説明

車両用メーターユニット

【課題】 メーター主要部側における警告等のための表示が、補助画像側の出力に邪魔されることなく、その強調効果を維持できる車両用メーターユニットを提供する。
【解決手段】 補助画像表示部51のピクセルマトリックスに表示される図形領域のうち、強調表示部55の表示状態が非強調表示状態にあるときの自身の表示色が、強調表示色と同一系統の制限前設定色に定められるものを制限先被監視領域56として定め、メーター主要部49側の強調表示部55が非強調表示状態から強調表示状態に切り替わるに伴い、制限先被監視領域56の表示色を、制限前設定色よりも強調表示色との色差が大きい制限後設定色に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用メーターユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2004−157434号公報
【特許文献2】特開平11−51686号公報
【0003】
特許文献1及び2には、車両のコックピット部に搭載されるメーターユニットを、液晶パネル等の画像表示装置にて構成し、ここに従来のアナログ機械式のメーターに代えて、メーターのカラー画像(いわゆるソフトメーター)を表示するようにしたものが開示されているこのようなメーターユニットの場合、カーナビゲーション装置の地図画像等も、ソフトメーターとともに画像表示装置のモニタ画面上に容易に合成表示できる利点がある。また、従来のアナログ機械式メーターを使用するメーターユニットにおいても、カーナビゲーション装置用の表示装置を別途組み込むことが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のメーターユニットは、例えばカーナビゲーション装置の画面(以下、「ナビ画面」ともいう)がメーターを含むコックピット部に組み込まれることで、メーターとナビ画面とがドライバー前方側の近接した視野内に収まり、メーター視認時とそれほど目線を変えることなくナビ画面も参照できる利点がある。しかし、この利点と表裏一体の次のような弊害も存在する。すなわち、メーターに表示される情報には、警告インジケーター類の作動情報が含まれていることがある。これらのインジケーターは、優先度や緊急度が高い情報であることを示すため、LEDの点灯や特定画像図形の出力により、赤やオレンジなど他のものより目立ちやすい色調にて強調する表示がなされていた。しかし、それらに近接する形でカラフルなナビ画面が同時に出力されると、本来強調すべき情報が視野内でナビ画面の表示色にまぎれて目立ち難くなり、報知の優先度や緊急度がドライバーに伝わらなくなる惧れもある。特に、ナビ画面上にインジケーター類の点灯色と同じ色調の図形が表示されている場合は、ドライバーの注意がその図形に分散してしまい、上記の問題を特に生じやすい。
【0005】
本発明の課題は、ナビ画面などの補助画像がメーターやインジケーター類からなるメーター主要部とともに近接配置されているにも拘わらず、メーター主要部側における警告等のための表示が、補助画像側の出力に邪魔されることなく、その強調効果を維持できる車両用メーターユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明は、自動車等の車両の運転席に対向配置される車両用メーターユニットであって、上記の課題を解決するために、
メーター及び該メーターに随伴するインジケーターが集合配置され、それらメーターとインジケーターにより車両の基本動作状態情報を視覚表示するとともに、予め定められた強調表示色に基づく強調表示状態と、該強調表示状態が解除された非強調表示状態との間で表示状態が切り替え可能とされた強調表示部を有したメーター主要部と、
メーター主要部から分離区画された画像表示用のカラーピクセルマトリックスを有し、基本動作状態情報以外の表示情報を含む補助画像をカラー表示する補助画像表示部と、
補助画像表示部のピクセルマトリックスに表示される図形領域のうち、強調表示部の表示状態が非強調表示状態にあるときの自身の表示色が、強調表示色と同一系統の制限前設定色に定められるものを制限先被監視領域として定め、メーター主要部側の強調表示部が非強調表示状態から強調表示状態に切り替わるに伴い、制限先被監視領域の表示色を、制限前設定色よりも強調表示色との色差が大きい制限後設定色に変換する表示色制限用変換手段を有した表示制御部と、を有してなることを特徴とする。
【0007】
