説明

車両用変速機

【課題】エンジンからの動力伝達を切換可能とした第1および第2メインシャフトと、駆動輪に連結されるカウンタシャフトと、第1および第2メインシャフトならびにカウンタシャフト間に設けられる複数変速段の歯車列と、それらの歯車列の確立状態を切換えるべく各歯車列の一部を構成する歯車への係合および非係合を切換えるシフタとを備える車両用変速機において、最も使用頻度の高い変速段での走行時にその変速段の歯車列以外の歯車列で生じる打音の発生を抑える。
【解決手段】各歯車列のうち最も確立状態となる頻度が高い特定の歯車列を用いた走行状態では特定の歯車列以外の歯車列が非確立状態となるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンからの動力伝達を切換可能とした第1および第2メインシャフトと、駆動輪に連結されるカウンタシャフトと、第1および第2メインシャフトならびに前記カウンタシャフト間に設けられる複数変速段の歯車列と、それらの歯車列の確立状態を切換えるべく前記各歯車列の一部を構成する歯車への係合および非係合を切換えるシフタとを備える車両用変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
一対のメインシャフトおよびカウンタシャフト間に複数変速段の歯車列が設けられ、一方のメインシャフトのうちエンジンからの動力が伝達されているメインシャフトおよびカウンタシャフト間に設けられている歯車列の確立時に、前記エンジンからの動力が伝達されていない状態にある他方のメインシャフトおよびカウンタシャフト間に設けられている歯車列も予備変速のために確立するようにした車両用変速機が、特許文献1によって既に知られている。
【特許文献1】特開2005−273829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記特許文献1で開示された車両用変速機では、使用頻度の高い変速段たとえば第5速での走行時に第4速歯車列も確立しており、第4速歯車列の一部を構成する歯車にシフタが係合されている状態であるので、第4速歯車列側での歯車の打音が発生してしまう。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、最も使用頻度の高い変速段での走行時にその変速段の歯車列以外の歯車列で生じる打音の発生を抑え得るようにした車両用変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、エンジンからの動力伝達を切換可能とした第1および第2メインシャフトと、駆動輪に連結されるカウンタシャフトと、第1および第2メインシャフトならびに前記カウンタシャフト間に設けられる複数変速段の歯車列と、それらの歯車列の確立状態を切換えるべく前記各歯車列の一部を構成する歯車への係合および非係合を切換えるシフタとを備える車両用変速機において、前記各歯車列のうち最も確立状態となる頻度が高い特定の歯車列を用いた走行状態では前記特定の歯車列以外の歯車列が非確立状態となるように構成されることを特徴とする。
【0006】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、複数変速段の変速位置が周方向に間隔をあけて設定されるシフトドラムの外周に、前記シフタを保持するシフトフォークをスライド可能に係合させるリード溝が設けられ、最高変速段に対応した前記特定の歯車列だけを確立する最高変速段用変速位置と、前記最高変速段よりも1段だけ低い変速段に対応した低速段側歯車列および前記特定の歯車列をともに確立する共用変速位置とが、前記シフトドラムの周方向に隣接して設定されることを特徴とする。
【0007】
さらに請求項3記載の発明は請求項2記載の発明の構成に加えて、前記エンジンおよび第1メインシャフト間に第1クラッチが設けられ、前記エンジンおよび第2メインシャフト間に第2クラッチが設けられ、前記特定の歯車列が第1メインシャフトおよび前記カウンタシャフト間に設けられ、前記低速段側歯車列が第2メインシャフトおよび前記カウンタシャフト間に設けられ、前記シフトドラムを回転せしめる駆動手段の作動ならびに前記第1および第2クラッチの断・接切換を制御する制御ユニットは、第1クラッチを遮断するとともに第2クラッチを接続して前記最高変速段よりも1段だけ低い変速段で走行している状態からのシフトアップ時には第1クラッチを接続するとともに第2クラッチを遮断することで得られる最高変速段での走行時に前記シフトドラムを最高変速段用変速位置に回動して前記低速段側歯車列の確立を解除し、第1クラッチを接続するとともに第2クラッチを遮断した状態での前記最高変速段での走行時からのシフトダウン時には前記シフトドラムを共用変速位置に回転して低速段側歯車列および前記特定の歯車列をともに確立した後に第1クラッチを遮断するとともに第2クラッチを接続することを特徴とする。
【0008】
なお実施例の第4速歯車列G4が本発明の低速段側歯車列に対応し、実施例の第5速歯車列G5が本発明の特定の歯車列に対応し、実施例の第5速位置P5 が本発明の最高変速段用変速位置に対応し、実施例の第4および第5速位置P4-5 が本発明の共用変速位置に対応する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1または2記載の発明によれば、最も使用頻度の高い変速段での走行時には、その変速段に対応した歯車列以外の歯車列は未確立の状態にあり、最も使用頻度の高い変速段での走行時にはその変速段の歯車列以外の歯車列で生じる打音の発生を抑えることができる。
【0010】
また請求項2記載の発明によれば、最高変速段に対応した特定の歯車列だけを確立する最高変速段用変速位置と、最高変速段よりも1段だけ低い変速段に対応した低速段側歯車列および特定の歯車列をともに確立する共用変速位置とがシフトドラムの周方向に隣接して設定されるので、簡単な構成で、最高変速段での走行時には最高変速段に対応した特定の歯車列だけを確立し、最高変速段よりも1段だけ低い変速段での走行時には最高変速段に対応した特定の歯車列ならびに最高変速段よりも1段だけ低い変速段に対応した低速段側歯車列をともに確立することができる。
【0011】
さらに請求項3記載の発明によれば、最高変速段よりも1段だけ低い変速段で走行している状態からのシフトアップ時には第1クラッチを接続するとともに第2クラッチを遮断することで得られる最高変速段での走行時に低速段側歯車列の確立を解除し、最高変速段での走行時からのシフトダウン時には低速段側歯車列および前記特定の歯車列をともに確立した後に第1クラッチを遮断するとともに第2クラッチを接続して最高変速段よりも1段だけ低い変速段での走行を得るようにしたので、最高変速段と、最高変速段よりも1段低い変速段との間の変速動作を良好なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図11は本発明の一実施例を示すものであり、図1はエンジン本体の縦断面図であって図2の1−1線に沿う断面図、図2は図1の2−2線矢視方向から見た一部切欠き側面図、図3は図2の3−3線断面図、図4は図2の4−4線断面図、図5はシフトドラムの外周面の展開図、図6は第1速の運転状態での図4の6−6線断面図、図7は第1速の運転状態での図4の7−7線拡大断面図、図8はシフトドラムセンターの回動途中での駆動手段の一部の状態を示す図、図9は第1速から第2速へのシフトアップ途中の状態での図6に対応した図、図10は第2速の運転状態での図6に対応した図、図11は制御系の構成を示すフローチャートである。
【0014】
