説明

表面処理装置および表面処理方法

【課題】本発明は、生産性の低下を抑制するとともに表面処理効果の向上を図ることができる表面処理装置および表面処理方法を提供する。
【解決手段】被処理物を所定の方向に向けて搬送する搬送部と、前記被処理物に対して、プラズマ処理、紫外線照射処理、およびコロナ放電処理からなる群より選ばれた少なくとも1種の処理を施す処理部と、前記処理部を移動させる移動部と、前記移動部の制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記移動部の制御を行うことで、前記所定の方向に向けて搬送される被処理物に対して前記処理を施す際に前記処理部を前記搬送部の搬送面に沿って搬送方向に移動させるとともに、前記被処理物と前記処理部との間の相対速度を制御することを特徴とする表面処理装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理装置および表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマ処理などのドライプロセスが、電子デバイスの製造、金属部品の表面硬化、プラスチック部品の表面活性化、表面洗浄、無薬剤殺菌など、幅広い技術分野において表面処理に活用されている。例えば、半導体装置やフラットパネルディスプレイなどの電子デバイスの製造においては、アッシング、ドライエッチング、薄膜堆積、表面洗浄、あるいは表面改質などの各種の表面処理が実施されている。この様な表面処理は、低コストで、高速であり、薬剤を用いないために環境汚染を低減できる点でも有利である。
【0003】
この様な表面処理において生産性を向上させるために、プラズマ処理などを施す処理部と被処理物との相対的な位置関係を変化させる表面処理装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
処理部と被処理物との相対的な位置関係を変化させながらプラズマ処理などの表面処理を施すようにすれば、処理面積の大きな被処理物であっても効率のよい処理を行うことができる。
【0004】
ここで、特許文献1に開示されているような技術においては、処理部を固定し、被処理物を一定の搬送速度で搬送することで処理部と被処理物との間の相対的な位置関係を変化させるようにしている。そして、この様な表面処理装置において表面処理効果のさらなる向上が求められた場合には、処理部の数を増加させたり搬送速度を遅くしたりすることで対応を図るようにしている。
しかしながら、処理部の数を増加させれば表面処理装置の構成が複雑化したり価格が高くなったりするおそれがある。また、搬送速度を遅くすれば生産性が低下するおそれがある。特に、表面処理装置が製造ラインに組み込まれているような場合には、他の製造装置との兼ね合いから搬送速度を余り遅くできない場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−237480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、生産性の低下を抑制するとともに表面処理効果の向上を図ることができる表面処理装置および表面処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、被処理物を所定の方向に向けて搬送する搬送部と、前記被処理物に対して、プラズマ処理、紫外線照射処理、およびコロナ放電処理からなる群より選ばれた少なくとも1種の処理を施す処理部と、前記処理部を移動させる移動部と、前記移動部の制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記移動部の制御を行うことで、前記所定の方向に向けて搬送される被処理物に対して前記処理を施す際に前記処理部を前記搬送部の搬送面に沿って搬送方向に移動させるとともに、前記被処理物と前記処理部との間の相対速度を制御することを特徴とする表面処理装置が提供される。
【0008】
また、本発明の他の一態様によれば、被処理物を所定の方向に向けて搬送し、前記被処理物に対して、プラズマ処理、紫外線照射処理、およびコロナ放電処理からなる群より選ばれた少なくとも1種の処理を施す表面処理方法であって、前記所定の方向に向けて搬送される被処理物に対して前記処理を施す際に前記処理を施す処理部を前記被処理物が搬送される搬送面に沿って搬送方向に移動させるとともに、前記被処理物と前記処理部との間の相対速度を制御すること、を特徴とする表面処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生産性の低下を抑制するとともに表面処理効果の向上を図ることができる表面処理装置および表面処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る表面処理装置を例示するための模式図である。