上記本発明の構成によると、メーター主要部内に強調表示部が存在し、強調表示状態にある該強調表示部と同一系統の色調を有する図形領域が補助画像中に存在する場合に、その図形領域を制限先被監視領域として、強調表示部が非強調表示状態から強調表示状態に切り替わるに伴い、制限先被監視領域の表示色を制限前設定色よりも強調表示色との色差が大きい制限後設定色に変換するようにした。すなわち、強調表示部が強調表示状態となっている場合には、補助画像中においてこれと同系統の色彩の図形領域を表示することが制限され、強調表示部の出力の色彩的な強調効果が補助画像中の表示図形により減殺される不具合が軽減される。なお、「同一系統の色調を有する」とは、厳密には色空間上での色度座標が同一であることを意味するが、本発明の目的に鑑みた場合、厳密に同一色でなくともドライバーが紛らわしく感じる2つの色は同一系統の色調に属すると捕らえるべきである。ただし、どの程度まで色調が接近すれば「同一系統の色調」に感じられるかには個人差があるし、外乱光やドライバーの体調によっても左右される。一例をあげれば、均等色空間上にて色差(該均等色空間内にプロットされる2つの色度座標間の距離)が一定の範囲内にある場合、例えば、JIS:Z8730に規定されたL表色系における色差が30以内に収まっている場合は、2つの色を「同一系統の色調を有する」ものと捉えることが可能である。いずれにしても、本発明において重要なのは、強調表示部の表示色に対し、補助画像中のある図形領域の表示色が近接して色彩的な区別がつきにくくなり、どの表示が本来強調したかったのかを見失ってしまう不具合を生じないようにするために、上記2つの表示色の色差が拡大されるよう、補助画像中の図形領域の表示色に制限を加える点にある。
【0008】
強調表示部は、例えば、基本動作状態情報に含まれる警告能動化情報に基づいて表示状態が強調表示状態とされる警告表示部である。補助画像中の図形の表示色と警告表示部の表示色との色差を拡大することで、警告表示の強調効果が高められ、警告表示の認識レスポンスを高めることができる。
【0009】
本発明においてメーターやインジケーターの表示色は、一応限定はされないが、表示目的のイメージに合った表示色を用いることが望ましく、例えば、警告の重要性や緊急度の高いものから、(赤、オレンジ系)→(黄色系)→(緑、青系)の序列で表示色を選ぶことができる。特に、重要度や緊急性の高い警告表示部については、設定される強調表示色の色相を、色相環上にて10YRから10Rを経て10Pに至る区間(赤、オレンジ系が主体となる区間である)内に定めることが望ましいといえる。
【0010】
次に、メーター主要部は、画像表示用のカラーピクセルマトリックスを有する表示パネル上に、補助画像表示部とともに一体的に画像表示することができる。このようにすれば、メーターやインジケーター類と補助画像表示部とを単一の表示装置により構成でき、ハードウェアコストやアセンブリの手間を省くことができる上、メーター類のデザイン上の自由度や柔軟性を大幅に増す事ができる。この場合、強調表示部は、強調表示色にてメーターの画像とともに表示パネル上に画像表示される図形領域である制限元被監視領域とすることができる。これにより、強調表示部は、設定される表示色に応じて制限先監視領域とともに、画像上の色彩設定条件に基づいて表示用のソフトウェア処理に基づき一元的に管理・制御できる。なお、メーターの画像は、ドライバーが運転時に頻繁に参照するものであり、メーター中に強調表示部が含まれていると違和感を感じるドライバーも存在しうる。この場合は、メーターの画像を強調表示部を含まないものとして形成することができる。
【0011】
補助画像は、例えばカーナビゲーション装置の出力画像(ナビ画像)とすることができる。ドライバーは運転中に参照するメーター類から大きく目線をそらすことなく、経路案内等にかかる運転補助情報を参照でき、よりスムーズな経路案内が可能となる。この場合、特定のランドマークや現在位置ポインタなどが強調表示部と同じ色彩で表示されていると、強調表示部へのドライバーの注意が分散し、強調効果が薄れることにつながるので、ドライバーの参照頻度が高いナビ画像に本発明を適用することは特に有効であるといえる。例えば、出力画像が、カーナビゲーション装置の経路案内用の地図画像を含むものであり、地図画像上における車両の現在位置を示す現在位置ポインタの図形画像は、経路把握のためにドライバーの視覚上の注意がより積極的に向けられる。従って、現在位置ポインタが強調表示色と同系統の色で表示されているとき、同じ色による強調表示部が新たに点灯ないし画像出力されても、ドライバーの注意が現在位置ポインタに集中していれば、強調表示部への注意が著しくそがれることとなる。そこで、該現在位置ポインタを制限先被監視領域として定め、強調表示部が強調表示状態にある場合に、その表示色に上記の制限(変換)を設けることは非常に効果的である。
【0012】
次に、表示色制限用変換手段は、制限前設定色を、該制限前設定色から一定以上色相の隔たった制限後設定色に変換するものとすることができる。これにより、制限先被監視領域を強調表示色に対し色合いのレベルで相違させることができ、強調表示効果を高めることができる。例えば、強調表示色が色相環上にて、赤、オレンジ系が主体となる10YRから10Rを経て10Pに至る区間に定められている場合を、制限後設定色の色相が、色相環上にて青、緑系が主体となる5GYから5GBを経て5PBに至る区間内に定めると、強調表示部の識別性を特に高めることができる。
