車両発進補助装置
【課題】 スムーズな発進を行うことができる車両発進補助装置を提供する。
【解決手段】 ドライバのブレーキペダルBPの操作無しでもホイルシリンダ液圧を保持し所定の条件が成立したときに液圧を減圧するブレーキCU32と、車両に設けられた前輪FL,FRに駆動力を作用させるエンジン39と、ブレーキCU32によりホイルシリンダ液圧を減圧する際に駆動源の駆動力または回転数が所定の上下限値の間に収まるように制御する発進補助制御部41と、を備える。
【解決手段】 ドライバのブレーキペダルBPの操作無しでもホイルシリンダ液圧を保持し所定の条件が成立したときに液圧を減圧するブレーキCU32と、車両に設けられた前輪FL,FRに駆動力を作用させるエンジン39と、ブレーキCU32によりホイルシリンダ液圧を減圧する際に駆動源の駆動力または回転数が所定の上下限値の間に収まるように制御する発進補助制御部41と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発進時のドライバ負担を軽減する車両発進補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、登坂路での車両発進時にドライバがブレーキペダルからアクセルペダルに足を踏み替えた際、ブレーキ液圧を自動的に保持制御して車両の後退を防止する、いわゆるヒルスタートエイド(ヒルスタートアシストとも言う。)制御において、登坂路の路面勾配に応じて目標エンジントルクを決定する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2007−55536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術にあっては、トランスミッションのクラッチ係合状態(M/T車の場合)やトルクコンバータオイルの経時劣化(A/T車の場合)等により変動する車輪側負荷を考慮していないため、車輪側負荷が大きい場合、エンジントルクの不足によりエンストを招き、スムーズに発進できないという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、スムーズな発進を行うことができる車両発進補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の車両発進補助装置では、ブレーキ制御手段によりホイルシリンダ液圧を減圧する際に駆動源の駆動力または回転数が所定の上下限値の間に収まるように制御する。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、スムーズな発進を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の車両発進補助装置を実現するための最良の形態を、図面に基づく各実施例により説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の車両発進補助装置を適用した車両の制駆動系を示す構成図、図2は実施例1の油圧ユニット(以下、HU)31の油圧回路図である。
実施例1の車両は、駆動源としてエンジン39を備え、エンジン39により左右前輪FL,FRを駆動するFF方式の車両である。また、HU31は、P系統とS系統との2系統からなる、X配管と呼ばれる配管構造を有する。
【0009】
HU31は、ブレーキコントロールユニット(ブレーキ制御手段であって、以下、ブレーキCU)32からの指令に基づいて左前輪FLのホイルシリンダW/C(FL)、右後輪RRのホイルシリンダW/C(RR)、右前輪FRのホイルシリンダW/C(FR)、左後輪RLのホイルシリンダW/C(RL)の各液圧の保持、増圧または減圧を行う。
【0010】
ブレーキCU32は、コンバインセンサ33と、操舵角センサ34および各車輪速センサ35FL,35FR,35RL,35RRからの各情報と、エンジンコントロールユニット(以下、エンジンCU)36からCAN通信線38を通して得られる情報と、に基づいて、制動制御実施の判断を行う。制動制御中は、ホイルシリンダ液圧の保持、増減圧指令を生成する。
【0011】
ブレーキペダルBPは、ドライバが制動を行う場合に操作され、操作量に応じてHU31により各ホイルシリンダW/Cへブレーキ液が供給される。ストップランプスイッチSLSは、ドライバがブレーキペダルBPを一定の遊び量以上踏み込むことでONとなり、ストップランプ(不図示)を点灯する。
【0012】
各ホイルシリンダW/Cは、HU31から供給されるブレーキ液に応じて対応する各車輪に制動力を付与する。
コンバインセンサ33は、加速度センサとヨーレートセンサとを1パッケージ化したもので、加速度センサは、車両前後方向の加速度を検出し、ヨーレートセンサは、車両に作用するヨーレートを検出する。ここで、加速度センサは、路面勾配に応じた前後方向加速度を検出できるため、実施例1では、これを利用して勾配検出も行う。
【0013】
操舵角センサ34は、ハンドル(不図示)の回転角である操舵角を検出する。
各車輪速センサ35FL,35FR,35RL,35RRは、各車輪FL,FR,RL,RRの車輪速を検出する。アクセルペダルAPは、ドライバの操作により車両の加減速コントロールを行う。
【0014】
エンジンCU36は、ドライバのアクセルペダルAPの操作量(アクセル開度)をアクセル開度センサ37で検出し、アクセル開度に応じてエンジン39のコントロールを行う。また、エンジン39の発生トルクおよびエンジン回転数と、アクセル開度の情報を通信(CAN)で出力する。
【0015】
パーキングブレーキPBは、ドライバのパーキングブレーキペダルPBPの操作に応じて作動し、後輪RL,RRをロックする。このパーキングブレーキPBは、ブレーキCU32、HU31およびホイルシリンダW/Cとは別系統の制動手段である。
パーキングブレーキスイッチPBSは、パーキングブレーキペダルPBPの操作状態(ON/OFF)を検出する。
【0016】
マニュアルクラッチ(以下、クラッチ)CLは、エンジン39と手動変速機(M/T)40との間に介装され、ドライバのクラッチペダルCPの操作に応じてエンジン39とM/T40とを断接する。
クラッチスイッチCSは、クラッチペダルCPの操作状態(ON/OFF)を検出する。
【0017】
HU31のP系統には、左前輪のホイルシリンダW/C(FL)、右後輪のホイルシリンダW/C(RR)が接続され、S系統には、右前輪のホイルシリンダW/C(FR)、左後輪のホイルシリンダW/C(RL)が接続されている。また、P系統、S系統それぞれに、ポンプPPとポンプPSとが設けられ、このポンプPPとポンプPSは、1つのモータMによって駆動される。
【0018】
マスタシリンダM/CとポンプPP,PS(以下、ポンプP)の吸入側とは、管路11P,11S(以下、管路11)によって接続されている。この各管路11上には、常閉型の電磁弁であるゲートインバルブ2P,2Sが設けられている。
【0019】
また、管路11上であって、ゲートインバルブ2P,2S(以下、ゲートインバルブ2)とポンプPとの間にはチェックバルブ6P,6S(以下、チェックバルブ6)が設けられ、この各チェックバルブ6は、ゲートインバルブ2からポンプPへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0020】
各ポンプPの吐出側と各ホイルシリンダW/Cとは、管路12P,12S(以下、管路12)によって接続されている。この各管路12上には、各ホイルシリンダW/Cに対応する常開型の電磁弁であるソレノイドインバルブ4FL,4RR,4FR,4RL(以下、ソレノイドインバルブ4)が設けられている。
【0021】
また、各管路12上であって、各ソレノイドインバルブ4とポンプPとの間にはチェックバルブ7P,7S(以下、チェックバルブ7)が設けられて、この各チェックバルブ7は、ポンプPからソレノイドインバルブ4へ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0022】
さらに、各管路12には、各ソレノイドインバルブ4を迂回する管路17FL,17RR,17FR,17RL(以下、管路17)が設けられ、この管路17には、チェックバルブ10FL,10RR,10FR,10RL(以下、チェックバルブ10)が設けられている。この各チェックバルブ10は、ホイルシリンダW/CからポンプPへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0023】
マスタシリンダM/Cと管路12とは管路13P,13S(以下、管路13)によって接続され、管路12と管路13とはポンプPとソレノイドインバルブ4との間において合流する。この各管路13上には、常開型の電磁弁であるゲートアウトバルブ3P,3S(以下、ゲートアウトバルブ3)が設けられている。
【0024】
また各管路13には、各ゲートアウトバルブ3を迂回する管路18P,18S(以下、管路18)が設けられ、この管路18には、チェックバルブ9P,9S(以下、チェックバルブ9)が設けられている。この各チェックバルブ9は、マスタシリンダM/C側からホイルシリンダW/Cへ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0025】
ポンプPの吸入側にはリザーバ16P,16S(以下、リザーバ16)が設けられ、このリザーバ16とポンプPとは管路15P,15S(以下、管路15)によって接続されている。リザーバ16とポンプPとの間にはチェックバルブ8P,8S(以下、チェックバルブ8)が設けられて、この各チェックバルブ8は、リザーバ16からポンプPへ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0026】
ホイルシリンダW/Cと管路15とは管路14P,14S(以下、管路14)によって接続され、管路14と管路15とはチェックバルブ8とリザーバ16との間において合流する。この各管路14には、それぞれ常閉型の電磁弁であるソレノイドアウトバルブ5FL,5RR,5FR,5RL(以下、ソレノイドアウトバルブ5)が設けられている。
【0027】
ブレーキCU32は、各センサの入力信号およびドライバのブレーキペダル操作状態等に基づいてドライバの操作に従う通常ブレーキ制御の演算と、アンチスキッドブレーキ制御(ABS)、車両挙動安定化制御(VDC)、車間距離制御および障害物回避制御等車両の情報を用いてタイヤのスリップや車両挙動を制御するための演算を行い、車両として必要な制動力(全ての輪)を算出し、各車輪に必要な制動力目標値を演算する。