先ず図1において、たとえば荒地走行用車両に搭載されるエンジンEのエンジン本体21は、軸線を車幅方向(図1の紙面に平行な方向)に沿わせたクランクシャフト22を回転自在に支承するクランクケース23と、該クランクケース23の上部に結合されるシリンダブロック24と、該シリンダブロック24の上部に結合されるシリンダヘッド25と、シリンダヘッド25の上部に結合されるヘッドカバー26とを備え、シリンダブロック24のシリンダボア27に摺動可能に嵌合されるピストン28が、前記クランクシャフト22にコネクティングロッド29およびクランクピン30を介して連接される。
【0015】
前記クランクケース23は、前記クランクシャフト22の回転軸線に直交する平面で結合される一対のケース半体23a,23bから成り、該クランクケース23の両側には、第1および第2クランクケースカバー31,32がそれぞれ締結され、クランクケース23および第1クランクケースカバー31間にはクラッチ収容室33が形成される。
【0016】
クランクケース23から突出したクランクシャフト22の一端は第1クランクケースカバー31で回転自在に支承されるものであり、第1クランクケースカバー31に近接した位置でクランクシャフト22の一端部にはクラッチ収容室33に収容される遠心クラッチ34が一方向クラッチ35を介して装着される。クランクケース23から突出したクランクシャフト22の他端部には、クランクケース23および第2クランクケースカバー32間に配置される発電機(図示せず)が連結されるとともに第2クランクケースカバー32に取付けられるリコイルスタータ36が連結される。また第2クランクケースカバー32には、クランクシャフト22に始動用動力を入力するための始動用モータ37が取付けられる。
【0017】
前記遠心クラッチ34は、クランクシャフト22に固定されるドライブプレート38と、クランクシャフト22に相対回転可能に装着された駆動歯車39とともに回転するようにして前記ドライブプレート38を同軸に覆う椀状のクラッチハウジング40と、クランクシャフト22の回転に伴う遠心力の作用に応じてクラッチハウジング40の内周に摩擦係合することを可能としてドライブプレート38に回動可能に軸支されるクラッチウエイト41とを備えるものであり、一方向クラッチ35が、駆動歯車39からクランクシャフト22への動力伝達を可能とすべくクラッチハウジング40およびドライブプレート38間に設けられる。
【0018】
図2および図3を併せて参照して、クランクケース23には、同一軸線まわりの相対回転を可能として同軸に配置される第1および第2メインシャフト44,45がクランクシャフト22の回転軸線と平行な軸線まわりの回転を可能として支承されるとともに、第1および第2メインシャフト44,45と平行なカウンタシャフト46が回転自在に支承される。また第1および第2メインシャフト44,45と、カウンタシャフト46との間には、選択的な確立を可能とした複数変速段の歯車列が設けられており、この実施例では、第1メインシャフト44およびカウンタシャフト46間に、第1速歯車列G1、第3速歯車列G3および第5速歯車列G5が設けられ、第2メインシャフト45およびカウンタシャフト46間に、第2速歯車列G2、第4速歯車列G4および後進歯車列GRが設けられる。
【0019】
また第1メインシャフト44は、クランクケース23にボールベアリング47,47を介して回転自在に支承される第2メインシャフト45を、相対回転可能として同軸に貫通するものであり、第2メインシャフト45および第1メインシャフト44間には複数のニードルベアリング48…が介装される。
【0020】
クラッチ収容室33内で第1メインシャフト44には、伝動筒軸49が相対回転可能に装着されており、該伝動筒軸49には、クランクシャフト22に相対回転可能に装着された前記駆動歯車39、該駆動歯車39に噛合する被動歯車50およびラバーダンパ51を介して動力が伝達される。また伝動筒軸49および第1メインシャフト44間には第1油圧クラッチ52が設けられ、伝動筒軸49および第2メインシャフト45間には第2油圧クラッチ53が設けられる。
【0021】
而して第1油圧クラッチ52が動力伝達状態にあって第1メインシャフト44にクランクシャフト22から動力が伝達されているときには、第1、第3および第5速歯車列G1,G3,G5のうち択一的に確立した歯車列を介して第1メインシャフト44からカウンタシャフト46に動力が伝達され、第2油圧クラッチ53が動力伝達状態にあって第2メインシャフト45にクランクシャフト22から動力が伝達されているときには、第2、第4および後進歯車列G2,G4,GRのうち択一的に確立した歯車列を介して第2メインシャフト45からカウンタシャフト46に動力が伝達される。
【0022】
図1で示すように、図示しない駆動輪に連結されるとともに前記クランクシャフト22の回転軸線と平行な軸線を有する出力軸54が、クランクケース23の両ケース半体23a,23bのうち一方のケース半体23aおよび第2のクランクケースカバー32で回転自在に支承されており、この出力軸54の両端は第1および第2クランクケースカバー31,32を液密にかつ回転自在に貫通して外方に突出する。一方、クランクケース23の両ケース半体23a,23bのうち他方のケース半体23bから突出したカウンタシャフト46の端部には駆動歯車55が固定され、この駆動歯車55に噛合する被動歯車56が前記出力軸54に設けられる。すなわち、カウンタシャフト46は、駆動歯車55、被動歯車56および出力軸54を介して駆動輪に連結される。
【0023】
図3に注目して、第1速歯車列G1は、軸方向位置を一定として第1メインシャフト44に相対回転可能に支承される第1速用駆動アイドル歯車57と、カウンタシャフト46に相対回転不能に結合されるとともに第1速用駆動アイドル歯車57に噛合する第1速用被動歯車58とから成り、第3速歯車列G3は、軸方向位置を一定として第1メインシャフト44に相対回転可能に支承される第3速用駆動アイドル歯車59と、前記カウンタシャフト46に相対回転不能に結合されるとともに第3速用駆動アイドル歯車59に噛合する第3速用被動歯車60とから成る。また第5速歯車列G5は、軸方向のスライド作動を可能として第1および第3速用駆動アイドル歯車57,59間に配置されて第1メインシャフト44に相対回転不能に結合される第5速用駆動歯車61と、軸方向位置を一定としてカウンタシャフト46に相対回転可能に支承されるとともに第5速用駆動歯車61に噛合する第5速用被動アイドル歯車62とから成る。
【0024】
第2速歯車列G2は、第2メインシャフト45に一体に設けられる第2速用駆動歯車63と、軸方向位置を一定としてカウンタシャフト46に回転自在に支承されるとともに第2速用駆動歯車63に噛合する第2速用被動アイドル歯車64とから成り、第4速歯車列G4は、第2メインシャフト45に一体に設けられる第4速用駆動歯車65と、軸方向位置を一定としてカウンタシャフト46に相対回転可能に支承されるとともに第4速用駆動歯車65に噛合する第4速用被動アイドル歯車66とから成る。また後進歯車列GRは、第2速用駆動歯車63と、第2速用駆動アイドル歯車63に噛合する第1後進アイドル歯車67と、第1後進アイドル歯車67と一体に形成される第2後進アイドル歯車68と、軸方向位置を一定としてカウンタシャフト46に相対回転可能に支承されるとともに第2後進アイドル歯車68に噛合する後進用被動アイドル歯車69とから成り、一体の第1および第2後進アイドル歯車67,68は、第1メインシャフト44、第2メインシャフト45およびカウンタシャフト46と平行な軸線を有してクランクケース23に両端部が支持された後進アイドル軸70で回転自在に支承されている。
【0025】