【0013】
他方、表示色制限用変換手段は、制限前設定色を、該制限前設定色から彩度及び明度の少なくともいずれかを一定以上小さくした制限後設定色に変換するものとすることもできる。制限先被監視領域の表示色の彩度及び明度を下げることは、色として目立つ要素が強調表示部よりも抑制されることを意味し、結果として強調表示部の識別性を高めることに寄与する。
【0014】
特に、表示パネル上にメーター主要部を補助画像表示部とともに一体表示する構成の場合、表示制御部は補助画像表示部において制限元被監視領域の彩度を周囲の画像領域とともに小さくするものとすることができる。強調表示状態において、強調表示部以外の画像について色の強さを弱めることで、強調表示部の表示色を相対的にさらに目立たせることができる。また、彩度をゼロに近くする(あるいは、周囲の画像領域ととともに色相を同一に設定し、強調表示部よりも小さい彩度に設定する)ことにより、グレースケール画像(モノクロ画像)とすることも可能である。
【0015】
表示色制限用変換手段は、種々のアルゴリズムにより、制限前表示色を制限後表示色に変換することができる。一例をあげれば、予め定められた色度図上にて制限前設定色に対応する色度座標点から、予め定められた距離隔たった位置にある色度座標点を見出し、該色度座標点に対応する表示色を制限後設定色として定めることができる。このようにすると、どのような制限前表示色に対しても制限後表示色との色差を必要なレベルにて付与することができ、強調表示部と制限先被監視領域との色彩上の識別性を確実に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の車両用メーターユニットの、その電気的構成の一例を示すブロック図である。また、図7は、メーターユニットの表示レイアウトの一例を示す正面図である。このメーターユニット1は車両の運転席に対向配置されるものであり、図7に示すように、メーター主要部49と補助画像表示部51(白の破線で囲った領域:メーター主要部49はその背景部分の全体)とを有する。なお、図7及び図16〜図19は、本来はカラー画像である。また、グレースケール変換した画像の各部のコントラストがより明確となるように、画像は諧調を反転した形で表示している。
【0017】
メーター主要部49は、メーター50,52,53,54及び該メーター50,52,53,54に随伴するインジケーター55が集合配置されたものである。それらメーター50,52,53,54とインジケーター55により車両の基本動作状態情報が視覚表示される。強調表示部55は、予め定められた強調表示色に基づく強調表示状態と、該強調表示状態が解除された非強調表示状態との間で表示状態が切り替え可能とされている。本実施形態では、強調表示部55は、非強調表示状態が設定された場合に、図形データの出力停止ないし透明化(外形線も含め背景と全く同一の色に設定する)により表示が消去される。従って、図7では強調表示部55は1つしか図示されていないが、実際には複数あり、図面上現れているものだけが強調表示状態となっており、他のものは非強調表示状態となって透明化しているので、図面上に現れていないだけである。なお、強調表示部55は非強調表示状態において、強調表示色から一定以上色差の隔たった表示色にて積極的に表示を消さないようにすることもできる。
【0018】
補助画像表示部51は、メーター主要部49から分離区画された画像表示用のカラーピクセルマトリックスを有し、基本動作状態情報以外の表示情報を含む補助画像をカラー表示するものである。図7において補助画像は、カーナビゲーション装置の出力画像(ナビ画像)とされている。
【0019】
補助画像表示部51のピクセルマトリックスに表示される図形領域のうち、強調表示部55の表示状態が非強調表示状態にあるときの自身の表示色が、強調表示色と同一系統の制限前設定色に定められるものが制限先被監視領域56として定められている。そして、メーター主要部49側の強調表示部55が非強調表示状態から強調表示状態に切り替わるに伴い、制限先被監視領域56の表示色を、制限前設定色よりも強調表示色との色差が大きい制限後設定色に変換する表示色制限用変換手段の機能を具備した表示制御部が設けられている。
【0020】
強調表示部55は、基本動作状態情報に含まれる警告能動化情報に基づいて表示状態が強調表示状態とされる警告表示部(以下、警告表示部55ともいう)である。警告表示部55の種類は特に限定されないが、例えば、過剰なエンジン回転数や速度超過、水温異常、燃料切れ、シートベルト非装着、ドアアンロック、半ドア、オイル異常などの各表示部を例示することができる。図7においては、シートベルト非装着の警告表示部55が警告表示状態となっている。
【0021】