【0028】
また、ブレーキCU32は、登坂路での発進時、ドライバがブレーキペダルBPからアクセルペダルAPに足を踏み替えた際に、各ホイルシリンダW/Cのブレーキ液圧を自動的に保持制御して車両のずり下がり(後退)を防止する、いわゆるヒルスタートエイド(HSA)制御を実施する。HSA制御では、所定の条件の成立時、例えば、登坂路での停止時にドライバがブレーキペダルBPから足を離したときに作動し、所定時間(数秒)経過後、または車両の発進が検出された場合に解除される。
【0029】
ブレーキCU32は、発進補助制御部(発進補助制御手段)41を備える。この発進補助制御部41は、HSA制御の解除時、エンジン39のトルクまたは回転数が所定の上下限値の間に収まるよう、エンジンCU36に対し駆動トルク要求信号を送り、エンジン39をコントロールする。
【0030】
[駆動トルク要求信号作成処理]
図3は、実施例1の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。なお、この制御処理は、所定の演算周期で繰り返し実行される。
【0031】
ステップS1では、HSA制御の実行中であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2へ移行し、NOの場合にはステップS8へ移行する。
【0032】
ステップS2では、ストップランプスイッチSLSがOFFであるか否かを判定する。YESの場合にはステップS3へ移行し、NOの場合にはステップS8へ移行する。
【0033】
ステップS3では、アクセル開度が5%以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS4へ移行し、NOの場合にはステップS8へ移行する。
【0034】
ステップS4では、車体速Viが2km/hよりも小さいか否かを判定する。YESの場合にはステップS5へ移行し、NOの場合にはステップS8へ移行する。
【0035】
ステップS5では、スロットル開度の下限値を決める最低スロットル開度リミッタ要求値を50%に設定し、ステップS6へ移行する。
【0036】
ステップS6では、駆動トルクの下限値を決める最低駆動トルクリミッタ要求値を下記の式(1)を参照して算出し、ステップS7へ移行する。
最低駆動トルクリミッタ要求値
=(K1×勾配推定値×ギヤ比×タイヤ径)+XNm …(1)
ここで、K1は所定のゲイン、勾配推定値はコンバインセンサ33により検出された前後方向加速度から推定した路面勾配、ギヤ比はエンジン39から前輪FL,FRまでの総ギヤ比、タイヤ径は前輪FL,FRのタイヤ径、XNmは所定のオフセット量である。
【0037】
ステップS7では、エンジン回転数の下限値を決める最低アイドリング(アイドル)エンジン回転リミッタ要求値を1,500rpmに設定し、リターンへ移行する。
【0038】
ステップS8では、最低スロットル開度リミッタ要求値を、前回値から所定値α1を減算した値とゼロとのセレクトハイにより設定し、ステップS9へ移行する。
【0039】
ステップS9では、最低駆動トルクリミッタ要求値を、前回値から所定値β1を減算した値とゼロとのセレクトハイにより設定し、ステップS10へ移行する。
【0040】
ステップS10では、最低アイドリングエンジン回転リミッタ要求値を、前回値から所定値γ1を減算した値とゼロとのセレクトハイにより設定し、リターンへ移行する。
【0041】
すなわち、実施例1の駆動トルク要求信号作成処理では、ステップS1でHSA制御中であるか否か判定し)、制御中であればステップS2でストップランプスイッチ信号を確認、ステップS3でアクセル開度信号を確認し、ブレーキ解除後にアクセルONで加速意思があると判定する。そうでない場合は、加速意思が無いと判定し最低スロットル開度リミッタ値、最低駆動トルクリミッタ値、最低アイドリングエンジン回転リミッタ値の要求値をいずれも徐々にゼロまで減算し要求なしとする(ステップS8→ステップS9→ステップS10)。
【0042】
ステップS4で車体速が2km/h未満の場合は発進時と判定し、路面勾配推定値と車両重量、ギヤ比、タイヤ径などにより加速可能駆動トルクを求め、その値にオフセット量としてXNmの余裕を付加し、最低スロットル開度リミッタ値要求値(例えば、50%)、最低駆動トルクリミッタ要求値(加速可能トルク+XNm)とする(ステップS5→ステップS6)。
【0043】
続くステップS7では、アイドリング回転数についても発進時のみは従来の値(例えば、700rpm)よりも高めの最低アイドリング回転リミッタ値(例えば、1,500rpm)を要求値として設定する。ステップS5〜ステップS7で設定した各要求値をCAN信号によりエンジンCU36に要求することで、スムーズな発進が可能となる。
【0044】
次に、作用を説明する。
[発進補助作用]
従来のHSA制御では、車輪の回転やアクセル開度、エンジントルク信号の検出によりドライバの発進意思を判定してブレーキ液圧などの制動力解除を行っている。ところが、運転スキルの低いドライバは、適度なアクセル操作やクラッチ操作を行うことができず、制動力解除後のアクセル開度不足や急激なクラッチ操作によるエンスト、アクセル開度過多によるホイルスピンや急発進などが発生するおそれがあった。
【0045】
そこで、上記特許文献1に記載された技術では、登坂路での発進時、路面勾配や車両諸元に応じて過不足無く車両をスムーズに発進させることができる適当な駆動トルクをエンジンCUに要求することにより、ドライバの発進負荷を軽減している。
【0046】
例えば、HSAにより急勾配の登坂路に停車中の車両が、アクセルON、ブレーキOFFをトリガとして発進動作を行うと、HSAでは保持していたブレーキ液圧を減圧して発進可能な状態とするが、上記特許文献1では、トランスミッションのクラッチ係合状態やトルクコンバータオイルの経時劣化等によって変動する車輪側負荷について考慮していない。
【0047】
したがって、アクセル開度が小さく、車輪側負荷に対してエンジントルクが小さい場合には、路面勾配に対して十分な駆動トルクが得られず、M/T車の場合はエンスト、A/T車では車両のずり下がりが発生するおそれがあった。また、逆にアクセルを大きく踏み込み過ぎた場合には、急加速やホイルスピンを起こす場合も考えられる。このように、登坂路発進をスムーズに行うためには、ドライバにある程度のスキルが要求されるため、運転スキルの低いドライバでは、スムーズな発進を行うことができない。
【0048】
図4に、従来のHSAからの発進時の動作を示す。時点t01では、減速して停止後、ドライバがブレーキをOFFしたため、HSAが作動し、ソレノイドインバルブを閉弁してホイルシリンダW/Cのブレーキ液を保持し、登坂路のずり下がりを防止する。
【0049】
時点t02では、ドライバのアクセル操作を検出したため、ソレノイドインバルブを開弁してブレーキ液の保持を解除するが、発進時のアクセル開度(ドライバによるアクセル操作量)が路面勾配と車両重量に対して過小である場合は、発進直後の加速ができずM/T車ではエンストが発生するおそれがある。そして、アクセル操作量が過小である場合、時点t03では、アイドリング回転維持のためにエンジントルクを急激に高める必要があるため、発進をスムーズに行うことができない。一方、アクセル開度が過大である場合は、ホイルスピンが発生するおそれがあるため、発進をスムーズに行うことができない。
【0050】
これに対し、実施例1では、登坂路の勾配を発進するのに十分なスロットル開度や駆動トルクをエンジンCU36に要求することで、エンジン出力の過不足を抑制してスムーズな発進を行うことができる。同時に、アイドリング回転数の上昇を要求することで、エンストや車両のずり下がりの発生を抑制している。
【0051】
図5は、実施例1の発進補助作用を示すタイムチャートである。この例では、発進時のアクセル開度が小さく、路面勾配に対して十分に加速できない場合の動作であり、実線は実施例1の動作、破線は従来の動作を示す。
【0052】
時点t1では、HSAが作動し、時点t2では、ストップランプスイッチOFF、アクセル開度≧5%、車体速<2km/hから車両発進を検出してHSAのブレーキ液圧の解除と同時にエンジンCU36に対しCAN信号により最低スロットル開度リミッタ要求値、最低駆動トルクリミッタ要求値を送信することにより、理想的な駆動トルクに対して不足している分を補い、スムーズな加速が得られる駆動トルクを確保する。
【0053】
ここで、最低駆動トルクリミッタ要求値の量については、路面勾配および車両重量、ギヤ比、タイヤ径などの車両諸元から求めた値にXNmの余裕を持たせて計算を行う。すなわち、路面勾配をθ、車両重量をw、重力加速度をGとしたとき、車両が斜面をずり下がる力Fは、下記の式(2)で表すことができる。
F=w×sinθ×G
よって、最低駆動トルクリミッタ要求値は、斜面の傾斜によるFに対し、発進時に加速可能な値に、車両重量w、ギヤ比やタイヤ径から上記(1)を参照して計算できる。
【0054】
このように、実施例1では、最低スロットル開度リミッタ要求値と最低駆動トルクリミッタ要求値とにより、不足している駆動トルクを登坂路で加速できる程度まで高めることができ、エンストや車両のずり下がりの無いスムーズな発進が可能となる。
【0055】
また、最低アイドリングエンジン回転リミッタ要求値によりエンジン39へのアイドリング回転指令を高めているため、駆動トルクを確保でき、エンストや車両のずり下がりをより確実に防止することができる。
【0056】
さらに、最低スロットル開度リミッタ要求値を超えるスロットル開度、最低駆動トルクリミッタ要求値を超える駆動トルク、および最低アイドリングエンジン回転リミッタ要求値を超えるアイドリング回転数についてはドライバの意思で自由に設定できるため、違和感の無い発進加速動作を行うことができる。
【0057】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両発進補助装置にあっては、ドライバのブレーキペダルBPの操作無しでもホイルシリンダ液圧を保持し所定の条件が成立したときに液圧を減圧するブレーキCU32と、車両に設けられた前輪FL,FRに駆動力を作用させる駆動源(エンジン39)と、ブレーキCU32によりホイルシリンダ液圧を減圧する際に駆動源の駆動力または回転数が所定の上下限値の間に収まるように制御する発進補助制御部41と、を備える。これにより、過不足のない所望のエンジン出力特性が得られ、車両をスムーズに発進させることができる。
