酸等、またはシリルハロゲン化物等の他の反応性化合物から選択されることが好ましい。
【0028】
金、銀または銅基板とともに使用されるSAM形成分子種としての使用に適した特定の分子は、一般式がR’-A-R”で表される官能化チオールを有し、ここでR’は、-SHを表し、Aは、反応基を有する炭化水素またはハロゲン化炭化水素を表し、R”は、本願において、それぞれ、本発明による析出成長が促進されもしくは可能となるように、あるいは抑制されるように選定された官能終端基を表す。例えば、SAM形成分子種の露出端部で使用するために配置されるR”で表される官能基は、設置されたSAMの物理的および化学的特性に、極めて重要である。例えば、イオン性、非イオン性、極性、非極性、ハロゲン化、アルキル、アリールまたは他の官能基が、SAMの露出部分に存在し、通常、本発明の観点から、SAMに親水性または疎水性の機能を与えるように、R”が選定されることが好ましい。SAMの露出官能基が、疎水性アルキルもしくはフェニル基のような単純な芳香族または脂肪族基である場合、SAMは、疎水性になる。あるいは、SAMの露出官能基が極性、電荷、またはプロトン官能基を有する場合、SAMは、実質的に親水性となる。通常、例えば、Xを水素またはC1-6アルキル、例えばCH3としたとき、R”がそれぞれ、アルキル(C1-6アルキル、例えばCH3など)またはNX3+の場合、疎水性、または正に帯電された親水性のSAMは、析出成長を抑制する傾向にあり、例えば、R”をOH、CO2-、SO3-、PO3-、NO2としたとき、親水性の中性または負に帯電されたSAMは、析出成長を促進する傾向にある。
【0029】
本発明により、親水性と疎水性のSAMの混合によって、パターン化された表面に対して、析出成長密度の局部的に有意な差異が観察され、例えば、ある領域では、親水性カルボキシル酸基が露出され、他の領域では疎水性アルキル基が露出される。ある領域での負に帯電されたカルボキシル酸基と、他の領域での正に帯電されたテトラアルキルアンモニウム基とのSAMの混合によって、表面がパターン化された場合、より顕著な差異が認められる。
【0030】
本発明により提供されるSAMは、適当な従来技術を用いて形成することができ、例えば溶液もしくは気相からの成膜処理によって成膜され、または平坦非飽和スタンプを用いたスタンプステップによって設置され、あるいは通常、本発明の使用に好ましい、マイクロコンタクト印刷法によって設置されても良い。必要なパターンを定形するパターン化スタンプには、SAM形成分子種を有するインクが付与されることが好ましく、基板表面の接触領域にインクを供給するように配置されたパターン化スタンプが、被パターン化基板の表面に接触される。
【0031】
通常、本発明による方法に使用されるスタンプは、第1のスタンプパターンが定形されるスタンプ表面に構成された少なくとも一つの窪み、あるいはレリーフパターンを有する。スタンプは、高分子材料で構成されても良い。スタンプとしての製作に適した高分子材料は、特定の高分子およびスタンプの所望の成形性の段階に依存して、直線または分岐骨格を有し、あるいは架橋されまたは架橋されない。各種エラストマー高分子材料は、そのような製作に適しており、特に、シリコーン高分子全般、エポキシ系高分子、およびアクリル酸塩系の高分子が好ましい。スタンプに使用されるシリコーンエラストマー高分子の一例は、クロロシランを含む。特に好適なシリコーンエラストマーは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)である。
【0032】