他方、メーター50,52,53,54は、速度メーター50、エンジン回転数メーター52、水温メーター53及び燃料残量メーター54が表示されている。なお、警告表示部55のうち、エンジン回転数、速度超過、水温異常あるいは燃料切れについては、メーター指示値の色彩変更などにより強調することも可能であり、この場合は、メーター50,52,53,54の一部を警告表示部55に流用するようにしてもよい。他方、メーター50,52,53,54の指示情報と特に関係を有さない警告情報(シートベルト非装着、ドアアンロック、半ドア、オイル異常など)については、警告表示部55を(メーター50,52,53,54とは別に設けられた)インジケーターの一つとして定めることができる。
【0022】
本実施形態では、図7に示すように、メーター主要部49が、画像表示用のカラーピクセルマトリックスを有する表示パネル108上に、補助画像表示部51とともに一体的に画像表示されている。強調表示部55は、強調表示色にてメーター50,52,53,54の画像とともに表示パネル108上に画像表示される図形領域である制限元被監視領域(以下、制限元被監視領域55ともいう)とされている。
【0023】
表示パネル108としては、例えばバックライト付きの液晶パネルや、ELディスプレイなどで構成できる。本実施形態では液晶パネルで構成しており、図2はその断面構造の一例を示すものである。液晶パネル4、バックライト(例えばLED型のもの)5及びハードウェア基板6がこの順で積層された状態で筐体7に納められている。他方、自動車のインパネの運転席に対向する部分にはメーターフード2が設けられ、該メーターフード2が形成する凹部内に上記の該筐体7が装着されている。そして、ドライバーから視認される前面側に液晶パネル4が位置し、そのさらに前方側がカバーレンズ3にて覆われている。符号115は、カーナビゲーション装置の音声案内に使用するスピーカである。
【0024】
図1に示すように、表示制御部は、メーター主要部の表示状態に反映するべき基本動作状態情報を外部から取得し、当該基本動作状態情報に対応した表示状態を示すメーター主要部の描画用データを作成するメーター描画作成部200と、補助画像のカラー描画用データを作成する補助画像描画作成部100と、メーター描画作成部200からのメーター主要部の描画用データと、補助画像描画作成部100からの補助画像の描画用データとを合成して、表示パネル108上にメーター主要部49を補助画像とともに表示出力させる画像合成出力制御部(描画LSI)106とを有する。メーター描画作成部200は、制限元被監視領域55の表示色を監視するとともに、該制限元被監視領域55の表示設定色が強調表示色となっている場合に、補助画像描画作成部100に色制限情報を送信する一方、補助画像描画作成部100は該色制限情報を受信するとともに、補助画像中の制限先被監視領域56を検索し、当該制限先被監視領域56の表示色を制限前設定色から制限後設定色に変換するために必要な処理を行なう。
【0025】
上記の構成では、図7におけるメーター50,52,53,54の描画データ作成と、補助画像の描画データ作成とを異なるハードウェアによりタスク分離し、画像合成出力制御部106にて両描画データを合成することにより一枚の画像フレームとして出力することで、メーター主要部49の画像と補助画像との表示制御を効率的かつスムーズに行なうことができ、バグや画面フリーズ、あるいは動画表示がギクシャクするといった不具合を効果的に防止することができる。特に、本実施形態のごとく、補助画像が処理負荷の大きいナビ画像である場合は、上記のようなタスク分担は効果的である。この場合、制限元被監視領域55はメーター主要部49側に存在するため、制限元被監視領域55の表示色設定などを含む色制限情報を、図1のメーター描画作成部200から補助画像描画作成部100に転送することにより、制限先被監視領域56の表示色の制限内容(つまり、表示色の変換内容)を、補助画像描画作成部100側で速やかに把握することができ、ひいては、強調表示状態に移行した場合の制限先被監視領域56の表示色変換を速やかに実行することができる。
【0026】
以下、図1のブロック図についてさらに詳しく説明する。
補助画像描画作成部100は、カーナビゲーション装置の主要制御を司る情報系ECU151を主体とするものであり、その要部は、CPU181、ROM182、RAM183、EEPROMやフラッシュメモリからなる不揮発性メモリ184及び入出力部180が内部バスにて接続されたマイコンからなる。情報系ECU151には、バスインターフェース129fを介してハードディスクドライブからなる記憶装置121が接続されている。該記憶装置121には、描画を含めたカーナビゲーション装置の基本機能実現するナビソフトウェア121pと地図データ121qがインストールされている。地図データは、地図描画用の図形データのほか、マップマッチングや経路探索、経路案内などの種々の処理に必要な道路データ、交差点の詳細データから成る交差点データ、背景レイヤのための背景データ、地名などを表示するための地名データや、道路名称を例えば50音順に並べた道路名称データなどを含むものである。
【0027】