第1速用駆動アイドル歯車57の第3速用駆動アイドル歯車59側の端部にはリング状の被係合部材71が固着されており、この被係合部材71および第3速用駆動アイドル歯車59間で第1メインシャフト44には、第1シフタ72が相対回転不能かつ軸方向スライド可能に支承されており、第5速用駆動歯車61は第1シフタ72に一体に設けられる。この第1シフタ72は、前記被係合部材71に係合して第1速歯車列G1を確立する位置と、第3速用駆動アイドル歯車59に係合して第3速歯車列G3を確立する位置と、第1および第3速用駆動アイドル歯車57,59のいずれにも係合しない中間位置(ニュートラル状態)とを切換えて第1メインシャフト44の軸方向にスライド可能である。
【0026】
また第3速歯車列G3の第3速用被動歯車60は、第5速用被動アイドル歯車62および後進用被動アイドル歯車69間でカウンタシャフト46に相対回転不能かつ軸方向スライド可能に支承される第2シフタ73に一体に設けられており、第2シフタ73は第3速用駆動アイドル歯車59および第3速用被動歯車60の噛合状態を保持しつつ、第5速用被動アイドル歯車62に係合する位置ならびに後進用被動アイドル歯車69に係合する位置間でカウンタシャフト46の軸方向にスライド可能である。而して第1シフタ72が中間位置にある状態で第2シフタ73が第5速用被動アイドル歯車62に係合すると第5速歯車列G5が確立する。
【0027】
さらに第2速用被動アイドル歯車64および第4速用被動アイドル歯車66間でカウンタシャフト46には、第3シフタ74が相対回転不能かつ軸方向スライド可能に支承されており、この第3シフタ74は、第2速用被動アイドル歯車64に係合して第2速歯車列G2を確立する位置と、第4速用被動アイドル歯車66に係合して第4速歯車列G4を確立する位置と、第2および第4速用被動アイドル歯車64,66のいずれにも係合しない中間位置(ニュートラル状態)とを切換えてカウンタシャフト46の軸方向にスライド可能である。而して第1および第3シフタ72,74が中間位置にある状態で第2シフタ73が後進用被動アイドル歯車69に係合すると後進歯車列GRが確立する。
【0028】
第1速用駆動アイドル歯車57に固着された被係合部材71側で第1シフタ72の端部には、複数の第1係合突部78…が周方向に等間隔をあけて突設されており、前記被係合部材71には、それらの第1係合突部78…をそれぞれ係合させ得る複数の第1係止突部79…が設けられる。また第1シフタ72の第3速用駆動アイドル歯車59側の端部には、複数の第2係合突部80…が周方向に等間隔をあけて突設されており、第3速用駆動アイドル歯車59にはそれらの第2係合突部80…をそれぞれ係合させ得る複数の第2係止突部81…が設けられる。
【0029】
第2シフタ73の第5速用被動アイドル歯車62側の端部には、複数の第3係合突部82…が周方向に等間隔をあけて突設されており、第5速用被動アイドル歯車62には、それらの第3係合突部82…をそれぞれ係合させ得る複数の第3係止突部83…が設けられる。また第2シフタ73の後進用被動アイドル歯車69側の端部には、複数の第4係合突部84…が周方向に等間隔をあけて突設されており、後進用被動アイドル歯車69にはそれらの第4係合突部84…をそれぞれ係合させ得る複数の第4係止突部85…が設けられる。
【0030】
第3シフタ74の第2速用被動アイドル歯車64側の端部には、複数の第5係合突部86…が周方向に等間隔をあけて突設されており、第2速用被動アイドル歯車64には、それらの第5係合突部86…をそれぞれ係合させ得る複数の第5係止突部87…が設けられる。また第3シフタ74の第4速用被動アイドル歯車66側の端部には、複数の第6係合突部88…が周方向に等間隔をあけて突設されており、第4速用被動アイドル歯車66にはそれらの第6係合突部88…をそれぞれ係合させ得る複数の第6係止突部89…が設けられる。
【0031】
図4を併せて参照して、第1〜第3シフタ72,73,74は、第1〜第3シフトフォーク91,92,93で回転自在に保持されており、それらのシフトフォーク91〜93は、第1および第2メインシャフト44,45ならびにカウンタシャフト46と平行な軸線を有してクランクケース23に支持されたシフトフォーク軸94で、該シフトフォーク軸94の軸方向にスライド可能に支承される。またクランクケース23には、第1および第2メインシャフト44,45ならびにカウンタシャフト46と平行な軸線を有するシフトドラム95が軸線まわりに回動することを可能として支承されており、このシフトドラム95の外周面に設けられる第1〜第3のリード溝96,97,98に第1〜第3シフトフォーク91〜93に突設されたシフトピン91a,92a,93aがそれぞれ係合され、シフトドラム95が回動すると第1〜第3のリード溝96〜98のパターンに応じて第1〜第3シフトフォーク91〜93が軸方向にスライド作動する。
【0032】
図5において、第1のリード溝96は、第1シフタ72を保持する第1シフトフォーク91のスライド作動をガイドするためのものであり、第1速用駆動アイドル歯車57に固着された被係合部材71に第1シフタ72を係合させるようにしてシフトドラム95の周方向に延びる第1速用歯車列確立部96aと、第3速用駆動アイドル歯車59に第1シフタ72を係合させるようにして第1速用歯車列確立部96aとはシフトドラム95の軸線方向にオフセットした位置で該シフトドラム95の周方向に延びる第3速用歯車列確立部96bと、第1および第3速用歯車列確立部96a,96b間を結ぶ連絡部96cと、第1シフタ72を中間位置に保持するための中間位置部96dとを有してシフトドラム95の全周にわたって設けられ、前記連絡部96cの中央部には、第1および第3速用駆動アイドル歯車57,59への係合を解除する位置に第1シフタ72を保持するニュートラル部96eが、前記シフトドラム95の周方向にわずかに延びて形成される。
【0033】
また第2のリード溝97は、第2シフタ73を保持する第2シフトフォーク92のスライド作動をガイドするためのものであり、後進用被動アイドル歯車69に第2シフタ73を係合させるようにしてシフトドラム95の周方向に延びる後進用歯車列確立部97aと、第5速用被動アイドル歯車62に第2シフタ73を係合させるようにして後進用歯車列確立部97aとはシフトドラム95の軸線方向にオフセットした位置で該シフトドラム95の周方向に延びる第5速用歯車列確立部97bと、第2シフタ73を中間位置に保持するための中間位置部97cとを有してシフトドラム95の1周未満の外周に設けられ、後進用歯車列確立部97aおよび第5速用歯車列確立部97bは第2のリード溝97の両端に配置される。
【0034】
さらに第3のリード溝98は、第3シフタ74を保持する第3シフトフォーク93のスライド作動をガイドするためのものであり、第2速用被動アイドル歯車64に第3シフタ74を係合させるようにしてシフトドラム95の周方向に延びる第2速用歯車列確立部98aと、第4速用被動アイドル歯車66に第3シフタ74を係合させるようにして第2速用歯車列確立部98aとはシフトドラム95の軸線方向にオフセットした位置で該シフトドラム95の周方向に延びる第4速用歯車列確立部98bと、第2および第4速用歯車列確立部98a,98b間を結ぶ連絡部98cと、第3シフタ74を中間位置に保持するための中間位置部98dとを有してシフトドラム95の全周にわたって設けられ、前記連絡部98cの中央部には、第2および第4速用被動アイドル歯車64,66への係合を解除する位置に第3シフタ74を保持するニュートラル部98eが、前記シフトドラム95の周方向にわずかに延びて形成される。
【0035】
ところでシフトドラム95には、後進位置PR 、ニュートラル位置PN 、第1および第2速位置P1-2 、第2および第3速位置P2-3 、第3および第4速位置P3-4 、第4および第5速位置P4-5 、第5速位置P5 の各位置が間隔をあけて順次設定されている。
【0036】