通常、SAM形成分子種は、スタンプ表面に転写させるため、溶媒中に溶解される。そのような転写溶媒中の分子種の濃度は、化学種がスタンプ表面に良く吸着される程度に十分に低く、適正に定形されたSAMが、にじみなく材料表面に転写されるように十分に高く選定される。通常、化学種は、濃度が100mM未満の溶液中でスタンプ表面に転写され、濃度は、約0.5から約20.0mMの間であることが好ましく、約1.0から約10.0mMの間であることがより好ましい。分子種を溶解させ、およびスタンプ表面によって運搬(例えば吸着)されるいかなる溶媒の使用も適している。スタンプ表面が負の極性を有する場合、そのような選択の際に、比較的極性および/またはプロトン性の溶媒が選定されることが好ましい。スタンプ表面が比較的非極性の場合、比較的非極性の溶媒が選択されることが好ましい。例えば、トルエン、エタノール、THF、アセトン、イソオクタン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル等が使用されても良い。スタンプ、特にスタンプ表面の製作にシロキサン高分子、例えば、前述のポリジメチルシロキサンエラストマー(PDMS)が選定される場合、トルエン、エタノール、シクロヘキサン、デカリンおよびTHFが、溶媒として好ましい。そのような有機溶媒は、通常、スタンプ表面にSAM形成分子種を吸着させることを目的として使用される。溶媒の近傍でまたは溶媒中で、分子種がスタンプ表面に転写されると、スタンプ表面は、スタンプ処理が実行される前に乾燥させる必要がある。材料表面にSAMがスタンプされる際に、スタンプ表面が乾燥されていなければ、SAMのにじみが生じ得る。スタンプ表面には、自然乾燥、ブロワーによる乾燥、あるいは他の従来手段による乾燥が行われる。乾燥方法は、SAM形成分子種に劣化が生じないように、単純に選定される。
【0033】
本願では「保護析出成長」という用語は、析出物の形成を意味し、これには単結晶材料、多結晶材料、微細結晶材料、およびアモルファス材料の析出が含まれる。本発明による処理方法での成長結晶寸法は、サブμmから数百μmの間で変化する。改質結晶および成長結晶の形状は、成膜される単分子層の端部基の選定によって制御される。また、結晶寸法は、結晶化溶液中に含まれる化学種の種類、被結晶化過飽和溶液の発生方法、結晶化温度および処理条件など、通常の結晶成長条件によっても制御される。条件に応じて、結晶は、数分またはそれより短い時間以内に成長する。
【0034】
析出成長、および本発明による適当な結晶成長の材料は、完全に無機材料であっても、少なくとも一部が有機材料であっても良く、水またはアルコールを含む極性溶媒中において、十分に高い溶解度が得られるように提供される。一部が有機材料である例は、金属ギ酸、金属トリフレート等である。本発明による堆積成長は、方解石(CaCO3)、炭酸ストロンチウム、ミョウバン(KAl(SO4)2)のような無機塩析出物を含むことが好ましく、その成長は、本発明による基板表面上にパターン化された、親水性SAM上で促進されることが好ましい。ある実施例では、析出成長物は、結晶質であることが好ましい。
【0035】
SAMであることが好ましい設置コーティングの特性は、2種類以上の結晶の成長が可能となるように選択され、SAMであることが好ましいそのようなコーティングは、一連のコーティングステップ、例えば一連のμCPステップによって形成されても良い。この場合、本発明による処理方法は、基板表面で2種類以上の選択的な結晶成長を行うステップを有し、例えば、2以上の過飽和塩溶液で基板表面を処理するステップを有し、結晶は、それぞれ、第1および第2の表面領域に成長し、各コーティングステップは、異なっていても良く、あるいは同じ化学化合物の結晶改質もしくは多様な形態を有しても良く、各成長結晶は、第1および第2の各表面領域との相互作用に依存し、第1および第2の表面領域には、本発明によりSAMが設置されることが好ましい。個々の結晶改質は、露出されたSAM官能基の種類によって局部的に制御される。従来技術で知られているように、異なる改質結晶は、異なる物理的特性を有し、異なる表面コーティングまたはSAM上での結晶成長は、所与の溶媒中に溶解している間、例えば異なる速度を示し、一つの改質結晶のみが溶解によって完全に除去され、他の改質結晶は、極めてゆっくりと溶解し、表面に残存する。
【0036】
あるいは、異なる化学化合物の結晶は、基板の第1および第2の表面領域に、同時にまたは順番に設置された第1および第2のSAMのような、基板の第1および第2の表面領域上で成長される。結晶成長の選択性は、異なるSAMの表面特性の差異に起因する。この中の化学的に異なる結晶組成によって、一つの種類の結晶の選択的な除去が容易となり、他の結晶形態は、実質的に未変化のまま残存する。異なる結晶の選択ステップと異なる材料の成膜ステップの組み合わせによって、異なる材料の多層スタックのパターン化の可能性および自由度が広がる。