【実施例2】
【0058】
実施例2の車両発進補助装置は、駆動トルク要求信号作成処理のみ実施例1と異なり、他の構成については実施例1と同一であるため、図示ならびに説明を省略する。
【0059】
[駆動トルク要求信号作成処理]
図6は、実施例2の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。なお、図3に示した実施例1と同一の処理を行うステップには、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0060】
ステップS11では、スロットル開度の上限値を決める最大スロットル開度リミッタ要求値を50%に設定し、ステップS12へ移行する。
【0061】
ステップS12では、駆動トルクの上限値を決める最大駆動トルクリミッタ要求値を下記の式(3)を参照して算出し、リターンへ移行する。
最大駆動トルクリミッタ要求値
=(K1×勾配推定値×ギヤ比×タイヤ径)+YNm …(3)
ここで、YNmは所定のオフセット量である。
【0062】
ステップS13では、最大スロットル開度リミッタ要求値を、前回値に所定値α2を加算した値とゼロとのセレクトローにより設定し、ステップS14へ移行する。
【0063】
ステップS14では、最大駆動トルクリミッタ要求値を、前回値に所定値β2を加算した値とゼロとのセレクトローにより設定し、リターンへ移行する。
【0064】
すなわち、実施例2の駆動トルク要求信号作成処理では、ステップS4で車体速が2km/h未満の場合は発進時と判定し、路面勾配推定値と車両重量、ギヤ比、タイヤ径などにより加速可能駆動トルクを求め、その値にオフセット量としてYNmの余裕を付加し、最大スロットル開度リミッタ要求値(例えば、50%)、最大駆動トルクリミッタ要求値(加速可能トルク+YNm)とする(ステップS11→ステップS12)。一方、発進時以外と判定した場合は、各要求値を徐々に最大値まで加算し要求なしとする(ステップS13→ステップS14)。
【0065】
次に、作用を説明する。
[発進補助作用]
【0066】
図7は、実施例2の発進補助作用を示すタイムチャートである。この例では、発進時のアクセル開度が大きく、路面勾配に対してホイルスピンや急加速が発生する場合の動作であり、実線は実施例2の動作、破線は従来の動作を示す。
【0067】
時点t1では、HSAが作動し、時点t2では、ストップランプOFF、アクセル開度≧5%、車体速<2km/hから車両発進を検出してHSAのブレーキ液圧の解除と同時にエンジンCU36に対しCAN信号により最大スロットル開度リミッタ要求値、最大駆動トルクリミッタ要求値を送信することにより、理想的な駆動トルクに対して過大な分を抑制し、スムーズな加速が得られる駆動トルクを確保する。
ここで、最大駆動トルクリミッタ要求値の量については、路面勾配および車両重量、ギヤ比、タイヤ径などの車両諸元から求めた値にYNmの余裕を持たせて計算を行う。
【0068】
このように、実施例2では、最大スロットル開度リミッタ要求値と最大駆動トルクリミッタ要求値とにより、過大な駆動トルクが抑えられホイルスピンや急加速のないスムーズな発進が可能となる。
【0069】
さらに、実施例2では、最大スロットル開度リミッタ要求値に満たないスロットル開度、最大駆動トルクリミッタ要求値に満たない駆動トルクについてはドライバの意思で自由に設定できるため、違和感の無い発進加速動作を行うことができる。
【実施例3】
【0070】
実施例3の車両発進補助装置は、駆動トルク要求信号作成処理のみ実施例1と異なり、他の構成については実施例1と同一であるため、図示ならびに説明を省略する。
【0071】
[駆動トルク要求信号作成処理]
図8は、実施例3の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。なお、図3に示した実施例1と同一の処理を行うステップには、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0072】
ステップS21では、パーキングブレーキPBがOFFか否かを、パーキングブレーキスイッチPBSの信号から判定する。YESの場合にはステップS22へ移行し、NOの場合にはステップS24へ移行する。
【0073】
ステップS22では、クラッチCLがONか否かを、クラッチスイッチCSの信号から判定する。YESの場合にはステップS23へ移行し、NOの場合にはステップS24へ移行する。
【0074】
ステップS23では、目標エンジン回転数要求値を2,000rpmに設定し、リターンへ移行する。
【0075】
ステップS24では、目標エンジン回転数要求値を要求なしとし、リターンへ移行する。
【0076】
すなわち、実施例3の駆動トルク要求信号作成処理では、ドライバの発進意思判定として、ステップS21でパーキングブレーキPBの状態、ステップS22でクラッチCLの状態を検出し、パーキングブレーキスイッチ信号のOFF、クラッチスイッチ信号のONが検出された場合、発進の意思有りと判定し、スムーズな発進ができるようにエンジン回転の要求値を設定し、エンジンCU36に送信する(ステップS23)。
【0077】
次に、作用を説明する。
[発進補助作用]
図9は、実施例3の発進補助作用を示すタイムチャートである。この例では、発進時のアクセル開度が不適切、またはクラッチの急激な切り離しで路面勾配に対してホイルスピンや急加速またはエンストが発生する場合の動作である。実線は実施例3の動作、破線は従来の動作を示す。
【0078】
時点t1では、HSAが作動し、時点t2では、ストップランプOFF、アクセル開度≧5%、車体速<2km/hに加え、パーキングブレーキOFF、クラッチONによりドライバの発進意思を確認し、適切なエンジン回転になるようエンジンCU36に要求を行うことにより、駆動トルクの過不足が抑制され、ホイルスピンや急発進、エンストのないスムーズな発進が可能となる。
【0079】
次に、効果を説明する。
実施例3の車両発進補助装置にあっては、以下に列挙する効果を奏する。
発進補助制御部41は、エンジン回転数を略一定とするため、エンストやエンジン回転の吹け上がりを抑制し、発進時の挙動を安定させることができる。
【0080】
エンジン39とM/T40の間に配置されたマニュアルクラッチCLと、マニュアルクラッチCLの作動状態を検出するクラッチスイッチCSと、を備え、発進補助制御部41は、クラッチスイッチCSによりマニュアルクラッチCLの係合動作が検出された場合に、エンジン回転数を略一定になるように制御する。すなわち、クラッチ係合前は車両が停止しており、エンジン回転数の制御が不要であるため、クラッチ係合後にエンジン回転数制御を開始することで、必要かつ適切なタイミングでエンジン回転数をコントロールできる。
【0081】
ブレーキCU32とは別に設けられたパーキングブレーキPBと、パーキングブレーキPBの作動状態を検出するパーキングブレーキスイッチPBSと、を備え、発進補助制御部41は、パーキングブレーキスイッチPBSによりパーキングブレーキPBの解除が検出された場合に、エンジン回転数を略一定になるように制御する。すなわち、パーキングブレーキPBの解除前は車両が停止しており、エンジン回転数の制御が不要であるため、パーキングブレーキPBの解除後にエンジン回転数制御を開始することで、必要かつ適切なタイミングでエンジン回転数をコントロールできる。
【0082】
車両に設けられた前輪FL,FRに駆動力を作用させるエンジン39と、エンジン39とM/T40との間に配置されたマニュアルクラッチCLと、マニュアルクラッチCLの作動状態を検出するクラッチスイッチCSと、ブレーキCU32とは別に設けられたパーキングブレーキPBと、パーキングブレーキPBの作動状態を検出するパーキングブレーキスイッチPBSと、クラッチスイッチCSによりマニュアルクラッチCLの係合動作が検出され、かつ、パーキングブレーキスイッチPBSによりパーキングブレーキPBの解除が検出された場合に、エンジン回転数を略一定になるように制御する発進補助制御部41と、を備える。これにより、必要かつ適切なタイミングでエンジン回転数をコントロールできる。
【実施例4】
【0083】
実施例4の車両発進補助装置は、駆動トルク要求信号作成処理のみ実施例1と異なり、他の構成については実施例1と同一であるため、図示ならびに説明を省略する。
【0084】
[駆動トルク要求信号作成処理]
図10は、実施例4の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。なお、図3に示した実施例1と同一の処理を行うステップには、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0085】
ステップS31では、前記式(1)を参照して駆動トルク要求値を設定し、ステップS33へ移行する。
【0086】
ステップS32では、駆動トルク要求値を0Nmに設定し、ステップS33へ移行する。
【0087】
ステップS33では、ステップS31またはステップS32で設定した駆動トルク要求値から実発生トルク値(実際に発生している駆動トルク)を減じた値が正(>0)の値であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS34へ移行し、NOの場合にはステップS35へ移行する。
【0088】
ステップS34では、HU31に対しブレーキ液圧保持要求を出力し、リターンへ移行する。HU31では、ソレノイドインバルブ4を閉弁してブレーキ液圧を保持する。
【0089】
ステップS35では、HU31に対しブレーキ液圧減圧要求を出力し、リターンへ移行する。HU31では、ソレノイドアウトバルブ5を開弁してブレーキ液圧を減圧する。ここで、HU31に出力するブレーキ液圧指令値は、例えば、下記の式(4)を参照して算出する。
ブレーキ液圧指令値=ゲイン×(駆動トルク要求値−実発生トルク値)
【0090】