【図2】本実施の形態に係る表面処理装置に設けられた処理部を例示するための模式図である。
【図3】表面処理効果と相対速度との関係を例示するための模式グラフ図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る表面処理装置を例示するための模式図である。
【図5】表面処理時間と処理部の数との関係を例示するための模式グラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。また、一例として、プラズマ処理を施す処理部を備えた表面処理装置の場合を例示する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る表面処理装置を例示するための模式図である。 なお、図1は、表面処理が施される工程を表した図でもあり、図1中に示す開始点Sから終了点Eの間で表面処理が施されることを表している。
図2は、本実施の形態に係る表面処理装置に設けられた処理部を例示するための模式図である。
【0012】
図1に示すように、表面処理装置1には、搬送部2、処理部10、移動部20、制御部30が設けられている。
搬送部2は、被処理物Wを所定の方向に向けて搬送する。例えば、図1に例示をしたもののように複数のローラ2aを備え、ローラ2aを回転させることでローラ2a上に載置された被処理物Wを所定の方向に向けて搬送するものを例示することができる。ただし、これに限定されるわけではなく、被処理物Wを所定の方向に向けて搬送できるものであればよい。例えば、ベルトコンベアや被処理物Wを把持して搬送する様なものとすることができる。また、被処理物Wを図示しない搬送台に載置し、搬送台とともに被処理物Wを所定の方向に向けて搬送するようにすることもできる。
【0013】
図2に示すように、処理部10には、処理部本体11、電極12、電極13、高周波電源14、ガス供給部15が設けられている。
処理部本体11は、アルミナ、石英などの誘電体から形成されるものとすることができる。処理部本体11の被処理物Wに面する側の端部には吹き出し口11aが設けられている。吹き出し口11aは、スリット状を呈し、被処理物Wの搬送方向と略直交する方向が長手方向となるようにして設けられている。また、吹き出し口11aの長さ寸法(被処理物Wの搬送方向と略直交する方向の寸法)は、被処理物Wの幅寸法(被処理物Wの搬送方向と略直交する方向の寸法)よりも長く設定されている。
また、吹き出し口11aが設けられた側と対向する側の端部には、導入口11bが設けられている。そして、吹き出し口11aと導入口11bとの間が放電空間11cとなっている。
【0014】
処理部本体11の外壁面には電極12、電極13が設けられている。電極12、電極13は板状を呈し、互いに平行となるように設けられている。すなわち、電極12と電極13とがいわゆる平行平板電極を形成するように設けられている。また、電極12、電極13の長さ寸法(被処理物Wの搬送方向と略直交する方向の寸法)は、被処理物Wの幅寸法(被処理物Wの搬送方向と略直交する方向の寸法)よりも長く設定されている。電極12、電極13は、例えば、銅やアルミニウムなどの金属、合金、金属間化合物などから形成されるものとすることができる。そして、一方の電極12には、高周波電源14が接続されている。また、他方の電極13は接地されている。
高周波電源14は、例えば、100KHz〜100MHz程度の高周波電力を電極12に印加するものとすることができる。
【0015】
処理部本体11の導入口11bには、流量制御弁(Mass Flow Controller:MFC)16を介してガス供給部15が接続されている。そのため、ガス供給部15から流量調整がされた処理ガスGを放電空間11c内に供給できるようになっている。
処理ガスGとしては、例えば、CF、NF、Oなどを例示することができる。ただし、これらに限定されるわけではなく、エッチング、薄膜堆積、表面硬化、表面活性化、表面洗浄など表面処理の内容に応じて適宜変更することができる。
【0016】