【0037】
析出成長は、溶液または気相から行われることが好ましい。結晶は、各化合物の過飽和溶液から成長することが好ましい。過飽和溶液は、析出成長プロセスの制御を支援し、これを可能にする各種添加物を含んでも良い。基板表面は、1または2以上の被析出化合物の1または2以上の過飽和溶液によって処理されることが好ましく、第1および第2の表面領域の表面特性(第1のコーティングの第1の表面特性、第2のコーティングの第2の表面特性、および他のあらゆる適当なコーティング、または他の表面位置が好ましい)および1または2以上の過飽和溶液は、それぞれ、前述のように、実質的に基板表面の第1の表面領域に、析出成長が選択的に形成されるように選定される。ある実施例では、前述のように、基板の第1および第2の表面領域に、異なる化学化合物の結晶または異なる結晶構造が提供されることが好ましく、例えば基板の第1および第2の表面領域に、同時にまたは順次、第1および第2のSAMが設置される。この場合、結晶の化学的に異なる組成によって、ある種類の結晶の選択的な除去が容易となる一方、他の結晶形態は、実質的に未変化のままとなる。
【0038】
過飽和溶液用の適当な溶媒は、有機および無機溶媒を含む。使用される場合、溶媒は、下側の基板表面上に成長する対象化合物と共存できるものである。すなわち、対象化合物は、溶媒に可溶性であるとともに、溶液は、過飽和となる必要があり、溶媒は、これに従って選定される。当業者には、選定された対象化合物に対して、適当な溶媒を適合させることができる。一旦、析出成長物を形成する対象化合物が選択されると、適当な溶媒が選択される。当業者は、実験を行わなくても、選択された対象化合物に対する適当な溶媒を定めることができる。
【0039】
パターン化される材料は、基板の第2の表面に選択的に設置され、この材料は、析出成長物から実質的に離れていることが好ましい。第2の表面領域は、SAMのようなコーティングを含み、あるいは下側の基板表面を有し、この基板表面から、予め設置されたコーティング、および適当な関連析出成長物が選択的に除去される。しかしながら、ある実施例では、パターン化材料は、(i)第2の表面領域、および(ii)第1の表面領域に設置された保護析出成長物、に設置され、
(ii)の設置によって、前記析出成長物と該析出成長物上に設置された材料の、その後の選択的除去が可能になる。析出成長物へのパターン化材料の適用は、析出物の部分的なまたは不均一な被覆に有効であり、例えば、設置されたパターン化材料の厚さが均一ではない場合、例えば、設置されたパターン化材料の厚さが、保護析出成長物の上部垂直領域において薄くなっている場合、以降により詳細に示すように、析出物の除去が容易となる。被パターン化材料の設置は、真空成膜技術または溶液処理技術を含む、いかなる適当な方法で実施しても良い。成膜は、ガス相からの堆積、スパッタリング、無電解成膜、電解成膜、スピンコート、ドロップキャスティング等の方法によって行っても良い。
【0040】
被パターン化材料の異方性ガス相成膜を含む処理プロセスは、図2に示されている。異方性の成膜ステップの結果、析出成長物の上部に成膜された材料は、その後の析出物の溶解ステップによって、自動的に除去されるため、特に問題とはならない。これは、この材料が、成膜材料の残りの部分と完全に分離されているためである。析出成長物は、好ましくは、必要に応じて添加物を含む水溶液中での溶解によって、適切に除去される。析出物または結晶の種類に応じて、他の溶媒、例えばアルコールが使用されても良い。ほとんどの結晶は、水または極めて親水性のアルコール中に溶解するため、結晶の除去は、成膜結晶から分離されている残りの成膜材料には、悪影響を及ぼさない。この除去には、(金属を)侵食する攻撃的なエッチング溶液が必要となり、または極性の小さな有機溶媒、例えばオリゴマーの場合、芳香族化合物等が必要となる。
【0041】
基板からの析出成長物の除去の後、必要に応じて下側のコーティング、通常はSAMが、除去され、例えば、図2に示すような親水性SAMが、例えば酸素またはアルゴンプラズマ処理によって除去される。