すなわち、実施例4の駆動トルク要求信号作成処理では、ステップS31で登坂路に応じた駆動トルクを要求した後、実トルクが出るまでの間に不足する駆動トルクを補うために、ステップS35でブレーキ液圧指令値を徐々に減らすか、またはステップS34でソレノイドインバルブ4への保持電流を操作して適切な液圧となるように調整し、登坂路に応じた実発生トルク不足分のブレーキ液圧によって車両のずり下がりを防止すると共に、発進時の車速を一定速度に維持する。
【0091】
次に、作用を説明する。
[発進補助作用]
図11は、実施例4の発進補助作用を示すタイムチャートである。この例では、時点t1でHSAが作動し、時点t2でドライバの発進意思を確認したとき、エンジン39の駆動トルク指令に対して実トルクの立ち上がりに遅れが生じるのを考慮し、ブレーキの減圧を遅らせる、または適切な液圧となるように調整を行う。すなわち、駆動トルクとブレーキトルクとのバランスが最適になるよう、駆動トルクに応じてソレノイドインバルブ4のパルス減圧または保持電流を下げて減圧を行うことで、駆動トルクがフラットになりスムーズな発進が可能となる。
【0092】
次に、効果を説明する。
実施例4の車両発進補助装置にあっては、発進補助制御部41は、発進時に車両のずり下がりが生じないように、または発進時の車速が一定速度となるように、実トルクの立ち上がりに応じてブレーキ液圧の減圧量を調整する。これにより、実トルクの立ち上がり遅れに起因する車両のずり下がりを防止できる。また、発進時の車速がフラットになり、スムーズな発進が可能となる。
【実施例5】
【0093】
実施例5の車両発進補助装置は、駆動トルク要求信号作成処理のみ実施例1と異なり、他の構成については実施例1と同一であるため、図示ならびに説明を省略する。
【0094】
[駆動トルク要求信号作成処理]
図12は、実施例5の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートで、実施例5の駆動トルク要求信号作成処理では、図8のステップS23とステップS24を、図10のステップS31とステップS32に置き換えたものであるため、各ステップの説明は省略する。
【0095】
すなわち、実施例5の駆動トルク要求信号作成処理では、ドライバの発進意思判定として、ステップS21でパーキングブレーキPBの状態、ステップS22でクラッチCLの状態を検出し、パーキングブレーキスイッチ信号のOFF、クラッチスイッチ信号のONが検出された場合、発進の意思有りと判定し、スムーズな発進ができるようにエンジントルクの要求値を設定し、エンジンCU36に送信する(ステップS31)。
【0096】
次に、作用を説明する。
[発進補助作用]
図13は、実施例5の発進補助作用を示すタイムチャートである。この例では、時点t1でHSAが作動し、時点t2でドライバの発進意思を確認したとき、最適な駆動トルクになるようにエンジンCU36に要求を行うことにより、駆動トルクの過不足が抑制され、ホイルスピンや急発進、エンストのないスムーズな発進が可能となる。
【0097】
次に、効果を説明する。
実施例5の車両発進補助装置にあっては、以下に列挙する効果を奏する。
エンジン39とM/T40の間に配置されたマニュアルクラッチCLと、マニュアルクラッチCLの作動状態を検出するクラッチスイッチCSと、を備え、発進補助制御部41は、クラッチスイッチCSによりマニュアルクラッチCLの係合動作が検出された場合に、エンジン駆動力を略一定になるように制御する。すなわち、クラッチ係合前は車両が停止しており、エンジン回転数の制御が不要であるため、クラッチ係合後にエンジン回転数制御を開始することで、必要かつ適切なタイミングでエンジン回転数をコントロールできる。
【0098】
ブレーキCU32とは別に設けられたパーキングブレーキPBと、パーキングブレーキPBの作動状態を検出するパーキングブレーキスイッチPBSと、を備え、発進補助制御部41は、パーキングブレーキスイッチPBSによりパーキングブレーキPBの解除が検出された場合に、エンジン駆動力を略一定になるように制御する。すなわち、パーキングブレーキPBの解除前は車両が停止しており、エンジン回転数の制御が不要であるため、パーキングブレーキPBの解除後にエンジン回転数制御を開始することで、必要かつ適切なタイミングでエンジン回転数をコントロールできる。
【0099】
車両に設けられた前輪FL,FRに駆動力を作用させるエンジン39と、エンジン39とM/T40との間に配置されたマニュアルクラッチCLと、マニュアルクラッチCLの作動状態を検出するクラッチスイッチCSと、ブレーキCU32とは別に設けられたパーキングブレーキPBと、パーキングブレーキPBの作動状態を検出するパーキングブレーキスイッチPBSと、クラッチスイッチCSによりマニュアルクラッチCLの係合動作が検出され、かつ、パーキングブレーキスイッチPBSによりパーキングブレーキPBの解除が検出された場合に、エンジン駆動力を略一定になるように制御する発進補助制御部41と、を備える。これにより、必要かつ適切なタイミングでエンジン回転数をコントロールできる。
【0100】
(他の実施例)
以上、本発明を実施するための最良の形態を、各実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、各実施例に示した構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0101】
例えば、各実施例では、M/T(手動変速機)を有する車両について説明したが、本発明は、A/T(自動変速機)やCVT(無段変速機)を有する車両にも適用でき、登坂路における車両のずり下がりを抑制してスムーズな発進が可能となる。
【0102】
また、各実施例では、駆動源としてエンジンを有する車両について説明したが、本発明は、駆動源として電動モータを有する電気自動車およびハイブリッド車両にも適用でき、駆動源の出力の過不足を抑制してスムーズな発進が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】実施例1の車両発進補助装置を適用した車両の制駆動系を示す構成図である。
【図2】実施例1の油圧ユニット31の油圧回路図である。
【図3】実施例1の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】従来のHSAからの発進時の動作を示すタイムチャートである。
【図5】実施例1の発進補助作用を示すタイムチャートである。
【図6】実施例2の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】実施例2の発進補助作用を示すタイムチャートである。
【図8】実施例3の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】実施例3の発進補助作用を示すタイムチャートである。
【図10】実施例4の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】実施例4の発進補助作用を示すタイムチャートである。
【図12】実施例5の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】実施例5の発進補助作用を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0104】
FL,FR 左右前輪(車輪)
CL マニュアルクラッチ
CS クラッチスイッチ
PB パーキングブレーキ
PBS パーキングブレーキスイッチ(ブレーキスイッチ)
32 ブレーキコントロールユニット(ブレーキ制御手段)
40 手動変速機(トランスミッション)
39 エンジン(駆動源)
41 発進補助制御部(発進補助制御手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、発進時のドライバ負担を軽減する車両発進補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、登坂路での車両発進時にドライバがブレーキペダルからアクセルペダルに足を踏み替えた際、ブレーキ液圧を自動的に保持制御して車両の後退を防止する、いわゆるヒルスタートエイド(ヒルスタートアシストとも言う。)制御において、登坂路の路面勾配に応じて目標エンジントルクを決定する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2007−55536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術にあっては、トランスミッションのクラッチ係合状態(M/T車の場合)やトルクコンバータオイルの経時劣化(A/T車の場合)等により変動する車輪側負荷を考慮していないため、車輪側負荷が大きい場合、エンジントルクの不足によりエンストを招き、スムーズに発進できないという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、スムーズな発進を行うことができる車両発進補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の車両発進補助装置では、ブレーキ制御手段によりホイルシリンダ液圧を減圧する際に駆動源の駆動力または回転数が所定の上下限値の間に収まるように制御する。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、スムーズな発進を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の車両発進補助装置を実現するための最良の形態を、図面に基づく各実施例により説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の車両発進補助装置を適用した車両の制駆動系を示す構成図、図2は実施例1の油圧ユニット(以下、HU)31の油圧回路図である。
実施例1の車両は、駆動源としてエンジン39を備え、エンジン39により左右前輪FL,FRを駆動するFF方式の車両である。また、HU31は、P系統とS系統との2系統からなる、X配管と呼ばれる配管構造を有する。
【0009】
HU31は、ブレーキコントロールユニット(ブレーキ制御手段であって、以下、ブレーキCU)32からの指令に基づいて左前輪FLのホイルシリンダW/C(FL)、右後輪RRのホイルシリンダW/C(RR)、右前輪FRのホイルシリンダW/C(FR)、左後輪RLのホイルシリンダW/C(RL)の各液圧の保持、増圧または減圧を行う。