図1に示すように、移動部20は、処理部10を移動させる。移動部20は、処理部10の処理部本体11を保持する保持部21を備えている。そして、移動部20は、搬送部2の搬送面に沿って保持部21を往復移動させることができるようになっている。そのため、移動部20は、保持部21に保持された処理部10(処理部本体11)を搬送面に沿って往復移動させることができる。移動部20としては、例えば、1軸(単軸)ロボットなどを例示することができる。なお、処理部10の吹き出し口11aと被処理物Wの被処理面との間の距離を調整する機能を併せ持つようにすることもできる。
なお、搬送部2による被処理物Wの搬送、移動部20による処理部10の移動は、間欠的なものであってもよいし、連続的なものであってもよい。ただし、連続的なものとすれば、起動、停止のための速度制御の回数を減らすことができる。そのため、速度むらの発生を抑制することができ、被処理物Wの被処理面上における処理の面内均一性を向上させることができる。
【0017】
制御部30は、移動部20を制御することで処理部10の往復移動を制御する。この際、搬送部2の搬送速度を検知して、処理部10と被処理物Wとの間の相対速度を制御することができるようになっている。なお、制御部30が移動部20と搬送部2とを制御して、処理部10と被処理物Wとの間の相対速度を制御するようにすることもできる。また、図示しない検出部により被処理物Wの搬送速度を直接検出して、処理部10と被処理物Wとの間の相対速度を制御するようにすることもできる。
【0018】
すなわち、制御部30は、移動部20の制御を行うことで、所定の方向に向けて搬送される被処理物Wに対して表面処理を施す際に処理部10を搬送部20の搬送面に沿って搬送方向に移動させるとともに、被処理物Wと処理部10との間の相対速度を制御する。
また、制御部30は、処理部10の移動速度Vhが被処理物Wの搬送速度Vk以下となるように相対速度Vsの制御を行うようにすることができる。
また、制御部30は、必要となる表面処理効果に応じて相対速度の制御を行うようにすることができる。
また、制御部30は、処理部10の下に被処理物Wの搬送方向前側の端部が到達した時に、処理部10を所定の移動速度で搬送方向に移動させるようにすることができる。
また、制御部30は、移動部10の制御を行うことで、被処理物Wに対する表面処理が終了した際に処理部10を搬送部2の搬送面に沿って搬送方向とは反対の方向に移動させることができる。
【0019】
次に、表面処理装置1の作用について例示をする。
図2に示すように、ガス供給部15から処理部本体11の放電空間11c内に処理ガスGが供給される。この際、供給される処理ガスGの流量が所定の値となるように流量制御弁16により流量調整が行われる。
また、高周波電源14により所定の値の高周波電力が電極12に印加される。
すると、電極12と電極13とがいわゆる平行平板電極を形成するため、電極間に放電が起こり放電空間11c内でプラズマPが発生する。発生したプラズマPにより処理ガスGが励起、活性化されて中性活性種、イオン、電子などのプラズマ生成物が生成される。この生成されたプラズマ生成物が、ガス流にのって吹き出し口11aから吹き出される。 一方、図示しない移載装置などにより被処理物W(例えば、半導体ウェーハやガラス基板など)が搬送部2の搬送面上に載せられる。搬送面上に載せられた被処理物Wは、所定の方向に向けて所定の搬送速度Vkで搬送される。
なお、吹き出し口11aからプラズマ生成物を吹き出させるタイミングは、図示しない検出部により被処理物Wの搬送方向前側の端部を検出し、被処理物Wの搬送開始を検知したときとほぼ同時とすることができる。また、被処理物Wの搬送が開始されてから所定の時間が経過した後とすることもできる。その様にすれば、所定に時間が経過するまでの間に処理部10の初期速度を調整することができる。
【0020】
次に、図1(a)に示すように、開始点Sにおいて処理部10の吹き出し口11aの下に被処理物Wの搬送方向前側の端部が到達すると、処理部10と被処理物Wとの間の相対速度が所定の値となるように処理部10が移動速度Vhで移動される。この場合、被処理物Wの搬送方向前側の端部の到達は、図示しない検出部により検知するようにすることができる。また、処理部10の移動は、制御部30により移動部20を制御することで行われる。この際、図示しない測定部により処理部10の吹き出し口11aと被処理物Wの被処理面との間の距離を測定し、処理部10の吹き出し口11aと被処理物Wの被処理面との間の距離が略一定となるように処理部10(吹き出し口11a)の位置を調整するようにすることもできる。