【0042】
本発明のある実施例では、被パターン化材料の設置の前に、好ましくはSAMのような、析出成長を妨げるコーティングを除去することが必要となる。図3に示すように、例えば、必要であれば、被パターン化材料の設置前に、疎水性SAMが除去されても良い。これは、各種方法によって実施されるが、プラズマ処理を使用することが好ましい。
【0043】
本発明による処理方法での被パターン化材料の設置の際には、被パターン化材料は、下側の析出成長物を部分的に被覆することが好ましく、これにより、析出成長物のその後の溶解が容易となる。これを実現するためのある方法は、被パターン化材料の異方性成膜であり、この方法では、材料(または成膜に使用される材料の溶液)は、十分に疎水性となり、析出成長物表面は、十分に親水性となり(またはその逆)、被パターン化材料は、析出成長物の表面に広がりにくい傾向にある。これにより、図4に示すように、析出成長物に含まれる結晶の自然乾燥、さらには被パターン化材料の残りの領域のみでの選択成膜が可能になる。
【0044】
ただし、被パターン化材料による析出成長物の完全な被覆が避けられない場合、本発明による処理方法のある実施例では、追加の処理プロセスが行われても良い。例えば、設置されたパターン化材料の層厚さは、均一ではなく、特に、図4に示すように、設置されたパターン化材料は、基板のコーティング表面の上部垂直領域では、厚さが薄くなる場合があり、全体の厚さが等方的エッチング処理において薄くされると、図4に示すように、下側の析出成長物が露出される。これにより、下側の析出成長物の選択溶解と、その上に残留する材料の除去が可能となる。その後の研磨ステップによって、残りの凸部の材料が除去されることが好ましい。
【0045】
本発明による処理方法は、単一のパターン化層の設置に限られるものではなく、例えば、析出成長物内の結晶の寸法、および所望の層の厚さに応じて、図5に示すように、いくつかのパターン化層を設置しても良い。結晶は、数百μmの大きさに成長する場合があるため、極めて厚いパターン化層または層のマニホールドを、容易に成膜することができ、本発明による単一の処理方法でパターン化することができる。
【0046】
本発明による処理方法は、可撓性電子機器に必要となるパターン化、および電気絶縁層内のビアの形成に極めて適している。また、本発明による処理方法を使用して、金または白金のような材料のエッチングが困難な層を極めて厚くパターン化することができる。また、本発明による処理方法は、幅広い材料のパターン処理に適しており、これには、従来マイクロコンタクト印刷法によるパターン処理には適用され得なかった金属、およびほとんどの高分子材料が含まれる。
【0047】
さらに、本発明により、実質的に前述の処理プロセスによって形成されたパターン化基板が得られる。本発明によるパターン化基板は、マイクロエレクトロニクスまたはディスプレイの製造の際に使用することに適しており、本発明のある実施例では、これにより調製されたパターン化基板により、本発明のマイクロコンタクト印刷法により製作された相互接続部または電気的絶縁材料中のビアが提供される。
【0048】
また、本発明により、実質的に、以降に示すパターン化材料を備える基板を有する電子装置の製造方法が提供され、このパターン化基板は、本発明による処理方法によって調製される。通常、本発明により調製される電子装置は、表示装置の駆動電子機器、および有機電子装置を含む。特に、本発明による処理方法により、有機電子回路を有する電子装置が提供され、そのような装置は、LCD、小型モジュールLED、高分子LED、電気泳動(E-インク型)ディスプレイ、可撓性RF(無線周波数)タグおよび生物センサからなる群から選択することができる。特に、本発明により提供される電子装置は、有機電子回路を有し、この回路は、LCDまたはLEDディスプレイの駆動電子機器を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、図面および実施例により、本発明をより詳しく説明する。これらは、いかなる意味でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0050】