【0010】
ブレーキCU32は、コンバインセンサ33と、操舵角センサ34および各車輪速センサ35FL,35FR,35RL,35RRからの各情報と、エンジンコントロールユニット(以下、エンジンCU)36からCAN通信線38を通して得られる情報と、に基づいて、制動制御実施の判断を行う。制動制御中は、ホイルシリンダ液圧の保持、増減圧指令を生成する。
【0011】
ブレーキペダルBPは、ドライバが制動を行う場合に操作され、操作量に応じてHU31により各ホイルシリンダW/Cへブレーキ液が供給される。ストップランプスイッチSLSは、ドライバがブレーキペダルBPを一定の遊び量以上踏み込むことでONとなり、ストップランプ(不図示)を点灯する。
【0012】
各ホイルシリンダW/Cは、HU31から供給されるブレーキ液に応じて対応する各車輪に制動力を付与する。
コンバインセンサ33は、加速度センサとヨーレートセンサとを1パッケージ化したもので、加速度センサは、車両前後方向の加速度を検出し、ヨーレートセンサは、車両に作用するヨーレートを検出する。ここで、加速度センサは、路面勾配に応じた前後方向加速度を検出できるため、実施例1では、これを利用して勾配検出も行う。
【0013】
操舵角センサ34は、ハンドル(不図示)の回転角である操舵角を検出する。
各車輪速センサ35FL,35FR,35RL,35RRは、各車輪FL,FR,RL,RRの車輪速を検出する。アクセルペダルAPは、ドライバの操作により車両の加減速コントロールを行う。
【0014】
エンジンCU36は、ドライバのアクセルペダルAPの操作量(アクセル開度)をアクセル開度センサ37で検出し、アクセル開度に応じてエンジン39のコントロールを行う。また、エンジン39の発生トルクおよびエンジン回転数と、アクセル開度の情報を通信(CAN)で出力する。
【0015】
パーキングブレーキPBは、ドライバのパーキングブレーキペダルPBPの操作に応じて作動し、後輪RL,RRをロックする。このパーキングブレーキPBは、ブレーキCU32、HU31およびホイルシリンダW/Cとは別系統の制動手段である。
パーキングブレーキスイッチPBSは、パーキングブレーキペダルPBPの操作状態(ON/OFF)を検出する。
【0016】
マニュアルクラッチ(以下、クラッチ)CLは、エンジン39と手動変速機(M/T)40との間に介装され、ドライバのクラッチペダルCPの操作に応じてエンジン39とM/T40とを断接する。
クラッチスイッチCSは、クラッチペダルCPの操作状態(ON/OFF)を検出する。
【0017】
HU31のP系統には、左前輪のホイルシリンダW/C(FL)、右後輪のホイルシリンダW/C(RR)が接続され、S系統には、右前輪のホイルシリンダW/C(FR)、左後輪のホイルシリンダW/C(RL)が接続されている。また、P系統、S系統それぞれに、ポンプPPとポンプPSとが設けられ、このポンプPPとポンプPSは、1つのモータMによって駆動される。
【0018】
マスタシリンダM/CとポンプPP,PS(以下、ポンプP)の吸入側とは、管路11P,11S(以下、管路11)によって接続されている。この各管路11上には、常閉型の電磁弁であるゲートインバルブ2P,2Sが設けられている。
【0019】
また、管路11上であって、ゲートインバルブ2P,2S(以下、ゲートインバルブ2)とポンプPとの間にはチェックバルブ6P,6S(以下、チェックバルブ6)が設けられ、この各チェックバルブ6は、ゲートインバルブ2からポンプPへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0020】
各ポンプPの吐出側と各ホイルシリンダW/Cとは、管路12P,12S(以下、管路12)によって接続されている。この各管路12上には、各ホイルシリンダW/Cに対応する常開型の電磁弁であるソレノイドインバルブ4FL,4RR,4FR,4RL(以下、ソレノイドインバルブ4)が設けられている。
【0021】
また、各管路12上であって、各ソレノイドインバルブ4とポンプPとの間にはチェックバルブ7P,7S(以下、チェックバルブ7)が設けられて、この各チェックバルブ7は、ポンプPからソレノイドインバルブ4へ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0022】
さらに、各管路12には、各ソレノイドインバルブ4を迂回する管路17FL,17RR,17FR,17RL(以下、管路17)が設けられ、この管路17には、チェックバルブ10FL,10RR,10FR,10RL(以下、チェックバルブ10)が設けられている。この各チェックバルブ10は、ホイルシリンダW/CからポンプPへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0023】
マスタシリンダM/Cと管路12とは管路13P,13S(以下、管路13)によって接続され、管路12と管路13とはポンプPとソレノイドインバルブ4との間において合流する。この各管路13上には、常開型の電磁弁であるゲートアウトバルブ3P,3S(以下、ゲートアウトバルブ3)が設けられている。
【0024】
また各管路13には、各ゲートアウトバルブ3を迂回する管路18P,18S(以下、管路18)が設けられ、この管路18には、チェックバルブ9P,9S(以下、チェックバルブ9)が設けられている。この各チェックバルブ9は、マスタシリンダM/C側からホイルシリンダW/Cへ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0025】
ポンプPの吸入側にはリザーバ16P,16S(以下、リザーバ16)が設けられ、このリザーバ16とポンプPとは管路15P,15S(以下、管路15)によって接続されている。リザーバ16とポンプPとの間にはチェックバルブ8P,8S(以下、チェックバルブ8)が設けられて、この各チェックバルブ8は、リザーバ16からポンプPへ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0026】
ホイルシリンダW/Cと管路15とは管路14P,14S(以下、管路14)によって接続され、管路14と管路15とはチェックバルブ8とリザーバ16との間において合流する。この各管路14には、それぞれ常閉型の電磁弁であるソレノイドアウトバルブ5FL,5RR,5FR,5RL(以下、ソレノイドアウトバルブ5)が設けられている。
【0027】
ブレーキCU32は、各センサの入力信号およびドライバのブレーキペダル操作状態等に基づいてドライバの操作に従う通常ブレーキ制御の演算と、アンチスキッドブレーキ制御(ABS)、車両挙動安定化制御(VDC)、車間距離制御および障害物回避制御等車両の情報を用いてタイヤのスリップや車両挙動を制御するための演算を行い、車両として必要な制動力(全ての輪)を算出し、各車輪に必要な制動力目標値を演算する。
【0028】
また、ブレーキCU32は、登坂路での発進時、ドライバがブレーキペダルBPからアクセルペダルAPに足を踏み替えた際に、各ホイルシリンダW/Cのブレーキ液圧を自動的に保持制御して車両のずり下がり(後退)を防止する、いわゆるヒルスタートエイド(HSA)制御を実施する。HSA制御では、所定の条件の成立時、例えば、登坂路での停止時にドライバがブレーキペダルBPから足を離したときに作動し、所定時間(数秒)経過後、または車両の発進が検出された場合に解除される。
【0029】
ブレーキCU32は、発進補助制御部(発進補助制御手段)41を備える。この発進補助制御部41は、HSA制御の解除時、エンジン39のトルクまたは回転数が所定の上下限値の間に収まるよう、エンジンCU36に対し駆動トルク要求信号を送り、エンジン39をコントロールする。
【0030】
[駆動トルク要求信号作成処理]
図3は、実施例1の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。なお、この制御処理は、所定の演算周期で繰り返し実行される。
【0031】
ステップS1では、HSA制御の実行中であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS2へ移行し、NOの場合にはステップS8へ移行する。
【0032】
ステップS2では、ストップランプスイッチSLSがOFFであるか否かを判定する。YESの場合にはステップS3へ移行し、NOの場合にはステップS8へ移行する。
【0033】
ステップS3では、アクセル開度が5%以上であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS4へ移行し、NOの場合にはステップS8へ移行する。
【0034】
ステップS4では、車体速Viが2km/hよりも小さいか否かを判定する。YESの場合にはステップS5へ移行し、NOの場合にはステップS8へ移行する。
【0035】
ステップS5では、スロットル開度の下限値を決める最低スロットル開度リミッタ要求値を50%に設定し、ステップS6へ移行する。
【0036】
ステップS6では、駆動トルクの下限値を決める最低駆動トルクリミッタ要求値を下記の式(1)を参照して算出し、ステップS7へ移行する。
最低駆動トルクリミッタ要求値
=(K1×勾配推定値×ギヤ比×タイヤ径)+XNm …(1)
ここで、K1は所定のゲイン、勾配推定値はコンバインセンサ33により検出された前後方向加速度から推定した路面勾配、ギヤ比はエンジン39から前輪FL,FRまでの総ギヤ比、タイヤ径は前輪FL,FRのタイヤ径、XNmは所定のオフセット量である。
【0037】
ステップS7では、エンジン回転数の下限値を決める最低アイドリング(アイドル)エンジン回転リミッタ要求値を1,500rpmに設定し、リターンへ移行する。
【0038】
ステップS8では、最低スロットル開度リミッタ要求値を、前回値から所定値α1を減算した値とゼロとのセレクトハイにより設定し、ステップS9へ移行する。
【0039】
ステップS9では、最低駆動トルクリミッタ要求値を、前回値から所定値β1を減算した値とゼロとのセレクトハイにより設定し、ステップS10へ移行する。
【0040】
ステップS10では、最低アイドリングエンジン回転リミッタ要求値を、前回値から所定値γ1を減算した値とゼロとのセレクトハイにより設定し、リターンへ移行する。
【0041】