この様にして、被処理物Wの表面処理が開始される。
なお、図中のLhは、表面処理を施す際の処理部の移動距離(開始点Sから終了点Eまでの距離)である。
【0021】
次に、図1(b)に示すように、被処理物Wを搬送するとともに被処理物Wに表面処理が施される。この際、被処理物Wを搬送するとともに、処理部10と被処理物Wとの間の相対速度により表面処理が施される位置を移動させることができるので、被処理物Wの被処理面全体に表面処理を施すことができる。また、処理部10と被処理物Wとの間の相対速度を制御することで、表面処理時間や得られる表面処理効果などを制御することができる。
【0022】
ここで、図1に示すように、被処理物Wの搬送速度をVk、処理部10の移動速度をVhとすると、表面処理を施す位置における移動速度でもある相対速度Vsは、「Vs=Vk−Vh」で表される。この場合、Vk≧Vhである。すなわち、処理部10の移動速度Vhが被処理物Wの搬送速度Vk以下となっている。
また、被処理物Wの長さ寸法(被処理物Wの搬送方向の寸法)をLk、1つの被処理物Wの表面処理時間をTsとすると、「Ts=Lk/Vs」で表される。
また、その際の被処理物Wの搬送距離をLsとすると、「Ls=Ts・Vk=(Lk/Vs)・Vk」で表される。
【0023】
この場合、相対速度Vsを小さくすれば表面処理時間が長くなり、プラズマ生成物に曝される時間が長くなるので得られる表面処理効果を高くすることができる。また、相対速度Vsを大きくすれば表面処理時間が短くなり、プラズマ生成物に曝される時間が短くなるので得られる表面処理効果やプラズマ生成物による損傷などを低減させることができる。また、相対速度Vsをなくせば表面処理を施す位置を固定することができる。
例えば、被処理面の表面洗浄を施す場合などにおいて、付着物が多い場合には相対速度Vsを小さくして表面処理効果(付着物の除去効果)を高めるようにすることができる。また、付着物が少ない場合やプラズマ生成物による損傷が発生しやすい場合には相対速度Vsを大きくして表面処理時間の短縮やプラズマ生成物による損傷の低減を図ることができる。また、任意の位置に吹き出し口11aが到達した際に相対速度Vsがなくなるようにすれば、任意の位置の部分的な表面洗浄を施すことができる。
【0024】
次に、図1(c)に示すように、終了点Eにおいて処理部10の吹き出し口11aの下に被処理物Wの搬送方向後側の端部が到達すると、処理部10が開始点S(図1(a)に示す位置)に戻される。この際、次に表面処理が施される被処理物Wの搬送方向前側の端部が図1(a)に示す吹き出し口11aの下に到達する前に戻せるような速度で戻される。この様にして、被処理物Wの表面処理が終了する。
以降、前述した手順を繰り返すことで、順次被処理物に表面処理が施される。
【0025】
なお、被処理物Wの搬送方向後側の端部の到達は、図示しない検出部により検知するようにすることができる。また、搬送時間や搬送距離Lsなどに基づいて搬送方向後側の端部の到達を間接的に知るようにすることもできる。
【0026】
また、処理部10の吹き出し口11aの下に被処理物Wの搬送方向後側の端部が到達する前に処理部10を開始点Sに戻すようにすることもできる。例えば、所定の範囲だけ表面処理を施すような場合には、所定の範囲の表面処理が終了した時点で処理部10を開始点Sに戻すようにすることができる。
また、相対速度Vsを適宜変化させることで部分的に表面処理効果を高めたり、部分的にプラズマ生成物による影響を低減させたりすることができる。
【0027】
図3は、表面処理効果と相対速度との関係を例示するための模式図である。
なお、図3は、図1に例示をしたもののように処理部10が1つ設けられた場合である。
図3に示すように、表面処理効果と相対速度とは反比例の関係にある。
そのため、前述したように、相対速度Vsを小さくすれば表面処理効果を高くすることができる。また、相対速度Vsを大きくすれば表面処理効果を低減させることができる。 また、相対速度Vsを小さくして行くと表面処理効果が急激に高くなる。そのため、この点をも考慮して相対速度Vsを変化させ表面処理を施すようにすることもできる。
【0028】
本実施の形態によれば、処理部10と被処理物Wとの間の相対速度Vsを制御することで、表面処理時間Tsや得られる表面処理効果などを制御することができる。