また、入出力部180には、位置検出器101と操作入力部107とが接続されている。位置検出器101は、絶対方位を検出するための地磁気センサ102、車両に作用するヨーレートを検出するためのジャイロスコープ103、車両の走行距離を検出するための距離センサ104およびGPS(Global Positioning System)用人工衛星からの信号を受信するGPS受信機105から構成されており、ナビゲーション装置100が搭載されている車両の現在位置を算出する部分である。
【0028】
ナビソフトウェア121pを立ち上げることにより、CPU181はRAM183をワークメモリとして周知のカーナビゲーション機能を実現する。すなわち、ユーザが操作入力部107を使用して出発地点および目的地点を指定することで、地図データ121qを参照することにより経路探索動作が行なわれ、探索された経路に沿って案内処理が開始される。車両の現在位置は位置検出器101により検出され、検出された位置を中心とする地図描画用の図形データが、道路データ等と地図データから読み出され、ナビ画像の描画用データ(以下、ナビ描画データともいう)が作成される。走行に伴い車両の現在位置が変化するのに対応して、ナビ描画データは新しい現在位置に対応したものが随時更新・作成される。
【0029】
次に、メーター描画作成部200は、メーター表示の主要制御を司るメーターECU(以下、メーターECU200ともいう)として構成され、その要部は、CPU281、ROM282、RAM283及び入出力部280が内部バスにて接続されたマイコンからなる。ROM282にはメーター描画ソフトウェアが格納されている。
【0030】
メーターECU200は、情報系ECU151及びボデー系ECU300等の他のECUとシリアル通信バス127により、各々通信インターフェース126を介してネットワーク接続されている(符号126fは、送受信のデータを一次格納するための通信バッファメモリである)。ボデー系ECU300には、メーターメーター50,52,53,54やインジケーター55に表示させるべき基本動作状態情報を取得するためのセンサ(あるいはスイッチ)群が接続されている。具体的には車速センサ301、エンジン回転数センサ302、冷却水の水温センサ303、燃料残量センサ304などである。また、現在の日時を取得するためのカレンダクロック305やギアポジション検出部306などもボデー系ECU300に接続されている。
【0031】
また、ボデー系ECU300では、水温モニタ結果、残燃料低下、シートベルト非装着、ドアアンロック、半ドアあるいはオイル異常などの情報を、自動車上の各所のセンサあるいはスイッチ群から取得し、警告の必要な状態にあるかどうかを判定する(あるいは、別のECUで既に得られている判定結果を通信により取得する)。そして、警告の必要な状態にある場合は、インジケーターの種別と対応付けた形で警告能動化情報をメーターECU200に通信により送信する。
【0032】
メーターECU200は上記のセンサ群301〜304から基本動作状態情報を、通信バス127を介して取得し、各々対応するメーターのマスター画像(例えばROM282に記憶されているものである)上にその指示値を反映させ、各メーターの描画データ(以下、メーター描画データ)を作成する。具体的には、車速センサ301の検出値が速度メーター50に、エンジン回転数センサ302の検出値がエンジン回転数メーター52に、水温センサ303の検出値が水温メーター53に、燃料残量センサ304の検出値が燃料残量メーター54にそれぞれ反映される。また、警告能動化情報も合わせて受信し、対応するインジケーターの描画データを作成するとともに強調表示状態の表示色を設定する。
【0033】
ナビ描画データとメーター描画データは、いずれも描画図形の外形線を特定する外形線情報(例えばアウトライン用のベクトルデータ)と、その描画図形の塗りつぶし色を特定する色特定情報とからなる。図4は、その色特定情報部分の概念を示すもので、色特定情報と表示すべき領域(図形)の特定情報とが対応付けられている。ここでは、色特定情報は、その領域に設定すべき表示色を、色相、彩度及び明度の三属性により規定しているが、これ以外の属性を用いてもよい。また、色の三属性を示す変数は2つだけが独立なので、該独立変数となる属性のみを用いて表示色を規定してもよい。他方、各領域が色制限のための被監視領域(メーター描画データ側では制限元被監視領域55、ナビ描画データでは制限先被監視領域56)であるか否かを示すフラグも合わせて設けられている(「○」は被監視領域であることを、「×」は被監視領域でないことをそれぞれ示す)。
【0034】
次に、画像合成出力制御部106は周知の描画LSIとして構成され、補助画像描画作成部100とメーター描画作成部200とから描画データ及び色指定データをぞれぞれ受け取り、グラフィックメモリ107上で画像合成し、個々の領域の描画データと色指定データとに基づいて表示パネル108の各ピクセルの色出力設定値を決定し、表示パネル108に出力する。これにより、表示パネル108には図7のごとくメーター主要部49の画像とナビ画像51とが一体化された形で出力される。