而して後進位置PR では、第1および第3のリード溝96,98の中間位置部96d,98dに第1および第3シフトフォーク91,93のシフトピン91a,93aを係合させるとともに第2のリード溝97の後進用歯車列確立部97aに第2シフトフォーク92のシフトピン92aを係合させて後進歯車列GRを確立する。またニュートラル位置PN では、第1〜第3のリード溝96〜98の中間位置部96d,97c,98dに第1〜第3シフトフォーク91〜93のシフトピン91a〜93aを係合させて各歯車列G1〜G5,GRのいずれをも未確立の状態とする。第1および第2速位置P1-2 では、第1のリード溝96の第1速用歯車列確立部96aに第1シフトフォーク91のシフトピン91aを係合し、第2のリード溝97の中間位置部97cに第2シフトフォーク92のシフトピン92aを係合し、第3のリード溝98の第2速用歯車列確立部98aに第3シフトフォーク93のシフトピン93aを係合して、第1および第2速歯車列G1,G2をともに確立する。第2および第3速位置P2-3 では、第1のリード溝96の第3速用歯車列確立部96bに第1シフトフォーク91のシフトピン91aを係合し、第2のリード溝97の中間位置部97cに第2シフトフォーク92のシフトピン92aを係合し、第3のリード溝98の第2速用歯車列確立部98aに第3シフトフォーク93のシフトピン93aを係合して、第2および第3速歯車列G2,G3をともに確立する。第3および第4速位置P3-4 では、第1のリード溝96の第3速用歯車列確立部96bに第1シフトフォーク91のシフトピン91aを係合し、第2のリード溝97の中間位置部97cに第2シフトフォーク92のシフトピン92aを係合し、第3のリード溝98の第4速用歯車列確立部98bに第3シフトフォーク93のシフトピン93aを係合して、第3および第4速歯車列G3,G4をともに確立する。第4および第5速位置P4-5 では、第1のリード溝96の中間位置部96dに第1シフトフォーク91のシフトピン91aを係合し、第2のリード溝97の第5速用歯車列確立部97bに第2シフトフォーク92のシフトピン92aを係合し、第3のリード溝98の第4速用歯車列確立部98bに第3シフトフォーク93のシフトピン93aを係合して、第4および第5速歯車列G4,G5をともに確立する。第5速位置P5 では、第1のリード溝96の中間位置部96dに第1シフトフォーク91のシフトピン91aを係合し、第2のリード溝97の第5速用歯車列確立部97bに第2シフトフォーク92のシフトピン92aを係合し、第3のリード溝98の中間位置部98dに第3シフトフォーク93のシフトピン93aを係合して第5速歯車列G5だけを確立する。
【0037】
すなわちシフトアップ時には、高速段への切換前に高速段側の歯車列を予め確立することができ、シフトダウン時には、低速段への切換前に低速段側の歯車列を予め確立することができ、最も頻度の高い第5速での走行時には第5速歯車列G5だけが確立されている。
【0038】
ところでシフトドラム95の周方向に沿って第1および第2速位置P1-2 と第2および第3速位置P2-3 との間の中央部には、第1メインシャフト44およびカウンタシャフト46間に設けられている第1速歯車列G1および第3速歯車列G3の確立状態を切換える際のニュートラル位置である1−3ニュートラル位置NP1 が設定されており、第1のリード溝96のニュートラル部96eは1−3ニュートラル位置NP1 に配置される。またシフトドラム95の周方向に沿って第2および第3速位置P2-3 と第3および第4速位置P3-4 との間の中央部には、第2メインシャフト45およびカウンタシャフト46間に設けられている第2速歯車列G2および第4速歯車列G4の確立状態を切換える際のニュートラル位置である2−4ニュートラル位置NP2 が設定されており、第3のリード溝98のニュートラル部98eは2−4ニュートラル位置NP2 に配置される。さらにシフトドラム95の周方向に沿って第3および第4速位置P3-4 と第4および第5速位置P4-5 との間に中央部には、第1メインシャフト44およびカウンタシャフト46間に設けられている第3速歯車列G3および第5速歯車列G5の確立状態を切換える際のニュートラル位置である3−5ニュートラル位置NP3 が設定される。
【0039】
図6および図7を併せて参照して、前記シフトドラム95の一端には、該シフトドラム95とともに回動するシフトドラムセンター99が同軸のボルト111で固定されており、このシフトドラムセンター99の外周には、第1〜第5速歯車列G1〜G5および後進歯車列GRを選択的に確立させるためにシフトドラム95で設定されている上記後進位置PR 、ニュートラル位置PN 、第1および第2速位置P1-2 、第2および第3速位置P2-3 、第3および第4速位置P3-4 、第4および第5速位置P4-5 、第5速位置P5 の各位置に個別に対応した後進用位置決めノッチSR 、中立用位置決めノッチSN 、第1および第2速用位置決めノッチS1-2 、第2および第3速用位置決めノッチS2-3 、第3および第4速用位置決めノッチS3-4 、第4および第5速用位置決めノッチS4-5 、第5速用位置決めノッチS5 が相互に間隔をあけて設けられる。
【0040】
しかも前記各位置決めノッチSR ,SN ,S1-2 ,S2-3 ,S3-4 ,S4-5 ,S5 のうち少なくとも2つの特定位置決めノッチである後進用位置決めノッチSR および第5速用位置決めノッチS5 を除く他の位置決めノッチすなわち中立用位置決めノッチSN 、第1および第2速用位置決めノッチS1-2 、第2および第3速用位置決めノッチS2-3 、第3および第4速用位置決めノッチS3-4 、第4および第5速用位置決めノッチS4-5 相互の間隔が等間隔に配置されるのに対し、後進用位置決めノッチSR および第5速用位置決めノッチS5 は、中立用位置決めノッチSN 、第1および第2速用位置決めノッチS1-2 、第2および第3速用位置決めノッチS2-3 、第3および第4速用位置決めノッチS3-4 、第4および第5速用位置決めノッチS4-5 相互の間隔とは異なる間隔を相互間にあけるとともに、シフトドラムセンター99の周方向で隣接する他の位置決めノッチすなわち中立用位置決めノッチSN ならびに第4および第5速用位置決めノッチS4-5 との間にあけるようにして配置される。
【0041】
而してこの実施例では、中立用位置決めノッチSN 、第1および第2速用位置決めノッチS1-2 、第2および第3速用位置決めノッチS2-3 、第3および第4速用位置決めノッチS3-4 、第4および第5速用位置決めノッチS4-5 相互の間隔βが60度で等しく設定されるのに対して、後進用位置決めノッチSR および第5速用位置決めノッチS5 相互の間隔θは60度よりも狭い30度に設定される。また後進用位置決めノッチSR および第5速用位置決めノッチS5 にシフトドラムセンター99の周方向で隣接する中立用位置決めノッチSN ならびに第4および第5速用位置決めノッチS4-5 と、後進用位置決めノッチSR および第5速用位置決めノッチS5 との間の間隔αは前記60度よりも狭い45度に設定される。
【0042】
而して両特定位置決めノッチである後進用位置決めノッチSR および第5速用位置決めノッチS5 にそれぞれ対応する変速位置である後進位置PR および第5速位置P5 は、シフトドラム95の1周未満で該シフトドラム95の周方向に延びる第2リード溝97の両端部に対応するようにして前記シフトドラム95に設定されている。
【0043】
しかも第1および第2速用位置決めノッチS1-2 、第2および第3速用位置決めノッチS2-3 、第3および第4速用位置決めノッチS3-4 ならびに第4および第5速用位置決めノッチS4-5 相互間の中央部でシフトドラムセンター99の外周には、1−3ニュートラル位置NP1 、2−4ニュートラル位置NP2 および3−5ニュートラル位置NP3 に個別に対応したニュートラル用ノッチN1 ,N2 ,N3 が設けられる。