この場合、表面処理効果のさらなる向上が求められた場合に処理部の数を増加させたり搬送速度を遅くしたりする必要がない。そのため、生産性の低下を抑制するとともに表面処理効果の向上を図ることができる。
また、被処理物Wを搬送するとともに、処理部10と被処理物Wとの間の相対速度Vsにより表面処理が施される位置を移動させることができるので、被処理物Wの被処理面全体に表面処理を施すことができる。
また、部分的な表面処理を施すこともできる。
また、相対速度Vsを適宜変化させることで部分的に表面処理効果を高めたり、部分的にプラズマ生成物による影響を低減させたりすることができる。
【0029】
次に、本発明の第2の実施形態に係る表面処理装置を例示する。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る表面処理装置を例示するための模式図である。 図4に示すように、表面処理装置1aには、搬送部2、処理部10a〜10c、移動部20a、制御部30aが設けられている。
なお、図4は、表面処理が施される工程を表した図でもあり、図4中に示す開始点Sから終了点Eの間で表面処理が施されることを表している。
【0030】
本実施の形態においては、前述した処理部10が3組設けられている。すなわち、処理部10a〜10cが設けられている。
また、処理部10a〜10cを移動させる移動部20aが設けられている。
移動部20aは、図4に示すように、矩形状の軌跡を描くように処理部10a〜10cを移動させる。図4に例示をしたものにおいては、開始点Sから終了点Eに向けて移動速度Vhで処理部を移動させ、終了点Eに到達した処理部を上方に移動させるようにしている。そして、上方に移動させた処理部を終了点Eから開始点Sに向けて移動速度Vrで移動させ、開始点Sに到達した処理部を下方に移動させるようにしている。また、「Vr>Vh」とすることで処理部の配設数を低減させるようにしている。
移動部20aは、例えば、いわゆるパレット搬送装置などとすることができる。この場合、パレット搬送装置に設けられたパレットに処理部10a〜10cをそれぞれ保持させ、パレットを移動させることで処理部10a〜10cを移動させるようにしたものなどとすることができる。なお、「Vr>Vh」とする場合は、例えば、いわゆる早戻り機構を設けるようにすればよい。また、処理部10a〜10cの吹き出し口11aと被処理物W1〜Wnの被処理面との間の距離を調整する機能を併せ持つようにすることもできる。
【0031】
制御部30aは、移動部20aを制御することで処理部10a〜10cの移動を制御する。この際、搬送部2の搬送速度を検知して、処理部10a〜10cと被処理物W1〜Wnとの間の相対速度を制御することができるようになっている。なお、制御部30aが移動部20aと搬送部2とを制御して、処理部10a〜10cと被処理物W1〜Wnとの間の相対速度を制御するようにすることもできる。また、図示しない検出部により被処理物W1〜Wnの搬送速度を直接検出して、処理部10a〜10cと被処理物W1〜Wnとの間の相対速度を制御するようにすることもできる。
【0032】
すなわち、制御部30aは、移動部20aの制御を行うことで、所定の方向に向けて搬送される被処理物Wに対して表面処理を施す際に処理部10a〜10cを搬送部2の搬送面に沿って搬送方向に移動させるとともに、被処理物Wと処理部10a〜10cとの間の相対速度Vsを制御する。
また、制御部30aは、処理部10a〜10cの移動速度Vhが被処理物Wの搬送速度Vk以下となるように相対速度Vsの制御を行うようにすることができる。
また、制御部30aは、必要となる表面処理効果に応じて相対速度の制御を行うようにすることができる。
また、制御部30aは、処理部10a〜10cの下に被処理物Wの搬送方向前側の端部が到達した時に、処理部10a〜10cを所定の移動速度Vhで搬送方向に移動させるようにすることができる。
また、制御部30aは、処理部10a〜10cへの処理ガスG、高周波電力の供給を制御して吹き出し口11aよりの吹き出しを制御するようにすることもできる。
【0033】
次に、表面処理装置1aの作用について例示をする。
前述した表面処理装置1の場合と同様に、ガス供給部15から処理部本体11の放電空間11c内に処理ガスGが供給される。この際、供給される処理ガスGの流量が所定の値となるように流量制御弁16により流量調整が行われる。
また、高周波電源14により所定の値の高周波電力が電極12に印加される。