すなわち、実施例1の駆動トルク要求信号作成処理では、ステップS1でHSA制御中であるか否か判定し)、制御中であればステップS2でストップランプスイッチ信号を確認、ステップS3でアクセル開度信号を確認し、ブレーキ解除後にアクセルONで加速意思があると判定する。そうでない場合は、加速意思が無いと判定し最低スロットル開度リミッタ値、最低駆動トルクリミッタ値、最低アイドリングエンジン回転リミッタ値の要求値をいずれも徐々にゼロまで減算し要求なしとする(ステップS8→ステップS9→ステップS10)。
【0042】
ステップS4で車体速が2km/h未満の場合は発進時と判定し、路面勾配推定値と車両重量、ギヤ比、タイヤ径などにより加速可能駆動トルクを求め、その値にオフセット量としてXNmの余裕を付加し、最低スロットル開度リミッタ値要求値(例えば、50%)、最低駆動トルクリミッタ要求値(加速可能トルク+XNm)とする(ステップS5→ステップS6)。
【0043】
続くステップS7では、アイドリング回転数についても発進時のみは従来の値(例えば、700rpm)よりも高めの最低アイドリング回転リミッタ値(例えば、1,500rpm)を要求値として設定する。ステップS5〜ステップS7で設定した各要求値をCAN信号によりエンジンCU36に要求することで、スムーズな発進が可能となる。
【0044】
次に、作用を説明する。
[発進補助作用]
従来のHSA制御では、車輪の回転やアクセル開度、エンジントルク信号の検出によりドライバの発進意思を判定してブレーキ液圧などの制動力解除を行っている。ところが、運転スキルの低いドライバは、適度なアクセル操作やクラッチ操作を行うことができず、制動力解除後のアクセル開度不足や急激なクラッチ操作によるエンスト、アクセル開度過多によるホイルスピンや急発進などが発生するおそれがあった。
【0045】
そこで、上記特許文献1に記載された技術では、登坂路での発進時、路面勾配や車両諸元に応じて過不足無く車両をスムーズに発進させることができる適当な駆動トルクをエンジンCUに要求することにより、ドライバの発進負荷を軽減している。
【0046】
例えば、HSAにより急勾配の登坂路に停車中の車両が、アクセルON、ブレーキOFFをトリガとして発進動作を行うと、HSAでは保持していたブレーキ液圧を減圧して発進可能な状態とするが、上記特許文献1では、トランスミッションのクラッチ係合状態やトルクコンバータオイルの経時劣化等によって変動する車輪側負荷について考慮していない。
【0047】
したがって、アクセル開度が小さく、車輪側負荷に対してエンジントルクが小さい場合には、路面勾配に対して十分な駆動トルクが得られず、M/T車の場合はエンスト、A/T車では車両のずり下がりが発生するおそれがあった。また、逆にアクセルを大きく踏み込み過ぎた場合には、急加速やホイルスピンを起こす場合も考えられる。このように、登坂路発進をスムーズに行うためには、ドライバにある程度のスキルが要求されるため、運転スキルの低いドライバでは、スムーズな発進を行うことができない。
【0048】
図4に、従来のHSAからの発進時の動作を示す。時点t01では、減速して停止後、ドライバがブレーキをOFFしたため、HSAが作動し、ソレノイドインバルブを閉弁してホイルシリンダW/Cのブレーキ液を保持し、登坂路のずり下がりを防止する。
【0049】
時点t02では、ドライバのアクセル操作を検出したため、ソレノイドインバルブを開弁してブレーキ液の保持を解除するが、発進時のアクセル開度(ドライバによるアクセル操作量)が路面勾配と車両重量に対して過小である場合は、発進直後の加速ができずM/T車ではエンストが発生するおそれがある。そして、アクセル操作量が過小である場合、時点t03では、アイドリング回転維持のためにエンジントルクを急激に高める必要があるため、発進をスムーズに行うことができない。一方、アクセル開度が過大である場合は、ホイルスピンが発生するおそれがあるため、発進をスムーズに行うことができない。
【0050】
これに対し、実施例1では、登坂路の勾配を発進するのに十分なスロットル開度や駆動トルクをエンジンCU36に要求することで、エンジン出力の過不足を抑制してスムーズな発進を行うことができる。同時に、アイドリング回転数の上昇を要求することで、エンストや車両のずり下がりの発生を抑制している。
【0051】
図5は、実施例1の発進補助作用を示すタイムチャートである。この例では、発進時のアクセル開度が小さく、路面勾配に対して十分に加速できない場合の動作であり、実線は実施例1の動作、破線は従来の動作を示す。
【0052】
時点t1では、HSAが作動し、時点t2では、ストップランプスイッチOFF、アクセル開度≧5%、車体速<2km/hから車両発進を検出してHSAのブレーキ液圧の解除と同時にエンジンCU36に対しCAN信号により最低スロットル開度リミッタ要求値、最低駆動トルクリミッタ要求値を送信することにより、理想的な駆動トルクに対して不足している分を補い、スムーズな加速が得られる駆動トルクを確保する。
【0053】
ここで、最低駆動トルクリミッタ要求値の量については、路面勾配および車両重量、ギヤ比、タイヤ径などの車両諸元から求めた値にXNmの余裕を持たせて計算を行う。すなわち、路面勾配をθ、車両重量をw、重力加速度をGとしたとき、車両が斜面をずり下がる力Fは、下記の式(2)で表すことができる。
F=w×sinθ×G
よって、最低駆動トルクリミッタ要求値は、斜面の傾斜によるFに対し、発進時に加速可能な値に、車両重量w、ギヤ比やタイヤ径から上記(1)を参照して計算できる。
【0054】
このように、実施例1では、最低スロットル開度リミッタ要求値と最低駆動トルクリミッタ要求値とにより、不足している駆動トルクを登坂路で加速できる程度まで高めることができ、エンストや車両のずり下がりの無いスムーズな発進が可能となる。
【0055】
また、最低アイドリングエンジン回転リミッタ要求値によりエンジン39へのアイドリング回転指令を高めているため、駆動トルクを確保でき、エンストや車両のずり下がりをより確実に防止することができる。
【0056】
さらに、最低スロットル開度リミッタ要求値を超えるスロットル開度、最低駆動トルクリミッタ要求値を超える駆動トルク、および最低アイドリングエンジン回転リミッタ要求値を超えるアイドリング回転数についてはドライバの意思で自由に設定できるため、違和感の無い発進加速動作を行うことができる。
【0057】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両発進補助装置にあっては、ドライバのブレーキペダルBPの操作無しでもホイルシリンダ液圧を保持し所定の条件が成立したときに液圧を減圧するブレーキCU32と、車両に設けられた前輪FL,FRに駆動力を作用させる駆動源(エンジン39)と、ブレーキCU32によりホイルシリンダ液圧を減圧する際に駆動源の駆動力または回転数が所定の上下限値の間に収まるように制御する発進補助制御部41と、を備える。これにより、過不足のない所望のエンジン出力特性が得られ、車両をスムーズに発進させることができる。
【実施例2】
【0058】
実施例2の車両発進補助装置は、駆動トルク要求信号作成処理のみ実施例1と異なり、他の構成については実施例1と同一であるため、図示ならびに説明を省略する。
【0059】
[駆動トルク要求信号作成処理]
図6は、実施例2の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。なお、図3に示した実施例1と同一の処理を行うステップには、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0060】
ステップS11では、スロットル開度の上限値を決める最大スロットル開度リミッタ要求値を50%に設定し、ステップS12へ移行する。
【0061】
ステップS12では、駆動トルクの上限値を決める最大駆動トルクリミッタ要求値を下記の式(3)を参照して算出し、リターンへ移行する。
最大駆動トルクリミッタ要求値
=(K1×勾配推定値×ギヤ比×タイヤ径)+YNm …(3)
ここで、YNmは所定のオフセット量である。
【0062】
ステップS13では、最大スロットル開度リミッタ要求値を、前回値に所定値α2を加算した値とゼロとのセレクトローにより設定し、ステップS14へ移行する。
【0063】
ステップS14では、最大駆動トルクリミッタ要求値を、前回値に所定値β2を加算した値とゼロとのセレクトローにより設定し、リターンへ移行する。
【0064】
すなわち、実施例2の駆動トルク要求信号作成処理では、ステップS4で車体速が2km/h未満の場合は発進時と判定し、路面勾配推定値と車両重量、ギヤ比、タイヤ径などにより加速可能駆動トルクを求め、その値にオフセット量としてYNmの余裕を付加し、最大スロットル開度リミッタ要求値(例えば、50%)、最大駆動トルクリミッタ要求値(加速可能トルク+YNm)とする(ステップS11→ステップS12)。一方、発進時以外と判定した場合は、各要求値を徐々に最大値まで加算し要求なしとする(ステップS13→ステップS14)。
【0065】
次に、作用を説明する。
[発進補助作用]
【0066】
図7は、実施例2の発進補助作用を示すタイムチャートである。この例では、発進時のアクセル開度が大きく、路面勾配に対してホイルスピンや急加速が発生する場合の動作であり、実線は実施例2の動作、破線は従来の動作を示す。
【0067】
時点t1では、HSAが作動し、時点t2では、ストップランプOFF、アクセル開度≧5%、車体速<2km/hから車両発進を検出してHSAのブレーキ液圧の解除と同時にエンジンCU36に対しCAN信号により最大スロットル開度リミッタ要求値、最大駆動トルクリミッタ要求値を送信することにより、理想的な駆動トルクに対して過大な分を抑制し、スムーズな加速が得られる駆動トルクを確保する。
ここで、最大駆動トルクリミッタ要求値の量については、路面勾配および車両重量、ギヤ比、タイヤ径などの車両諸元から求めた値にYNmの余裕を持たせて計算を行う。
【0068】
このように、実施例2では、最大スロットル開度リミッタ要求値と最大駆動トルクリミッタ要求値とにより、過大な駆動トルクが抑えられホイルスピンや急加速のないスムーズな発進が可能となる。
【0069】
さらに、実施例2では、最大スロットル開度リミッタ要求値に満たないスロットル開度、最大駆動トルクリミッタ要求値に満たない駆動トルクについてはドライバの意思で自由に設定できるため、違和感の無い発進加速動作を行うことができる。