【0044】
前記シフトドラムセンター99に設けられた各ノッチSR ,SN ,S1-2 ,S2-3 ,S3-4 ,S4-5 ,S5 ,N1 ,N2 ,N3 には、ドラムストッパアーム100が選択的に係合されるものであり、このドラムストッパアーム100は、前記シフトドラム95およびシフトドラムセンター99の軸線と平行な軸線を有する支軸103でクランクケース23におけるケース半体23aに基端部が回動可能に軸支されるアーム101と、前記各ノッチSR ,SN ,S1-2 ,S2-3 ,S3-4 ,S4-5 ,S5 ,N1 ,N2 ,N3 の1つに係合するようにして前記アーム101の先端に軸支されるローラ102とから成る。しかも前記各ノッチSR ,SN ,S1-2 ,S2-3 ,S3-4 ,S4-5 ,S5 ,N1 ,N2 ,N3 は、ローラ102の係合状態を安定化させるために円弧状に凹んで形成される。
【0045】
前記アーム101の基端部および前記ケース半体23a間にはねじりばね104が設けられており、前記アーム101すなわちドラムストッパアーム100は、ローラ102を各ノッチSR ,SN ,S1-2 ,S2-3 ,S3-4 ,S4-5 ,S5 ,N1 ,N2 ,N3 の1つに係合させるべく、前記ねじりばね104が発揮するばね力により、前記シフトドラムセンター99の回動中心に向けて付勢される。
【0046】
前記シフトドラムセンター99は、駆動手段105で所定角度(この実施例では60度)だけ間欠的に回動駆動されるものであり、この駆動手段105は、前記シフトドラムセンター99と同軸の軸線まわりに回動することを可能として前記シフトドラムセンター99内に少なくとも一部が配置されるドラムシフタ106と、該ドラムシフタ106の半径方向に起倒するようにして前記ドラムシフタ106に対称的に装着される一対のポール107,107と、それらのポール107…を起立方向にそれぞれ付勢する一対のばね108,108と、前記両ポール107…を係合させることを可能として前記シフトドラムセンター99の内周に周方向等間隔に設けられる係合凹部109,109…と、前記ドラムシフタ106の回動に応じた前記両ポール107…の起伏状態をガイドする固定のガイドプレート110と、前記ドラムシフタ106に回動力を付与するシフト用作動モータ120とを有する。
【0047】
前記ドラムシフタ106は、前記シフトドラムセンター99をシフトドラム95の一端に同軸に結合するボルト111が同軸に備える軸部111aで、シフトドラムセンター99と同軸の軸線まわりに回動することを可能として支承されるものであり、一部をシフトドラムセンター99から外方に突出させたドラムシフタ106の大部分はシフトドラムセンター99内に相対回動可能に配置される。
【0048】
またドラムシフタ106の外周部に設けられた収容凹部112,112の閉塞端と、前記ポール107…の先端部に当接するようにして収容凹部112…に摺動可能に嵌合される有底円筒状のリフタ113,113との間に前記ばね108…がそれぞれ縮設される。而してポール107…は前記ばね108…によって起立方向に付勢されるものであり、ポール107…は起立時に先端部をドラムシフタ106の外周から突出させ、倒伏時には先端部がドラムシフタ106の外周と略同一位置となる。
【0049】
シフトドラムセンター99の内周には、複数個(この実施例では6個)の係合凹部109,109…が周方向に等間隔をあけて設けられており、ドラムストッパアーム100が、後進用位置決めノッチSR 、中立用位置決めノッチSN 、第1および第2速用位置決めノッチS1-2 、第2および第3速用位置決めノッチS2-3 、第3および第4速用位置決めノッチS3-4 ,第4および第5速用位置決めノッチS4-5 ならびに第5速用位置決めノッチS5 の1つに係合している状態で、各係合凹部109…のうち相互間に2つの係合凹部109,109を挟んだ位置にある2つの係合凹部109,109に前記両ポール107…の先端部を選択的に係合させることができる。
【0050】
前記ガイドプレート110は、前記シフトドラムセンター99をクランクケース23におけるケース半体23aとの間に挟む位置で、一対のボルト116,116によって前記ケース半体23aに締結されるものであり、このガイドプレート110には、前記ドラムシフタ106に対応したガイド孔117が設けられる。
【0051】
このガイド孔117は、前記シフトドラムセンター99およびドラムシフタ106の回動軸線すなわち軸部111aの軸線を中心として前記ドラムシフタ106の内周よりも大径に形成される大径円弧部117aと、該大径円弧部117aの中央部から前記ドラムシフタ106の内周よりも内方に突出する規制突部117bと、前記軸部111aの軸線を中心として前記ドラムシフタ106の内周よりも小径に形成される小径円弧部117cと、大径円弧部117aの両端および前記小径円弧部117Cの両端間を結ぶ連結部117d,117dとから成るものであり、前記大径円弧部117aの周方向長さは、前記両ポール107…の先端部がそれぞれ係合している2つの係合凹部109…間に対応する長さに設定される。
【0052】
しかも前記連結部117d…は、前記係合凹部109に係合しているラチエット107がドラムシフタ106の回動に応じて前記小径円弧部117c側に移動したときに当該ポール107に当接し、該ポール107を倒伏側に押圧する段部117e…を中間部に有するように形成されており、それらの段部117e…は、前記シフトドラムセンター99の内周よりも外方に配置されている。
【0053】
また前記規制突部117bは、作動途中で一旦停止する前記シフト用作動モータ120の作動に応じて、前記ドラムシフタ106が途中で一旦停止するようにして1回作動するのに応じて、前記両ポール107…の一方の先端部に当接してドラムシフタ106の回動を規制するように形成される。
【0054】
図4に注目して、第1クランクケースカバー31には、第1クランクケースカバー31との間に減速機構収容室118を形成するカバー119が締結されており、該カバー119にはシフト用作動モータ120が取付けられる。このシフト用作動モータ120は、前記シフトドラム95と平行な回転軸線を有するものであり、その出力軸120aを前記減速機構収容室118に突入させるようにして前記カバー119に取付けられる。一方、シフトドラム95と平行な軸線を有するチェンジ軸121が、前記第1クランクケースカバー31、前記カバー119および第2クランクケースカバー32を回転自在に貫通するように配置されており、前記減速機構収容室118には、前記出力軸120aおよび前記チェンジ軸121間に設けられる歯車減速機構122が収容される。
【0055】
而して前記減速歯車機構122は、減速機構収容室118内でシフト用作動モータ120の出力軸120aに一体に設けられる駆動歯車123と、該駆動歯車123に噛合する第1中間歯車124と、第1中間歯車124と一体に回転する第2中間歯車125と、減速機構収容室118内で前記チェンジ軸121の一端側に固定されて第2中間歯車125に噛合する被動セクタ歯車126とから成り、シフト用作動モータ120の回転動力が減速歯車機構122で減速されてチェンジ軸121に伝達される。
【0056】
前記チェンジ軸121には、前記チェンジ軸121に基端部が固定されるとともにチェンジ軸120の半径方向に沿ってドラムシフタ106側に延びるチェンジアーム127が固定されており、前記チェンジ軸121の半径方向に長く延びてチェンジアーム127に設けられる長孔状の係合孔128に、ドラムシフタ106の回動軸線からオフセットした位置で該ドラムシフタ106に植設される係合ピン129が係合される。
【0057】