特に図1を参照すると、この図には、従来技術による処理プロセスが示されている。基板(1)には、高分子コーティング(2)が設置される。次に、スタンプまたはモールド(3)が、高分子コーティング(2)と接触され、基板(1)上に、所望の高分子パターンが形成される。しかしながら、従来技術によるそのようなパターン処理では、基板(1)上の高分子パターンの凹部領域に、高分子層(4)が残留する。
【0051】
特に図2を参照すると、この図には、基板(1)と、該基板(1)上に親水性SAM(5)を設置する際に使用されるスタンプ(3)とが示されている。次に、基板(1)に疎水性SAM(6)が設置される。その後、親水性SAM(5)上に、結晶(7)が選択的に成長する。次に、異方性成膜により、疎水性SAM(6)と結晶(7)の双方に、パターン化材料(8)が設置される。次に、結晶の溶解処理が実施され、結晶(7)およびその上のパターン化材料(8)が選択的に除去され、疎水性SAM(6)を被覆するパターン化材料(8)と、親水性SAM(5)とによってパターン化された基板(1)が残る。次に、親水性SAM(5)は、選択的に除去され、疎水性SAM(6)を被覆するパターン化材料(8)でパターン化された基板(1)が残存する。
【0052】
特に図3を参照すると、この図には、基板(1)と、該基板(1)に親水性SAM(5)を設置する際に使用されるスタンプ(3)とが示されている。次に、基板(1)には、疎水性SAM(6)が設置される。その後、親水性SAM(5)上に、結晶(7)が選択的に成長する。次に、疎水性SAM(6)が選択的に除去される。その後、異方性成膜によって、基板(1)および結晶(7)の露出表面に、パターン化材料(8)が設置される。次に、結晶の溶解処理が実施され、結晶(7)およびその上のパターン化材料(8)が選択的に除去され、パターン化材料(8)と親水性SAM(5)とによってパターン化された基板(1)が残る。次に、親水性SAM(5)は、選択的に除去され、基板(1)の表面に直接設置されたパターン化材料(8)でパターン化された基板(1)が残存する。
【0053】
特に図4を参照すると、この図には、親水性SAM(5)および疎水性SAM(6)が設置された基板(1)が示されており、その後、親水性SAM(5)上で、結晶(7)が選択的に成長する。その後、選択成膜法(A)、異方性成膜法(B)、または等方性成膜法(C)により、パターン化材料(8)が設置される。選択成膜法(A)では、パターン化材料(8)は、疎水性SAM(6)の下地上に選択的に設置される。異方性成膜法(B)では、パターン化材料(8)は、下側の疎水性SAM(6)と結晶(7)の双方上に設置される。等方性成膜法(C)では、パターン化材料(8)は、疎水性SAM(6)と結晶(7)の双方上に設置され、結晶(7)の上部垂直領域には、パターン化材料(8)の厚さが薄くなった不均一な成膜特性が明確に観察される。また、パターン化材料(8)の全体の厚さは、異方性エッチング処理により、さらに薄くなり、その後の結晶溶解によって、結晶(7)および隣接するパターン化材料(8)の大部分が選択的に除去される。その後の研磨処理により、疎水性SAM(6)を覆うパターン化材料(8)および親水性SAM(5)によりパターン化された基板(1)が残留する。次に親水性SAM(5)が選択的に除去され、疎水性SAM(6)を覆うパターン化材料(8)によりパターン化された基板(1)が残留する。
【0054】
特に図5を参照すると、この図には、基板(1)と、該基板(1)に親水性SAM(5)を設置する際に使用されるスタンプ(3)とが示されている。次に、基板(1)に疎水性SAM(6)が設置される。その後、親水性SAM(5)上に、結晶(7)が選択的に成長する。次に、異方性成膜により、疎水性SAM(6)と結晶(7)の双方に、パターン化材料(8)が設置される。次に、パターン化材料(8)への異方性成膜により、パターン化材料(9)が設置される。次に、結晶の溶解処理が実施され、結晶(7)と、その上のパターン化材料(8)および(9)とが選択的に除去され、疎水性SAM(6)を被覆するパターン化材料(8)、(9)および親水性SAM(5)によってパターン化された基板(1)が残る。次に、親水性SAM(5)は、選択的に除去され、疎水性SAM(6)を被覆するパターン化材料(8)、(9)でパターン化された基板(1)が残存する。