【0035】
また、補助画像描画作成部100とメーター描画作成部200とは、入出力部180,280のポート間での直接通信が可能となっており、メーター描画作成部200側に強調表示状態となっている強調表示部55、つまり制限元被監視領域55が存在している場合は、その制限元被監視領域55の色情報を含む色制限情報を補助画像描画作成部100側に送信する。補助画像描画作成部100ではこれを受け、該色制限情報に含まれる色情報に対し、制限前設定色が一定の色差の範囲内にある描画領域を検索し、これを制限先被監視領域56として特定するとともに、制限前設定色を制限後設定色に変換して画像合成出力制御部106に渡す。これにより、制限先被監視領域56は制限後設定色にて表示されるようになる。
【0036】
図3は、その全体の処理流れを概略的に示すフローチャートである。T1ではメーター描画作成部200から色制限情報が補助画像描画作成部100(ナビゲーション装置)に渡され、T2で制限後設定色への変換情報が作成される。T3では、ナビ画像の描画データが作成され、T4ではT2で作成された変換情報に基づいて、色指定情報を含むナビ描画データが作成される。T5では、このナビ描画データをメーター描画データとを合成する。
【0037】
図5は、メーター描画作成部200での処理の流れの一例を示すものであり、S1では、図4に示す情報を参照し、制限元被監視領域55を特定するとともに、その制限対象色(つまり、図7のインジケーター55の強調表示状態での設定表示色:例えば赤(色相5b)である)を特定する。S2では上記の制限元被監視領域55のうち強調表示状態となっているものを検索する。S3でそのような制限元被監視領域55が検索されればS4に進み、その色設定情報を含む色制限情報を補助画像描画作成部100に送信する。一方、検索されなかった場合はS4をスキップする。
【0038】
図6は補助画像描画作成部100(ナビゲーション装置)側での処理の流れを示すものであり、S101で色制限情報をメーター描画作成部200から受信すればS102に進み、ナビ画像上の各領域の色設定情報と、制限元被監視領域55の色設定情報との色差が所定の範囲内に収まっている領域を、制限先被監視領域55として検索・特定する。そして、S103で色変換処理を行い、S104で変換後の色設定情報を画像合成出力制御部106(画像LSI)に送信する。
【0039】
色変換処理については、種々のアルゴリズムを採用することが可能である。以下、そのいくつかの例をフローチャートにより説明する。図8は、制限前設定色の色相のみを変更する例であり、S201では制限先被監視領域56の設定表示色(以下、制限対象色ともいう)の色相の設定値を読み取り、S202ではその色相設定値を、図10に示すごとく色相環上で一定区間移動させ、移動先の色相値を変換後の色相値として読み取る。S203では、制限先被監視領域56の周囲領域についても設定表示色の色相値を読み取る。その値が、変換後の色相値に近接していると、色変換後の制限先被監視領域56の色調が周囲に埋没して識別が困難になるので、S204では両者の色相値を比較し、一定以上の色相値の隔たりがあればS205に進んでその色相値を確定する。他方、隔たりがなければS202に戻り、色相値をさらに移動させて以下の処理を繰り返す。
【0040】
一方、図9は、制限対象色の色設定情報の彩度あるいは明度(一方のみでも、双方ともにであっても、いずれでもよい)を一定レベル減算して、強調表示部55の表示状態を相対的に目立たせる処理を行なう場合のフローチャートである(S206,S207)。この処理は、色設定情報に対する単純な計算処理で構築でき、処理負荷が小さい利点がある。なお、より複雑な計算方法としては、変換後の設定色と、強調表示部55の表示色との間に、予め定められた色度空間上にて一定の色差が付与されるように、変換後の三属性値を定める方法がある。色差一定の条件のみでは、上記均等色空間上にて、制限対象色の色度座標点から一定距離にある円周上の座標点が示す無数の変換色が存在するため、例えば色相に一定の差が付与されるように、色空間内での色差ベクトルの方向決定条件を定めておくとよい。図13は、その計算の概念図を示すものであり、制限対象色を、強調表示部の設定色の色度座標点を含む一定の領域(個々では、該色度座標点を中心とする半径rの円領域としているが、これに限られるものではない)として定める。そして、制限対象色の座標点(図では、強調表示部の設定色の色度座標点(つまり、円の中心点)と一致した場合の例を示している)から一定の色差ベクトル方向に距離R(つまり、色差)だけ隔たった位置にある座標点を、変換後の設定色の座標点として決定する。例えば、赤系の制限対象色については色差ベクトル方向を青系ないし緑系の領域に向う方向に設定することが望ましい。採用する色空間は、一般的なXYZ表色系でもよいが、均等色空間(例えばL表色系)を使用するとなお望ましい。