また前記チェンジアーム127の基端部には、チェンジアーム127と略L字状をなすようにしてチェンジ軸121の半径方向に延びるアーム130が一体に連設されており、このアーム130の先端部には、前記チェンジ軸121の軸線を中心とする円弧状の長孔131が設けられるとともに、該長孔131の周方向中心およびチェンジ軸121の軸線を結ぶ直線上に位置する突部132が突設される。
【0058】
一方、クランクケース23におけるケース半体23aには、前記長孔131に挿通されるピン133が植設されており、前記突部132および前記ピン133を両側から挟む一対の挟み腕134a,134aを両端に有する挟みばね134が、チェンジ軸121を囲繞するようにして前記チェンジアーム127およびアーム130と、クランクケース23のケース半体23aとの間に配置される。これにより前記チェンジアーム127および前記アーム130は、前記長孔131の周方向中心およびチェンジ軸121の軸線を結ぶ直線上に前記突部132および前記ピン133が並ぶ中正位置に付勢されることになる。
【0059】
ここで、第1速で運転している状態すなわちドラムストッパアーム100をシフトドラムセンター99の第1および第2速用位置決めノッチS1-2 に係合し、第1油圧クラッチ52を接続し、第2油圧クラッチ53を遮断している状態で第2速にシフトアップする場合について説明すると、シフト用電動モータ120の作動に応じてチェンジ軸121およびチェンジアーム127は図6の時計方向に回動し、駆動手段105のドラムシフタ106は、チェンジアーム127の長孔128に係合ピン129が係合していることにより、係合ピン129を係合孔128内でチェンジ軸121に変位させつつ図6の時計方向に回動する。
【0060】
これにより2つの係合凹部109,109にそれぞれ係合しているポール107,107の一方が、ガイドプレート110のガイド孔117における大径円弧部117aに対応する部分を軸部110aの軸線まわりに回動することになり、シフトドラムセンター99を図6の時計方向に回動するように押圧する。
【0061】
このようなシフトドラム95の回動駆動時に、シフトドラム95が先行して回動してしまう場合があるが、この際、図8で示すように、歯車列G1〜GRの非確立状態で、両ポール107,107の他方(シフトドラムセンター99を押圧していない方)が、ガイド孔117におけるガイド孔117の連結部117dの中間部における段部17eに当接し、前記他方のポール107を係合凹部109に当接、係合させることにより、シフトドラム95の先行回動が停止することになる。
【0062】
この状態では、図9で示すように、ドラムストッパアーム100のローラ102は、第1および第2速用位置決めノッチS1-2 と、ニュートラル用ノッチN1 との間の山部を乗り越えてニュートラル用ノッチN1 に係合することになり、シフトドラム95のニュートラル位置が正確に得られることなる。さらにドラムシフタ106が回動すると、前記他方のポール107は、前記段部117eによって内側に畳まれるように回動し、ドラムストッパアーム100のローラ102が、ニュートラル用ノッチN1 と、第2および第3速用位置決めノッチS2-3 との間の山部を乗り越えることになる。
【0063】
ドラムシフタ106のさらなる回動によって、前記他方のポール107はガイドプレート110におけるガイド孔117の小径円弧部117cに先端部を摺接させるようになり、第2および第3速用位置決めノッチS2-3 との間の山部を乗り越えてしまうまでドラムシフタ106が回動したときにシフト用電動モータ120の作動が停止され、図10で示すように、ドラムストッパアーム100のローラ102を第2および第3速用位置決めノッチS2-3 に係合するまでシフトドラムセンター99は回動することになる。すなわちシフト用電動モータ120は、第1および第2速用位置決めノッチS1-2 と、第2および第3速用位置決めノッチS2-3 との間の間隔である60度未満、たとえば53.7度だけドラムシフタ106を回動する動力を発揮すればよい。
【0064】
このようにして駆動手段105は、第1速から第2速へのシフトアップの途中でシフトドラム95の回動速度を一旦緩やかに低下させることになる。このような駆動手段105の作用は、第2速から第3速へのシフトアップ時、第3速から第4速へのシフトアップ時、第4速から第5速へのシフトアップ時、ならびに第5速から第4速へのシフトダウン時、第4速から第3速へのシフトダウン時、第3速から第2速へのシフトダウン時、第2速から第1速へのシフトダウン時も同様である。
【0065】
また後進用位置決めノッチSR 、中立用位置決めノッチSN 、第1および第2速用位置決めノッチS1-2 、第2および第3速用位置決めノッチS2-3 、第3および第4速用位置決めノッチS3-4 、第4および第5速用位置決めノッチS4-5 ならびに第5速用位置決めノッチS5 にドラムストッパアーム100のローラ102を係合して、シフトドラム95の回動を停止した後には、チェンジアーム127は挟みばね134のばね力よって、図6および図7で示す位置まで戻り、ドラムシフタ106も図6および図7で示す位置まで戻ることになる。
【0066】
前記シフトドラム95の回転角度はドラム回転角度検出器135で検出されるものであり、該ドラム回転角度検出器135はシフトドラム95の他端に連結されて第2クランクケースカバー32に取付けられる。またチェンジ軸121の回転角度はチェンジ軸回転角度検出器136で検出され、このチェンジ軸回転角度検出器136はチェンジ軸121の他端に連結されて第2クランクケースカバー32に取付けられる。
【0067】
図11において、前記駆動手段105におけるシフト用作動モータ120は、前記回転角度検出器135および前記チェンジ軸回転角度検出器136の検出値に応じて制御ユニットCにより制御される。また第1および第2油圧クラッチ52,53の断・接を切換える油圧制御装置140の作動を前記制御ユニットCで制御されるものであり、シフト用作動モータ120の作動ならびに第1および第2油圧クラッチ52,53の断・接切換が制御ユニットCで制御される。
【0068】
而制御ユニットCは、第1油圧クラッチ52を遮断するとともに第2油圧クラッチ53を接続して最高変速段よりも1段だけ低い第4速で走行している状態からのシフトアップ時には第1油圧クラッチ52を接続するとともに第2油圧クラッチ53を遮断することで得られる第5速での走行時にシフトドラム95を第5速位置P5 に回動して第4速歯車列G4の確立を解除し、第1油圧クラッチ52を接続するとともに第2油圧クラッチ53を遮断した状態での第5速での走行時からのシフトダウン時にはシフトドラム95を第4および第5速位置P4-5 に回転して第4速歯車列G4および第5速歯車列G5をともに確立した後に第1油圧クラッチ52を遮断するとともに第2油圧クラッチ53を接続する。
【0069】
次にこの実施例の作用について説明すると、第1メインシャフト44およびカウンタシャフト46とともに回転する第1および第3シフタ72,74を、それらの第1および第3シフタ72,74の両側にある第1速用駆動アイドル歯車57および第3速用駆動アイドル歯車59ならびに第2速用被動アイドル歯車64および第4速用被動アイドル歯車66の一方との係合を解除して他方のアイドル歯車に係合させる側にスライドさせる際に、シフトドラム95の外周に設けられる第1および第3のリード溝96,98が有する連絡部96c,98cの中央部に形成されてシフトドラム95の周方向に延びるニュートラル部96e,98eで、第1および第3シフトフォーク91,93をガイドするようにしている。したがって前記連絡部が直線状であるものに比べて、シフトドラム95の回動に対して、第1速用駆動アイドル歯車57および第3速用駆動アイドル歯車59ならびに第2速用被動アイドル歯車64および第4速用被動アイドル歯車66の前記他方への第1および第3シフタ72,74の係合タイミングを遅らせることができる。