【0055】
特に図12を参照すると、(11)は、基板担体であり(例えば高分子、ガラスまたはシリコン)、(12)は、ゲート電極である(例えば、μCP法によりパターン処理された金)である。(13)は、スピンコートされた絶縁層であり、この層は、本発明によりパターン化される(少なくとも一つのSAMが金層(12)上に印刷され、印刷SAM上に析出成長物が形成され、絶縁層(13)がスピンコートされ、析出成長物が除去される)。(14)および(15)は、ソース−ドレイン層(例えばμCP法でパターン化された金)内のソースおよびドレイン電極である。(16)は、有機半導体の層である(スピンコートまたは蒸着され、本発明によりパターン化される)。(17)は、絶縁層(13)および半導体層(16)を貫通するビアであり、これにより、底部ゲート層(12)との外部電気接続が可能となる。(13)と(16)の両方の層にわたる(17)は、析出成長物を用いて形成され、この析出成長物は、最終処理ステップで除去され、例えば金の電析もしくは無電解成膜によって、金の接触部により置換される。
(実験)
【実施例1】
【0056】
規則PDMS前駆体(SYLGARD184、ダウコーニング社)および一般的な硬化処理法を用いてマスターから、ソフトリソグラフィースタンプを複製した。
【0057】
標準的なシリコンウェハ上に、約500nmの厚さの熱酸化層を成長させた。その後、この上に、チタンの密着層(約5nm)をスパッタ法で設置し、次に、厚さが約20nmの上部金層を設置した。表面は、水、エタノールおよびn-ヘプタンの順で洗浄した。最終清浄化ステップでは、基板は、印刷処理直前に、アルゴンプラズマ処理(0.25mbar、300W、5分間)された。
【0058】
インク溶液は、メルカプトヘキサデカン酸を、エタノール中に溶解させることにより調製した(SAM1、10mM)。この溶液中に、PDMSスタンプを浸漬し、約2時間インク処理した。スタンプをインク溶液から取り出した後、エタノールで洗浄し、窒素気流中で乾燥させた。次に、これを基板の金の表面に、約20秒間接触させ、再度引き離した。
【0059】
次に、エタノールのN,N,N-トリメチル(11-メルカプトアンデシル)塩化アンモニウム(SAM2、10mM)の溶液中に、基板を約1時間浸漬し、印刷SAM1で被覆されなかった金表面の残りの領域に、SAM2を成膜した。次に、これをエタノールで洗浄し、窒素気流中で乾燥させた。
【0060】
次のステップでは、塩化カルシウムの水溶液(10mM)中に表面改質基板を浸漬し、基板が容器の底から約1cmのところで保持され、改質表面が底に対して平行に下方を向くようにした。次に、この組立体を、多量の固体炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)が敷き詰められた密閉デシケータ中に入れ、塩化カルシウム溶液中への炭酸アンモニウムのガス相拡散を開始させ、基板の改質金表面に、炭酸カルシウム結晶を成長させた。
【0061】
基板は、約1時間後に、溶液から取り出され、精製水、エタノールおよびn-ヘプタンで洗浄し、窒素の気流中で乾燥させた。
【0062】
図6には、そのように処理された基板の光学顕微鏡写真を示す。暗い領域は、スタンプのパターンを表している。これらの領域は、最初にSAM1で改質される。明るい領域は、SAM2で改質された領域である。公称幅が10μmの暗い色の規則的な四角形は、SAM1上の結晶CaCO3塩の選択成膜を表している。また、いくつかの別の均一に分布した単結晶CaCO3析出物が視認され、この析出物は、これらの結晶の中で極めて大きな寸法であるため、容易に除去される。
【0063】
図7には、大きなリング構造のAFM走査の結果を示す。これらのリング構造の端部で測定された大きなプロファイルは、高い塩被覆領域と、塩で被覆されていない約215nmの領域の間の平均的な高さの差異を表している。
【実施例2】
【0064】
上部金層上の未改質領域での、印刷SAM1と吸着SAM2とによるパターン処理を含む、実施例1に示した方法で、サンプルを調製した。