すると、電極12と電極13とがいわゆる平行平板電極を形成するため、電極間に放電が起こり放電空間11c内でプラズマPが発生する。発生したプラズマPにより処理ガスGが励起、活性化されて中性活性種、イオン、電子などのプラズマ生成物が生成される。この生成されたプラズマ生成物が、ガス流にのって吹き出し口11aより吹き出される。 一方、図示しない移載装置などにより被処理物W1〜Wnの間隔が所定の寸法Lgとなるようにして被処理物W1〜Wn(例えば、半導体ウェーハやガラス基板など)が搬送部2の搬送面上に載せられる。搬送面上に載せられた被処理物W1〜Wnは、所定の方向に向けて所定の搬送速度Vkで搬送される。
【0034】
次に、図4(a)に示すように、処理部と被処理物との間の相対速度が所定の値となるように処理部10b、10cを移動速度Vhで移動させる。また、開始点Sにおいては吹き出し口11aの下に被処理物W3の搬送方向前側の端部があり、終了点Eにおいては吹き出し口11aの下に被処理物W1の搬送方向後側の端部があるようにされる。
【0035】
この際、図示しない測定部により処理部10b、10cの吹き出し口11aと被処理物W2、W3の被処理面との間の距離を測定し、処理部10b、10cの吹き出し口11aと被処理物W2、W3の被処理面との間の距離が略一定となるように処理部10b、10c(吹き出し口11a)の位置をそれぞれ調整するようにすることもできる。
【0036】
そして、被処理物W2、W3を搬送するとともに被処理物W2、W3に表面処理が施される。この際、被処理物W2、W3を搬送するとともに、処理部10b、10cと被処理物W2、W3との間の相対速度により表面処理が施される位置を移動させることができるので、被処理物W2、W3の被処理面全体に表面処理を施すことができる。また、処理部10b、10cと被処理物W2、W3との間の相対速度を制御することで、表面処理時間や得られる表面処理効果などを制御することができる。
【0037】
また、図4(b)に示すように、終了点Eにおいては、処理部10aへの処理ガスG、高周波電力の供給を停止して吹き出し口11aからの吹き出しを停止させる。そして、処理部10aを上方に移動させる。次に、上方に移動させた処理部10aを終了点Eから開始点Sに向けて移動速度Vrで移動させる。この際、「Vr>Vh」とすることで、いわゆる「早戻り」が行われる。
【0038】
そして、図4(c)に示すように、開始点Sに到達した処理部10aを下方に移動させる。また、処理部10aへの処理ガスG、高周波電力の供給を再開して吹き出し口11aよりの吹き出しを再開させる。また、処理部10aが開始点Sにおける下端位置に到達した際には、吹き出し口11aの下に被処理物W4の搬送方向前側の端部があるように制御される。
一方、終了点Eに到達した処理部10bを上方に移動させる。そして、前述した処理部10aの場合と同様にして、上方に移動させた処理部10bを終了点Eから開始点Sに向けて移動速度Vrで移動させる。
前述した処理部10a〜10cの移動は、制御部30aにより移動部20aを制御することで行われる。また、制御部30aにより処理部10a〜10cへの処理ガスG、高周波電力の供給、停止の制御が行われる。
以降、前述した手順を繰り返すことで、順次被処理物W1〜Wnに表面処理が施される。
【0039】
ここで、移動速度Vrなどについてさらに例示をする。
なお、図4に示すように、被処理物の間隔寸法をLg、表面処理を施す際の処理部の移動距離(開始点Sから終了点Eまでの距離)をLhとした場合について例示をする。
Lh<Lgの場合には、1つの処理部で表面処理を順次施すことが可能である。例えば、図1に例示をしたような表面処理装置1により表面処理を順次施すことができる。
この場合、処理部が終了点Eから開始点Sまで戻る際の時間をTr、処理部が終了点Eから開始点Sまで戻る際の移動速度をVr、被処理物の搬送速度をVk、処理部の移動速度をVhとすると、「Vr=Lh/Tr」、「Tr=(Lg−Lh)/Vk」を満足するような時間Trまたは移動速度Vrで処理部を開始点Sまで戻せばよいことになる。なお、時間Trまたは移動速度Vrが実用レベルにない場合には、表面処理装置1を複数組設けるか、図4に例示をしたような複数の処理部を備えた表面処理装置1aとすればよい。
【0040】
また、Lh>Lgの場合には、図4に例示をしたような複数の処理部を備えた表面処理装置1aとする必要がある。