【0070】
しかもシフトドラムセンター99の外周に、ドラムストッパアーム100を選択的に係合させて歯車列G1〜G5のうち選択された歯車列を確立するための複数の位置決めノッチS1-2 ,S2-3 ,S3-4 ,S4-5 ,S5 が相互間に間隔をあけて設けられるとともにドラムストッパアーム100の係合を可能として各位置決めノッチS1-2 ,S2-3 ,S3-4 ,S4-5 間の中央部に配置されるニュートラル用ノッチN1 ,N2 ,N3 が設けられているので、歯車列の確立途中ではドラムストッパアーム100からドラムシフタ106に作用する回動抵抗が一旦大きくなることでシフトドラム95の回動速度すなわち前記第1〜第3シフタ72〜74のスライド速度が一旦緩められる。
【0071】
したがって前記リード溝96,98が有する連絡部96c,98cの中央部に形成されるニュートラル部96e,98eの働きと相まって、第1および第3シフタ72,74と、それらのシフタ72,74を係合させる歯車との速度差を比較的小さくし、係合音が大きくなるのをより効果的に防止することができる。
【0072】
また第1メインシャフト44とともに回転する第1シフタ72を、第1メインシャフト44へのエンジンEからの動力伝達を遮断するとともに第2メインシャフト45にエンジンEからの動力を伝達している状態で第1シフタ72の両側にある第1速用駆動アイドル歯車57および第3速用駆動アイドル歯車59の一方との係合を解除して他方に係合させる側にスライドさせる際に、シフトドラム95の外周に設けられる第1のリード溝96の連絡部96cの中央部に形成されてシフトドラム95の周方向に延びるニュートラル部96fで第1シフトフォーク91をガイドするので、シフトドラム95の回動に対して両アイドル歯車57,59への第1シフタ72の係合タイミングを遅らせることができる。またガイドプレート110によってポール107を係合凹部109に係合させることでシフトドラム95の回動途中での一旦停止、ならびにシフトドラム99の外周のニュートラル用ノッチN1 へのドラムストッパアーム100の係合により、シフトドラムセンター99の回動はその回動途中で一旦停止される。したがって第2メインシャフト45およびカウンタシャフト46間に設けられている第2速歯車列G2の確立によって両アイドル歯車57,59が回転している状態で、第1および第2メインシャフト44,45間に設けられているニードルベアリング48…間に満たされた潤滑油の粘性もしくは第1油圧クラッチ52および伝動筒軸49間の潤滑油の粘性による第1メインシャフト44のつれ回りに伴う第1シフタ72の回転速度と、前記両アイドル歯車57,59との相対回転速度差を比較的小さくすることができ、係合音が大きくなるのを防止することができる。
【0073】
さらにカウンタシャフト46とともに回転する第3シフタ74を、第2メインシャフト45へのエンジンEからの動力伝達を遮断するとともに第1メインシャフト44にエンジンEからの動力を伝達している状態で第3シフタ74の両側にある第2速用被動アイドル歯車64および第4速用被動アイドル歯車66の一方との係合を解除して他方に係合させる側にスライドさせる際に、シフトドラム95の外周に設けられる第3のリード溝98の連絡部98cの中央部に形成されてシフトドラム95の周方向に延びるニュートラル部98fで、第3シフトフォーク93をガイドするので、シフトドラム95の回動に対して両アイドル歯車64,66への第3シフタ74の係合タイミングを遅らせることができる。またガイドプレート110による回動抵抗、ならびにシフトドラムセンター99の外周のニュートラル用ノッチN2 へのドラムストッパアーム100の係合により、シフトドラムセンター99の回動はその回動途中で一旦停止される。したがって第1メインシャフト44およびカウンタシャフト46間に設けられている第3速歯車列G3の確立によってカウンタシャフト46および第3シフタ74が回転している状態で、第1および第2メインシャフト44,45間に設けられているニードルベアリング48…間に満たされた潤滑油の粘性もしくは第2油圧クラッチ53および伝動筒軸49間の潤滑油の粘性によるによる第2メインシャフト45のつれ回りに伴う前記両アイドル歯車64,66の回転速度と、第3シフタ74との相対回転速度差を比較的小さくすることができ、係合音が大きくなるのをより効果的に防止することができる。
【0074】
またシフトドラムセンター99の外周に設けられる複数の位置決めノッチSN ,S1-2 ,S2-3 ,S3-4 ,S4-5 ,S5 ,SR のうち少なくとも2つの特定位置決めノッチである後進用位置決めノッチSR および第5速用位置決めノッチS5 を除く他の位置決めノッチすなわち中立用位置決めノッチSN 、第1および第2速用位置決めノッチS1-2 、第2および第3速用位置決めノッチS2-3 、第3および第4速用位置決めノッチS3-4 、第4および第5速用位置決めノッチS4-5 相互の間隔が等間隔に配置されるのに対し、後進用位置決めノッチSR および第5速用位置決めノッチS5 は、中立用位置決めノッチSN 、第1および第2速用位置決めノッチS1-2 、第2および第3速用位置決めノッチS2-3 、第3および第4速用位置決めノッチS3-4 、第4および第5速用位置決めノッチS4-5 相互の間隔とは異なる間隔を相互間にあけるとともに、シフトドラムセンター99の周方向で隣接する他の位置決めノッチすなわち中立用位置決めノッチSN ならびに第4および第5速用位置決めノッチS4-5 との間にあけるようにして配置される。したがってリード溝96〜98の形状を極力保つとともにシフトドラム95の大径化を回避しつつ変速段数を増加することが可能である。
【0075】
また中立用位置決めノッチSN 、第1および第2速用位置決めノッチS1-2 、第2および第3速用位置決めノッチS2-3 、第3および第4速用位置決めノッチS3-4 、第4および第5速用位置決めノッチS4-5 相互の間隔が60度で等しく設定されるのに対して、後進用位置決めノッチSR および第5速用位置決めノッチS5 相互の間隔θは60度よりも狭い30度に設定され、後進用位置決めノッチSR および第5速用位置決めノッチS5 は前記シフトドラム95の1周未満で該シフトドラムの周方向に延びる第2リード溝97の両端部に対応するようにしてシフトドラムセンター99に設けられる。これにより間隔が狭い後進用位置決めノッチSR および第5速用位置決めノッチS5 に対応する変速位置がリード溝の両端部に当接することでシフトドラムの回転を阻止することで、より確実に変速段を確立することができる。
【0076】
また後進用位置決めノッチSR および第5速用位置決めノッチS5 にシフトドラムセンター99の周方向で隣接する中立用位置決めノッチSN ならびに第4および第5速用位置決めノッチS4-5 と、後進用位置決めノッチSR および第5速用位置決めノッチS5 との間の間隔αは、中立用位置決めノッチSN 、第1および第2速用位置決めノッチS1-2 、第2および第3速用位置決めノッチS2-3 、第3および第4速用位置決めノッチS3-4 、第4および第5速用位置決めノッチS4-5 相互の間隔よりも狭く設定されるので、間隔が狭い後進用位置決めノッチSR および第5速用位置決めノッチS5 に対応する後進位置PR および第5速位置P5 においてはシフトピン92aが第2リード溝97の両端部に当接することでシフトドラム95の回転を阻止することで、より確実に変速段を確立することができる。
【0077】