【0065】
基板は、金の表面が下方を向くようにして、硫酸カリウムアルミニウム(KAl(SO4)2、ミョウバン)の少量の飽和水溶液中に浸漬した。次に、多量のエタノールによって、溶液を素早く希釈して、ミョウバンの溶解度を低下させ、これにより、基板表面にミョウバンの結晶を析出させた。その後、基板を直ちに溶液から取り出し、エタノールで洗浄し、窒素の気流で乾燥した。
【0066】
図8には、そのように処理された基板の光学顕微鏡写真を示す。公称幅10μmのパターン内には、正四角形が認められる。結晶質ミョウバンの析出は、四角形、文字および大きなリング構造を有する印刷SAM1のパターンと明らかに類似している。SAM2で被覆された残りの領域に、結晶析出は、認められない。
【0067】
図9には、既に図8に示した大きなリング構造のAFM走査の結果を示す。これらのリング構造の端部で測定された高さプロファイルは、塩で被覆された高い領域と、約500乃至1000nmの塩で被覆されない領域の間に、高さの差異があることを示している。そのような高さの差異は、数百nmの層をパターン化するには十分である。
【0068】
図10には、そのように調製された基板であって、さらにポリ(3-ヘキシルチオフェン)のクロロホルム溶液(Mw=40,000g/mol)でのスピンコートによって処理された、光学顕微鏡写真を示す。この写真から、スピンコート処理プロセスの後であっても、結晶析出によって高さの差異が維持されていることがわかる。
【0069】
図11には、図10に示したような大きなリング構造の各AFM走査の結果を示す。これらの測定により、高い(塩が被覆された)領域と、残りの領域との間の高さの差異は、スピンコーティング前の約500〜1000nmから、スピンコート後の約200〜400nmまで抑制され、これは、パターンの凹部領域での、高分子材料の好適な成膜であることを示している。
【0070】
前述の実施例は、単なる一例であり、本発明を限定するものではなく、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱しないで、当業者には、多くの代替実施例を設計することができることに留意する必要がある。請求項において、括弧内に記載されたいかなる参照符号も、この請求項を限定するものと解してはならない。「有する」という用語は、請求項または明細書内に記載された素子もしくはステップ以外の存在を排斥するものではない。一つの素子としての記載は、そのような素子が複数あることを否定するものではなく、逆もまた同様である。本発明は、いくつかの別個の素子を有するハードウェアによって、および適当なプログラムコンピュータによって実施されても良い。いくつかの手段が列挙されている装置の請求項において、これらの手段のいくつかは、一つのハードウェアまたは同様のハードウェア部品によって、実施されても良い。単に、いくつかの手段が、相互に異なる従属項に記載されていると言うことだけで、これらの手段の組み合わせ使用が有意ではないと解してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】従来のエンボス処理/成形処理技術の概略図である。
【図2】基板上のパターン化材料の異方性成膜を含む、本発明による単一層のパターン化方法の概略図である。
【図3】基板上のパターン化材料の異方性成膜を含む、本発明による単一層のパターン化方法の概略図であって、異方性成膜の前に、析出成長物で覆われていないSAMが除去される概略図である。
【図4】本発明による単一層のパターン化方法の概略図であって、さらに、(i)異方性成膜、(ii)選択性膜、(iii)等方性成膜を示した図である。
【図5】本発明による多層パターン化プロセスの概略図である。
【図6】実施例1に示すような、2つの異なるSAMでパターン処理され、その後炭酸カルシウムが選択的に析出された、上部金サンプルの光学顕微鏡写真である。
【図7】図6に示す大きなリング構造のAFM走査の結果である。
【図8】実施例2に示すような、2つの異なるSAMでパターン処理され、その後硫酸カリウムアルミニウムが選択的に析出された、上部金サンプルの光学顕微鏡写真である。
【図9】図8に示した大きなリング構造のAFM走査の結果である。