【実施例3】
【0070】
実施例3の車両発進補助装置は、駆動トルク要求信号作成処理のみ実施例1と異なり、他の構成については実施例1と同一であるため、図示ならびに説明を省略する。
【0071】
[駆動トルク要求信号作成処理]
図8は、実施例3の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。なお、図3に示した実施例1と同一の処理を行うステップには、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0072】
ステップS21では、パーキングブレーキPBがOFFか否かを、パーキングブレーキスイッチPBSの信号から判定する。YESの場合にはステップS22へ移行し、NOの場合にはステップS24へ移行する。
【0073】
ステップS22では、クラッチCLがONか否かを、クラッチスイッチCSの信号から判定する。YESの場合にはステップS23へ移行し、NOの場合にはステップS24へ移行する。
【0074】
ステップS23では、目標エンジン回転数要求値を2,000rpmに設定し、リターンへ移行する。
【0075】
ステップS24では、目標エンジン回転数要求値を要求なしとし、リターンへ移行する。
【0076】
すなわち、実施例3の駆動トルク要求信号作成処理では、ドライバの発進意思判定として、ステップS21でパーキングブレーキPBの状態、ステップS22でクラッチCLの状態を検出し、パーキングブレーキスイッチ信号のOFF、クラッチスイッチ信号のONが検出された場合、発進の意思有りと判定し、スムーズな発進ができるようにエンジン回転の要求値を設定し、エンジンCU36に送信する(ステップS23)。
【0077】
次に、作用を説明する。
[発進補助作用]
図9は、実施例3の発進補助作用を示すタイムチャートである。この例では、発進時のアクセル開度が不適切、またはクラッチの急激な切り離しで路面勾配に対してホイルスピンや急加速またはエンストが発生する場合の動作である。実線は実施例3の動作、破線は従来の動作を示す。
【0078】
時点t1では、HSAが作動し、時点t2では、ストップランプOFF、アクセル開度≧5%、車体速<2km/hに加え、パーキングブレーキOFF、クラッチONによりドライバの発進意思を確認し、適切なエンジン回転になるようエンジンCU36に要求を行うことにより、駆動トルクの過不足が抑制され、ホイルスピンや急発進、エンストのないスムーズな発進が可能となる。
【0079】
次に、効果を説明する。
実施例3の車両発進補助装置にあっては、以下に列挙する効果を奏する。
発進補助制御部41は、エンジン回転数を略一定とするため、エンストやエンジン回転の吹け上がりを抑制し、発進時の挙動を安定させることができる。
【0080】
エンジン39とM/T40の間に配置されたマニュアルクラッチCLと、マニュアルクラッチCLの作動状態を検出するクラッチスイッチCSと、を備え、発進補助制御部41は、クラッチスイッチCSによりマニュアルクラッチCLの係合動作が検出された場合に、エンジン回転数を略一定になるように制御する。すなわち、クラッチ係合前は車両が停止しており、エンジン回転数の制御が不要であるため、クラッチ係合後にエンジン回転数制御を開始することで、必要かつ適切なタイミングでエンジン回転数をコントロールできる。
【0081】
ブレーキCU32とは別に設けられたパーキングブレーキPBと、パーキングブレーキPBの作動状態を検出するパーキングブレーキスイッチPBSと、を備え、発進補助制御部41は、パーキングブレーキスイッチPBSによりパーキングブレーキPBの解除が検出された場合に、エンジン回転数を略一定になるように制御する。すなわち、パーキングブレーキPBの解除前は車両が停止しており、エンジン回転数の制御が不要であるため、パーキングブレーキPBの解除後にエンジン回転数制御を開始することで、必要かつ適切なタイミングでエンジン回転数をコントロールできる。
【0082】
車両に設けられた前輪FL,FRに駆動力を作用させるエンジン39と、エンジン39とM/T40との間に配置されたマニュアルクラッチCLと、マニュアルクラッチCLの作動状態を検出するクラッチスイッチCSと、ブレーキCU32とは別に設けられたパーキングブレーキPBと、パーキングブレーキPBの作動状態を検出するパーキングブレーキスイッチPBSと、クラッチスイッチCSによりマニュアルクラッチCLの係合動作が検出され、かつ、パーキングブレーキスイッチPBSによりパーキングブレーキPBの解除が検出された場合に、エンジン回転数を略一定になるように制御する発進補助制御部41と、を備える。これにより、必要かつ適切なタイミングでエンジン回転数をコントロールできる。
【実施例4】
【0083】
実施例4の車両発進補助装置は、駆動トルク要求信号作成処理のみ実施例1と異なり、他の構成については実施例1と同一であるため、図示ならびに説明を省略する。
【0084】
[駆動トルク要求信号作成処理]
図10は、実施例4の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。なお、図3に示した実施例1と同一の処理を行うステップには、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0085】
ステップS31では、前記式(1)を参照して駆動トルク要求値を設定し、ステップS33へ移行する。
【0086】
ステップS32では、駆動トルク要求値を0Nmに設定し、ステップS33へ移行する。
【0087】
ステップS33では、ステップS31またはステップS32で設定した駆動トルク要求値から実発生トルク値(実際に発生している駆動トルク)を減じた値が正(>0)の値であるか否かを判定する。YESの場合にはステップS34へ移行し、NOの場合にはステップS35へ移行する。
【0088】
ステップS34では、HU31に対しブレーキ液圧保持要求を出力し、リターンへ移行する。HU31では、ソレノイドインバルブ4を閉弁してブレーキ液圧を保持する。
【0089】
ステップS35では、HU31に対しブレーキ液圧減圧要求を出力し、リターンへ移行する。HU31では、ソレノイドアウトバルブ5を開弁してブレーキ液圧を減圧する。ここで、HU31に出力するブレーキ液圧指令値は、例えば、下記の式(4)を参照して算出する。
ブレーキ液圧指令値=ゲイン×(駆動トルク要求値−実発生トルク値)
【0090】
すなわち、実施例4の駆動トルク要求信号作成処理では、ステップS31で登坂路に応じた駆動トルクを要求した後、実トルクが出るまでの間に不足する駆動トルクを補うために、ステップS35でブレーキ液圧指令値を徐々に減らすか、またはステップS34でソレノイドインバルブ4への保持電流を操作して適切な液圧となるように調整し、登坂路に応じた実発生トルク不足分のブレーキ液圧によって車両のずり下がりを防止すると共に、発進時の車速を一定速度に維持する。
【0091】
次に、作用を説明する。
[発進補助作用]
図11は、実施例4の発進補助作用を示すタイムチャートである。この例では、時点t1でHSAが作動し、時点t2でドライバの発進意思を確認したとき、エンジン39の駆動トルク指令に対して実トルクの立ち上がりに遅れが生じるのを考慮し、ブレーキの減圧を遅らせる、または適切な液圧となるように調整を行う。すなわち、駆動トルクとブレーキトルクとのバランスが最適になるよう、駆動トルクに応じてソレノイドインバルブ4のパルス減圧または保持電流を下げて減圧を行うことで、駆動トルクがフラットになりスムーズな発進が可能となる。
【0092】
次に、効果を説明する。
実施例4の車両発進補助装置にあっては、発進補助制御部41は、発進時に車両のずり下がりが生じないように、または発進時の車速が一定速度となるように、実トルクの立ち上がりに応じてブレーキ液圧の減圧量を調整する。これにより、実トルクの立ち上がり遅れに起因する車両のずり下がりを防止できる。また、発進時の車速がフラットになり、スムーズな発進が可能となる。
【実施例5】
【0093】
実施例5の車両発進補助装置は、駆動トルク要求信号作成処理のみ実施例1と異なり、他の構成については実施例1と同一であるため、図示ならびに説明を省略する。
【0094】
[駆動トルク要求信号作成処理]
図12は、実施例5の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートで、実施例5の駆動トルク要求信号作成処理では、図8のステップS23とステップS24を、図10のステップS31とステップS32に置き換えたものであるため、各ステップの説明は省略する。
【0095】
すなわち、実施例5の駆動トルク要求信号作成処理では、ドライバの発進意思判定として、ステップS21でパーキングブレーキPBの状態、ステップS22でクラッチCLの状態を検出し、パーキングブレーキスイッチ信号のOFF、クラッチスイッチ信号のONが検出された場合、発進の意思有りと判定し、スムーズな発進ができるようにエンジントルクの要求値を設定し、エンジンCU36に送信する(ステップS31)。
【0096】
次に、作用を説明する。
[発進補助作用]
図13は、実施例5の発進補助作用を示すタイムチャートである。この例では、時点t1でHSAが作動し、時点t2でドライバの発進意思を確認したとき、最適な駆動トルクになるようにエンジンCU36に要求を行うことにより、駆動トルクの過不足が抑制され、ホイルスピンや急発進、エンストのないスムーズな発進が可能となる。
【0097】
次に、効果を説明する。
実施例5の車両発進補助装置にあっては、以下に列挙する効果を奏する。
エンジン39とM/T40の間に配置されたマニュアルクラッチCLと、マニュアルクラッチCLの作動状態を検出するクラッチスイッチCSと、を備え、発進補助制御部41は、クラッチスイッチCSによりマニュアルクラッチCLの係合動作が検出された場合に、エンジン駆動力を略一定になるように制御する。すなわち、クラッチ係合前は車両が停止しており、エンジン回転数の制御が不要であるため、クラッチ係合後にエンジン回転数制御を開始することで、必要かつ適切なタイミングでエンジン回転数をコントロールできる。
【0098】