また後進用位置決めノッチSR および第5速用位置決めノッチS5 と、シフトドラムセンター99の周方向でそれらの後進用位置決めノッチSR および第5速用位置決めノッチS5 に隣接するニュートラル用位置決めノッチSN および第4および第5速用位置決めノッチS4-5 との間隔が中立用位置決めノッチSN 、第1および第2速用位置決めノッチS1-2 、第2および第3速用位置決めノッチS2-3 、第3および第4速用位置決めノッチS3-4 、第4および第5速用位置決めノッチS4-5 相互の間隔よりも狭く設定されるので、より確実に変速段を確立することができる。
【0078】
しかも駆動手段105が、シフト用作動モータ120を備えるとともに、該シフト用作動モータ120の回転動力をドラムスットパアーム100の回動動力に変換するように構成されるものであるので、シフト用作動モータ120によるシフトドラムセンター99の送り量を各変速位置に対応させて可変とすることが容易であり、変速位置間の間隔が狭くなっていてもシフトドラムセンター99を所望の変速位置に確実に送ることができる。
【0079】
さらに各歯車列G1〜G5,GRのうち最も確立状態となる頻度が高い特定の歯車列である第5速歯車列G5を用いた走行状態では第5速歯車列G5を除く他の歯車列は未確立状態となっているので、最も使用頻度の高い第5速での走行時にはその変速段の歯車列G5以外の歯車列で生じる打音の発生を抑えることができる。
【0080】
また第5速に対応した第5速歯車列G5だけを確立する第5速位置P5 と、第5速よりも1段だけ低い第4速に対応した第4速歯車列G4および第5速歯車列G5をともに確立する第4および第5速位置P4-5 とが、シフトドラム95の周方向に隣接して設定されるので、簡単な構成で、第5速での走行時には第5速歯車列G5だけを確立し、第4速での走行時には第5速歯車列G5および第4速歯車列G4をともに確立することができる。
【0081】
さらにシフトドラム95を回転せしめる駆動手段105の作動ならびに第1および第2油圧クラッチ52,53の断・接切換を制御する制御ユニットCは、第1油圧クラッチ52を遮断するとともに第2油圧クラッチ53を接続して最高変速段よりも1段だけ低い第4速で走行している状態からのシフトアップ時には第1油圧クラッチ52を接続するとともに第2油圧クラッチ53を遮断することで得られる第5速での走行時にシフトドラム95を第5速位置P5 に回動して第4速歯車列G4の確立を解除し、第1油圧クラッチ52を接続するとともに第2油圧クラッチ53を遮断した状態での第5速での走行時からのシフトダウン時にはシフトドラム95を第4および第5速位置P4-5 に回転して第4速歯車列G4および第5速歯車列G5をともに確立した後に第1油圧クラッチ52を遮断するとともに第2油圧クラッチ53を接続するので、第5速および第4速間の変速動作を良好なものとすることができる。
【0082】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】エンジン本体の縦断面図であって図2の1−1線に沿う断面図である。
【図2】図1の2−2線矢視方向から見た一部切欠き側面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】シフトドラムの外周面の展開図である。
【図6】第1速の運転状態での図4の6−6線断面図である。
【図7】第1速の運転状態での図4の7−7線拡大断面図である。
【図8】シフトドラムセンターの回動途中での駆動手段の一部の状態を示す図である。
【図9】第1速から第2速へのシフトアップ途中の状態での図6に対応した図である。
【図10】第2速の運転状態での図6に対応した図である。
【図11】制御系の構成を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0084】
44・・・第1メインシャフト
45・・・第2メインシャフト
46・・・カウンタシャフト
52・・・第1クラッチ
53・・・第2クラッチ
91,92,93・・・シフトフォーク
95・・・シフトドラム
96,97,98・・・リード溝
105・・・駆動手段
C・・・制御ユニット
E・・・エンジン
4-5 ・・・共用変速位置である第4および第5速位置
5 ・・・最高変速段用変速位置である第5速位置
G1,G2,G3,GR・・・歯車列
G4・・・低速段側歯車列である第4速歯車列
G5・・・特定の歯車列である第5速歯車列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(E)からの動力伝達を切換可能とした第1および第2メインシャフト(44,45)と、駆動輪に連結されるカウンタシャフト(46)と、第1および第2メインシャフト(44,45)ならびに前記カウンタシャフト(46)間に設けられる複数変速段の歯車列(G1,G2,G3,G4,G5,GR)と、それらの歯車列(G1〜G5,GR)の確立状態を切換えるべく前記各歯車列(G1〜G5,GR)の一部を構成する歯車への係合および非係合を切換えるシフタ(72,73,74)とを備える車両用変速機において、前記各歯車列(G1〜G5,GR)のうち最も確立状態となる頻度が高い特定の歯車列(G5)を用いた走行状態では前記特定の歯車列(G5)以外の歯車列が非確立状態となるように構成されることを特徴とする車両用変速機。
【請求項2】
複数変速段の変速位置が周方向に間隔をあけて設定されるシフトドラム(95)の外周に、前記シフタ(72〜74)を保持するシフトフォーク(91,92,93)をスライド可能に係合させるリード溝(96,97,98)が設けられ、最高変速段に対応した前記特定の歯車列(G5)だけを確立する最高変速段用変速位置(P5 )と、前記最高変速段(P5 )よりも1段だけ低い変速段に対応した低速段側歯車列(G4)および前記特定の歯車列(G5)をともに確立する共用変速位置(P4-5 )とが、前記シフトドラム(95)の周方向に隣接して設定されることを特徴とする請求項1記載の車両用変速機。
【請求項3】
前記エンジン(E)および第1メインシャフト(44)間に第1クラッチ(52)が設けられ、前記エンジン(E)および第2メインシャフト(45)間に第2クラッチ(53)が設けられ、前記特定の歯車列(G5)が第1メインシャフト(44)および前記カウンタシャフト(46)間に設けられ、前記低速段側歯車列(G4)が第2メインシャフト(45)および前記カウンタシャフト(46)間に設けられ、前記シフトドラム(95)を回転せしめる駆動手段(105)の作動ならびに前記第1および第2クラッチ(52,53)の断・接切換を制御する制御ユニット(C)は、第1クラッチ(52)を遮断するとともに第2クラッチ(53)を接続して前記最高変速段よりも1段だけ低い変速段で走行している状態からのシフトアップ時には第1クラッチ(52)を接続するとともに第2クラッチ(53)を遮断することで得られる最高変速段での走行時に前記シフトドラム(95)を最高変速段用変速位置に回動して前記低速段側歯車列(G4)の確立を解除し、第1クラッチ(52)を接続するとともに第2クラッチ(53)を遮断した状態での前記最高変速段での走行時からのシフトダウン時には前記シフトドラム(95)を共用変速位置に回転して低速段側歯車列(G4)および前記特定の歯車列(G5)をともに確立した後に第1クラッチ(52)を遮断するとともに第2クラッチ(53)を接続することを特徴とする請求項2記載の車両用変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−232337(P2008−232337A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74581(P2007−74581)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】