【図10】実施例2に示すような、2つの異なるSAMでパターン処理され、その後硫酸カリウムアルミニウムが選択的に析出され、ポリ(3-n-ヘキシルチオフェン)のクロロホルム溶液でスピンコート処理された、上部金サンプルの光学顕微鏡写真である。
【図11】図10に示した大きなリング構造のAFM走査の結果である。
【図12】本発明により提供されたパターン化基板を含み、有機電子回路での使用に適した、基本的な底部ゲート有機FETの層構造の断面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン化された材料を有する基板を提供する方法であって、
上部に材料をパターン化する必要のある、少なくとも一つの表面を有する基板を提供するステップであって、前記表面は、異なる表面特性を有する少なくとも第1および第2の表面領域を有し、前記第1の領域には、さらに保護析出成長物が設置されるステップと、
少なくとも前記第2の表面領域に、少なくとも一つの材料を設置するステップであって、前記設置された材料は、前記第1の表面領域には実質的に設置されないか、前記第1の表面領域に設置される場合、前記設置された材料は、前記第1の表面領域から選択的に除去されるステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記第1の表面領域または第2の表面領域のいずれかは、SAM形成分子種を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の表面領域は、第1のSAM形成分子種を有し、前記第2の表面領域は、第2のSAM形成分子種を有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つのSAM形成分子種は、マイクロコンタクト印刷法によって設置されることを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記SAM形成分子種の露出された官能基(functionality)によって、前記SAM形成分子種上での選択的析出成長が可能となり、または選択的析出成長が促進され、または選択的析出成長が抑制されることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記析出成長物には、塩の析出物が含まれることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記材料は、前記基板表面の前記第2の表面領域に選択的に設置されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記材料は、
(i)前記第2の表面領域、および
(ii)前記第1の表面領域に設置された前記保護析出成長物、
に設置され、
(ii)の設置によって、前記析出成長物と該析出成長物上に設置された材料の、その後の選択的除去が可能になることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載のパターン化材料が設置された基板を有する電子装置を製作する方法であって、
パターン化された前記基板は、請求項1乃至8のいずれか一つに記載の方法によって調製されることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記電子装置は、LCDまたはLEDディスプレイの駆動電子機器を有する有機電子回路であることを特徴とする請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−529807(P2008−529807A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546268(P2007−546268)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国際出願番号】PCT/IB2005/054188
【国際公開番号】WO2006/067668
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】