ブレーキCU32とは別に設けられたパーキングブレーキPBと、パーキングブレーキPBの作動状態を検出するパーキングブレーキスイッチPBSと、を備え、発進補助制御部41は、パーキングブレーキスイッチPBSによりパーキングブレーキPBの解除が検出された場合に、エンジン駆動力を略一定になるように制御する。すなわち、パーキングブレーキPBの解除前は車両が停止しており、エンジン回転数の制御が不要であるため、パーキングブレーキPBの解除後にエンジン回転数制御を開始することで、必要かつ適切なタイミングでエンジン回転数をコントロールできる。
【0099】
車両に設けられた前輪FL,FRに駆動力を作用させるエンジン39と、エンジン39とM/T40との間に配置されたマニュアルクラッチCLと、マニュアルクラッチCLの作動状態を検出するクラッチスイッチCSと、ブレーキCU32とは別に設けられたパーキングブレーキPBと、パーキングブレーキPBの作動状態を検出するパーキングブレーキスイッチPBSと、クラッチスイッチCSによりマニュアルクラッチCLの係合動作が検出され、かつ、パーキングブレーキスイッチPBSによりパーキングブレーキPBの解除が検出された場合に、エンジン駆動力を略一定になるように制御する発進補助制御部41と、を備える。これにより、必要かつ適切なタイミングでエンジン回転数をコントロールできる。
【0100】
(他の実施例)
以上、本発明を実施するための最良の形態を、各実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、各実施例に示した構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0101】
例えば、各実施例では、M/T(手動変速機)を有する車両について説明したが、本発明は、A/T(自動変速機)やCVT(無段変速機)を有する車両にも適用でき、登坂路における車両のずり下がりを抑制してスムーズな発進が可能となる。
【0102】
また、各実施例では、駆動源としてエンジンを有する車両について説明したが、本発明は、駆動源として電動モータを有する電気自動車およびハイブリッド車両にも適用でき、駆動源の出力の過不足を抑制してスムーズな発進が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】実施例1の車両発進補助装置を適用した車両の制駆動系を示す構成図である。
【図2】実施例1の油圧ユニット31の油圧回路図である。
【図3】実施例1の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】従来のHSAからの発進時の動作を示すタイムチャートである。
【図5】実施例1の発進補助作用を示すタイムチャートである。
【図6】実施例2の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】実施例2の発進補助作用を示すタイムチャートである。
【図8】実施例3の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】実施例3の発進補助作用を示すタイムチャートである。
【図10】実施例4の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】実施例4の発進補助作用を示すタイムチャートである。
【図12】実施例5の発進補助制御部41で実行される駆動トルク要求信号作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】実施例5の発進補助作用を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0104】
FL,FR 左右前輪(車輪)
CL マニュアルクラッチ
CS クラッチスイッチ
PB パーキングブレーキ
PBS パーキングブレーキスイッチ(ブレーキスイッチ)
32 ブレーキコントロールユニット(ブレーキ制御手段)
40 手動変速機(トランスミッション)
39 エンジン(駆動源)
41 発進補助制御部(発進補助制御手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバのブレーキペダル操作無しでもホイルシリンダ液圧を保持し所定の条件が成立したときに前記液圧を減圧するブレーキ制御手段と、
車両に設けられた車輪に駆動力を作用させる駆動源と、
前記ブレーキ制御手段によりホイルシリンダ液圧を減圧する際に前記駆動源の駆動力または回転数が所定の上下限値の間に収まるように制御する発進補助制御手段と、
を備えることを特徴とする車両発進補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両発進補助装置において、
前記駆動源はエンジンであって、
前記発進補助制御手段は、エンジン回転数を略一定とすることを特徴とする車両発進補助装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両発進補助装置において、
前記駆動源とトランスミッションの間に配置されたマニュアルクラッチと、
該マニュアルクラッチの作動状態を検出するクラッチスイッチと、
を備え、
前記発進補助制御手段は、前記クラッチスイッチにより前記マニュアルクラッチの係合動作が検出された場合に、前記駆動源の駆動力または回転数を所定の上下限値内または略一定になるように制御することを特徴とする車両発進補助装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両発進補助装置において、
前記ブレーキ制御手段とは別に設けられたパーキングブレーキと、
該パーキングブレーキの作動状態を検出するブレーキスイッチと、
を備え、
前記発進補助制御手段は、前記ブレーキスイッチにより前記パーキングブレーキの解除が検出された場合に、前記駆動源の駆動力または回転数を所定の上下限値内または略一定になるように制御することを特徴とする車両発進補助装置。
【請求項5】
車両に設けられた車輪に駆動力を作用させる駆動源と、
前記駆動源とトランスミッションとの間に配置されたマニュアルクラッチと、
該マニュアルクラッチの作動状態を検出するクラッチスイッチと、
前記ブレーキ制御手段とは別に設けられたパーキングブレーキと、
該パーキングブレーキの作動状態を検出するブレーキスイッチと、
前記クラッチスイッチにより前記マニュアルクラッチの係合動作が検出され、かつ、前記ブレーキスイッチにより前記パーキングブレーキの解除が検出された場合に、前記駆動源の駆動力または回転数を所定の上下限値内または略一定になるように制御する発進補助制御手段と、
を備えることを特徴とする車両発進補助装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両発進補助装置において、
前記発進補助制御手段は、発進時に車両のずり下がりが生じないように、または発進時の車速が一定速度となるように、前記駆動力の立ち上がりに応じて前記ホイルシリンダ液圧の減圧量を調整することを特徴とする車両発進補助装置。
【請求項1】
ドライバのブレーキペダル操作無しでもホイルシリンダ液圧を保持し所定の条件が成立したときに前記液圧を減圧するブレーキ制御手段と、
車両に設けられた車輪に駆動力を作用させる駆動源と、
前記ブレーキ制御手段によりホイルシリンダ液圧を減圧する際に前記駆動源の駆動力または回転数が所定の上下限値の間に収まるように制御する発進補助制御手段と、
を備えることを特徴とする車両発進補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両発進補助装置において、
前記駆動源はエンジンであって、
前記発進補助制御手段は、エンジン回転数を略一定とすることを特徴とする車両発進補助装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両発進補助装置において、
前記駆動源とトランスミッションの間に配置されたマニュアルクラッチと、
該マニュアルクラッチの作動状態を検出するクラッチスイッチと、
を備え、
前記発進補助制御手段は、前記クラッチスイッチにより前記マニュアルクラッチの係合動作が検出された場合に、前記駆動源の駆動力または回転数を所定の上下限値内または略一定になるように制御することを特徴とする車両発進補助装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両発進補助装置において、
前記ブレーキ制御手段とは別に設けられたパーキングブレーキと、
該パーキングブレーキの作動状態を検出するブレーキスイッチと、
を備え、
前記発進補助制御手段は、前記ブレーキスイッチにより前記パーキングブレーキの解除が検出された場合に、前記駆動源の駆動力または回転数を所定の上下限値内または略一定になるように制御することを特徴とする車両発進補助装置。
【請求項5】
車両に設けられた車輪に駆動力を作用させる駆動源と、
前記駆動源とトランスミッションとの間に配置されたマニュアルクラッチと、
該マニュアルクラッチの作動状態を検出するクラッチスイッチと、
前記ブレーキ制御手段とは別に設けられたパーキングブレーキと、
該パーキングブレーキの作動状態を検出するブレーキスイッチと、
前記クラッチスイッチにより前記マニュアルクラッチの係合動作が検出され、かつ、前記ブレーキスイッチにより前記パーキングブレーキの解除が検出された場合に、前記駆動源の駆動力または回転数を所定の上下限値内または略一定になるように制御する発進補助制御手段と、
を備えることを特徴とする車両発進補助装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両発進補助装置において、
前記発進補助制御手段は、発進時に車両のずり下がりが生じないように、または発進時の車速が一定速度となるように、前記駆動力の立ち上がりに応じて前記ホイルシリンダ液圧の減圧量を調整することを特徴とする車両発進補助装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−58623(P2010−58623A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225479(P2008−225479)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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