この場合、処理部の数をn、被処理物の長さ寸法(被処理物Wの搬送方向の寸法)をLkとすると、「Tr≦(((Lg+Lk)・(n−1)+Lg)-Lh)/Vk」、「Vr≧Lh/Tr」を満足するような時間Trまたは移動速度Vrで処理部を開始点Sまで戻せばよいことになる。
なお、Lh=Lgの場合は、Lh<Lgの場合と同様とすることもできるが、Lh>Lgの場合と同様とすることが好ましい。
【0041】
本実施の形態によれば、処理部10a〜10cと被処理物との間の相対速度を制御することで、表面処理時間や得られる表面処理効果などを制御することができる。
この場合、表面処理効果のさらなる向上が求められた場合に処理部の数を増加させたり搬送速度を遅くしたりする必要がない。そのため、生産性の低下を抑制するとともに表面処理効果の向上を図ることができる。
また、複数の処理部を備えているので、Lh>Lgの場合、すなわち表面処理時間が長くならざるを得ないような場合であっても対応することができる。
ここで、固定した処理部の吹き出し口の下を一定の搬送速度で被処理物が搬送されるようなものの場合には、図5に示すように表面処理時間に比例した数の処理部が必要となる。 これに対し、本実施の形態によれば、固定した処理部の吹き出し口の下を一定の搬送速度で被処理物が搬送されるようなものの場合と比べて、処理部の数を半分程度まで削減することができる。
また、被処理物を搬送するとともに、処理部10a〜10cと被処理物との間の相対速度により表面処理が施される位置を移動させることができるので、被処理物の被処理面全体に表面処理を施すことができる。
また、部分的な表面処理を施すこともできる。
また、相対速度を適宜変化させることで部分的に表面処理効果を高めたり、部分的にプラズマ生成物による影響を低減させたりすることができる。
【0042】
次に、本実施の形態に係る表面処理方法について例示をする。
本実施の形態に係る表面処理方法については、前述した表面処理装置の作用などにおいて例示をしたものと同様のものとすることができる。
例えば、本実施の形態に係る表面処理方法は、被処理物を所定の方向に向けて搬送し、被処理物に対して、プラズマ処理、紫外線照射処理、およびコロナ放電処理からなる群より選ばれた少なくとも1種の処理を施す表面処理方法であって、所定の方向に向けて搬送される被処理物に対して処理を施す際に処理を施す処理部を被処理物が搬送される搬送面に沿って搬送方向に移動させるとともに、被処理物と処理部との間の相対速度を制御するものとすることができる。
この場合、処理部の移動速度Vhが被処理物の搬送速度Vk以下となるように相対速度Vsの制御を行うようにすることができる。
また、必要となる表面処理効果に応じて相対速度の制御を行うようにすることができる。
【0043】
本実施の形態によれば、処理部と被処理物との間の相対速度を制御することで、表面処理時間や得られる表面処理効果などを制御することができる。
この場合、表面処理効果のさらなる向上が求められた場合に処理部の数を増加させたり搬送速度を遅くしたりする必要がない。そのため、生産性の低下を抑制するとともに表面処理効果の向上を図ることができる。
また、被処理物を搬送するとともに、処理部と被処理物との間の相対速度により表面処理が施される位置を移動させることができるので、被処理物の被処理面全体に表面処理を施すことができる。
また、部分的な表面処理を施すこともできる。
また、相対速度を適宜変化させることで部分的に表面処理効果を高めたり、部分的にプラズマ生成物による影響を低減させたりすることができる。
【0044】
以上、本実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、表面処理装置1や表面処理装置1aなどが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、数などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。 また、処理部として大気圧プラズマ処理を施すものを例示したがこれに限定されるわけではない。例えば、プラズマ処理を施すものとしては減圧プラズマ処理を施すものとすることもできる。また、紫外線(UV;Ultraviolet)照射処理やコロナ放電処理を施すものとすることもできる。この場合、例えば、被処理物に対して、プラズマ処理、紫外線照射処理、およびコロナ放電処理からなる群より選ばれた少なくとも1種の処理を施すことができるものとすることができる。