【0041】
また、より簡便な色変換処理としては、図11に示すように、変換前の設定色と、変換後の設定色との対応関係をテーブルとして記憶しておく方法もある。この場合の処理の流れは図12に示す通りであり、S208で制限対象色の設定値を図11のテーブル上で検索し、S209で対応する変換色の設定値を読み取って、変換後の色設定値として決定する。なお、制限対象色の設定値が、テーブル上で隣接する設定値の中間に位置する場合は、補間により変換色の設定値を計算すればよい。
【0042】
さらに、図14に示すように、制限先被監視領域55の特定情報と、変換色との対応関係を示すテーブルを用意しておく方法もある。この場合の処理の流れは図15に示す通りであり、S211では、検索された制限先被監視領域の変換色を、上記図14のテーブル上で検索し、S209で対応する変換色の設定値を読み取って、変換後の色設定値として決定する。
【0043】
なお、補助画像はナビ画像に限られるものではなく、例えば図16に示すように、ギアシフトポジション画像61とすることもできるし、図17に示すようなオートクルーズ表示画像62や、カレンダクロック63、あるいは瞬時燃費表示画像64などを採用することも可能である。また、これらの複数の補助画像間で、スイッチ操作等により表示を切り替えられるようにしてもよい。また、図20に示すように、メーター主要部49においては、フレーム408に固定されたアナログ機械式メーター402を使用するとともに、強調表示部55をLED等によるディスクリート型の表示灯403とすることもできる(点灯状態の差(例えば点灯と消灯)により、強調表示状態と非強調表示状態とを区別できる)。この場合、補助画像表示部401は、メーター主要部49とは独立した表示パネル401(例えばナビ画像表示用のもの)としてフレーム408に取り付けて使用することが可能である。この場合、表示灯403の表示色を予め把握しておき、これを基準として表示パネル401上の制限先被監視領域404の色制限処理を、上記と同様に実行することができる。この場合、メーター描画作成部は存在せず、補助画像描画作成部100は、表示灯403の点灯制御部から、その点灯状態を示す情報を取得して色制限処理を行なえばよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の車両用メーターユニットの、電気的構成の一例を示すブロック図。
【図2】本発明の車両用メーターユニットの断面構成の一例を示す模式図。
【図3】図1の車両用メーターユニットの、処理の概略流れを示すフローチャート。
【図4】被監視領域の色設定情報の一例を概念的に示す図。
【図5】メーター側の色制限処理の流れを示すフローチャート。
【図6】ナビ側の色制限処理の流れを示すフローチャート。
【図7】本発明の車両用メーターユニットの表示例を示す正面図。
【図8】色変換処理の第一例を示すフローチャート。
【図9】色変換処理の第二例を示すフローチャート。
【図10】色相変換の概念図。
【図11】変換テーブルの第一例を示す概念図。
【図12】色変換処理の第三例を示すフローチャート。
【図13】色度図上での色変換演算処理の概念を示す図。
【図14】変換テーブルの第二例を示す概念図。
【図15】色変換処理の第四例を示すフローチャート。
【図16】補助画像の第一変形例を示す図。
【図17】補助画像の第二変形例を示す図。
【図18】補助画像の第三変形例を示す図。
【図19】補助画像の第四変形例を示す図。
【図20】本発明の車両用メーターユニットの変形例を示す正面模式図。
【0045】
1 車両用メーターユニット
49 メーター主要部
50,52,53,54 メーター
51 補助画像表示部
55 インジケーター(強調表示部、警告表示部、制限元被監視領域)
56 制限先被監視領域
100 補助画像描画作成部(表示制御部)
106 画像合成出力制御部(表示制御部)
108 表示パネル
200 メーター描画作成部(表示制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転席に対向配置される車両用メーターユニットであって、
メーター及び該メーターに随伴するインジケーターが集合配置され、それらメーターとインジケーターにより車両の基本動作状態情報を視覚表示するとともに、予め定められた強調表示色に基づく強調表示状態と、該強調表示状態が解除された非強調表示状態との間で表示状態が切り替え可能とされた強調表示部を有したメーター主要部と、
前記メーター主要部から分離区画された画像表示用のカラーピクセルマトリックスを有し、前記基本動作状態情報以外の表示情報を含む補助画像をカラー表示する補助画像表示部と、
前記補助画像表示部の前記ピクセルマトリックスに表示される図形領域のうち、前記強調表示部の表示状態が前記非強調表示状態にあるときの自身の表示色が、前記強調表示色と同一系統の制限前設定色に定められるものを制限先被監視領域として定め、前記メーター主要部側の前記強調表示部が前記非強調表示状態から前記強調表示状態に切り替わるに伴い、前記制限先被監視領域の表示色を、前記制限前設定色よりも前記強調表示色との色差が大きい制限後設定色に変換する表示色制限用変換手段を有した表示制御部と、