また、平行平板電極に高周波電力を印加してプラズマを発生させるものを例示したが、プラズマの発生方法はこれに限定されるわけではない。例えば、処理部の内部にマイクロ波を導入してプラズマを発生させるようなものであってもよい。
【0045】
また、本実施の形態に係る表面処理装置および表面処理方法は、半導体装置やフラットパネルディスプレイなどの電子デバイスの製造、金属部品の表面硬化、プラスチック部品の表面活性化、表面洗浄、無薬剤殺菌など、各種の技術分野において用いることができる。 また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0046】
1 表面処理装置、1a 表面処理装置、2 搬送部、10 処理部、10a〜10c 処理部、11 処理部本体、11a 吹き出し口、11c 放電空間、12 電極、13 電極、14 高周波電源、15 ガス供給部、20 移動部、20a 移動部、21 保持部、30 制御部、30a 制御部、E 終了点、S 開始点、P プラズマ、Vk 搬送速度、Vh 移動速度、Vs 相対速度、W 被処理物、W1〜W4 被処理物、Wn 被処理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を所定の方向に向けて搬送する搬送部と、
前記被処理物に対して、プラズマ処理、紫外線照射処理、およびコロナ放電処理からなる群より選ばれた少なくとも1種の処理を施す処理部と、
前記処理部を移動させる移動部と、
前記移動部の制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記移動部の制御を行うことで、前記所定の方向に向けて搬送される被処理物に対して前記処理を施す際に前記処理部を前記搬送部の搬送面に沿って搬送方向に移動させるとともに、前記被処理物と前記処理部との間の相対速度を制御することを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記処理部の移動速度が前記被処理物の搬送速度以下となるように前記相対速度の制御を行うことを特徴とする請求項1記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記被処理物に対して必要となる表面処理効果に応じて前記相対速度の制御を行うことを特徴とする請求項1記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記処理部の下に前記被処理物の搬送方向前側の端部が到達した時に、前記処理部を所定の移動速度で前記搬送方向に移動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記移動部の制御を行うことで、前記被処理物に対する処理が終了した際に前記処理部を前記搬送部の搬送面に沿って前記搬送方向とは反対の方向に移動させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の表面処理装置。
【請求項6】
前記処理部が複数設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の表面処理装置。
【請求項7】
前記移動部は、矩形状の軌跡を描くように前記処理部を移動させることを特徴とする請求項6記載の表面処理装置。
【請求項8】
被処理物を所定の方向に向けて搬送し、前記被処理物に対して、プラズマ処理、紫外線照射処理、およびコロナ放電処理からなる群より選ばれた少なくとも1種の処理を施す表面処理方法であって、
前記所定の方向に向けて搬送される被処理物に対して前記処理を施す際に前記処理を施す処理部を前記被処理物が搬送される搬送面に沿って搬送方向に移動させるとともに、前記被処理物と前記処理部との間の相対速度を制御すること、を特徴とする表面処理方法。
【請求項9】
前記処理部の移動速度が前記被処理物の搬送速度以下となるように前記相対速度の制御を行うことを特徴とする請求項8記載の表面処理方法。
【請求項10】
必要となる表面処理効果に応じて前記相対速度の制御を行うことを特徴とする請求項8記載の表面処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−187184(P2011−187184A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48324(P2010−48324)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】