を有してなることを特徴とする車両用メーターユニット。
【請求項2】
前記強調表示部は、前記基本動作状態情報に含まれる警告能動化情報に基づいて前記表示状態が前記強調表示状態とされる警告表示部である請求項1記載の車両用メーターユニット。
【請求項3】
前記警告表示部が前記インジケーターの一つとして定められている請求項2記載の車両用メーターユニット。
【請求項4】
前記警告表示部に設定される前記強調表示色の色相が、色相環上にて10YRから10Rを経て10Pに至る区間内に定められる請求項3記載の車両用メーターユニット。
【請求項5】
画像表示用のカラーピクセルマトリックスを有する表示パネル上に、前記メーター主要部が前記補助画像表示部とともに一体的に画像表示され、前記強調表示部が、前記強調表示色にて前記メーターの画像とともに前記表示パネル上に画像表示される図形領域である制限元被監視領域とされている請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の車両用メーターユニット。
【請求項6】
前記メーターの画像は前記強調表示部を含まない請求項5記載の車両用メーターユニット。
【請求項7】
前記補助画像はカーナビゲーション装置の出力画像である請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の車両用メーターユニット。
【請求項8】
前記出力画像は、前記カーナビゲーション装置の経路案内用の地図画像を含むものであり、前記制限先被監視領域は前記地図画像上における前記車両の現在位置を示す現在位置ポインタの図形画像である請求項7記載の車両用メーターユニット。
【請求項9】
前記表示制御部は、
前記メーター主要部の表示状態に反映するべき前記基本動作状態情報を外部から取得し、当該基本動作状態情報に対応した表示状態を示すメーター主要部の描画用データを作成するメーター描画作成部と、
前記補助画像のカラー描画用データを作成する補助画像描画作成部と、
前記メーター描画作成部からの前記メーター主要部の描画用データと、前記補助画像描画作成部からの前記補助画像の描画用データとを合成して、前記表示パネル上に前記メーター主要部を前記補助画像とともに表示出力させる画像合成出力制御部とを有し、
前記メーター描画作成部は、前記制限元被監視領域の表示色を監視するとともに、該制限元被監視領域の表示設定色が前記強調表示色となっている場合に、前記補助画像描画作成部に色制限情報を送信する一方、前記補助画像描画作成部は該色制限情報を受信するとともに、前記補助画像中の前記制限先被監視領域を検索し、当該制限先被監視領域の表示色を前記制限前設定色から前記制限後設定色に変換するために必要な処理を行なう請求項5ないし請求項8のいずれか1項に記載の車両用メーターユニット。
【請求項10】
前記表示色制限用変換手段は、前記制限前設定色を、該制限前設定色から一定以上色相の隔たった前記制限後設定色に変換する請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の車両用メーターユニット。
【請求項11】
請求項4記載の要件を備え、前記制限後設定色の色相が、色相環上にて5GYから5GBを経て5PBに至る区間内に定められる請求項10記載の車両用メーターユニット。
【請求項12】
前記表示色制限用変換手段は、前記制限前設定色を、該制限前設定色から彩度及び明度の少なくともいずれかを一定以上小さくした前記制限後設定色に変換する請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の車両用メーターユニット。
【請求項13】
請求項5に記載の要件を備え、前記表示制御部は前記補助画像表示部において前記制限元被監視領域の彩度を周囲の画像領域とともに小さくする請求項請求項12記載の車両用メーターユニット。
【請求項14】
前記表示色制限用変換手段は、予め定められた色度図上にて前記制限前設定色に対応する色度座標点から、予め定められた距離隔たった位置にある色度座標点を見出し、該色度座標点に対応する表示色を前記制限後設定色として定める請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の車両用メーターユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−118892(P2007−118892A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317321(P2005−317321)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】